JP7294855B2 - ペクチネイタス属菌を検出可能な培地、ビール混濁性有害菌の検出方法 - Google Patents
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Description
そのため、品質管理のために、接種した被検体中におけるビール混濁性有害菌の有無の判定に使用できる培地が開発されており、具体的にはチオグリコール酸培地(TGC培地)やMRS培地(非特許文献1)、SMMP培地(非特許文献2)などが使用されている。
さらに、2017年、ビール混濁性有害菌として新たに、ラクトバチルス クルタス(Lactobacillus curtus)が見出された。
本発明者は鋭意研究の結果、還元剤として作用するシステインおよび還元型グルタチオンのうち少なくともいずれかを培地中に含有させることで検出感度の低下を抑えることができることを見出し、本発明を完成させた。
[1] ペクチネイタス属菌を検出可能な培地であって、
炭素源、窒素源、ミネラル源、チオグリコール酸またはその塩、シスチン、亜硫酸塩、およびシステインおよび/または還元型グルタチオンを含有する、培地。
[2] ソルビタンモノオレエートをさらに含有し、ペクチネイタス属菌およびラクトバチルス属菌を検出可能である[1]に記載の培地。
[3] ソルビタンモノオレエートを1.0g/L以上の含有量で含有する[2]に記載の培地。
[4] 以下の含有量で炭素源、窒素源、ミネラル源、チオグリコール酸またはその塩、シスチン、および亜硫酸塩を含有する[3]に記載の培地。
炭素源:炭水化物として11.0~15.0g/L
窒素源:全窒素として2.5~4.1g/L
ミネラル源:灰分として5.0~7.1g/L
チオグリコール酸またはその塩:0.55~0.8g/L
シスチン:0.28~0.4g/L
亜硫酸塩:0.1~0.2g/L
[5] 前記ラクトバチルス属菌が、ラクトバチルス クルタスである[2]から[4]のいずれか一つに記載の培地。
[6] 前記ペクチネイタス属菌が、ペクチネイタス フリシンジェンシスである、[1]から[5]のいずれか一つに記載の培地。
[7] ペクチネイタス属菌を検出可能な培地を使用して被検体におけるペクチネイタス属菌の存在の有無を判定することを含み、
前記培地が素源、窒素源、ミネラル源、チオグリコール酸またはその塩、シスチン、亜硫酸塩、およびシステインおよび/または還元型グルタチオンを含有するビール混濁性有害菌の検出方法。
[8] 前記培地がソルビタンモノオレエートをさらに含有し、ペクチネイタス属菌およびラクトバチルス属菌を検出可能であり、
前記検出方法において被検体におけるペクチネイタス属菌およびラクトバチルス属菌の存在の有無を判定する、[7]に記載の検出方法。
[9] 前記培地がソルビタンモノオレエートを1.0g/L以上の含有量で含有する[8]に記載の検出方法。
[10] 以下の含有量で前記培地が炭素源、窒素源、ミネラル源、チオグリコール酸またはその塩、シスチン、および亜硫酸塩を含有する[9]に記載の検出方法。
炭素源:炭水化物として11.0~15.0g/L
窒素源:全窒素として2.5~4.1g/L
ミネラル源:灰分として5.0~7.1g/L
チオグリコール酸またはその塩:0.55~0.8g/L
シスチン:0.28~0.4g/L
亜硫酸塩:0.1~0.2g/L
[11] 前記ラクトバチルス属菌が、ラクトバチルス クルタスである[8]から[10]のいずれか一つに記載の検出方法。
[12] 前記ペクチネイタス属菌が、ペクチネイタス フリシンジェンシスである、[7]から[11]のいずれか一つに記載の検出方法。
本実施形態はペクチネイタス属菌を検出可能な培地に関し、該培地は炭素源、窒素源、ミネラル源、チオグリコール酸またはその塩、シスチン、および亜硫酸塩と、システインおよび/または還元型グルタチオンとを含有する。
なお、本明細書において検出可能とは、対象となる菌(例えばペクチネイタス属菌)が生育可能であり、接種した被検体中における当該菌の有無の判定に使用できることを意味する。
炭素源としては、例えばブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)などが挙げられる。
窒素源としては、例えばカゼイン製ペプトン、ダイズ製ペプトン、酵母エキスなどが挙げられる。
ミネラル源としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムなどが挙げられる。
亜硫酸塩についても特に限定されず、例えば亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。
シスチンもL体、D体のいずれであってもよい。
本実施形態の培地に含まれるこれら各成分の含有量はペクチネイタス属菌を検出可能である限り特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
システイン、還元型グルタチオンの含有量は当業者が適宜設定でき、特に限定されないが、ペクチネイタス属菌の検出感度をより高めることができる観点から、システインについては0.5g/L以上、還元型グルタチオンについては1.0g/L以上が好ましい。なお、これらの上限値については特に限定されないが、調製コストの観点から、システインについては5.0g/L以下、還元型グルタチオンについては10g/L以下が好ましい。
炭素源:炭水化物として11.0~15.0g/L
窒素源:全窒素として2.5~4.1g/L
ミネラル源:灰分として5.0~7.1g/L
チオグリコール酸またはその塩:0.55~0.8g/L
シスチン:0.28~0.4g/L
亜硫酸塩:0.1~0.2g/L
窒素源の全窒素としての含有量は、ケルダール法や燃焼法により測定することができる。(なお、タンパク質の換算係数は、本願の場合6.25である)
また、本明細書において、ミネラル源の灰分としての含有量は、直接灰化法による強熱残分を意味する。
なお、これらの測定は、消費者庁 食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン 別添 栄養成分等の分析方法に記載の方法などに基づき行うことができる。
例えば、上記各培地組成成分に精製水等を添加し混合攪拌した後、オートクレーブ等で滅菌し、これを分注し、冷却又は放冷するなどすればよい。また、市販のTGC培地や変法TGC培地(m-TGC培地)を使用し、これにシステインおよび/または還元型グルタチオンを添加して本実施形態の培地を調製するようにしてもよい。pHなども特に限定されず、例えばpH5.0~7.0とすることができる。
例えば被検体を本実施形態の培地に接種した後、所定の条件にて培養し、続いてメンブランフィルタ法などにより菌の有無を判定することができる。また、菌の同定は目視やPCRにより行うことができる。
なお、以下の試験例においては、下記の組成を有する市販の変法-TGC培地調製用組成物(粉末試薬、以下、m-TGC培地と称す)にMilli-Q(登録商標、以下略。滅菌イオン交換水、1L)と寒天(合計で15g/Lとなる量)を添加したもの(基礎培地組成物)を用いた。
カゼイン製ペプトン:17.0g/L
ダイズ製ペプトン:3.0g/L
ブドウ糖:6.0g/L塩化ナトリウム:2.5g/L
寒天:0.7g/L
チオグリコール酸ナトリウム:0.5g/L
L-シスチン:0.25g/L
亜硫酸ナトリウム:0.1g/L(窒素源:全窒素として2.3g/L)
(炭素源:炭水化物として9.5g/L)
(ミネラル源:灰分として4.7g/L)
炭素源の炭水化物としての含有量は、粉体である培地調製用組成物の全質量から、たんぱく質、脂質、および灰分を除いて算出した。たんぱく質は燃焼法により、脂質はエーテル抽出法(0.1%未満 ソックスレー抽出法)により、灰分は直接灰化法により測定を行った。
窒素源の全窒素としての含有量は、燃焼法により測定した。
ミネラル源の灰分としての含有量は、直接灰化法により得られた灰分量である。
試験例1、2では、実施例においては基礎培地組成物にL-システイン塩酸塩一水和物(0.5g/L)または還元型グルタチオン(1.0g/L)をさらに含有させた。
実施例に係わる培地組成物および対照として用いた培地組成物は、混合攪拌した後、121℃15分間滅菌し、分注した後、放冷した。
得られた培地を無菌下で9時間大気放置し、ペクチネイタス フリシンジェンシス(以下、P菌と称す)に対する検出感度の変化をメンブランフィルタ法により評価した。
生理食塩水に200コロニー程度の菌数を懸濁させて、メンブラン吸引後、メンブランを上記の大気放置した培地に貼り付けて10日間、25℃で嫌気培養した。10日間培養後、菌の検出を行った。
結果を表1に示す。
培地を調製する際の酸素の巻き込みの影響を調べるため、調製において121℃5分間滅菌を3回繰り返し、その都度取り出した後スターラーで5分間撹拌を行い培地に酸素と接触させ、培地調製を行った。なお、培地組成は試験例1と同様とした(すなわち、実施例1Aと1B、実施例2Aと2B、比較例1Aと1B、および対照Aと対照Bは組成は同じであり、滅菌処理の条件が異なる)。
培地調製後、試験例1と同様の方法でP菌の接種、および菌の検出を行った。結果を表2に示す。
試験例3ではP菌と共にラクトバチルス クルタス(以下、L菌と称す)の検出についてメンブランフィルタ法により評価を行った。
実施例1Aと同じ組成の培地にその成分の混合段階においてソルビタンモノオレエート(Tween 80)を表3、4に示す含有量でさらに添加した点と大気開放していない点の2点以外は実施例1Aと同様の方法で調製した培地(実施例3~5の培地)を使用した。対照として大気開放していない点以外は実施例1Aと同様の組成、方法で調製した培地を用いた。
生理食塩水に所定の菌数(P菌:200コロニー程度出現する菌体量、L菌:100~200コロニー程度出現する菌体量)を懸濁させて、メンブラン吸引後、メンブランを培地に貼り付けて10日間嫌気培養した。10日間培養後、メンブランフィルタ法により菌の検出を行った。
結果を表3、表4に示す。
なお、実施例4、5の培地を使用した場合には、L菌についてコロニーの確認が容易であった(実施例4、5については目視による確認が可能。一方、実施例3については目視での確認が困難であるほど、コロニーが小さかった。)。一方で実施例4、5の培地の場合については実施例1A、3の培地の場合と比較して、P菌の検出率が下がる傾向にあった。
試験例4では、ソルビタンモノオレエートの含有量を増加させた以外は実施例5の培地と同様の組成、方法で調製した実施例7~9の培地について、試験例3と同様の評価を行った。
結果を表4に示す。
試験例5では、表5に示す組成を有する実施例9~11の培地に対しP菌、L菌を接種し、メンブランフィルタ法により菌の検出を行った。
実施例10、11の培地は、表5に示す成分を混合攪拌した後、121℃15分間滅菌し、分注した後、放冷して培地とした。実施例10、11の培地はTween80を2g/l含有させた。また、実施例10、11の培地を調製するために使用した市販のm-TGC培地は試験例1と同様のものを使用しており、実施例9の培地に対し実施例10ではその使用量を1.2倍量とし、実施例11ではその使用量を1.5倍量とした。
P菌は、300コロニー程度出現する菌体量を生理食塩水に懸濁させ、メンブラン吸引後、メンブランを培地に貼り付けた。L菌は、MRS培地で、50コロニー程度出現する菌体量を生理食塩水に懸濁後、メンブラン吸引した。メンブランは培地に貼り付けた。嫌気状態で10日間培養し、培養後、メンブランフィルタ法により菌の検出を行った。
結果を表5に示す。
Claims (6)
- ペクチネイタス属菌およびラクトバチルス属菌を検出可能な培地であって、
炭素源、窒素源、ミネラル源、チオグリコール酸またはその塩、シスチン、および亜硫酸塩を以下の含有量で含有し、
システインおよび/または還元型グルタチオンを含有し、
その含有量が1.0g/L以上であるソルビタンモノオレエートをさらに含有する、培地。
炭素源:炭水化物として11.0~15.0g/L
窒素源:全窒素として2.5~4.1g/L
ミネラル源:灰分として5.0~7.1g/L
チオグリコール酸またはその塩:0.55~0.8g/L
シスチン:0.28~0.4g/L
亜硫酸塩:0.1~0.2g/L - 前記ラクトバチルス属菌が、ラクトバチルス クルタスである請求項1に記載の培地。
- 前記ペクチネイタス属菌が、ペクチネイタス フリシンジェンシスである、請求項1または2に記載の培地。
- 炭素源、窒素源、ミネラル源、チオグリコール酸またはその塩、シスチン、および亜硫酸塩を以下の含有量で含有し、システインおよび/または還元型グルタチオンを含有し、その含有量が1.0g/L以上であるソルビタンモノオレエートをさらに含有し、ペクチネイタス属菌およびラクトバチルス属菌を検出可能な培地を使用して、被検体におけるペクチネイタス属菌およびラクトバチルス属菌の存在の有無を判定することを含む、ビール混濁性有害菌の検出方法。
炭素源:炭水化物として11.0~15.0g/L
窒素源:全窒素として2.5~4.1g/L
ミネラル源:灰分として5.0~7.1g/L
チオグリコール酸またはその塩:0.55~0.8g/L
シスチン:0.28~0.4g/L
亜硫酸塩:0.1~0.2g/L - 前記ラクトバチルス属菌が、ラクトバチルス クルタスである請求項4に記載の検出方法。
- 前記ペクチネイタス属菌が、ペクチネイタス フリシンジェンシスである、請求項4または5に記載の検出方法。
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本山靖朗,ビール汚染能を持つ偏性嫌気性細菌に関する研究,東京大学博士論文,東京大学学術機関リポジトリ,2012年 |
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