§1 構成例
〔異常検知システムの構成〕
図1は、本開示の一態様に係る異常検知システム100の要部構成の概要を示すブロック図である。図1の例では、異常検知システム100は、コンプレッサ1、レギュレータ2、排出口3、マニホールド4、エアシリンダ5、異常検知装置6、および表示装置7を備えている。なお、図1において実線はデータの流れを示し、点線は気体の流れを示している。
異常検知システム100は、気体の流入出によって駆動する1つ以上のエアシリンダ5の少なくともいずれかの異常の有無を異常検知装置6にて検知するシステムである。異常検知装置6は、エアシリンダ5の異常を検知すると、表示装置7を用いてユーザに該異常を通知する。エアシリンダ5には、コンプレッサ1によって加圧され、レギュレータ2によって圧力が調整された気体が、マニホールド4に設けられた電磁弁の開閉に伴って供給される。また、エアシリンダ5からは電磁弁の開閉に伴って、不要となった気体が排出口3より排出される。マニホールド4における電磁弁の開閉は異常検知装置6によって制御されるため、異常検知装置6は1つ以上のエアシリンダ5における駆動を制御する制御装置としても機能する。
コンプレッサ1は、気体を加圧してレギュレータ2に供給することができる。レギュレータ2は、コンプレッサ1から供給された気体の圧力を所望の値に調整した後、マニホールド4に供給することができる調整器である。排出口3は、エアシリンダ5の内部の圧力を調整するために不要となった気体をマニホールド4を介して受け付け、外部に排出することができる。
マニホールド4は、異常検知装置6の制御にしたがって開閉することが可能な1つ以上の電磁弁を備えた流路である。マニホールド4は、異常検知装置6の制御部61から電磁弁の開閉指示を受け付けると、対応する電磁弁を開閉させ、開閉させた電磁弁と連通するエアシリンダ5のシリンダ53との間で気体を流入出させることができる。マニホールド4には1つ以上のエアシリンダ5が接続されてもよく、異常検知装置6からの指示にしたがって、特定のエアシリンダ5と連通する特定の電磁弁を開閉してもよい。
エアシリンダ5は、センサ51およびシリンダ53を備えており、シリンダ53は、ピストン531、ロッド533、ピストンパッキン535、およびロッドパッキン537を備えている。エアシリンダ5は、マニホールド4との間で気体を流入出させることでシリンダ53の内部に配されたピストン531を摺動させることができる。エアシリンダ5は、ピストン531に一端が接続されたロッド533の他端に図示しない各種機構を接続してもよく、ピストン531の摺動に応じて該機構を動作させてもよい。
センサ51は、シリンダ53の内部においてピストン531が後述する引戻終端位置または押出終端位置に位置することを検知すると、異常検知装置6に通知することができる。センサ51は、例えばピストン531の位置をスイッチのON/OFFで示すリミットスイッチであってもよい。
シリンダ53は、エアシリンダ5の内部に円筒状に形成された内壁面を有するように形成されており、両端の近傍には気体が流入出するためのポートが設けられている。シリンダ53は、マニホールド4における電磁弁の開閉に伴ってポートから気体を流入出させることにより、内部の気体圧力を調整することができる。シリンダ53の一端は閉塞されており、他端はロッド533がシリンダ53を貫通できるようにロッド533の大きさに応じた穴が設けられている。
ピストン531は、シリンダ53の内部を摺動可能に配置された栓状の部材であり、ピストン531の一端側にはロッド533が接続されている。シリンダ53の内部においてピストン531は、該ピストン531を挟んで対向するシリンダ53の内部領域における気体圧力の差に応じてシリンダ53の内部を摺動する。
ロッド533は、一端がピストン531の一端側に接続された棒状の部材であり、ピストン531の摺動に合わせて移動することができる。ロッド533はシリンダ53の一端に設けられた穴を貫通するように配置されており、ピストン531の摺動に合わせてシリンダ53の端部から突き出る量が変化する。
ピストンパッキン535は、ピストン531を挟んで対向するシリンダ53の内部領域の間で気体が移動することを防止するためにピストン531に固定されたパッキンである。ピストンパッキン535は、例えばゴムや樹脂等によって形成されたOリングであってもよい。
ロッドパッキン537は、シリンダ53の一端に設けられた、ロッド533の大きさに応じた穴とロッド533との間の隙間から気体が外部に移動することを防止するためにシリンダ53の一端に固定されたパッキンである。ピストンパッキン535と同様に、ロッドパッキン537は、例えばゴムや樹脂等によって形成されたOリングであってもよい。
異常検知装置6は、ピストン531を有するエアシリンダ5の異常の有無を検知する装置であり、制御部61を備えている。制御部61は、動作時間取得部611、正常点設定部613、異常検知部615、および異常通知部617を備えている。
制御部61は、異常検知装置6の各部を統括して制御する。制御部61は、マニホールド4に対して電磁弁の開閉指示を送信し、マニホールド4が有する特定の電磁弁を開閉させることができる。制御部61は、センサ51からピストン531が後述する引戻終端位置または押出終端位置に位置することに関する通知を受け付けることができる。
動作時間取得部611は、制御部61がセンサ51から受信した通知に基づいて、エアシリンダ5のシリンダ53におけるピストン531の押し出しに要する押出時間および引き戻しに要する引戻時間を含む、ピストン531の動作時間を取得することができる。より具体的には、動作時間取得部611は、後述する引戻終端位置にあるピストン531が、後述する押出終端位置まで移動するまでに要した時間を押出時間として取得する。また、押出終端位置にあるピストン531が引戻終端位置まで移動するまでに要した時間を引戻時間として取得する。動作時間取得部611は、取得した押出時間および引戻時間について、正常点を設定する場合は正常点設定部613に送信し、それ以外の場合は異常検知部615に送信する。
正常点設定部613は、異常検知部615がエアシリンダ5の異常の有無を検知するために用いる、押出時間を横軸(第1軸)とし、引戻時間を縦軸(第2軸)とした二次元座標における正常点および疑似正常点の座標を設定(再設定)することができる。横軸と縦軸は直交している。ここで、正常点は、計測された押出時間および引戻時間に応じて二次元座標の上にプロットされた点であり、疑似正常点は、正常点に基づき二次元座標の上に追加プロットされた点である。正常点および疑似正常点の詳細については後述する。
異常検知部615は、動作時間取得部611が取得した、エアシリンダ5のシリンダ53の内部におけるピストン531の押出時間および引戻時間に基づいて、エアシリンダ5における異常の有無を検知する。異常通知部617は、エアシリンダ5に異常が発生したことを検知した場合、該異常を異常通知部617に通知することができる。異常検知部615による異常検知の具体例については後述する。
異常通知部617は、異常検知部615においてエアシリンダ5に異常が発生したことが検知されると、異常検知部615から受信した通知にしたがって表示装置7に対して異常に関する情報を送信することができる。異常通知部617は、例えばエアシリンダ5において動作時間が変動した場合や、異常検知部615においてパッキン異常が検知された場合に異常に関する情報を送信する。
表示装置7は、異常検知装置6と通信可能に接続されたディスプレイである。表示装置7は、異常通知部617から異常に関する情報を受信すると、受信した情報を映像として表示することができる。表示装置7は、異常検知装置6と別の装置であってもよいし、異常検知装置6と一体に形成されてもよい。
〔エアシリンダの概要〕
図2は、本開示の一態様に係るエアシリンダの概要を示す模式図である。
図2の例では、エアシリンダ5には円筒状のシリンダ53が形成されており、シリンダ53の両端部は図示しないポートを介してマニホールド4との間で気体を流入出できるようになっている。エアシリンダ5の内部にはピストンパッキン535を備えたピストン531が摺動可能に設けられており、ピストン531の一端側にはロッド533の端部が接続されている。ロッド533は一端がシリンダ53の端部に設けられた穴を貫通しており、穴の周囲にはロッドパッキン537が固定されている。図示の例ではシリンダ53とは別の封止部材によってシリンダ53の一端が閉塞されており、ロッド533は封止部材に設けられた穴を貫通するようになっている。しかしながら、シリンダ53の一端を閉塞し、ロッド533が穴を貫通するのであれば封止部材を用いなくてもよい。
図示の例において、シリンダ53の端部付近には2つのセンサ51が設けられている。ここで、ピストン531によって区画されたシリンダ53の内部領域のうち、ロッド533が存在しない領域を引戻領域とし、ロッド533が存在する領域を押出領域とする。そして、引戻領域の圧力が押出領域の圧力未満となってピストン531が引戻領域を圧縮するように移動する工程を引戻工程とし、引戻領域の圧力が押出領域の圧力より大きくなってピストン531が押出領域を圧縮するように移動する工程を押出工程とする。すなわち、引戻工程においてロッド533はシリンダ53の内部に引き戻され、押出工程においてロッド533はシリンダ53の外部に押し出される。
引戻工程において、ピストン531が引戻領域を限界まで圧縮したときの該ピストン531の位置を引戻終端位置とし、押出工程において、ピストン531が押出領域を限界まで圧縮したときの該ピストン531の位置を押出終端位置とする。センサ51は、ピストン531が引戻終端位置または押出終端位置に位置するときは、その旨を外部に通知する。
〔押出時間および引戻時間の定義〕
図3は、本開示の一態様に係るエアシリンダにおける押出時間および引戻時間の定義を示す模式図である。図示の例において、「シリンダ動作」の「出端」および「戻端」は押出工程および引戻工程の終了をそれぞれ示している。「入力」の「Enable」、「押出」、および「引戻」は、ロッド533の端部に接続された各種機構について、「利用可能であるか否か」、「ロッド533の押出によって駆動中であるか否か」、および「ロッド533の引戻によって駆動中であるか否か」をそれぞれ示している。「押出終端位置」および「引戻終端位置」は、ピストン531が押出終端位置に位置するか否か、および引戻終端位置に位置するか否かをそれぞれ示している。
異常検知システム100では、ピストン531が引戻終端位置にある状態から異常検知装置6がマニホールド4を制御して押出工程を開始させて該ピストン531を押出終端位置まで移動させた後、今度はマニホールド4を制御して引戻工程を開始させ、該ピストン531を引戻終端位置まで移動させるまでに要した動作時間を1フレームとしている。また、1フレームのうち、引戻終端位置にあるピストン531が押出終端位置まで移動するまでに要した時間を押出時間とし、押出終端位置にあるピストン531が引戻終端位置まで移動するまでに要した時間を引戻時間とする。
〔パッキン異常の具体例〕
図4は、本開示の一態様に係るエアシリンダにおいて、水平動作の場合の押出工程におけるパッキン異常の例を示す模式図である。押出工程ではシリンダ53の引戻領域内の気体の圧力を増大させることによって、ピストン531が押出領域を圧縮するように摺動し、結果として押出領域内の気体の圧力が増大する。このとき、ピストンパッキン535が経年劣化等の理由によって引戻領域と押出領域との間における気体の移動を防止できない状態であれば、押出領域内の気体の一部は引戻領域に漏出する。同様に、ロッドパッキン537が押出領域と外部との間における気体の移動を防止できない状態であれば、押出領域内の気体の一部は外部に漏出する。すなわち、ピストンパッキン535またはロッドパッキン537のいずれかに異常が発生している場合、押出工程において押出領域を圧縮するピストン531に反発する、押出領域内の気体の一部が漏出するので押出時間が短縮される。
図5は、本開示の一態様に係るエアシリンダにおいて、水平動作の場合の引戻工程におけるパッキン異常の例を示す模式図である。引戻工程ではシリンダ53の押出領域内の気体の圧力を増大させることによって、ピストン531が引戻領域を圧縮するように摺動し、結果として引戻領域内の気体の圧力が増大する。このとき、ピストンパッキン535が引戻領域と押出領域との間における気体の移動を防止できない状態であれば、押出領域内の気体の一部は引戻領域に漏出する。同様に、ロッドパッキン537が押出領域と外部との間における気体の移動を防止できない状態であれば、押出領域内の気体の一部は外部に漏出する。すなわち、ピストンパッキン535またはロッドパッキン537のいずれかに異常が発生している場合、引戻工程において引戻領域を圧縮するピストン531を押す、押出領域内の気体の一部が漏出するので引戻時間が延長される。
本開示の一態様に係るエアシリンダにおいて、ワークWによる高い負荷が存在する垂直押上動作の場合(図8で後述する)、押出工程では、引戻方向の力が大きくなり、押出推力が低下する。このとき、ピストンパッキン535に異常があれば、引戻領域内の気体の圧力による押し出す力が低下するため、高い負荷による影響が顕著に現れ、押出時間が延長される。また、ロッドパッキン537に異常があれば、押出領域内の気体の一部が外部に漏出するため、ピストン531に反発する力が小さくなり、押出時間が短縮される。
引戻工程では、ピストンパッキン535に異常があれば、引戻領域を圧縮するピストン531を押す、押出領域内の気体の一部が漏出するので、引戻時間が延長されるが、ワークWによる負荷が高いほど、ワークWの負荷による引戻推力が存在するため、引戻時間延長への影響は小さくなる。また、ロッドパッキン537に異常があれば、押出領域内の気体の一部が外部に漏出するため、押出領域内の気体がピストン531を押す力が小さくなり、引戻時間が延長される。
また、本開示の一態様に係るエアシリンダにおいて、低い負荷が存在する垂直押上動作の場合、ピストンパッキン535またはロッドパッキン537のいずれかに異常があれば、押出工程では、押出領域を圧縮するピストン531に反発する、押出領域内の気体の一部が漏出するので、押出時間が短縮される。また、引戻工程では、引戻領域を圧縮するピストン531を押す、押出領域内の気体の一部が漏出するので、引戻時間が延長される。
〔周囲温度変化による押出時間および引戻時間の変化〕
図6は、本開示の一態様に係る異常検知装置6において、エアシリンダ5の周囲温度が10℃から40℃に変化した場合の押出時間および引戻時間の変化を示すグラフの一例である。図示の例では、図3で説明したフレームの実行回数(ピストン531の往復回数)を横軸とし、縦軸では押出時間および引戻時間をまとめて動作時間としている。
図6に示すように、フレームの実行回数の増大とともに、押出時間および引戻時間が共に短縮している。これは、エアシリンダ5の周囲温度が10℃から40℃にまで上昇することに合わせてシリンダ53に新たに流入する気体の圧力が上昇することによる。押出領域および引戻領域における気体の圧力が上昇すると、ピストン531を移動させる力が増大するので、押出時間および引戻時間は共に短縮される。
図7は、本開示の一態様に係る異常検知装置において、エアシリンダの周囲温度が変化した場合の押出時間および引戻時間を示す正常点の変化を示すグラフである。横軸に押出時間、縦軸に引戻時間を設定した二次元座標において、エアシリンダ5の周囲温度が上昇するほど、正常点は原点方向へと直線的に移動する。
〔二次元座標を用いた異常検知〕
<疑似正常点の追加>
図8は、本開示の一態様に係る異常検知システム100のエアシリンダ5において、垂直押上動作を行う際の模式図である。本例では、異常検知システム100は、押出時および引戻時の両方において、ワークWによる負荷が加えられるエアシリンダ5について、異常の有無を検知する。
図9は、本開示の一態様に係る異常検知装置6によるエアシリンダ5の異常の有無を検知する手法を説明する図である。図9の1010~1030は、いずれも、押出時間を横軸とし、引戻時間を縦軸とした二次元座標を示している。図9の例に示すように、本構成例において、異常検知装置6の異常検知部615は、二次元座標を用いてエアシリンダ5の異常の有無を検知する。
本例では、動作時間取得部611は、まず、押出時および引戻時の両方において、ワークWによる高負荷が加えられるエアシリンダ5が正常に動作する際に、エアシリンダ5の押出時間および引戻時間を計測する。図9の1010に示すように、正常点設定部613は、このようにして計測された押出時間および引戻時間に基づく正常点101を、二次元座標にプロットする。エアシリンダ5が正常に動作する条件として、限定するものでは無いが、例えば、検品終了後のエアシリンダ5の動作開始から一定回数以内であることが挙げられる。プロットされる正常点101は複数あってもよく、図9の例では、4点プロットされている。
図9の1020に示すように、正常点設定部613は、次に、二次元座標において、原点Oと正常点101とを結ぶ直線上における正常点101から所定距離の範囲内に、複数の疑似正常点111をプロットする。疑似正常点111のプロットは、例えば、図7に示したような動作時間の温度依存性を考慮することを想定したものであってもよい。具体的には、図9の例において、「温度 高」および「温度 低」は正常点101がエアシリンダ5の周囲温度の変化に応じて移動する方向を示している。すなわち、正常点101は二次元座標において「温度 高」および「温度 低」を通る所定の温度直線上を、エアシリンダ5の周囲温度の変動に応じて移動する。温度直線は、周囲温度に起因する正常点101の変化を示す直線である。温度が高くなれば、押出時間および引戻時間は短縮され、温度が低くなれば、押出時間および引戻時間は延長される。
正常点設定部613は、1つの正常点101に対して、少なくとも1つの疑似正常点111をプロットする。図9の例では、1つの正常点101に対して4つの疑似正常点111をプロットする。そのため、4つの正常点101に対して、合計16個の疑似正常点111がプロットされている。疑似正常点111がプロットされる範囲を規定する所定距離は、限定するものでは無いが、例えば、原点Oから正常点101までの距離を100%とした場合、正常点101から原点Oに向かう正方向に15%の距離、および正方向と反対の負方向に15%の距離であればよい。上記の所定距離は、正常点101を25℃で計測した場合を基準として、周囲温度が40℃および10℃に変化するときをそれぞれ想定している。
図9の1030に示すように、異常検知部615は、二次元座標において、動作時間取得部611が新たに取得した押出時間および引戻時間に応じた計測点121を、正常点101および疑似正常点111を含む正常範囲と比較して、エアシリンダ5の異常の有無を検知する。例えば、二次元座標上で正常点101および疑似正常点111のデータ密度の分布を算出し、計測点121におけるデータ密度をしきい値と比較することによって、エアシリンダ5の異常の有無を検知してもよい。異常検知部615は、例えば、計測点121におけるデータ密度がしきい値よりも高い場合、計測点121は正常範囲に含まれるので、エアシリンダ5に異常は無いことを検知する。一方、計測点121におけるデータ密度がしきい値よりも低い場合、計測点121は正常範囲に含まれないので、エアシリンダ5に異常があることを検知する。異常検知部615は、公知の外れ値検知の手法を用いても良い。例えば、正常範囲におけるデータ密度の分布中心と、計測点との距離に応じて、異常の有無を検出する。この場合、例えば、計測点が、正常範囲におけるデータ密度の分布中心から、データ密度の標準偏差の2~3倍以上離れている場合、エアシリンダ5に異常があることを検知すればよい。図9の1030の例では、計測点121のプロット位置が、正常範囲から外れているので、異常検知部615は、エアシリンダ5に異常があることを検知する。
(本例による主要な作用効果)
上記の構成によれば、異常検知装置6は、エアシリンダ5における異常を、二次元座標における計測点と、正常範囲との比較により検知することができる。例えば、エアシリンダ5の周囲温度の変化により、計測点がプロットされると想定される箇所に疑似正常点111がプロットされるので、温度変化による計測点の変化(正常な変化)とエアシリンダ5の異常とを区別して検知することができる。したがって、例えば圧力センサや温度センサ等の追加部材を用いること無く、周囲温度の変化を考慮してエアシリンダ5の異常の有無を検知することができる、利便性に優れた異常検知装置6を実現することができる。
<複数の負荷が存在する場合の疑似正常点追加>
図10は、本開示の一態様に係る異常検知システム100のエアシリンダ5において、複数種の負荷が存在する場合の垂直押上動作を行う際の模式図である。本例では、異常検知システム100は、図10の1110に示すように、押出時および引戻時の両方において、ワークWによる負荷が加えられる高負荷(第1負荷)の場合、ならびに図10の1120に示すように、押出時および引戻時の両方において、ワークWによる負荷が加えられない低負荷(第2負荷)の場合のエアシリンダ5について、異常の有無を検知する。
図11は、本開示の一態様に係る異常検知装置において、複数種の負荷が存在する場合のエアシリンダの異常の有無を検知する手法を説明する図である。図11の1210~1230は、いずれも、押出時間を横軸とし、引戻時間を縦軸とした二次元座標を示している。図11の例に示すように、本構成例において、異常検知装置6の異常検知部615は、二次元座標を用いてエアシリンダ5の異常の有無を検知する。なお、説明の便宜上、図9にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
本例では、動作時間取得部611は、まず、押出時および引戻時の両方において高負荷(第1負荷)が加えられるエアシリンダ5が正常に動作する際に、エアシリンダ5の押出時間および引戻時間を計測する。図11の1210に示すように、正常点設定部613は、このようにして計測された押出時間および引戻時間に基づく高負荷正常点(第1正常点)101を、二次元座標にプロットする。
動作時間取得部611は、さらに、押出時および引戻時の両方において低負荷(第2負荷)が加えられるエアシリンダ5が正常に動作する際に、エアシリンダ5の押出時間および引戻時間を計測する。第2負荷は、第1負荷と異なる重さの負荷であればよく、図11では第1負荷よりも軽い負荷であるため、本例のエアシリンダ5の垂直押上動作では、押出時間が短縮され、引戻時間が延長される。図11の1210に示すように、正常点設定部613は、このようにして計測された押出時間および引戻時間に基づく低負荷正常点(第2正常点)102を、二次元座標にプロットする。プロットされる高負荷正常点101および低負荷正常点102は複数あってもよく、図11の例では、それぞれ4点プロットされている。
図11の1220に示すように、正常点設定部613は、次に、二次元座標において、原点Oと高負荷正常点101とを結ぶ直線上における高負荷正常点101から所定距離の範囲内に、高負荷疑似正常点(第1疑似正常点)111をプロットする。また、正常点設定部613は、二次元座標において、原点Oと低負荷正常点102とを結ぶ直線上における低負荷正常点102から所定距離の範囲内に、低負荷疑似正常点112をプロットする。
正常点設定部613は、1つの高負荷正常点101に対して、少なくとも1つの高負荷疑似正常点111をプロットする。図11の例では、1つの高負荷正常点101に対して4つの高負荷疑似正常点111をプロットする。そのため、4つの高負荷正常点111に対して、合計16個の高負荷疑似正常点111がプロットされている。
また、正常点設定部613は、1つの低負荷正常点102に対して、少なくとも1つの低負荷疑似正常点(第2疑似正常点)112をプロットする。図11の例では、1つの低負荷正常点102に対して4つの低負荷疑似正常点112をプロットする。そのため、4つの低負荷正常点102に対して、合計16個の低負荷疑似正常点112がプロットされている。
高負荷疑似正常点111および低負荷疑似正常点112がプロットされる範囲を規定する所定距離は、限定するものでは無いが、例えば、原点Oから高負荷正常点101までの距離および原点Oから低負荷正常点102までの距離を100%とした場合、高負荷正常点101および低負荷正常点102から原点Oに向かう正方向に15%の距離、および正方向と反対の負方向に15%の距離であればよい。
図11の1230に示すように、異常検知部615は、二次元座標において、動作時間取得部611が新たに取得した押出時間および引戻時間に応じた計測点121および122を、高負荷正常点101および高負荷疑似正常点111を含む高負荷正常範囲(第1正常範囲)ならびに低負荷正常点102および低負荷疑似正常点112を含む低負荷正常範囲(第2正常範囲)と比較して、エアシリンダ5の異常の有無を検知する。計測点121は、押出時および引戻時の両方において高負荷が加えられるエアシリンダ5が動作する際に新たに計測された押出時間および引戻時間に応じた点である。計測点122は、押出動作および引戻動作の両方において低負荷が加えられるエアシリンダ5が動作する際に新たに計測された押出時間および引戻時間に応じた点である。
異常検知部615は、例えば、二次元座標上で高負荷正常点101および高負荷疑似正常点111のデータ密度の分布を算出し、低負荷正常点102および低負荷疑似正常点112のデータ密度の分布を算出してもよい。そして、計測点121および122のそれぞれにおけるデータ密度をしきい値と比較することによって、エアシリンダ5の異常の有無を検知してもよい。
異常検知部615は、例えば、計測点121におけるデータ密度がしきい値よりも高い場合、計測点121は正常範囲に含まれるので、高負荷が加えられる場合のエアシリンダ5に異常は無いことを検知する。一方、計測点121におけるデータ密度がしきい値よりも低い場合、計測点121は正常範囲に含まれないので、高負荷が加えられる場合のエアシリンダ5に異常があることを検知する。図11の1080の例では、計測点121のプロット位置が、正常範囲から外れているので、異常検知部615は、高負荷が加えられる場合のエアシリンダ5に異常があることを検知する。
異常検知部615は、例えば、計測点122におけるデータ密度がしきい値よりも高い場合、計測点122は正常範囲に含まれるので、低負荷が加えられる場合のエアシリンダ5に異常は無いことを検知する。一方、計測点122におけるデータ密度がしきい値よりも低い場合、計測点122は正常範囲に含まれないので、低負荷が加えられる場合のエアシリンダ5に異常があることを検知する。図11の1080の例では、計測点122のプロット位置が、正常範囲から外れているので、異常検知部615は、低負荷が加えられる場合のエアシリンダ5に異常があることを検知する。
(本例による主要な作用効果)
上記の構成によれば、異常検知装置6は、負荷の種類が複数存在する場合でも、より簡便かつ適切に、エアシリンダの異常の有無を検知することができる。
<未取得負荷パターンの推測正常点追加>
1.垂直押上動作
図12は、本開示の一態様に係る異常検知システム100のエアシリンダ5において、押出時と引戻時とで負荷が異なる垂直押上動作を行う際の模式図である。本例では、異常検知システム100は、図12の1310に示すように、押出時にはエアシリンダ5にワークWによる負荷が加えられる、図12の1320に示すように引戻時にはエアシリンダ5にワークWによる負荷が加えられない場合に、エアシリンダ5の異常を検知する。
本開示の一例では、押出時および引戻時の両方で高負荷(第1負荷)が加えられている場合の正常点、ならびに押出時および引戻時の両方で低負荷(第2負荷)が加えられている場合の正常点のデータから、押出時および引戻時の一方のみで高負荷が加えられ、他方では低負荷が加えられている場合の正常点を推測する。そして、推測された正常点についても、疑似正常点を追加することで、押出時および引戻時の負荷が異なる場合の押出時間および引戻時間については正常点プロットのための事前の計測を行うこと無く、押出時および引戻時の負荷が異なる場合のエアシリンダ5の異常の有無を高精度で検知することができる。
図13は、本開示の一態様に係る異常検知装置6において、押出時と引戻時とで負荷が異なる場合を含む複数種の負荷について、垂直押上動作を行うエアシリンダ5の異常の有無を検知する手法を説明する図である。図13の1410~1440は、いずれも、押出時間を横軸とし、引戻時間を縦軸とした二次元座標を示している。図13の例に示すように、本構成例において、異常検知装置6の異常検知部615は、二次元座標を用いてエアシリンダ5の異常の有無を検知する。
図13の1410に示すように、正常点設定部613は、まず、押出時および引戻時の両方で高負荷が加えられている場合において、エアシリンダ5が正常に動作する際に計測された押出時間および引戻時間に基づく高負荷正常点(第1正常点)101を、二次元座標にプロットする。また、押出時および引戻時の両方で低負荷が加えられている場合において、エアシリンダ5が正常に動作する際に計測された押出時間および引戻時間に基づく低負荷正常点(第2正常点)102を、二次元座標にプロットする。プロットされる高負荷正常点101および低負荷正常点102は複数あってもよく、図13の例では、それぞれ4点プロットされている。
図13の1420および1430に示すように、正常点設定部613は、次に、高負荷正常点101を通る、縦軸に対して平行な直線と、低負荷正常点102を通る、横軸に対して平行な直線との交点を、高→低正常点(第3正常点)103としてプロットする。これは、エアシリンダ5の押出動作時は高負荷であり、引戻動作時は低負荷である場合に相当する。図13の1410に示す二次元座標では、高→低正常点103は、図示上の便宜のため高→低正常点を1点のみプロットしている。実際には、4つの高負荷正常点および4つの低負荷正常点についてそれぞれ高→低正常点103をプロットできるため、図13の1430に示すように、合計16個の高→低正常点103を二次元座標にプロットできる。
図13の1430に示すように、正常点設定部613は、次に、低負荷正常点102を通る、縦軸に対して平行な直線と、高負荷正常点101を通る、横軸に対して平行な直線との交点を、低→高正常点(第4正常点)104としてプロットする。これは、エアシリンダ5の押出動作時は低負荷であり、引戻動作時は高負荷である場合に相当する。高→低正常点103と同様に、4つの高負荷正常点および4つの低負荷正常点から、合計16個の低→高正常点104をプロットできる。
図13の1440に示すように、正常点設定部613は、このようにして得られた高負荷正常点101、低負荷正常点102、高→低正常点103、および低→高正常点104のそれぞれについて、図9と同様に、疑似正常点を追加する。具体的には、二次元座標において、原点Oと高負荷正常点101、低負荷正常点102、高→低正常点103および低→高正常点104とをそれぞれ結ぶ直線上における高負荷正常点101、低負荷正常点102、高→低正常点103および低→高正常点104から所定距離の範囲内に、複数の高負荷疑似正常点(第1疑似正常点)、低負荷疑似正常点(第2疑似正常点)、高→低疑似正常点(第3疑似正常点)および低→高疑似正常点(第4疑似正常点)をプロットする。図13では、図示の都合上、各疑似正常点は両方向矢印の範囲内にあるとして示す。
図13の1440に模式的に示すように、異常検知部615は、動作時間取得部611が新たに取得した押出時間および引戻時間に応じた計測点122を、高負荷正常点101および高負荷疑似正常点を含む高負荷正常範囲(第1正常範囲)131、低負荷正常点102および低負荷疑似正常点を含む低負荷正常範囲(第2正常範囲)132、高→低正常点103および高→低疑似正常点を含む高→低正常範囲(第3正常範囲)133、および低→高正常点104および低→高疑似正常点を含む低→高正常範囲(第4正常範囲)134と比較して、エアシリンダ5の異常の有無を検知する。
このとき、異常検知部615は、例えば、各正常点と各疑似正常点のデータ密度の分布を算出し、計測点におけるデータ密度をしきい値と比較することによって、エアシリンダ5の異常の有無を検知してもよい。例えば、計測点122におけるデータ密度がしきい値よりも高い場合、計測点122は正常範囲に含まれるので、エアシリンダ5に異常は無いことを検知する。一方、計測点122におけるデータ密度がしきい値よりも低い場合、計測点122は正常範囲に含まれないので、エアシリンダ5に異常があることを検知する。図13の1150の例では、計測点122のプロット位置が、正常範囲から外れているので、異常検知部615は、エアシリンダ5に異常があることを検知する。
2.水平動作
図14は、本開示の一態様に係る異常検知システム100のエアシリンダ5において、押出時と引戻時とで負荷が異なる水平動作を行う際の模式図である。本例では、図14の1510に示すように押出時にのみエアシリンダ5にワークWによる高負荷が加えられ、図14の1520に示すように引戻時にはエアシリンダ5にワークWによる負荷が加えられない(すなわち低負荷が加えられる)。
本開示の一例では、押出時および引戻時の両方で高負荷(第1負荷)が加えられている場合の正常点、ならびに押出時および引戻時の両方で低負荷(第2負荷)が加えられている場合の正常点のデータから、押出時および引戻時の一方のみで高負荷が加えられ、他方では低負荷が加えられている場合の正常点を推測する。そして、推測された正常点についても、疑似正常点を追加することで、押出時および引戻時の負荷が異なる場合の押出時間および引戻時間については正常点プロットのための事前の計測を行うこと無く、押出時および引戻時の負荷が異なる場合のエアシリンダ5の異常の有無を高精度で検知することができる。
図15は、本開示の一態様に係る異常検知装置6において、押出時と引戻時とで負荷が異なる場合を含む複数種の負荷について、水平動作を行うエアシリンダ5の異常の有無を検知する手法を説明する図である。図15の1610~1620は、いずれも、押出時間を横軸とし、引戻時間を縦軸とした二次元座標を示している。図15の例に示すように、本構成例において、異常検知装置6の異常検知部615は、二次元座標を用いてエアシリンダ5の異常の有無を検知する。
図15の1610に示すように、正常点設定部613は、まず、押出時および引戻時の両方で高負荷が加えられている場合において、エアシリンダ5が正常に動作する際に計測された押出時間および引戻時間に基づく高負荷正常点(第1正常点)105を、二次元座標にプロットする。また、押出時および引戻時の両方で低負荷が加えられている場合において、エアシリンダ5が正常に動作する際に計測された押出時間および引戻時間に基づく低負荷正常点(第2正常点)106を、二次元座標にプロットする。プロットされる高負荷正常点105および低負荷正常点106は複数あってもよく、図15の例では、それぞれ4点プロットされている。
図15の1610および1620に示すように、正常点設定部613は、次に、高負荷正常点105を通る、縦軸に対して平行な直線と、低負荷正常点106を通る、横軸に対して平行な直線との交点を、高→低正常点(第3正常点)107としてプロットする。これは、エアシリンダ5の押出動作時は高負荷であり、引戻動作時は低負荷である場合に相当する。図15の1610の例では、高→低正常点107は1点のみプロットされているが、4つの高負荷正常点および4つの低負荷正常点についてそれぞれ高→低正常点107をプロットできるため、図15の1620に示すように、合計16個の高→低正常点107をプロットできる。
図15の1620に示すように、正常点設定部613は、次に、低負荷正常点106を通る、縦軸に対して平行な直線と、高負荷正常点105を通る、横軸に対して平行な直線との交点を、低→高正常点(第4正常点)108として二次元座標にプロットする。これは、エアシリンダ5の押出動作時は低負荷であり、引戻動作時は高負荷である場合に相当する。高→低正常点107と同様に、4つの高負荷正常点105および4つの低負荷正常点106から、合計16個の低→高正常点108をプロットできる。
図15の1630に示すように、正常点設定部613は、このようにして得られた高負荷正常点105、低負荷正常点106、高→低正常点107および低→高正常点108のそれぞれについて、図9と同様に、疑似正常点を追加する。具体的には、二次元座標において、原点Oと高負荷正常点105、低負荷正常点106、高→低正常点107および低→高正常点108とをそれぞれ結ぶ直線上における高負荷正常点105、低負荷正常点106、高→低正常点107および低→高正常点108から所定距離の範囲内に、複数の高負荷疑似正常点(第1疑似正常点)、低負荷疑似正常点(第2疑似正常点)、高→低疑似正常点(第3疑似正常点)および低→高疑似正常点(第4疑似正常点)をプロットする。図15のでは、図示の都合上、各疑似正常点は両方向矢印の範囲内にあるとして示す。
図15の1640に模式的に示すように、異常検知部615は、動作時間取得部611が新たに取得した押出時間および引戻時間に応じた計測点128を、高負荷正常点105および高負荷疑似正常点を含む高負荷正常範囲(第1正常範囲)135、低負荷正常点106および低負荷疑似正常点を含む低負荷正常範囲(第2正常範囲)136、高→低正常点107および高→低疑似正常点を含む高→低正常範囲(第3正常範囲)137、および低→高正常点108および低→高疑似正常点を含む低→高正常範囲(第4正常範囲)138と比較して、エアシリンダ5の異常の有無を検知する。
このとき、異常検知部615は、例えば、各正常点と各疑似正常点のデータ密度の分布を算出し、計測点におけるデータ密度をしきい値と比較することによって、エアシリンダ5の異常の有無を検知してもよい。例えば、計測点128におけるデータ密度がしきい値よりも高い場合、計測点128は正常範囲に含まれるので、エアシリンダ5に異常は無いことを検知する。一方、計測点128におけるデータ密度がしきい値よりも低い場合、計測点121は正常範囲に含まれないので、エアシリンダ5に異常があることを検知する。図15の1260の例では、計測点128のプロット位置が、正常範囲から外れているので、異常検知部615は、エアシリンダ5に異常があることを検知する。
(本例による主要な作用効果)
上記の構成によれば、異常検知装置6は、押出動作と引戻動作で負荷が異なる場合のデータを推測できる。したがって、押出動作と引戻動作で負荷が異なる場合があっても、より簡便かつ適切に、エアシリンダ5の異常の有無を検知することができる。
〔全正常点および全疑似正常点を包含する正常範囲の設定〕
図16は、本開示の一態様に係る異常検知システム100のエアシリンダ5において、全正常点および全疑似正常点を包含する正常範囲を設定し、エアシリンダ5の異常の有無を検知する手法を説明する図である。図16の1710~1730は、いずれも、押出時間を横軸とし、引戻時間を縦軸とした二次元座標を示している。図16の例に示すように、本構成例において、異常検知装置6の異常検知部615は、二次元座標を用いてエアシリンダ5の異常の有無を検知する。
図16の1710に示すように、正常点設定部613は、まず、エアシリンダ5が正常に動作する際に、高負荷(第1負荷)について計測された押出時間および引戻時間に基づく高負荷正常点(第1正常点)201を、二次元座標にプロットする。また、正常点設定部613は、エアシリンダ5が正常に動作する際に、低負荷(第2負荷)について計測された押出時間および引戻時間に基づく低負荷正常点(第2正常点)202を、二次元座標にプロットする。
図16の1710に示すように、正常点設定部613は、さらに、エアシリンダ5が正常に動作する際に、エアシリンダ5の押出動作時は高負荷であり、引戻動作時は低負荷である場合についての押出時間および引戻時間に基づく高→低正常点(第3正常点)203を、二次元座標にプロットする。この押出時間および引戻時間は、実際に計測されたものであればよく、または図13に示す方法により推測されたものであってもよい。図16の例では、高負荷正常点201、低負荷正常点202、および高→低正常点203が1点ずつ、合計3点プロットされているが、正常点の数はこれに限定されず、2種以上の正常点が設定されればよい。また、正常点のうちの1つは、図13に示したような、エアシリンダ5の押出動作時は低負荷であり、引戻動作時は高負荷である低→高正常点であってもよい。
正常点設定部613は、次に、図16の1720に示すように、高負荷正常点201、低負荷正常点202、および高→低正常点203のそれぞれについて、図9と同様に、疑似正常点を追加する。具体的には、二次元座標において、原点Oと高負荷正常点201、低負荷正常点202、および高→低正常点203とをそれぞれ結ぶ直線上における高負荷正常点201、低負荷正常点202、および高→低正常点203から所定距離の範囲内に、高負荷疑似正常点(第1疑似正常点)、低負荷疑似正常点(第2疑似正常点)、および高→低疑似正常点(第3疑似正常点)をプロットする。図16の1310に示す例では、二次元座標では、図示の都合上、各疑似正常点は両方向矢印の範囲内にあるとして示す。
正常点設定部613は、二次元座標の原点Oと、高負荷正常点201、低負荷正常点202、および高→低正常点203、ならびに高負荷疑似正常点、低高負荷疑似正常点、および高→低疑似正常点との間のそれぞれの距離のうちの最小距離rminおよび最大距離rmaxを算出する。図16の例では最小距離rminは、原点Oと、低負荷正常点202の最も原点側の疑似正常点202aとの間の距離に相当し、最大距離rmaxは、原点Oと、高→低正常点203の最も原点から遠い疑似正常点203bとの間の距離に相当する。
また、正常点設定部613は、二次元座標の原点Oと、高負荷正常点201、低負荷正常点202、および高→低正常点203、ならびに高負荷疑似正常点、低負荷疑似正常点、および高→低疑似正常点とをそれぞれ結ぶ線分と、横軸とがなす角の角度のうちの最小角度θminおよび最大角度θmaxを算出する。図16の例では、最小角度θminは、原点Oと高負荷正常点201とを結ぶ線分と、横軸とがなす角の角度に相当し、最大角度θmaxは、原点Oと低負荷正常点202とを結ぶ線分と、横軸とがなす角の角度に相当する。
正常点設定部613は、最小距離rmin、最大距離rmax、最小角度θmin、および最大角度θmaxに基づいて二次元座標上に規定される範囲を、正常範囲として設定する。正常点設定部613は、例えば、二次元座標を極座標とした場合に、第1点(rmin,θmin)、第2点(rmin,θmax)、第3点(rmax,θmin)、および第4点(rmax,θmax)をそれぞれ頂点とする図形の内部を、正常範囲として設定する。図16の1730に示す例では、正常点設定部613は、二次元座標を極座標とした場合の第1点(rmax,θmin)と第2点(rmax,θmax)とを結ぶ第1劣弧、第3点(rmin,θmin)と第4点(rmin,θmax)とを結ぶ第2劣弧、第1点(rmax,θmin)と第3点(rmin,θmin)とを通る第1線分、第2点(rmax,θmax)と第3点(rmin,θmax)とを結ぶ第2線分を有する扇形図形の内部を、正常範囲231として設定する。正常範囲231の形状は、扇形に限らず、他の形状であってもよい。正常点設定部613は、例えば、二次元座標を極座標とした場合に、第1点(rmin,θmin)、第2点(rmin,θmax)、第3点(rmax,θmin)、および第4点(rmax,θmax)をそれぞれ頂点とする四角形の内部を、正常範囲231として設定してもよい。
異常検知部615は、二次元座標において、動作時間取得部611が新たに取得した押出時間および引戻時間に応じた計測点221を、正常範囲231と比較して、エアシリンダ5の異常の有無を検知する。このとき、異常検知部615は、二次元座標の正常範囲231内に疑似正常点の一様分布を生成して、データ密度の分布を算出し、計測点221におけるデータ密度をしきい値と比較することによって、エアシリンダ5の異常の有無を検知してもよい。例えば、計測点221におけるデータ密度がしきい値よりも高い場合、計測点221は正常範囲に含まれるので、エアシリンダ5に異常は無いことを検知する。一方、計測点221におけるデータ密度がしきい値よりも低い場合、計測点221は正常範囲に含まれないので、エアシリンダ5に異常があることを検知する。図16の1320の例では、計測点221のプロット位置が、正常範囲から外れているので、異常検知部615は、エアシリンダ5に異常があることを検知する。
(本例による主要な作用効果)
上記の構成によれば、異常検知装置6は、負荷の種類が複数あっても、全正常点201~203および全疑似正常点を包含する正常範囲231を簡便に設定することができる。したがって、さらに簡便かつ適切にエアシリンダの異常の有無を検知することができる。特に、正常範囲234は、正常に動作するエアシリンダ5に加えられる負荷の範囲が、高負荷から低負荷の間の任意の負荷である場合を全て含んでいるので、試験時にエアリシンダに加える負荷が様々にばらつく場合であっても、計測点を正常範囲234と比較することによって、エアシリンダ5の異常の有無を検知することができる。
〔全正常点および全疑似正常点を包含する正常範囲の設定の変形例〕
図17は、本開示の一態様に係る異常検知システム100のエアシリンダ5において、全正常点および全疑似正常点を包含する別の正常範囲を設定し、エアシリンダ5の異常の有無を検知する手法を説明する図である。図17の1810~1834は、いずれも、押出時間を横軸とし、引戻時間を縦軸とした二次元座標を示している。図17の例に示すように、本構成例において、異常検知装置6の異常検知部615は、二次元座標を用いてエアシリンダ5の異常の有無を検知する。
図17の1810に示すように、正常点設定部613は、まず、エアシリンダ5が正常に動作する際に、高負荷(第1負荷)について計測された押出時間および引戻時間に基づく高負荷正常点(第1正常点)204を、二次元座標にプロットする。また、正常点設定部613は、エアシリンダ5が正常に動作する際に、低負荷(第2負荷)について計測された押出時間および引戻時間に基づく低負荷正常点(第2正常点)205を、二次元座標にプロットする。
図17の1810に示すように、正常点設定部613は、さらに、エアシリンダ5が正常に動作する際に、エアシリンダ5の押出動作時は高負荷であり、引戻動作時は低負荷である場合についての押出時間および引戻時間に基づく高→低正常点(第3正常点)206を、二次元座標にプロットする。この押出時間および引戻時間は、実際に計測されたものであってもよく、または図13に示す方法により推測されたものであってもよい。図17の例では、高負荷正常点204、低負荷正常点205、および高→低正常点206が3点ずつ、合計9点プロットされているが、正常点の数はこれに限定されず、2種以上の正常点が設定されればよい。また、正常点のうちの1つは、図13に示したような、エアシリンダ5の押出動作時は低負荷であり、引戻動作時は高負荷である低→高正常点であってもよい。
正常点設定部613は、次に、図17の1820に示すように、高負荷正常点204、低負荷正常点205、および高→低正常点206のそれぞれについて、図16と同様に、疑似正常点を追加する。具体的には、二次元座標において、原点Oと高負荷正常点204、低負荷正常点205、および高→低正常点206とをそれぞれ結ぶ直線上における高負荷正常点204、低負荷正常点205、および高→低正常点206から所定距離の範囲内に、高負荷疑似正常点(第1疑似正常点)、低負荷疑似正常点(第2疑似正常点)、および高→低疑似正常点(第3疑似正常点)をプロットする。図17の1410に示す二次元座標では、図示の都合上、各疑似正常点は両方向矢印の範囲内にあるとして示す。
次に、正常点設定部613は、原点Oと高負荷正常点204、低負荷正常点205、および高→低正常点206、ならびに高負荷疑似正常点、低負荷疑似正常点、および高→低疑似正常点とをそれぞれ結ぶ線分と、横軸とがなす角の角度のうちの最小角度θminおよび最大角度θmaxを算出する。図17の例では、最小角度θminは、原点Oと高負荷正常点204および低負荷疑似正常点とを結ぶ線分と、横軸とがなす角の角度に相当し、最大角度θmaxは、原点Oと低負荷正常点205および低負荷疑似正常点とを結ぶ線分と、横軸とがなす角の角度に相当する。
次に、正常点設定部613は、最小角度θminとなる角をなす高負荷正常点204および高負荷疑似正常点、ならびに最大角度θmaxとなる角をなす低負荷正常点205および低負荷疑似正常点のうち、原点Oとの最小距離rminおよび最大距離rmaxを算出する。図17の1830に示すように、最小距離rminは、低負荷疑似正常点205aと原点Oとの間の距離に相当し、最大距離rmaxは、高負荷疑似正常点204bと原点Oとの間の距離に相当する。
正常点設定部613は、図17の1840に示す二次元座標において、高→低疑似正常点のうち、原点Oとの距離がrmaxを超える高→低疑似正常点があれば、当該高→低疑似正常点、二次元座標を極座標とした場合の第1点(rmax,θmin)および第2点(rmax,θmax)を互いに結ぶ複数の超過側線分207を、二次元座標にプロットする。図17の例では、図面の視認性の都合上、超過側線分に付される符号を一部にのみ付している。
図17の1840に示すように、正常点設定部613は、二次元座標を極座標とした場合の第1点(rmax,θmin)と第2点(rmax,θmax)とを結ぶ第1劣弧、第3点(rmin,θmin)と第4点(rmin,θmax)とを結ぶ第2劣弧、第1点(rmax,θmin)と第3点(rmin,θmin)とを通る第1線分、第2点(rmax,θmax)と第3点(rmin,θmax)とを結ぶ第2線分、および超過側線分207がなす外形図形によって規定される範囲を、正常範囲234として設定する。
異常検知部615は、二次元座標において、動作時間取得部611が新たに取得した押出時間および引戻時間に応じた計測点224を、正常範囲234と比較して、エアシリンダ5の異常の有無を検知する。このとき、正常範囲234内に疑似正常点の一様分布を生成して、データ密度の分布を算出し、計測点224におけるデータ密度をしきい値と比較することによって、エアシリンダ5の異常の有無を検知してもよい。例えば、計測点224におけるデータ密度がしきい値よりも高い場合、計測点224は正常範囲234に含まれるので、エアシリンダ5に異常は無いことを検知する。一方、計測点224におけるデータ密度がしきい値よりも低い場合、計測点224は正常範囲234に含まれないので、エアシリンダ5に異常があることを検知する。図17の1430の例では、計測点224のプロット位置が、正常範囲234から外れているので、異常検知部615は、エアシリンダ5に異常があることを検知する。
(本例による主要な作用効果)
上記の構成によれば、異常検知装置6は、負荷の種類が複数あっても、全正常点204~206および全疑似正常点を包含する正常範囲234を簡便に設定することができる。したがって、さらに簡便かつ適切にエアシリンダの異常の有無を検知することができる。特に、図16の例に比べると、正常範囲をより狭めることができるので、本来であれば異常と判定すべき箇所が正常範囲に含まれる可能性をより小さくすることができる。結果、エアシリンダ5の異常の有無をより正確に検知できるようになる。
(変形例)
正常点設定部613は、二次元座標において、疑似正常点のうち、原点Oとの距離がrmin未満である疑似正常点があれば、当該疑似正常点、第3点(rmin,θmin)、および第4点(rmin,θmax)をそれぞれ結ぶ複数の原点側線分をプロットしてもよい。図17の例では、疑似正常点のうち、原点Oとの距離がrmin未満である疑似正常点は存在しないため、原点側線分はプロットしていない。正常点設定部613は、原点側線分をプロットした場合、第1劣弧、第2劣弧、第1線分、第2線分、および原点側線分がなす外形図形によって規定される範囲を、正常範囲234として設定すればよい。なお、正常点設定部613は、超過側線分207および原点側線分の両方をプロットすることもできる。この場合、正常点設定部613は、第1劣弧、第2劣弧、第1線分、第2線分、超過側線分207がなす第1図形、および原点側線分がなす第2外形図形によって規定される範囲を、正常範囲234として設定すればよい。
〔同一ラベルに対応する正常点を包含する正常範囲の設定〕
図18は、本開示の一態様に係る異常検知装置6において、ラベルの種類ごとに、正常点から正常範囲を設定し、エアシリンダ5の異常の有無を検知する手法を説明する図である。
図18の例では、動作時間取得部611は、エアシリンダ5の動かし方の違いを示す情報がラベルとして付与された押出時間および引戻時間を、取得する。具体的には、動作時間取得部611は、押出時および引戻時の両方で同一の負荷がエアシリンダ5に加えられる場合、第1ラベルが付与される押出時間および引戻時間を取得する。一方、押出時と引戻時とで異なる負荷がエアシリンダ5に加えられる場合、第1ラベルとは異なる第2ラベルが付与される押出時間および引戻時間を取得する。
動作時間取得部611は、例えば、押出時および引戻時の両方で高負荷がエアシリンダ5に加えられる場合、第1ラベルが付加される押出時間および引戻時間を取得する。同様に、動作時間取得部611は、押出時および引戻時の両方で低負荷がエアシリンダ5に加えられる場合にも、第1ラベルが付加される押出時間および引戻時間を取得する。このように、第1ラベルは、押出時および引戻時の負荷が同一であることを示す情報である。負荷の大きさ自体が異なっていたとしても、押出時および引戻時の負荷が同一でありさえすえれば、第1ラベルを押出時間および引戻時間に付与することになる。
動作時間取得部611は、例えば、押出時に高負荷がエアシリンダ5に加えられ、引戻時に低負荷がエアシリンダ5加えられる場合、第2ラベルが付与される押出時間および引戻時間を取得する。このように、ラベルの違いは、エアシリンダ5に対する負荷の印可パターンの違いに対応する。
本例では、正常点設定部613は、同一のラベルが付与される押出時間および引戻時間に対応する正常点および疑似正常点に基づいて、ラベルごとにそれぞれ正常範囲を設定する。すなわち、第1ラベルに対応する正常点および疑似正常点に基づいて、押出時および引戻時に負荷が同一である場合の正常範囲を設定し、さらに、第2ラベルに対応する正常点および疑似正常点に基づいて、押出時および引戻時に負荷が異なる場合の正常範囲を設定する。
図18の1910に示すように、正常点設定部613は、まず、エアシリンダ5が正常に動作する際に、高負荷(第1負荷)について計測された第1ラベルが付与される押出時間および引戻時間に基づく高負荷正常点(第1正常点)201を、二次元座標にプロットする。また、正常点設定部613は、エアシリンダ5が正常に動作する際に、低負荷(第2負荷)について計測された第1ラベルが付与される押出時間および引戻時間に基づく低負荷正常点(第2正常点)202を、二次元座標にプロットする。これらの正常点は、いずれも、第1ラベルに対応している。
図18の1910に示すように、正常点設定部613は、さらに、エアシリンダ5が正常に動作する際に、エアシリンダ5の押出動作時は高負荷であり、引戻動作時は低負荷である場合についての第2ラベルが付与された押出時間および引戻時間に基づく高→低正常点(第3正常点)203を、二次元座標にプロットする。このように、高負荷正常点201および低負荷正常点202は、いずれも同一の第1ラベルに対応しており、高→低正常点(第3正常点)203は、第1ラベルとは異なる第2ラベルに対応している。付与されたラベルが異なることを図18において示すために、図18では、高負荷正常点201および低負荷正常点202を黒塗りの丸印で図示し、高→低正常点203を白抜きの丸印として図示している。
正常点設定部613は、次に、図18の1920に示すように、高負荷正常点201、低負荷正常点202、および高→低正常点203のそれぞれについて、図16と同様に、疑似正常点を追加する。追加の手法については上述した例と同一であるため、詳細な説明は繰り返さない。図18の1920に示す例では、図示の都合上、各疑似正常点は両方向矢印の範囲内にあるとして示す。
正常点設定部613は、ラベルごとに、対応する正常点および疑似正常点に基づいて、最小距離などの4つのパラメータを算出する。正常点設定部613は、第1ラベルを対象として、二次元座標の原点Oと、高負荷正常点201、低負荷正常点202、高負荷疑似正常点、および低負荷疑似正常点との間のそれぞれの距離のうちの最小距離rmin1および最大距離rmax1を算出する。正常点設定部613は、さらに、二次元座標の原点Oと、高負荷正常点201、低負荷正常点202、高負荷疑似正常点、および低負荷疑似正常点とをそれぞれ結ぶ線分と、横軸とがなす角の角度のうちの最小角度θmin1および最大角度θmax1を算出する。
正常点設定部613は、次に、第2ラベルを対象として、二次元座標の原点Oと、高→低正常点203および第3疑似正常点との間のそれぞれの距離のうちの最小距離rmin2および最大距離rmax2を算出する。正常点設定部613は、さらに、二次元座標の原点Oと、高→低正常点203および第3疑似正常点とをそれぞれ結ぶ線分と、横軸とがなす角の角度のうちの最小角度θmin2および最大角度θmax2を算出する。
図18の1930に示すように、正常点設定部613は、最小距離rmin1、最大距離rmax1、最小角度θmin1、および最大角度θmax1に基づいて二次元座標上に規定される範囲を、第1ラベルに対応する正常範囲331(第1範囲)として設定する。正常点設定部613は、さらに、最小距離rmin2、最大距離rmax2、最小角度θmin2、および最大角度θmax2に基づいて二次元座標上に規定される範囲を、第2ラベルに対応する正常範囲332(第2範囲)として設定する。図18の例では、正常点設定部613は、いずれも、扇形図形の内部を正常範囲331および332として設定する。正常点設定部613は、さらに、第1ラベルに対応する正常範囲331および第2ラベルに対応する正常範囲332を含む範囲を、異常検知に用いる正常範囲として設定する。
異常検知部615は、二次元座標において、動作時間取得部611が新たに取得した押出時間および引戻時間に応じた計測点221を、正常範囲331および332と比較して、エアシリンダ5の異常の有無を検知する。このとき、異常検知部615は、二次元座標の正常範囲331および332内に疑似正常点の一様分布を生成して、データ密度の分布を算出し、計測点221におけるデータ密度をしきい値と比較することによって、エアシリンダ5の異常の有無を検知してもよい。例えば、計測点221におけるデータ密度がしきい値よりも高い場合、計測点221は正常範囲に含まれるので、エアシリンダ5に異常は無いことを検知する。一方、計測点221におけるデータ密度がしきい値よりも低い場合、計測点221は正常範囲に含まれないので、エアシリンダ5に異常があることを検知する。図18の1930の例では、計測点221のプロット位置が、正常範囲331内にあるので、異常検知部615は、エアシリンダ5に異常が無いことを検知する。
(本例による主要な作用効果)
上記の構成によれば、異常検知装置6は、負荷の種類が複数あっても、全正常点および全疑似正常点を包含する正常範囲を簡便に設定することができる。したがって、さらに簡便かつ適切にエアシリンダの異常の有無を検知することができる。特に、図17の例に比べると、正常範囲をより狭めることができるので、本来であれば異常と判定すべき箇所が正常範囲に含まれる可能性をなお一層小さくすることができる。結果、エアシリンダ5の異常の有無をなお一層正確に検知できるようになる。
§2 動作例
〔初期設定処理および監視処理の流れ〕
次に、本開示の一態様に係る異常検知システム100を用いた異常検知方法について説明する。図19は、本開示の一態様に係る異常検知装置6が実行する初期設定処理の一例を示すフローチャートであり、図20は、本開示の一態様に係る異常検知装置6が実行する監視処理の一例を示すフローチャートである。
まず、図19を用いて、異常検知装置6における初期設定処理の流れについて説明する。はじめに、異常検知装置6の制御部61はマニホールド4を制御することによって、正常なエアシリンダ5のピストン531を動作させる。そして、動作時間取得部611はセンサ51からの通知に基づいて、押出時間および引戻時間を含む動作時間のデータを取得する(S1:動作時間収集ステップ)。
S1の後、動作時間取得部611は正常点設定部613に正常点のデータを設定するよう指示し、正常点設定部613は指示にしたがって動作時間のデータから正常な押出時間および引戻時間を設定し、これらを正常点のデータとして、押出時間を横軸とし、引戻時間を縦軸とした二次元座標に設定する(S2:正常点設定ステップ)。
S2の後、正常点設定部613は、二次元座標の原点と正常点とを結ぶ直線上における正常点から所定距離内の範囲に、疑似正常点をプロットし、これらを疑似正常点のデータとして設定する(S3:疑似正常点設定ステップ)。
S3の後、正常点設定部613は、正常点および疑似正常点のデータから、正常範囲を設定する(S4:正常範囲設定ステップ)。正常範囲の設定は、例えば、図9、図11、図13または図15に示す方法にしたがって行ってもよい。
または、正常点設定部613は、S3の後、正常範囲を設定する代わりに、正常範囲を設定してもよい(S5:正常範囲設定ステップ)。正常範囲の設定は、例えば、図16~図18のいずれか示す方法にしたがって行ってもよい。
その後、異常検知装置6は一連の処理を終了する。
次に、図20を用いて、異常検知装置6がエアシリンダ5の動作を監視する監視処理の流れについて説明する。エアシリンダ5において押出工程および引戻工程が行われると、センサ51はピストン531の移動を通知し、異常検知装置6の動作時間取得部611では該通知に基づいて、押出時間および引戻時間を含む動作時間のデータを取得する(S11:動作時間取得ステップ)。
正常点設定部613がS4において正常範囲を設定している場合は、S13に進み、異常検知部615が、計測点と正常範囲とを比較する。この比較は、二次元座標上で正常点および疑似正常点のデータ密度の分布を算出し、計測点におけるデータ密度をしきい値と比較することによってなされてもよい(S13:正常範囲比較ステップ)。
一方、正常点設定部613がS4において正常範囲を設定している場合は、S14に進み、異常検知部615が、計測点と正常範囲とを比較する。この比較は、二次元座標の正常範囲内に疑似正常点の一様分布を生成した後、疑似正常点のデータ密度の分布を算出し、計測点におけるデータ密度をしきい値と比較することによりなされてもよい(S14:正常範囲比較ステップ)。
異常検知部615は、S13またはS14の後、S15に進み、例えば計測点におけるデータ密度がしきい値を超えているか否かを判定する(S15:異常検知ステップ)。S15において、計測点におけるデータ密度がしきい値を超えていないと判定した場合(S15でNO)、処理はS11へ進み、S11~S15の処理を再度実行する。一方、計測点におけるデータ密度がしきい値を超えていると判定した場合(S15でYES)、異常通知部617は異常検知部615からの通知に基づいて、エアシリンダ5の動作時間が変動した旨を表示装置7を用いてユーザに通知する(S16:異常通知ステップ)。
§3 変形例
〔ソフトウェアによる実現例〕
異常検知装置6の制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、異常検知装置6は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本開示の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものでは無く、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。