以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は反射鏡に関する。図1は、第1の実施形態に係る反射鏡を示す断面図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る反射鏡100では、AlN層102aとGaN層102bとが交互に積層された積層構造を有する低屈折率層102と、InGaN層を有する高屈折率層103とが交互に積層されている。低屈折率層102の平均屈折率(第1の平均屈折率の一例)は、高屈折率層103の平均屈折率(第2の平均屈折率の一例)よりも小さい。低屈折率層102の平均屈折率とは、当該低屈折率層102に含まれる層毎の光学膜厚と屈折率との積の総和を当該低屈折率層102の総光学膜厚で除して得られる値である。同様に、高屈折率層103の平均屈折率とは、当該高屈折率層103に含まれる層毎の光学膜厚と屈折率との積の総和を当該高屈折率層103の総光学膜厚で除して得られる値である。高屈折率層103はInGaN層のみから構成されていてもよく、その場合の高屈折率層103の平均屈折率は当該InGaN層の屈折率そのものである。
反射鏡100は、例えばGaNを含む基板101上に設けられて使用される。例えば、基板101の材料はGaNの格子定数を有し、基板101としてGaN基板又はGaN層を異種基板上に成長したGaNテンプレートを用いることができる。異種基板としては、例えば、サファイア基板、Si基板、GaAs基板、SiC基板等を用いることができる。
反射鏡100によれば、適切な低屈折率層102及び高屈折率層103の組み合わせにより、極めて高い反射率、例えば99.9%以上の反射率を実現することができる。また、AlN層102aとGaN層102bの熱伝導率がAlGaNの熱伝導率よりも高いため、放熱性を向上することができる。
低屈折率層102及び高屈折率層103はアンドープの半導体層であってもよく、低屈折率層102及び高屈折率層103に不純物がドーピングされていてもよい。ここでいうアンドープとは不純物を意図的なドーピングをせず、結晶中の残留不純物濃度が1×1017cm-3以下であることをいう。
なお、低屈折率層102には、AlN層102aのAlNと基板101に含まれるGaNとの間の格子不整合による引張歪が生じる。その一方で、高屈折率層103には、高屈折率層103のInGaNと基板101に含まれるGaNとの間の格子不整合による圧縮歪が生じる。従って、低屈折率層102に生じる変形量と高屈折率層103に生じる変形量との差が大きい場合、これらの界面にクラックやピットが発生して反射率が低下することがある。このようなクラックやピットを抑制するために、AlN層102aに生じる歪とAlN層102aの総膜厚との積PAlNと、InGaN層に生じる歪とInGaN層の総膜厚との積PInGaNとの差が小さいことが好ましい。例えば、積PAlNが積PInGaNの0.8~1.2倍であることが好ましく、0.9~1.1倍であることがより好ましく、1.0倍であることが更に好ましい。なお、歪εの定義は次の式で表される。分母は、基板のa軸格子定数(aS)、ここではGaNのa軸格子定数であり、分子は変形量(Δa)、ここではInGaNやAlNのa軸格子定数(ae)からGaNのa軸格子定数(aS)を引いた値である。
ε=Δa/aS=(ae-aS)/aS
反射鏡100の反射波長をλとしたとき、低屈折率層102及び高屈折率層103の光学膜厚は、例えばλ/4である。低屈折率層102及び高屈折率層103の光学膜厚の和がλ/2であれば、低屈折率層102の光学膜厚と高屈折率層103の光学膜厚とが互いに相違していてもよい。例えば、高屈折率層103の光学膜厚がλ/4より大きく、低屈折率層102の光学膜厚がλ/4より小さくてもよい。低屈折率層102の光学膜厚が小さいほど、低屈折率層102中のAlN層102aの総膜厚が大きく、GaN層102bの総膜厚が小さく、低屈折率層102の屈折率が低く、低屈折率層102と高屈折率層103との間の実効的な屈折率差が大きい。このため、高屈折率層103の光学膜厚をλ/4より大きく、低屈折率層102の光学膜厚をλ/4より小さくすることで、積PAlNとの積PInGaNとの差を小さくしながら、実効的な屈折率差を大きくすることができる。
GaN基板上に反射鏡100を成長させる場合にAlN層102aの膜厚を20nm超とすると、GaNとの格子歪によってミスフィット転位が発生したり、歪の蓄積による表面荒れが生じたりして、反射率が低下することがある。従って、AlN層102aの膜厚は20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。各AlN層102aの膜厚が小さくても、低屈折率層102中に2以上のAlN層102aを含ませることで、低屈折率層102中のAlN層102aの総膜厚を大きくすることができる。その一方で、AlN層102aの膜厚が5nm未満であると、十分な平坦性が得られないことがある。従って、AlN層102aの膜厚は5nm以上であることが好ましい。
低屈折率層102中において、高屈折率層103と隣接する層はAlN層102aではなくGaN層102bであることが好ましい。これは、GaN層102bがAlNとInGaNとの間のバッファとして機能し、良好な結晶品質が得やすいからである。
低屈折率層102中の高屈折率層103に隣接する層がGaN層102bであり、低屈折率層102中において、2つのAlN層102aの間に位置するGaN層102bより、高屈折率層103とAlN層102aとの間に位置するGaN層102bが厚いことがより好ましい。これは、実効的な屈折率差をより大きくすることができるからである。また、GaN層102bの膜厚に関しては、歪が圧縮歪から引張歪に、又は引張歪から圧縮歪に変わる高屈折率層103と低屈折率層102の界面に位置するGaN層102bの膜厚を5nm以上とすることが好ましい。これは、結晶品質を大きく損なわずに反射鏡を形成することができるからである。このように、高屈折率層103に隣接するGaN層102bの膜厚を5nm以上とし、AlN層102aに挟まれたGaN層102bの膜厚を5nm以下として低屈折率層102の中央側にAlN層102aを寄せることで、実効的な屈折率を極めて大きくすることができる。
ただし、低屈折率層102のGaN層102bの膜厚は上記に限定されず、すべてのGaN層102bの膜厚を5nm以上としてもよい。この場合、十分な平坦性を得ることができる。
高屈折率層103に含まれるInGaN層のIn組成が0.20超であると、十分な熱伝導性が得られないことがある。従って、熱伝導性の観点から、InGaN層のIn組成は0.20未満であることが好ましく、0.10未満であることがより好ましい。一方、InGaN層のIn組成が0.02未満であると、InGaN層に生じる圧縮歪が小さくなり、AlN層102aの歪を十分に補償できないことがある。従って、歪の観点から、InGaN層のIn組成は0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましい。
高屈折率層103が、InGaN層とGaN層とが交互に積層された積層構造を有していてもよい。高屈折率層103がGaN層を含むことで、より優れた放熱性を得ることができる。この場合、高屈折率層103の全体で、熱伝導性及び歪の観点から、In組成が0.02以上0.20未満であることが好ましく、0.03以上0.10未満であることがより好ましい。
次に、第1の実施形態に係る反射鏡100の製造方法について説明する。この製造方法では、基板101上に低屈折率層102及び高屈折率層103を交互にエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長の方法としては、有機金属気相成長(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法、分子ビーム法(molecular beam epitaxy:MBE)法、プラズマ堆積(plasma chemical vapor deposition:PCVD)法、ハイドライド気相成長(hydride vapor phase epitaxy:HVPE)法などが挙げられる。
ここでは、MOCVD法について説明する。使用原料は、III族原料としてトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)などである。窒素原料はアンモニア(NH3)などである。導電性制御用不純物に関し、ドナー不純物として、Si源のシランやジシラン、Ge源のモノゲルマンなどを用いることができ、アクセプター不純物として、Mg源のシクロペンタジエニルマグネシウムなどを用いることができる。各層の成長は、NH3を供給したまま、III族原料や不純物原料のバルブを開/閉することで制御する。
先ず、基板を製造装置の反応炉内へセットする。窒素及びNH3を反応炉内に供給して、基板を800~1000℃程度に昇温する。その後、III族原料を供給して低屈折率層102及び高屈折率層103を交互に成長させる。
このようにして、反射鏡100を製造することができる。
なお、AlN層の歪と総膜厚との積PAlN、及びInGaN層の歪と総膜厚との積PInGaNは、例えばこれらの膜厚で調整することができる。
後述の第5の実施形態のように、基板上に導電性を備えたバッファ層を形成した後に、バッファ層上に低屈折率層102及び高屈折率層103を交互に成長させてもよい。バッファ層を形成することでより優れた結晶品質を得ることができる。この場合、バッファ層が形成された基板を、導電性を備えた一つの基板とみなすことができる。
低屈折率層102及び高屈折率層103の成長温度は一定に保つことが好ましい。低屈折率層102と高屈折率層103との成長温度を変化させた場合、温度の切り替え後に温度が安定するまでの間、次の成長を行うことができず、生産性が下がる。特に、InGaN層のIn組成は温度の影響を受けやすい。温度の安定のための時間は、例えば数分~数十分程度である。更に、成長を中断している期間中に、反応炉や基板を設置するトレイなどに用いられる石英部材からSiが脱離したり、導電性を持たせるために低屈折率層102や高屈折率層103に不純物をドーピングしている場合にドーピングした不純物が表面に濃縮したりすることがある。不純物の濃縮は、低屈折率層102と高屈折率層103との間の界面に欠陥を引き起こすことがあり、結晶性の低下及び反射率の低下につながりかねない。これらのことから、低屈折率層102及び高屈折率層103の成長温度は一定に保つことが好ましい。
また、低屈折率層102及び高屈折率層103の成長温度は700℃以上1000℃未満とすることが好ましい。成長温度が700℃未満であると、優れた結晶性が得られないことがある。一方、成長温度が1000℃以上であると、InGaN層にInが取り込まれにくく、InGaN層の形成が困難になることがある。従って、低屈折率層102及び高屈折率層103の成長温度は700℃以上1000℃未満とすることが好ましい。更に、GaN層を900℃前後の温度で成長させると、優れた平坦性を得やすい。従って、低屈折率層102及び高屈折率層103の成長温度は800℃以上950℃未満とすることがより好ましい。
InGaN層は窒素雰囲気中で成長させる。水素雰囲気中でInGaN層を行おうとしても、層中にInを全く取り込めない。AlN層及びGaN層は窒素雰囲気又は水素雰囲気のどちらの雰囲気中で成長させてもよいが、窒素雰囲気中で成長させることが好ましい。AlN層及びGaN層を水素雰囲気中で成長させた場合、InGaN層を成長させるための窒素雰囲気から水素雰囲気に切り替えた時に、InGaN層の表面からInが離脱するおそれがある。低屈折率層102を成長させる際に、最初のAlN層102a及びGaN層102bの一組を窒素雰囲気中で成長させ、残りを水素雰囲気中で成長させてもよい。
低屈折率層102及び高屈折率層103を成長させる際のV/III比は1000以上とすることが好ましい。GaN層及びInGaN層からの窒素の脱離を抑え、優れた結晶品質を得るためである。1000以上のV/III比でAlN層を成長させると、気相中での原料の不可逆反応によって基板表面へのAlの供給量が低下し、成長速度が若干低下するが、GaN層及びInGaN層を高速で成長できるため、反射鏡100全体では良好な生産性が得られる。
また、AlN層の結晶品質は、GaN層やInGaN層よりもV/III比の影響を受けにくい。更に、NH3の供給量の変更に追従するのに必要な時間は数秒程度であり、これはマスフローコントローラの応答時間と同程度である。そこで、AlN層の成長時のV/III比をGaN層、InGaN層の成長時よりも低くしてもよい。AlN層の成長時のV/III比を低くすることで、寄生反応を抑制して成長速度を向上させ、より生産性を高めることができる。ガス供給量の変更による成長中断は短時間であるため、反射鏡100の各層の界面への不純物の混入も抑制できる。AlN層を成長させる際のV/III比は10以上1000未満とすることが好ましい。
特に、低屈折率層102及び高屈折率層103に1×1018cm-3程度の不純物をドーピングする場合は界面の不純物濃度を1×1021cm-3以下に抑制することができ、アンドープの場合は1×1017cm-3以下に抑制することができる。ここでいうアンドープとは不純物を意図的なドーピングをせず、結晶中の残留不純物濃度が1×1017cm-3以下であることをいう。
このような方法によれば、ガス条件にもよるが低屈折率層102及び高屈折率層103の1ペア(1周期)は5分前後で成長することができ、約4時間~5時間で50~60周期の低屈折率層102及び高屈折率層103を含む反射鏡100を製造することができる。
なお、低屈折率層にAlGaN層を用いる場合、上記の放熱性の問題点に加えて、下記のように製造プロセスに関する問題点もある。
第一に、AlGaN層のAl原料として用いられるTMAは、窒素原料として用いられるNH3と気相中で成長に寄与しない不可逆の寄生反応を起こすことがある。AlGaN層は、窒素の脱離を抑えて良好な結晶品質を得るために、1000~10000程度の高V/III比で成長することが好ましいが、このような高V/III比で寄生反応が顕著になりやすく、固相でのAl組成の低下や成長速度の低下が生じることがある。また、AlGaN層は、GaN層にAlが取り込まれながら成長していくところ、寄生反応を抑制しやすい条件を採用すると、例えばV/III比を下げると、窒素脱離などが生じて欠陥が発生し、結晶品質が低下しやすい。
第二に、高屈折率層に用いられるInGaN層の特に好ましい成長温度が700~900℃程度であるのに対し、AlGaN層の好ましい成長温度は1000~1100℃程度である。InGaN層及びAlGaN層を異なる温度で成長させる場合、AlGaN層の成長温度によっては、InGaN層の形成後の昇温中にInGaN層に熱分解が生じ得る。また、昇降温後に反応炉の温度が安定するまでに数分~数十分の成長中断が必要となり、特にInGaN層のIn組成が反応炉の温度に敏感なため、降温後の温度の安定化に少なくとも10分間以上の時間を要する。成長中断は、生産性の低下と共に、AlGaN層とInGaN層との界面への不純物の混入を招くことがある。
成長温度を異ならせる場合に、昇温に要する時間及びその後の安定に要する時間の合計が5分間、降温に要する時間及びその後の安定に要する時間の合計が15分間と見積もると、上記の本実施形態の製造方法と比較して、約17~20時間も時間がかかると計算される。
InGaN層及びAlGaN層を一定温度で成長させる場合、InGaN層の熱分解を抑制する観点から、InGaN層に適した温度で成長させることとなる。この場合、1000~1100℃の成長温度と比べてNH3の分解効率が低下し、実効的なV/III比が下がるため、AlGaN層中に欠陥が発生しやすい。NH3供給量を増加してV/III比を高めると、上記のように、寄生反応が生じやすく、高反射率に好適なAl組成が高いAlGaN層の成長が困難になる。
反射鏡にAlInN層を含ませることも考えられるが、AlInN層にもAlGaN層と同様の製造プロセスに関する問題点がある。
ここで、第1の実施形態の具体例について説明する。
この具体例は、反射波長λが405nmの用途を前提とする。低屈折率層102は2層のAlN層102a及び3層のGaN層102bから構成され、AlN層102a及びGaN層102bの膜厚はいずれも6nmである。高屈折率層103は膜厚が50nmのIn0.05Ga0.95N層から構成される。そして、GaNの基板101上に低屈折率層102及び高屈折率層103が交互に合計で46周期積層されている。反射波長λが405nmの場合、GaNの屈折率は2.54、AlNの屈折率は2.12、In0.05Ga0.95Nの屈折率は2.61である。従って、低屈折率層102の光学膜厚は71.16nm、高屈折率層103の光学膜厚は130.5nmであり、低屈折率層102の光学膜厚はλ/4(=101.25nm)から約30%薄く、高屈折率層103の光学膜厚はλ/4から約30%厚い。この場合、AlN層102aの歪と膜厚との積PAlNは、InGaN層(高屈折率層103)の歪と膜厚との積PInGaNの1.06倍になり、AlN層102aの変形量とInGaN層(高屈折率層103)の変形量が互いにほぼ等しくなる。
この具体例の反射鏡の製造に際しては、先ず、GaNの基板101をMOCVD装置の反応炉にセットし加熱する。基板101の温度を850℃まで加熱し、低屈折率層102として厚さが6nmのAlN層102a及び厚さが6nmのGaN層102bの積層構造を成長させる。このとき、GaN層102bから先に成長させ、合計で2.5周期成長させる。AlN層102aのガス条件は、窒素雰囲気、TMA供給量を80μmol/min、NH3供給量を40mmol/minでV/III比を500とする。GaN層102bのガス条件は、窒素雰囲気、TMG供給量を100μmol/min、NH3供給量を200mmol/minでV/III比を2000とする。GaN層102bの成長とAlN層102aの成長との間で、NH3供給量を変更しているため、NH3のガス供給量の安定待ち時間として5秒の成長中断を設ける。
低屈折率層102の成長後には、基板101の温度を850℃に保持したまま、高屈折率層103として厚さが50nmのIn0.05Ga0.95N層を成長させる。InGaN層のガス条件は、窒素雰囲気、TMG供給量を100μmol/mi、TMI供給量を70μmol/min、NH3供給量を200mmol/minでV/III比を1176とする。TMG、NH3の供給量は、直前のGaNの成長時と同じであるため、成長中断は設けず継続して成長させる。
以降は、AlN層102a及びGaN層102bの積層構造の成長とInGaN層の成長とを交互に合計で46回繰り返す。
このようにして、反射率が99.9%、反射波長が405nmの反射鏡100が得られる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、面発光レーザに関する。図2は、第2の実施形態に係る面発光レーザを示す断面図である。
図2に示すように、第2の実施形態に係る面発光レーザ200は、導電性を備え、GaNを含む基板201と、基板101上の第1の反射鏡204と、第1の反射鏡204上の第1導電型の第1のスペーサ層(第1の半導体層)205と、を有する。面発光レーザ200は、更に、第1のスペーサ層205上の活性層206と、活性層206上の第2導電型の第2のスペーサ層(第2の半導体層)207と、第2のスペーサ層207上の第2の反射鏡208と、を有する。第1の反射鏡204は、第1の実施形態に係る反射鏡100を有する。活性層206及び第2のスペーサ層207の積層体はメサ構造211を有する。第1の反射鏡204及び第1のスペーサ層205に開口部209が形成され、開口部209内に導電部210が設けられている。すなわち、面発光レーザ200は、開口部209内に基板201と第1のスペーサ層205とを電気的に接続する導電部210を有する。面発光レーザ200は、更に、第2のスペーサ層207の表面上の上部電極212と、基板201の裏面上の下部電極213と、を有する。
基板201は、例えばGaN基板である。第1のスペーサ層205は第1導電型の半導体層、例えばGaN層、AlGaN層又はInGaN層である。第1導電型はn型又はp型のいずれでもよいが、抵抗率の観点から、n型であることが好ましい。例えば、n型半導体層は不純物としてSi、Geなどを含み、p型半導体層はMgなどを含む。
活性層206は、例えば、InGaN/GaNやInGaN/InGaNなどの多重量子井戸構造を有する。このような多重量子井戸構造は、第1のスペーサ層205や第2のスペーサ層207から注入されたキャリアを効率よく閉じ込め、優れた発光効率を得るのに好適である。
第2のスペーサ層207は第2導電型の半導体層、例えばGaN層、AlGaN層又はInGaN層である。第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。例えば、p型半導体層はMgなどを含み、n型半導体層は不純物としてSi、Geなどを含む。
活性層206及び第2のスペーサ層207の積層体はメサ構造211を有する。素子分離のためである。
導電部210の材料は、例えば、導電性の半導体又は金属である。導電性の半導体が用いられる場合、導電部210の導電型は第1のスペーサ層205の導電型と同一であり、その材料は、例えばGaN、AlGaN又はInGaNである。金属が用いられる場合、基板201や第1のスペーサ層205とオーミック接触が形成できる材料が用いられ、例えば、Ti/Al、Cr/Auなどが挙げられる。基板201と導電部210とが物理的に直接接している必要はなく、これらの間に不純物を1×1018cm-3以上ドーピングしたバッファ層(第3の半導体層)が設けられていてもよい。このようなバッファ層は、基板201と導電部210との間の接触抵抗の低減に寄与する。バッファ層が形成された基板201を、導電層を備えた一つの基板とみなすことができる。
第2の反射鏡208は、例えば、半導体若しくは誘電体又はこれらの組み合わせを用いた多層膜反射鏡である。第2の反射鏡208に反射鏡100が用いられてもよい。反射鏡100が用いられる場合、活性層206で発生した熱を第2の反射鏡208からも高効率で放出することができる。第2の反射鏡208が、AlInN層とGaN層とが交互に積層された積層構造を有していてもよい。第2の反射鏡208が、他の半導体材料を用いた多層膜反射鏡であってもよい。誘電体としては、SiN、SiO2、Ta2O5、Nb2O5などが挙げられる。
第2の反射鏡208の反射率は、次のようにして調整することができる。例えば、第2の反射鏡208を構成する低屈折率層及び高屈折率層の膜厚を適切に決定することで反射率を調整することができる。例えば、Ta2O5層及びSiO2層の膜厚を適切に決定することで反射率を調整することができる。また、屈折率差が異なる複数組の積層体を適切に組み合わせることで反射率を調整することができる。例えば、SiN層とSiO2層とが交互に積層された第1の積層体、及び/又はTa2O5層とSiO2層とが交互に積層された第2の積層体を適切な周期数で組み合わせることで反射率を調整することができる。低屈折率層及び高屈折率層とは平均屈折率が異なる層を加えることで反射率を調整してもよい。
第2の反射鏡208の反射率を第1の反射鏡204の反射率よりも低くすることで第2の反射鏡208側から光を取り出すことができる。
誘電体の放熱性は半導体の放熱性よりも低いが、第2の反射鏡208に誘電体を用いたとしても、第1の反射鏡204の放熱性が優れているため、活性層206で発した熱は基板201を通じて高効率で放出される。
上部電極212及び下部電極213には半導体とオーミック接触が形成できる材料が用いられる。p-GaNと接触させる場合はNi/Auが好適であり、n-GaNと接触させる場合はTi/Alが好適であるが、これらに限定されない。
面発光レーザ200は放熱性が優れた第1の反射鏡204が活性層206の基板201側にあるため、光を第2の反射鏡208側から取り出す構造にするとメリットが大きい。例えば、面発光レーザ200を2次元アレイ状に集積し、面内で個別にレーザを動作させる場合、面発光レーザ200の個別駆動のための回路を上部電極212側へ形成することになる。基板201の裏面側から光を取り出し、熱を第2の反射鏡208側へ放出するジャンクションダウン構造では、実装するパッケージにも駆動回路用の電極パターンの形成が必要になりコストアップにつながる。一方、光を第2の反射鏡208側から取り出し、熱を基板201側から放出するジャンクションアップ構造では、パッケージ側に回路が不要で、上部電極212上に形成した個別動作のための回路上にワイヤーを形成するだけで良くコストを低くできる。
電気抵抗が高いAlN層102aが第1の反射鏡204に含まれているが、本実施形態では、導電部210を介して基板201と第1のスペーサ層205とが電気的に接続されているため、基板201側から第1のスペーサ層205を通じて活性層206にキャリアを注入することができる。なお、AlNは、Siなどの不純物をドーピングしても、抵抗を十分に下げることは難しい。
第1のスペーサ層205の膜厚が1μm未満では、第1のスペーサ層205の抵抗が高く、導電部210から活性層206へのキャリア注入が妨げられることがある。従って、第1のスペーサ層205の膜厚は1μm以上であることが好ましい。その一方で、第1のスペーサ層205の膜厚が2μm超であると、第1のスペーサ層205を含む共振器が過剰に長くなって光の回折損が大きくなることがある。従って、第1のスペーサ層205の膜厚は2μm以下であることが好ましい。
なお、図2では、開口部209の全体が導電部210により埋め込まれているが、第1のスペーサ層205と基板201とが十分に電気的に接続されていれば、開口部209の全体が導電部210により埋め込まれている必要はない。
次に、第2の実施形態に係る面発光レーザ200の製造方法について説明する。図3A~図3Cは、第2の実施形態に係る面発光レーザ200の製造方法を工程順に示す断面図である。
先ず、図3Aに示すように、MOCVD法により、基板201上に第1の反射鏡204を成長させる。第1の反射鏡204としては、第1の実施形態に係る反射鏡100を形成する。次いで、MOCVD法により、第1の反射鏡204上に、第1のスペーサ層205、活性層206及び第2のスペーサ層207を順次成長させる。これらの化合物半導体層をMBE法、PCVD法又はHVPE法などで成長させてもよい。
次いで、図3Bに示すように、リソグラフィー及びドライエッチングを用いて、第2のスペーサ層207及び活性層206をエッチングすることにより、メサ構造211を形成する。第1のスペーサ層205の表面で活性層206のエッチングを厳密に停止することは困難であるため、第1のスペーサ層205の表面を若干エッチングして凹部221を形成してもよい。リソグラフィーは、例えば、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー、ナノインプリントなどであり、ドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)などである。
次いで、図3Cに示すように、第1のスペーサ層205及び第1の反射鏡204に開口部209を形成する。開口部209は、メサ構造211の形成と同様の方法で第1のスペーサ層205及び第1の反射鏡204をエッチングすることで形成することができる。次いで、開口部209内に導電部210を形成する。導電部210に金属材料を用いる場合、例えば、少なくともメサ構造211を覆い、導電部210を形成する部分を開口するレジストパターンを形成し、その後、蒸着法、スパッタ法、メッキ法などを用いて金属膜を形成し、レジストパターンを除去してリフトオフする。導電部210に半導体材料を用いる場合、例えば、少なくともメサ構造211を覆い、導電部210を形成する部分を開口するように、半導体の成長を阻害するマスクを形成し、結晶成長法により、マスクを形成していない部分に半導体膜を成長させる。この結果、開口部209の第1のスペーサ層205と第1の反射鏡204の側壁部分から結晶が成長し、最終的には、基板201と第1のスペーサ層205との間に窒化物半導体からなる導電部210が形成される。マスクの材料としては、例えば、SiO2、SiNなどを用いることができる。
導電部210の形成後には、第2のスペーサ層207の表面上に上部電極212を形成し、基板201の裏面上に下部電極213を形成する。次いで、第2のスペーサ層207上に第2の反射鏡208を形成する。
このようにして第2の実施形態に係る面発光レーザ200を製造することができる。
この製造方法では、放熱性が優れた第1の反射鏡204を優れた生産性で形成することができる。従って、優れた生産性で放熱性が優れた面発光レーザ200を製造することができる。
なお、第2の反射鏡208に半導体材料を用いる場合、メサ構造211の形成前に、第2の反射鏡208の層を第2のスペーサ層207に引き続いて成長させてもよい。この場合、化合物半導体層を連続して形成することができるため、生産性を向上することができる。また、開口部209、導電部210、上部電極212及び下部電極213などの形成順序は、適宜入れ替えてもよい。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、2次元アレイ光源に関する。2次元光源アレイは面発光レーザの一例である。図4は、第3の実施形態に係る2次元アレイ光源を示す断面図である。
第3の実施形態に係る2次元アレイ光源300は、面発光レーザ200と同様の面発光レーザを複数面内に配置した構造を有する。ただし、第2の実施形態では、1個の面発光レーザ200に1個の上部電極212が設けられているのに対し、第3の実施形態では、複数の面発光レーザに共通の上部共通電極312が設けられている。つまり、1個の上部共通電極312が複数の第2のスペーサ層207に電気的に接続されている。また、上部共通電極312と、第1のスペーサ層205及び導電部210とを電気的に絶縁する絶縁層320が設けられている。絶縁層320は、第1のスペーサ層205及び導電部210を覆うと共に、メサ構造211の側壁も覆っている。絶縁層320の材料としては、例えば、SiO2、SiNなどの無機材料や、ポリイミドなどの有機材料を用いることができる。
第3の実施形態に係る2次元アレイ光源300では、上部共通電極312と下部電極213との間に電圧を印加することで、各面発光レーザにキャリアが注入され、各面発光レーザが発光する。
ここで、2次元アレイ光源を構成する面発光レーザのレイアウトの例について説明する。図5A~図5Dは、2次元アレイ光源のレイアウトの例を示す図である。ここでは、メサ構造211及び開口部209のレイアウトについて説明する。
図5Aに示す例では、メサ構造211が正三角形の格子状に配置され、メサ構造211毎に独立して開口部209が設けられている。すなわち、メサ構造211がそれぞれ一つの開口部209により囲まれている。
図5Bに示す例では、メサ構造211が正三角形の格子状に配置され、複数のメサ構造211の周囲に単一の開口部209が設けられている。すなわち、開口部209が複数の面発光レーザに共有されている。
図5Cに示す例では、一つのメサ構造211の周囲に複数、ここでは六つの開口部209が設けられ、かつ、開口部209が隣り合うメサ構造211間で共有されている。すなわち、メサ構造211が正三角形の格子状に配置され、格子点を形成する隣接するメサ構造211の重心部分に一つの開口部209が設けられている。図5Cに示す例は、図5A、図5Bに示す例よりも、面発光レーザの密度を高められる構造である。
図5Dに示す例は、図5Cに示す例において、メサ構造211同士を隣接させた例であり、面発光レーザをより高密度に配置することができる。メサ構造211に囲まれた領域の全てを開口部209とすることができる。
なお、図5A~図5Dに示す例ではメサ構造211の平面形状を円形とし、図5A~図5Cに示す例では開口部209の平面形状を円形としているが、これらが四角形、三角形などの多角形であってもよく、円形又は多角形以外の形状であってもよい。また、メサ構造211の配置について正三角形の格子状の例を示したが、メサ構造211が四角形の格子状など別の形態で配置されていてもよい。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は反射鏡に関する。図6は、第4の実施形態に係る反射鏡を示す断面図である。
図6に示すように、第4の実施形態に係る反射鏡400では、AlN層402aとGaN層402bとが交互に積層された積層構造を有する低屈折率層402と、In0.10Ga0.90N層403aとGaN層403bとが交互に積層された積層構造を有する高屈折率層103とが交互に積層されている。低屈折率層402の平均屈折率(第1の平均屈折率の一例)は、高屈折率層403の平均屈折率(第2の平均屈折率の一例)よりも小さい。低屈折率層402の平均屈折率とは、当該低屈折率層402に含まれる層毎の光学膜厚と屈折率との積の総和を当該低屈折率層402の総光学膜厚で除して得られる値である。同様に、高屈折率層403の平均屈折率とは、当該高屈折率層403に含まれる層毎の光学膜厚と屈折率との積の総和を当該高屈折率層403の総光学膜厚で除して得られる値である。
反射鏡400は、例えば基板401上に形成されたGaNを含むバッファ層405上に設けられて使用される。例えば、バッファ層405の材料はGaNの格子定数を有する。また、基板401の材料もGaNの格子定数を有し、基板401としては、GaN基板又はGaN層を異種基板上に成長したGaNテンプレートを用いることができる。異種基板としては、例えば、サファイア基板、Si基板、GaAs基板、SiC基板等を用いることができる。
反射鏡400によれば、適切な低屈折率層402及び高屈折率層403の組み合わせにより、極めて高い反射率、例えば99.9%以上の反射率を実現することができる。また、AlN層102aとGaN層102bの熱伝導率がAlGaNの熱伝導率よりも高いため、放熱性を向上することができる。更に、高屈折率層403がGaN層403bを含むため、より優れた放熱性を得ることができる。
ここで、第4の実施形態の具体例について説明する。
この具体例は、反射波長λが450nmの用途を前提とする。低屈折率層402は2層のAlN層402a及び3層のGaN層402bから構成され、AlN層402aの膜厚は5nm、GaN層402bの膜厚は14nmである。高屈折率層403は2層のIn0.10Ga0.90N層403a及び2層のGaN層403bから構成され、In0.10Ga0.90N層403a及びGaN層403bの膜厚はいずれも10nmである。そして、GaNの基板401上に厚さが2μmのGaNのバッファ層405を介して低屈折率層402及び高屈折率層403が交互に合計で73周期積層されている。反射波長λが450nmの場合、GaNの屈折率は2.46、AlNの屈折率は2.20、In0.10Ga0.90Nの屈折率は2.60である。従って、低屈折率層402の光学膜厚は125.32nm、高屈折率層403の光学膜厚は101.2nmであり、低屈折率層402の光学膜厚はλ/4(=112.5nm)から約10%薄く、高屈折率層403の光学膜厚はλ/4から約10%厚い。この場合、AlN層402aの歪と膜厚との積PAlNは、In0.10Ga0.90N層403aの歪と膜厚との積PInGaNの1.11倍になり、AlN層402aの変形量とIn0.10Ga0.90N層403aの変形量がほぼ等しくなる。
この具体例の反射鏡の製造に際しては、先ず、基板401としてGaN基板をMOCVD装置の反応炉にセットし加熱する。基板401の温度を1100℃まで加熱し、結晶品質を向上するためのバッファ層405として膜厚が2μmのGaN層を基板401上に成長させる。次いで、基板401の温度を800℃まで下げ、低屈折率層402として厚さが5nmのAlN層402a及び厚さが14nmのGaN層402bの積層構造を成長させる。このとき、GaN層402bから先に成長させ、合計で2.5周期成長させる。AlN層402aのガス条件は、窒素雰囲気、TMA供給量を80μmol/min、NH3供給量を200mmol/minでV/III比を2500とする。GaN層402bのガス条件は、窒素雰囲気、TMG供給量を100μmol/min、NH3供給量を200mmol/minでV/III比を2000とする。GaN層402bの成長とAlN層402aの成長との間でNH3供給量を同一にしているため、成長中断は設けず継続して成長させる。
低屈折率層402の成長後には、基板401の温度を800℃に保持したまま、高屈折率層403として厚さが10nmのIn0.10Ga0.90N層403a及び厚さが10nmのGaN層403bの積層構造を成長させる。このとき、In0.10Ga0.90N層403aから先に成長させ、合計で2周期成長させる。In0.10Ga0.90N層403aのガス条件は、窒素雰囲気、TMG供給量を100μmol/mi、TMI供給量を70μmol/min、NH3供給量を200mmol/minでV/III比を1176とする。GaN層403bのガス条件は、窒素雰囲気、TMG供給量を100μmol/min、NH3供給量を200mmol/minでV/III比を2000とする。In0.10Ga0.90N層403aの成長とGaN層403bの成長との間でTMG、NH3の供給量を同一にしているため、成長中断は設けず継続して成長させる。
以降は、AlN層402a及びGaN層402bの積層構造の成長とIn0.10Ga0.90N層403a及びGaN層403bの積層構造の成長とを交互に合計で73回繰り返す。
このようにして、反射率が99.9%、反射波長が450nmの反射鏡400が得られる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、面発光レーザに関する。図7は、第5の実施形態に係る面発光レーザを示す断面図である。
図7に示すように、第5の実施形態に係る面発光レーザ500は、導電性を備え、GaNを含む基板501と、基板501上のバッファ層517と、バッファ層517上の第1の反射鏡504と、第1の反射鏡504上の第1導電型の第1のスペーサ層(第1の半導体層)505と、を有する。面発光レーザ500は、更に、第1のスペーサ層505上の活性層506と、活性層506上の電子ブロック層514と、電子ブロック層514上の第2導電型の第2のスペーサ層(第2の半導体層)507と、を有する。活性層506、電子ブロック層514及び第2のスペーサ層507の積層体はメサ構造511を有する。
面発光レーザ500は、絶縁膜515及び透明電極516を含む電流狭窄構造を有する。絶縁膜515はメサ構造511の側壁を覆うと共に、メサ構造511の上面をその中心部を除いて覆っている。つまり、絶縁膜515には、メサ構造511の上面の一部を露出する開口部518が形成されている。透明電極516は、開口部518を通じてメサ構造511の上面に接している。面発光レーザ500は、透明電極516上の第2の反射鏡508と、透明電極516の表面上の上部電極512と、基板501の裏面上の下部電極513と、を有する。第1の反射鏡504及び第1のスペーサ層505に開口部509が形成され、開口部509内に導電部510が設けられている。すなわち、面発光レーザ500は、開口部509内に基板501と第1のスペーサ層505とを電気的に接続する導電部510を有する。
基板501は、例えばGaN基板である。バッファ層517は、例えばSiを3×1018cm-3の濃度でドーピングした膜厚が1μmのn-GaN層である。第1の反射鏡504は、反射鏡100又は反射鏡400を有する。第1のスペーサ層505は、例えば膜厚が1μmのn-GaN層である。バッファ層517が形成された基板501を、導電性を備えた一つの基板とみなすことができる。
活性層506は、例えばIn0.09Ga0.91N/GaNの3周期の多重量子井戸構造を有する。例えば、井戸層であるIn0.09Ga0.91N層の膜厚及び障壁層であるGaN層の膜厚は、それぞれ、6nm、4nmである。
電子ブロック層514は、例えば膜厚が20nmのp-Al0.20Ga0.80N層である。電子ブロック層514は活性層506への電子の閉じ込めを強くする作用を有する。第2のスペーサ層507は、例えば膜厚が50nmのp-GaN層である。
絶縁膜515は、例えばSiO2膜であり、透明電極516は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)膜である。
導電部510は、例えばTi/Alの金属膜である。上部電極512は、例えばNi/Auの金属電極であり、下部電極513は、例えばTi/Alの金属電極である。
第2の反射鏡508は、例えば高屈折率層としてのTa2O5層と低屈折率層としてのSiO2層とが交互に8周期積層された積層構造を有する誘電体の反射鏡である。活性層506は405nmの発振波長λが得られるように構成されており、Ta2O5層の光学膜厚はλ/4から20%程度厚く、SiO2層の光学膜厚はλ/4から20%程度薄い。このような第2の反射鏡508の反射率は99.57%である。Ta2O5層の光学膜厚及びSiO2層の光学膜厚がいずれもλ/4の場合の第2の反射鏡508の反射率は99.69%である。
このように構成された第5の実施形態に係る面発光レーザ500では、第2の反射鏡508の反射率が第1の反射鏡504の反射率よりも低い。そして、第5の実施形態に係る面発光レーザ500では、上部電極512と下部電極513との間に電圧を印加すると、活性層506にキャリアが注入され、面発光レーザ500がレーザ発振し、第2の反射鏡508側から光を十分に取り出すことができる。
また、第1の反射鏡504の放熱性が良好であるため、活性層506で発生した熱は基板501を通じて高効率で放出することができる。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態は、面発光レーザに関する。図8は、第6の実施形態に係る面発光レーザを示す断面図である。
図8に示すように、第6の実施形態に係る面発光レーザ600は、導電性を備え、GaNを含む基板601と、基板601上の第1の反射鏡604と、第1の反射鏡604上の第1導電型の第1のスペーサ層(第1の半導体層)605と、を有する。面発光レーザ600は、更に、第1のスペーサ層605上の活性層606と、活性層606上の電子ブロック層614と、電子ブロック層614上の第2導電型の第2のスペーサ層(第2の半導体層)607と、を有する。
面発光レーザ600は、第2のスペーサ層607上のトンネル接合部615と、トンネル接合部615を覆う、第2のスペーサ層607上のコンタクト層(第4の半導体層)616と、を有する。活性層606、電子ブロック層614、第2のスペーサ層607、トンネル接合部615及びコンタクト層616の積層体はメサ構造611を有する。トンネル接合部615は、第2のスペーサ層607の中央部上に設けられている。面発光レーザ600は、コンタクト層616上の第2の反射鏡608と、コンタクト層616の表面上の上部電極612と、基板601の裏面上の下部電極613と、を有する。第1の反射鏡604及び第1のスペーサ層605に開口部609が形成され、開口部609内に導電部610が設けられている。すなわち、面発光レーザ600は、開口部609内に基板601と第1のスペーサ層605とを電気的に接続する導電部610を有する。
基板601は、例えばGaN基板である。第1の反射鏡604は、反射鏡100又は反射鏡400を有する。第1のスペーサ層605は、例えば膜厚が1μmのn-GaN層である。活性層606は、例えばIn0.20Ga0.80N/GaNの多重量子井戸構造を有する。
電子ブロック層614は、例えば膜厚が20nmのp-Al0.20Ga0.80N層である。電子ブロック層514は活性層506への電子の閉じ込めを強くする作用を有する。第2のスペーサ層507は、例えば膜厚が50nmのp-GaN層である。
トンネル接合部615は、Mgを1×1020cm-3程度の濃度でドーピングしたp-GaN層及びSiを1×1020cm-3程度の濃度でドーピングしたn-GaN層を含み、円柱状に形成されている。コンタクト層は、例えばn-GaN層である。
導電部610は、例えばn-GaN層である。上部電極612は、例えばTi/Alの金属電極であり、下部電極613は、例えばTi/Alの金属電極である。
第2の反射鏡608は、例えばSiO2層とSiN層とが交互に2周期積層された積層体の上に、SiO2層とTa2O5層とが交互に6周期積層された積層構造を有する誘電体の反射鏡である。活性層606は450nmの発振波長λが得られるように構成されており、第2の反射鏡608の反射率は99.49%である。
このように構成された第6の実施形態に係る面発光レーザ600では、第2の反射鏡608の反射率が第1の反射鏡604の反射率よりも低い。そして、第6の実施形態に係る面発光レーザ600では、上部電極612と下部電極613との間に電圧を印加すると、活性層606にキャリアが注入され、面発光レーザ600がレーザ発振し、第2の反射鏡608側から光を十分に取り出すことができる。
また、第1の反射鏡604の放熱性が良好であるため、活性層606で発生した熱は基板601を通じて高効率で放出することができる。
トンネル接合部615及びコンタクト層616の形成に関し、トンネル接合部615に含まれるp-GaN層及びn-GaN層は、例えば、第2のスペーサ層607に引き続いて成長させ、その後に、フォトリソグラフィー及びドライエッチングによりp-GaN層及びn-GaN層を円柱状に加工してトンネル接合部615を形成する。その後、トンネル接合部615を覆うようにコンタクト層616を成長させ、活性層606、電子ブロック層614、第2のスペーサ層607、トンネル接合部615及びコンタクト層616の積層体を加工してメサ構造611を形成する。
導電部610の形成に関し、メサ構造611の形成後に、少なくともメサ構造611を覆い、導電部610を形成する部分を開口するように、半導体の成長を阻害するマスクを形成し、結晶成長法により、マスクを形成していない部分にn-GaN層を成長させる。この結果、開口部609の第1のスペーサ層605と第1の反射鏡604の側壁部分から結晶が成長し、最終的には、基板601と第1のスペーサ層605との間に導電部610が形成される。マスクの材料としては、例えば、SiO2などを用いることができる。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態は、2次元アレイ光源に関する。2次元アレイ光源は面発光レーザの一例である。図9Aは、第7の実施形態に係る2次元アレイ光源を示す断面図であり、図9Bは、第7の実施形態に係る2次元アレイ光源のレイアウトを示す図である。図9Aは、図9B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
図9Aに示すように、第7の実施形態に係る2次元アレイ光源700は、面発光レーザ500と同様の面発光レーザを複数面内に配置した構造を有する。ただし、第5の実施形態では、1個の面発光レーザ500に1個の上部電極512が設けられているのに対し、第7の実施形態では、複数の面発光レーザに共通の上部共通電極712が設けられている。つまり、1個の上部共通電極712が複数の第2のスペーサ層507に電気的に接続されている。上部共通電極712は、例えばTi/Al金属電極である。また、上部共通電極712と、第1のスペーサ層505及び導電部510とを電気的に絶縁する絶縁層720が設けられている。絶縁層720は、第1のスペーサ層505及び導電部510を覆うと共に、メサ構造511の側壁も覆っている。絶縁層720は、例えばSiO2層である。
また、図9Bに示すように、メサ構造511は正三角形の格子状に配置され、メサ構造511毎に独立して開口部509が設けられている。すなわち、メサ構造511がそれぞれ一つの開口部509により囲まれている。
第7の実施形態に係る2次元アレイ光源700では、上部共通電極712と下部電極513との間に電圧を印加することで、各面発光レーザにキャリアが注入され、各面発光レーザが発光する。
面発光レーザのピッチ(最近接の面発光レーザ同士の中心間距離)を54μm、メサ構造511の直径を28μm、開口部509の幅を5μm、メサ構造511と開口部509との距離を3μmとした場合、チップ1cm角あたりに面発光レーザを約20000個配置できる。
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。第8の実施形態は、2次元アレイ光源に関する。2次元アレイ光源は面発光レーザの一例である。図10Aは、第8の実施形態に係る2次元アレイ光源を示す断面図であり、図10Bは、第8の実施形態に係る2次元アレイ光源のレイアウトを示す図である。図10Aは、図10B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
図10Aに示すように、第8の実施形態に係る2次元アレイ光源800は、面発光レーザ500と同様の面発光レーザを複数面内に配置した構造を有する。ただし、第5の実施形態では、1個の面発光レーザ500に1個の上部電極512が設けられているのに対し、第8の実施形態では、複数の面発光レーザに共通の上部共通電極812が設けられている。つまり、1個の上部共通電極812が複数の第2のスペーサ層507に電気的に接続されている。上部共通電極812は、例えばTi/Al金属電極である。また、上部共通電極812と、第1のスペーサ層505及び導電部510とを電気的に絶縁する絶縁層820が設けられている。絶縁層820は、第1のスペーサ層505及び導電部510を覆うと共に、メサ構造511の側壁も覆っている。絶縁層820は、例えばSiO2層である。
また、図10Bに示すように、メサ構造511は正三角形の格子状に配置され、複数のメサ構造511の周囲に単一の開口部809が設けられている。すなわち、開口部809が複数の面発光レーザに共有されている。
第8の実施形態に係る2次元アレイ光源800では、上部共通電極812と下部電極513との間に電圧を印加することで、各面発光レーザにキャリアが注入され、各面発光レーザが発光する。
面発光レーザのピッチ(最近接の面発光レーザ同士の中心間距離)を40μm、メサ構造511の直径を28μm、メサ構造511と開口部509との距離を3μmとした場合、チップ1cm角あたりに面発光レーザを約36000個配置できる。
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態について説明する。第9の実施形態は、2次元アレイ光源に関する。2次元アレイ光源は面発光レーザの一例である。図11Aは、第9の実施形態に係る2次元アレイ光源を示す断面図であり、図11Bは、第9の実施形態に係る2次元アレイ光源のレイアウトを示す図である。図11Aは、図11B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
図11Aに示すように、第9の実施形態に係る2次元アレイ光源900は、面発光レーザ600と同様の面発光レーザを複数面内に配置した構造を有する。ただし、第6の実施形態では、1個の面発光レーザ600に1個の上部電極612が設けられているのに対し、第9の実施形態では、複数の面発光レーザに共通の上部共通電極912が設けられている。つまり、1個の上部共通電極912が複数のコンタクト層616に電気的に接続されている。上部共通電極912は、例えばTi/Al/Ti/Au金属電極である。また、上部共通電極912と、第1のスペーサ層605及び導電部610とを電気的に絶縁する絶縁層920が設けられている。絶縁層920は、第1のスペーサ層605及び導電部610を覆うと共に、メサ構造611の側壁も覆っている。絶縁層920は、例えばSiO2層である。
また、図11Bに示すように、メサ構造611は正三角形の格子状に配置され、一つのメサ構造611の周囲に複数、ここでは六つの開口部609が設けられ、かつ、開口部609が隣り合うメサ構造611間で共有されている。すなわち、格子点を形成する隣接するメサ構造611の重心部分に一つの開口部609が設けられている。
第9の実施形態に係る2次元アレイ光源900では、上部共通電極912と下部電極613との間に電圧を印加することで、各面発光レーザにキャリアが注入され、各面発光レーザが発光する。
面発光レーザのピッチ(最近接の面発光レーザ同士の中心間距離)を34μm、メサ構造611の直径を28μm、開口部609の直径を6μm、メサ構造611と開口部609との距離を3μmとした場合、チップ1cm角あたりに面発光レーザを約50000個配置できる。
なお、導電性を備えた基板とスペーサ層との間に本開示の第1の反射鏡のように電気抵抗が高い層を含む反射鏡が設けられた面発光レーザにおいても、当該反射鏡に開口部が形成され、当該開口部内に基板とスペーサ層とを電気的に接続する導電部が設けられていれば、スペーサ層と基板との間に優れた導電性を得ることができる。すなわち、基板とスペーサ層との間の反射鏡の層構成に拘わらず、上記の開口部及び導電部が設けられていれば、優れた導電性を得るという効果が得られる。
(第10の実施形態)
次に、第10の実施形態について説明する。第10の実施形態は、レーザを走査して画像を描画する投影装置に関する。投影装置は光源装置の一例である。図12は、第10の実施形態に係る投影装置のレイアウトを示す図である。
第10の実施形態に係る投影装置1000は、光源1001及び光走査部1002を備えている。光源1001は、例えば、第2の実施形態に係る面発光レーザ200、又は第3の実施形態に係る2次元アレイ光源300を、1又は2以上備えている。面発光レーザ200又は2次元アレイ光源300が1つの場合、投影装置1000は、単色の画像を対象物1003に投影する。複数の面発光レーザ200又は2次元アレイ光源300を備える場合、投影装置1000は、各面発光レーザの光軸を同軸上に揃えて出射面から出射し、面発光レーザ毎に発振波長を変えることで、複数の色の画像を対象物1003に投影できる。
光走査部1002は光源1001から出射されたレーザ光を走査し対象物1003へ投影するための素子を含む。このような素子として、2軸方向に可動するMEMS(micro electro mechanical systems)ミラーや1軸方向に可動するMEMSミラーを2個組み合わせた素子等を用いることができる。光走査部1002は、光源1001から出射されたレーザ光の進行方向を調整する光学素子の一例である。
画像の生成の際には、光走査部1002の走査に合わせて、レーザ光の強度を変調して対象物1003上にレーザ光を照射する。このようにして、対象物1003上に直接画像を生成することができる。
光源1001に面発光レーザ200を用いる場合、μWオーダーから数mW程度のレーザ光を出力し、微小な領域に画像を描画することができる。このような投影装置1000は、例えば、網膜ディスプレイとして用いることができる。
光源1001に2次元アレイ光源を用いる場合、mWオーダーからkWオーダーのレーザ光を出力し、大面積な領域に画像を描画することができる。このような投影装置は、例えば、プロジェクターとして用いることができる。
(第11の実施形態)
次に、第11の実施形態について説明する。第11の実施形態は、投光装置に関する。投光装置は光源装置の一例である。図13Aは、第11の実施形態に係る投光装置のレイアウトを示す図である。図13Bは、第11の実施形態に係る投光装置の光源のレイアウトを示す図である。
第11の実施形態に係る投光装置1100は、光源1101、蛍光部材1102及び投光部材1103を備えている。光源1101としては、例えば第3の実施形態に係る2次元アレイ光源300が用いられ、光源1101から出射された光で蛍光部材1102を励起させる。光源1101から出射された光と、蛍光部材1102が励起されて放射された光とを投光部材1103で2次元状に拡げて投光する。図13Aには、投光部材1103の例として、反射鏡を図示してある。
蛍光部材1102としては、例えば、光源1101から出射される光が青色光の場合、黄色光を発する蛍光部材が用いられ、光源1101から出射される光が紫外光の場合、白色光を発する蛍光部材が用いられる。蛍光部材1102は、光源1101から出射されたレーザ光の波長を調整する光学素子の一例である。また、投光部材1103は、光源1101から出射され、蛍光部材1102により波長が調整されたレーザ光の進行方向を調整する光学素子の一例である。
図13Bに示すように、光源1101は、例えば面内に数千個~数万個の面発光レーザ1104を2次元アレイ状に並べた2次元アレイ光源であり、複数の上部共通電極1105を有している。図13Bには、上部共通電極1105として、4つの上部共通電極1105a~1105dを図示してある。
複数の上部共通電極1105のうちから、電圧を印加する上部共通電極を選択することで、1つの光源1101で、任意の場所や空間に投光することができる。例えば、投光装置1100を車載用のヘッドライトモジュールとして使う場合、配光可変型前照灯として使うことができる。
(第12の実施形態)
次に、第12の実施形態について説明する。第12の実施形態は、投影装置に関する。投影装置は光源装置の一例である。図14は、第12の実施形態に係る投影装置のレイアウトを示す図である。
第12の実施形態に係る投影装置1200は、光源1201及び投影光学部1202を備えている。光源1201は、第3の実施形態に係る2次元アレイ光源300を備える。
投影光学部1202は、少なくとも、蛍光部材1203、フィルター1204及び画像生成素子1205を備え、必要に応じて、投影レンズ1206等のレンズやミラー等を更に備えてもよい。
蛍光部材1203は、光源1201から投影光学部1202へ入射した光の一部によって励起されることで、白色光を作り出す。蛍光部材1203としては、例えば、光源1201から出射される光が青色光の場合、黄色光を発する蛍光部材が用いられ、光源1201から出射される光が紫外光の場合、白色光を発する蛍光部材が用いられる。
フィルター1204は、白色光から色を分離するフィルターであり、可動部も備えている。フィルター1204としては、例えば赤色、青色、緑色の光を透過させるカラーホイール等が用いられる。
画像生成素子1205は、フィルター1204を透過した光から画像を生成する素子である。画像生成素子1205としては、例えば、2次元アレイ状に微細なミラーを備えたMEMSデバイスや、反射型液晶素子等が用いられる。
投影レンズ1206は、画像生成素子1205により生成された画像を所望の倍率に拡大し対象物へ投影する。
投影光学部1202は、光源1201から出射されたレーザ光の波長及び進行方向等を調整する光学素子の一例である。
本実施形態では、投影光学部1202にフィルター1204が含まれているが、フィルター1204の代わりに、プリズムやダイクロイックミラーが用いられてもよい。プリズムやダイクロイックミラーが用いられる場合、光を例えば赤色、緑色、青色に分離し、3つの画像生成素子で各色の画像を生成し、最後にプリズム等で合成する構成等にすることができる。
(第1の変形例)
第1の変形例は、反射波長λが405nmの第1の実施形態の具体例の変形例である。第1の実施形態の具体例では、低屈折率層102に含まれる3層のGaN層102bの膜厚がいずれも6nmである。これに対し、第1の変形例では、2つのAlN層102aの間のGaN層102bの膜厚を2nmと薄くし、高屈折率層103とAlN層102aとの間のGaN層102bの膜厚を8nmと厚くする。また、第1の実施形態の具体例では、低屈折率層102及び高屈折率層103の積層周期を46としているのに対し、第1の変形例では、積層周期を40とする。他の構成は第1の実施形態の具体例と同様である。
このような構成の第1の変形例によれば、40積層周期で反射率を99.9%とすることができる。このように、低屈折率層102の中央側にAlN層102aを寄せることで、第1の実施形態の具体例と比べて同じ反射率で6積層周期少なくできる。
(第2の変形例)
第2の変形例は、反射波長λが450nmの第4の実施形態の具体例の変形例である。第4の実施形態の具体例では、低屈折率層402に含まれる3層のGaN層402bの膜厚がいずれも14nmである。これに対し、第2の変形例では、2つのAlN層402aの間のGaN層402bの膜厚を5nmと薄くし、高屈折率層403とAlN層402aとの間のGaN層402bの膜厚を18.5nmと厚くする。また、第4の実施形態の具体例では、低屈折率層402及び高屈折率層403の積層周期を73としているのに対し、第2の変形例では、積層周期を61とする。他の構成は第4の実施形態の具体例と同様である。
このような構成の第2の変形例によれば、61積層周期で反射率を99.9%とすることができる。このように、低屈折率層402の中央側にAlN層402aを寄せることで、第4の実施形態の具体例と比べて同じ反射率で12積層周期少なくできる。
(第3の変形例)
第3の変形例は、第4の実施形態の具体例の変形例であり、反射波長λが530nmの用途を前提とする。低屈折率層402は3層のAlN層402a及び4層のGaN層402bから構成される。AlN層402aの膜厚は3層とも7.5nmである。高屈折率層403とAlN層402aとの間のGaN層402bの膜厚は6nmであり、隣り合う2つのAlN層402aの間のGaN層402bの膜厚は5nmである。高屈折率層403は5層のIn0.10Ga0.90N層403a及び4層のGaN層403bから構成され、In0.10Ga0.90N層403a及びGaN層403bの膜厚は、それぞれ、10nm、5nmである。そして、低屈折率層402及び高屈折率層403が交互に合計で53周期積層されている。反射波長λが530nmの場合、GaNの屈折率は2.35、AlNの屈折率は2.08、In0.10Ga0.90Nの屈折率は2.40である。従って、低屈折率層402の光学膜厚は98.5nm、高屈折率層403の光学膜厚は167nmであり、低屈折率層402の光学膜厚はλ/4(=132.5nm)から約25%薄く、高屈折率層403の光学膜厚はλ/4から約25%厚い。この場合、AlN層402aの歪と膜厚との積PAlNは、In0.10Ga0.90N層403aの歪と膜厚との積PInGaNの0.96倍になり、AlN層402aの変形量とIn0.10Ga0.90N層403aの変形量がほぼ等しくなる。
このような構成の第3の変形例によれば、53積層周期で反射率を99.9%とすることができる。
(第1のシミュレーション)
次に、放熱性に関するシミュレーション(第1のシミュレーション)について説明する。
第1のシミュレーションでは第5の実施形態を用い、第1の反射鏡504に第1の実施形態の具体例の反射鏡を用いるとする。すなわち、低屈折率層102は2層のAlN層102a及び3層のGaN層102bから構成され、AlN層102a及びGaN層102bの膜厚はいずれも6nmである。高屈折率層103は膜厚が50nmのIn0.05Ga0.95N層から構成される。また、基板501は、厚さが150μmのGaN基板であり、第2の反射鏡508は、Ta2O5層とSiO2層とが交互に8周期積層された積層構造を有する誘電体の反射鏡である。開口部518の直径(電流狭窄径)は5μmφであるとする。そして、出力3.2mWで効率20%とし、基板501の下部を27℃に固定し、有限要素法により熱分布を計算する。
また、比較のために、低屈折率層102に代えて、Al0.50Ga0.50N層を用いる第1の比較例についても同様の熱分布を有限要素法により計算する。
このようなシミュレーションによれば、活性層506の中心温度は、第1の比較例では49.8℃になるのに対し、第5の実施形態では41.8℃になり、8℃もの差が生じる。このことは、第5の実施形態の放熱性が極めて高いことを示す。また、熱分布として面発光レーザの中心から基板面の面内方向で基板501の温度(27℃)よりも2℃高くなる29℃になる点の距離は、第1の比較例では27μmになるのに対して、第5の実施形態では23.5μmになり、3.5μmもの差が生じる。このことは、第5の実施形態を用いた2次元アレイにおいて、面発光レーザ同士の距離を狭めても、隣り合う面発光レーザ間で熱の影響を受けにくいことを示す。
(第2のシミュレーション)
次に、第1のスペーサ層に関するシミュレーション(第2のシミュレーション)について説明する。
第2のシミュレーションでは第6の実施形態を用いる。第1のスペーサ層605としてのn-GaN層の抵抗率が7×10-3Ωcm、第2のスペーサ層607としてのp-GaN層の抵抗率が1Ωcm、トンネル接合部615の抵抗率が1×10-5Ωcm2、トンネル接合部615の直径(電流狭窄径)が5μmφであるとする。そして、第1のスペーサ層605の厚さを変化させて、上部電極612と下部電極613との間の抵抗を計算する。
この結果を図12に示す。図12に示すように、第1のスペーサ層605の厚さが1μm未満の場合、第1のスペーサ層605の厚さにより抵抗が大きく変化する。一方、第1のスペーサ層605の厚さが1μm以上である場合、第1のスペーサ層605が厚くなっても抵抗はあまり低下せず、厚さの増加に対する抵抗の低下率が小さい。このことは、第1のスペーサ層605の厚さが1μm以上であれば、抵抗を低く抑えながら、抵抗のばらつきを抑制できることを示す。
(第3のシミュレーション)
次に、第2の反射鏡に関するシミュレーション(第3のシミュレーション)について説明する。
第3のシミュレーションでは発振波長が405nmの第5の実施形態を用い、第2の反射鏡508を構成する8周期のTa2O5層(高屈折率層)及びSiO2層(低屈折率層)の厚さと第2の反射鏡508の反射率との関係を計算する。この結果を表1に示す。表1中の数値は、発振波長λの1/4の厚さ(λ/4)に対しての増減値を示している。
(第4のシミュレーション)
次に、第2の反射鏡に関するシミュレーション(第4のシミュレーション)について説明する。
第4のシミュレーションでは発振波長が450nmの第6の実施形態を用い、第2の反射鏡508の構成と反射率との関係を計算する。ここでは、第2の反射鏡508が、SiN層とSiO2層とが交互に積層された第1の積層体、及び/又はTa2O5層とSiO2層とが交互に積層された第2の積層体を総計で8周期含むとする。この結果を表2に示す。