JP7293522B1 - 放熱シート - Google Patents

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Abstract

本発明の放熱シートは、表面硬度がアスカーC硬度で60~95度であり、絶縁破壊電圧が15kV/mm以上である。本発明によれば、熱伝導性及び絶縁性が優れた放熱シートを提供することができる。

Description

本発明は、窒化ホウ素粉末と樹脂とを含む熱伝導性樹脂組成物を成形してなる放熱シートに関する。
パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、CPU等の発熱性電子部品においては、使用時に発生する熱を如何に効率的に放熱するかが重要な課題となっている。従来から、このような放熱対策としては、(1)発熱性電子部品を実装するプリント配線板の絶縁層を高熱伝導化する、(2)発熱性電子部品または発熱性電子部品を実装したプリント配線板を電気絶縁性の熱インターフェース材(Thermal Interface Materials)を介してヒートシンクに取り付ける、ことが一般的に行われてきた。プリント配線板の絶縁層及び熱インターフェース材としては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂にセラミックス粉末を充填させたものが使用されている。
セラミックス粉末としては、高熱伝導率、高絶縁性、低比誘電率等の特性を有している窒化ホウ素粉末が注目されている。例えば、特許文献1には、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる窒化ホウ素粉末であって、体積基準の粒度分布において、5μm以上30μm未満の領域に存在するピークAと、50μm以上100μm未満の領域に存在するピークBとを有する、窒化ホウ素粉末が開示されている。
特開2020-164365号公報
特許文献1に記載の窒化ホウ素粉末を用いて、熱伝導性及び絶縁性が優れた放熱シートを得ることができる。しかし、近年の電子機器の小型化、及び発熱性電子部品の発熱量の増加に伴い、熱伝導性及び絶縁性がさらに優れた放熱シートが求められている。
そこで、本発明は、熱伝導性及び絶縁性が優れた放熱シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を進めたところ、所定のシリコーンオイルを用いて窒化ホウ素粉末の表面処理を行うことにより、上記の目的を達成することができた。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、以下を要旨とする。
[1]表面硬度がアスカーC硬度で60~95度であり、絶縁破壊電圧が15kV/mm以上である放熱シート。
[2]厚さ方向に切断したときの断面におけるボイドの面積率が5.0%以下である上記[1]に記載の放熱シート。
本発明によれば、熱伝導性及び絶縁性が優れた放熱シートを提供することができる。
図1は、本発明の放熱シートに含まれる窒化ホウ素粉末の粒度分布の概念図である。 図2は、窒化ホウ素粉末1を使用して作製した放熱シートの電子顕微鏡による断面観察写真を示す。 図3は、窒化ホウ素粉末7を使用して作製した放熱シートの電子顕微鏡による断面観察写真を示す。
[放熱シート]
本発明の放熱シートは、表面硬度がアスカーC硬度で60~95度であり、絶縁破壊電圧が15kV/mm以上である。これにより、放熱シートの熱伝導性及び絶縁性を改善することができる。
(表面硬度)
本発明の放熱シートの表面硬度は、アスカーC硬度で60~95度である。本発明の放熱シートの表面硬度が60度未満であると、放熱シートを取り扱う際のハンドリングが困難となる場合がある。本発明の放熱シートの表面硬度が95度よりも大きいと、放熱シートが発熱素子の表面の凹凸に追従できなくなり、発熱素子との密着性が損なわれるので、熱伝導性が悪くなる。このような観点から、本発明の放熱シートの表面硬度は、アスカーC硬度で、好ましくは65~90度であり、より好ましくは75~85度である。なお、放熱シートの表面硬度は、アスカーCタイプの試験機(商品名:アスカーゴム硬度計C型、高分子計器株式会社製)を用いて、25℃の試験温度でSRIS0101に準拠するスプリング硬さ試験で測定することができる。また、所定のシリコーンオイルを用いて窒化ホウ素粉末の表面処理を行うことにより、放熱シートが柔軟になり、放熱シートの表面硬度を上述の範囲内にすることができる。
(絶縁破壊電圧)
本発明の放熱シートは絶縁破壊電圧が15kV/mm以上である。絶縁破壊電圧が15kV/mm未満であると、近年の電子機器の小型化、及び発熱性電子部品の発熱量の増加に伴い、厳しくなっている放熱シートの絶縁性に対する要求に応えられない場合がある。このような観点から、放熱シートの絶縁破壊電圧は、好ましくは20kV/mm以上であり、より好ましくは25kV/mm以上である。放熱シートの絶縁破壊電圧の範囲の上限値は、特に限定されないが、通常40kV/mmである。なお、放熱シートの絶縁破壊電圧は、後述の実施例の記載の方法により測定することができる。また、所定のシリコーンオイルを用いて窒化ホウ素粉末の表面処理を行うことにより、窒化ホウ素粒子と樹脂との間の界面にボイドが発生することを抑制でき、これにより、放熱シートの絶縁破壊電圧を上述の範囲内にすることができる。
(ボイドの面積率)
本発明の放熱シートにおける厚さ方向に切断したときの断面におけるボイドの面積率は、好ましくは5.0%以下である。ボイドの面積率が5.0%以下であると、放熱シートの絶縁破壊の原因となる欠陥を低減できるので、放熱シートの絶縁性をさらに改善することができる。このような観点から、本発明の放熱シートにおける厚さ方向に切断したときの断面におけるボイドの面積率は、より好ましくは4.0%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下である。放熱シートの絶縁破壊の原因となる欠陥は少なければ少ないほどよいので、本発明の放熱シートにおける厚さ方向に切断したときの断面におけるボイドの面積率の範囲の下限値は0%である。製造性の観点から、0.5%以上であってよい。なお、放熱シートにおける厚さ方向に切断したときの断面におけるボイドの面積率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。また、所定のシリコーンオイルを用いて窒化ホウ素粉末の表面処理を行うことにより、窒化ホウ素粒子と樹脂との間の界面にボイドが発生することを抑制でき、これにより、放熱シートにおける厚さ方向に切断したときの断面におけるボイドの面積率を5.0%以下にすることができる。
(厚さ)
本発明の放熱シートの厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.08~3.0mmであり、より好ましくは0.15~2.0mmであり、さらに好ましくは0.2~1.5mmである。
(ボイド直径)
本発明の放熱シートにおける厚さ方向に切断したときの断面における、全てのボイドの直径を測定し、直径の大きい順に測定した直径を並べ、上位10個の直径の平均の直径をボイド直径とした場合、ボイド直径は9.5μm以下であることが好ましい。ボイド直径が9.5μm以下であると、放熱シートの絶縁破壊電圧をさらに向上させることができる。なお、ボイドの形状が円形でない場合は、ボイドを外接する円の直径をボイド直径とした。ボイド直径は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の放熱シートは、好ましくは窒化ホウ素粉末と樹脂とを含む熱伝導性樹脂組成物を成形してなるものである。以下、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素及び樹脂、並びにそれらを含む熱伝導性樹脂組成物を説明する。
(窒化ホウ素粉末)
本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末は、質量平均分子量が5000~200000である反応性シリコーンオイルで表面処理されたものである。この窒化ホウ素粉末を反応性シリコーンオイルで処理することにより、窒化ホウ素粉末の樹脂に対する濡れ性が良好になり、ボイドの少ない放熱シートを製造することができる。これにより、放熱シートの絶縁性が改善される。なお、窒化ホウ素粉末の樹脂に対する濡れ性が悪いと、窒化ホウ素粒子の表面と樹脂との間に隙間が生じ、ボイド、特に線状のボイドが発生する場合がある。また、上記反応性シリコーンオイルにより樹脂が柔軟になり、放熱シートの表面硬度が低下する。これにより、放熱シートの発熱素子に対する密着性が高くなり、放熱シートの熱伝導性が改善される。
(反応性シリコーンオイル)
<反応性シリコーンオイルの反応性を有する基>
反応性シリコーンオイルは、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に、水酸基及び化学反応性を有する有機基を導入したものである。化学反応性を有する有機基には、例えば、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、カルビノール基、フェノール基、メルカプト基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。窒化ホウ素粒子の表面のOH基との脱水縮合反応により、窒化ホウ素粒子の表面と反応性シリコーンオイルを結合させることができるという観点から、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末に用いる反応性シリコーンオイルは、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に、水酸基を導入したものが好ましい。反応性シリコーンオイルにおける水酸基の位置は、末端であってもよいし、側鎖であってもよい。すなわち、反応性シリコーンオイルは、末端及び側鎖の少なくとも1つの位置にシラノール基(Si-OH)を有すればよい。さらに、反応性シリコーンオイルは、両末端又は片末端にOH基を有することが好ましい。しかし、反応性シリコーンオイルが両末端にOH基を有している場合、樹脂がシリコーン樹脂のとき、シリコーン樹脂はシラノール基(Si-OH)を有するので、反応性シリコーンオイルの一方の末端のOH基を窒化ホウ素粒子のOH基と脱水縮合反応させ、反応性シリコーンオイルの他方の末端のOH基をシリコーン樹脂中のシラノール基と脱水縮合反応させることができる。また、反応性シリコーンオイルの一方の末端のOH基を1つの窒化ホウ素粒子のOH基と脱水縮合反応させ、反応性シリコーンオイルの他方の末端のOH基を、同じ又は別の窒化ホウ素粒子のOH基と脱水縮合反応させることもできる。このような観点から、反応性シリコーンオイルは、両末端にOH基を有することがより好ましい。すなわち、反応性シリコーンオイルは、両末端にシラノール基(Si-OH)を有することがより好ましい。
<質量平均分子量>
本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末に用いる反応性シリコーンオイルの質量平均分子量は、好ましくは5000~200000である。反応性シリコーンオイルの質量平均分子量が5000以上であると、反応性シリコーンオイル中の長鎖ポリジメチルシロキサンによる、窒化ホウ素粉末の樹脂、特にシリコーン樹脂に対する濡れ性改善の効果が大きくなる。また、反応性シリコーンオイル中の長鎖ポリジメチルシロキサンによる、窒化ホウ素粒子の滑り性の向上の効果も大きくなる。なお、高充填で窒化ホウ素粉末を樹脂に混合して得られた熱伝導性樹脂組成物が流動するとき、窒化ホウ素粒子同士が接触する場合がある。このため、窒化ホウ素粒子の滑り性が良好であると、高充填で窒化ホウ素粉末を樹脂に混合して得られた熱伝導性樹脂組成物の流動性を改善することができる。一方、反応性シリコーンオイルの質量平均分子量が200000以下であると、反応性シリコーンオイルを用いて窒化ホウ素粉末を均一に表面処理することが容易になる。また、放熱シートの表面硬度をさらに低減することができる。このような観点から、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末に用いる反応性シリコーンオイルの質量平均分子量は、好ましくは7000以上、9000以上、10000以上であってよい。上限は200000以下、180000以下、160000以下、150000以下であってよい。なお、反応性シリコーンオイルの質量平均分子量は、反応性シリコーンオイルを溶解することができる有機溶媒(例えば、トルエン)を用いて窒化ホウ素粉末から反応性シリコーンオイルを溶出した後、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定することができる。
<表面処理>
上述したように、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末は、反応性シリコーンオイルで表面処理されたものである。反応性シリコーンオイルによる表面処理は、窒化ホウ素粉末及び反応性シリコーンオイルを乾式混合することによって行ってもよいし、窒化ホウ素粉末及び反応性シリコーンオイルに対して溶媒を加えて、湿式混合することによって行ってもよい。上記溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの溶解度係数(SP値)が比較的小さい芳香族系溶媒を使用することができる。しかし、反応性シリコーンオイルを溶解した溶媒から窒化ホウ素粉末を分離することが難しい場合があるので、反応性シリコーンオイルによる表面処理は、乾式混合により行うことが好ましい。例えば、以下のようにして、窒化ホウ素粉末及び反応性シリコーンオイルを乾式混合することができる。攪拌機付き処理装置を用意し、そこに窒化ホウ素粉末を充填する。攪拌機を高速攪拌させ、そこに反応性シリコーンオイルの原液、または反応性シリコーンオイルを溶媒に溶解したものを滴下、またはスプレー処理する。溶媒は、例えば、トルエン、キシレンなどの溶解度係数(SP値)が比較的小さい芳香族系溶媒である。なお、攪拌機付き処理装置には、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、V型ブレンダー、自転・公転ミキサーなどが挙げられる。反応性シリコーンオイルと窒化ホウ素粒子のOH基との脱水縮合反応を促進するために、反応性シリコーンオイルによる表面処理は、加熱しながら行ってもよい。また、反応性シリコーンオイルと窒化ホウ素粒子のOH基との脱水縮合反応で発生した水分を除去するために、反応性シリコーンオイルによる表面処理を行った窒化ホウ素粉末に対して乾燥処理を行ってもよい。窒化ホウ素粉末中の窒化ホウ素粒子の表面に反応性シリコーンオイルを十分になじませるために、反応性シリコーンオイルによる表面処理を行った窒化ホウ素粉末に対して熟成を行ってもよい。
<添加量>
反応性シリコーンオイルによる窒化ホウ素粉末の樹脂に対する濡れ性改善の効果と反応性シリコーンオイル添加による窒化ホウ素粉末の製造コスト上昇とのバランスから、反応性シリコーンオイルの添加量は、窒化ホウ素粉末100質量部に対して、好ましくは0.01~50質量部であり、より好ましくは0.1~30質量部であり、さらに好ましくは0.3~15質量部である。
<赤外線吸収ピーク>
100分の1の希釈条件の透過法(KBr錠剤法)で測定した窒化ホウ素粉末の赤外スペクトルにおける、B-OH伸縮振動に帰属する赤外線吸収ピーク(3220cm-1±10cm-1)のピーク強度は、好ましくは0.1以上である。B-OH伸縮振動に帰属する赤外線吸収ピークのピーク強度が0.1以上であると、反応性シリコーンオイルによる窒化ホウ素粉末の樹脂に対する濡れ性がさらに改善される。このような観点から、B-OH伸縮振動に帰属する赤外線吸収ピークのピーク強度は、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.3以上である。上限は1.0以下、0.8以下、0.7以下であってよい。なお、この赤外線吸収ピークのピーク強度は、赤外線吸収ピークの高さである。
窒化ホウ素粉末が反応性シリコーンオイルによって表面処理されたものであるか否かは、窒化ホウ素粉末の赤外スペクトルを測定することによってわかる場合がある。例えば、反応性シリコーンオイルによって表面処理された窒化ホウ素粉末の赤外スペクトルを透過法(KBr錠剤法)で測定した場合、得られた赤外スペクトルに、反応性シリコーンオイルのSi-O-Siの変角振動に帰属する赤外線吸収ピーク(1100cm-1±10cm-1)及び反応性シリコーンオイルのSi-O-Cの変角振動に帰属する赤外線吸収ピーク(1020cm-1±10cm-1)が現れる場合がある。このような観点から、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末の赤外スペクトルは、Si-O-Siの変角振動に帰属する赤外線吸収ピーク(1100cm-1±10cm-1)及びSi-O-Cの変角振動に帰属する赤外線吸収ピーク(1020cm-1±10cm-1)を有することが好ましい。
100分の1の希釈条件の透過法(KBr錠剤法)で測定した本発明の窒化ホウ素粉末の赤外スペクトルにおける、反応性シリコーンオイルのSi-O-Siの変角振動に帰属する赤外線吸収ピーク(1100cm-1±10cm-1)のピーク強度は、好ましくは0.3以上である。Si-O-Siの変角振動に帰属する赤外線吸収ピークのピーク強度が0.3以上であると、反応性シリコーンオイルによる窒化ホウ素粉末の樹脂に対する濡れ性がさらに改善される。このような観点から、Si-O-Siの変角振動に帰属する赤外線吸収ピークのピーク強度は、より好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。上限は1.0以下、0.9以下、0.8以下であってよい。なお、この赤外線吸収ピークのピーク強度は、赤外線吸収ピークの高さである。
<塊状窒化ホウ素粒子>
塊状窒化ホウ素粒子とは、六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集してなる塊状窒化ホウ素粒子であって、圧壊強度が5MPa以上のものである。上述したように、窒化ホウ素粉末の一次粒子は鱗片状の形状を有し、その平坦部分の表面((0001)面)は非常に不活性である。一方、窒化ホウ素粉末の一次粒子の端面の表面にはOH基がホウ素原子と共有結合している。通常、窒化ホウ素粉末の合成では、窒化ホウ素の(0001)面が優先的に結晶成長するので、窒化ホウ素粉末の一次粒子の端面の面積が相対的に減少する。このため、通常、窒化ホウ素粉末の一次粒子は、粒径の増加に伴い、OH基の量が少なくなる。一方、塊状窒化ホウ素粒子では、炭化ホウ素を原料として窒化ホウ素を作製するので、窒化ホウ素一次粒子の(0001)面の結晶成長が若干抑制されるため、窒化ホウ素一次粒子の端面の面積が大きくなり、その結果、OH基の量が大きくなる。上述したように、反応性シリコーンオイルは、窒化ホウ素粒子の表面のOH基との脱水縮合反応により窒化ホウ素粒子の表面と結合する。このような観点から、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末は、好ましくは塊状窒化ホウ素粒子を含む。
反応性シリコーンオイルによる表面処理の観点から、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末における塊状窒化ホウ素粒子の含有量は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。また、高充填で窒化ホウ素粉末を樹脂に含有させるためには、窒化ホウ素粉末は、粒径の小さい窒化ホウ素粒子を含むことが好ましい。しかし、粒径の小さい塊状窒化ホウ素粒子を製造することが難しい場合もある。このような観点から、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末における塊状窒化ホウ素粒子の含有量は、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。なお、上述したように、反応性シリコーンオイルは、窒化ホウ素粒子の滑り性を向上させる効果も有するので、高充填で窒化ホウ素粉末を樹脂に含有させる場合、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末の効果はさらに顕著になる。
<粒度分布>
図1に示すように、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末の粒度分布は、好ましくは、第1の極大点(MAX1)、第1の極大点(MAX1)よりも粒径が大きい第2の極大点(MAX2)、及び第2の極大点(MAX2)よりも粒径が大きい第3の極大点(MAX3)を少なくとも有する。そして、第1の極大点(MAX1)の粒径が0.4μm以上10μm未満であり、第2の極大点(MAX2)の粒径が10μm以上40μm未満であり、第3の極大点(MAX3)の粒径が40μm以上110μm以下である。これにより、放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性を高めることができ、放熱シートの熱伝導性を優れたものとすることができる。また、放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性を高めることができるので、窒化ホウ素粒子と樹脂との間にボイドが形成されることをさらに抑制できる。なお、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末の粒度分布は、後述の実施例の方法により、測定することができる。また、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末は、反応性シリコーンオイルにより表面処理されているので、放熱シート中の窒化ホウ素が高充填であっても、熱伝導性樹脂組成物の粘度を低減することができる。
第1の極大点(MAX1)の粒径は、好ましくは0.4μm以上10μm未満である。第1の極大点(MAX1)の粒径が0.4μm以上10μm未満であると、放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性をさらに高くし、放熱シートの熱伝導性をさらに改善することができる。また、窒化ホウ素粒子と樹脂との間にボイドが形成されることをさらに抑制できる。このような観点から、第1の極大点(MAX1)の粒径は、より好ましくは2.0~9.0μmであり、さらに好ましくは3.0~8.0μmである。
第2の極大点(MAX2)の粒径は、好ましくは10μm以上40μm未満である。第2の極大点(MAX2)の粒径が10μm以上40μm未満であると、放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性をさらに高くし、放熱シートの熱伝導性をさらに改善することができる。また、窒化ホウ素粒子と樹脂との間にボイドが形成されることをさらに抑制できる。このような観点から、第2の極大点(MAX2)の粒径は、より好ましくは15~36μmであり、さらに好ましくは18~30μmである。
第3の極大点(MAX3)の粒径は、好ましくは40~110μmである。第3の極大点(MAX3)の粒径が40~110μmであると、放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性をさらに高くし、放熱シートの熱伝導性をさらに改善することができる。また、窒化ホウ素粒子と樹脂との間にボイドが形成されることをさらに抑制できる。このような観点から、第3の極大点(MAX3)の粒径は、より好ましくは50~100μmであり、さらに好ましくは65~90μmである。
第1の極大点(MAX1)を有するピークにおけるピークスタートからピークエンドの間の頻度の積算量(V1)は好ましくは1~18体積%である。上記積算量(V1)が1~18体積%であると、放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性をさらに高くし、放熱シートの熱伝導性をさらに改善することができる。また、窒化ホウ素粒子と樹脂との間にボイドが形成されることをさらに抑制できる。このような観点から、上記積算量(V1)は、より好ましくは5~12体積%である。なお、第1の極大点(MAX1)を有するピークにおけるピークスタートは、第1の極大点(MAX1)に対して粒径が小さい側にある極小点である。第1の極大点(MAX1)に対して粒径が小さい側に極小点がない場合は、ピークスタートは粒度分布の粒径が小さい側の端(DS)である。また、第1の極大点(MAX1)を有するピークにおけるピークエンドは、第1の極大点(MAX1)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN1)である。そして、頻度の積算量(V1)は、第1の極大点(MAX1)に対して粒径が小さい側にある極小点の粒径もしくは粒度分布の粒径が小さい側の端(DS)の粒径から、第1の極大点(MAX1)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN1)の粒径までの頻度の積算量から、第1の極大点(MAX1)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN1)の粒径の頻度を引き算した値である。なお、第1の極大点(MAX1)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN1)の粒径の頻度を引き算するのは、第1の極大点(MAX1)を有するピークにおけるピークスタートからピークエンドの間の頻度の積算量及び第2の極大点(MAX2)を有するピークにおけるピークスタートからピークエンドの間の頻度の積算量の両方で、第1の極大点(MAX1)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN1)の粒径の頻度が加算されるのを防ぐためである。
第2の極大点(MAX2)を有するピークにおけるピークスタートからピークエンドの間の頻度の積算量(V2)は好ましくは9~27体積%である。上記積算量(V2)が9~27体積%であると、放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性をさらに高くし、放熱シートの熱伝導性をさらに改善することができる。また、窒化ホウ素粒子と樹脂との間にボイドが形成されることをさらに抑制できる。このような観点から、上記積算量(V2)は、より好ましくは15~21体積%である。なお、第2の極大点(MAX2)を有するピークにおけるピークスタートは、第2の極大点(MAX2)に対して粒径が小さい側にある極小点(MIN1)である。また、第2の極大点(MAX2)を有するピークにおけるピークエンドは、第2の極大点(MAX2)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN2)である。そして、頻度の積算量(V2)は、第2の極大点(MAX2)に対して粒径が小さい側にある極小点(MIN1)の粒径から、第2の極大点(MAX2)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN2)の粒径までの頻度の積算量から、第2の極大点(MAX2)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN2)の粒径の頻度を引き算した値である。なお、第2の極大点(MAX2)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN2)の粒径の頻度を引き算するのは、第2の極大点(MAX2)を有するピークにおけるピークスタートからピークエンドの間の頻度の積算量及び第3の極大点(MAX3)を有するピークにおけるピークスタートからピークエンドの間の頻度の積算量の両方で、第2の極大点(MAX2)に対して粒径が大きい側にある極小点(MIN2)の粒径の頻度が加算されるのを防ぐためである。
第3の極大点(MAX3)を有するピークにおけるピークスタートからピークエンドの間の頻度の積算量(V3)は好ましくは66~90体積%である。上記積算量(V3)が66~90体積%であるとであると、放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性をさらに高くし、放熱シートの熱伝導性をさらに改善することができる。また、窒化ホウ素粒子と樹脂との間にボイドが形成されることをさらに抑制できる。このような観点から、上記積算量(V3)はより好ましくは72~80体積%である。なお、第3の極大点(MAX3)を有するピークにおけるピークスタートは、第3の極大点(MAX3)に対して粒径が小さい側にある極小点(MIN2)である。また、第3の極大点(MAX3)を有するピークにおけるピークエンドは、第3の極大点(MAX3)に対して粒径が大きい側にある極小点である。第3の極大点(MAX3)に対して粒径が大きい側に極小点がない場合は、ピークエンドは粒度分布の粒径が大きい側の端(DE)である。そして、頻度の積算量(V3)は、第3の極大点(MAX3)に対して粒径が小さい側にある極小点(MIN2)の粒径から、第3の極大点(MAX3)に対して粒径が大きい側にある極小点の粒径までの頻度の積算量から、第3の極大点(MAX3)に対して粒径が大きい側にある極小点の粒径の頻度を引き算した値、または、第3の極大点(MAX3)に対して粒径が小さい側にある極小点(MIN2)の粒径から、粒度分布の粒径が大きい側の端(PE)の粒径までの頻度の積算量である。なお、第3の極大点(MAX3)に対して粒径が大きい側にある極小点の粒径の頻度を引き算するのは、第3の極大点(MAX3)を有するピークにおけるピークスタートからピークエンドの間の頻度の積算量、及び第3の極大点(MAX3)に隣接する、第3の極大点に対して粒径が大きい側にある極大点を有するピークにおけるピークスタートからピークエンドの間の頻度の積算量の両方で、第3の極大点(MAX3)に対して粒径が大きい側にある極小点の粒径の頻度が加算されるのを防ぐためである。
放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性を高めることができる限り、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末の粒度分布は、上述の第1~3の極大点に加えて、他の極大点を有していてもよい。
<窒化ホウ素粉末の製造方法>
本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末の製造方法の一例を以下説明する。
本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末は、例えば、粒度分布が上記第1の極大点を有する第1の窒化ホウ素粉末、粒度分布が上記第2の極大点を有する第2の窒化ホウ素粉末、及び粒度分布が上記第3の極大点を有する第3の窒化ホウ素粉末をそれぞれ作製し、作製した第1~3の窒化ホウ素粉末を混合して窒化ホウ素粉末のブレンド品を作製し、反応性シリコーンオイルを用いて、そのブレンド品の表面処理を行うことにより、製造することができる。なお、反応性シリコーンオイルを使用して第1~3の窒化ホウ素粉末をそれぞれ表面処理し、表面処理した第1~3の窒化ホウ素粉末を混合することにより、本発明の放熱シートに使用される窒化ホウ素粉末を製造してもよい。
第1~3の窒化ホウ素粉末のうち、第2及び3の窒化ホウ素粉末は、それぞれ塊状窒化ホウ素粒子を少なくとも含む窒化ホウ素粉末であることが好ましい。また、第1の窒化ホウ素粉末は、塊状窒化ホウ素粒子であってもよいが、六方晶窒化ホウ素一次粒子であることが好ましい。第1~3の窒化ホウ素粉末それぞれの極大点は、第1~3の窒化ホウ素粉末それぞれの粒度分布においてピークの頂点を意味する。第1~3の窒化ホウ素粉末の粒度分布は、上述した窒化ホウ素粉末の粒度分布と同様にして測定される。
混合工程では、第3の窒化ホウ素粉末の体積割合が第2の窒化ホウ素粉末の体積割合より多くなるように、そして第2の窒化ホウ素粉末の体積割合が第1の窒化ホウ素粉末の体積割合より多くなるように、第1~3の窒化ホウ素粉末を混合してもよい。これにより、窒化ホウ素粉末の充填性をさらに高めることができる。第3の窒化ホウ素粉末の体積割合は、放熱シートの熱伝導率を向上させる観点から、第1~3の窒化ホウ素粉末の合計100体積部に対して、好ましくは66~90体積部であり、より好ましくは72~80体積部である。第2の窒化ホウ素粉末の体積割合は、放熱シートの熱伝導率を向上させる観点から、第1~3の窒化ホウ素粉末の合計100体積部に対して、好ましくは9~27体積部であり、より好ましくは15~21体積部である。第1の窒化ホウ素粉末の体積割合は、放熱シートの熱伝導率を向上させる観点から、第1~3の窒化ホウ素粉末の合計100体積部に対して、好ましくは1~18体積部であり、より好ましくは5~12体積部である。
第1~3の窒化ホウ素粉末のそれぞれは、例えば、塊状の炭化ホウ素を粉砕する粉砕工程と、粉砕された炭化ホウ素を窒化して炭窒化ホウ素を得る窒化工程と、炭窒化ホウ素を脱炭させる脱炭工程とを備える製造方法により製造することができる。このように製造された窒化ホウ素粉末の一次粒子である鱗片状の六方晶窒化ホウ素粒子では、端面の面積が大きくなるので、窒化ホウ素粒子の表面に存在するOH基の量を多くすることができる。
粉砕工程では、塊状の炭素ホウ素(炭化ホウ素塊)を一般的な粉砕機または解砕機を用いて粉砕する。このとき、例えば、粉砕時間及び炭化ホウ素塊の仕込み量を調整することにより、所望の極大点を有する炭化ホウ素粉末を得ることができる。なお、炭化ホウ素粉末の極大点は、上述した窒化ホウ素粉末の極大点と同様に測定することができる。このように、炭化ホウ素粉末の極大点を所望の窒化ホウ素粉末の極大点に近づけるよう調整することにより、上述した極大点を有する第1~3の窒化ホウ素粉末が得られる。
続いて、窒化工程では、窒化反応を進行させる雰囲気下かつ加圧条件下で、炭化ホウ素粉末を焼成することにより、炭窒化ホウ素を得る。
窒化工程における雰囲気は、窒化反応を進行させる雰囲気であり、例えば、窒素ガス及びアンモニアガス等であってよく、これらの一種単独または2種以上の組合せであってよい。当該雰囲気は、窒化のしやすさとコストの観点から、好ましくは窒素ガスである。当該雰囲気中の窒素ガスの含有量は、好ましくは95体積%以上、より好ましくは99.9体積%以上である。
窒化工程における圧力は、好ましくは0.6MPa以上、より好ましくは0.7MPa以上であり、好ましくは1.0MPa以下、より好ましくは0.9MPa以下である。当該圧力は、さらに好ましくは0.7~1.0MPaである。窒化工程における焼成温度は、好ましくは1800℃以上、より好ましくは1900℃以上であり、好ましくは2400℃以下、より好ましくは2200℃以下である。焼成温度は、さらに好ましくは1800~2200℃である。圧力条件及び焼成温度は、炭化ホウ素の窒化をさらに好適に進行させ、工業的にも適切な条件であることから、好ましくは、1800℃以上かつ0.7~1.0MPaである。
窒化工程における焼成時間は、窒化が十分に進む範囲で適宜選定され、好ましくは6時間以上、より好ましくは8時間以上であり、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下であってよい。
脱炭工程では、窒化工程にて得られた炭窒化ホウ素を、常圧以上の雰囲気にて、所定の保持温度で一定時間保持する熱処理を行う。これにより、脱炭かつ結晶化された六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集してなる塊状窒化ホウ素粒子を得ることができる。
脱炭工程における雰囲気は、常圧(大気圧)の雰囲気または加圧された雰囲気である。加圧された雰囲気の場合、圧力は、例えば0.5MPa以下、好ましくは0.3MPa以下であってよい。
脱炭工程では、例えば、まず、所定の温度(脱炭開始可能な温度)まで昇温した後に、所定の昇温速度で保持温度までさらに昇温する。所定の温度(脱炭開始可能な温度)は、系に応じて設定可能であり、例えば、1000℃以上であってよく、1500℃以下であってよく、好ましくは1200℃以下である。所定の温度(脱炭開始可能な温度)から保持温度へ昇温する速度は、例えば5℃/分以下であってよく、好ましくは、4℃/分以下、3℃/分以下、または2℃/分以下であってもよい。
保持温度は、粒成長が良好に起こりやすく、得られる窒化ホウ素粉末の熱伝導率をさらに向上できる観点から、好ましくは1800℃以上、より好ましくは2000℃以上である。保持温度は、好ましくは2200℃以下、より好ましくは2100℃以下であってよい。
保持温度における保持時間は、結晶化が十分に進む範囲で適宜選定され、例えば、0.5時間超えであってよく、粒成長が良好に起こりやすい観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上、特に好ましくは10時間以上である。保持温度における保持時間は、例えば40時間未満であってよく、粒成長が進みすぎて粒子強度が低下することを低減でき、また、コスト削減の観点から、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下である。
脱炭工程においては、原料として、窒化工程で得られた炭窒化ホウ素に加えて、ホウ素源を混合して脱炭及び結晶化を行ってもよい。ホウ素源としては、ホウ酸、酸化ホウ素、またはその混合物が挙げられる。この場合、必要に応じて当該技術分野で用いられるその他の添加物をさらに用いてもよい。
炭窒化ホウ素とホウ素源との混合割合は、適宜選定される。ホウ素源としてホウ酸または酸化ホウ素を用いる場合、ホウ酸または酸化ホウ素の割合は、炭窒化ホウ素100質量部に対して、例えば100質量部以上であってよく、好ましくは150質量部以上であり、また、例えば300質量部以下であってよく、好ましくは250質量部以下である。
以上のようにして得られる窒化ホウ素粉末に対して、篩によって所望の粒度分布を有する窒化ホウ素粉末が得られるように分級する工程(分級工程)を実施してもよい。これにより、所望の極大点を有する第1~3の窒化ホウ素粉末がさらに好適に得られる。
得られた第1~3の窒化ホウ素粉末を混合して、上述の第1~3の極大点を有する粒度分布を有するブレンド品を得ることができる。混合方法は、第1~3の窒化ホウ素粉末を均一に混合することができれば、特に限定されない。例えば、容器回転型混合装置を用いて第1~3の窒化ホウ素粉末を混合してもよいし、容器固定型混合装置を用いて第1~3の窒化ホウ素粉末を混合してもよいし、流体運動型混合装置を用いて第1~3の窒化ホウ素粉末を混合してもよい。
得られたブレンド品は、反応性シリコーンオイルにより表面処理される。上述したように、反応性シリコーンオイルによる表面処理は、窒化ホウ素粉末及び反応性シリコーンオイルを乾式混合することによって行ってもよいし、窒化ホウ素粉末及び反応性シリコーンオイルに対して溶媒を加えて、湿式混合することによって行ってもよい。しかし、反応性シリコーンオイルによる表面処理は、乾式混合により行うことが好ましい。例えば、攪拌機付き処理装置を用意し、そこに窒化ホウ素粉末を充填する。攪拌機を高速攪拌させ、そこに反応性シリコーンオイルの原液、または反応性シリコーンオイルを溶媒に溶解したものを滴下、またはスプレー処理する。なお、攪拌機付き処理装置には、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、V型ブレンダー、自転・公転ミキサーなどが挙げられる。上記溶媒には、例えば、トルエン、キシレンなどの溶解度係数(SP値)が比較的小さい芳香族系溶媒等が挙げられる。反応性シリコーンオイルと窒化ホウ素粒子のOH基との脱水縮合反応を促進するために、反応性シリコーンオイルによる表面処理は、加熱しながら行ってもよい。また、反応性シリコーンオイルと窒化ホウ素粒子のOH基との脱水縮合反応で発生した水分を除去するために、反応性シリコーンオイルによる表面処理を行った窒化ホウ素粉末に対して乾燥処理を行ってもよい。窒化ホウ素粉末中の窒化ホウ素粒子の表面に反応性シリコーンオイルを十分になじませるために、反応性シリコーンオイルによる表面処理を行った窒化ホウ素粉末に対して熟成を行ってもよい。
反応性シリコーンオイルによる窒化ホウ素粉末の樹脂に対する濡れ性改善の効果と反応性シリコーンオイル添加による窒化ホウ素粉末の製造コスト上昇とのバランスから、反応性シリコーンオイルの添加量は、窒化ホウ素粉末100質量部に対して、好ましくは0.01~50質量部であり、より好ましくは0.1~30質量部であり、さらに好ましくは0.3~15質量部である。
(樹脂)
本発明の放熱シートに使用される樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴムを含む)、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアミド(例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等)、ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂などが挙げられる。これらの中で、耐熱性、柔軟性及びヒートシンク等への密着性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂は有機過酸化物による加硫して硬化するものが好ましい。また、熱伝導性樹脂組成物の25℃における粘度は、シート状の成形体の柔軟性を改善する観点から、例えば、100,000cp以下である。
(熱伝導性樹脂組成物)
熱伝導性樹脂組成物において、窒化ホウ素粉末および樹脂の合計100体積%に対する窒化ホウ素粉末の含有量は、30~85体積%が好ましく、40~80体積%がより好ましい。窒化ホウ素粉末の含有量が30体積%以上の場合、熱伝導率が向上し、十分な放熱性能が得られやすい。また、窒化ホウ素粉末の含有量が85体積%以下の場合、成形時に空隙が生じやすくなることを低減でき、絶縁性や機械強度が低下することを低減できる。また、窒化ホウ素粉末および樹脂の合計100体積%に対する樹脂の含有量は、15~70体積%が好ましく、20~60体積%がより好ましい。
熱伝導性樹脂組成物の粘度を調節するために、熱伝導性樹脂組成物は溶媒をさらに含んでもよい。溶媒は、樹脂を溶解でき、熱伝導性樹脂組成物を塗布したのち、塗布した熱伝導性樹脂組成物から容易に除去されるものであれば特に限定されない。樹脂がシリコーン樹脂である場合、溶媒には、例えば、トルエン、キシレン、塩素系炭化水素などが挙げられる。除去が容易であるという観点から、これらの溶媒の中でトルエンが好ましい。溶媒の含有量は、熱伝導性樹脂組成物の目的とする粘度により適宜選択することができる。溶媒の含有量は、例えば、熱伝導性樹脂組成物の溶媒以外の成分100質量部に対して40~200質量部である。
なお、熱伝導性樹脂組成物は、窒化ホウ素粉末、樹脂成分および溶媒以外の成分が含まれてもよい。その他の成分は、窒化ホウ素粉末以外の無機フィラー、添加剤、不純物等であり、その他の成分の含有量は、窒化ホウ素粉末および樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下である。
放熱シートはガラスクロスを含むことが好ましい。これにより、放熱シートの取扱い中に放熱シートが破損することを抑制できる。熱伝導性樹脂組成物とガラスクロスとの間に隙間ができることを抑制するために、ガラスクロスにシランカップリング処理を施してもよい。
(放熱シートの製造方法)
本発明の放熱シートは、例えば、本発明の窒化ホウ素粉末と樹脂とを配合して熱伝導性樹脂組成物を作製する工程(A)、熱伝導性樹脂組成物をシート状に成形して、熱伝導性樹脂組成物シートを作製する工程(B)、及び熱伝導性樹脂組成物シートを加熱及び加圧する工程(C)を含む製造方法により製造することができる。
(工程(A))
工程(A)では、窒化ホウ素粉末と樹脂とを配合して熱伝導性樹脂組成物を作製する。工程(A)で使用する窒化ホウ素粉末及び樹脂については、既に説明したので、説明を省略する。
(工程(B))
工程(B)では、熱伝導性樹脂組成物をシート状に成形して、熱伝導性樹脂組成物シートを作製する。例えば、ドクターブレード法またはカレンダー加工によって熱伝導性樹脂組成物をシート状に成形することができる。しかし、熱伝導性樹脂組成物がカレンダーロールを通過する際、熱伝導性樹脂組成物中の塊状窒化ホウ素粒子から塊状窒化ホウ素粒子の一部が剥がれるおそれがある。したがって、ドクターブレード法により熱伝導性樹脂組成物をシート状に成形することが好ましい。
(工程(C))
工程(C)では、熱伝導性樹脂組成物シートを加熱及び加圧する。これにより、放熱シート中の窒化ホウ素粉末の充填性をさらに高めることができ、放熱シートの熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、これにより、放熱シート中のボイドもさらに低減できるので、放熱シートの熱伝導性をさらに優れたものとすることができるとともに、放熱シートの絶縁性を改善することができる。窒化ホウ素粉末の充填性の改善の観点及び放熱シート中のボイドの低減の観点から、熱伝導性樹脂組成物シートの加熱温度は、好ましくは120~200℃であり、より好ましくは130~180℃である。さらに、熱伝導性樹脂組成物シートの加圧する際の圧力は、好ましくは1~10MPaであり、より好ましくは3~7MPaである。
なお、工程(C)では、熱伝導性樹脂組成物シート及びガラスクロスの積層体を作製し、その積層体を真空下で加熱及び加圧してもよい。これにより、ガラスクロスを備えた放熱シートを作製することができる。
以下、本発明について、実施例及び比較例により、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例の窒化ホウ素粉末の原料に用いた窒化ホウ素粉末(原料窒化ホウ素粉末)に対して以下の評価を行った。
(平均粒子径)
原料窒化ホウ素粉末の平均粒子径の測定にはベックマンコールター製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置、(LS-13 320)を用いた。得られた平均粒子径は、測定処理の前にホモジナイザーをかけずに原料窒化ホウ素粉末を測定したものを平均粒子径値として採用した。また、得られた平均粒子径は体積統計値による平均粒子径である。
実施例及び比較例の窒化ホウ素粉末に対して以下の評価を行った。
(反応性シリコーン由来のピーク強度)
錠剤作製用のKBr結晶小片を粉砕して、KBr粉末を作製した。KBr粉末と窒化ホウ素粉末との質量比が100:1となるように、KBr粉末に窒化ホウ素粉末を加え、よく混ぜた。具体的には、KBr粉末及び窒化ホウ素粉末の混合物をメノウ乳鉢で乳棒を用いて力強くつぶしながら均一に混ぜ、表面にうろこ状の模様が現れるまで擦り続けた。得られた混合物の粉末は、KBr錠剤成形器にスパチュラを使用して移し、約10tonの圧力をかけて透明な錠剤を成形した。得られた錠剤を専用の錠剤ホルダーに移して、フーリエ変換赤外分光光度計(商品名:OPUS、ブルカー社製)を使用して、赤外線吸収スペクトルを測定した。そして、Si-O-Siの変角振動に帰属する赤外線吸収ピーク(1100cm-1±10cm-1)のピーク強度を調べた。そして、Si-O-Siの変角振動に帰属する赤外線吸収ピーク(1100cm-1±10cm-1)を反応性シリコーン由来のピーク強度とした。なお、参照スペクトルには、KBr粉末のみで作製した錠剤を測定したスペクトルを使用した。
(粒度分布)
窒化ホウ素粉末の粒度分布の測定には、ベックマンコールター製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置、(LS-13 320)を用いた。なお、粒度分布の測定前に、ホモジナイザー等を使用して窒化ホウ素粉末を分散させる処理は行わなかった。
(BN由来のB-OHピーク強度)
錠剤作製用のKBr結晶小片を粉砕して、KBr粉末を作製した。KBr粉末と窒化ホウ素粉末との質量比が100:1となるように、KBr粉末に窒化ホウ素粉末を加え、よく混ぜた。具体的には、KBr粉末及び窒化ホウ素粉末の混合物をメノウ乳鉢で乳棒を用いて力強くつぶしながら均一に混ぜ、表面にうろこ状の模様が現れるまで擦り続けた。得られた混合物の粉末は、KBr錠剤成形器にスパチュラを使用して移し、約10tonの圧力をかけて透明な錠剤を成形した。得られた錠剤を専用の錠剤ホルダーに移して、フーリエ変換赤外分光光度計(商品名:OPUS、ブルカー社製)を使用して、赤外線吸収スペクトルを測定した。そして、B-OH伸縮振動に帰属する赤外線吸収ピーク(3220cm-1±10cm-1)のピーク強度を調べた。そして、B-OH伸縮振動に帰属する赤外線吸収ピーク(3220cm-1±10cm-1)をBN由来B-OHピーク強度とした。なお、参照スペクトルには、KBr粉末のみで作製した錠剤を測定したスペクトルを使用した。
実施例及び比較例の放熱シートに対して以下の評価を行った。
(表面硬度)
放熱シートの表面硬度は、アスカーCタイプの試験機(商品名:アスカーゴム硬度計C型、高分子計器株式会社製)を用いて、25℃の試験温度でSRIS0101に準拠するスプリング硬さ試験で測定した。
(絶縁破壊電圧)
放熱シートの絶縁破壊電圧は、JIS C 2110に準拠して測定した。
具体的には、放熱シートを10cm×10cmの大きさに加工し、加工した放熱シートの一方の面にφ25mmの円形の銅層を形成し、他方の面は面全体に銅層を形成して試験サンプルを作製した。
試験サンプルを挟み込むように電極を配置し、電気絶縁油(商品名:FC-3283、スリーエム ジャパン株式会社製)中で、試験サンプルに交流電圧を印加した。電圧の印加開始から平均10~20秒後に絶縁破壊が起こるような速度(500V/s)で、試験サンプルに印加する電圧を0Vから上昇させた。一つの試験サンプルにつき15回絶縁破壊が起きたときの電圧V15(kV)を測定した。そして、電圧V15(kV)を試験サンプルの厚さ(mm)で割り算して絶縁破壊強さ(kV/mm)を算出した。
(ボイドの面積率、ボイドの直径及びボイドの形状)
放熱シートをダイヤモンドカッターで断面加工後、CP(クロスセクションポリッシャー)法により加工し、試料台に固定した後にオスミウムコーティングを行った。そして、放熱シートの断面を走査型電子顕微鏡(例えば「JSM-6010LA」(日本電子社製))を用いて1000倍の倍率で10視野撮影した。画像解析ソフト(商品名:Mac-View、株式会社マウンテック社製)を使用して、撮影した放熱シートの断面の画像において、ボイドが抽出できるように、撮影した画像を2値化し、放熱シートの断面におけるボイドの面積率をその放熱シートの断面におけるボイドの面積率とした。
また、撮影した画像を2値化して抽出した、全てのボイドの直径を測定し、直径の大きい順に測定した直径を並べ、上位10個の直径の平均の直径をボイド直径とした。なお、ボイドの形状が円形でない場合は、ボイドを外接する円の直径をボイド直径とした。
さらに、撮影した画像を観察して、ボイドの形状を調べた。
(熱伝導率)
ASTM D5470:2017に記載の方法に準拠して、放熱シートの熱伝導率を測定した。
以下のようにして、複数の極大点を有する窒化ホウ素粉末の原料となる、1つの極大点を有する窒化ホウ素粉末A~Gを作製した。
(窒化ホウ素粉末A)
以下のように、炭化ホウ素合成、加圧窒化工程、脱炭結晶化工程にて、窒化ホウ素粉末Aを作製した。
(炭化ホウ素合成工程)
新日本電工株式会社製オルトホウ酸(以下ホウ酸)100質量部と、デンカ株式会社製アセチレンブラック(HS100)35質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、黒鉛ルツボ中に充填し、アーク炉にて、アルゴン雰囲気で、2200℃にて5時間加熱し炭化ホウ素(BC)を合成した。合成した炭化ホウ素塊をボールミルで3時間粉砕し、篩網を用いて粒径75μm以下に篩分け、さらに硝酸水溶液で洗浄して鉄分等不純物を除去後、濾過・乾燥して平均粒子径5.0μmの炭化ホウ素粉末を作製した。
(加圧窒化工程)
合成した炭化ホウ素を窒化ホウ素ルツボに充填した後、抵抗加熱炉を用い、窒素ガスの雰囲気で、2000℃、9気圧(0.8MPa)の条件で10時間加熱することにより炭窒化ホウ素(BCN)を得た。
(脱炭結晶化工程)
合成した炭窒化ホウ素100質量部と、ホウ酸90質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、窒化ホウ素ルツボに充填し、抵抗加熱炉を用い0.2MPaの圧力条件で、窒素ガスの雰囲気で、室温から1000℃までの昇温速度を10℃/min、1000℃からの昇温速度を2℃/minで昇温し、焼成温度2020℃、保持時間10時間で加熱することにより、一次粒子が凝集して塊状になった凝集窒化ホウ素粒子を合成した。合成した凝集窒化ホウ素粒子をヘンシェルミキサーにより15分解砕をおこなった後、篩網を用いて、篩目75μmのナイロン篩にて分級を行った。焼成物を解砕及び分級することより、窒化ホウ素粉末Aを得た。
得られた窒化ホウ素粉末Aのレーザー散乱法により測定した平均粒子径(D50)は7.0μmであった。SEM観察の結果、得られた窒化ホウ素粉末Aは鱗片状の窒化ホウ素粒子であった。
(窒化ホウ素粉末B)
平均粒子径3μmの炭化ホウ素粉末を用いた点を除いて、窒化ホウ素粉末Aと同様な方法で窒化ホウ素粉末Bを作製した。なお、得られた窒化ホウ素粉末Bのレーザー散乱法により測定した平均粒子径(D50)は5.0μmであった。SEM観察の結果、得られた窒化ホウ素粉末Bは、鱗片状の窒化ホウ素粒子であった。
(窒化ホウ素粉末C)
平均粒子径15μmの炭化ホウ素粉末を用いた点を除いて、窒化ホウ素粉末Aと同様な方法で窒化ホウ素粉末Cを作製した。なお、得られた窒化ホウ素粉末Cのレーザー散乱法により測定した平均粒子径(D50)は20μmであった。SEM観察の結果、得られた窒化ホウ素粉末Cは、一次粒子が凝集してなる塊状集窒化ホウ素粒子であった。
(窒化ホウ素粉末D)
平均粒子径12μmの炭化ホウ素粉末を用いた点を除いて、窒化ホウ素粉末Aと同様な方法で窒化ホウ素粉末Dを作製した。なお、得られた窒化ホウ素粉末Dのレーザー散乱法により測定した平均粒子径(D50)は18μmであった。SEM観察の結果、得られた窒化ホウ素粉末Dは、一次粒子が凝集してなる塊状集窒化ホウ素粒子であった。
(窒化ホウ素粉末E)
平均粒子径70μmの炭化ホウ素粉末を用いた点、炭化ホウ素合成工程で150μm以下に篩分けした点、脱炭結晶化工程で150μm以下に篩分けをした点を除いて、窒化ホウ素粉末Aと同様な方法で窒化ホウ素粉末Eを作製した。なお、得られた窒化ホウ素粉末Eのレーザー散乱法により測定した平均粒子径(D50)は75μmであった。SEM観察の結果、得られた窒化ホウ素粉末Eは、一次粒子が凝集してなる塊状窒化ホウ素粒子であった。
(窒化ホウ素粉末F)
平均粒子径55μmの炭化ホウ素粉末を用いた点、炭化ホウ素合成工程で150μm以下に篩分けした点、脱炭結晶化工程で150μm以下に篩分けをした点を除いて、窒化ホウ素粉末Aと同様な方法で窒化ホウ素粉末Fを作製した。なお、得られた窒化ホウ素粉末Fのレーザー散乱法により測定した平均粒子径(D50)は70μmであった。SEM観察の結果、得られた窒化ホウ素粉末Fは、一次粒子が凝集してなる塊状窒化ホウ素粒子であった。
(窒化ホウ素粉末G)
平均粒子径32μmの炭化ホウ素粉末を用いた点、炭化ホウ素合成工程で75μm以下に篩分けした点、脱炭結晶化工程で150μm以下に篩分けをした点を除いて、窒化ホウ素粉末Aと同様な方法で窒化ホウ素粉末Gを作製した。なお、得られた窒化ホウ素粉末Gのレーザー散乱法により測定した平均粒子径(D50)は45μmであった。SEM観察の結果、得られた窒化ホウ素粉末Gは、一次粒子が凝集してなる塊状窒化ホウ素粒子であった。
以下のようにして、窒化ホウ素粉末1~9を作製した。
[窒化ホウ素粉末1]
窒化ホウ素粉末A、C及びEの体積比が9:18:73となるように、窒化ホウ素粉末A、C及びEを混合して窒化ホウ素粉末A、C及びEのブレンド品を作製した。
100gの上記ブレンド品及び1gの反応性シリコーンオイル(片末端OH基型ジメチルポリシロキサン、商品名:FM-0425、質量平均分子量:10,000、JNC社製)を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、型式:ARE-310、株式会社シンキー製)に投入し、3分攪拌して、ブレンド品の表面処理を行った。そして、表面処理をしたブレンド品を150℃の温度で4時間加熱して窒化ホウ素粉末1を作製した。
[窒化ホウ素粉末2]
窒化ホウ素粉末A、C及びEの体積比が9:18:73となるように、窒化ホウ素粉末A、C及びEを混合して窒化ホウ素粉末A、C及びEのブレンド品を作製した。
100gの上記ブレンド品及び1gの反応性シリコーンオイル(両末端OH基型ジメチルポリシロキサン、商品名:BLUESIL 48V 80 000、質量平均分子量:150,000、エルケムジャパン株式会社製)を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、型式:ARE-310、株式会社シンキー製)に投入し、3分攪拌して、ブレンド品の表面処理を行った。そして、表面処理をしたブレンド品を150℃の温度で4時間加熱して窒化ホウ素粉末2を作製した。
[窒化ホウ素粉末3]
窒化ホウ素粉末C及びEの体積比が20:80となるように、窒化ホウ素粉末C及びEを混合して窒化ホウ素粉末C及びEのブレンド品を作製した。
100gの上記ブレンド品及び1gの反応性シリコーンオイル(両末端OH基型ジメチルポリシロキサン、商品名:BLUESIL 48V 3 500、質量平均分子量:43,000、エルケムジャパン株式会社製)を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、型式:ARE-310、株式会社シンキー製)に投入し、3分攪拌して、ブレンド品の表面処理を行った。そして、表面処理をしたブレンド品を150℃の温度で4時間加熱して窒化ホウ素粉末3を作製した。
[窒化ホウ素粉末4]
窒化ホウ素粉末A、C及びEの体積比が9:18:73となるように、窒化ホウ素粉末A、C及びEを混合して窒化ホウ素粉末A、C及びEのブレンド品を作製した。
100gの上記ブレンド品及び1gの反応性シリコーンオイル(両末端OH基型ジメチルポリシロキサン、商品名:BLUESIL 48V 3 500、質量平均分子量:43,000、エルケムジャパン株式会社製)を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、型式:ARE-310、株式会社シンキー製)に投入し、3分攪拌して、ブレンド品の表面処理を行った。そして、表面処理をしたブレンド品を150℃の温度で4時間加熱して窒化ホウ素粉末4を作製した。
[窒化ホウ素粉末5]
窒化ホウ素粉末A、C及びGの体積比が9:18:73となるように、窒化ホウ素粉末A、C及びGを混合して窒化ホウ素粉末A、C及びGのブレンド品を作製した。
100gの上記ブレンド品及び1gの反応性シリコーンオイル(両末端OH基型ジメチルポリシロキサン、商品名:BLUESIL 48V 3 500、質量平均分子量:43,000、エルケムジャパン株式会社製)を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、型式:ARE-310、株式会社シンキー製)に投入し、3分攪拌して、ブレンド品の表面処理を行った。そして、表面処理をしたブレンド品を150℃の温度で4時間加熱して窒化ホウ素粉末5を作製した。
[窒化ホウ素粉末6]
窒化ホウ素粉末B、D及びFの体積比が9:18:73となるように、窒化ホウ素粉末B、D及びFを混合して窒化ホウ素粉末B、D及びFのブレンド品を作製した。
100gの上記ブレンド品及び1gの反応性シリコーンオイル(両末端OH基型ジメチルポリシロキサン、商品名:BLUESIL 48V 3 500、質量平均分子量:43,000、エルケムジャパン株式会社製)を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、型式:ARE-310、株式会社シンキー製)に投入し、3分攪拌して、ブレンド品の表面処理を行った。そして、表面処理をしたブレンド品を150℃の温度で4時間加熱して窒化ホウ素粉末6を作製した。
[窒化ホウ素粉末7]
窒化ホウ素粉末A、C及びGの体積比が9:18:73となるように、窒化ホウ素粉末A、C及びGを混合して窒化ホウ素粉末A、C及びGのブレンド品を作製した。
100gの上記ブレンド品及び0.2gのシランカップリング剤(ジメチルジメトキシシラン、商品名:DOWSIL Z-6329 Silane、質量平均分子量:136、ダウ・東レ株式会社製)を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、型式:ARE-310、株式会社シンキー製)に投入し、3分攪拌して、ブレンド品の表面処理を行った。そして、表面処理をしたブレンド品を150℃の温度で4時間加熱して窒化ホウ素粉末7を作製した。
[窒化ホウ素粉末8]
窒化ホウ素粉末A、C及びEの体積比が9:18:73となるように、窒化ホウ素粉末A、C及びEを混合して、窒化ホウ素粉末8を作製した。
[窒化ホウ素粉末9]
窒化ホウ素粉末A、C及びEの体積比が9:18:73となるように、窒化ホウ素粉末A、C及びEを混合して窒化ホウ素粉末A、C及びEのブレンド品を作製した。
100gの上記ブレンド品及び1gの反応性シリコーンオイル(両末端OH基型ジメチルポリシロキサン、商品名:YF3897、質量平均分子量:300,000、モメンティブ社製)を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、型式:ARE-310、株式会社シンキー製)に投入し、3分攪拌して、ブレンド品の表面処理を行った。そして、表面処理をしたブレンド品を150℃の温度で4時間加熱して窒化ホウ素粉末9を作製した。
窒化ホウ素粉末1~9を使用して、以下のようにして放熱シートを作製した。
[放熱シートの作製]
得られた窒化ホウ素粉末及び液状シリコーン樹脂(メチルビニルポリシロキサン、商品名:CF-3110、ダウ・東レ株式会社製)の合計100体積%に対して、65体積%の窒化ホウ素粉末及び35体積%の液状シリコーン樹脂、シリコーン樹脂100質量部に対して1質量部の硬化剤(2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、商品名:リゴノックス101、化薬ヌーリオン株式会社製)及び上述の原料の合計100質量部に対して110質量部のトルエンを攪拌機(商品名:スリーワンモーター、HEIDON社製)に投入し、タービン型撹拌翼を用いて15時間混合して熱伝導性樹脂組成物のスラリーを作製した。
そして、ドクターブレード法により、上記スラリーを厚さ0.05mmのペットフィルム(キャリアフィルム)上に厚さ0.5mmで塗工し、75℃で5分乾燥させて、ペットフィルム付きのシート状成形体を作製した。2枚のペットフィルム付きのシート状成形体でガラスクロス(商品名:H25、ユニチカ株式会社製)をサンドイッチして、積層体を作製した。なお、この積層体の層構造はペットフィルム/熱伝導性樹脂組成物/ガラスクロス/熱伝導性樹脂組成物/ペットフィルムであった。次いで、得られた積層体に対して、真空下(圧力3.5kPa)、温度155℃、圧力5MPaの条件で30分間の加熱プレスを行い、両面のペットフィルムを剥離して厚さ1.0mmのシートとした。次いで、それを常圧、150℃で4時間の2次加熱を行い、放熱シートとした。
評価結果を以下の表1に示す。また、窒化ホウ素粉末1を使用して作製した放熱シートの電子顕微鏡による断面観察写真を図2に示し、窒化ホウ素粉末7を使用して作製した放熱シートの電子顕微鏡による断面観察写真を図3に示す。図2に示すように、窒化ホウ素粉末1を使用して作製した放熱シートの断面には、ボイドがほとんど見られなかった。図3に示すように、窒化ホウ素粉末7を使用して作製した放熱シートの断面にはボイドはあったものの(矢印参照)、ボイドの面積は小さかった。
Figure 0007293522000001
以上の評価結果から、シランカップリング剤で表面処理した窒化ホウ素粉末を用いることにより、表面硬度がアスカーC硬度で60~95度であり、絶縁破壊電圧が15kV/mm以上である放熱シートを作製できることがわかった。しかし、反応性シリコーンオイルで表面処理した窒化ホウ素粉末を用いることにより、表面硬度がアスカーC硬度で60~95度であり、絶縁破壊電圧が15kV/mm以上である上に、さらに熱伝導率が高い放熱シートを作製できることがわかった。

Claims (2)

  1. 質量平均分子量が5000~200000である反応性シリコーンオイルで表面処理された窒化ホウ素粉末を含み、
    表面硬度がアスカーC硬度で60~95度であり、
    絶縁破壊電圧が15kV/mm以上である放熱シート。
  2. 厚さ方向に切断したときの断面におけるボイドの面積率が5.0%以下である請求項1に記載の放熱シート。
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