以下、図面を参照しながら、超音波診断装置の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
[超音波診断装置の構成]
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、超音波診断装置1は、患者に対して超音波の送受信(送受波)を行う超音波プローブ2と、当該超音波プローブ2と無線及び有線を介して通信可能な装置3とを備えている。
超音波診断装置1は、患者内部の診断対象部位などを非侵襲に調べることができ、先端に振動子(圧電振動子)を備えた超音波プローブ2から患者の内部に向けて超音波を送信する。そして患者内部で音響インピーダンスの不整合によって生ずる反射波を超音波プローブ2の振動子で受信する。
超音波プローブ2は、各超音波振動子により患者内に超音波を送信してスキャン領域を走査し、患者からの反射波を反射信号として受信する。超音波プローブ2は、このようにして得られた受信信号を、データとして装置3へ送信する。データには、ひとまとまり毎に超音波プローブ2によりヘッダ情報が付されている。つまり、ひとまとまりのデータは、ヘッダ情報を含む。なお、このスキャンとしては、例えばBモードスキャン、カラードプラモードスキャン、ドプラモードスキャンなど各種のスキャンがある。また、超音波プローブ2には、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等があり、診断部位に応じて任意に選択される。図1に示すように、超音波プローブ2は、送受信機構20と、経路制御部21と、バッテリ22と、図示しない振動子等を備える。経路制御部21は、自走カウンタ211を備える。
装置3は、超音波プローブ2から受信したデータに基づいて、超音波画像を生成する。図1に示すように、装置3は、送受信機構30と、経路制御部31と、受信部32と、画像生成部33と、ディスプレイ34と、入力部35と、通信制御部36と、記憶部37と、制御部38と、送信部39とを備える。装置3の各要素は、互いにバスBに接続され、各種信号のやりとりが可能とされている。経路制御部31は、特定部311と、切替部312とを備える。
ここで、まず、超音波プローブ2と装置3との間の通信を説明する。図2は、第1の実施形態に係る超音波プローブ2と装置3との間で通信を行うために設けられた構成を説明するブロック図である。超音波プローブ2は、経路制御部21に接続されたトランスミッタ(TX)23と、経路制御部21に接続されたレシーバ(RX)24とをさらに備える。トランスミッタ23は、振動子を介して患者に超音波を送信する。また、レシーバ24は、患者内で反射して戻ってきた超音波を受信する。
超音波プローブ2の送受信機構20は、経路制御部21に接続された無線通信機構201と、経路制御部21に接続されたUSBデバイスコントローラ202と、USBデバイスコントローラ202に接続されたUSBポート203とを備える。送受信機構20は、無線通信及び有線通信を介して、或いはいずれかの通信経路を介して、装置3へデータを送信する送信機能を有する。また、送受信機構20は、装置3から、超音波プローブ2に対する駆動信号を受信する受信機能を有する。送受信機構20の送信機能は、請求の範囲における送信部に該当する。
装置3の送受信機構30は、経路制御部31に接続された無線通信機構301と、経路制御部31に接続されたUSBホストコントローラ302と、USBホストコントローラ302に接続されたUSBポート303とを備える。送受信機構30は、無線通信及び有線通信を介して、或いはいずれかの通信経路を介して、超音波プローブ2からデータを受信する。
超音波プローブ2が備える無線通信機構201及び装置3が備える無線通信機構301は、いずれも無線通信を行うためのワイヤレスモジュールである。このような構成を備えているため、経路制御部21と経路制御部31との間には、無線通信機構201及び無線通信機構301を経由する無線通信の経路が確立される。このようにして、経路制御部21と経路制御部31は無線通信を行う。
超音波プローブ2が備えるUSBデバイスコントローラ202及び装置3が備えるUSBホストコントローラ302は、いずれもUSBの通信を制御するためのコントローラである。医療従事者がUSBポート203とUSBポート303の間をケーブルLで接続することにより、経路制御部21と経路制御部31との間には、USBデバイスコントローラ202、USBポート203、ケーブルL、USBポート303、及びUSBホストコントローラ302を経由する有線通信の経路が確立される。このようにして、経路制御部21と経路制御部31は有線通信を行う。
超音波プローブ2と装置3は、以上説明したような構成を備えていることから、互いの間で通信を行い、データの送受信を行う。その通信の経路としては、無線通信と有線通信の2種類の経路がある。超音波プローブ2は、バッテリ22の残量がある間は、無線でデータを送信することができる。
しかし、超音波プローブ2のバッテリ22の残量が低下した場合、無線状態が悪化した場合等において、医療従事者が無線接続から有線接続に切り替えたい場合がある。その場合、医療従事者は、超音波プローブ2を患部に当てている状態で、超音波プローブ2のUSBポート203と装置3のUSBポート303とをケーブルLで接続することができる。
なお、無線通信と有線通信は、それぞれ既存の方式であって良い。ここでは、有線接続の例として、USBコネクタを用いた有線通信について説明するが、その他のコネクタを経由したケーブル接続を用いても良い。
以下、再び図1を参照して超音波プローブ2の構成要素について、さらに説明する。バッテリ22は、超音波プローブ2が装置3との間で無線通信を行っている場合、超音波プローブ2の各構成要素に電力を供給する。超音波プローブ2と装置3との間がケーブルLで接続されると、超音波プローブ2の各構成要素に対しては、装置3から電力が供給される。そしてバッテリ22は、装置3からケーブルLを介して送られた電力により充電される。
経路制御部21の自走カウンタ211は、例えば、n、n+1、n+2のように数が増える、即ちインクリメントされていくカウンタ値を出力し、出力したカウンタ値をIDとしてデータに付す。自走カウンタ211は、例えば、IDをデータのヘッダ情報に含ませるように付す。つまり、ヘッダ情報はIDを含む。そして、データはヘッド情報を含むので、IDも含む。自走カウンタ211は、出力したカウンタ値を、データが取得された順に順次IDとしてデータに付していく。つまり、超音波プローブ2から出力されるデータは、IDを含む。IDは、データが取得された時系列の順序及び送受信されたデータの時系列の順序を示す。自走カウンタ211は、特許請求の範囲における識別情報出力機構の一例である。IDは、特許請求の範囲における識別情報に該当する。
経路制御部21は、送受信機構20を介して装置3の経路制御部31との間で通信を行う。例えば、経路制御回路21は、無線通信及び有線通信を介して、或いはいずれかの通信経路を介して、IDを含むデータを装置3へ送信する。
経路制御部21は、データが取得された順で、無線通信を介してデータを装置3へ送信する。また、超音波プローブ2と装置3との間で無線通信が行われている状態において、超音波プローブ2と装置3との間が有線接続されたことを経路制御部21が検出した場合、経路制御部21は、今までの無線の通信経路に加えて有線の通信経路を追加する。そして、経路制御部21は、無線通信と有線通信との両方を介して同じデータを二重に装置3へ順次送信する。即ち、経路制御部21は、無線通信及び有線通信の両方で、同一のデータに、同一のIDを付して送信する。また、経路制御部21は、無線通信と有線通信とを介して同じデータを二重に送信している状態において、後に説明する、無線通信から有線通信への切り替えが完了したことを示す完了信号を装置3から受信した場合、無線通信を停止する。経路制御部21は、特許請求の範囲における経路制御部に該当する。
ここで、データに含まれるヘッダ情報は、超音波プローブ2と装置3との間の通信経路を示す経路情報をさらに含んでいる。この経路情報は、データが無線を介して送受信されたのか、有線を介して送受信されたのかを示す。経路制御部21は、この経路情報を、ヘッダ情報の1ビットを使用してデータに付しても良い。
なお、無線の通信経路に加えて有線の通信経路を追加する場合としては、例えば、バッテリ22の残量が低下した場合や無線の通信状態が悪化した場合等を挙げることができる。超音波プローブ2又は装置3は、バッテリ22の残量が低下したこと、又は無線通信状態が悪化したことを示す、図示しないインジケータを備えていても良い。
次に以下、装置3の構成要素について説明する。経路制御部31は、送受信機構30を介して装置3の経路制御部31との間で通信を行う。例えば、経路制御回路31は、無線通信及び有線通信を介して、或いはいずれかの通信経路を介して、超音波プローブ2から送信されたデータを受信する。ここでは、無線通信を介して送受信されたデータを無線データ、有線通信を介して送受信されたデータを有線データと表すことにする。
経路制御部31は、送受信機構30を介して超音波プローブ2からのデータを受け取り、受け取ったデータを出力する。出力されたデータは、装置3の他の構成要素において処理され、超音波画像が生成される。
経路制御部31は、超音波プローブ2と装置3との間で無線通信が行われている場合、送受信機構30を介して無線データを受信し、受信した無線データを出力する。この状態において、経路制御部31が超音波プローブ2と装置3との間が有線で接続されたことを検出した場合、経路制御部31は、無線通信と有線通信との両方を介して同じデータを二重に受け取る。この段階では、経路制御部31は有線データと無線データの両方のデータを受け取っているが、出力するのは無線データである。そして、経路制御部31は、受け取った無線データ及び有線データに基づいて、出力するデータを無線データから有線データに切り換える切替処理を行う。以下に、切替処理について説明する。なお、経路制御部31は、切替処理を行う際、受信した有線データ及び無線データを一旦記憶部37に保存する。または、経路制御部31は図示しない一時記憶部を有し、受信した有線データ及び無線データを一時記憶部に保存しても良い。
経路制御部31の特定部311は、データの連続性を確保できる有線データから、出力するデータを切り替える。まず、経路制御部31の特定部311は、受信したデータに含まれる経路情報に基づき、データが無線データであるのか、有線データであるのかを判定する。なお、本実施形態においては、超音波プローブ2の経路制御部21がこの経路情報をデータに付して送信しているので、経路制御部31が受信したデータは経路情報を含む。しかし、受信したデータに経路情報が付されていない場合には、経路制御部31は、データが無線通信機構301を介して受信されたのか、USBホストコントローラ302を介して受信されたのかを判断することにより、受信したデータが有線データであるのか、判定しても良い。
次に、特定部311は、受け取った無線データ及び有線データに含まれるIDを取得する。特定部311は、取得したIDに基づき、データをどこまで受け取ったのかを判断することができる。また、特定部311は、無線データと有線データとのうち、いずれのデータを早く受信したのかを判断できる。さらに、特定部311は、データに含まれるIDを確認すれば、データが取得された時系列の順序及び送受信されたデータの時系列の順序を把握できる。
そして、特定部311は、同じIDを含む有線データと無線データの受信時刻に基づき、無線データに有線データが追いついたか否かを判定する。例えば、特定部311は、同じIDを含む有線データと無線データの受信時刻を比較することにより、受信したデータの受信の先後を判定して、無線データに有線データが追いついたか否かを判定する。ここで、受信時刻は、経路制御部31がデータの受信を開始した時刻である開始時刻と、経路制御部31がデータの受信を完了した時刻又は完了する時刻である完了時刻とを含む。なお、本実施形態においては、経路制御部31がデータを受信した時刻を受信時刻としているが、送受信機構30がデータを受信した時刻を受信時刻としても良い。さらに、装置3がデータを受信した時刻を受信時刻としても良い。この場合、装置3がデータを受信した時刻は、経路制御部31がデータを受信した時刻、受信機構30がデータを受信した時刻を含む。なお、この受信時刻は記憶部37に保存されても良い。
また、一般的に、通信速度は有線通信の方が無線通信よりも速い。しかし、有線通信では、超音波プローブ2と装置3との間がケーブルで接続された後、通信を開始するまでに少し時間がかかる。例えば、USB接続された場合に、有線通信を行うための初期設定が行われるからである。そのため、経路制御部31は、初めのうちは、有線データを無線データより遅れて受け取る。ここで、遅れるとは、同じIDを含む無線データと有線データにおいて、有線データの完了時刻は、無線データの完了時刻より後ということである。
しかし、有線通信の通信速度は無線通信の通信速度より速いため、ある時点で有線データは無線データに追いつく。ここで追いつくとは、同じIDを含む無線データと有線データにおいて、有線データの完了時刻は、無線データの完了時刻と同じ又は無線データの完了時刻より前ということである。特定部311は、有線データの完了時刻と無線データの完了時刻を比較することによって、有線データが無線データに追いついたか否かを判定する。
また、上述のように、通信速度は有線通信の方が無線通信よりも速い。よって、同じIDを含む無線データと有線データにおいて、有線データの開始時刻が無線データの開始時刻と同じ又は無線データの開始時刻より前であれば、必然的に、有線データの完了時刻は、無線データの完了時刻より前となる。よって、特定部311は、有線データの開始時刻と無線データの開始時刻を比較することによっても、有線データの完了時刻が無線データの完了時刻より前となるか否かを判定でき、それにより有線データが無線データに追いついたか否かを判定できる。このように、特定部311は、同じIDを含む有線データと無線データの受信時刻を比較することにより、無線データに有線データが追いついたか否かを判定する。そして、特定部311は、無線データに追いついたと判定した有線データを、切替データとして特定する。切替データは、出力するデータを無線データから有線データに切り換える際に、経路制御部31により最初に出力される有線データである。
そして、経路制御部31の切替部312は、特定部311により特定された切替データから、出力するデータを無線データから有線データに切り換える。そして、経路制御部31は、切替部312による切替が完了すると、切替が完了したことを示す完了信号を、送受信機構30を介して超音波プローブ2へ送信する。
図3は、第1の実施形態に係る装置3のデータ受信状況を示す図である。図3のデータ群aは無線データを示し、データ群bは、有線データを示す。即ち、データ群aは、超音波プローブ2から装置3に対して、無線通信の経路を介して送信されるデータDを示している。一方、データ群bは、超音波プローブ2から装置3に対して、有線通信の経路を介して送信されるデータDを示している。また、図3に示すそれぞれのデータDは、装置3が、無線通信、或いは、有線通信で超音波プローブ2から受信したデータDを示している。
一つの符号Dで示されるデータは、超音波プローブ2から装置3に送信されるひとまとまりのデータを示している。また、データ群a、bの各データDは、データDの先端に付されたヘッダ情報を含み、さらにヘッダ情報はID及び経路情報を含む。IDは、超音波プローブ2から装置3に送信される前に、自走カウンタ211によってデータDごとに付加される。図3の例では、上述したように、超音波プローブ2から送信されるデータDにおいて、IDはn、n+1、n+2、n+3・・・のように1ずつインクリメントするように付加されている。また、同じIDを含むデータは、同じデータである。
なお、図3の例ではIDのインクリメントは1ずつに設定されている。しかし、あるIDに時間的に連続する次のIDを装置3の経路制御部31が把握できれば良く、インクリメントの量は1ずつに限定されない。また、図3に示すデータ群aの各データDの長さは、データ群bの各データDの長さより長く表示されている。これは、無線通信は有線通信に比べて通信速度が遅いため、同じデータであってもデータの受信に時間がかかっていることを表している。さらに、図3の各データの先頭の位置は、経路制御部31がデータの受信を開始した開始時刻を表し、後端の位置は、経路制御部31がデータの受信を完了した完了時刻を表している。
ここで、データDが超音波プローブ2から装置3に送信される際の通信経路が、無線通信から有線通信へと切り替えられる処理について、以下説明する。まず、装置3は、超音波プローブ2から無線データであるデータ群aを受信している。この状態において、医療従事者が、図示しないインジケータを見て、又はディスプレイに表示された画像を見て、バッテリ22の残量が低下したことや無線通信状態が悪化したこと認識するとする。医療従事者は、超音波プローブ2を患部に当てている状態で、ケーブルLを用いて超音波プローブ2と装置3とを接続する。
経路制御部21、31は、図3に示す矢印cのタイミングで超音波プローブ2と装置3とが有線で接続されたことを検出すると、まず、有線で接続するための初期設定(Enumeration)dを行う。初期設定dが終わると、経路制御部21、31は無線通信に加えて有線通信を開始する。図3の例では、初期設定dの後に、IDとしてn+3を含むデータから経路制御部31による受信が開始されている。ここで、有線通信では初期設定dを行う関係上、有線データは、同じIDを含む無線データより遅れて経路制御部31による受信が開始される。しかし、有線通信の方が無線通信よりデータの転送速度が速いため、この遅れは徐々に解消されてゆき、有線データはある所で無線データに追いつく。
図3の点線eは、経路制御部31が出力するデータを示す。経路制御部31は、図3の点線eに示すように、n+4のIDが付されたデータまでは無線データを出力する。即ち、n+3のIDを有する無線データfの完了時刻とn+3のIDを有する有線データgの完了時刻とを比較すると、有線データgの完了時刻は、無線データfの完了時刻より後である。よって、経路制御部31の特定部311は、有線データgは、無線データfに追いついていないと判定する。同様に、n+4のIDを有する無線データhと、n+4のIDを有する有線データiについても、経路制御部31の特定部311は、有線データiは、無線データhに追いついていないと判定する。
そして、図3の点線eに示すように、経路制御部31は、n+5のIDが付されたデータから、有線データを出力する。n+5のIDを有する無線データkの完了時刻とn+5のIDを有する有線データjの完了時刻とを比較すると、有線データjの完了時刻は、無線データkの完了時刻より前である。よって、特定部311は、有線データjの完了時刻は、無線データkの完了時刻より前であると判定し、有線データjは、無線データkに追いついたと判定する。そして、特定部311は、有線データjを切替データとして特定する。切替部312は、特定された切替データに関する情報を特定部311から受ける。そして当該特定された切替データから、即ちn+5のIDを有する有線データjから、出力するデータを無線データから有線データに切り換える。
切り替えが完了すると、経路制御部31は完了信号を超音波プローブ2に送信し、完了信号を受信した経路制御部21は、無線通信を停止する。そして、経路制御部31は、無線データを受信しなくなる。以上が経路制御部31の説明である。
受信部32は、経路制御部31により出力されたデータを受け取り、データに基づく受信信号に対して整相加算を行い、その整相加算により取得した信号を画像生成部33に出力する。
画像生成部33は、受信部32からデータを受け取り、受け取ったデータを画像生成に用いる。画像生成部33は、図示しない信号処理部と、画像処理部とを有する。画像生成部33の信号処理部は、当該データに基づく反射信号を処理する。信号処理部は、経路制御部31から供給された超音波プローブ2からの受信信号を用いて各種のデータを生成し、画像処理部や制御部38に出力する。信号処理部は、いずれも図示しない、例えば、Bモード処理回路(或いは、Bcモード処理回路)やドプラモード処理回路、カラードプラモード処理回路などを有している。Bモード処理回路は、受信信号の振幅情報の映像化を行い、Bモード信号を基にしたデータを生成する。ドプラモード処理回路は、受信信号からドプラ偏移周波数成分を取り出し、さらに、FFT(Fast Fourier Transform)処理などを施し、血流情報のドプラ信号のデータを生成する。カラードプラモード処理回路は、受信信号に基づいて血流情報の映像化を行い、カラードプラモード信号を基にしたデータを生成する。
画像生成部33の画像処理部は、信号処理部から供給されたデータに基づいてスキャン領域に関する二次元や三次元の超音波画像を生成する。例えば、画像処理部は、供給されたデータからスキャン領域に関するボリュームデータを生成する。そしてその生成したボリュームデータからMPR処理(多断面再構成法)により二次元の超音波画像のデータやボリュームレンダリング処理により三次元の超音波画像のデータを生成する。画像処理部は、生成した二次元や三次元の超音波画像をディスプレイ34に出力する。なお、超音波画像としては、例えば、Bモード画像やドプラモード画像、カラードプラモード画像、Mモード画像などがある。また、複数のモードを組み合わせて超音波画像を生成することもある。
ディスプレイ34は、画像処理部により生成された超音波画像、検査処理に利用する検査プロトコル、或いは、操作画面(例えば、ユーザから各種指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface))などの各種画像を制御部38の制御に従って表示する。このディスプレイ34としては、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどを用いることが可能である。
入力部35は、例えば、画像表示、画像の切り替え、モード指定や各種設定などのユーザによる様々な入力操作を受け付ける。この入力部35としては、例えば、GUI、或いは、ボタン、キーボード、トラックボール、ダイアルやディスプレイ34に表示されるタッチパネル等の入力デバイスを用いることが可能である。また、その他、入力部35として、マウスや上下左右の方向キーを用いることも可能である。
なお、本明細書及び図面の実施形態においては、図1に示すように、ディスプレイ34、入力部35を超音波診断装置1の1つの構成要素として記載しているが、このような構成に限られない。例えば、ディスプレイ34を超音波診断装置1の構成要素ではなく、超音波診断装置1とは別体に構成することも可能である。また、入力部35を当該別体のディスプレイを用いたタッチパネルとすることも可能である。
通信制御部36は、図示しない通信ネットワークに互いに接続される、例えば、図示しない医用画像診断装置(モダリティ)、サーバ装置や医用画像処理装置等と超音波診断装置1とを接続させる役割を担っている。通信ネットワークの例としては、LAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワークを挙げることができる。
また、この通信制御部36及び通信ネットワークを介して他の機器とやり取りされる情報や医用画像に関する規格は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等、いずれの規格であっても良い。また、通信ネットワーク等との接続に当たっては、有線、無線を問わない。
記憶部37は、例えば、半導体や磁気ディスクで構成されており、経路制御部21、31、制御部38で実行されるプログラムやデータ、生成された画像データ等が記憶されている。また、例えば、無線データ及び有線データに含まれるID、無線データ及び有線データの受信時刻を記憶しても良い。
なお、本明細書及び図面の実施形態においては、超音波診断装置1内に記憶部37が設けられている場合を前提に以下、説明する。但し、超音波診断装置1と無線、有線を問わず接続される、サーバ装置やハードディスクドライブ等の外部記憶媒体を記憶部として利用することとしても良い。
またここでは、各種プログラム、データや超音波プローブ2から送信されてくる信号等は全て記憶部37内に記憶されていることを前提としている。但し、記憶部37を複数設けて、各種プログラム、データや超音波プローブ2から送信されてくる信号等をそれぞれ別に記憶させることも可能である。
制御部38は、超音波診断装置1の各部を統括的に制御する。制御部38は、例えば、検査者からの入力部35を介しての操作指示を入力信号として受け付け、所望の操作が行われるよう、各部を制御する。
送信部39は、超音波プローブ2に対する駆動信号の生成を行う。送信部39は、制御部38による制御に基づき、超音波プローブ2に超音波を発生させるための駆動信号、即ち各圧電振動子に印加する電気パルス信号(以下、「駆動パルス」という)を生成し、その駆動パルスを、送受信機構30を介して超音波プローブ2に送信する。送信部39は、図示しない、例えば、基準パルス発生回路、遅延制御回路、駆動パルス発生回路等の各回路を備えており、各回路が上述した機能を果たす。以上が装置3の構成の説明である。
[動作]
次に、超音波診断装置1の動作について、説明する。図4は、第1の実施形態に係る超音波プローブ2の経路制御部21と装置3の経路制御部31が行う処理を示すフローチャートである。装置3の経路制御部31は、通信経路として無線を介して、超音波プローブ2の経路制御部21からデータを受信している(ステップSa11、ステップSb11)。これは、超音波プローブで取得されたデータが無線を介して装置3に送信可能なように、超音波プローブ2と装置3とが無線で接続されている状態である。
そして、超音波プローブ2と装置3が無線で接続されている状態において、経路制御部21及び経路制御部31は、超音波プローブ2と装置3とが有線で接続されたことを検出したか否か、判定する(ステップSa12、ステップSb12)。
一方、有線で接続されたことを検出した場合(ステップSa12:YES、ステップSb12:YES)、経路制御部21及び経路制御部31は、今までの無線の通信経路に加えて有線の通信経路を追加する。そして、経路制御部31は、無線及び有線の両方を通信経路として経路制御部21からデータを受信する(ステップSa13、ステップSb13)。この時点では、経路制御部31は同じデータを無線通信及び有線通信を介して受信しているものの、経路制御部31が出力するのは無線通信を介して受信したデータである。
次に、装置3の経路制御部31は、無線通信から有線通信へ切り替える切替処理を行う(ステップSb14)。経路制御部31は、この切替処理を通じて、出力するデータを無線データから有線データに切り替える。切替処理の流れについては、後に図5を用いて説明する。そして、装置3の経路制御部31は、ステップSb14の切替処理が完了すると、切替が完了したことを示す完了信号を超音波プローブ2の経路制御部21へ送信する(ステップSb15)。
超音波プローブ2の経路制御部21は、ステップSa13の次に、経路制御部31からの完了信号を受信したか否か、判定する(ステップSa14)。完了信号を受信したと判定した場合(ステップSa14:YES)、経路制御部21は無線通信を停止する(ステップSa15)。即ち、超音波プローブ2は無線を介してデータを装置3に送信することを止める。これにより、通信経路は有線接続のみになる。
なお、ステップSa12、Sb12において有線で接続されたことを検出しない場合(ステップSa12:NO、ステップSb12:NO)、経路制御部21及び経路制御部31は、超音波プローブ2と装置3とが有線で接続されたことを検出したか否かの判定(ステップSa12、Sb12)を繰り返す。この場合は、装置3は、引き続き無線を介して超音波プローブ2からデータを受信する。また、ステップSa14において完了信号を受信したと判定しない場合(ステップSa14:NO)、経路制御部21は、完了信号を受信したか否かの判定(ステップSa14)を繰り返す。この場合は、超音波プローブ2は、引き続き無線、有線の両者を介して装置3に対してデータを送信する。
以下、経路制御部31による切替処理について、図5を参照して説明する。図5は、第1の実施形態に係る切替処理の一例を説明するフローチャートである。装置3の経路制御部31、経路制御部31の特定部311及び切替部312は、経路制御部31が受信したデータについて図5のフローチャートに示す処理を行う。
まず、経路制御部31の特定部311は、例えばデータに含まれる経路情報に基づいて、経路制御部31が受信したデータは有線データであるのか否かを判定する(ステップSb21)。即ち、受信したデータが有線データであるのか無線データであるのかを判定する。有線データであると判定された場合(ステップSb21:YES)、特定部311は、当該有線データからIDを取得する(ステップSb22)。一方、有線データではないと判定された場合(ステップSb21:NO)、経路制御部31が受信したデータは無線データであるので、特定部311は、当該無線データからIDを取得する(ステップSb23)。
次に、特定部311は、同じIDを含む有線データ及び無線データについて、有線データが無線データに追いついたか否かを判定する(ステップSb24)。この追いついたか否かの判定処理の流れについては、後に図6を用いて説明する。特定部311により追いついたと判定された場合(ステップSb24:YES)、特定部311は、当該有線データを切替データとして特定する(ステップSb25)。そして、経路制御部31の切替部312は、切替データから出力するデータを無線データから有線データに切り替える。即ち、無線通信から有線通信に切り替え(ステップSb26)、処理を終了する。経路制御部31は、切替処理が完了すると、図4のフローチャートのステップSb15に移行し、切替が完了したことを示す完了信号を超音波プローブ2の経路制御部21へ送信する。
一方、ステップSb24において追いついたと判定されない場合(ステップSb24:NO)、経路制御部31は、当該無線データを出力して(ステップSb27)、処理は終了する。処理の終了後、特定部311は、経路制御部31が受信した、次のIDを有するデータに対して、図5のフローチャートに示された処理を行う。
次に、ステップSb24の有線データが追いついたか否かの判定処理について説明する。図6は、第1の実施形態に係る、追いついたか否かの判定処理の一例を説明するフローチャートである。特定部311は、図5のフローチャートにおいて取得された、同じIDを含む有線データ及び無線データについて、経路制御部31が有線データの受信を開始した時刻である開始時刻t1と、経路制御部31が無線データの受信を開始した時刻である開始時刻t2とを比較し(ステップSb31)、開始時刻t1が開始時刻t2と同じ或いは開始時刻t1が開始時刻t2より前という条件を満たすか否かを判定する(ステップSb32)。なお、このような条件を、図6のステップSb32においては、「t1≦t2」というように不等号を使って表している。
例えば、図3の例において、n+5のIDを有する有線データjの開始時刻t1と同n+5のIDを有する無線データkの開始時刻t2とを比較すると(ステップSb31)、t1=t2、即ち開始時刻t1と開始時刻t2は同じである。よって、特定部311は、t1≦t2の条件を満たす。即ち開始時刻t1が開始時刻t2と同じ或いは開始時刻t1が開始時刻t2より前という条件を満たすと判定する(ステップSb32:YES)。通信速度は有線通信の方が無線通信よりも速いので、特定部311は、経路制御部31が有線データの受信を完了する完了時刻は、経路制御部31が無線データの受信を完了する完了時刻より前になると判断できる。よって、特定部311は、有線データjは無線データkに追いついたと判断する(Sb33)。
一方、n+4のIDを有する有線データiの開始時刻t1と同n+4のIDを有する無線データhの開始時刻t2とを比較すると(ステップSb31)、t1>t2である。即ち開始時刻t1は開始時刻t2より後である。よって、特定部311は、t1≦t2の条件を満たさない、即ち開始時刻t1が開始時刻t2と同じ或いは開始時刻t1が開始時刻t2より前という条件を満たさないと判定する(ステップSb32:NO)。この場合は、開始時刻だけで有線データが無線データに追いついたか否かを判定できないので、ステップSb34に進み、特定部311は、同じIDを含む有線データと無線データの完了時刻を比較する。それは、無線データの方が開始時刻が早くても、有線データの方が完了時刻が早ければ追いついたと判定することができるからである。特定部311は、経路制御部31が有線データの受信を完了する完了時刻t3と、経路制御部31が無線データの受信を完了する完了時刻t4とを比較し(ステップSb34)、開始時刻t1が開始時刻t2と同じ或いは開始時刻t1が開始時刻t2より前という条件を満たすか否かを判定する(ステップSb35)。なお、このような条件を、図6のステップSb35においては、「t3≦t4」というように不等号を使って表している。
例えば、図3の例において、n+4のIDを有する有線データiの完了時刻t3と同n+4のIDを有する無線データhの完了時刻t4とを比較すると(ステップSb34)、t3>t4である、即ち完了時刻t3は完了時刻t4より後である。よって、特定部311は、t3≦t4の条件を満たさない、即ち完了時刻t3が完了時刻t4と同じ或いは完了時刻t3が完了時刻t4より前という条件を満たさないと判定する(ステップSb35:NO)。このため、特定部311は、有線データiは、無線データhに追いついていないと判定する。(Sb36)。
一方、同じIDを含む有線データ及び無線データにおいて、有線データの完了時刻t3が無線データの完了時刻t4と同じ或いは有線データの完了時刻t3が無線データの完了時刻t4より前という条件を満たす場合(ステップSb35:YES)、特定部311は、当該有線データは無線データに追いついたと判定する(ステップSb33)。
このような処理が行われることによって、無線接続時に行っていた診断の状態を維持しつつ、切り替え動作をシームレスに行い、診断の連続性を維持することができる。これにより、複雑な同期処理が不要になる。また、経路制御部31は、受信したデータに含まれるID及び受信時刻に基づき、無線データに有線データが追いついたか否かを確認した上で、経路を切り替えるので、データの不連続性を回避し、そのまま連続して切り替え前のデータから引き継いでデータを受け取ることができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、第2の実施形態に係る超音波診断装置1の構成要素のうち、第1の実施形態において説明した超音波診断装置1と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図7は、第2の実施形態に係る装置3のデータ受信状況を示す図である。第2の実施形態においては、ラスタ画像のように複数のラスタデータで一つの超音波画像を形成する場合の切り替えについて、説明する。本実施形態では、例として、Bモードを用いてラスタ画像を取得している際の切り替えについて、説明する。
第2の実施形態が第1の実施形態と相違するのは、図7の無線データ群a及び有線データ群bが、複数のデータで1セットとなるラスタデータにより構成されている点である。ラスタデータの先頭となるデータl、k、jの先頭には、ビームインデックスmが付されている。つまり、データl、k、jは、ビームインデックスmを含んでいる。ビームインデックスmは、ラスタデータの区切りであるラスタ境界を示す。例えば、図7のビームインデックスmを含む無線データl、kは、ラスタデータの先頭のデータである。また、ビームインデックスmは、一枚のラスタ画像の境界を示すフレーム境界を示す場合がある。例えば、図7のビームインデックスmを含む無線データlはラスタデータの先頭のデータであり、ビームインデックスmを含む無線データkは次のフレームの先頭のデータであっても良い。ラスタデータの先頭のデータのビームインデックスmは、特許請求の範囲における区切り情報に該当する。また、複数のデータの区切りを示す区切り情報を含むデータは、特許請求の範囲における第1のデータに該当する。なお、図7では、便宜的に10のデータから成るラスタデータを示すが、1つのラスタデータを構成するデータの数は、10に限定されない。
第2の実施形態においては、有線データが無線データに追いついているか否かを判定する処理に加えて、ビームインデックスmに基づき、ラスタ境界又はフレーム境界であるか否かを判定する処理も行う。これにより、経路制御部31は、ラスタ境界又はフレーム境界のように、区切りの良い位置で無線データから有線データに切り換える。
まず、第1の実施形態で説明したように、経路制御部31の特定部311は、同じIDを含む有線データと無線データの受信時刻に基づき、無線データに有線データが追いついたか否かを判定する。そして、特定部311は、追いついたと判定された有線データがビームインデックスmを含んでいるか否かを判定する。有線データがビームインデックスmを含んでいる場合、特定部311は、ビームインデックスmは切替位置を示すか否かを判定する。そして、特定部311は、判定した結果に基づき、切替データを特定する。ここで、切替位置とは、ラスタ境界又はフレーム境界のいずれかである。切替位置をラスタ境界及びフレーム境界のどちらに設定するのかは、医療従事者等が予め選択できる。医療従事者は、例えば入力部32を介して切替位置を装置3に入力しても良い。選択された切替位置を示す情報である切替位置情報は、記憶部37に保存される。そして、ビームインデックスmが療従事者等により予め選択された切替位置を示すと判定すると、特定部311は、そのビームインデックスmを含む有線データを切替データとして特定する。なお、記憶部37に記憶された切替位置情報が示す切替位置がラスタ境界である場合、特定部311は、ビームインデックスmは切替位置を示すか否かを判定する処理を省略しても良い。即ち、特定部311は、追いついたと判定された、ビームインデックスmを含む有線データを切替データとして特定する。
ここで、特定部311は、ビームインデックスmが切替位置を示すか否かの判定は、有線データが無線データに追いついたか否かの判定の後に行っているが、有線データが無線データに追いついたか否かの判定の前に行っても良い。つまり、特定部311は、受信した有線データがビームインデックスmを含んでいるか否かを判定する。ビームインデックスmを含んでいる場合、特定部311は、ビームインデックスmは切替位置を示すか否かを判定する。ビームインデックスmは切替位置を示すと判定すると、特定部311は、その有線データが同じIDを有する無線データに追いついているか否かを判定する。そして、追いついたと判定したら、特定部311は、その有線データを切替データであると判定しても良い。切替データであると判定される有線データは、ラスタ境界又はフレーム境界を示すビームインデックスmを有すること、同じIDを有する無線データに追いついていると判定されていること、という2つの条件を満たすデータである。
[動作]
以下、経路制御部31による切替処理について、図8を参照して説明する。図8は、第2の実施形態に係る切替処理の一例を説明するフローチャートである。装置3の経路制御部31、経路制御部31の特定部311及び切替部312は、経路制御部31が受信したデータについて、図8のフローチャートに示す処理を行う。なお、図8のステップSb40からステップSb43の処理、及びステップSb46からステップSb48の処理は、図5のステップSb21からステップSb24の処理、及びステップSb25からステップSb27の処理と同じであるので、ここでは説明を省略する。
経路制御部31の特定部311は、ステップSb43において有線データが無線データに追いついたと判定されると(ステップSb43:YES)、当該有線データはビームインデックスmを含むか否か、判定する(ステップSb44)。例えば図7の例において、特定部311は、有線データjが無線データkに追いついたと判定すると、有線データjはビームインデックスmを含むか否か、判定する。
特定部311が、有線データはビームインデックスmを含むと判定した場合(ステップSb44:YES)、特定部311は、有線データのビームインデックスmは、切替位置情報が示す切替位置を示すか否かを判定する(ステップSb45)。図7の有線データjはビームインデックスmを含むので、特定部311は、ビームインデックスmを含むと判定する。そして、特定部311は、有線データjのビームインデックスmが、記憶部37に記憶された切替位置情報が示す切替位置を示すか否かを判定する。
切替位置情報は、医療従事者により予め選択された切替位置を示す情報である。例えば、切替位置情報がフレーム境界を示す場合、有線データjに含まれるビームインデックスmがフレーム境界を示すか否か、判定する。また、例えば、切替位置情報がラスタ境界を示す場合、有線データjに含まれるビームインデックスmがラスタ境界を示すか否か、判定する。切替位置を示すと判定した場合(ステップSb45:YES)、特定部311は、その有線データを切替データとして特定する(ステップSb46)。
一方、有線データはビームインデックスを含まないと判定した場合(ステップSb44:NO)、及び、ビームインデックスmは切替位置情報が示す切替位置を示さないと判定した場合(ステップSb45:NO)、経路制御部31は、無線データを出力して(ステップSb48)処理は終了する。つまり、本実施形態においては、たとえ有線データが無線データに追いついている場合であっても、中途半端な位置、例えば、ラスタデータの途中、又は1フレームの途中においては、経路制御部31はデータの切り替えを行わない。処理の終了後、特定部311は、経路制御部31が受信した、次のIDを有するデータに対して、図5のフローチャートに示された処理を行う。
なお、記憶部37に記憶された切替位置情報が示す切替位置がラスタ境界である場合、特定部311は、ステップSb45のビームインデックスmは切替位置を示すか否かを判定する処理を省略しても良い。即ち、特定部311は、追いついたと判定された、ビームインデックスmを含む有線データを切替データとして特定する。
以上、Bモードを用いてラスタ画像を取得している際の切り替えについて説明した。ここで、カラーモードを用いて画像を取得している場合、前フレームのデータとの相関を演算すること、およびフレーム内の画像の整合性をもたせるため、フレーム境界で切り替える。装置3は、カラーモードで画像を取得していることを検出すると、切替位置情報をフレーム境界に設定しても良い。
このような処理が行われることによって、ラスタ画像のように複数のラスタデータで一つの超音波画像を形成する場合の切り替えについては、ラスタ境界やフレーム境界のような区切りの良い所で切り替えることができ、中途半端な位置での切り替えを防止できる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第3の実施形態に係る超音波診断装置1の構成要素のうち、第1の実施形態、第2の実施形態において説明した超音波診断装置1と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図9は、第3の実施形態に係る装置3のデータ受信状況を示す図である。第3の実施形態においては、超音波プローブ2がBモードで取得されたデータを一部間引いて装置3に送信している場合の切り替えについて、説明する。超音波プローブ2から装置3へ無線を介してデータを送信する場合、無線の送受信の帯域が制限されることより送信速度が遅くなり、超音波プローブ2は、全てのデータを送信しようとすると送信が間に合わない場合がある。そこで、超音波プローブ2は、取得されたデータの全てを送信せず、取得されたデータの一部を間引いた間引きデータを送信することがある。第3の実施形態においては、超音波プローブ2が、取得されたデータの一部を間引いて装置3に送信している場合の切替について、説明する。
図9のデータ群pは、超音波プローブ2において取得されたデータ群である。図9のデータ群pは、第2の実施形態と同様に、複数のデータで1セットとなるラスタデータにより構成されている。ここでは、便宜的に10のデータから成るラスタデータを示すが、1つのラスタデータを構成するデータの数は、10に限定されない。
図9のデータ群aは、装置3が受信した無線データである。超音波プローブ2は、例えば、データ群pのデータD1からD10のデータのうち、データD1、データD3、データD5、データD7、データD9のように、1つ飛ばしでデータを無線で送信する。超音波プローブ2は、データD11以降のデータについても、同様に間引いて送信する。つまり、超音波プローブ2が送信する各ラスタデータは、図9の例では、データが1つ飛ばしで半分に間引かれている。装置3は、超音波プローブから1つ飛ばしで送信された無線データを受信する。装置3は、間引かれたラスタデータに基づき、Bモード画像を生成する。
図9のデータ群bは、装置3が受信した有線データである。有線通信の通信速度は無線通信の通信速度より速いため、超音波プローブ2において取得されたデータ群pを、超音波プローブ2は、間引くことなく全て送信することができる。そして、装置3は、超音波プローブ2から送信された有線データを受信する。
装置3は、間引かれている無線データから、間引かれていない有線データへ切り替える。装置3は、第2の実施形態と同様に、ビームインデックスmに基づき、経路制御部31は、ラスタ境界又はフレーム境界で無線データから有線データに切り換える。それは、ラスタデータの途中で切り替えると、データ量と区切りの位置が変更され、正しく画像を構成することができなくなるからである。
例えば、図9において、有線データD7は無線データD7に追いついている。しかし、経路制御部31が有線データD7を切替データとして特定し、特定された有線データD7から出力するデータを有線データに切り換えたとする。そして、経路制御部31はデータD5までは無線データを出力し、データD7から有線データを出力する。すると、このラスタデータは、データD1、データD3、データD5、データD7、データD8、データD9、データD10の計7のデータにより構成されることになる。つまり、ラスタデータの前半は間引かれているのに、後半は間引かれていない状態となる。そして、各ラスタデータを構成するデータの数も、無線で送信されたラスタデータとも、有線で送信されたラスタデータとも異なる数になっている。このようなデータを画像生成に用いると、整合性がとれないため、画像が乱れてしまう。よって、データの間引きがある場合には、たとえ有線データが無線データに追いついていたとしても、経路制御部31はラスタデータの途中で切り替えることはしない。そして、経路制御部31は、ラスタ境界又はフレーム境界に相当する有線データを受信するのを待って、その有線データを切替データとして特定し、切り替える。
ここで、特定部311は、ビームインデックスmが切替位置を示すか否かの判定は、有線データが無線データに追いついたか否かの判定の前に行っているが、有線データが無線データに追いついたか否かの判定の後に行っても良い。つまり、特定部311は、は、ラスタ境界又はフレーム境界に相当する有線データを受信したら、その有線データが同じIDを有する無線データに追いついているか否かを判定する。そして、追いついたと判定したら、特定部311は、有線データがビームインデックスmを含んでいるか否かを判定する。ビームインデックスmを含んでいる場合、特定部311は、ビームインデックスmは切替位置を示すか否かを判定し、判定した結果に基づき、切替データを特定する。ビームインデックスmは切替位置を示すと判定すると、特定部311は、その有線データは切替データであると判定しても良い。切替データであると判定される有線データは、ラスタ境界又はフレーム境界を示すビームインデックスmを有すること、同じIDを有する無線データに追いついていると判定されていること、という2つの条件を満たすデータである。
[動作]
以下、経路制御部31による切替処理について、図10を参照して説明する。図10は、第3の実施形態に係る切替処理の一例を説明するフローチャートである。装置3の経路制御部31、経路制御部31の特定部311及び切替部312は、経路制御部31が受信したデータについて、図10のフローチャートに示す処理を行う。
まず、経路制御部31の特定部311は、例えばデータに含まれる経路情報に基づいて、経路制御部31が受信したデータは有線データであるのか否かを判定する(ステップSb50)。有線データであると判定された場合(ステップSb50:YES)、特定部311は、当該有線データはビームインデックスmを含むか否か、判定する(ステップSb51)。有線データはビームインデックスmを含むと判定した場合(ステップSb51:YES)、特定部311は、当該有線データからIDを取得する(ステップSb52)。
次に、特定部311は、有線データのビームインデックスmは、切替位置情報が示す切替位置を示すか否かを判定する(ステップSb55)。切替位置を示すと判定した場合(ステップSb55:YES)、特定部311は、同じIDを含む有線データ及び無線データについて、有線データが無線データに追いついたか否かを判定する(ステップSb56)。
ここで、このステップSb56で用いられる無線データは、ステップSb50において、有線データではない(ステップSb50:NO)と判定されたデータである。この無線データについて、特定部311は、さらにビームインデックスmを含むか否かを判定する(ステップSb53)。そして無線データはビームインデックスmを含むと判定した場合(ステップSb53:YES)、特定部311は、当該無線データからIDを取得する(ステップSb54)。このように、ビームインデックスmを含む無線データのIDが取得される。そして、ステップSb56において、特定部311は、同じIDを含む有線データ及び無線データについて、有線データが無線データに追いついたか否かを判定する(ステップSb56)。有線データが無線データに追いついたと判定すると(ステップSb43:YES)、特定部311は、その有線データを切替データとして特定する(ステップSb57)。そして、次のステップSb58は、第2の実施形態の図8のステップSb47と同じである。
なお、ステップSb53において、特定部311により無線データはビームインデックスmを含まないと判定された場合(ステップSb53:NO)、経路制御部31は、当該無線データを出力する(ステップSb59)。また、ステップSb53において、特定部311により無線データはビームインデックスmを含むと判定された場合(ステップSb53:YES)であっても、以下の場合には、経路制御部31は無線データを出力する(ステップSb59)。即ち、ステップSb55において有線データのビームインデックスmは切替位置情報が示す切替位置を示さないと判定された場合(ステップSb55:NO)、及び有線データが無線データに追いついたと判定されない場合(ステップSb56:NO)には、経路制御部31は無線データを出力する(ステップSb59)。
また、ステップSb51において、有線データはビームインデックスmを含まないと判定された場合(ステップSb51:NO)、処理はステップSb50に戻る。
このような処理が行われることによって、超音波プローブ2が無線で間引かれたデータを送信している場合であっても、ラスタ境界やフレーム境界のような区切りの良い所で切り替えることにより、中途半端な位置での切り替えを防止できる。これにより、データの整合性を保つことができるので、生成される画像が乱れることを防止できる。また、ラスタ境界で切り替える場合、切り替え直後から高解像度化できる。一方、フレーム境界で切り替える場合、当該画像内で解像度が均一に確保できる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、第4の実施形態に係る超音波診断装置1の構成要素のうち、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態において説明した超音波診断装置1と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図11は、第4の実施形態に係る装置3のデータ受信状況を示す図である。第4の実施形態においては、複数のモード混在で超音波診断装置1が動作する場合の切り替えについて、説明する。
図11は、スキャン領域に設定されたROI(Reasion Of Interest)に対してカラーモードでスキャンし、カラーモードの前後で2回に分けてBモードでスキャンする場合を示している。図11のデータ群pは、超音波プローブ2において取得されたデータ群であり、符号o1で示す範囲が1フレームを生成する為のデータ群である。データ群pの1フレームのデータは、Bモード画像用のラスタデータ群pb1と、カラーモード画像用のラスタデータ群pclと、Bモード画像用のラスタデータ群pb2とを含む。そして、各ラスタデータ群pbl、pcl、pb2は、複数のラスタデータを含む。符号o1のフレーム(以降フレームo1と表す)の次のフレームを、符号o2で示す。符号o2で示すフレーム(以降フレームo2と表す)も、途中で図示を省略しているが、同様にラスタデータ群pbl、pcl、pb2を含む。
また、データ群aは装置3が受信した無線データであり、データ群bは装置3が受信した有線データである。データ群aのフレームo1、o2のそれぞれは、ラスタデータ群abl、acl、ab2を含む。さらに、データ群bのフレームo1は、ラスタデータ群bcl、bb2を含み、フレームo2は、ラスタデータ群bbl、bcl、bb2を含む。
本実施形態では、無線データから有線データに切り換える切替位置は、モードが切り替わる位置を示すモード境界又はフレーム境界である。図11は、フレームo1とフレームo2の境界、即ちフレーム境界で無線データから有線データに切り換える例を示している。これ以外にも、例えば、ラスタデータ群bblとラスタデータ群bc1との境界であるモード境界、ラスタデータ群bclとラスタデータ群bb2との境界であるモード境界、で切り替えても良い。ここで、図11の例はモード境界が2つある例であるが、モード境界は2つには限定されず、実際のスキャンの態様によって1つであっても良く、3つ以上であっても良い。
経路制御部31の特定部311は、ビームインデックスmは切替位置を示すか否かを判定する。そして、特定部311は、判定した結果に基づき、切替データを特定する。ここで、切替位置とは、モード境界及びフレーム境界のいずれかである。切替位置をモード境界及びフレーム境界のどちらに設定するのかは、医療従事者等が予め選択できる。医療従事者は、例えば入力部32を介して切替位置を装置3に入力しても良い。選択された切替位置を示す情報である切替位置情報は、記憶部37に保存される。経路制御部31、特定部311のこれ以外の機能は、第3の実施形態の特定部311の機能と同じである。
[動作]
以下、経路制御部31による切替処理について説明する。装置3の経路制御部31、経路制御部31の特定部311及び切替部312は、図10のフローチャートに示す処理を行う。この図10のフローチャートは第3の実施形態のフローチャートであるが、本実施形態の処理は、ステップSb55を除いて第3の実施形態の処理と同じである。本実施形態のステップSb55では、特定部311は、有線データのビームインデックスmは、切替位置情報が示す切替位置を示すか否かを判定する(ステップSb55)。そして、この切替位置がモード境界及びフレーム境界のいずれかである。
なお、例えばラスタデータ群ab2、bb2のような、Bモードであるラスタデータ群においては、第2の実施形態において説明したように、ラスタ境界で無線データから有線データに切り換えても良い。
このような処理が行われることによって、複数のモード混在で超音波診断装置1が動作する場合であっても、モード境界やフレーム境界のような区切りの良い所で切り替えることができ、中途半端な位置での切り替えを防止できる。カラーモードは、前フレームのデータとの相関を演算し、画像の整合性を持たせるため、モード境界やフレーム境界で切り替える必要がある。このようなカラーモードを含む場合であっても、適切な切替位置で無線データから有線データに切り換えることができる。
なお、ここでは例えば、超音波診断装置1は、経路制御部21と、経路制御部31と、制御部38とを備えていることを前提に説明を行ってきた。そして、経路制御部31とは、特定部311と切替部312とを備えていることを前提に説明を行ってきた。すなわち、経路制御部21が所定のメモリや記憶部等に記憶される、例えば、特定プログラムといったプログラムをプロセッサに実行させても良い。また、経路制御部31が所定のメモリや記憶部37等に記憶される、例えば、特定プログラムといったプログラムをプロセッサに実行させても良い。
また、制御部38が経路制御部31を含んでいても良い。すなわち、制御回路38が所定のメモリや記憶部37等に記憶される、例えば、特定プログラムといったプログラムをプロセッサに実行させても良い。
ここで本明細書における「プロセッサ」という文言は、例えば、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit) arithmetic circuit(circuitry)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
プロセッサは、例えば記憶部37に保存された、又は、プロセッサの回路内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムを記憶する記憶部は、プロセッサごとに個別に設けられるものであっても構わないし、或いは、例えば、図1における経路制御部が行う機能に対応するプログラムを記憶するものであっても、さらには図1に示す記憶部37の構成を採用しても構わない。記憶部の構成には、例えば、半導体や磁気ディスクといった一般的なRAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置が適用される。
また、上述した経路制御部31を、或いは経路制御部31と、特定部311と、切替部312とを、制御回路38を制御回路として構成し、経路制御機能として、或いは経路制御機能と、特定機能と、切替機能として、制御回路38が実行することとしても良い。
経路制御部31と、特定部311と、切替部312との各機能を、制御回路38を制御回路として構成し、それぞれを個別に経路制御回路、特定回路、切替回路として構成することも可能である。
また、装置3が備える、送受信機構30と、受信部32と、画像生成部33と、入力部35と、通信制御部36と、記憶部37と、送信部39とをそれぞれ、送受信回路30と、受信回路32と、画像生成回路33と、入力回路35と、通信制御回路36と、記憶回路37と、送信回路39と、として構成しても良い。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、このような処理が行われることによって、無線接続時に行っていた診断の状態を維持しつつ、切り替え動作をシームレスに行い、診断の連続性を維持することができる。さらに、データの不連続性を回避し、そのまま連続して切り替え前のデータから引き継いでデータを受け取ることができる。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同志の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。