JP7291341B2 - 回転電機 - Google Patents

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Description

本発明は、回転電機に関する。
一般的な歯車機構は複数の歯車を用い、その歯数比によって変速を行っており、歯同士の接触による振動・騒音が発生するとともに、摩耗による機械的寿命があり、しかも注油などのメンテナンスが必要となる。これに対して、磁気を利用して非接触でトルクを伝達する磁気歯車の開発および実用化が進められている。磁気歯車では非接触でトルク伝達を行うことから上記のような不都合がない。磁気歯車は回転電機の一種である。
磁気歯車の一般的構成としては、例えば特許文献1に示されるように、ケイ素鋼板をベース体として周方向に複数の磁石を配列したインナー歯車およびアウター歯車と、周方向に複数のポールピースを配列したセンターリングとを備え、内径側から外径側に向かってインナー歯車、センターリングおよびアウター歯車の順で同心かつ相対回転可能に構成される。インナー歯車、センターリングおよびアウター歯車のうちいずれか1つを入力部とし、いずれか1つを出力部とし、変速して回転伝達を行う。
非特許文献1では、磁気歯車のセンターロータを固定する場合とアウター歯車を固定する場合とでは異なる変速比が得られること、およびそれらの変速比の計算式が開示されている。
特開2017-225209号公報
安藤「磁気歯車の開発動向」、日本AEM学会誌、Vol24、No.2、2016年、p.15―20
磁気歯車は、インナー歯車とアウター歯車との間でセンターリングを介して相互に磁束が作用して回転伝達が行われる。したがって、アウター歯車およびインナー歯車に設けられた界磁磁石による磁束は径方向に作用することが望ましいが、実際にはケイ素鋼板を通って軸方向に相当の磁束の漏れが発生しており、効率を低下させる要因となっている。特に磁極部の面積が大きいインナー歯車においてこのような磁束の漏れが大きい。このような軸方向の磁束の漏れは他の回転電機においても共通の課題となっている。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、界磁磁石による磁束が軸方向に漏れることを抑制することのできる回転電機を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる回転電機は、内周側界磁体と外周側界磁体との間で径方向に磁束を作用させる回転電機において、前記内周側界磁体および前記外周側界磁体の少なくとも一方は、ヨークと、前記ヨークの周方向に配列された複数の界磁磁石と、前記ヨークの軸方向の少なくとも一方の端面に設けられた複数の磁束漏れ抑制磁石と、を有し、前記ヨークには、同極が周方向に対向する向きで隣接する一対の前記界磁磁石によって挟まれた磁極部が複数形成され、前記磁束漏れ抑制磁石は前記軸方向に着磁され、前記磁極部の端面を覆い、前記磁極部を覆う前記磁束漏れ抑制磁石および前記磁極部を挟む一対の前記界磁磁石は、前記磁極部に対して同極が指向していることを特徴とする。
また、本発明にかかる回転電機は、インナーヨークの周方向に複数のインナー磁石を配列したインナー歯車と、前記インナー歯車に対して外周側に相対回転可能に設けられ、非磁性筒体の周方向に複数の軟磁性体を配列したセンターリングと、前記センターリングに対して外周側に相対回転可能に設けられ、アウターヨークの周方向に複数のアウター磁石を配列したアウター歯車と、前記インナーヨークの軸方向の少なくとも一方の端面に設けられた複数の磁束漏れ抑制磁石と、を有し、前記インナーヨークには、同極が周方向に対向する向きで隣接する一対の前記インナー磁石によって挟まれた磁極部が複数形成され、前記磁束漏れ抑制磁石は前記軸方向に着磁され、前記磁極部の端面を覆い、前記磁極部を覆う前記磁束漏れ抑制磁石および前記磁極部を挟む一対の前記インナー磁石は、前記磁極部に対して同極が指向していることを特徴とする。
前記インナーヨークは前記インナー磁石が埋め込まれるインナー磁石孔を有し、前記インナー磁石孔は、前記インナーヨークの内周面または外周面の少なくとも一方に開口部を有してもよい。
前記インナーヨークは前記開口部が開口する前記内周面または前記外周面が回転軸中心の円周面形状であって、前記インナー磁石における一端の縁は、前記開口部の縁と一致していてもよい。
前記磁極部を挟む前記一対の前記インナー磁石は、内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるように配置されてもよい。
本発明にかかる回転電機では、軸方向に着磁された磁束漏れ抑制磁石が磁極部の端面を覆っており、磁束漏れ抑制磁石および一対の界磁磁石は磁極部に対して同極が指向していることから界磁磁石による磁束が磁極部から軸方向に漏れることを抑制することができる。
図1は、第1の実施形態にかかる磁気歯車を示す分解斜視図である。 図2-1は、第1の実施形態にかかる磁気歯車であり、インナー軸が左側の側面から突出するように組み立てられた状態を示す断面図である。 図2-2は、第1の実施形態にかかる磁気歯車であり、インナー軸が右側の側面から突出するように組み立てられた状態を示す断面図である。 図3は、第1の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの一部拡大正面図である。 図4は、第2の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの一部拡大正面図である。 図5は、第3の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの一部拡大正面図である。 図6は、実施形態にかかる磁気歯車におけるインナー歯車の一部拡大斜視図である。 図7は、第1の実施形態にかかる磁気歯車でインナー歯車におけるインナー磁石と抑制磁石との極性の向きを示す模式斜視図である。 図8は、漏れ磁束と抑制磁石による磁束との関係を示すグラフである。 図9は、抑制磁石およびその変形例の形状を示す図であり、(a)は抑制磁石の形状を示し、(b)は第1の変形例の形状を示し、(c)は第2の変形例の形状を示す図である。 図10は、実施形態にかかる磁気歯車におけるインナーヨークと2つの円盤の分解斜視図である。 図11は、第4の実施形態にかかる磁気歯車を示す分解斜視図である。側の側面から突出するように組み立てられた状態を示す断面図である。 図12は、第4の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの正面図である。 図13は、第4の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの一部拡大正面図である。 図14は、第5の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの一部拡大正面図である。 図15は、第6の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの正面図である。 図16は、解析の比較対象である磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの正面図である。 図17は、第4の実施形態にかかる磁気歯車でインナー歯車におけるインナー磁石と抑制磁石との極性の向きを示す模式斜視図である。
以下に、本発明にかかる回転電機の実施形態である磁気歯車10a,10b,10c,10d,10eおよび10fを図面に基づいて詳細に説明する。なお、回転電機とは電磁的作用を利用した回転機械と解されるが、回転トルクを発生させるのは電気よりも主に磁気の作用である。したがって、電気を用いることなく磁気で動力を伝達させる磁気歯車も当然に回転電機の一種である。前半で磁気歯車10a~10cをまとめて説明し、後半で磁気歯車10d~10fをまとめて説明する。この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、本発明にかかる回転電機の第1実施形態である磁気歯車10aを示す側面模式断面図である。以下、方向を識別するために、図1における軸方向を基準として右上方向をX1方向、左下方向をX2方向とし、各図に方向を示す矢印を表記する。また、内側および内径方向とは回転軸中心を向く方向で、外側または外径方向とはその逆方向とする。さらに、ボルトについてはサイズおよびタイプに拘わらず全てボルトBと呼ぶ。
図1、図2-1に示すように、第1の実施形態にかかる磁気歯車10aは、アウター歯車体12と、インナー歯車(内周側界磁体)14と、センター体16と、アウター軸18と、インナー軸20と、ベース22とを有する。
アウター歯車体12はケーシング24と、アウター歯車(外周側界磁体)26と、アウター側面部28とを有する。ケーシング24は筒体であって、磁気歯車10aにおいてベース22を除く本体部の外枠を形成する。
アウター歯車26はアウターヨーク26aと、NL=31極対(62個)のアウター磁石(界磁磁石)26bとを有する。アウター歯車26は低速ロータとも呼ばれる。アウター歯車26のさらに詳細な構成については後述する。なお、磁気歯車10a~10fで用いる磁石は永久磁石である。
アウター側面部28は磁気歯車10aのX1方向側を覆う蓋体であり、複数のボルトBによりケーシング24のX1方向端面に固定され、アウター歯車26に対して回転不能で一体的に回転する。アウター側面部28はインナー軸20が挿通可能な中心孔28aと、等角度に配置された6つのボルト孔である軸固定部28bと、6つのボルト孔であるベース固定部28cとを有する。軸固定部28bはボルトBによりアウター軸18を固定可能である。ベース固定部28cは軸固定部28bよりも外径側に配置されており、ボルトBによりベース22に固定可能である(図2-2参照)。軸固定部28bとベース固定部28cとの間にはX1方向に突出する環状突起28dが設けられ、該環状突起28dよりも内径側は浅い嵌合溝28eが形成されている。軸固定部28bは嵌合溝28eの底部に設けられている。
インナー歯車14はインナーヨーク14aと、NH=3極対(6個)のインナー磁石(界磁磁石)14bと、抑制磁石17とを有する。抑制磁石17および後述する抑制磁石117は、界磁磁石による磁束が軸方向に漏れることを抑制するためのものであるが、本実施例では単に「抑制磁石」と呼ぶ。抑制磁石17は、インナーヨーク14aに対して軸方向両端面にそれぞれ6つずつ設けられている。インナー歯車14の中心にはインナー軸20が挿通して固定されるインナー軸固定孔15が設けられている。インナー歯車14は高速ロータとも呼ばれる。インナー歯車14のさらに詳細な構成については後述する。
センター体16はセンターリング30と、センター側面部32とを有する。センターリング30はポールホルダ30aと、NS=34個のポールピース30bとを有する。ポールホルダ30aは非磁性体の筒体である。ポールピース30bは軟磁性体であって、ポールホルダ30aに対して周方向に等角度に配列されている。インナーヨーク14a、インナー磁石14b、アウターヨーク26a、アウター磁石26bおよびポールピース30bは、それぞれ軸方向位置と軸方向長さが略等しくなるように設定されている(図2-1参照)。
なお、アウター歯車26におけるアウター磁石26bの極対数NL、インナー歯車14におけるインナー磁石14bの極対数NHおよびセンターリング30におけるポールピース30bの個数NSは、
NS=NL±NH
という関係が成立するように選定される。
磁気歯車10aではNS=34、NL=31、NH=3であり、
34=31+3
という関係が成立している。
センター側面部32は磁気歯車10aのX2方向側を覆う蓋体である。センターリング30とセンター側面部32とは一体成形されて相対回転不能であり、センター側面部32の外周部がセンターリング30のX2方向端面と接続されている。センター側面部32はインナー軸20が挿通可能な中心孔32aと、等角度に配置された6つのボルト孔である軸固定部32bと、等角度に配置された6つのボルト孔であるベース固定部32cとを有する。軸固定部32bはボルトBによりアウター軸18を固定可能である(図2-2参照)。ベース固定部32cは軸固定部32bよりも外径側に配置されており、ボルトBによりベース22に固定される。軸固定部32bとベース固定部32cとの間にはX2方向に突出する環状突起32dが設けられ、該環状突起32dよりも内径側は浅い嵌合溝32eが形成されている。軸固定部32bは嵌合溝32eの底部に設けられている。
6つの軸固定部32bおよび上記の6つの軸固定部28bは、軸方向から見て同形状かつ同配置であり、それぞれアウター軸18が固定可能である。6つのベース固定部32cおよび上記の6つのベース固定部28cは、軸方向から見て同形状かつ同配置であり、それぞれベース22が固定可能である。
センター側面部32はアウター側面部28の外周近傍を除く内径側部分と同一の対称構造となっており、中心孔28aと中心孔32a、軸固定部28bと軸固定部32b、ベース固定部28cとベース固定部32c、環状突起28dと環状突起32d、および嵌合溝28eと嵌合溝32eはそれぞれ同一形状で同配置となっている。
アウター軸18およびインナー軸20は、駆動機構および従動機構が接続される入出力部である。アウター軸18はフランジ18aと、該フランジ18aから一方に突出した軸部18bと、フランジ18aに設けられた等間隔で6つの孔18cとを有する。ボルトBが孔18cを通って軸固定部28bに螺合されると、アウター軸18はアウター側面部28に固定され、軸部18bはX1方向に突出する。フランジ18aは嵌合溝28eに嵌合して安定する。アウター軸18はアウター側面部28およびセンター側面部32のいずれにも固定可能でありアウター/センター兼用軸または低速軸とも呼ばれ得るものだが、ここでは単にアウター軸18と称する。
インナー軸20は長尺な円柱軸形状であって、インナー軸固定孔15に対して機械的(例えば、キー、スプライン、Dカット構造)に接続され、インナー歯車14に対して回転不能で一体的に回転する。インナー軸20はインナー軸固定孔15に対して着脱可能で、軸方向逆向きに組み替え可能な構成となっている。インナー軸20のX1方向端部近傍はアウター側面部28の中心孔28aに対してベアリング34aで軸支されている。インナー軸20のほぼ中心部はセンター側面部32の中心孔32aに対してベアリング34bで軸支されている。ベアリング34a,34bの内輪とインナー歯車14との間にはそれぞれスペーサ36a、36bが介挿されている。ベアリング34a,34bはスナップリング38a,38bにより抜け止め処理されている。インナー歯車14はベアリング34a,34bによりアウター歯車体12およびセンター体16に対して相対回転可能となっている。インナー軸20は高速軸とも呼ばれ得る。
アウター側面部28の一部とセンターリング30のX1方向端内周面との間にはベアリング40aが設けられている。センター側面部32のX2方向端外周面とケーシング24のX2方向端内周面との間にはベアリング40bが設けられている。ベアリング40a,40bによりアウター歯車体12とセンター体16とは相対回転可能となっている。
ベース22は固定台としての機能を備え、側面視でL字形状であって側板22aとベース板22bとを有する。側板22aは、ベース板22bと直交して立設している。側板22aは、中心に設けられた軸挿通孔22cと、該軸挿通孔22cの周囲で等角度に設けられた6つの孔22dとを有する。ボルトBが孔22dを通ってベース固定部32cに螺合されると、ベース22はセンター側面部32に固定される。軸挿通孔22cはアウター軸18、フランジ18aおよびインナー軸20が挿通可能な径となっている。軸挿通孔22cの一端には浅い環状切欠22eが設けられ、該環状切欠22eには環状突起28dまたは環状突起32dが嵌合可能となっている。軸挿通孔22cと嵌合溝28e,32eとは同径となっている。
図2-1に示すように、アウター軸18はアウター歯車体12のアウター側面部28に固定されて軸部18bはX1方向に突出する。インナー軸20はインナー歯車14のインナー軸固定孔15に固定され、中心孔32aおよび軸挿通孔22cを通ってX2方向に突出するように組み立てられている。アウター軸18とインナー軸20とは同軸構造となる。ベース22はセンター体16のセンター側面部32に固定される。磁気歯車10aはこのように組み立てられることにより、アウター軸18が一体固定されたアウター歯車体12が低速側入出力部となり、インナー軸20が一体固定されたインナー歯車14が高速側入出力部となる。アウター軸18とインナー軸20との間は、アウター歯車体12、インナー歯車14およびセンターリング30の磁気的作用によって変速されて回転のトルクが伝達される。
このとき、アウター軸18を入力側、インナー軸20を出力側とした場合の変速比Grは以下の式で求められる。
Gr=-NL/NH=-31/3=-10.33
つまり、変速比Grの絶対値は10.33であり、マイナス符号であるから回転方向は逆向きとなる。
一方、図2-2に示すように、アウター軸18はセンター体16のセンター側面部32にも固定可能であり、この場合には軸部18bはX2方向に突出する。インナー軸20はインナー歯車14のインナー軸固定孔15に固定され、中心孔28aおよび軸挿通孔22cを通ってX1方向に突出するように組み立てられる。この場合もアウター軸18とインナー軸20とは同軸構造となる。ベース22はアウター歯車体12のアウター側面部28に固定される。磁気歯車10aはこのように組み立てられることにより、アウター軸18が一体固定されたセンター体16が低速側入出力部となり、インナー軸20が一体固定されたインナー歯車14が高速側入出力部となる。アウター軸18とインナー軸20との間は、アウター歯車体12、インナー歯車14およびセンターリング30の磁気的作用によって変速されて回転のトルクが伝達される。
このとき、変速比Grは以下の式で求められる。
Gr=NS/NH=34/3=+11.33
つまり、変速比Grの絶対値は11.33であり、プラス符号であるから回転方向は順向きとなる。なお、磁気歯車10a~10fの磁気作用で変速動作が得られる原理については、例えば特許文献1や非特許文献1に示されているように公知であるからここでは説明を省略する。
インナー歯車14およびアウター歯車26の構造について図3を参照しながらさらに詳細に説明する。なお、図3~図5では抑制磁石17を省略している。
図3に示すように、アウターヨーク26aおよびインナーヨーク14aは筒体であることから、それぞれの内周面および外周面は回転軸中心の円周面であって無駄な凹凸がない。したがって、インナーヨーク14aの外周面とセンターリング30の内周面との隙間は十分に狭く、またアウターヨーク26aの内周面とセンターリング30の外周面との隙間は十分に狭く、それぞれ磁気の力を作用させやすい。
アウター歯車26のアウターヨーク26aは軟磁性体であり、ケーシング24の内周面に固定された筒体である。
アウターヨーク26aは、アウター磁石孔26cと、磁極部26dと、ブリッジ26eとを有する。アウター磁石孔26cはアウター磁石26bが埋め込まれて収容される孔であり、アウターヨーク26aの内周面側に開口部26fを有する。
アウター磁石26bはアウター磁石孔26cと同形状であって、開口部26f以外の3辺はアウター磁石孔26cと隙間なく接しており、その内側端部は開口部26fの縁26gと一致している。なお、図3では理解が容易となるようにアウター磁石26bおよびインナー磁石14bにおいてN極をドット地、S極を白地として識別している。以後、各図における磁石では必要に応じてドット地はN極、白地はS極を示す。
アウター磁石26bおよびアウター磁石孔26cは矩形でアウターヨーク26aに対して径方向に長尺形状でかつ等角度間隔の放射状配列となっている。アウター磁石孔26cを形成する3辺のうち長尺方向の二辺は平行線であり、平行線のまま内側に開口していて開口部26fには凹凸がない。アウター磁石26bは周接線方向つまり短尺方向に着磁されており、隣り合う磁石は着磁方向が逆となる向きに配置され、周方向でS極同士が向かい合い、N極同士が向かい合っている。アウター磁石26bがアウターヨーク26aに対してこのように埋め込まれているアウター歯車26はIPM型(Interior Permanent Magnet、磁石埋め込み型)である。
磁極部26dは周方向の両側を2つのアウター磁石孔26cで挟まれた略矩形である。磁極部26dはアウターヨーク26aに対して径方向に長尺形状でかつ等角度間隔の放射状配列となっている。磁極部26dは、両側をアウター磁石26bのS極で挟まれた箇所がS極、両側をN極で挟まれた箇所がN極となり、それぞれ磁束を径方向に指向させる疑似的な磁極として作用する。
ブリッジ26eは隣り合う磁極部26d同士をアウターヨーク26aの外周部で接続する幅の狭い部分である。ブリッジ26eにより各磁極部26dが相互に接続され、アウターヨーク26aは一体構成になるとともに強度が確保される。ブリッジ26eは十分に薄く形成されていることからN極からS極への磁束の短絡的導通を抑制し、磁極部26dの磁束密度が維持される。
インナー歯車14のインナーヨーク14aは軟磁性体であって、円盤形状である。インナーヨーク14aは、インナー磁石孔14cと、磁極部14dと、ブリッジ14eとを有する。インナー磁石孔14cはインナー磁石14bが埋め込まれて収容される孔であり、インナーヨーク14aの外周面側に開口部14fを有する。インナー磁石14bはインナー磁石孔14cと同形状であって、開口部14f以外の3辺はインナー磁石孔14cと隙間なく接しており、その外側端部は開口部14fの縁14gと一致している。
インナー磁石14bおよびインナー磁石孔14cは矩形でインナーヨーク14aに対して径方向に長尺形状でかつ等角度間隔の放射状配列となっている。インナー磁石孔14cを形成する3辺のうち長尺方向の二辺は平行線であり、平行線のまま外側に開口していて開口部14fには凹凸がない。インナー磁石14bは周接線方向つまり短尺方向に着磁されており、隣り合う磁石は着磁方向が逆となる向きに配置され、周方向でS極同士が向かい合い、N極同士が向かい合っている。インナー磁石14bがインナーヨーク14aに対してこのように埋め込まれているインナー歯車14はIPM型である。
磁極部14dは周方向の両側を2つのインナー磁石孔14cで挟まれた部分であり、内径側が狭くて外径側が広い扇形状である。磁極部14dは、両側をインナー磁石14bのS極で挟まれた箇所がS極、両側をN極で挟まれた箇所がN極となり、それぞれ磁束を径方向に指向させる疑似的な磁極として作用する。図3では磁極部14dのうちN極となる所を符号14dnで識別し、S極となる所を符号14dsで識別している。
ブリッジ14eは隣り合う磁極部14d同士をインナーヨーク14aの内周部で接続する幅の狭い部分である。ブリッジ14eにより各磁極部14dが相互に接続され、インナーヨーク14aは一体構成になるとともに強度が確保される。ブリッジ14eは十分に薄く形成されていることからN極からS極への磁束の短絡的導通を抑制し、磁極部14dの磁束密度が維持される。
このように、磁気歯車10aはそれぞれIPM型構造のアウター歯車26とインナー歯車14とを有する(なお、後述する磁気歯車10b~10fもIPM型構造である)。IPM型構造では、磁石が各ロータの表面に配置され、磁石の着磁方向が径方向となるSPM型(Surface Permanent Magnet、表面磁石型)と比較して高トルクが得られる。また渦電流損が少ないため高効率となる。さらに、インナー磁石14bおよびアウター磁石26bは埋め込み構造であるため、遠心力の作用によって外側に剥がされてしまう懸念がなく、高速回転に適する。また、インナー歯車14およびアウター歯車26の少なくとも一方をIPM型構造にすれば、上記の効果が相応に得られる。
アウター歯車26では、アウター磁石孔26cが内周側に開口部26fを有していることから、アウター磁石26bは最大限内側に寄った配置が可能となっており、その内側端部は開口部26fの縁26gと一致していてセンターリング30の外周面に極めて近い。また、開口部26fが設けられていることから、アウター歯車26の内周側では各磁極部26dが相互接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。したがって、磁極部26dは内側方向に特に強い磁束を指向させることができる。
インナー歯車14では、インナー磁石孔14cが外周側に開口部14fを有していることから、インナー磁石14bは最大限外側に寄った配置が可能となっており、その外側端部は開口部14fの縁14gと一致していてセンターリング30の内周面に極めて近い。また、開口部14fが設けられていることから、インナー歯車14の外周側では各磁極部14dが相互接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。したがって、磁極部14dは外側方向に特に強い磁束を指向させることができる。このような構成によりインナー歯車14およびアウター歯車26は、センターリング30を介し相手側に対して相互に強い磁力を作用させることができる。
また、アウター磁石26bをアウター磁石孔26cに挿入する際には軸方向から挿入してもよいし、または開口部26fから径方向に挿入してもよい。同様にインナー磁石14bをインナー磁石孔14cに挿入する際には軸方向から挿入してもよいし、または開口部14fから径方向に挿入してもよく、それぞれ組立の自由度が増す。
なお、アウター磁石26bの内側端部は開口部26fの縁26gと一致し、インナー磁石14bの外側端部は開口部14fの縁14gと一致しているが、ここでいう一致とは厳密な意味ではなくおおよそ等しい位置にあればよい。例えば、アウター磁石26bおよびインナー磁石14bは、アウターヨーク26aの内周面およびインナーヨーク14aの外周面から突出してしまうとセンターリング30に干渉する懸念があることから、寸法誤差や組立誤差を考慮し余裕をみてやや短めに設定するということも、ここでいう一致と同義である。
このように構成される磁気歯車10aでは、アウター歯車26およびインナー歯車14がそれぞれIPM型であることから伝達可能トルクが大きくなる。また、アウター磁石孔26cが内周側に開口する形状であって、その体積分だけアウター磁石26bを大きくすることができて強い磁力が得られる。同様にインナー磁石孔14cが外周側に開口する形状であって、その体積分だけインナー磁石14bを大きくすることができて強い磁力が得られる。その結果、伝達トルクを増大させることができる。
磁気歯車10aはこのような特徴があり、本願発明者が解析した結果から、次に述べる第2実施形態にかかる磁気歯車10bと比較して最大伝達トルクが21%高く、効率も若干高いことが確認された。ただし、この解析は抑制磁石17(図1参照)を省略した状態で行った。
次に、第2の実施形態にかかる磁気歯車10bについて図4を参照しながら説明する。磁気歯車10bおよび後述する磁気歯車10c~10fおよび磁気歯車100について、上記の磁気歯車10aと同様の構成要素については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
図4に示すように、磁気歯車10bは上記のアウター歯車26に代えてアウター歯車42が設けられるとともに、上記のインナー歯車14に代えてインナー歯車44が設けられている。アウター歯車42はアウターヨーク42aと、アウター磁石(界磁磁石)42bとを有する。アウター磁石42bは上記のアウター磁石26bと同じものであり、同数、同角度配置である。アウターヨーク42aは、上記のアウターヨーク26aと材質、内径、外径および軸方向幅が同一である。アウターヨーク42aはアウター磁石孔42cと、磁極部42dと、ブリッジ42eとを有する。磁極部42dは上記の磁極部26dと同形状である。アウター磁石孔42cはアウター磁石42bが埋め込まれて収容される孔であり、アウターヨーク42aの外周面側に開口部42fを有する。アウター磁石42bはアウター磁石孔42cと同形状であって、開口部42f以外の3辺はアウター磁石孔42cと隙間なく接しており、その外側端部は開口部42fの縁42gと一致している。このような構成によりアウター磁石42bを大きくすることができ、強い磁力が得られて伝達トルクを増大させることができる。また、開口部42fが設けられていることから、アウター歯車42の外周側では各磁極部26dが相互接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。
ブリッジ42eは隣り合う磁極部42d同士をアウターヨーク42aの内周部で接続する薄い部分である。ブリッジ42eにより各磁極部42dが相互に接続され、アウターヨーク42aは一体構成になるとともに強度が確保される。ブリッジ42eの幅は十分に狭く形成されていることからN極からS極への磁束の短絡的導通を抑制し、磁極部42dの磁束密度が維持される。
また、アウターヨーク42aの外周面はケーシング24の内周面に固定されていることから強度が確保されている。したがって、アウターヨーク42aは内周面側の強度がブリッジ42eで確保されるとともに外周面側の強度がケーシング24で確保されることになり、高速回転に適するとともに耐振動性に優れる。
インナー歯車44はインナーヨーク44aと、インナー磁石(界磁磁石)44bとを有する。インナー磁石44bは上記のインナー磁石14bと同じものであり、同数、同角度配置である。インナーヨーク44aは、上記のインナーヨーク14aと材質、内径、外径および軸方向幅が同一である。インナーヨーク44aはインナー磁石孔44cと、磁極部44dと、ブリッジ44eとを有する。磁極部44dは上記の磁極部14dと同形状である。インナー磁石孔44cはインナー磁石44bが埋め込まれて収容される孔であり、インナーヨーク44aの内周面側に開口部44fおよび一対の抜止突起44hを有する。インナー磁石44bはインナー磁石孔44cと同形状であって開口部44f以外の3辺はインナー磁石孔44cと隙間なく接している。このような構成によりインナー磁石44bを大きくすることができ、強い磁力が得られて伝達トルクを増大させることができる。また、開口部44fが設けられていることから、インナー歯車44の内周側では各磁極部44dが相互接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。
抜止突起44hは、開口部44fをやや狭めるように周方向両端に設けられた小さい突起であり、インナー磁石44bを内周端から接することにより安定して保持する。インナー磁石44bはアウター磁石42bよりも大きいが、抜止突起44hにより確実に保持される。また、抜止突起44hを設けることにより、インナー磁石44bの内径側はインナーヨーク44aの内周面よりもやや外径側に寄った位置に設定される。これにより、インナー磁石44bの内径側端面を直線形状としてもインナーヨーク44aの内周側に設けられたコア46との干渉を回避することができる。
なお、条件によっては抜止突起44hを省略し、インナー磁石44bを内径側に向かってやや大きく設定し、仮想線で示すようにその内側端部44jを開口部44fの縁44gと一致させてもよい。このような構成によりインナー磁石44bを一層大きくすることができ、強い磁力が得られる。この場合、インナー磁石44bの内径側端面はコア46との干渉を回避するために、該コア46の外周面に沿った円弧面にするとよい。
上記の磁気歯車10aおよび磁気歯車10bでは、磁石が埋め込まれる磁石孔は内径側か外径側のいずれか一方に開口が設けられているが、条件によってはこのような開口は設けなくてもよい。すなわち、図5に示す第3の実施径にかかる磁気歯車10cのような構成でもよい。磁気歯車10cでは、アウター磁石孔48cは外径側がブリッジ48eで塞がれ、内径側がブリッジ48fで塞がれていている。また、インナー磁石孔50cは外径側がブリッジ50eで塞がれ、内径側がブリッジ50fで塞がれている。磁気歯車10cにおいてアウター歯車48、アウターヨーク48a、アウター磁石(界磁磁石)48b、アウター磁石孔48c、磁極部48d,インナー歯車50、インナーヨーク50a、インナー磁石(界磁磁石)50b、インナー磁石孔50c、磁極部50dは、上記のアウター歯車26、アウターヨーク26a、アウター磁石26b、アウター磁石孔26c、磁極部26d、インナー歯車14、インナーヨーク14a、インナー磁石14b、インナー磁石孔14c、磁極部14dに相当する。このような磁気歯車10cでは、アウター磁石48bおよびインナー磁石50bは四面がアウター磁石孔48cおよびインナー磁石孔50cに接して安定する。また、アウターヨーク48aおよびインナーヨーク50aは、外周面および内周面がそれぞれ深い切欠孔のない円周面となり強度が強い。
上記の磁気歯車10aおよび磁気歯車10bでは、磁石が埋め込まれる磁石孔は内径側か外径側のいずれか一方に開口が設けられているが、条件によってはこのような開口は内径側と外径側の両側に設けられていてもよい。図示は省略するが、磁石孔の開口部が各ヨークの外側と内側の両方に設けることにより、アウター磁石やインナー磁石を一層大きくすることができる。この場合、磁極部同士を周方向に接続する部材がないので、軸方向端部で各磁極部を接続し固定するとよい。
次に、抑制磁石17について説明する。
図6は、実施形態にかかる磁気歯車10aのインナー歯車14の一部拡大斜視図である。図6に示すように、磁気歯車10aのインナー歯車14には、抑制磁石17が設けられている。上記の通り抑制磁石17はインナーヨーク14aに対して軸方向両端面にそれぞれ6つずつ設けられている(図1参照)。ただし、条件によっては抑制磁石17(および後述する抑制磁石117)をインナーヨーク14aに対して軸方向片側面にだけ設けても相応の効果が得られる。
抑制磁石17は、インナー歯車14の軸心に近い位置を基準とした扇形の板形状であり、その中心角は60°である。製造上の都合などによってはこの形状を複数枚の磁石で形成してもよい。抑制磁石17は、6つの磁極部14dの端面をそれぞれほぼ隙間なく覆っている。抑制磁石17は磁極部14dに対して接着または所定の締結手段などによって隙間なく固定されている。
上記の通り磁極部14dはインナーヨーク14aにおいて、同極が周方向で対向する一対のインナー磁石14bによって挟まれた領域であり、インナー磁石14bのS極で挟まれるものが磁極部14ds、N極で挟まれるものが磁極部14dnとして識別される。
図7は、第1の実施形態にかかる磁気歯車10aでインナー歯車14におけるインナー磁石14bと抑制磁石17との極性の向きを示す模式斜視図である。図7に示すように、抑制磁石17はインナーヨーク14aの軸方向、つまり抑制磁石17の板厚方向に着磁されている。
抑制磁石17は着磁の向きにより2種類に区別される。すなわち、図7で抑制磁石17sとして示すようにS極が磁極部14dsと当接してN極が軸に沿って外側を指向するものと、抑制磁石17nとして示すようにN極が磁極部14dnと当接してS極が軸に沿って外側を指向するものである。抑制磁石17sと抑制磁石17nとは周方向に沿って交互に設けられている。
磁極部14dsを覆う抑制磁石17sおよび磁極部14dsを挟む一対のインナー磁石14bは、それぞれ磁極部14dsに対してS極が指向している。また、磁極部14dnを覆う抑制磁石17nおよび磁極部14dnを挟む一対のインナー磁石14bは、それぞれ磁極部14dnに対してN極が指向している。
磁極部14dsは周方向両側をインナー磁石14bのS極で挟まれており、疑似的なS極としてアウター歯車26に対して径方向に磁束を作用させるが、実際には軸方向にも磁束の漏れが生じ得る。ところが、磁極部14dsの軸方向端面には、S極同士が向かい合うように抑制磁石17sが設けられている。一方、磁極部14dnは周方向両側をインナー磁石14bのN極で挟まれており、疑似的なN極としてアウター歯車26に対して径方向に磁束を作用させるが、実際には軸方向にも磁束の漏れが生じ得る。ところが、磁極部14dnの軸方向端面には、N極同士が向かい合うように抑制磁石17nが設けられている。したがって、磁極部14dsおよび磁極部14dnから軸方向への磁束の漏れは抑制・相殺され、結果として径方向への磁束を強めて効率を向上させることができる。これにより、軸方向への磁束の漏れは抑制・相殺されることになり、結果として径方向への磁束を強めて効率を向上させることができる。抑制磁石17では磁気歯車10aはトルク向上の作用もあり、本願発明者の解析によると抑制磁石17がない場合と比較して最大トルクが約10%向上する。
図8は、漏れ磁束と抑制磁石17による磁束との関係を示すグラフである。図8の横軸は抑制磁石17の厚みであり、縦軸は磁束の強度である。また、「S」で示すグラフは磁極部14dsによる軸に沿った外側への漏れ磁束であり、「N」で示すグラフは抑制磁石17nによる磁束密度である。図8に示すように、「S」で示す磁極部14dsによる軸に沿った外側への漏れ磁束はほぼ一定である一方、「N」で示す抑制磁石17nによる磁束密度は軸方向距離にしたがって増加し、2つのグラフは一点で交わる。したがって、抑制磁石17の厚みはこの交点で示される値とすれば磁極部14dsによる漏れ磁束を抑制磁石17sの磁束により相殺することが分かる。磁極部14dnと抑制磁石17nとによる場合も同様である。
図9は、抑制磁石17およびその変形例の形状を示す図であり、(a)は抑制磁石17の形状を示し、(b)は第1の変形例である抑制磁石17aの形状を示し、(c)は第2の変形例である抑制磁石17bの形状を示す図である。
図9(a)に示すように、抑制磁石17とインナー磁石14bとは周方向に隣接し、互いの周方向端部が一致している。インナー磁石14bは軸方向に露呈している。抑制磁石17の外周側円弧部はインナーヨーク14aの外周端と一致している。抑制磁石17の内周側円弧部はインナー磁石14bの内周側端部と径方向に関して同じ位置である。このような抑制磁石17は磁極部14dを十分に覆うことができる。
抑制磁石17は磁極部14dのほとんど全面を覆うことが望ましいが、磁極部14dを覆う面積に応じた効果があり、少なくともその中心点Cを覆うとよい。中心点Cは両隣のインナー磁石14bから等角度θで、インナーヨーク14aの内外周から等距離Lの位置である。
図9(b)に示すように抑制磁石17aは、内周側端部が径方向に関してインナー磁石14bの内周端よりもさらに内周側まで入り込んだ形状となっている。これにより、磁極部14dからの漏れ磁束をさらに抑制することができる。
図9(c)に示すように抑制磁石17bは、抑制磁石17を僅かに小さくした形状であり、外周側についてはインナーヨーク14aの外周端との間に隙間があり、径方向についてはインナー磁石14bの端部との間に隙間がある。この抑制磁石17bのように、条件によっては磁極部14dの全面を覆わなくてもよい。
図10に示すように、6つの抑制磁石17は円盤51の一部として構成されていてもよい。すなわち、各抑制磁石17の周方向隙間を非磁性体部材51aでつないで円盤形状としてもよい。円盤51によれば見かけ上の部品点数が少なくなり、磁気歯車10aの組み立てが容易になる。円盤51はインナーヨーク14aの軸方向両側に設けられる。また、円盤51と同形状の部材に対して、6つの抑制磁石17に相当する箇所を一個のリング状磁石を一括着磁によって6極分の永久磁石となるように製作してもよい。着磁の向きは図7に示す例に準ずる。円盤51または着磁された同形状部材のいずれの場合においても、見かけ上は1つの部品であっても、抑制磁石17は複数(6つ)存在している。
抑制磁石17について磁気歯車10aに基づいて説明をしたが、磁気歯車10bでは磁極部44d(図4参照)に抑制磁石17が設けられ、磁気歯車10cでは磁極部50d(図5参照)に抑制磁石17が設けられ、それぞれ磁気歯車10aの場合と同様の効果が得られる。また抑制磁石17に相当するものはアウターヨーク26aの磁極部26dの軸方向端面を覆うように設けてもよい。
次に、磁気歯車10d~10fについて説明する。上記の磁気歯車10aではそれぞれのインナー磁石14bは両側に磁極部14dを形成するのに用いられており、インナー磁石14bと磁極部14dとが同数であるが、磁気歯車10d~10fでは1つの磁極部に対してインナー磁石を2つ用いており、インナー磁石の数は磁極部の2倍設けられる。まず、第4の実施形態にかかる磁気歯車10dについて説明する。
図11は、磁気歯車10dを示す分解斜視図である。図11に示すように、磁気歯車10dは上記の磁気歯車10a(図1参照)と比較してインナー歯車14およびアウター歯車26がインナー歯車114およびアウター歯車126に置き換えられている。なお、磁気歯車10dの断面図は、磁気歯車10aにかかる断面図である図2-1および図2-2とほとんど同じであるため省略する。
アウター歯車126では1極対あたり4つの界磁磁石が使用され、全部で124(=31×4)個のアウター磁石126bが用いられている(図12参照)。つまり、アウター磁石126bの個数は4の倍数になる。
インナー歯車114はインナーヨーク114aと、NH=3極対に対応したインナー磁石114bと、抑制磁石117とを有する。抑制磁石117は、インナーヨーク114aに対して軸方向両端面にそれぞれ6つずつ設けられている。インナー歯車114では1極対あたり4つの界磁磁石が使用され、全部で12(=3×4)個のインナー磁石114bが用いられている(図12参照)。つまり、インナー磁石114bの個数は4の倍数になる。
図12は、磁気歯車10dのアウター歯車126、インナー歯車114およびセンターリング30の正面図である。図13は、磁気歯車10dのアウター歯車126、インナー歯車114およびセンターリング30の一部拡大正面図である。なお、図12~図15では、抑制磁石117を省略している。
磁気歯車10dにおけるインナーヨーク114a、インナー磁石114b、インナー磁石孔114c、磁極部114d、ブリッジ114e、開口部142gは、磁気歯車10aにおけるインナーヨーク14a、インナー磁石14b、インナー磁石孔14c、磁極部14d、ブリッジ14e、開口部14fに相当する。また、インナーヨーク114aは挟持部114fを有する。
磁気歯車10dにおけるアウターヨーク126a、アウター磁石126b、アウター磁石孔126c、磁極部126d、ブリッジ126e、開口部126gは、磁気歯車10aにおけるアウターヨーク26a、アウター磁石26b、アウター磁石孔26c、磁極部26d、ブリッジ26e、開口部26fに相当する。また、アウターヨーク126aは、挟持部126fを有する。
磁極部126dは、内径側のセンターリング30に対して磁束を指向させる疑似的な磁極として作用する部分であり、NL=31極対に対応して62か所設けられている。このうち1つおきの31か所がN極であり、他の31か所がS極である。図13では磁極部126dのうちN極となる所を符号126dnで識別し、S極となる所を符号126dsで識別している。
アウター磁石孔126cはアウター磁石126bが埋め込まれて収容される孔であり、アウターヨーク126aの内周面側に開口部126gを有する。アウター磁石126bはアウター磁石孔126cと同形状であって、開口部126g以外の3辺はアウター磁石孔126cと隙間なく接しており、その内側端部は開口部126gの縁126hと一致している。
アウター磁石126bおよびアウター磁石孔126cは矩形で、アウターヨーク126aに対して径方向に対してやや傾斜した向きに長尺で、かつ外径側よりも内径側の方が間隔が広くなるような略V字形状に配置されている。個々の磁極部126dは周方向両側をアウター磁石126bで挟まれており、かつ外径側よりも内径側の方が間隔が広くなるような狭い略扇形状である。
アウター磁石126bは短尺方向に着磁されており、磁極部126dを挟んで同極が対向する向きとなっている。図13ではN極の磁極部126dnを挟んでいるアウター磁石126bを符号126bnで識別し、S極の磁極部126dsを挟んでいるアウター磁石126bを符号126bsで識別している。すなわち、一対のアウター磁石126bnは磁極部126dnを挟んでN極同士が対向しており、一対のアウター磁石126bsは磁極部126dsを挟んでS極同士が対向している。
アウター磁石126bn同士またはアウター磁石126bs同士で挟まれる部分が磁極部126dであり、アウター磁石126bnとアウター磁石126bsとで挟まれる三角部分が挟持部126fとなる。隣り合う磁極部126dと挟持部126fとは外側でブリッジ126eにより相互に接続されている。
このように、磁極部126dは、両側を同極のアウター磁石126bで挟まれており、しかも内径側が広がるような形状であることから強い磁力をセンターリング30に作用させることができ、伝達トルクが増大する。また、磁極部126dは外径側が十分に狭く形成されており、外側への磁束の漏れが少なく、内径側へ作用する磁力を強めることができる。
上記のように、アウター磁石孔126cは内周面側に開口部126gを有している。アウター磁石孔126cを形成する3辺のうち長尺方向の二辺は平行線であり、平行線のまま内側に開口していて開口部126gには凹凸がない。また、アウター磁石孔126cはアウター磁石126bは径方向に対してやや傾斜していることから、開口部126gも周方向に対してやや傾斜している。これにより、アウターヨーク126aの内周面で、磁極部126d以外の部分は2つの開口部126gを二辺とする低い略二等辺三角形の凹部126iが形成されている。
ブリッジ126eは隣り合う磁極部126dと挟持部126fをアウターヨーク126aの外周部で接続する幅の狭い部分である。ブリッジ126eにより各磁極部126dと挟持部126fが相互に接続され、アウターヨーク126aは一体構成になるとともに強度が確保される。ブリッジ126eの幅は十分に狭く形成されていることからN極からS極への磁束の短絡的導通を抑制し、磁極部126dの磁束密度が維持される。
磁極部114dは、外径側のセンターリング30に対して磁束を指向させる疑似的な磁極として作用する部分であり、NH=3極対に対応して6か所設けられている。このうち1つおきの3か所がN極であり、他の3か所がS極である。図13では磁極部114dのうちN極となる所を符号114dnで識別し、S極となる所を符号114dsで識別している。
インナー磁石孔114cはインナー磁石114bが埋め込まれて収容される孔であり、インナーヨーク114aの外周面側に開口部114gを有する。インナー磁石114bはインナー磁石孔114cと同形状であって、開口部114g以外の3辺はインナー磁石孔114cと隙間なく接しており、その外側端部は開口部114gの縁114hと一致している。
磁極部114dを挟む一対のインナー磁石114bおよび一対のインナー磁石孔114cは矩形で、インナーヨーク114aに対して径方向に対して45°傾斜した向きに長尺で、かつ内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるような略V字形状に配置されている。個々の磁極部114dは周方向両側をインナー磁石114bで挟まれており、かつ内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるようなやや広い略扇形状である。
インナー磁石114bは短尺方向に着磁されており、磁極部114dを挟んで同極が対向する向きとなっている。図13ではN極の磁極部114dnを挟んでいるインナー磁石114bを符号114bnで識別し、S極の磁極部114dsを挟んでいるインナー磁石114bを符号114bsで識別している。すなわち、一対のインナー磁石114bnは磁極部114dnを挟んでN極同士が対向しており、一対のインナー磁石114bsは磁極部114dsを挟んでS極同士が対向している。
一対のインナー磁石114bnは直交する向きであり、同様に一対のインナー磁石114bsは直交する向きとなっている。この様に一対のインナー磁石114bn,114bsを直交する向きに配置することにより、磁極部114dに磁束を指向させながら、インナー磁石114bn,114bsの体積を十分大きくすることが可能となる。
インナー磁石114bn同士またはインナー磁石114bs同士で挟まれる部分が磁極部114dであり、インナー磁石114bnとインナー磁石114bsで挟まれる三角部分が挟持部114fとなる。隣り合う磁極部114dと挟持部114fは内側でブリッジ114eにより相互に接続されている。
このように、磁極部114dは、両側を同極のインナー磁石114bで挟まれており、しかも外径側が広がるような形状であることから強い磁力をセンターリング30に作用させることができ、伝達トルクが増大する。また、磁極部114dは内径側が十分に狭く形成されており、内径側への磁束の漏れが少なく、外径側へ作用する磁力を強めることができる。
上記のように、インナー磁石孔114cは外周面側に開口部114gを有している。インナー磁石孔114cを形成する3辺のうち長尺方向の二辺は平行線であり、平行線のまま外側に開口していて開口部114gには凹凸がない。また、インナー磁石孔114cは径方向に対して傾斜していることから、開口部114gも周方向に対してやや傾斜している。これにより、インナーヨーク114aの外周面で、磁極部114d以外の部分は2つの開口部114gが傾斜対辺となる低い略台形の凹部114iが形成されている。
ブリッジ114eは隣り合う磁極部114dと挟持部114fをインナーヨーク114aの内周部で相互に接続する幅の狭い部分である。ブリッジ114eにより磁極部114dと挟持部114fが相互に接続され、インナーヨーク114aは一体構成になるとともに強度が確保される。ブリッジ114eの幅は十分に狭く形成されていることからN極からS極への磁束の短絡的導通を抑制し、磁極部114dの磁束密度が維持される。インナー磁石114bがインナーヨーク114aに対してこのように埋め込まれているインナー歯車114はIPM型である。
また、例えば図13の仮想線で示すように、インナー磁石孔114cが矩形でない場合には、インナー磁石114bの端部のうち一部(外周側)が縁114hに一致していればよい。アウター磁石孔126c、アウター磁石126b、縁126hについても同様である。
次に、第5の実施形態にかかる磁気歯車10eについて図14を参照しながら説明する。
図14に示すように、磁気歯車10eは上記のアウター歯車126に代えてアウター歯車142が設けられるとともに、上記のインナー歯車114に代えてインナー歯車144が設けられている。アウター歯車142はアウターヨーク142aと、アウター磁石126bとを有する。アウター磁石126bは上記の磁気歯車10dにおけるものと同じであり、該アウター磁石126bの配置によって磁極部126dおよび挟持部126fが形成されている。アウターヨーク142aは、上記のアウターヨーク126aにおけるアウター磁石孔126cおよびブリッジ126eに代えてアウター磁石孔142cおよびブリッジ142eが設けられている。アウター磁石孔142cはアウター磁石126bが埋め込まれて収容される孔であり、アウターヨーク142aの外周面側に開口部142gを有する。アウター磁石126bはアウター磁石孔142cと同形状であって、開口部142g以外の3辺はアウター磁石孔142cと隙間なく接しており、その外側端部は開口部142gの縁142hと一致している。このような構成によりアウター磁石126bを大きくすることができ、強い磁力が得られて伝達トルクを増大させることができる。また、開口部142gが設けられていることから、アウター歯車142の外周側ではアウター磁石126bの磁極部126dnまたは磁極部126dsにそれぞれ接する磁極部126dと挟持部126fが接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。
ブリッジ142eは隣り合う磁極部126dと挟持部126fをアウターヨーク142aの内周部で接続する幅の狭い部分である。ブリッジ142eにより各磁極部126dと挟持部126fが相互に接続され、アウターヨーク142aは一体構成になるとともに強度が確保される。ブリッジ142eの幅は十分に狭く形成されていることからN極からS極への磁束の短絡的導通を抑制し、磁極部126dの磁束密度が維持される。
また、アウターヨーク142aの外周面はケーシング24の内周面に固定されていることから強度が確保されている。したがって、アウターヨーク142aは内周面側の強度がブリッジ142eで確保されるとともに外周面側の強度がケーシング24で確保されることになり、高速回転に適するとともに耐振動性に優れる。
インナー歯車144はインナーヨーク144aと、インナー磁石114bとを有する。インナー磁石114bは上記の磁気歯車10dにおけるものと同じであり、該インナー磁石114bの配置によって磁極部114dおよび挟持部114fが形成されている。インナーヨーク144aは、上記のインナーヨーク114aにおけるインナー磁石孔114cおよびブリッジ114eに代えてインナー磁石孔144cおよびブリッジ144eが設けられている。インナー磁石孔144cはインナー磁石114bが埋め込まれて収容される孔であり、インナーヨーク144aの内周面側に開口部144gを有する。インナー磁石114bはインナー磁石孔144cと同形状であって開口部144g以外の3辺はインナー磁石孔144cと隙間なく接している。このような構成によりインナー磁石114bを大きくすることができ、強い磁力が得られて伝達トルクを増大させることができる。また、開口部142gが設けられていることから、インナー歯車144の内周側ではインナー磁石114bの磁極部114dnまたは磁極部114dsにそれぞれ接する磁極部114dと挟持部114fが接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。インナー磁石114bの内径側はインナーヨーク144aの内周面よりもやや外径側に寄った位置に設定される。これにより、インナー磁石114bの内径側端面を直線形状としてもインナーヨーク144aの内周側に設けられたコア46との干渉を回避することができる。
上記の磁気歯車10dおよび磁気歯車10eでは、磁石が埋め込まれる磁石孔は内径側か外径側のいずれか一方に開口が設けられているが、条件によってはこのような開口は設けなくてもよい。つまり、アウター歯車126,142において外周側のブリッジ126e(図13参照)と、内周側のブリッジ142e(図14参照)の両方が設けられていてもよい。またインナー歯車114,144において内周側のブリッジ114e(図13参照)と、外周側のブリッジ142e(図14参照)の両方が設けられていてもよい。
上記の磁気歯車10dおよび磁気歯車10eでは、磁石が埋め込まれる磁石孔は内径側か外径側のいずれか一方に開口が設けられているが、条件によってはこのような開口は内径側と外径側の両側に設けられていてもよい。図示は省略するが、磁石孔の開口部が各ヨークの外側と内側の両方に設けることにより、アウター磁石やインナー磁石を一層大きくすることができる。この場合、磁極部同士、挟持部同士を周方向に接続する部材がないので、軸方向端部で各磁極部を接続し固定するとよい。
また、埋め込み磁石をV字配置にして扇型の磁極部を形成するのはアウター歯車126,142かインナー歯車114,144のいずれか一方だけでもよく、例えば、図15に示すような、第6の実施形態にかかる磁気歯車10fのような形態でもよい。
第6の実施形態にかかる磁気歯車10fでは、インナー歯車114およびセンターリング30は上記の磁気歯車10dにおけるものと同じであり、アウター歯車126に代えてアウター歯車150が設けられている。磁気歯車10fは磁気歯車10dと同様にNS=34、NL=31、NH=3の構成である。アウター歯車150は、アウターヨーク150aと、NL=31極対(62個)のアウター磁石150bとを有する。アウター磁石150bはアウター磁石孔150cに埋め込まれている。アウター磁石150bは62個が径方向に長尺な向きで、等間隔で放射状に配置されている。アウター磁石150bは周接線方向つまり短尺方向に着磁されており、隣り合う磁石は着磁方向が逆となる向きに配置され、周方向でS極同士が向かい合い、N極同士が向かい合っている。アウター磁石150bの総体積は上記のアウター磁石126bの総体積とほぼ等しい。アウター歯車150では一対のアウター磁石150bで挟み込まれる領域が磁極部150dとなり、疑似的な磁極として作用する。アウター歯車150はIPM型であるが、上記のアウター歯車126のようにアウター磁石126bをV字配置にして扇型の磁極部126dを形成する形態ではない。
このようなアウター歯車150は、アウター磁石150bおよびアウター磁石孔150cが適度に大きく、しかも個数が比較的少ないため製造・組立が容易であり低コストである。また、磁気歯車10fは、上記の磁気歯車10dと同様のインナー歯車114を備えていることから、相応の伝達トルク増大効果が得られる。
本願発明者は、例として磁気歯車10dおよび磁気歯車10fにおけるアウター磁石126b、インナー磁石114bのV字配置特性を調べるため、図16に示す磁気歯車100に対して比較解析を行った。磁気歯車100では、センターリング30は上記の磁気歯車10dにおけるものと同じであり、アウター歯車126に代えてアウター歯車150が設けられ、さらにインナー歯車114に代えてインナー歯車152が設けられている。アウター歯車150は磁気歯車10f(図15参照)におけるものと同じである。
磁気歯車100は磁気歯車10dと同様にNS=34、NL=31、NH=3の構成である。インナー歯車152は、インナーヨーク152aと、NH=3極対(6個)のインナー磁石152bを有する。インナー磁石152bはインナー磁石孔152cに埋め込まれている。インナー磁石152bは6個が径方向に長尺な向きで、等間隔で放射状に配置されている。インナー磁石152bは周接線方向つまり短尺方向に着磁されており、隣り合う磁石は着磁方向が逆となる向きに配置され、周方向でS極同士が向かい合い、N極同士が向かい合っている。インナー磁石152bの総体積は上記のインナー磁石114bの総体積とほぼ等しい。インナー歯車152では一対のインナー磁石152bで挟み込まれる領域が磁極部152dとなり、疑似的な磁極として作用する。インナー歯車152はIPM型であるが、上記のインナー歯車114のようにインナー磁石114bをV字配置にして扇型の磁極部114dを形成する形態ではない。
比較解析の結果によれば、第4の実施形態にかかる磁気歯車10d(図12参照)は磁気歯車100に対して最大伝達トルクが24%大きくなり、第6の実施形態にかかる磁気歯車10f(図15参照)でも磁気歯車100に対して最大伝達トルクが17%大きくなることが確認された。ただし、この解析は抑制磁石117(図11参照)を省略した状態で行った。
次に、抑制磁石117について説明する。
図17は、磁気歯車10dでインナー歯車114におけるインナー磁石114bと抑制磁石117との極性の向きを示す模式斜視図である。図17に示すように、磁気歯車10dのインナーヨーク114aには、抑制磁石117が設けられている。上記の通り抑制磁石117はインナーヨーク114aに対して軸方向両端面にそれぞれ6つずつ設けられている(図11参照)。抑制磁石117は、6つの磁極部114dの端面をそれぞれほぼ隙間なく覆っている。抑制磁石117は扇形の板形状であるが、上記の抑制磁石17と比較してその形状が異なっている。つまり、抑制磁石17(図6参照)はインナー歯車14の軸心に近い位置を基準とした扇形であり、その中心角は60°であるが、抑制磁石117は抑制磁石17よりも中心角が開いた形状であり、その中心角は90°である。
抑制磁石117はインナーヨーク114aの軸方向、つまり抑制磁石117の板厚方向に着磁されている。磁気歯車10dのインナー歯車114において抑制磁石117,117s,117n、磁極部114d,114ds,114dnは、磁気歯車10aのインナー歯車14(図7参照)における抑制磁石17,17s,17n、磁極部14d,14ds,14dnに相当する。したがって抑制磁石117は抑制磁石17と同様に軸方向からの磁束の漏れを抑制し、磁気歯車10dの効率を向上させることができる。
また、磁気歯車10dにおいては、挟持部114fは抑制磁石117で覆う必要はない。このため、厚さにもよるが抑制磁石117は抑制磁石17よりも小さくなり得る。したがって、インナー歯車114を軽量化することができる。
抑制磁石117について磁気歯車10dに基づいて説明をしたが、磁気歯車10eでは磁極部144d(図14参照)に抑制磁石117が設けられ、磁気歯車10fでは磁極部114d(図15参照)に抑制磁石117が設けられ、それぞれ磁気歯車10a,10dの場合と同様の効果が得られる。
本発明にかかる回転電機は、上記のような磁気歯車10a~10fに限らず、インナー歯車14に相当する内周側界磁体とアウター歯車26に相当する外周側界磁体との間(例えば、ロータとステータとの間)で径方向に磁束を作用させる回転電機(例えばモータや発電機)に適用可能であることは勿論である。内周側界磁体がロータで外周側界磁体がステータでもよいし、外周側界磁体がロータで内周側界磁体がステータでもよい。内周側界磁体および外周側界磁体のいずれか一方の界磁磁石は永久磁石の代わりに電磁石を用いてもよい。
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
10a,10b,10c,10d,10e,10f 磁気歯車(回転電機)
12 アウター歯車体
14,44,50,114,144,152 インナー歯車(内周側界磁体)
14a,44a,50a,114a,144a,152a インナーヨーク
14b,44b,50b,114b,114bn,114bs,152b インナー磁石(界磁磁石)
14c,44c,50c,114c,152c インナー磁石孔
14d,14dn,14ds,26d,42d,44d,50d,114d,114dn,114ds,126d,126dn,126ds,150d,152d 磁極部
14e,44e,26e,42e,48e,50e,50f,114e,126e,142e ブリッジ
14f,26f,42f,44f,114g,126g,142g,144g 開口部
14g,26g,42g,44g,114h,126h,142h 縁
17,17n,17s,117,117n,117s 抑制磁石(磁束漏れ抑制磁石)
16 センター体
24 ケーシング
26,42,48,126,142,150 アウター歯車(外周側界磁体)
26a,42a,48a,126a,142a,150a アウターヨーク
26b,42b,48b,126b,126bn,126bs,150b アウター磁石(界磁磁石)
26c,42c,48c,126c,142c,150c アウター磁石孔
30 センターリング
30a ポールホルダ(非磁性筒体)
30b ポールピース(軟磁性体)
44h 抜止突起
46 コア

Claims (5)

  1. インナーヨークの周方向に複数のインナー磁石を配列したインナー歯車と、前記インナー歯車に対して外周側に相対回転可能に設けられ、非磁性筒体の周方向に複数の軟磁性体を配列したセンターリングと、前記センターリングに対して外周側に相対回転可能に設けられ、アウターヨークの周方向に複数のアウター磁石を配列したアウター歯車と、前記インナーヨークの軸方向の少なくとも一方の端面に設けられた複数の磁束漏れ抑制 磁石と、を有し、前記インナーヨークには、同極が周方向に対向する向きで隣接する一対の前記インナー 磁石によって挟まれた磁極部が複数形成され、前記磁束漏れ抑制磁石は前記軸方向に着磁され、前記各磁束漏れ抑制磁石の周方向隙間を非磁性部材でつないで円盤形状とした態様で、前記磁極部の端面を覆い、前記磁極部を覆う前記磁束漏れ抑制磁石および前記磁極部を挟む一対の前記インナー磁石は、前記磁極部に対して同極が指向していることを特徴とする回転電機。
  2. 前記磁束漏れ抑制磁石は隣り合う前記各磁束漏れ抑制磁石を等間隔に極性が異極となる態様で一括着磁で形成した円盤形状の磁石としたことを特徴とする請求項1に記載の回転電機
  3. インナーヨークの周方向に複数のインナー磁石を配列したインナー歯車と、前記インナー歯車に対して外周側に相対回転可能に設けられ、非磁性筒体の周方向に複数の軟磁性体を配列したセンターリングと、前記センターリングに対して外周側に相対回転可能に設けられ、アウターヨークの周方向に複数のアウター磁石を配列したアウター歯車と、前記インナーヨークの軸方向の少なくとも一方の端面に設けられた複数の磁束漏れ抑制 磁石と、を有し、前記インナーヨークには、同極が周方向に対向する向きで隣接する一対の前記インナー 磁石によって挟まれた磁極部が複数形成され、前記磁束漏れ抑制磁石は前記軸方向に着磁され、前記磁極部の端面を覆い、前記磁極部を覆う前記磁束漏れ抑制磁石および前記磁極部を挟む一対の前記インナー磁石は、前記磁極部に対して同極が指向しており、且つインナーヨークに対して径方向に傾斜した向きに長尺で、内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるような略V字形状に配置されていることを特徴とする回転電機。
  4. 前記インナーヨークは前記インナー磁石が埋め込まれるインナー磁石孔を有し、前記インナー磁石孔は、前記インナーヨークの内周面および外周面の少なくとも一方に開口部を有することを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の回転電機。
  5. 前記インナーヨークは前記開口部が開口する前記内周面または前記外周面が回転軸中心の円周面形状であって、前記インナー磁石における一端の縁は、前記開口部の縁と一致していることを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
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