JP7290864B2 - 構造体、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法 - Google Patents

構造体、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法 Download PDF

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Description

本発明は、超伝導素子を備える構造体に関するものであり、特に、テラヘルツ帯域電磁波発振素子に関するものである。また、本発明は、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法に関するものである。
近年、電波と光の中間領域の波長をもつテラヘルツ波(0.1THz~10THz)が着目されている。このテラヘルツ波は、光のような直進性をもち、電波のように紙やプラスチックといった物質を透過する性質を持つ。また、テラヘルツ帯の周波数は、分子の回転や振動、結晶格子の振動、タンパク質などの高分子の振動などの周波数と等しい。そのためテラヘルツ波は、様々な物質の同定に利用できるのみならず、イメージングなどの非破壊検査、セキュリティ、高速通信、天文学、医療等の幅広い分野への利用が期待され、注目を集めている。
このテラヘルツ波を発生する小型素子の1つとして、近年、高温超伝導体の単結晶を用いた発振素子が提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、高温超伝導体に積層された超伝導層と絶縁体層を利用したテラヘルツ波発振素子が提案されている。
絶縁体層を超伝導層でサンドイッチした構造は、ジョセフソン接合として知られる。ここに電圧が発生すると、印加電圧に比例した高周波電流が発生する。この効果は、交流ジョセフソン効果として知られている。高温超伝導体の単結晶には、ジョセフソン接合を自然に内包したものがあり、固有ジョセフソン接合として知られている。そのため、このような単結晶に電圧を印加することで、交流ジョセフソン効果を原理とする高周波電流の発生が可能になる。
更に、特許文献3では、この高温超伝導発振素子の発振特性を改善する技術が提案されている。この特許文献3では、超伝導素子を複数の基板で挟み込むことで、素子からの発熱を逃がす構造や、複数の発振素子を挟み込む形状などについて提案されている。
特開2005-251863号公報 特開2009-43787号公報 特開2016-51871号公報
上記したように、テラヘルツ波は幅広い分野への応用利用が考えられる。テラヘルツ波の応用利用に際しては、小型で簡便なテラヘルツ波の発振素子やテラヘルツ波の検出器が求められるが、未だ十分な機能を有するものは得られていないという現状が、テラヘルツ波の発展を妨げる要因の1つになっている。特に、1テラヘルツ前後の電磁波を発振する小型発振素子においては、発振出力のさらなる向上が求められている。
上記特許文献1~3に記載された超伝導素子を用いたテラヘルツ波発振素子では、テラヘルツ帯の電磁波の発生が可能であることが知られている。また、上記特許文献1~3に記載された超伝導素子を用いたテラヘルツ波発振素子では、発振出力を高める方法の一例として、超伝導素子を平面上に複数並べるアレイ構造が提案されている。しかしながら、超伝導素子を小型で簡便な発振素子や検出器として応用利用するためには、超伝導素子からの発振出力をさらに高める技術が求められている。特に、超伝導素子を利用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子の発振出力の向上を実現する技術が求められている。
そこで、本発明の課題は、超伝導素子をデバイスとして機能させる際に、電磁波発振の高出力化を可能とする構造体を提供することである。特に、テラヘルツ波を安定して発振することが可能となるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法を提供することである。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、超伝導素子と電極基板の配置に特徴を有する構造体を設けることで、電磁波の高出力発生が可能であることを見出し、更に、これらをテラヘルツ帯の電磁波の透過・反射量を調整する構造体としての利用が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するための、構造体、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法である。
上記課題を解決するための本発明の構造体は、電極基板と超伝導素子とを備え、超伝導素子は、電極基板平面上に規則的に配置されたアレイ構造と、電極基板平面に対して高さ方向に規則的に積層させた3次元配列構造とを形成することを特徴とする。
この構造体によれば、超伝導素子が3次元的に配置されることで、その周期性に応じ、特定の電磁波を強く発生することが可能になる。
また、本発明の構造体の一実施態様としては、超伝導素子は、ジョセフソン素子であることを特徴とする。
この特徴によれば、構造体としてジョセフソン効果を利用した電磁波発生が可能になる。
また、本発明の構造体の一実施態様としては、多重積層型ジョセフソン接合を有する層状超伝導体BSCCOの単結晶を含むものであることを特徴とする。
この特徴によれば、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯の電磁波を安定して発生させることのできるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置の作製が可能になる。
また、本発明の構造体の一実施態様としては、超伝導素子の3次元配列構造は、超伝導素子の各々から発生する電磁波の放射出力を互いに強め合う位置に超伝導素子を配置し、形成されていることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子からの電磁波の放射出力を向上させることが可能となる。特に、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置において、高い出力の発振が可能になる。
また、本発明の構造体の一実施態様としては、3次元配列構造の高さ方向に積層された超伝導素子の全ての層又は一部の層に電圧・電流を印加する電圧・電流印加手段を備え、電圧・電流印加手段は、電圧・電流を印加する超伝導素子を選択可能であることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子を任意に動作させることが可能であり、電磁波の発振出力などの制御が可能になる。
また、本発明の構造体の一実施態様としては、超伝導素子の発熱を電極基板を介して排熱する排熱手段を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子を安定に動作させることが可能であり、電磁波の発振特性の安定化などが可能になる。
また、本発明の構造体の一実施態様としては、超伝導素子の3次元配列構造は、一部に不規則性を有することを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子の周期構造による電磁波の波長応答性が一部異なるものになることで出入射する電磁波の偏在化が生じ、波長応答性に係る感度を増幅することができる。これにより、超伝導素子からの電磁波の放射出力をより一層高めることが可能となる。特に、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置において、より一層高い出力の発振が可能になる。
また、本発明の構造体の一実施態様としては、超伝導素子の3次元配列構造は、超伝導素子を10μm以上、1mm以下の間隔で配置するものであることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子からの電磁波の放射出力をより一層高めることが可能となる。特に、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置において、より一層高い出力の発振が可能になる。
また、本発明の構造体の一実施態様としては、超伝導素子の3次元配列構造は、電磁波を入射することでテラヘルツ帯の電磁波の透過・反射量を調整する構造体として機能するように形成されていることを特徴とする。
この特徴によれば、構造体は、超伝導素子から電磁波を発生させるだけではなく、テラヘルツ帯のフィルターとして機能させることが可能になる。
また、本発明の構造体の一実施態様としては、超伝導素子の電磁波応答性を調整する電磁波応答性調整手段を備え、電磁波応答性調整手段は、超伝導素子の温度を調整する温度調整手段を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、超伝導素子を超伝導状態にすること及び常伝導状態にすることが調整可能となる。これにより、超伝導素子の電磁波に対する応答を温度調整によって制御することが可能になる。また特に、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を利用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置においては、発振周波数の調整などが可能になる。
上記課題を解決するための本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、上記構造体を備え、交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合が協調して動作することによりテラヘルツ帯域電磁波を発振することを特徴とする。
この特徴によれば、テラヘルツ帯域電磁波発振素子が3次元配列構造を有するため、従来の超伝導体を用いたテラヘルツ帯域電磁波発振素子と比べて、格段の発振出力の向上が可能となる。
上記課題を解決するための本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法は、テラヘルツ帯域電磁波発振素子に所定の電圧・電流を印加する工程と、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の温度を超伝導転移温度以上から超伝導転移温度以下に変化させる工程と、を備え、テラヘルツ帯域電磁波発振素子は、上記テラヘルツ帯域電磁波発振素子からなることを特徴とする。
この特徴によれば、3次元配列構造を有するテラヘルツ帯域電磁波発振素子について、所望の発振周波数を迅速に得ることが可能となる。また、テラヘルツ帯域電磁波発振素子を所望の発振周波数で迅速に動作させることで、テラヘルツ帯域電磁波発振素子を備えたテラヘルツ帯域電磁波発振装置についても分光器利用などにおいて効果的に機能させることができる。
また、本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法の一実施態様としては、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の温度を超伝導転移温度以下に変化させる工程と、テラヘルツ帯域電磁波発振素子に対して、電圧・電流を掃引することで所定の電圧・電流値に調整する工程と、を備え、テラヘルツ帯域電磁波発振素子は、上記テラヘルツ帯域電磁波発振素子からなることを特徴とする。
この特徴によれば、3次元配列構造を有するテラヘルツ帯域電磁波発振素子について、発振周波数の微調整などが可能となる。また、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の発振周波数を微調整することで、テラヘルツ帯域電磁波発振素子を備えたテラヘルツ帯域電磁波発振装置についても、例えば分光器利用や検出器などにおいて利用する場合に効果的に機能させることができる。
本発明によれば、超伝導素子をデバイスとして機能させる際に、電磁波発振の高出力化を可能とする構造体を提供することができる。特に、テラヘルツ波を安定して高い出力で発振することが可能となるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法を提供することができる。
本発明の実施態様に係る構造体の概略説明図(斜視図)である。 本発明の実施態様に係る構造体の概略説明図(平面図及び断面図)である。 本発明の実施態様に係る構造体の概略説明図(側面図)である。 本発明の実施態様に係る一部不規則性を有する構造体の概略説明図(側面図)である。 本発明の実施態様に係る動作方法に関係するBSCCO単結晶を用いた超伝導素子の電流-電圧特性の概略説明図である。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る構造体、テラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する内容と図面については、本発明に係る特徴をわかりやすく説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。また、図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際とは異なっていることがある。
(構造体及びテラヘルツ帯域電磁波発振素子)
本発明の構造体は、特に超伝導素子の実装のために使用される。超伝導素子の使用に係る一例としては、例えば、テラヘルツ波を発振することができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子等が挙げられる。また、超伝導素子の実装に係る一例としては、例えば、テラヘルツ帯域電磁波発振装置等が挙げられる。
図1~図3は、本発明の第1の実施態様における構造体を示す概略説明図である。図1は構造体の斜視図であり、図2は構造体の平面図及び構造体の一部の断面図であり、図3は構造体の側面図である。なお、図1においては、構造体の構造を理解しやすくするため、電極基板同士は離して図示してある。
以下、構造体について説明する。
図1~図3に示すように、本実施態様の構造体6は、超伝導素子1と、超伝導素子アレイ2と、電極基板4と、配線5と、を備える。また、電極基板4は、電極部3aと、基板本体3bと、導電性スルーホール3cで構成される。また、本実施態様の構造体6は、電極基板4の間に超伝導素子アレイ2を挟み込む形とするものである。なお、構造体6の詳細な構造については後述する。
超伝導素子1は、超伝導体の単結晶あるいは多結晶を用いた電子素子を指す。特に、2つの超伝導体を弱く結合させることで発現するジョセフソン効果を利用したジョセフソン接合を有するもの(ジョセフソン素子と呼ばれることもある)を含んでいる。なお、このようなジョセフソン素子の構造の一例としては、2つの超伝導体が金属や絶縁層で隔てられる構造や、2つの超伝導体の間に細いくびれや段差を形成する構造等が挙げられる。
また、本実施態様における超伝導素子1の具体的な例としては、例えば、多重積層型ジョセフソン接合を有する層状超伝導体BSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物)の単結晶に含まれる固有ジョセフソン接合を用いたもの等が挙げられる。なお、BSCCO単結晶としては、交流ジョセフソン効果を生じることができるものであればよく、このような化学式の一例としては、BiSrCaCu8+δ(Bi2212)やBiSrCaCu10+δ(Bi2223)などが挙げられる。
なお、本実施態様における超伝導素子1として、例示したBSCCO単結晶のような超伝導素子を用いた場合、超伝導素子の幾何学的形状で決定される共振周波数と交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合を協調して動作させることにより、テラヘルツ帯域電磁波を発振することが可能となる。
また、このとき、本実施態様における構造体6の具体的な利用例としては、例えば、テラヘルツ波の電磁波を発振するテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置や、その電磁波を利用した分光器や非破壊検査装置などが挙げられる。
また、本実施態様で用いる超伝導素子1は、単体で電極基板4の厚さ方向に積層して使用するものであってもよく、後述するように平面上に複数個を設けたものを積層して使用するものであってもよい。特に、超伝導素子1を複数個設けたものを積層して使用することが好ましい。これにより、電磁波の発振源を複数とし、発振強度を高めることが可能となる。
超伝導素子1は、アレイ構造を形成していることが好ましい。アレイ構造とは、超伝導素子1を平面に所定の間隔で複数個並べたものであり、図1に示すように、超伝導素子1により形成されたアレイ構造を、以下、超伝導素子アレイ2と呼ぶ。また、図2Aでは、超伝導素子1同士のX方向における間隔を間隔Xとし、Y方向における間隔を間隔Yとして示してある。本実施態様におけるアレイ構造としては、例えば図1に示したように、超伝導素子1を電極基板4の平面上に一定間隔で並べるものや、所定の規則性を有するように並べるもの等が挙げられる。特に、超伝導素子1から電磁波を発振させる場合、超伝導素子1を適切な間隔で複数個並べるアレイ構造を形成させることによって、超伝導素子1から発振する電磁波が影響し合い、発振の出力に影響が生じる。このため、超伝導素子1から発振する電磁波の出力を互いに高め合い、超伝導素子1全体としての発振の高出力化に適したアレイ構造となるように超伝導素子1を配置することが好ましい。
本実施態様における構造体6では、超伝導素子アレイ2は、図3に示すように電極基板4の厚さ方向に積層させた構造を持つ。図3では、超伝導素子1の積層方向(Z方向)の間隔を間隔Zで示してある。また、図3に示す超伝導素子アレイ2を積層した超伝導素子1の3次元配列構造を、以下では超伝導素子人工格子7と呼ぶことにする。特に、超伝導素子1から電磁波を発振させる場合、超伝導素子人工格子7を形成することで、超伝導素子1から発振する電磁波が3次元的に互いに影響し合い、発振の出力に影響が生じる。このため、超伝導素子1から発振する電磁波の出力を互いに高め合い、超伝導素子1全体としての発振の高出力化に適した超伝導素子人工格子7となるように超伝導素子1を配置することが好ましい。
本実施態様における超伝導素子アレイ2としては、例えば、平面方向に、超伝導素子1を10μm以上、1mm以下で並べることが好ましく、より好ましくは150μm以下とすることが好ましい。これにより、特に超伝導素子1を高温超伝導体のテラヘルツ帯域電磁波発振素子として用いる場合において、テラヘルツ波の発振の高出力化が可能になる。
また、本実施態様における超伝導素子アレイ2としては、例えば、超伝導素子1を縦列方向及び横列方向(X方向及びY方向)に2以上配置することが好ましく、より好ましくは3以上配置することが好ましい。これにより、超伝導素子1同士が協調して動作する効率を高め、極めて高い発振強度を実現することが可能となる。なお、このようなアレイ構造としては、2×2配列や3×3配列等のように縦列と横列の超伝導素子1の数が同一であるものであってもよく、2×3配列等のように縦列と横列の超伝導素子1の数が異なるものであってもよい。
本実施態様における超伝導素子人工格子7は、例えば、電極基板4積層方向(Z方向)に、超伝導素子1を10μm以上、1mm以下で並べることが好ましく、より好ましくは150μm以下とすることが好ましい。これにより、特に超伝導素子1を高温超伝導体のテラヘルツ帯域電磁波発振素子として用いる場合において、テラヘルツ波の発振の高出力化が可能になる。
また、本実施態様における超伝導素子人工格子7としては、上記超伝導素子アレイ2を電極基板4積層方向(Z方向)に2以上配置することが好ましく、より好ましくは3以上配置することが好ましい。これにより、超伝導素子1同士が協調して動作する効率を高め、極めて高い発振強度を実現することが可能となる。
本実施態様における超伝導素子人工格子7としては、超伝導素子1から電磁波を発振する場合に適した構造となるように形成されるものに限定されない。例えば、超伝導素子人工格子7としては、超伝導素子1へ電磁波を入射させることでテラヘルツ帯の電磁波の透過・反射量を調整するように形成されるものが挙げられる。これにより、本実施態様の構造体6は、超伝導素子1から電磁波を発振するだけではなく、テラヘルツ帯のフィルターとしても機能させることが可能になる。
本実施態様における超伝導素子人工格子7は、図4A及び図4Bに示すように、超伝導素子1の配置の周期性を乱すように、一部に不規則性を有することが好ましい。このとき、超伝導素子1の周期構造による電磁波の波長応答性は、不規則性を示す箇所とその周囲とでは変わることになる。このため、不規則性を有する超伝導素子人工格子7内では出入射する電磁波が偏在化し、波長応答性に係る感度を増幅させることができる。
これにより、超伝導素子人工格子7を利用して、テラヘルツ帯の電磁波に対する応答を制御することが可能になる。
本実施態様における超伝導素子人工格子7における不規則性として、図4Aに示すように、超伝導素子アレイ2において、一つないしは複数個の超伝導素子1が取り除かれた箇所(欠陥A)を有することが望ましい。
これにより、特に、超伝導素子1を高温超伝導体のテラヘルツ帯域電磁波発振素子として用いる場合において、特定の周波数のテラヘルツ波の発振特性の制御が可能になる。更に、外部からの電磁波導入に対してもテラヘルツ帯の電磁波に対する応答を制御することが可能になる。
本実施態様における超伝導素子人工格子7において、図4Bに示すように、超伝導素子アレイ2の積層構造において、一つないしは複数の層の積層方向の間隔Zを変更した箇所(欠陥B)を有することが望ましい。
これにより、特に、超伝導素子1を高温超伝導体のテラヘルツ帯域電磁波発振素子として用いる場合において、特定の周波数のテラヘルツ波の発振特性の制御が可能になる。更に、外部からの電磁波導入に対してもテラヘルツ帯の電磁波に対する応答を制御することが可能になる。
本実施態様の超伝導素子1において、超伝導素子1の配置面積や超伝導素子1単体のサイズ等、超伝導素子1の大きさに係るものについては特に限定されず、超伝導素子1の使用用途に応じて適宜決定することができる。
例えば、超伝導素子1として固有ジョセフソン接合素子を用い、電磁波を発振させる場合、発振素子の発振機構に基づくと、発振素子の幾何学的形状で決定される共振周波数と交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合を協調して動作させることで、発振周波数特性が調整でき、また発振素子の厚さにより、発振出力が調整できることが知られている。ただし、これらのディメンジョンに応じて、発振素子の発熱量が変化し、それに伴い発振周波数と発振強度が変化することも知られている。したがって、超伝導素子1に係るこれらの要件を鑑み、素子が安定して機能する範囲となるものを選択することが好ましい。
超伝導素子アレイ2の配置面積としては、例えば、1辺が1mm以上となることが好ましく、より好ましくは5mm以上とすることが挙げられる。
通常、超伝導素子アレイ2の配置面積が広くなることにより、超伝導素子アレイ2全体を均一に電極基板間に保持することは困難となる。一方、本実施態様の構造体6においては、後述するように、超伝導素子アレイ2の配置面積の1辺が1mm以上となるような比較的広いものについても、超伝導素子アレイ2全体を安定して確実に支持することが可能となる。また、超伝導素子アレイ2全体の面積を比較的広くできることにより、テラヘルツ帯域電磁波発振素子としての機能を有するものについても高出力で安定して作動させることができる。また、超伝導素子アレイ2の配置面積を広くすることで、構造体6によって、テラヘルツ帯の電磁波の透過・反射量を調整する機能に係る制御を容易に行うことができる。
また、超伝導素子1のサイズとして、例えば、超伝導素子1の最大厚さは20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下とすることが挙げられる。
通常、超伝導素子1の最大厚さが薄くなることにより、超伝導素子1を電極基板間に安定して保持することは困難となる。一方、本実施態様の構造体6においては、後述するように、超伝導素子1の厚さが20μm以下となるような非常に薄いものについても、安定して確実に支持することが可能となる。また、厚さが薄い超伝導素子1を用いることができることにより、テラヘルツ帯域電磁波発振素子としての機能を有するものについても安定して作動させることができる。
電極基板4は、超伝導素子1に電圧・電流を印加する電極として用いるものである。なお、図1においては、最下層にある電極基板4から順に、電極基板4a、電極基板4b、電極基板4c…、電極基板4zとして表しているが、これは説明のための一例として示すものであって、電極基板4の枚数を特定するものではない。
電極基板4は、電極として機能するものであれば特に限定されない。例えば、それぞれの基板本体3bが導電性材料からなり、直接電極として用いることができるものであってもよく、それぞれの基板本体3bの表面に別の電極部3aを有するものとしてもよい。なお、電極として機能する箇所の設計・変更が容易であるという点では、電極基板4は、基板本体3bの表面に電極部3aを有するものとすることがより好ましい。
本実施態様における電極部3aは、超伝導素子1へ電圧・電流を印加するためのものである。また、電極部3aとしては、例えば、金、銀、銅など、抵抗率が低く、一般的な電極で用いられる金属等が挙げられる。
電極部3aを有する電極基板4としては、絶縁体材料にパターンを描いたものが挙げられる。このとき、絶縁体材料としては、例えば、サファイアやアルミナ等が挙げられ、これが基板本体3bに相当する。また、絶縁体材料の表面に描くパターンとしては、例えば、金、銀、銅などの金属からなるもので描くものが挙げられ、これが電極部3aに相当する。
電極基板4を構成する基板本体3b及び電極部3aは、超伝導素子1の使用用途に応じたものを用いることが好ましい。例えば、電磁波を透過しやすいものを用いることなどが挙げられる。具体的には、例えば、テラヘルツ帯の電磁波を使用する用途であれば、基板本体3bには、サファイアやアルミナ基板等を用いることが挙げられる。また、基板本体3bの表面に真空蒸着等にて、数十nm程度の金属を蒸着することで、電極部3aを形成することなどが挙げられる。
電極基板4は、熱伝導率が良い物質で構成されていることが好ましい。例えば、サファイア、ダイヤモンド、アルミナ、銅等が挙げられる。これにより、超伝導素子1で生じた熱を効率的に排除することができるという効果を奏する。
電極基板4には、図1及び図2に示すように、導電性スルーホール3cが設けられている。これにより、電極基板4の表裏は、電気的につながっている。図2Bには、導電性スルーホール3cを設けた電極基板の側面図を示した。図2Bに示すように、電極部3aを両面に設けた電極基板4に、導電性スルーホール3cを設けることで、積層方向の超伝導素子1を直列接続で配線することができる。
ここで、電極基板4には、電圧及び電流を印加する電圧・電流印加手段を設ける。電圧・電流印加手段としては、電極基板4と配線5を介して接続し、電圧や電流を印加することができるものであれば特に限定されない。電圧・電流印加手段としては、例えば、安定化電源と呼ばれる定電圧電源装置や、その他の定電圧及び/又は定電流電源装置等の定電圧・定電流印加機構のほか、プログラマブル電源や可変電源と呼ばれる電圧・電流の印加と制御の両方が可能な電源装置等の電圧・電流調整機構が挙げられる。
これにより、3次元配列構造の高さ方向(Z方向)に積層された超伝導素子1に対して電圧及び電流を印加し、本実施態様の構造体6から電磁波を発振させる動作が可能となる。
また、本実施態様の電圧・電流印加手段は、電圧・電流を印加する超伝導素子1を選択することができるものである。例えば、図1に示した構造体6において、電圧・電流印加手段を最下層の電極基板4aと最上層の電極基板4zとの間に接続させることや、電圧・電流印加手段を電極基板4aと電極基板4cとの間に接続させることなどが挙げられる。
これにより、超伝導素子人工格子7として積層されたすべての超伝導素子1を一斉に動作させることが可能になるとともに、任意の層の超伝導素子1のみを動作させることも可能になる。また、特に超伝導素子1を高温超伝導体のテラヘルツ帯域電磁波発振素子として用いる場合において、テラヘルツ波の発振出力の調整が可能になる。
一方、本実施態様の構造体6へ入射した電磁波に対し、構造体6を応答させるために、電磁波応答調整手段を備えるものとしてもよい。電磁波応答調整手段としては、例えば、構造体6に対する温度調整機構や、上述した電圧・電流調整機構を備えることが挙げられる。
温度調整機構としては、構造体6内部の超伝導素子1の温度を制御することができるものであればよく、具体的な構成については特に限定されない。
温度調整機構により、超伝導素子1として用いた超伝導体の超伝導転移温度Tcを基準とし、超伝導素子1の温度を超伝導転移温度Tc以下、あるいは以上となるように調整することで、構造体6全体の電磁波に対する応答を調整することが可能となる。
また、電圧・電流調整機構については、構造体6内部の超伝導素子1に対して印加する電流及び電圧を制御できるものであればよく、具体的な構成については特に限定されない。電圧・電流調整機構としては、例えば、上記したようにプログラマブル電源(可変電源)を用いることなどが挙げられる。
電圧・電流調整機構により、超伝導転移温度Tc以下のジョセフソン素子に所定の電圧を印加することで、構造体6に入射した電磁波と位相が同期した電磁波の発生などが可能となる。
電磁波応答調整手段を備えた構造体6は、例えば、電磁波フィルターや、入射した電磁波と同位相の電磁波を発生する発振素子等として利用することができる。
以下、構造体6の詳細な構造について説明する。
図1~図3に示すように、1枚の電極基板4a上において複数の超伝導素子1により形成された超伝導素子アレイ2は、直交するように配置された電極基板4bにより挟み込まれる。また、電極基板4b上にも複数の超伝導素子1が配置され、超伝導素子アレイ2が形成される。そしてさらに、電極基板4bに対して直交するように電極基板4cが配置される。このように、電極基板4と超伝導素子アレイ2の組み合わせを電極基板4厚さ方向(Z方向)に2層以上積層することで、3次元配列構造を有する構造体6が形成される。なお、電極基板4と超伝導素子アレイ2の組み合わせは、少なくとも2層以上積層するものであればよく、積層する層の数については特に限定されない。例えば、所望する発振出力などに応じて積層する層の数を適宜設定することが可能である。
本実施態様における構造体6は、図1~図3に示すように、直交する2つの電極基板4で超伝導素子アレイ2を挟み込む。これにより、超伝導素子1は、二枚の電極基板4で保持することができる。これにより、超伝導素子1を確実に保持するとともに、電極部3aと超伝導素子1(超伝導素子アレイ2)の密着性を高めつつ、配線5の設置が可能となる。
電極基板4に設置した配線5を介して、超伝導素子1(超伝導素子アレイ2)の厚さ方向に電圧・電流が印加される。これにより、超伝導素子1を作動させるために必要な所定の電圧・電流を確実に印加することができるという効果を奏する。
電極基板4で、サンドイッチされた超伝導素子1は、電圧・電流を印加した場合、それらの素子からジュール熱が発生する。このとき、電極基板4を介して、直接素子から排熱することが可能である。さらに、基板本体3bとして、例えば、サファイア、ダイヤモンド、アルミナ、銅などを用いることにより、排熱効率をより向上させることが可能となる。
配線5は、電極に電圧を印加することができるものであれば特に限定されない。例えば、金線や銅線などが挙げられる。また、配線5を接続する手段としては、特に限定されない。例えば、電極部3aと配線5をハンダづけすることや、導電性のテープ、導電性のペーストなどで固定すること等が挙げられる。
以上のように、本実施態様の構造体6により、超伝導素子1を確実に保持しながら、素子の厚さ方向に電圧を印加することが可能であり、素子で発生したジュール熱も、電極基板を介して排熱することが可能である。
また、本実施態様の構造体6は、例えば、超伝導素子1としてBSCCO単結晶の高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を用いることにより、テラヘルツ帯の電磁波放射を安定して行うことができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子として好適に利用することが可能となる。また、本実施態様の構造体6をテラヘルツ帯域電磁波発振素子として用い、安定かつ高出力で作動させることができるテラヘルツ帯域電磁波発振装置を作製することが可能となる。
本実施態様の構造体6を備えるテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、3次元配列構造を有するため、従来の超伝導体を用いたテラヘルツ帯域電磁波発振素子と比べて、格段の発振出力の向上が可能となる。特に、超伝導素子1としてBSCCO単結晶が有する固有ジョセフソン接合特性を利用した素子を、テラヘルツ帯域電磁波発振素子とすることで、超伝導素子1を厚さ方向へ積層することが容易となる。これにより、発振出力を格段に向上させたテラヘルツ帯域電磁波発振素子を容易に得ることが可能となる。
なお、上述した実施態様は構造体及びテラヘルツ帯域電磁波発振素子の一例を示すものである。本発明に係る構造体は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る構造体を変形してもよい。
例えば、本実施態様の超伝導体素子1として、BSCCO単結晶以外の高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を用いてもよい。これにより、テラヘルツ帯の電磁波放射が可能となることで、テラヘルツ帯の電磁波放射を安定して行うことができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子として好適に利用することが可能となる。
例えば、本実施態様の超伝導体素子1として、BSCCO単結晶以外の高温超伝導体の固有ジョセフソン接合のアレイ構造を備えるものとしてもよい。これにより、高強度なテラヘルツ波の発生が可能となることで、高強度なテラヘルツ帯の電磁波放射を安定して行うことができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置として好適に利用することが可能となる。
(テラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作)
本実施態様の構造体6をテラヘルツ帯の電磁波放射を安定して行うことができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子とする場合、本実施態様におけるテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作に係る工程については、テラヘルツ波の発振を安定して行うことができるものであればよく、特に限定されない。以下、本実施態様におけるテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作に係る工程の具体例について例示する。なお、以下の具体例は、温度調整機構及び電流電圧調整機構を備えたテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作に係る工程について示すものであるが、これに限定されるものではない。
テラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作に係る工程の理解のために、超伝導素子1がBSCCO単結晶を用いたテラヘルツ波発振素子の場合について、図5(A)及び図5(B)を用いて素子の電流―電圧特性を説明する。また、類似した電流-電圧特性は、平板形状のジョセフソン素子でも得られる。
図5(A)には、超伝導転移温度Tc以下の温度T0において、超伝導素子1を定電流源で駆動した場合の電流―電圧特性を示す。定電流源を用いて、印加電流値を増減させることで、図5(A)で示すようなヒステリシスをもった電流―電圧特性が得られる。なお、矢印(1)~(6)は、印加電流値を掃引する過程を示すものであり、矢印(1)~(3)が印加電流値を増加させる過程を、矢印(4)~(6)が印加電流値を減少させる過程をそれぞれ示している。特に、矢印(2)の過程は、超伝導素子1に発生する抵抗成分のために、ゼロ電圧状態から電圧状態にスイッチ(ジャンプ)する過程を示している。図5(A)では、超伝導素子1に抵抗成分が発生することなく流すことができる電流の最大値を、臨界電流値I0として表記した。ただし、臨界電流値I0や、電流―電圧特性のヒステリシス曲線の大きさは、超伝導素子1の温度T0、断面積、接合形状、材質等によって変化する。一般的に、ジョセフソン接合では、この電流-電圧特性の電圧状態において、ジョセフソン接合内部に印加される電圧に比例した高周波電流が発生する。
図5(B)は、3つの温度T1、T2、T3における超伝導素子1の電流-電圧特性の概略図を示す。それぞれの温度の関係は、T1<T2<Tc<T3であり、T3は超伝導転移温度Tcよりも高温である。T3では、超伝導素子1は、超伝導状態でないため電流―電圧特性にはヒステリシスが生じない。Tc以下の温度T0になることで、図5(A)で示したようなヒステリシスを伴う電流-電圧特性が得られるようになる。このヒステリシスは、図5(B)に示すように、温度の低下とともに大きくなる。具体的には、温度T2から、温度T1になると、臨界電流値がI2からI1へと大きくなり、ゼロ電圧状態から電圧状態にスイッチした時の素子への印加電圧も大きくなる。
超伝導素子1がBSCCO単結晶を用いたテラヘルツ波発振素子や平板形状のジョセフソン素子の場合では、上記特徴の電流―電圧特性を有する。
そこで、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作に係る工程の一例としては、温度調整機構によりテラヘルツ帯域電磁波発振素子の温度を超伝導体の超伝導転移温度Tc以上とし、電圧・電流調整機構により定電流をテラヘルツ帯域電磁波発振素子に印加した後、温度調整機構によりテラヘルツ帯域電磁波発振素子の温度を超伝導転移温度Tc以下とすることが挙げられる。このとき、上述の素子の電流―電圧特性の温度依存性を反映して、素子に発生する電圧が変化する。具体的には、図5(B)に示すように、素子の温度を超伝導転移温度Tc以上の温度T3にして、定電流源でバイアス点P1の電圧・電流を印加する。この状態から素子温度を下げ、素子温度を超伝導転移温度Tc以下の温度T1にすることで、素子の抵抗特性の温度変化を反映し、バイアス点P2の電圧が発生することになる。そのため、この時の電圧値が適切になるようにバイアス点を調整することで、素子に発生した高周波電流を利用して、テラヘルツ帯域電磁波発振素子から電磁波が発振する。
この工程によれば、テラヘルツ帯域電磁波発振素子から所望の発振周波数を迅速に得ることを可能とする。また、テラヘルツ帯域電磁波発振素子を所望の発振周波数で迅速に動作させることで、テラヘルツ帯域電磁波発振素子を備えたテラヘルツ帯域電磁波発振装置についても分光器利用などにおいて効果的に機能させることができる。
また、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作に係る工程の他の例としては、温度調整機構によりテラヘルツ帯域電磁波発振素子の温度を超伝導転移温度Tc以下とし、電圧・電流調整機構により、テラヘルツ帯域電磁波発振素子に対して電圧を増加させる方向に掃引した後、電圧を減少させる方向に掃引することが挙げられる。具体的には、図5(A)に示したように、素子の温度を超伝導転移温度Tc以下の温度T0にすることで、電流-電圧特性として矢印(1)~(6)で示したヒステリシスが現れる。そして図5(B)に示すような、素子温度T1のバイアス点P3などで印加電圧・電流を適切に調整することで、素子に発生した高周波電流を利用して、テラヘルツ帯域電磁波発振素子から電磁波が発振する。
この工程によれば、テラヘルツ帯域電磁波発振素子において、発振周波数の微調整などが可能になる。また、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の発振周波数を微調整することで、テラヘルツ帯域電磁波発振素子を備えたテラヘルツ帯域電磁波発振装置についても、例えば分光器利用や検出器などにおいて利用する場合に効果的に機能させることができる。
なお、例示した工程は、本実施態様におけるテラヘルツ帯域電磁波発振素子の超伝導素子1が固有ジョセフソン接合を用いた超伝導素子である場合に好適に用いられる。さらに、超伝導素子1がBSCCO単結晶を用いた超伝導素子である場合、特に好適に用いられる。
本発明の構造体は、超伝導素子の実装に適用することができる。より具体的には、安定かつ高出力発振が可能な高温超伝導体を用いたテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振装置として好適に利用することができる。更に、テラヘルツ帯の電磁波の透過・反射量を調整する構造体として利用することができる。
また、本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子及びテラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法は、テラヘルツ帯の電磁波を利用した分光器や非破壊イメージング装置のほか、テラヘルツ波のフィルターや検出器に適用することができる。
1 超伝導素子、2 超伝導素子アレイ、3a 電極部、3b 基板本体、3c 導電性スルーホール、4,4a,4b,4c,4z 電極基板、5 配線、6 構造体、7 超伝導素子人工格子、D1、D2 欠陥、矢印(1)~(6) 印加電流値を掃引する過程、I0,I1,I2 臨界電流値、Tc 超伝導転移温度、T0,T1,T2,T3 温度、P1,P2,P3 バイアス点

Claims (13)

  1. 電極基板と超伝導素子とを備え、
    前記超伝導素子は、前記電極基板平面上に規則的に配置されたアレイ構造と、前記電極基板平面に対して高さ方向に規則的に積層させた3次元配列構造とを形成することを特徴とする、構造体。
  2. 前記超伝導素子は、ジョセフソン素子であることを特徴とする、請求項1に記載の構造体。
  3. 前記超伝導素子は、多重積層型ジョセフソン接合を有する層状超伝導体BSCCOの単結晶を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の構造体。
  4. 前記超伝導素子の3次元配列構造は、前記超伝導素子の各々から発生する電磁波の放射出力を互いに強め合う位置に前記超伝導素子を配置することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
  5. 3次元配列構造の高さ方向に積層された前記超伝導素子の全ての層又は一部の層に電圧・電流を印加する電圧・電流印加手段を備え、前記電圧・電流印加手段は、電圧・電流を印加する超伝導素子を選択可能であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の構造体。
  6. 前記超伝導素子の発熱を前記電極基板を介して排熱する排熱手段を備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の構造体。
  7. 前記超伝導素子の3次元配列構造は、一部に不規則性を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の構造体。
  8. 前記超伝導素子の3次元配列構造は、前記超伝導素子を10μm以上、1mm以下の間隔で配置するものであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の構造体。
  9. 前記超伝導素子の3次元配列構造は、電磁波を入射することでテラヘルツ帯の電磁波の透過・反射量を調整する構造体として機能するように形成されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の構造体。
  10. 前記超伝導素子の電磁波応答性を調整する電磁波応答性調整手段を備え、
    前記電磁波応答性調整手段は、前記超伝導素子の温度を調整する温度調整手段を備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の構造体。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の構造体を備え、
    交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合が協調して動作することによりテラヘルツ帯域電磁波を発振することを特徴とする、テラヘルツ帯域電磁波発振素子。
  12. テラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法であって、
    前記テラヘルツ帯域電磁波発振素子に所定の電圧・電流を印加する工程と、
    前記テラヘルツ帯域電磁波発振素子の温度を超伝導転移温度以上から超伝導転移温度以下に変化させる工程と、を備え、
    前記テラヘルツ帯域電磁波発振素子は、請求項11に記載されたテラヘルツ帯域電磁波発振素子からなることを特徴とする、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法。
  13. テラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法であって、
    前記テラヘルツ帯域電磁波発振素子の温度を超伝導転移温度以下に変化させる工程と、
    前記テラヘルツ帯域電磁波発振素子に対して、電圧・電流を掃引することで所定の電圧・電流値に調整する工程と、を備え、
    前記テラヘルツ帯域電磁波発振素子は、請求項11に記載されたテラヘルツ帯域電磁波発振素子からなることを特徴とする、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の動作方法。




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