JP6366430B2 - テラヘルツ帯域電磁波発振素子およびテラヘルツ帯域電磁波発振装置 - Google Patents

テラヘルツ帯域電磁波発振素子およびテラヘルツ帯域電磁波発振装置 Download PDF

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Description

本発明は、テラヘルツ帯域電磁波発振素子およびテラヘルツ帯域電磁波発振装置に関する。
テラヘルツ(THz)波は、電波と光(遠赤外)の中間領域の波長をもつ電磁波である。テラヘルツ波の周波数は明確な定義はないが、300GHz〜10THz(波長30μm〜1mm)と言われ、分子の配向や回転、高分子の振動、水素結合などで結合した分子間の振動、結晶格子振動などの周波数とほぼ等しい。そのため有機物、高分子化合物、酵素、タンパク質、生体物質の同定に用いることができる。またこれらの物質の同定だけでなく、非破壊検査、セキュリティ、医療診断、気象観測、環境モニター、天文学、高速大容量通信等の極めて幅広い範囲での応用が可能であり、注目を集めている。
テラヘルツ波の発振手段としては、例えば量子カスケード・レーザー(QCL)、共鳴トンネルダイオード(RTD)等が知られている。しかし、量子カスケード・レーザーは、2THz以下のテラヘルツ波を発振することが極めて難しいという問題があった。これは、量子カスケード・レーザーの発振メカニズムが、半導体量子井戸中に形成されるエネルギー準位間の光学遷移を利用しているためである。2THz以下の周波数域では、半導体量子井戸中に形成されるエネルギー差が小さく、窒素の沸点以上の温度では熱エネルギーによる遷移により適切な駆動が出来なくなる。他方、共鳴トンネルダイオードは、1THz以上のテラヘルツ波を発振することが極めて難しいという問題があった。これは、共鳴トンネルダイオードの発振メカニズムが、半導体中の伝導電子の運動を利用しているため、1THz以上の周波数域では電子を適切に駆動できなくなるためである。
そこで、0.3THz〜2THzのテラヘルツ波を高強度で得る手段として、超伝導体の単結晶における超伝導層と絶縁層とのジョセフソン結合を利用した発振器が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2)。この発振器は、超伝導体の交流ジョセフソン効果に伴うジョセフソンプラズマが、超伝導体の単結晶が形成するメサ構造の幾何学的な形状およびサイズにより共振することで、特定のテラヘルツ波を発振することができる。
特開2009−43787号公報 特開2005−251863号公報
しかしながら、これらのテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、その排熱性能が十分とは言えなかった。
一般に、超伝導体の単結晶は、テラヘルツ波を発振する際に、印加される直流電流によって発熱する。後述するが、超伝導体の単結晶は超伝導層と絶縁層の積層構造を有する。発熱による温度上昇は、超伝導体の絶縁層の絶縁性を低下させる。また、この発熱は、条件によっては超伝導体に部分的なホットスポットと呼ばれる高温部を形成し、当該部分は短絡抵抗として振る舞う。これらの事象により、超伝導体の単結晶に印加できる電圧がテラヘルツ波を発振するのに必要な電圧を下回り、テラヘルツ波の発振を阻害するという問題があった。
そのため、排熱性能が十分とは言えなかった従来のテラヘルツ帯域電磁波発振素子では、その超伝導体の転移温度が窒素の沸点以上の温度でも、その素子の駆動には液体ヘリウムを使用する必要があり、完全に液体ヘリウムを用いずに液体窒素のみでの動作を実現することができなかった。液体ヘリウムは高価であり、その扱いも液体窒素と比較すると格段に難しい。そのため、安価で簡便なテラヘルツ帯域電磁波発振素子を実現することができなかった。
また排熱が効率的に行うことができないと、超伝導体の単結晶に印加できる電圧が制限される。これは、前述の超伝導体の絶縁層の絶縁性低下やホットスポットの問題が発生するためである。後述するが、交流ジョセフソン効果に伴い発振されるテラヘルツ波は、印加される電圧に比例する。そのため、印加できる電圧が制限されることは、発振周波数域が制限されることに結び付く。すなわち、従来のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、広い周波数域のテラヘルツ波を発振することを実現することができなかった。
このため、発生する熱を効率的に排熱することができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子およびテラヘルツ帯域電磁波発振装置が切に求められていた。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、発生する熱を効率的に排熱することができるテラヘルツ帯域電磁波発振素子およびテラヘルツ帯域電磁波発振装置を提供することを目的とする。
従来、多重積層型ジョセフソン接合を有する超伝導体の単結晶は、基板側から排熱されることが一般的であった。これは、テラヘルツ波の出力方向に、その出力を阻害するおそれのある排熱手段を隣接させることは、当業者にとって非常に抵抗のあるものであり、実際にそのような検討はされていなかった。
本発明者らは、鋭意検討の結果、従来の排熱方向である基板側以外の面に排熱手段を設けても、テラヘルツ波の出力がほとんど阻害されないことを見出した。さらに、この排熱手段を設けることで、完全に液体ヘリウムを用いずに駆動することができると共に、広い周波数域のテラヘルツ波を発振することができるという非常に優れた効果を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、基板上に形成され、交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合が協調して振動することによりテラヘルツ帯域電磁波を発振できる多重積層型ジョセフソン接合を有し、その形状が基板に対してメサ形状を有する超伝導体の単結晶と、前記単結晶を少なくとも前記基板と反対側の面からも排熱する排熱手段とを有する。
(2)上記(1)に記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、基板がサファイア、ダイヤモンドまたは銅のいずれかであってもよい。
(3)上記(1)または(2)のいずれかに記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、単結晶が、基板上に複数配置されていてもよい。
(4)上記(3)に記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、排熱手段が少なくとも前記単結晶の前記基板と反対側の面に接合された誘電体と金属体であり、基板上に複数配置された前記単結晶が、一次元または二次元に配列したストリップライン構造を有してもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、前記排熱手段が少なくとも前記単結晶の前記基板と反対側の面に接合された誘電体と金属体であり、前記金属体の非接合部の基板側の面が、前記基板から離れるように傾斜していてもよい。
(6)本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振装置は、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子と、前記多重積層型ジョセフソン接合を有する超伝導体の単結晶における積層面と垂直な方向に電圧を印加する電圧印加手段とを備える。
本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子およびテラヘルツ帯域電磁波発振装置は、単結晶を少なくとも基板と反対側の面から排熱する排熱手段を有する。そのため、完全に液体ヘリウムを用いずに駆動することができると共に、広い周波数域のテラヘルツ波を発振することができる。また効率的に排熱できることで、テラヘルツ波の発振部である超伝導体の単結晶を基板上に高密度に集積することができる。
本発明の一態様に係るテラヘルツ帯域電磁波発振素子の斜視模式図である。発明の構成を理解しやすくするために、排熱手段を離して図示している。 超伝導体の単結晶の結晶構造を模式的に示した図である。 本発明の一態様に係るテラヘルツ帯域電磁波発振素子をメサ構造の長さ方向に垂直な面で切断した断面模式図である。 本発明の一態様に係るテラヘルツ帯域電磁波発振素子の斜視模式図であり、メサ構造を備える単結晶が複数配列した構造を模式的に図示した斜視模式図である。発明の構成を理解しやすくするために、排熱手段を離して図示している。 本発明の一態様に係る排熱手段が誘電体(絶縁体)と金属体とであるテラヘルツ帯域電磁波発振素子をメサ構造の長さ方向に垂直な面で切断した断面模式図である。 本発明の一態様に係るテラヘルツ帯域電磁波発振装置の斜視模式図である。発明の構成を理解しやすくするために、排熱手段を離して図示している。 本発明の一実施例におけるテラヘルツ帯域電磁波発振素子を模式的に示した図である。 本発明の一実施例におけるテラヘルツ帯域電磁波発振素子の電流電圧特性及び発振特性を示した図である。 発生したテラヘルツ波をフーリエ変換赤外分光装置で計測した結果を示すグラフである。
以下、本発明を適用したテラヘルツ帯域電磁波発振素子およびテラヘルツ帯域電磁波発振装置について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
(テラヘルツ帯域電磁波発振素子)
図1は、本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子の斜視模式図である。図1に示すように、本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振装置10は、基板1上に形成され、交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合が協調して振動することによりテラヘルツ帯域電磁波を発振できる多重積層型ジョセフソン接合を有し、その形状が基板に対してメサ構造を有する超伝導体の単結晶2と、単結晶2を少なくとも基板1と反対側の面から排熱する排熱手段3とを有する。
図1では、発明の構成を理解しやすくするために、排熱手段を離して図示しているが、実際には単結晶2の基板と反対側の面に排熱手段3が接合されている。
単結晶2は超伝導層と絶縁層の積層構造を有し、ジョセフソン接合を積層した構造をしている。図2は単結晶2の一例であるBiSrCaCu8+δ(Bi2212)の結晶構造である。図2において、三角錐はCuとOで形成されており、白丸はSr、黒丸は酸素、斜線が付された丸はCa、点が付された丸はBiを示す。図2の場合、CuO層が超伝導層2aであり、Bi層が絶縁層2bとなる。すなわち、超伝導層2a/絶縁層2b/超伝導層2aが原子レベルで積層した構造であり、各超伝導層2a同士は、ジョセフソン効果により絶縁層2bを介しても超伝導電流が流れることができる。Bi2212の場合、1μmの単結晶中に約670接合のジョセフソン接合が形成されている。
図2では、単結晶2の一例としてBi2212を提示したが、単結晶2は交流ジョセフソン効果を生じることができれば、当該結晶構造に限られない。例えば、結晶構造の異なるBiSrCaCu10+δ(Bi2223)等を用いることもできる。
ここで、単結晶2は、基板側の面と反対側の面に電圧を印加することでテラヘルツ波を発振する。このテラヘルツ波の発振の原理を以下に簡単に説明する。
単結晶2は、基板側の面と、基板と反対側の面に電圧を印加すると、交流ジョセフソン効果が生じる。交流ジョセフソン効果は、極めて薄い絶縁層を介した二つの超伝導体の間に一定の電圧Vを印加すると、交流電流が流れる現象のことを言う。このときの交流電流の振動数fは以下の式(1)で表示することができる。eは電気素量、hはプランク定数である。
=(2e/h)V ・・・(1)
電気素量およびプランク定数は一定であるため、式(1)で示すように、交流電流の振動数fは、ジョセフソン接合一層当りに印加した電圧Vに比例する。
一方、単結晶2はメサ構造を有し、基板に対してメサ形状を形成する。メサ構造とは、その断面形状が台形形状であるような卓状台地形状の構造を意味し、「基板に対してメサ形状を有する」とは、基板からなる平坦面上に卓状台地形状を有する単結晶2が形成されていることを意味する。図1では、矩形のメサ構造を図示したが、その界面で波を反射し、定在波をつくることができれば当該形状に限られない。例えば、平面視した際に円形、三角形、五角形等の形状となる、円盤型、三角形型、五角形型のメサ構造でも良い。
単結晶2がメサ構造を有すると、その単結晶の端面で波は反射する。すなわち、メサ構造内部には定在波が形成される。この定在波の振動数は、メサ構造の形状・サイズにより影響をうける。すなわち、単結晶2のメサ構造は、幾何学的共振周波数fを有する。
この幾何学的共振周波数fと交流ジョセフソン効果に伴う振動電流の周波数fが一致すると積層するジョセフソン接合間で共振が生じ、振動電流が位相を揃えて(コヒーレントに)流れることでテラヘルツ波が発生する。
そのため、ある特定の波長で強いテラヘルツ波を発振するためには、その単結晶2の上底部と下底部の幅は一致していることが好ましい。単結晶2の上底部と下底部の幅は一致していることは、すなわちその端面が基板に垂直となっていることを意味し、メサ構造内で形成される定在波が特定の周波数のみとなる。そのため、メサ構造に伴う幾何学的共振周波数fが一定となる。この一定の幾何学的共振周波数fと交流ジョセフソン効果に伴う振動電流の周波数fが一致する時に、積層したジョセフソン接合同士が共振してテラヘルツ波が発振するため、その端面が基板に垂直となっていれば、特定の波長で高い強度を示す、より単色のテラヘルツ波を得ることができる。
これに対し、広い周波数域でテラヘルツ波を発振ためには、単結晶2の断面が台形形状となっていることが好ましい。断面が台形形状となると、その上底部から下底部にかけて幅が徐々に変化するため、形成されるメサ構造に伴う幾何学的共振周波数fも範囲を有する。そのため、幾何学的共振周波数fと、交流ジョセフソン効果に伴う振動電流の周波数fが一致する周波数にも範囲が生じ、広い周波数域でテラヘルツ波を発振することができる。すなわち、メサ構造の形状は、その目的に合わせて変更することができる。
排熱手段3は、単結晶2を少なくとも基板1と反対側の面から排熱する。図1では、単結晶2の基板1と反対側の面に排熱手段3として熱伝導性の高い物質からなる板を接合している。熱伝導性が高い物質としては、例えばサファイア基板やCu等の金属体を挙げることができる。
また排熱手段3は、上述のような板に限られず、例えば図3に示すように、単結晶2の周囲をサーマルグリース等の熱伝導性の高い物質で覆ってもよい。
さらに、排熱手段3は、例えば図5のように、それらを組み合わせて用いてもよい。
図1や図3で示すように、熱伝導性の高い物質を用いる場合は、発生した熱を逃がすことで、単結晶2の温度が上昇するのを抑制することができるため、素子を冷却する装置をより小型化することが可能となり、持ち運び等も容易となる。
従来のテラヘルツ帯域電磁波発振素子における排熱は、基板側からの排熱のみであった。これは、テラヘルツ波の出力方向であるテラヘルツ帯域電磁波発振素子の上面(基板と反対側の面)に、出力されるテラヘルツ波を阻害するおそれのあるものを設置することは、高強度のテラヘルツ波の実現を目指す当業者にとって非常に抵抗のあるものであったためである。そのため、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の上部に排熱手段を設けた素子は現実に報告されていなかった。
しかしながら、本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、そのテラヘルツ波の出力方向の一部である単結晶の上面に少なくとも排熱手段を有する。この排熱手段を設けることで、従来実現できなかった効率的な排熱を行うことが可能となった。出力されるテラヘルツ波の阻害に係る影響に関しても、排熱手段によっては軽微な影響であった。また、この出力されるテラヘルツ波の阻害等の軽微な影響よりも、効率的な排熱に伴い得られる有利な効果による利点の方がはるかに大きいものであった。
ここで、単結晶の上面に少なくとも排熱手段を有することに伴う軽微な影響について説明する。
排熱手段としてサファイア基板やサーマルグリースを用いた際は、これらの物質はテラヘルツ波の波長領域帯において透明な物質である。しかし、現実には、物質を介するため、完全に透明ということはない。そのため、排熱手段としてサファイア基板やサーマルグリースを用いた場合の軽微な影響とは、サファイア基板やサーマルグリースによるわずかなテラヘルツ波の吸収及び反射に過ぎない。
これに対し、排熱手段として金属体を用いた際は、金属体はテラヘルツ波を完全に反射してしまう。この場合、テラヘルツ波を効率的に外部へ出力することが難しい。しかしながら、以下の構成を設けることで発生したテラヘルツ波を効率的に外部に取り出すことができる。例えば、金属体3b(図5参照)が単結晶2に接合され、この金属体3bの非接合部の基板1側の面が、基板1から離れるように徐々に傾斜している構造とすることができる。より具体的には、発振源から波が徐々に広がるように形成されたホーンアンテナ構造を用いることができる。このような構造とすることで、金属体3bと基板1とでつくられる空間と自由空間とのインピーダンスの整合性を高めることができ、開口端における電磁波の反射を抑制し、かつ高い指向性を付与し、効率的に発生したテラヘルツ波を取り出すことができる。すなわち、排熱手段として金属体を用いても、発生するテラヘルツ波への影響は軽微な影響とすることができる。図5では、金属体3bを単結晶2に対してサーマルグリース3aで接合した場合を図示した。
次に排熱手段を用いて、効率的に排熱することに伴う有利な効果について説明する。排熱手段を設けることで、単結晶2で発生する熱が効率的に排熱され、単結晶2が高温になることを抑制できる。そのため、液体ヘリウムを用いずに液体窒素温度でテラヘルツ波の発振を実現することができる。液体ヘリウムは、希少で高価であり、さらにその取り扱いにおいても種々の装置が必要となる。液体ヘリウムを用いなくてよいということは、安価でより小型のテラヘルツ帯域電磁波発振装置を可能とする。
また、冷却温度を上げることで、ホットスポット形成によって超伝導転移温度以上の温度となる局所領域が発生することを避けることができる。ホットスポットは、テラヘルツ波の発振にとっては障害となっていると考えられている。そのため、効率的に排熱することで、ホットスポットの発生に伴うテラヘルツ波の発生が阻害されることを避け、高い発振強度を実現することができる。
さらに、効率的に排熱することで単結晶2の温度上昇を抑えることができるため、単結晶2に印加する電圧を高めることができる。前述のように、交流ジョセフソン効果に伴う振動電流の周波数fは印加する電圧に比例する。そのため、印加する電圧を高めることができれば、発振できるテラヘルツ波の周波数域を拡げることができる。
単結晶2は、図1、図3に示すように、基板1上に一つのみが形成されている場合に限られない。図4に示すように、基板1上に複数配置されていることが好ましい。基板上に複数配置されていることで、テラヘルツ波の発振源が複数となるため、テラヘルツ波の発振強度を高めることができる。
また基板1上に複数配置された単結晶2が、一次元または二次元に配列したストリップライン構造であることがより好ましい。ストリップライン構造とは、図5に示すように、メサ構造を備える単結晶(導体)2が薄い誘電体(絶縁体)3aを介して広い金属(導体)面3bに接合された構造を意味する。このような構造とすることで、複数の単結晶2が協調して動作することができ、テラヘルツ波の発振強度を飛躍的に高めることができる。
このとき得られる発振強度は、複数の単結晶2の協調動作に影響を受けるため、単結晶の個数の2乗に比例する。また一つの単結晶に積層されたジョセフソン接合同士も同様に協調動作するため、発振強度は積層数の2乗にも比例する。すなわち、M層積層されて形成された単結晶が、N個並列に配列されていると、M×Nの発振強度を実現することができ、極めて強いテラヘルツ波の発振を実現することができる。
このような複数配列は、従来のテラヘルツ帯域電磁波発振素子でも原理的には実現可能であるが、それぞれの単結晶2での発熱による温度上昇が非常に大きいため、より熱的な相互干渉や電圧減少等の問題を発現する。そのため、現実に実現することは難しかった。これに対し、効率的な排熱手段を備えることで、基板1上にメサ構造を有する単結晶2をより多く集積することができ、協調動作による極めて強いテラヘルツ波の発振を実現することが可能となる。
基板1は特に限定されない。従来のテラヘルツ帯域電磁波発振素子のように、超伝導の単結晶を加工してメサ構造を形成する場合は、基板1は単結晶2と同一の超伝導体となる。超伝導体は熱伝導性が悪いため、基板1にはサファイア、ダイヤモンドまたは銅、あるいはそれらと同等以上に排熱効果の高い他のもの等を用いることが好ましい。これらの物質は、テラヘルツ帯域電磁波発振素子が駆動する窒素の沸点付近の温度において、高い熱伝導性を示すため、基板側からの効率的な排熱を実現可能となる。このとき基板1をサファイアとすることは、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、超伝導体の表面にメサ構造を加工し、さらに形成されたメサ構造を分離し、分離されたメサ構造を備える単結晶2をサファイア等からなる基板上に設置することで実現できる。
(テラヘルツ帯域電磁波発振装置)
図6は、本発明の一態様にかかるテラヘルツ帯域電磁波発振装置を模式的に示した斜視模式図である。本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振装置100は、上記のテラヘルツ帯域電磁波発振素子10と、多重積層型ジョセフソン接合を有する超伝導体の単結晶2における積層面と垂直な方向に電圧を印加する電圧印加手段20とを備える。単結晶2は基板1上に形成され、その基板1と反対側の面には排熱手段3が形成されている。テラヘルツ帯域電磁波発振装置100は、図視略する冷却装置をさらに備える。冷却装置は、テラヘルツ帯域電磁波発振素子10を冷却できるものであれば、特に限定されない。本発明では、液体ヘリウムを用いる必要が無いため、冷却装置として安価で小型のものを用いることができる。
電圧印加手段20から供給された電圧は、単結晶2の積層面に垂直な方向に印加される。超伝導体からなる単結晶2の積層面に垂直な方向は、超伝導層と絶縁層の積層構造が形成されているため、電圧が印加されることで交流ジョセフソン効果が生じる。この印加された電圧に比例する振動電流の周波数と、単結晶2のメサ構造の形状およびサイズに起因する幾何学的共振周波数が一致すると積層するジョセフソン接合間で共振が生じ、振動電流が位相を揃えて(コヒーレントに)流れることで、テラヘルツ波が外部に発振される。
このテラヘルツ帯域電磁波発振装置100は、上述のテラヘルツ帯域電磁波発振素子10を備えるため、効率的な排熱を実現することができ、発振強度の強いテラヘルツ波を発振することができる。
電圧印加手段20は特に限定されるものでなく、超伝導体の単結晶に直流を流すことができるものであればよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
図7は、本発明の一実施例に係るテラヘルツ帯域電磁波発振素子を模式的に示した図である。サファイアからなる基板1上に、Bi2212からなる単結晶2のメサ構造を形成した。メサ構造に係る単結晶2のサイズは、幅80μm、長さ400μm、高さ2μmとした。また、その周囲をサーマルグリース3a(ナノダイヤモンドグリス、SANWA SUPPLY社、TK−P3D)で覆った。さらに、サーマルグリースの上部にサファイア基板3cを積層し、二つのサファイアからなる基板でサーマルグリースおよびBi2212からなる単結晶を挟んだ構成とした。さらに、テラヘルツ帯域電磁波発振素子の周囲はCuからなる保護部4で覆い、テラヘルツ波の出力方向にはCu−Niからなるパイプ5を形成した。本実施例においては、従来の排熱方向である基板1に加えて、サーマルグリース3aとサファイア基板3cとCuからなる保護部4が排熱手段として機能する。
このテラヘルツ帯域電磁波発振素子を液体窒素に浸し、外部から電圧を印加した。その時、発生したテラヘルツ波は、パイプ5を通って室温へと導かれ、ショットキーバリアダイオード(SBD)検出器を用いて計測した。
図8は、本発明の一実施例におけるテラヘルツ帯域電磁波発振素子の電流電圧特性及び発振特性を示した図である。横軸は、テラヘルツ帯域電磁波発振素子に印加した電圧であり、縦軸はテラヘルツ帯域電磁波発振素子に印加した電流である。またメインのグラフの右及び下に表示したグラフは、ショットキーバリアダイードで計測された電圧を示す。
図8に示すように、電流電圧特性はジョセフソン効果に伴うヒステリシスループを描いている。すなわち、ジョセフソン接合として機能していることがわかる。また特定のバイアス点(1V付近)で、ショットキーバリアダイオードに急峻な電圧変化が生じており、テラヘルツ波が検出されていることがわかる。
また図9は、発生したテラヘルツ波をフーリエ変換赤外分光装置(日本分光社製、FARIS−1)で計測した結果を示すグラフである。横軸が発振周波数であり、縦軸が発振強度である。
実線は、電圧0.868V、電流46.73mAをテラヘルツ帯域電磁波発振素子に印加した際のテラヘルツ波の発振スペクトルを示し、点線は、電圧0.814V、電流44.24mAをテラヘルツ帯域電磁波発振素子に印加した際のテラヘルツ波の発振スペクトルを示す。
図9で示すように、特定の電圧、電流を印加した際に得られる発振スペクトルは、極めてシャープであり、単色のテラヘルツ波が得られていることがわかる。ただし、図9に示した発振スペクトルの線幅は分光装置の分解能により制限された幅を有しており、真の線幅は2〜3桁程度狭い。また電圧、電流値を変化させると、発振する周波数を変化させることができる。これは、電圧を変化させることで、交流ジョセフソン効果に伴う交流電流の振動数fが変化するためであり、積層するジョセフソン接合の共振により得られるテラヘルツ波の発振周波数も交流電流の振動数fに合せて変化している。すなわち、本発明のテラヘルツ帯域電磁波発振素子は、印加する電圧を変化させるだけで発振するテラヘルツ波の周波数を変化させることができる。
1…基板、2…単結晶、2a…超伝導層、2b…絶縁層、3…排熱手段、3a…サーマルグリース、3b…金属体、3c…サファイア基板、4…保護部、5…金属パイプ、10…テラヘルツ帯域電磁波発振素子、20…電圧印加手段、100…テラヘルツ帯域電磁波発振装置

Claims (6)

  1. 基板上に形成され、交流ジョセフソン効果を利用して複数のジョセフソン接合が協調して振動することによりテラヘルツ帯域電磁波を発振できる多重積層型ジョセフソン接合を有し、その形状が基板に対してメサ形状を有する超伝導体の単結晶と、
    前記単結晶を少なくとも前記基板と反対側の面から排熱する排熱手段とを有し、
    前記単結晶の積層方向からの平面視において、前記排熱手段は前記単結晶より面積が大きい、テラヘルツ帯域電磁波発振素子。
  2. 前記基板がサファイア、ダイヤモンドまたは銅のいずれかである請求項1に記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子。
  3. 前記単結晶が、基板上に複数配置されている請求項1または2のいずれかに記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子。
  4. 前記排熱手段が少なくとも前記単結晶の前記基板と反対側の面に接合された誘電体と金属体であり、
    基板上に複数配置された前記単結晶が、一次元または二次元に配列したストリップライン構造を有する請求項3に記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子。
  5. 前記排熱手段が少なくとも前記単結晶の前記基板と反対側の面に接合された誘電体と金属体であり、
    前記金属体の非接合部の基板側の面が、前記基板から離れるように傾斜している請求項1〜4のいずれか一項に記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のテラヘルツ帯域電磁波発振素子と、
    前記多重積層型ジョセフソン接合を有する超伝導体の単結晶における積層面と垂直な方向に電圧を印加する電圧印加手段とを備えるテラヘルツ帯域電磁波発振装置。
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