(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る作業用車両1の例を示す概略図(後部上方からの斜視図)である。また、図2は、本実施形態に係る作業用車両1の操縦室16の内部の構成例を示す斜視図である。また、図3は、第1の実施形態に係る作業用車両1の油圧回路システム(後述の第1操作パターンに設定された状態)の概略図(回路図)である。また、図4は、第1の実施形態に係る作業用車両1の油圧回路システム(後述の第2操作パターンに設定された状態)の概略図(回路図)である。また、図5は、本実施形態に係る作業用車両1のセレクターバルブ50の構成例を示す概略図である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
はじめに、作業用車両1の全体構成について説明する。ここでは、クローラを備えて走行するクローラローダ(トラックローダ)を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
作業用車両1は、図1に示すように、車体10に対して、左右下部に走行装置11、12と、前部に作業装置14と、中央部に操縦室16と、後部にエンジン20等が収容されるエンジンルーム18、およびアーム154を取付けるアームポスト152とを備えて構成されている。一例として、走行装置(第1走行装置11および第2走行装置12)は、左右一対で、クローラ(無端状の履帯)22等を備えて構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、左右一対のタイヤを備えて走行する構成(「スキッドステアローダ」と称される)としてもよい(不図示)。
先ず、作業装置14は、アームポスト152に対して上下に揺動可能に枢結された左右一対のアーム154と、アーム154の先端部に上下に揺動可能に枢結されたブラケット162と、ブラケット162に着脱可能に取付けられたアタッチメント164とを備えて構成されている。ここで、アームポスト152およびアーム154に跨って左右一対のアームシリンダ156が設けられており、ブラケット162およびアーム154に跨って左右一対のアタッチメント用シリンダ(通称「バケットシリンダ」)が設けられている(不図示)。
この構成によれば、アームシリンダ156を伸縮作動させることにより、車体10に対してアーム154を上下に揺動作動させることができる。また、アタッチメント用シリンダを伸縮作動させることにより、アーム154に対してブラケット162すなわち装着されたアタッチメント164を上下に揺動作動させることができる。
本実施形態においては、アタッチメント164としてバケットを備える構成を例に挙げている。ただし、この構成に限定されるものではなく、アタッチメント164は作業用途に合わせて適宜、選択されて装着される。他の例として、コンクリートカッタ、トレンチャー等の油圧で駆動されるアタッチメントを装着することができる(不図示)。当該アタッチメント164は、単体で、もしくはブラケット162とセットで交換される構成となっている。あるいは、ブラケットとアタッチメントとを一体化した構成のものもある(不図示)。なお、作業用車両1には、油圧で駆動されるアタッチメントに圧油(所定圧力の作動油)を供給するサービス油路が設けられている(不図示)。
次に、エンジンルーム18は、車体10の後部(操縦室16の後方位置)に設けられており、その内部に収容される形で駆動源としてのエンジン20や後述の機器等が搭載されている。一例として、エンジン20には、水冷式ディーゼルエンジンが用いられるがこれに限定されるものではない。前述の走行装置11、12や作業装置14は、このエンジン20により駆動された各油圧ポンプから送出される圧油を受けて駆動される構成となっている。なお、駆動源は、エンジン20に代えて、もしくはエンジン20と共にバッテリーを用いる構成としてもよい(不図示)。
本実施形態に係る作業用車両1は、HST(Hydro-Static Transmission)を備えて走行する構成である。より詳しくは、走行装置11、12を駆動する構成の例として、駆動源としてのエンジン20により駆動される可変容量型の走行油圧ポンプ26(第1走行油圧ポンプ26L、第2走行油圧ポンプ26R)、および走行油圧ポンプ26(第1走行油圧ポンプ26L、第2走行油圧ポンプ26R)から供給される圧油により駆動される走行油圧モータ27(第1走行油圧モータ27L、第2走行油圧モータ27R)を備えている。また、エンジン20により駆動されてパイロット油圧を発生させるパイロット油圧ポンプ21、およびパイロット油圧ポンプ21から走行油圧ポンプ26(第1走行油圧ポンプ26L、第2走行油圧ポンプ26R)、およびアーム操作用コントロールバルブ28等に連通し、パイロット油圧を印加するパイロット油路(詳細は後述)を備えている。さらに、作業用車両1の上記駆動機構、走行装置11、12、アーム154、アタッチメント164等の作動を制御する制御装置140、および制御装置140からの指令に基づいてエンジン20の制御を行うエンジンコントロールユニット(ECU)142を備えている。
ここで、本実施形態に係る作業用車両1は、少なくとも「高速モード」と「低速モード」とで切換えを行う変速機構を備えている。具体的に、変速機構は、変速用コントロールバルブ24を備えて構成されており、制御装置140からの指令に基づいて走行モードの切換えを行う機構である。例えば、「高速モード」は、走行油圧ポンプ26の回転数が高く、駆動トルクが小さい走行モードである。一方、「低速モード」は、走行油圧ポンプ26の回転数が低く、駆動トルクが大きい走行モードである。変形例として、その他の走行モードを併せ持つ構成としてもよい。
次に、操縦室16は、図2に示すように、作業者(オペレータ)が搭乗して着座するシート170、および走行装置11、12、アーム154、アタッチメント164等の作動を操作する第1操作レバー171(一例として、左側のレバー)および第2操作レバー172(一例として、右側のレバー)を備えている。また、アーム154のフロート動作用のフロートスイッチ(動作の詳細は後述)や、各機構の作動を操作する各種操作スイッチ等を備えており、これらは、操作パネル174等に配設されている。なお、車両情報を表示するクラスタ176を備えて、当該クラスタ176に操作スイッチを表示させて操作する構成としてもよい。
ここで、第1操作レバー171に連動して設けられる第1リモコンバルブユニット39は、四つのパイロットバルブ(第1パイロットバルブ31、第2パイロットバルブ32、第3パイロットバルブ33、第4パイロットバルブ34)を備えて構成されおり、エンジン20により駆動されるパイロット油圧ポンプ21から供給される圧油を基にして、第1操作レバー171に対する傾動操作方向および傾動量に応じたパイロット圧を生成するように構成されている。一方、第2操作レバー172に連動して設けられる第2リモコンバルブユニット49は、四つのパイロットバルブ(第5パイロットバルブ42、第6パイロットバルブ44、第7パイロットバルブ43、第8パイロットバルブ41)を備えて構成され、パイロット油圧ポンプ21から供給される圧油を基にして、第2操作レバー172に対する傾動操作方向および傾動量に応じたパイロット圧を生成するように構成されている。
本実施形態に係る作業用車両1は、セレクターバルブ50の切換えを行うことによって、パイロット油路の構成の切換えを行うレバーパターン切換え機構を備えている。これによれば、作業者が二通りの操作パターンを選択可能とする技術(レバーパターンチェンジ技術)が実現される。概略として、図3(a)の操作パターン図に示すように、第1操作レバー171により第1走行装置11および第2走行装置12の前進および後進を行い、第2操作レバー172によりアーム154の下降および上昇を行う第1操作パターンが実現される。なお、その際の油圧回路構成(パイロット油路を中心とする主要部)を図3(b)に示す。また、図4(a)の操作パターン図に示すように、第1操作レバー171により第1走行装置11の前進および後進ならびにアーム154の下降および上昇を行い、第2操作レバー172により第2走行装置12の前進および後進を行う第2操作パターンが実現される。なお、その際の油圧回路構成(パイロット油路を中心とする主要部)を図4(b)に示す。
このように、レバーパターンチェンジ技術が実現されることによって、作業者が操縦し易い操作パターンを選択することが可能となり、作業性の向上を図ることができる。以下、第1操作パターンに設定した場合、および第2操作パターンに設定した場合について、詳しく説明する。
先ず、第1操作パターンに設定した場合について、図3、図5を参照しながら説明する。第1操作レバー171を前方に傾動させたときには、第2パイロットバルブ32および第3パイロットバルブ33においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、第2パイロットバルブ32で生成されたパイロット圧が第2入力油路32aおよび第5出力油路(第5パイロット油路)62aを経由して第2走行油圧ポンプ26Rの前進用入力ポート26cに供給される。また、第3パイロットバルブ33で生成されたパイロット圧が第3入力油路33aおよび第3出力油路(第3パイロット油路)63aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26aに出力される。その結果、第2走行油圧モータ27Rが前進側に回転駆動されて、第2走行装置12が前進駆動される。また、第1走行油圧モータ27Lが前進側に回転駆動されて、第1走行装置11が前進駆動される。このとき、作業用車両1は前進走行をする。
第1操作レバー171を後方に傾動させたときには、第1パイロットバルブ31および第4パイロットバルブ34においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、第1パイロットバルブ31で生成されたパイロット圧が第1入力油路31aおよび第4出力油路(第4パイロット油路)61aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bに供給される。また、第4パイロットバルブ34で生成されたパイロット圧が第4入力油路34aおよび第6出力油路(第6パイロット油路)64aを経由して第2走行油圧ポンプ26Rの後進用入力ポート26dに供給される。その結果、第2走行油圧モータ27Rが後進側に回転駆動されて、第2走行装置12が後進駆動される。また、第1走行油圧モータ27Lが後進側に回転駆動されて、第1走行装置11が後進駆動される。このとき、作業用車両1は後進走行をする。
第1操作レバー171を右方に傾動させたときには、第3パイロットバルブ33および第4パイロットバルブ34においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、第3パイロットバルブ33で生成されたパイロット圧が第3入力油路33aおよび第3出力油路(第3パイロット油路)63aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26aに供給される。また、第4パイロットバルブ34で生成されたパイロット圧が第4入力油路34aおよび第6出力油路(第6パイロット油路)64aを経由して第2走行油圧ポンプ26Rの後進用入力ポート26dに供給される。その結果、第2走行油圧モータ27Rが後進側に回転駆動されて、第2走行装置12が後進駆動される。また、第1走行油圧モータ27Lが前進側に回転駆動されて、第1走行装置11が前進駆動される。このとき、作業用車両1は右前方に向けて旋回(右スピンターン)をする。
第1操作レバー171を左方に傾動させたときには、第1パイロットバルブ31および第2パイロットバルブ32においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、第1パイロットバルブ31で生成されたパイロット圧が第1入力油路31aおよび第4出力油路(第4パイロット油路)61aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bに供給される。また、第2パイロットバルブ32で生成されたパイロット圧が第2入力油路32aおよび第5出力油路(第5パイロット油路)62aを経由して第2走行油圧ポンプ26Rの前進用入力ポート26cに供給される。その結果、第2走行油圧モータ27Rが前進側に回転駆動されて、第2走行装置12が前進駆動される。また、第1走行油圧モータ27Lが後進側に回転駆動されて、第1走行装置11が後進駆動される。このとき、作業用車両1は左前方に向けて旋回(左スピンターン)をする。
第1操作レバー171を後方左側に傾動させたときは第1パイロットバルブ31、前方左側に傾動させたときは第2パイロットバルブ32、前方右側に傾動させたときは第3パイロットバルブ33、後方右側に傾動させたときは第4パイロットバルブ34においてそれぞれパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、第1操作レバー171を後方左側に傾動させたときは、第1操作レバー171により第1パイロットバルブ31のみが押圧され、この第1パイロットバルブ31で生成されたパイロット圧が第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bに供給される。その結果、第1走行油圧モータ27Lが後進側に回転駆動されて、第1走行装置11のみが後進駆動される。このとき、作業用車両1は右後方に向けて旋回(右後方ピボットターン)をする。同様にして、第1操作レバー171を前方左側に傾動させたときは、第2走行装置12のみが前進駆動されて、作業用車両1は左前方に向けて旋回(左前方ピボットターン)をする。また、第1操作レバー171を後方右側に傾動させたときは、第2走行装置12のみが後進駆動されて、作業用車両1は左後方に向けて旋回(左後方ピボットターン)をし、第1操作レバー171を前方右側に傾動させたときは、第1走行装置11のみが前進駆動されて、作業用車両1は右前方に向けて旋回(右前方ピボットターン)をする。
次に、第2操作レバー172を前方に傾動させたときには、第6パイロットバルブ44においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、このパイロット圧が第6入力油路44aおよび第1出力油路(第1パイロット油路)66aを経由してアーム操作用コントロールバルブ28のアーム下降用入力ポート28aに供給される。その結果、アームシリンダ156が縮小されて、アーム154が下方に揺動される。
第2操作レバー172を後方に傾動させたときには、第5パイロットバルブ42においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、このパイロット圧が第5入力油路42aおよび第2出力油路(第2パイロット油路)65aを経由してアーム操作用コントロールバルブ28のアーム上昇用入力ポート28bに供給される。その結果、アームシリンダ156が伸長されて、アーム154が上方に揺動される。
第2操作レバー172を右方に傾動させたときには、第8パイロットバルブ41においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、このパイロット圧が第8入力油路41aを経由してアタッチメント操作用コントロールバルブ23のアタッチメント下降用入力ポート23aに供給される。その結果、アタッチメント用シリンダが伸長されて、アタッチメント(一例として、バケット)164が下方に揺動される。
第2操作レバー172を左方に傾動させたときには、第7パイロットバルブ43においてパイロット圧が生成され、このパイロット圧が第7入力油路43aを経由してアタッチメント操作用コントロールバルブ23のアタッチメント上昇用入力ポート23bに供給される。その結果、アタッチメント用シリンダが縮小されて、アタッチメント(一例として、バケット)164が上方に揺動される。
続いて、第2操作パターンに設定した場合ついて、図4、図5を参照しながら説明する。第1操作レバー171を前方に傾動させたときには、第2パイロットバルブ32および第3パイロットバルブ33においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、これらのパイロット圧がセレクターバルブ50の入力ポート52、53に入力される。入力ポート52、53に入力されたパイロット圧のうちで、高圧のパイロット圧が第2シャトルバルブ72、出力ポート63、および第3出力油路(第3パイロット油路)63aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26aに供給される。その結果、第1走行油圧モータ27Lが前進側に回転駆動されて、第1走行装置11のみが前進駆動される。このとき、作業用車両1は右前方に向けて旋回(右前方ピボットターン)をする。
なお、このとき、第2パイロットバルブ32で生成されて、セレクターバルブ50の入力ポート52に入力されたパイロット圧の一部は、第1シャトルバルブ71、出力ポート65、および第2出力油路(第2パイロット油路)65aを経由してアーム操作用コントロールバルブ28のアーム上昇用入力ポート28bに供給される。また、第3パイロットバルブ33で生成されて、セレクターバルブ50の入力ポート53に入力されたパイロット圧の一部は、第3シャトルバルブ73、出力ポート66、および第1出力油路(第1パイロット油路)66aを経由してアーム操作用コントロールバルブ28のアーム下降用入力ポート28aに供給される。このアーム操作用コントロールバルブ28のアーム上昇用入力ポート28bおよびアーム操作用コントロールバルブ28のアーム下降用入力ポート28aに入力されるパイロット圧はほぼ同じ大きさとなっているので、アーム操作用コントロールバルブ28のスプールは中立位置に保持される。
第1操作レバー171を後方に傾動させたときには、第1パイロットバルブ31および第4パイロットバルブ34においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、これらのパイロット圧がセレクターバルブ50の入力ポート51、54に入力される。入力ポート51、54に入力されたパイロット圧のうちで、高圧のパイロット圧が第4シャトルバルブ74、出力ポート61、および第4出力油路(第4パイロット油路)61aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bに供給される。その結果、第1走行油圧モータ27Lが後進側に回転駆動されて、第1走行装置11のみが後進駆動される。このとき、作業用車両1は右後方に向けて旋回(右後方ピボットターン)をする。
なお、このとき、第1パイロットバルブ31で生成されて、セレクターバルブ50の入力ポート51に入力されたパイロット圧の一部は、第1シャトルバルブ71、出力ポート65、および第2出力油路(第2パイロット油路)65aを経由してアーム操作用コントロールバルブ28のアーム上昇用入力ポート28bに供給される。また、第4パイロットバルブ34で生成されて、セレクターバルブ50の入力ポート54に入力されたパイロット圧の一部は、第3シャトルバルブ73、出力ポート66、および第1出力油路(第1パイロット油路)66aを経由してアーム操作用コントロールバルブ28のアーム下降用入力ポート28aに供給される。このアーム操作用コントロールバルブ28のアーム上昇用入力ポート28bおよびアーム操作用コントロールバルブ28のアーム下降用入力ポート28aに入力されるパイロット圧はほぼ同じ大きさとなっているので、アーム操作用コントロールバルブ28のスプールは中立位置に保持される。
第1操作レバー171を右方に傾動させたときには、第3パイロットバルブ33および第4パイロットバルブ34においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、これらのパイロット圧がセレクターバルブ50の入力ポート53、54に入力される。入力ポート53、54に入力されたパイロット圧のうちで、高圧のパイロット圧が第3シャトルバルブ73、出力ポート66、および第1出力油路(第1パイロット油路)66aを経由してアーム操作用コントロールバルブ28のアーム下降用入力ポート28aに供給される。その結果、アームシリンダ156が縮小されて、アーム154が下方に揺動される。
なお、このとき、第3パイロットバルブ33で生成されて、セレクターバルブ50の入力ポート53に入力されたパイロット圧の一部は、第2シャトルバルブ72、出力ポート63、および第3出力油路(第3パイロット油路)63aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26aに供給される。また、第4パイロットバルブ34で生成されて、セレクターバルブ50の入力ポート54に入力されたパイロット圧の一部は、第4シャトルバルブ74、出力ポート61、および第4出力油路(第4パイロット油路)61aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bに供給される。この第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26aおよび第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bに入力されるパイロット圧はほぼ同じ大きさとなっており、第1走行油圧ポンプ26Lから第1走行油圧モータ27Lへの圧油供給が行われず、第1走行油圧モータ27Lは回転駆動されない。
第1操作レバー171を左方に傾動させたときには、第1パイロットバルブ31および第2パイロットバルブ32においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、これらのパイロット圧がセレクターバルブ50の入力ポート51、52に入力される。入力ポート51、52に入力されたパイロット圧のうちで、高圧のパイロット圧が第1シャトルバルブ71、出力ポート65、および第2出力油路(第2パイロット油路)65aを経由してアーム操作用コントロールバルブ28のアーム上昇用入力ポート28bに供給される。その結果、アームシリンダ156が伸長されて、アーム154が上方に揺動される。
なお、このとき、第1パイロットバルブ31で生成されて、セレクターバルブ50の入力ポート51に入力されたパイロット圧の一部は、第4シャトルバルブ74、出力ポート61、および第4出力油路(第4パイロット油路)61aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bに供給される。また、第2パイロットバルブ32で生成されて、セレクターバルブ50の入力ポート52に入力されたパイロット圧の一部は、第2シャトルバルブ72、出力ポート63、および第3出力油路(第3パイロット油路)63aを経由して第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26aに供給される。この第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bおよび第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26aに入力されるパイロット圧はほぼ同じ大きさとなっており、第1走行油圧ポンプ26Lから第1走行油圧モータ27Lへの圧油供給が行われず、第1走行油圧モータ27Lは回転駆動されない。
また、第1操作レバー171を後方左側に傾動させたときは第1パイロットバルブ31、前方左側に傾動させたときは第2パイロットバルブ32、前方右側に傾動させたときは第3パイロットバルブ33、後方右側に傾動させたときは第4パイロットバルブ34においてそれぞれパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、第1操作レバー171を後方左側に傾動させたときは、第1操作レバー171により第1パイロットバルブ31のみが押圧され、この第1パイロットバルブ31で生成されたパイロット圧が、第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bとアーム操作用コントロールバルブ28のアーム上昇用入力ポート28bとに供給される。その結果、第1走行油圧モータ27Lが後進側に回転駆動されて、第1走行装置11のみが後進駆動される(右後方ピボットターンを行う)と共に、アームシリンダ156が伸長されてアーム154が上方に揺動される。同様にして、第1操作レバー171を前方左側に傾動させたときは、第1走行装置11のみが前進駆動される(右前方ピボットターンを行う)と共に、アームシリンダ156が伸長されてアーム154が上方に揺動される。また、第1操作レバー171を後方右側に傾動させたときは、第2走行装置12のみが後進駆動される(左後方ピボットターンを行う)と共に、アームシリンダ156が縮小されてアーム154が下方に揺動される。また、第1操作レバー171を前方右側に傾動させたときは、第2走行装置12のみが前進駆動される(左前方ピボットターンを行う)と共に、アームシリンダ156が縮小されてアーム154が下方に揺動される。
第2操作レバー172を前方に傾動させたときには、第6パイロットバルブ44においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、このパイロット圧が入力ポート56、出力ポート62、および第5出力油路(第5パイロット油路)62aを経由して第2走行油圧ポンプ26Rの前進用入力ポート26cに供給される。その結果、第2走行油圧モータ27Rが前進側に回転駆動されて、第2走行装置12のみが前進駆動される。このとき、作業用車両1は左前方に向けて旋回(左前方ピボットターン)をする。
第2操作レバー172を後方に傾動させたときには、第5パイロットバルブ42においてパイロット圧が生成され、以下のパイロット油路にパイロット油が供給される。すなわち、このパイロット圧が入力ポート55、出力ポート64、および第6出力油路(第6パイロット油路)64aを経由して第2走行油圧ポンプ26Rの後進用入力ポート26dに供給される。その結果、第2走行油圧モータ27Rが後進側に回転駆動されて、第2走行装置12のみが後進駆動される。このとき、作業用車両1は左後方に向けて旋回(左後方ピボットターン)をする。
なお、第2操作レバー172を右方に傾動させたとき、および、第2操作レバー172を左方に傾動させたときについては、前述の第1操作パターンに設定した場合と同様であるため、繰り返しの説明を省略する。
このように、第1操作レバー171および第2操作レバー172のそれぞれについて、傾動操作とその傾動操作に応じて作動する油圧アクチュエータ(コントロールバルブ)との組合せ、すなわち、パイロット油路の構成(接続パターン)を複数通り(本実施形態においては二通り)設定し、且つ、セレクターバルブ50を介して当該構成(接続パターン)の切換えを実現している。なお、一例として、セレクターバルブ50の切換えは、操縦室16に設けられる切換えレバー59を用いて行う構成としているが、これに限定されるものではなく、操作パネル174やクラスタ176等に設けられるスイッチとセレクターバルブ50に連結されるアクチュエータ(ソレノイドバルブ等)とを用いる構成としてもよい(不図示)。
ここで、作業用車両1は、上記の通り「レバーパターンチェンジ技術」の実現を可能としている。さらに、「ターン時自動変速技術」の実現も可能となれば、作業性を著しく向上させることができる。
前述の通り、「ターン時自動変速技術」とは、小トルクの高速モードで走行中に、スピンターン等のターン操作が行われたときに、自動的に大トルクの低速モードに切換えが行われる技術である。したがって、スピンターン等のターン操作が行われた状態の判定を行うことが必要となる。
ここで、本実施形態に係る作業用車両1においては、「レバーパターンチェンジ技術」の同時実現を図るため、セレクターバルブ50によって切換えが行われる複数通り(ここでは、二通り)のパイロット油圧回路を備える構成となっている。そのため、従来の設計思想によれば、セレクターバルブ50よりも下流に、複数のシャトルバルブを設けると共に、各パイロット油路に圧力スイッチを設ける構成とすれば、走行装置11、12が前進状態か後進状態かの判定を行うことも不可能ではない。しかしながら、複数のシャトルバルブを設ける構成となれば、当然、機構・油圧回路が複雑化し、装置コストの高騰を招くこととなってしまう。
そこで、本実施形態においては、以下の構成を案出することによって、簡素な機構・油圧回路で、低コストに、その実現を図っている。
先ず、装置構成として、第1パイロット油路66aには、一例としてセレクターバルブ50よりも下流側でアーム下降用入力ポート28aよりも上流側の位置において、複雑な判定回路を介在させずに、当該第1パイロット油路66aに供給されるパイロット油の圧力値を検出する第1圧力センサ81が設けられている。また、第2パイロット油路65aには、一例としてセレクターバルブ50よりも下流側でアーム上昇用入力ポート28bよりも上流側の位置において、複雑な判定回路を介在させずに、当該第2パイロット油路65aに供給されるパイロット油の圧力値を検出する第2圧力センサ82が設けられている。また、第3パイロット油路63aには、一例としてセレクターバルブ50よりも下流側の位置で第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26aよりも上流側の位置において、複雑な判定回路を介在させずに、当該第3パイロット油路63aに供給されるパイロット油の圧力値を検出する第3圧力センサ83が設けられている。また、第4パイロット油路61aには、一例としてセレクターバルブ50よりも下流側で第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bよりも上流側の位置において、複雑な判定回路を介在させずに、当該第4パイロット油路61aに供給されるパイロット油の圧力値を検出する第4圧力センサ84が設けられている。これらの圧力センサ(第1圧力センサ81~第4圧力センサ84)によって検出されたそれぞれの圧力値は、制御装置140へ送信される。
上記の通り、第1圧力センサ81、第2圧力センサ82、第3圧力センサ83、および第4圧力センサ84は、それぞれが設けられるパイロット油路において、セレクターバルブ50よりも下流側の位置に配設されている構成によって、検出・検知を行う処理ルーチンが簡素化できるため、制御装置140における処理速度を向上させることができる。
次に、第5パイロット油路62aには、一例としてセレクターバルブ50よりも下流側で第2走行油圧ポンプ26Rの前進用入力ポート26cよりも上流側の位置において、複雑な判定回路を介在させずに、当該第5パイロット油路62aに供給されるパイロット油による所定圧力の印加有無、すなわち、所定圧力が印加されているか否かを検知する第1圧力スイッチ91が設けられている。また、第6パイロット油路64aには、一例としてセレクターバルブ50よりも下流側で第2走行油圧ポンプ26Rの後進用入力ポート26dよりも上流側の位置において、複雑な判定回路を介在させずに、当該第6パイロット油路64aに供給されるパイロット油による所定圧力の印加有無、すなわち、所定圧力が印加されているか否かを検知する第2圧力スイッチ92が設けられている。これらの圧力スイッチ(第1圧力スイッチ91、第2圧力スイッチ92)によって検出されたそれぞれの圧力の印加有無は、信号として制御装置140へ送信される。
次に、本実施形態に係る制御装置140が行う作動制御(ここでは、「ターン時自動変速技術」に関する制御)の概要を図6のフローチャートに示す。
先ず、制御装置140は、走行モードが「高速モード」であるか否かを判定するステップを実施する(ステップA1)。ここで、走行モードが「高速モード」であると判定した場合は、自動変速の制御を行う必要が生じ得るため、以下のステップに進む。一方、走行モードが「高速モード」でないと判定した場合は、自動変速の制御を行う必要がないため、処理フローはエンドに至る。
次いで、制御装置140は、第1走行装置11が前進状態か後進状態かの判定を行うステップを実施する(ステップA2)。本実施形態においては、セレクターバルブ50よりも下流側で、且つ、第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26a、後進用入力ポート26bよりも上流側において、複雑な判定回路を介在させずに、第3圧力センサ83および第4圧力センサ84により検出される圧力値を用いてその判定を可能としている。具体的に、第3圧力センサ83の圧力値>第4圧力センサ84の圧力値の場合に第1走行装置11が前進状態と判定する。一方、第3圧力センサ83の圧力値<第4圧力センサ84の圧力値の場合に第1走行装置11が後進状態と判定する。
併せて、制御装置140は、第2走行装置12が前進状態か後進状態かの判定を行うステップを実施する(ステップA3)。本実施形態においては、セレクターバルブ50よりも下流側で、且つ、第2走行油圧ポンプ26Rの前進用入力ポート26c、後進用入力ポート26dよりも上流側において、複雑な判定回路を介在させずに、第1圧力スイッチ91および第2圧力スイッチ92により検知される所定圧力の印加有無の信号を用いてその判定を可能としている。具体的に、第1圧力スイッチ91による所定圧力の印加信号が「有」となる(回路構成上、第2圧力スイッチ92による所定圧力の印加信号が「無」となる)場合に、第2走行装置12が前進状態と判定する。一方、第2圧力スイッチ92による所定圧力の印加信号が「有」となる(回路構成上、第1圧力スイッチ91による所定圧力の印加信号が「無」となる)場合に、第2走行装置12が後進状態と判定する。
次いで、制御装置140は、第1走行装置11が前進状態で且つ第2走行装置12が後進状態である場合、および、第1走行装置11が後進状態で且つ第2走行装置12が前進状態である場合、のいずれかに該当することによって「スピンターン」操作が行われた状態であるとの判定を行うステップを実施する(ステップA4)。
次いで、制御装置140は、上記の「スピンターン」操作が行われた状態であると判定した場合は、第1操作レバー171および第2操作レバー172とは連動させずに変速機構を「高速モード」から「低速モード」に切換えを行う制御を行うステップを実施する(ステップA5)。
なお、変形例として、「スピンターン」操作が行われた状態に加えて、「ピボットターン」操作が行われた状態においても、第1操作レバー171および第2操作レバー172とは連動させずに変速機構を「高速モード」から「低速モード」に切換えを行う制御を行うステップを実施する構成としてもよい(不図示)。その場合には、第1走行装置11が前進状態もしくは後進状態で且つ第2走行装置12が停止状態である場合、および、第1走行装置11が停止状態で且つ第2走行装置12が前進状態もしくは後進状態である場合、のいずれかに該当することによって「ピボットターン」操作が行われた状態であるとの判定を行うステップを実施する。
以上のように、本実施形態に係る作業用車両1によれば、「レバーパターンチェンジ技術」と、「ターン時自動変速技術」との両方の実現を、簡素な機構・油圧回路によって、特に、セレクターバルブ50よりも下流側で各入力ポートよりも上流側に複数のシャトルバルブを介在させた複雑な判定回路を設けることなく可能としている。これに加え、そのような簡素な機構・油圧回路において、以下に示す「フロート技術」の実現も可能としている。
ここで、「フロート技術」とは、アーム154の上昇・下降を行うアームシリンダ156に供給される圧油を作動油タンク(不図示)へ放出することによって、アーム154を下降させると共にアタッチメント164を地面等に対して追従可能に接地させる状態(フロート状態)とする技術(機能)をいう。
本実施形態に係る作業用車両1は、アーム154に対してフロート状態とフロート解除状態とで切換えを行うフロート動作用コントロールバルブ29を有するフロート切換え機構を備えている。
ここで、本実施形態に係る制御装置140が行う作動制御(ここでは、「フロート技術」に関する制御)の概要を図7のフローチャートに示す。
先ず、制御装置140は、フロートスイッチがオン状態であるかオフ状態であるかを判定するステップを実施する(ステップB1)。ここで、フロートスイッチがオン状態であると判定した場合は、フロート動作に向けて、以下のステップに進む。一方、フロートスイッチがオフ状態であると判定した場合は、処理フローはエンドに至る。
次いで、制御装置140は、アーム154が下降操作状態であるか上昇操作状態であるかの判定を行うステップを実施する(ステップB2)。本実施形態においては、セレクターバルブ50よりも下流側で、且つ、アーム操作用コントロールバルブ28のアーム下降用入力ポート28a、アーム上昇用入力ポート28bよりも上流側において、複雑な判定回路を介在させずに、第1圧力センサ81および第2圧力センサ82により検出される圧力値を用いてその判定を可能としている。具体的に、第1圧力センサ81の圧力値>第2圧力センサ82の圧力値の場合にアーム154が下降操作状態であると判定する。一方、第1圧力センサ81の圧力値<第2圧力センサ82の圧力値の場合にアーム154が上昇操作状態であると判定する。
次いで、制御装置140は、フロートスイッチがオン状態で且つアーム154が下降操作状態である場合に、フロート動作を実行する操作が行われた状態であるとの判定を行うステップを実施する(ステップB3)。
次いで、制御装置140は、上記のフロート動作を実行する操作が行われた状態であると判定した場合は、フロート切換え機構をフロート状態に切換えを行う制御を行うステップを実施する(ステップB4)。具体的に、フロート動作用コントロールバルブ29を、フロート状態となる回路に切換えを行う制御となる。
このように、本実施形態に係る作業用車両1によれば、「レバーパターンチェンジ技術」、「ターン時自動変速技術」、および「フロート技術」の全ての実現を、簡素な機構・油圧回路によって可能としている。
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る作業用車両1について説明する。本実施形態に係る作業用車両1は、前述の第1の実施形態と基本的な構成は同様であるが、特に、パイロット油路の構成および制御装置140による制御に関して相違点を有する。以下、当該相違点を中心に本実施形態について説明する。
本実施形態に係る作業用車両1の油圧回路システムの概略図(回路図)を図8(図4に対応する図であって、図8(a)は操作パターン、図8(b)は油圧回路構成である)に示す。前述の第1の実施形態と相違して、第5パイロット油路62aには、一例としてセレクターバルブ50よりも下流側の位置で第1走行油圧ポンプ26Lの前進用入力ポート26aよりも上流側の位置において、複雑な判定回路を介在させずに、当該第5パイロット油路62aに供給されるパイロット油の圧力値を検出する第5圧力センサ85が設けられている。また、第6パイロット油路64aには、一例としてセレクターバルブ50よりも下流側で第1走行油圧ポンプ26Lの後進用入力ポート26bよりも上流側の位置において、複雑な判定回路を介在させずに、当該第6パイロット油路64aに供給されるパイロット油の圧力値を検出する第6圧力センサ86が設けられている。当該第5圧力センサ85および第6圧力センサ86、によって検出されたそれぞれの圧力値は、前述の第1圧力センサ81~第4圧力センサ84によって検出されたそれぞれの圧力値と同様に、制御装置140へ送信される。
また、本実施形態に係る制御装置140が行う作動制御(ここでは、「ターン時自動変速技術」に関する制御)の処理フローにおける相違点として、前述の第1の実施形態におけるステップA3に代えて、以下に示すステップC1が実行される。当該ステップC1として、具体的に、制御装置140は、第2走行装置12が前進状態か後進状態かの判定を行うステップを実施する。本実施形態においては、セレクターバルブ50よりも下流側で、且つ、第2走行油圧ポンプ26Rの前進用入力ポート26c、後進用入力ポート26dよりも上流側において、複雑な判定回路を介在させずに、第5圧力センサ85および第6圧力センサ86により検出される圧力値を用いてその判定を可能としている。具体的に、第5圧力センサ85の圧力値>第6圧力センサ86の圧力値の場合に第2走行装置12が前進状態と判定する。一方、第5圧力センサ85の圧力値<第6圧力センサ86の圧力値の場合に第2走行装置12が後進状態と判定する。
このように、本実施形態によっても、前述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
ここで、本実施形態においては、第5パイロット油路62aおよび第6パイロット油路64aにおいて、圧力センサが配設される構成である。したがって、当該油路に圧力スイッチが配設される前述の第1の実施形態と比較して、装置コストが上昇する要素にもなり得る。しかしながら、その一方で、以下に示す本実施形態ならではの技術(機能)の実現が可能となる。
具体的には、小トルクの高速モードで走行中において、走行負荷(エンジン負荷)が高くなったときに、自動的に大トルクの低速モードに切換えが行われる技術(以下、「高負荷時自動変速技術」と称する場合がある)の実現が可能となる。したがって、前述の第1の実施形態と比較して、作業者の操作負担を軽減でき、より一層作業性を向上させることができる。
先ず、当該技術の実現を可能とする装置構成として、第1走行油圧モータ27Lおよび第2走行油圧モータ27Rのそれぞれの回転数を検出する回転数センサ(不図示)が設けられている。当該回転数センサによって検出されたそれぞれの検出値(すなわち、回転数)は、制御装置140へ送信される。
ここで、本実施形態に係る制御装置140が行う作動制御(ここでは、「高負荷時自動変速技術」に関する制御)の概要を図9のフローチャートに示す。
先ず、制御装置140は、走行モードが「高速モード」であるか否かを判定するステップを実施する(ステップD1)。ここで、走行モードが「高速モード」であると判定した場合は、自動変速の制御を行う必要が生じ得るため、以下のステップに進む。一方、走行モードが「高速モード」でないと判定した場合は、自動変速の制御を行う必要がないため、処理フローはエンドに至る。
次いで、制御装置140は、第3圧力センサ83、第4圧力センサ84、第5圧力センサ85、および第6圧力センサ86により検出される各圧力値について、少なくとも一つの圧力値が所定値を超えているかを判定するステップを実施する(ステップD2)。
次いで、制御装置140は、回転数センサにより検出される回転数が所定値を超えているか否かの判定を行うステップを実施する(ステップD3)。
次いで、制御装置140は、ステップD1において当該圧力値が所定値を超えていると判定した場合で、且つ、ステップD2において当該回転数が所定値を超えていないと判定した場合に、「高負荷」の走行状態であるとの判定を行うステップを実施する(ステップD4)。
次いで、制御装置140は、上記の「高負荷」の走行状態であると判定した場合は、第1操作レバー171および第2操作レバー172とは連動させずに変速機構を「高速モード」から「低速モード」に切換えを行う制御を行うステップを実施する(ステップD5)。
このように、第2の施形態に係る作業用車両1によれば、「レバーパターンチェンジ技術」、「ターン時自動変速技術」、「フロート技術」、および「高負荷時自動変速技術」の全ての実現を、簡素な機構・油圧回路によって可能としている。
以上説明した通り、本発明によれば、少なくとも「レバーパターンチェンジ技術」と「ターン時自動変速技術」との両方を備え、さらに「フロート技術」等も備える作業用車両を、簡素な機構・油圧回路で、低コストに実現することが可能となる。
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、作業用車両としてクローラローダを例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、スキッドステアローダ、クローラキャリア、パワーショベル等の他の作業用車両に対しても同様に適用できることは言うまでもない。