以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るニップ幅測定装置の一部であるニップ幅測定ユニット1は、互いに平行に支持された2つのロール(加熱ロール2および加圧ロール3)のニップの両側にそれぞれ配置された2つの非接触式の距離測定機4,5を有する。
加熱ロール2および加圧ロール3は、電子写真方式を利用した印刷装置の定着器に設けられている。加熱ロール2および加圧ロール3は、互いに接触させられ、ロール2,3の間にニップ6が設けられている。ロール2,3の一方は、図示しない機構によって回転させられる駆動ロールであり、他方は駆動ロールの回転に伴って回転させられる従動ロールである。
距離測定機4,5は、電磁波(例えば可視光、赤外線のレーザー光束ビーム)または超音波を出射し、その反射時間などに基づいて、距離を測定する。各距離測定機は、ニップ6を含む2つのロール2,3の表面上の複数の位置と距離測定機自身の間の距離を測定する。したがって、この実施形態では、図2に示すように、距離測定機4は、距離測定機4自身に近い方のニップ6の一端6Aを含むロール2,3の表面上の複数の位置と距離測定機4自身の間の距離を測定し、距離測定機5は、距離測定機5自身に近い方のニップ6の他端6Bを含むロール2,3の表面上の複数の位置と距離測定機5自身の間の距離を測定する。
距離測定機4,5の測定結果は、有線または無線を介して計算機7に供給される。計算機7は、距離測定機4,5の測定結果に基づいて、ニップの幅を計算する。計算機7は、距離測定機4,5のための専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータ、例えばラップトップコンピュータでもよいし、デスクトップコンピュータでもよい。計算機7は、コンピュータプログラムに従って、ニップの幅を計算する。
距離測定機4,5はそれぞれブラケット8,9に取り付けられており、ブラケット8,9は測定機支持体10に固定されている。測定機支持体10は、互いに平行なレール11,12に摺動可能に支持されている。レール11,12は、ロール2,3に平行に配置されている。したがって、2つの距離測定機4,5は、同時に互いの位置関係を維持したまま、矢印Aで示すように、ロール2,3の軸線方向に沿って移動可能である。このように、ニップ幅測定ユニット1は、ロール2,3の軸線方向に沿って2つの距離測定装置4,5が移動可能なように、2つの距離測定装置を支持する測定機支持機構(測定機支持体10、レール11,12)を備える。
図2に示すように、距離測定機4,5は、ロール2の中心軸線2Aとロール3の中心軸線3Aを含む平面Pに直交する線上に配置されている。距離測定機4は、電磁波または超音波4Aをロール2,3に照射し、反射された電磁波または超音波を測定し、ニップ6の一端6Aを含むロール2,3の表面上の複数の位置と距離測定機4自身の間の距離を測定する。距離測定機5は、電磁波または超音波5Aをロール2,3に照射し、反射された電磁波または超音波を測定し、ニップ6の他端6Bを含むロール2,3の表面上の複数の位置と距離測定機4自身の間の距離を測定する。
距離測定機は、多数の位置と距離測定機自身の間の距離を測定することができるので、形状測定機と呼ぶこともできる。図3は、距離測定機4,5の各々の測定結果を示すグラフの例である。このように多数の位置の測定結果からロール2,3の輪郭が把握される。
設計上、距離測定機4,5の各々は、ロール2の中心軸線2Aとロール3の中心軸線3Aを含む平面Pから距離d、離れた位置に配置されている。しかし、実際には、各距離測定機の位置はわずかに設計上の位置から逸脱しているかもしれない。そこで、計算機7によるニップ6の幅の計算に先立って、各距離測定機の実際の位置を測定し、実際の位置に応じて、各距離測定機の測定結果を補正する。
まず、図4に示すように、ロール2,3の一方を取り外し、距離測定機4,5によって、片方のロール(図4ではロール2)の表面上の複数の位置と各距離測定機の間の距離を測定する。以下、ロール2が測定に使用されると想定する。
次に、距離測定機4と加熱ロール2の表面上の複数の位置の間の距離に基づいて、計算機7によって、公知の手法でロール2の中心軸線2A(距離測定機4にとっての中心軸線2A1)の座標を計算して記憶する。同様に、距離測定機5の表面上の複数の位置の間の距離に基づいて、ロール2の中心軸線2A(距離測定機5にとっての中心軸線2A2)の座標を計算して記憶する。
また、距離測定機4と加熱ロール2の表面上の複数の位置の間の距離に基づいて、計算機7によって、距離測定機4と平面P(実際の中心軸線2Aを含む)の間の距離を計算し、距離測定機4にとっての中心軸線2A1と実際の中心軸線2Aの間隔y1を計算する。各距離測定機が測定可能な距離の上限は、2×dより小さいので、距離測定機4が測定した距離の最大値が距離測定機4と平面Pの間の距離である。同様に、距離測定機5と加熱ロール2の表面上の複数の位置の間の距離に基づいて、計算機7によって、距離測定機5と平面P(実際の中心軸線2Aを含む)の間の距離を計算し、距離測定機5にとっての中心軸線2A1と実際の中心軸線2Aの間隔y2を計算する。距離測定機5が測定した距離の最大値が距離測定機5と平面Pの間の距離である。
間隔y1,y2は、それぞれ距離測定機4,5の設計上の位置に対する縦方向の実際の位置のずれである。間隔y1,y2は、以降の測定において、距離測定機4,5のそれぞれの測定結果について、縦方向の座標を補正する補正値として使用される。下記の説明における距離測定機4,5の測定結果は、間隔y1,y2で補正された測定結果である。
次に、計算機7によるニップ6の幅の計算原理を説明する。
ニップ6の幅の測定においては、図2に示すように、ロール2,3が互いに接触させられ、好ましくはロール2,3が回転させられる。そして、距離測定機4,5の各々によって、ロール2,3の表面上の複数の位置と距離測定機の間の距離を測定する。計算機7は、距離測定機4の測定結果に基づいて、ロール2,3の接触点、すなわちニップ6の一端6Aの位置の座標を推定し、その位置の座標を記憶する。また、計算機7は、距離測定機3の測定結果に基づいて、ロール2,3の他の接触点、すなわちニップ6の他端6Bの位置の座標を推定し、その位置の座標を記憶する。ニップ6の端6Aの位置は、距離測定機4の測定結果のうち距離測定機4から最も遠い位置であり、端6Bの位置は、距離測定機5の測定結果のうち距離測定機5から最も遠い位置である。
次に、計算機7は、加圧ロール3より硬い表面を有する加熱ロール2の中心軸線2Aとニップ6の端6Aの間の距離、すなわちロール2の図2中の上側の半径R1を計算し、中心軸線2Aとニップ6の端6Bの間の距離、すなわちロール2の図2中の下側の半径R2を計算する。
さらに、計算機7は、式(1)に従って、ニップ6の端6A,6Bの間の曲線距離すなわちニップ幅Nを計算する。曲線距離Nは、弾性変形が小さい方のロール2の表面の円弧に沿っている。
ここで、R1は、2つのロールのうちより硬い表面を有するロールの中心軸線2Aとニップ6の端6Aの間の距離であり、aは2つのロールの中心軸線を含む平面Pとニップ6との交点Cとニップ6の端6Aの間の、平面Pを直交する方向での距離であり、R2は、2つのロールのうちより硬い表面を有するロールの中心軸線2Aとニップ6の端6Bの間の距離であり、bは2つのロールの中心軸線を含む平面Pとニップ6との交点Cとニップ6の端6Bの間の、平面Pを直交する方向での距離である。
式(1)の理由を説明する。
ロール2の円において、平面Pとニップ6の上側の端6Aがなす中心角θ1(rad)は、式(2)で計算される。
θ1=sin-1(a/R1) ...(2)
ここで、aはニップ6と平面Pとの交点Cとニップ6の上側の端6Aの間の縦方向の距離である。
ニップ6と平面Pとの交点Cとニップ6の上側の端6Aの間の、ロール2の円弧上の距離aaは、式(3)で計算される(円弧の長さは中心角と半径の積である)。
ロール2の円において、平面Pとニップ6の下側の端6Bがなす中心角θ2(rad)は、式(4)で計算される。
θ2=sin-1(b/R2) ...(4)
ここで、aはニップ6と平面Pとの交点Cとニップ6の上側の端6Aの間の縦方向の距離である。
ニップ6と平面Pとの交点Cとニップ6の下側の端6Bの間の、ロール2の円弧上の距離baは、式(5)で計算される
ニップ幅Nは、aaとabの合計であるから、式(1)に従って計算することができる。
このようにして、実施形態に係るニップ幅測定ユニット1では、ニップ6の端6A,6Bの間の曲線距離であるニップ幅Nを計算することができる。
端6A,6Bの間の曲線距離であるニップ幅Nだけでなく、計算機7は、ニップ6の端6A,6Bの座標からニップ6の端6A,6Bの間の直線距離、すなわちa+bをニップ幅として計算することもできる。必要に応じて、曲線距離であるニップ幅、直線距離であるニップ幅、またはその両方を計算機7が計算するように、ニップ幅測定ユニット1を設定してよい。
この実施形態によれば、2つの非接触式の距離測定機4,5がニップ6の両側にそれぞれ配置され、各距離測定機がニップ6を含む2つのロール2,3の表面上の複数の位置と自身の間の距離を測定する。したがって、計算機7は、2つの距離測定機4,5の測定結果からニップ6の一端6Aの位置に関する指標とニップ6の他端6Bの位置に関する指標を正確に計算することができ、これらの正確な指標から正確にニップ6の幅を測定することが可能である。
定着器で使用されるロール2,3の少なくとも一方の表面は弾性材料で形成されている。2つのロール2,3は互いに力を及ぼしながら回転させられ、回転力のために、図2に示すように、ニップ6の一端6Aと他端6Bでは、特により軟らかいロール3の変形の程度が異なる。この場合、平面Pを中心としてニップ6が対称であると仮定して、ニップ6の幅を計算すると、計算されたニップ6の幅の誤差が大きい。しかし、この実施形態によれば、ニップ6の一端6Aの位置に関する指標とニップ6の他端6Bの位置に関する指標から正確にニップ6の幅を計算することが可能である。
また、この実施形態では、距離測定機4,5がニップ6の両側にそれぞれ配置され、距離測定機4,5は同時に互いの位置関係を維持したまま、ロール2,3の軸線方向に沿って移動可能であるため、ニップ幅測定ユニット1は、ロール2,3の軸線方向における所望の箇所で、ニップ幅測定ユニット1はニップ6の幅を測定することができる。また、ロール2,3の軸線方向に平行に延びるニップ6の1箇所の幅だけでなく、ニップ6の多数箇所の幅を測定することができる。
特に、ロール2,3の一方または両方がクラウン形状または逆クラウン形状である場合、ロール2,3の軸線方向に平行に延びるニップ6の多数箇所の幅を測定することは便利である。
この実施形態では、ロール2,3は互いに平行であるが、必ずしも正確に平行ではなくてもよい。
この実施形態では、距離測定機4,5の各々は、ブラケット8または9に固定されており、ロール2,3の表面上の複数の位置と距離測定機自身の間の距離を測定する。しかし、距離測定機4,5の各々は、ロール2,3の表面上の1つの位置と距離測定機自身の間の距離を測定してもよい。例えば、正確な位置合わせの下で、距離測定機4は、距離測定機4自身に近い方のニップ6の一端6Aと距離測定機4自身の間の距離のみを測定し、距離測定機5は、距離測定機5自身に近い方のニップ6の他端6Bと距離測定機5自身の間の距離のみを測定してもよい。
あるいは、図1および図2の矢印Bで示すように、2つのロール2,3の中心軸線の両方に直交する線と平行に2つの距離測定機4,5を移動させる移動機構(図示せず)をブラケット8,9に設けてもよい。この場合、距離測定機4,5の各々は、一度にロール2,3の表面上の1つの位置と距離測定機自身の間の距離のみを測定するが、移動機構による移動の間に測定を繰り返すことによって、ロール2,3の表面上の複数の位置と距離測定機自身の間の距離を測定することができる。したがって、計算機7は、2つの距離測定機4,5の測定結果からニップ6の一端6Aの位置に関する指標とニップ6の他端6Bの位置に関する指標を正確に計算することができる。
次に、ニップ幅測定ユニット1を有する本発明の実施形態に係るニップ幅測定装置の全体を説明する。
図5から図7に示すように、ニップ幅測定装置は、剛的な脚部20で支持された剛的なテーブル21と、剛的な脚部22で支持された剛的なテーブル23を有する。テーブル21の上面とテーブル23の上面は水平に向けられている。
テーブル21の上には、ロール2を回転可能に支持する軸受(図示せず)をそれぞれ内蔵する軸受ブロック24,25と、ロール3を回転可能に支持する軸受(図示せず)をそれぞれ内蔵する軸受ブロック26,27が、配置されている。軸受ブロック24,25は、例えばネジのような固定部材(図示せず)によってテーブル21に固定されている。
テーブル21の長手方向において、軸受ブロック25,27の位置はテーブル21に不動である。これに対して、軸受ブロック26は、テーブル21の上面に形成されたレールまたは溝29に沿って、ロール2,3の軸線方向と平行に(テーブル21の長手方向に)移動可能である。軸受ブロック24も、固定部材から解放されると、テーブル21の上面に形成されたレールまたは溝28に沿って、ロール2,3の軸線方向と平行に移動可能である。このように、ロール2の両端を支持する軸受ブロック24,25の間の距離、およびロール3の両端を支持する軸受ブロック26,27の間の距離は調節可能であり、ニップ幅測定装置は、軸受ブロック24,25の間の距離、および軸受ブロック26,27の間の距離の調節を許容する軸受距離調節許容機構(レールまたは溝28,29)を備える。したがって、軸受ブロック24,25,26,27は、様々な長さを有するロールを支持することができる。
テーブル21の両端には、ブロック30,31が、例えばネジのような固定部材(図示せず)によって固定されている。ブロック30,31には、距離測定機4,5を移動可能に支持する上記のレール11,12が固定されている。距離測定機4とこれを支持するブラケット8は、テーブル21の上方に配置され、距離測定機5とこれを支持するブラケット9は、テーブル21の下方に配置されている。このようにして距離測定機4はニップ6の上方に配置され、距離測定機5はニップ6の下方に配置されている。
テーブル23の上面には、ロール2,3の一方を回転するよう駆動するモーター(回転駆動装置)35が配置されている。モーター35はモーターケース36に固定されており、モーターケース36は、テーブル23の上面に固定されたレール37上に配置されて、例えばネジのような固定部材(図示せず)によってテーブル23に固定されている。モーターケース36は、固定部材から解放されると、レール37に沿って、モーター35の軸線方向と直交する方向に水平に移動可能である。
モーター35は、逆転させて使用することも可能である。
モーター35の回転軸にはクラッチ要素40が固定されている。クラッチ要素40は、回転軸41に固定されたもう1つのクラッチ要素42にモーター35の回転力を伝達する。好ましくは、ロールの回転速度を安定化させるため、クラッチ要素40,42は噛み合いクラッチのクラッチ要素である。
回転軸41は、テーブル21の上面に例えばネジのような固定部材(図示せず)によって固定された軸受ブロック44と、軸受ブロック25の上面に例えばネジのような固定部材(図示せず)によって固定された軸受ブロック45に支持されている。軸受ブロック44,45は、固定部材から解放されると、モーター35の軸線方向と直交する方向に水平に(つまりモーター35の移動方向と平行に)移動可能である。
回転軸41には歯車46が固定されており、ロール2の回転軸には歯車47が固定されている。歯車47は歯車46に噛み合わせられ、モーター35の回転力はロール2に伝達される。
この状態では、ロール2がモーター35で駆動される駆動ロールであり、ロール3はロール2の回転に伴って回転させられる従動ロールである。この実施形態では、ニップ幅測定装置は、ロール2,3の位置を維持したまま、モーター35で駆動される駆動ロールの切り替えを許容する切替許容機構を有する。
具体的には、上記の通り、モーター35が固定されたモーターケース36は、固定部材から解放されると、モーター35の軸線方向と直交する方向に水平に移動可能であり、回転軸41を支持する軸受ブロック44,45も、固定部材から解放されると、モーター35の移動方向と平行に移動可能である。駆動ロールをロール2からロール3に変更するには、ロール2の回転軸から歯車47を取り外して、ロール3の回転軸に歯車47を固定する。そして、歯車47に歯車46が噛み合うように、モーター35を支持するモーターケース36と回転軸41を支持する軸受ブロック44,45を移動させ、移動後の位置で固定部材によってモーターケース36と軸受ブロック44,45を固定する。このようにして、モーター35の回転力はロール3に伝達される。移動可能なモーターケース36と軸受ブロック44,45と歯車47は、駆動ロールの切り替えを許容する切替許容機構を構成する。
この実施形態では、ニップ幅測定装置は、2つのロールの中心軸線の間の距離の調節を許容する軸間距離調節許容機構をさらに備える。具体的には、ロール3を支持する軸受ブロック26,27は、テーブル21上において、テーブル21の幅方向に(ロール3を横断する方向に)水平に摺動可能である。軸受ブロック26,27の端部は、押付けブロック50,51に接触させられている。押付けブロック50,51は、テーブル21の上面においてテーブル21の幅方向に水平に摺動可能である。
押付けブロック50,51と平行に押付けブロック52,53と固定ブロック54,55が配置されている。押付けブロック52,53も、テーブル21の上面においてテーブル21の幅方向に水平に摺動可能である。固定ブロック54,55は、テーブル21の上面に例えばネジのような固定部材(図示せず)によって固定されている。
押付けブロック50,51には円柱50a,51aがそれぞれ固定されている。押付けブロック52,53には荷重計(力測定装置)56,57がそれぞれ固定されている。荷重計56,57は、それぞれ円柱50a,51aに接触させられている。
固定ブロック54,55は、それぞれネジ60,61を回転可能に支持している。固定ブロック54,55には、ネジ60,61がねじ込まれるネジ孔が形成されている。ネジ60,61の頭部には、ネジ60,61を回転させるハンドル62,63が固定されている。ハンドル62,63の操作により、ネジ60,61を回転させると、固定ブロック54,55に支持されたネジ60,61の先端が押付けブロック52,53を押して、押付けブロック52,53をロール2に向けて移動させる。
押付けブロック52,53が移動させられると、荷重計56,57が円柱50a,51aを押して、押付けブロック50,51をロール2に向けて移動させる。押付けブロック50,51が移動させられると、押付けブロック50,51が軸受ブロック26,27を押して、軸受ブロック26,27をロール2に向けて移動させる。このようにして、ロール2の中心軸線にロール3の中心軸線が接近させられ、ロール2に対するロール3の接触圧力が増加させられる。
押付けブロック50と押付けブロック52と固定ブロック54の平行を維持するため、ブロック50,52,54には、2つの棒66が挿入されている。棒66の一端は固定ブロック54に固定されており、棒66の中央部は、押付けブロック50,52にそれぞれ取り付けられた軸受50A,52Aに挿入されている。このようにして、押付けブロック50,52は、テーブル21の幅方向に延びる棒66に沿って移動可能である。
押付けブロック51と押付けブロック53と固定ブロック55の平行を維持するため、ブロック51,53,54には、2つの棒67が挿入されている。棒67の一端は固定ブロック55に固定されており、棒67の中央部は、押付けブロック51,53にそれぞれ取り付けられた軸受51A,53Aに挿入されている。このようにして、押付けブロック51,53は、テーブル21の幅方向に延びる棒67に沿って移動可能である。
このように、ハンドル62,63、ネジ60,61、固定ブロック54,55、押付けブロック52,53、荷重計56,57、押付けブロック50,51、軸受ブロック26,27は、2つのロールの中心軸線の間の距離の調節を許容する軸間距離調節許容機構を構成する。
押付けブロック50,52の間に発生する力は荷重計56で測定される。この力の変化は、ロール2に対するロール3の左側の押圧力の変化と考えることができる。
押付けブロック51,53の間に発生する力は荷重計57で測定される。この力の変化は、ロール2に対するロール3の右側の押圧力の変化と考えることができる。
荷重計56,57の各々は、例えば歪ゲージを有する。荷重計56,57の測定結果は、有線または無線を介してコンソールに供給される。コンソールは、図5から図7には示されていないが、図8にコンソールの例を示す。コンソールについては後述する。
棒66,67の端部は、軸受ブロック70,71に挿入されている。軸受ブロック70,71は、例えばネジのような固定部材(図示せず)によって固定テーブル21の上面に固定されている。押付けブロック50,51には、それぞれダイヤルゲージ72,73が固定されており、ダイヤルゲージ72,73のプロープ72a,73aの先端は、それぞれ軸受ブロック70,71に接触させられている。したがって、不動の軸受ブロック70,71に相対する押付けブロック50,51の変位量がダイヤルゲージ72,73によって測定される。ニップ幅測定装置の使用者は、ハンドル62,63を操作してロール3をロール2に向けて移動させる際に、ダイヤルゲージ72,73で測定される押付けブロック50,51の変位量を参照し、左右の押付けブロック50,51の変位量を、例えば均等になるよう調節する。
ニップ幅測定装置は、軸間距離調節許容機構を有するので、様々な直径を有するロールのニップ幅を測定することができ、ロール間の押圧力を変更することができる。
軸間距離調節許容機構は、ロール2,3の軸間距離を狭めるために使用される。軸間距離を広げる場合には、ネジ60,61を緩め(ロール2,3の軸間距離を狭めるときと逆方向に回転させ)、押付けブロック50,51,52,53を例えば手動でロール2から離れる方向に移動させる。そして、再度、ロール2,3の軸間距離を狭めるように、ネジ60,61を回転させ、押付けブロック50,51,52,53をロール2に接近させる。
上記の通り、軸受ブロック26は、ロール2,3の長さに適合するよう、テーブル21の長手方向にレールまたは溝29に沿って移動可能であるので、左側の軸間距離調節許容機構にあるハンドル62、ネジ60、固定ブロック54、押付けブロック52、荷重計56、押付けブロック50もテーブル21の長手方向に移動可能に構成されている。固定ブロック54の下部には、平板であるフランジ54aが形成されており、フランジ54aを含む固定ブロック54はテーブル21の上面に形成されたレールまたは溝75に沿って、テーブル21の長手方向に移動可能である。軸受ブロック70の下部にも、平板であるフランジ70aが形成されており、フランジ70aを含む軸受ブロック70はテーブル21の上面に形成されたレールまたは溝29に沿って、テーブル21の長手方向に移動可能である。固定ブロック54と軸受ブロック70を移動させることにより、ハンドル62、ネジ60、押付けブロック52、荷重計56、押付けブロック50も移動させることができる。
図8は、ニップ幅測定装置のコンソール80の正面図である。コンソール80は図5から図7には示されていないが、テーブル21の近傍に配置されている。
コンソール80は、電源スイッチ88、ヒータースイッチ82、温度インジケータ83,84、回転数インジケータ85、荷重インジケータ86,87を有する。
ヒータースイッチ82は、ロール2,3の少なくとも一方、好ましくは加熱ロールとして使用されるロール2を加熱するヒーター(図示せず)を起動および停止させるために使用される。
温度インジケータ83,84は、ロール2,3の少なくとも一方、好ましくは加熱ロールとして使用されるロール2の表面温度を測定する温度計(図示せず)の測定結果を継続的に表示する。図示の温度インジケータ83はロール2の左側の表面温度を測定する温度計の測定結果を表示し、温度インジケータ84はロール2の右側の表面温度を測定する温度計の測定結果を表示する。温度計は、例えば放射温度計であってよい。
回転数インジケータ85は、モーター35の回転数を測定する速度計(図示せず)の測定結果を継続的に表示する。速度計は、例えば、ロータリーエンコーダーであってよい。
荷重インジケータ86,87は、それぞれ荷重計56,57の測定結果を継続的に表示する。
電源スイッチ88は、ニップ幅測定装置の全体システムへの電力供給を起動および停止させるために使用される。ここでの全体システムは、距離測定機4,5、モーター35、荷重計56,57、ヒーター、温度計、速度計を含む。全体システムは、計算機7を含んでもよいし含まなくてもよい(計算機7は、全体システムの一部として電力供給を受けてもよいし、独立して電力供給を受けてもよい)。
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
例えば、図9は、実施形態の変形例に係るニップ幅測定装置の一部であるニップ幅測定ユニット1を示す。この変形例では、ブラケット8,9はそれぞれ測定機支持体(測定機支持機構)90,91に固定されている。測定機支持体90,91は、それぞれ互いに平行なボールネジ(測定機支持機構)93,94に支持されている。ボールネジ93は、カップリング95を介してモーター96の回転軸に連結され、ボールネジ94は、カップリング97を介してモーター98の回転軸に連結されている。モーター(移動駆動装置)96,98の各々はサーボモーターであってよい。
モーター96,98を同期させながら回転させることにより、矢印Aで示すように、2つの距離測定機4,5をロール2,3の軸線方向に沿って、同時に互いの位置関係を維持したまま移動させることが可能である。また、移動させながら得られた距離測定機4,5の測定結果に基づいて、ロール2,3の軸線方向に平行に延びるニップ6の多数箇所の幅を測定することが可能である。
モーター96,98の回転すなわち距離測定機4,5の移動は、計算機7によって制御してよい。モーター96,98の回転角度またはロール2,3の軸線方向における距離測定機4,5の位置は、計算機7によって、計算機7で計算されたニップの幅とともにメモリー(図示せず)に格納してよい。
この変形例では、距離測定機4が取り付けられたブラケット8と、距離測定機5が取り付けられたブラケット9が、それぞれ別個の測定機支持体90,91に固定されているが、ブラケット8,9を単一の測定機支持体に固定し、単一の測定機支持体を1つのボールネジおよび1つのモーターで移動させてもよい。
ボールネジとモーター以外の適切な移動駆動装置(例えば図示しないリニアアクチュエーター)によって、距離測定機4,5をロール2,3の軸線方向に沿って移動させてもよい。
上記の実施形態では、使用者がハンドル62,63を操作してネジ60,61を回転させることにより、ロール2,3の中心軸線の間の距離を調節することができる。しかし、ハンドル62,63の代わりに、ステッピングモーター(図示せず)でネジ60,61を回転させることにより、ロール2,3の中心軸線の間の距離を調節してもよい。ネジとモーター以外の適切な移動駆動装置(例えば図示しないリニアアクチュエーター)によって、ロール2,3の中心軸線の間の距離を調節してもよい。ステッピングモーターまたはリニアアクチュエーターのような適切なアクチュエーターを用いることにより、ロール3の左右の変位量を正確かつ自動的に均等にすることができる。
上記の実施形態の説明では、2つのロール2,3が互いに直接的に接触させられている。しかし、後述するように、ロール2,3の間に例えばベルトが介在してもよい。
図10は、電子写真方式を利用した印刷装置の定着器の他の例を示す。この定着器100は、定着ベルト101、加熱装置102、定着ロール103および加圧ロール104を有する。無端の定着ベルト101は、回転可能な定着ロール103および加熱装置102の磁場吸収部材110の周囲に巻かれて、移動する。移動する高温の定着ベルト101と回転可能な加圧ロール104の間のニップ106をシート(図示せず)が通過する間に、トナーがシートに定着させられる。定着ロール103と加圧ロール104は、シート上のトナーを加圧する。定着ベルト101は、トナーを加熱することにより溶融させる。
この例では、加圧ロール104は、回転駆動装置(図示せず)により回転駆動される。定着ロール103は、加圧ロール104の回転に従動して、定着ロール103と加圧ロール104との間に定着ベルト101を挟持しながら、回転する。但し、逆に、定着ロール103が回転駆動装置(図示省略)により回転駆動されて、定着ロール103の回転に従動して加圧ロール104が回転してもよい。
加熱装置102は、ニップ106で加圧ロール104に熱を奪われて冷却された定着ベルト101を再加熱する。この例では、加熱装置102は、磁場生成手段としての電磁誘導加熱装置105と、電磁誘導加熱装置105により生成された磁場を吸収する磁場吸収手段としての磁場吸収部材110を備えている。電磁誘導加熱装置105は、電磁誘導加熱(IH:induction heating)方式の磁場生成手段を有する。具体的には、電磁誘導加熱装置105は、コイルガイド107、励磁コイル108およびコア109を有する。円弧状のコイルガイド107は、定着ベルト101を覆っており、コイルガイド107の外周面には、励磁コイル108が配置されている。励磁コイル108は、細い線を束ねたリッツ線から形成されている。コア109は、励磁コイル108を覆う。
定着ベルト101は、円弧状の磁場吸収部材110と円弧状のコイルガイド107の間を通過させられる。コア109および磁場吸収部材110は、フェライト、パーマロイ等の高透磁率の材料から形成されている。磁場吸収部材110は、電磁誘導加熱装置105により生成された磁場を吸収する。
励磁コイル108には、励磁回路(図示せず)から所定周波数(例えば20kHz~100kHz程度)の励磁電流が印加される。これにより、コア109と磁場吸収部材110との間に交流磁界が生成され、定着ベルト101の表面に渦電流が発生し、定着ベルト101が発熱する。
実施形態に係るニップ幅測定装置は、ロール103,104で挟まれた定着ベルト101とロール104の間のニップ106の幅を測定することが可能である。具体的には、ニップ106の両側には、2つの非接触式の距離測定機4,5が配置される。距離測定機4,5は、ロール103の中心軸線とロール104の中心軸線を含む平面に直交する線上に配置されており、ロール103,104の中心軸線と平行に移動可能である。距離測定機4は、電磁波または超音波4Aを定着ベルト101と加圧ロール104に照射し、反射された電磁波または超音波を測定し、ニップ106の一端を含む定着ベルト101と加圧ロール104の表面上の複数の位置と距離測定機4自身の間の距離を測定する。距離測定機5は、電磁波または超音波5Aを定着ベルト101と加圧ロール104に照射し、反射された電磁波または超音波を測定し、ニップ106の他端を含む定着ベルト101と加圧ロール104の表面上の複数の位置と距離測定機4自身の間の距離を測定する。
したがって、この明細書において、「2つのロールの間のニップ」とは、直接的に接触させられた2つのロールの間のニップだけでなく、2つのロールの間に挟まれて一方のロールの周囲に巻かれたベルトと他方のロールの間のニップも含む。
図11は、実施形態に係るニップ幅測定装置で測定可能なニップに関する他のロールを有する電子写真方式を利用した印刷装置を示す。
印刷装置は、感光体ドラム120を有する。感光体ドラム120の周囲には、帯電ロール121、露光器122、現像器123、転写ロール124、および除電ロール125が配置されている。現像器123は現像ロール126を有する。感光体ドラム120は一種のロールである。
ニップ幅測定装置は、感光体ドラム120と帯電ロール121との間のニップ、感光体ドラム120と現像ロール126との間のニップ、感光体ドラム120と転写ロール124との間のニップ、および感光体ドラム120と除電ロール125との間のニップの幅を測定してもよい。
本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。
条項1. 互いに近接して配置された2つのロールの間のニップの幅を測定するニップ幅測定装置であって、
前記ニップの両側にそれぞれ配置された2つの非接触式の距離測定機であって、各距離測定機が距離測定機自身に近い方の前記ニップの端と距離測定機自身の間の距離を少なくとも測定する、2つの非接触式の距離測定機と、
前記2つの距離測定機の測定結果から前記ニップの一端の位置に関する指標と前記ニップの他端の位置に関する指標を計算し、これらの指標から前記ニップの幅を計算する計算機とを備える
ことを特徴とするニップ幅測定装置。
条項2. 前記計算機は、下記の式に従って、前記ニップの2つの端の間の曲線距離である前記ニップの幅を計算する
ことを特徴とする条項1に記載のニップ幅測定装置。
ここで、R
1は、前記2つのロールのうちより硬い表面を有するロールの中心軸線と前記ニップの一端の間の距離であり、aは前記2つのロールの中心軸線を含む平面と前記ニップとの交点と前記ニップの前記一端の間の、前記平面を直交する方向での距離であり、R
2は、前記2つのロールのうちより硬い表面を有するロールの中心軸線と前記ニップの他端の間の距離であり、bは前記2つのロールの中心軸線を含む平面と前記ニップとの交点と前記ニップの前記他端の間の、前記平面を直交する方向での距離である。
条項3. 前記2つのロールを回転可能に支持する2対の軸受と、
前記2つのロールの一方を回転するよう駆動する回転駆動装置をさらに備える
ことを特徴とする条項1または2に記載のニップ幅測定装置。
条項4. 前記2つのロールの位置を維持したまま、前記回転駆動装置で駆動されるロールの切り替えを許容する切替許容機構をさらに備える
ことを特徴とする条項3に記載のニップ幅測定装置。
条項5. 各ロールについて、このロールの両端を支持する軸受の間の距離の調節を許容する軸受距離調節許容機構をさらに備える
ことを特徴とする条項3または4に記載のニップ幅測定装置。
条項6. 前記2つのロールの中心軸線の間の距離の調節を許容する軸間距離調節許容機構をさらに備える
ことを特徴とする条項1から5のいずれか1項に記載のニップ幅測定装置。
条項7. 前記2つのロールの押圧力を測定する少なくとも1つの力測定装置をさらに備える
ことを特徴とする条項1から6のいずれか1項に記載のニップ幅測定装置。
条項8. 前記ロールの軸線方向に沿って前記2つの距離測定機が移動可能なように、前記2つの距離測定機を支持する測定機支持機構をさらに備え、
前記2つの距離測定機が同時に互いの位置関係を維持したまま前記ロールの軸線方向に沿って移動可能である
ことを特徴とする条項1から7のいずれか1項に記載のニップ幅測定装置。
条項9. 前記2つの距離測定機を前記ロールの軸線方向に沿って移動させる移動駆動装置をさらに備える
ことを特徴とする条項8に記載のニップ幅測定装置。
条項10. 前記2つのロールの少なくとも一方の表面温度を測定する温度計をさらに備える
ことを特徴とする条項1から9のいずれか1項に記載のニップ幅測定装置。
条項11. 前記距離測定機の各々は、前記ニップの端を含む前記2つのロールの表面上の複数の位置と距離測定機自身の間の距離を測定する
ことを特徴とする条項1から10のいずれか1項に記載のニップ幅測定装置。
条項12. 前記2つのロールの中心軸線の両方に直交する線と平行に前記2つの距離測定機を移動させる移動機構をさらに備え、
前記距離測定機の各々は、一度に前記2つのロールの表面上の1つの位置と距離測定機自身の間の距離を測定し、前記移動機構による移動の間に測定を繰り返すことによって、前記2つのロールの表面上の複数の位置と距離測定機自身の間の距離を測定することを特徴とする条項1から10のいずれか1項に記載のニップ幅測定装置。