JP7289894B2 - コイル成形装置及びコイル成形方法 - Google Patents
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Description
本発明は、コイル成形装置及びコイル成形方法に関する。
回転電機のステータは、巻回状態の帯状コイルを有する。帯状コイルは、予め、ステータコアの内径よりも小径の略円筒状の巻回状態に成形され、ステータコアの内側に挿入される。巻回状態の帯状コイルは、ステータコアの内側で拡径され、帯状コイルの直状部をステータコアのスロットに挿入することによって装着される。
従来、帯状コイルを、円柱状のコイル巻取治具に対して1ピッチずつ送り込みながらコイル巻取治具に巻き取ることによって、略円筒状の巻回状態に成形することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
コイルを巻き取って巻回状態に成形する際、複数の直状部が位置ずれしないように精度よく巻き取ることが重要である。上記従来技術は、帯状コイルの搬送経路上のコイル巻取治具の直前の位置において、隣り合う直状部間に予備整列部材を挿入することによって、コイル巻取治具に巻き取られる直前の直状部の重ね合わせを揃えるようにしている。
しかしながら、上記従来技術では、帯状コイルをどのようにしてコイル巻取治具まで搬送して巻き取るのかについての具体的な開示はなく、特に、コイル巻取治具に巻き取るに際し、帯状コイルに対してコイル巻取治具の外周に沿うように円弧状に癖付けするための方途については別段の視点が示されない。この癖付けが良好に行われないと、帯状コイルは仕様どおりの巻回状態に到れず、品質不良を来すおそれがある。品質不良の発生は材料消費の増加を招来し、資源の無駄な消費につながる。また、計画した生産数量を達成するに要する製造装置の運転時間が延長され、電力消費が増加する。このため、ひいては、地球環境に悪影響を及ぼすこととなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、帯状コイルをコイル巻取治具に巻き取るに際し、帯状コイルに対してコイル巻取治具の外周に沿うように的確に円弧状に癖付けして、所定の巻回状態に容易に成形することができるコイル成形装置及びコイル成形方法を提供することを目的とする。帯状コイルを、不良品を出すことなく高い歩留まりで所定の巻回状態に加工することができれば、資源の無駄な消費を抑制し、製造装置の運転時間を抑えて、電力エネルギーを節約できるため、地球環境の保全に寄与することになる。
(1) 本発明に係るコイル成形装置(例えば、後述するコイル成形装置1)は、複数の直状部(例えば、後述する直状部102)と、前記複数の直状部の両端に配置される側端部(例えば、後述する側端部103)と、を有する帯状コイル(例えば、後述する帯状コイル100)を巻回状態に成形するコイル成形装置であって、複数の櫛歯状溝(例えば、後述する櫛歯状溝23)を有し、前記帯状コイルの前記複数の直状部を、前記複数の櫛歯状溝にそれぞれ挿入することによって、前記帯状コイルを巻き取り可能に構成されるコイル巻取治具(例えば、後述するコイル巻取治具2)と、前記帯状コイルを旋回搬送可能に構成されるコイル搬送機構部(例えば、後述するコイル搬送機構部3)と、前記コイル巻取治具の軸方向の両端近傍にそれぞれ配置され、前記帯状コイルの前記側端部と接触しながら、前記帯状コイルを円弧状に案内するとともに、前記帯状コイルの旋回搬送の後半部分で、前記複数の直状部を前記複数の櫛歯状溝にそれぞれ挿入させる案内部材(例えば、後述する案内部材4)と、を備え、前記コイル搬送機構部は、前記帯状コイルを前記コイル巻取治具に沿うように旋回搬送する搬送経路を形成する搬送レール(例えば、後述する搬送レール31)と、前記帯状コイルの前記複数の直状部をそれぞれ把持した状態で、前記搬送レールに沿って移動可能に構成される搬送体(例えば、後述する搬送体32)と、を有し、前記搬送体は、前記帯状コイルの前記複数の直状部をそれぞれ把持する複数の把持溝(例えば、後述する把持溝321)を持ち、前記複数の把持溝は、前記帯状コイルにおける搬送方向の位置により異なる前記複数の直状部の重畳本数に応じた深さのコイル当接底面(例えば、後述するコイル当接底面CCB)を有する。
(2) 上記(1)に記載のコイル成形装置において、前記コイル当接底面は、前記複数の直状部を把持しながら前記帯状コイルの旋回搬送に伴って回動可能な複数の駒部材(例えば、後述する駒部材33)が前記帯状コイルの搬送方向に沿って重ねて連結されて構成された前記搬送体における前記複数の駒部材が隣接する部位に形成される前記複数の把持溝それぞれの底部(例えば、後述する底部である駒部材本体331の上端面331a)であってもよい。
(3) 上記(1)または(2)に記載のコイル成形装置において、前記案内部材は、前記帯状コイルの旋回搬送の前半部分で、前記複数の把持溝に前記複数の直状部が把持された状態の前記帯状コイルの前記側端部を挟み込んだ状態で、前記帯状コイルを円弧状に変形させて癖付けを行う癖付け部(例えば、後述する癖付け部42)を有してもよい。
(4) 本発明に係るコイル成形方法は、複数の直状部(例えば、後述する直状部102)と、前記複数の直状部の両端に配置される側端部(例えば、後述する側端部103)と、を有する帯状コイル(例えば、後述する100)を巻回状態に成形するコイル成形方法であって、前記複数の直状部をそれぞれ挿入可能な複数の櫛歯状溝(例えば、後述する櫛歯状溝23)を有して前記帯状コイルを巻き取り可能に構成されるコイル巻取治具(例えば、後述するコイル巻取治具2)に沿って、前記複数の直状部をそれぞれ把持した状態で前記帯状コイルを旋回搬送するコイル搬送工程と、前記コイル巻取治具の軸方向の両端近傍に、それぞれ案内部材(例えば、後述する案内部材4)を配置し、旋回搬送される前記帯状コイルの前記側端部を前記案内部材に接触させながら、前記帯状コイルを円弧状に案内し、前記複数の直状部を前記コイル巻取治具の前記複数の櫛歯状溝にそれぞれ挿入する案内工程と、を含み、前記コイル搬送工程では、前記帯状コイルにおける搬送方向の位置により異なる前記複数の直状部の重畳本数に応じた深さのコイル当接底面(例えば、後述するコイル当接底面CCB)を有する把持溝(例えば、後述する把持溝321)を持つ搬送体(例えば、後述する搬送体32)を用い、この把持溝で前記複数の直状部を把持する。
(5) 上記(4)に記載のコイル成形方法において、前記コイル搬送工程では、前記複数の直状部を把持しながら前記帯状コイルの旋回搬送に伴って回動可能な複数の駒部材(例えば、後述する駒部材33)が前記帯状コイルの搬送方向に沿って重ねて連結された前記搬送体を用い、前記複数の駒部材が隣接する部位に形成される前記複数の把持溝それぞれの底部として前記コイル当接底面が構成される前記把持溝で前記複数の直状部を把持するようにしてもよい。
(6) 上記(4)または(5)に記載のコイル成形方法において、前記コイル搬送工程は、前記帯状コイルの旋回搬送の前半部分で、前記複数の把持溝に前記複数の直状部を把持した状態で前記帯状コイルの前記側端部を挟み込んで、前記帯状コイルを円弧状に変形させて癖付けを行う癖付け工程(例えば、後述する癖付け部42により癖付けを行う工程)を含むようにしてもよい。
上記(1)に記載のコイル成形装置では、直状部をそれぞれ把持する複数の把持溝が帯状コイルにおける搬送方向の位置により異なる複数の直状部の重畳本数に応じた深さのコイル当接底面を有する。このため、帯状コイルを円弧状に変形させて癖付けを行うに際し、この癖付けのための力を与える力点および作用点として機能するコイル当接底面と、これに対する支点としての案内部材の該当部位から適切に力が作用する。従って、帯状コイルに対して所定の癖付けを行うことができる。
上記(2)に記載のコイル成形装置によれば、搬送体は、帯状コイルの旋回搬送に伴って回動可能な複数の駒部材が帯状コイルの搬送方向に沿って重ねて連結されて構成されており、複数の駒部材が隣接する部位ごとに把持溝が形成され、この把持溝の底部がコイル当接底面を成している。このため、搬送体は、帯状コイルのコイル導体を把持溝で把持しつつ円滑に円弧状に旋回搬送させることができる。
上記(3)に記載のコイル成形装置によれば、癖付け部において、複数の把持溝に直状部のコイル導体が把持された状態の帯状コイルの側端部を挟み込んだ状態で、帯状コイルを円弧状に変形させて癖付けを行う。このため、帯状コイルに曲げ癖をつけるための力が適切に作用して、帯状コイルに所定の曲げ癖をつけることができる。
上記(4)に記載のコイル成形方法によれば、直状部のコイル導体をそれぞれ把持する複数の把持溝が帯状コイルにおける搬送方向の位置により異なる複数の直状部の重畳本数に応じた深さのコイル当接底面により把持溝の最深部にあるコイル導体が的確に支承される。このため、帯状コイルを円弧状に変形させて癖付けを行うに際し、この癖付けのための力を与える力点および作用点として機能するコイル当接底面と、これに対する支点としての案内部材の該当部位から適切に力が作用する。従って、帯状コイルに対して所定の癖付けを行うことができる。
上記(5)に記載のコイル成形方法によれば、搬送体は、帯状コイルの旋回搬送に伴って回動可能な複数の駒部材が帯状コイルの搬送方向に沿って重ねて連結されて構成されており、複数の駒部材が隣接する部位ごとに把持溝が形成され、この把持溝の底部がコイル当接底面を成している。このため、帯状コイルは、搬送体によりコイル導体を把持溝で把持されて円滑に円弧状に旋回搬送され得る。
上記(6)に記載のコイル成形方法によれば、癖付け部において、複数の把持溝に直状部のコイル導体が把持された状態の帯状コイルの側端部を挟み込んだ状態で、帯状コイルを円弧状に変形させて癖付けを行う。このため、帯状コイルに曲げ癖をつけるための力が適切に作用して、帯状コイルに所定の曲げ癖をつけることができる。
また、上記(1)から(3)に記載のコイル成形装置、および、上記(4)から(6)に記載のコイル成形方法を総じて、ステータにセットするコイルとして、予め一連の帯状コイルにされたものを用いることを前提としている。コイルをステータのスロットにセットするに際して、現在主流とされている手法は、コイルを複数のセグメントに分割して成形し、スロット内に挿入後、コイルエンドを溶接するという手法である。この一般的手法では、溶接箇所の熱加工に耐え得るように、コイルに高純度な銅材を用いる必要がある。これに対し、本発明では熱加工への対応が必要でないため、不純物を含むリサイクル銅材を用いることが可能となり、資源の循環利用の実現に貢献することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施形態のコイル成形装置1は、コイル巻取治具2と、帯状コイル100をコイル巻取治具2の外周に沿って搬送させるコイル搬送機構部3と、コイル搬送機構部3によって搬送される帯状コイル100をコイル巻取治具2に巻き取られるように案内する一対の案内部材4と、を備える。
(帯状コイル)
帯状コイル100は、図3に示すように、断面形状が略矩形状の平角導線101によって長尺な波型帯状に成形される。平角導線101は、例えば、銅、アルミニウム等の導電性の高い金属によって形成される。
帯状コイル100は、図3に示すように、断面形状が略矩形状の平角導線101によって長尺な波型帯状に成形される。平角導線101は、例えば、銅、アルミニウム等の導電性の高い金属によって形成される。
帯状コイル100は、複数の直状部102と複数の側端部103とを有する。直状部102は、図示しないステータコアの内周に設けられるスロット内に挿入される部位であり、それぞれ同一方向に略直線状に延びて一定の間隔で平行に配置される。側端部103は、直状部102よりも帯状コイル100の側端寄りの位置、具体的には直状部102の延び方向の両端部にそれぞれ配置される。側端部103は、隣り合う直状部102の一方端部同士と他方端部同士とを山型状に交互に連結し、帯状コイル100がステータコアのスロットに装着された際に、スロットからステータコアの軸方向にそれぞれ突出するコイルエンド部を構成する。
本実施形態の帯状コイル100は、複数の直状部102と複数の側端部103とがそれぞれ波型に折り曲げ形成された6本の平角導線101を、直状部102が一定の間隔で平行に並列し、側端部103が直状部102のピッチでずれて重なるように束ねることによって、長尺帯状に形成される。帯状コイル100の直状部102は、平角導線101を途中で折り返すことによって、帯状コイル100の厚み方向(図3における紙面に対する垂直方向)に複数重ねられている。本実施形態の帯状コイル100は、後述のコイル巻取治具2に4周に亘って巻回される長さを有する。
(コイル巻取治具)
コイル巻取治具2は、図4に示すように、略円筒状の治具本体21と、治具本体21の外周に放射状に突出する複数の櫛歯部22と、周方向に隣り合う櫛歯部22,22の間に設けられる複数の櫛歯状溝23と、治具本体21の中心に開口する軸孔24と、を有する。櫛歯部22及び櫛歯状溝23は、治具本体21の軸方向の両端部にそれぞれ設けられる。治具本体21の一方端部の櫛歯部22及び櫛歯状溝23と他方端部の櫛歯部22及び櫛歯状溝23との位相は揃えられている。本実施形態のコイル巻取治具2は、治具本体21の軸方向の両端部に、それぞれ72個ずつの櫛歯状溝23を有する。この櫛歯状溝23の数は、帯状コイル100が装着されるステータコアのスロットの数に一致している。
コイル巻取治具2は、図4に示すように、略円筒状の治具本体21と、治具本体21の外周に放射状に突出する複数の櫛歯部22と、周方向に隣り合う櫛歯部22,22の間に設けられる複数の櫛歯状溝23と、治具本体21の中心に開口する軸孔24と、を有する。櫛歯部22及び櫛歯状溝23は、治具本体21の軸方向の両端部にそれぞれ設けられる。治具本体21の一方端部の櫛歯部22及び櫛歯状溝23と他方端部の櫛歯部22及び櫛歯状溝23との位相は揃えられている。本実施形態のコイル巻取治具2は、治具本体21の軸方向の両端部に、それぞれ72個ずつの櫛歯状溝23を有する。この櫛歯状溝23の数は、帯状コイル100が装着されるステータコアのスロットの数に一致している。
治具本体21の一方端部の櫛歯部22及び櫛歯状溝23と他方端部の櫛歯部22及び櫛歯状溝23との間の離隔距離は、帯状コイル100の直状部102の延び方向の長さに略等しい。したがって、帯状コイル100の直状部102は、治具本体21の一方端部の櫛歯状溝23と他方端部の櫛歯状溝23とに亘って収容可能である。
コイル巻取治具2は、ステータコアの内側に挿入可能となるように、櫛歯部22の先端の位置によって規定されるコイル巻取治具2の外径が、ステータコアの内径以下となるように形成される。コイル巻取治具2は、コイル成形装置1の所定の部位に配置され、図示しないモータの駆動によって、軸孔24を中心にして、図1中の矢印で示すd1方向に回転可能に設けられる。
(コイル搬送機構部)
コイル搬送機構部3は、帯状コイル100をコイル巻取治具2の外周の少なくとも一部に沿って旋回搬送させる。具体的には、コイル搬送機構部3は、図1及び図2に示すように、帯状コイル100の搬送経路を構成する一対の搬送レール31と、帯状コイル100を把持して搬送レール31に沿って搬送する搬送体32と、を有する。
コイル搬送機構部3は、帯状コイル100をコイル巻取治具2の外周の少なくとも一部に沿って旋回搬送させる。具体的には、コイル搬送機構部3は、図1及び図2に示すように、帯状コイル100の搬送経路を構成する一対の搬送レール31と、帯状コイル100を把持して搬送レール31に沿って搬送する搬送体32と、を有する。
搬送レール31は、金属製の帯状板材によって形成され、コイル成形装置1の幅方向に、帯状コイル100の直状部102の長さに略等しい間隔をあけて互いに平行に配置される。一対の搬送レール31の間隔は、図2に示すように、コイル巻取治具2の櫛歯部22及び櫛歯状溝23の軸方向の離隔距離に略等しい。
搬送レール31は、直線状の搬送経路を形成する上下一対の平行な直線搬送部311,312と、直線搬送部311,312の端部同士を円弧状に接続する旋回搬送部313とをそれぞれ有し、横向きU字状の搬送経路を形成する。搬送レール31は、旋回搬送部313がコイル巻取治具2の外周に沿うように、コイル巻取治具2をU字部分の内側に配置させて取り囲むように設けられる。図2に示すように、一対の搬送レール31が互いに対向する面には、搬送レール31の全長に亘る1条ずつのガイド溝314がそれぞれ設けられる。ガイド溝314は、後述の搬送体32の移動経路を形成する。
本実施形態において、コイル搬送機構部3の旋回搬送部313は、コイル巻取治具2の外周の略1/2の範囲に亘って形成される。旋回搬送部313は、帯状コイル100の導入側である前半部分313aと、帯状コイル100の排出側である後半部分313bとを有する。前半部分313aは、旋回搬送部313のうちの前半の略1/2の範囲に亘って形成されている。後半部分313bは、旋回搬送部313のうちの後半の略1/2の範囲に亘って形成されている。しかし、旋回搬送部313は、コイル巻取治具2の外周の少なくとも一部に沿って帯状コイル100を旋回搬送可能に構成されていればよい。
搬送体32は、搬送レール31に沿って長尺に延び、一対の搬送レール31の間を搬送レール31に沿って移動可能に設けられる。搬送体32は、少なくとも帯状コイル100の全長に対応する長さを有し、帯状コイル100の直状部102を上面に把持した状態で搬送レール31に沿って移動することによって、帯状コイル100をコイル巻取治具2の外周に沿って旋回搬送する。
搬送体32は、図1及び図3に示すように、帯状コイル100の搬送方向に沿って重ねて連結され積層状に配列される同一構造の複数の駒部材33によって構成される。駒部材33は、図5、図6及び図7に示すように、金属製の略矩形の板状形状を有する駒部材本体331と、駒部材本体331の下端の幅方向両端部からそれぞれ側方に向けて突出する一対のガイド突起332と、を有する。本実施形態のガイド突起332は、それぞれ回転可能なローラによって構成されるが、単なる突起であってもよい。なお、駒部材33の方向について、図5、図6及び図7中のX方向を幅方向、Y方向を厚み方向、Z方向を高さ方向と定義する。高さ方向について、図中の上方向を「上」、下方向を「下」と定義する。
駒部材本体331は、帯状コイル100の長さ方向に隣り合う直状部102,102の間の隙間に略等しい厚みを有する。駒部材本体331の上端面331aには、一対の第1把持爪333が、高さ方向に突出して設けられる。第1把持爪333は、駒部材本体331の厚みの略1/2の厚みを有する。この第1把持爪333の厚みは、帯状コイル100の隣り合う直状部102,102の間の隙間に略等しい。第1把持爪333は、上端面331aにおける駒部材本体331の厚み方向の一方端側に片寄った位置に配置される。一対の第1把持爪333は、所定の間隔をあけて、駒部材本体331の幅方向の両端側にそれぞれ離れて配置される。
第1把持爪333の上端面には、コイル巻取治具2の櫛歯部22の先端と噛合する噛合溝333aがそれぞれ設けられる。詳しくは、図4に示すように、コイル巻取治具2の櫛歯部22の先端には、噛合部22aがそれぞれ設けられている。噛合溝333aは、コイル巻取治具2の噛合部22aに対して噛合可能な位置及び形状を有する。
第1把持爪333は、上端面331aが配置される側と反対側にテーパ面333bをそれぞれ有する。このテーパ面333bによって、第1把持爪333は、駒部材本体331から遠ざかるに従ってやや先細り状に形成される。
一対の第1把持爪333の間には、駒部材本体331の高さ方向に沿う矩形の凹部334が設けられる。凹部334は、上端面331aから駒部材本体331の高さ方向の略1/2の部位に亘って設けられる。駒部材本体331の厚み方向に沿う凹部334の深さは、第1把持爪333と同様に、駒部材本体331の厚みの略1/2の深さを有する。
駒部材本体331の一方の側面331bには、1つの矩形の凸部335が設けられる。凸部335は、駒部材本体331の厚み方向において、第1把持爪333が設けられる側と反対側の側面331bから、側面331bに対して垂直な方向に向けてブロック状に突出するように設けられる。凸部335は、駒部材本体331の高さ方向の略1/2の部位よりも上方に配置される。駒部材本体331の高さ方向に沿う凸部335の高さは、凹部334の高さに略等しい。駒部材本体331の厚み方向に沿う凸部335の厚みは、凹部334の深さに略等しい。
凸部335の上端部には、1つの第2把持爪336が設けられる。第2把持爪336は、第1把持爪333と同様に、駒部材本体331の上端面331aよりも上方に向けて突出している。第2把持爪336の厚みは、第1把持爪333と同様に、帯状コイル100の隣り合う直状部102,102の間の隙間に略等しい。第2把持爪336は、凸部335と同一幅を有するため、図7に示すように、2つの駒部材33,33同士が向きを揃えて重ねられた際に、一方の駒部材33の一対の第1把持爪333,333の間に、他方の駒部材33の第2把持爪336が配置される。
第2把持爪336は、上端面331aが配置される側及びその反対側の面に、それぞれテーパ面336aを有する。このテーパ面336aによって、第2把持爪336は、駒部材本体331から遠ざかるに従ってやや先細り状に形成される。
複数の駒部材33は、図7に示すように、第1把持爪333及び第2把持爪336がそれぞれ同一方向を指向するように揃えられ、駒部材33の凸部335が、隣りの駒部材33の凹部334内に収容されるように重ねられる。これによって、隣り合う駒部材33,33同士は互いに密接して重ねられる。
第1把持爪333の根元付近であって、駒部材本体331の上端面331aと略同一高さの部位に、駒部材33の幅方向に亘る貫通孔337aが設けられる。また、第2把持爪336の根元付近であって、駒部材本体331の上端面331aと略同一高さの部位に、凸部335の幅方向に亘る貫通孔337bが設けられる。図7に示すように、2つの駒部材33,33が重ねられた後、連通する貫通孔337aと貫通孔337bとに亘って軸部材338が挿入される。これによって、複数の駒部材33は、軸部材338を回動軸として、ガイド突起332が設けられる下端側が搬送体32の長さ方向に回動(揺動)可能に連結され、長尺な搬送体32が形成される。
搬送体32において、隣り合う駒部材33,33の第1把持爪333,333及び第2把持爪336,336の間には、図3、図7、図8及び図9に示すように、帯状コイル100の直状部102を把持する把持溝321が形成される。把持溝321は、図7に示すように、第1把持爪333が駒部材本体331の上端面331aから立ち上がった肩部の高さ位置にある溝入口321eから深さdの凹所として形成される。把持溝321の底部が駒部材本体331の上端面331aである。
複数の各把持溝321の深さdは、帯状コイル100における搬送方向の位置により異なる直状部102の重畳するコイル導体本数に応じた寸法に設定される。把持溝321における深さdの底部は、把持溝321で把持するコイル導体のうち最も深部に位置するコイル導体に対する当接面となるコイル当接底面CCBを成している。即ち、コイル当接底面CCBは、複数の直状部102,102を把持しながら帯状コイル100の旋回搬送に伴って回動可能な複数の駒部材33,33が帯状コイル100の搬送方向に沿って重ねて連結されて構成された搬送体32における複数の駒部材33,33が隣接する部位に形成される複数の把持溝321,321それぞれの底部である。
把持溝321は、帯状コイル100の直状部102を収容可能な溝幅を有する。この把持溝321の溝幅は、コイル巻取治具2の櫛歯状溝23の周方向に沿う溝幅に略等しい。搬送体32の長さ方向に沿う把持溝321の配列ピッチは、コイル巻取治具2の周方向に沿う櫛歯状溝23の配列ピッチに略等しい。したがって、噛合溝333aと噛合部22aとが噛合すると、図8に示すように、搬送体32の把持溝321とコイル巻取治具2の櫛歯状溝23とは、コイル巻取治具2の径方向に連通する。
搬送体32は、駒部材33のそれぞれのガイド突起332が、搬送レール31のガイド溝314にそれぞれ摺動可能に収容され、U字状の搬送レール31の内側に向けて突出するように配置される。さらに、搬送体32は、図8に示すように、コイル巻取治具2の真下に来たときに、駒部材33の噛合溝333aとコイル巻取治具2の噛合部22aとが噛合することによって、コイル巻取治具2のd1方向の回転によって、コイル巻取治具2の回転に同期して、d2方向に移動可能に設けられる。搬送体32は、搬送レール31の旋回搬送部313に沿って円弧状に移動する際に、軸部材338によって、直状部102を把持する部位である第1把持爪333及び第2把持爪336の部位を基準にして、隣り合う駒部材33,33のガイド突起332側が離隔するようにそれぞれ回動するため、円滑に移動可能である。
搬送レール31に摺動可能に配置された搬送体32は、図3、図8及び図9に示すように、第1把持爪333及び第2把持爪336を帯状コイル100の長さ方向に隣り合う直状部102,102の間の隙間にそれぞれ挿入し、直状部102を把持溝321に収容することによって、帯状コイル100を把持する。したがって、搬送体32は、直状部102を位置ずれすることなく一定の間隔に保持した状態で、帯状コイル100を搬送することができる。帯状コイル100の側端部103は、図2及び図3に示すように、搬送体32の移動方向の両側方にそれぞれ張り出すように配置される。なお、図1において、搬送体32に把持される帯状コイル100は図示を省略している。
(案内部材)
案内部材4は、金属製の帯状板材によって、図1に示すように、それぞれ搬送レール31の旋回搬送部313に沿うように、横向きの略U字状に形成される。案内部材4は、コイル巻取治具2を挟むように、コイル巻取治具2の軸方向(図1における紙面垂直方向、図2における左右方向)の両端近傍に、U字部分の内側がコイル巻取治具2の方向を向くようにそれぞれ配置され、搬送レール31に固定される。
案内部材4は、金属製の帯状板材によって、図1に示すように、それぞれ搬送レール31の旋回搬送部313に沿うように、横向きの略U字状に形成される。案内部材4は、コイル巻取治具2を挟むように、コイル巻取治具2の軸方向(図1における紙面垂直方向、図2における左右方向)の両端近傍に、U字部分の内側がコイル巻取治具2の方向を向くようにそれぞれ配置され、搬送レール31に固定される。
案内部材4は、搬送体32によって搬送される帯状コイル100の側端部103を導入する導入端4aと、帯状コイル100の側端部103を排出する排出端4bと、導入端4aから排出端4bに亘って側端部103を案内する内壁面41と、を有する。内壁面41は、導入端4aから排出端4bに亘って、コイル巻取治具2の外周の略1/2の範囲に沿うように滑らかに連続して湾曲する曲面によって形成される。案内部材4は、旋回搬送部313によって旋回搬送される間に、導入端4aから導入した側端部103を内壁面41に接触させることによって、帯状コイル100の全体をコイル巻取治具2の外周に沿うように円弧状に円滑に案内する。
案内部材4の円弧状の内壁面41の曲率は、導入端4aら排出端4bに向かうに従って徐々に大きく変化するように形成される。詳しくは、図10に示すように、導入端4aにおける内壁面41は、コイル巻取治具2の外周よりも径方向のやや外側に配置される。しかし、内壁面41は、導入端4aから排出端4bに向かうに従って、徐々に滑らかに縮径する。排出端4bにおける内壁面41は、コイル巻取治具2の外周よりも径方向内側に配置される。そのため、案内部材4の内壁面41は、帯状コイル100が旋回搬送部313の前半部分313aから後半部分313bに向かうに従って、帯状コイル100の側端部103に接触しながら、帯状コイル100を、コイル巻取治具2の外径よりも小径の円弧状に徐々に丸めるように案内する。
帯状コイル100は、旋回搬送部313の前半部分313aから後半部分313bに向かうに従って、案内部材4の内壁面41に案内されることによって、コイル巻取治具2に向けて徐々に押圧される。これによって、搬送体32に把持される直状部102は、把持溝321から浮き上がるように強制的に離脱し、コイル巻取治具2の櫛歯状溝23の内部に向けて徐々に移動する。案内部材4の排出端4bは、コイル巻取治具2の外周よりも径方向内側に配置されるため、直状部102はコイル巻取治具2の櫛歯状溝23内に完全に挿入される。その後、帯状コイル100は、コイル巻取治具2の回転によってコイル巻取治具2に巻き取られる。なお、図10及び図12では、搬送体32は図示を省略し、帯状コイル100は簡略化して示している。
なお、案内部材4は、本実施形態のように旋回搬送部313の全体に亘って連続する内壁面41を有する構造に限定されない。案内部材4は、例えば、図示しないが、複数の案内ローラを旋回搬送部313に沿うように配置した構造であってもよい。しかし、帯状コイル100を、コイル巻取治具2の櫛歯状溝23に連続して案内でき、直状部102を櫛歯状溝23に円滑に挿入できるようにする観点では、案内部材4は、旋回搬送部313の後半部分313bに、側端部103と壁面で接触する内壁面41を有することが好ましい。帯状コイル100を旋回搬送部313の全体に亘って円弧状に円滑に案内できるとともに、直状部102をコイル巻取治具2の櫛歯状溝23内に円滑に挿入させることができるようにする観点では、案内部材4は、本実施形態のように旋回搬送部313の全体において、側端部103と壁面で接触する内壁面41を有することが好ましい。
図1及び図2に示すように、案内部材4の導入端4a側には、旋回搬送部313に導入される帯状コイル100を、コイル巻取治具2の外周に沿う円弧状に湾曲するように強制的に変形させて癖付けするための一対の癖付け部42を有する。案内部材4において、癖付け部42が設けられる範囲は、旋回搬送部313の前半部分313aの範囲内である。具体的には、癖付け部42は、例えば、案内部材4の導入端4aから旋回搬送部313の前半部分313aの約1/2~約3/4の範囲に亘って設けることができる。
即ち、案内部材4は、帯状コイル100の旋回搬送の前半部分で、複数の把持溝321,321に複数の直状部102,102が把持された状態の帯状コイル100の側端部103を挟み込んだ状態で、帯状コイル100を円弧状に変形させて癖付けを行う癖付け部42を有する。
癖付け部42は、案内部材4の内壁面41とガイド板421とによって構成される。ガイド板421は、案内部材4の内壁面41の曲率に沿って滑らかに円弧状に湾曲するように形成される。ガイド板421は、案内部材4と同様に、コイル巻取治具2を軸方向の両端側から挟むようにそれぞれ配置され、案内部材4に固定される。癖付け部42において、内壁面41とガイド板421との間に、側端部103を挟み付ける癖付け溝422が形成される。癖付け部42における内壁面41は、帯状コイル100の側端部103の径方向の外側の面に接触して支持し、ガイド板421は、帯状コイル100の側端部103の径方向の内側の面に接触して支持する。
癖付け部42は、案内部材4の導入端4aに導入される帯状コイル100の側端部103を、癖付け溝422に受け入れて挟み付けながら搬送することによって、円弧状に湾曲するように強制的に変形させる。これによって、帯状コイル100は、コイル巻取治具2に巻き取られる前の旋回搬送部313の導入初期において、円弧状に癖付けされ、その後に案内部材4の内壁面41によって円弧状に案内される間に平坦状に弾性復帰しようとする力が働くことが抑制される。したがって、帯状コイル100は、案内部材4によって円弧状に案内されることと相俟って、略円筒状の巻回状態に円滑に且つ精度良く成形される。
(コイル成形方法)
次に、このコイル成形装置1によって、帯状コイル100を略円筒状の巻回状態に成形する方法について説明する。
次に、このコイル成形装置1によって、帯状コイル100を略円筒状の巻回状態に成形する方法について説明する。
まず、コイル成形装置1の搬送レール31のU字部分の内側に、コイル巻取治具2が、図示しないモータの駆動によって回転可能に配置される(コイル巻取治具配置工程)。
コイル成形装置1にコイル巻取治具2が配置された後、予め長尺の波型帯状に成形された帯状コイル100が、図示しないコイル供給装置または作業者によって、搬送レール31の下側の直線搬送部311に配置される搬送体32に供給される。帯状コイル100は、隣り合う帯状コイル100の間の隙間に、搬送体32の各駒部材33の第1把持爪333及び第2把持爪336が挿入され、直状部102が把持溝321にそれぞれ収容されることによって、搬送体32に把持される。
詳細には、帯状コイル100における搬送方向の位置により異なる複数の直状部102,102におけるコイル導体が重畳する本数に応じた深さdのコイル当接底面CCBを有する把持溝321を持つ搬送体32を用い、この把持溝321で複数の直状部102,102を把持する。
その後、帯状コイル100を把持した搬送体32は、図示しない搬送体押圧装置または作業者によって押圧され、駒部材33の噛合溝333aとコイル巻取治具2の噛合部22aとが噛合するように、コイル巻取治具2に向けて直線搬送部311を移動する。コイル巻取治具2の直下において噛合溝333aと噛合部22aとが噛合した後、コイル巻取治具2がd1方向に回転駆動すると、搬送体32は、コイル巻取治具2の回転に同期して、搬送レール31をd2方向に沿って移動し、帯状コイル100をコイル巻取治具2の外周に沿うように旋回搬送する。
この帯状コイル100の搬送に適用する搬送体32は、帯状コイル100における搬送方向の位置により異なる複数の直状部102におけるコイル導体の重畳本数に応じた深さのコイル当接底面CCBを有する把持溝321を持つ。直状部102が把持溝321で保持されて帯状コイル100が搬送される(コイル搬送工程)。
コイル搬送工程において、搬送体32が旋回搬送部313に到達すると、帯状コイル100の側端部103は、最初に、案内部材4の導入端4aから癖付け部42の癖付け溝422に導入され、内壁面41とガイド板421との間に挟み付けられながら旋回搬送される。これによって、帯状コイル100は、癖付け溝422に沿って円弧状に湾曲するように強制的に変形して癖付けされる。
即ち、帯状コイル100の旋回搬送の前半部分313aで、複数の把持溝321,321に複数の直状部102,102を把持した状態で帯状コイル100の側端部103を挟み込んで、前記帯状コイルを円弧状に変形させて癖付けを行う(癖付け工程)。
癖付け部42を通過した帯状コイル100は、コイル巻取治具2の回転に伴って、案内部材4の内壁面41に沿ってコイル巻取治具2の外周の少なくとも一部、具体的にはコイル巻取治具2の外周の略1/2の範囲に沿って旋回搬送されながら、徐々に円弧状に丸められように案内される(案内工程)。
旋回搬送部313の前半部分313aから後半部分313bに向かうに従って、案内部材4の内壁面41の曲率は徐々に大きくなるため、帯状コイル100の側端部103は、この内壁面41によって径方向内側に向けて徐々に縮径するように押圧される。これによって、帯状コイル100は、コイル巻取治具2の外径よりも小径に丸められる。内壁面41に押圧された側端部103は、帯状コイル100が案内部材4の排出端4bに向かうに従って、直状部102を把持溝321からコイル巻取治具2の櫛歯状溝23に向けて徐々に離脱させる。把持溝321から完全に離脱した直状部102は、案内部材4の内壁面41に押圧されながら、図10に示すように、把持溝321と連通するコイル巻取治具2の櫛歯状溝23内にそれぞれ挿入される(挿入工程)。その後、帯状コイル100は、コイル巻取治具2の回転に伴って、コイル巻取治具2に巻き取られながら、案内部材4の排出端4bから排出される。
搬送体32の全体が搬送レール31に沿って移動し終えると、帯状コイル100は、直状部102のコイル導体が櫛歯状溝23内に積層状に挿入されることによって、図12に示すように、コイル巻取治具2を4周するように巻回されて多重巻きされる。これによって、帯状コイル100は、図13に示すように、略円筒状の巻回状態に容易に成形される。巻回状態の帯状コイル100の直状部102は、櫛歯状溝23内に収容されているため、位置ずれするおそれはない。したがって、帯状コイル100は、略円筒状の巻回状態を安定して保持することができる。なお、帯状コイルは、コイル巻取治具2に多重巻きされるものに限らない。
次に、図14A、図14Bおよび図14C、ならびに、図15Aおよび図15Bを参照して、本発明の実施形態における特徴につて更に説明する。図14Aは、上述のように、帯状コイル100をコイル巻取治具2を4周するように巻回して多重巻きする場合の、1周目から4周目までの帯状コイル100を、各周回ごとにコイル成形装置1における直線状の搬送経路の方向に展開して側面視で示す概念図である。図14Aにおいて、左側から右側にかけて1周目、2周目、3周目、4周目、の各周回におけるコイル導体が示される。なお、ここでの各周回の数え方は、4周の多重巻きにおける、最外周側のコイル導体を1周目のコイル導体と称し、そのコイル導体の直下の周回におけるコイル導体を2周目のコイル導体と称し、以下順次、3周目および4周目のコイル導体と称している。
従って、4周目のコイル導体が多重巻きにおける最内周のコイル導体である。各周回におけるコイル導体は2層であるが、各周回の切り替わり部位に対応する特定領域Sでは、コイル導体を逆折にして折り返すことによりコイル導体の積層方向に段差が生じる。このため、4周目のコイル導体の内周側の面である図14Aにおける帯状コイル100の下端位置から、1周目のコイル導体の外周側の面である図14Aにおける帯状コイル100の上端位置までは、高さhの高低差が生じる。
ここで、癖付け部42に位置した帯状コイル100に対する癖付け作用について力学的に考察する。図15Aに、コイル搬送機構部3の駒部材本体331に形成された把持溝321で把持された帯状コイル100を癖付け部42のガイド板421によって円弧状に変形させて癖付けを行う場合に帯状コイル100に作用する力を概念的に示す。図15Bは、図15Aにおける力を抽象化して拡大して示している。癖付け部42に位置した帯状コイル100のコイル導体は把持溝321によって把持され、コイル当接底面CCBによって支承される。帯状コイル100のコイル導体に対して、コイル当接底面CCBは力点Pfおよび作用点Paとして作用し、力点Pfおよび作用点Paの中間位置に摺接するガイド板421の部位が、支点Psとして作用する。これら力点Pfおよび作用点Paならびに作用点Paに作用する力により、帯状コイル100は力点Pfおよび作用点Pa間で曲がり量bだけ曲げられて、円弧状に癖付けされる。
ところが、図14Aにおける高低差hに合せて、図7を参照して説明した把持溝321の深さdを一律に設定すると、力点Pfおよび作用点Paとして機能するコイル当接底面CCBに対して、支点Psとして機能するガイド板421が帯状コイル100のコイル導体に接触するに到れない部分が生じる。このような部分では、帯状コイル100に対して所要の曲げ癖をつけることができない。
そこで、本発明の実施形態においては、図14Bに示すように、特定領域Sについてのみ、把持溝321の深さdを、コイル導体を逆折にして折り返すことによりコイル導体の積層方向に生じる段差をちょうど吸収できる深さとし、特定領域S以外の領域についてはコイル導体の積層数(本例では2層)に合せて一律にしている。特定領域Sならびにその近傍における把持溝321とこれに把持されるコイル導体は、図8および図9のような形態を呈することになる。即ち、何れの把持溝321についても、その深さdは直状部102のコイル導体の重畳本数に応じたものとなり、上述した支点Psの接触が阻害されるような空隙が生じない。なお、図9における駒部材本体331の上端面331aが、上述のコイル当接底面CCBである。
把持溝321の深さdを図14Bのように設定することにより、図14Cに示すように、帯状コイル100は、搬送方向の全域にわたって略フラットとなり、図14Aにおけるような帯状コイル100の搬送方向でのコイル導体の積層に関する高低差hがなくなる。これにより、帯状コイル100の搬送方向の全域にわたって、図15Aおよび図15Bを参照して説明した力点Pfおよび作用点Paとして機能するコイル当接底面CCBに対して、ガイド板421が支点Psとして有効に機能し得るようになる。従って、帯状コイル100に対して所定の癖付けを行うことができる。
以上説明したコイル成形装置1によれば、以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態のコイル成形装置1は、複数の直状部102と、複数の直状部102の両端に配置される側端部103と、を有する帯状コイル100を巻回状態に成形するコイル成形装置1であって、複数の櫛歯状溝23を有し、帯状コイル100の複数の直状部102を、複数の櫛歯状溝23にそれぞれ挿入することによって、帯状コイル100を巻き取り可能に構成されるコイル巻取治具2と、帯状コイル100を旋回搬送可能に構成されるコイル搬送機構部3と、コイル巻取治具2の軸方向の両端近傍にそれぞれ配置され、帯状コイル100の側端部103と接触しながら、帯状コイル100を円弧状に案内するとともに、帯状コイル100の旋回搬送の後半部分で、複数の直状部102を複数の櫛歯状溝23にそれぞれ挿入させる案内部材4と、を備え、コイル搬送機構部3は、帯状コイル100をコイル巻取治具2に沿うように旋回搬送する搬送経路を形成する搬送レール31と、帯状コイル100の複数の直状部102をそれぞれ把持した状態で、搬送レール31に沿って移動可能に構成される搬送体32と、を有し、搬送体32は、帯状コイル100の複数の直状部102をそれぞれ把持する複数の把持溝321を持ち、複数の把持溝321は、帯状コイル100における搬送方向の位置により異なる複数の直状部102の重畳本数に応じた深さのコイル当接底面CCBを有する。このため、帯状コイル100を円弧状に変形させて癖付けを行うに際し、この癖付けのための力を与える力点Pfおよび作用点Paとして機能するコイル当接底面CCBと、これに対する支点Psとしての案内部材4の該当部位から適切に力が作用して、帯状コイルに所定の曲げ癖をつけることができる。
コイル成形装置1において、コイル当接底面CCBは、複数の直状部102を把持しながら帯状コイル100の旋回搬送に伴って回動可能な複数の駒部材33が帯状コイル100の搬送方向に沿って重ねて連結されて構成された搬送体32における複数の駒部材33が隣接する部位に形成される複数の把持溝321それぞれの底部である。このため、搬送体32は、帯状コイル100のコイル導体を把持溝321で把持しつつ円滑に円弧状に旋回搬送させることができる。
コイル成形装置1において、案内部材4は、帯状コイル100の旋回搬送の前半部分で、複数の把持溝321に複数の直状部102が把持された状態の帯状コイル100の側端部103を挟み込んだ状態で、帯状コイル100を円弧状に変形させて癖付けを行う癖付け部42を有する。このため、帯状コイル100に曲げ癖をつけるための力が、力点Pfおよび作用点Paとして機能するコイル当接底面CCBと、これに対する支点Psとしての案内部材4の該当部位から適切に作用して、帯状コイルに所定の曲げ癖をつけることができる。
本実施形態のコイル成形方法によれば、以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態のコイル成形方法は、複数の直状部102と、複数の直状部102の両端に配置される側端部103と、を有する帯状コイル100を巻回状態に成形するコイル成形方法であって、複数の直状部102をそれぞれ挿入可能な複数の櫛歯状溝23を有して帯状コイル100を巻き取り可能に構成されるコイル巻取治具2に沿って、複数の直状部102をそれぞれ把持した状態で帯状コイル100を旋回搬送するコイル搬送工程と、コイル巻取治具2の軸方向の両端近傍に、それぞれ案内部材4を配置し、旋回搬送される帯状コイル100の側端部103を案内部材4に接触させながら、帯状コイル100を円弧状に案内し、複数の直状部102をコイル巻取治具2の複数の櫛歯状溝23にそれぞれ挿入する案内工程と、を含み、コイル搬送工程では、帯状コイル100における搬送方向の位置により異なる複数の直状部102の重畳本数に応じた深さのコイル当接底面CCBを有する把持溝321を持つ搬送体32を用い、この把持溝321で複数の直状部102を把持する。このため、帯状コイル100を円弧状に変形させて癖付けを行うに際し、この癖付けのための力を与える力点Pfおよび作用点Paとして機能するコイル当接底面CCBと、これに対する支点Psとしての案内部材4の該当部位から適切に力が作用して、帯状コイルに所定の曲げ癖をつけることができる。
本実施形態のコイル成形方法において、コイル搬送工程では、複数の直状部102を把持しながら帯状コイル100の旋回搬送に伴って回動可能な複数の駒部材33が帯状コイル100の搬送方向に沿って重ねて連結された搬送体32を用い、複数の駒部材33が隣接する部位に形成される複数の把持溝321それぞれの底部としてコイル当接底面CCBが構成される把持溝321で複数の直状部102を把持する。このため、帯状コイル100は、搬送体32によりコイル導体を把持溝321で把持されて円滑に円弧状に旋回搬送され得る。
本実施形態のコイル成形方法において、コイル搬送工程は、帯状コイル100の旋回搬送の前半部分で、複数の把持溝321に複数の直状部102を把持した状態で帯状コイル100の側端部103を挟み込んで、帯状コイル100を円弧状に変形させて癖付けを行う癖付け工程を含む。このため、帯状コイルに曲げ癖をつけるための力が適切に作用して、帯状コイルに所定の曲げ癖をつけることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。例えば、上述の実施形態では、把持溝321における深さdを、図14Bの領域Sに該当するものについては他の領域と異なるものとするために、該当部の寸法が異なる駒部材33を用意したが、これに替えた構成を採り得る。即ち、駒部材33については全て同形同寸法のものを用意し、深さdを調節するために把持溝321にダミー部材を積層するようにしてもよい。
1 コイル成形装置
2 コイル巻取治具
23 櫛歯状溝
3 コイル搬送機構部
31 搬送レール
313 旋回搬送部
313a 前半部分
313b 後半部分
314 ガイド溝
32 搬送体
321e 溝入口
33 駒部材
333 第1把持爪
336 第2把持爪
4 案内部材
41 内壁面
42 癖付け部
100 帯状コイル
102 直状部
103 側端部
CCB コイル当接底面
d 深さ
Pa 作用点
Pf 力点
Ps 支点
2 コイル巻取治具
23 櫛歯状溝
3 コイル搬送機構部
31 搬送レール
313 旋回搬送部
313a 前半部分
313b 後半部分
314 ガイド溝
32 搬送体
321e 溝入口
33 駒部材
333 第1把持爪
336 第2把持爪
4 案内部材
41 内壁面
42 癖付け部
100 帯状コイル
102 直状部
103 側端部
CCB コイル当接底面
d 深さ
Pa 作用点
Pf 力点
Ps 支点
Claims (6)
- 複数の直状部と、前記複数の直状部の両端に配置される側端部と、を有する帯状コイルを巻回状態に成形するコイル成形装置であって、
複数の櫛歯状溝を有し、前記帯状コイルの前記複数の直状部を、前記複数の櫛歯状溝にそれぞれ挿入することによって、前記帯状コイルを巻き取り可能に構成されるコイル巻取治具と、
前記帯状コイルを旋回搬送可能に構成されるコイル搬送機構部と、
前記コイル巻取治具の軸方向の両端近傍にそれぞれ配置され、前記帯状コイルの前記側端部と接触しながら、前記帯状コイルを円弧状に案内するとともに、前記帯状コイルの旋回搬送の後半部分で、前記複数の直状部を前記複数の櫛歯状溝にそれぞれ挿入させる案内部材と、を備え、
前記コイル搬送機構部は、前記帯状コイルを前記コイル巻取治具に沿うように旋回搬送する搬送経路を形成する搬送レールと、前記帯状コイルの前記複数の直状部をそれぞれ把持した状態で、前記搬送レールに沿って移動可能に構成される搬送体と、を有し、
前記搬送体は、前記帯状コイルの前記複数の直状部をそれぞれ把持する複数の把持溝を持ち、
前記複数の把持溝は、前記帯状コイルにおける搬送方向の位置により異なる前記複数の直状部の重畳本数に応じた深さのコイル当接底面を有する、コイル成形装置。 - 前記コイル当接底面は、前記複数の直状部を把持しながら前記帯状コイルの旋回搬送に伴って回動可能な複数の駒部材が前記帯状コイルの搬送方向に沿って重ねて連結されて構成された前記搬送体における前記複数の駒部材が隣接する部位に形成される前記複数の把持溝それぞれの底部である、請求項1に記載のコイル成形装置。
- 前記案内部材は、前記帯状コイルの旋回搬送の前半部分で、前記複数の把持溝に前記複数の直状部が把持された状態の前記帯状コイルの前記側端部を挟み込んだ状態で、前記帯状コイルを円弧状に変形させて癖付けを行う癖付け部を有する請求項1または2に記載のコイル成形装置。
- 複数の直状部と、前記複数の直状部の両端に配置される側端部と、を有する帯状コイルを巻回状態に成形するコイル成形方法であって、
前記複数の直状部をそれぞれ挿入可能な複数の櫛歯状溝を有して前記帯状コイルを巻き取り可能に構成されるコイル巻取治具に沿って、前記複数の直状部をそれぞれ把持した状態で前記帯状コイルを旋回搬送するコイル搬送工程と、
前記コイル巻取治具の軸方向の両端近傍に、それぞれ案内部材を配置し、旋回搬送される前記帯状コイルの前記側端部を前記案内部材に接触させながら、前記帯状コイルを円弧状に案内し、前記複数の直状部を前記コイル巻取治具の前記複数の櫛歯状溝にそれぞれ挿入する案内工程と、を含み、
前記コイル搬送工程では、前記帯状コイルにおける搬送方向の位置により異なる前記複数の直状部の重畳本数に応じた深さのコイル当接底面を有する把持溝を持つ搬送体を用い、この把持溝で前記複数の直状部を把持する、コイル成形方法。 - 前記コイル搬送工程では、前記複数の直状部を把持しながら前記帯状コイルの旋回搬送に伴って回動可能な複数の駒部材が前記帯状コイルの搬送方向に沿って重ねて連結された前記搬送体を用い、前記複数の駒部材が隣接する部位に形成される前記複数の把持溝それぞれの底部として前記コイル当接底面が構成される前記把持溝で前記複数の直状部を把持する、請求項4に記載のコイル成形方法。
- 前記コイル搬送工程は、前記帯状コイルの旋回搬送の前半部分で、前記複数の把持溝に前記複数の直状部を把持した状態で前記帯状コイルの前記側端部を挟み込んで、前記帯状コイルを円弧状に変形させて癖付けを行う癖付け工程を含む、請求項4または5に記載のコイル成形方法。
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