以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.画像形成装置
2.機械学習装置
3.機械学習方法
4.機械学習装置および機械学習方法の変形例
5.データ処理システムおよびデータ処理方法
6.データ処理システムおよびデータ処理方法の変形例
以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
初めに、本発明の一実施の形態に係る機械学習装置および機械学習方法の学習対象としての、印刷出力を行う電子写真式の画像形成装置の基本的な構成について、以下に簡単に説明する。
<1.画像形成装置>
図1は、本発明の一実施の形態において用いられる画像形成装置の概略構造図である。ここで例示される画像形成装置10は、いわゆる中間転写方式のフルカラーLED(Light Emitting Diode)プリンタであり、図1に示すように、印刷媒体供給部20と、画像形成部30と、転写部40と、定着部50と、出力部60と、制御部70とを備える。
印刷媒体供給部20は、印刷媒体PMを画像形成装置10内に供給するためのものであり、用紙トレイ21と、手差しトレイ22と、複数の給紙ローラ23とを有する。用紙トレイ21は、複数の印刷媒体PMが積層され収容されるものである。この用紙トレイ21内に収容される印刷媒体PMは、一般用紙(A4普通紙、B4普通紙等)であるのが一般的である。手差しトレイ22は、画像形成装置10本体側面に収納可能に設けられ、主に一般用紙とは異なる特殊な印刷媒体PMに印刷を行う場合に、当該特殊な印刷媒体PMを給紙するためのトレイである。よって、インダストリープリントを行う場合には、主にこの手差しトレイ22が使用される。複数の給紙ローラ23は、用紙トレイ21内の、あるいは手差しトレイ22に載置された印刷媒体PMを搬送経路PLに搬送するために適所に配置されたローラである。複数の給紙ローラ23の回転速度は、後述する制御部70により制御される。
画像形成部30は、トナー像を形成するためのものであり、並列配置された複数(本実施の形態においては5つ)の画像形成ユニット31(画像形成ユニット31C、31M、31Y、31K、31S)を有する。これら複数の画像形成ユニット31C、31M、31Y、31K、31Sは、トナー色が異なるのみでその構成は基本的に同一のものであり、主に、感光体ドラムと、帯電ローラと、現像ローラと、LEDヘッドと、トナータンクとを備える。感光体ドラムの回転速度は、後述する制御部70により制御される。なお、これらの各構成による画像形成プロセスについては、周知のものと同様のプロセスを採用でき、ここでは詳細な説明を省略する。
複数の画像形成ユニット31C、31M、31Y、31K、31Sは、それぞれシアン
(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)、いわゆるキープレート(Key plate)に対応するブラック、および特殊色のトナー像を形成するためのユニットであり、これら複数の画像形成ユニット31を採用することにより、フルカラー印刷を可能としている。各画像形成ユニット31で形成されたトナー像は、後述する転写部40の中間転写ベルト41に転写される。なお、上記特殊色のトナーとしては、例えばホワイトトナー、クリアトナー、あるいは蛍光色(ネオンイエロー等)トナーを採用することができる。
転写部40は、画像形成部30で形成されたトナー像を印刷媒体PMに転写するためのものであり、中間転写ベルト41と、複数の一次転写ローラ42(一次転写ローラ42C、42M、42Y、42K、42S)と、バックアップローラ43と、二次転写ローラ44とを備える。中間転写ベルト41は、駆動用のローラ等を含む複数のローラに支持され主にゴム等の樹脂材料から構成された無端の弾性ベルトである。この中間転写ベルト41の表面には、画像形成ユニット31で形成された各色のトナー像が転写(一次転写)されて形成され、この形成されたトナー像は後に印刷媒体PMに転写(二次転写)される。複数の一次転写ローラ42C、42M、42Y、42K、42Sは、画像形成ユニット31で形成された各色のトナー像を中間転写ベルト41に転写するためのものであり、複数の画像形成ユニット31C、31M、31Y、31K、31Sそれぞれの感光体ドラムに対向配置され、且つ対向する各感光体ドラムとの間に中間転写ベルト41を挟持するように配置される。一次転写ローラ42には、所定の一次転写電圧が印加される。一次転写電圧は、後述する制御部70により制御される。各種ローラの回転速度は、後述する制御部70により制御される。
バックアップローラ43は、中間転写ベルト41を支持する複数のローラのうちの1つであり、後述する二次転写ローラ44に中間転写ベルト41を間に介して対向する位置に配置される。二次転写ローラ44は、搬送経路PLの途中であって、バックアップローラ43に中間転写ベルト41を間に介して対向する位置に配置されており、この二次転写ローラ44と中間転写ベルト41との間に印刷媒体PMを通過させる際に、中間転写ベルト41に予め形成されたトナー像を転写するべく機能する。この二次転写ローラ44には、所定の二次転写電圧が印加される。二次転写電圧は、後述する制御部70により制御される。
定着部50は、転写部40でトナー像が転写された印刷媒体PMに熱と圧力を付与することで、トナー像を印刷媒体PM上に定着させるためのものであり、定着ローラ51と加圧ローラ52とを備える。定着ローラ51は、その内部にヒータ(図示省略)が内蔵され、このヒータに供給される電流の電流値によりトナー定着温度が制御されている。このヒータに供給される電流の電流値は、後述する制御部70によって制御される。加圧ローラ52は、定着ローラ51に対して付勢力が付与されている。これにより、定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過する印刷媒体PMには所定の定着圧力が印加される。各種ローラの回転速度は、後述する制御部70により制御される。なお、本実施の形態においては、加圧ローラ52を定着ローラ51に対して付勢する構成を採用しているが、加圧ローラ52に代えて固定されたバックアップローラを採用し、定着ローラ51をバックアップローラに対して付勢するような構成を採用してもよい。
出力部60は、定着部50によりトナー像が定着された印刷媒体PMを実印刷物APとして画像形成装置10の外部に出力するものであり、排出トレイ61と、複数の搬送ローラ62とを備える。排出トレイ61は、画像形成装置10の上部に形成され、搬送経路PLを経て出力された実印刷物APが載置されるものである。複数の搬送ローラ62は、搬送経路PLの各所に設けられ、印刷媒体PMを排出トレイ61まで搬送するものである。複数の搬送ローラ62の回転速度は、後述する制御部70により制御される。なお、出力部60のいずれかの位置に、トナー像を定着した際に生じた熱を除去するための冷却手段を任意で設けても良い。冷却手段としては、例えば搬送ローラ62の少なくとも一部に放熱機能を有するローラを採用する、あるいは冷却手段として周知のヒートパイプやヒートシンク、ファン等を出力部60の所定位置に配置する等の構成を採用できる。
制御部70は、画像形成装置10の各部を制御するためのものであり、周知のCPU(Central Processing Unit)や記憶手段等からなる。この制御部70は、例えば、画像形成装置10における各種ローラの回転速度を制御することにより、画像形成装置10における印刷速度を制御する。また、制御部70は、例えば、二次転写ローラ44に印加される二次転写電圧を制御する。また、制御部70は、例えば、定着ローラ51内部のヒータに供給する電流の電流値を制御することにより、トナー定着温度を制御する。
この例では、中間転写方式のフルカラーLEDプリンタを用いて画像形成装置10を構成したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、中間転写方式に代えて感光体ドラムから印刷媒体に直接転写するタンデム式やロータリー式のものを採用してもよいし、フルカラーに代えてモノクロを採用してもよいし、特殊色のトナーを有するタイプのフルカラーに代えて特殊色のトナーを有しないタイプのフルカラーを採用してもよいし、LEDヘッドに代えてレーザーヘッドを採用してもよいし、プリンタに代えて複写機を採用してもよいし、プリンタに代えてファクシミリを採用してもよいし、プリンタに代えて、プリンタ、複写機、ファクシミリなどの機能が組み合わされたデジタル複合機を採用してもよい。
上述した構成を備える画像形成装置10を用いてインダストリープリントを実行する場合は、上記課題に示した通り、従来技術では制御情報の調整を十分に行うことが難しい。結果として、インダストリープリントにおいては質の低い印刷(印刷不良)が生じる割合が高い。このような印刷不良が生じた場合、専門の技術者が、実際に印刷を行った実印刷物の状態や印刷を行った際の画像形成装置の制御情報等を総合的に勘案し、さらには過去の経験や蓄積されたノウハウに基づいて、最適な制御情報を導き出すことで所望の印刷結果を得るといった作業を行うことが考えられる。しかし、この一連の作業には長時間を要する上、発生した印刷不良の事象毎に技術者を占有するためコストが非常に高くなってしまう。そこで、本発明は、以下に記載した機械学習装置100および機械学習方法により生成される学習済モデルを利用することで、画像形成装置10の制御情報の調整を自動化しようとするものである。
ところで、上述したような画像形成装置10を用いて印刷を実行する際には、最適な印刷結果を得るべく、様々な制御情報が調整される。これら様々な制御情報について本発明者等が検証を行ったところ、当該種々の制御情報のうち、二次転写ローラ44に印加する二次転写電圧と定着ローラ51のトナー定着温度(すなわち定着ローラ51内のヒータに供給される電流の電流値)の2つが、特に印刷の質に影響する制御情報であることが知得された。言い換えれば、これらの二次転写電圧およびトナー定着温度が、印刷面に発生する印刷不良との間に高い相関関係を有する制御情報であることが知得された。そして、これら2つの制御情報と印刷不良との関係についてさらに詳しく検証を行ったところ、二次転写電圧が高いと、主にチリ(白点が発生する印刷不良)の原因となり、反対に二次転写電圧が低いと、主にカスレ(色が薄くなる印刷不良)の原因となる。また、トナー定着温度が高いと、主に斑点(斑点状の模様が発生する印刷不良)の原因となり、反対にトナー定着温度が低いと、主に定着不良(トナー剥がれの印刷不良)やいわゆる画ズレ(濃度の薄い部分が生じる印刷不良)の原因となることが知得された。
図2A,2Bは、転写部40の二次転写ローラ44付近における、印刷媒体PM上のトナーTNの状態を表すものであり、図2Aは二次転写電圧が適正な場合を示し、図2Bは二次転写電圧が低い場合を示す。印刷媒体PMは、図2A,2Bにおける左方向(搬送方向F)に向かって搬送される。また、中間転写ベルト41は、図1において、時計回りに循環搬送される。この中間転写ベルト41に吸着しているトナーは、負に帯電している。一方、印刷媒体PMは、二次転写ローラ44から供給された電圧により正に帯電している。
二次転写電圧が適正である場合には、図2Aに示したように、印刷媒体PMが十分に正に帯電しているので(図2Aにおける部分W1)、中間転写ベルト41上のトナーTNは、静電力により印刷媒体PMに誘引される。このようにして、トナーTNが印刷媒体PMに転写される。
一方、二次転写電圧が低い場合には、図2Bに示したように、印刷媒体PMが十分に正に帯電しないおそれがある(図2Bにおける部分W2)。この場合には、中間転写ベルト41上のトナーTNの一部は、静電力により印刷媒体PMに誘引されずに、中間転写ベルト41上に残ってしまう。その結果、印刷媒体PM上に、例えばトナーTNがない画像部分が生じる。このようにして、カスレが発生する。
図3A,3Bは、定着部50付近における、印刷媒体PM上のトナーTNの状態を表すものであり、図3Aはトナー定着温度が適正な場合を示し、図3Bはトナー定着温度が低い場合を示す。印刷媒体PMは、図3A,3Bにおける左方向(搬送方向F)に向かって搬送される。また、加圧ローラ52が定着ローラ51(図示せず)に対して付勢されているので、印刷媒体PMには、所定の定着圧力が印加される。
トナー定着温度が適正である場合には、図3Aに示したように、印刷媒体PM上のトナーTNは、加圧ローラ52と印刷媒体PMの隙間において、定着圧力により、印刷媒体PMの搬送方向Fとは反対の方向F1の圧力を受ける。しかしながら、トナーTNは、印刷媒体PMの表面における摩擦などの様々な抵抗(図3Aにおける部分W3)により、印刷媒体PM上の転写された位置から移動せずにとどまり、定着ローラ51(図示せず)から供給される熱量により、その位置で融解し定着する。これにより、トナーTNは、印刷媒体PM上の転写された位置に定着する。
一方、トナー定着温度が低い場合には、図3Bに示したように、定着ローラ51(図示せず)から供給される熱量の供給が不十分であるので、トナーTNの融解が遅れる。これにより、トナーTNは、加圧ローラ52と印刷媒体PMの隙間において詰まり、印刷媒体PM上の転写された位置から方向F1にずれ、このずれた位置で融解し定着する。その結果、印刷媒体PM上に、例えば濃度の薄い画像部分が生じる。このようにして、いわゆる画ズレが発生する。
このように、画像形成装置10では、二次転写電圧およびトナー定着温度が、印刷の質に影響を与える。そこで、本発明の一実施の形態に係る機械学習装置100では、様々な制御情報のうちの、二次転写電圧およびトナー定着温度を学習させることにより、学習済モデルを生成する。これにより、二次転写電圧およびトナー定着温度が調整されるので、印刷の質の向上が期待される。
また、画像形成装置10では、印刷速度もまた、印刷の質に影響を与える。例えば、厚さが薄い印刷媒体PMを用いて、遅い印刷速度で印刷を行うと、印刷媒体PMがカールして画像形成装置内に詰まるおそれがある。また、厚い印刷媒体PMを用いて、速い印刷速度で印刷を行うと、トナーが十分に融解できずに定着不良が生じるおそれがある。よって、例えば、薄い印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、印刷速度を速くし、厚い印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、印刷速度を遅くすることが望ましい。
画像形成装置10は、2つの印刷速度SPA,SPBで印刷可能に構成される。印刷速度SPAは速い速度であり、印刷速度SPBは遅い速度である。例えば、印刷速度SPAは、印刷速度SPBの2倍程度の速度に設定される。印刷速度は、単位時間当たりの印刷可能枚数で定義される。単位時間が1分である場合には、印刷速度の単位は、例えばPPM(Page Per Minute)である。例えば、印刷速度SPAを40PPMにすることができ、印刷速度SPBを16PPMにすることができる。画像形成装置10は、例えば、薄い印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、印刷速度SPAで印刷を行い、厚い印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、印刷速度SPBで印刷を行う。また、画像形成装置10は、厚さが中程度の印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、例えば、印刷速度SPAおよび印刷速度SPBのうち、印刷の質を高くすることができる印刷速度で印刷を行う。なお、この例では、2つの印刷速度SPA,SPBを設けたが、これに限定されるものではなく、3つ以上の印刷速度を設けてもよい。
本発明の一実施の形態に係る機械学習装置100では、2つの印刷速度SPA,SPBのそれぞれについて、学習済モデルを生成する。これにより、後述するように、学習処理に必要なデータ量を減らすことができるとともに、精度の高い制御情報を生成することが可能な学習済モデルを生成することができるので、印刷の質の向上が期待される。
このように、機械学習装置100では、2つの印刷速度SPA,SPBのそれぞれについて、二次転写電圧およびトナー定着温度を調整するための学習済モデルを生成し、この学習済モデルを用いて、二次転写電圧およびトナー定着温度を調整する。以下に、学習済モデルを生成するための具体的な構成および一連の機械学習方法について説示する。
<2.機械学習装置>
図4は、本発明の一実施の形態に係る機械学習装置100の概略ブロック図である。機械学習装置100は、状態変数取得部110と、教師データ取得部120と、学習済モデル生成部130と、記憶部140とを備えている。前述の構成要素から理解できるように、本実施の形態に係る機械学習装置100は、いわゆる教師あり学習により学習済モデルを生成する装置である。なお、図4においては、理解を容易にする目的で、機械学習装置100を画像形成装置10とは別体のコンピュータ(サーバ装置やPC(Personal Computer)等)に内蔵したものを例示しているが、機械学習装置100は画像形成装置10に内蔵されていても良い。
状態変数取得部110は、学習済モデルを生成するために必要なパラメータ情報を状態変数として取得するものである。機械学習を行うにあたり、状態変数は、生成される学習済モデルの精度を決定付ける最も重要な要素である。そして、状態変数として取得する情報の組み合わせが異なれば、生成される学習済モデルも当然異なることから、その組み合わせについても極めて重要な要素であることは本発明において特に留意すべき事項である。
本実施の形態において、状態変数取得部110は、実印刷物APにおける特徴量情報401、実印刷物APに用いられた印刷媒体PM(図1参照。)の媒体情報402、および実印刷物APを出力した際の画像形成装置10の制御情報(以下、「第1の制御情報403」という。)の3つの情報を含む状態変数のデータセット400を取得するものである。これらの情報を取得する方法については、機械学習装置100と画像形成装置10との接続状態等に合わせて任意に設定できる。例えば、これらの情報は、ローカルな通信手段やインターネットを介した通信手段等を用いることにより取得されてもよいし、任意の記憶媒体を介して取得されてもよい。そして、取得された特徴量情報401、媒体情報402、および第1の制御情報403は、1つのデータセット400として、後述する記憶部140に記憶される。具体的には、印刷速度SPAでの印刷結果を含むデータセット400が、印刷速度SPAに対応づけられたデータセット400Aとして記憶部140に記憶され、印刷速度SPBでの印刷結果を含むデータセット400が、印刷速度SPBに対応づけられたデータセット400Bとして記憶部140に記憶される。
実印刷物APにおける特徴量情報401は、実印刷物APに生じている印刷不良の情報を含むものである。印刷不良の情報とは、印刷不良の程度に関する情報である。ここで、実際に機械学習装置100に入力する特徴量情報401としては、例えば、実印刷物APを周知のスキャナを用いて読み込んだ画像データの情報であればよく、実印刷物AP内の印刷不良の具体的な種類や程度を事前に特定しておく等の必要はない。これは、機械学習装置の学習手法が、印刷不良の種類や程度に関わらず、状態変数に対する好適な出力結果としての制御情報を学習するものであり、印刷不良の種類や程度までは判別する必要がないためである。とはいえ、例えば上記画像データの情報を、機械学習装置の入力層に入力するのに好適な情報(例えば、印刷不良の種類や程度などの情報)に事前に調整する前処理プロセスを採用することももちろん可能である。具体的な前処理プロセスについては、画像認識の技術分野において通常用いられる手法が採用できることは当業者であれば容易に理解できるため、ここではその説明を省略する。
印刷媒体PMの媒体情報402は、印刷媒体PMについての種々の情報であり、好適には印刷媒体PMのコーティングの有無、素材、厚さ、重量、および密度に関する情報である。上記5種類の情報は、印刷の質に特に影響のあるパラメータとして本発明者等が特定したものであり、これら5種類の情報に基づいて機械学習を行うことで、効率的に高精度の学習済モデルを生成できるものである。なお、素材に関する情報は、印刷媒体PMに用いられている主要な素材を特定すれば足り、付加的に含まれる素材についての情報までをも要するものでは必ずしもない。また、重量に関する情報は、印刷媒体の重さに関連する特性を示すものであれば種々のものを利用可能であり、具体的には、例えば坪量や連量といった、画像形成装置の技術分野において一般に用いられるものを利用することができる。
第1の制御情報403は、画像形成装置10が実印刷物APを出力した際に実際に画像形成装置10に設定されていた制御情報であり、好適には、画像形成装置10における定着ローラ51のトナー定着温度、および二次転写ローラ44に印加される二次転写電圧についての制御情報を含む。なお、上記画像形成装置10においては、印刷媒体PMに対し、中間転写ベルト41からトナー像が転写される形式のため、二次転写電圧を第1の制御情報403として採用しているが、中間転写ベルトを有しない、感光体ドラムから印刷媒体に直接転写するタンデム式の画像形成装置にあっては、トナー色の異なる複数の画像形成ユニットそれぞれが備える感光体ドラムから印刷媒体PMにトナー像を転写する際の転写電圧を第1の制御情報403として採用することができる。
教師データ取得部120は、実印刷物APにおいて印刷不良が十分に少なくなるように改善された制御情報(以下、第2の制御情報411という。)、および印刷不良の程度を示す値(以下、印刷不良値412という)を含む教師データ410を取得するものである。
第2の制御情報411は、実印刷物APにおいて、特徴量情報401が所定の閾値TH以下となるような制御情報である。第2の制御情報411は、画像形成装置10における定着ローラ51のトナー定着温度、および二次転写ローラ44に印加される二次転写電圧についての制御情報を含む。この第2の制御情報411は、例えば技術者ENが実印刷物APの出力結果およびその際の制御情報等に基づいて導き出した制御情報である。したがって、上記「所定の閾値TH」とは、特定の値を指すものである必要は必ずしもなく、技術者EN等から見て適切な出力結果が得られるような制御情報であれば、当該制御情報は「特徴量情報401が所定の閾値TH以下」であるといえる。
印刷不良値412は、画像形成装置10が第2の制御情報411を用いて印刷を行った場合における印刷不良の程度を示す値である。印刷不良値412は、この例では、値が小さいほど印刷不良が少ないことを示し、値が大きいほど印刷不良が多いことを示す。この印刷不良値412は、技術者ENが目視で確認した実印刷物APの印刷不良の程度を数値化したものであってもよいし、実印刷物APのスキャン画像に基づいて周知の方法で計算された値であってもよい。例えば、特徴量情報401が所定の閾値TH以下であることは、印刷不良値412が所定の閾値TH2以下であることに対応し得る。例えば、所定の閾値TH2が“2”である場合には、印刷不良値412が“2”以下であれば、印刷不良が十分に少ないといえる。例えば、印刷不良値412が“1”である場合、および印刷不良値412が“2”である場合の両方において、印刷不良が十分に少ないが、印刷不良値412が“1”である場合の方が、印刷の質が高い。第2の制御情報411は、この印刷不良値412ができるだけ小さくなるような制御情報であることが望ましい。
この第2の制御情報411および印刷不良値412は、技術者ENによって教師データ取得部120に直接入力されることにより取得してもよいし、種々の通信手段を用いることにより取得してもよいし、任意の記憶媒体を介して取得してもよい。そして、取得した第2の制御情報411および印刷不良値412は、1つの教師データ410として、対応するデータセット400に関連付けられて記憶部140に記憶される。具体的には、印刷速度SPAに対応する教師データ410が、印刷速度SPAに対応づけられた教師データ410Aとして、データセット400Aに関連付けられて記憶部140に記憶され、印刷速度SPBに対応する教師データ410が、印刷速度SPBに対応づけられた教師データ410Bとして、データセット400Bに関連付けられて記憶部140に記憶される。
学習済モデル生成部130は、状態変数取得部110が取得したデータセット400と、教師データ取得部120が取得した教師データ410とに基づいて、機械学習を実行することにより、学習済モデル421を生成するものである。具体的には、学習済モデル生成部130は、データセット400Aおよび教師データ410Aに基づいて、機械学習を実行することにより学習済モデル421Aを生成するとともに、データセット400Bおよび教師データ410Bに基づいて、機械学習を実行することにより、学習済モデル421Bを生成する。
機械学習装置100は、このように、2つの印刷速度SPA,SPBに対応する2つの学習済モデル421A,421Bを生成する。これにより、機械学習装置100では、以下に説明するように、学習処理に必要なデータ量を減らすことができるとともに、精度の高い制御情報を生成することが可能な学習済モデル421A,421Bを生成することができる。
図5は、2つの印刷速度SPA,SPBに共通の1つの学習済モデル421を生成する場合、および2つの印刷速度SPA,SPBにそれぞれ対応する2つの学習済モデル421A,421Bを生成する場合において、学習処理に必要なデータを表すものである。画像形成装置10は、例えば、厚さが薄い印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、印刷速度SPAで印刷を行い、厚い印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、印刷速度SPBで印刷を行う。また、画像形成装置10は、厚さが中程度の印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、例えば、印刷速度SPAおよび印刷速度SPBのうち、印刷の質を高くすることができる印刷速度で印刷を行う。
例えば、2つの印刷速度SPA,SPBに共通の1つの学習済モデル421を生成する場合には、2つの印刷速度SPA,SPBの両方について、その1つの学習済モデル421を使用できるようにする必要がある。よって、この場合には、薄い印刷媒体PM、厚い印刷媒体PM、および中程度の印刷媒体PMのすべてについて、2つの印刷速度SPA,SPBでのデータセット400および教師データ410が、学習処理において必要になる。また、これらのすべてのデータを用いて1つの学習済モデル421を生成すると、様々な条件でその学習済モデル421を使用することができるが、各条件において、印刷の質を十分に高めることができないおそれがある。
一方、2つの印刷速度SPA,SPBにそれぞれ対応する2つの学習済モデル421A,421Bを生成する場合には、学習処理に必要なデータ量をより少なくすることができる。すなわち、図5に示したように、学習済モデル421Aを生成する場合には、薄い印刷媒体PMおよび中程度の印刷媒体PMについて、印刷速度SPAでのデータセット400および教師データ410が学習処理において必要になる。また、学習済モデル421Bを生成する場合には、厚い印刷媒体PMおよび中程度の印刷媒体PMについて、印刷速度SPBでのデータセット400および教師データ410が学習処理において必要になる。よって、学習処理に必要なデータ量をより少なくすることができる。また、この場合には、学習済モデル421Aは印刷速度SPAに適したモデルであり、学習済モデル421Bは印刷速度SPBに適したモデルであるので、各条件において、印刷の質を十分に高めることができる。
この例では、後述するように、データ処理システムは、厚さが中程度の印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、例えば、印刷速度SPAおよび印刷速度SPBのうち、印刷の質を高くすることができる印刷速度で印刷を行う。具体的には、後述するように、データ処理システムは、学習済モデル421Aを用いて算出された印刷不良値と、学習済モデル421Bを用いて算出された印刷不良値とを比較し、学習済モデル421A,421Bのうちの印刷不良値が低い学習済モデル421に対応する印刷速度を選択する。これにより、データ処理システムでは、印刷の質を高めることができる。すなわち、例えば、中程度の印刷媒体PMを定義しない場合には、印刷媒体PMの厚さに応じて、印刷速度が印刷速度SPAまたは印刷速度SPBに一意的に決まるので、印刷の質が低下するおそれがある。本実施の形態では、2つの印刷速度SPA,SPBの両方で印刷可能な、中程度の印刷媒体PMを定義したので、このような印刷媒体PMを用いて印刷を行う場合には、2つの印刷速度SPA,SPBの両方で印刷の質が検討されるので、印刷の質を高めることができる。
この中程度の印刷媒体PMにおける厚さの定義範囲は、印刷実験を行うことにより経験的に設定される。また、印刷媒体PMにおけるコーティングの有無などに応じて、この定義範囲が変化するようにしてもよい。
次に、学習済モデル生成部130における機械学習の具体的な方法について、以下に詳述する。本発明に係る機械学習装置100は、その学習手法としてニューラルネットワークモデル900を用いた教師あり学習を採用している。
図6は、本発明の一実施の形態に係る機械学習装置において実施される教師あり学習のためのニューラルネットワークモデル900の例を示す図である。図6に示すニューラルネットワークモデル900におけるニューラルネットワークは、入力層にあるk個のニューロン(x1~xk)、第1中間層にあるm個のニューロン(y11~y1m)、第2中間層にあるn個のニューロン(y21~y2n)、および出力層にある3個のニューロン(z1~z3)から構成される。第1中間層および第2中間層は、隠れ層とも呼ばれる。ニューラルネットワークは、第1中間層および第2中間層の他に、さらに複数の隠れ層を有してもよく、あるいは第1中間層のみを隠れ層としてもよい。
また、入力層と第1中間層との間、第1中間層と第2中間層との間、第2中間層と出力層との間には、層間のニューロンを接続するノードが張られており、それぞれのノードには、重みwi(iは自然数)が対応づけられている。
以下に、印刷速度SPAに対応するデータセット400Aおよび教師データ410Aに基づいて、機械学習を実行することにより学習済モデル421Aを生成する処理を例に挙げて説明する。
本実施の形態に係るニューラルネットワークモデル900におけるニューラルネットワークでは、学習済モデル生成部130は、データセット400Aを用いて、画像形成装置10の制御情報と画像形成装置10が出力した印刷物との相関関係を学習する。具体的には、学習済モデル生成部130は、データセット400Aを入力層の複数のニューロンに対応づけることにより、出力層の各ニューロンの値を算出する。まず、学習済モデル生成部130は、入力層のk個のニューロンの値に基づいて、第1中間層のm個のニューロンの値を算出する。具体的には、学習済モデル生成部130は、第1中間層の各ニューロンの値を、当該ニューロンに接続された、入力層のk個のニューロンの値に基づいて、各ノードに対応づけられた重みWiを用いて重みづけ加算を行うことにより算出する。同様に、学習済モデル生成部130は、第1中間層のm個のニューロンの値に基づいて、第2中間層のn個のニューロンの値を算出し、第2中間層のn個のニューロンの値に基づいて、出力層の3つのニューロンの値を算出する。このようにして、学習済モデル生成部130は、データセット400Aを入力層の複数のニューロンに対応づけることにより、出力層における各ニューロンの値を算出することができる。なお、データセット400Aを入力層のk個のニューロンに対応付けるに際し、データセット400Aに含まれる情報をどのような形式で対応付けるかは、生成される学習済モデルの精度等を考慮して適宜設定することができる。例えば、特徴量情報401が実印刷物APの画像データを含む場合には、その画像データを所定の領域に分割した上で、分割された各領域の色値(例えばRGB値)情報を入力層の複数のニューロンにそれぞれ対応付けることができる。
そして、学習済モデル生成部130は、算出された出力層の3つのニューロンz1~z3の値と、教師データ410Aに含まれる3つのデータt1~t3の値とを、それぞれ比較して誤差を求める。ここで、ニューロンz1~z3の値は、本実施の形態においてはトナー定着温度、二次転写電圧、および印刷不良値である。また、データt1~t3の値は、データセット400Aに関連付けられた教師データ410Aにおける、トナー定着温度、二次転写電圧、および印刷不良値412Aである。そして、学習済モデル生成部130は、求められた誤差が小さくなるように、各ノードに対応づけられた重みwiを調整する(バックプロバケーション)ことを反復する。
そして、上述した一連の工程を所定回数反復して実施し、あるいは上述した誤差が許容値より小さくなること等の所定の条件が満たされるまで反復して実施した場合には、学習済モデル生成部130は、学習を終了して、そのニューラルネットワークモデル900を学習済モデル421Aとして記憶部140に記憶する。このようにして、学習済モデル生成部130は、ニューラルネットワークモデル900のノードのそれぞれに対応づけられた全ての重みwiについての情報を含む学習済モデル421Aを生成する。
以上、印刷速度SPAに対応するデータセット400Aおよび教師データ410Aに基づいて、機械学習を実行することにより学習済モデル421Aを生成する処理について説明したが、印刷速度SPBに対応するデータセット400Bおよび教師データ410Bに基づいて、機械学習を実行することにより学習済モデル421Bを生成する処理についても同様である。
記憶部140は、状態変数取得部110が取得したデータセット400A,400B、教師データ取得部120が取得した教師データ410A,410B、および学習済モデル生成部130が生成した学習済モデル421A,421Bを記憶するものである。
図7は、記憶部140に記憶されたデータの一例を表すものである。記憶部140には、データセット400A,400B、教師データ410A,410B、および学習済モデル421A,421Bが記憶される。
データセット400Aは、特徴量情報401A、媒体情報402、および第1の制御情報403Aを含む。データセット400Bは、特徴量情報401B、媒体情報402、および第1の制御情報403Bを含む。特徴量情報401Aは、画像形成装置10が、印刷速度SPAで、第1の制御情報403Aを用いて印刷を行った場合における、実印刷物APに生じている印刷不良の情報を含み、第1の制御情報403Aは、その印刷において画像形成装置10に設定されていた制御情報である。特徴量情報401Bは、画像形成装置10が、印刷速度SPBで、第1の制御情報403Bを用いて印刷を行った場合における、実印刷物APに生じている印刷不良の情報を含み、第1の制御情報403Bは、その印刷において画像形成装置10に設定されていた制御情報である。
教師データ410Aは、第2の制御情報411Aおよび印刷不良値412Aを含む。教師データ410Bは、第2の制御情報411Bおよび印刷不良値412Bを含む。第2の制御情報411Aは、画像形成装置10が印刷速度SPAで印刷を行った場合の、特徴量情報401Aが所定の閾値TH以下となるような画像形成装置10の制御情報であり、印刷不良値412Aは、画像形成装置10が印刷速度SPAで、第2の制御情報411Aを用いて印刷を行った場合における、印刷不良の程度を示す値である。第2の制御情報411Bは、画像形成装置10が印刷速度SPBで印刷を行った場合の、特徴量情報401Aが所定の閾値TH以下となるような画像形成装置10の制御情報であり、印刷不良値412Aは、画像形成装置10が印刷速度SPBで、第2の制御情報411Bを用いて印刷を行った場合における、印刷不良の程度を示す値である。
学習済モデル421Aは、学習済モデル生成部130が、データセット400Aおよび教師データ410Aに基づいて機械学習を実行することにより生成した学習済モデル421であり、学習済モデル421Bは、学習済モデル生成部130が、データセット400Bおよび教師データ410Bに基づいて機械学習を実行することにより生成した学習済モデル421である。
記憶部140に記憶された学習済モデル421A,421Bは、要求に応じて、インターネット等の通信手段や記憶媒体を介して実システムへ適用される。実システム(データ処理システム)に対する学習済モデルの具体的な適用態様については、後に詳述する。
ここで、状態変数取得部110は、本開示における「状態変数取得部」の一具体例に対応する。教師データ取得部120は、本開示における「教師データ取得部」の一具体例に対応する。学習済モデル生成部130は、本開示における「学習済モデル生成部」の一具体例に対応する。印刷速度SPAは、本開示における「第1の印刷速度」の一具体例に対応する。印刷速度SPBは、本開示における「第2の印刷速度」の一具体例に対応する。データセット400Aは、本開示における「第1の状態変数データセット」の一具体例に対応する。データセット400Bは、本開示における「第2の状態変数データセット」の一具体例に対応する。特徴量情報401は、本開示における「特徴量情報」の一具体例に対応する。媒体情報402は、本開示における「媒体情報」の一具体例に対応する。第1の制御情報403は、本開示における「第1の制御情報」の一具体例に対応する。教師データ410Aは、本開示における「第1の教師データ」の一具体例に対応する。教師データ410Bは、本開示における「第2の教師データ」の一具体例に対応する。第2の制御情報411は、本開示における「第2の制御情報」の一具体例に対応する。印刷不良値412は、本開示における「印刷不良値」の一具体例に対応する。学習済モデル421Aは、本開示における「第1の学習済モデル」の一具体例に対応する。学習済モデル421Bは、本開示における「第2の学習済モデル」の一具体例に対応する。
<3.機械学習方法>
上述の機械学習装置に関連して、本発明は、機械学習方法をも提供する。図8は、本発明の一実施の形態に係る機械学習方法を示すフローチャートである。この機械学習方法はコンピュータを用いることで実現されるものであるが、コンピュータとしては種々のものが適用可能であり、例えば画像形成装置10内の制御部70を構成するものや、画像形成装置10にローカルに接続されたPC、あるいはネットワーク上に配されたサーバ装置等を挙げることができる。
本発明に係る機械学習方法としての教師あり学習を実行する場合には、機械学習装置100は、先ず、生成する学習済モデル421に対応する印刷速度を選択し、初期値の重みを備えた学習前モデル(ニューラルネットワークモデル900)を準備する(ステップS11)。例えば、印刷速度SPAが選択された場合には、以下に示すようにこの学習前モデルを用いて学習処理を行うことにより学習済モデル421Aが生成され、印刷速度SPBが選択された場合には、以下に示すようにこの学習前モデルを用いて学習処理を行うことにより学習済モデル421Bが生成される。
次に、状態変数取得部110は、特徴量情報401、媒体情報402、および第1の制御情報403を含む状態変数のデータセット400を取得する(ステップS12)。具体的には、ステップS11で印刷速度SPAが選択された場合には、状態変数取得部110は、印刷速度SPAに対応するデータセット400Aを取得し、ステップS11で印刷速度SPBが選択された場合には、状態変数取得部110は、印刷速度SPBに対応するデータセット400Bを取得する。記憶部140は、状態変数取得部110が取得したデータセット400を記憶する。
次に、教師データ取得部120は、ステップS12において取得したデータセット400に対応する、第2の制御情報411および印刷不良値412を含む教師データ410を取得する(ステップS13)。具体的には、ステップS12でデータセット400Aが取得された場合には、教師データ取得部120は、このデータセット400Aに対応する教師データ410Aを取得し、ステップS12でデータセット400Bが取得された場合には、教師データ取得部120は、このデータセット400Bに対応する教師データ410Bを取得する。記憶部140は、教師データ取得部120が取得した教師データ410を記憶する。
次に、学習済モデル生成部130は、ステップS12で取得したデータセット400に含まれる特徴量情報401、媒体情報402、および第1の制御情報403を、学習前モデルの入力層に入力する(ステップS14)。これにより、学習前モデルの出力層から、トナー定着温度、二次転写電圧、および印刷不良値が出力される。
出力層から出力された制御情報(トナー定着温度および二次転写電圧)は、学習前モデルによって生成されたものであるため、通常はユーザの要求を満たすような印刷結果が得られる制御情報ではない。そこで、学習済モデル生成部130は、次に、ステップS14において学習前モデルの出力層から出力された制御情報および印刷不良値と、ステップS13において取得された教師データ410に含まれる第2の制御情報411および印刷不良値412とを用いて、機械学習を実施する(ステップS15)。ここで行う機械学習とは、出力層から出力された制御情報および印刷不良値と、教師データ410に含まれる第2の制御情報411および印刷不良値412とをそれぞれ比較し、両者の誤差を検出し、この誤差が小さくなるようなデータが出力層から出力されるよう、学習前モデルの各ノードに対応付けられた重みWiを調整することである。
ステップS15において機械学習が実施されると、学習済モデル生成部130は、さらに機械学習を実施する必要があるか否かを判断し(ステップS16)、機械学習を継続する場合(ステップS16において“No”)にはステップS12に戻り、機械学習を終了する場合(ステップS16において“Yes”)には、ステップS17に進む。上記機械学習を継続する場合には、学習済モデル生成部130は、ステップS12~S15の工程を複数回実施することとなり、通常は、その回数に比例して、最終的に生成される学習済モデル421の精度は高くなる。
機械学習を終了する場合には、学習済モデル生成部130は、各ノードに対応付けられた重みWiが一連の工程によって調整され生成されたニューラルネットワークモデル900を学習済モデル421として記憶部140に記憶する(ステップS17)。具体的には、印刷速度SPAで印刷を行うための学習済モデル421を生成した場合には、この学習済モデル421を学習済モデル421Aとして記憶部140に記憶し、印刷速度SPBで印刷を行うための学習済モデル421を生成した場合には、この学習済モデル421を学習済モデル421Bとして記憶部140に記憶する。これにより、一連の学習プロセスが終了する。ここで記憶された学習済モデル421は、種々のデータ処理システムに適用され使用されるものであるが、その詳細は後述する。
上述した機械学習装置の学習プロセスおよび機械学習方法においては、1つの学習済モデル421を生成するために、1つのニューラルネットワーク(学習前モデル)に対して複数回の機械学習処理を繰り返し実行することでその精度を向上させる例を説示しているが、本発明はこの取得方法に限定されない。例えば、所定回数の機械学習を実施した学習済モデルを一候補として複数を記憶部140に格納しておき、この複数の学習済モデル群に妥当性判断用のデータセットを入力し、出力層から出力された制御情報の精度を比較検討して、データ処理システムに適用する、より好ましい学習済モデルを1つ選定するようにしてもよい。妥当性判断用のデータセットは、学習に用いた学習用のデータセット400と同じ状態変数を有し、異なるデータからなるものであればよい。複数の学習済モデルから出力された制御情報の精度を比較する場合、通常は、実際に印刷を行い、印刷の質を確認する必要がある。一方、本実施の形態では、複数の学習済モデルから出力された印刷不良値を比較することにより、実際に印刷を行うことなく、より好ましい学習済モデルを選定することができる。
実験例として、ステップS12~S16に示す一連の学習プロセスを、取得する状態変数を変更しつつ15000回繰り返し実施した後に得られた学習済モデルを準備し、この学習済モデルの入力層に1500通りの状態変数を入力して得られた出力層の制御情報と、当該1500通りの各状態変数に基づいて技術者によってそれぞれ特定された制御情報とを比較し、その誤差の程度について妥当性判断を実施した。その結果、学習済モデルが出力した出力層の制御情報と技術者が特定した制御情報とが実質的に同一であった割合は約90%であった。このことから、本実施の形態において選定した3つの状態変数が、印刷結果に影響を与える最も重要な情報であることが裏付けられた。
以上説明した通り、本発明の一実施の形態に係る機械学習装置および機械学習方法によれば、特に、インダストリープリントのような、種々の印刷媒体への印刷の際に生じる印刷不良を高精度で改善可能な学習済モデルを生成することができる。したがって、この学習済モデルを実システムに適用することで、高精度に印刷不良を改善し、所望の印刷結果を得ることができるようになる。また、この学習済モデルを利用することで印刷情報の自動調整を実現できるため、印刷不良が生じる毎に人手を要することがなくなり、低コストのデータ処理システムを実現することができる。加えて、このコスト低下により、ユーザは、インダストリープリントに際し、複数の特殊な印刷媒体をコストを意識することなく気軽に試すことができるようになるため、ユーザの印刷媒体を選択する際の自由度が向上する。さらに、この機械学習装置および機械学習方法の入力層に入力される状態変数を上述した3つの情報に特定することで、種々の特殊な印刷媒体への印刷出力に適用可能な高精度の学習済モデルを高効率に生成することが可能となる。
以上のように、機械学習装置100では、印刷速度SPAでの印刷結果を含む状態変数のデータセット400A、および印刷速度SPBでの印刷結果を含む状態変数のデータセット400Bを取得する状態変数取得部110と、印刷速度SPAに対応する教師データ410A、および印刷速度SPBに対応する教師データ410Bを取得する教師データ取得部120と、データセット400Aおよび教師データ410Aに基づいて機械学習を行うことにより学習済モデル421Aを生成するとともに、データセット400Bおよび教師データ410Bに基づいて機械学習を行うことにより学習済モデル421Bを生成する学習済モデル生成部130とを設けるようにした。データセット400A,400Bのそれぞれは、実際に印刷がなされた実印刷物APにおける特徴量情報401と、実印刷物APに用いられた印刷媒体PMの媒体情報402と、実印刷物APを出力した際の画像形成装置10の制御情報である第1の制御情報403とを含むようにした。また、教師データ410A,410Bのそれぞれは、印刷速度SPAおよび印刷速度SPBのうちの対応する印刷速度で印刷がなされた場合の特徴量情報401が所定の閾値TH以下になるような制御情報である第2の制御情報411と、対応する印刷速度で第2の制御情報411を用いて印刷を行った場合における印刷不良値412とを含むようにした。機械学習装置100では、印刷速度SPA,SPBのそれぞれについて、特徴量情報401、媒体情報402、および第1の制御情報403の3つの情報を状態変数として採用して機械学習を行うため、精度の高い学習済モデル421A,421Bを得ることができる。
また、機械学習装置100では、特徴量情報401は、実印刷物APにおける印刷不良の情報を含むようにした。これにより、機械学習において実印刷物APに生じた印刷不良が解消できるような学習済モデル421を生成することができるので、ユーザの望むデータ処理が可能な学習済モデル421を生成することができる。
また、機械学習装置100では、媒体情報402は、印刷媒体PMのコーティングの有無、素材、厚さ、重量、および密度に関する情報を含むようにした。これにより、機械学習に際し、印刷媒体PMの厚さに加えて、印刷媒体PMについての様々な情報をも考慮するため、その印刷媒体PMに応じた適切な学習済モデル421を生成することができる。
また、機械学習装置100では、第1の制御情報403は、例えば図1に示した電子写真式の画像形成装置10におけるトナー定着温度および転写電圧(この例では二次転写電圧)の情報を含むようにした。これにより、第1の制御情報403は、印刷の質に最も影響のある2つの情報を含むので、生成される学習済モデル421はユーザの望むデータ処理が可能になる。
また、機械学習装置100では、第2の制御情報411は、例えば図1に示した電子写真式の画像形成装置10におけるトナー定着温度および転写電圧(この例では二次転写電圧)の情報を含むようにした。これにより、第2の制御情報411が、電子写真式の画像形成装置であれば一般に用いられている制御情報であるトナー定着温度および転写電圧で構成されることから、学習済モデル421は、種々のタイプの電子写真式の画像形成装置に適用可能となる。
<4.機械学習装置および機械学習方法の変形例>
上記の一実施の形態においては、特徴量情報401、媒体情報402、および第1の制御情報403の3つの情報を状態変数として取得する、機械学習装置および機械学習方法について説示したが、本発明者等によるさらなる検討の結果、上記3つの状態変数に加えて、画像形成装置10の周囲の環境情報を状態変数として追加で取得することによっても、高精度な学習済モデルを生成することができることが確認された。よって、以下に変形例として、上記4つの情報を状態変数として採用した場合の機械学習方法について説示する。なお、以下に示す変形例に係る機械学習装置の構成に関しては、状態変数取得部110で取得する情報が異なる点以外は上記一実施の形態において述べたものと同様であるので、具体的な説明は省略する。
本変形例に係る状態変数取得部110は、特徴量情報401、媒体情報402、第1の制御情報403、および画像形成装置10の周囲の環境情報404の4つの情報を含む状態変数のデータセット400を取得するものである。
環境情報404は、画像形成装置10が設置された位置の周囲の温度および湿度を含む情報である。温度および湿度の具体的な測定方法としては、画像形成装置10内に温度および湿度を測定するためのセンサを設置することにより、あるいは画像形成装置10とは別途設けられた温度湿度センサの出力を取得することにより測定することができる。さらに、この測定動作に代えて、ユーザによる直接あるいは通信手段を介しての入力動作により画像形成装置10の周囲の温度および湿度を取得するようにしてもよい。ここで、環境情報404は、本開示における「環境情報」の一具体例に対応する。
そして、取得された特徴量情報401、媒体情報402、第1の制御情報403、および環境情報404は、1つのデータセット400として、記憶部140に記憶される。具体的には、印刷速度SPAでの印刷結果を含むデータセット400が、印刷速度SPAに対応づけられたデータセット400Aとして記憶部140に記憶され、印刷速度SPBでの印刷結果を含むデータセット400が、印刷速度SPBに対応づけられたデータセット400Bとして記憶部140に記憶される。
図9は、本変形例に係る記憶部140に記憶されたデータの一例を表すものである。データセット400Aは、特徴量情報401A、媒体情報402、第1の制御情報403A、および環境情報404を含み、データセット400Bは、特徴量情報401B、媒体情報402、第1の制御情報403B、および環境情報404を含む。
図10は、変形例に係る機械学習方法を示すフローチャートである。図10に示したとおり、本実施の形態における一連の工程は、ステップS22を除き、上記一実施の形態に係る機械学習方法の工程と概ね同一である。
本実施の形態に係る機械学習方法は、学習済モデル生成部130が、印刷速度を選択し、学習前モデルを準備した後、状態変数取得部110が、特徴量情報401、媒体情報402、第1の制御情報403、および環境情報404を含む状態変数のデータセット400を取得する(ステップS22)。ステップS22においてデータセット400が取得されると、教師データ取得部120は、このデータセット400に対応する教師データ410を取得する(ステップS13)。そして、学習済モデル生成部130は、ステップS22で取得したデータセット400に含まれる特徴量情報401、媒体情報402、および第1の制御情報403を、学習前モデルの入力層に入力する(ステップS14)。そして、学習済モデル生成部130は、ステップS14において学習前モデルの出力層から出力された制御情報および印刷不良値と、ステップS13において取得された教師データ410に含まれる第2の制御情報411および印刷不良値412を用いて、機械学習を実施し(ステップS15)、これら一連の学習プロセスを複数回実行することで学習済モデル421を生成する。このようにして、ステップS11において選択された印刷速度に応じた学習済モデル421が生成される。
以上の機械学習方法によれば、環境情報404も用いて機械学習を行うようにしたので、画像形成装置10の置かれている環境(例えば、寒冷地に置かれているのか、乾燥した部屋内におかれているのか等)までをも考慮した機械学習を実現できる。よって、生成された学習済モデル421は、さらに高精度な制御情報の調整の実現が期待できる。
機械学習装置100の適用形態として、画像形成装置10や通常のPCに内蔵されていても良いことは既に述べたとおりであるが、機械学習に際し、特に入力パラメータが多数存在する場合には、その演算量は極めて多くなるため、通常の画像形成装置10に搭載されたCPUのみでは学習済モデルを生成するまでに長時間を要する可能性がある。したがって、機械学習装置100を画像形成装置10や通常のPCに内蔵する場合には、GPU(Graphics Processing Unit)等の高性能演算装置を追加する、あるいは機械学習時の演算をネットワークを介して接続された他のPCやサーバ装置の演算能力を活用する等、演算処理の時間を短縮するための処置を行うことが好ましい。
本発明の機械学習装置における状態変数の選定は、生成される学習済モデルに直接影響する重要な要素である旨は上述した通りであるが、これは、上述した実施の形態および変形例において採用した3つ、あるいは4つの組み合わせ以外の組み合わせを完全に排除することを意図しているわけではない。例えば、生成される学習済モデルへの影響が、上述の実施の形態および変形例において採用した3つあるいは4つのパラメータに比して十分に小さいパラメータが追加された機械学習装置等は、実質的に本発明の技術思想を逸脱するものではないから、本発明の技術的範囲に包含されるといえる。
以上のように、機械学習装置100では、状態変数のデータセット400A,400Bのそれぞれが、特徴量情報401、媒体情報402、第1の制御情報403に加えて、さらに環境情報404を含むようにしたこれにより、特徴量情報401、媒体情報402、第1の制御情報403に、更に環境情報404を加えた4つの情報を状態変数として採用して機械学習を行うため、さらに精度の高い学習済モデル421を得ることができる。
また、機械学習装置100では、環境情報404は、画像形成装置10の周囲の温度および湿度の情報を含むようにした。これにより、画像形成装置10における定着温度制御等に影響を与える画像形成装置10の周囲の温度や、印刷媒体PMの状態等に影響を与える画像形成装置10の周囲の湿度が学習済モデル421に反映されるので、印刷時の状況に則した精度の高い学習済モデル421を得ることができる。
<5.データ処理システムおよびデータ処理方法>
次に、上述した機械学習装置および機械学習方法によって生成された学習済モデルの適用例を説示する。図11は、本発明の一実施の形態に係るデータ処理システムの概略ブロック図である。本実施の形態においては、データ処理システムとして、画像形成装置200に、上記変形例に係る機械学習方法を経て生成された学習済モデルを適用した場合を例にとり、以下に説示する。
本実施の形態に係る画像形成装置200は、図1において説明したものと同様であり、機械的構造については図1に示すものと概ね同一である。したがって、以下の説明においては、画像形成装置200の特に機械的構造に関しては、画像形成装置10と同様であるものとして画像形成装置10において使用した参照符号を必要に応じて援用する。画像形成装置200は、図11に示すように、表示操作部210と、出力制御部220と、実印刷物情報取得部230と、温度湿度センサ240と、速度情報取得部270と、記憶部250と、データ処理部260とを備える。
表示操作部210は、画像形成装置200の所定位置に設けられた液晶パネル等からなる表示手段および操作ボタンあるいはタッチパネル等からなる操作手段を備え、画像形成装置200を利用するユーザに対して所定の通知を行ったり入力動作を可能としたりするものである。
出力制御部220は、画像形成装置200による印刷出力を実現するための種々の構成を制御するものであり、CPUと、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等のメモリとを少なくとも備えたものが例示される。出力制御部220は、例えば、画像形成装置200における各種ローラの回転速度を制御することにより、画像形成装置200における印刷速度を制御する。また、出力制御部220は、例えば、二次転写ローラ44に印加される二次転写電圧を制御する。また、出力制御部220は、例えば、定着ローラ51内部のヒータに供給する電流の電流値を制御することにより、トナー定着温度を制御する。
実印刷物情報取得部230は、印刷不良を含む実印刷物APに関連する情報を取得するものであり、特徴量情報取得部231と、媒体情報取得部232と、制御情報取得部233と、環境情報取得部234とを有する。この実印刷物情報取得部230によって取得された各種情報は、1つのデータセット500として互いに関連付けられ、後述するデータセット記憶部252に記憶される。
特徴量情報取得部231は、特徴量情報501として実印刷物APの画像データを取得するものである。この特徴量情報取得部231は、図11に示すように、入出力インターフェース(図示省略)を介して画像形成装置200外部のスキャナSCにローカルに接続されており、この例では、このスキャナSCにより読み込まれた実印刷物APの画像データを、特徴量情報501として取得する。
媒体情報取得部232は、印刷媒体PMの媒体情報502、詳しくは印刷媒体PMのコーティングの有無、素材、厚さ、重量、および密度に関する情報を取得するものである。この媒体情報502は、例えば印刷媒体PMに予め付与された製品コードを表示操作部210を介してユーザが入力することにより取得できる。なお、密度に関する情報は、厚さと重量(坪量)の値が特定できれば計算により特定することが可能な情報であるので、このような入力操作を必ずしも要しない。
制御情報取得部233は、実印刷物APを出力した際の画像形成装置200の制御情報である第1の制御情報503、詳しくは二次転写ローラ44に印加される二次転写電圧と定着ローラ51のトナー定着温度とを取得するものである。第1の制御情報503は、出力制御部220のメモリあるいは出力制御部220の制御情報が記憶される記憶部250内に記憶されている情報であるので、内部バスを介して取得することができる。
環境情報取得部234は、画像形成装置200の周囲の環境情報504、詳しくは温度および湿度に関する情報を取得するものである。環境情報504は、例えば画像形成装置200に内蔵された温度湿度センサ240を用いることで取得することができる。
温度湿度センサ240は、画像形成装置200の周囲の温度及び湿度を測定するものである。
速度情報取得部270は、実印刷物APを出力した際の印刷速度についての情報である速度情報505を取得するものである。速度情報505は、印刷速度SPA,SPBのいずれかを示す情報である。速度情報505は、出力制御部220のメモリあるいは出力制御部220の制御情報が記憶される記憶部250内に記憶されている情報であるので、内部バスを介して取得することができる。
記憶部250は、画像形成装置200の各種情報を記憶するものであり、学習済モデル記憶部251と、データセット記憶部252と、制御情報記憶部253とを含んでいる。
学習済モデル記憶部251は、上述した変形例に係る機械学習方法によって生成された学習済モデル421A,421Bを記憶するものである。すなわち、学習済モデル421A,421Bのそれぞれは、特徴量情報401、媒体情報402、第1の制御情報403、および環境情報404を含むデータセット400に基づいて機械学習が実施されることにより生成されたものである。
データセット記憶部252は、実印刷物情報取得部230によって取得された、特徴量情報501、媒体情報502、第1の制御情報503、および環境情報504を含む実印刷物情報のデータセット500を記憶するものである。例えば、厚さが薄い印刷媒体PMに印刷を行う場合には、実印刷物情報取得部230により取得された印刷速度SPAでの印刷結果を含むデータセット500が、印刷速度SPAに対応づけられたデータセット500Aとして記憶される。厚さが厚い印刷媒体PMに印刷を行う場合には、実印刷物情報取得部230により取得された印刷速度SPBでの印刷結果を含むデータセット500が、印刷速度SPBに対応づけられたデータセット500Bとして記憶される。また、厚さが中程度の印刷媒体PMに印刷を行う場合には、実印刷物情報取得部230により取得された印刷速度SPAでの印刷結果を含むデータセット500が、印刷速度SPAに対応づけられたデータセット500Aとして記憶されるとともに、実印刷物情報取得部230により取得された印刷速度SPBでの印刷結果を含むデータセット500が、印刷速度SPBに対応づけられたデータセット500Bとして記憶される。
制御情報記憶部253は、データ処理部260により生成された第3の制御情報511(後述)を記憶するものである。
データ処理部260は、データセット記憶部252に記憶された特定の実印刷物APに関するデータセット500、および学習済モデル記憶部251に記憶された学習済モデル421に基づいて、所望の印刷物を得ることができるような画像形成装置200の制御情報(以下、「第3の制御情報511」という。)を生成するものである。第3の制御情報511は、二次転写電圧、トナー定着温度、および印刷速度についての制御情報を含む。第3の制御情報511は、実印刷物APにおいて生じている印刷不良を改善することが可能な制御情報である。すなわち、第3の制御情報511は、この実印刷物APにおいて用いられた印刷媒体PMを用い、且つこの第3の制御情報511を用いて画像形成装置200で印刷を行うことにより、所望の印刷物を得ることができるようにデータ処理部260によって調整がなされた制御情報である。
データ処理部260は、例えば、厚さが薄い印刷媒体PMに印刷を行う場合には、データセット記憶部252に記憶された、印刷速度SPAに対応づけられたデータセット500A、および学習済モデル記憶部251に記憶された、印刷速度SPAに対応づけられた学習済モデル421Aを用い、この学習済モデル421Aの入力層にデータセット500Aを入力することにより、二次転写電圧、トナー定着温度、および印刷不良値を算出する。そして、データ処理部260は、算出した二次転写電圧およびトナー定着温度についての制御情報と、印刷速度SPAについての速度制御情報とを含む第3の制御情報511を生成する。
また、データ処理部260は、例えば、厚さが厚い印刷媒体PMに印刷を行う場合には、データセット記憶部252に記憶された、印刷速度SPBに対応づけられたデータセット500B、および学習済モデル記憶部251に記憶された、印刷速度SPBに対応づけられた学習済モデル421Bを用い、この学習済モデル421Bの入力層にデータセット500Bを入力することにより、二次転写電圧、トナー定着温度、および印刷不良値を算出する。そして、データ処理部260は、算出した二次転写電圧およびトナー定着温度についての制御情報と、印刷速度SPBについての速度制御情報とを含む第3の制御情報511を生成する。
また、データ処理部260は、例えば、厚さが中程度の印刷媒体PMに印刷を行う場合には、データセット記憶部252に記憶されたデータセット500A,500B、および学習済モデル記憶部251に記憶された学習済モデル421A,421Bを用い、この学習済モデル421Aの入力層にデータセット500Aを入力することにより、二次転写電圧、トナー定着温度、および印刷不良値を算出するとともに、この学習済モデル421Bの入力層にデータセット500Bを入力することにより、二次転写電圧、トナー定着温度、および印刷不良値を算出する。そして、データ処理部260は、印刷速度SPAに対応する学習済モデル421Aを用いて算出した印刷不良値が、印刷速度SPBに対応する学習済モデル421Bを用いて算出した印刷不良値よりも小さい場合には、印刷速度SPAに対応する学習済モデル421Aを用いて算出した二次転写電圧およびトナー定着温度についての制御情報と、印刷速度SPAについての速度制御情報とを含む第3の制御情報511を生成する。また、データ処理部260は、印刷速度SPBに対応する学習済モデル421Bを用いて算出した印刷不良値が、印刷速度SPAに対応する学習済モデル421Aを用いて算出した印刷不良値よりも小さい場合には、印刷速度SPBに対応する学習済モデル421Bを用いて算出した二次転写電圧およびトナー定着温度についての制御情報と、印刷速度SPBについての速度制御情報とを含む第3の制御情報511を生成する。
図12Aは、厚さが薄い印刷媒体PMに印刷を行う場合における、記憶部250に記憶されたデータの一例を表すものである。学習済モデル記憶部321には、機械学習装置100により生成された学習済モデル421A,421Bが記憶され、データセット記憶部322には、印刷速度SPAに対応するデータセット500Aが記憶され、制御情報記憶部323には、第3の制御情報511が記憶される。厚い印刷媒体PMに印刷を行う場合には、データセット記憶部322には、印刷速度SPBに対応するデータセット500Bが記憶される。
図12Bは、厚さが中程度の印刷媒体PMに印刷を行う場合における、記憶部250に記憶されたデータの一例を表すものである。この場合には、データセット記憶部322には、印刷速度SPAに対応するデータセット500A、および印刷速度SPBに対応するデータセット500Bが記憶される。
データセット500Aは、特徴量情報501A、媒体情報502、第1の制御情報503A、および環境情報504を含む。データセット500Bは、特徴量情報501B、媒体情報502、第1の制御情報503B、および環境情報504を含む。特徴量情報501Aは、画像形成装置200が、印刷速度SPAで第1の制御情報503Aを用いて印刷を行った場合における、実印刷物APに生じている印刷不良の情報を含み、第1の制御情報503Aは、その印刷において画像形成装置200に設定されていた制御情報である。特徴量情報501Bは、画像形成装置200が、印刷速度SPBで第1の制御情報503Bを用いて印刷を行った場合における、実印刷物APに生じている印刷不良の情報を含み、第1の制御情報503Bは、その印刷において画像形成装置200に設定されていた制御情報である。第3の制御情報511は、データ処理部260が生成した制御情報である。
ここで、実印刷物情報取得部230は、本開示における「実印刷物情報取得部」の一具体例に対応する。データ処理部260は、本開示における「データ処理部」の一具体例に対応する。制御情報記憶部253は、本開示における「制御情報記憶部」の一具体例に対応する。データセット500Aは、本開示における「第1のデータセット」の一具体例に対応する。データセット500Bは、本開示における「第2のデータセット」の一具体例に対応する。特徴量情報501は、本開示における「特徴量情報」の一具体例に対応する。媒体情報502は、本開示における「媒体情報」の一具体例に対応する。第1の制御情報503は、本開示における「第1の制御情報」の一具体例に対応する。環境情報504は、本開示における「環境情報」の一具体例に対応する。第3の制御情報511は、本開示における「第3の制御情報」の一具体例に対応する。
上述のデータ処理システムに関連して、以下には、データ処理部260によって実行されるデータ処理方法について、図13を参照して説明を行う。図13は、本発明の一実施の形態に係るデータ処理システムのデータ処理部において実行されるデータ処理方法を示すフローチャートである。
図13に示すように、データ処理部260は、印刷不良が発生していない場合(ステップS31において“No”)には待機状態を維持し、印刷不良が発生した場合(ステップS31において“Yes”)には以降のデータ処理を実行する。印刷不良が発生したか否かは、ユーザによる申告に基づいて判断され、具体的には印刷不良を改善したい旨の申告が、例えば画像形成装置200の表示操作部210を介して、あるいは画像形成装置200を管理するカスタマーサービス等に対して行われることにより判断される。本実施の形態においては、印刷不良が画像形成装置200単体で解消できるよう各種構成を内蔵しているから、この画像形成装置200に、例えば印刷不良解消モードといった特定のモードを搭載しておくと利便性の面で好ましい。この場合には表示操作部210を介して当該モードをユーザが選択することで、以下に示す印刷不良を解消するための処理が実行される。
印刷不良が発生すると、画像形成装置200は、表示操作部210等の所定のユーザインターフェースを介して、印刷不良が生じた印刷媒体PMの媒体情報502の入力をユーザに対して要求する。具体的には、画像形成装置200は、例えば、表示操作部210に各種情報の取得方法を表示したり、あるいは図示しない音声出力手段を介してナビゲーション音声を出力したりすることでユーザに情報の入力作業を促す。この要求に応じてユーザにより入力された媒体情報502は、媒体情報取得部232により取得され、データセット記憶部252に記憶される。データ処理部260は、このデータセット記憶部252を参照することにより、媒体情報502を取得する(ステップS32)。
次に、データ処理部260は、媒体情報502に基づいて、印刷媒体PMの厚さが中程度かどうかを確認する(ステップS33)。データ処理部260は、例えば、媒体情報502に含まれる、厚さやコーティングの有無に関する情報などに基づいて、印刷媒体PMが、薄い印刷媒体PM、厚い印刷媒体PM、および中程度の印刷媒体PMのうちのいずれであるかを判断することができる。厚さが中程度の印刷媒体PMにおける厚さの定義範囲は、印刷実験を行うことにより経験的に設定される。
印刷媒体PMの厚さが中程度である場合(ステップS33において“Yes”)には、画像形成装置200は、印刷速度SPAに対応する特徴量情報501Aおよび印刷速度SPBに対応する特徴量情報501Bの入力をユーザに対して要求する。この要求に応じてユーザにより入力された、印刷速度SPAに対応する特徴量情報501Aは、ステップS32において取得された媒体情報502、制御情報取得部233により取得された、印刷速度SPAに対応する第1の制御情報503A、および環境情報取得部234により取得された環境情報504とともに、印刷速度SPAに対応づけられたデータセット500Aとしてデータセット記憶部252に記憶される。また、ユーザにより入力された、印刷速度SPBに対応する特徴量情報501Bは、ステップS32において取得された媒体情報502、制御情報取得部233により取得された印刷速度SPBに対応する第1の制御情報503B、および環境情報取得部234により取得された環境情報504とともに、印刷速度SPBに対応づけられたデータセット500Bとしてデータセット記憶部252に記憶される。データ処理部260は、このデータセット記憶部252を参照することにより、実印刷物情報のデータセット500A,500Bを取得する(ステップS32)。
次に、データ処理部260は、学習済モデル記憶部251を参照することにより、学習済モデル421A,421Bを取得する(ステップS33)。
次に、データ処理部260は、ステップS32において取得したデータセット500A,500B、およびステップS33において取得した学習済モデル421A,421Bに基づいて演算処理を行う(ステップS34)。具体的には、データ処理部260は、学習済モデル421Aの入力層にデータセット500Aを入力することにより、二次転写電圧、トナー定着温度、および印刷不良値を算出するとともに、学習済モデル421Bの入力層にデータセット500Bを入力することにより、二次転写電圧、トナー定着温度、および印刷不良値を算出する。
次に、データ処理部260は、第3の制御情報511を生成する(ステップS35)。具体的には、データ処理部260は、ステップS34において、印刷速度SPAに対応する学習済モデル421Aを用いて算出した印刷不良値が、印刷速度SPBに対応する学習済モデル421Bを用いて算出した印刷不良値よりも小さい場合には、印刷速度SPAに対応する学習済モデル421Aを用いて算出した二次転写電圧およびトナー定着温度についての制御情報と、印刷速度SPAについての速度制御情報とを含む第3の制御情報511を生成する。また、データ処理部260は、印刷速度SPBに対応する学習済モデル421Bを用いて算出した印刷不良値が、印刷速度SPAに対応する学習済モデル421Aを用いて算出した印刷不良値よりも小さい場合には、印刷速度SPBに対応する学習済モデル421Bを用いて算出した二次転写電圧およびトナー定着温度についての制御情報と、印刷速度SPBについての速度制御情報とを含む第3の制御情報511を生成する。
ステップS33において、印刷媒体PMの厚さが中程度ではない場合(ステップS33において“No”)には、画像形成装置200は、その印刷媒体PMに対応する印刷速度における特徴量情報501の入力をユーザに対して要求する。具体的には、例えば、薄い印刷媒体PMである場合には、画像形成装置200は、速度情報取得部270により取得された速度情報505に基づいて、印刷速度SPAに対応する特徴量情報501Aの入力をユーザに対して要求する。この要求に応じてユーザにより入力された、印刷速度SPAに対応する特徴量情報501Aは、ステップS32において取得された媒体情報502、制御情報取得部233により取得された、印刷速度SPAに対応する第1の制御情報503A、および環境情報取得部234により取得された環境情報504とともに、印刷速度SPAに対応づけられたデータセット500Aとしてデータセット記憶部252に記憶される。また、例えば、厚い印刷媒体PMである場合には、画像形成装置200は、速度情報取得部270により取得された速度情報505に基づいて、印刷速度SPBに対応する特徴量情報501Bの入力をユーザに対して要求する。この要求に応じてユーザにより入力された、印刷速度SPBに対応する特徴量情報501Bは、ステップS32において取得された媒体情報502、制御情報取得部233により取得された、印刷速度SPBに対応する第1の制御情報503B、および環境情報取得部234により取得された環境情報504とともに、印刷速度SPBに対応づけられたデータセット500Bとしてデータセット記憶部252に記憶される。データ処理部260は、このデータセット記憶部252を参照することにより、印刷媒体PMに対応する印刷速度における実印刷物情報のデータセット500を取得する(ステップS38)。
次に、データ処理部260は、学習済モデル記憶部251を参照することにより、印刷媒体PMに対応する印刷速度における学習済モデル421を取得する(ステップS33)。具体的には、例えば、薄い印刷媒体PMである場合には、データ処理部260は、印刷速度SPAに対応する学習済モデル421Aを取得する。また、例えば、厚い印刷媒体PMである場合には、データ処理部260は、印刷速度SPBに対応する学習済モデル421Bを取得する。
次に、データ処理部260は、ステップS38において取得したデータセット500、およびステップS39において取得した学習済モデル421に基づいて演算処理を行うことにより、第3の制御情報511を生成する(ステップS40)。具体的には、ステップS38においてデータセット500Aが取得され、ステップS39において学習済モデル421Aが取得された場合には、データ処理部260は、学習済モデル421Aの入力層にデータセット500Aを入力することにより、二次転写電圧、トナー定着温度、および印刷不良値を算出する。そして、データ処理部260は、算出した二次転写電圧およびトナー定着温度についての制御情報と、印刷速度SPAについての速度制御情報とを含む第3の制御情報511を生成する。また、ステップS38においてデータセット500Bが取得され、ステップS39において学習済モデル421Bが取得された場合には、データ処理部260は、学習済モデル421Bの入力層にデータセット500Bを入力することにより、二次転写電圧、トナー定着温度、および印刷不良値を算出する。そして、データ処理部260は、算出した二次転写電圧およびトナー定着温度についての制御情報と、印刷速度SPBについての速度制御情報とを含む第3の制御情報511を生成する。
データ処理部260は、第3の制御情報511が生成されると、この第3の制御情報511を制御情報記憶部253に一旦記憶し(ステップS41)、ユーザによる再印刷指示を待つ(ステップS42)。そして、例えばユーザによる表示操作部210の操作により、再印刷指示があると、出力制御部220は、第1の制御情報503に代えて制御情報記憶部253内の第3の制御情報511に基づき、印刷速度を設定し、二次転写ローラ44に印加される二次転写電圧と定着ローラ51のトナー定着温度とを調整した上で、再度の印刷処理を実行する(ステップS43)。
具体的には、例えば厚さが薄い印刷媒体PMである場合には、出力制御部220は、第3の制御情報511に基づいて、二次転写ローラ44に印加される二次転写電圧と定着ローラ51のトナー定着温度とを調整し、第3の制御情報511に含まれる速度制御情報が示す印刷速度SPAで、印刷処理を実行する。例えば厚い印刷媒体PMである場合には、出力制御部220は、第3の制御情報511に基づいて、二次転写ローラ44に印加される二次転写電圧と定着ローラ51のトナー定着温度とを調整し、第3の制御情報511に含まれる速度制御情報が示す印刷速度SPBで、印刷処理を実行する。また、例えば厚さが中程度の印刷媒体PMである場合には、出力制御部220は、第3の制御情報511に基づいて、二次転写ローラ44に印加される二次転写電圧と定着ローラ51のトナー定着温度とを調整し、印刷速度SPA,SPBのうちの、第3の制御情報511に含まれる速度制御情報が示す印刷速度で、印刷処理を実行する。
以上の工程を経て再度印刷され出力された印刷物は、前回の印刷結果に基づいて調整された第3の制御情報511により出力されたものであるから、前回出力された実印刷物APに生じていた印刷不良は概ね解消されている。このように、本発明のデータ処理システムにおいては、印刷不良が発生してからその印刷不良が解消された印刷物をユーザが取得するまでの間に技術者EN等の人手を全く必要としない。したがって、本発明のデータ処理システムでは、コストを抑えたデータ処理を実現することができる。なお、上記一連の工程を経て再印刷された印刷物においては、ほとんどの場合、印刷不良が解消された印刷結果を得ることができるが、この工程を経ても印刷不良が発生する可能性は僅かにある。そのような場合には、再度ステップS32~S43に示す工程を実行するようにしてもよい。
加えて、上述した実印刷物情報取得部230の各構成における情報取得方法は、上記の方法に限定されない。具体的に例示すれば、特徴量情報取得部231は、スキャナ以外の撮像手段(例えば、スマートフォンに内蔵されたカメラ機能や、画像形成装置の排出口等に設置された画像読み取りセンサ)を用いて読み込まれた実印刷物APの画像データを、インターネット等を介して受信することで特徴量情報501を取得しても良い。また、媒体情報取得部232は、印刷媒体PMの製品コードに代えて、表示操作部210あるいは所定のアプリケーションを介して、ユーザが実測により取得した情報等をインタラクティブなプロセスを経て入力する、あるいは画像形成装置200側に印刷媒体PMの媒体情報502を取得するための種々のセンサを採用することで、画像形成装置200内部で自動的に取得する等の方法により、媒体情報502を取得しても良い。さらに、環境情報取得部234は、画像形成装置200に内蔵された温度湿度センサ240に代えて、画像形成装置200外部に別途設けられた温度湿度センサの出力を取得すること、あるいはユーザによる入力操作により温度湿度情報を取得することにより環境情報504を取得しても良い。
また、上記実施の形態においては、画像形成装置200が、環境情報取得部234および温度湿度センサ240を備えているものについて説示を行ったが、これらの構成を有していなくともよい。ただし、その場合には実印刷物情報取得部230で取得される情報は、特徴量情報501、媒体情報502、および第1の制御情報503の3つの情報のみであるから、これに対応すべく、学習済モデル記憶部251には、特徴量情報401、媒体情報402、および第1の制御情報403の3つの情報を状態変数として機械学習を実行した学習済モデル421が記憶され、データ処理部260により取得されることは、当業者であれば明確に理解できることである。
さらに、上記実施の形態においては、データ処理システムを構成する画像形成装置200を中間転写方式のフルカラーLEDプリンタとしたものについて例示を行ったが、プリンタに代えて、プリンタ以外の機能、例えばスキャナ機能やファクシミリ機能をさらに備えたデジタル複合機としてもよい。この場合は、デジタル複合機自体がスキャナ機能を備えていることから、特徴量情報501の取得に際し、上述した外部のスキャナSCを利用する必要がない。したがって、この場合には完全なオフライン状態のデジタル複合機においても、本実施の形態に係るデータ処理システムを構成することができる。
以上のように、このデータ処理システムでは、印刷速度SPAでの印刷結果を含む実印刷物情報のデータセット500A、および印刷速度SPBでの印刷結果を含む実印刷物情報のデータセット500Bを取得する実印刷物情報取得部230と、データセット500A,500Bおよび学習済モデル421A,421Bに基づいて、第3の制御情報511を出力するデータ処理部260と、第3の制御情報511を記憶する制御情報記憶部323とを設けるようにした。データセット500A,500Bのそれぞれは、実際に印刷がなされた実印刷物APにおける特徴量情報501と、実印刷物APに用いられた印刷媒体PMの媒体情報502と、実印刷物APを出力した際の画像形成装置200の制御情報である第1の制御情報503とを含むようにした。このように学習済モデル421A,421Bを利用することで、技術者ENによる調整を経ることなく、自動で制御情報の調整を行うことができ、以て実印刷物APに生じた印刷不良の解消を低コストで且つ高精度に実現可能なデータ処理を実現することができる。
また、このデータ処理システムでは、データ処理部260は、データセット500Aに含まれる情報を学習済モデル421Aに入力することにより、画像形成装置200の制御情報およびその制御情報を用いて印刷を行った場合における印刷不良値を算出し、データセット500Bに含まれる情報を学習済モデル421Bに入力することにより、画像形成装置200の制御情報およびその制御情報を用いて印刷を行った場合における印刷不良値を算出するようにした。そして、データ処理部260は、学習済モデル421Aを用いて算出した印刷不良値が学習済モデル421Bを用いて算出した印刷不良値よりも小さい場合には、学習済モデル421Aを用いて算出した制御情報および印刷速度SPAを示す速度制御情報を第3の制御情報511として出力し、学習済モデル421Bを用いて算出した印刷不良値が学習済モデル421Aを用いて算出した印刷不良値よりも小さい場合には、学習済モデル421Bを用いて算出した制御情報および印刷速度SPBを示す速度制御情報を第3の制御情報511として出力するようにした。これにより、データ処理システムでは、2つの学習済モデル421A,421Bのうちの予測精度が高い学習済モデル421が選択され、それに応じて印刷速度が設定されるので、印刷の質が高めることができる。
また、このデータ処理システムでは、実印刷物情報のデータセット500が、特徴量情報501、媒体情報502、第1の制御情報503に加え、さらに環境情報504を含むようにしたので、画像形成装置10の周囲の温度や湿度に応じて、制御情報を調整することができるので、印刷時の状況に応じて印刷の質を高めることができる。
<6.データ処理システムおよびデータ処理方法の変形例>
上記一実施の形態に係るデータ処理システムとしての画像形成装置200は、学習済モデル記憶部251を内部に備えており、印刷不良を解消するためのデータ処理は、ほぼ画像形成装置200内部で実行されるものであるが、本発明はこのような形態に限定されない。そこで、以下には一連のデータ処理を画像形成装置の外部で実施する形態のものについて説明を行う。なお、以下に示す実施の形態においては、上述した一実施の形態に係るデータ処理システムと異なる部分についてのみ説明を行い、共通する構成および機能等についてはその説明を省略するものとする。
図14は、変形例に係るデータ処理システムの概略ブロック図である。図14に示す通り、本実施の形態に係るデータ処理システムは、インターネットに接続されたサーバ装置300で構成されている。また、このサーバ装置300には、インターネットを介して複数の端末装置TD(例えば、スマートフォンやタブレット端末、PC等)および画像形成装置10が接続されている。
サーバ装置300は、送受信部310と、記憶部320と、データ処理部330と、学習済モデル修正部340とを備えている。送受信部310は、端末装置TDおよび画像形成装置10のうちの一方あるいは双方から送信される実印刷物情報のデータセット500およびフィードバック情報を取得すると共に、後述する第3の制御情報511を端末装置TDおよび画像形成装置10のうちの一方あるいは双方へ送信するためのものである。送受信部310へのデータセット500の送信方法は、種々の方法が採用でき、例えば特徴量情報501と媒体情報502は、端末装置TDに予めインストールされたアプリケーションを介して送信され、第1の制御情報503および環境情報504は、端末装置TD内のアプリケーションの操作をトリガとして動作する画像形成装置10によって送信されるようにしても良い。また、送受信部310により送信される第3の制御情報511は、画像形成装置10に送信することで画像形成装置10が第3の制御情報511を反映するようにしても良いし、端末装置TDに送信し、ユーザがこの端末装置TDが受信した情報を画像形成装置10に入力することで画像形成装置10に第3の制御情報511を反映するようにしても良い。
記憶部320は、サーバ装置300内の各種情報を記憶するものであり、学習済モデル記憶部321と、データセット記憶部322と、制御情報記憶部323とを含んでいる。学習済モデル記憶部321は、種々の実印刷物情報および種々の画像形成装置に対応可能なように、複数の学習済モデル421が記憶されている。ここで、複数の学習済モデル421は、印刷方式や機能等の異なる複数種類の画像形成装置に対応すべく、画像形成装置の種類に対応して準備することが好ましい。データセット記憶部322は、送受信部310で受信した、共通する実印刷物APに係る特徴量情報501、媒体情報502、第1の制御情報503、および環境情報504を1つのデータセット500として記憶したものである。制御情報記憶部323は、後述するデータ処理部330で出力された第3の制御情報511が記憶されたものである。
データ処理部330は、送受信部310で受信されデータセット記憶部322に記憶された特定のデータセット500と、学習済モデル記憶部251に記憶された複数の学習済モデル421のうち、データセット500の内容および画像形成装置の種類等に基づいて特定される一の学習済モデル421とを用い、この学習済モデル421の入力層にデータセット500を入力することにより、第3の制御情報511としての転写電圧とトナー定着温度とを出力するものである。
学習済モデル修正部340は、送受信部310で受信したフィードバック情報に基づき、学習済モデル記憶部321内の対応する学習済モデル421をより高精度とするべく修正するためのものである。フィードバック情報とは、データ処理部330によって出力された第3の制御情報511に基づいて再度印刷を行った結果、印刷不良が改善しなかった、あるいは別の印刷不良は発生した場合等に、端末装置TDおよび画像形成装置10のうちの一方あるいは双方から送信される情報である。学習済モデル修正部340では、このフィードバック情報を対応する学習済モデル421に対する学習用のデータセットとして利用することで、学習済モデル記憶部321に一旦記憶された学習済モデル421をも随時修正することを可能としている。
本実施の形態に係るサーバ装置300によるデータ処理方法は、実印刷物情報のデータセット500の取得や第3の制御情報511の適用の際にインターネットを介した通信を利用すること以外は図13に示す方法と概ね同様であるので、ここでは説明を省略する。
以上の通り、本実施の形態に係るデータ処理システムにおいては、サーバ装置300によってデータ処理を実現しているため、既存の画像形成装置に対しても本システムを容易に適用することが可能である。また、サーバ装置300は、学習済モデル修正部340を備えていることで、学習済モデル421が随時更新可能となり、データ処理の精度が常に向上するため、常に最適なデータ処理の結果を提供することができる。
なお、本実施の形態に係るデータ処理システムは、説明の便宜上、単一のサーバ装置300を用いて説明を行っているが、サーバ装置の数は限定されない。また、このデータ処理システムをクラウドサービスの形態で提供することも可能である。
以上のように、このデータ処理システムでは、例えば図14に示したように、特徴量情報501、媒体情報502、および第1の制御情報503を含む実印刷物情報のデータセット500を取得する実印刷物情報取得部(送受信部310)と、実印刷物情報取得部により取得されたデータセット500を、上記機械学習装置100によって生成された学習済モデルに入力することにより、第3の制御情報511を出力するデータ処理部330と、データ処理部330から出力された第3の制御情報511を記憶する制御情報記憶部323とを設けるようにした。このように学習済モデル421を利用することで、技術者ENによる調整を経ることなく、自動で制御情報の調整を行うことができ、以て実印刷物APに生じた印刷不良の解消を低コストで且つ高精度に実現可能なデータ処理を実現することができる。
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。