実施の形態1.
<電動機の構成>
まず、実施の形態1の電動機100について説明する。図1は、実施の形態1の電動機100を示す横断面図である。電動機100は、ロータ5に永久磁石55が埋め込まれた永久磁石埋込型電動機であり、例えば圧縮機500(図25)に用いられる。
電動機100は、インナーロータ型と呼ばれる電動機であり、回転可能なロータ5と、ロータ5を囲むように設けられたステータ1とを有する。ステータ1とロータ5との間には、例えば0.3~1.0mmのエアギャップが形成されている。電動機100は、圧縮機500のシェル40の内側に組み込まれている。
以下では、ロータ5の回転軸である軸線C1の方向を、「軸方向」と称する。軸線C1を中心とする周方向(図1に矢印Rで示す)を、「周方向」と称する。軸線C1を中心とする半径方向を、「径方向」と称する。軸線C1に直交する面における断面図を「横断面図」と称し、軸線C1と平行な面における断面図を「縦断面図」と称する。
<ロータの構成>
ロータ5は、円筒状のロータコア50と、ロータコア50に取り付けられた永久磁石55と、ロータコア50の中央部に固定されたシャフト60とを有する。シャフト60は、例えば、圧縮機500(図25)のシャフトである。
ロータコア50は、電磁鋼板を軸方向に積層し、カシメ部により一体化したものである。電磁鋼板の板厚は、例えば0.1~0.7mmであり、ここでは0.35mmである。ロータコア50の径方向中心にはシャフト孔54が形成され、上述したシャフト60が固定されている。
ロータコア50の外周に沿って、永久磁石55が挿入される複数の磁石挿入孔51が形成されている。各磁石挿入孔51は、ロータコア50の軸方向の一端から他端まで形成されている。各磁石挿入孔51は、1磁極に相当する。磁石挿入孔51の数は、ここでは6であり、従って磁極数は6である。但し、磁極数は6に限定されるものではなく、2以上であればよい。
磁石挿入孔51は、軸線C1に直交する面において直線状に延在している。各磁石挿入孔51には、永久磁石55が1つずつ配置されている。隣り合う磁石挿入孔51に配置された永久磁石55は、互いに反対の極が径方向外側を向くように着磁されている。
なお、磁石挿入孔51は、周方向中心が径方向内側に突出するV字状であってもよい。また、各磁石挿入孔51に2つ以上の永久磁石55を配置してもよい。
永久磁石55は、軸方向に長い平板状の部材であり、ロータコア50の径方向に厚さを有する。永久磁石55の厚さは、例えば2mmである。永久磁石55は、例えば、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)およびボロン(B)を含有する希土類磁石で構成されている。永久磁石55は、厚さ方向に着磁されている。
希土類磁石は、温度の上昇と共に保磁力が低下する性質を有し、低下率は-0.5~-0.6%/Kである。圧縮機で想定される最大負荷発生時に希土類磁石の減磁が生じないようにするためには、1100~1500A/mの保磁力が必要である。この保磁力を150℃の雰囲気温度下で確保するためには、常温(20℃)での保磁力が1800~2300A/mであることが必要である。
そのため、希土類磁石には、ディスプロシウム(Dy)を添加してもよい。希土類磁石の常温での保磁力は、Dyを添加していない状態で1800A/mであり、2重量%のDyを添加することで2300A/mとなる。但し、Dyの添加は製造コストの増加の原因となり、また残留磁束密度の低下を招く。そのため、Dyの添加量をできるだけ少なくするか、またはDyを添加しないことが望ましい。
磁石挿入孔51の周方向両端部には、漏れ磁束抑制穴としてのフラックスバリア52が形成されている。フラックスバリア52とロータコア50の外周との間のコア部分は、隣り合う磁極間の磁束の短絡を抑制するため、薄肉部となっている。薄肉部の厚さは、ロータコア50の電磁鋼板の板厚と同じであることが望ましい。
磁石挿入孔51の径方向外側には、スリット53が形成されている。スリット53は、永久磁石55からステータ1に向かう磁束の分布を滑らかにし、トルクリプルを抑制するためのものである。スリット53の数、配置および形状は任意である。なお、ロータコア50は、必ずしもスリット53を有さなくてもよい。
磁石挿入孔51の径方向内側には、圧縮機500(図25)の冷媒の通路となる穴部57,58が形成されている。穴部57は、極間に対応する位置に形成され、穴部58は、極中心に対応する位置に形成されている。但し、穴部57,58の配置は、適宜変更することができる。また、ロータコア50は、必ずしも穴部57,58を有さなくてもよい。
<ステータの構成>
ステータ1は、ステータコア10と、ステータコア10に取り付けられたインシュレータ20および絶縁フィルム25と、インシュレータ20および絶縁フィルム25を介してステータコア10に巻き付けられたコイル3とを有する。
図2は、ステータコア10を示す横断面図である。ステータコア10は、電磁鋼板を軸方向に積層し、カシメ部15により一体的に固定したものである。電磁鋼板の板厚は、例えば0.1~0.7mmであり、ここでは0.35mmである。
カシメ部15は、電磁鋼板の表面にカシメ用金具を押し当てることで形成され、電磁鋼板の一方の面(表面とする)側では凹部、他方の面(裏面とする)側では凸部となっている。カシメ部15の詳細については、後述する。
ステータコア10は、軸線C1を中心とする環状のヨーク部11と、ヨーク部11から径方向内側に延在する複数のティース12とを有する。ヨーク部11は、外周111および内周112を有する。
ティース12は、周方向に一定間隔で形成されている。ティース12の数は、ここでは9であるが、2以上であればよい。隣り合うティース12の間には、コイル3を収容するスロット13が形成される。
ティース12は、ロータ5(図1)に対向する歯先部121を有する。ティース12の周方向の幅は、歯先部121を除いて一定であり、歯先部121の幅はそれよりも広い。ティース12の側面122と、ヨーク部11の内周112とは、スロット13に面している。
ヨーク部11の外周111には、凹部18が形成されている。凹部18は、シェル40の内周41(図1)との間に、軸方向の冷媒の通路を形成する。凹部18の周方向位置は、ティース12と一致している。なお、ヨーク部11は、必ずしも凹部18を有さなくてもよい。
ステータコア10は、ティース12毎に複数の分割コア8が周方向に連結された構成を有する。分割コア8の数は、例えば9である。これらの分割コア8は、ヨーク部11に形成された分割面14で互いに接合されている。
分割コア8は、分割面14の外周側の薄肉連結部で互いに連結され、あるいは分割面14での溶接により互いに接合される。これについては、図21(A)および(B)を参照して後述する。
図3(A)は、分割コア8を示す斜視図である。図3(B)は、分割コア8と、これに取り付けられたインシュレータ20および絶縁フィルム25を示す斜視図である。図3(A)に示すように、分割コア8は、周方向に分割されたヨーク部11と、ヨーク部11から径方向内側に延在するティース12とを有する。
図3(B)に示すように、インシュレータ20は、分割コア8の軸方向の両端部にそれぞれ取り付けられる。インシュレータ20は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂で構成される。
各インシュレータ20は、ヨーク部11に取り付けられる壁部23と、ティース12の主部に取り付けられる胴部22と、歯先部121に取り付けられるフランジ部21とを有する。胴部22にはコイル3(図1)が巻き付けられ、フランジ部21および壁部23は、胴部22に巻き付けられたコイル3を径方向両側からガイドする。
ティース12の側面122およびヨーク部11の内周112には、絶縁フィルム25が貼り付けられる。絶縁フィルム25は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の樹脂で構成される。インシュレータ20および絶縁フィルム25は、ステータコア10とコイル3とを電気的に絶縁する絶縁部を構成する。
図1に戻り、コイル3は、例えばマグネットワイヤで構成され、インシュレータ20および絶縁フィルム25を介してティース12に巻き付けられている。コイル3の線径は、例えば1.0mmである。コイル3は、各ティース12に、集中巻により例えば80ターン巻かれている。なお、コイル3の線径およびターン数は、要求される回転数、トルク、印加電圧あるいはスロット13の面積に応じて決定される。
図4は、電動機100およびシェル40を示す縦断面図である。ステータ1のステータコア10は、焼嵌めまたは圧入により、シェル40の内側に嵌合する。シェル40は、圧縮機500(図25)の密閉容器507の一部である。
ステータコア10は、軸方向に、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを有する。第1のコア部10Aは、シェル40の内周41に間隔をあけて対向している。第2のコア部10Bは、シェル40の内周41に当接している。
すなわち、第1のコア部10Aの外周(符号110で示す)は、第2のコア部10Bの外周111よりも径方向内側に退避した位置に形成され、シェル40の内周41から離間している。第2のコア部10Bの外周111は、シェル40の内周41に当接する。
ここでは、ステータコア10の軸方向中央に第1のコア部10Aが配置され、第1のコア部10Aの軸方向両側に第2のコア部10Bがそれぞれ配置されている。すなわち、第2のコア部10Bは、ステータコア10の軸方向両端に配置されている。但し、コア部10A,10Bの配置および数は、この例に限定されるものではない。
第1のコア部10Aはシェル40に当接せず、第2のコア部10Bはシェル40に当接しているため、シェル40からの圧縮応力は、第1のコア部10Aには作用せず、第2のコア部10Bに作用する。
電磁鋼板は、圧縮応力を受けると磁気特性が変化し、鉄損が増加する性質がある。そのため、第1のコア部10Aがシェル40からの圧縮応力を受けないことにより、鉄損の増加が抑制される。また、第2のコア部10Bがシェル40に当接することにより、シェル40に対してステータコア10が強固に固定される。
図5(A)は、図4に示す線分5A-5Aにおける断面図、すなわち第1のコア部10Aにおける横断面図である。図5(B)は、図4に示す線分5B-5Bにおける断面図、すなわち第2のコア部10Bにおける横断面図である。
図5(A)に示すように、第1のコア部10Aの外周110と、シェル40の内周41との間には、環状の隙間Gが形成される。一方、図5(B)に示すように、第2のコア部10Bの外周111は、シェル40の内周41に当接しており、図5(A)に示したような隙間Gは形成されない。
図6は、電動機100を示す縦断面図である。図6に示すように、第1のコア部10Aの外径A1は、第2のコア部10Bの外径A2よりも小さい。なお、第1のコア部10Aの内径と第2のコア部10Bの内径とは、互いに同じである。
第1のコア部10Aおよび第2のコア部10Bは、いずれも、電磁鋼板を軸方向に積層したものである。第1のコア部10Aを構成する電磁鋼板を第1の鋼板9Aと称し、第2のコア部10Bを構成する電磁鋼板を第2の鋼板9Bと称する。第1の鋼板9Aおよび第2の鋼板9Bは、外径およびカシメ部15の数を除き、互いに同じ構成を有する。
図7(A)は、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを示す平面図である。図7(B)は、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bを示す平面図である。なお、図7(A)および(B)では、第1の鋼板9Aおよび第2の鋼板9Bの1つの分割コア8(図2)に含まれる部分を示している。後述する図8(A)~図9(B)も同様である。
図7(A)に示すように、1枚の第1の鋼板9Aには、1つの分割コア8につき、3つのカシメ部15が形成されている。カシメ部15は、いずれも、軸方向に直交する面内で長方形形状を有する。このような形状のカシメ部を、Vカシメ部と称する。
ここでは、ティース12の周方向中心を通る径方向の直線を、ティース中心線Mと称する。第1の鋼板9Aのカシメ部15は、ティース12におけるティース中心線M上の1箇所と、ヨーク部11におけるティース中心線Mに対して対称な2箇所に形成されている。ティース12に形成されたカシメ部15は、ティース12の延在方向に長く、ヨーク部11に形成されたカシメ部15は、ヨーク部11の延在方向(より具体的には、ティース中心線Mに直交する方向)に長い。
図7(B)に示すように、1枚の第2の鋼板9Bには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部15が形成されている。カシメ部15は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有する。
第2の鋼板9Bのカシメ部15は、ヨーク部11におけるティース中心線Mに対して対称な2箇所にそれぞれ形成されている。カシメ部15は、ヨーク部11の延在方向(より具体的には、ティース中心線Mに直交する方向)に長い。
ステータコア10は9つの分割コア8を有するため、9つの分割コア8を合計すると、1枚の第1の鋼板9Aは27個(3個×9)のカシメ部15を有し(図5(A)参照)、1枚の第2の鋼板9Bは18個(2個×9)のカシメ部15を有する(図5(B)参照)。
図5(A)および図5(B)に示されているように、第2の鋼板9Bの18個のカシメ部15は、第1の鋼板9Aの27個のカシメ部15のうち、ヨーク部11に設けられた18個のカシメ部15と、軸方向に重なり合う位置に配置されている。そのため、第2のコア部10Bのカシメ部15と、これと同数の第1のコア部10Aのカシメ部15とが係合し、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとが固定される。
第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数および第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数は、ここで説明した例に限定されるものではない。第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数が、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数よりも少なければよい。
また、第1の鋼板9Aのカシメ部15の軸方向に直交する面内における面積および形状は、第2の鋼板9Bのカシメ部15と互いに同じであることが望ましい。このようにすれば、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとが、より強固に固定されるためである。
<作用>
次に、実施の形態1の電動機100の作用について説明する。まず、ステータコア10を、シェル40に当接しない第1のコア部10Aと、シェル40に当接する第2のコア部10Bとで構成したことによる作用について説明する。
電動機100において、ステータコア10およびロータコア50の内部で磁束が変化するときに消費されるエネルギーを、鉄損と称する。ロータコア50内では磁束の変化が小さいため、電動機100における鉄損の殆どは、ステータコア10における鉄損である。鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損との和で表される。ヒステリシス損は磁束変化の周波数に比例し、渦電流損は周波数の2乗に比例する。
ステータコア10を構成する電磁鋼板は、圧縮応力を受けると磁気特性が劣化し、鉄損が増加する。圧縮応力は、電磁鋼板の打ち抜き、あるいはシェル40への圧入または焼嵌めによって発生する。
シェル40への圧入または焼嵌めは、ステータコア10の真円度を向上し、ステータコア10をシェル40に強固に固定するため、一定以上の固定力で行う必要がある。ステータコア10とシェル40との接触面積と、その面積に働く平均応力との積を、焼嵌め荷重とする。焼嵌め荷重は、ステータコア10をシェル40に固定する固定力の指標である。
ステータコア10の外周面の全体がシェル40に嵌合する構成では、ステータコア10全体で鉄損が増加し、その結果、電動機効率が低下する。
これに対し、実施の形態1の電動機100では、ステータコア10の第1のコア部10Aがシェル40に当接せず、圧縮応力を受けない。そのため、第1のコア部10Aでの鉄損の増加は殆ど発生せず、電動機効率を向上することができる。
鉄損の低減効果について、具体的な数値例を用いて説明する。ステータコア10の外周面全体をシェル40に嵌合させた電動機(比較例と称する)において、ステータコア10の焼嵌めまたは圧入前の単位体積当たりの鉄損を1とし、焼嵌めまたは圧入によって鉄損が2まで増加したと仮定する。
実施の形態1の電動機100において、第1のコア部10Aがステータコア10の軸方向長さの50%を占めていると仮定する。この場合、ステータコア10とシェル40との接触面積は、比較例における接触面積の半分になる。焼嵌め荷重を比較例と同じとすると、第2のコア部10Bには比較例の2倍の圧縮応力が作用する。
第1のコア部10Aはシェル40から圧縮応力を受けないため、第1のコア部10Aにおける単位体積当たりの鉄損は1と考えることができる。一方、第2のコア部10Bはシェル40から圧縮応力を受け、その圧縮応力の大きさは比較例の2倍である。
第2のコア部10Bでは、圧縮応力が2倍になっても、鉄損の飽和のため、単位体積当たりの鉄損は2倍よりも小さくなる。例えば、第2のコア部10Bの単位体積当たりの鉄損が、比較例の1.2倍の2.4であると仮定すると、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとがそれぞれ50%を占めるステータコア10の単位体積当たりの鉄損の平均は、(2.4×0.5)+(1×0.5)=1.7となる。この値は、比較例のステータコア10の単位体積当たりの鉄損(=2)よりも小さい。このことから、実施の形態1の電動機100により、鉄損の低減効果が得られることが分かる。
そのため、実施の形態1によれば、ステータコア10をシェル40に強固に固定しながら、鉄損の増加を抑制することができる。言い換えると、第2のコア部10Bへの応力集中に伴う鉄損の飽和を利用して、ステータコア10における鉄損を低減することができる。
次に、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aにおけるカシメ部15の数を、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bにおけるカシメ部15の数よりも少なくしたことによる作用について説明する。
ステータコア10において、シェル40からの圧縮応力が最も集中する領域は、シェル40に当接するステータコア10の外周とカシメ部15との間の領域である。カシメ部15の締結強度が高いほど、圧縮応力が集中しやすくなり、鉄損が増加しやすい。
第1のコア部10Aは、シェル40に固定されないため、形状が変化しやすい。特に、第1の鋼板9Aの相互の位置ずれが生じやすい。これに対し、第2のコア部10Bは、シェル40に固定されるため、形状が変化しにくい。
すなわち、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aは、高い締結強度で互いに固定する必要があるのに対し、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bは、比較的低い締結強度で固定してもよい。
そこで、実施の形態1では、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数を、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数よりも少なくしている。
言い換えると、第1のコア部10Aの各第1の鋼板9Aでは、カシメ部15の数を多くすることにより締結強度を高めている。これに対し、第2のコア部10Bの各第2の鋼板9Bでは、カシメ部15の数を少なくすることにより、圧縮応力の集中を生じにくくし、鉄損の増加を抑えている。
このように、ステータコア10が、シェル40に当接しない第1のコア部10Aと、シェル40に当接する第2のコア部10Bとを有し、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数が、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数よりも少ないため、鉄損の増加を抑制して電動機効率を向上し、且つ、ステータコア10をシェル40に強固に固定することができる。
また、第2の鋼板9Bのカシメ部15は、当該カシメ部15と同数の第1の鋼板9Aのカシメ部15と軸方向に重なり合うように配置されている。そのため、第1の鋼板9Aのカシメ部15と第2の鋼板9Bのカシメ部15との係合により、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを固定することができる。
特に、第1の鋼板9Aのカシメ部15の軸方向に直交する面内における面積および形状が、第2の鋼板9Bのカシメ部15と同じであれば、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとをより強固に固定することができる。
また、ヨーク部11とティース12とを比較すると、ティース12にはロータ5からの磁束がより多く流れる。そのため、図7(B)に示すように、鉄損の低減効果を高めるためには、カシメ部15は、ティース12よりもヨーク部11に配置した方が望ましい。
ここでは、第2の鋼板9Bのカシメ部15の数が18(1つの分割コア8につき2つ)であり、第1の鋼板9Aのカシメ部15の数が27(1つの分割コア8につき3つ)であるが、これらの数に限定されるものではない。第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数が、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数よりも少なければよい。
また、ここでは、第2のコア部10Bの全ての第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数が、第1の鋼板9Aの全ての第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数よりも少ない。しかしながら、第2のコア部10Bの少なくとも1枚の第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数が、第1のコア部10Aの少なくとも1枚の第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数よりも少なければよい。
また、ステータコア10は、複数の分割コア8を周方向に連結したもの(図2)に限らず、環状に打ち抜かれた電磁鋼板を軸方向に積層したものであってもよい。
<実施の形態の効果>
以上説明したように、実施の形態1では、ステータコア10が、シェル40に間隔をあけて対向する第1のコア部10Aと、シェル40に当接する第2のコア部10Bとを有し、第2のコア部10Bの少なくとも1枚の第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数が、第1のコア部10Aの少なくとも1枚の第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数よりも少ない。そのため、ステータコア10における鉄損の増加を抑制して電動機効率を向上し、また、ステータコア10をシェル40に強固に固定することができる。
また、第2のコア部10Bが第1のコア部10Aの軸方向両側に位置するため、ステータコア10の軸方向両端がシェル40に嵌合する。これにより、ステータコア10をシェル40に安定した状態で固定することができる。
また、第2の鋼板9Bの少なくとも1つのカシメ部15が、第1の鋼板9Aの少なくとも1つのカシメ部15と軸方向に重なり合う位置に配置されているため、これらのカシメ部15の係合により、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを固定することができる。
また、第1の鋼板9Aのカシメ部15および第2の鋼板9Bのカシメ部15が、いずれも、軸方向に直交する面内で長方形形状を有するため、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを強固に固定することができる。
第1の変形例.
次に、実施の形態1の第1の変形例について説明する。図8(A)は、第1の変形例の第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを示す平面図である。図8(B)は、第1の変形例の第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bを示す平面図である。
実施の形態1の第1の鋼板9Aのカシメ部15(図7(A),(B))は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有していたが、図8(A)に示すように、第1の変形例の第1の鋼板9Aのカシメ部16は、軸方向に直交する面内で円形状を有する。このようなカシメ部を、丸カシメ部とも称する。同様に、図8(B)に示すように、第1の変形例の第2の鋼板9Bのカシメ部16は、軸方向に直交する面内で円形状を有する。
第1の変形例のステータコア10は、カシメ部16を除き、実施の形態1のステータコア10と同様に構成されている。
ここでは、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部16の数が1つの分割コア8につき3つであり、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部16の数が1つの分割コア8につき2つであるが、これらの数に限定されるものではない。第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部16の数が、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部16の数よりも少なければよい。
軸方向に直交する面内で円形状のカシメ部(丸カシメ部)16は、側面部の周長が、同一面積の長方形のカシメ部(Vカシメ部)15よりも長い。そのため、円形状のカシメ部16を用いることにより、長方形形状のカシメ部15を用いた場合よりも高い締結硬度が得られる。
なお、図7(A),(B)に示した長方形のカシメ部15と、図8(A),(B)に示した円形のカシメ部16とを組み合わせて用いてもよい。
第2の変形例.
次に、実施の形態1の第2の変形例について説明する。図9(A)は、第2の変形例の第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを示す平面図である。図9(B)は、第2の変形例の第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bを示す平面図である。
図9(A)および(B)に示すように、第2の変形例では、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aはカシメ部15を有するが、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bはカシメ部15を有さない。
上記の通り、第2のコア部10Bはシェル40に固定されるため、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bの締結強度は、比較的低くてもよい。そこで、第2の変形例では、第2の鋼板9Bにカシメ部15を設けず、例えば接着剤により第2の鋼板9Bを互いに固定している。
図9(A)では、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数は、1つの分割コア8につき2つである。しかしながら、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数は、1つ以上であればよい。また、図9(A)には、軸方向に直交する面内で長方形形状のカシメ部15を示したが、図8(A)に示したように、軸方向に直交する面内で円形状のカシメ部16を用いてもよい。
第2の変形例のステータコア10は、第1の鋼板9Aおよび第2の鋼板9Bにおけるカシメ部15の数を除き、実施の形態1のステータコア10と同様に構成されている。
この第2の変形例では、第2の鋼板9Bがカシメ部を有さないため、鉄損の低減効果をさらに高めることができる。
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。図10(A)は、実施の形態2のステータコア10における、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを示す平面図である。図10(B)は、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bを示す平面図である。なお、図10(A)および(B)では、第1の鋼板9Aおよび第2の鋼板9Bの1つの分割コア8(図2)に含まれる部分を示している。後述する図11(A)および(B)も同様である。
図10(A)に示すように、1枚の第1の鋼板9Aには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部15が形成されている。当該2つのカシメ部15は、ヨーク部11に形成されている。第1の鋼板9Aのカシメ部15は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有する。
図10(B)に示すように、1枚の第2の鋼板9Bには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部15が形成されている。当該2つのカシメ部15は、ヨーク部11に形成されている。第2の鋼板9Bのカシメ部15は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有する。
第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数は、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数と同数である。
この実施の形態2では、第2の鋼板9Bの各カシメ部15の面積が、第1の鋼板9Aの各カシメ部15の面積よりも小さい。この点について、以下に説明する。
図10(C)は、カシメ部15の面積を説明するための模式図である。電磁鋼板9(第1の鋼板9Aまたは第2の鋼板9B)において、カシメ用金具で力を加えた側の面を表面101とし、その反対側の面を裏面102とする。
カシメ部15は、表面101側では凹部であり、裏面102側では凸部である。カシメ部15の凹部は、軸方向に直交する平面である底面15aと、その周囲の側面15b,15cとを有する。底面15aは長方形である。側面15bは底面15aの短辺に沿って延在し、側面15cは底面15aの長辺に沿って延在する。
カシメ部15の底面15aの長辺の長さをLxとし、短辺の長さをLyとすると、底面15aの面積Sは、Lx×Lyで表される。ここでは、カシメ部15がヨーク部11に設けられているため、底面15aの長辺はティース中心線Mに直交する。なお、カシメ部15がティース12に設けられている場合は、底面15aの長辺はティース中心線Mと平行である。
第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の総面積は、各カシメ部15の面積S1に、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数を乗算したものである。同様に、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の総面積は、各カシメ部15の面積S2に、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数を乗算したものである。
第2の鋼板9Bの各カシメ部15の面積S2が、第1の鋼板9Aの各カシメ部15の面積S1よりも小さく、第1の鋼板9Aと第2の鋼板9Bとで1枚当たりのカシメ部15の数が同数であるため、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の総面積は、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の総面積よりも小さくなる。
カシメ部15の総面積が大きいほど、カシメ部15の側面15b,15cで鋼板同士が接触する面積が増加し、締結強度が高くなる。実施の形態1でも説明したように、シェル40に当接しない第1のコア部10Aでは、第1の鋼板9Aの締結強度を高める必要があるが、シェル40に固定される第2のコア部10Bでは、第2の鋼板9Bの締結強度は比較的小さくてよい。
この実施の形態2では、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の総面積が、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の総面積よりも小さいため、第2のコア部10Bでの鉄損を低減し、且つ第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを強固に固定することができる。
ここでは、第2のコア部10Bの全ての第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の総面積が、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の総面積よりも小さい。しかしながら、第2のコア部10Bの少なくとも1枚の第2の鋼板9Bのカシメ部15の総面積が、第1のコア部10Aの少なくとも1枚の第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の総面積よりも少なければよい。
また、ここでは、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数と、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数とを同数としたが、必ずしも同数である必要はない。第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の総面積が第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の総面積よりも小さければ、カシメ部の数は異なってもよい。例えば、実施の形態1と同様に、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数を、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数よりも少なくしてもよい。
また、図10(A)および(B)では、カシメ部15がヨーク部11に設けられているが、ティース12に設けてもよい。
第1の鋼板9Aのカシメ部15と、第2の鋼板9Bのカシメ部15とは、軸方向に重なり合う位置に配置されていることが望ましい。これにより、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを強固に固定することができる。
以上の点を除き、実施の形態2の電動機は、実施の形態1の電動機100と同様に構成されている。
以上説明したように、実施の形態2では、ステータコア10が、シェル40に間隔をあけて対向する第1のコア部10Aと、シェル40に当接する第2のコア部10Bとを有し、少なくとも1枚の第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の総面積が、少なくとも1枚の第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の総面積よりも小さい。そのため、ステータコア10における鉄損の増加を抑制して電動機効率を向上し、また、ステータコア10をシェル40に強固に固定することができる。
変形例.
次に、実施の形態2の変形例について説明する。図11(A)は、変形例のステータコア10における、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを示す平面図である。図11(B)は、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bを示す平面図である。
図11(A)に示すように、1枚の第1の鋼板9Aには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部16が形成されている。当該2つのカシメ部16は、ヨーク部11に形成されている。第1の鋼板9Aのカシメ部16は、軸方向に直交する面内で円形状を有する。
図11(B)に示すように、1枚の第2の鋼板9Bには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部16が形成されている。当該2つのカシメ部16は、ヨーク部11に形成されている。第2の鋼板9Bのカシメ部16は、軸方向に直交する面内で円形状を有する。
図11(C)は、カシメ部16の面積を説明するための模式図である。カシメ部16は、鋼板9の表面101側では凹部であり、裏面102側では凸部である。カシメ部16の凹部は、軸方向に直交する平面である底面16aと、その周囲の側面16bとを有する。底面16aは円形であり、側面16bは円周状に延在している。
カシメ部16の底面16aの直径をDとすると、底面16aの面積Sは、(D/2)2×πで表される。
第2の鋼板9Bの各カシメ部16の面積S2は、第1の鋼板9Aの各カシメ部16の面積S1よりも小さい。また、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部16の数と、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部16の数とは、同数である。そのため、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部16の総面積は、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部16の総面積よりも小さい。
そのため、第2のコア部10Bでの鉄損を低減し、且つ第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを強固に固定することができる。軸方向に直交する面内で円形状を有するカシメ部16は、側面部の周長が、同一面積の長方形のカシメ部15よりも長いため、さらに高い締結硬度が得られる。
なお、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部16の総面積が第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部16の総面積よりも小さければ、各鋼板9A,9Bの1枚当たりのカシメ部16の数は任意である。
第1の鋼板9Aのカシメ部16と、第2の鋼板9Bのカシメ部16とは、軸方向に重なり合う位置に配置されていることが望ましい。これにより、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを強固に固定することができる。
この変形例のステータコア10は、カシメ部16を除き、実施の形態2のステータコア10と同様に構成されている。
この変形例においても、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部16の総面積が、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部16の総面積よりも小さいため、鉄損の増加を抑制し、ステータコア10をシェル40に強固に固定することができる。
また、図10(A),(B)に示した長方形のカシメ部15と、図11(A),(B)に示した円形のカシメ部16とを組み合わせて用いてもよい。
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。図12(A)は、実施の形態3のステータコア10における、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを示す平面図である。なお、図12(A)は、第1の鋼板9Aの1つの分割コア8(図2)に含まれる部分を示している。
図12(A)に示すように、1枚の第1の鋼板9Aには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部15が形成されている。当該2つのカシメ部15は、ヨーク部11に形成されている。カシメ部15は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有する。
図12(B)は、図12(A)に示した線分12B-12Bにおける断面図であり、カシメ部15の長辺に沿った面における断面図である。図12(C)は、図12(A)に示した線分12C-12Cにおける断面図であり、カシメ部15の短辺に沿った面における断面図である。
図12(B)および(C)に示すように、カシメ部15は、第1の鋼板9Aの裏面102から突出している。カシメ部15の最も突出した突出面15dは、軸方向に直交する平面である。第1の鋼板9Aの裏面102からカシメ部15の突出面15dまでの距離を、深さD1と称する。
図13(A)は、実施の形態3のステータコア10における、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bを示す平面図である。なお、図13(A)は、第2の鋼板9Bの1つの分割コア8(図2)に含まれる部分を示している。
図13(A)に示すように、1枚の第2の鋼板9Bには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部15が形成されている。当該2つのカシメ部15は、ヨーク部11に形成されている。カシメ部15は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有する。
図13(B)は、図13(A)に示した線分13B-13Bにおける断面図であり、カシメ部15の長辺に沿った面における断面図である。図13(C)は、図13(A)に示した線分13C-13Cにおける断面図であり、カシメ部15の短辺に沿った面における断面図である。
図13(B)および(C)に示すように、カシメ部15は、第2の鋼板9Bの裏面102から突出している。カシメ部15の最も突出した突出面15dは、軸方向に直交する平面である。第2の鋼板9Bの裏面102からカシメ部15の突出面15dまでの距離を、深さD2と称する。
第2の鋼板9Bのカシメ部15の深さD2は、第1の鋼板9Aのカシメ部15の深さD1よりも浅い。
カシメ部15の深さ(カシメ深さとも称する)が大きいほど、カシメ部15の側面15b,15cで鋼板同士が接触する面積が増加し、締結強度が高くなる。実施の形態1でも説明したように、シェル40に当接しない第1のコア部10Aでは、第1の鋼板9Aの締結強度を高める必要があるが、シェル40に固定される第2のコア部10Bでは、第2の鋼板9Bの締結強度は比較的小さくてよい。
この実施の形態3では、第2の鋼板9Bのカシメ部15の深さD2が、第1の鋼板9Aのカシメ部15の深さD1よりも浅いため(D2<D1)、第2のコア部10Bでの鉄損を低減し、且つ第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを強固に固定することができる。
ここでは、第2のコア部10Bの全ての第2の鋼板9Bのカシメ部15の深さD2が、第1のコア部10Aの全ての第1の鋼板9Aのカシメ部15のD1よりも浅い。しかしながら、第2のコア部10Bの少なくとも1枚の第2の鋼板9Bのカシメ部15の深さD2が、第1のコア部10Aの少なくとも1枚の第1の鋼板9Aの深さD1よりも浅ければよい。
また、第1の鋼板9Aのカシメ部15および第2の鋼板9Bのカシメ部15は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有しているが、図11(A)~(C)に示したカシメ部16のように、円形状を有していてもよい。
ここでは、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数と、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数とは互いに同数であるが、互いに異なっていてもよい。また、図12(A)および図13(A)では、カシメ部15がヨーク部11に設けられているが、ティース12に設けてもよい。
第1の鋼板9Aのカシメ部15と、第2の鋼板9Bのカシメ部15とは、軸方向に重なり合う位置に配置されていることが望ましい。また、第1の鋼板9Aの各カシメ部15の面積は、第2の鋼板9Bの各カシメ部15の面積と同じであることが望ましい。これにより、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを強固に固定することができる。
以上の点を除き、実施の形態3の電動機は、実施の形態1の電動機100と同様に構成されている。
以上説明したように、実施の形態3では、ステータコア10が、シェル40に間隔をあけて対向する第1のコア部10Aと、シェル40に当接する第2のコア部10Bとを有し、少なくとも1枚の第2の鋼板9Bのカシメ部15の深さD2が、少なくとも1枚の第1の鋼板9Aのカシメ部15の深さD1よりも浅い。そのため、ステータコア10における鉄損の増加を抑制して電動機効率を向上し、また、ステータコア10をシェル40に強固に固定することができる。
実施の形態4.
次に、実施の形態4について説明する。図14(A)は、実施の形態4のステータコア10における、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを示す平面図である。なお、図14(A)は、第1の鋼板9Aの1つの分割コア8(図2)に含まれる部分を示している。
図14(A)に示すように、1枚の第1の鋼板9Aには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部15が形成されている。当該2つのカシメ部15は、ヨーク部11に形成されている。カシメ部15は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有する。
図14(B)は、図14(A)に示した線分14B-14Bにおける断面図であり、カシメ部15の長辺に沿った面における断面図である。図14(C)は、図14(A)に示した線分14C-14Cにおける断面図であり、カシメ部15の短辺に沿った面における断面図である。
図14(B)および(C)に示すように、第1の鋼板9Aのカシメ部15は、長方形の底面15aと、底面15aの短辺に沿って延在する側面15bと、底面15aの長辺に沿って延在する側面15cとを有する。図14(B)および(C)において、軸方向を直線Nで示す。
第1の鋼板9Aのカシメ部15の長辺方向に対向する2つの側面15bのなす角度(すなわち開き角度)は、30~150度である。カシメ部15の短辺方向に対向する2つの側面15cのなす角度(すなわち開き角度)も、30~150度である。但し、2つの側面15b(図14(B))のなす角度は、2つの側面15cのなす角度よりも大きい。
側面15bと軸方向とのなす角度R1(開き角度の1/2)は、15~75度である。側面15cと軸方向とのなす角度r1も、15~75度である。但し、側面15bと軸方向とのなす角度R1は、側面15cと軸方向とのなす角度r1よりも大きい。
カシメ部15の側面が軸方向と平行に近づくほど、鋼板の締結強度は高くなる。逆に、カシメ部15の側面と軸方向とのなす角度が大きいほど、鋼板間の摩擦力の積層方向成分が小さくなるため、鋼板の締結強度は低くなる。
第1の鋼板9Aのカシメ部15では、側面15bと軸方向とのなす角度R1が、側面15cと軸方向とのなす角度r1よりも大きいため、長辺方向の断面(図14(B))における締結強度が、短辺方向の断面(図14(C))における締結強度よりも低い。
図15(A)は、実施の形態4のステータコア10における、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bを示す平面図である。なお、図15(A)は、第2の鋼板9Bの1つの分割コア8(図2)に含まれる部分を示している。
図15(A)に示すように、1枚の第2の鋼板9Bには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部15が形成されている。当該2つのカシメ部15は、ヨーク部11に形成されている。カシメ部15は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有する。
図15(B)は、図15(A)に示した線分15B-15Bにおける断面図であり、カシメ部15の長辺に沿った面における断面図である。図15(C)は、図15(A)に示した線分15C-15Cにおける断面図であり、カシメ部15の短辺に沿った面における断面図である。
図15(B)および(C)に示すように、第2の鋼板9Bのカシメ部15は、長方形の底面15aと、底面15aの短辺に沿って延在する側面15bと、底面15aの長辺に沿って延在する側面15cとを有する。
第2の鋼板9Bのカシメ部15の長辺方向に対向する2つの側面15bのなす角度(すなわち開き角度)は、30~150度である。カシメ部15の短辺方向に対向する2つの側面15cのなす角度も、30~150度である。但し、2つの側面15bのなす角度は、2つの側面15cのなす角度よりも大きい。
側面15bと軸方向とのなす角度R2(開き角度の1/2)は、15~75度である。側面15cと軸方向とのなす角度r2も、15~75度である。但し、側面15bと軸方向とのなす角度R2は、側面15cと軸方向とのなす角度r2よりも大きい。そのため、長辺方向の断面(図15(B))における締結強度が、短辺方向の断面(図15(C))における締結強度よりも低い。
この実施の形態4では、第2の鋼板9Bのカシメ部15の側面15b,15cと軸方向とのなす最大角度(すなわち角度R2)は、第1の鋼板9Aのカシメ部15の側面15b,15cと軸方向とのなす最大角度(すなわち角度R1)よりも大きい。
そのため、第2の鋼板9Bのカシメ部15の長辺方向における締結強度が、第1の鋼板9Aの長辺方向の締結強度よりも低くなる。実施の形態1でも説明したように、シェル40に当接しない第1のコア部10Aでは、第1の鋼板9Aの締結強度を高める必要があるが、シェル40に固定される第2のコア部10Bでは、第2の鋼板9Bの締結強度は比較的小さくてよい。
第2の鋼板9Bのカシメ部15の側面と軸方向とのなす最大角度(角度R2)が、第1の鋼板9Aのカシメ部15の側面と軸方向とのなす最大角度(角度R1)よりも大きいため、第2のコア部10Bでの鉄損を低減し、且つ第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを強固に固定することができる。
なお、第2の鋼板9Bでは、特にカシメ部15の長手方向における締結強度が低いため、当該方向の第2の鋼板9Bの位置ずれの抑制が課題となる。カシメ部15の長手方向をステータコア10の周方向と一致させれば、第2の鋼板9Bにはカシメ部15の長手方向に圧縮応力が加わりにくいため、第2の鋼板9Bの位置ずれを防止することができる。
ここでは、第2のコア部10Bの全ての第2の鋼板9Bのカシメ部15の側面15b,15cと軸方向とのなす最大角度が、第1のコア部10Aの全ての第1の鋼板9Aのカシメ部15の側面15b,15cと軸方向とのなす最大角度よりも大きい。しかしながら、2のコア部10Bの少なくとも1枚の第2の鋼板9Bのカシメ部15の側面15b,15cと軸方向とのなす最大角度が、第1のコア部10Aの少なくとも1枚の第1の鋼板9Aのカシメ部15の側面15b,15cと軸方向とのなす最大角度よりも大きければよい。
第1の鋼板9Aのカシメ部15および第2の鋼板9Bのカシメ部15は、いずれも、軸方向に直交する面内で長方形形状を有しているが、図11(A)~(C)に示したカシメ部16のように、円形状を有していてもよい。
ここでは、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数と、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数とは互いに同数であるが、互いに異なっていてもよい。また、図14(A)および図15(A)では、カシメ部15がヨーク部11に設けられているが、ティース12に設けてもよい。
第1の鋼板9Aのカシメ部15と、第2の鋼板9Bのカシメ部15とは、軸方向に重なり合う位置に配置されていることが望ましい。また、第1の鋼板9Aの各カシメ部15の面積は、第2の鋼板9Bの各カシメ部15の面積と同じであることが望ましい。これにより、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを強固に固定することができる。
以上の点を除き、実施の形態4の電動機は、実施の形態1の電動機100と同様に構成されている。
以上説明したように、実施の形態4では、ステータコア10が、シェル40に間隔をあけて対向する第1のコア部10Aと、シェル40に当接する第2のコア部10Bとを有し、少なくとも1枚の第2の鋼板9Bのカシメ部15の側面と軸方向とのなす最大角度(角度R2)が、少なくとも1枚の第1の鋼板9Aのカシメ部15の側面と軸方向とのなす最大角度(角度R1)よりも大きい。そのため、ステータコア10における鉄損の増加を抑制して電動機効率を向上し、また、ステータコア10をシェル40に強固に固定することができる。
実施の形態5.
次に、実施の形態5について説明する。図16(A)は、実施の形態5のステータコア10における、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを示す平面図である。なお、図16(A)は、第1の鋼板9Aの1つの分割コア8(図2)に含まれる部分を示している。
図16(A)に示すように、1枚の第1の鋼板9Aには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部16が形成されている。当該2つのカシメ部16は、ヨーク部11に形成されている。カシメ部16は、軸方向に直交する面内で円形状を有する。
図16(B)は、図16(A)に示した線分16B-16Bにおける断面図である。図16(C)は、図16(A)に示した線分16C-16Cにおける断面図である。円形のカシメ部16の場合には、側面16bの開き角は0~30度であり、側面16bと軸方向とのなす角度R1は0~15度である。
図17(A)は、実施の形態5のステータコア10における、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bを示す平面図である。なお、図15(A)は、第2の鋼板9Bの1つの分割コア8(図2)に含まれる部分を示している。
図17(A)に示すように、1枚の第2の鋼板9Bには、1つの分割コア8につき、2つのカシメ部15が形成されている。当該2つのカシメ部15は、ヨーク部11に形成されている。カシメ部15は、軸方向に直交する面内で長方形形状を有する。
図17(B)は、図17(A)に示した線分17B-17Bにおける断面図であり、カシメ部15の長辺に沿った面における断面図である。図17(C)は、図17(A)に示した線分17C-17Cにおける断面図であり、カシメ部15の短辺に沿った面における断面図である。実施の形態4で説明した通り、側面15bと軸方向とのなす角度R2は15~75度であり、側面15cと軸方向とのなす角度r2も15~75度である。但し、側面15bと軸方向とのなす角度R2は、側面15cと軸方向とのなす角度r2よりも大きい。
軸方向に直交する面内で円形状のカシメ部16(丸カシメ部)は、軸方向に直交する面内で長方形形状のカシメ部15(Vカシメ部)と比較して、側面15bの軸方向からの傾きが小さいため、締結強度が高い。
この実施の形態5では、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bに、軸方向に直交する面内で長方形形状のカシメ部15を用い、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aに、軸方向に直交する面内で円形状のカシメ部16を用いることで、第2のコア部10Bでの鉄損を低減し、且つ第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aを強固に固定することができる。
ここでは、第2のコア部10Bの全ての第2の鋼板9Bのカシメ部16が長方形形状を有し、第1のコア部10Aの全ての第1の鋼板9Aのカシメ部15が円形状を有している。しかしながら、第2のコア部10Bの少なくとも1枚の第2の鋼板9Bのカシメ部16が長方形形状を有し、第1のコア部10Aの少なくとも1枚の第1の鋼板9Aのカシメ部15が円形状を有していればよい。
ここでは、第1の鋼板9Aの1枚当たりのカシメ部15の数と、第2の鋼板9Bの1枚当たりのカシメ部15の数とは互いに同数であるが、互いに異なっていてもよい。また、図16(A)および図17(A)では、カシメ部15,16がヨーク部11に設けられているが、ティース12に設けてもよい。
第1の鋼板9Aのカシメ部15と、第2の鋼板9Bのカシメ部15とは、軸方向に重なり合う位置に配置されていることが望ましい。また、第1の鋼板9Aの各カシメ部15の面積は、第2の鋼板9Bの各カシメ部15の面積と同じであることが望ましい。これにより、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを強固に固定することができる。
以上の点を除き、実施の形態5の電動機は、実施の形態1の電動機100と同様に構成されている。
以上説明したように、実施の形態5では、ステータコア10が、シェル40に間隔をあけて対向する第1のコア部10Aと、シェル40に当接する第2のコア部10Bとを有し、少なくとも1枚の第2の鋼板9Bのカシメ部15が軸方向に直交する面内で長方形形状を有し、少なくとも1枚の第1の鋼板9Aのカシメ部15が軸方向に直交する面内で円形状を有する。そのため、ステータコア10における鉄損の増加を抑制して電動機効率を向上し、また、ステータコア10をシェル40に強固に固定することができる。
<鋼板の剥離強度>
次に、第1のコア部10Aおよび第2のコア部10Bの剥離強度について説明する。図18(A)は、ステータコア10の第1のコア部10Aの剥離強度の測定方法を示す模式図である。図18(B)は、ステータコア10の第2のコア部10Bの剥離強度の測定方法を示す模式図である。
剥離強度は、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとで別々に測定する。そのため、第1のコア部10Aおよび第2のコア部10Bは、シェル40に組み込まれておらず、コイル3も巻き付けられていない。
図18(A)に示すように、第1のコア部10Aの軸方向両端を一対の把持部61で把持し、第1のコア部10Aに軸方向の引っ張り力を加える。第1のコア部10Aにおいて第1の鋼板9Aの剥離が生じたときの荷重をF1とする。
同様に、図18(B)に示すように、第2のコア部10Bの軸方向両端を一対の把持部61で把持し、第2のコア部10Bに軸方向の引っ張り力を加える。第2のコア部10Bにおいて第2の鋼板9Bの剥離が生じたときの荷重をF2とする。
なお、荷重F1,F2の比較においては、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとで鋼板の積層枚数が異なっていてもよい。
第1のコア部10Aおよび第2のコア部10Bは、実施の形態1~5で説明したいずれの構成を有していてもよい。いずれの場合も、第2のコア部10Bの第2の鋼板9Bの締結強度が、第1のコア部10Aの第1の鋼板9Aの締結強度よりも低いため、第2の鋼板9Bを剥離させるために必要な荷重は、第1の鋼板9Aを剥離させるために必要な荷重よりも小さい。
このように、第2の鋼板9Bを剥離させるために必要な荷重が、第1の鋼板9Aを剥離させるために必要な荷重よりも小さいことにより、実施の形態1~5で説明したように、鉄損の増加を抑制して電動機効率を向上し、また、ステータコア10をシェル40に強固に固定することができる。
<第1のコア部と第2のコア部との境界部分>
次に、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとの境界部分について説明する。ステータコア10では、第1のコア部10Aの軸方向両側に第2のコア部10Bが配置されているため、コア部10A,10Bの境界部分が2箇所存在する。
上述した実施の形態1において、第1のコア部10Aと、その上方の第2のコア部10Bとの境界部分では、第2の鋼板9Bのヨーク部11のカシメ部15(図7(B))の凸部が、第1の鋼板9Aのヨーク部11のカシメ部15(図7(A))の凹部に係合する。
一方、第1のコア部10Aと、その下方の第2のコア部10Bとの境界部分では、第1のコア部10Aのティース12のカシメ部15(図7(A))の凸部に、第2のコア部10Bのティース12の平坦面が対向するため、凸部と凹部との係合状態が得られない。
しかしながら、図19に示すように、第1のコア部10Aの端部の第1の鋼板9Aと、第2のコア部10Bの端部の第2の鋼板9Bとの間には、接着剤の層(接着層)7が設けられており、カシメ部15の凸部が接着層7の内部に収まる。そのため、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを確実に固定することができる。
また、上述した実施の形態2において、第1のコア部10Aと、その上方の第2のコア部10Bとの境界部分では、面積の小さいカシメ部15(図10(B))の凸部が、面積の大きいカシメ部15(図10(A))の凹部に係合する。
一方、第1のコア部10Aと、その下方の第2のコア部10Bとの境界部分では、面積の大きいカシメ部15(図10(A))の凸部が、面積の小さいカシメ部15(図10(B))の凹部に対向するため、凸部と凹部との係合状態が得られない。
この場合も、図19に示すように、第1のコア部10Aの端部の第1の鋼板9Aと、第2のコア部10Bの端部の第2の鋼板9Bとの間に接着層7が設けられ、カシメ部15の凸部が接着層7の内部に収まる。そのため、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとを確実に固定することができる。また、第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとの積層時に、面積の小さいカシメ部15(図10(B))の凹部が変形し、面積の大きいカシメ部15(図10(A))の凸部に係合する場合もある。
また、図20に示すように、ステータコア10の第1のコア部10Aおよび第2のコア部10Bを軸方向に貫通する貫通穴105を形成し、この貫通穴105に金属製の固定ピン81を嵌合させて、第1のコア部10Aおよび第2のコア部10Bを強固に固定してもよい。
<分割コアの構成>
図21(A)および(B)は、実施の形態1~5のステータコア10を構成する分割コア8を説明するための模式図である。
図21(A)に示すステータコア10では、複数の分割コア8が、ヨーク部11の外周側に形成された薄肉連結部17で連結され、帯状に延在している。薄肉連結部17は、ヨーク部11において分割面14の外周側に形成された薄肉部である。薄肉連結部17を塑性変形させることにより、ステータコア10を図2に示したように環状に組み立てることができる。
図21(B)に示すステータコア10では、複数の分割コア8が独立して構成されている。分割コア8を分割面14で互いに溶接することにより、図2に示した環状のステータコア10が得られる。
図21(A)および(B)に示したステータコア10は、複数の分割コア8が連結されているため、環状に打ち抜き加工された電磁鋼板を積層したステータコアと比較すると、真円度を向上しにくい。上述した各実施の形態では、ステータコア10の第2のコア部10Bにシェル40からの圧縮応力が集中し、ステータコア10が強く締め付けられるため、真円度を向上することができる。
また、図21(A)に示した薄肉連結部17の代わりに、図22に示すジョイントラップを設けてもよい。ジョイントラップは、隣り合う分割コア8の鋼板9に形成したカシメ部19を交互に組み合わせることで、分割コア8を帯状から環状に変形させるときの支軸Zとするものである。
なお、ステータコアは、複数の分割コア8(図2)を組み合わせて構成されたものに限らず、環状に打ち抜き加工された電磁鋼板を積層したものであってもよい。
<他の構成例>
図23は、電動機100の他の構成例を示す縦断面図である。実施の形態1では、ステータコア10の軸方向両端に第2のコア部10Bが配置され、軸方向中央に第1のコア部10Aが配置されていた(図4参照)。
これに対し、図23に示した構成例では、ステータコア10の軸方向中央と軸方向両端の合計3か所に第2のコア部10Bが配置されている。また、第1のコア部10Aは、軸方向中央の第2のコア部10Bの両側の2か所に配置されている。
このような構成においても、第2のコア部10Bがシェル40に当接することにより、ステータコア10を強固に保持することができ、第1のコア部10Aがシェル40に当接しないことにより、圧縮応力に起因する鉄損を低減することができる。
また、第1のコア部10Aおよび第2のコア部10Bの配置は、図4および図23に示した配置には限定されない。第1のコア部10Aと第2のコア部10Bとが軸方向に配置され、第1のコア部10Aがシェル40に間隔をあけて対向し、第2のコア部10Bがシェル40に当接していればよい。
図24は、カシメ部15の長辺方向の断面形状を示す模式図である。図24は、ステータコア10を軸方向と平行な面で切断し、切断面を顕微鏡で観察した拡大画像を元に作成した図である。図24から、カシメ部15の底面15aは軸方向に直交する平坦面であり、側面15bは軸方向に対して傾斜した面であることが分かる。
<圧縮機の構成>
次に、各実施の形態の電動機が適用可能な圧縮機500について説明する。図25は、圧縮機500を示す縦断面図である。圧縮機500は、ロータリ圧縮機であり、例えば空気調和装置400(図26)に用いられる。圧縮機500は、圧縮機構部501と、圧縮機構部501を駆動する電動機100と、圧縮機構部501と電動機100とを連結するシャフト60と、これらを収容する密閉容器507とを備える。ここでは、シャフト60の軸方向は鉛直方向であり、電動機100は圧縮機構部501に対して上方に配置されている。
密閉容器507は、鋼板で形成された容器であり、円筒状のシェル40と、シェル40の上側を覆う容器上部と、シェル40の下側を覆う容器底部とを有する。電動機100のステータ1は、焼き嵌め、圧入または溶接等により、密閉容器507のシェル40の内側に組み込まれている。
密閉容器507の容器上部には、冷媒を外部に吐出する吐出管512と、電動機100に電力を供給するための端子511とが設けられている。また、密閉容器507の外部には、冷媒ガスを貯蔵するアキュムレータ510が取り付けられている。密閉容器507の容器底部には、圧縮機構部501の軸受部を潤滑する冷凍機油が貯留されている。
圧縮機構部501は、シリンダ室503を有するシリンダ502と、シャフト60に固定されたローリングピストン504と、シリンダ室503の内部を吸入側と圧縮側に分けるベーンと、シリンダ室503の軸方向両端部を閉鎖する上部フレーム505および下部フレーム506とを有する。
上部フレーム505および下部フレーム506は、いずれも、シャフト60を回転可能に支持する軸受部を有する。上部フレーム505および下部フレーム506には、上部吐出マフラ508および下部吐出マフラ509がそれぞれ取り付けられている。
シリンダ502には、軸線C1を中心とする円筒状のシリンダ室503が設けられている。シリンダ室503の内部には、シャフト60の偏心軸部60aが位置している。偏心軸部60aは、軸線C1に対して偏心した中心を有する。偏心軸部60aの外周には、ローリングピストン504が嵌合している。電動機100が回転すると、偏心軸部60aおよびローリングピストン504がシリンダ室503内で偏心回転する。
シリンダ502には、シリンダ室503内に冷媒ガスを吸入する吸入口515が形成されている。密閉容器507には、吸入口515に連通する吸入管513が取り付けられ、この吸入管513を介してアキュムレータ510からシリンダ室503に冷媒ガスが供給される。
圧縮機500には、空気調和装置400(図26)の冷媒回路から低圧の冷媒ガスと液冷媒とが混在して供給されるが、液冷媒が圧縮機構部501に流入して圧縮されると、圧縮機構部501の故障の原因となる。そのため、アキュムレータ510で液冷媒と冷媒ガスとを分離し、冷媒ガスのみを圧縮機構部501に供給する。
冷媒としては、例えば、R410A、R407CまたはR22等を用いてもよいが、地球温暖化防止の観点からは、GWP(地球温暖化係数)の低い冷媒を用いることが望ましい。
圧縮機500の動作は、以下の通りである。端子511からステータ1のコイル3に電流が供給されると、電流によって生じる回転磁界とロータ5の永久磁石55の磁界とにより、ステータ1とロータ5との間に吸引力および反発力が発生し、ロータ5が回転する。これに伴い、ロータ5に固定されたシャフト60も回転する。
圧縮機構部501のシリンダ室503には、吸入口515を介してアキュムレータ510から低圧の冷媒ガスが吸入される。シリンダ室503内では、シャフト60の偏心軸部60aとこれに取り付けられたローリングピストン504が偏心回転し、シリンダ室503内で冷媒を圧縮する。
シリンダ室503で圧縮された冷媒は、図示しない吐出口および吐出マフラ508,509を通って密閉容器507内に吐出される。密閉容器507内に吐出された冷媒は、ロータコア50の穴部57,58(図1)等を通って密閉容器507内を上昇し、吐出管512から吐出され、空気調和装置400(図26)の冷媒回路に送り出される。
圧縮機500は、実施の形態1~5および変形例で説明した電動機が適用可能であるため、圧縮機500の運転効率を向上することができる。
<空気調和装置>
次に、図25に示した圧縮機500を備えた空気調和装置400について説明する。図26は、空気調和装置400を示す図である。空気調和装置400は、上記の圧縮機500と、切り替え弁としての四方弁401と、冷媒を凝縮する凝縮器402と、冷媒を減圧する減圧装置403と、冷媒を蒸発させる蒸発器404と、これらを結ぶ冷媒配管410とを備える。
圧縮機500、四方弁401、凝縮器402、減圧装置403および蒸発器404は、冷媒配管410によって連結され、冷媒回路を構成している。また、圧縮機500は、凝縮器402に対向する室外送風機405と、蒸発器404に対向する室内送風機406とを備える。
空気調和装置400の動作は、次の通りである。圧縮機500は、吸入した冷媒を圧縮して高温高圧の冷媒ガスとして送り出す。四方弁401は、冷媒の流れ方向を切り替えるものであるが、冷房運転時には、図26に示すように、圧縮機500から送り出された冷媒を凝縮器402に流す。
凝縮器402は、圧縮機500から送り出された冷媒と、室外送風機405により送られた室外空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮して液冷媒として送り出す。減圧装置403は、凝縮器402から送り出された液冷媒を膨張させて、低温低圧の液冷媒として送り出す。
蒸発器404は、減圧装置403から送り出された低温低圧の液冷媒と室内空気との熱交換を行い、冷媒を蒸発(気化)させ、冷媒ガスとして送り出す。蒸発器404で熱が奪われた空気は、室内送風機406により、空調対象空間である室内に供給される。
なお、暖房運転時には、四方弁401が、圧縮機500から送り出された冷媒を蒸発器404に送り出す。この場合、蒸発器404が凝縮器として機能し、凝縮器402が蒸発器として機能する。
圧縮機500は、上記の通り高い運転効率を有するため、空気調和装置400の運転効率を高めることができる。
以上、本発明の望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良または変形を行なうことができる。