以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分に同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
実施の形態1.
<レーザ印字装置の構成>
図1および図2は、実施の形態1に係る印字装置の全体構成を示す図である。図1は実施の形態1に係る印字装置の上面図であり、図2は実施の形態1に係る印字装置の正面図である。
実施の形態1に係る印字装置100は、印字対象のワーク1の表面にキャラクタを印字するための装置である。本願明細書において、「キャラクタ」は、文字、数字、図形、記号またはコード(二次元コード、バーコード、QRコード(登録商標)など)など識別可能な情報である。識別情報は、例えばワーク1の製品名、製造番号、製品の試験結果などの製品情報を含む。「印字」とはキャラクタをワーク1の表面に付すことである。
印字装置100は、レーザビームをワーク1の表面に当てることで、非接触の熱加工によりワーク1の表面にキャラクタを印字するように構成される。
ワーク1には、樹脂、ガラス、木材および金属など様々な材料で形成されたワークを適用することができる。図3は、ワーク1の構成例を示す図である。図3(A)はワーク1の上面図であり、図3(B)はワーク1の正面図である。ワーク1の表面にはニッケルめっきが施されている。
図3(A)および(B)を参照して、ワーク1は、第1円柱体1aおよび第2円柱体1bを有する。第2円柱体1bの直径は第1円柱体1aの直径よりも小さい。第2円柱体1bは第1円柱体1aの上面に配置される。図3(A)に示すように、第1円柱体1aおよび第2円柱体1bは同心円状に配置される。第1円柱体1aの上面のうち、第1円柱体1aの外周円と第2円柱体1bの外周円とで囲まれた円環状の領域(図3(A)中の斜線領域RGNに相当)は、キャラクタを印字可能な領域(以下、「印字可能領域」とも称する)である。この印字可能領域RGN内にキャラクタの印字箇所9が設定される。
キャラクタは例えば二次元コードであり、キャラクタの印字箇所9は矩形形状を有している。印字箇所9の中心点(図中の点P)は、第1円柱体1aのX軸方向の中心線Lxと、印字可能領域のY軸方向の中心線Lcとの交点に設定される。Y軸方向の中心線Lcは、X軸方向の中心線Lxと第2円柱体1bの外周面との交点を通りY軸方向に延びる直線Lbと、X軸方向の中心線Lxと第1円柱体1aの外周面との交点を通りY軸方向に延びる直線Laとの中間に位置する。
図1および図2を参照して、実施の形態1に係る印字装置100は、搬送シャトル2と、複数の固定チャック3と、レーザ変位計4と、視覚センサ5と、レーザマーカ6と、Z軸アクチュエータ7と、Y軸アクチュエータ8と、制御装置10とを備える。
搬送シャトル2は、図示しない電動モータを駆動源としてワーク1を搬送する。搬送シャトル2の端部には、印字前のワーク1を印字装置100に搬入し、かつ、印字後のワーク1を印字装置100から搬出するための搬入・搬出部2Aが設けられる。
本願明細書では、ワーク1に照射されるレーザビームの光軸方向をZ軸方向とし、搬送シャトル2によるワーク1の搬送方向をX軸方向とし、搬送シャトル2の幅方向をY軸方向とする。なお、X軸方向はレーザマーカ6に向かう方向を正方向とし、レーザマーカ6から離れる方向を負方向とする。
複数の固定チャック3は、搬送シャトル2上にX軸方向に沿って等間隔に設置される。各固定チャック3は、ワーク1をチャックすることによりワーク1を固定することができる。Y軸アクチュエータ8は各固定チャック3に取り付けられる。Y軸アクチュエータ8は、対応する固定チャック3をY軸方向に移動可能に構成される。
搬送シャトル2の搬入・搬出部2Aに位置する固定チャック3にワーク1が載置されると、ワーク1は固定チャック3に固定される。ワーク1は固定チャック3とともに搬送シャトル2によってX軸の正方向に搬送され、レーザマーカ6に搬入される。レーザマーカ6においてキャラクタが印字されたワーク1は、搬送シャトル2によってレーザマーカ6から搬出され、固定チャック3とともにX軸負方向に搬入・搬出部2Aまで搬送される。
搬入・搬出部2Aからレーザマーカ6に至る搬送シャトル2上には、レーザ変位計4および視覚センサ5が設置される。図2に示すように、レーザ変位計4は、搬送シャトル2のZ軸方向の上方に配置される。レーザ変位計4は、ワーク1の印字面のZ軸方向の位置を測定し、測定値を制御装置10へ出力する。レーザ変位計4には公知のレーザ変位計を用いることができる。レーザ変位計は「変位計」の一実施例に対応する。変位計には、レーザ変位計などの光学式の変位計に代えて、接触式、渦電流式または超音波式の変位計を用いることができる。
視覚センサ5は、レーザ変位計4よりもX軸の正方向側であって、搬送シャトル2のZ軸方向の上方に設置される。Z軸アクチュエータ7は視覚センサ5に取り付けられる。Z軸アクチュエータ7は、視覚センサ5をZ軸方向に移動可能に構成される。これにより、視覚センサ5のワーキングディスタンスを調整することができる。なお、本願明細書において、「ワーキングディスタンス」とはレンズのワーク1側の面とワーク1の印字面との間の距離を意味する。
視覚センサ5は、印字前のワーク1を撮像して得られる画像データに対して画像処理を実行することにより、ワーク1の実際の印字箇所9を検出する。また、視覚センサ5は、印字後のワーク1を撮像して得られる画像データに対して画像処理を実行することにより、ワーク1にキャラクタが正常に印字されているかどうかを検査する。視覚センサ5は、取得した画像データおよび画像処理によって得られたデータを制御装置10へ出力する。
具体的には、視覚センサ5は、ワーク1を撮像するための撮像部5aと、撮像部5aによって撮像された画像を処理するための画像処理部5bとを有する(図5参照)。撮像部5aは、レンズおよび絞りなどの光学系と、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの受光素子とを含む。
撮像部5aの撮像範囲は、搬送シャトル2の幅方向の全体を含むように設定されている。撮像部5aは、搬送シャトル2のZ軸方向の上方から、搬送されるワーク1の上面を順次撮像する。画像処理部5bは、ワーク1ごとに、撮像部5aの撮像画像に基づいて実際の印字箇所9を検出し、実際の印字箇所9の検出位置を示す信号を制御装置10へ出力する。
レーザマーカ6は、視覚センサ5よりもX軸の正方向側に設置される。本実施の形態におけるレーザマーカ6は、ガルバノスキャナを利用したレーザ加工装置である。図4は、レーザマーカ6の構成例を模式的に示す図である。
図4を参照して、レーザマーカ6は、マーカヘッド60および制御部62を有する。マーカヘッド60は、ワーク1のZ軸方向の上方に設置される。マーカヘッド60は、レーザ発振器61と、ガルバノミラー63a,63bと、ガルバノモータ64a,64bと、ガルバノドライバ65と、fθレンズ66とを有する。
レーザ発振器61は、レーザビームを発生する。マーカヘッド60は、レーザ発振器61から出力されるレーザビームをワーク1の表面上で走査させることにより、ワーク1の表面にキャラクタを印字するように構成される。
具体的には、ガルバノミラー63a,63bおよびガルバノモータ64a,64bは、レーザ発振器61から出力されるレーザビームを走査する走査機構を構成する。第1ガルバノミラー63aおよび第1ガルバノモータ64aは、レーザ発振器61から出力されるレーザビームをX軸方向に走査するX軸スキャナを構成する。第2ガルバノミラー63bおよび第2ガルバノモータ64bは、レーザビームをY軸方向に走査するY軸スキャナを構成する。
第1ガルバノミラー63aと第2ガルバノミラー63bとは、互いに交差する回転軸にそれぞれ配置される。第1ガルバノモータ64aは、第1ガルバノミラー63aを軸回転させることによって、レーザビームをX軸方向に走査させる。第2ガルバノモータ64bは、第2ガルバノミラー63bを軸回転させることによって、レーザビームをY軸方向に走査させる。第2ガルバノミラー63で偏向されたレーザビームはfθレンズ66に入射される。fθレンズ66は、入射されたレーザビームを集光し、ワーク1の表面に向かって垂直に照射する。
ガルバノモータ64a,64bはガルバノドライバ65に接続される。ガルバノドライバ65はガルバノモータ64a,64bを駆動する。ガルバノドライバ65およびレーザ発振器61は制御部62に接続されている。制御部62から与えられる制御信号によって、レーザ発振器61およびガルバノモータ64a,64bの動作が制御される。
<制御装置10の構成>
図1および図2に戻って、制御装置10は、搬送シャトル2、固定チャック3、レーザ変位計4、視覚センサ5、レーザマーカ6、Z軸アクチュエータ7およびY軸アクチュエータ8の各々と通信可能に接続される。制御装置10は、これらの機器との間でデータを遣り取りすることにより、印字装置100全体を制御するように構成される。
(制御装置10のハードウェア構成)
図5は、制御装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5を参照して、制御装置10は、印字装置100全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)12と、メモリと、通信部22と、I/O(Input/Output)インターフェース18と、表示部24と、入力部26とを備える。
制御装置10は一般的なコンピュータに相当する機能を有して構成することができる。制御装置10は、少なくとも1台のコンピュータにより構成することができる。または、制御装置10が有する機能の全部または一部をネットワーク上のサーバ(クラウドサーバなど)により実現することができる。
通信部22は、制御装置10と、レーザ変位計4、視覚センサ5、レーザマーカ6、Z軸アクチュエータ7およびY軸アクチュエータ8との間におけるデータの遣り取りを仲介する機能を有する。
メモリは、例えば、CPU12で実行されるプログラムを記憶するためのメモリであるROM(Read Only Memory)14、CPU12で実行する際の作業領域となった計算値を記憶するためのメモリであるRAM(Random Access Memory)16、およびHDD(Hard Disk Drive)20を含む。
I/Oインターフェース18は、制御装置10への入力または制御装置10からの出力のインターフェースである。I/Oインターフェース18には、表示部24および入力部26が接続され、ユーザが入力部26に対して入力した情報を受け付ける。入力部26は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルまたはコントローラである。また、制御装置10の処理結果(例えば、ワーク1の画像データおよびワーク1の外観検査結果など)を表示部24へ出力する。表示部24は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイによって構成される。表示部24は制御装置10から出力される信号に従う映像または画像を表示する。
制御装置10における処理は、各ハードウェアおよびCPU12により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアはROM14またはHDD20に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、図示しない記憶媒体に格納され、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。あるいは、ソフトウェアは、インターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供される場合もある。このようなソフトウェアは、読取装置により記憶媒体から読み取られて、あるいは通信部を介してダウンロードされた後、HDDに一旦格納される。そして、ソフトウェアは、CPU12によってHDD20から読み出され、CPU12により実行可能な形式でRAMに格納される。CPU12は、このプログラムを実行する。
(制御装置10の機能的構成)
図6は、制御装置10の機能的構成を概略的に示すブロック図である。
図6を参照して、制御装置10は、データ処理部30と、駆動部32と、通信部22と、表示部24と、入力部26とを有する。
データ処理部30は、WD(ワーキングディスタンス)補正部40と、印字箇所補正部42と、異物除去処理部44と、検査部46とを有する。
(1)WD補正部40
WD補正部40は、視覚センサ5およびレーザマーカ6のマーカヘッド60のワーキングディスタンスを補正する。具体的には、WD補正部40は、レーザ変位計4から通信部22を介してワーク1の印字面のZ軸方向の位置の測定値を受信する。WD補正部40は、受信した測定値に基づいて、視覚センサ5およびレーザマーカ6の各々のワーキングディスタンスを測定する。視覚センサ5のワーキングディスタンスは、撮像部5aのレンズのワーク1側の面とワーク1の印字面との間の距離である。マーカヘッド60のレンズのワーク1側の面とワーク1の印字面との間の距離である。
WD補正部40は、視覚センサ5およびレーザマーカ6の各々について、ワーキングディスタンスの基準値を有している。ワーキングディスタンスの基準値は、レンズの焦点距離に設定されている。
図7は、マーカヘッド60のワーキングディスタンスの補正方法を説明する図である。図7(A)は、マーカヘッド60のワーキングディスタンスWDとマーカヘッド60の焦点距離Fとが等しい状態を示している。図7(B)は、ワーキングディスタンスWDが焦点距離Fより短い状態を示している。図7(C)は、ワーキングディスタンスWDが焦点距離Fより長い状態を示している。
図7(A)に示すように、ワーキングディスタンスWDと焦点距離Fとが等しい場合には、印字面の高さでレーザビームLBが集光されるため、印字されるキャラクタを正確かつ鮮明に印字することができる。
これに対して、図7(B)に示すように、ワーキングディスタンスWDが焦点距離Fより短い場合には、印字面の高さでレーザビームLBが集光されないため、印字されるキャラクタが不鮮明になる、またはキャラクタが印字されない可能性がある。図7(C)のようにワーキングディスタンスWDが焦点距離Fよりより長い場合も同様のことが起こり得る。
図示は省略するが、視覚センサ5においても、ワーキングディスタンスと焦点距離とが一致しない場合には、印字面に焦点の合った画像を撮像することが困難となる可能性がある。
WD補正部40は、視覚センサ5およびレーザマーカ6の各々について、ワーキングディスタンスの基準値(焦点位置)に対する測定値の偏差を算出する。算出された偏差は、ワーキングディスタンスの基準値に対する測定値のずれに相当する。このずれは、ワーク1の寸法誤差または、固定チャック3に対するワーク1の取り付け誤差などによって発生し得る。
WD補正部40は、算出した偏差に基づいてワーキングディスタンスの補正量を設定する。WD補正部40は、視覚センサ5のワーキングディスタンスの補正量をZ軸アクチュエータ7に出力し、レーザマーカ6のワーキングディスタンスの補正量をレーザマーカ6に出力する。Z軸アクチュエータ7は、補正量に基づいて視覚センサ5をZ軸方向に移動させる。これにより、視覚センサ5のワーキングディスタンスを基準値(焦点距離)に一致させることができるため、視覚センサ5はワーク1の印字面に焦点の合った画像を撮像することが可能となる。レーザマーカ6は、補正量に基づいてマーカヘッド60をZ軸方向に移動させる。これにより、マーカヘッド60のワーキングディスタンスを基準値(焦点距離)に一致させることができるため、印字面に正確かつ鮮明に印字することが可能となる。
なお、本実施の形態では、視覚センサ5およびマーカヘッド60をZ軸方向に移動させることによりワーキングディスタンスを補正する構成としたが、固定チャック3をZ軸方向に移動可能に構成されたZ軸アクチュエータを固定チャック3に取り付け、Z軸アクチュエータによって固定チャック3をZ軸方向に移動させることにより、ワーキングディスタンスを補正する構成としてもよい。
(2)印字箇所補正部42
図6に戻って、印字箇所補正部42は、視覚センサ5から通信部22を介して、ワーク1ごとの実際の印字箇所9の検出位置を示す信号を受信する。印字箇所補正部42は、受信した信号に基づいて、ワーク1ごとに印字箇所を補正する。
図8は、ワーク1ごとに生じ得る印字箇所の変位(ずれ)を説明する図である。図8(A)および(B)はワーク1の正面図である。
図8(A)は、ワーク1が正規の姿勢で固定チャック3に固定されている状態を示している。ワーク1は、第1円柱体1aのY軸方向の中心線Lyが、固定チャック3のY軸方向の中心線L3に一致するように固定される。印字箇所9は、固定チャック3の中心線L3を基準として設定される。印字箇所9のY軸方向の中心線Lcの位置は、固定チャック3の中心線L3からの距離d1で定められる。
図8(B)は、ワーク1が正規でない姿勢で固定チャック3に固定されている状態を示している。図8(B)では、ワーク1のY軸方向の中心線Lyは固定チャック3のY軸方向の中心線L3からX軸方向にずれている。そのため、固定チャック3の中心線L3から距離d1だけ離して印字箇所9の中心線Lcを定めると、図8(B)のように、印字箇所9の一部分がワーク1の印字可能領域からはみ出すことがある。これにより、ワーク1に印字されるキャラクタに欠けが生じてしまう。キャラクタの欠けを防ぐためには、ワーク1の姿勢に応じて印字箇所9を補正する必要がある。
印字箇所補正部42は、予め設定されている印字箇所9の基準位置を、視覚センサ5により検出されたワーク1の実際の印字箇所9に一致させるように補正する。図9は、印字箇所の補正方法を説明する図である。図9には、ワーク1の印字可能領域RGNが部分的に拡大して示されている。
図9において、印字箇所9は、固定チャック3の中心線L3を基準として設定された印字箇所の基準位置である。印字箇所9における所定の1点(例えば中心点とする)を、点P0(X0,Y0)で表すこととする。
視覚センサ5において、画像処理部5bは、撮像部5aにより撮像された印字前のワーク1の画像データを画像処理することで、実際の印字箇所9aを検出する。具体的には、画像処理部5bは、画像処理によってワーク1の表面の印字可能領域RGNを検出し、印字可能領域RGNの内周側のエッジEbおよび外周側のエッジEaを抽出する。画像処理部5bは、エッジEbとX軸方向の中心線Lxとの交点を通りY軸方向に延びる直線Lbと、エッジEaと中心線Lxとの交点を通りY軸方向に延びる直線Laとを引き、これら2つの直線La,Lbの中間に中心線Lcを引く。画像処理部5bは、中心線Lxと中心線Lcとの交点を実際の印字箇所9aの中心点とする。図9では、実際の印字箇所9aにおける中心点を、点P1(X1,Y1)で表している。
画像処理部5bは、実際の印字箇所9aの中心点P1(X1,Y1)を示す信号を、通信部22を介して印字箇所補正部42へ出力する。印字箇所補正部42は、画像処理部5bからの信号に基づいて、印字箇所9を補正する。具体的には、印字箇所補正部42は、印字箇所9の基準位置の中心点P0(X0,Y0)に対する、実際の印字箇所9aの中心点P1(X1,Y1)の変位量を算出する。変位量は、X軸方向の変位量ΔXおよびY軸方向の変位量ΔYを含む。X軸方向の変位量ΔX=X1-X0であり、Y軸方向の変位量ΔY=Y1-Y0である。
算出された変位量ΔX,ΔYは撮像画像上でのピクセル値で与えられる。印字箇所補正部42は、ピクセル値で与えられた変位量ΔX,ΔYを実際の変位量(単位はmm)に変換する。算出した変位量ΔX,ΔYに従って印字箇所9を変位させることにより、印字箇所9を実際の印字箇所9aに一致させることができる。
図6に戻って、印字箇所補正部42は、算出したXY軸方向の変位量ΔX,ΔYのうち、X軸方向の変位量ΔXをレーザマーカ6へ出力し、Y軸方向の変位量ΔYをY軸アクチュエータ8に出力する。
Y軸アクチュエータ8は、変位量ΔYに基づいて固定チャック3をY軸方向に移動させる。レーザマーカ6では、制御部62は、X軸方向の変位量ΔXに従って、印字箇所9の基準位置をX軸方向に移動させることにより、印字箇所9を補正する。ワーク1に印字する処理において、制御部62は、補正された印字箇所9に基づいて、マーカヘッド60のガルバノミラー63a,63bを駆動する。これによると、ワーク1が正規の姿勢で固定チャック3に固定されていない場合においても、ワーク1の印字領域RGNに設定された基準位置にキャラクタを印字することが可能となる。
なお、本実施の形態では、マーカヘッド60において印字箇所9のX軸方向の変位を補正し、かつ、Y軸アクチュエータ8によって印字箇所9のY軸方向の変位を補正する構成としたが、マーカヘッド60において印字箇所9のX軸方向の変位およびY軸方向の変位の両方を補正する構成としてもよい。
あるいは、固定チャック3をX軸方向に移動可能に構成されたX軸アクチュエータを固定チャック3にさらに取り付け、X軸アクチュエータおよびY軸アクチュエータ8によって固定チャック3をXY軸方向に移動させることにより、印字箇所9のX軸方向の変位およびY軸方向の変位の両方を補正する構成としてもよい。
(3)異物除去処理部44
異物除去処理部44は、ワーク1にキャラクタを印字する処理の前処理として、ワーク1の印字面に付着している異物(粉塵、汚れ、酸化物など)を除去する処理を行なうように構成される。具体的には、印字のために用いるレーザビームよりもパワーの小さいレーザビームを印字面に走査させることにより、印字面に付着している異物を溶融または蒸発させる。
図10は、異物除去処理を説明する図である。図10には、ワーク1の印字可能領域RGNが部分的に拡大して示されている。
図10に示すように、ワーク1の印字可能領域RGNには、印字箇所9に対応して、異物除去処理が施される処理箇所13が設定される。処理箇所13は、平面視において印字箇所9と重なるように配置される。
処理箇所13の面積は、印字箇所9の面積以上である。印字箇所9の面積以上であれば、異物除去処理によって印字箇所9全体に付着する異物を除去することができる。図10の例では、処理箇所13は、矩形形状の印字箇所9の各辺をΔL×2だけ拡大させた形状を有する。このΔLは、印字処理において印字箇所9に照射されるレーザビームの照射径などに応じて設定することができる。例えば、レーザビームの照射径が大きい場合には、レーザビームの照射径が小さい場合に比べて、ΔLを大きくすることができる。
印字箇所9に異物が付着した状態で印字を行なうと、異物の材料の特性に起因して、異物が付着した部分においてキャラクタが濃く(または薄く)印字される、または、異物が付着した部分が印字されない場合がある。その結果、キャラクタの一部にムラまたは欠けが生じてしまう。
あるいは、キャラクタの印字を均一に行なうことができても、ワーク1の表面がニッケルめっきされている場合には、めっき膜の平坦性が低いことから、印字後のワーク1の撮像画像において、キャラクタとその周辺部分とでコントラストに明確な差が現れにくい。このような場合には、撮像画像上ではキャラクタが周辺部分に同化してしまい、キャラクタを識別できないとして、外観検査において印字不良と判定されることが懸念される。
本実施の形態によれば、印字前のワーク1の印字箇所9に異常除去処理を施すことで、印字箇所9の表面に付着した異物を除去するとともに、印字箇所9の表面状態を均一にならして平坦性を高めることができる。これにより、ワーク1にキャラクタを正確かつ鮮明に印字することが可能となる。
異物除去処理部44は、ワーク1がマーカヘッド60の作業領域に到着すると、レーザマーカ6の制御部62に対して異物除去処理の実行指令を出力する。制御部62は、異物除去処理の実行指令を受けると、マーカヘッド60を制御することにより、ワーク1の印字可能領域RGN内に設定された処理箇所13にレーザビームを走査させる。
レーザビームの走査が終了すると、異物除去処理部44は、制御部62に対して印字処理の実行指令を出力する。制御部62は、印字処理の実行指令を受けると、マーカヘッド60を制御することにより、ワーク1の印字箇所9にレーザビームを走査させることにより、キャラクタを印字する。
(4)検査部46
検査部46は、視覚センサ5により取得された画像データに基づいて、印字後のワーク1の外観検査を行なう。検査部46は、通信部を介して画像データを受信すると、印字後のワーク1の撮像画像を表示部24に表示する。また、検査部46は、視覚センサ5の画像処理部5bによる画像処理に基づいて、ワーク1の印字箇所9にキャラクタが正常に印字されているか否かを判定し、判定結果を表示部24に表示する。
<印字装置100の動作>
次に、実施の形態1に係る印字装置100の動作について説明する。
図11は、実施の形態1に係る印字装置100により実行されるワーク1の印字工程の処理手順を説明するフローチャートである。図11のフローチャートは、1個のワーク1についての印字工程の手順を示したものである。搬送シャトル2上を複数のワーク1が搬送される場合、ワーク1ごとに図11の印字工程が実行される。
図11を参照して、最初に、搬送シャトル2の搬入・搬出部2Aに配置された固定チャック3にワーク1が載置されたことが検知されると(S01)、制御装置10は、固定チャック3をチャックすることによりワーク1を固定し、搬送シャトル2によってワーク1を搬入する(S02)。なお、ステップS01,S03,S08,S16における検知は、例えば、搬送シャトル2に設置された光電センサの検知信号に基づいて行なうことができる。
レーザ変位計4の測定位置にワーク1が到着したことが検知されると(S03)、レーザ変位計4はワーク1の印字面のZ軸方向の位置を測定する。制御装置10は、レーザ変位計4の測定値と、視覚センサ5およびレーザマーカ6の各々のレンズのZ軸方向の位置とに基づいて、視覚センサ5およびレーザマーカ6の各々のワーキングディスタンス(WD)を測定する(S04)。
制御装置10は、視覚センサ5およびレーザマーカ6の各々について、ワーキングディスタンスの基準値(焦点距離)に対する測定値の偏差を算出する。制御装置10は、算出した偏差が閾値より大きいか否かを判定する(S05)。ワーキングディスタンスの偏差が閾値より大きい場合(S05にてYES)、制御装置10は、上記偏差をワーキングディスタンスの補正量としてZ軸アクチュエータ7およびレーザマーカ6に出力する。
Z軸アクチュエータ7は、制御装置10から、視覚センサ5のワーキングディスタンスの補正量を受信すると、当該補正量に基づいて視覚センサ5をZ軸方向に移動させることにより、ワーキングディスタンスを基準値に補正する(S06)。
レーザマーカ6は、制御装置10から、レーザマーカ6のワーキングディスタンスの補正量を受信すると、当該補正量に基づいてマーカヘッド60をZ軸方向に移動させることにより、ワーキングディスタンスを基準値に補正する(S07)。なお、ステップS05においてワーキングディスタンスの偏差が閾値以下である場合(S05にてNO)、ステップS06およびS07の処理がスキップされる。
視覚センサ5の撮像範囲にワーク1が到着したことが検知されると(S08)、視覚センサ5はワーク1を撮像する(S09)。視覚センサ5は、撮像した画像データに画像処理を施すことにより、ワーク1の実際の印字箇所9a(図9参照)を検出する(S10)。
制御装置10は、平面視において実際の印字箇所9aと重なるように処理箇所13(図10参照)を設定する(S11)。
制御装置10は、予め設定されている印字箇所9の基準位置(図9参照)に対する、実際の印字箇所9aのXY軸方向の変位量を算出する(S12)。制御装置10は、印字箇所9の基準位置の所定の点(例えば、中心点P0(X0,Y0))に対する、実際の印字箇所9aの所定の点(中心点P1(X1,Y1))の変位量ΔX,ΔYを算出する。
制御装置10は、算出した変位量ΔX,ΔYが閾値より大きいか否かを判定する(S13)。X軸方向の変位量ΔXが閾値よりも大きい場合(S13にてYES)、制御装置10は、変位量ΔXをレーザマーカ6へ出力する。レーザマーカ6は、変位量ΔXに従って、印字箇所9の基準位置をX軸方向に移動させることにより、印字箇所9を補正する(S13)。
Y軸方向の変位量ΔYが閾値よりも大きい場合(S13にてYES)、制御装置10は、変位量ΔYをY軸アクチュエータ7へ出力する。Y軸アクチュエータ8は、変位量ΔYに基づいて固定チャック3をY軸方向に移動させる(S15)。なお、ステップS13において変位量ΔX,ΔYがいずれも閾値以下である場合(S13にてNO)、ステップS14およびS15の処理がスキップされる。
ワーク1がマーカヘッド60の作業領域に到着したことが検知されると(S16)、制御装置10は、最初に、ワーク1の印字箇所9に対して異物除去処理を実行する(S17)。制御装置10は、ステップS11で設定した処理箇所13の位置情報をレーザマーカ6へ出力する。制御部62は、処理箇所13の位置情報に基づいて、マーカヘッド60から照射されるレーザビームが処理箇所13を走査するように、マーカヘッド60を制御する。
異物除去処理(S17)が終了すると、制御装置10は、レーザマーカ6の制御部62に対して、印字開始指令を出力する。制御部62は、印字開始指令に従って、ワーク1の印字処理を実行する(S18)。制御部62は、X軸スキャナ(第1ガルバノミラー63aおよび第1ガルバノモータ64a)およびY軸スキャナ(第2ガルバノミラー63bおよび第2ガルバノモータ64b)を制御することにより、ワーク1の表面の印字箇所9(補正された印字箇所9を含む)にレーザビームを走査させる。これにより、印字箇所9にキャラクタが印字される。印字処理(S18)が終了すると、制御部62は、印字後のワーク1をレーザマーカ6から搬出する。
ワーク1が視覚センサに到着すると(S19)、視覚センサ5はワーク1を撮像する。制御装置10は、視覚センサ5によるワーク1の撮像画像に基づいて、ワーク1の外観検査を実行する(S19)。制御装置10は、ワーク1の撮像画像に基づいて、印字箇所9にキャラクタが正確かつ鮮明に印字されているか否かを判定し、判定結果を撮像画像とともに表示部24に出力する。外観検査(S20)が終了すると、制御装置10は、印字装置100からワーク1を搬出する(S21)。
以上説明したように、実施の形態1に係る印字装置100によれば、ワークの表面に設定された印字箇所と重なるように処理箇所を設定し、キャラクタを印字する処理の前に、当該処理箇所に異物除去処理を施すことにより、異物によるキャラクタの印字ムラおよび欠けを防止することができる。また、印字箇所の平坦性を高めることができるため、印字後のワークの表面においてキャラクタとその周辺部分とのコントラストの差が明確となる。これにより、ワークの外観検査において印字不良と誤って判定されることを抑制することができる。
なお、実施の形態1では、搬送シャトル2に設置された1台のレーザマーカ6によって異物除去処理および印字処理を実行する構成を例示したが、異物除去処理用のレーザマーカと印字処理用のレーザマーカとを搬送シャトル2に設置する構成としてもよい。これによると、異物除去処理と印字処理とを並行して実行することができるため、印字工程のサイクルタイムを短縮することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、ワーク1が正規の姿勢で固定されておらず、実際の印字箇所9aが予め設定されている印字箇所9の基準位置から変位している場合に、その変位量に応じて印字箇所9を補正する構成について説明した。
しかしながら、ワーク1が正規の姿勢で固定されている場合であっても、ワーク1自体の寸法誤差などに起因して、ワーク1の印字可能領域RGNが正規の印字可能領域RGNに比べて狭くなり、結果的に印字箇所9が印字可能領域RGNからはみ出す場合が起こり得る(図12参照)。
図12は、ワーク1の上面図である。図12(A)は、ワーク1が正規の寸法を有する場合の印字可能領域RGNと印字箇所9との位置関係を示している。図12(B)は、ワーク1の寸法が正規の寸法と異なる場合の印字可能領域RGNと印字箇所9との位置関係を示している。
図8(A)で示したように、ワーク1が正規の姿勢で固定されている場合、ワーク1のY軸方向の中心線Lyと固定チャック3のY軸方向の中心線L3とは一致する。したがって、固定チャック3の中心線L3を基準とし、中心線L3から距離d1離れて印字箇所9のY軸方向の中心線Lcが位置するように、印字箇所9の基準位置が設定される。
ワーク1が正規の寸法を有する場合には、図12(A)に示すように、印字箇所9は印字可能領域RGN内に収まっている。一方、ワーク1の寸法が正規の寸法と異なる場合には、図12(B)に示すように、ワーク1の印字可能領域RGNが、正規の印字可能領域RGNよりも狭くなる場合がある。図12(B)の例では、第1円柱体1aの直径が正規の寸法である一方で、第2円柱体1bの直径が正規の寸法よりも大きい。そのため、図12(A)に比べて印字可能領域RGNの幅が狭くなっている。
このような場合において、固定チャック3の中心線L3から距離d1離して印字箇所9の中心線Lcを設定すると、印字箇所9の一部が印字可能領域RGNからはみ出してしまう可能性がある。
図12(B)の例では、狭められた印字可能領域RGN内に印字箇所9を収めるためには、印字箇所9を基準位置から変位させるとともに、印字箇所9のサイズを縮小することが必要となる。
実施の形態2では、印字箇所9のサイズを縮小する方法について説明する。なお、実施の形態2に係る印字装置100は、実施の形態1に係る印字装置100と比較して、制御装置10の機能的構成のみが異なる。したがって、制御装置10以外の構成については説明を繰り返さない。
実施の形態2に係る印字装置100の制御装置10において、印字箇所補正部42は、印字箇所9のXY軸方向の位置を補正する機能に加えて、印字箇所9のサイズを縮小する機能を有する。
図13は、印字箇所のサイズを縮小する方法を説明する図である。図13には、ワーク1の印字可能領域RGNが部分的に拡大して示されている。
図13において、印字箇所9aは、視覚センサ5による撮像画像から検出された実際の印字箇所である。印字箇所9aの中心点P1(X1,Y1)は、X軸方向の中心線LxとY軸方向の中心線Lcとの交点である。印字箇所9aは矩形形状であって、正規の寸法を有している。
図13では、印字可能領域RGNが正規の寸法よりも狭いため、印字箇所9aの端部の一部分が印字可能領域RGNからはみ出している。
印字箇所補正部42は、撮像画像上で印字可能領域RGNに印字箇所9aの輪郭線を重ね合わせて表示させ、この輪郭線が印字可能領域RGN内に収まっているか否かを判定する。輪郭線の少なくとも一部が印字可能領域RGNの外部にある場合、印字箇所補正部42は、印字箇所9aは印字可能領域RGNからはみ出していると判定する。印字箇所補正部42は、輪郭線の全体が印字可能領域RGN内に収まるように、印字箇所9aを縮小する。
具体的には、図13に示すように、印字箇所補正部42は、中心点P1を固定した状態で相似形状を保ったまま、印字箇所9aを縮小する。図中の印字箇所9bは、縮小された印字箇所を示す。印字箇所9bの輪郭線が印字可能領域RGNのエッジEa,Ebとの間に所定の間隔を有するように、印字箇所9aを縮小する。印字箇所9aを相似形状を保って縮小することで、キャラクタの有する情報が改ざんされることを防ぐことができる。
また、縮小した印字箇所9bと印字可能領域RGNのエッジEa,Ebとの間に所定の間隔を保つことで、異物除去処理のための処理箇所を確保することができる。また、印字処理の誤差に起因して、印字されたキャラクタの一部が欠けてしまうことを防ぐことができる。この結果、印字可能領域RGNが正規の寸法よりも狭いワーク1に対しても、正確かつ鮮明にキャラクタを印字することができる。
<印字装置100の動作>
次に、実施の形態2に係る印字装置100の動作について説明する。
図14は、実施の形態2に係る印字装置100により実行されるワーク1の印字工程の処理手順を説明するフローチャートである。図14のフローチャートは、図11のフローチャートと同様に1個のワーク1についての印字工程の手順を示したものである。
図14のフローチャートは、図11のフローチャートにステップS22,S23の処理を追加したものである。図11と共通するステップS01~S21についての説明は省略する。
図14を参照して、図11と同じステップS10にて、ワーク1の実際の印字箇所9a(図9参照)が検出されると、制御装置10は、視覚センサ5の撮像画像に基づいて、ワーク1の印字可能領域RGNから印字箇所9aがはみ出しているかどうかを判定する(図13参照)。印字箇所9aが印字可能領域RGNからはみ出している場合(S22にてYES)、制御装置10は、印字可能領域RGN内に印字箇所が収まるように、印字箇所9aを相似形状で縮小する(S23)。印字箇所9aが印字可能領域RGNからはみ出していない場合(S22にてNO)、ステップS23の処理はスキップされる。
制御装置10は、印字箇所9a(縮小された印字箇所9b(図13参照)を含む)に基づいて、処理箇所13を設定する(S11)。制御装置10は、印字可能領域RGN内で、平面視において実際の印字箇所9a(縮小された印字箇所9bを含む)と重なるように処理箇所13を設定する。
以上説明したように、実施の形態2に係る印字装置100によれば、印字可能領域が正規の寸法よりも狭いワークについては、印字箇所を相似形状で縮小するとともに、印字可能領域内で、平面視において縮小された印字箇所と重なるように処理箇所が設定される。これによれば、ワークの寸法誤差に影響されることなく、正確かつ鮮明にキャラクタを印字することができる。
実施の形態3.
上述した実施の形態1および2では、印字箇所がXY平面に平行な面であるワークの印字方法について説明したが、本発明に係る印字装置は、印字面がXY平面に平行な面でないワークの印字にも適用することができる。実施の形態3では、ワーク1の印字箇所9が球面形状を有する場合における印字方法について説明する。
図15は、実施の形態3に係る印字装置100により実行されるワーク1の印字方法を説明する図である。なお、実施の形態3に係る印字装置100の構成は、実施の形態1に係る印字装置の構成と同じであるため図示および説明は繰返さない。
図15(A)は、ワーク1の表面の印字箇所9のある1点を基準点として、マーカヘッド60と当該基準点との間のワーキングディスタンスを基準値(マーカヘッド60の焦点距離F)に設定した場合における印字処理の様子を示している。
図15(A)に示すように、印字箇所9上の基準点以外の点では、マーカヘッド60との間のワーキングディスタンスが基準値と一致していない。そのため、レーザビームLBが印字箇所の高さで集光されないため、印字されるキャラクタが不鮮明になる、またはキャラクタが印字されないことが懸念される。
図15(B)に示すように、印字箇所におけるワーキングディスタンスの変化に応じて、マーカヘッド60の焦点距離を変化させることができれば、常にマーカヘッド60のワーキングディスタンスをマーカヘッド60の焦点距離に一致させることができる。
実施の形態3では、印字箇所にマトリクス状に複数の測定点を設定し、レーザ変位計4を用いて、各測定点とマーカヘッド60との間のワーキングディスタンスを測定する。なお、レーザ変位計4には、レーザ変位計4をXY軸方向に駆動可能なXY軸アクチュエータが取り付けられる。
印字処理において、制御装置10は、各測定点において、ワーキングディスタンスの測定値とマーカヘッド60の焦点距離Fとが一致するように、マーカヘッド60におけるレーザビームの出力条件を調整する。具体的には、制御装置10は、ワーキングディスタンスの測定値に応じて、制御装置10が有している設定焦点距離を変化させることで、焦点距離Fを調整することができる。例えば、ワーキングディスタンスが長くなるに従って、設定焦点距離をワーキングディスタンスの延長分補正することで、焦点距離Fを長くすることができる。このようにレーザビームの出力条件を調整しながら、印字箇所にレーザビームを走査させることにより、印字箇所に正確かつ鮮明にキャラクタを印字することができる。
異物除去処理においても、印字処理と同様の方法によって、測定点ごとにワーキングディスタンスに応じてレーザビームの出力条件を調整することにより、処理箇所全体に亘って異物を除去することができる。
なお、図15では印字箇所9が球面形状を有する場合の印字方法を説明したが、印字箇所9が凹凸形状を有する場合においても本印字方法を用いてキャラクタを印字することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。