以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
なお、以下の実施の形態においてA~Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
(実施の形態1)
<直流き電回路>
初めに、図1を参照し、実施の形態1の地絡検出装置が地絡の発生を検出する直流き電回路について説明する。図1は、実施の形態1の地絡検出装置が地絡の発生を検出する直流き電回路を模式的に示す回路図である。
図1に示すように、直流き電回路10は、鉄道線路としてのレールR1に沿って設けられたき電線又はき電線と並行して設けられたトロリー線よりなる回線としての電車線11及び12と、電車線11及び12に直流電力を供給する変電所13と、変電所13と電車線11とを接続する回線としてのき電ケーブル14と、変電所13と電車線12とを接続する回線としてのき電ケーブル15と、を備えている。変電所13は、電車線11に、き電ケーブル14を介して、直流電力(直流き電力)を供給し、変電所13は、電車線12に、き電ケーブル15を介して、直流電力を供給する。変電所13は、商用電源に接続された変圧器(図示は省略)と、変圧器(図示は省略)の三相交流出力を整流する整流器16と、を有する。
高圧側直流き電ケーブルであるき電ケーブル14の一端は、整流器16の高圧側出力端子に接続され、き電ケーブル14の他端は、電車線11に接続されている。高圧側直流き電ケーブルであるき電ケーブル15の一端は、整流器16の高圧側出力端子に接続され、き電ケーブル15の他端は、電車線12に接続されている。
また、直流き電回路10は、変電所13とレールR1とを接続する回線としてのき電ケーブル17を備えている。帰線側直流き電ケーブルとしてのき電ケーブル17の一端は、整流器16の低圧側出力端子に接続され、き電ケーブル17の他端は、レールR1に接続されている。
図1に示す状態では、電車E1は、電車線11から直流電力を供給されてレールR1上を走行している。
<地絡検出装置及び地絡検出方法>
次に、図1乃至図6を参照し、本実施の形態1の地絡検出装置及び地絡検出方法について説明する。本実施の形態1の地絡検出装置は、直流き電回路の地絡を検出する地絡検出装置である。また、本実施の形態1の地絡検出方法は、直流き電回路の地絡を検出する地絡検出方法であり、本実施の形態1の地絡検出装置を用いた地絡検出方法である。
図2は、実施の形態1の地絡検出装置の一例を示すブロック図である。図3は、実施の形態1の地絡検出方法の一部を示すフロー図である。図4は、地絡が発生している時にき電ケーブルに流れる電流を検出して電流検出部により生成された信号を模擬した模擬信号を示すグラフである。図5は、図4に示す模擬信号に対してバンドパスフィルタ処理と櫛形フィルタ処理とを施すことによりフィルタ処理部により生成された信号を示すグラフである。図6は、フィルタ処理部により生成された信号を模式的に示すグラフである。図6のグラフは、理解を簡単にするために、図5のグラフに示す模擬的な信号を更に模式的に示したものである。
図1及び図2に示すように、本実施の形態1の地絡検出装置20は、電流検出部21と、フィルタ処理部22と、比較計数部23と、地絡判定部としての判定部24と、を有する。
電流検出部21は、き電ケーブル14即ち直流き電回路10に流れる電流I1を検出し、検出された電流I1に基づいて信号SG1を生成する。電流検出部21として、例えばき電ケーブル14を囲むように配置され、両端に電圧が誘導されることによりき電ケーブル14に流れる電流I1を検出するロゴスキーコイル21aと、ロゴスキーコイル21aの両端に誘導された電圧に基づいて信号を生成する信号生成回路21bと、を含むものを用いることができる。或いは、図示は省略するものの、電流検出部21として、例えばき電ケーブル14の途中にき電ケーブル14に直列に挿入され、両端に電圧が発生することによりき電ケーブル14に流れる電流I1を検出するシャント抵抗と、シャント抵抗の両端に発生された電圧に基づいて信号を生成する信号生成回路と、を含むものを用いることもできる。或いは、ロゴスキーコイル21aに代えてホール素子を用いることもできる。なお、図1に示すように、ロゴスキーコイル21aは、き電ケーブル15にも設けられてもよい。
また、ロゴスキーコイル21aは、き電ケーブル14に流れる電流I1のうち直流成分を検出しないため、遮断周波数より高い周波数成分を減衰させず、遮断周波数より低い周波数成分を減衰させるハイパスフィルタもしくは微分演算要素として機能することができる。そのため、電流検出部21として、ロゴスキーコイル21aを含むものを用いる場合、後述するバンドパスフィルタの一部を兼ねることができる。
フィルタ処理部22は、電流検出部21により生成された信号SG1に対して、通過周波数帯域の周波数成分以外の周波数成分を減衰させるバンドパスフィルタ処理と、基本周波数を有する周波数成分、及び、基本周波数のN1倍(N1は2以上の整数)の周波数を有する周波数成分を減衰させる櫛形フィルタ処理と、を施すことにより、信号SG2を生成する。
フィルタ処理部22は、信号に対してバンドパスフィルタ処理を施すバンドパスフィルタ22aと、信号に対して櫛形フィルタ処理を施す櫛形フィルタ22bと、を含むことができる。バンドパスフィルタ22aとして、アナログ回路若しくはデジタル回路、又は、プログラムを実行するコンピュータを用いることができる。バンドパスフィルタ22aとして、アナログ回路を用いるか、若しくはデジタル回路又はコンピュータを用いる場合は無限インパルス応答(Infinite Impulse Response:IIR)フィルタ又は有限インパルス応答(Finite Impulse Response:FIR)フィルタ又はIIRフィルタとFIRフィルタの組み合わせよりなり、遮断周波数より高い周波数成分を減衰させず、遮断周波数より低い周波数成分を減衰させるハイパスフィルタと、IIRフィルタ又はFIRフィルタ又はIIRフィルタとFIRフィルタの組み合わせよりなり、遮断周波数より低い周波数成分を減衰させず、遮断周波数より高い周波数成分を減衰させるローパスフィルタと、を、組み合わせて用いることもできる。櫛形フィルタとして、信号にそれ自身を遅延させたものを追加することで干渉を生じさせるアナログ回路若しくはディジタル回路又はコンピュータを用いることができる。
フィルタ処理部22が、バンドパスフィルタ22aと、櫛形フィルタ22bと、を含む場合、後述するように、信号処理に必要なダイナミックレンジを限定する観点で、バンドパスフィルタ22aによるバンドパスフィルタ処理を施した後、櫛形フィルタ22bによる櫛形フィルタ処理を施すことが好ましい。しかし、バンドパスフィルタ処理、及び、櫛形フィルタ処理のいずれも線形演算であるため、櫛形フィルタ22bによる櫛形フィルタ処理を施した後、バンドパスフィルタ22aによるバンドパスフィルタ処理を施すこともできる。
き電ケーブル14に流れる電流I1は、直流電流成分と、交流電流成分と、不規則変動電流成分と、を含む。直流電流成分は、ステップ状に変化する成分であり、例えば電車E1のノッチ進段、又は、再力行、又は、電車E1に搭載されているパンタグラフによるエアセクションにおける橋絡、に伴うものである。交流電流成分は、2次、6次若しくは12次等の整流リップル、に伴うものである。不規則変動電流成分は、電車E1の可変電圧可変周波数(Variable Voltage Variable Frequency:VVVF)インバータにおける、モータの回転条件に依存したモータ電流がスイッチングによって直流側へ転嫁された成分若しくは車輪の空転再粘着制御に伴う成分、又は、電車E1に搭載されているパンタグラフのエアセクションでのばたつき、即ちパンタグラフの擦り板がエアセクションで橋絡するときの架線振動による電流断続若しくは渡り電流、又は、アーク、に伴うものである。本実施の形態1の地絡検出装置及び地絡検出方法は、これらの電流成分のうちアークに伴うもののみを検出することを目的とするものである。
き電ケーブル14に流れる電流I1に基づいて生成された信号SG1に対して行う、バンドパスフィルタ22aによるバンドパスフィルタ処理については、通過周波数帯域よりも低い遮断周波数帯域である低域遮断周波数帯域は、前述したVVVFインバータの空転再粘着制御で発生し得る周波数帯域と同等又はそれ以上の周波数帯域とすることができる。また、通過周波数帯域よりも高い遮断周波数帯域である高域遮断周波数帯域は、比較計数部23が高い周波数の雑音成分と速すぎる変化率によって誤動作しないような範囲の周波数帯域とすることができる。
前述したように、バンドパスフィルタ22aとして、アナログ回路若しくはデジタル回路、又は、プログラムを実行するコンピュータを用いることができ、アナログ回路又はデジタル回路又はコンピュータによって実現されるハイパスフィルタとローパスフィルタとを組み合わせたものを用いることができる。ハイパスフィルタとして、例えば15Hzの遮断周波数を有する二次バターワースハイパスフィルタを用いることができ、ローパスフィルタとして、例えば100Hzの遮断周波数を有する二次バターワースローパスフィルタを用いることができる。ハイパスフィルタにより、信号SG1のうち、直流オフセット成分を減衰させることができ、ローパスフィルタにより、信号SG1のうち、地絡の発生の検出のためには不要な高い周波数を有する周波数成分を減衰させることができる。
また、き電ケーブル14に流れる電流I1に基づいて生成された信号SG1に対して行う、櫛形フィルタ22bによる櫛形フィルタ処理については、前述したように、信号にそれ自身を遅延させたものを追加することで干渉を生じさせるアナログ回路を用い、商用電源周波数に由来する周波数成分、即ち第1基本周波数および整流リップル等の周波数成分を減衰させるものとすることができる。櫛形フィルタの機能であって、信号にそれ自身を遅延させたものを追加することで干渉を生じさせて出力させる機能については、時刻を時刻tとし、時刻tにおける入力を入力x(t)とし、時刻tにおける出力を出力y(t)とし、商用電源周波数の周期を周期τとしたとき、入力x(t)、出力y(t)及び周期τが下記数式(数1)を満たすことにより、表される。
y(t)=x(t)-x(t-τ)・・・(数1)
上記数式(数1)を満たす機能を有する櫛形フィルタにより、直流き電回路に流れる電流のうち、故障電流の不規則成分のみを抽出することができる。
商用電源周波数に由来する周波数成分を減衰させる櫛形フィルタ22bとして、商用電源周波数を例えば50Hzとしたとき、例えば50Hz、100Hz、150Hz、200Hz、250Hz及び300Hz等、50Hzのn倍(nは1以上の整数)の周波数を有する周波数成分を減衰させる櫛形フィルタを用いることができる。これにより、信号SG1のうち、商用電源周波数に由来する周波数成分、即ち整流リップル等の周波数成分を減衰させることができる。
比較計数部23は、フィルタ処理部22により生成された信号SG2と、閾値TS1(図6参照)及び閾値TS1よりも大きい閾値TS2(図6参照)と、を比較し、信号SG2と閾値TS1及びTS2との大小関係が、一定時間内にある状態から他の状態に変化した回数である回数TM1を計数する。このある状態から他の状態に変化した回数TM1の詳細については、後述する。
判定部24は、比較計数部23により計数された回数TM1と、判定基準値としての閾値回数TT1と、を比較し、回数TM1が閾値回数TT1を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定し、回数TM1が閾値回数TT1以下のとき、直流き電回路10に地絡が発生していないと判定する。
なお、地絡検出装置20は、直流き電回路10に地絡が発生したと判定部24により判定され、判定部24から遮断指令が出力されたとき、出力された遮断指令に基づいて、き電ケーブル14に流れる電流を遮断する、直流遮断器25を有してもよい。直流遮断器25は、き電ケーブル14の途中に設けられる。また、図1に示すように、直流遮断器25は、き電ケーブル15の途中にも設けられてもよい。
本実施の形態1の地絡検出装置を用いた地絡検出方法では、まず、き電ケーブル14即ち直流き電回路10に流れる電流I1を電流検出部21により検出し、検出された電流I1に基づいて信号SG1を電流検出部21により生成する(図3のステップS1)。前述したように、電流検出部21として、ロゴスキーコイル21aと、信号生成回路21bと、を含むものを用いることができる。
図4のグラフに、地絡が発生している時にき電ケーブル14即ち直流き電回路10に流れる電流I1を検出して電流検出部21により生成された信号SG1を模擬した模擬信号を示す。なお、図4のグラフは、ある基準時刻に対して6.4~6.8秒の時間の範囲内の信号を抽出して示したものであり、図4のグラフの横軸は時間(秒)を示し、図4のグラフの縦軸は電流(A)を示している。
次に、ステップS1にて電流検出部21により生成された信号SG1に対して、通過周波数帯域の周波数成分以外の周波数成分を減衰させるバンドパスフィルタ処理と、基本周波数を有する周波数成分、及び、基本周波数のN1倍(N1は2以上の整数)の周波数を有する周波数成分を減衰させる櫛形フィルタ処理と、をフィルタ処理部22により施すことにより、信号SG2を生成する(図3のステップS2)。
図5のグラフに、図4に示す模擬信号に対してバンドパスフィルタ処理と櫛形フィルタ処理とを施すことによりフィルタ処理部22により生成された信号を示す。なお、図4と同様に、図5のグラフの横軸は時間(秒)を示し、図5のグラフの縦軸は電流(A)を示している。
図4に示すように、地絡が発生している時に生成された信号SG1を模擬した模擬信号は、さまざまな周波数成分を有する信号を含む。一方、図5に示すように、図4に示す模擬信号に対してバンドパスフィルタ処理と櫛形フィルタ処理とを施すことにより生成された信号からは、直流電流成分に由来する周波数成分、及び、通過周波数帯域よりも高い高域遮断周波数帯域の周波数成分が減衰され、地絡の発生に関連した電流のゆらぎ成分に由来した通過周波数帯域の周波数成分のみが抽出されていることが分かる。図4のグラフでは、模擬信号は、4000~4600Aの程度の範囲内の電流値を示すものの、図5のグラフでは、直流電流成分に由来する周波数成分が減衰されることにより、信号は、-60~60Aの程度の範囲内の電流値を示している。また、図4のグラフでは、模擬信号は、通過周波数帯域よりも高い高域遮断周波数帯域の周波数成分を含む複雑な波形を示すものの、図5のグラフでは、通過周波数帯域よりも高い高域遮断周波数帯域の周波数成分が減衰されることにより、信号は、より単純な波形を示している。
また、図4に示す模擬信号及び図5に示す信号に対して高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)演算を行って算出したパワースペクトルの図示は省略するものの、図4に示す模擬信号は、前記した商用電源周波数たる第1基本周波数50Hzのn倍(nは1以上の整数)の周波数を有する周波数成分、即ち商用電源周波数に由来する周波数成分である商用電源周波数成分それ自身および整流リップル成分を含むものの、図5に示す信号は、商用電源周波数に由来する周波数成分が減衰されている。
次に、ステップS2にてフィルタ処理部22により生成された信号SG2と、閾値TS1及び閾値TS1よりも大きい閾値TS2と、を比較計数部23により比較し、一定時間内に、信号SG2が閾値に対してある状態から他の状態に変化した回数、即ち信号SG2と閾値との大小関係が変化した回数、である回数TM1を、比較計数部23により計数する(図3のステップS3)。なお、閾値TS2は閾値TS1と異なればよく、閾値TS1よりも小さくてもよいが、以下では、閾値TS2が閾値TS1よりも大きい場合を例示して説明する。また、閾値TS2が閾値TS1よりも大きい場合、好適には、閾値TS1は負の値であり、閾値TS2は正の値である。
このステップS3では、閾値TS2が閾値TS1よりも大きい場合、比較計数部23は、一定時間内に、信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)後最初に信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した(図6の点P2)回数である回数TM1を計数する。このような場合、比較計数部23は、信号SG2が電流基準値としての負の閾値TS1を負方向に通過したことを一度検出したら、それ以後、信号SG2が電流基準値としての正の閾値TS2を正方向に通過したことを検出するまでは、回数を計数しない。
また、後述するものの、このような場合、微細なノイズが発生したときには回数を計数せず、振幅が大きい揺らぎ成分が発生したときだけ回数を計数することができるので、計数される回数TM1が不必要に大きくなることを防止又は抑制することができる。
或いは、ステップS3では、比較計数部23は、一定時間内に、信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した(図6の点P3)後最初に信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)回数である回数TM1を計数する。このような場合、比較計数部23は、信号SG2が電流基準値としての正の閾値TS2を正方向に通過したことを一度検出したら、それ以後、信号SG2が電流基準値としての負の閾値TS1を負方向に通過したことを検出するまでは、回数を計数しない。
また、後述するものの、このような場合も、微細なノイズが発生したときには回数を計数せず、振幅が大きい揺らぎ成分が発生したときだけ回数を計数することができるので、計数される回数TM1が不必要に大きくなることを防止又は抑制することができる。
或いは、ステップS3では、後述する図7を用いて説明するように、比較計数部23は、一定時間内に、信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)後最初に信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した(図6の点P2)回数と、一定時間内に、信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した(図6の点P3)後最初に信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)回数と、の総和である回数TM1を計数してもよい。
或いは、ステップS3では、比較計数部23は、一定時間内に、信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した(図6の点P3、点P4及び点P2)回数である回数TM1を計数する。
或いは、ステップS3では、比較計数部23は、一定時間内に、信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)回数である回数TM1を計数する。
次に、比較計数部23により計数された回数TM1と、判定基準値としての閾値回数TT1と、を判定部24により比較し、回数TM1が閾値回数TT1を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定し、回数TM1が閾値回数TT1以下のとき、直流き電回路10に地絡が発生していないと判定する(図3のステップS4)。
具体的には、判定部24は、比較計数部23から入力された現在の回数の値と、一定時間としての時間Tだけ遡ったときに比較計数部23から入力されていた回数の値と、の差分を算出し、算出された差分を回数TM1として決定する。これは、一定時間としての時間Tの間に比較計数部23から判定部24に入力されたパルスの数を計数することと等価である。そして、判定部24は、決定された回数TM1を閾値回数TT1と比較し、回数TM1が閾値回数TT1を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定する。
或いは、このステップS4では、回数TM1に基づいて算出された回数TM2と、閾値回数TT2と、を判定部24により比較し、回数TM2が閾値回数TT2を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定し、回数TM2が閾値回数TT2以下のとき、直流き電回路10に地絡が発生していないと判定することができる。
直流き電回路の地絡事故の検出及び保護継電に関する技術として、FS形及びFT形、放電ギャップ方式、回線電流方式(頻度積算方式)、高調波重畳方式、保護線方式、並びに、FFT演算を使用する方式等がある。
FS形は、き電線に、特定の周波数帯に対し、高インピーダンスを呈するインピーダンス回路を直列に設置して、き電線に流れる電流を検出するものである。インピーダンス回路としては、インダクタンス素子(L)とキャパシタンス素子(C)とよりなる共振回路を構成し、このインピーダンス回路における共振電流を、キャパシタンス素子(C)と直列に挿入された変流器により検出する。また、FT形は、電流変成器とバンドパスフィルタとを使用して、き電線に流れる電流を検出する。しかし、FS形及びFT形では、整流リップル成分を選択的に減衰させる手段をもたないので、誤検出を避けるためには、き電線に流れる電流の正常な成分である整流リップル成分を十分に減衰させる必要があり、即ち検出対象として整流リップル成分に比して十分高い周波数、具体的には数キロヘルツ以上の帯域を選定しなければならず、特殊な電流検出器を使用する必要があり、その特性管理並びにインダクタンス素子(L)とキャパシタンス素子(C)の共振回路の共振周波数の管理が難しいという問題がある。
また、放電ギャップ方式では、電車線路に放電ギャップと保護線・連係線を新たに敷設する必要があるという問題がある。また、回線電流方式(頻度積算方式)では、検出が遅く、例えば検出に数分間を要するという問題がある。また、高調波重畳方式では、高調波重畳装置を設置する必要があり、列車数が増加すると検出ができなくなるという問題がある。また、保護線方式(電圧検知線方式)では、保護線・連係線と保護線用素子とを新たに敷設する必要があるという問題がある。また、FFT演算を使用する方式では、演算装置の演算負荷が高いという問題がある。
更に、FFT演算を使用する方式では、FFT演算を行ってパワースペクトルを算出し、算出されたパワースペクトルに対して、一定の周波数帯の周波数成分を減衰させて加工した後、加工されたパワースペクトルに逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform:IFFT)演算を行って時間軸上の信号に逆変換する必要がある。このような場合、演算装置の演算負荷が極めて高いという問題がある。また、FFT演算を行うためには、信号SG2として一定時間内の信号を時間窓で切り取る必要があるが、直流き電電流のような非繰り返し波形にFFT演算を適用するときには、信号に窓関数を乗算する必要があるため、演算装置の演算負荷がさらに高くなるという問題がある。
また、本発明者が、直流電気鉄道において、直流き電回路の地絡事故が発生した際の電流を詳細に解析した結果、直流き電回路の地絡事故が発生する際には、直流き電回路に流れる電流のうち、電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分が発生していることが明らかになった。即ち、直流き電回路に流れる電流のうち、短時間における電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分を検出することが重要であることが明らかになった。
しかし、従来、直流き電回路に流れる電流のうち、短時間における電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分を検出するためには、時間軸上で逐次演算を行うだけでは、地絡が発生したと判定することが難しく、FFT演算を行う必要があるため、演算装置の演算負荷が増大する。
一方、本実施の形態1の地絡検出方法では、き電ケーブル14即ち直流き電回路10に流れる電流に基づいて生成された信号SG1に対して、櫛形フィルタ処理等を施すことにより信号SG2を生成し、信号SG2と閾値との大小関係が、一定時間内にある状態から他の状態に変化した回数TM1を計数し、回数TM1が閾値回数TT1を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定する。
即ち本実施の形態1の地絡検出方法では、き電回線電流を、電流センサを用いて抽出し、櫛形フィルタによって、商用電源周波数の基本周波数成分および商用電源周波数の整数倍にあたる整流リップル成分を除去し、その出力が、ある電流整定値(正、負)をそれぞれ絶対値増加方向に交差する回数を、ある時間窓範囲で計数し、その計数結果が閾値を超えた場合に、直流高抵抗地絡検出と判断する。
このような場合、FFT演算を行うことなく、時間軸上で逐次演算を行うだけで、短時間における電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分を検出することができ、演算装置の演算負荷を低減することができ、電車線路に追加設備を新設する必要がない。また、検出される周波数領域はそれほど高い周波数領域ではないため、特殊な電流検出器を使用することなく、既存の電流検出器を使用することができる。
また、本実施の形態1の地絡検出方法によれば、電車線路に、保護線・連係線、放電ギャップ又は保護線用素子を新たに敷設する必要がない。また、本実施の形態1の地絡検出方法によれば、回線電流方式(頻度積算方式)に比べて、検出が速く、例えば数秒間で検出することができる。また、本実施の形態1の地絡検出方法によれば、高調波重畳方式と異なり、高調波重畳装置を設置する必要がない。
また、図4及び図5を用いて前述したように、信号SG1が例えば4000~4600Aの程度の範囲内の電流値を示す場合でも、直流電流成分に由来する周波数成分が例えばバンドパスフィルタにより減衰されることにより、信号SG2は、例えば-60~60Aの程度の範囲内の電流値を示すようになる。また、信号SG1が、通過周波数帯域よりも高い高域遮断周波数帯域の周波数成分を含む複雑な波形を示す場合でも、通過周波数帯域よりも高い高域遮断周波数帯域の周波数成分がバンドパスフィルタにより減衰されることにより、信号SG2は、より単純な波形を示すようになる。また、信号SG1が商用電源周波数に由来する周波数成分を含む場合でも、商用電源周波数に由来する周波数成分が櫛形フィルタにより減衰される。また、図4及び図5には示していないが、信号SG1が、電車E1の車輪の空転再粘着制御に伴う短時間の電流の増減の成分を示す場合でも、当該の制御によって発生し得る通過周波数帯域よりも低い低域遮断周波数帯域の周波数成分がバンドパスフィルタにより減衰されることにより、信号SG2は、より単純な波形を示すようになる。そして、通過周波数帯域が、直流き電回路の地絡事故が発生する際に、直流き電回路に流れる電流に発生する、電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分の周波数成分を含むように、通過周波数帯域を適切に設定することにより、本実施の形態1の地絡検出方法を行って時間軸上で逐次演算を行うだけで、短時間における電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分を精度良く検出することができる。
また、本実施の形態1の地絡検出方法によれば、FFT演算のみならず、IFFT演算を行う必要もないので、FFT演算を非繰り返し波形に適用するときにその前段に必要とされる窓関数で切り取る処理を行う必要もまたなくなり、FFT演算及びIFFT演算を行う場合に比べ、演算装置の演算負荷を更に低減することができる。
また、ステップS3では、比較計数部23により、信号SG2が電流基準値としての負の閾値TS1を負方向に通過したことを一度検出したら、それ以後、信号SG2が電流基準値としての正の閾値TS2を正方向に通過したことを検出するまでは、回数を計数しないようにすることができる。また、ステップS3では、比較計数部23により、信号SG2が電流基準値としての正の閾値TS2を正方向に通過したことを一度検出したら、それ以後、信号SG2が電流基準値としての負の閾値TS1を負方向に通過したことを検出するまでは、回数を計数しないようにすることができる。前述したように、これらの場合、微細なノイズが発生したときには回数を計数せず、振幅が大きい揺らぎ成分が発生したときだけ回数を計数することができるので、計数された回数TM1が不必要に大きくなることを防止又は抑制することができる。
上記特許文献1に記載された技術では、直流き電回路高抵抗接地事故検出装置が、直流き電線に流れる電流を検出する直流変流器と、変流器にて検出された検出信号が一定値を越えると出力を発する比較器と、比較器出力によってゲートを開かれ、クロックパルスを出力するアンド回路と、アンド回路より発するクロックパルスを計算するカウンタと、を備えている。
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、電車線路において、き電線や電車線が支持鉄柱やビームに接触事故を起こした場合、電車電流は刻々変化するが、事故電流はほとんど変化しないという差異に着目し、事故電流のみ選択的に検出して事故の早期発見、対策を可能にすることを目的とするものである。即ち、上記特許文献1に記載された技術は、事故電流として一定の直流電流成分を検出するという課題を解決するためのものである点で、短時間における事故電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分を検出するという課題を解決するためのものである本願発明と、解決しようとする課題が異なる。
前述したように、フィルタ処理部22が、バンドパスフィルタ22aと、櫛形フィルタ22bと、を含む場合、好適には、ステップS2では、まず、ステップS1にて電流検出部21により生成された信号SG1に対して、バンドパスフィルタ処理をバンドパスフィルタ22aにより施すことにより、信号SG3を生成する(図3のステップS21)。また、ステップS2では、次に、ステップS21にてバンドパスフィルタ22aにより生成された信号SG3に対して、櫛形フィルタ処理を櫛形フィルタ22bにより施すことにより、信号SG2を生成する(図3のステップS22)。
これにより、信号SG1に対して、バンドパスフィルタ22aによるバンドパスフィルタ処理を施した後、櫛形フィルタ22bによる櫛形フィルタ処理を施すことができる。そのため、信号処理に必要なダイナミックレンジを限定する都合に合わせて、バンドパスフィルタ処理を、櫛形フィルタ処理よりも先に施すことができる。なお、前述したように、バンドパスフィルタ処理、及び、櫛形フィルタ処理のいずれも線形演算であるため、信号処理に必要なダイナミックレンジを限定する観点での利点はないものの、櫛形フィルタ22bによる櫛形フィルタ処理を施した後、バンドパスフィルタ22aによるバンドパスフィルタ処理を施すこともできる。
好適には、比較計数部23は、ステップS3では、信号SG2と、閾値TS1及び閾値TS2と、を比較し、一定時間内に、信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)後最初に信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した(図6の点P2)回数である、回数TM1を計数する。
また、好適には、比較計数部23は、比較部としての比較器23aと、計数部としてのカウンタ23bと、を含む。なお、図2では、比較器23aを比較部と記載し、カウンタ23bを計数部と記載している。
ステップS3では、まず、信号SG2と、閾値TS1及び閾値TS2と、を比較器23aにより比較し、信号SG2と、閾値TS1及び閾値TS2との大小関係を表す信号SG4を比較器23aにより生成する(図3のステップS31)。また、ステップS3では、次に、比較器23aにより生成された信号SG4に基づいて、信号SG2と閾値との大小関係が変化した回数TM1をカウンタ23bにより計数する(図3のステップS32)。このような回路構成により、回数TM1を精度良く計数することができる。
図7は、実施の形態1の地絡検出装置のうち比較器の一例を示すブロック図である。図7(a)は、比較器の一例を示し、図7(b)は、図7(a)に示した比較器に含まれる検出回路の一例を示す。図7(a)に示す例では、好適には、比較器23aは、比較器としてのヒステリシスコンパレータ31と、ヒステリシスコンパレータ31の出力の変化を検出する検出回路32と、を含む。
また、好適には、ステップS31では、信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に一旦変化した(図6の点P1)後最初に信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化する(図6の点P2)までは、信号SG4が値VL1を示すように、信号SG4をヒステリシスコンパレータ31により生成する。また、ステップS31では、信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に一旦変化した(図6の点P3)後最初に信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化する(図6の点P1)までは、信号SG4が値VL1よりも大きい(値VL1と異なる)値VL2を示すように、信号SG4をヒステリシスコンパレータ31により生成する。
また、好適には、ステップS32では、ヒステリシスコンパレータ31により生成された信号SG4が値VL1を示している状態(図7(a)ではLと表記)から値VL2を示している状態(図7(a)ではHと表記)に変化した回数TM3を、検出回路32により計数し、信号SG4が値VL2を示している状態(図7(a)ではHと表記)から値VL1を示している状態(図7(a)ではLと表記)に変化した回数TM4を、検出回路32により計数し、計数された回数TM3と回数TM4との総和である回数TM1を、カウンタ23b(図2参照)により計数する。
このような回路構成により、比較器23aは、信号SG2が電流基準値としての負の閾値TS1を負方向に通過したことを一度検出したら、それ以後、信号SG2が電流基準値としての正の閾値TS2を正方向に通過したことを検出するまでは、回数を計数しないようにすることができる。また、比較器23aは、信号SG2が電流基準値としての正の閾値TS2を正方向に通過したことを一度検出したら、それ以後、信号SG2が電流基準値としての負の閾値TS1を負方向に通過したことを検出するまでは、回数を計数しないようにすることができる。前述したように、これらの場合、微細なノイズが発生したときには回数を計数せず、振幅が大きい揺らぎ成分が発生したときだけ回数を計数することができるので、計数された回数TM1が不必要に大きくなることを防止又は抑制することができる。そのため、回数TM3と回数TM4との総和である回数TM1を、精度良く計数することができる。
なお、閾値TS1が負の閾値であり、閾値TS2が正の閾値であり、閾値TS2の絶対値が閾値TS1の絶対値と等しいとき、ヒステリシスコンパレータのヒステリシス幅として、閾値TS2の絶対値の2倍とすることができる。
検出回路32がアナログ回路により形成される場合、図7(b)に一例を示すように、検出回路32は、直流成分を遮断するキャパシタンス素子33と、互いに反並列に接続された2つの発光ダイオード素子34と、2つの発光ダイオード素子34が発した光を受けるフォトトランジスタ35と、を含むことができる。
一方、検出回路32として、回数TM3及び回数TM4を計数する動作をさせるためのプログラムを実行するコンピュータを用いることもできる。
図8は、実施の形態1の地絡検出装置のうち比較器の他の例を示すブロック図である。図8に示す例では、比較器23aは、比較器としてのヒステリシスコンパレータ36を含み、カウンタ23bは、カウンタ37と、カウンタ37により計数された回数の2倍の回数を計数するカウンタ38と、を含む。
また、好適には、ステップS31では、信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に一旦変化した(図6の点P1)後最初に信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化する(図6の点P2)までは、信号SG4が値VL3を示すように、信号SG4をヒステリシスコンパレータ36により生成する。また、ステップS31では、信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に一旦変化した(図6の点P3)後最初に信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化する(図6の点P1)までは、信号SG4が値VL3よりも大きい(値VL3と異なる)値VL4を示すように、信号SG4をヒステリシスコンパレータ36により生成する。
また、好適には、ステップS32では、ヒステリシスコンパレータ36により生成された信号SG4が値VL3を示している状態から値VL4を示している状態に変化した回数TM5をカウンタ37により計数し、カウンタ37により計数された回数TM5の2倍の2倍の回数である回数TM1をカウンタ38により計数する。
このような回路構成により、比較器23aは、信号SG2が電流基準値としての負の閾値TS1を負方向に通過したことを一度検出した後最初に信号SG2が電流基準値としての正の閾値TS2を正方向に通過したことを検出した回数だけを計数し、計数された回数を計数後に2倍する。従って、計数された回数には、信号SG2が電流基準値としての正の閾値TS2を正方向に通過したことを一度検出した後最初に信号SG2が電流基準値としての負の閾値TS1を負方向に通過したことを検出した回数は反映されないものの、その後、最初に信号SG2が電流基準値としての正の閾値TS2を正方向に通過したことを検出する前には必ず信号SG2が電流基準値としての負の閾値TS1を負方向に通過するのであるから、計数する一定時間が揺らぎの1周期以上の場合、計数される回数TM1の精度にはほとんど影響がない。そのため、回数TM1を、簡略化された回路構成により精度良く計数することができる。
なお、ステップS32では、ヒステリシスコンパレータ36により生成された信号SG4が値VL3を示している状態から値VL4を示している状態に変化した回数に代えて、ヒステリシスコンパレータ36により生成された信号SG4が値VL4を示している状態から値VL3を示している状態に変化した回数TM5をカウンタ37により計数し、カウンタ37により計数された回数TM5の2倍の回数である回数TM1をカウンタ38により計数してもよい。このような場合も、ヒステリシスコンパレータ36により生成された信号SG4が値VL3を示している状態から値VL4を示している状態に変化した回数を計数する場合と同様の作用効果が得られる。
<実施の形態1の第1変形例>
次に、実施の形態1の地絡検出装置及び地絡検出方法の第1変形例について説明する。本第1変形例の地絡検出装置及び地絡検出方法は、比較器が2つのコンパレータを含む点で、比較器が1つのヒステリシスコンパレータを含む実施の形態1の地絡検出装置及び地絡検出方法と異なる。
図9は、実施の形態1の第1変形例の地絡検出装置の一部を示すブロック図である。図10は、実施の形態1の第1変形例の地絡検出方法の一部を示すフロー図である。
図9に示す例では、比較器23aは、比較器としてのコンパレータ41と、比較器としてのコンパレータ42と、OR回路43と、を含む。また、カウンタ23bは、窓カウンタとしてのカウンタ44を含む。
本第1変形例では、ステップS31では、信号SG2と閾値TS1との大小関係を表す信号SG5と、信号SG2と閾値TS2との大小関係を表す信号SG6と、を含む信号SG4を比較器23aにより生成する。
また、ステップS31では、信号SG2と閾値TS1とをコンパレータ41により比較し、信号SG2が閾値TS1よりも小さいとき、信号SG5が値VL5を示し、信号SG2が閾値TS1以上のとき、信号SG5が値VL5と異なる値VL6又は0を示すように、信号SG5をコンパレータ41により生成する(図10のステップS33)。
また、ステップS31では、信号SG2と閾値TS2とをコンパレータ42により比較し、信号SG2が閾値TS2よりも大きいとき、信号SG6が値VL7を示し、信号SG2が閾値TS2以下のとき、信号SG6が値VL7と異なる値VL8又は0を示すように、信号SG6をコンパレータ42により生成する(図10のステップS34)。
また、ステップS31では、コンパレータ41により生成された信号SG5が値VL5を示すか又はコンパレータ42により生成された信号SG6が値VL7を示したとき、パルスPL1をOR回路43により出力し、コンパレータ41により生成された信号SG5が値VL6又は0を示し且つコンパレータ42により生成された信号SG6が値VL8又は0を示したとき、パルスPL1をOR回路43により出力しない(図10のステップS35)。また、ステップS32では、一定時間内にOR回路43により出力されたパルスPL1の数をカウンタ44により計数し、計数されたパルスPL1の数に基づいて、回数TM1をカウンタ44により計数する。
閾値TS1を、例えば-20Aとし、閾値TS2を、例えば20Aとすることができる。閾値TS1及びTS2の絶対値を小さくすると、高感度になるものの、計数される回数が増加し、計数される回数TM1が不必要に大きくなる。また、回数TM1を計数する一定時間、即ち窓カウンタとしてのカウンタ44に入力される窓幅を、例えば4秒とすることができる。
本第1変形例によれば、実施の形態1の1つのヒステリシスコンパレータ及び検出回路に代えて、2つのコンパレータ及びOR回路を用いた場合でも、実施の形態1の1つのヒステリシスコンパレータ及び検出回路を用いる場合と同様の作用効果を得ることができる。
<実施の形態1の第2変形例>
次に、実施の形態1の地絡検出装置及び地絡検出方法の第2変形例について説明する。本第2変形例の地絡検出装置及び地絡検出方法は、比較器に絶対値化された信号が入力される点で、比較器に絶対値化されない信号が入力される実施の形態1の地絡検出装置及び地絡検出方法と異なる。
図11は、実施の形態1の第2変形例の地絡検出装置の一部を示すブロック図である。図12は、実施の形態1の第2変形例の地絡検出方法の一部を示すフロー図である。
図11に示す例では、フィルタ処理部22は、フィルタ処理部22cと、絶対値化部22dと、を含み、比較計数部23は、比較器23cと、窓カウンタとしてのカウンタ23dと、を含む。
本第2変形例では、ステップS2では、ステップS1にて電流検出部21により生成された信号SG1に対して、バンドパスフィルタ処理と、櫛形フィルタ処理と、を施すことにより、信号SG7をフィルタ処理部22cにより生成する(図12のステップS23)。
また、ステップS2では、ステップS23にてフィルタ処理部22により生成された信号SG7が絶対値化された信号SG2を絶対値化部22dにより生成する(図12のステップS24)。
また、本第2変形例では、実施の形態1と同様に、閾値TS1は、負の閾値であり、閾値TS2は、正の閾値であるが、閾値TS2の絶対値は、閾値TS1の絶対値と等しい。
比較計数部23は、ステップS3では、信号SG2と閾値TS2とを比較することにより、信号SG2と閾値TS1及び閾値TS2とを比較し、一定時間内に、信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した回数である回数TM1を計数する。
また、ステップS3では、信号SG2と閾値TS2とを比較器23cにより比較し、信号SG2が閾値TS2よりも大きいとき、パルスPL2を比較器23cにより出力し、信号SG2が閾値TS2以下のとき、パルスPL2を比較器23cにより出力しない(図12のステップS36)。
また、ステップS3では、ステップS36にて一定時間内に比較器23cにより出力されたパルスPL2の数をカウンタ23dにより計数し、計数されたパルスPL2の数に基づいて、回数TM1をカウンタ23dにより計数する(図12のステップS37)。
比較器23cにより出力されたパルスPL2の数を窓カウンタとしてのカウンタ23dにより計数する場合、カウンタ23dは、一定時間としての窓幅(過去数秒間)内に発生したパルスPL2の数である回数TM1を計数することになる。信号SG2がステップ状に変化して閾値TS2の絶対値を超える場合、パルスPL2は信号SG2がステップ状に変化した瞬間しか出力されないので、ステップ状に変化した後、閾値TS2の絶対値を超えた状態での継続時間が長い場合を除去することができ、計数される回数TM1が不必要に大きくなることを防止又は抑制することができる。これにより、直流電力の供給を開始又は終了した直後の過渡的な現象に伴う誤検知を防止又は抑制することができる。
閾値TS2を、例えば20Aとすることができ、回数TM1を計数する一定時間、即ち窓カウンタとしてのカウンタ23dに入力される窓幅を、例えば4秒とすることができる。
本第2変形例によれば、実施の形態1の絶対値化されない信号が入力される比較器に代えて、信号を絶対値化する絶対値化部と、絶対値化された信号が入力される比較器と、を用いた場合でも、実施の形態1の絶対値化されない信号が入力される比較器を用いる場合と同様の作用効果を得ることができる。
なお、ステップS24では、信号SG7が絶対値化された信号SG2を生成する際に、準尖頭値検波、即ち信号SG7の平滑化はせず、信号SG7の変化の振れ幅がそのまま信号SG2に残るようにすることが好ましい。
また、本第2変形例では、信号SG2が極性転換せずに閾値TS2付近で小さな振動をしているときにその振動を回数TM1として計数してしまうため、信号SG2が極性転換した場合にのみ回数TM1を計数する実施の形態1の変形例1に比べると、計数される回数TM1が大きくなりやすい。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2の地絡検出装置及び地絡検出方法について説明する。本実施の形態2の地絡検出装置及び地絡検出方法は、同一の電車線にそれぞれ直流電力(直流き電力)を供給する2つのき電ケーブルの各々にそれぞれ設けられた2つの地絡検出装置の間で、それぞれ計数された回数を送受信する点で、実施の形態1の地絡検出装置及び地絡検出方法と異なる。
<直流き電回路>
初めに、図13を参照し、実施の形態2の地絡検出装置が地絡の発生を検出する直流き電回路について説明する。図13は、実施の形態2の地絡検出装置が地絡の発生を検出する直流き電回路を模式的に示す回路図である。
図13に示すように、直流き電回路10は、鉄道線路としてのレールR1に沿って設けられたき電線又はき電線と並行して設けられたトロリー線よりなる回線としての電車線11及び12と、電車線11及び12に直流電力を供給する変電所13と、変電所13と電車線11の端部11aとを接続する回線としてのき電ケーブル14と、変電所13と電車線12とを接続する回線としてのき電ケーブル15と、を備えている。変電所13は、電車線11の端部11aに、き電ケーブル14を介して、直流電力を供給し、変電所13は、電車線12に、き電ケーブル15を介して、直流電力を供給する。変電所13は、商用電源に接続された変圧器(図示は省略)と、変圧器(図示は省略)の三相交流出力を整流する整流器16と、を有する。
高圧側直流き電ケーブルであるき電ケーブル14の一端は、整流器16の高圧側出力端子に接続され、き電ケーブル14の他端は、電車線11の端部11aに接続されている。高圧側直流き電ケーブルであるき電ケーブル15の一端は、整流器16の高圧側出力端子に接続され、き電ケーブル15の他端は、電車線12に接続されている。
また、直流き電回路10は、実施の形態1と同様に、変電所13とレールR1とを接続する回線としてのき電ケーブル17を備えている。帰線側直流き電ケーブルとしてのき電ケーブル17の一端は、整流器16の低圧側出力端子に接続され、き電ケーブル17の他端は、レールR1に接続されている。
一方、図13に示すように、本実施の形態2の地絡検出装置が地絡の発生を検出する直流き電回路10は、実施の形態1と異なり、鉄道線路としてのレールR1に沿って設けられたき電線又はき電線と並行して設けられたトロリー線よりなる回線としての電車線51と、電車線11及び51に直流電力を供給する変電所52と、変電所52と電車線11の端部11aと反対側の端部11bとを接続する回線としてのき電ケーブル53と、変電所52と電車線51とを接続する回線としてのき電ケーブル54と、を備えている。変電所52は、電車線11の端部11bに、き電ケーブル53を介して、直流電力を供給し、変電所52は、電車線51に、き電ケーブル54を介して、直流電力を供給する。変電所52は、商用電源に接続された変圧器(図示は省略)と、変圧器(図示は省略)の三相交流出力を整流する整流器55と、を有する。
高圧側直流き電ケーブルであるき電ケーブル53の一端は、整流器55の高圧側出力端子に接続され、き電ケーブル53の他端は、電車線11の端部11bに接続されている。高圧側直流き電ケーブルであるき電ケーブル54の一端は、整流器55の高圧側出力端子に接続され、き電ケーブル54の他端は、電車線51に接続されている。
また、直流き電回路10は、変電所52とレールR1とを接続する回線としてのき電ケーブル56を備えている。帰線側直流き電ケーブルとしてのき電ケーブル56の一端は、整流器55の低圧側出力端子に接続され、き電ケーブル56の他端は、レールR1に接続されている。
<地絡検出装置及び地絡検出方法>
次に、図14及び図15を参照し、本実施の形態2の地絡検出装置及び地絡検出方法について説明する。本実施の形態2の地絡検出装置は、直流き電回路の地絡を検出する地絡検出装置である。また、本実施の形態2の地絡検出方法は、直流き電回路の地絡を検出する地絡検出方法であり、本実施の形態2の地絡検出装置を用いた地絡検出方法である。
図14は、実施の形態2の地絡検出装置の一例を示すブロック図である。図15は、実施の形態2の地絡検出方法の一部を示すフロー図である。
図14に示すように、本実施の形態2の地絡検出装置20は、実施の形態1と同様に、電流検出部21と、フィルタ処理部22と、比較計数部23と、地絡判定部としての判定部24と、を有する。
一方、図14に示すように、本実施の形態2の地絡検出装置20は、実施の形態1と異なり、電流検出部61と、フィルタ処理部62と、比較計数部63と、地絡判定部としての判定部64と、を有する。また、本実施の形態2の地絡検出装置20は、実施の形態1と異なり、比較計数部23と判定部24との間に設けられた総和算出部としての総和回数算出部26と、比較計数部63と判定部64との間に設けられた総和算出部としての総和回数算出部66と、を有する。総和回数算出部26と総和回数算出部66とは、互いに有線通信又は無線通信可能に設けられている。
電流検出部61は、き電ケーブル53即ち直流き電回路に流れる電流I2を検出し、検出された電流I2に基づいて信号SG8を生成する。電流検出部61として、電流検出部21と同様に、例えばき電ケーブル53を囲むように配置され、両端に電圧が誘導されることによりき電ケーブル53に流れる電流I2を検出するロゴスキーコイル61aと、ロゴスキーコイル61aの両端に誘導された電圧に基づいて信号を生成する信号生成回路61bと、を含むものを用いることができる。或いは、図示は省略するものの、電流検出部61として、実施の形態1と同様に、例えばき電ケーブル53の途中にき電ケーブル53に直列に挿入され、両端に電圧が発生することによりき電ケーブル53に流れる電流I2を検出するシャント抵抗と、シャント抵抗の両端に発生された電圧に基づいて信号を生成する信号生成回路と、を含むものを用いることもできる。或いは、ロゴスキーコイル61aに代えてホール素子を用いることもできる。なお、図13に示すように、ロゴスキーコイル61aは、き電ケーブル54にも設けられてもよい。
フィルタ処理部62は、電流検出部61により生成された信号SG8に対して、通過周波数帯域の周波数成分以外の周波数成分を減衰させるバンドパスフィルタ処理と、基本周波数を有する周波数成分、及び、基本周波数のN2倍(N2は2以上の整数)の周波数を有する周波数成分を減衰させる櫛形フィルタ処理と、を施すことにより、信号SG9を生成する。
フィルタ処理部22が、信号に対してバンドパスフィルタ処理を施すバンドパスフィルタ22aと、信号に対して櫛形フィルタ処理を施す櫛形フィルタ22bと、を含むのと同様に、フィルタ処理部62は、信号に対してバンドパスフィルタ処理を施すバンドパスフィルタ62aと、信号に対して櫛形フィルタ処理を施す櫛形フィルタ62bと、を含むことができる。また、バンドパスフィルタ処理及び櫛形フィルタ処理については、実施の形態1と同様にすることができる。
比較計数部63は、フィルタ処理部62により生成された信号SG9と、閾値TS3(図6参照)及び閾値TS3よりも大きい閾値TS4(図6参照)と、を比較し、信号SG9と閾値TS3及びTS4との大小関係が、一定時間内にある状態から他の状態に変化した回数である回数TM6を計数する。信号SG9、並びに、閾値TS3及びTS4を、実施の形態1の信号SG1、並びに、閾値TS1及びTS2と同様としたとき、このある状態から他の状態に変化した回数TM6の詳細については、実施の形態1の回数TM1と同様にすることができる。また、比較計数部23が、比較部としての比較器23aと、計数部としてのカウンタ23bと、を含むのと同様に、比較計数部63は、比較部としての比較器63aと、計数部としてのカウンタ63bと、を含むことができる。
判定部64は、比較計数部63により計数された回数TM6と、判定基準値としての閾値回数TT2と、を比較し、回数TM6が閾値回数TT2を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定し、回数TM6が閾値回数TT2以下のとき、直流き電回路10に地絡が発生していないと判定する。
なお、地絡検出装置20は、直流き電回路10に地絡が発生したと判定部64により判定され、判定部64から遮断指令が出力されたとき、出力された遮断指令に基づいて、き電ケーブル53に流れる電流を遮断する、直流遮断器65を有してもよい。直流遮断器65は、き電ケーブル53の途中に設けられる。また、図13に示すように、直流遮断器65は、き電ケーブル54の途中にも設けられてもよい。
本実施の形態2の地絡検出装置を用いた地絡検出方法では、まず、実施の形態1のステップS1(図3参照)と同様に、き電ケーブル14に流れる電流I1を電流検出部21により検出し、検出された電流I1に基づいて信号SG1を電流検出部21により生成する(図15のステップS1)。
一方、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、き電ケーブル53即ち直流き電回路10に流れる電流I2を電流検出部61により検出し、検出された電流I2に基づいて信号SG8を電流検出部61により生成する(図15のステップS5)。
本実施の形態2では、次に、実施の形態1のステップS2(図3参照)と同様に、ステップS1にて電流検出部21により生成された信号SG1に対して、通過周波数帯域の周波数成分以外の周波数成分を減衰させるバンドパスフィルタ処理(図15のステップS21)と、基本周波数を有する周波数成分、及び、基本周波数のN1倍(N1は2以上の整数)の周波数を有する周波数成分を減衰させる櫛形フィルタ処理(図15のステップS22)と、をフィルタ処理部22により施すことにより、信号SG2を生成する(図15のステップS2)。なお、ステップS21では、信号SG1に対して、バンドパスフィルタ処理を施すことにより、信号SG3を生成し、ステップS22では、信号SG3に対して、櫛形フィルタ処理を施すことにより、信号SG2を生成する。
一方、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、ステップS5にて電流検出部61により生成された信号SG8に対して、通過周波数帯域の周波数成分以外の周波数成分を減衰させるバンドパスフィルタ処理(図15のステップS61)と、基本周波数を有する周波数成分、及び、基本周波数のN2倍(N2は2以上の整数)の周波数を有する周波数成分を減衰させる櫛形フィルタ処理(図15のステップS62)と、をフィルタ処理部62により施すことにより、信号SG9を生成する(図15のステップS6)。なお、ステップS61では、信号SG8に対して、バンドパスフィルタ処理を施すことにより、信号SG10を生成し、ステップS62では、信号SG10に対して、櫛形フィルタ処理を施すことにより、信号SG9を生成する。
本実施の形態2では、次に、実施の形態1のステップS3(図3参照)と同様に、ステップS2にてフィルタ処理部22により生成された信号SG2と、閾値TS1及び閾値TS1よりも大きい閾値TS2と、を比較し、一定時間内に、信号SG2がある状態から他の状態に変化した回数である回数TM1を計数する(図15のステップS3)。また、ステップS3は、信号SG2と閾値TS1及びTM2とを比較して信号SG2と閾値との大小関係の変化を表す信号SG4を生成するステップ(図15のステップS31)と、信号SG2と閾値との大小関係が変化した回数TM1を計数するステップ(図15のステップS32)と、を含む。なお、実施の形態1と同様に、閾値TS2は閾値TS1と異なればよく、閾値TS1よりも小さくてもよいが、以下では、閾値TS2が閾値TS1よりも大きい場合を例示して説明する。また、閾値TS2が閾値TS1よりも大きい場合、好適には、閾値TS1は負の値であり、閾値TS2は正の値である。
このステップS3では、閾値TS2が閾値TS1よりも大きい場合、比較計数部23は、一定時間内に、信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)後最初に信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した(図6の点P2)回数である回数TM1を計数する。或いは、ステップS3では、比較計数部23は、一定時間内に、信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した(図6の点P3)後最初に信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)回数である回数TM1を計数する。或いは、ステップS3では、比較計数部23は、両方の回数の総和である回数TM1を計数してもよい。
或いは、ステップS3では、比較計数部23は、一定時間内に、信号SG2が閾値TS2よりも小さい状態から閾値TS2よりも大きい状態に変化した(図6の点P3、点P4及び点P2)回数である回数TM1を計数する。或いは、ステップS3では、比較計数部23は、一定時間内に、信号SG2が閾値TS1よりも大きい状態から閾値TS1よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)回数である回数TM1を計数する。
一方、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、ステップS6にてフィルタ処理部62により生成された信号SG9と、閾値TS3及び閾値TS3よりも大きい閾値TS4と、を比較し、一定時間内に、信号SG9がある状態から他の状態に変化した回数である回数TM6を計数する(図15のステップS7)。また、ステップS7では、信号SG9と閾値TS3及びTM4とを比較して信号SG9と閾値との大小関係の変化を表す信号SG11を生成するステップ(図15のステップS71)と、信号SG9と閾値との大小関係が変化した回数TM6を計数するステップ(図15のステップS72)と、を含む。なお、閾値TS4は閾値TS3と異なればよく、閾値TS3よりも小さくてもよいが、以下では、閾値TS4が閾値TS3よりも大きい場合を例示して説明する。また、閾値TS4が閾値TS3よりも大きい場合、好適には、閾値TS3は負の値であり、閾値TS4は正の値である。
このステップS7では、閾値TS4が閾値TS3よりも大きい場合、比較計数部63は、一定時間内に、信号SG9が閾値TS3よりも大きい状態から閾値TS3よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)後最初に信号SG9が閾値TS4よりも小さい状態から閾値TS4よりも大きい状態に変化した(図6の点P2)回数である回数TM6を計数する。或いは、ステップS7では、比較計数部63は、一定時間内に、信号SG9が閾値TS4よりも小さい状態から閾値TS4よりも大きい状態に変化した(図6の点P3)後最初に信号SG9が閾値TS3よりも大きい状態から閾値TS3よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)回数である回数TM6を計数する。或いは、ステップS7では、比較計数部63は、両方の回数の総和である回数TM6を計数してもよい。
或いは、ステップS7では、比較計数部63は、一定時間内に、信号SG9が閾値TS4よりも小さい状態から閾値TS4よりも大きい状態に変化した(図6の点P3、点P4及び点P2)回数である回数TM6を計数する。或いは、ステップS7では、比較計数部63は、一定時間内に、信号SG9が閾値TS3よりも大きい状態から閾値TS3よりも小さい状態に変化した(図6の点P1)回数である回数TM6を計数する。
本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、ステップS3にて比較計数部23により計数された回数TM1と、ステップS7にて比較計数部63により計数された回数TM6と、に基づいて、回数TM1と回数TM6との総和である回数TM2を総和回数算出部26により算出する(図15のステップS8)。
このステップS8では、ステップS7にて比較計数部63により計数された回数TM6を総和回数算出部66から送信して総和回数算出部26により受信し、総和回数算出部26により受信された回数TM6を、ステップS3にて比較計数部23により計数された回数TM1と足し合わせることにより、回数TM1と回数TM6との総和である回数TM2を総和回数算出部26により算出する。
なお、ステップS3にて比較計数部23により計数された回数TM1を総和回数算出部26から送信して総和回数算出部66により受信し、総和回数算出部66により受信された回数TM1を、ステップS7にて比較計数部63により計数された回数TM6と足し合わせることにより、回数TM1と回数TM6との総和である回数TM2を総和回数算出部66により算出してもよい(図15のステップS9)。
次に、回数TM1と回数TM6とに基づいてステップS8にて総和回数算出部26により算出された回数TM2と、閾値回数TT2と、を判定部24により比較し、回数TM2が閾値回数TT2を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定部24により判定し、回数TM2が閾値回数TT2以下のとき、直流き電回路10に地絡が発生していないと判定部24により判定する(図15のステップS4)。
なお、回数TM1と回数TM6とに基づいてステップS9にて総和回数算出部66により計数された回数TM2と、閾値回数TT2と、を判定部64により比較し、回数TM2が閾値回数TT2を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定部64により判定し、回数TM2が閾値回数TT2以下のとき、直流き電回路10に地絡が発生していないと判定部64により判定してもよい(図15のステップS10)。
本実施の形態2の地絡検出方法でも、実施の形態1の地絡検出方法と同様に、き電ケーブル14即ち直流き電回路10に流れる電流に基づいて生成された信号SG1に対して、櫛形フィルタ処理等を施すことにより信号SG2を生成し、信号SG2と閾値との大小関係が、一定時間内にある状態から他の状態に変化した回数TM1を計数し、回数TM1に基づいて算出された回数TM2が閾値回数TT2を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定する。
このような場合、実施の形態1と同様に、FFT演算を行うことなく、時間軸上で逐次演算を行うだけで、短時間における電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分を検出することができ、演算装置の演算負荷を低減することができ、電車線路に追加設備を新設する必要がない。また、検出される周波数領域はそれほど高い周波数領域ではないため、特殊な電流検出器を使用することなく、既存の電流検出器を使用することができる。
また、本実施の形態2の地絡検出方法によれば、実施の形態1と同様に、電車線路に、保護線・連係線、放電ギャップ又は保護線用素子を新たに敷設する必要がない。また、本実施の形態2の地絡検出方法によれば、実施の形態1と同様に、回線電流方式(頻度積算方式)に比べて、検出が速く、例えば数秒間で検出することができる。また、本実施の形態2の地絡検出方法によれば、実施の形態1と同様に、高調波重畳方式と異なり、高調波重畳装置を設置する必要がない。
一方、本実施の形態2の地絡検出方法では、実施の形態1の地絡検出方法と異なり、き電ケーブル53に流れる電流に基づいて生成された信号SG8に対して、櫛形フィルタ処理等を施すことにより信号SG9を生成し、信号SG9と閾値との大小関係が、一定時間内にある状態から他の状態に変化した回数TM6を計数し、回数TM1と回数TM6との総和を回数TM2として計数し、計数された回数TM2が閾値回数TT2を超えたとき、直流き電回路10に地絡が発生したと判定する。
電車線11のうち中央部よりも端部11a側でなく端部11b側で地絡が発生した場合、き電ケーブル14に流れる電流よりもき電ケーブル53に流れる電流に、大きな電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分が発生することがある。本実施の形態2の地絡検出方法によれば、一定時間内に、信号SG9と閾値との大小関係が、ある状態から他の状態に変化した回数TM6を計数し、回数TM6と回数TM1との総和を回数TM2として計数することができるので、き電ケーブル53に流れる電流に、電流のゆらぎ成分即ち不規則変動電流成分が発生した場合でも、地絡の発生を精度良く検出することができる。そのため、直流き電回路に備えられたある電車線の地絡の発生を、実施の形態1に比べて、更に精度良く検出することができる。
なお、本実施の形態2でも、比較計数部23及び比較計数部63の各々について、実施の形態1において前述した図7及び図8を用いて説明した例を適用することができる。また、本実施の形態2でも、比較計数部23及び比較計数部63の各々について、実施の形態1の第1変形例及び第2変形例において前述した図9乃至図12を用いて説明した変形例を適用することができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。