以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、図1に基づき、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、電子写真方式のカラープリンタである。なお、本発明は、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいは、これらのいずれか2つ又は3つの機能を備える複合機であってもよい。また、カラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置であってもよい。
図1に示すように、画像形成装置1は、画像を形成する画像形成部2と、記録媒体としての用紙を供給する記録媒体供給部3と、供給された用紙に画像を転写する転写部4と、用紙に転写された画像を定着する定着部5と、画像が定着された用紙を装置外に排出する排出部6と、を備えている。
画像形成部2には、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット7Y,7M,7C,7Bkと、各作像ユニット7Y,7M,7C,7Bkが備える感光体9の表面に潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置8と、が設けられている。各作像ユニット7Y,7M,7C,7Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成である。具体的に、各作像ユニット7Y,7M,7C,7Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体9と、感光体9の表面を帯電する帯電装置10と、感光体9の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置11と、感光体9の表面をクリーニングするクリーニング装置12と、を備えている。図1では、ブラックの作像部7Bkが備える感光体9、帯電装置10、現像装置11、クリーニング装置12のみに符号を付しており、その他の作像ユニット7Y,7M,7Cにおいては符号を省略している。
記録媒体供給部3には、用紙Pを収容する給紙カセット13と、給紙カセット13から用紙Pを送り出す給紙ローラ14と、が設けられている。
転写部4には、転写装置15が設けられている。転写装置15は、複数のローラによって張架された中間転写体としての無端状の中間転写ベルト16と、各感光体9上のトナー画像を中間転写ベルト16へ転写する一次転写部材としての4つの一次転写ローラ17と、中間転写ベルト16上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する二次転写部材としての二次転写ローラ18と、を備えている。複数の一次転写ローラ17は、それぞれ、中間転写ベルト16を介して感光体9に接触している。これにより、中間転写ベルト16と各感光体9とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ18は、中間転写ベルト16を介して中間転写ベルト16を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ18と中間転写ベルト16との間には二次転写ニップが形成されている。
定着部5には、定着装置20が設けられている。定着装置20は、用紙Pの未定着画像担持面側に配置され用紙P上の未定着画像を定着させる定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21の外周面に対向し定着ベルト21に接触してニップ部を形成する対向部材としての加圧ローラ22など、を備えている。
排出部6には、用紙Pを装置外に排出する排紙ローラ23と、排出された用紙Pが載置される排紙トレイ24と、が設けられている。
また、画像形成装置1内には、記録媒体供給部3から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送路Rが形成されている。この用紙搬送路Rにおける記録媒体供給部3から二次転写ニップ(二次転写ローラ18)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ25が設けられている。
続いて、図1を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置の印刷動作について説明する。
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット7Y,7M,7C,7Bkにおいて、感光体9が図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置10によって感光体9の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置8が各感光体9の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置11からトナーが供給され、各感光体9上にトナー画像が形成される。
各感光体9上に形成されたトナー画像は、各感光体9の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ17の位置)に達すると、図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト16に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト16上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト16の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ18の位置)へ搬送され、二次転写ニップにおいて用紙Pに転写される。この用紙Pは、記録媒体供給部3から供給されたものである。記録媒体供給部3では、給紙カセット13に収容されている用紙Pが給紙ローラ14によって1枚ずつ送り出される。送り出された用紙Pは、タイミングローラ25によって中間転写ベルト16上のトナー画像とタイミングを合わせて二次転写ニップへ搬送される。そして、二次転写ニップにおいて、中間転写ベルト16上のトナー画像が用紙Pに転写される。また、トナー画像が転写された後、各感光体9上に残留するトナーは各クリーニング装置12によって除去される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置20へ搬送される。定着装置20においては、用紙Pが定着ベルト21と加圧ローラ22との間を通過する際に加熱及び加圧されることで、トナー画像が用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、排出部6に搬送され、排紙ローラ23によって排紙トレイ24に排出される。以上のようにして、一連の印刷動作が完了する。
次に、図2に基づき、定着装置20の構成について説明する。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、対向部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱部材としてのハロゲンヒータ26と、加圧ローラ22との間で定着ベルト21を挟んでニップ部Nを形成するニップ形成部材27と、ニップ形成部材を支持する支持部材としてのステー28と、ハロゲンヒータ26から放射される熱及び光の少なくとも一方を反射する反射部材29と、ハロゲンヒータ26から放射される熱及び光の少なくとも一方を遮蔽する遮蔽部材30と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ33と、を備えている。
定着ベルト21は、無端状のベルト(フィルムも含む。)で構成されている。本実施形態では、定着ベルト21が、ニッケルやSUS等の金属材料やポリイミドなどの樹脂材料で形成された内周側の基材と、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などで形成された外周側の離型層と、を有する。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴムなどのゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。この弾性層の厚さを100μm程度にすれば、未定着画像(未定着トナー)を押し潰して定着させるときに弾性層の弾性変形により、ベルト表面の微小な凹凸を吸収でき、光沢ムラの発生を回避できる。また、本実施形態では、定着ベルト21の低熱容量化の観点から、定着ベルト21として、薄肉で小径のベルトを採用している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、離型層のそれぞれの厚さを、20~50μm、10~50μmの範囲に設定し、定着ベルト21全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21が弾性層を有する場合は、弾性層の厚さを、100~300μmに設定するとよい。さらに低熱容量化を図るには、定着ベルト21全体としての厚さが0.2mm以下であることが望ましく、0.16mm以下がより望ましい。また、本実施形態では、定着ベルト21の直径が、20~40mmに設定されている。定着ベルト21の直径は、30mm以下であることが望ましい。
加圧ローラ22は、定着ベルト21の外周面に対向するように配置され、定着ベルト21に接触してニップ部Nを形成する部材である。本実施形態では、加圧ローラ22が、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴムやフッ素ゴムなどから成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFAやPTFEなどから成る離型層と、で構成されている。また、本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。中空ローラの場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータなどの加熱部材を配置することも可能である。また、加圧ローラ22の弾性層は、ソリッドゴムでもよいが、内部に加熱部材が配置されていない場合は、弾性層にスポンジゴムを用いて加圧ローラ22の断熱性を高めることが望ましい。これにより、定着ベルト21の熱が加圧ローラ22に奪われにくくなり、定着ベルト21の熱効率が向上する。
また、加圧ローラ22は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって図2中の矢印Aで示す方向に回転駆動するように構成されている。一方、定着ベルト21は、加圧ローラ22が回転駆動することにより、これに伴って図2中の矢印B方向に従動回転する。定着ベルト21と加圧ローラ22との間(ニップ部N)に未定着画像Tが転写された用紙Pが搬送されると、回転する定着ベルト21と加圧ローラ22とによって用紙Pが搬送されニップ部Nを通過する。このとき、用紙Pに対して熱と圧力が付与されることで、未定着画像Tが用紙Pに定着される。
また、加圧ローラ22と定着ベルト21は、互いに接近離間するように構成されている。万が一、ニップ部Nに用紙が詰まった場合は、加圧ローラ22と定着ベルト21を互いに離間させ、ニップ部Nを開放することで、詰まった用紙のジャム処理などのメンテナンス作業を行うことが可能である。加圧ローラ22と定着ベルト21とは、いずれか一方に対して他方を動かして接近離間させるように構成されていてもよいし、両方を動かすことで接近離間させる構成であってもよい。
ハロゲンヒータ26は、熱及び光(例えば、赤外線光)を放射することで、定着ベルト21を輻射熱により加熱する輻射熱式のヒータである。ハロゲンヒータ26の代わりに、カーボンヒータや、その他のヒータを用いてもよい。本実施形態では、ハロゲンヒータ26が2本設けられているが、加熱部材の個数は、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、本実施形態では、ハロゲンヒータ26が、定着ベルト21の内側で、定着ベルト21の回転中心Qよりも用紙搬送方向の上流側(図2における下側)に配置されている。ただし、ハロゲンヒータ26の配置はこれに限らず、適宜変更可能である。
ニップ形成部材27は、定着ベルト21の内側に配置され、加圧ローラ22との間で定着ベルト21を挟んでニップ部Nを形成する。ニップ形成部材27と定着ベルト21との間に低摩擦性の摺動シートを設け、この摺動シートを介してニップ形成部材27が定着ベルト21の内周面に接触するようにしてもよい。本実施形態では、定着ベルト21の内周面に対して接触するニップ形成部材27の接触面が平面状に形成されているが、この接触面は凹形状やその他の形状であってもよい。例えば、ニップ形成部材27の接触面が加圧ローラ22側とは反対側へ凹んだ凹形状とすることで、ニップ部Nの出口部が加圧ローラ22寄りになり、定着ベルト21に対する用紙の分離性が向上する。
ニップ形成部材27の材料としては、耐熱温度が200度以上の耐熱性材料であることが望ましい。例えば、ニップ形成部材27の材料として、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂を用いることができる。
ステー28は、定着ベルト21の内側に配置され、加圧ローラ22の加圧力に抗してニップ形成部材27を支持する。すなわち、ステー28は、ニップ形成部材27に対して加圧ローラ28側とは反対側で接触することで、加圧ローラ22からの圧力によるニップ形成部材27の撓み、特にニップ形成部材27の長手方向(定着ベルト21の回転軸方向)に渡る撓みを抑制する。ステー28は、ニップ形成部材27の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄などの機械的強度が高い金属材料で構成されることが望ましい。
反射部材29は、定着ベルト21の内側で、ハロゲンヒータ26とステー28との間に配置されている。反射部材29が、ハロゲンヒータ26から放射された熱及び光の少なくとも一方を定着ベルト21側へ反射することで、定着ベルト21を効果的に加熱することができる。また、反射部材29が、ステー28やニップ形成部材27への熱伝達を抑制することで、不要な熱の消費を低減し、省エネ効果が期待できる。反射部材29の材料としては、アルミニウムやステンレスなどが用いられる。特に、アルミニウム製の基材に反射率の高い銀を蒸着した反射部材29を用いることで、定着ベルト21の加熱効率をより一層向上させることが可能である。
温度センサ33は、定着ベルト21の外周面に対向して配置され、定着ベルト21の温度を検知する。温度センサ33によって定着ベルト21の表面温度が検知され、その検知結果に基づいてハロゲンヒータ26の出力制御が行われることで、定着ベルト21の温度が所望の温度(定着温度)となるように制御される。温度センサ33としては、例えばサーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなど、公知の温度センサを適用可能である。また、温度センサ33は、図2に示すような定着ベルト21に対して非接触に配置される非接触型であってもよいし、定着ベルト21に接触する接触型であってもよい。
遮蔽部材30は、第1の遮蔽部材としての内側遮蔽部材31と、第2の遮蔽部材としての外側遮蔽部材32と、を有している。内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32は、ハロゲンヒータ26と定着ベルト21との間に互いに隙間を介して重なり合うように配置され、定着装置20の側壁などのフレーム部材に取り付けられて支持されている。内側遮蔽部材31は、外側遮蔽部材32よりもハロゲンヒータ26側(定着ベルト径方向の内側)に配置され、外側遮蔽部材32は、内側遮蔽部材31よりも定着ベルト21側(定着ベルト径方向の外側)に配置されている。内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32の材料としては、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属材料、又はセラミックなどの耐熱性を有する材料が好ましい。
続いて、図3を参照しつつ、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32の構成について詳しく説明する。
図3では、内側遮蔽部材31、外側遮蔽部材32及びハロゲンヒータ26のみを示し、その他の部材は省略している。また、図3において、矢印X方向は定着ベルトの回転軸方向を示し、矢印Y方向は定着ベルトの周方向(回転方向)を示す。
図3に示すように、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32は、定着ベルトの回転軸方向Xへ長手状に伸び、定着ベルトの周方向Yに沿って湾曲した形状に形成されている。本実施形態では、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32が、同じ外郭形状に形成されている。詳しくは、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32は、それぞれの周方向Yの幅が長手方向の中央側よりも両端側で大きくなるように形成されている。さらに、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32は、画像形成装置に用いられる用紙の幅サイズや各ハロゲンヒータ26の発熱領域などに対応して、それぞれの長手方向の中央側から両端側に向かって周方向Yの幅が段階的に大きくなるように段差状に形成されている。内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32がこのような形状に形成されていることで、各遮蔽部材31,32は、定着ベルトの温度上昇しやすい回転軸方向Xの両端側で、ハロゲンヒータ26から放射された熱及び光の少なくとも一方(以下、熱及び光を含む概念として「加熱エネルギー」という用語を使用する。)を効果的に遮蔽でき、定着ベルトの局部的な温度上昇を抑制することができる。なお、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32の形状は、図3に示す形状に限らず、用紙の幅サイズや各ハロゲンヒータ26の発熱領域などに応じて適宜変更可能である。
内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32は、いずれも加熱エネルギーを遮蔽する機能を有しているが、それぞれの構成は異なっている。具体的に、内側遮蔽部材31は、多数の線が交差する網目状に形成され、矩形又は菱形に形成された多数の貫通孔35を有する。一方、外側遮蔽部材32は、網目状に形成されておらず、湾曲した板状の部材で構成されている。従って、外側遮蔽部材32は、多数の貫通孔35を有していない。
内側遮蔽部材31が有する多数の貫通孔35は、ハロゲンヒータ26側及び外側遮蔽部材32側の両側に開口している。このため、図3に示すように、ハロゲンヒータ26から加熱エネルギーが放射されると、内側遮蔽部材31側へ向かう一部の加熱エネルギー40aは、内側遮蔽部材31の各貫通孔35を透過(通過)する。そして、その一部の加熱エネルギー40aは、貫通孔35を透過した後、外側遮蔽部材32に至り、外側遮蔽部材32によって遮蔽される。一方、貫通孔35を透過しない他の一部の加熱エネルギー40bは、内側遮蔽部材31によって遮蔽される。なお、本明細書において、「加熱エネルギーを遮蔽する」とは、加熱エネルギー(熱及び光の少なくとも一方)を遮ることを意味し、例えば、「加熱エネルギーを反射する」こと、及び「加熱エネルギーを吸収する」ことを含む概念を意味する。
このように、内側遮蔽部材31側へ放射された加熱エネルギーは、その一部40bが内側遮蔽部材31によって遮蔽され、他の一部40aは内側遮蔽部材31を透過して外側遮蔽部材32によって遮蔽されるので、従来のような1つの遮蔽部材によって加熱エネルギーを遮蔽する構成に比べて、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32のそれぞれが受ける熱の影響が低減される。すなわち、ハロゲンヒータ26から放射された加熱エネルギーは、互いに別体で構成された内側遮蔽部材31と外側遮蔽部材32とに分散されて遮蔽されるので、1つの遮蔽部材が受ける熱の影響を低減することができる。これにより、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32がハロゲンヒータ26からの加熱エネルギーを遮蔽する遮蔽位置に配置された状況であっても、各遮蔽部材31,32の加熱を抑制でき、これらが過昇温することによる変形や変色などを防止できるようになる。
ところで、遮蔽部材が受ける熱の影響は、その遮蔽部材全体に渡って均一とは限らない。一般的に、遮蔽部材が受ける熱の影響は、遮蔽部材の形状やハロゲンヒータの発熱分布などによって異なるため、遮蔽部材には温度上昇しやすい部分と温度上昇しにくい部分とが存在することが多い。従って、遮蔽部材の温度上昇しやすい部分では、局部的な過昇温により遮蔽部材の変形や変色が発生する可能性が高くなる。例えば、本実施形態においては、外側遮蔽部材32の長手方向の両端側の部分で温度上昇しやすい傾向にある。
そこで、このような事情に対応するため、本実施形態では、内側遮蔽部材31の網目の粗さ、すなわち、貫通孔35の面積率(単位面積当たりの貫通孔35の面積)を、その部分によって異ならせている。具体的には、内側遮蔽部材31の長手方向の両端側の部分31aで網目を細かくし、それよりも長手方向の内側の中央側の部分31bでは網目を粗くしている。網目の粗い中央側の部分31bでは、網目の細かい両端側の部分31aに比べて、貫通孔35の面積率が大きいので、内側遮蔽部材31を透過する加熱エネルギーの透過率(単位面積当たりの加熱エネルギーの透過量)が大きくなる。このため、ハロゲンヒータ26から加熱エネルギーが放射された際、加熱エネルギーは、内側遮蔽部材31の両端側の部分31aよりも中央側の部分31bで多く透過する。反対に、透過率の小さい両端側の部分31aでは、透過率の大きい中央側の部分31bよりも、加熱エネルギーの透過量が少なくなる。
このように、本実施形態では、内側遮蔽部材31の両端側の部分31aにおける加熱エネルギーの透過量を少なくすることで、外側遮蔽部材32の温度上昇しやすい長手方向の両端側の部分32aで加熱エネルギーの影響が低減され、その部分32aにおける温度上昇を効果的に抑制することができる。これにより、外側遮蔽部材32の局部的な温度上昇を抑制でき、温度上昇に伴う変形や変色をより効果的に防止できるようになる。
内側遮蔽部材31の各部分における加熱エネルギーの透過率は、網目の粗さ、すなわち、貫通孔35の面積率を変更することで調整可能である。従って、温度上昇しやすい部分の位置や温度上昇の程度などに応じて網目の粗さを適宜変更することで、加熱エネルギーの透過率を好ましい値に設定することができる。例えば、上述の実施形態とは反対に、外側遮蔽部材32の長手方向の中央側の部分32bが両端側の部分32aよりも温度上昇しやすい場合は、これに対応して内側遮蔽部材31の中央側の部分31bの網目を両端側の部分31aの網目よりも細かくしてもよい。また、内側遮蔽部材31の両端側の部分31aと中央側の部分31bとで網目の粗さを異ならせる場合に限らず、その他の部分で網目の大きさを異ならせてもよい。さらに、互いに異なる網目の大きさは、大、小の2種類に限らず、大、中、小などの3種類以上であってもよい。
以下、本発明の他の実施形態について説明する。主に上述の実施形態(第1実施形態)とは異なる部分について説明し、それ以外の部分は基本的に同様であるので説明を省略する。
図4に、本発明の第2実施形態の構成を示す。
図4に示す第2実施形態では、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32のそれぞれの外郭形状が異なっている。具体的に、内側遮蔽部材31は、主に外側遮蔽部材32の温度上昇しやすい長手方向の両端側の部分32aに対応して配置され、外側遮蔽部材32の長手方向の中央側の部分32bに対応する箇所では、主に直線状の細いフレーム部が配置されている。
このように、内側遮蔽部材31を、主に外側遮蔽部材32の温度上昇抑制が必要な部分に対応させて配置してもよい。また、本実施形態においても、内側遮蔽部材31の長手方向の両端側の部分31aの網目が、それよりも長手方向の内側に配置された部分31cの網目よりも細かく形成されていることで、外側遮蔽部材32の温度上昇しやすい長手方向の両端側の部分32aでその温度上昇を効果的に抑制することが可能である。
続いて、図5に基づき、本発明の第3実施形態の構成について説明する。
図5に示す第3実施形態では、内側遮蔽部材31が、互いに重なり合うように配置された2つの部材で構成されている。すなわち、内側遮蔽部材31は、ハロゲンヒータ26に直接対向する位置に配置された第1の内側遮蔽部材41と、第1の内側遮蔽部材41と外側遮蔽部材32との間に配置された第2の内側遮蔽部材42とで構成されている。
第1の内側遮蔽部材41及び第2の内側遮蔽部材42は、網目状の部分の範囲、すなわち加熱エネルギーを透過させる部分の範囲が互いに一致しておらず異なっている。内側遮蔽部材31は、このような網目の範囲が互いに異なる2つの遮蔽部材(第1の内側遮蔽部材41及び第2の内側遮蔽部材42)を合わせることで、部分によって加熱エネルギーの透過率が異なっている。
具体的に、本実施形態では、第1の内側遮蔽部材41が、長手方向の両端側の部分41a及び中央側の部分41bを含むほぼ全体に渡って網目状に形成されているのに対し、第2の内側遮蔽部材42は、長手方向の中央側の部分42bのみが網目状に形成されている。第2の遮蔽部材42の長手方向の両端側の部分42aは、網目状に形成されておらず、外側遮蔽部材32と同様に、貫通孔35を有しない湾曲した板状に形成されている。
上記のように形成された第1の内側遮蔽部材41及び第2の内側遮蔽部材42が互いに重なって配置されていることで、ハロゲンヒータ26から加熱エネルギーが放射されると、まず、第1の内側遮蔽部材41の両端側の部分41a及び中央側の部分41bにおいて加熱エネルギーの一部40aが貫通孔35を透過し、他の一部40bは遮蔽される。そして、第1の内側遮蔽部材41を透過した加熱エネルギー40aのうち、中央側の部分41bを透過した加熱エネルギーは、網目状に形成された第2の内側遮蔽部材42の中央側の部分42bにおいて、その一部40cが貫通孔35を透過し、他の一部40dは遮蔽される。また、第1の内側遮蔽部材41を透過した加熱エネルギー40aのうち、両端側の部分41aを透過した加熱エネルギー40aは、貫通孔35の無い板状に形成された第2の内側遮蔽部材42の両端側の部分42aによって遮蔽される。
このように、第1の内側遮蔽部材41を透過した加熱エネルギーは、第2の内側遮蔽部材42において、その両端側の部分42aで遮蔽され、中央側の部分42bでは部分的に透過するため、外側遮蔽部材32に加熱エネルギーが達するのは、主に外側遮蔽部材32の中央側の部分32bとなる。これに対して、外側遮蔽部材32の両端側の部分32aでは、加熱エネルギーがほとんど達しない。これにより、外側遮蔽部材32の温度上昇しやすい両端側の部分32aは熱の影響を受けにくくなるため、その部分32aでの温度上昇を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、内側遮蔽部材31が2つの遮蔽部材(第1の内側遮蔽部材41及び第2の内側遮蔽部材42)で構成されていることで、ハロゲンヒータ26から放射される加熱エネルギーは、第1の内側遮蔽部材41、第2の内側遮蔽部材42及び外側遮蔽部材32の、互いに別体で構成された3つの遮蔽部材に分散されて遮蔽される。このため、上述の実施形態のような2つの遮蔽部材に加熱エネルギーが分散して遮蔽される構成に比べて、1つの遮蔽部材が受ける熱の影響をさらに低減できるようになる。その結果、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32の加熱をより一層抑制でき、これらが過昇温することによる変形や変色などをより高度に防止できるようになる。
設置スペースに余裕があれば、内側遮蔽部材31を3つ以上の遮蔽部材で構成してもよい。内側遮蔽部材31を構成する遮蔽部材の個数が多くなるほど、加熱エネルギーの分散先の数が多くなるので、1つの遮蔽部材が受ける熱の影響をより一層低減できるようになる。
また、本実施形態において、内側遮蔽部材31を構成する各遮蔽部材の形状や透過率は適宜変更可能である。図5では、第1の内側遮蔽部材41が、全体に渡って同じ粗さの網目で形成されているが、第1の内側遮蔽部材41の網目の粗さを、両端側の部分41aと中央側の部分41bとで異ならせてもよい。また、第2の内側遮蔽部材42において、その両端側の部分42aを、貫通孔35を有しない板状に代えて、中央側の部分42bとは異なる粗さの網目状としてもよい。
図6に、本発明の第4実施形態に係る内側遮蔽部材を示す。
図6に示す第4実施形態のように、内側遮蔽部材31が有する貫通孔35を円形にしてもよい。貫通孔35の大きさや個数(密度)を、内側遮蔽部材31の部分によって(例えば、両端側の部分31aと中央側の部分31bとで)異ならせることで、加熱エネルギーの透過率を異ならせることが可能である。
さらに、図7に、本発明の第5実施形態に係る内側遮蔽部材を示す。
図7に示す第5実施形態では、内側遮蔽部材31が、加熱エネルギーの一部を透過させる材料で構成されている。この場合、内側遮蔽部材31は、上述の実施形態のような貫通孔35を有しない。内側遮蔽部材31の部分によって(例えば、両端側の部分31aと中央側の部分31bとで)熱又は光の透過率が異なる材料を用いることで、加熱エネルギーの透過率を異ならせることが可能である。
また、図8に示す本発明の第6実施形態のように、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32を移動可能に構成してもよい。内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32を、ハロゲンヒータ26に直接対向した遮蔽位置(図8中の実線で示す位置)から、ハロゲンヒータ26との間にステー28や反射部材29などの他の構造体が介在する退避位置(図8中の二点鎖線で示す位置)へ退避可能に構成することで、各遮蔽部材31,32の温度上昇を抑制することが可能である。また、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32を、作像条件や定着ベルトの温度などに応じて複数の遮蔽位置に移動可能に構成することで、定着ベルトの局部的な温度上昇を高度に抑制しつつ、定着処理を良好に行うことができるようになる。
さらに、図9に示す本発明の第7実施形態のように、内側遮蔽部材31及び外側遮蔽部材32を、互いに独立して移動可能に構成してもよい。このようにすることで、加熱エネルギーの遮蔽量(遮蔽範囲)をより細かく調整することができ、定着ベルトの局部的な温度上昇をより高度に抑制できるようになる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
上述の実施形態では、定着部材としての定着ベルトと、対向部材としての加圧ローラと、を備える定着装置を例に挙げているが、本発明は、斯かる構成の定着装置に限らず、定着ベルトに代えて定着ローラを備える定着装置や、加圧ローラに代えて加圧ベルトを備える定着装置にも適用可能である。