JP7284059B2 - 屋根の施工方法 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 発行所 株式会社鋼構造出版、刊行物名 「鉄構技術」第31巻 通巻366号、発行日 平成30年10月28日
本発明は、風の吹き上げや吹き降ろしを考慮して、屋根を吊り下げ支持するロッドに常時張力が発生しているようにすることが可能であると共に、そのような張力の作用の下で、所定の高さ位置に屋根を設置・保持することが可能な屋根の施工方法に関する。
スタジアムなどに設置される大型の屋根として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1の「膜屋根を備えた大型建物」は、多数の支柱を建物の桁行方向の両側に間隔をおいて設け、多数の支持ケーブルを梁間方向の対向する各支柱間に懸垂させて張り、多数の補剛大梁を各支持ケーブルの下側に配し、各補剛大梁の梁間方向の間隔をおいた部分を吊りケーブルで吊り、屋根体を膜材の葦材等で構成し、屋根体を各補剛大梁間に配し、屋根体を各補剛大梁に対して固定的に又は可動的に取付けるようにしている。
特開平7-109851号公報
スタジアムでは、客席に屋根を設けることが多い。この場合、屋根は片持ち形式であり、客席全体を覆うようにすると、屋根はかなり大型になる。この種の片持ち形式の屋根では、自重に加えて、風などの外力の影響を考慮しなければならない。
構造計算上、風荷重は面積に比例する。特に、庇のように迫り出す片持ち形式の屋根の場合、通常の屋根に比し、割増係数が大きくなり、必要支持荷重は大きなものとなる。さらに、風については、吹き降ろしだけでなく、吹き上げに対する安全性を確保する必要がある。
片持ち形式の屋根が大きい場合、屋根を上から吊り下げる方法がとられることが多い。例えば、柱の上端を、屋根梁材との接合部よりも高い位置に設定し、屋根上において、柱上端と屋根梁材の中央付近とをロッドでつないで、張力を負担するロッドで屋根を吊り下げるようにしている。さらに、風の吹き上げを考慮して、屋根下において、梁と柱とをロッドでつなぐようにしている。
この場合、屋根下のロッドには、吹き上げ対策であるため、また、屋根上のロッドの支持負担が過剰にならないように、さらに、屋根の設置高さが不定とならないように、張力をかけるようにはしていない。
しかしながら、風の吹き上げや吹き降ろし対策としては、上下のロッドに常時張力が発生しているようにすることが望ましい。これは、風の吹き上げや吹き降ろしによって、ロッドの張力が打ち消されたり、さらに圧縮力がかかった場合、後述するカプラやロッドの端部を固定する接合部に弛みが生じて、本来の性能を発揮することができないおそれがあるためである。そのような張力の作用の下で、所定の高さ位置に屋根を設置・保持できることが好ましく、そのような屋根の施工方法の案出が求められていた。
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、風の吹き上げや吹き降ろしを考慮して、屋根を吊り下げ支持するロッドに常時張力が発生しているようにすることが可能であると共に、そのような張力の作用の下で、所定の高さ位置に屋根を設置・保持することが可能な屋根の施工方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる屋根の施工方法は、屋根材が取り付けられる屋根梁材は、俯仰可能に支持構造へ基端側が設置されると共に、該支持構造から先端側へ向けて当該屋根梁材の上側及び下側に配設される上下一対のテンションロッドにより吊り形式で支持され、該屋根梁材の自重、該屋根梁材に作用する下向き荷重及び上向き荷重が、これらテンションロッドを介して、該支持構造へ伝達されるようにした屋根の施工方法であって、上記屋根梁材の上記先端を目標高さよりも高い位置に支持する高さ調節可能な仮設体を、該屋根梁材の該先端側に設置し、該仮設体と上記支持構造との間に該屋根梁材を吊り込み、該屋根梁材の上記基端側を該支持構造に設置し、該屋根梁材の該先端を該仮設体に支持させることにより、該屋根梁材を仮設置する第1工程と、上記屋根梁材の上側及び下側に、上記上テンションロッド及び上記下テンションロッドを吊り込み、これらテンションロッドそれぞれを、弛ませた状態で該屋根梁材に取り付け、該上テンションロッドに取り付けたジャッキで、当該上テンションロッドに、自重による弛みをなくすための取付時張力を導入する第2工程と、上記上テンションロッドに上記ジャッキでさらに、上記屋根梁材の吊り下げ支持が可能な初期張力を導入する第3工程と、上記仮設体の高さ位置を下げ、上記上テンションロッドに、上記屋根梁材の自重を負荷して該屋根梁材を支持させる支持張力を導入する第4工程と、上記下テンションロッドに取り付けたジャッキで、該下テンションロッドに対し、下向き荷重に対して張力が維持される目標張力に達するまで張力を導入し、該下テンションロッドに導入した張力で上記上テンションロッドに対し、上向き荷重に対して張力が維持される目標張力に向けて張力を導入する第5工程と、上記屋根梁材の上記先端の高さが上記目標高さを含む許容高さ範囲に収まるように、上記各ジャッキにより、上記上下一対のテンションロッドの張力を調整する第6工程と、上記ジャッキをそれぞれカプラに盛り替えて、それらジャッキを撤去する第7工程とを含むことを特徴とする。
前記屋根梁材の前記目標高さを含む前記許容高さ範囲について、該屋根梁材に作用する上向き荷重及び下向き荷重に対して張力が維持される前記目標張力を含む、前記上下一対のテンションロッドの許容上下限張力範囲を規定した許容管理範囲が設定されることを特徴とする。
前記上テンションロッドの前記目標張力は、予測される外力によって該上テンションロッドに生じる圧縮側の応力の最大値以上であり、前記下テンションロッドの前記目標張力は、予測される外力によって該下テンションロッドに生じる圧縮側の応力の最大値以上であることを特徴とする。
本発明にかかる屋根の施工方法にあっては、風の吹き上げや吹き降ろしを考慮して、屋根を吊り下げ支持するテンションロッドに常時張力が発生しているようにすることができると共に、そのような張力の作用の下で、所定の高さ位置に屋根を設置・保持することができる。
本発明にかかる屋根の施工方法の好適な一実施形態を示す屋根梁材の設置が完了したスタジアムの側断面図である。 図1に示した屋根の施工方法の第1工程を説明する説明図である。 図1に示した屋根の施工方法の第2工程を説明する説明図である。 図1に示した屋根の施工方法の第3工程を説明する説明図である。 図1に示した屋根の施工方法の第4工程を説明する説明図である。 図1に示した屋根の施工方法の第5工程を説明する説明図である。 図1に示した屋根の施工方法の第6工程を説明する説明図である。 図1に示した屋根の施工方法に適用される許容管理範囲を説明するグラフ図である。 図1に示した屋根の施工方法の第7工程を説明する説明図である。 図1に示した屋根の施工方法で、屋根梁材の施工が完了した様子を説明する説明図である。
以下に、本発明にかかる屋根の施工方法の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1には、本実施形態にかかる屋根の施工方法によって屋根梁材1の設置が完了したスタジアム2の側断面図が示されている。スタジアム2の観客席2aは、テンションロッド3,4で吊り下げる形式の屋根で覆われるようになっている。
地盤G上には、屋根を支持する支持構造体5が構築される。支持構造体5には、屋根下に配置して、観客席2aが設けられる。屋根は、支持構造体5から観客席2a上に跳ね出す形態の複数の屋根梁材1と、これら屋根梁材1に取り付けられる屋根材(図示せず)とから構成される。
各屋根梁材1は、支持構造体5の観客席2a上にクレーン等で吊り込まれ、長さ方向の一端である基端1aを支持構造体5側に位置させて、長さ方向の他端である先端1bが観客席2aよりも迫り出すようにして設置される。屋根梁材1の基端1aは、支持構造体5にピン結合されて設置され、これにより、屋根梁材1は、当該基端1aを支点として、俯仰可能に設けられる。
屋根梁材1の上側及び下側には、支持構造体5から当該屋根梁材1の先端1b側へ向けて、上下一対でテンションロッド3,4が配設される。各屋根梁材1は個別に、これらテンションロッド3,4に導入される張力によって吊り形式で支持される。
図1に示すように、屋根梁材1の自重L、屋根へ吹き下ろす風WDや吹き上げたりする風WUの風力によって屋根梁材1に作用する下向き荷重及び上向き荷重などの各種荷重はすべて、上下一対のテンションロッド3,4を介して、支持構造体5に伝達され、当該支持構造体5によって支持されるようになっている。下向き荷重には、追って屋根梁材1に取り付けられて下向きに作用する屋根材の自重が含まれる。
次に、本実施形態にかかる屋根の施工方法について説明する。図2には、屋根梁材1を仮設置する第1工程が、ステップ1として示されている。
まず、地盤G上に、屋根梁材1の先端1b側に位置させて、仮設体6を設置する。仮設体6の頂部には、仮設体6の全体高さを調節可能とするためにジャッキ7が設けられる。仮設体6の高さは図2に矢印で示すように、屋根梁材1の吊り込み前、ジャッキ7が上昇伸長されて、当該屋根梁材1の先端1bの目標高さ位置よりも高く設定される。
その後、既に構築された支持構造体5と仮設体6との間に渡すようにして、クレーン等で屋根梁材1を吊り込み、屋根梁材1の基端1aを支持構造体5に設置し、屋根梁材1の先端1bを仮設体6のジャッキ7上に載置して支持させる。このとき、屋根梁材1の先端1bは、仮設体6により、目標高さ位置よりも高い位置に支持される。これにより、屋根梁材1の仮設置が完了する。
図3には、上下一対のテンションロッド3,4の取り付けと上テンションロッド3への取付時張力の導入を行う第2工程が、ステップ2として示されている。
屋根梁材1の下側に下テンションロッド4をクレーン等で吊り込み、当該下テンションロッド4の一端4aを支持構造体5側に、他端4bを屋根梁材1の先端1b側にそれぞれ連結し、その後、屋根梁材1の上側に上テンションロッド3をクレーン等で吊り込み、当該上テンションロッド3の一端3aを支持構造体5側に、他端3bを屋根梁材1の先端1b側にそれぞれ連結する。
上テンションロッド3は、導入される張力で屋根梁材1を引き上げるように、支持構造体5に連結される一端3aが屋根梁材1に連結される他端3bよりも高い位置に設定される。下テンションロッド4は、導入される張力で屋根梁材1を引き下げるように、支持構造体5に連結される一端4aが屋根梁材1に連結される他端4bよりも低い位置に設定される。
言い換えると、屋根梁材1が俯く挙動のとき、上テンションロッド3に負荷が加重され、下テンションロッド4の負荷が軽減される一方で、屋根梁材1が仰ぐ挙動の時には反対に、下テンションロッド4に負荷が加重され、上テンションロッド3の負荷が軽減されるように設けられる。
第2工程では、上下一対のテンションロッド3,4は共に、張力が導入されないように、屋根梁材1に対し、弛ませた状態で取り付けられる。次いで、上テンションロッド3に、張力を導入するためのジャッキ8を取り付ける。取り付けたジャッキ8により、上テンションロッド3に、当該上テンションロッド3自体の自重による弛みをなくすように、すなわちサグ(撓み)がなくなるように、取付時張力を導入する。
第2工程では、屋根梁材1は仮設体6に支持されていて、取付時張力は、屋根梁材1の支持を負担することがないように導入される。以下、第7工程まで、張力管理については、テンションロッド3,4にひずみゲージを取り付け、計測したひずみから得られる張力を随時調整することによって、高い施工精度を維持することができる。
図4には、上テンションロッド3へ初期張力を導入する第3工程が、ステップ3として示されている。
上テンションロッド3にはさらに、ジャッキ8により初期張力として、仮設体6による屋根梁材1の支持状態で、当該屋根梁材1を吊り下げ支持することが可能な張力が導入される。
吊り下げ支持が可能な初期張力とは、後述する第4工程で仮設体6による屋根梁材1の支持が解除されたときに、当該屋根梁材1の全自重が一気に上テンションロッド3に作用しないように、事前に上テンションロッド3に導入されるプレテンションを意味し、屋根梁材1の自重そのものによって発生する張力よりも幾分小さい張力に設定される。
従って、仮設体6による支持が解除されたときには、目標高さよりも高い位置であった屋根梁材1の先端1bが下がることとなる。下テンションロッド4に張力を導入するジャッキ9は、この第3工程の段階で下テンションロッド4に取り付けることが好ましい。第3工程の段階でも、下テンションロッド4は弛ませた状態とされている。
図5には、上テンションロッド3に屋根梁材1を支持する支持張力を導入する第4工程が、ステップ4として示されている。
仮設体6のジャッキ7を下降収縮させて仮設体6としての高さ位置を下げると、屋根梁材1の自重が仮設体6から上テンションロッド3に移されて当該上テンションロッド3に負荷され、ジャッキ8による張力導入なしに、上テンションロッド3に張力が導入される。この張力分が支持張力(自重成分)として上テンションロッド3に加重される。この際、上述したように、屋根梁材1の先端1bが幾分下がることになる。
以下、第7工程まで、屋根梁材1の先端1bの高さ位置、そしてまた上下変位量は、3次元計測器を用いて測定し管理する。屋根梁材1の先端1bを支持する役目を終えた仮設体6については、その後いつ撤去してもよい。
図6には、下テンションロッド4に張力を導入する第5工程が、ステップ5として示されている。
第5工程では、下テンションロッド4に取り付けたジャッキ9により、当該下テンションロッド3に対して、張力を導入する。下テンションロッド3には、風の吹き下ろしWDや屋根材などによって屋根梁材1に生じる下向き荷重に対し、当該下テンションロッド4の張力が維持される目標張力に達するまで、導入する張力を徐々に増加させてゆく。
屋根に下向き荷重が作用すると、屋根梁材1に連結されている下テンションロッド4では、張力が減少する傾向となる。本実施形態では、想定される下向き荷重が作用したときでも、下テンションロッド4の張力が「0」となったりマイナス(圧縮)となったりしない目標張力が設定され、この目標張力が下テンションロッド4にジャッキ9によって導入される。
このようにプラス(引張)の張力を下テンションロッド4に導入して屋根梁材1が引き下げられるようにすると、結果として、上テンションロッド3に張力が導入される。
上テンションロッド3には、下テンションロッド4への張力導入を利用して、風の吹き上げWUなどによって屋根梁材1に生じる上向き荷重に対し、当該上テンションロッド3の張力が維持される目標張力に向けて張力が導入される。すなわち、屋根に上向き荷重が作用すると、屋根梁材1に連結されている上テンションロッド3では、張力が減少する傾向となる。
本実施形態では、想定される上向き荷重が作用したときでも、上テンションロッド3の張力が「0」以下にならない、すなわち張力が打ち消されたり、マイナス(圧縮)とならない目標張力が設定され、この目標張力に向けて上テンションロッド3に張力が導入される。
換言すれば、上テンションロッド3の目標張力は、予測される種々の外力によって上テンションロッド3に生じる圧縮側の応力の最大値以上に設定される。
同様に、下テンションロッド4についてもその目標張力は、予測される種々の外力によって下テンションロッド4に生じる圧縮側の応力の最大値以上に設定される。
目標張力に「向けて」とは、この第5工程の下テンションロッド4への張力導入によって、上テンションロッド3の張力が目標張力に達してもよいが、達しなくてもよいことを意味する。達しない場合には、その後の第6工程によって、上テンションロッド3に目標張力が導入される。
第5工程以降は、屋根梁材1の先端1bの高さ位置を確認しつつ、張力導入が実施される。
図7には、上下一対のテンションロッド3,4の張力を調整する第6工程が、ステップ6として示されている。
上下一対のテンションロッド3,4双方に張力が導入されている状態で、屋根梁材1の先端1bの高さが目標高さを含む許容高さ範囲に収まるように、各テンションロッド3,4の張力をそれぞれのジャッキ8,9によって調整する。
屋根梁材1の先端1bの高さ位置が目標から逸脱しない限り、基本的には、上テンションロッド3に張力を導入し、その結果として、下テンションロッド4にも張力が導入されるようにする。
既に明らかなように、上テンションロッド3をそのままにして、下テンションロッド4の張力をジャッキ9で増減調整すれば、上テンションロッド3の張力も増減し、反対に、下テンションロッド4をそのままにして、上テンションロッド3の張力をジャッキ8で増減調整すれば、下テンションロッド4の張力も増減する。
また、テンションロッド3,4に張力を導入すると、テンションロッド3,4自体が伸長し、その伸び量は、導入張力の大きさ如何となる。
以上のような関係の下、屋根梁材1の先端1bの高さが許容高さ範囲内に収まるように調整する必要がある。
許容高さ範囲とは、目標高さに合致させることが難しい場合や目標高さに対し修正を加える場合の余裕分としての許容範囲をいう。
図8は、第6工程で実施される上下一対のテンションロッド3,4の張力調整について説明するグラフ図である。
張力と変位の相関性を解析により確認した。張力をある程度テンションロッド3,4に導入すると、幾何学的非線形解析ではあるものの、張力を導入した上下一対のテンションロッド3,4の一方と、当該一方への張力導入の影響によって張力が導入される他方とでは、張力の比が一定であること、導入した張力とそれに伴う屋根梁材1の先端1bの高さ方向の変位は概ね比例関係にあることが分かった。
すなわち、
上テンションロッド3の張力=X・α1+Y・β2
下テンションロッド4の張力=X・α2+Y・β1
屋根梁材1の先端1bの変位=X-Y

ここで、X,Y:変数
α1:上テンションロッド3への導入張力で
+1mmの上昇変位が生じる張力
α2:α1の張力により、+1mmの上昇変位が生じたときに
下テンションロッド4に生じる張力
β1:下テンションロッド4への導入張力で
-1mmの下降変位が生じる張力
β2:β1の張力により、-1mmの下降変位が生じたときに
上テンションロッド3に生じる張力
上記3つの関係式では、未知数(変数)が2つであるために、解が一つに定まらない。そこで、図8に示した解析結果を用いることとした。
図8は、上下一対のテンションロッド3,4それぞれにかけた所定の張力による屋根梁材1の先端1bの上下変位を示している。
一点鎖線の(ハ)は、上テンションロッド3に所定の張力をかけたときに屋根梁材1の先端1bが取り得る上昇変位(横軸X)であり、X=0~80mmの範囲で表示されている。
一点鎖線の(ニ)は、上テンションロッド3の許容下限張力、一点鎖線の(ホ)は、上テンションロッドの許容上限張力である。
すなわち、上テンションロッド3の張力を増減すると、グラフ上、屋根梁材1の先端1bがとり得る上昇変位が左下方から右上方へ動く。
点線の(ヘ)は、下テンションロッド4に所定の張力をかけたときに屋根梁材1の先端1bが取り得る下降変位(縦軸Y)であり、Y=0~80mmの範囲で表示されている。
点線の(ト)は、下テンションロッド4の許容下限張力、点線の(チ)は、下テンションロッド4の許容上限張力である。
下テンションロッド4でも、張力を増減すると、グラフ上、屋根梁材1の先端1bがとり得る下降変位が左下方から右上方へ動く。
屋根梁材1の目標高さを含む許容高さ範囲について、屋根梁材1に作用する上向き荷重及び下向き荷重に対して張力が維持される、目標張力を含む上下一対のテンションロッド3,4の許容上下限張力範囲を規定した許容管理範囲が設定され、当該許容管理範囲に基づいて張力が調整される。この許容管理範囲は、屋根梁材1とテンションロッド3,4に対して実施される数値シミュレーションによる構造解析で取得される。
図8に示した例では、横軸及び縦軸それぞれに、屋根梁材1の先端1b高さの位置変位(Xmm[上向き]、Ymm[下向き])が目盛られていて、原点では、屋根梁材1の先端1b高さの増減が「0」、すなわち屋根梁材1の先端1bが目標高さに一致していることが示されている。
この原点から、右上に向かう-×-のライン上は、例えば上向きXmm=10かつ下向きYmm=10で、どこでも、屋根梁材1の先端1b高さが目標高さ位置にあることを示している。
この-×-ラインと平行な2本の二点鎖線(後述する二点鎖線の(イ)及び(ロ)参照)は、屋根梁材1の先端1b高さの許容高さ範囲を示すもので、本実施形態では、目標高さから±44mmが許容高さ範囲とされ、これがグラフ上に示されている。
すなわち、-44mmは例えば、Xmm=0かつYmm=44,Xmm=20かつYmm=64など一方の二点鎖線(イ)で規定され、プラス44mmは例えば、Xmm=44かつYmm=0,Xmm=70かつYmm=26など他方の二点鎖線(ロ)で規定され、これら2本の二点鎖線(イ)、(ロ)で挟まれた領域が許容高さ範囲を規定している。
本実施形態では、屋根梁材1の先端1b高さは、テンションロッド3,4の経時変化等に対するゆとりを見込んで、目標高さではなく、目標高さよりも+10mm高くなる(-○-ライン)ように施工する場合が示されている。
また、上述したように、-×-は、屋根梁材1の先端1bの高さが目標高さとなる場合、-○-は、目標高さよりも+10mmの場合であり、二点鎖線(イ)は屋根梁材1の許容上限高さ、二点鎖線(ロ)は、許容下限高さであり、これら二点鎖線(イ)、(ロ)で挟まれた範囲が、許容高さ範囲である。
図8の表示値に従えば、屋根梁材1の先端1bの許容高さ範囲は、縦軸Y=0mmかつ横軸X=44mmの上限許容高さ+44mmから縦軸Y=44mmかつ横軸X=0の下限許容高さ-44mmまでとなっている。
上テンションロッド3の目標張力は、740~890kNであるのに対し、許容上限張力(一点鎖線(ホ))は、+80kNとし、許容下限張力(一点鎖線(ニ))は、-50kNとしている。
さらに、下テンションロッド4の目標張力は、880~1,030kNであるのに対し、許容上限張力(点線(チ))は、+80kNとし、許容下限張力(点線(ト))は、-100kNとしている。
これにより、図8中、屋根梁材1の目標高さを含む許容高さ範囲について、屋根梁材1に作用する上向き荷重及び下向き荷重に対して張力が維持される目標張力を含む、上下一対のテンションロッド3,4の許容上下限張力範囲を規定した許容管理範囲Zが、梨地で表示した領域として設定される。
すなわち、第6工程で実施される張力調整は、当該許容管理範囲Zを逸脱しないように上下一対のテンションロッド3,4に対する張力導入操作が施工管理される。
実際には、上テンションロッド3もしくは下テンションロッド4のいずれか一方に導入する張力を主として張力調整が行われる。図8の例では、点線(へ)で示される下テンションロッド4への導入張力を優先して、上テンションロッド3への導入張力を加減していて、点線(へ)と-○-との交点が、許容管理範囲Z内に収まる施工完了値となっている。
図9には、上下一対のテンションロッド3,4それぞれに取り付けられてこれらに張力を導入したジャッキ8,9をそれぞれカプラ10に盛り替えて、それらジャッキ8,9を撤去する第7工程が、ステップ7として示されている。
カプラ10への盛り替えで張力損失が見込まれる場合には、上下一対のテンションロッド3,4には、その分を割り増しした張力を導入しておけばよい。
ジャッキ8,9をカプラ10に交換することで、図10にステップ8として示すように、屋根梁材1の設置施工が完了する。各屋根梁材1の設置が完了した後、これら屋根梁材1に対して屋根材が取り付けられる。
以上説明した本実施形態にかかる屋根の施工方法では、上下一対のテンションロッド3,4で屋根梁材1、そしてまた屋根を吊り形式で支持する際に、支持構造体5と仮設体6との間に屋根梁材1を吊り込んで仮設置し、次いで、下テンションロッド4に張力を生じさせることなく、専ら上テンションロッド3で屋根梁材1を支持させ、次いで、下テンションロッド4に対し、屋根梁材1の自重Lや風の吹き下ろしWDや屋根材などによって生じる下向き荷重に対して張力が維持される目標張力に達するまで張力を導入すると共に、この下テンションロッド4への導入張力により、上テンションロッド3に、風の吹き上げWUなどによって生じる上向き荷重に対して張力が維持される目標張力に向けて張力を導入し、その後さらに、上下一対のテンションロッド3,4の張力を、各ジャッキ8,9によって、屋根梁材1の先端1bの高さが許容高さ範囲に収まるように調整するようにしたので、上下一対のテンションロッド3,4に張力を導入することで屋根梁材1の先端1bの高さを設定するときに、高さを満足しても、各テンションロッド3,4における張力のバランスが悪くなってしまう事態、例えば、いずれかのテンションロッド3,4の導入張力が消失してほぼ「0」になってしまうなどの事態が生じることを防止して、屋根を安全に吊り支持することができる。
これにより、風の吹き上げWUや吹き降ろしWDを考慮して、屋根(屋根梁材1)を吊り下げ支持するテンションロッド3,4に常時張力が発生しているようにすることができると共に、そのような張力の作用の下で、所定の高さ位置に屋根を設置・保持することができる。
スタジアム2は、図1の奥行き方向に連続して配置されるので、上記施工方法は、奥行き方向に連続した複数個を1ユニットとして実施される。1ユニットは、スタジアム2の形状や施工範囲にもよるが、施工性や建方精度を考慮して、3スパン程度とすることが望ましい。
事前に構造解析を実行して取得した結果により、屋根梁材1の目標高さを含む許容高さ範囲について、屋根梁材1に作用する上向き荷重及び下向き荷重に対して張力が維持される目標張力を含む、上下一対のテンションロッド3,4の許容上下限張力範囲を規定した許容管理範囲Zを設定することにより、張力導入の作業プロセス中、上下一対のテンションロッド3,4それぞれに順次、適切に張力を導入していくことができ、屋根梁材1の先端1bの高さ位置や導入張力の過度の逸脱を防いで、安全かつ効率よく屋根を施工することができる。
また、事前に上下一対のテンションロッド3,4の張力と屋根梁材1の高さについて、目標値と許容値を設定し、テンションロッド3,4の張力を、所定の範囲内に維持させた場合の屋根梁材1の上下方向の移動範囲を解析によって算定しておくようにしていて、通常一般の、上下一対のテンションロッドに交互に張力を加えながら、屋根梁材の変位を許容値に納めるように調整するといった手間を不要とすることができる。
1 屋根梁材
1a 屋根梁材の基端
1b 屋根梁材の先端
3 上テンションロッド
4 下テンションロッド
5 支持構造体
6 仮設体
8,9 ジャッキ
10 カプラ
Z 許容管理範囲

Claims (3)

  1. 屋根材が取り付けられる屋根梁材は、俯仰可能に支持構造へ基端側が設置されると共に、該支持構造から先端側へ向けて当該屋根梁材の上側及び下側に配設される上下一対のテンションロッドにより吊り形式で支持され、該屋根梁材の自重、該屋根梁材に作用する下向き荷重及び上向き荷重が、これらテンションロッドを介して、該支持構造へ伝達されるようにした屋根の施工方法であって、
    上記屋根梁材の上記先端を目標高さよりも高い位置に支持する高さ調節可能な仮設体を、該屋根梁材の該先端側に設置し、該仮設体と上記支持構造との間に該屋根梁材を吊り込み、該屋根梁材の上記基端側を該支持構造に設置し、該屋根梁材の該先端を該仮設体に支持させることにより、該屋根梁材を仮設置する第1工程と、
    上記屋根梁材の上側及び下側に、上記上テンションロッド及び上記下テンションロッドを吊り込み、これらテンションロッドそれぞれを、弛ませた状態で該屋根梁材に取り付け、該上テンションロッドに取り付けたジャッキで、当該上テンションロッドに、自重による弛みをなくすための取付時張力を導入する第2工程と、
    上記上テンションロッドに上記ジャッキでさらに、上記屋根梁材の吊り下げ支持が可能な初期張力を導入する第3工程と、
    上記仮設体の高さ位置を下げ、上記上テンションロッドに、上記屋根梁材の自重を負荷して該屋根梁材を支持させる支持張力を導入する第4工程と、
    上記下テンションロッドに取り付けたジャッキで、該下テンションロッドに対し、下向き荷重に対して張力が維持される目標張力に達するまで張力を導入し、該下テンションロッドに導入した張力で上記上テンションロッドに対し、上向き荷重に対して張力が維持される目標張力に向けて張力を導入する第5工程と、
    上記屋根梁材の上記先端の高さが上記目標高さを含む許容高さ範囲に収まるように、上記各ジャッキにより、上記上下一対のテンションロッドの張力を調整する第6工程と、
    上記ジャッキをそれぞれカプラに盛り替えて、それらジャッキを撤去する第7工程とを含むことを特徴とする屋根の施工方法。
  2. 前記屋根梁材の前記目標高さを含む前記許容高さ範囲について、該屋根梁材に作用する上向き荷重及び下向き荷重に対して張力が維持される前記目標張力を含む、前記上下一対のテンションロッドの許容上下限張力範囲を規定した許容管理範囲が設定されることを特徴とする請求項1に記載の屋根の施工方法。
  3. 前記上テンションロッドの前記目標張力は、予測される外力によって該上テンションロッドに生じる圧縮側の応力の最大値以上であり、前記下テンションロッドの前記目標張力は、予測される外力によって該下テンションロッドに生じる圧縮側の応力の最大値以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の屋根の施工方法。
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