JP7284029B2 - 金属製キャップ - Google Patents
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Description
ライナーが非接着状態にある金属製キャップにおいては、ライナー材をキャップシェル頂板部内面に供給した後、型押しすることによりライナーの成形とキャップシェル内へのライナーの装着を同時に行う。この際、キャップシェル頂板部内面に形成されている内面塗膜は、ライナー材と非接着としていることから、キャップシェル頂板部内面中央に供給された溶融状態にあるライナー材が型押しする前に転がってしまうおそれがある。ライナー材が動き、キャップシェル頂板部内の偏った位置で成形されてしまうと、均一なライナーを成形することができず、ライナーによるキャップの密封性能が確保されないおそれがある。このような問題を解決するために、ライナー成形時のライナー材の転がりを防止するために、内面塗膜にライナー材に対して剥離可能な弱接着剤を設けた金属製キャップが提案されている(特許文献1)。
金属製キャップにおける開封性は、金属製キャップを開栓し始めるファースト(1st)トルクと、金属製キャップ本体の下方に形成されたタンパーエビデントバンド(TEバンド)を分離するためにブリッジを破断するセカンド(2nd)トルクによって決まり、ポリプロピレン(PP)製内面材が金属製キャップ本体と非接着の状態にある金属製キャップにおいては、PP製内面材は金属製キャップ本体の回動に同期せず、金属製キャップシェルだけが容器に対し旋回することから、1stトルクが低減されている。従って、開封性を更に向上させるためには、2ndトルクを低減する必要がある。
金属製キャップ本体の頂板部に形成される内面塗膜は、金属製キャップ本体のスカート部においてもその内面側に形成されており、かかる内面塗膜と容器口部の螺子部が形成された外側面との間の摩擦が大きいことが2ndトルク上昇の原因であることが分かった。
従って本発明の目的は、キャップシェルと非接着のライナーを有する金属製キャップにおいて、レトルト殺菌にも対応可能であり、容器口部の材質や形状等にかかわらず、優れた開栓性と密封性を兼ね備えた金属製キャップを提供することである。
1.前記低融点ワックスがパーム油であること、
2.70~100℃の融点を有する中融点ワックスを、塗料樹脂成分100重量部に対して1.5~3重量部の量で更に含有すること、
4.前記中融点ワックスがカルナバワックスであること、
5.融点が300℃以上の高融点ワックスを、塗料樹脂成分100重量部に対して1~6重量部の量で更に含有すること、
6.前記高融点ワックスが、ポリテトラフルオロエチレンであること、
7.前記頂板部の内面塗膜上に、前記内面材と弱接着性を有する弱接着層を有すること、
8.前記弱接着層が、変性ポリプロピレン含有油変性アルキド樹脂から成ること、
9.前記塗料組成物が、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂をベース樹脂とし、フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂を硬化剤とする塗料組成物であること、
が好適である。
このことは後述する実施例の結果からも明らかである。すなわち、酸化ポリエチレンの代わりに変性ポリエチレンを使用した場合には、低融点ワックスが塗膜表面に滲出せず、摩擦係数を低減できない(比較例4)。また酸化ポリエチレンを使用した場合でも、低融点ワックスの量が上記範囲よりも少ない場合には、低融点ワックスの表面への滲出量が充分でなく、上記範囲にある場合に比して十分に摩擦係数を低減できず(比較例2)、一方低融点ワックスの量が上記範囲よりも多い場合には、弱接着層を形成するために塗布された弱接着剤に密着性阻害が生じる(比較例1)。
これに対して、本発明で用いる塗料組成物から成る内面塗膜においては、レトルト殺菌の前後において摩擦係数が低減されていると共に、弱接着剤の密着性阻害の発生も有効に防止されている(実施例1~11)。
図1に示すように、本発明の金属製キャップ1は、金属製キャップ本体2と、ポリプロピレン(以下、「PP」ということがある)製内面材として、溶融状態にあるポリプロピレンを金属製キャップ本体内で型押しして成形されたPPライナー20とから成っている。金属製キャップ本体2は、頂板部3及び該頂板部3の周縁から垂下するスカート部4を有し、該スカート部4の下方には、破断可能な弱化部5を介してTEバンド6が形成されている。また図に示す具体例では、スカート部4の上端部にはライナーを保持するためのライナー保持部7が形成されている。ライナー保持部7の下部には、周方向に刻設した切断線8の下方側の領域を半径方向内側に突出させることによって内方突出部9が形成されており、その上端部の切断線8が実質上水平に延びる開口10となる。また内方突出部9よりも下方のスカート部は螺子形成領域11となる。
またPPライナー20は、容器口部に適用されたときに容器口部外面と密着するアウターリング21及び容器口部内面と密着するインナーリング22が形成されている。
尚、図1には明示されていないが、金属製キャップ本体2の内表面には、内面塗膜が形成され、頂板部中央には弱接着層が形成されている(図3参照)。
弱接着層43は、金属製キャップ本体内でのPPライナー20の成形に際して、金属製キャップ本体の頂板部内面に供給されたライナー材の転がりを防止するために形成されたものであることから、頂板部の中央部分にのみ形成されていればよく、図示していないが、頂板部の外周部分においてはPPライナー20は内面塗膜42に隣接している。
本発明の金属製キャップにおいては、上記内面塗膜が、塗料樹脂成分100重量部に対して、酸化ポリエチレンを4~10重量部、及び20~50℃の融点を有する低融点ワックスを0.5~1.5重量部の量で含有する塗料組成物から成ることが重要な特徴である。
本発明の金属製キャップにおいて、内面塗膜中に容器口部との摩擦力を低減させるための低融点ワックスと共に含有させる酸化ポリエチレンは、ポリプロピレン製内面材(ライナー)との非接着状態を確保するために必須の成分であると共に、前述したとおり、低融点ワックスの塗膜表面への滲出量を制御する作用を有している。すなわち、酸化ポリエチレン及び低融点ワックスが上記範囲内にあることにより、酸化ポリエチレンが適度に塗膜表面側に浮上することにより、酸化ポリエチレンの塗膜表面側に存在する低融点ワックスのみが塗膜表面に浮上し、容器口部との摩擦低減に必要十分な量の低融点ワックスを塗膜表面に存在させることが可能になる。その結果、弱接着層を形成するための弱接着剤を塗布した場合に密着性阻害を生じることや、金属製キャップ本体を成形する前の塗装金属板の状態で積み重ねられた際に低融点ワックスが塗装金属板の外面に付着して印刷適性を阻害するおそれもない。
また、酸化ポリエチレンを10重量部よりも多く添加すると、塗料の粘度が低下し塗装適性が得られず塗装時に不具合が生じてしまう。
内面塗膜を形成する塗料組成物に含有させる20~50℃の融点を有する低融点ワックスとしては、ワセリン、流動パラフィン、スクワラン、ラノリン、ホホバ油、ひまし油、パーム油、やし油、綿実油、木ろう、融点50℃以下のパラフィンワックス等を例示できるが、特にパーム油を好適に使用できる。
中融点ワックスとしては、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、融点70℃以上のパラフィンワックス、キャンデリラワックス、ロジン、ひまし硬化油等を例示できるが、特にカルナバワックスを好適に使用できる。
高沸点ワックスとしては、フッ素樹脂系ワックス、特に平均粒径が1~10μmの範囲にあるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を好適に使用できる。PTFEの微粒子を用いることにより内面塗膜表面に微小凹凸が形成されて、内面塗膜及び容器口部の接触面積を低減できるため、2ndトルクを低減することができる。また前述したとおり、塗膜表面に浮上して存在する酸化ポリエチレン及び酸化ポリエチレンの塗膜表面側に位置する低融点ワックスが、PTFEの微粒子により塗膜表面から突出した状態で存在することにより、PTFE微粒子による接触面積の低減効果と共に、酸化ポリエチレンと低融点ワックスによる摩擦低減が効率よく発現される。
これらのワックスは、塗料樹脂成分100重量部に対して、中融点ワックスが1.5~6重量部、特に3~6重量部の量、高融点ワックスが1~6重量部の量、で含有されていることが好適である。これにより、レトルト殺菌に付された場合でも摩擦力の変化を生じることがなく、レトルト殺菌の有無にかかわらず、安定して開栓トルクを低減することが可能になる。
特に高融点ワックスは、レトルト殺菌を施しても溶融することなく、内面塗膜に微小凹凸を形成したままであるため、レトルト殺菌後でも接触面積の低減効果は保持したままとなる。
本発明の金属製キャップにおいて、PP製内面材は、前述したように、ポリプロピレンの溶融樹脂を金属製キャップ本体の頂板部内面に供給し、これを型押することにより、ライナーの成形と金属製キャップ本体内へのライナーの設置を同時に行う態様であってもよいし、別途成形されたライナーを金属製キャップ本体内に設置する態様であってもよい。
PP製内面材の形状は、図1に示した具体例のように、金属製キャップ本体の頂板部内面の全面を覆うような内面材であってもよいし、容器口部先端が当接する箇所にのみ設ける環状の内面材であってもよい。また内面材は、レトルト殺菌を前提とする場合には、図に示したようにアウターリング及びインナーリングを有する密封性を高めた形状であることが望ましいが、レトルト殺菌を行わない場合には、内面材は平面状であってもよい。
また内面材は、ポリプロピレンを主成分(50重量%以上で含有)として形成される単層の内面材であってもよいが、金属製キャップ本体側に位置するポリプロピレンを主成分とするバリア層と、容器口部側に位置するポリプロピレン系エラストマーを主成分とする密封層とから成る二層構造の内面材であることが特に好ましい。
尚、ポリプロピレンは、内面材の形状や層構成、或いは内面材に含有させる他の成分(例えば発泡剤や熱膨張性粒子等)に応じて、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、或いはポリプロピレン(PP)/エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のポリプロピレン系エラストマー等の中から適宜選択することができる。内面材としての密封性能の観点からは、ランダムコポリマー、ポリプロピレン系エラストマーを使用することが好ましい。
本発明の金属製キャップにおいて、PP製内面材を、前述したように、ポリプロピレンの溶融樹脂を金属製キャップ本体の頂板部内面に供給して、これを型押しして成形する場合には、溶融樹脂の転がりを防止するために、内面塗膜のポリプロピレンを供給する箇所、具体的には、頂板部中央部分にポリプロピレンに対して弱接着性を有する弱接着層を形成することが望ましい。尚、本発明において、PP製内面材は、開栓トルク、特に1stトルク低減のために金属製キャップ本体から分離し得ることが必要であることから、弱接着層はPP製内面材を一時的に接着し、剥離可能であることが望ましく、そのため、頂板部内面の中央から頂板部の半径方向に半径の50~100%領域に形成されることが好適である。
このようなポリプロピレンに対して弱接着性を有する層は、アルキド系樹脂、石油系炭化水素、アルキルベンゼンなどの溶媒を用い、この溶媒にポリプロピレンに対して接着性を有する成分を1~18重量%となるように配合した弱接着剤を使用することが好適である。ポリプロピレンに対して接着性を有する成分としては、ポリプロピレンワックス、変性ポリプロピレン、エチレン-プロピレンエラストマー、SIS、SBS等のスチレン系ブロックポリマー等を挙げることができる。
本発明においては、油変性アルキド樹脂に変性ポリプロピレンを配合して成る接着剤を好適に使用することができる。
また弱接着層の形成に変えて、内面塗膜に微小突起を形成する等の手段によっても溶融樹脂塊の移動を防止してもよい。
本発明の金属製キャップにおいては、金属製キャップ本体は、アルミニウム板等の金属板のキャップの外面となる側に外面塗膜、印刷層及びトップコート層が形成され、キャップの内面となる側に内面塗膜が形成された塗装金属板、或いはPP製内面材をインシェルモールドで成形する場合には、内面塗膜の上に更に弱接着層が形成された塗装金属板を用い、これを打ち抜き、絞り成形することによって成形することもできるし、或いは予め成形された金属製キャップシェル内面に内面塗膜及び弱接着層を順次形成して成形することもできる。
尚、内面塗膜の膜厚は特に限定されないが、10~60g/dm2の範囲で塗料組成物が塗布されていることが好適である。また、塗料組成物の加熱条件は使用するベース塗料に応じて公知の条件を採用することができる。
本発明の金属製キャップは、別途成形されたPP製内面材を上記金属製キャップ本体内に挿入することにより製造することも可能であるが、金属製キャップ本体内でインシェルモールドにより成形することにより、PP製内面材の成形と設置を同時に行うことが好適である。すなわち、金属製キャップ本体の頂板部内面の弱接着層上にポリプロピレンの溶融樹脂塊を供給し、これを圧縮成形することによって所望形状のPP製内面材が成形されると共に、金属製キャップ本体頂板部に設置される。
尚、図1に示す具体例では、PP製内面材を保持するための保持部が予め成形されているが、金属製キャップを加締める際に形成されてもよい。
1.動摩擦係数測定
(1)サンプルの作成
厚み0.25mmのアルミ板に表1に示す組成の内面塗料組成物を45mg/dm2を塗布した後、190℃で10分の焼き付け処理を施し、その後外面への印刷工程などを想定して150℃10分と180℃10分の熱処理を施した。その後、125℃30分の熱処理を施す。
尚、表1中、ベース塗料として、ポリエステル/フェノール/アミノ系塗料(トーヨーケム社製)を用い、変性ポリエチレン(表中には変性PEと表記)、酸化ポリエチレン(表中には酸化PEと表記)、低融点ワックスとしてパーム油(融点:30℃)、中融点ワックスとしてカルナバワックス(融点:83℃)、高融点ワックスとしてPTFE(融点:327℃)を用いた。
(2)測定
測定機にはHEIDON―14型表面性測定機を使用した。
アルミ板の内面塗料塗装面へガラス棒を200gの荷重をかけた状態で塗装板を100mm/min一定の速度で動かし、動摩擦係数を測定する。結果を表1に示す。
厚み0.25mmのアルミ板に表1に示す組成の内面塗料組成物を45mg/dm2を塗布し、190℃で10分の焼き付け処理を施し、させ、その後内面塗膜上に弱接着層(弱接着剤の組成:アルキド系樹脂)を形成した後150℃10分にて焼き付けを施した。
上記弱接着層の塗膜密着試験を行うべく、JIS K 5600 5-4 引っかき硬度(鉛筆法)に準じて実施した。
鉛筆硬度評価で3B以上であれば問題なし、4B以下は密着能力に劣るとした。
弱接着層密着試験結果を表1に示す。
表1で示す実施例1、実施例4及び実施例7について、上記2の弱密着層を形成した後、ポリポロピレン系ライナーを形成し、図1の形態の金属キャップを作成した。呼び径38mm口径の螺子付金属容器内に内容液を充填した後、得られた金属キャップを被冠させ、図2の形態に巻き締めし、125℃30分のレトルト処理を施した後に冷却したサンプルを作成した。
サンプルは5℃保管区に1週間保管した後、開栓トルクを測定した。
開栓トルクは160N・cm以下であれば問題なしとする。
開栓トルクを測定した結果を表2に示す。
Claims (9)
- 頂板部及び該頂板部の周縁から垂下するスカート部を有する金属製キャップ本体と、前記頂板部内面に配設されるポリプロピレン製内面材とを具備する金属製キャップにおいて、
前記金属製キャップ本体の内面には、塗料樹脂成分100重量部に対して、酸化ポリエチレンを4~10重量部、及び20~50℃の融点を有する低融点ワックスを0.5~1.5重量部含有する塗料組成物から成る前記ポリプロピレン製内面材と非接着の内面塗膜が形成されていることを特徴とする金属製キャップ。 - 前記低融点ワックスがパーム油である請求項1記載の金属製キャップ。
- 70~100℃の融点を有する中融点ワックスを、塗料樹脂成分100重量部に対して1.5~6重量部の量で更に含有する請求項1又は2記載の金属製キャップ。
- 前記中融点ワックスがカルナバワックスである請求項3記載の金属製キャップ。
- 融点が300℃以上の高融点ワックスを、塗料樹脂成分100重量部に対して1~6重量部の量で更に含有する請求項1~4の何れかに記載の金属製キャップ。
- 前記高融点ワックスが、ポリテトラフルオロエチレンである請求項5記載の金属製キャップ。
- 前記頂板部の内面塗膜上に、前記内面材と弱接着性を有する弱接着層を有する請求項1~6の何れかに記載の金属製キャップ。
- 前記弱接着層が、変性ポリプロピレン含有油変性アルキド樹脂から成る請求項7記載の金属製キャップ。
- 前記塗料組成物が、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂をベース樹脂とし、フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂を硬化剤とする塗料組成物である請求項1~8の何れかに記載の金属製キャップ。
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