以下に、本開示の実施の形態に係る送信装置、受信装置、無線通信システム、制御回路、記憶媒体、送信方法および受信方法を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る複局同時送信システム1の構成例を示す図である。複局同時送信システム1は、基地局101-1~101-6と、無線端末111と、を備える。複局同時送信システム1は、複数の基地局101-1~101-6が同一の周波数で同一の情報を無線端末111に送信する複局同時送信を採用する無線通信システムである。
複局同時送信システム1は、複数の基地局101-1~101-6を束ねて1つの通信エリア120を形成している。すなわち、基地局101-1~101-6が同一の周波数で同一の情報を乗せた信号を送信し、無線端末111は、通信エリア120において基地局101-1~101-6から送信された信号を受信して通信を行う。本実施の形態において、同じ通信エリア120を形成する基地局101-1~101-6は、異なる識別信号が挿入された送信信号を送信する。通信エリア120に収容可能な基地局数および無線端末数はそれぞれ少なくとも1つ以上とし、基地局数および無線端末数が限定されることはない。また、複局同時送信システム1において、全ての基地局101-1~101-6は時刻同期が取れていることを前提とし、全ての基地局101-1~101-6が同一のタイミングで無線フレームを送信する。基地局101-1~101-6の時刻同期はどのような方法で実現してもよい。複局同時送信システム1において、基地局101-1~101-6は、例えば、GPS(Global Positioning System)を利用して時刻同期を実現する。
複局同時送信を行う基地局101-1~101-6は、それぞれ、送信装置および受信装置を備える。また、無線端末111も、送信装置および受信装置を備える。本実施の形態では、複局同時送信に関連する送信装置および受信装置、具体的には、基地局101-1~101-6が備える送信装置、および無線端末111が備える受信装置について説明する。以降の説明において、基地局101-1~101-6を区別しない場合は基地局101と称することがある。
まず、基地局101が備える送信装置の構成および動作について説明する。図2は、実施の形態1に係る基地局101が備える送信装置200の構成例を示すブロック図である。送信装置200は、変調部201と、送信識別信号生成部202と、識別信号挿入部203と、送信フィルタ部204と、デジタルアナログ変換部205と、送信高周波部206と、送信アンテナ207と、を備える。送信装置200は、図2の例では、識別信号挿入部203、送信フィルタ部204、デジタルアナログ変換部205、送信高周波部206、および送信アンテナ207の組み合わせを複数組備えているが、1組だけ備える構成としても構わない。図3は、実施の形態1に係る基地局101が備える送信装置200の動作を示すフローチャートである。
変調部201は、ビット系列であるデータ信号211に対して一次変調を行い、データシンボル系列に変換、すなわちデータシンボル系列を生成する(ステップS201)。一次変調における変調方式は、例えば、PSK(Phase Shift Keying)、FSK(Frequency Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などが挙げられる。なお、変調部201で適用される変調方式はこれらに限定されない。変調部201は、変換後のデータ信号であるデータシンボル系列を各識別信号挿入部203に出力する。
送信識別信号生成部202は、図示しない上位装置から送信装置200への制御パラメータとして入力される識別信号設定指示信号212に基づいて、シンボル系列であって、指示された基地局101毎に固有の識別信号を生成する(ステップS202)。送信識別信号生成部202の詳細な動作については後述する。送信識別信号生成部202は、生成した識別信号を各識別信号挿入部203に出力する。
識別信号挿入部203は、送信識別信号生成部202で生成された識別信号と、変調部201で生成されたデータ信号とに基づいて、送信信号を生成する(ステップS203)。具体的には、識別信号挿入部203は、送信識別信号生成部202から取得した識別信号であるシンボル系列と、変調部201から取得したデータ信号であるデータシンボル系列とを時間多重して、すなわち識別信号をデータシンボル系列に挿入して送信信号を生成する。識別信号挿入部203は、生成した送信信号を送信フィルタ部204に出力する。
送信フィルタ部204は、識別信号挿入部203で識別信号挿入後のデータシンボル系列をアップサンプリングするとともに、データシンボル系列に帯域制限を行い、ベースバンド信号、またはIF(Intermediate Frequency)信号である送信デジタル信号を生成する(ステップS204)。送信フィルタ部204がデータシンボル系列に帯域制限を行うときに使用される帯域制限フィルタの種類については特に限定されないが、一般的にはナイキストフィルタが使用される。送信フィルタ部204は、生成した送信デジタル信号をデジタルアナログ変換部205に出力する。
デジタルアナログ変換部205は、送信フィルタ部204から取得した送信デジタル信号を送信アナログ信号に変換する(ステップS205)。デジタルアナログ変換部205は、変換後の送信アナログ信号を送信高周波部206に出力する。
送信高周波部206は、デジタルアナログ変換部205から取得した送信アナログ信号に対して周波数変換を行い、無線周波数帯の送信信号である無線周波数信号を生成する(ステップS206)。送信高周波部206は、生成した無線周波数信号を送信アンテナ207に出力する。
送信アンテナ207は、送信高周波部206から取得した無線周波数信号を電波として放射、すなわち送信する(ステップS207)。
送信装置200は、各送信アンテナ207から送信する無線周波数信号に含まれる識別信号について、識別信号設定指示信号212に従って、同一の識別信号だけでなく、異なる識別信号にすることもできる構成とする。また、送信装置200の変形例として、送信フィルタ部204の後段に識別信号挿入部203が接続され、送信フィルタ部204で帯域制限を行った後の送信デジタル信号に対して識別信号挿入部203が同期信号を付加する構成でもよい。この場合、送信識別信号生成部202は、送信フィルタ部204から出力される送信デジタル信号と同じサンプルレートのシンボル系列を生成する。
図4は、実施の形態1に係る基地局101が備える送信装置200から送信される送信信号の構成例を示す図である。識別信号221は送信識別信号生成部202で生成され、データ信号222は変調部201で生成されたものである。基地局101の送信装置200が送信する送信信号は、識別信号挿入部203によって、データ信号222の間に識別信号221が周期的に挿入された構成である。データ信号222の間に識別信号221が挿入される周期を、識別信号送信周期223とする。識別信号221は、無線端末111が備える後述する受信装置において、複局同時送信を行う基地局101-1~101-6毎の受信電界強度、伝送路応答などの測定の際に利用される。
図5は、実施の形態1に係る基地局101が備える送信装置200の送信識別信号生成部202が識別信号を生成する手順を示す図である。送信識別信号生成部202は、まず、図5(#1)に示すように、識別信号の基となるランダムシンボル系列231を生成する。ランダムシンボル系列231は、受信側の無線端末111で既知のシンボル系列であり、規定された振幅および位相を有する複素ベクトルで表現される。図5(#1)に示す例では、A0~A3の4シンボルでランダムシンボル系列231を形成している。ランダムシンボル系列231のシンボルパターンに制約はないが、本実施の形態では、自己相関性、相互相関性などが良く、振幅が一定のCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列を適用する場合について説明する。
送信識別信号生成部202は、つぎに、ランダムシンボル系列231に位相回転系列232を乗算する。これにより、送信識別信号生成部202は、図5(#2)に示すように、位相回転後系列233を得られる。図5(#2)に示す例では、B0~B3の4シンボルで位相回転後系列233を形成している。ランダムシンボル系列231をAkとし、位相回転後系列233をBkとしたとき、Bkは式(1)によって算出することができる。
式(1)において、Nは位相回転系列232の系列長を表し、kは位相回転系列232のインデックス番号(0≦k<Nの整数)を表し、mは位相回転系列232の位相回転オフセット量を決定するパラメータ(0≦m<Nの整数)であり、識別信号の種別番号を表している。これにより、生成された位相回転後系列233は、周波数で直交化されたN個の直交系列となる。ここで、直交系列とは、各々の系列間の相互相関値が0となる関係の系列の組み合わせを指す。
送信識別信号生成部202は、つぎに、N個の直交系列である位相回転後系列233に対して、それぞれの系列毎に順序入れ替え処理を施し、図5(#3)に示す識別信号234を生成する。送信識別信号生成部202は、順序入れ替えパターン数をUとすると、N個の直交系列にU種類の順序入れ替え処理を適用し、N×U種類の系列群である識別信号234を生成することができる。図5は、ランダムシンボル系列231を4シンボルとし、位相回転系列長Nが4の場合の例を示している。
図6は、実施の形態1に係る基地局101が備える送信装置200の送信識別信号生成部202で生成される識別信号234の補足説明を示す図である。送信識別信号生成部202は、Nシンボル長のN個の系列群である位相回転後系列233に対して、U種類の異なる順序入れ替えパターンである第1の順序入れ替えパターン240-1から第Uの順序入れ替えパターン240-Uを適用することで、N個の系列群×U種類の系列群である識別信号234を生成することができる。図6に示すように、識別信号234は、第1の識別信号群250-1から第Uの識別信号群250-Uによって構成される。ここで、第1の識別信号群250-1から第Uの識別信号群250-Uは、同一の識別信号群、例えば、第1の識別信号群250-1のN個の系列の識別信号間では直交の関係であるが、異なる識別信号群、例えば、第1の識別信号群250-1と第2の識別信号群250-2との間では識別信号間で直交の関係にはならない。しかしながら、異なる識別信号群の間でも相互相関値が低くなるような順序入れ替えパターンを適用することによって、送信識別信号生成部202は、完全な直交性を持たない多くの準直交な識別信号、すなわち系列間の相互相関値が0ではない識別信号を生成することが可能となる。
本実施の形態においては、複数の基地局101からの送信信号毎の受信電界強度、伝送路応答などを無線端末111で測定できることが目的である。そのため、本目的を実現するための識別信号があればよく、必ずしも全ての識別信号間が直交の関係にある必要はない。
このように、送信識別信号生成部202は、位相回転後系列233を第1のシンボル系列とすると、無線端末111で既知のシンボル系列に対して、無線端末111で既知の複数の位相回転系列232から選択した位相回転系列を乗算して第1のシンボル系列を生成する。送信識別信号生成部202は、第1のシンボル系列に対して、無線端末111で既知の複数の順序入れ替えパターンから選択した順序入れ替えパターンに基づいて第1のシンボル系列の順序入れ替え処理を行って識別信号を生成する。
なお、送信識別信号生成部202は、上記のような動作によって識別信号234を生成することができるが、識別信号234の生成方法はこれに限定されない。例えば、送信識別信号生成部202は、予め生成しておいた全ての識別信号234をメモリなどに記憶しておき、識別信号設定指示信号212によって指示された識別信号234をメモリから選択し、選択した識別信号234を出力する構成であってもよい。
複局同時送信システム1は、通信エリア120をカバーする全ての基地局101の送信装置200に対して、識別信号設定指示信号212によって、それぞれ異なる識別信号234を割り当てる。また、複局同時送信システム1は、基地局101の送信装置200が複数の送信アンテナ207を有する場合、送信アンテナ207毎に異なる識別信号234を割り当ててもよい。各基地局101への識別信号234の割り当て方法、または各基地局101の送信装置200が備える複数の送信アンテナ207への識別信号234の割り当て方法については、各基地局101の設置時に各基地局101に識別信号設定指示信号212を含む制御パラメータを与えて割り当ててもよいし、複局同時送信システム1を管理する図示しない管理装置が各基地局101に識別信号設定指示信号212を含む制御パラメータを与えて割り当ててもよい。
図7は、実施の形態1に係る複局同時送信システム1における各基地局101に対する識別信号の割り当ての例を示す第1の図である。複局同時送信システム1は、図7に示すように、同一の通信エリア120の基地局101の送信装置200に対して、隣接する基地局101間で同一の識別信号が割り当てられないようにする。具体的には、複局同時送信システム1は、通信エリア121に在圏する基地局101-1~101-4には第1の識別信号群250-1から識別信号を選択して割り当てる。複局同時送信システム1は、通信エリア121に隣接する通信エリア122に在圏する基地局101-5~101-8には第1の識別信号群250-1と異なる第2の識別信号群250-2から識別信号を選択して割り当てる。同様に、複局同時送信システム1は、通信エリア122に隣接する通信エリア123に在圏する基地局101-9~101-12には第2の識別信号群250-2と異なる第3の識別信号群250-3から識別信号を選択して割り当てる。
このように、複局同時送信システム1において同一の識別信号を割り当てた基地局101が隣接しないように異なる識別信号群の識別信号を活用することで、無線端末111は、基地局101毎の信号の分離を可能とし、通信エリア120内の複数の基地局101からの送信信号毎の受信電界強度、伝送路応答などを測定することができる。これにより、無線端末111は、在圏する基地局101を検出することができ、在圏する基地局101を無線端末111の位置情報としても活用できる。また、無線端末111は、より遠方から到来する基地局信号の判別も可能となるため、遠方基地局から到来するマルチパス遅延波干渉を検出することができる。
図7に示した識別信号の割り当てでは、同一識別信号群で形成される通信エリア121~123の中に位置する基地局101間は完全な直交性を有する識別信号が割り当てられるため、図示しない無線端末111による基地局信号の識別精度は高い。一方、同一識別信号群で形成される各々の通信エリア121~123の境界付近に位置する基地局101では準直交となる識別信号が到来するため、図示しない無線端末111による基地局信号の識別精度は低下する。したがって、無線端末111が各通信エリア121~123で在圏している位置によって、無線端末111による基地局信号の識別精度に差が生じてしまう。そのため、複局同時送信システム1は、図8に示すように、同一の通信エリア120の基地局101の送信装置200に対して、隣接する基地局101間で異なる識別信号群から選択された識別信号を割り当てて通信エリアを形成してもよい。
図8は、実施の形態1に係る複局同時送信システム1における各基地局101に対する識別信号の割り当ての例を示す第2の図である。図8は、各通信エリア124~126内の4つの基地局101に対して、第1の識別信号群250-1~第4の識別信号群250-4から選択された識別信号を割り当てる例を示している。具体的には、通信エリア124において、基地局101-1には第1の識別信号群250-1から選択された識別信号を割り当て、基地局101-2には第2の識別信号群250-2から選択された識別信号を割り当て、基地局101-3には第3の識別信号群250-3から選択された識別信号を割り当て、基地局101-4には第4の識別信号群250-4から選択された識別信号を割り当てる。このように、複局同時送信システム1において隣接する基地局101間で異なる識別信号群から選択された識別信号を割り当てることによって、無線端末111の在圏位置による基地局101毎の基地局信号の識別精度の差を無くし、無線端末111による基地局信号の識別精度を均一にすることができる。
図9は、実施の形態1に係る複局同時送信システム1における各基地局101に対する識別信号の割り当ての例を示す第3の図である。図9は、各通信エリア127,128の各基地局101の送信装置200に対して、異なる識別信号群の中から識別信号を選択して割り当てる例を示している。例えば、複局同時送信システム1は、通信エリア127の基地局101-1~101-5には第1の識別信号群250-1から第4の識別信号群250-4の中から識別信号を選択して割り当て、通信エリア128の基地局101-6~101-10には第5の識別信号群250-5から第8の識別信号群250-8の中から識別信号を選択して割り当てる。
このように、複局同時送信システム1において異なる通信エリア127,128の基地局101間で異なる識別信号群の識別信号を割り当てることで、図示しない無線端末111は、基地局信号の識別と同時に通信エリアの識別も可能となる。したがって、異なる通信エリアが存在した場合でも、無線端末111は、在圏基地局情報から無線端末111の位置情報を取得することができる。また、無線端末111は、異なる通信エリアから到来する基地局101の干渉信号を検出することができる。
複数の基地局101のうち基地局101同士の距離が閾値未満の基地局101は、識別信号のうち系列間の相互相関値が0となる直交する識別信号が挿入された送信信号を送信する。また、隣接する通信エリアの境界に位置する基地局101は、各々、無線端末111で既知の複数の順序入れ替えパターンから異なる順序入れ替えパターンを選択して生成された識別信号が挿入された送信信号を送信する。
つぎに、無線端末111が備える受信装置の構成および動作について説明する。図10は、実施の形態1に係る無線端末111が備える受信装置300の構成例を示すブロック図である。受信装置300は、受信アンテナ301と、受信高周波部302と、アナログデジタル変換部303と、受信フィルタ部304と、同期部305と、受信識別信号生成部306と、識別信号受信電界強度測定部307と、測定結果記憶部308と、復調部309と、検出部310と、を備える。受信装置300は、図10の例では、受信アンテナ301、受信高周波部302、アナログデジタル変換部303、および受信フィルタ部304の組み合わせを複数組備えているが、1組だけ備える構成としても構わない。図11は、実施の形態1に係る無線端末111が備える受信装置300の動作を示すフローチャートである。
受信アンテナ301は、無線周波数信号を受信する(ステップS301)。受信アンテナ301は、受信した無線周波数信号を受信高周波部302に出力する。
受信高周波部302は、受信アンテナ301から取得した無線周波数信号をダウンサンプリングし、ベースバンド信号またはIF信号である受信アナログ信号に変換する(ステップS302)。受信高周波部302は、変換後の受信アナログ信号をアナログデジタル変換部303に出力する。
アナログデジタル変換部303は、受信高周波部302から取得した受信アナログ信号を受信デジタル信号に変換する(ステップS303)。アナログデジタル変換部303は、変換後の受信デジタル信号を受信フィルタ部304に出力する。
受信フィルタ部304は、アナログデジタル変換部303から取得した受信デジタル信号に対して、所望信号の周波数帯域外の雑音を除去するため帯域制限を行う(ステップS304)。受信フィルタ部304は、帯域制限後の受信信号を同期部305に出力する。
同期部305は、各受信フィルタ部304から取得した受信信号から、無線フレームのタイミングを検出する(ステップS305)。無線フレームは、送信信号をある一定周期で分割し、信号フォーマットを定めたものであり、一般的には、無線フレーム周期で無線フレームのタイミングを検出するための同期信号が送信装置200で挿入され、送信装置200から送信される。同期信号は受信装置300で既知の信号であり、受信装置300は、受信信号に含まれる同期信号を検出することによって、無線フレームタイミングを検出することができる。同期部305で無線フレームタイミングを検出することによって、受信装置300は、受信信号に含まれる、送信装置200の識別信号挿入部203で挿入された識別信号の受信タイミングを知ることができる。
本実施の形態では、送信装置200が、無線フレーム周期でデータシンボル系列であるデータ信号の一部を同期信号として受信装置で既知となる信号を送信し、受信装置が、受信信号に含まれる同期信号を検出することによって、無線フレームタイミングを検出する場合を想定しているが、これに限定されない。例えば、送信装置200は、送信識別信号生成部202で生成され、識別信号挿入部203で挿入される識別信号に同期信号の役割を担わせてもよい。この場合、受信装置300は、受信信号に含まれる識別信号を検出することで、無線フレームタイミングを検出することができる。図12は、実施の形態1に係る無線端末111が備える受信装置300の変形例を示すブロック図である。図12の例では、受信装置300は、受信識別信号生成部306で生成された全ての種類の識別信号が、識別信号受信電界強度測定部307とともに同期部305にも出力される構成となる。
受信識別信号生成部306は、基地局101が備える送信装置200の送信識別信号生成部202で生成される識別信号と同様の識別信号を生成する(ステップS306)。ここで、受信識別信号生成部306は、送信装置200の送信識別信号生成部202が生成する可能性のある全ての種類の識別信号、すなわち生成可能な識別信号を生成する。例えば、送信識別信号生成部202が生成し得る識別信号が4種類の場合、受信識別信号生成部306は、4種類の識別信号を生成する。受信識別信号生成部306は、送信識別信号生成部202が生成する識別信号と同一の信号を生成する機能を有しているが、受信する可能性のある、すなわち送信識別信号生成部202で生成される可能性のある全ての種類の識別信号を生成する部分が異なる。受信識別信号生成部306は、送信識別信号生成部202が識別信号を生成する方法と同様の方法で、全ての種類の識別信号を生成する。受信識別信号生成部306は、予め生成しておいた全ての種類の識別信号をメモリなどに記憶しておき、メモリから読み出すことで識別信号を生成してもよい。
識別信号受信電界強度測定部307は、受信フィルタ部304から出力され、同期部305で検出された無線フレームタイミングに基づいて、受信信号に周期的に含まれる識別信号の受信タイミングを決定する。識別信号受信電界強度測定部307は、決定した識別信号の受信タイミングに基づいて、受信識別信号生成部306で生成された受信する可能性のある、すなわち送信識別信号生成部202で生成される可能性のある全ての種類の識別信号について、受信電界強度を個別に測定する測定部である(ステップS307)。
識別信号受信電界強度測定部307が識別信号の受信電界強度を測定する処理の詳細について説明する。ここで、受信信号をrl(t)、信号を受信する受信アンテナ301のアンテナ番号をl、シンボル周期をTs、識別信号を構成する各シンボル系列をPm,k、識別信号の種別番号をm、識別信号のシンボル系列長をN、識別信号を構成するシンボル系列のインデックス番号をk(0≦k<Nの整数)とする。識別信号受信電界強度測定部307は、アンテナ番号lの受信アンテナ301で受信され同期部305で検出された受信信号の無線フレームタイミングに基づいて、決定した識別信号の受信タイミングである受信サンプル時刻tにおける識別信号のシンボル系列Pm,kとの相関値CORRm,l(t)を式(2)のように計算する。識別信号受信電界強度測定部307は、相関値CORRm,l(t)の相関電力CPWm,l(t)を式(3)のように計算する。また、識別信号受信電界強度測定部307は、受信アンテナ301の総数をLとしたときの全ての受信アンテナ301の種別番号m毎の識別信号の相関電力の総和SUM_CPWm(t)を式(4)のように計算する。
式(2)で計算された結果は、種別番号m毎の識別信号の伝送路応答の測定値となる。式(3)で計算された結果は、種別番号m毎の識別信号の受信電界強度の測定値となる。ここで、基地局101の送信装置200が送信アンテナ207毎に異なる種別番号mの識別信号を割り当てていた場合、識別信号受信電界強度測定部307は、式(3)で計算された受信電界強度について、式(4)のように基地局101毎に総和をとることで、基地局101毎の識別信号の受信電界強度を計算することができる。このように、識別信号受信電界強度測定部307は、送信信号が受信装置300で受信された受信信号に含まれる識別信号と、受信識別信号生成部306で生成された全ての識別信号とを用いて、送信信号の送信元の送信装置200毎の伝送路応答および受信電界強度を測定する。識別信号受信電界強度測定部307は、計算によって求めた、種別番号m毎の識別信号の伝送路応答、種別番号m毎の識別信号の受信電界強度、および基地局101毎の識別信号の受信電界強度を測定結果記憶部308に出力する。
測定結果記憶部308は、識別信号受信電界強度測定部307から、識別信号受信電界強度測定部307で計算された種別番号m毎の識別信号の伝送路応答、受信電界強度、および基地局101毎の識別信号の受信電界強度を取得し、メモリなどの記憶媒体に記憶する(ステップS308)。
復調部309は、受信フィルタ部304から出力され、同期部305で検出された無線フレームタイミングに基づいて、受信信号に周期的に含まれるデータ信号の受信タイミングを決定する。復調部309は、決定したデータ信号の受信タイミングに基づいて、受信信号からデータ信号を抽出し、復調する(ステップS309)。復調部309は、復調データ信号311を出力する。
検出部310は、測定結果記憶部308に記憶されている種別番号m毎の識別信号の伝送路応答、受信電界強度、および基地局101毎の識別信号の受信電界強度などに基づいて各種の検出を行う(ステップS310)。例えば、検出部310は、受信電界強度に基づいて、受信装置300が在圏する送信装置200を特定する。また、検出部310は、受信電界強度に基づいて、受信装置300が位置する場所から離れた位置で同一の情報を伝送する通信エリア内の送信装置200を特定し、遅延波干渉として検出することができる。また、検出部310は、受信電界強度に基づいて、異なる情報を伝送する異なる通信エリア内の送信装置200を特定し、干渉信号として検出することができる。
図13は、実施の形態1に係る無線端末111が備える受信装置300の測定結果記憶部308が記憶する受信電界強度測定結果の一例を示す図である。図13に示すように、受信装置300では種別番号mの識別信号毎に受信電界強度の測定結果が得られ、これを測定結果記憶部308が記憶する。複局同時送信システム1の通信エリア120内の各基地局101の送信装置200に対して基地局101毎に異なる識別信号が割り当てられることによって、無線端末111の受信装置300は、各基地局101の送信装置200からの送信信号の伝送路応答、受信電界強度などを測定することができる。また、受信装置300は、測定した種別番号m毎の識別信号の受信電界強度の中で最大の識別信号を検出することで、無線端末111が在圏している基地局101の特定が可能となる。また、受信装置300は、測定した識別信号の受信電界強度の中で最大の識別信号を検出する場合、現在の在圏基地局の情報、および隣接する基地局の識別信号の割り当て情報を予め保持し、現在の在圏基地局の情報および隣接する基地局の識別信号の割り当て情報から、在圏基地局になる可能性がある基地局の識別信号を抽出し、抽出した識別信号の中で最大の受信電界強度を検出してもよい。これにより、受信装置300は、在圏基地局の検出精度を向上させることができる。
つづいて、基地局101が備える送信装置200のハードウェア構成について説明する。送信装置200において、変調部201、送信識別信号生成部202、識別信号挿入部203、送信フィルタ部204、デジタルアナログ変換部205、および送信高周波部206は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。処理回路は制御回路とも呼ばれる。
図14は、実施の形態1に係る送信装置200が備える処理回路をプロセッサ91およびメモリ92で実現する場合の処理回路90の構成例を示す図である。図14に示す処理回路90は制御回路であり、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路90がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、処理回路90の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路90では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路90は、送信装置200の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。このプログラムは、処理回路90により実現される各機能を送信装置200に実行させるためのプログラムであるともいえる。このプログラムは、プログラムが記憶された記憶媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。
上記プログラムは、変調部201が、データ信号211を変調してデータシンボル系列を生成する第1のステップと、送信識別信号生成部202が、無線端末111で既知のシンボル系列に対して、無線端末111で既知の複数の位相回転系列から選択した位相回転系列を乗算して第1のシンボル系列を生成し、第1のシンボル系列に対して、無線端末111で既知の複数の順序入れ替えパターンから選択した順序入れ替えパターンに基づいて第1のシンボル系列の順序入れ替え処理を行って識別信号を生成する第2のステップと、識別信号挿入部203が、識別信号をデータシンボル系列に挿入して送信信号を生成する第3のステップと、を送信装置200に実行させるプログラムであるとも言える。
ここで、プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などである。また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
図15は、実施の形態1に係る送信装置200が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路93の例を示す図である。図15に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
基地局101が備える送信装置200のハードウェア構成について説明したが、無線端末111が備える受信装置300も同様のハードウェアで実現することができる。すなわち、受信装置300において、受信高周波部302、アナログデジタル変換部303、受信フィルタ部304、同期部305、受信識別信号生成部306、識別信号受信電界強度測定部307、測定結果記憶部308、復調部309、および検出部310は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、複局同時送信システム1において、同じ通信エリアを形成する複数の基地局101の送信装置200は、送信アンテナ207から送信する送信信号に挿入する識別信号として、基地局101毎に固有の直交信号である識別信号、または異なる順序入れ替えパターンで生成した準直交信号である識別信号が割り当てられ、割り当てられた識別信号を含む送信信号を送信する。また、送信装置200は、送信アンテナ207毎に送信する識別信号を変更できる機能を有する。これにより、無線端末111の受信装置300は、複数の基地局101の送信装置200から送信された信号の伝送路応答、受信電界強度などを、送信元の送信装置200毎に個別に測定することができる。
本実施の形態によれば、識別信号として割り当てられる信号長が短く、直交する識別信号数の確保に限りがある場合でも、異なる順序入れ替えパターンを適用することで準直交の識別信号を生成し、識別信号数を拡大することで、複局同時送信システム1の複数の基地局101に対して固有の識別信号を割り当て、同時識別可能な基地局数の拡大が可能となる。
この結果、基地局101の送信装置200の故障の検知が可能となる。また、無線端末111は、常時電波状況を監視することによって、通信断または受信伝送誤り率劣化時の原因解析が可能となる。また、無線端末111は、在圏する基地局判別による位置情報取得が可能となる。また、無線端末111による受信電界強度の測定結果を、基地局101の置局時の電波環境のモニタ結果、置局設計時の評価指標として活用することができ、メンテナンス性の向上が見込める。また、通信エリア境界において、異なる情報を伝送する別の通信エリアの基地局101が送信した信号を受信して干渉が発生する問題、同一通信エリア内の遠方の基地局101が送信した信号が遅延時間を伴い受信されて符号間干渉が発生し、受信伝送誤り率が低下する問題がある。このような場合に干渉源となる基地局101を特定することができるため、問題の早期解決が期待できる。
なお、基地局101の送信装置200が複数の送信アンテナ207を備える場合、送信アンテナ207毎に固有の直交信号、または相互相関値が0ではない準直交信号を割り当て、送信装置200は、割り当てられた識別信号を含む送信信号を送信してもよい。この場合、無線端末111の受信装置300は、複数の基地局101の送信装置200から送信された信号の伝送路応答、受信電界強度などを、送信元の送信装置200の送信アンテナ207毎に個別に測定することができ、1つの送信装置200が備える複数の送信アンテナ207のそれぞれから送信された信号の受信品質を把握することが可能となる。
実施の形態2.
実施の形態1では、複局同時送信システム1の同一通信エリア、および異なる通信エリアを構成する全ての基地局101の送信装置200の送信アンテナ207からの送信信号毎に、固有の直交信号、または異なる順序入れ替えパターンで生成された準直交信号を識別信号として割り当て、基地局101の送信装置200は、識別信号を含む送信信号の送信を行う。識別信号は、図5で示されるように、ランダムシンボル系列231に対して、異なる位相回転系列232が乗算され、さらに異なる順序入れ替えパターンが適用されることによって、複数の固有の直交信号、または相互相関値が0ではない準直交信号として生成される。実施の形態1では、図7に示す第1の識別信号群250-1の通信エリア121と第2の識別信号群250-2の通信エリア122との境界付近、および第2の識別信号群250-2の通信エリア122と第3の識別信号群250-3の通信エリア123との境界付近の複数の基地局101に割り当てられている識別信号は、お互い準直交の関係にあり、固有の直交信号の場合と比較して、無線端末111での識別信号による信号識別精度が低下していた。
これに対して、実施の形態2では、送信装置200は、ランダムシンボル系列231に対して異なる位相回転系列232を乗算した位相回転後系列233を繰り返した系列(以下、繰り返し系列と記載する)を生成し、繰り返しシンボル単位、すなわち元のランダムシンボル系列長で繰り返し系列に繰り返し回数Vの長さのWalsh符号を乗算して生成した直交系列を生成する。送信装置200は、さらに、生成した直交系列に異なる順序入れ替えパターンを適用することによって、複数の固有の直交信号、または相互相関値が0ではない準直交信号の識別信号を生成する。複局同時送信システム1は、同一通信エリア、および異なる通信エリアを構成する全ての基地局101の送信装置200の送信アンテナ207からの送信信号毎に、固有の直交信号または準直交信号の識別信号を割り当てる。実施の形態2では、図7に示す第1の識別信号群250-1の通信エリア121と第2の識別信号群250-2の通信エリア122との境界付近、および図7に示す第2の識別信号群250-2の通信エリア122と第3の識別信号群250-3の通信エリア123との境界付近の基地局101についても、直交の関係となる系列を選択して識別信号を割り当てる。また、実施の形態2では、準直交の関係のとなる識別信号については、電波の影響が小さくなる規定された距離を離した遠方基地局で割り当てるようにする。なお、実施の形態2において、基地局101の送信装置200の構成、および無線端末111の受信装置300の構成は、各々、実施の形態1のときの構成と同様とする。
図16は、実施の形態2に係る基地局101が備える送信装置200の送信識別信号生成部202が識別信号を生成する手順を示す図である。送信識別信号生成部202は、まず、図16(#1)に示すように、識別信号の基となるランダムシンボル系列231を生成する。ランダムシンボル系列231は、受信側の無線端末111で既知のシンボル系列であり、規定された振幅および位相を有する複素ベクトルで表現される。図16(#1)に示す例では、A0~A3の4シンボルでランダムシンボル系列231を形成している。ランダムシンボル系列231については、実施の形態1のときと同様、例えば、CAZAC系列の適用が考えられる。
送信識別信号生成部202は、つぎに、ランダムシンボル系列231に位相回転系列232を乗算する。これにより、送信識別信号生成部202は、図16(#2)に示すように、位相回転後系列233を得られる。図16(#2)に示す例では、B0~B3の4シンボルで位相回転後系列233を形成している。ランダムシンボル系列231をAkとし、位相回転後系列233をBkとしたとき、Bkは前述の式(1)によって算出することができる。これにより、生成された位相回転後系列233は、周波数で直交化されたN個の直交系列となる。
送信識別信号生成部202は、つぎに、図16(#3)に示すように、N個の直交系列である位相回転後系列233をV回繰り返し、N×Vの長さの繰り返し系列261を生成する。
送信識別信号生成部202は、つぎに、図16(#4)に示すように、繰り返し系列261に対して、繰り返しシンボル単位であるNシンボル単位で繰り返し回数Vの長さのWalsh符号262を乗算して、N×Vの長さのシンボル系列であるWalsh符号乗算後系列263を生成する。
送信識別信号生成部202は、つぎに、図16(#5)に示すように、Walsh符号262を乗算して生成したシンボル系列であるWalsh符号乗算後系列263毎に、繰り返しシンボル単位、ここではNシンボル単位で同一の順序入れ替え処理を施し、識別信号264を生成する。順序入れ替えパターン数をUとすると、送信識別信号生成部202が繰り返し系列261に対してWalsh符号262を乗算して生成したシンボル系列であるWalsh符号乗算後系列263はN×V種類の直交系列となる。送信識別信号生成部202は、さらにU種類の順序入れ替え処理を適用することによって、N×V×U種類の系列群である識別信号264を生成することができる。図16は、ランダムシンボル系列231を4シンボルとし、位相回転系列長Nが4、繰り返し回数Vが2の場合の例を示している。
図17は、実施の形態2に係る基地局101が備える送信装置200の送信識別信号生成部202で生成される識別信号264の補足説明を示す図である。図17は、説明を簡易化するため、一例として、ランダムシンボル系列を2シンボルとし、位相回転系列長Nが2、繰り返し回数Vが2、順序入れ替えパターン数Uが2の場合の具体的な識別信号264の生成手順を示している。繰り返し系列261は、N=2、V=2の場合、4つの直交した系列が生成できる。ここで、繰り返し系列261の4つの直交系列をS1(i)~S4(i)で表現する。繰り返し系列261のインデックス番号をi(0≦i<4の整数)とする。また、V=2の場合のWalsh符号として、第1のWalsh符号262-1をW0、第2のWalsh符号262-2をW1としたとき、{W0、W1}={+1、+1}、{+1、-1}となる。繰り返し系列261の4つの直交系列S1(i)~S4(i)に対して、第1のWalsh符号262-1を乗算した系列であるWalsh符号乗算後系列263を系列S11(i)~S41(i)とし、第2のWalsh符号262-2を乗算した系列であるWalsh符号乗算後系列263を系列S12(i)~S42(i)とすると、系列S11(i)~S41(i)は式(5)のように計算される。また、系列S12(i)は式(6)のように計算され、系列S22(i)は式(7)のように計算され、系列S32(i)は式(8)のように計算され、系列S42(i)は式(9)のように計算される。
送信識別信号生成部202は、つぎに、Walsh符号乗算後系列263に対して、順序入れ替え処理を行い、識別信号264を生成する。系列S11(i)~S41(i)に対して第1の順序入れ替えパターン270-1の順序入れ替え処理を行った結果を系列S111(i)~S411(i)とし、系列S11(i)~S41(i)に対して第2の順序入れ替えパターン270-2の順序入れ替え処理を行った結果を系列S112(i)~S412(i)とする。同様に、系列S12(i)~S42(i)に対して第1の順序入れ替えパターン270-3の順序入れ替え処理を行った結果を系列S121(i)~S421(i)とし、系列S12(i)~S42(i)に対して第2の順序入れ替えパターン270-4の順序入れ替え処理を行った結果を系列S122(i)~S422(i)とする。ここで、系列S111(i)~S411(i)を系列群A(264-1)とし、系列S112(i)~S412(i)を系列群B(264-2)とし、系列S121(i)~S421(i)を系列群C(264-3)とし、系列S122(i)~S422(i)を系列群D(264-4)と表現する。
このように、送信識別信号生成部202は、繰り返し系列261を第2のシンボル系列とし、Walsh符号乗算後系列263を第3のシンボル系列とすると、第1のシンボル系列が繰り返される第2のシンボル系列を生成する。送信識別信号生成部202は、第2のシンボル系列に対して、第1のシンボル系列の系列長の単位で繰り返し回数と同じ長さのWalsh符号を乗算して第3のシンボル系列を生成する。送信識別信号生成部202は、第3のシンボル系列に対して、選択した順序入れ替えパターンに基づいて第3のシンボル系列の順序入れ替え処理を行って識別信号を生成する。
図18は、実施の形態2に係る基地局101が備える送信装置200の送信識別信号生成部202で生成される識別信号264の特徴を示す図である。図18は、実施の形態2の識別信号264である系列群A~系列群Dのそれぞれの系列群の間での直交性を直交および準直交の2種類に分類したものである。前述のように、直交は系列間の相互相関値が0の場合であり、準直交は系列間の相互相関値が0ではない場合である。系列群Aは、系列群Cと系列群Dとは直交の関係であり、系列群Bとは準直交の関係となる。系列群Aに対し、系列群Cと系列群Dは異なるWalsh符号が適用されているため直交の関係となり、系列群Bは同一のWalsh符号が適用されているため、順序入れ替えパターンによる違いのみになるため準直交の関係となる。同様に、系列群Bは、系列群Cと系列群Dとは直交の関係であり、系列群Aとは準直交の関係となる。系列群Cは、系列群Aと系列群Bとは直交の関係であり、系列群Dとは準直交の関係となる。系列群Dは、系列群Aと系列群Bとは直交の関係であり、系列群Cとは準直交の関係となる。
図19は、実施の形態2に係る複局同時送信システム1における各基地局101に対する識別信号の割り当ての例を示す図である。図19は、異なる情報を伝送している通信エリア130,131が隣接して存在し、各通信エリア130,131には同一の情報を伝送している複数の基地局101が設置されている構成を示している。図19に示すような複局同時送信システム1の構成において、実施の形態2で説明した識別信号である系列群A~系列群Dを用いて、各基地局101に割り当てる。系列群A~系列群Dは、図18で示したような系列間の直交性の関係にあり、このような関係性を考慮して、隣接する基地局101には直交の関係となる系列群を割り当てるようにする。
例えば、通信エリア132の基地局101-1~101-4に系列群Aの識別信号が割り当てられているとすると、通信エリア132に隣接する通信エリア133の基地局101-5~101-8には、系列群Aと直交の関係にある系列群Cの識別信号を割り当てる。同様に、通信エリア133に隣接する通信エリア134の基地局101-9~101-12には、系列群Cと直交の関係にある系列群Bの識別信号を割り当てる。このとき、系列群Aの通信エリア132と系列群Bの通信エリア134とは、系列群Cの通信エリア133を挟んで距離が離れているため、準直交の識別信号の干渉による基地局101の識別信号の識別精度への影響を低減することができる。異なる情報を伝送する通信エリア134と通信エリア135との境界を跨ぐ場合も同様である。通信エリア134に隣接する通信エリア135の基地局101-13~101-16には、系列群Bと直交の関係にある系列群Dの識別信号を割り当てる。複局同時送信システム1は、系列群A~系列群Dまで全ての識別信号を基地局101に割り当てた場合、識別信号を再利用して割り当ててもよい。
このように、基地局101同士の距離が閾値未満の基地局101は、系列間の相互相関値が0となる直交する識別信号が挿入された送信信号を送信する。基地局101同士の距離が閾値以上の基地局101は、系列間の相互相関値が0ではない準直交の識別信号が挿入された送信信号を送信する。また、隣接する通信エリアの境界に位置する基地局101は、直交する識別信号が挿入された送信信号を送信する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、複局同時送信システム1は、隣接する基地局101には直交の関係にある識別信号を割り当て、電波の影響が小さくなる遠方に配置された基地局101に対しては準直交の関係にある識別信号を割り当てるようにする。これにより、複局同時送信システム1は、実施の形態1の効果に加えて、基地局101毎の識別信号の識別精度を向上させることが可能であり、通信エリア130または通信エリア131の複数の基地局101からの送信信号毎の受信電界強度、伝送路応答などを無線端末111で精度良く測定することができるようになる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。