図1は本発明に係る継ぎ目補正装置の第1実施形態を装備する印刷システムを示す図である。印刷システム100は印刷用凹版を用いて本発明の「ワーク」の一例である飲料ガラス瓶や化粧品のガラス瓶などの容器Bの側面全周、つまり胴部Baの表面に紫外線硬化インク(以下、単に「インク」という)で所望の画像を印刷する。印刷システム100により容器Bに印刷すべき文字、ロゴ、絵柄、イラスト等で構成される模様の画像データ11は予めサーバー1で編集され、サーバー記憶部(図示省略)に記憶されている。印刷システム100では、製版装置2および印刷装置3が設けられている。これらのうち製版装置2はサーバー1から与えられる画像データ11に基づいて容器Bに印刷すべき画像(例えば図10に示す各種模様)に対応する凹凸パターン(図2中の符号PTP)を印刷用凹版(図2中の符号PP)に形成する。一方、印刷装置3は製版装置2により製造された印刷用凹版を用いて上記画像データ11に対応する画像を容器Bの胴部Baに印刷する。
図2は印刷装置の構成を模式的に示す図である。印刷装置3は、天板、側壁および底板を有する筐体31と、筐体31の内部に設けられる基台32と、基台32の上部に図2の左右方向に延設され、紙面方向に互いに離間して2本設けられるガイドレール33とを有している。紙面方向手前側のガイドレール33(図2に図示のガイドレール)は、第1溝部(図示省略)と第1ボールねじ(図示省略)を有している。また、紙面方向奥側のガイドレール33(図1に図示のガイドレール33の奥側に位置する図示省略のガイドレール)は、第2溝部(図示省略)と第2ボールねじ(図示省略)を有している。
印刷装置3では、紙面方向手前側のガイドレール33の第1溝部に嵌合して、第1ボールねじと接続するように版ステージ34が設けられ、当該版ステージ34の上面で印刷用凹版PPや後で説明する計測用凹版MP(図2)を固定可能となっている。このため、第1ボールねじの回転駆動によって版ステージ34は印刷用凹版PPを保持した状態でガイドレール33の第1溝部に沿って移動し、ブランケット351を支持したブランケット胴35およびドクターブレード(図示省略)に対して往復移動する。こうして版ステージ34とともに印刷用凹版PPが往復移動する間に、印刷用凹版PPの上面にインクが供給され、当該インクがドクターブレードにより印刷用凹版PPに形成された凹部に充填されてインク像が形成、さらに印刷用凹版PPからブランケット351にインク像が受理される。なお、ブランケット351はシリコンゴムなどの容器Bよりも硬度の低い軟質材料で構成されている。
また、図2の紙面方向奥側のガイドレール33の第2溝部に嵌合して、第2ボールねじと接続するようにホルダ36が設けられ、当該ホルダ36により容器Bを回転自在に保持可能となっている。このため、第2ボールねじの回転駆動によってホルダ36は容器Bを保持した状態でガイドレール33の第2溝部に沿って移動し、支柱352により所定位置で回転自在に固定されたブランケット胴35に対してホルダ36を位置決めする。より具体的には、容器Bの胴部Baに倣って変形させながらブランケット351に押し当てるようにホルダ36が位置決めされる。
図3は容器を保持するためのホルダの構成を模式的に示す図である。ホルダ36は、同図に示すように、ベース部21を有している。このベース部361は第2ボールねじと接続されている。また、ベース部361の上面から2つの柱部362、363が立設されている。柱部362、363は、容器Bの高さ(底部から容器口までの長さ)よりも若干長い間隔を隔てながら相互に対向するように設けられている。柱部362、363には、図示を省略するが、容器Bの高さ方向(同図の左右方向)に貫通孔がそれぞれ設けられている。これらの貫通孔は上記高さ方向に沿って一列に配置されている。そして、柱部362に設けられた貫通孔に底保持部364が設けられる一方、柱部363に設けられた貫通孔に蓋閉め保持部365が設けられている。
底保持部364は、柱部362に対して回転自在に設けられた回転体364aと、回転体364aに取り付けられたバネ部材364bとを有している。バネ部材364bの一方端部は回転体364aに固定された固定端であり、他方端部は柱部363に向かって伸びた自由端となっている。一方、蓋閉め保持部365は、柱部363に対して回転自在に支持されながら蓋閉め部Bcに着脱自在な連結部材365aを有している。このため、図3に示すように、バネ部材364bの付勢力に抗って容器Bの底部Bbをバネ部材364bの他方端部に押し付けながら容器Bを水平状態で柱部362、363の間に配置することができる。さらに、容器Bの蓋閉め部Bcを蓋閉め保持部365の連結部材365aに連結することで、容器Bはバネ部材364bの付勢力で回転体364aと連結部材365aとで挟まれた状態で回転軸AXまわりに回転自在に保持される。なお、蓋閉め部Bcとは、胴部Baの肩部から容器口までの上端範囲のうち容器Bの蓋(図示省略)が装着される部位を意味している。この蓋閉め部Bcの上端(図3の右側)には、容器口が開放され、容器口の近くから胴部Baに向かって雄ネジ(図示省略)が適宜形成されている。雄ネジは、連続した螺旋雄ネジのほか、適宜一部分断される等の形状を有している。
このように構成されたホルダ36では、オペレータによる容器Bの着脱が実行可能となっている。つまり、印刷前の容器Bの底部Bbをバネ部材364bに押し付けながら容器Bを水平状態で柱部362、363の間に配置した後で容器Bの蓋閉め部Bcを蓋閉め保持部365の連結部材365aに連結することで容器Bをホルダ36に装着することができる。また、印刷後に、ホルダ36に印刷済の容器Bをバネ部材364bの付勢力に抗いながら柱部362側に移動させるとともに連結部材365aによる蓋閉め部Bcの連結を解除することで、容器Bをホルダ36から取り外すことができる。なお、ホルダ36への容器Bの着脱方式はこれに限定されるものではなく、ホルダ36における容器Bの保持機能に応じた着脱方式を採用することができる。
ホルダ36は、単に容器Bを水平状態で回転自在に保持する保持機能以外に、印刷装置3による凹版印刷中に容器Bを回転軸AXまわりに回転させる回転機能を有している。この回転機能は容器回転部26により実行される。この容器回転部366は、回転するモータ366aと、モータ366aの回転力を容器Bの蓋閉め部Bcに伝達する回転伝達機構366bとを有している。モータ366aの作動により印刷前の容器Bは底保持部364と蓋閉め保持部365とで挟まれて水平姿勢で保持された状態で回転軸AXまわりに回転して転写処理が実行される。
より詳しくは、図2に示すように、容器Bをブランケット351に押し当てて容器Bの胴部Baに倣ってブランケット351を変形させた状態で図示を省略する駆動部によりブランケット胴35を同図において反時計回りに回転させるとともに、容器回転部366により容器Bを同図において時計回りに回転させることでブランケット351に担持されているインク像が容器Bに転写される。より詳しくは、ブランケット胴35の回転方向におけるインク像の先頭部位が最初に容器Bの側面(胴部Baの表面)に転写される。それに続いて、ブランケット胴35および容器Bの回転に伴ってインク像の中間部位が容器Bの側面に転写される。そして、容器Bが回転軸AXまわりに1回転した時点でインク像の後尾部位が最後に容器Bの側面に転写される。こうして容器Bの側面全周に転写されるインク像は紫外線照射部(図示省略)から照射される紫外線により硬化して容器Bに定着される。これによって、画像データ11に対応する印刷画像(以下「印刷画像」という)が容器Bの側面全周にわたって印刷される。いわゆる360゜印刷が実行される。
図4は図2に示す印刷装置により印刷される印刷画像の具体例を示す図である。なお、同図における符号Xは容器Bに印刷された印刷画像IMpを回転方向Rに展開した方向を示している。上記360゜印刷では、例えば図4の(a)欄に示すように、容器Bの回転方向Rにおいて最初に印刷される印刷始端部Pspと最後に印刷される印刷終端部Pepとを一致させて印刷画像IMpの継ぎ目領域SRを目立たせないことが重要である。しかしながら、転写処理時において軟質のブランケット351が変形するため、容器Bの側面(胴部Ba)に転写されたインク像の先頭部位と後尾部位とが容器Bの回転方向Rにおいて不一致となることがある。この場合、印刷画像IMpの継ぎ目領域SRでオーバーラップ(図4の(b)欄)や隙間(図4の(c)欄)などが発生して継ぎ目領域SRが目立ってしまうことがある。このような印刷品質の低下を回避するために、本実施形態では、後で詳述するようにフィルム(図3中の符号F)と、計測用パターン(図2中の符号PTM)を印刷するための計測用凹版MPとを用いて継ぎ目情報を取得する。また、継ぎ目情報に基づいて印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとを一致させるための補正情報を作成し、当該補正情報に基づいて画像データ11を補正する。
そこで、本実施形態では、図1に示すように、計測用パターンに対応するパターン像が印刷されたフィルムを撮像して画像信号を出力するスキャナー4および継ぎ目補正を行う継ぎ目補正装置5が設けられている。これらのうちスキャナー4としては、例えば従来より周知のフラットベッドタイプの画像読取装置などを用いることができる。なお、図1中の符号6はサーバー1、製版装置2、印刷装置3、スキャナー4および継ぎ目補正装置5の間で双方向通信するためのネットワークである。
図5は継ぎ目補正装置の概略構成を示すブロック図である。継ぎ目補正装置5は、論理演算を実行する周知のCPU(Central Processing Unit)、初期設定等を記憶しているROM(Read Only Memory)、装置動作中の様々なデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等から構成されている。継ぎ目補正装置5は、機能的には、演算処理部51、記憶部52、画像処理部53および通信部54などを備えている。これらのうち画像処理部53はスキャナー4から送信されてくる画像信号に対して所定の画像処理を施して継ぎ目補正に好適なフィルム画像(図8A~図8E中の符号IMf)を生成する。また、通信部54はネットワーク6を介して他の装置(サーバー1、製版装置2、スキャナー4など)と各種情報の送受信を行う。
記憶部52は、継ぎ目補正処理やデータ補正処理を行うためのプログラム、継ぎ目情報、継ぎ目情報や補正画像データを記憶する。
上記演算処理部51は、CPU等のような演算機能を有するものであり、上記記憶部52に記憶されているプログラムに従って印刷システム100の各部を制御する。より詳しくは、次に説明するように4つの機能ブロック部、つまり
・計測用凹版MPに設けられる計測パターンPTM(図2)に関する情報を取得するパターン情報取得部511と、
・計測用凹版MPを用いて計測パターンPTMに対応するパターン像を印刷したフィルムF(図3)を平面展開してスキャナー4で撮像して得られるフィルム画像IMfを取得するフィルム画像取得部512と、
・計測パターンPTMとフィルム画像IMfに含まれるパターン像とを比較して継ぎ目情報を取得する継ぎ目情報取得部513と、
・継ぎ目情報により画像データ11を補正するデータ補正部514と
を有している。なお、図5中の符号55および56はそれぞれ表示ユニットおよび操作ユニットである。
次に、上記のように構成された印刷システム100により容器Bに対して画像データ11に対応する印刷画像IMpを印刷する動作について説明する。
図6は図1に示す印刷システムの動作を示すフローチャートである。本実施形態では、図6に示すように、画像データ11に基づいて印刷用凹版PPを製造する前に、継ぎ目補正処理(ステップS1)を実行する。すなわち、印刷システム100では、サーバー1から与えられる画像データ11をそのまま使用して印刷用凹版PPを製造するのではなく、継ぎ目補正処理により画像データ11を補正して得られた画像データ11に基づいて印刷用凹版PPを製造している(ステップS2)。そして、継ぎ目補正済の印刷用凹版PPを用いて容器Bに対して印刷画像IMpを印刷する。つまり、本実施形態の特徴は、継ぎ目補正装置5の演算処理部51が記憶部52に予め記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して継ぎ目補正処理(ステップS1)を以下のように実行している点にある。
図7は図6中の継ぎ目補正処理を示すフローチャートである。継ぎ目補正処理では、凹形状を有する格子点を表面全体に分散して設けた計測用凹版MP(図2)がオペレータあるいは搬送ロボットにより版ステージ34上に載置され、固定される(ステップS11)。格子点の分散態様は任意であるが、本実施形態では、二次元マトリックス状に配置された複数の格子点で構成される計測パターンPTMが用いられる。なお、計測パターンPTMを構成する要素は格子点に限定されるものではなく、例えば線状要素を格子状に配置したパターンであってもよい。
そして、印刷対象が胴部Baの表面ではなく胴部Baに巻き付けられたフィルムF(図3参照)である点を除き、印刷用凹版PPとインクを用いて容器Bに印刷画像IMpを印刷する、いわゆる通常印刷動作と同様にして印刷処理を行う(ステップS12~S14)。すなわち、版ステージ34とともに計測用凹版MPが往復移動する間に、計測用凹版MPの上面にインクが供給され、当該インクがドクターブレード(図示省略)により計測用凹版MPに形成された凹部、つまり格子点に充填されてドットパターン像が形成され(ステップS12)、計測用凹版MPからブランケット351にドットパターン像が受理される(ステップS13)。
一方、当該受理動作が完了するまでに、オペレータにより胴部BaにフィルムFが密着して巻き付けられた容器Bが用意され、ホルダ36にセットされる。そして、ドットパターン像の受理後に、ホルダ36とともにフィルム付容器Bがブランケット胴35に向けて移動し、ブランケット351に押し当てられる。これによりブランケット351が容器Bの胴部Baに倣って変形する。こうして、ブランケット351と容器Bとの間にフィルムFが介在した状態でニップ領域が形成される。そして、ニップ領域を形成したままでブランケット胴35が図2において反時計回りに回転するとともに容器Bが図2において時計回りに回転する。そして、容器Bが回転軸AXまわりに1回転することで、ブランケット351が担持しているドットパターン像がフィルムFに転写される(ステップS14)。
こうして、フィルムFへのドットパターン像の印刷が完了すると、オペレータがホルダ36からフィルム付容器Bを取り外し、さらにドットパターン像が印刷されたフィルムFを容器Bから取り外す。このフィルムFはX方向に平面展開され、スキャナー4のフラットベッド(図示省略)上に載置される。そして、フィルムFに印刷されたドットパターン像が読み取られ、そのドットパターン像を含むフィルム画像IMfが継ぎ目補正装置5に与えられる(ステップS15)。
ここで、例えば図4の(a)欄に示すように通常印刷動作において印刷画像IMpの継ぎ目領域SRが理想状態となる、つまり印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとが一致して継ぎ目領域SRが目立たない場合、上記フィルム画像IMfは図8Aに示すような印刷特性を有する。これに対し、例えば図4の(b)欄ないし(e)欄に示すように、印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとが不一致となり、継ぎ目領域SRが目立って印刷品質が低下する場合、上記フィルム画像IMfは図8Bないし図8Eに示すような印刷特性を有する。
図8Aないし図8Eは計測用凹版を用いて印刷されたフィルム画像およびフィルム画像の印刷特性を示す図である。各図において、左側図面はフィルム画像IMfを計測パターンPTMと重ね合わせたものであり、計測パターンPTMを構成する格子点とフィルム画像IMfを構成するドットパターン像との位置関係を示している。各図では、丸印が格子点を示し、三角印がドットパターン像を示している。これらの位置座標は容器Bの回転方向Rに展開した方向X(図3、図4等参照)における位置(以下「回転方向位置Px」という)と、容器Bの幅方向(または高さ方向)Yにおける位置(以下「幅方向位置Py」という)とを含んでいる。このため、格子点毎に格子点の座標(Px0,Py0)とドットパターン像の座標(Px,Py)とを比較することで格子点からのドットパターン像の変位量(以下「ドット変位量」という)を求めることができる。そして、各図の右側には、回転方向位置Pxに対するドット変位量をプロットしたグラフが示されている。
図4と図8Aないし図8Eからわかるようにフィルム画像IMfを解析することで、継ぎ目領域SRのタイプ(以下「継ぎ目タイプ」と称する)を判定することができる。本実施形態では、図4に示すように、継ぎ目領域SRのタイプを代表的な5つに分類している。第1番目の継ぎ目タイプは、印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとが一致した理想タイプである(図4の(a)欄参照)。このような印刷を行う印刷装置3では、図8Aに示すフィルム画像IMfが印刷され、その印刷始端部Psfと印刷終端部Pefとの距離は容器Bの胴部Baの周長Lと一致する。したがって、画像データ11を補正することなく通常印刷を行ったとしても、継ぎ目領域SRが目立たない印刷画像IMpが印刷される。したがって、画像データ11の補正は不要である。
第2番目の継ぎ目タイプは、回転方向Rにおいて印刷画像IMpの印刷始端部Pspの近傍領域と印刷終端部Pepの近傍領域とが帯状に重なり合う、いわゆるオーバーラップタイプである(図4の(b)欄参照)。このような継ぎ目領域SRを発生させる印刷装置3では、図8Bに示すフィルム画像IMfが印刷され、展開方向X(回転方向R)に進むにしたがってドット変位量はプラス方向に増えていき、フィルム画像IMfの印刷終端部Pefは容器Bの胴部Baの周長Lを幅dxだけ超えている。したがって、同図の右側のグラフに示す特性に基づいて回転方向位置Pxに応じて印刷画像IMpを比例的に収縮するように画像データ11を補正することでオーバーラップを解消して印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとを一致させることができる。
第3番目の継ぎ目タイプは、回転方向Rにおいて印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとが互いに平行な状態で離間して隙間を生じている、いわゆる平行隙間タイプである(図4の(c)欄参照)。このような継ぎ目領域SRを発生させる印刷装置3では、図8Cに示すフィルム画像IMfが印刷され、展開方向X(回転方向R)に進むにしたがってドット変位量はマイナス方向に増えていき、フィルム画像IMfの印刷終端部Pefは容器Bの胴部Baの周長Lに達する前に形成される。したがって、同図の右側のグラフに示す特性に基づいて回転方向位置Pxに応じて印刷画像IMpを比例的に伸張するように画像データ11を補正することで平行隙間を解消して印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとを一致させることができる。
第4番目の継ぎ目タイプは、オーバーラップと隙間とが混在している、いわゆる混在タイプである(図4の(d)欄参照)。このような継ぎ目領域SRを発生させる印刷装置3では、図8Dに示すフィルム画像IMfが印刷され、幅方向位置Py=0(容器Bの蓋閉め部Bc近傍)では回転方向Rに進むにしたがってドット変位量はマイナス方向に増えていき、幅方向位置Py=80(容器Bの胴部Ba中央近傍)ではドット変位量はなく、幅方向位置Py=140(容器Bの底部Bb近傍)では回転方向Rに進むにしたがってドット変位量はプラス方向に増えていく。このように互いに異なる幅方向位置Pyにおいて回転方向位置Pxに対するドット変位量の変化特性は異なっている。この場合、容器Bの胴部Ba中央近傍に相当する幅方向位置Pyでは画像データ11を補正しないのに対し、蓋閉め部Bc側については印刷画像IMpを伸張するように画像データ11を補正するとともに底部Bb側については印刷画像IMpを収縮するように画像データ11を補正するのが望ましい。しかも、蓋閉め部Bc側および底部Bb側に進むにしたがって変化比率を高めるのが望ましい。このような補正を行うことで隙間およびオーバーラップを解消して印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとを一致させることができる。
第5番目の継ぎ目タイプは、平行隙間タイプの変形例であり、印刷画像IMpの印刷始端部Pspおよび印刷終端部Pepが湾曲している、いわゆる湾曲タイプである(図4の(e)欄参照)。このような継ぎ目領域SRを発生させる印刷装置3では、図8Eに示すフィルム画像IMfが印刷され、平行隙間タイプと同様に、同図の上段右側のグラフに示す特性に基づいて回転方向位置Pxに応じて印刷画像IMpを比例的に伸張するように画像データ11を補正すると、印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとの距離は胴部Baの周長Lに近づく。しかしながら、上記補正のみでは同図の下段に示すようにフィルム画像IMfの印刷始端部Psfおよび印刷終端部Pefの湾曲は解消されていない。つまり、同図の最下段のグラフに示すように、回転方向Rにおける印刷始端部Psfおよび印刷終端部Pefのシフト特性値は幅方向位置Pyの両端部でゼロであるのに対し、中央部に進むにしたがってプラス側に大きくなっている。ここでは、シフト特性値の符号は画像のシフト方向を示し、シフト特性値の絶対値はシフト量を示す。したがって、同図に示すシフト特性値を有する場合、幅方向位置Pyの両端部から中央部に進むにしたがって印刷画像IMpを回転方向Rにおいてマイナス側にシフト特性値の絶対量だけシフトさせるシフト補正をさらに加えるのが望ましく、これによって印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとを一致させることができる。
このようにフィルム画像IMfには継ぎ目領域SRに関連する種々の情報が含まれている。そこで、本実施形態では、次に説明する継ぎ目情報の取得処理を実行することで、印刷画像IMpで生じ得る継ぎ目状態をフィルム画像IMfを解析することで取得している。つまり、フィルム画像IMfの印刷始端部Psfと印刷終端部Pefとの位置関係を示す継ぎ目情報(継ぎ目タイプ、リニア係数、シフト特性値など)を印刷画像IMpの継ぎ目情報として取得する(ステップS16)。なお、本明細書では、リニア係数が画像の伸縮特性を示しており、本発明の「伸縮情報」の一例に相当している。また、シフト特性値が回転方向Rにおける画像のシフト方向およびシフト量を示している。
図9はフィルム画像に基づく継ぎ目情報の取得処理を示すフローチャートである。演算処理部51は、計測用凹版MPに設けられる計測パターンPTMに関する情報として格子点の位置座標(図8A~図8Eにおける丸印の位置情報)を取得するとともにステップS15で取得されたフィルム画像IMfに含まれる各ドットパターン像の位置座標(図8A~図8Eにおける三角印の位置情報)を求め、それらに基づき継ぎ目タイプを判定する(ステップS16a)。本実施形態では、フィルム画像IMfの印刷終端部Pefにおける格子点とドットパターン像との位置関係に基づいてタイプ判定が行われる。より具体的には、印刷終端部Pefでのドット変位量dx(end)および幅方向Yにおけるドット変位量dx(end)の変化に基づいて継ぎ目タイプを判定している。
例えば図8Aに示すように幅方向Yにわたってドット変位量dx(end)がほぼゼロである場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプは理想タイプであり、画像データ11の補正は必要ないと判断(ステップS16bで「YES」)、その旨を継ぎ目情報として設定する。
また、例えば図8Bに示すように幅方向Yにわたってドット変位量dx(end)が一定のプラス値である場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプはオーバーラップタイプであり、画像データ11の補正が必要であると判断する(ステップS16cで「YES」)。さらに、演算処理部51は回転方向位置Pxに対するドット変位量の変化特性のリニア係数b(=dx(end)/L)を算出し(ステップS16d)、これを継ぎ目情報として設定する。
また、例えば図8Cに示すように幅方向Yにわたってドット変位量dx(end)が一定のマイナス値である場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプは平行隙間タイプであり、画像データ11の補正が必要であると判断する(ステップS16eで「YES」)。さらに、演算処理部51は回転方向位置Pxに対するドット変位量の変化特性のリニア係数c(=dx(end)/L)を算出し(ステップS16f)、これを継ぎ目情報として設定する。
また、例えば図8Dに示すように幅方向Yにおいてドット変位量dx(end)がマイナス値からプラス値に変化する(またはプラス値からマイナス値に変化する)場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプは混在タイプであり、画像データ11の補正が必要であると判断する(ステップS16gで「YES」)。さらに、演算処理部51は回転方向位置Pxに対するドット変位量の変化特性のリニア係数を算出する(ステップS16h)。なお、混在タイプでは、上記変化特性は一定ではなく、幅方向位置Pyに応じて変化するため、演算処理部51は各幅方向位置Pyでのリニア係数d0、d10、…、d140を求め、これらを継ぎ目情報として設定する。
さらに、例えば図8Eに示すようにドット変位量dx(end)が幅方向Yの両端部で大きいのに対して中央部で小さくなっている(あるいは幅方向Yの両端部で小さいのに対して中央部で大きくなっている)場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプは湾曲タイプであり、画像データ11の補正が必要であると判断する(ステップS16iで「YES」)。さらに、演算処理部51は、回転方向位置Pxに対するドット変位量の変化特性のリニア係数e(=dx(end,140)/L)と、各幅方向位置Pyでのシフト特性値s0、s10、…、s80(=dx’(end,80))、…、s140とを算出し(ステップS16j)、これらを継ぎ目情報として設定する。こうして継ぎ目情報が求まると、演算処理部51は継ぎ目情報の取得処理を終了し、次のステップS17に進む。
図7に戻って説明を続ける。演算処理部51は継ぎ目情報に基づき格子点からのドットパターン像の変位をキャンセルするための補正量を容器Bに印刷するときの補正情報として決定する(ステップS17)。より具体的には、継ぎ目タイプがオーバーラップタイプである場合、演算処理部51はリニア係数bに基づいて補正情報を決定する。また、継ぎ目タイプが平行隙間タイプである場合、演算処理部51はリニア係数cに基づいて補正情報を決定する。また、継ぎ目タイプが混在タイプである場合、演算処理部51はリニア係数d0、d10、…、d140に基づいて補正情報を決定する。さらに、継ぎ目タイプが湾曲タイプである場合、演算処理部51はリニア係数eとシフト特性値s0、s10、…、s140とに基づいて補正情報を決定する。なお、継ぎ目タイプが理想タイプである場合、演算処理部51は画像データ11の補正が不要であると判断し、その旨を補正情報としている。
さらに、補正情報の決定後、演算処理部51は印刷用凹版PPを製造するためにサーバー1に記憶されている画像データ11を上記補正情報にて補正する(ステップS18)。例えば継ぎ目タイプがオーバーラップタイプである場合、演算処理部51は補正情報(リニア係数b)に基づいて画像データ11を反回転方向に収縮させて補正画像データを得る。また、継ぎ目タイプが平行隙間タイプである場合、演算処理部51は補正情報(リニア係数c)に基づいて画像データ11を回転方向に伸張させて補正画像データを得る。また、継ぎ目タイプが混在タイプである場合、演算処理部51は補正情報(リニア係数d0、d10、…、d140)に基づいて画像データを補正する。より詳しくは、幅方向位置Py毎にフィルム画像が容器Bの周長Lを超えて伸張しているときにはリニア係数に基づいて当該幅方向位置の画像データを反回転方向に収縮させる一方でフィルム画像が容器Bの周長Lよりも収縮しているときにはリニア係数に基づいて当該幅方向位置の画像データを回転方向に伸張させて補正画像データを得る。さらに、継ぎ目タイプが湾曲タイプである場合、演算処理部51は補正情報(リニア係数eとシフト特性値s0、s10、…、s140)とに基づいて画像データを補正する。より詳しくは、フィルム画像が容器Bの周長Lを超えて伸張しているときにはリニア係数eに基づいて画像データ11を回転方向Rに収縮させる一方でフィルム画像が容器Bの周長Lよりも収縮しているときにはリニア係数eに基づいて画像データ11を回転方向Rに伸張させるとともに、幅方向位置Py毎にシフト方向(シフト特性値の符号)と反対の方向にシフト量(シフト特性値の絶対値)だけシフトさせて補正画像データを得る。なお、継ぎ目タイプが理想タイプである場合、演算処理部51は画像データ11の補正が不要であると判断し、その旨を補正情報としている。こうして補正された画像データ11はサーバー1に戻され、画像データ11の更新が行われる。そして、上記したように補正された画像データ11にしたがって印刷用凹版PPが製造され、それを用いて容器Bへの凹版印刷が実行される。
以上のように、第1実施形態では、印刷用凹版PPの製造前に、継ぎ目補正処理を実行して容器Bへの凹版印刷に適した印刷用凹版PPを製造している。そして、補正済の印刷用凹版PPを用いて容器Bに印刷画像IMpを印刷するため、印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepは常に一致する。その結果、継ぎ目領域SRが目立つことなく、所望の印刷画像IMpを容器Bに良好に印刷することができる。
ところで、画像データ11に基づいて印刷される印刷画像IMpを構成する模様には、大きく分けて幾何学模様、抽象模様およびこれらを合成した合成模様が含まれる。ここで、幾何学模様とは直線・曲線などを組合せた模様であり、格子状模様、石目調模様、石垣調模様、木目調模様、雲、波、花、山、竹の葉、木の葉などの自然物の柄模様、円形、矩形、三角形、多角形、文字、数字などが幾何学模様に含まれる。また、これらを抽象的にした模様およびベタ塗りが抽象模様に相当する。さらに、例えば抽象模様の上に幾何学模様を重ね合せた模様などが合成模様の一例に相当する。
図10は幾何学模様、抽象模様および合成模様の一例を示す図である。なお、同図の(a)欄中の破線は印刷画像IMpを構成するものではなく、印刷画像IMpを明示するために付した仮想線である。これらの印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとを一致させるために、第1実施形態では、画像データ11全体を補正している。そのため、模様が回転方向Rに伸縮したり、模様の位置が回転方向Rにシフトする。ここで、伸縮やシフトの影響を幾何学模様と抽象模様とで比較すると、次のことが言える。例えば図10の(b)欄に示すような抽象模様は上記影響を受け難い。したがって、印刷画像IMp全体に伸縮させる場合はもちろんのこと、印刷始端部Pspの近傍や印刷終端部Pepの近傍のみを部分的に伸縮したり、シフトさせたとしても、印刷画像IMpの画像品質が大きく低下することはない。ただし、補正対象サイズ(例えば図8Bや図8C中のドット変位量dx(end)など)が許容値(例えば3mm程度)を超えると、部分的な補正により画像品質の低下を招くおそれがある。
これに対し、幾何学模様は上記影響を受け易く、印刷画像IMpの伸縮などを回避したいところである。例えば同図の(c)欄の右側図面に示すように、印刷画像IMpの中央領域にのみ幾何学模様が位置する場合、継ぎ目領域SRに現れる模様は抽象模様のみである。したがって、補正対象サイズが許容値以下であれば、印刷始端部Pspの近傍や印刷終端部Pepの近傍の画像データ11のみを部分的に補正するのが望ましい。一方、同図の(c)欄の左側図面や(a)欄に示すように、印刷画像IMpの印刷始端部Pspの近傍や印刷終端部Pepの近傍に幾何学模様がかかる場合、上記部分補正を行うと、補正された部位と補正されなかった部位との境界で不連続な画像が形成されることがある。この場合、画像品質は低下する。したがって、印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepに現れる継ぎ目模様が幾何学模様である場合には、上記第1実施形態と同様に、画像データ11全体を補正するのが望ましい。
以上のことをまとめると、継ぎ目模様が抽象模様であり、しかも補正対象サイズが許容値以下である場合には次に説明するように画像データ11を部分的に補正してもよく、それ以外の場合には第1実施形態と同様に画像データ11全体を補正するのが望ましい(第2実施形態)。
図11および図12は本発明に係る継ぎ目補正装置の第2実施形態で実行される継ぎ目情報の取得動作を示すフローチャートである。この第2実施形態が第1実施形態で大きく相違する点は継ぎ目情報の取得処理およびデータ補正処理であり、その他の構成は第1実施形態と同様である。以下、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、画像データ11に基づいて印刷用凹版PPを製造する前に、継ぎ目補正処理(ステップS1)を実行する。この継ぎ目補正処理では、計測用凹版MP(図2)を用いてフィルムF(図3)上に形成されたドットパターン像をスキャナー4で読み取る(ステップS11~S15)。そして、当該ドットパターン像を有するフィルム画像IMfが継ぎ目補正装置5に与えられ、継ぎ目補正装置5は継ぎ目領域SRでの印刷画像IMpの印刷始端部Pspと印刷終端部Pepとの位置関係を示す継ぎ目情報(継ぎ目タイプ、リニア係数、シフト特性値、縮小対象エリア、拡張対象エリアなど)をフィルム画像IMfから取得する(継ぎ目情報の取得処理:ステップS16)。
この継ぎ目情報の取得処理では、演算処理部51は、上記第1実施形態と同様にして継ぎ目タイプを判定するとともに、印刷終端部Peでのドット変位量dx(end)に基づいて補正対象サイズを取得する(ステップS16k)。本実施形態では、ドット変位量dx(end)の最大値を補正対象サイズとしている。そして、補正対象サイズが許容値、例えば3mm以下である場合には、演算処理部51はステップS16lに進んで継ぎ目領域SRに含まれる模様が抽象模様のみであるか否かを判定する(ステップS16m)。当該判定を行うために、事前にオペレータが操作ユニット56を介して印刷画像IMp中の模様に関する模様情報を入力するようにしてもよい。また、演算処理部51が画像データ11を解析して模様情報を取得してもよい。いずれの場合も、演算処理部51は模様情報に基づいて上記判定を行う。
このように本実施形態では、補正対象サイズが許容値以下であるという判定結果(ステップS16lで「YES」)と、継ぎ目模様が抽象模様のみであるという判定結果(ステップS16mで「YES」)とがともに満足される場合に、ステップS16n~S16vを実行して第1実施形態と異なる継ぎ目情報(継ぎ目タイプ、縮小対象エリア、拡張対象エリア)を取得する。一方、それ以外の場合に第1実施形態と同様にして演算処理部51は継ぎ目情報(継ぎ目タイプ、リニア係数、シフト特性値など)を取得して継ぎ目情報の取得処理を終了する(ステップS16b~S16j)。
次に、図12を参照しつつステップS16n~S16vについて説明する。幅方向Yにわたってドット変位量dx(end)がほぼゼロである場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプは理想タイプであり、画像データ11の補正は必要ないと判断(ステップS16nで「YES」)、その旨を継ぎ目情報として設定する。一方、例えば図13Aないし図13Dに示すようにフィルム画像IMfの印刷始端部Psfと印刷終端部Pefとが一致していない場合、次のようにして継ぎ目情報を取得する。
図13Aないし図13Dは継ぎ目タイプ別の画像データの補正方法を模式的に示す図である。なお、これらの図面において、点線は理想タイプでの印刷始端部Psf、Pspと印刷終端部Pef,Pepの回転方向位置を示している。また、画像データ11の補正対象となるエリアを明示するために、当該領域にドットを参考的に付している。
図13Aに示すように幅方向Yにわたってドット変位量dx(end)が一定のプラス値である場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプはオーバーラップタイプであり、画像データ11の補正が必要であると判断する(ステップS16oで「YES」)。そして、演算処理部51は同図の左側図面に示すようにオーバーラップしている領域AR1aの反回転方向側(同図の左手側)で領域AR1aと連続する同一ドット変位量dx(end)の領域AR1bを特定する。そして、演算処理部51はこれらの領域AR1a、AR1bからなる縮小対象エリアAR1を継ぎ目情報として設定する(ステップS16p)。なお、縮小対象エリアAR1を反回転方向側に縮小させることで同図の右側図面に示すようにオーバーラップタイプから理想タイプに補正することができ、後のデータ補正ではこれを利用している。
また、図13Bに示すように幅方向Yにわたってドット変位量dx(end)が一定のマイナス値である場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプは平行隙間タイプであり、画像データ11の補正が必要であると判断する(ステップS16qで「YES」)。さらに、演算処理部51は同図の左側図面に示すように理想タイプでの印刷終端部Peに達していない領域AR2aの反回転方向側(同図の左手側)で領域AR2aと連続する同一ドット変位量dx(end)の領域AR2bを拡張対象エリアAR2として抽出し(ステップS16r)、これを継ぎ目情報として設定する。なお、拡張対象エリアAR2を回転方向側に拡張させることで同図の右側図面に示すように平行隙間タイプから理想タイプに補正することができ、後のデータ補正ではこれを利用している。
また、図13Cに示すように幅方向Yにおいてドット変位量dx(end)がマイナス値からプラス値に変化する(またはプラス値からマイナス値に変化する)場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプは混在タイプであり、画像データ11の補正が必要であると判断する(ステップS16sで「YES」)。演算処理部51は、同図の左側図面に示すようにオーバーラップしている直角三角形形状の領域AR1aの反回転方向側(同図の左手側)で領域AR1aと連続する領域AR1bを特定する。この領域AR1bは印刷終端部Peに対して領域AR1aと対称な形状を有しており、これらの領域AR1a、AR1bからなる縮小対象エリアAR1は二等辺三角形形状を有している。また、演算処理部51は、理想タイプでの印刷終端部Pefに達していない直角三角形形状の領域AR2aの反回転方向側(同図の左手側)で領域AR2aと連続する領域AR2bを特定する。この領域AR2bは印刷終端部Pefに対して領域AR1aと対称な形状を有しており、これを拡張対象エリアAR2としている。そして、演算処理部51は、これら縮小対象エリアAR1および拡張対象エリアAR2を継ぎ目情報として設定する(ステップS16t)。なお、縮小対象エリアAR1を反回転方向側に縮小させるとともに拡張対象エリアAR2を回転方向側に拡張させることで同図の右側図面に示すように混在タイプから理想タイプに補正することができ、後のデータ補正ではこれを利用している。
さらに、図13Dに示すように印刷始端部Psfおよび印刷終端部Pefが湾曲する場合、演算処理部51は、継ぎ目タイプは湾曲タイプであり、画像データ11の補正が必要であると判断する(ステップS16uで「YES」)。演算処理部51は、同図の左側図面に示すように理想タイプでの印刷終端部Pefに達していない領域AR3aを特定するとともに当該領域AR3aでの最大ドット変位量dxm(end)を算出する。また、演算処理部51は、領域AR3aの反回転方向側(同図の左手側)で領域AR3aと連続する、最大ドット変位量dxm(end)の幅を有するセクター形状の領域AR3bを拡張対象エリアAR3としている。ここで、「セクター形状」とはハードディスクなどのディスク型記憶媒体におけるデータ記憶エリアの最小単位であるセクターに類似した形状であり、環状扇型とも称される形状を意味している。また、演算処理部51は、印刷終端部Peと同様に理想タイプでの印刷始端部Psfに達していない領域AR4aを特定するとともにセクター形状の領域AR4bを拡張対象エリアAR4としている。そして、演算処理部51は、これら拡張対象エリアAR3、AR4を継ぎ目情報として設定する(ステップS16v)。なお、拡張対象エリアAR3を回転方向側に拡張させるとともに拡張対象エリアAR4を反回転方向側に拡張させることで同図の右側図面に示すように湾曲タイプから理想タイプに補正することができ、後のデータ補正ではこれを利用している。
こうして継ぎ目情報が求まると、演算処理部51は継ぎ目情報の取得処理を終了し、次のステップS17に進む。演算処理部51は継ぎ目情報に基づき格子点からのドットパターン像の変位をキャンセルするための補正量を容器Bに印刷するときの補正情報として決定し(ステップS17)、当該補正情報に基づいて印刷用凹版PPを製造するためにサーバー1に記憶されている画像データ11を上記補正情報にて補正する(ステップS18)。ここで、補正対象サイズが許容値以下であり、しかも継ぎ目領域SRに含まれる模様が抽象模様のみである場合を除き、演算処理部51は第1実施形態と同様にして補正情報を決定した後で印刷用凹版PPを製造するためにサーバー1に記憶されている画像データ11を上記補正情報にて補正する。一方、補正対象サイズが許容値以下であり、しかも継ぎ目領域SRに含まれる模様が抽象模様のみである場合には、継ぎ目タイプに応じて以下の処理が実行される。
継ぎ目タイプがオーバーラップタイプである場合、演算処理部51は図13Aに示す縮小対象エリアAR1に基づいて補正情報を決定した(ステップS17)後、当該補正情報にしたがって画像データ11の一部を補正する。補正される画像データは縮小対象エリアAR1に相当する画像データであり、回転方向Rにおいて1/2に圧縮される(ステップS18)。このため、同図の右側図面に示すように、補正後の画像データ11により製造された印刷用凹版PPを用いて印刷される印刷画像IMpの印刷終端部Pepは反回転方向に移動し、回転方向Rにおける印刷画像IMpの長さは周長Lと一致する。
また、継ぎ目タイプが平行隙間タイプである場合、演算処理部51は図13Bに示す拡張対象エリアAR2に基づいて補正情報を決定した(ステップS17)後、当該補正情報にしたがって画像データ11の一部を補正する。補正される画像データは拡張対象エリアAR2に相当する画像データであり、回転方向Rにおいて2倍に引き伸ばされる(ステップS18)。このため、同図の右側図面に示すように、補正後の画像データ11により製造された印刷用凹版PPを用いて印刷される印刷画像IMpの印刷終端部Pepは回転方向に移動し、回転方向Rにおける印刷画像IMpの長さは周長Lと一致する。
また、継ぎ目タイプが混在タイプである場合、演算処理部51は図13Cに示す縮小対象エリアAR1および拡張対象エリアAR2に基づいて補正情報を決定した(ステップS17)後、当該補正情報にしたがって画像データ11の一部を補正する。補正される画像データは縮小対象エリアAR1および拡張対象エリアAR2に相当する画像データであり、それぞれ幅方向位置に応じた倍率で縮小および拡張される(ステップS18)。このため、同図の右側図面に示すように、補正後の画像データ11により製造された印刷用凹版PPを用いて印刷される印刷画像IMpの印刷終端部Pepの一部は回転方向に移動し、残りの部分は反回転方向に移動し、回転方向Rにおける印刷画像IMpの長さは周長Lと一致する。なお、幅方向位置に応じて縮小倍率および拡張倍率を異ならせる点は第1実施形態の混在タイプと同様である。
さらに、継ぎ目タイプが湾曲タイプである場合、演算処理部51は拡張対象エリアAR3、AR4に基づいて補正情報を決定した(ステップS17)後、当該補正情報にしたがって画像データ11の一部を補正する。補正される画像データは拡張対象エリアAR3、AR4に相当する画像データであり、拡張対象エリアAR3に相当する画像データについては回転方向Rに引き伸ばされ、拡張対象エリアAR4に相当する画像データについては反回転方向に引き伸ばされる(ステップS18)。ここで、拡張倍率は幅方向における両端部で2倍であるのに対し、中央部に進むにしたがって小さく設定されている。このため、同図の右側図面に示すように、補正後の画像データ11により製造された印刷用凹版PPを用いて印刷される印刷画像IMpの印刷終端部Pepおよび印刷始端部Pspはそれぞれ回転方向および反回転方向に移動し、回転方向Rにおける印刷画像IMpの長さは周長Lと一致する。
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に継ぎ目補正処理を実行して容器Bへの凹版印刷に適した印刷用凹版PPを製造しているため、継ぎ目領域SRが目立つことなく、所望の印刷画像IMpを容器Bに良好に印刷することができる。
また、印刷画像IMpに含まれる模様の種類に応じて画像データ11の補正範囲を切り替えているため、常に模様に適した印刷を行うことができる。例えば図10の(c)欄の右図に示すように幾何学模様が印刷画像IMpの中心部に配置される場合、幾何学模様を変化させることなく、継ぎ目補正を行うことができる。
上記した実施形態では、ブランケット351が本発明の「担持体」の一例に相当している。また、二次元マトリックス状の計測パターンPTMが本発明の「二次元パターン」の一例に相当している。また、ドットパターン像が本発明の「パターン像」の一例に相当し、そのうち印刷終端部Pefの近傍に位置するドットパターン像が本発明の「終端側パターン像」および「終端側ドットパターン像」の一例に相当し、印刷終端部Pefの近傍に位置する格子点が本発明の「終端側格子点」の一例に相当している。また、上記ステップS13、S14、S16、S2がそれぞれ本発明の「第1工程」、「第2工程」、「第3工程」および「第4工程」の一例に相当している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、容器Bに使用するインクと同一のインクを用いて継ぎ目補正処理(ステップS1)を行っているが、異なるインクを用いてもよい。さらに、印刷用および計測用のいずれについても、紫外線硬化インク以外のインクを用いてもよい。
また、上記実施形態では、容器BにフィルムFを予め密着させて継ぎ目補正処理(ステップS1)を行っているが、容器Bとブランケット351とが互いに押し付けられて形成されるニップ領域に容器Bおよびブランケット351の回転に同期してフィルムFを送給することでドットパターン像をフィルムFに印刷してもよい。なお、フィルムFの種類については任意であり、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる高分子フィルム)やシュリンクフィルムなどを用いることができる。
また、上記実施形態では、フラットベッドタイプ以外のスキャナー4を用いてフィルムFに印刷されたパターン像を読み取るように構成してもよい。
さらに、上記実施形態では、継ぎ目補正装置5の全ての機能ブロック部、つまりパターン情報取得部511、フィルム画像取得部512、継ぎ目情報取得部513およびデータ補正部514をサーバー1、製版装置2、印刷装置3およびスキャナー4から独立して設けているが、それらの一部または全部を各部に組み込んでもよい、例えばデータ補正部514を製版装置2に組み込み、サーバー1から画像データ11を取得するとともに継ぎ目補正装置5から補正情報を取得するように構成してもよい。この場合、画像データ11の補正更新を待つことなく、画像データ11および補正情報に基づいて印刷用凹版PPの製造に必要な各種データを作成することができ、処理速度を向上させることができる。