(実施形態)
以下、実施形態に係るモータ1及び電動工具10について、図面を用いて説明する。ただし、下記の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の各実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の各実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
(1)モータの概要
図1、図2に示すように、本実施形態のモータ1は、ロータ5と、ステータ2と、を備える。ロータ5は、回転軸51と、ロータコア6と、複数の永久磁石7と、を有する。ロータコア6は、回転軸51を保持する。複数の永久磁石7は、ロータコア6に保持されている。ステータ2は、ステータコア20と、複数のコイル23と、を有する。ステータコア20は、ロータ5の周囲に配置されている。複数のコイル23は、ステータコア20に巻かれている。ロータコア6は、ロータ本体62と、1又は複数の低透磁率部P1と、を有する。1又は複数の低透磁率部P1は、ロータ本体62よりも透磁率が低い。回転軸51の軸方向から見て、複数の永久磁石7のうち少なくとも一対の永久磁石7の同極間には、ロータ本体62及び低透磁率部P1が存在する。なお、複数の永久磁石7により占められた領域は、ロータ本体62に含まれないとする。
本実施形態によれば、少なくとも一対の永久磁石7の同極間では、低透磁率部P1において磁界が弱まる。つまり、これらの永久磁石7に印加される反磁界を弱めることができる。よって、これらの永久磁石7が反磁界により減磁する可能性を低減できる。
(2)電動工具
図3に示すように、電動工具10は、モータ1と、電動工具本体108と、を備えている。さらに、電動工具10は、電源部101と、駆動伝達部102と、出力軸103と、チャック104と、先端工具105と、トリガボリューム106と、制御部107と、ファン109と、を備えている。
電動工具本体108(ハウジング)は、モータ1を収容している。さらに、電動工具本体108は、駆動伝達部102と、出力軸103と、制御部107と、ファン109と、を収容している。
チャック104には、先端工具105が取り付けられる。モータ1は、先端工具105を駆動する駆動源である。
電源部101は、モータ1を駆動する電流を供給する電源(直流電源)である。電源部101は、例えば、電池パックである。電池パックは、例えば、1又は複数の2次電池を含む。ロータ5は、回転軸51を有しており、モータ1の駆動力(ロータ5の回転)は、回転軸51を介して駆動伝達部102に伝達される。駆動伝達部102は、モータ1の駆動力を調整して出力軸103に出力する。出力軸103は、駆動伝達部102から出力された駆動力で駆動(例えば回転)される。チャック104は、出力軸103に固定されている。チャック104には、先端工具105が着脱自在に取り付けられる。先端工具105(ビットとも言う)は、例えば、ドライバ、ソケット又はドリル等である。各種の先端工具105のうち用途に応じた先端工具105が、チャック104に取り付けられて用いられる。
制御部107は、電源部101からモータ1の複数のコイル23(図1参照)に供給される電流を制御する回路である。これにより、制御部107は、モータ1のロータ5の回転速度を制御する。
トリガボリューム106は、モータ1のロータ5の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。トリガボリューム106を引き込む操作により、ロータ5の回転と停止とが切替可能である。また、トリガボリューム106を引き込む操作の操作量を調整することで、ロータ5の回転速度が調整可能である。つまり、トリガボリューム106を引き込む操作の操作量を調整することで、ロータ5の回転に連動して回転する出力軸103の回転速度が調整可能である。上記引込み量が大きいほど、ロータ5及び出力軸103の回転速度が速くなる。制御部107は、トリガボリューム106に入力された操作に応じて、ロータ5及び出力軸103を回転又は停止させ、また、ロータ5及び出力軸103の回転速度を制御する。この電動工具10では、先端工具105がチャック104を介して出力軸103に連結される。そして、トリガボリューム106への操作によってロータ5及び出力軸103の回転速度が制御されることで、先端工具105の回転速度が制御される。
なお、本実施形態の電動工具10はチャック104を備えることで、先端工具105が、用途に応じて交換可能であるが、先端工具105が交換可能である必要は無い。例えば、電動工具10は、特定の先端工具105のみ用いることができる電動工具であってもよい。
ファン109は、モータ1と駆動伝達部102との間に配置されている。ファン109は、モータ1の回転軸51に連結されている。回転軸51の回転に伴い、ファン109が回転する。すると、ファン109は、出力軸103側へ流れる風(気流)を生成する。これにより、ファン109は、電動工具本体108の内部空間を空冷する。
(3)モータの全体構成
次に、図1、図2を参照して、モータ1の構成を説明する。本実施形態のモータ1は、ブラシレスモータである。モータ1は、ロータ5と、ステータ2と、を有している。ロータ5は、ロータコア6と、複数(図1では8個)の永久磁石7と、回転軸51と、を有している。複数の永久磁石7は、ロータコア6に保持されている。ステータ2は、ステータコア20と、複数(図1では9個)のコイル23と、を有している。ステータコア20は、ロータコア6の周囲に配置されている。すなわち、ステータコア20は、ロータコア6を囲んでいる。複数のコイル23は、ステータコア20に巻かれている。
ロータ5は、ステータ2に対して回転する。すなわち、複数のコイル23から発生する磁束が複数の永久磁石7に作用することにより、ロータ5が回転する。ロータ5の回転力(駆動力)は、回転軸51から駆動伝達部102(図3参照)へ伝達される。
図2に示すように、ロータコア6は、複数の鋼板600を含んでいる。複数の鋼板600は、厚さ方向に積層している。複数の鋼板600は、互いに同じ形状である。
ステータコア20は、複数の鋼板210と、複数の鋼板220と、を含んでいる。
複数の鋼板210は、厚さ方向に積層している。複数の鋼板210は、互いに同じ形状である。複数の鋼板210は、ステータコア20の後述の中央コア21を構成している。
複数の鋼板220は、厚さ方向に積層している。複数の鋼板220は、互いに同じ形状である。複数の鋼板220は、ステータコア20の後述の外筒部22を構成している。
このように、ステータコア20及びロータコア6の各々は、複数の鋼板を含む。ステータコア20及びロータコア6の各々は、複数の鋼板を厚さ方向に積層して形成されている。つまり、ステータコア20及びロータコア6の各々は、いわゆる積層コアである。複数の鋼板の各々の表面には、絶縁被膜が形成されている。複数の鋼板は、厚さ方向に互いに隣り合う鋼板同士で溶接により結合されている。複数の鋼板の積層方向は、ロータ5の回転軸51の軸方向(回転軸51の長さ方向)に沿っている。各鋼板は、より詳細には、電磁鋼板である。各鋼板は、磁性材料により形成されている。各鋼板は、例えば、ケイ素鋼板である。
(4)ステータ
ステータ2のステータコア20は、中央コア21と、外筒部22とを有している。中央コア21と外筒部22とが互いに連結されることで、ステータコア20が形成されている。
中央コア21は、円筒状の内筒部3と、複数(図1では9個)のティース4と、を有している。内筒部3と複数のティース4とは、一体的に形成されている。
回転軸51の軸方向から見て、内筒部3は、回転軸51と同心円状である。内筒部3の内側には、ロータコア6が配置されている。複数のティース4の各々は、胴部41と、2つの先端片42と、を含む。胴部41は、内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している。複数のティース4の胴部41は、内筒部3の周方向において等間隔に設けられている。2つの先端片42は、胴部41の先端側の部位から、胴部41の突出方向と交差する方向に延びている。
ステータ2は、コイル巻枠8(図2参照)を有している。なお、図1ではコイル巻枠8の図示を省略している。コイル巻枠8は、例えば、合成樹脂を材料として形成されている。コイル巻枠8は、電気絶縁性を有している。コイル巻枠8は、ステータコア20に取り付けられている。コイル巻枠8は、例えば、インサート成形により、ステータコア20と一体化している。コイル巻枠8は、複数のティース4のうち胴部41を含む領域を覆っている。各胴部41には、コイル巻枠8の上からコイル23が巻かれる。すなわち、複数(9個)のコイル23は、複数(9個)のティース4と一対一で対応し、各コイル23は、コイル巻枠8の上から対応するティース4に巻きついている。複数のコイル23の巻き方としては、例えば、集中巻が採用される。
2つの先端片42は、コイル23が胴部41から脱落することを抑制する抜止めとして設けられている。すなわち、胴部41の先端側にコイル23が移動しようとする場合に、コイル23が2つの先端片42に引っ掛かることで、コイル23の脱落を抑制できる。
外筒部22の形状は、筒状である。より詳細には、外筒部22の形状は、円筒状である。回転軸51の軸方向から見て、外筒部22は、回転軸51と同心円状である。外筒部22は、中央コア21を囲んでいる。外筒部22は、中央コア21の複数のティース4の先端に取り付けられている。つまり、複数のティース4は、外筒部22からロータコア6に向かって突出するように設けられている。
外筒部22は、複数(図1では9個)の嵌合部221を有している。つまり、外筒部22は、ティース4と同数の嵌合部221を有している。複数の嵌合部221の各々は、外筒部22の内周面に設けられた窪みである。複数の嵌合部221は、外筒部22の周方向において等間隔に設けられている。複数の嵌合部221は、複数のティース4と一対一で対応している。複数の嵌合部221の各々は、対応するティース4と嵌まり合う。これにより、外筒部22が中央コア21に連結される。より詳細には、各嵌合部221には、ティース4のうち2つの先端片42を含む部位が嵌め込まれる。
(5)ロータ
ロータ5は、円筒状のロータコア6と、複数(図1では8つ)の永久磁石7と、回転軸51と、を有している。
回転軸51の軸方向から見て、ロータコア6は、回転軸51と同心円状である。ロータコア6の厚さとステータコア20の厚さとは等しい。本開示において、「等しい」とは、厳密に同じである場合に限定されず、許容される誤差の範囲内で異なっている場合も含む。
ロータコア6の内側には、回転軸51が保持されている。より詳細には、ロータコア6は、その中心に、回転軸51が通される軸孔611を有している。ロータコア6と回転軸51とは、一体的に回転する。
ロータコア6には、複数の永久磁石7が収容されている。すなわち、モータ1は、ロータコア6の内部に複数の永久磁石7が埋め込まれた、いわゆる埋込磁石型(IPM:Interior Permanent Magnet)の構造を有している。
複数の永久磁石7の各々は、例えば、接着剤を付着させた状態でロータコア6に埋め込まれることで、ロータコア6に保持されている。なお、複数の永久磁石7の各々は、接着剤を用いることなく、ロータコア6との間の磁気吸着力により保持されていてもよい。
各永久磁石7の形状は直方体状である。回転軸51の軸方向から見て、各永久磁石7の形状は長方形状である。回転軸51の軸方向から見て、各永久磁石7の長手方向は、回転軸51の径方向に沿っており、各永久磁石7の短手方向は、各永久磁石7の長手方向と直交する方向に沿っている。なおかつ、回転軸51の軸方向から見て、複数の永久磁石7は、回転軸51を中心として回転軸51の周方向に並んでいる。言い換えると、複数の永久磁石7は、回転軸51を中心としてスポーク状(放射状)に配置されている。複数の永久磁石7は、等間隔に並んでいる。
各永久磁石7は、その短手方向に着磁されている。各永久磁石7は、隣り合う永久磁石7に対して、同極を対向させた状態で配置されている。図1では、各永久磁石7のN極を「N」と図示し、S極を「S」と図示している。ただし、図1における「N」及び「S」はそれぞれ、説明のために付した文字であって、実際に付されている文字ではない。
複数の永久磁石7がスポーク状に配置されているので、ロータ5の1極あたりの永久磁石7の個数を比較的少なくできる。また、複数の永久磁石7が回転軸51を囲む多角形状に配置されている場合と比較して、各永久磁石7の長手方向の長さを維持しつつ、ロータ5の直径を短くしやすい。すなわち、複数の永久磁石7を高密度に配置できる。
各永久磁石7として、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石又はプラスチック磁石を採用できる。
ロータコア6は、軸孔611を有する軸保持部61と、軸保持部61の周囲のロータ本体62と、複数(図1では16個)の貫通部63と、複数(図1では8個)のブリッジ部64と、複数(図1では8個)の突起部66と、を有している。
軸保持部61の形状は、円筒状である。軸保持部61の内側の空間が、軸孔611である。突起部66は、軸保持部61の外周縁から突出している。
ロータ本体62は、軸保持部61を囲んでいる。ロータ本体62の形状は、回転軸51と同心の円筒状である。複数の永久磁石7は、ロータ本体62に埋め込まれている。また、複数の永久磁石7は、複数の突起部66と一対一で対応している。各永久磁石7は、対応する突起部66に接している。
複数のブリッジ部64の各々は、軸保持部61とロータ本体62とを連結している。軸保持部61の外周縁には、ブリッジ部64と突起部66とが交互に設けられている。各ブリッジ部64と突起部66との間には、貫通部63が設けられている。複数の貫通部63はそれぞれ、ロータコア6を軸方向に貫通している貫通孔である。複数の貫通部63は、軸保持部61とロータ本体62との間に設けられている。つまり、複数の貫通部63により、ロータコア6が軸保持部61とロータ本体62とに分割されている。
ロータコア6は、複数(図1では8個)の低透磁率部P1を含んでいる。各低透磁率部P1の透磁率は、ロータ本体62の透磁率よりも低い。回転軸51の軸方向から見て、複数の永久磁石7の同極間の領域が8個存在する。すなわち、回転軸51の周方向において、永久磁石7と、上記領域とが、交互に並んでいる。8個の上記領域にそれぞれ、1個の低透磁率部P1が存在する。また、8個の上記領域はそれぞれ、ロータ本体62の一部を含む。すなわち、回転軸51の軸方向から見て、互いに隣り合う永久磁石7の同極間には、ロータ本体62及び低透磁率部P1が存在する。
本実施形態の各低透磁率部P1は、貫通孔である。すなわち、ロータコア6は、少なくとも1つの低透磁率部P1として、ロータコア6を回転軸51の軸方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を含む。ここでは、低透磁率部P1の透磁率とは、空気の透磁率を意味する。
各低透磁率部P1が貫通孔なので、モータ1を軽量化できる。また、モータ1の通気性を向上させ、これによりモータ1の温度上昇を抑制できる。また、貫通孔の貫通方向は、ファン109(図3参照)の送風方向に沿っている。そのため、モータ1を効率的に通気できる。モータ1の温度上昇を抑制することで、複数の永久磁石7が減磁する可能性を低減できる。
回転軸51の軸方向から見て、各低透磁率部P1の形状は、長方形状である。回転軸51の軸方向から見て、少なくとも1つ(本実施形態では、全て)の低透磁率部P1の長手方向は、回転軸51の径方向に沿っている。さらに、少なくとも1つ(本実施形態では、全て)の低透磁率部P1の長手方向は、低透磁率部P1における磁束の方向(回転軸51の径方向)に沿っている。
また、回転軸51の周方向における各低透磁率部P1の長さは、複数の永久磁石7の各々の短手方向の長さよりも短い。つまり、回転軸51の軸方向から見て、各低透磁率部P1は、複数の永久磁石7の各々よりも細い。
回転軸51の径方向に沿って各ブリッジ部64を延長した位置に、低透磁率部P1が設けられている。つまり、回転軸51の径方向において、各ブリッジ部64は低透磁率部P1に対向している。また、各低透磁率部P1は、対応する2つの永久磁石7の間に配置されており、各低透磁率部P1から対応する2つの永久磁石7のそれぞれまでの間の距離は等しい。各低透磁率部P1は、ロータ本体62の内縁付近から外縁付近までに亘って存在する。
図2に示すように、ロータコア6を構成する複数の鋼板600の各々に、貫通孔601が設けられている。つまり、ロータコア6は、複数の貫通孔601を有している。複数の貫通孔601は、回転軸51の軸方向において相互につながっている。つまり、複数の貫通孔601により、低透磁率部P1(貫通孔)が形成されている。また、複数の貫通孔601の各々が、低透磁率部として機能する。つまり、各貫通孔601の透磁率(空気の透磁率)は、鋼板600のうち貫通孔601を除いた領域の透磁率よりも低い。貫通孔601は、例えば、複数の鋼板600が積層される前に、各鋼板600に形成される。
(6)ベース及びベアリング
図2に示すように、モータ1は、エンドプレート9と、2つのベアリング52と、を更に備えている。エンドプレート9には、有底筒状のカバーが取り付けられる。エンドプレート9とカバーとにより、箱体が構成される。ステータ2及びロータ5は、エンドプレート9とカバーとに囲まれた空間に収容される。2つのベアリング52のうち一方は、カバーに固定されており、他方は、エンドプレート9に固定されている。2つのベアリング52は、ロータ5の回転軸51を回転可能に保持している。
(7)利点
各永久磁石7で発生する磁束の磁路は、ロータ本体62の内部と、ステータコア20の内部と、に亘って形成される。ここで、各永久磁石7により発生する磁界の一部は、隣り合う永久磁石7に印加される可能性がある。各永久磁石7は、同極を対向させて配置されているので、各永久磁石7に相互に作用する磁界は、反磁界となる。各永久磁石7は、反磁界が印加され続けることで減磁する可能性がある。そこで、本実施形態では、低透磁率部P1を設けることにより、各永久磁石7に作用する反磁界を低減させている。
また、各永久磁石7に作用する反磁界を低減させることにより、モータ1の組立性を改善することができる。例えば、着磁済みの複数の永久磁石7のうち、一部の永久磁石7がロータコア6に埋め込まれている場合に、残りの永久磁石7をロータコア6に埋め込む工程を想定する。この工程において、上記残りの永久磁石7で発生する磁界により、先に埋め込まれた永久磁石7がロータコア6から飛び出すように移動し、ロータコア6から脱落する可能性がある。本実施形態では、各永久磁石7に作用する反磁界を低減させることにより、このような可能性を低減させ、モータ1の組立性を改善することができる。また、完成品としてのモータ1において永久磁石7が脱落する可能性を低減させることができる。また、複数の永久磁石7をロータコア6に埋め込む前に複数の永久磁石7を着磁しておくことができるので、複数の永久磁石7をロータコア6に埋め込んでから複数の永久磁石7を着磁する場合と比較して、より確実に着磁することができる。
各永久磁石7に作用する反磁界の大きさを評価するために、図4、図5に示すように、8つの永久磁石7のうち半数(4つ)の永久磁石7を除去した状態での磁束密度分布を、解析により求めた。図4、図5では、回転軸51の周方向において、永久磁石7が配置された領域と、永久磁石7が除去された領域E1とが、交互に存在する。
図4は、実施形態のモータ1についての解析結果であり、図5は、比較例に係るモータについての解析結果である。比較例のモータは、実施形態で低透磁率部P1(貫通孔)が設けられた領域に低透磁率部P1が存在せず、この領域にまでロータ本体62が連続して設けられている点でのみ、実施形態のモータ1と相違する。
図4、図5では、磁束密度を色の濃淡により示し、磁力線を黒色の曲線により示している。色が薄いほど、磁束密度が小さい。図4では、図5と比較して、永久磁石7が除去された領域E1の近傍の磁束密度が小さい。よって、領域E1に永久磁石7が配置された場合に、図4では、図5と比較して、各永久磁石7に印加される反磁界が弱い。
図6は、図4、図5の点d1、d2間の磁束密度分布を表すグラフである。点d1は、領域E1のうちロータコア6の内縁側の端に位置し、点d2は、領域E1のうちロータコア6の外縁側の端に位置する。点d1、d2を結ぶ線分は、領域E1の外周線に沿っており、回転軸51の径方向と平行である。点d1が、図6の横軸上の「0」に対応し、点d2が、図6の横軸上の「1」に対応する。つまり、横軸は、磁束密度の測定点の座標を表し、測定点は、永久磁石7が挿入される孔(領域E1)に沿った各位置に設定されている。縦軸は、磁束密度(単位は、T)を表す。なお、図6では、点d2付近の磁束密度分布の図示を省略している。
図6に示すように、点d1、d2間の全域に亘って、実施形態のモータ1の磁束密度(B1で示す)は、比較例のモータの磁束密度(B2で表す)と比較して小さい。また、ロータコア6の内縁側よりも、外縁側の方が磁束密度が小さい。実施形態のモータ1では、点d1、d2間の平均磁束密度は0.285[T]であり、比較例のモータでは、点d1、d2間の平均磁束密度は0.363[T]であった。すなわち、実施形態のモータ1では、複数の低透磁率部P1を設けることにより、平均磁束密度が約21%低下した。
次に、複数の低透磁率部P1の有無とモータ1のトルクとの関係を、図7、図8を参照して説明する。実施形態のモータ1及び比較例のモータの各々に対し、同じ回転数を指定し、同じ正弦波電流を入力する場合の出力トルクを、解析により求め、解析結果を図7、図8に示した。図7、図8の縦軸は、トルク(単位は、Nm)を表す。図7の横軸は、時間(単位は、秒)を表す。図8の横軸は、モータ1の電気角(単位は、[deg])を表す。
入力される正弦波電流の振幅が30[A]である場合(図7、図8参照)の実施形態のモータ1のトルク(T10で表す)は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルク(T20で表す)と略重なる。前者の時間平均は、0.891[Nm]であり、後者の時間平均は、0.897[Nm]である。すなわち、実施形態のモータ1では、複数の低透磁率部P1を設けることによりトルクが低下しているが、その低下量は極僅か(トルクの平均値で約0.7%)である。
入力される正弦波電流の振幅が10[A](図7参照)である場合の実施形態のモータ1のトルク(T11で表す)は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルク(T21で表す)と略重なる。前者の時間平均は、0.305[Nm]であり、後者の時間平均は、0.306[Nm]である。すなわち、実施形態のモータ1では、複数の低透磁率部P1を設けることによりトルクが低下しているが、その低下量は極僅か(トルクの平均値で約0.3%)である。
このように、複数の低透磁率部P1を設けることによるトルクの低下量は僅かである。すなわち、実施形態のモータ1では、トルクの大きさを維持しつつ、各永久磁石7に印加される反磁界を低減させ、各永久磁石7が減磁する可能性を低減させることができる。
(変形例1)
以下、変形例1に係るモータ1Aについて、図6、図9を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図9は、モータ1Aのロータ5Aの形状を示している。ただし、図9では、図4と同様に、一部の領域E1において永久磁石7が除去された状態を示しており、実際には、各領域E1に永久磁石7が配置される。また、図9は、ロータ5Aに対して図4と同様の解析を行った結果を示している。
ロータ5Aにおいて、回転軸51の軸方向から見て、複数の永久磁石7のうち少なくとも一対の(図9では、各対の)永久磁石7の同極間には、上記同極の対向方向(ここでは、回転軸51の周方向)に並んだ複数(図9では3個)の低透磁率部P1が存在する。図9では、回転軸51の周方向において、永久磁石7が配置された領域と、永久磁石7が除去された領域E1とが、交互に存在するので、各永久磁石7と領域E1との間に複数(図9では3個)の低透磁率部P1が存在することになる。各低透磁率部P1の形状は、実施形態と同様である。各対の永久磁石7の同極間において、3個の低透磁率部P1は、同一方向(回転軸51の径方向)に沿って配置されている。
モータ1Aでは、各対の永久磁石7の間に複数の低透磁率部P1が存在するため、実施形態と比較して、各永久磁石7に印加される反磁界を低減させる効果が高い。具体的には、図6に示すように、点d1、d2間の全域に亘って、本変形例1のモータ1Aの磁束密度(B3で表す)は、実施形態のモータ1の磁束密度(B1で示す)と比較して小さい。また、本変形例1のモータ1Aの点d1、d2間の磁束密度の平均値は、比較例のモータの磁束密度(B2で表す)の点d1、d2間の平均値に対して、約39%低下した。
また、入力される正弦波電流の振幅が30[A]である場合の本変形例1のモータ1Aのトルクの時間平均は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルクの時間平均に対して、約1.2%低下した。入力される正弦波電流の振幅が10[A]である場合の本変形例1のモータ1Aのトルクの時間平均は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルクの時間平均に対して、約0.7%低下した。いずれの場合においても、複数の低透磁率部P1を設けることによるトルクの低下量は極僅かである。
このように、本変形例1でも、実施形態と同様に、モータ1Aのトルクの大きさを維持しつつ、各永久磁石7に印加される反磁界を低減させ、各永久磁石7が減磁する可能性を低減させることができる。
なお、各対の永久磁石7の同極間に設けられる低透磁率部P1の個数は、1個又は3個に限定されず、2個又は4個以上であってもよい。
(変形例2)
以下、変形例2に係るモータ1Bについて、図6、図8、図10を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図10は、モータ1Bのロータ5Bの形状を示している。ただし、図10では、図4と同様に、一部の領域E1において永久磁石7が除去された状態を示しており、実際には、各領域E1に永久磁石7が配置される。また、図10は、ロータ5Bに対して図4と同様の解析を行った結果を示している。
ロータ5Aにおいて、回転軸51の軸方向から見て、複数の永久磁石7のうち少なくとも一対の(図10では、各対の)永久磁石7の同極間には、回転軸51の径方向に並んだ複数(図10では4個)の低透磁率部P2が存在する。図10では、回転軸51の周方向において、永久磁石7が配置された領域と、永久磁石7が除去された領域E1とが、交互に存在するので、各永久磁石7と各領域E1との間に複数(図10では4個)の低透磁率部P2が存在することになる。各低透磁率部P2は、ロータコア6を回転軸51の軸方向に貫通する貫通孔である。各対の永久磁石7の同極間において、4個の低透磁率部P2により、ミシン目状の構造が形成されている。より詳細には、これら4個の低透磁率部P2は、ロータ本体62の内縁付近から外縁付近までに亘って並んで配置されている。また、4個の低透磁率部P2の延長線上にブリッジ部64が設けられている。
図6に示すように、点d1、d2間の少なくとも一部の範囲に亘って、本変形例2のモータ1Bの磁束密度(B4で表す)は、比較例のモータの磁束密度(B2で示す)と比較して小さい。また、本変形例2のモータ1Bの点d1、d2間の磁束密度の平均値は、比較例のモータの点d1、d2間の磁束密度の平均値に対して、約5%低下した。
また、図8に示すように、入力される正弦波電流の振幅が30[A]である場合の本変形例2のモータ1Bのトルク(T40で表す)は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルク(T20で表す)と略重なる。前者の時間平均は、0.890[Nm]であり、後者の時間平均は、0.897[Nm]である。すなわち、本変形例2のモータ1Bでは、複数の低透磁率部P2を設けることによりトルクが低下しているが、その低下量は極僅か(トルクの平均値で約0.7%)である。
図示は省略するが、入力される正弦波電流の振幅が10[A]である場合の本変形例2のモータ1Bのトルクの時間平均は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルクの時間平均に対して、約0.3%低下した。この場合も、複数の低透磁率部P2を設けることによるトルクの低下量は、極僅かである。
このように、本変形例2でも、実施形態と同様に、モータ1Bのトルクの大きさを維持しつつ、各永久磁石7に印加される反磁界を低減させ、各永久磁石7が減磁する可能性を低減させることができる。
(変形例3)
以下、変形例3に係るモータ1Cについて、図6、図11を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、モータ1Cのロータ5Cの形状を示している。ただし、図11では、図4と同様に、一部の領域E1において永久磁石7が除去された状態を示しており、実際には、各領域E1に永久磁石7が配置される。また、図11は、ロータ5Cに対して図4と同様の解析を行った結果を示している。
回転軸51の軸方向から見て、各低透磁率部P3の形状は、円状である。各低透磁率部P3は、ロータコア6を回転軸51の軸方向に貫通する貫通孔である。回転軸51の径方向において、各ブリッジ部64は低透磁率部P3に対向している。
図6に示すように、点d1、d2間の少なくとも一部の範囲に亘って、本変形例3のモータ1Cの磁束密度(B5で表す)は、比較例のモータの磁束密度(B2で示す)と比較して小さい。また、本変形例3のモータ1Cの点d1、d2間の磁束密度の平均値は、比較例のモータの点d1、d2間の磁束密度の平均値に対して、約2%低下した。
また、入力される正弦波電流の振幅が30[A]である場合の本変形例3のモータ1Cのトルクの時間平均は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルクの時間平均に対して、約0.7%低下した。入力される正弦波電流の振幅が10[A]である場合の本変形例3のモータ1Cのトルクの時間平均は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルクの時間平均に対して、約0.7%低下した。いずれの場合においても、複数の低透磁率部P3を設けることによるトルクの低下量は極僅かである。
このように、本変形例3でも、実施形態と同様に、モータ1Cのトルクの大きさを維持しつつ、各永久磁石7に印加される反磁界を低減させ、各永久磁石7が減磁する可能性を低減させることができる。
なお、各対の永久磁石7の同極間には、複数の低透磁率部P3が存在してもよい。
(変形例4)
以下、変形例4に係るモータ1Dについて、図6、図12を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
回転軸51の軸方向から見て、少なくとも1つの低透磁率部P4は、ロータ本体62の外縁と内縁とのうち少なくとも一方を回転軸51の径方向に貫いていてもよい。図12に示す本変形例4のモータ1Dのロータ5Dでは、回転軸51の軸方向から見て、少なくとも1つ(図12では、全て)の低透磁率部P4は、ロータ本体62の外縁を回転軸51の径方向に貫いている。すなわち、低透磁率部P4の形状は、実施形態の低透磁率部P1を、ロータコア6の径方向外側へ延長した形状である。
モータ1Dでは、各低透磁率部P4がロータ本体62の外縁を貫いているため、実施形態と比較して、各永久磁石7に印加される反磁界を低減させる効果が高い。具体的には、図6に示すように、少なくとも点d1付近において、本変形例4のモータ1Dの磁束密度(B6で表す)は、実施形態のモータ1の磁束密度(B1で示す)と比較して小さい。また、本変形例4のモータ1Dの点d1、d2間の磁束密度の平均値は、比較例のモータの点d1、d2間の磁束密度(B2で示す)の平均値に対して、約28%低下した。
また、入力される正弦波電流の振幅が30[A]である場合の本変形例4のモータ1Dのトルクの時間平均は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルクの時間平均に対して、約1.5%低下した。入力される正弦波電流の振幅が10[A]である場合の本変形例4のモータ1Dのトルクの時間平均は、同じ正弦波電流を入力する場合の比較例のモータのトルクの時間平均に対して、約1.3%低下した。いずれの場合においても、複数の低透磁率部P4を設けることによるトルクの低下量は極僅かである。
このように、本変形例4でも、実施形態と同様に、モータ1Dのトルクの大きさを維持しつつ、各永久磁石7に印加される反磁界を低減させ、各永久磁石7が減磁する可能性を低減させることができる。
回転軸51の軸方向から見て、少なくとも1つの低透磁率部P4は、ロータ本体62の内縁を回転軸51の径方向に貫いていてもよい。例えば、低透磁率部P4が複数の貫通部63のうち少なくとも1つにつながっている場合は、低透磁率部P4がロータ本体62の内縁を回転軸51の径方向に貫いていると言える。
(変形例5)
以下、変形例5に係るモータ1Eについて、図13を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図13では、適宜、各永久磁石7のN極を「N」と図示し、S極を「S」と図示している。ただし、図13における「N」及び「S」はそれぞれ、説明のために付した文字であって、実際に付されている文字ではない。
本変形例5のモータ1Eのロータ5Eは、回転軸51の径方向に沿って着磁された複数(図13では6個)の永久磁石7Aと、回転軸51の径方向と直交する方向に沿って着磁された複数(図13では6個)の永久磁石7Bと、を有している。複数の永久磁石7Aは、回転軸51を囲むように多角形状に配置されている。回転軸51の周方向において互いに隣り合う各対の永久磁石7Aの中心間には、1つの永久磁石7Bが配置されている。
ロータ5Eでは、複数(図13では12個)の永久磁石7の配列として、ハルバッハ配列が採用されている。すなわち、ロータコア6の径方向内側にS極が配置され径方向外側にN極が配置された状態での永久磁石7の向きを0度として、回転軸51の周方向に並んだ複数の永久磁石7の向きが順に0度、90度、180度、270度、0度、…………となるように配置されている。つまり、N極とS極とがロータコア6の径方向に並んでいる場合は、永久磁石7の向きは0度又は180度であり、回転軸51の軸方向から見てN極とS極とがロータコア6の径方向と直交する方向に並んでいる場合は、永久磁石7の向きは90度又は270度である。よって、各永久磁石7Aの向きは、0度又は180度であり、各永久磁石7Bの向きは、90度又は270度である。なお、永久磁石7の向きが誤差の範囲内でずれていてもよい。
ロータ5Eは、複数(図13では12個)の低透磁率部P5を有している。各低透磁率部P5は、ロータコア6を回転軸51の軸方向に貫通する貫通孔である。
回転軸51の軸方向から見て、複数の永久磁石7のうち少なくとも一対の永久磁石7の同極間には、低透磁率部P5が存在する。より詳細には、各永久磁石7Aと、この永久磁石7Aに対して回転軸51の周方向に隣り合う永久磁石7Bとの間に、低透磁率部P5が存在する。
本変形例5でも、実施形態と同様に、複数の永久磁石7の同極間に低透磁率部P5を設けたことにより、各永久磁石7に印加される反磁界を低減させ、各永久磁石7が減磁する可能性を低減させることができる。
(変形例6)
以下、変形例6に係るモータ1Fのロータ5Fについて、図14を用いて説明する。図14は、図1に示すロータ5のXIV-XIV断面に対応する、ロータ5Fの断面図である。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態と同様に、ロータ5Fのロータコア6は、貫通孔601を有する鋼板600を積層して形成されている。ただし、実施形態では複数の貫通孔601が回転軸51の軸方向(鋼板600の厚さ方向)において相互につながって、ロータコア6を貫通している(図2参照)のに対して、本変形例6では、各鋼板600の貫通孔601が他の鋼板600に覆われている。
ここで、鋼板600の厚さ方向を上下方向とする。ただし、この規定は、モータ1Fの使用方向を限定する趣旨ではない。上下に並んでいる複数の鋼板600を、上から順に第1の鋼板、第2の鋼板、……、と称する。各鋼板600には、複数の貫通孔601が形成されている。第1の鋼板の貫通孔601の下には、第2の鋼板の、貫通孔601以外の部分が配置されている。第1の鋼板の貫通孔601の更に下には、第3の鋼板の貫通孔601が配置されている。第1の鋼板の貫通孔601の更に下には、第4の鋼板の、貫通孔601以外の部分が配置されている。このように、上下方向において、貫通孔601と、貫通孔601以外の部位とが、交互に存在する。2つ以上の貫通孔601が上下につながっていないため、ロータコア6の強度を確保することができる。
実施形態と同様に、複数の貫通孔601の各々は、低透磁率部P6として機能する。つまり、各貫通孔601の透磁率(空気の透磁率)は、鋼板600のうち貫通孔601を除いた領域の透磁率よりも低い。
このように、ロータコア6は、少なくとも1つの低透磁率部P6として、少なくとも1つの空隙(貫通孔601)を含む。ここで言う「空隙」とは、ロータコア6に設けられる実体の無い部分であって、ロータコア6を貫通していない部分である。複数の鋼板600のうち下端の鋼板600を第Nの鋼板とすると、例えば、第1の鋼板及び第Nの鋼板の各々の貫通孔601は、ロータコア6に設けられた窪みであって、「空隙」に該当する。また、第2の鋼板~第(N-1)の鋼板に設けられた貫通孔601は、ロータコア6の内部に設けられた実体の無い部分であって、「空隙」に該当する。
複数の鋼板600は、厚さ方向から見て同じ形に形成されて、隣り合う鋼板600間で向き(角度)が異なるように積層されている。より詳細には、第1の鋼板に対して所定角度(45度)回転した向きで第2の鋼板が重ねられており、第2の鋼板に対して上記所定角度(45度)回転した向きで第3の鋼板が重ねられている。第4の鋼板以降も同様に、隣り合う鋼板に対して上記所定角度(45度)回転した向きで重ねられている。
なお、本変形例6では、上下方向において、貫通孔601と、貫通孔601以外の部位(以下、「実体部位」と称す)とが、交互に存在する。これに限定されず、1以上の第1の個数の貫通孔601と、1以上の第2の個数の実体部位とが、交互に存在してもよい。第1の個数と第2の個数とは、同じ個数であってもよいし、異なる個数であってもよい。また、このように複数の貫通孔601が上下方向において周期的に存在していることは必須ではなく、複数の貫通孔601が上下方向において非周期的に存在していてもよい。
また、各鋼板600には、貫通孔601に代えて、窪みが形成されていてもよい。窪みは、例えば、プレス加工により形成される。
また、少なくとも1つの鋼板600には、低透磁率部P6として、貫通孔に代えて、曲げ加工又は熱処理等の加工を施された部位が設けられていてもよい。これらの加工により、透磁率を低下させることができる。
また、本変形例6において、少なくとも1つの貫通孔601が鋼板600の外縁と内縁とのうち少なくとも一方を、回転軸51の径方向に貫いていてもよい。
(変形例7)
以下、変形例7に係るモータ1について説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本変形例7のロータコア6は、少なくとも1つの低透磁率部として、少なくとも1つの実体のある部位を含む。例えば、ロータコア6の全ての低透磁率部が、実体のある部位であってよい。
例えば、実施形態において低透磁率部P1としての貫通孔が設けられているのと同様に、本変形例7でも、ロータコア6に貫通孔が設けられている。さらに、この貫通孔に、ロータ本体62よりも透磁率が低い部材(低透磁率部)が挿入されている。これにより、実体のある低透磁率部が設けられている。
低透磁率部としては、非磁性材料を採用することが好ましい。低透磁率部は、例えば、合成樹脂、非磁性金属、又は、非磁性セラミック等により形成される。
なお、ロータ本体62と低透磁率部とが、一体成型により形成されてもよい。
また、低透磁率部を構成する材料は、ロータ本体62を構成する材料と同じであってもよい。例えば、ロータ本体62及び低透磁率部のもととなる基材の一部の部位に、プレス加工、曲げ加工又は熱処理等の加工を施すことにより、加工された部位の透磁率を低下させることができる。低透磁率部は、このように加工された部位であってもよい。変形例6のように各鋼板600に個別に加工がされてもよいし、積層された後の複数の鋼板600に対してまとめて加工がされてもよい。
(実施形態のその他の変形例)
以下、実施形態のその他の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。また、以下の変形例は、上述の各変形例と適宜組み合わせて実現されてもよい。また、上述の各変形例が適宜組み合わせて実現されてもよい。
実施形態等で示した永久磁石7、低透磁率部P1、ティース4及びコイル23等の個数は一例であって、これらの個数は適宜変更が可能である。
実施形態では、軸保持部61とロータ本体62とが複数のブリッジ部64を介してつながり、一体的に形成されているが、軸保持部61とロータ本体62とは、別々に形成された後に互いに結合されていてもよい。
外筒部22と複数のティース4とが、一体的に形成されていてもよい。また、複数のティース4と内筒部3とは、別々に形成された後に互いに結合されていてもよい。
ロータコア6には低透磁率部P1として、貫通孔に代えて、窪みが形成されていてもよい。窪みは、例えば、プレス加工により形成される。また、低透磁率部P1としての貫通孔の付近に、窪みが形成されてもよい。この場合、貫通孔と窪みとの両方が、低透磁率部として機能する。
ロータ本体62は、複数個の部材から構成されていてもよい。例えば、上記複数個の部材は、回転軸51の周方向に並んでいてもよい。また、上記複数個の部材の各々が、1又は複数の低透磁率部P1を含んでいてもよい。
複数の永久磁石7の配列は、スポーク状配列及びハルバッハ配列に限定されず、複数の永久磁石7の同極が対向又は隣り合うような様々な配列を適用できる。
モータ1は、ブラシレスモータに限定されず、ブラシモータであってもよい。
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
第1の態様に係るモータ(1、1A~1F)は、ロータ(5、5A~5F)と、ステータ(2)と、を備える。ロータ(5、5A~5F)は、回転軸(51)と、ロータコア(6)と、複数の永久磁石(7)と、を有する。ロータコア(6)は、回転軸(51)を保持する。複数の永久磁石(7)は、ロータコア(6)に保持されている。ステータ(2)は、ステータコア(20)と、複数のコイル(23)と、を有する。ステータコア(20)は、ロータ(5)の周囲に配置されている。複数のコイル(23)は、ステータコア(20)に巻かれている。ロータコア(6)は、ロータ本体(62)と、1又は複数の低透磁率部(P1~P6)と、を有する。1又は複数の低透磁率部(P1~P6)は、ロータ本体(62)よりも透磁率が低い。回転軸(51)の軸方向から見て、複数の永久磁石(7)のうち少なくとも一対の永久磁石(7)の同極間には、ロータ本体(62)及び低透磁率部(P1~P6)が存在する。
上記の構成によれば、少なくとも一対の永久磁石(7)の同極間では、低透磁率部(P1~P6)において磁界が弱まる。つまり、これらの永久磁石(7)に印加される反磁界を弱めることができる。よって、これらの永久磁石(7)が反磁界により減磁する可能性を低減できる。
また、第2の態様に係るモータ(1、1A~1D、1F)では、第1の態様において、回転軸(51)の軸方向から見て、複数の永久磁石(7)の各々の長手方向は、回転軸(51)の径方向に沿っており、複数の永久磁石(7)の各々の短手方向は、長手方向と直交する方向に沿っている。回転軸(51)の軸方向から見て、複数の永久磁石(7)は、回転軸(51)を中心として回転軸(51)の周方向に並んでおり、短手方向に着磁されている。
上記の構成によれば、回転軸(51)の軸方向から見て、ロータ(5、5A~5D、5F)の寸法を小さくしやすい。
また、第3の態様に係るモータ(1、1A、1B、1D、1F)では、第1又は2の態様において、回転軸(51)の軸方向から見て、少なくとも1つの低透磁率部(P1、P2、P4、P6)の長手方向は、回転軸(51)の径方向に沿っている。
上記の構成によれば、永久磁石(7)に印加される反磁界のうち、回転軸(51)の周方向に沿った向きの反磁界を弱めることができる。
また、第4の態様に係るモータ(1A)では、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、回転軸(51)の軸方向から見て、複数の永久磁石(7)のうち少なくとも一対の永久磁石(7)の同極間には、同極の対向方向に並んだ複数の低透磁率部(P1)が存在する。
上記の構成によれば、永久磁石(7)に印加される反磁界を更に弱めることができる。
また、第5の態様に係るモータ(1D)では、第1~4の態様のいずれか1つにおいて、回転軸(51)の軸方向から見て、少なくとも1つの低透磁率部(P4)は、ロータ本体(62)の外縁と内縁とのうち少なくとも一方を回転軸(51)の径方向に貫いている。
上記の構成によれば、永久磁石(7)に印加される反磁界を更に弱めることができる。
また、第6の態様に係るモータ(1F)では、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、ロータコア(6)は、少なくとも1つの低透磁率部(P6)として、少なくとも1つの空隙を含む。
上記の構成によれば、モータ(1F)を軽量化できる。
また、第7の態様に係るモータ(1、1A~1E)では、第1~6の態様のいずれか1つにおいて、ロータコア(6)は、少なくとも1つの低透磁率部(P1~P5)として、ロータコア(6)を回転軸(51)の軸方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を含む。
上記の構成によれば、モータ(1、1A~1E)を軽量化できる。また、モータ(1、1A~1E)の通気性を向上させ、これによりモータ(1、1A~1E)の温度上昇を抑制できる。
また、第8の態様に係るモータ(1)では、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、ロータコア(6)は、少なくとも1つの低透磁率部として、少なくとも1つの実体のある部位を含む。
上記の構成によれば、全ての低透磁率部が空隙又は貫通孔である場合と比較して、モータ(1)の強度を向上させることができる。
また、第9の態様に係るモータ(1、1A~1F)では、第1~8の態様のいずれか1つにおいて、ロータコア(6)は、複数の鋼板(600)を厚さ方向に積層して形成されている。
上記の構成によれば、モータ(1、1A~1F)の鉄損を低減できる。
また、第10の態様に係るモータ(1、1A~1F)では、第9の態様において、複数の鋼板(600)のうち少なくとも1つは、少なくとも1つの低透磁率部(P1~P6)として、少なくとも1つの貫通孔(601)を含む。
上記の構成によれば、モータ(1、1A~1F)を軽量化できる。
また、第11の態様に係るモータ(1、1A~1F)では、第1~10の態様のいずれか1つにおいて、回転軸(51)の周方向における低透磁率部(P1~P6)の長さは、複数の永久磁石(7)の各々の短手方向の長さよりも短い。
上記の構成によれば、低透磁率部(P1~P6)が更に長い場合と比較して、モータ(1、1A~1F)のトルクの低下を抑制できる。
第1の態様以外の構成については、モータ(1、1A~1F)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
また、第12の態様に係る電動工具(10)は、第1~11の態様のいずれか1つに係るモータ(1、1A~1F)と、電動工具本体(108)と、を備える。電動工具本体(108)は、モータ(1、1A~1F)を収容する。
上記の構成によれば、少なくとも一対の永久磁石(7)の同極間では、低透磁率部(P1~P6)において磁界が弱まる。つまり、これらの永久磁石(7)に印加される反磁界を弱めることができる。よって、これらの永久磁石(7)が反磁界により減磁する可能性を低減できる。