JP7281419B2 - フィルタ用濾材及びその製造方法 - Google Patents

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本開示は、液体又は空気中に含まれる汚染物質を除去するために使用されるフィルタ用濾材及びその製造方法に関する。特には、エアフィルタ用濾材の製造方法、更に詳しくは、半導体、液晶、食品、製薬、医療等の分野で用いるクリーンルーム及びクリーンベンチ、ビル空調用エアフィルタ、空気清浄機用途等に使用されるエアフィルタ用濾材及びその製造方法に関する。
空気中のサブミクロン又はミクロン単位のダスト粒子を捕集するためには、エアフィルタの捕集技術が用いられている。エアフィルタは、その対象とする粒子径又は捕集効率の違いによって、粗塵用フィルタ、中性能フィルタ又は高性能フィルタ(HEPAフィルタ、ULPAフィルタ)などに大別される。このうち、主にクリーンルーム用途などで使用される高性能フィルタとしては、ガラス繊維の湿式不織布からなるエアフィルタ用濾材が広く用いられている。
エアフィルタ用濾材の主要な要求特性としては、高い捕集効率を有しつつ、低い圧力損失を有することが挙げられる。圧力損失の高い濾材は、吸気ファンの運転負荷を高めて、電力消費量の上昇を引き起こす。エアフィルタ用濾材の低圧力損失・高捕集効率のレベルの指標値として、数1の式によって定義するPF値がある。このPF値が高いことは、エアフィルタ用濾材が低圧力損失・高捕集効率であることを示している。なお、粒子透過率[%]=100-捕集効率[%]である。
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エアフィルタ用濾材のPF値を向上させるために、本発明者らはフッ素系界面活性剤を付着させる方法(例えば、特許文献1を参照。)、及び硫酸エステル塩又はスルホン酸塩からなる界面活性剤を付着させる方法(例えば、特許文献2を参照。)等を提案している。
一方で、湿式不織布からなる濾材の製造方法として、1つの抄紙ワイヤー上で2種類の原料スラリーを層間が混合するように2層抄紙することによって、濾材特性、特に濾過寿命を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献3~5を参照)。
特開平10-156116号公報 特開2014-221456号公報 特表2012-516399号公報 特開2013-126626号公報 特表2015-520666号公報
特許文献1、2の方法のように、添加剤を使用する方法では、添加剤に含まれる特定の成分の揮発や溶出などを嫌う用途には適用できなかった。また、特許文献3~5では、例えば対象粒子径0.3μmにおいて16以上のような高いPF値を得る方法は明らかにされていない。
本開示は、界面活性剤のような添加剤を使用することなく、フィルタ用濾材の性能を向上させることができるフィルタ用濾材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、1つの抄紙ワイヤー上で異なる組成のガラス繊維スラリーを多層抄紙することによって、前記の課題が解決することを見出した。すなわち、本発明に係るフィルタ用濾材の製造方法は、1つの抄紙ワイヤー上で、前記抄紙ワイヤーに接しない上層原料と、前記抄紙ワイヤーに接する下層原料と、を湿式抄紙して得られるフィルタ用濾材の製造方法において、前記フィルタ用濾材は、ガラス繊維を主成分とし、前記上層原料が繊維径0.65μm以上1μm未満のガラス繊維を含み、前記下層原料が繊維径2.44μm以上のガラス繊維を含み、かつ、前記下層原料に含まれる全繊維質量のうち繊維径1μm未満のガラス繊維の含有量は0質量%以上2質量%以下であること特徴とする。
本発明に係るフィルタ用濾材の製造方法では、前記フィルタ用濾材の坪量は、30~300g/mである形態を包含する。
本発明に係るフィルタ用濾材の製造方法では、前記上層の坪量と前記下層の坪量との比(前記上層の坪量/前記下層の坪量)は、10/90~90/10であるであることが好ましい。上層と下層との坪量のバランスを適正化することによって、圧力損失をより小さくしつつ、捕集効率をより高めることができ、その結果、PF値などの性能をより向上させることができる。
本発明に係るフィルタ用濾材は、
少なくとも1層の上層と、1層の下層とを有するフィルタ用濾材において、前記フィルタ用濾材は、ガラス繊維を主成分とし、前記上層は、繊維径0.65μm以上1μm未満のガラス繊維を含み、抄紙ワイヤーの跡がついておらず、前記下層は、繊維径2.44μm以上のガラス繊維を含み、かつ、前記下層に含まれる全繊維質量のうち繊維径1μm未満のガラス繊維の含有量は0質量%以上2質量%以下であり、抄紙ワイヤーの跡がついていることを特徴とする。
本発明に係るフィルタ用濾材では、前記フィルタ用濾材がエアフィルタ用濾材であり、前記フィルタ用濾材の対象粒子径0.3μmにおけるPF値が16以上である形態を包含する。
本発明に係るフィルタ用濾材では、前記フィルタ用濾材全体に含まれる全繊維質量に対する繊維径1μm未満のガラス繊維の含有量が、10質量%を超え90質量%以下であることが好ましい。圧力損失をより小さくしつつ、捕集効率をより高めることができ、その結果、PF値などの性能をより向上させることができる。
本発明に係るフィルタ用濾材では、前記フィルタ用濾材の厚さは、0.1~1.5mmである形態を包含する。
本発明に係るフィルタ用濾材では、前記上層の厚さと前記下層の厚さとの比(前記上層の厚さ/前記下層の厚さ)は、10/90~90/10であることが好ましい。上層と下層との厚さのバランスを適正化することによって、圧力損失をより小さくしつつ、捕集効率をより高めることができ、その結果、PF値などの性能をより向上させることができる。
本開示によれば、界面活性剤のような添加剤を用いることなく、フィルタ用濾材の性能を向上させることができるフィルタ用濾材及びその製造方法を提供することができる。
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係るフィルタ用濾材の製造方法は、1つの抄紙ワイヤー上で、抄紙ワイヤーに接しない上層原料と、抄紙ワイヤーに接する下層原料と、を湿式抄紙して得られるフィルタ用濾材の製造方法において、フィルタ用濾材は、ガラス繊維を主成分とし、上層原料が繊維径1μm未満のガラス繊維を含み、下層原料が繊維径1μm以上のガラス繊維を含み、かつ、下層原料に含まれる全繊維質量のうち繊維径1μm未満のガラス繊維の含有量は0質量%以上2質量%以下である。
本実施形態に係るフィルタ用濾材は、主成分としてガラス繊維が使用される。ここで、主成分とは、フィルタ用濾材に含まれる全繊維質量のうち含有量が最も多い成分をいう。フィルタ用濾材に含まれる全繊維質量に対するガラス繊維の含有量は60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。ガラス繊維は、粒子捕集に有効な繊維径1μm未満の細い繊維を容易に得ることができるとともに、繊維自体が剛直なため、通気性を維持するために必要な空隙をつぶさずに確保することができる。これによって、低圧力損失で高捕集効率、すなわちPF値の高いエアフィルタ用濾材を得ることができる。本実施形態では、ガラス繊維は、繊維径1μm未満のガラス繊維(以降、サブミクロンガラス繊維ということもある。)と、繊維径1μm以上のガラス繊維(以降、ミクロンガラス繊維ということもある。)とを包含する。
本実施形態では、1つの抄紙ワイヤー上で2層以上からなるウェブを形成させる湿式抄紙の方法を用いる。本実施形態では、フィルタ用濾材の多層構造は、上層と下層とを有する。下層は、抄紙時に抄紙ワイヤーに接して形成される層である。上層は、抄紙時に抄紙ワイヤーに接することなく形成される層であり、1層であるか、又は2層以上であってもよい。この方法で製造された湿式不織布は、別々の抄紙ワイヤーで形成されたウェブを重ね合わせる方法とは異なり、上層原料は抄紙ワイヤーに接することなくウェブ形成される。この方法を実施可能な抄紙機としては、例えば、Voith GmbH & Co.KGaA社製のHydroFormerがある。このような抄紙機では、上層原料のヘッドボックスと下層原料のヘッドボックスとから、移動する抄紙ワイヤー上に下層原料のスラリーが上層原料のスラリーよりも先に抄紙ワイヤーに到達するようにして各原料スラリーを送ることによって、下層上に上層を堆積させてウェブを形成させる。また、少量の製造であれば、例えば、熊谷理機社製の実験用配向性抄紙機を用いることができる。このような抄紙機では、回転ドラムの内側に抄紙ワイヤーを設置して、原料スラリーを抄紙ワイヤー上に順次積層させてウェブを形成させる。
本実施形態に係るフィルタ用濾材では、上層と下層とを次のようにして判別する。濾材の表面を目視で観察し、抄紙ワイヤーの跡がついていない側が上層であり、抄紙ワイヤーの跡がついている側が下層である。
本実施形態は、粒子捕集に有効な繊維径1μm未満のサブミクロンガラス繊維を上層原料に含み、サブミクロンガラス繊維を下層原料に含まないか、又はサブミクロンガラス繊維を下層原料に含んだとしても含有量を2質量%以下のように少量に制限するようにして湿式抄紙する。湿式不織布では下層側(抄紙ワイヤー側)の方が繊維の充填密度が高いため、下層原料に多くのサブミクロンガラス繊維が含まれると、サブミクロンガラス繊維の分布が密となり、圧力損失の上昇とPF値の低下を引き起こす。そこで、下層原料にミクロンガラス繊維を含み、かつ、サブミクロンガラス繊維を含まないか、又は下層原料全繊維質量のうちサブミクロンガラス繊維の含有量を2質量%以下の少量に制限することで、下層においてサブミクロンガラス繊維の分布を疎又は無とすることができる。その結果、ガラス繊維の充填密度が下層で高くなったとしてもガラス繊維間の隙間が確保されているので、圧力の上昇を抑制し、高PF値のフィルタ用濾材を得ることができる。一方で、1層抄紙でサブミクロンガラス繊維を層全体にほぼ均一に分布させると、特にサブミクロンガラスの配合量が少ない場合においては、サブミクロンガラス繊維の分布が粗となり、遮り及び慣性衝突の捕集機構が働きにくくなり、捕集効率の低下とPF値の低下を引き起こす。また、1層抄紙でサブミクロンガラスの配合量が多い場合においては、抄紙ワイヤーに接した側においてサブミクロンガラス繊維の分布が密となり、PF値の低下を招く。
本実施形態において用いられる繊維径1μm未満のサブミクロン繊維は、ガラス繊維である。サブミクロン繊維としては、ガラス繊維の他にも、解繊処理により高度にフィブリル化された有機繊維、例えば、セルロース繊維、再生セルロース繊維、アラミド繊維若しくはアクリル繊維等、または特殊な口金を用いて紡糸された有機繊維、例えば、ポリエステル繊維等が知られているが、これらのサブミクロン有機繊維は、繊維自体の剛性が低いために、湿式抄紙されたウェブ中において繊維間の空隙を維持できずに、圧力損失の上昇とPF値の低下を引き起こす。
本実施形態において用いられる上層原料に含まれるサブミクロンガラス繊維の繊維径は、0.7μm未満であることがより好ましい。繊維径をより細くすることにより、PF値をより高くすることができる。サブミクロンガラス繊維の繊維径の下限は特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。上層原料に含まれる全繊維質量のうちサブミクロンガラス繊維の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。また、上層原料に含まれる全繊維質量のうちサブミクロンガラス繊維の含有量の上限は、特に限定されないが、100質量%以下であることが好ましい。
本実施形態においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上層原料にサブミクロンガラス繊維以外の繊維又は添加剤を含有させてもよい。サブミクロンガラス繊維以外の繊維又は添加剤は、例えば、バインダー繊維やバインダー樹脂である。バインダー繊維としては、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維などの有機繊維があり、原料スラリーに混合される。ただし、前記の通り繊維径1μm未満のサブミクロン有機繊維はバインダー繊維として使用しない。また、上層原料には、繊維径1μm以上のミクロンガラス繊維を含有させてもよい。バインダー樹脂としては、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリ(スチレン-アクリル酸エステル)樹脂、ポリ(スチレン-ブタジエン)樹脂等があり、原料スラリーに混合されるか、またはウェブ形成後に含浸処理等により付与される。また、必要に応じて、撥水剤、耐水化剤等の薬剤を適宜付与することができる。
本実施形態において用いられる下層原料に含まれるミクロンガラス繊維の繊維径は、1.4μm以上であることがより好ましい。ミクロンガラス繊維の繊維径の上限は特に限定されないが、10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。下層原料に含まれる全繊維質量のうちミクロンガラス繊維の含有量は、90質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。また、下層原料に含まれる全繊維質量のうちミクロンガラス繊維の含有量の上限は、特に限定されないが、100質量%以下であることが好ましい。
下層原料は、サブミクロンガラス繊維を含まないことが好ましい。もし、下層原料にサブミクロンガラス繊維を含ませる場合、下層原料に含まれる全繊維質量のうち繊維径1μm未満のサブミクロンガラス繊維の含有量は、2質量%以下とする。下層原料に含まれる全繊維質量のうち繊維径1μm未満のサブミクロンガラス繊維の含有量は、1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態においては、本発明の効果を損なわない範囲で、下層原料にミクロンガラス繊維以外の繊維又は添加剤を含有させてもよい。ミクロンガラス繊維以外の繊維又は添加剤は、特に限定されず、例えば、上層原料に含有させてもよいミクロンガラス繊維以外の繊維又は添加剤として列挙したものである。
本実施形態に係るフィルタ用濾材の製造方法では、フィルタ用濾材の坪量は、30~300g/mである形態を包含する。フィルタ用濾材の坪量は、40~150g/mであることがより好ましい。フィルタ用濾材の坪量は、例えば、抄紙機において繊維投入量を調整することで設定した値である。また、フィルタ用濾材坪量は、JIS P 8124:1998「紙及び板紙-坪量測定方法」に準じて測定してもよい。
本実施形態に係るフィルタ用濾材の製造方法では、上層の坪量と下層の坪量との比(上層の坪量/下層の坪量)は、10/90~90/10であることが好ましい。上層の坪量/下層の坪量が90/10を超えると、フィルタ用濾材に占める下層の割合が少なくなりすぎて、上層のうち抄紙ワイヤーに近い領域においてサブミクロンガラス繊維が密な領域が生じるおそれがある。その結果、PF値が低下するおそれがある。上層の坪量/下層の坪量が10/90未満では、フィルタ用濾材に占める上層の割合が少なくなりすぎて、サブミクロンガラス繊維の分布が粗となり、遮り及び慣性衝突の捕集機構が働きにくくなり、捕集効率の低下とPF値の低下を引き起こす。上層の坪量/下層の坪量は20/80~80/20であることがより好ましい。上層の坪量と下層の坪量との比は、例えば、抄紙機において繊維投入量を調整することで設定した値を基に求めることができる。また、上層の坪量と下層の坪量との比は、次の方法で求めてもよい。抄紙ワイヤーの跡がついていない側の上層と、抄紙ワイヤーの跡がついている側の下層を、各層に含まれる繊維の繊維径が同様になるように層間で剥がして、各層の坪量を測定する。なお、各層に含まれる繊維の繊維径の確認は、光学顕微鏡または電子顕微鏡等を用いた拡大観察により行う。
本実施形態に係るフィルタ用濾材は、少なくとも1層の上層と、1層の下層とを有するフィルタ用濾材において、フィルタ用濾材は、ガラス繊維を主成分とし、上層は、繊維径1μm未満のガラス繊維を含み、下層は、繊維径1μm以上のガラス繊維を含み、かつ、下層に含まれる全繊維質量のうち繊維径1μm未満のガラス繊維の含有量は0質量%以上2質量%以下である。
本実施形態に係るフィルタ用濾材では、フィルタ用濾材全体に含まれる全繊維質量に対する繊維径1μm未満のガラス繊維の含有量が、10質量%を超え90質量%以下であることが好ましい。フィルタ用濾材全体に含まれる全繊維質量に対するサブミクロンガラス繊維の含有量が、10質量%未満では、サブミクロンガラス繊維の分布密度が不足して、遮り及び慣性衝突の捕集機構が働きにくくなり、捕集効率の低下とPF値の低下を引き起こす場合がある。フィルタ用濾材全体に含まれる全繊維質量に対するサブミクロンガラス繊維の含有量が、90質量%を超えると、サブミクロンガラス繊維の分布密度が高まり、PF値の低下を招く場合がある。フィルタ用濾材全体に含まれる全繊維質量に対するサブミクロンガラス繊維の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るフィルタ用濾材では、フィルタ用濾材の厚さは、0.10~1.50mmである形態を包含する。フィルタ用濾材の厚さは、0.15~0.60mmであることがより好ましい。フィルタ用濾材の厚さは、JIS P 8118:1998「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準じて測定した値である。
本実施形態に係るフィルタ用濾材では、上層の厚さと下層の厚さとの比(上層の厚さ/下層の厚さ)は、10/90~90/10であることが好ましい。上層の厚さ/下層の厚さが90/10を超えると、フィルタ用濾材に占める下層の割合が少なくなりすぎて、上層のうち抄紙ワイヤーに近い領域においてサブミクロンガラス繊維が密な領域が生じるおそれがある。その結果、PF値が低下するおそれがある。上層の厚さ/下層の厚さが10/90未満では、フィルタ用濾材に占める上層の割合が少なくなりすぎて、サブミクロンガラス繊維の分布が粗となり、遮り及び慣性衝突の捕集機構が働きにくくなり、捕集効率の低下とPF値の低下を引き起こす。上層の厚さ/下層の厚さは20/80~80/20であることがより好ましい。上層の厚さと下層の厚さとの比は、例えば次の方法で測定する。濾材を厚み方向に切断して断面を作製し、この断面について光学顕微鏡または電子顕微鏡等を用いた拡大写真撮影を行い、この写真より上層と下層の厚さの比率を測定する。なお、上層と下層が混合されて境界が不明確な場合は、混合層の厚さの半分の位置を境界とする。
フィルタ用濾材の密度は、0.15~0.35g/cmであることが好ましく、0.2~0.3g/cmであることがより好ましい。フィルタ用濾材の密度が0.15g/cm未満では、繊維間の結合が不十分となり、使用中に繊維の脱落が発生する場合がある。フィルタ用濾材の密度が0.35g/cmを超えると、圧力損失の上昇とPF値の低下を引き起こす場合がある。フィルタ用濾材の密度は、JIS P 8118:1998「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準じて測定した値である。
フィルタ用濾材は、例えば、エアフィルタ用濾材、液体濾過用濾材、油水分離用濾材である。このうち、エアフィルタ用濾材であることが好ましい。エアフィルタ用濾材は、例えば、粗塵用フィルタ、中性能フィルタ、又はHEPAフィルタ若しくはULPAフィルタなどの高性能フィルタである。
本実施形態に係るフィルタ用濾材では、フィルタ用濾材がエアフィルタ用濾材であり、フィルタ用濾材の対象粒子径0.3μmにおけるPF値が16以上である形態を包含する。PF値は16.5以上であることがより好ましい。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
以下の実施例及び比較例においては、フィルタ用濾材の坪量が70g/m、圧力損失が約180Paとなるように繊維投入量を調整して濾材を作製した。そのため、圧力損失が高い平均繊維径1μm未満のサブミクロンガラス繊維と圧力損失が低い平均繊維径1μm以上のミクロンガラス繊維との濾材中の存在比率は、各サンプルで異なっている。
参考例1>
上層原料として平均繊維径0.26μmのガラス繊維(#90-475、Johns Manville Corp.社製)と、下層原料として平均繊維径2.44μmのガラス繊維(B-26-R、Lauscha Fiber International GmbH製)とについて、それぞれpH3.0の硫酸酸性水中でパルパーを用いて離解し、各々の原料スラリーを得た。次いで、乾燥後の坪量が、下層として平均繊維径2.44μmのガラス繊維からなる層が60g/m、上層として平均繊維径0.26μmのガラス繊維からなる層が10g/mとなるように、実験用配向性抄紙機(熊谷理機工業社製)を用いて、各原料スラリーを下層、上層の順に抄紙した後、ロータリードライヤーを用いて乾燥し、坪量70g/mのフィルタ用濾材を得た。
<実施例2>
上層原料として平均繊維径0.65μmのガラス繊維(B-06-F、Lauscha Fiber International GmbH社製)と、下層原料として平均繊維径2.44μmのガラス繊維(B-26-R、Lauscha Fiber International GmbH製)とについて、それぞれpH3.0の硫酸酸性水中でパルパーを用いて離解し、各々の原料スラリーを得た。次いで、乾燥後の坪量が、下層として平均繊維径2.44μmのガラス繊維からなる層が32g/m、上層として平均繊維径0.65μmのガラス繊維からなる層が38g/mとなるようにした以外は参考例1と同様にして、坪量70g/mのフィルタ用濾材を得た。
<実施例3>
上層原料として平均繊維径0.80μmのガラス繊維(B-08-F、Lauscha Fiber International GmbH社製)と、下層原料として平均繊維径2.44μmのガラス繊維(B-26-R、Lauscha Fiber International GmbH社製)とについて、それぞれpH3.0の硫酸酸性水中でパルパーを用いて離解し、各々の原料スラリーを得た。次いで、乾燥後の坪量が、下層として平均繊維径2.44μmのガラス繊維からなる層が7g/m、上層として平均繊維径0.80μmのガラス繊維からなる層が63g/mとなるようにした以外は参考例1と同様にして、坪量70g/mのフィルタ用濾材を得た。
<比較例1>
参考例1において上層原料と下層原料とを入れ替えて、乾燥後の坪量が、下層として平均繊維径0.26μmのガラス繊維からなる層が7g/m、上層として平均繊維径2.44μmのガラス繊維からなる層が63g/mとなるようにした以外は参考例1と同様にして、坪量70g/mのフィルタ用濾材を得た。
<比較例2>
参考例1において上層原料して用いた平均繊維径0.26μmのガラス繊維のスラリーと参考例1において下層原料して用いた平均繊維径2.44μmのガラス繊維のスラリーとを、質量比率で0.26μmのガラス繊維/2.44μmのガラス繊維=19/81となるように各原料のスラリーを混合して混合スラリーを得た。次いで、実験用配向性抄紙機を用いて、乾燥後の坪量が70g/mとなるように混合スラリーを抄紙した後、ロータリードライヤーを用いて乾燥し、坪量70g/mのフィルタ用濾材を得た。
実施例及び比較例において得られた濾材の評価は、以下に示す方法で行った。
フィルタ用濾材、上層又は下層の坪量は、それぞれ、抄紙機において繊維投入量を調整することで設定した値である。
フィルタ用濾材全体の厚さ及び密度は、JIS P 8118:1998「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準じて測定した。なお、加圧面間の圧力は50kPaとした。上層の厚さ及び密度、下層の厚さ及び密度は、次のように測定した。濾材を厚み方向に切断して断面を作製し、この断面について光学顕微鏡または電子顕微鏡等を用いた拡大写真撮影を行い、この写真より上層と下層の厚さの比率を測定し、この比率を濾材全体の厚さに乗じて各層の厚さとし、この厚さより各層の密度を計算した。なお、上層と下層が混合されて境界が不明確な場合は、混合層の厚さの半分の位置を境界とした。本実施例及び比較例においては、電子顕微鏡を用い、倍率150倍で写真撮影を行った。
圧力損失は、有効面積100cmの濾材に、空気を面風速5.3cm/秒で通過させた時の差圧を、マノメーターを用いて測定した。
粒子透過率は、ラスキンノズルで発生させた多分散ポリアルファオレフィン粒子(PAO)(Durasyn164、BP Amco Chemical Co.社製)を含む空気を、有効面積100cmの濾材に面風速5.3cm/秒で通風した時の上流及び下流のPAO粒子の個数をレーザーパーティクルカウンター(Lasair Model1001、Particle Measuring Systems,Inc.社製)を用いて測定し、個数から計算した百分率として求めた。測定においては、濾材のより粗な層が上流に配置されるように、すなわち、参考例1、実施例2~3は下層側、比較例2は上層側、比較例3は抄紙ワイヤーに接触せずに形成された面側を上流側とした。対象粒子径は0.3μmとし、粒子径範囲0.2~0.3μm及び0.3~0.4μmにおける粒子透過率の幾何平均値を用いた。なお、捕集効率[%]=100-粒子透過率[%]である。
PF値は、圧力損失及び粒子透過率の値から、数1に示す式を用いて計算した。対象粒子径は0.3μmとした。このPF値が高いほど、エアフィルタ用濾材が高捕集効率かつ低圧力損失であると言える。PF値が16以上ある場合を実用レベル、PF値が16未満の場合を実用不可レベルとした。
実施例及び比較例の評価結果を、表1に示した。表1において、「濾材中ガラス繊維存在比率」は、フィルタ用濾材全体におけるサブミクロンガラス繊維とミクロンガラス繊維との存在比率であり、上段にサブミクロンガラス繊維の平均繊維径(単位:μm)/ミクロンガラス繊維の平均繊維径(単位:μm)を示し、下段にサブミクロンガラス繊維の存在比率(単位:質量%)/ミクロンガラス繊維の存在比率(単位:質量%)を示した。
表1の結果より、平均繊維径0.26μmのサブミクロンガラス繊維を上層とした参考例1、実施例2~3は、上層側原料による圧縮と、抄紙ワイヤーからの脱水にともなう圧縮をともに受けにくいため、サブミクロンガラス繊維の分布が適度に密となったことにより、16以上という十分に高いPF値が得られた。実施例で得られたフィルタ用濾材は、特にエアフィルタ用濾材として好適であることが確認できた。
サブミクロンガラス繊維を下層とした比較例1は、サブミクロンガラス繊維の分布が密になるために圧力損失が高くなり、圧力損失調整のために、粒子捕集に有効なサブミクロンガラス繊維を減量した結果、参考例1に比べて粒子透過率が上昇してPF値が低下した。
1層で抄紙した比較例2は、サブミクロンガラス繊維の分布が粗になるために圧力損失が低くなり、圧力損失調整のために、粒子捕集に有効なサブミクロン繊維を増量したものの、分布が粗であるために遮り及び慣性衝突の捕集機構が働きにくくなり、参考例1に比べて粒子透過率が上昇してPF値が低下した。
Figure 0007281419000002

Claims (8)

  1. 1つの抄紙ワイヤー上で、前記抄紙ワイヤーに接しない上層原料と、前記抄紙ワイヤーに接する下層原料と、を湿式抄紙して得られるフィルタ用濾材の製造方法において、
    前記フィルタ用濾材は、ガラス繊維を主成分とし、
    前記上層原料が繊維径0.65μm以上1μm未満のガラス繊維を含み、
    前記下層原料が繊維径2.44μm以上のガラス繊維を含み、かつ、前記下層原料に含まれる全繊維質量のうち繊維径1μm未満のガラス繊維の含有量は0質量%以上2質量%以下であること特徴とするフィルタ用濾材の製造方法。
  2. 前記フィルタ用濾材の坪量は、30~300g/mであることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ用濾材の製造方法。
  3. 前記上層の坪量と前記下層の坪量との比(前記上層の坪量/前記下層の坪量)は、10/90~90/10であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ用濾材の製造方法。
  4. 少なくとも1層の上層と、1層の下層とを有するフィルタ用濾材において、
    前記フィルタ用濾材は、ガラス繊維を主成分とし、
    前記上層は、繊維径0.65μm以上1μm未満のガラス繊維を含み、抄紙ワイヤーの跡がついておらず、
    前記下層は、繊維径2.44μm以上のガラス繊維を含み、かつ、前記下層に含まれる全繊維質量のうち繊維径1μm未満のガラス繊維の含有量は0質量%以上2質量%以下であり、抄紙ワイヤーの跡がついていることを特徴とするフィルタ用濾材。
  5. 前記フィルタ用濾材がエアフィルタ用濾材であり、
    前記フィルタ用濾材の対象粒子径0.3μmにおけるPF値が16以上であることを特徴とする請求項4に記載のフィルタ用濾材。
  6. 前記フィルタ用濾材全体に含まれる全繊維質量に対する繊維径1μm未満のガラス繊維の含有量が、10質量%を超え90質量%以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載のフィルタ用濾材。
  7. 前記フィルタ用濾材の厚さは、0.1~1.5mmであることを特徴とする請求項4~6のいずれか一つに記載のフィルタ用濾材。
  8. 前記上層の厚さと前記下層の厚さとの比(前記上層の厚さ/前記下層の厚さ)は、10/90~90/10であることを特徴とする請求項4~7のいずれか一つに記載のフィルタ用濾材。
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