JP7281160B2 - 骨固定システム - Google Patents

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Description

本発明は骨固定システムに関する。
大腿骨などの管状骨の顆部の骨折を固定するための骨固定システムとして、骨の表面に当接するワッシャを備えたロッドや骨ねじを用いたものが知られている。例えば、上記ワッシャに係合するヘッド部及び雄ねじを設けたロッド部を備えたボルトと、骨の表面に当接するワッシャに係合するとともに上記雄ねじと螺合可能な雌ねじを備えたナットとを具備するものがある(例えば、以下の特許文献1参照)。また、他の骨固定システムとして、骨の表面に当接するワッシャに係合するヘッド部を備えた骨ねじがある(例えば、以下の特許文献2及び3参照)。
上記の各骨固定システムでは、骨をしっかりと固定するために、ボルトや骨ねじのヘッド部で上記ワッシャを骨の表面に押し付けた状態としている。このような骨固定システムでは、骨の表面に対応して姿勢変更可能な態様で上記ヘッド部をワッシャに係合保持させることにより、骨に対する適合性を確保しながら、手術時の取扱性を向上させている。
特開2002-113012号公報 米国特許公開2016/0095639号明細書 特表2018-507754号公報
ところで、上記骨固定システムにおいては、ワッシャが弾性変形や塑性変形することによりボルトや骨ねじのヘッド部に連結されるので、装着作業に強い変形力が必要な場合には、その分確実に装着することができ、十分な保持力を得ることができるものの、ワッシャの円滑な角度変更動作が損なわれたり、角度変更範囲が制限されたりする虞があるという問題がある。
一方、上記骨固定システムにおいて、ヘッド部に対するワッシャの装着作業に必要な変形力を軽減すると、ワッシャ装着後のヘッド部に対する保持力が不十分になることにより、ワッシャが外れて手術時に支障が出たり、ボルトや骨ねじの抜去時に骨に固着したワッシャが除去できなくなったりする虞がある。
そこで、本発明は上記問題を解決するものであり、その課題は、骨固定システムにおいて、インプラント本体のヘッド部にワッシャ等の骨係合体を適切かつ確実に装着することができる取付構造を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の骨固定システムは、ヘッド部を備え、骨に導入されるインプラント本体と、該インプラント本体の前記ヘッド部に角度変更可能に保持された状態で取り付けられる骨係合体とを具備する。このとき、前記骨係合体は、前記ヘッド部を収容する開口部を備えるとともに、前記ヘッド部に対して第一の側に抜け止めされる構造を備える係合本体部と、該係合本体部に装着されることにより、前記ヘッド部に対して前記骨係合体が前記第一の側とは逆の第二の側に離反しないように保持する、前記開口部の内面に沿って周方向に延在する保持構造を備える係止部材と、を有する。ここで、上記第一の側は、前記ヘッド部から前記インプラント本体が延在する側とは逆側であることが好ましい。
本発明において、前記ヘッド部は、軸線方向に沿って凸状(好ましくは凸曲線状)の輪郭を備える支持外面部を有し、前記係合本体部の前記開口部に臨む内面は、前記支持外面部に対面可能で、軸線方向に沿って凹状(好ましくは凹曲線状)の輪郭を備える収容内面部を有することが好ましい。この場合において、前記係止部材は、前記支持外面部に対面可能で、軸線方向に沿って凹状(好ましくは凹曲線状)の輪郭を備える対向内面部を有することが好ましい。このときにはさらに、前記収容内面部と対向内面部は、共に前記支持外面部に対面したとき、同時に前記支持外面部に整合可能な内面形状をそれぞれ備えることが望ましい。また、前記支持外面部は球面状の外面形状を備え、前記収容内面部及び前記対向内面部は球面状の内面形状を備えることが望ましい。
本発明において、前記係止部材はリング状に構成された係止リングであることが好ましい。特に、前記係止リングは、少なくとも一か所に切り欠き部を備えるCリング状の弾性体で構成されることが望ましい。また、前記係止リングは、前記係合本体部の前記開口部に臨む内面に設けられた係止溝に係合し、少なくとも外力を受けない状態では前記係止溝から前記開口部内に突出する前記保持構造となる内周部分を備え、前記ヘッド部から受ける外力により当該内周部分の少なくとも一部が前記係止溝の内部に収納可能に構成されることが望ましい。
本発明において、前記係止リングは、前記骨係合体が前記ヘッド部に対して前記第二の側から接近するときには、前記ヘッド部から受ける軸線方向の力を半径方向に変換して前記係止溝内に退避することにより前記ヘッド部の最大寸法領域を内側に受け入れ若しくは通過させるとともに、前記最大寸法領域を内側に受け入れ若しくは通過させた状態で前記骨係合体が前記ヘッド部に対して前記第二の側へ移動するときには、前記ヘッド部から受ける軸線方向の力を前記係止溝で受け止めることにより前記第一の側への前記ヘッド部の脱出を妨げることが好ましい。この場合において、前記係止溝は、前記係止リングを収容したときに前記ヘッド部の前記最大寸法領域を通過させることができるように深く形成された深溝部を前記第二の側に備え、前記係止リングを収容したときに前記ヘッド部の前記最大寸法領域を通過させることのできないように浅く形成された浅溝部を前記第一の側に備えることが望ましい。
本発明において、前記ヘッド部の軸線が前記開口部の開口面と直交する方向から傾斜した姿勢では、前記ヘッド部の前記軸線の周りの片側の角度領域が前記開口部内に配置されたままで、前記ヘッド部の前記片側とは反対側の角度領域が前記係止部材を前記第一の側に越えて離れることが好ましい。
本発明において、前記係止部材は、前記開口部に臨む内面のうちの軸線が開口面と直交する姿勢にある前記ヘッド部の最大寸法領域よりも前記第一の側に装着されることが好ましい。
本発明において、前記係合本体部は、前記ヘッド部を収容する前記開口部を形成する内周構成部と、該内周構成部に対して着脱可能に取り付けられる外周構成部とを有することが好ましい。この場合において、前記外周構成部は、自身の弾性変形により前記内周構成部に対して着脱可能に構成されることが好ましい。このとき、前記外周構成部は、周方向の一部に切り欠き部を有する弾性材料により構成される場合がある。
本発明において、前記係合部材は、前記ヘッド部に対して、前記開口部の軸線周りに回転可能に取り付けられることが望ましい。
本発明において、インプラント本体は、医療用のボルトやナット、骨ねじ、骨釘などが挙げられる。
この発明によれば、骨固定システムにおいて、インプラント本体のヘッド部にワッシャ等の骨係合体を適切かつ確実に装着することができる取付構造を提供することができる。
骨固定システムの第1実施形態の構成を示す端面図(a)、側面図(b)、断面図(c)及び骨係合体の角度を傾斜させた状態を示す部分断面図(d)である。 骨固定システムの第2実施形態における骨係合体の構成を示す断面図(a)、骨係合体の基準姿勢を示す断面図(b)、及び、骨係合体の角度を傾斜させた状態を示す断面図(c)である。 骨固定システムの第3実施形態の構成を示す側面図(a)、端面図(b)、断面図(c)及び部分拡大断面図(d)である。 第3実施形態の骨係合体の装着時及び角度変更時の動作態様を示す説明図(a)~(e)である。 骨固定システムの第4実施形態の構成を示す拡大断面図(a)、弾性係合体の拡大した断面図(b)及び端面図(c)である。
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1を参照して、本発明に係る骨固定システムの第1実施形態の構成について説明する。本実施形態の骨固定システム10は、図1に示すように、医療用のボルトを構成するインプラント本体11と、このインプラント本体11のヘッド部11aに装着された骨係合体12とを有する。これらは基本的に医療用チタン合金などの金属材料で構成される。
図示例では、インプラント本体11は、一方の端部に形成されたヘッド部11aと、このヘッド部11aから延在する軸部11bとを備える。軸部11bには、ヘッド部11aの側から延在側(図示右側)へ向けて漸次縮径された円錐状のネック部に続き、雄ねじ11t及び複数の環状溝が軸線11xに沿って配列されてなる係合構造11gが順次に形成される。この係合構造11gの端部がインプラント本体11の他方の端部を構成する。この実施形態では、図示例の場合、インプラント本体11は、骨に装着される医療用のボルトである。ヘッド部11aの端面には回転操作用の工具が適用可能な工具係合部(六角穴)11dが設けられる。この工具係合部11dの奥部には、ねじ穴11eが形成されている。これらの工具係合部11dやねじ穴11eは、インプラント本体11を軸線11xに沿って貫通する軸孔の一部を構成している。
骨係合体12は、開口部12pを形成する係合本体部12aと、この係合本体部12aの開口部12pに臨む内面に装着された係止リング12bとを備える。係合本体部12aは、開口部12pの周囲に構成される内周構成部12iと、この内周構成部12iの周囲を取り巻くように装着された外周構成部12oとを備える。係合本体部12aは、内周構成部12iの内側部分が開口部12pを取り巻く環状の基枠部となっており、内周構成部12iの外側部分と、上記外周構成部12oが基枠部からフランジ状に張り出した骨係合板を構成する。外周構成部12oは、周方向の一か所に切り欠き部12osを備えたCリング状の弾性体であり、内周構成部12iの外側に弾性的に装着される。内周構成部12iと外周構成部12oには、軸線方向に凹凸状とされた装着面12sで相互に嵌合した状態で密着することにより、整形外科のインプラントとして十分な取り付け剛性が与えられる。
係止リング12bは、周方向の一か所に切り欠き部を備えたCリング状の弾性体で構成される。図示例では、係止リング12bは断面形状が円形の医療用チタン合金の線材が環状に湾曲された構造を有するリングばねである。上記係合本体部12aの内周面には、周方向に延在する係止溝12cが形成される。この係止溝12cは、係合本体部12aの開口部12pに臨む内面において軸線11xの周りの周方向に形成される環状溝である。図示例では、係止溝12cも係止リング12bの内側の断面形状に合致した溝形状(図示例では半円状の溝断面)を備える。係止リング12bは、図1(c)に示すように、インプラント本体11の軸線11xが係合本体部12aの開口部12pの開口面と直交する姿勢であれば、開口部12pの内部に収容されたヘッド部12aの周囲にある係止溝12cに端縁側(図示左側)から装着することができるようになっている。ここで、係止溝12cは係止リング12bの断面のうちの一部の外周部分のみを収容するように構成される。これにより、係止リング12bが係止溝12cに装着された状態で、係止リング12bの内周部分は保持構造として係合本体部11aの内面から突出した状態となる。
骨係合体12は、骨の表面に係合可能となるように形成されたワッシャとして機能する。この骨係合体12は、ヘッド部11aの外面上に角度自在に装着される。また、骨係合体12は、ヘッド部11a(インプラント本体11)に対して軸線11xの周りに回転可能(回転自在)に取り付けられる。図示例の場合、図1(d)に示すように、骨係合体12の開口部12pの開口面に対して傾斜角度θが25~28度程度になる傾斜状態が実現可能である。
ヘッド部11aの外面は、骨係合体12を内側から支持する支持外面部である。この支持外面部は、端縁に向けて漸次縮径するテーパ状の端縁側外面部11aと、この端縁側外面部11aの最大外径部に繋がりほぼ円筒状に構成される中央外面部11aと、この中央外面部11aの軸部11bに繋がる延在側に軸線11xの方向に凸曲線状の輪郭を備える延在側外面部11aとを備える。これらの端縁側外面部11aと、中央外面部11aと、延在側外面部11aとによって、ヘッド部の支持外面部は全体として軸線11xの方向に沿って凸状(好ましくは凸曲線状)の輪郭を備える面形状を有する。
骨係合体12の開口部12pの内面は、ヘッド部11aを外側から収容する収容外面部である。この収容外面部は、上記係止溝12cを備えるとともに係止溝12c以外は軸線11xの方向にほぼ平坦に構成される端縁側内面部12aと、この端縁側内面部12aの延在側に設けられ、半径方向内側に向けて軸線11xの方向に凸状に構成される中央内面部12aと、この中央内面部12aのさらに延在側に形成され、延在側に向けて内径が増大した逆テーパ状の延在側内面部12aとを備える。端縁側内面部12aは、ヘッド部11aの上記端縁側内面部11a及び中央外面部11aを収容する。この収容内面部は、端縁側内面部12aから中央内面部12aまでの範囲において、軸線方向に沿って凸状の輪郭を備える上記支持外面部に対応するように、軸線方向に沿って凹状(好ましくは凹曲線状)の輪郭を備えるように構成される。これにより、骨係合体12のインプラント本体11の延在側への抜け止め機能を確保しつつ、ヘッド部11aの支持外面部による骨係合体12の角度変更動作を実現できる。
また、中央内面部12aは、上記ヘッド部11aの最大の外径を備える中央外面部11a(最大寸法領域)が延在側に抜けないように抜け止めしている。さらに、上記係止リング12bが装着されていない状態では、ヘッド部11aの中央外面部11aは、延在側とは逆の端縁側から端縁側内面部12aの内側に図示のように収容できる。しかし、図示の状態でヘッド部11aの最大寸法領域よりも端部側の位置において係止リング12bが係止溝12cに装着されると、係止リング12bの上記内周部分は上記端縁側内面部12aから半径方向内側に突出する保持構造となる。これにより、ヘッド部11aの中央外面部11aは、係止リング12bの上記内周部分と干渉することにより、骨係合体12の開口部12pの内部から延在側とは逆の端縁側に脱出することができなくなる。
図1(d)に示すように、骨係合体12の開口部12pの開口面が、インプラント本体11の軸線11xと直交する基準姿勢から大きく傾斜した場合には、軸線11xの周りの片側(図示下側)の角度領域では、上記中央外面部11aが係止リング12bと中央内面部12aの間の開口部12p内に配置されたままであるのに対して、上記片側の角度領域とは反対側の角度領域(図示上側)では、上記中央外面部11aは、係止リング12bの内側を端縁側に越えて開口部12pの外側へ離れた位置で突出した状態となる。このように構成することにより、傾斜角度θを大きく確保することができる。このとき、上記反対側(図示上側)の角度領域では、ヘッド部11aが開口部12pから端縁側へ出たことにより、軸部11bの外面が上記中央内面部12a及び延在側内面部12aと当接した状態となる。この当接により、骨係合体12の傾斜角度はこれ以上増加できないように規制される。なお、上記反対側の角度領域において軸部11bの外面が上記中央内面部12a及び延在側内面部12aと当接するとともに、上記片側の角度領域において上記中央外面部11aが上記端縁側内面部12a及び係止リング12bの内周部分(保持構造)を乗り越えられないように構成されることにより、図示のように傾斜した態様であっても、ヘッド部11aは骨係合体12に対して端縁側に離反することができない。
本実施形態では、インプラント本体11のヘッド部11aが骨接合体12の開口部12p内に収容された状態で、ヘッド部11aに対して骨係合体12の係合本体部12aが端縁側に抜け止めされる。また、ヘッド部11aを開口部12p内に収容した状態で係止リング12bを係合本体部12aに装着することにより、ヘッド部11aに対して骨係合体12が上記延在側へ外れ止めされる。なお、このとき、骨係合体12はインプラント本体11に対して角度変更可能に保持されるとともに軸線11xの周りに回転可能に構成される。したがって、骨係合体12は、インプラント本体11に対してワッシャとしての機能を十分に発揮できる態様で、ヘッド部11aに対して延在側と端縁側の双方に保持された状態となっている。このことから、手術時にインプラント本体11のヘッド部11aから骨係合体12が延在側へ外れて作業を妨げたり、また、インプラント本体11の抜去時において骨係合体12だけが骨の表面上に残留したりすることが回避される。
さらに、本実施形態では、骨係合体12をヘッド部11aに保持するために、インプラント本体11を骨係合体12の開口部12pに挿通してから係止リング12bを係止溝12cに装着するだけでよいので、骨係合体12を極めて容易に装着できる。また、骨係合体12をヘッド部11aに保持するために係合本体部12aの弾性変形や塑性変形を必ずしも要しないため、適切な装着状態を容易に実現でき、インプラント本体11に対する骨係合体12の角度変更動作を円滑化できるとともに、保持力を高めて確実な装着状態を実現できる。
本実施形態では、骨係合体12に内周構造部12iと外周構造部12oとを着脱可能に設けていることから、手術箇所の状態や骨の表面状態に応じて、骨係合体12のフランジ径を変更することができる。例えば、骨の表面の比較的広い範囲にわたって平坦部がある場所に骨係合体12を用いる場合には、内周構造部12iに外周構造部12oを装着した状態で、フランジ径を大きくして使用する。これによって上記平坦部に骨係合体12をしっかりと係合させることができる。一方、骨の表面に平坦部が少ない場合や骨の表面に凹凸が大きい場合、或いは、骨の表面の傾斜が急である場合には、フランジ径が大きいと却って係合面積が減少して過剰な圧力を骨面に与えたりして、骨が脆弱だとフランジ外縁が骨に食い込んでしまったり、逆に骨質が硬いとフランジ外縁が骨の表面から大きく浮き上がったりする虞があるため、外周構造部12oを取り外し、内周構造部12iのみでフランジ径を小さくする。これによって、骨の表面に対する適切な係合が実現でき、骨皮質周辺の血行を確保することも可能であり、さらに、患者に疼痛を与えることも少なくなる。また、上記のように内周構造部12iと外周構造部12oの内外2層構造に限らず、内外3層以上の構造とすることができる。さらに、これらのように、着脱可能に構成された内外の複数の部材により骨係合体を構成すると、部材の着脱に応じて異なる外径を備える骨係合体を形成できるため、部品やインプラントの在庫量を低減できるという効果も得られる。
次に、図2を参照して本発明に係る骨固定システムの第2実施形態について説明する。この実施形態の骨固定システム20では、図2(b)及び(c)に示すように、第1実施形態と同様のボルトや骨ねじなどからなるインプラント本体21と、このインプラント本体に装着された骨係合体22とを具備する。インプラント本体21は、第1実施形態と同様のヘッド部21aと軸部21bを有し、ヘッド部21aの支持外面部は、端縁側外面部21a、中央外面部21a、延在側外面部21aを備える。ヘッド部21aは、骨係合体22の開口部22p内に収容される。係合本体部22aの開口部22pに臨む内面上には係止リング22bを係合する係止溝22cが設けられる。係止リング22bは、第1実施形態と同様の切り欠き部を備えるCリング状の弾性リングである。
ただし、本実施形態の係止リング22bは、ヘッド部21aの軸線21xの方向に凸状の輪郭を形成する外面、特に、上記中央外面部21aを中心とし、その両側に隣接する端縁側外面部21a及び延在側外面部21aと係合する対向内面部として、軸線21xの方向に凹状(図示例では凹曲面状)の輪郭を形成する端縁側内面部22bを備える。また、係止リング22bには、上記端縁側内面部22bの延在側に、端縁側内面部22bの最も小さな内径と同様の内径を備え、軸線21xの方向に平坦な輪郭を形成する延在側内面部22bを備える。なお、係止リング22bの外面の多くは、軸線21xの方向に平坦な輪郭を形成する円筒面状の外面部となっている。図示例では、端縁側内面部22bは球面状の内面形状を有し、延在側内面部22bは円筒状の内面形状を有する。
また、係合本体部22aの上記開口部22pに臨む内面(収容内面部)は、全体として凹状(図示例では凹曲面状)に構成され、上記係止溝22cより端縁側にある端縁側内面部22aと、上記係止溝22cの延在側にあり、上記ヘッド部21aの上記中央外面部21aの外径より小さな内径を備える中央内面部21aと、この中央内面部21aのさらに延在側に設けられ、延在側に向けて内径が増大した逆テーパ状の延在側内面部22aとを備える。なお、図示例では、係止リング22bは、外力を受けない状態では係止溝22cより内側に突出する保持構造となる内周部分を有する。一方、係止リング22bは、外力を受けて最大限に拡径したとき、係止溝22c内に没入し、そのときの端縁側内面部22bの端縁側の端部の内径は、ヘッド部21aの最大寸法領域(中央外面部21a)の外径と一致するか若しくはそれよりも大きく、特に、隣接する端縁側内面部22aの内径と一致するか、或いは、それよりも大きくなることが好ましい。また、そのときの延在側内面部22bの延在側の端部の内径は、隣接する延在側内面部22aの内径と一致するか、或いは、それよりも大きくなることが好ましい。
本実施形態では、骨係合体22の係止溝22c内に係止リング22bをはめ込んでから、インプラント本体21のヘッド部21aとは反対側の端部を、骨係合体22の開口部22pに対して端縁側(図示右側)から挿入する。そして、ヘッド部21aを、骨係合体22よりも端縁側から延在側へ向けて移動させ、開口部22p内に挿入する。このとき、係止リング22bの端部(図示例では端縁側内面部22bの端縁側にある端部)に対して、ヘッド部21aの延在側外面部21aから中央外面部21aに向けて徐々に外径の大きくなる外面領域が当接することによって、当該外面領域の傾斜面から半径方向外側へ力を受ける。これにより、係止リング22bの上記端部が拡大され、係止リング22bが係止溝22c内に退避した状態となることによって、図2(b)に示すように、係止リング22bの端縁側内面部22bの内側に中央外面部21a(最大寸法領域)及びその隣接する領域が収容される。
ここで、図2(b)は骨係合体22の開口面がインプラント本体21の軸線21xと直交する面であるか、若しくは、当該面に近い傾斜を備える低傾斜姿勢を示すものである。この低傾斜姿勢では、ヘッド部21aの中央外面部21aを中心とする凸状(好ましくは凸曲面状)の外面領域は、係止リング22bの端縁側内面部22b1の凹状(好ましくは凹曲面状)の内面領域に係合し、これによって、ヘッド部21aは軸線21xの方向の端縁側にも延在側にも骨係合体22の開口部22pの内部に保持された状態とされる。なお、本実施形態では、前述のように、ヘッド部21aの中央外面部21aの外径が骨係合体22の中央内面部22aの内径より大きいことにより、ヘッド部21aに対して骨係合体22が構造的に端縁側に抜け止めされる。
一方、ヘッド部21aが図2(b)の低傾斜姿勢にあるときに、ヘッド部21aに対して骨係合体22が端縁側へ軸線21xに沿って力を受けると、ヘッド部21aの中央外面部21aに隣接する端縁側外面部21aにおける軸線21xに対して僅かに傾斜した外面領域が、骨係合体22における端縁側内面部21aの軸線21xに対して僅かに傾斜した内面領域に当接することにより、係止リング22bは、軸線21xの方向の端縁側に圧力を受ける。このとき、この圧力は係止リング22bを係止溝22cの内側面に押し付けるが、その力は係止溝22cの内側面で受け止められるため、ヘッド部21aは開口部22pから脱出することはできない。
また、図2(c)に示すように、ヘッド部21aが係止リング22bを軸線21xの周りの片側(図示下側)に押し付けると、係止リング22bが係止溝22c内に収容されることにより、当該片側の角度領域で、ヘッド部21aの外面が係合本体部22aの端縁側内面部22aや中央内面部22aに当接する一方で、反対側(図示上側)の角度領域では、軸部21bのネック部分が中央内面部22aや延在側内面部22aに当接するまで、ヘッド部21aと骨係合体22が相互に傾斜することができる。図示例の場合には、傾斜角度θは25度程度である。このとき、上記反対側(図示上側)の角度領域では、図示のように、ヘッド部21aは、係止リング22bや係合本体部22aの端縁側内面部22aから軸線21xの方向の端縁側に離反し、開口部22pから脱出した状態となる。なお、このような高傾斜姿勢にあるときでも、ヘッド部21aに対して係合本体部22aの内面が係合しているため、骨係合体22が延在側に外れることはない。
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、骨係合体22は、インプラント本体21に対してワッシャとしての機能を十分に発揮できる態様で、ヘッド部21aに対して延在側と端縁側の双方に保持された状態となっていることから、手術時にインプラント本体21のヘッド部21aから骨係合体22が延在側へ外れて作業を妨げたり、また、インプラント本体21の抜去時において骨係合体22だけが骨の表面上に残留したりすることが回避される。さらに、骨係合体22をヘッド部21aに保持するために、係止リング22bを係止溝12cに装着してから、インプラント本体21を骨係合体22の開口部22pに挿通させるだけでよいので、骨係合体22を容易に装着できる。また、骨係合体22をヘッド部21aに保持するために係合本体部22aの弾性変形や塑性変形を必ずしも要しないため、適切な装着状態を容易に実現でき、インプラント本体21に対する骨係合体22の角度変更動作を円滑化できるとともに、保持力を高めて確実な装着状態を実現できる。
なお、本実施形態では、図2(c)に示す高傾斜状態から、片側(図示下側)の角度領域において、ヘッド部21aを徐々に端縁側へ突き出すようにしながら、反対側(図示上側)の角度領域において、軸部21bを中央内面部22aや延在側内面部22aから離反させるようにすることで、ヘッド部21aに対して骨係合体22を延在側へ取り外すことができる。このため、例えば、大径ワッシャから小径ワッシャへ変更したり、逆に小径ワッシャから大径ワッシャへ変更したりすることができる。ただし、このような動作は通常の手術時には生じないため、骨係合体22のヘッド部21aに対する保持機能が不具合を生ずることはない。なお、実際には、手作業でヘッド部21aから骨係合体22を取り外すことは困難な場合もあるので、上述のようにヘッド部21aに対して骨係合体22を高傾斜状態にセットした状態で適切な取り外し方向へ導くことの可能な専用工具(治具)を用いることが好ましい。
次に、図3を参照して、本発明に係る骨固定システムの第3実施形態について説明する。この実施形態では、インプラント本体31が、第1実施形態のインプラント本体11と同様の、ヘッド部31a、軸部31b、雄ねじ31t、係合構造31g、工具係合部31d、ねじ穴31eを備え、軸部31bは第1実施形態と同様の円錐状のネック部を備える。本実施形態において、第1実施形態と異なる点は、ヘッド部31aの外面形状が全体として均等な面形状を備える凹曲面状(図示例では球面状)であることと、このヘッド部31aの外面上に角度変更可能かつ回転可能に装着される骨係合体32の構造が異なる点である。
骨係合体32は、先の各実施形態と同様に、周囲に張り出したフランジ状の外周部を備えた環状の係合本体部32aを有する。この係合本体部32aは、その内側にヘッド部31aを収容する開口部32pを備える。この係合本体部32aの開口部32pに臨む内面上には係止リング32bが取り付けられる。この係止リング32bは、係合本体部32aの内面上において周方向に形成された係止溝32cに装着されている。係止リング32bは、図示例では切り欠き部を備えたCリング状の弾性体で構成される。係止リング32bの外面32boは軸線の方向に平坦な輪郭を有する円筒面状である。また、係止リング32bの内面32bi(対向内面部)は、上記ヘッド部31aの外面31aoに対応する凹状(好ましくは凹曲面状、特に図示例では凹球面状)である。図示例では、上記内面32biは、円筒面状の端縁側内面部32bと、この端縁側内面部32b1の内径から延在側に進むほど内径が増大する球面状の延在側内面部32bを有する。この係止リング32bは、骨係合体32がヘッド部31aからインプラント本体31の延在側へ外れることを防止する外れ止め機能、或いは、ヘッド部31a上に保持する保持機能を果たす。なお、本実施形態や他の実施形態において、図3に示すように、係合本体部32aの外側へ貼り出したフランジ状部分に1又は複数の縫合糸穴32dを形成してもよい。
ここで、骨係合体32の係合本体部32aがヘッド部31aに対して端縁側へ抜けないように抜け止め機能を果たす点は上記各実施形態と同様である。すなわち、係合本体部32aの内面は、係止溝32cの端縁側に設けられた端縁側内面部32aと、係止溝32cの延在側に設けられた凹状(好ましくは凹曲面状、特に図示例では凹球面状)の中央内面部32aと、この中央内面部32aのさらに延在側に設けられた逆テーパ状の延在側内面部32aとを有する。ここで、中央内面部32aは、端縁側(係止溝32cの側)の内面領域の内径が延在側の内面領域の内径よりも大きい面形状(図示例では球面)を有している。これに対して、ヘッド部31aの外面は、図3(d)に示すように、上記中央内面部32aに嵌合する球面状の外面31aoを備え、中央内面部32aの端縁側の内面領域に対面する部分が最大寸法領域31apとなり、この最大寸法領域31apよりも延在側の外面31aoの外径は、軸線31xの方向に沿って延在側に進むほど小さくなる。これにより、上記外面31aoが対応する面形状を備える中央内面部32aに係合することにより、ヘッド部31aに対して骨係合体32が端縁側には抜けることができない抜け止め構造となっている。
また、前述の外れ止め機能は、以下の構造により達成される。すなわち、係止溝32cは、係止リング32bの幅方向の全体を収容可能な深溝部32caと、この深溝部32caに対して、端縁側に連続して設けられた浅溝部32cbとを備える。ここで、深溝部32caが係止リング32bを収容すると、ヘッド部31aの外面31aoの最大寸法領域31apが係止リング32bの内側(最小内径を有する端縁側内面部32b)を通過できるようになるが、浅溝部32cbが係止リング32bを収容しても、係止溝32cから内側に突出した内周部分が保持構造となり、ヘッド部31aの外面31aoの最大寸法領域31apが係止リング32bの内側を通過することはできない。このため、図4(a)に示すように、係止溝32cに係止リング32bをセットしてから、骨係合体32をヘッド部31aの最大寸法領域31apよりも延在側(図示左側)に配置した状態で、図4(b)に示すように、骨係合体32をヘッド部31aに向けて端縁側(図示右側)に移動させる。すると、係止リング32bがヘッド部31aに押されて深溝部32caの側(図示左側)に移動し、そこで、深溝部32ca内に収容される。これにより、ヘッド部31aの最大寸法領域31apが係止リング32bの内側を通過できるようになるので、図4(c)の装着状態にすることができる。
一方、図4(c)の装着状態になると、骨係合体32をヘッド部31aの延在側(図示左側)に戻そうとしても、図4(e)に示すように、係止リング32bがヘッド部31aに押されて浅溝部32cbの側(図示右側)に移動し、図示のように浅溝部32cb内に配置されるので、ヘッド部31aの最大寸法領域31apが係止リング32bの内側を通過することはできなくなる。このため、骨係合体32をヘッド部31aの延在側に取り外すことはできなくなる。なお、上述のように係止溝32cは延在側に深溝部が設けられ、端縁側に浅溝部が設けられたものであればよいので、例えば、図示例のように深溝部32caと浅溝部32cbの間に段差がある溝形状ではなく、延在側から端縁側へ深さが漸次低下していく溝形状(軸線32xに沿った幅方向に傾斜した内底面を有するもの)であってもよい。この場合に、係止リング32bの外面(係止溝32cの上記内底面に臨む面)32boを係止溝32cの内底面の幅方向の傾斜に合わせて傾斜させることにより、係止リング32bがヘッド部31a等に押し込まれて係止溝32cの内底面に密接したときでも、係止リング32bの内面(ヘッド部31aの外面31aoに臨む面)32biの姿勢が維持されるようにすることができる。
なお、本実施形態では、図4(d)に示すように、ヘッド部31aの外面31aoに対して、係合本体部32aの中央内面部32aと、係止リング32bの延在側内面部32bとが、同時に対応する面形状となって摺動可能に密接するので、スムーズかつ安定した姿勢で角度変更可能となる。このとき、ヘッド部31aと骨係合体32は軸線31x上の中心点31yを中心に相互に回動するため、角度変更動作時の回動中心が傾斜角度θによって中心点31yからずれることがない。したがって、傾斜角度θが変更されたときに骨係合体32が骨の表面に対して軸線31xの方向に相対的に移動することがなくなるため、手術を容易に行うことが可能になる。
本実施形態では、先の各実施形態と同様に、ヘッド部31aを骨係合体32の開口部32p内に容易に装着する良好な装着性を備えるとともに、一旦装着された場合には、延在側へのヘッド部31aの抜け止め機能に加えて、端縁側へのヘッド部31aの脱出を防止する外れ止め機能を備える。ただし、このような装着性と外れ止め機能は、係止リング32bを係止溝32c内の深溝部32caと浅溝部32cbのいずれに配置するかによってより確実に行われる。このため、本実施形態では、他の実施形態よりも骨係合体の装着性をさらに容易化できるとともに、外れ止め機能を確実に実現できる。また、骨係合体32をヘッド部31aに保持するために係合本体部32aの弾性変形や塑性変形を必ずしも要しないため、適切な装着状態を容易に実現でき、インプラント本体31に対する骨係合体32の角度変更動作を円滑化できるとともに、保持力を高めて確実な装着状態を実現できる。
次に、図5を参照して、本発明に係る骨固定システムの第4実施形態について説明する。この実施形態の骨固定システム40のインプラント本体41は、先の第3実施形態のインプラント本体31(医療用ボルト)に対応する医療用ナットに相当する。この骨固定システム40は、図5に示すように、ヘッド部41aと、ヘッド部41aとその延在側にある逆側の端部と間に伸びる軸部41bとを有する。図示例では、インプラント本体41は、ボルトを構成するインプラント本体31に対応するナットを構成するので、軸部41bは軸部31bより短い。インプラント本体41は、軸線41xの方向に貫通する軸孔41jを備える。当該軸孔41jの内面には、インプラント本体41の延在側の領域に雌ねじ41tを備える。なお、本実施形態では、第3実施形態のインプラント本体31の延在側の端部を、インプラント本体41の延在側の端部と軸線方向に対向させた姿勢で挿入したとき、支障なく上記雄ねじ31tが雌ねじ41tとねじ結合が可能となるように構成される。
また、上記軸孔41jには、ヘッド部41aの端縁側の領域に拡大孔部41kが形成される。この拡大孔部41kは、雌ねじ41tの内径よりも大きな内径を備える。拡大孔部41kの内部には、第3実施形態のインプラント本体31に設けられた上記係合構造31gの環状溝に係合可能な弾性係合端41qを含む弾性係合体41pを備える。なお、図示例において、当該弾性係合体41pの弾性係合端41qは半径方向内側に突出するフック状の弾性突起で構成される。ただし、この弾性係合端41qは、係合構造31gが環状突起で構成される場合には、弾性凹部で構成されていてもよい。弾性係合端41qの外周側には、弾性係合体41pを半径方向外側に変形可能とする空間が設けられる。
弾性係合体41pはリング状の弾性体により構成される。弾性体としては、金属や合成樹脂を用いることができるが、特に、医療用チタン合金などの金属であることが好ましい。弾性係合端41qは、主として、弾性係合体41pの筒状部分の弾性変形により、半径方向及び軸線方向に変形可能及び移動可能に構成される。弾性係合体41pは、一部に切り欠き部41sを備えたCリング状に構成されている。また、弾性係合端41qは、リング状の弾性係合体41pの延在側にある端部から半径方向内側へ突出している。さらに、弾性係合体41pの内縁に周方向に間隔を持って複数の切り込み部41rが設けられることにより、上記弾性係合端41qは、軸線周りに分割された態様とされる。これにより、弾性係合体41pには、軸線周りに複数の弾性係合端41qが形成される。このように切り欠き部41sや切り込み部41rを設けると、弾性係合体41pがリング状に構成されているにも拘わらず、上記係合構造31gの隣接する保持位置(環状溝の位置)の間を移動する際に、弾性係合体41pの塑性変形が防止されるとともに、各弾性係合端41qの軸線方向の弾性変形が容易になる。弾性係合体41pは、拡大孔部41k内に配置された環状の保持枠41uによって支持される。保持枠41uは、拡大孔部41kに形成された取付溝(環状溝)41vに係止された弾性体からなる取付リング41wによって拡大孔部41kの内面上に保持される。
また、このヘッド部41aには、ワッシャ状(板状)に構成され、骨の表面に係合可能となるように形成された骨係合体42が取り付けられる。この骨係合体42は、ヘッド部41aの外面上に角度変更可能かつ回転可能に装着される。なお、骨係合体42は、第3の実施形態の骨係合体32と全く同様の、係合本体部42a、係止リング42b、係止溝42cを備える。また、係止リング42bは、対向内面部を構成する、軸線41xに沿って凹状(凹曲面状、特に図示例では凹球面状)の端縁側内面部42bと、円筒面状の延在側内面部42bとを備える。特に、ヘッド部41aと骨係合体42の装着構造及びこれらの動作並びにその作用効果は、第3実施形態の図3及び図4に示すものと同様であるため、それらの詳細な説明は省略する。
なお、本実施形態の場合には、インプラント本体31とインプラント本体41を軸線周りに相対的に回転させることにより雄ねじ31tと雌ねじ41tとがねじ結合するとき、上記係合構造31gの各環状溝の複数の保持位置に弾性係合端41qが係合しながら、そのねじ結合の深さに従って保持位置が変化していくように構成される。係合構造31gと弾性係合端41qは、軸線31x、41xに沿った方向の複数の保持位置を備えるラッチ機構を構成する。
本実施形態のインプラント本体41を第3実施形態のインプラント本体31に連結するとき、雄ねじ31tを雌ねじ41tにねじ結合させるために、連結操作時において相対的に軸線周りに回転させる必要がある。このため、相対的に軸線周りに回転した状態において、少なくとも、係合構造31gと弾性係合端41qが支障なく上記の複数の保持位置において軸線方向の保持力を発生しなければならない。このようにするには、前述のように、本実施形態では、係合構造31gと弾性係合端41qとが、その軸線方向の保持機能を妨げずに、軸線周りに回転可能な構造となっているか、或いは、雌ねじ41tと弾性係合端41qとが軸線周りに回転可能となっている必要がある。ただし、図示例とは異なるが、第3実施形態の雄ねじ31tと係合構造31gとが軸線周りに回転可能となっていてもよい。なお、雌ねじ41tと弾性係合端41qとが軸線周りに回転可能となっているか、若しくは、雄ねじ31tと係合構造31gとが軸線周りに回転可能となっている場合には、係合結合のための構造に関する制約や、当該構造とねじ結合のための構造との関係に関する制約を低減できるという利益がある。
なお、本実施形態では、インプラント本体41を第1実施形態のインプラント本体11と連結するようにしても構わない。いずれにしても、係合構造11g,31gと弾性係合端41qが相互に弾性係合することにより、軸線方向の複数の位置で保持機能を発揮し、軸線方向の保持力を発生するため、軸力とは無関係に上記ねじ結合の緩みを防止できる。また、上記の軸線方向の保持力は、ねじ結合による連結状態に重畳的に与えられることから、全体として大きな保持固定力を得ることができるため、手術後の早期のリハビリなどの際の高い負荷に耐えることも可能になる。
なお、本発明に係る骨固定システムは、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態では、医療用のボルトやナットをインプラント本体とするものであるが、本発明に係るインプラント本体は、このようなものに限らず、骨ねじや骨釘などのような、骨に装着される各種のインプラントで構成することができる。また、骨係合体は、上記実施形態のようなワッシャだけでなく、例えば、スクリューホールを備えた骨プレートとすることも可能である。さらに、上記第1~第4実施形態の個々の特徴点は、それぞれ、支障のない限り、他の実施形態にも採用することができる。例えば、第1実施形態の係合本体部12aの内周構成部12iと外周構成部12oの着脱可能な構造は、他の実施形態に用いることが可能である。
10…骨固定システム、11…インプラント本体、11a…ヘッド部、11a…端縁側外面部、11a…中央外面部、11a…延在側外面部、11b…軸部、11t…雄ねじ、11g…係合構造、11d…工具係合部、11e…ねじ穴、11x…軸線、11xa…軸孔、12…骨係合体、12a…係合本体部、12a…端縁側内面部、12a…中央内面部、12a…延在側内面部、12b…係止リング、12c…係止溝、12p…開口部、12i…内周構成部、12o…外周構成部、12os…切り欠き部、12s…装着面、20…骨固定システム、21…インプラント本体、21a…ヘッド部、21a…端縁側外面部、21a…中央外面部、21a…延在側外面部、21b…軸部、22…骨係合体、22a…係合本体部、22a…端縁側内面部、22a…中央内面部、22a…延在側内面部、22b…係止リング、22b…端縁側内面部、22b…延在側内面部、22b…外面部、22c…係止溝、22p…開口部、30…骨固定システム、31…インプラント本体、31a…ヘッド部、31ao…外面、32…骨係合体、32a…係合本体部、32b…係止リング、32c…係止溝、32ca…深溝部、32cb…浅溝部、40…骨固定システム、41…インプラント本体、41a…ヘッド部、41ao…外面、42…骨係合体、42a…係合本体部、42b…係止リング、42c…係止溝、42ca…深溝部、42cb…浅溝部

Claims (9)

  1. ヘッド部を備え、骨に導入されるインプラント本体と、
    該インプラント本体の前記ヘッド部に角度変更可能に保持された状態で取り付けられる骨係合体とを具備し、
    前記骨係合体は、前記ヘッド部を収容する開口部を備えるとともに、前記ヘッド部に対して第一の側に抜け止めされる構造を備える係合本体部と、該係合本体部に装着されることにより、前記ヘッド部を前記骨係合体が前記第一の側とは逆の第二の側に離反しないように保持する、前記開口部の内面に沿って周方向に延在する保持構造を備える係止部材と、を有し、
    前記ヘッド部は、軸線方向に沿って凸状の輪郭を備える支持外面部を有し、
    前記係合本体部の前記開口部に臨む内面は、前記支持外面部に対面可能で、軸線方向に沿って凹状の輪郭を備える収容内面部を有し、
    前記係止部材は、前記支持外面部に対面可能で、軸線方向に沿って凹状の輪郭を備える対向内面部を有し、
    前記係止部材は、少なくとも一か所に切り欠き部を備えるCリング状の弾性体で構成される係止リングである、
    骨固定システム。
  2. 前記第一の側は、前記ヘッド部から前記インプラント本体が延在する側とは逆側である、
    請求項1に記載の骨固定システム。
  3. 前記係止リングは、前記係合本体部の前記開口部に臨む内面に設けられた係止溝に係合し、少なくとも外力を受けない状態では前記係止溝から前記開口部内に突出する前記保持構造となる内周部分を備え、前記ヘッド部から受ける外力により当該内周部分の少なくとも一部が前記係止溝の内部に収納可能に構成される、
    請求項1又は2に記載の骨固定システム。
  4. 前記係止リングは、前記骨係合体が前記ヘッド部に対して前記第二の側から接近するときには、前記ヘッド部から受ける軸線方向の力を半径方向に変換して前記係止溝内に退避することにより前記ヘッド部の最大寸法領域を内側に受け入れ若しくは通過させるとともに、前記最大寸法領域を内側に受け入れ若しくは通過させた状態で前記骨係合体が前記ヘッド部に対して前記第二の側へ移動するときには、前記ヘッド部から受ける軸線方向の力を前記係止溝で受け止めることにより前記第一の側への前記ヘッド部の脱出を妨げる、
    請求項3に記載の骨固定システム。
  5. 前記係止溝は、前記係止リングを収容したときに前記ヘッド部の前記最大寸法領域を通過させることができるように深く形成された深溝部を前記第二の側に備え、前記係止リングを収容したときに前記ヘッド部の前記最大寸法領域を通過させることのできないように浅く形成された浅溝部を前記第一の側に備える、
    請求項4に記載の骨固定システム。
  6. 前記収容内面部と前記対向内面部は、共に前記支持外面部に対面したとき、同時に前記支持外面部に整合可能な内面形状をそれぞれ備える、
    請求項1-5のいずれか一項に記載の骨固定システム。
  7. 前記骨係合体は、骨の表面に係合可能となるように形成されたワッシャである、
    請求項1-6のいずれか一項に記載の骨固定システム。
  8. 前記係止部材は、前記係合本体部の前記開口部に臨む内面のうちの軸線が開口面と直交する姿勢にある前記ヘッド部の最大寸法領域よりも前記第一の側に装着される、
    請求項1又は2に記載の骨固定システム。
  9. 前記係合本体部は、前記ヘッド部を収容する前記開口部を形成する内周構成部と、該内周構成部に対して着脱可能に取り付けられる外周構成部とを有する、
    請求項1-のいずれか一項に記載の骨固定システム。
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