JP7279553B2 - 銅合金線、ケーブルおよび銅合金線の製造方法 - Google Patents

銅合金線、ケーブルおよび銅合金線の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、銅合金線、ケーブルおよび銅合金線の製造方法に関するものである。
従来、電線やケーブルを構成する導体には、銅合金からなる銅合金線が使用されることがある。例えば、特許文献1および特許文献2には、ジルコニウム等を含有する銅合金が記載されている。
特開昭63-243240号公報 国際公開第2010/084989号
可動部に使用される電線やケーブルでは、高導電性を有しつつ、繰り返し曲げに対して破断しにくい屈曲特性を有する導体が求められる。しかし、ジルコニウムを含有する銅合金からなる銅合金線においては、高導電性を保ちつつ、屈曲特性を向上させることが困難であり、改善が望まれる。すなわち、ジルコニウムを含有する銅合金からなる銅合金線では、繰り返し曲げに対して破断しにくいように改善しようとすると、導電率が低下してしまうことがあった。
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、ジルコニウムを含有する銅合金からなる銅合金線の導電率を低下させることなく、銅合金線の屈曲特性を向上させることを目的とする。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
[1]銅合金線の製造方法は、(a)ジルコニウムが銅に固溶している状態の銅材を溶体化処理して、過飽和固溶体の状態の前記銅材を形成する工程、(b)前記(a)工程の後、過飽和固溶体の状態の前記銅材を引き伸ばして第1線材を形成する工程、(c)前記(b)工程の後、前記第1線材を熱処理して、第1銅合金線を形成する工程を含む。銅合金線の製造方法は、(d)前記(c)工程の後、前記第1銅合金線を引き伸ばして第2線材を形成する工程、(e)前記(d)工程の後、前記第2線材を熱処理して、銅の結晶粒径が1μm以下の第2銅合金線を形成する工程、を含む。そして、前記(c)工程では、前記第1銅合金線中にジルコニウムを含む析出物を析出させ、前記(d)工程では、前記第2線材中に前記析出物を分散させ、前記(e)工程では、前記第2線材を350~400℃において熱処理し、前記第2銅合金線中にジルコニウムを含む析出物を析出させる。
[2][1]記載の銅合金線の製造方法において、前記(c)工程では、前記第1線材を350~400℃において熱処理する、銅合金線の製造方法。
[3][1]又は[2]記載の銅合金線の製造方法において、前記銅材中のジルコニウムの含有率は、200重量ppm以上2000重量ppm以下である、銅合金線の製造方法。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載の銅合金線の製造方法において、前記第2銅合金線の導電率は、87%IACS以上である、銅合金線の製造方法。
[5][1]~[4]のいずれか1項に記載の銅合金線の製造方法において、前記第2銅合金線の引張強度は、545MPa以上である、銅合金線の製造方法。
[6]ジルコニウムを含む析出物が分散しており、銅の結晶粒径が1μm以下であり、導電率が87%IACS以上であり、引張強度が545MPa以上である、銅合金線。
[7][6]記載の銅合金線から形成される導体を備える、ケーブル。
本発明によれば、ジルコニウムを含有する銅合金からなる銅合金線の導電率を低下させることなく、銅合金線の屈曲特性を向上させることができる。
一実施の形態に係る銅合金線の製造工程を示すプロセスフロー図である。 一実施の形態のケーブルの構造を示す横断面図である。 一実施の形態の銅合金線の結晶粒径の分布を示すグラフである。 一実施の形態の銅合金線の屈曲試験の結果を示すグラフである。
(検討事項)
<事前検討>
まず、実施の形態を説明する前に、本発明者が検討した事項について説明する。前述したように、電線やケーブルを構成する導体には、銅合金からなる銅合金線が使用される。電線やケーブルには、高い機械的強度が要求されるため、銅合金線の機械的強度を向上させることが望まれる。銅合金線の機械的強度を向上させる方法として、固溶強化法がある。この固溶強化法は、溶媒原子(銅原子)の結晶構造の内部や格子位置に固溶させた溶質原子(不純物原子)が転位運動を妨げることを利用して、銅合金線の機械的強度を向上させる方法である。しかし、固溶強化法によって機械的強度を向上させた銅合金線は、溶質原子(不純物原子)が原子レベルで溶媒原子(銅原子)に入り込んでいるため、銅本来の導電率を確保することが難しく、導電率が大幅に低下する。すなわち、固溶強化法では、銅合金線の導電率を確保しながら、銅合金線の機械的強度を向上させることは困難である。
そのため、以下では、析出強化法によって銅合金線の導電率を確保しながら、銅合金線の機械的強度を向上させることを検討する。
まず、析出強化法の概要について説明する。析出強化法を適用するためには、(a)溶体化処理工程と(b)熱処理(析出)工程とを行うことが必要になる。
溶体化処理とは、合金を高温から常温にまで急速に冷却することで、高温において発現していた金属組織を常温のときでも維持する熱処理技術のことである。特に、析出強化法においては、固溶体の状態のまま急速に冷却し、過飽和固溶体の状態を作り出すことが肝要である。そのため、溶体化処理は、強制固溶とも呼ばれる。
次に、過飽和固溶体に対して、熱処理工程を行うことで、母体中に、金属間化合物が徐々に析出してくる。析出物の量は時間とともに増加し、合金の特性が変化していく。そのため、このような熱処理は時効処理とも呼ばれる。前述したように、母体中に析出した析出物が転位運動の障害物として作用するため、合金の機械的強度が強化される。
以上のような析出強化法を銅合金線に適用するにあたり、銅合金線の製造工程に(a)溶体化処理工程および(b)熱処理工程をどのように組み合わせるかについて検討した。
銅合金線の製造工程は、(1)鋳造工程と、(2)圧延工程と、(3)伸線工程とを有している。詳細は後述するが、(1)鋳造工程では、銅合金の鋳造材を形成し、(2)圧延工程では、鋳造材を熱間圧延等により圧延し、圧延材を形成する。そして、(3)伸線工程では、圧延材を例えば冷間伸線により伸線し、伸線材を形成する。
まず、銅合金線に対して析出強化法を適用するため、銅合金線の製造方法において、(3)伸線工程の後に、(a)溶体化処理工程および(b)熱処理工程を行うことを検討した。しかし、この製造方法によって得られた銅合金線の機械的強度は、高くならないことがわかった。この理由を以下のように検討した。
まず、(3)伸線工程により、銅合金が引き伸ばされる結果、母体の結晶中に応力ひずみが生じる。その後、(b)熱処理工程において銅合金を加熱することにより、(3)伸線工程によって銅合金線中の残留応力が解放される。これにより、母体の銅の再結晶化が促進され、母体の結晶粒径が熱処理工程前に比べて大きくなる。ここで、結晶粒径と機械的強度との関係として、以下に示すホール・ペッチの式が経験的に成り立つことが知られている。
σy=σ0+k/√d
「σy」は材料の降伏機械的強度(降伏応力)、「σ0」は摩擦応力、「k」は結晶粒界のすべりに対する抵抗を示す定数、「d」は結晶粒径である。
このホール・ペッチの式から、結晶粒径が小さくなればなるほど、降伏応力が大きくなることがわかる。すなわち、(3)伸線工程の後に(b)熱処理工程を行うことによって銅の結晶粒径が大きくなった結果、降伏応力が小さくなったと考えられる。従って、(3)伸線工程の後に、(a)溶体化処理工程および(b)熱処理工程を行うと、銅の再結晶化によって銅の結晶粒径が大きくなるため、銅合金線の機械的強度を高くすることができない。
次に、銅合金線に対して析出強化法を適用するため、銅合金線の製造方法において、(2)圧延工程の後に、(a)溶体化処理工程および(b)熱処理工程を行い、その後に(3)伸線工程を行うことを検討した。本発明者の検討によれば、(3)伸線工程により、銅合金が引き伸ばされる結果、母体の結晶中に応力ひずみが生じて、母体の結晶粒径が伸線工程前に比べて小さくなることがわかった。前述したホール・ペッチの式から、微細な結晶粒からなる多結晶体であればあるほど、降伏応力が大きくなることがわかる。これは、結晶粒微細化による高強度化に相当する。すなわち、結晶粒微細化による高強度化とは、微細な結晶粒からなる多結晶体ほど降伏応力が大きくなることに基づいて、合金を構成する結晶粒を小さくすることにより、合金の機械的強度を向上させる方法である。
ここで、銅合金線の製造方法において、(2)圧延工程の後に、(a)溶体化処理工程および(b)熱処理工程を行い、その後に(3)伸線工程を行った場合では、銅合金線の導電率が著しく低下することがわかった。前述したように、(a)溶体化処理工程および(b)熱処理工程を行って、母体中に析出物が析出した状態で(3)伸線工程を行うことにより、母体の結晶粒径が小さくなりすぎてしまい、その結果、導電率が著しく低下したことが原因と考えられる。従って、(2)圧延工程の後に、(a)溶体化処理工程および(b)熱処理工程を行い、その後に(3)伸線工程を行うと、銅合金線の導電率を高くすることができない。
以上より、銅合金線の製造方法を工夫することにより、銅合金線に析出強化法および結晶粒微細化による高強度化を適用し、銅合金線の導電率の低下を抑え、銅合金線の機械的強度を向上させることが望まれる。
(実施の形態)
<本実施の形態の銅合金線の製造方法>
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、実施の形態を示す各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
図1は、本実施の形態に係る銅合金線の製造工程を示すプロセスフロー図である。図1に示すように、本実施の形態の銅合金線の製造工程は、鋳造工程(S11)と、圧延工程(S12)と、溶体化処理工程(S13)と、伸線工程(S14)と、熱処理(析出)工程(S15)と、伸線工程(S16)と、熱処理(析出)工程(S17)と、を含む。以下、各工程の具体的な手順について説明する。
まず、鋳造工程(S11)を行う。例えば、無酸素銅等の純銅(Cu)をるつぼ内で1150℃程度に加熱する。これにより、純銅が溶融して、溶銅が形成される。続いて、るつぼ内の溶銅の中に、銅-ジルコニウム(Zr)母合金(例えば、銅:ジルコニウム=50重量%:50重量%)を添加する。これにより、ジルコニウムを含む溶銅が形成される。この際、溶銅中のジルコニウムの含有率が、200重量ppm以上2000重量ppm以下(0.02重量%以上0.20重量%以下)となるように、銅-ジルコニウム母合金の添加量を調整することが好ましい。特に、溶銅中のジルコニウムの含有率を1000重量ppm(0.10重量%)以上2000重量ppm以下とすることにより、直径が0.05mm以上0.20mm以下の銅合金線において、銅-ジルコニウム化合物からなる析出物を銅中に均一に分散させた状態で導電率を87%IACS以上にしやすくすることができるため、より好ましい。ここで、銅への添加物としてジルコニウムを選択したのは、ジルコニウムを銅に添加しても銅の導電率の低下がほとんど見られないためである。なお、第3成分として、ジルコニウム以外に銅に含有している金属、または、銅に含有させる金属としては、例えばチタン(Ti)、クロム(Cr)があり、この第3成分は、銅に添加しても銅の導電率を低下させないものであれば、特に限定されない。
続いて、ジルコニウムを含む溶銅を、るつぼから鋳型に流し込む。その後、鋳型を水冷することによって、例えば直径30mmの円柱状の鋳造材(インゴット)が形成される。以上が、鋳造工程(S11)である。
なお、ジルコニウムを含む溶銅を形成する方法は、上記方法に限定されるものではなく、銅とジルコニウムとを一緒に加熱してジルコニウムを含む溶銅を形成する方法や溶銅にジルコニウムのみを添加してジルコニウムを含む溶銅を形成する方法であってもよい。ただし、合金の歩留りが安定するという観点から、ジルコニウムを含む溶銅を形成する方法としては、溶銅に銅-ジルコニウム母合金を添加する方法が好ましい。
次に、圧延工程(S12)を行う。鋳造工程(S11)で形成した鋳造材に対して、例えば800℃程度の熱間圧延を行うことにより、直径12mmの円柱状の圧延材を形成する。この熱間圧延後には、圧延材を空冷により徐冷することによって銅材を得る。以上が、圧延工程(S12)である。
次に、溶体化処理工程(S13)を行う。圧延工程(S12)で形成した銅材を850℃程度で1.5時間加熱し、その後、水冷により急冷する。急冷の条件としては、800~900℃の銅材が5秒~10秒の時間で15℃~20℃程度になるように水冷するとよい。これにより、銅材は、過飽和固溶体の状態になる。なお、溶体化処理に時間を要する場合は、銅材を溶体化処理する際に、徐冷後の銅材を巻き取った状態で溶体化処理を行うことがよい。以上が、溶体化処理工程(S13)である。なお、溶体化処理工程(S13)では、水による冷却以外の方法によって上述した溶体化処理を行ってもよい。
ここで、溶体化処理工程(S13)の具体的な条件について説明する。銅とジルコニウムとの合金からなる銅材において、合金中のジルコニウムの含有率が2000重量ppm以下であるとき、800~1100℃程度ではジルコニウムが銅に固溶している固溶体の状態になる。それ以上の温度(例えば1200℃)では、銅およびジルコニウムが溶解した状態になる。それ以下の温度(例えば700℃)では、ジルコニウムが銅に固溶している状態になる。このような状態にするためには、例えばジルコニウムを含む銅材を850℃程度に加熱すると、ジルコニウムが銅に固溶している固溶体の状態になる。その後、固溶体の状態の銅材に対して急冷(焼入れ)処理を行うことで、ジルコニウムを含む銅材は過飽和固溶体の状態になる。
なお、本発明者の検討により、溶体化処理工程(S13)における銅材の加熱温度を900℃以上にすると、母体(銅)の結晶の粗大化が懸念されることがわかった。そのため、溶体化処理工程(S13)における銅材の加熱温度は、800~900℃が好ましい。また、800℃程度の高温中では、銅中のジルコニウムの拡散が速いため、銅材の冷却を炉冷で行うよりも水冷で行う方が、微細な銅-ジルコニウム化合物からなる析出物が析出しやすい。そのため、銅材の冷却は、水冷で行うことが好ましい。
次に、伸線工程(S14)を行う。溶体化処理工程(S13)によって過飽和固溶体の状態になった銅材(直径12mm)を、例えばダイスにより引き抜くことにより、伸線材(第1線材)(直径0.26mm)を形成する。前述したように、伸線工程(S14)により、銅材が引き伸ばされ、母体の結晶粒径が伸線工程前に比べて小さくなる。以上が、伸線工程(S14)である。
次に、熱処理(析出)工程(S15)を行う。伸線工程(S14)により形成された伸線材を350~400℃で1時間加熱する。このように、過飽和固溶体の状態の伸線材に対して、熱処理を行うことで、母体(銅)中に、析出物(第1析出物、銅とジルコニウムとの金属間化合物)が徐々に析出してくる。析出物の量は時間とともに増加し、ジルコニウムを含む銅の特性が変化していく。そのため、このような熱処理は時効処理とも呼ばれる。なお、この工程では、伸線材を常温から加熱するため、銅中のジルコニウムの拡散は前述の高温中に比べて遅く、銅-ジルコニウム化合物は母体中に微細に析出する。以上が、熱処理工程(S15)であり、熱処理工程(S15)後の伸線材が銅合金線(第1銅合金線)となる。
次に、伸線工程(S16)では、熱処理(析出)工程(S15)によって、析出物(銅-ジルコニウム化合物)が析出した伸線材(直径0.26mm)を、例えばダイスにより引き抜くことにより、伸線材(第2線材)(直径0.08mm)を形成する。以上が、伸線工程(S16)である。
次に、熱処理(析出)工程(S17)では、熱処理(析出)工程(S15)と同様に、伸線工程(S16)により形成された伸線材を350~400℃で1時間加熱する。これにより、母体(銅)中に、析出物(第2析出物、銅とジルコニウムとの金属間化合物)が徐々に析出してくる。以上が、熱処理(析出)工程(S17)であり、熱処理工程(S17)後の伸線材が銅合金線(第2銅合金線)となる。なお、上述した伸線工程において、伸線材の直径を適宜変更することにより、得られる銅合金線の直径を0.05mm以上0.20mm以下の範囲とすることができる。
以上、鋳造工程(S11)~熱処理工程(S17)により、本実施の形態の銅合金線を製造することができる。
なお、熱処理(析出)工程(S15)において析出する析出物と、熱処理(析出)工程(S17)において析出する析出物とは、同じでも異なっていてもよい。
<本実施の形態の主要な特徴および効果>
本実施の形態の主要な特徴の1つは、銅合金線の製造方法において、溶体化処理工程(S13)と熱処理(析出)工程(S15)との間に、伸線工程(S14)を有していることである。さらに、熱処理(析出)工程(S15)の後に、伸線工程(S16)および熱処理(析出)工程(S17)を有している。
前述したように、銅合金線の製造方法において、伸線工程の後に、溶体化処理工程および熱処理工程を行うと、母体(銅)の結晶粒径が大きくなりすぎるため、銅合金線の機械的強度を高くすることができない。
一方、銅合金線の製造方法において、圧延工程の後に、溶体化処理工程および熱処理工程を行い、その後に伸線工程を行うと、母体(銅)の結晶粒径が小さくなりすぎるため、
銅合金線の導電率を高くすることができない。
そこで、本実施の形態では、溶体化処理(S13)→伸線工程(S14)→熱処理工程(S15)の順に行うことで、伸線工程(S14)で母体(銅)の結晶粒径が小さくなるが、熱処理工程(S15)によって母体(銅)の再結晶が行われ、結晶粒径が大きくなる。そして、同時に熱処理工程(S15)によって、銅-ジルコニウム化合物からなる析出物が析出するため、この析出物により結晶の成長が抑制され、母体(銅)の結晶粒径が大きくなりすぎない。すなわち、熱処理工程(S15)の後の母体(銅)の結晶粒径は、伸線工程(S14)前よりも小さい。このように、本実施の形態では、母体(銅)中に析出した析出物(銅-ジルコニウム化合物)が結晶成長を抑制することにより、銅合金線中の母体の結晶粒径が最適化される。
また、前述したように、本実施の形態では、母体(銅)中に析出した析出物(銅-ジルコニウム化合物)が転位運動の障害物として作用するため、銅合金線の機械的強度が析出物を含まない場合に比べて向上する。
そして、本実施の形態では、熱処理工程(S15)の後に、2回目の伸線工程(S16)および2回目の熱処理工程(S17)を有しているため、母体(銅)中に析出物(銅-ジルコニウム化合物)が析出した状態で、2回目の伸線工程(S16)を行うことができる。こうすることで、伸線工程(S16)により析出物が母体(銅)中の全体に広がるように分散する。このとき、析出物は、局所的に凝集していないことが好ましい。また、2回目の熱処理工程(S17)により析出物が母体(銅)中にさらに析出する。その結果、本実施の形態では、1回のみの熱処理工程の場合に比べて母体中の析出物の量が多く、かつ、伸線工程(S16)によって母体(銅)中の全体に析出物が広がるように分散している状態を維持しながら熱処理工程(S17)によって析出した析出物が凝集せずに母体中に広く分散しているため、銅合金線の機械的強度が向上する。これにより、本実施の形態では、引張強度が545MPa以上である銅合金線が得られる。
また、本実施の形態では、1回目の熱処理工程(S15)と2回目の熱処理工程(S17)との間に、2回目の伸線工程(S16)を有している。仮に2回の熱処理工程を連続して行ってしまうと、母体(銅)の結晶粒径が大きくなりすぎてしまい、銅合金線の機械的強度が低下してしまう。そこで、1回目の熱処理工程(S15)の後に、2回目の伸線工程(S16)を行うことで、母体(銅)の結晶粒径を一度小さくする。その後、2回目の熱処理工程(S17)を行うことで、母体(銅)の結晶粒径が再び大きくなり、最適化される。その結果、銅合金線の導電率を1回のみの熱処理工程の場合よりも低下させることなく、銅合金線の機械的強度をさらに向上させることができる。
以上より、本実施の形態の銅合金線の製造方法によれば、析出強化法と結晶粒微細化による高強度化とを組み合わせることが可能となり、銅合金線の導電率を低下させることなく、銅合金線の機械的強度を向上させることができる。
なお、他の実施の形態として、本実施の形態の熱処理(析出)工程(S17)の後に、さらに伸線工程および熱処理(析出)工程を複数回繰り返すこともできる。この場合は、本実施の形態に比べて、母体中の析出物をさらに多く析出させ、かつ、母体中の析出物をさらに広く分散させることができる。なお、製造コストも考慮すると、本実施の形態が最も好ましいといえる。
また、上述した引張強度を有する銅合金線を得るとの観点から、母体(銅)の結晶粒径を最適化する(1μm以下にする)ために、熱処理(析出)工程(S17)における熱処理(加熱)温度は、350~400℃とすることが必要である一方、熱処理(析出)工程(S15)における熱処理(加熱)温度を、熱処理(析出)工程(S17)と同じ温度にすることが好ましい。
なお、本実施の形態において、ジルコニウムの含有量は、200重量ppm以上2000重量ppm以下であることが好ましい。本発明者は、ジルコニウムの含有量を上記範囲にすることにより、高導電率(87%IACS以上)で繰り返し屈曲による耐性に優れる(1万回以上の繰り返し屈曲でも導体が破断しない)ことを確認している。特に、本実施の形態に係る銅合金線では、上記ジルコニウムの含有量のうち、1000重量ppm以上2000重量ppm以下の範囲とすることにより、本実施の形態に係る銅合金線は、銅に固溶しているジルコニウムが析出物(銅-ジルコニウム化合物)として析出することによって銅の純度が純銅の状態に近づきやくなるとともに、析出した微細な析出物(銅-ジルコニウム化合物)が銅中に均一に分散しやすくなる。そのため、本実施の形態に係る銅合金線では、直径が0.05mm以上0.20mm以下において、導電率が87%IACS以上であり、かつ、引張強度が545MPa以上であるとの特性を兼ね備え、繰り返し屈曲による耐性にも優れるものとすることができる。
また、本実施の形態において、コスト削減のため、溶体化処理工程(S13)を省略することも考えられる。ただし、鋳造工程(S11)によって形成される鋳造材は、粗大な銅-ジルコニウム化合物が点在した状態である。そのため、溶体化処理工程(S13)を行わずに熱処理工程(S15)を行っても、析出物が均一に分散しないばかりか、そもそも析出物が母体中に析出しない可能性もある。そのため、銅合金線の製造方法において、溶体化処理工程(S13)を含むことが好ましい。
<銅合金線を用いたケーブル>
図2は、本発明の一実施の形態に係る銅合金線を用いたケーブルを示す模式図である。
図2に示すように、本実施の形態に係るケーブル11は、導体1と、導体1の周囲に被覆される絶縁層2とにより構成された電線10を2本撚り合わせた二芯撚り線と、前記二芯撚り線の周囲に設けられた介在3と、介在3および電線10の周囲に設けられたシース4とを備えている。
本実施の形態のケーブル11を構成する導体1として、上記実施の形態の銅合金線の製造方法により製造された銅合金線を用いる。後述するように、上記実施の形態の銅合金線の製造方法により製造された銅合金線は、ジルコニウムを含む析出物が分散した銅合金線であって、結晶粒径が1μm以下であり、導電率が87%IACS以上である。なお、導体1として、上記実施の形態の銅合金線の製造方法により製造された銅合金線を撚り合わせた撚り導体を用いることもできる。
本実施の形態のケーブル11は、例えば、以下のように製造される。まず、導体1として前述した製造方法によって得られる銅合金線を準備する。そして、押出機により、導体1の周囲を被覆するように、ふっ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーンゴム等により所定厚さの絶縁層2を形成する。これにより、電線10を製造することができる。この電線10を2本製造した後に、2本の電線10をスフ糸等の介在3とともに撚り合わせ、その後、介在3および電線2の周囲を被覆するように、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーンゴム等により、所定厚さのシース4を形成する。こうすることで、本実施の形態のケーブル11を製造することができる。
なお、本実施の形態のケーブル11は、芯線として電線10を2本撚り合わせた二芯撚り線を有する場合を例に説明したが、芯線は単芯(1本)でもよいし、二芯以外の多芯撚り線であってもよい。また、電線10とシース4との間に、複数本の金属素線を編組してなるシールド層が形成された、シールド付きケーブルとすることもできる。
<銅合金線の特性>
以下、上記実施の形態の銅合金線の製造方法により製造された銅合金線の特性について説明する。なお、以下の実施例1~2、比較例1~4では、図1に示す製造工程において、溶銅中のジルコニウムの含有量が1400重量ppmとなるように溶銅の中に銅-ジルコニウム母合金を添加して鋳造材を形成し、鋳造材に対して約800℃の熱間圧延温度で熱間圧延を施して圧延材(直径:約12mm)を形成し、その後、圧延材を徐冷することによって銅材を得た。この銅材に対して約850℃の温度で溶体化処理を施して過飽和固溶体の状態の銅材を形成し、この過飽和固溶体の状態の銅材に対して直径が0.26mmとなるまで伸線加工を行った後、350℃の熱処理温度で熱処理を行うことにより、第1銅合金線を形成した。この第1銅合金線に対して直径が0.08mmとなるまで伸線加工を行った後、表1に示す熱処理温度で熱処理を行うことにより、第2銅合金線を形成した。この第2銅合金線は、ジルコニウムを約1300重量ppm含有し、残部が銅および不可避不純物からなる銅合金線である。
表1は、上記実施の形態に係る銅合金線の製造方法により製造された銅合金線の導電率、引張強度および0.2%耐力と、製造工程中の熱処理温度との関係を示す表である。図3は、上記実施の形態に係る銅合金線の結晶粒径の分布を示すグラフである。図4は、上記実施の形態に係る銅合金線の屈曲試験の結果を示すグラフである。
Figure 0007279553000001
(導電率、引張強度、0.2%耐力の測定)
導電率の測定は、四端子法により得られた銅合金線の抵抗値を測定し、得られた抵抗値を%IACSに換算して求めた。
引張強度および0.2%耐力の測定は、JISZ2214に準拠する引張試験を行うことによって求めた。なお、引張試験を行う際の引張速度は20mm/min、ゲージレングス(つかみ幅)は100mmとした。
まず、測定した物性値について説明する。表1に示す銅合金線の導電率は、%IACSを基準に示している。%IACSとは、万国標準軟銅(International Annealed Copper Standard)の抵抗率1.7241×10-8Ωmを100%としたときの導電率である。
表1に示す銅合金線の引張強度は、銅合金線の剛直性を表しており、銅合金線が硬いほど大きい値をとる。銅合金線の引張強度が大きいと、銅合金線が切断されにくくなるが、同時に、銅合金線が曲げにくくなる。
表1に示す銅合金線の0.2%耐力とは、銅合金線の塑性変形のしにくさを表している。ここで、耐力とは、明確な降伏点が表れない材料において、弾性変形と塑性変形との境界を示す降伏応力に相当する応力のことである。特に、銅の降伏時の永久ひずみが0.2%であることから、除荷時の永久ひずみが0.2%となる応力を0.2%耐力と呼び、降伏応力の代わりに用いられている。すなわち、銅合金線の0.2%耐力が大きいと、銅合金線が切断されにくくなるが、同時に、銅合金線が曲げにくくなる。
なお、銅合金線の0.2%耐力は、銅合金線のひずみの小さい領域での切断されにくさを表し、銅合金線の引張強度は、銅合金線のひずみの大きい領域での切断されにくさを表している。
以上を前提にして、表1の比較例2~比較例4では、上記実施の形態の熱処理(析出)工程(S15)において熱処理(加熱)温度をそれぞれ350℃、400℃および450℃とし、その後の工程(S16、S17)を経ずに製造した場合の、銅合金線の試料(直径0.08mm)の各物性値の測定結果を示している。そして、表1の実施例1、実施例2および比較例1では、上記実施の形態の熱処理(析出)工程(S15)において熱処理(加熱)温度を350℃とし、熱処理(析出)工程(S17)において、熱処理(加熱)温度をそれぞれ、350℃、400℃および450℃とした場合の、銅合金線の試料(直径0.08mm)の各物性値の測定結果を併せて示している。
まず、熱処理工程の回数について、熱処理工程を2回行った実施例1、実施例2および比較例1と、熱処理工程を1回のみ行った比較例2~比較例4とを比較する。表1に示すように、実施例1、実施例2および比較例1は、銅合金線の導電率が比較例2~比較例4とほぼ同じ値を示しつつ、銅合金線の機械的強度が向上している。前述したように、上記実施の形態の銅合金線の製造方法によって得られる実施例1、実施例2および比較例1は、熱処理工程が1回のみの比較例2~比較例4に比べて、母体中の析出物の量が多く、かつ、母体中の析出物が広く分散しているためと考えられる。そのため、上記実施の形態の銅合金線の製造方法によって得られる実施例1、実施例2および比較例1は、銅合金線の導電率を低下させることなく、銅合金線の機械的強度をさらに向上させることができる点で、熱処理工程が1回のみの比較例2~比較例4に比べて有利である。
次に、熱処理工程の熱処理(加熱)温度について、実施例1、実施例2および比較例1を比較する。表1に示すように、上記実施の形態において、熱処理(析出)工程(S17)の熱処理(加熱)温度を高くすればするほど、銅合金線の導電率が高くなっている。これらの結果は、熱処理により、伸線工程による残留応力が解放され、母体の結晶粒径が熱処理前に比べて大きくなることによる効果と、熱処理により、析出物(銅-ジルコニウム化合物)が析出することによって、母体(銅)からジルコニウムが追い出され、母体の銅の純度が高まることによる効果との相乗効果を示していると考えられる。なお、前述したように、銅にジルコニウムを添加した場合でも導電率はほとんど低下しないため、析出物(銅-ジルコニウム化合物)の量が多くなっても、導電率には影響が小さい。これらの結果より、銅合金線の導電率を高めるという観点からは、熱処理工程の温度は高い方が好ましい。なお、銅合金線を電線または図3に示すケーブル11の導体1として用いる場合には、導電率は87%IACS以上であることが好ましいため、熱処理温度は350℃以上であることが好ましい。
次に、表1に示すように、上記実施の形態において、熱処理(析出)工程(S17)の熱処理(加熱)温度を高くすればするほど、銅合金線の引張強度が小さくなっている。また、表1に示すように、上記実施の形態において、熱処理(析出)工程(S17)の熱処理(加熱)温度を高くすればするほど、銅合金線の0.2%耐力が小さくなっている。これらの結果は、銅合金線の引張強度および0.2%耐力に対しては、析出物(銅-ジルコニウム化合物)が析出することによって、析出物が転位運動の障害物として銅合金線を強化する析出強化法の効果よりも、熱処理により母体の結晶粒径が熱処理前に比べて大きくなって、結晶粒微細化による高強度化(粒界強化法)の逆の効果の方が大きく影響するということを示している。すなわち、銅合金線の引張強度および0.2%耐力を大きくするという観点からは、熱処理工程の温度は低い方が好ましい。なお、銅合金線を電線または図3に示すケーブル11の導体1として用いる場合には、引張強度は545MPa以上であることが好ましいため、熱処理温度は400℃以下であることが好ましい。
以上より、上記実施の形態において、熱処理(析出)工程(S17)における熱処理(加熱)温度は、導電率と機械的強度とのバランスから、350℃以上400℃以下が好ましい。
なお、表1には示していないが、上記実施の形態の熱処理(析出)工程(S15)において熱処理(加熱)温度を400℃とし、熱処理(析出)工程(S17)において、熱処理(加熱)温度をそれぞれ、350℃、400℃および450℃とした場合の、銅合金線の試料(直径0.08mm)の各物性値の測定結果は、それぞれ実施例1、実施例2および比較例1とほぼ同様の結果となった。そのため、1回目の熱処理工程である熱処理(析出)工程(S15)における熱処理(加熱)温度は、350℃以上400℃以下が好ましいが、表1に示す350℃に限定されるものではない。
続いて、銅合金線の結晶粒径の測定結果について説明する。図3は、上記実施の形態に係る銅合金線の結晶粒径の分布を示すグラフである。
結晶粒径の測定は、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction Patterns:電子線後方散乱回折)法を用いて、銅合金線の横断面(長手方向と直交する断面)の結晶粒径を面積円相当の直径で測定し、図3に示す結晶粒径の分布として求めた。なお、EBSD法とは、SEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)において、試料で反射した電子の回折パターンを検出器面上に投影し、その投影されたパターンから結晶方位を解析する方法である。上述した結晶粒径の測定において、横断面の測定領域は、約33.6μm2とした。
また、銅合金線の試料は、上記実施の形態の銅合金線の製造方法において、熱処理(析出)工程(S17)の熱処理(加熱)温度を350℃とした場合に製造されるものを用いた。
図3に示すように、本実施の形態の銅合金線においては、母体(銅)の結晶粒径の最大値が1μmであり、母体(銅)の平均粒径は0.24μmと測定された。図示しないが、上記実施の形態において熱処理(加熱)温度を350~400℃とした銅合金線は、全て結晶粒径の最大値が1μm以下であった。また、母体(銅)以外に数10nmの結晶が存在しており、これをEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光)分析したところ、銅-ジルコニウム化合物であることを確認した。
以上の結果より、本実施の形態の銅合金線の製造方法によって製造した銅合金線は、ジルコニウムを含む析出物が分散した銅合金線であって、結晶粒径が1μm以下であり、導電率が87%IACS以上であり、引張強度が545MPaである、と特定することができる。
続いて、本実施の形態の銅合金線の屈曲特性について説明する。図4は、上記実施の形態に係る銅合金線の屈曲試験の結果を示すグラフである。
屈曲試験は、以下の手順で行った。一般の屈曲試験機を用いて、一対の円柱状(半径R)の曲げ治具の間に銅合金線の試料をセットし、試料自体に荷重を負荷した状態(A)で、曲げ治具を動かして、曲げ治具に沿って試料を曲げる(B:元の位置に対して90度曲げる)。その後、元の位置(A)に戻した後に、先ほどと反対方向に試料を曲げる(C)。ここで、(A)→(B)→(A)→(C)→(A)の1サイクルを1回として、試料が破断するまでの回数を計測した。屈曲試験の条件は、荷重を8.8gとして、曲げ治具をR=5(ひずみ0.79%)のものと、R=10(ひずみ0.40%)のものとの2種類用意した。また、銅合金線の試料は、直径0.08mmであり、上記実施の形態の銅合金線の製造方法において、熱処理(析出)工程(S27)の熱処理(加熱)温度を350℃とした場合に製造されるもの(実施例1)を用いた。
図4に示すように、本実施の形態の銅合金線は、ひずみ0.40%のときに屈曲回数82064回となり、ひずみ0.79%のときに屈曲回数13968回となった。本実施の形態の銅合金線は、引張強度が594MPaおよび0.2%耐力が552MPa(表1参照)である。このように、本実施の形態の銅合金線は、優れた屈曲寿命を示すことがわかった。なお、今回の屈曲試験の条件は、ひずみは比較的小さく設定している。本実施の形態と比較例との比較から、ひずみの小さい領域においては、引張強度よりも0.2%耐力の方が、屈曲特性に大きな影響を与えるものと考えられる。
また、図3に示す本実施の形態のケーブル11は、導体1に本実施の形態の銅合金線を採用している。表1に示すように、本実施の形態の銅合金線(実施例1および実施例2)は、87%IACS以上の導電率を有し、かつ、545MPa以上の引張強度を有している。そして、特に、図4に示すように、本実施の形態の銅合金線は、耐屈曲性に優れている。そのため、本実施の形態のケーブル11は、例えばロボットケーブル(ロボットと接続可能なケーブル)等、特に屈曲耐性が要求されるケーブルとして、幅広く適用することができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
1 導体
2 絶縁層
3 介在
4 シース
10 電線
11 ケーブル

Claims (5)

  1. (a)ジルコニウムが銅に固溶している状態の銅材を溶体化処理して、過飽和固溶体の状態の前記銅材を形成する工程、
    (b)前記(a)工程の後、過飽和固溶体の状態の前記銅材を引き伸ばして第1線材を形成する工程、
    (c)前記(b)工程の後、前記第1線材を熱処理して、第1銅合金線を形成する工程、
    (d)前記(c)工程の後、前記第1銅合金線を引き伸ばして第2線材を形成する工程、
    (e)前記(d)工程の後、前記第2線材を熱処理して、銅の結晶粒径が1μm以下の第2銅合金線を形成する工程、
    を含み、
    前記第2銅合金線は、ジルコニウムを200重量ppm以上2000重量ppm以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、導電率が87%IACS以上であり、引張強度が545MPa以上であり、
    前記(c)工程では、前記第1銅合金線中にジルコニウムを含む析出物を析出させ、
    前記(d)工程では、前記第2線材中に前記析出物を分散させ、
    前記(e)工程では、前記第2線材を350~400℃において熱処理し、前記第2銅合金線中にジルコニウムを含む析出物を析出させる、銅合金線の製造方法。
  2. 請求項1記載の銅合金線の製造方法において、
    前記(c)工程では、前記第1線材を350~400℃において熱処理する、銅合金線の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2記載の銅合金線の製造方法において、
    前記銅材中のジルコニウムの含有率は、200重量ppm以上2000重量ppm以下である、銅合金線の製造方法。
  4. ジルコニウムを200重量ppm以上2000重量ppm以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、
    ジルコニウムを含む析出物が分散しており、
    銅の結晶粒径が1μm以下であり、
    導電率が87%IACS以上であり、
    引張強度が545MPa以上である、銅合金線。
  5. 請求項記載の銅合金線から形成される導体を備える、ケーブル。
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