1 実施の形態
以下、本発明に係るシート処理装置及びこれを備える画像形成装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
1.1 画像形成装置の構成
図1は、画像形成装置1の全体構成を示す概略正面図であり、同図では左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向で示している。なお、X軸とY軸の双方に直交する奥行方向を以下、Z軸方向という場合がある。
同図に示すように、画像形成装置1は、スキャナー部2と、これよりも下方であり、装置正面側に開口を有する内部空間(空洞部)7を隔てて配置されたプリンター部3と、内部空間7に収容されているシート処理部4(シート処理装置)と、スキャナー部2の装置正面側に配置されている操作部5と、本体制御部6とを備え、各種ジョブや各種機能を実行する、いわゆる胴内排紙型の複合機である。
各種ジョブには、原稿の画像を読み取るスキャンジョブと、原稿画像を読み取って得られた画像データに基づいてその画像をシートにプリントするコピージョブと、ネットワークを介して接続されている外部端末(不図示)からのジョブの要求を受け付けて、受け付けたジョブに係る画像をシートにプリントするプリントジョブが含まれる。各種機能には、プリント後のシート束に対して整合、針あり綴じ、針なし綴じ等を実行する後処理機能が含まれる。
スキャナー部2は、セットされている原稿を搬送して、その原稿の画像を読み取って画像データを得る。
プリンター部3は、電子写真方式により、スキャナー部2によって得られた画像データ又は外部端末からのプリントジョブのデータに基づいてシート上に画像を形成(プリント)する。
プリンター部3は、感光体ドラム10Y、10M、10C、10Kを有する作像部11Y、11M、11C、11Kと、中間転写ベルト12と、給紙カセット13と、露光部20などを備える。
露光部20は、形成すべき画像の画像データに基づき、感光体ドラム10Y~10Kを露光走査するためのレーザー光を出射する。このレーザー光の出射前に感光体ドラム10Y~10Kは、帯電部により一様に帯電されており、帯電された感光体ドラム10Y~10Kの表面が露光部20からのレーザー光により露光されて静電潜像が形成される。
作像部11Y~11Kごとに、感光体ドラム10Y~10Kに形成された静電潜像は、対応する色の現像剤が収容された現像部においてトナーで現像される。これにより、感光体ドラム10Y上にY(イエロー)色のトナー像が形成され、感光体ドラム10M上にM(マゼンタ)色のトナー像が形成され、感光体ドラム10C上にC(シアン)色のトナー像が形成され、感光体ドラム10K上にK(ブラック)色のトナー像が形成される。
感光体ドラム10Y~10K上に形成されたY~K色のトナー像のそれぞれは、周回走行する中間転写ベルト12上の同じ位置に重ね合わされるように一次転写される。これにより中間転写ベルト12上にY~K色のトナー像からなるカラートナー像が形成される。
給紙カセット13は、記録用のシートSを格納するものであり、給紙カセット13に格納されたシートSは、繰出ローラー14により1枚ずつ搬送路19に繰り出される。
給紙カセット13から搬送路19に繰り出されたシートSは、タイミングローラー対15を介して二次転写ローラー16まで上方に搬送される。
二次転写ローラー16は、二次転写位置で中間転写ベルト12に接して中間転写ベルト12との間で転写ニップを形成しており、その転写ニップをシートSが通過する際に、中間転写ベルト12上のカラートナー像がそのシートSに一括して二次転写される。これにより、シートS上にカラートナー像が形成される。カラートナー像が形成された後のシートSは、さらに上方の定着部17へ搬送される。
定着部17は、二次転写後のシートS上のカラートナー像を加熱、加圧して、シートSに定着させる。定着部17を通過したシートSは、排出ローラー対18により、シート処理部4に送られる。なお、プリンター部3は、電子写真方式に限られず、例えばインクジェット方式によるものでもよい。
シート処理部4は、プリンター部3の排出ローラー対18から1枚ずつ排出された複数枚のシートからなるシート束Sbを整合し、整合後のシート束Sbに対する綴じ処理、ここでは第1の綴ユニット101(針有り綴じ機)による針あり綴じと、第2の綴ユニット102(針無し綴じ機)による針なし綴じとを選択的に行う。綴じ処理後のシート束Sbは、排紙トレイ4a上に収容される。シート処理部4の具体的な構成については、後述する。
操作部5は、ユーザーが画像形成装置1の前に立ったときに操作し易い位置に配置されており、ユーザーによる入力操作、例えばコピー枚数の入力、コピーなどのジョブ開始の指示、ジョブ停止の指示、シート処理部4における綴じ処理、ここでは針あり綴じと針なし綴じの選択入力、選択された綴じ処理の実行指示などを受け付けて、受け付けた内容を本体制御部6に伝える。
本体制御部6は、操作部5が受け付けたユーザーからの入力情報に基づきスキャナー部2とプリンター部3を制御して、ユーザーの指示によるジョブを円滑に実行させる。また、綴じ処理の実行が指示された場合には、本体制御部6は、その綴じ処理の要求を示す処理要求を、シート処理制御部44に対して出力する。本体制御部6は、その綴じ処理をシート処理部4に実行させる。
1.2 シート処理部4の構成
シート処理部4は、シート搬送部41と、シート整合部42と、2つの綴ユニット101、102を含む綴部43と、シート処理制御部44を備える。
シート搬送部41は、搬送ローラー対411、412、413と、排出ローラー対414と、可撓性のパドル415を備える。
搬送ローラー対411、412、413は、プリンター部3の排出ローラー対18から1枚ずつ出力されたシートSを、シート処理部4内の搬送路40上を搬送させて、排出ローラー対414に送る。
綴じ処理を行わない場合、排出ローラー対414に送られたシートSは、そのまま排出ローラー対414により機外に排出され、排紙トレイ4aに収容される。
N(複数)枚のシートSからなるシート束Sbに対して綴じ処理を行う場合、排出ローラー対414に1枚ずつ順に送られたシートSは、図2(a)~(c)に示すように搬送される。すなわち、図2(a)に示すように1枚目のシートSの搬送方向後端Seが排出ローラー対414を通過する直前に、排出ローラー対414の回転方向が正転(実線で示す方向の回転)から逆転(破線で示す方向の回転)に切り替わる。この逆転により、シートSがスイッチバックして、これまでの後端Seを先頭に変えた状態でシートSがシート整合部42のトレイ420に向けて搬送される。以下、シートSの先端Seという。
トレイ420は、排出ローラー対414に近い側の一端側に対して遠い側の他端側が下方に位置するように傾斜している。この傾斜したトレイ420上にシートSが搬送されたことに同期して、図2(b)に示すようにパドル415が同図に示す方向に1回転する。
この1回転の間にパドル415の先端が撓んだ状態でトレイ420上に搬送されたシートSの上面に接して、シートSに回転方向に沿った力、つまりシートSをトレイ420の下端に配置されたストッパー424に向かわせる方向の力を付与する。
パドル415から付与された搬送力とトレイ420の傾斜とにより、トレイ420上のシートSは、トレイ420の傾斜面に沿って降下し、その先端Seがストッパー424に当たると停止する。このストッパー424がシートSを搬送方向に縦整合する整合手段として機能する。シートSの停止後、シート搬送方向に直交するシート幅方向(同図の紙面垂直方向に相当)の横整合が一対の整合板421、422(図3)により行われる。これにより、1枚目のシートSのトレイ420上への収容が終了する。
2枚目以降の各シートSについても、1枚目のシートSに対する排出ローラー対414によるスイッチバック、縦整合、横整合という一連の動作と同じ動作が繰り返し行われ、各シートSがトレイ420上に積載収容されていく。排出ローラー対414の近辺には、スイッチバックによりトレイ420上に搬送されるシートSを検出するセンサー(不図示)が配置されており、このセンサーによりトレイ420上に積載収容されたシートSの枚数が計数される。
N枚目(最後)のシートSがトレイ420上に積載収容されると、綴部43の綴ユニット101、102のうち、ユーザーにより指示された方の綴ユニットにより、トレイ420上のシート束Sbに対する綴じ処理が実行される。ユーザーにより針あり平行綴じが指示された場合、綴ユニット101が選択される。一方、針なし斜め綴じが指示された場合、綴ユニット102が選択され、綴ユニット102により、トレイ420上のシート束Sbの一の角部に対する針なし斜め綴じが実行される。
シート束Sbに対する綴じ処理が終了すると、図2(c)に示すように板状の搬送部材425がシート束Sbの先端Seに当接した状態で不図示のモーターの駆動力により排出ローラー対414に近づく方向に移動する。この搬送部材425の移動により、トレイ420上のシート束Sbが排出ローラー対414に向けて搬送される。搬送部材425によるシート束Sbの搬送に同期して、排出ローラー対414が正転駆動されており、搬送部材425により排出ローラー対414まで搬送されたシート束Sbは、排出ローラー対414により機外に排出され、排紙トレイ4a上に収容される。
トレイ420上からシート束Sbが排出されると、搬送部材425は、逆方向に移動して、元のホーム位置(図3)に戻される。
図3は、シート処理部4の概略平面図であり、トレイ420と、横整合を行う一対の整合板421、422と、ストッパー424と、搬送部材425と、綴ユニット101、102の位置関係を示している。ここで同図では、トレイ420上をシートSが搬送される方向をシート搬送方向、シート搬送方向に直交する幅方向(Z軸方向)をシート幅方向、シート搬送方向に平行かつトレイ420上におけるシート幅方向中央の位置を通るラインをセンターラインCLとして表している。また、トレイ420上に載置されているシート束Sbを、ここではA4サイズのシート束として示している。
一対の整合板421、422は、トレイ420上に1枚のシートSが搬送されて来る度に,破線で示すホーム位置からセンターラインCLに近づく方向にそのシートSのサイズに応じた整合位置まで移動した後、ホーム位置に戻る動作を繰り返す。例えば、搬送されて来るシートSがA4サイズ(シート幅方向長さが297mm)の場合、その整合位置(実線の位置)は、センターラインCLから距離La(=149mm)離れた位置になる。また、搬送されて来るシートSが例えばB5サイズ(シート幅方向長さが257mm)の場合、その整合位置(一点鎖線の位置)は、センターラインCLから距離Lb(=129mm)離れた位置になる。
1.3 綴ユニット101の構成
綴ユニット101は、針あり平行綴じを行うものであり、装置筐体45に設けられたレール191、192上を移動用駆動モーター190の駆動力によりシート幅方向に沿って移動する。
図4は、綴ユニット101を図3の矢印J方向から見たときの斜視図であり、綴じ対象のシート束Sbについても併せて示している。
同図に示すように綴ユニット101は、筐体110と、ヘッド部111と、針カートリッジ112を備える。筐体110の底部116には、下方に突出する2本のガイドピン118、119が設けられており、ガイドピン118、119が図3に示すレール191、192に沿って走行することで、綴ユニット101がシート幅方向に移動できる。
ヘッド部111は、シート幅方向に沿って平行な姿勢の針打込部121と針受部122とが綴じ用間隙123を介して対向配置されてなる。この綴じ用間隙123にシート束Sbの側縁部Sdが挿入された状態で、針打込部121が下方に移動して、シート幅方向に平行な状態のステープル針を針打込部121からシート束Sbを介して針受部122に打ち込む。これにより、整合後のシート束Sbがステープル針で綴じられる(針あり平行綴じ)。針打込部121と針受部122が綴じ部材になる。針打込部121の駆動は、針打込部駆動モーター117の駆動力により行われる。針カートリッジ112は、針打込部121にステープル針を供給する。
綴ユニット101は、通常、装置正面側であり、A4サイズのシート束Sbにおける装置正面側の角部Stに針あり平行綴じを施すためのホーム位置(図3の実線で示す位置)に待機している。そして、綴ユニット101は、シート束Sbの角部St以外の部分に針あり平行綴じを施す場合には、シート幅方向に沿って移動することで、シート束Sbにおける装置正面側の角部Stから装置背面側の角部Suまでの間の側縁部Sdのうち、指定された箇所をステープル綴じすることができる。なお、綴ユニット101がホーム位置にあることは、ホーム位置検出センサー193(図3)により検出される。
1.4 綴ユニット102の構成
綴ユニット102は、図5(a)及び(b)に示すように、綴部47(綴じ手段)と剥部48を備えている。また、綴ユニット102には、後述する図14に示すように、移動機構103(第一支持機構)が設けられている。以下、綴部47と剥部48をこの順に説明する。
(1)綴部47の構成
図6は、綴部47の構成を示す側面模式図である。
同図に示すように綴部47は、一対の圧着歯471(第一圧着部材)、圧着歯472(第二圧着部材)と、これを駆動する駆動機構473とを有する。
一対の圧着歯471、472のそれぞれは、複数の歯(不図示)が一定の間隔を開けて列状に並んでなり、シート束Sbを綴じる際には、シート束Sbを介して圧着歯471の歯が圧着歯472の歯と歯の間に入り込むようにシート束Sbを挟み込むことで、その挟み込まれたシート部分が凹凸状に変形して圧着される。
駆動機構473は、上アーム461と、下アーム462と、揺動軸463と、カム464と、圧縮コイルバネ465と、圧着歯駆動モーター466などを備え、これらは綴ユニット101の筐体430に支持されている。
上アーム461は、長手方向一端の下面に上側の圧着歯471が固着されており、長手方向他端には、カム464の周面460に当接するピン468が立設されている。
揺動軸463は、上アーム461の長手方向中央寄りの位置に設けられており、上アーム461は、揺動軸463を介して筐体430に、揺動軸463を中心に同図に示す矢印H方向とこれの逆である矢印I方向とに揺動自在になるように支持されている。
カム464は、側面視で略半円形状をした板状のカムであり、圧着歯駆動モーター466の回転駆動力がギアなどの駆動伝達機構(不図示)を介してカム464の回転軸467に伝わることで、回転軸467を中心に回転する。ここでは、カム464が矢印Eb方向に回転する場合を正回転、逆方向の回転を逆回転といい、カム464が正回転するときの圧着歯駆動モーター466の回転を正転、カム464が逆回転するときの圧着歯駆動モーター466の回転を逆転という。
回転角によってカム径が異なるカム464の回転により、カム464の周面460に当接する上アーム461のピン468に上アーム461を揺動させるための力が付与される。なお、上アーム461のピン468が常時、カム464の周面460に当接するように、上アーム461のピン468をカム464の周面460に向けて付勢する付勢力を上アーム461に付与する圧縮バネ(不図示)が配置されている。
下アーム462は、長手方向中央寄りの部分の上面に下側の圧着歯472が固着されており、長手方向一端が揺動軸463に揺動自在に支持され、他端が圧縮コイルバネ465を介して筐体430に支持されている。同図では圧縮コイルバネ465が自然長の状態を示している。圧縮コイルバネ465を設ける理由については、後述する。
このような構成において、カム464が同図に示すホーム位置(回転角を0°とする。)で停止している場合、下側の圧着歯472に対して上側の圧着歯471が上下方向に最も離れた位置、つまり一対の圧着歯471、472の離隔距離が最大になる。圧着歯471、472の離隔距離が最大になった状態がシート束Sbの受け入れ可能状態であり、離隔距離が最大になった一対の圧着歯471、472の間の空間470にトレイ420上に搬送されて来たシート束Sbの角部Suが挿入される。
圧着歯駆動モーター466の正転開始により、カム464がホーム位置から矢印Eb方向に正回転を開始すると、カム464から上アーム461のピン468に対してカム464の回転軸467から離れる方向の力が作用し続ける。これにより、上アーム461が揺動軸463を中心に矢印G方向に揺動する。
この上アーム461の揺動により、上アーム461の一端に固着されている上側の圧着歯471が下側の圧着歯472に近づく方向に下降する。カム464が二点鎖線で示す所定の角度(以下、「θa」とする。)まで回転したときに、圧着歯駆動モーター466が停止されて、カム464の正回転が停止される。カム464の回転中には、アブソリュート型のロータリーエンコーダー469によりカム464の回転角度θが随時検出されており、回転角度θが0°からθa°に至ったことが検出されると、圧着歯駆動モーター466の回転が停止される。ここでは、ロータリーエンコーダー469は、0°を基準に1°、2°・・・といった1°単位の絶対角度を示す角度検出信号を出力する。この角度検出信号から、カム464の現在の回転角度を知ることができる。
カム464が0°からθa°だけ正回転した時点で、二点鎖線で示すように、上側の圧着歯471が下側の圧着歯472に接触する位置になる。このとき、同図では示していないが圧着歯471、472間に介在するシート束Sbを挟んで、上側の圧着歯471が下側の圧着歯472を押圧することで針なし綴じが行われる。上側の圧着歯471の実線で示す位置を離隔位置、二点鎖線で示す位置を圧着位置という。
針なし綴じは、上側の圧着歯471と下側の圧着歯472でシート束Sbを構成する各シートSの繊維が相互に絡むようにシートSを変形させることで行われ、このシートSの変形には、かなり強い圧着力が必要になる。
この強い圧着力は、カム464から上アーム461への揺動力を強くすることにより行われるが、強い圧着力のためにシート束Sbを間に挟んでいても、圧着位置で上側の圧着歯471の先端と下側の圧着歯472の先端とが直に当たることがあり、これが針なし綴じを行う度に続くと、圧着歯471、472の摩耗が進行し易くなる。
そこで、本実施の形態では、上側の圧着歯471が下側の圧着歯472を押圧したときに、下側の圧着歯472が受けた押圧力により僅かに圧縮変形する圧縮コイルバネ465を設け、圧縮コイルバネ465が圧縮変形した分だけ、下側の圧着歯472が上側の圧着歯471から逃げる方向(下方)に移動するのを許容させる構成としている。
これにより、下側の圧着歯472が下方に全く動かない(圧着歯472の逃げを許容しない)構成よりも、圧着歯471、472が直接当たって摩耗するのを抑制でき、圧着歯471、472の摩耗の進行を抑制できる。
針なし綴じ後、圧着歯駆動モーター466の逆転が開始され、カム464が逆回転してホーム位置(回転角0°)に戻ったことが検出されると、圧着歯駆動モーター466が停止される。これにより、一対の圧着歯471、472の離隔距離が最大になる状態、つまりシート束Sbの受け入れ可能状態に戻ることができる。
(2)剥部48の構成
図7は、図5(a)の剥部48を矢印R方向から見た斜視図であり、説明に関係のない部材については、図示が省略されている。
図7に示すように剥部48は、薄板状の上スクレーパー481(剥がし部材)と下スクレーパー482(剥がし部材)と、上スクレーパー481と下スクレーパー482を駆動するための駆動機構483を備えている。
駆動機構483は、シャフト484と、シャフト484にその上から下に順番に嵌め込まれている可動カム486、固定カム485、可動カム487、ウォームホイール490と、上スクレーパー481を支持する上ブラケット488と、下スクレーパー482を支持する下ブラケット489と、スクレーパー駆動モーター491等を備えている。
ここで、可動カム486、固定カム485及び可動カム487は、上スクレーパー481及び下スクレーパー482を移動及び回転自在に支持する支持機構(第二支持機構)として機能している。また、シャフト484、ウォームホイール490、スクレーパー駆動モーター491等は、上スクレーパー481及び下スクレーパー482を移動及び回転させる駆動手段として機能している。
シャフト484は、その両端部が剥部48のフレーム480の天板480aと底板480bに回転自在に支持されている。
スクレーパー駆動モーター491の回転軸には、ウォームホイール490と歯合しているウォーム492が嵌め込まれている。スクレーパー駆動モーター491の回転により、その回転駆動力がウォーム492を介してウォームホイール490に伝わってシャフト484が回転する。
シャフト484の下端には、シャフト484の回転角度を検出するアブソリュート型のロータリーエンコーダー499が嵌め込まれており、ロータリーエンコーダー499から出力される角度検出信号によりシャフト484がどれだけ回転したかを知ることができる。具体的に、角度検出信号は、0°を基準に1°、2°・・・といった1°単位の絶対角度を示す信号である。
スクレーパー駆動モーター491は、正逆転の切り替えが可能であり、正転によりシャフト484を矢印T方向である正回転に回転させ、逆転に切り替えることにより、シャフト484を矢印U方向である逆回転させることができる。以下、シャフト484の回転軸方向を軸方向と略す。
固定カム485は、板状の端面カムであり、同図の吹き出しの分解拡大図に示すように平面視で楕円形の長軸の一方端側が短軸方向に沿って直線状に切り取られたような形状になっており、この切り取りにより形成された直線状の側縁485gがフレーム480の側板480cに固着されている。また、固定カム485の中央部に設けられた貫通孔485pをシャフト484が回転自在に挿通されている。
固定カム485は、その上面485iと下面485jのそれぞれがカム面になっており、上面485iには、貫通孔485pの周囲に、側縁485gに対して矢印U方向に平坦面485aと傾斜面485bと平坦面485cとがこの順に並ぶように設けられている。
平坦面485cは、傾斜面485bを挟んで平坦面485aよりも上方に位置し、上面485iは、平坦面485cを上基準面としたとき、上基準面である平坦面485cから傾斜面485bに沿って下降した位置に、上基準面よりも下の平坦面485aが存するという形状になっている。
同様に、下面485jには、貫通孔485pの周囲に、側縁485gに対して矢印U方向に平坦面485dと傾斜面485eと平坦面485fとがこの順に並ぶように設けられている。平坦面485dと傾斜面485eと平坦面485fは、上面485iの平坦面485aと傾斜面485bと平坦面485cと同じ大きさ、同じ形状であり、軸方向に直交する仮想平面を挟んで平坦面485aと傾斜面485bと平坦面485cと面対称の関係を有している。この関係から下面485jは、平坦面485fを下基準面としたとき、下基準面である平坦面485fから傾斜面485eに沿って上昇した位置に、下基準面よりも上の平坦面485dが存するという形状になる。
固定カム485よりも下に位置する可動カム487は、貫通孔487bを有する円筒状であり、その上面487iのうち外周縁の一部に、上方に突出してなる突出部487aが設けられている。この突出部487aは、固定カム485の下面485jに当接する。
可動カム487の貫通孔487bの内周面には、シャフト484の周面から突出している2本のピン484aが嵌まり込む2本の長溝487cが軸方向に沿って設けられている。長溝487cの幅は、ピン484aの径よりも僅かに大きくなっているので、可動カム487は、シャフト484のピン484aが長溝487cに沿って移動できる範囲内でシャフト484に対して軸方向に移動自在ということになる。また、シャフト484のピン484aが可動カム487の長溝487cに嵌まり込んでいることから、可動カム487は、シャフト484に対して回転方向には自由に回転することができず、シャフト484と一体で回転することになる。つまり、可動カム487は、シャフト484に対して軸方向の移動が許容されつつ回転方向の移動が制限される構成になっている。
固定カム485よりも上に位置する可動カム486についても、可動カム487と同様の構成になっている。具体的には、可動カム486は、貫通孔486bを有する円筒状であり、その下面486iのうち外周縁の一部に、下方に突出してなる突出部486aが設けられている。この突出部486aは、固定カム485の上面485iに当接する。
可動カム486の貫通孔486bの内周面にも、シャフト484の周面から突出している2本のピン484bが嵌まり込む2本の長溝486cが軸方向に沿って設けられている。このピン484bと長溝486cの係合により、可動カム486は、可動カム487と同様にシャフト484に対して軸方向の移動が許容されつつシャフト484と一体で回転する。
上ブラケット488は、板状のアーム488aと488bとが屈曲部488cを挟んで連続してなる金属製又は樹脂製の部材である。
アーム488aは、可動カム486の上面486uに固着されている。アーム488bは、側面視で、上面部488dと、これよりも下方に位置する下面部488fと、上面部488dと下面部488fを連結する側面部488eとを含むコの字状になっている。上面部488dは、屈曲部488cと連続している。下面部488fは、軸方向に直交する方向に平行な平面平板である。
上スクレーパー481は、厚みが例えば0.1~0.3mm程度の金属製の薄板であり、下面部488fの下面に接着などで固着されている基端部481aと、基端部481aから回転軸に直交する方向に延出し、下面部488fから突出している突出部481bを有し、突出部481bの先端縁481cが綴部47において綴じ処理後に上側の圧着歯471に引っ付いたままのシート束Sbを剥がす役割を果たす。
下ブラケット489も上ブラケット488と同様に、板状のアーム489aと489bとが屈曲部489cを挟んで連続してなる金属製又は樹脂製の部材である。
アーム489aは、可動カム487の下面487uに固着されている。アーム489bは、側面視で、屈曲部489cと連続している下面部489dと、これよりも上方に位置する上面部489fと、下面部489dと上面部489fを連結する側面部489eとを含むコの字状になっている。上面部489fは、軸方向に直交する方向に平行な平面平板である。
下スクレーパー482は、上スクレーパー481と同じ厚み、例えば0.1~0.3mm程度の金属製の薄板であり、上面部489fの上面に接着などで固着されている基端部482aと、基端部482aから回転軸に直交する方向であり、上スクレーパー481と同じ方向に延出し、上面部489fから突出している突出部482bを有し、その先端縁482cが綴部47において綴じ処理後に下側の圧着歯472に引っ付いたままのシート束Sbを剥がす役割を果たす。
上ブラケット488の屈曲部488cには、下方に伸びる円柱状の連結棒488gが立設されており、下ブラケット489の屈曲部489cには、上方に伸びる円筒状であり、連結棒488gが軸方向に移動自在に嵌め込まれる筒状部材489gが立設されている。
また、シャフト484には、可動カム486と、これよりも上方の位置でシャフト484に固定されたバネ受け部484eとの間に、可動カム486に対して下方への付勢力を付与する圧縮コイルバネ484gが介挿されている。この付勢力により、可動カム486の突出部486aが固定カム485の上面485iに常時、当接した状態になる。
同様に、可動カム487と、これよりも下方の位置でシャフト484に固定されたバネ受け部484fとの間に、可動カム487に対して上方への付勢力を付与する圧縮コイルバネ484hが介挿されている。この付勢力により、可動カム487の突出部487aが固定カム485の下面485jに常時、当接した状態になる。
(3)スクレーパーの動作
上スクレーパー481と下スクレーパー482は、駆動機構483のシャフト484の回転により図7に示す退避位置からシャフト484を中心に矢印T方向に90°まで正回転した後、矢印T方向とは逆の矢印U方向に90°逆回転して、元の退避位置に戻る揺動動作を行う。以下、この揺動動作を具体的に説明する。
まず、図7に示す退避位置では、シャフト484が停止しており、可動カム486の突出部486aが固定カム485の平坦面485cに接し、可動カム487の突出部487aが固定カム485の平坦面485fに接している。このときのシャフト484の回転角度を基準の絶対角度0°とする。上スクレーパー481と下スクレーパー482が退避位置で静止しているとき、上スクレーパー481と下スクレーパー482の間隔(以下、「スクレーパーの間隔」という。)がL0になっている。
シャフト484が矢印T方向に正回転を開始すると、その回転力が可動カム486、487に伝達され、シャフト484と一緒に可動カム486、487が正回転を開始する。可動カム486、487が正回転を開始すると、上ブラケット488、下ブラケット489を介して可動カム486、487に固着されている上スクレーパー481と下スクレーパー482も可動カム486、487と一体で正回転を開始する。
シャフト484の回転角が大きくなるに伴って、可動カム486、487の突出部486a、487aが固定カム485の平坦面485c、485fから傾斜面485b、485eを経て平坦面485a、485dにこの順に各面に接触した状態を維持しつつ移動していく。この移動により、可動カム486は、固定カム485の平坦面485cと485aの軸方向の高さ分だけ軸方向に下降し、可動カム487は、固定カム485の平坦面485fと485dの軸方向の高さ分だけ軸方向に上昇する。この可動カム486の軸方向の下降と可動カム487の軸方向の上昇により、スクレーパーの間隔も退避位置におけるL0から少しずつ狭まっていく。
図8(a)、(b)は、シャフト484の回転により上スクレーパー481、下スクレーパー482が移動している様子を説明するための斜視図である。具体的には、図8(a)は、シャフト484の回転角度が基準の0°から45°に至ったとき、図8(b)は、シャフト484の回転角度が90°に至ったときのそれぞれの可動カム486、487と上スクレーパー481、下スクレーパー482の回転方向における位置を示す図であり、説明に必要のない部材については図示を省略している。また、図8(b)については、上ブラケット488と下ブラケット489の一部を切り欠いて示している。
図8(a)に示すようにシャフト484が45°回転したとき、可動カム486の突出部486aが固定カム485の傾斜面485bを下降しつつ、可動カム487の突出部487aが固定カム485の傾斜面485eを上昇しており、スクレーパーの間隔がL11(<L0)になっている。
図8(b)に示すようにシャフト484が90°回転したとき、可動カム486の突出部486aが固定カム485の傾斜面485bから平坦面485aに至り、可動カム487の突出部487aが固定カム485の傾斜面485eから平坦面485dに至っており、スクレーパーの間隔が最も小さいL12(例えば、1mm程度)になっている。シャフト484が90°回転したときの上スクレーパー481と下スクレーパー482の位置を剥がし位置という。なお、同図では、シート束Sbを省略しているが、実際には後述のように針なし綴じ後のシート束Sbが上スクレーパー481と下スクレーパー482に上下から挟まれたようになる。
シャフト484が90°回転した時点で、矢印U方向への逆回転が開始され、可動カム486、487の突出部486a、487aが固定カム485の平坦面485a、485dから傾斜面485b、485eを経て平坦面485c、485fに至り、シャフト484の回転角度が基準の0°に戻ると、逆回転が停止される。これにより、上スクレーパー481と下スクレーパー482が退避位置に戻り(図7)、スクレーパーの揺動が終了する。
(4)スクレーパーと圧着歯との位置関係
図9(a)は、退避位置に存するスクレーパーと圧着歯との位置関係を説明するための側面模式図である。ここで、図9(a)では、圧着歯471、472が最大の離隔距離L5になった受け入れ可能状態を示している。また、一点鎖線400は、トレイ420上のシートSが、受け入れ可能状態の圧着歯471、472の間の空間470内に搬送されるときのシートの移動経路を仮想して示しており、ここでは、トレイ420のシート載置面と圧着歯471、472の間の中点とを結ぶ経路になっている。
図9(b)は、針なし綴じが実行されたシート束Sbに対して、上スクレーパー481と下スクレーパー482が退避位置(実線)から剥がし位置(破線)に至るまでの遷移の様子を段階的に示す側面模式図である。
図10(a)は、図9(b)において退避位置に存する上スクレーパー481及び下スクレーパー482と圧着歯471との平面視における位置関係を示す平面模式図であり、図10(b)は、図9(b)において剥がし位置に存する上スクレーパー481及び下スクレーパー482と圧着歯471との平面視における位置関係を示す平面模式図である。図10(a)、(b)では、シート束Sbの図示を省略している。
図11は、上スクレーパー481とトレイ420上のシート束Sbとの位置関係を説明するための平面模式図であり、退避位置に存する上スクレーパー481を実線で示し、剥がし位置に存する上スクレーパー481を二点鎖線で示している。
以下、スクレーパーが退避位置に存する場合と、退避位置から剥がし位置に向かって揺動する場合に分けて順に説明する。
(4-1)スクレーパーが退避位置に存する場合
図9(a)に示すように上スクレーパー481と下スクレーパー482が退避位置に存するときの側面視における圧着歯471、472との位置関係は、スクレーパーの間隔L0が圧着歯471、472の離隔距離L5よりも大きくなっている。また、上スクレーパー481(又は下スクレーパー482)と移動経路400との間隔L1が、上側の圧着歯471(又は下側の圧着歯472)と移動経路400との間隔L2よりも大きくなっている。
上スクレーパー481と下スクレーパー482が退避位置に存するときの圧着歯471との平面視における位置関係は、図10(a)に示すようにシャフト484を中心に圧着歯471の位置から矢印U方向に角度90°回転した位置が上スクレーパー481と下スクレーパー482の退避位置になるという関係を有している。
図9(a)、(b)と図10(a)から、退避位置の上スクレーパー481と下スクレーパー482は、受け入れ可能状態にある圧着歯471、472の間の空間470の外に位置し、圧着歯471、472に対し、移動経路400を基準としたときの上下方向の離隔距離の大小関係がL1>L2になっていることが判る。
このL1>L2の関係は、図9(a)に示すように退避位置の上スクレーパー481と下スクレーパー482が受け入れ可能状態の圧着歯471、472よりも、搬送されて来るシートSから離れていることを示している。従来では、側面視でスクレーパーが常時、圧着歯とシートとの間に介在し、L1<L2の大小関係になっているので、スクレーパーの厚み相当分、差し入れ可能なシート束の厚みが少なくなってしまう。
これに対し、本実施の形態では、退避位置の上スクレーパー481と下スクレーパー482は、受け入れ可能状態の圧着歯471、472よりも、搬送されて来るシートSから離れており、圧着歯とシートSとの間に介在しないので、従来構成よりも、スクレーパーの厚み相当分、差し入れ可能なシート束の厚み、つまりシートの綴じ可能最大枚数を増やすことができる。
上記のように針なし綴じにおけるシートの綴じ可能最大枚数は、通常10枚程度であるが、従来構成では、スクレーパーの厚み相当分、例えば2~3枚、少なくせざるを得なくなる。この2~3枚は、10枚に対して20~30%という大きな割合になる。本実施の形態では、綴部47の綴じ可能最大枚数のまま、例えば10枚のシートSからなるシート束Sbに対して針なし綴じを行うことができる。
また、図11に示すように退避位置の上スクレーパー481(実線)とシート束Sbとの平面視における位置関係は、上スクレーパー481の移動方向の先端縁481cの一部がシート束Sbの先端縁Se1とオーバーラップしている、つまりシート束Sbの先端縁Se1よりもシート搬送方向上流側に少し入り込んでいるという関係を有する。同図では、上スクレーパー481の退避位置から剥がし位置までの揺動角を90°にした場合に、その入り込み量がL7、例えば5mm程度になっている例を示している。
L7>0の関係を有することで、退避位置で既に、上スクレーパー481の一部がシート束Sbと平面視でオーバーラップしており、シート束Sbを構成する複数枚のシートSのうち最上位のシートSの先端Seが少し浮き上がっていても、上スクレーパー481の先端縁481cの方がその浮き上がった先端Seよりも上に位置する。従って、上スクレーパー481が退避位置から剥がし位置に移動する途中で、上スクレーパー481の先端縁481cが最上位のシートSの浮き上がった先端Seとこれよりも下のシートSの先端との間に潜り込んでシート束Sbの整合を乱すといったことが生ぜず、退避位置から剥がし位置へのスムーズな移動を行える。このことは、下スクレーパー482についても同様である。
(4-2)スクレーパーが退避位置から剥がし位置に揺動する場合
圧着歯471、472による針なし綴じが終了し、圧着歯471、472が図9(b)に示す離隔状態に戻ると、シャフト484の矢印T方向への正回転の開始により、上スクレーパー481と下スクレーパー482が退避位置から圧着歯471、472に近づく方向に移動する。具体的に、上スクレーパー481と下スクレーパー482は、針なし綴じ後のシート束Sbを挟んで相互に軸方向に近づきながら圧着歯471、472の間の空間470に向かって移動して行く(スクレーパーの往動)。
上スクレーパー481と下スクレーパー482が圧着歯471、472の間の空間470に入り、シャフト484が90°回転した時点で、破線で示す剥がし位置に至り、一旦停止する。このとき、上スクレーパー481と下スクレーパー482は、針なし斜め綴じ後のシート束Sbの上面Sbi、下面Sbjに接触した状態になる。剥がし位置は、上スクレーパー481が上側の圧着歯471よりも移動経路400に近く、下スクレーパー482が下側の圧着歯472よりも移動経路400に近い位置になっている。
上スクレーパー481と下スクレーパー482が剥がし位置に至ったときの綴ユニット102の外観を図5(b)に示す。また、剥がし位置に存する上スクレーパー481と下スクレーパー482を平面視した場合、図10(b)に示すように上スクレーパー481と下スクレーパー482が圧着歯471に重なったように見える。
上スクレーパー481と下スクレーパー482が剥がし位置に至り、一旦停止してから、シャフト484が矢印U方向に逆回転を開始することにより、図9(b)に示す剥がし位置(破線)に存する上スクレーパー481と下スクレーパー482が往動時と同じ経路を遡るようにして元の退避位置(実線)まで戻される(スクレーパーの復動)。
図9(b)では、針なし斜め綴じ後にシート束Sbが圧着歯471、472に引っ付いていない状態の例を説明したが、いずれか一方の圧着歯に引っ付いたままになった場合、スクレーパーの往動時にその圧着歯からシート束Sbが剥がされる。
図12は、上側の圧着歯471に引っ付いたままになったシート束Sbが上スクレーパー481により剥がされる様子を説明するための側面模式図である。同図に示すように往動中の上スクレーパー481が実線で示す位置に来たときに、上スクレーパー481の先端縁481cが上側の圧着歯471に引っ付いているシート束Sbの部分Srに当たり、シート束Sbに下方への押圧力Pを付与する。この押圧力Pにより、上側の圧着歯471に引っ付いているシート束Sbが圧着歯471から強制的に剥がされる。上スクレーパー481と下スクレーパー482が剥がし位置に至ったとき、図9(b)に示すように剥がされた後のシート束Sbが上スクレーパー481と下スクレーパー482に挟まれた状態になる。
上記では、シート束Sbが上側の圧着歯471に引っ付いたままになった場合の例を説明したが、下側の圧着歯472に引っ付いたままになった場合も同様に、下スクレーパー482の往動中に、下スクレーパー482の先端縁482cが下側の圧着歯472に引っ付いているシート束Sbに当たって上方への押圧力を付与することで、シート束Sbが下側の圧着歯472から剥がされる。
次に、上スクレーパー481の先端縁481cと下スクレーパー482の先端縁482cの形状について説明する。
図10(a)に示すように退避位置において上スクレーパー481と下スクレーパー482とは、平面視でその移動方向の先端縁481c、482cが平行ではなく、相互に反対方向に傾斜した形状になっている。傾斜形状とすることによりスクレーパーが楔のようになって、圧着歯に引っ付いているシート部分を徐々に引き剥がすことが可能になる。
また、相互に反対方向に傾斜した形状とすることにより、引き剥がしによってシート束Sbに加えられる加重の偏りを抑えて束ずれの抑制を図れる。具体的に、図13に示す平面模式図を用いて説明する。
図13に示すように、揺動中の上スクレーパー481と下スクレーパー482を平面視したとき、上スクレーパー481と下スクレーパー482が重なる領域(同図の網点で示す領域Sα)は、シート束Sbを上下から挟んでいる領域になる。上スクレーパー481と下スクレーパー482により上下から挟まれるシート束Sbの領域Sαでは、上スクレーパー481と下スクレーパー482のそれぞれとの接触による摩擦力が合計されるので、領域Sα全体に作用する摩擦力は大きくなる。ここで、シート束Sbを構成する複数枚のシートSのうち最上位のシートSの上面をシート束Sbの上面といい、最下位のシートSの下面をシート束Sbの下面という。
一方、上スクレーパー481のうち、平面視で下スクレーパー482と重ならない領域Sβは、シート束Sbの上面と接触しているが、シート束Sbを挟んでシート束Sbの下面側に下スクレーパー482が存在しない。同様に、下スクレーパー482のうち、平面視で上スクレーパー481と重ならない領域Sγは、シート束Sbの下面と接触しているが、シート束Sbを挟んでシート束Sbの上面側に上スクレーパー481が存在しない。
つまり、領域SβとSγでは、上スクレーパー481と下スクレーパー482のうち一方しかシート束Sbと接触しないので、上スクレーパー481と下スクレーパー482の両方から同時に挟まれる領域Sαよりも単位面積当たりの摩擦力が小さくなる。
上スクレーパー481、下スクレーパー482とシート束Sbとの摩擦力の小さい方が、シート束Sbの上面と下面を上スクレーパー481と下スクレーパー482が擦る摺擦力Qが小さくなり、シート束Sbへの負担を減らすことができる。
また、上スクレーパー481の移動方向の先端縁481cと下スクレーパー482の移動方向の先端縁482cとが、移動方向に直交する直線に対して相互に反対方向に同じ大きさの角度だけ傾斜する傾斜姿勢をとっているので、上スクレーパー481と下スクレーパーのそれぞれごとにシート束Sbとの接触による摺擦力Q(荷重)の作用する方向が矢印Qで示す方向に揃い、シート束Sbの束ずれを抑制できる。
なお、シート束Sbの束ずれなどが生じたとしても品質に影響を与えない程度の小さな場合には、相互に反対方向への傾斜姿勢に限られず、例えば移動方向に直交する直線に対する一方のスクレーパーの移動方向先端縁との角度の大きさと他方のスクレーパーの移動方向先端縁との角度の大きさとが異なるようになる傾斜姿勢とすることもできる。また、傾斜姿勢に限られず、例えば双方のスクレーパーの先端縁が平行及び/又は平面視で重なるようになる平行姿勢の構成をとることもできる。
圧着歯に引っ付いたシート束をその圧着歯から剥がすのに適したスクレーパーの先端縁の形状をとることができ、上記に代えて例えば、上スクレーパー481の先端縁481cと下スクレーパー482の先端縁482cのそれぞれが移動方向に直交する直線に対して同じ方向に傾斜する構成をとることもできる。
さらに、上記では、上スクレーパー481と下スクレーパー482が同時に圧着歯471、472の間の空間470に入って剥がし位置に至るとしたが、剥がし位置に至るタイミングは同時に限られない。例えば、一方のスクレーパーが他方のスクレーパーよりも先に剥がし位置に至るというように時間差を持たせる構成とすることもできる。この時間差を設けることにより、スクレーパー駆動モーター491に掛かる負荷の低減を図れる。
すなわち、針なし綴じ後のシート束Sbの綴じ部分Sj(図13)は、シート面に少なからず凹凸が生じている。剥がし位置に向かって移動中の上スクレーパー481と下スクレーパー482の先端縁481c、482cが剥がし位置で停止する直前にその綴じ部分Sjの凹凸の生じたシート面を通過する際にその凸の頂部に引っ掛かったようになると、その引っ掛かりが回転方向の動きの負荷になり、この回転負荷がスクレーパー駆動モーター491に掛かる負荷を大きくするおそれが生じる。
上スクレーパー481と下スクレーパー482が同時に剥がし位置に至る場合、上スクレーパー481の先端縁481cと下スクレーパー482の先端縁482cも同時に凹凸の生じた綴じ部分Sjを通過することになり、両方のスクレーパーに生じた回転負荷がスクレーパー駆動モーター491に同時に作用することになる。
これに対し、上スクレーパー481と下スクレーパー482が剥がし位置に至るタイミングを異ならせれば、上スクレーパー481に生じた回転負荷がスクレーパー駆動モーター491に掛かるタイミングと、下スクレーパー482に生じた回転負荷がスクレーパー駆動モーター491に掛かるタイミングがその時間差の分、ずれることになり、スクレーパー駆動モーター491に掛かる回転負荷が分散され、それだけ回転負荷を低減できる。
この回転負荷の低減により、例えばスクレーパー駆動モーター491がある程度、小さなトルクのもので足りるようになれば、大きなトルクのスクレーパー駆動モーター491を用いる場合よりもコスト低減を図ることができる。上記の時間差を持たせる方法としては、例えば上スクレーパー481と下スクレーパー482の回転方向における位置を最初から少しずらしておくことで実現できる。
また、固定カム485の傾斜面485b、485eの回転方向における位置を一方に対し他方を回転方向にずらした形状にすれば、上スクレーパー481と下スクレーパー482の復動時に、可動カム486の突出部486aが傾斜面485bを昇るタイミングと可動カム487の突出部487aが傾斜面485eを下るタイミングをずらすことができ、同タイミングで傾斜面を、それぞれ、昇り、下る構成よりもスクレーパー駆動モーター491に掛かる負荷の低減を図れる。
(5)綴ユニット102の移動機構
図14は、装置背面側から綴ユニット102とこれの移動機構103を見たときの概略斜視図であり、装置筐体45に固着された本体フレーム90も併せて示している。移動機構103は、駆動部151(第一駆動手段)と支持板152を含み、本体フレーム90は、板状のベース91と、これよりも厚みの厚い板状のガイド部材92を含む。
図15は、図14に示す綴ユニット102と移動機構103と本体フレーム90の分解斜視図であり、ベース91を挟んで上側に駆動部151が位置し、下側にガイド部材92、支持板152、綴ユニット102がこの順に上から下に位置する関係になっている。
板状のベース91には、Z軸方向に長い3つの長孔(透孔)93、94、95がこの順にX軸方向に並ぶように穿設されている。ガイド部材92にも、Z軸方向に直線状に長い長孔(透孔)89が穿設されている。長孔89の長手方向両側の端部89a、89bは、平面視で円弧形状になっている。長孔94、89のそれぞれは、Z軸(シート幅方向)に平行で略同じ大きさになっており、両方の長孔94、89が上下方向に重なった位置関係になるようにガイド部材92がベース91の下面にねじ等で固着されている。なお、同図に示す破線96は、ベース91の下面のうち、ガイド部材92が固着される領域の外郭を仮想して示している。
駆動部151は、天板170と、天板170の下面から下方に向かって延出されたロッド171及び固定軸172と、上端が天板170の透孔180に嵌め込まれた軸受181に回転自在に支持されている回転軸173とを備える。
ロッド171の下端174は、ベース91の長孔93を通って支持板152に設けられた穴71に嵌め込まれ、接着剤などで支持板152に固着されている。固定軸172は、横断面が円形であり、その下端176が、ベース91の長孔94、ガイド部材92の長孔89を通って支持板152に設けられた穴73に嵌め込まれ、接着剤などで支持板152に固着されている。回転軸173の下端179は、ベース91の長孔95を通り、支持板152の穴72に嵌め込まれた軸受75に回転自在に支持されている。
綴ユニット102は、その天板105が支持板152の下面にねじ留めされることなどにより支持板152に固着されている。
このように綴ユニット102と駆動部151とが支持板152を介して一体で本体フレーム90に対して一定の間隔を維持した状態で支持されている。
固定軸172の下端176よりも少し上の位置には、ガイド部材92の長孔89に係合する円筒状のカラー175が固定軸172に回転自在に嵌め込まれている。ここでは、カラー175の外径がガイド部材92の長孔89の幅の大きさと略等しくなっており、カラー175がガイド部材92の長孔89に嵌め込まれた状態で長孔89に沿って自在に移動できるようになっている。
回転軸173の下端179よりも少し上の位置には、平ギア209が回転軸173に対して回転不可なように嵌め込まれている。回転軸173は、後述の駆動モーター201(図17)の回転駆動力により回転し、回転軸173の回転により、回転軸173と一体で平ギア209が同方向に回転する。
平ギア209は、ガイド部材92の外側縁に設けられたラック80に歯合されている。ラック80は、長孔89に沿った直線部81とこれに連続する円弧部82とを有する。このラック80の円弧部82と、長孔89の両端部のうち円弧部82に近い方の円弧形状の端部89aとは、固定軸172の軸心を中心とする同心円の関係になっている。
固定軸172のカラー175がガイド部材92の長孔89の端部89aに位置した状態で、ラック80と歯合する平ギア209が矢印Ec方向に回転してラック80の円弧部82から直線部81に移動することで、駆動部151が支持板152と綴ユニット102と一体で固定軸172を中心に本体フレーム90に対して矢印A方向に回転運動した後、長孔89に沿って矢印C方向(シート幅方向に相当)に直線運動する。
この直線運動の前の回転運動が綴ユニット102を図3に示す退避姿勢(破線)からA4綴じ位置での傾斜姿勢(実線)まで揺動させる動作に相当し、直線運動が綴ユニット102を図3に示すA4綴じ位置(実線)からB5綴じ位置(一点鎖線)に平行移動させる動作に相当する。この意味で、綴ユニット102の移動機構103は、傾斜姿勢の綴ユニット102をその傾斜姿勢のままシート幅方向に沿って平行移動させる移動手段として機能する。
図16(a)~(c)は、綴ユニット102が退避位置から傾斜姿勢のA4綴じ位置を経てB5綴じ位置まで遷移する様子を模式的に示す平面図であり、説明を分かり易くするために、ガイド部材92と支持板152と綴ユニット102のヘッド部130と平ギア209だけを示している。
図16(a)は、綴ユニット102が退避位置に存している場合を示しており、綴ユニット102がシート搬送方向に沿って平行な姿勢で、ヘッド部130がシート束Sbよりも装置背面側に退避しており、シート束Sbに対する針なし綴じを行えない状態になっている。ここで、綴ユニット102の本体120の側面106、107は、略平面であり、退避位置において側面106、107がシート搬送方向に平行になっている。ここで、綴ユニット102が退避位置に存している場合、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とは、剥がし位置に存する、としてもよい。なお、図16(a)、(b)及び(c)においては、簡略化のため、剥部48の記載を省略している。
また、綴ユニット102が退避位置に退避している場合、駆動部151の平ギア209は、ガイド部材92のラック80の円弧部82に歯合しており、固定軸172に嵌め込まれているカラー175がガイド部材92の長孔89の端部89aに位置している。
上記のようにラック80の円弧部82と長孔89の円弧形状の端部89aとは、固定軸172の軸心を中心とする同心円の関係になっている。そして、上記のようにベース91に固着されている不動のガイド部材92に対して、支持板152と綴ユニット102とが、平ギア209が嵌め込まれている回転軸173とカラー175が嵌め込まれている固定軸172と共に一体で動く構成になっている。
このため、平ギア209が矢印Ec方向に回転を開始してラック80の円弧部82に沿って直線部81の方に移動をし始めると、平ギア209が嵌め込まれている回転軸173を介して駆動部151に、固定軸172の軸心を中心に矢印A方向に回転する力が作用する。この力の作用により、支持板152を介して駆動部151と一体である綴ユニット102が固定軸172の軸心(所定の軸)を中心に矢印F方向に揺動を開始する。この固定軸172の軸心が綴ユニット102の揺動軸129(図3)に相当する。
綴ユニット102の揺動の際に、平面視でガイド部材92のラック80とは反対側に存する曲面部分88に沿って支持板152上に立設された回転可能なコロ部材155が案内されることで、揺動がスムーズに行われるようになっている。
退避位置にある綴ユニット102が退避姿勢から固定軸172の軸心を中心に矢印F方向に45°の角度だけ揺動したとき、図16(b)に示すように綴ユニット102のヘッド部130がシート搬送方向に対して45°傾斜した姿勢になる。このとき平ギア209は、ラック80の円弧部82と直線部81の境界の位置まで移動している。図16(b)に示す綴ユニット102の位置がA4綴じ位置になり、トレイ420上のA4サイズのシート束Sb(A4)の角部Suに対して針なし斜め綴じすることができる。
さらに、平ギア209の回転が継続し、平ギア209がラック80の直線部81を移動し始めると、回転軸173と固定軸172との間の距離が一定であり、ガイド部材92がベース91に固着されて動かないという関係から、平ギア209が嵌め込まれている回転軸173を介して駆動部151に矢印C方向(長孔89の長手方向一方の端部89aから他方の端部89bに向かう方向)に沿った力が作用する。
この力の作用により、支持板152を介して駆動部151と一体である綴ユニット102がシート搬送方向に対して45°傾斜した姿勢のまま、ガイド部材92に対して、矢印C方向に沿って直線移動、つまり平行移動し始める。平行移動し始めてから、図16(c)に示すように綴ユニット102がB5サイズのシート束Sb(B5)に対応する位置、すなわちA4綴じ位置からδ(=20)mmだけ平行移動すると、B5綴じ位置になり、トレイ420上のB5サイズのシート束Sb(B5)の角部Suに対して針なし斜め綴じすることができる。なお、綴ユニット102をB5綴じ位置からA4綴じ位置を経て退避姿勢まで戻すには、平ギア209を逆転させることで行える。
このように平ギア209とガイド部材92が綴ユニット102の退避姿勢と傾斜姿勢及びA4綴じ位置とB5綴じ位置をそれぞれ切り替える手段として機能する。次に、駆動部151における平ギア209の回転駆動機構を説明する。
(6)駆動部151の構成
図17は、駆動部151の具体的な構成を示す分解斜視図であり、天板170を取り外した状態を示しており、ロッド171の図示を省略している。
同図に示すように駆動部151は、駆動モーター201と、これの回転軸に装着されたギア201aと、回転軸202aに回転自在に嵌め込まれ、ギア201aと歯合するギア202と、回転軸204の一方の端部に嵌め込まれ、ギア202と歯合するギア203と、回転軸204の他方の端部に嵌め込まれている円筒状のウォーム205と、固定軸172に回転自在に嵌め込まれ、ウォーム205と歯合するウォームホイール206と、回転軸173に嵌め込まれ、ウォームホイール206に歯合するギア208と、ギア208よりも少し下の位置で回転軸173に嵌め込まれている平ギア209を有する。
ギア203とウォーム205は、回転軸204に固着されており、回転軸204と一体で同方向に回転する。また、ギア208と平ギア209は、回転軸173に固着されており、回転軸173と一体で同方向に回転する。
駆動モーター201が正転、ここでは回転軸に嵌め込まれたギア201aが矢印P方向に回転すると、駆動モーター201の回転駆動力がギア202、ギア203、回転軸204、ウォーム205、ウォームホイール206、ギア208、回転軸173を介して平ギア209に伝達され、平ギア209が矢印Ec方向に回転する。ギア201aからギア208までの各ギアと回転軸204、173とが駆動モーター201の回転駆動力を平ギア209に伝達する駆動伝達機構200を構成する。
駆動モーター201が逆転、つまりギア201aが矢印P方向とは逆方向に回転すると、正転時とは逆方向の回転駆動力が駆動モーター201から駆動伝達機構200を介して平ギア209に伝達され、平ギア209が矢印Ec方向とは逆方向に回転する。
本実施の形態では、後述のように綴ユニット102が退避位置にあるときを基準に、駆動モーター201がどれだけ回転したかを把握することによって、綴ユニット102が退避位置からA4綴じ位置又はB5綴じ位置に遷移したことを判断する構成になっている。この駆動モーター201の回転角(トータルの回転量)を検出する検出部210が駆動部151に設けられている。
検出部210は、回転軸211と、回転軸211に嵌め込まれ、ウォームホイール206に歯合するギア212と、回転軸211に嵌め込まれた円形状の被検出板213と、回転量検出センサー214を含む。
回転軸211は、上端が天板170(図15)に回転自在に支持されており、下端が駆動部151に設けられた不図示の支持部材に回転自在に支持されている。ギア212と被検出板213は、回転軸211に固着されており、ウォームホイール206の回転によりギア212が回転すると、そのギア212と一体で被検出板213も同方向に回転する。
回転量検出センサー214は、発光部221と受光部222を有する透過型の光学センサーであり、発光部221から発せられた光が受光部222で受光されると、その受光量に応じた電気信号、ここではH又はLレベルの信号を出力する。
被検出板213は、その外周部215が発光部221と受光部222との間の検出空間223に入り込むような位置に配置され、その外周部215の一部には、回転方向に沿った異なる2つの位置に切り欠き部231、232が設けられている。被検出板213が矢印Ea方向に1回転する間、外周部215のうち、切り欠き部231、232以外の板部分215a、215b、215cのいずれかが発光部221と受光部222との間の検出空間223に介在したとき、発光部221から発せられた光は、その板部分で遮蔽されるので、受光部222で受光されなくなる。この場合、回転量検出センサー214は、Lレベルの信号を出力する。一方、外周部215の切り欠き部231、232のいずれかが検出空間223に介在したとき、発光部221から発せられた光は、板部分215aと215bとの間の空間又は板部分215bと215cとの間の空間を通過して、受光部222で受光される。この場合、回転量検出センサー214は、Hレベルの信号を出力する。
ここでは、駆動モーター201の停止により綴ユニット102が退避位置で静止しているとき、被検出板213も静止しており、この状態で被検出板213の板部分215aが回転量検出センサー214により検出され、回転量検出センサー214からLレベルの信号を出力されるようになっている。
駆動モーター201の回転が開始され、被検出板213が矢印Ea方向に回転を開始すると、回転量検出センサー214の検出空間223を被検出板213の板部分215aのエッジ215dが通過する。このエッジ215dの通過により回転量検出センサー214の出力信号がLレベルからHレベルに切り替わる。この後も駆動モーター201の回転が継続され、回転量検出センサー214の検出空間223を被検出板213の板部分215bのエッジ215eが通過後、次にエッジ215fが通過する。このエッジ215e、215fが順番に通過することにより、回転量検出センサー214の出力信号がHレベルからLレベルを経てから再度、Hレベルに切り替わる。
つまり、駆動モーター201の回転が開始されてから回転量検出センサー214の出力信号をモニターし、最初のLレベルからHレベルへの切り替わりが切り欠き部231の検出になり、2回目のLレベルからHレベルへの切り替わりが切り欠き部232の検出になる。このレベルの切り替え検出が実質、駆動モーター201の回転開始からのトータルの回転量の検出になる。
綴ユニット102が退避位置からA4綴じ位置まで揺動したときに最初の切り欠き部231が検出され、A4綴じ位置を経てB5綴じ位置まで平行移動したときに2回目の切り欠き部231が検出されるように、被検出板213における切り欠き部231、232の形成位置を予め決めておけば、回転量検出センサー214の出力信号を監視することで、綴ユニット102が退避位置からA4綴じ位置まで移動したこと、及び退避位置からA4綴じ位置を経てB5綴じ位置まで移動したことをそれぞれ検出することができる。
なお、綴ユニット102の移動は、基準である退避位置を出発点にしており、退避位置を出発点にしない移動、具体的にはA4綴じ位置(又はB綴じ位置)で停止している場合にB5綴じ位置(又はA4綴じ位置)への移動の場合には、一旦、綴ユニット102が退避位置まで戻される。その後、退避位置の綴ユニット102がA4綴じ位置(又はB5綴じ位置)まで移動される。基準の退避位置からの移動量を検出することで、A4綴じ位置とB5綴じ位置の位置決め精度の向上を図れる。
綴ユニット102が退避位置に位置していることの検出は、図15と図16に示す支持板152に設けられた突出片153がベース91の下面に取着された退避位置検出センサー154(図15)により検出されることで行われる。
(7)綴ユニット102の姿勢
図3に戻って、綴ユニット102は、上述したように、整合後のシート束Sbの一の角部、ここでは装置背面側の角部Suにおける所定の綴じ位置に針なし斜め綴じするものであり、平面視で細長形状をしている。綴ユニット102は、本体120と、綴じ部材としての一対の圧着歯471、472(図6)を有するヘッド部130とが長手方向に配列されたようになっている。
綴ユニット102は、破線で示す退避姿勢と実線で示す傾斜姿勢との間を、長手方向にヘッド部130とは反対側の本体120に存する揺動軸129を中心に揺動可能であり、かつ傾斜姿勢のまま実線で示す位置と一点鎖線で示す位置との間をシート幅方向に平行移動可能になっている。
ここで、傾斜姿勢は、綴ユニット102の長手方向がシート搬送方向に対して所定角度、ここでは45°傾斜した姿勢である。実線で示す傾斜姿勢の綴ユニット102のシート幅方向における位置は、トレイ420上のA4サイズのシート束Sb(A4)に対して針なし斜め綴じするための位置である。また、一点鎖線で示す傾斜姿勢の綴ユニット102のシート幅方向における位置は、トレイ420上のB5サイズのシート束Sb(B5)の角部Suに対して針なし斜め綴じするための位置である。
この傾斜姿勢では、ヘッド部130の圧着歯471の歯列の方向がシート搬送方向に対して45°傾斜しており、トレイ420上のシート束Sbの角部Suのシート部分を挟んで一対の圧着歯471、472が上下方向に離隔した状態になっている。実線で示す綴ユニット102のシート幅方向における位置をA4綴じ位置、一点鎖線で示す綴ユニット102のシート幅方向における位置をB5綴じ位置という。B5綴じ位置は、A4綴じ位置よりもシート幅方向にトレイ420のシート幅方向中央(CL)寄りになっている。
破線で示す退避姿勢は、綴ユニット102の長手方向がシート搬送方向に平行であり、綴ユニット102のヘッド部130がトレイ420上のシート束Sbに対して装置背面側に退避した姿勢である。綴ユニット102の退避姿勢とA4綴じ位置における傾斜姿勢との一方から他方への切り替えは、揺動軸129を中心に矢印A方向とこれの逆の矢印B方向に綴ユニット102を揺動することで行われる。
揺動軸129は、シート束Sbの角部Suのシート面に直交する方向に平行な所定の軸であり、綴ユニット102が傾斜姿勢から揺動軸129を中心に、ヘッド部130に配される圧着歯471、472がシート面に沿ってシート束Sbの角部Suから装置背面側に遠ざかる方向に揺動することにより退避姿勢まで遷移するようになる。
このような綴ユニット102の姿勢変更は、他方の綴ユニット101との干渉(衝突)を防止するために行われる。
この干渉の防止は、綴ユニット101によりシート束Sbの角部Suを平行綴じするジョブを実行する場合、装置正面側から装置背面側に向かって移動する綴ユニット101が装置背面側の角部Suに対応する位置(角部Suを綴じるための所定位置)に至る前に、綴ユニット102を傾斜姿勢から退避姿勢に遷移させておくことにより行われる。綴ユニット102が傾斜姿勢のまま、綴ユニット101を装置正面側から装置背面側に移動させると、その移動途中で綴ユニット102との衝突が生じるからである。
もちろん、退避姿勢は、所定位置に至った後の綴ユニット101と干渉を生じさせない綴ユニット102の姿勢(位置)であり、綴ユニット101、102の大きさや形状に応じて予め決められる。以下、綴ユニット102が退避姿勢にあるときの位置を退避位置という場合がある。
綴ユニット102を揺動させる機構をとっているのは、装置の大型化を抑制するためである。
(比較例)
ここで、図24(a)に、複数枚のシートSが1枚ずつトレイ(不図示)上に搬送され、積載収容されたシート束Sbを綴じる2つの綴じユニット910、920を備える比較例としての構成例を説明するための概略平面図を示す。
同図に示す綴じユニット910は、シートの側縁900に沿ってシート幅方向に移動可能であり、シート束Sbにおける装置正面側の角部901から装置背面側の角部902までの間のいずれかの箇所に綴じ部材911で針あり平行綴じを施す。綴じユニット920は、シート搬送方向に対して傾斜する傾斜姿勢に配置されており、シート束Sbの角部902に圧着歯921で針なし斜め綴じを施す。
この構成例において、綴じユニット920を用いてシート束Sbの角部902に針なし斜め綴じを行うのに何も問題は生じない。しかし、綴じユニット910を用いてシート束Sbの角部902に針あり平行綴じを行う場合には、双方の綴じユニットが干渉しないように、綴じユニット920をシート束Sbの角部902から遠ざかる方向に退避させる必要が生じる。
この綴じユニット920の退避の方法として、例えば綴じユニット910の移動方法と同様に、傾斜姿勢の綴じユニット920を図24(a)に示す綴じ位置から図24(b)に示す退避位置までシート幅方向に平行移動させる方法をとれば、退避位置に移動後の綴じユニット920の筐体のうち、装置背面側の端部922がシート束Sbに対して装置背面側にかなり出っ張ったようになる。綴じユニット920の綴じ位置から退避位置までの移動幅が大きくなるほど装置内でその移動を許容するためのスペース(図23(a)に示す距離Lαと図24(b)に示す距離Lβの差分に相当)を大きくとらなければならず、それだけ装置が大型化することになる。
この装置大型化の問題は、例えば綴じユニット910が針なし綴じ方式のものであり、綴じユニット920が針あり綴じ方式のものであっても、両方の綴じユニットの干渉を防止すべく、綴じユニット920を綴じ位置から退避させる構成に同様に生じ得る。
上記に説明したように、仮に実線で示す傾斜姿勢の綴ユニット102を、ヘッド部130がシート束Sbの角部Suよりも装置背面側に位置するまで、シート幅方向に装置背面側に平行移動させれば、綴ユニット102の装置背面側の角部128が図3に示す位置に対して装置背面側にかなり大きく突き出したようになる。このようになれば、装置筐体45の背面カバー45aを図3に示す位置よりもさらに装置背面側にずらした位置に変更する必要があり、それだけシート幅方向に装置が大型化することになる。
これに対し、本実施の形態のように綴ユニット102を平行移動ではなく揺動させる機構をとれば、図3に示すように綴ユニット102の角部128のシート幅方向における位置が退避位置でもA4綴じ位置でもあまり変わらないようにすることができ、平行移動する構成よりもシート幅方向に装置の大型化を抑制できることになる。
例えば、トレイ420上に載置されているA4サイズのシートSの装置背面側の側縁Szからシート幅方向に退避姿勢の綴ユニット102のうち最も装置背面側に位置する部分までの距離をLγとすれば、距離Lγは、平行移動の場合の例を示した図24(b)に示す距離Lβよりも小さくなる。その差分(=Lβ-Lγ)だけ、本実施の形態における揺動機構の方が平行移動の構成よりもシート幅方向に装置小型化を図れることが判る。
綴ユニット102による針なし斜め綴じは、一対の圧着歯(同図では上側の圧着歯471のみを破線で示している)でシート束Sbの角部Suのシート部分を挟み込んで強い力で圧着することにより行われる。針なし斜め綴じ可能なシート枚数(綴じ可能最大枚数)は、ここでは10枚である。シート束Sbの圧着後、一対の圧着歯が相対的に離隔されるが、上記で説明したように一方の圧着歯にシート束Sbが引っ付いたままになることがあるので、これを剥がすための剥がし部材として、上述したように、上スクレーパー481と下スクレーパー482(図5(a))が設けられている。
(8)綴ユニット102の位置の遷移と、剥部18のスクレーパーの位置の遷移との関係
次に、図18(a)~(e)を用いて、綴ユニット102の位置の遷移と、剥部18のスクレーパー481の位置の遷移との関係について、説明する。なお、図18(a)~(e)においては、簡略化のため、スクレーパー482等の部品の記載を省略している。
図18(a)には、例えば、A4綴じ位置に、綴ユニット102が存する場合の、綴部48のスクレーパー481の位置を示している。スクレーパー481は、この図に示すように、退避位置に存在する。
以降、綴ユニット102が、A4綴じ位置から退避位置に揺動する場合を例とする。
図18(b)では、綴ユニット102は、継続して、A4綴じ位置に存しており、綴部48のスクレーパー481は、剥がし位置に向かって回転している。
次に、図18(c)では、綴ユニット102は、継続して、A4綴じ位置に存しており、綴部48のスクレーパー481は、剥がし位置内に収容される。
次に、図18(d)では、綴ユニット102は、揺動軸129を中心に、揺動して、退避位置までの移動を開始する。
最後に、図18(e)では、綴ユニット102は、装置背面側の退避位置に移動を完了する。
以上述べたように、図18(a)~(e)に示す例では、スクレーパー481が剥がし位置まで回転して移動した後に、綴ユニット102は、揺動軸129を中心にして、揺動して、退避位置に至る。このため、綴ユニット102の回転半径が小さくなり、綴ユニット102が、その他の部品、例えば、トレイ420、綴ユニット101と干渉することを防ぐことができる。
1.5 シート処理制御部44の構成
図19は、シート処理制御部44の構成を示すブロック図である。
同図に示すようにシート処理制御部44は、指示部440と第一制御部441と第二制御部442を備える。
シート処理制御部44は、マイクロプロセッサーとメモリとを備えたコンピューターシステムであるとしてもよい。メモリは、制御用のコンピュータープログラムを記憶しており、マイクロプロセッサーは、コンピュータープログラムに従って動作するとしてもよい。
(1)指示部440
指示部440(受信手段)は、本体制御部6から、綴じ処理の要求を示す処理要求を受信する。
指示部440は、画像形成装置1への電源オン時における初期設定の実行と、本体制御部6からジョブ毎に受け付けた綴じ処理要求に応じた綴じ処理の実行を第一制御部441と第二制御部442に指示する。
ここで、綴じ処理要求には、綴じ対象のシートのサイズ(ここではA4、B5)と枚数、綴じ方法(ここでは、針ありと針なし)、綴じ位置(ここでは、シートの角部St、Su、角部以外の場合には、基準となる角部Stからの距離など)が含まれる。
(2)第一制御部441
第一制御部441は、針あり平行綴じを行う綴ユニット101を制御する。具体的には、指示部440から初期設定の実行指示を受け付けると、移動用駆動モーター190を制御して、綴ユニット101をホーム位置(図3)に戻す。綴ユニット101がホーム位置に存するか否かは、ホーム位置検出センサー193による綴ユニット101のホーム位置の存否を示す検出結果により判断する。
その後、第一制御部441は、指示部440からジョブ毎に針あり綴じ処理の実行指示を受け付けると、移動用駆動モーター190を制御して、ホーム位置に存する綴ユニット101を、指示された綴じ位置までの移動に要する距離だけ移動させる。そして、綴ユニット101がその綴じ位置まで移動すると、針打込部駆動モーター117を制御してシート束Sbに針あり平行綴じを行わせる。シート束Sbにおける装置背面側の角部Suに対する綴じ処理についても、ホーム位置から角部Suに綴じ処理を行うための所定位置までの移動距離が予めシートサイズごとに決められており、その距離だけ綴ユニット101を移動させることで行われる。このように綴ユニット101は、シート束Sbの角部Suを含む異なる箇所を選択的に針あり平行綴じをすることができる。
また、第一制御部441は、ジョブ毎にシート束Sbの角部Suへの針あり平行綴じの実行指示を受け付けた場合、ホーム位置に存する綴ユニット101の、そのシート束Sbの角部Suへの移動開始に先立って、角部Suへの針あり綴じを開始する旨を示す情報(角部綴じ情報)を第二制御部442に送り、角部Suへの針あり綴じのために綴ユニット101の移動を開始させることを第二制御部442に知らせる。その後、第二制御部442から綴ユニット102の退避位置への退避が完了したことを示す退避完了情報を受信すると、綴ユニット101の移動を開始させる。
(3)第二制御部442
第二制御部442は、針なし斜め綴じを行う綴ユニット102を制御する。第二制御部442は、揺動制御部442aと綴制御部442bと剥制御部442cとから構成される。
(揺動制御部442a)
揺動制御部442aは、指示部440から初期設定の実行指示を受け付けると、駆動モーター201を制御して、綴ユニット102をA4綴じ位置に移動させる。A4綴じ位置への移動は、綴ユニット102をまず基準となる退避位置に戻した後、A4綴じ位置まで揺動させることにより行われる。綴ユニット102が退避位置に戻ったことの判断は、退避位置検出センサー154の検出結果により行われ、綴ユニット102の退避位置からA4綴じ位置への遷移の判断は、回転量検出センサー214の検出結果(上記の最初のLレベルからHレベルの切り替えの検出)により行われる。
その後、揺動制御部442aは、指示部440からA4サイズのシート束Sbに対する針なし斜め綴じの実行指示を受け付けると、A4綴じ位置に存する綴ユニット102をそのままの位置で綴じ処理を実行する。A4サイズではなくB5サイズのシート束Sbに対する針なし斜め綴じの実行指示を受け付けると、綴ユニット102を一端、退避位置まで戻した後、A4綴じ位置を経てB5綴じ位置まで移動させた後、B5サイズのシート束Sbに針なし斜め綴じを施す。なお、綴ユニット102の退避位置からB5綴じ位置への遷移の判断は、回転量検出センサー214の検出結果(上記の2回目のLレベルからHレベルの切り替えの検出)により行われる。
揺動制御部442aは、第一制御部441から角部綴じ情報を受信すると、A4綴じ位置に現に存する綴ユニット102と、針あり平行綴じの実行のために装置正面側から背面側に移動して来る綴ユニット101との干渉を防止すべく、綴ユニット102をA4綴じ位置から退避位置まで退避させる。この退避は、綴ユニット101がシート束Sbの角部Suを綴じるための所定位置(角部綴じ位置)に至る前に行われる。揺動制御部442aは、綴ユニット102が退避位置に退避したことを退避位置検出センサー154の検出結果から判断すると、その旨を示す退避完了情報を第一制御部441に送る。
(綴制御部442b)
綴制御部442bは、針なし斜め綴じ処理の実行指示を受け付けると、圧着歯駆動モーター466の回転を制御して、圧着歯471、472により、シート束Sbの角部Suのシート部分を強い力で挟み込ませることにより、そのシート部分を圧着させる。
(剥制御部442c)
剥制御部442cは、スクレーパー駆動モーター491の回転を制御して、上スクレーパー481と下スクレーパー482を揺動動作させ、針なし斜め綴じ後に圧着歯に引っ付いたシート束Sbをその圧着歯から剥がさせる。
また、剥制御部442cは、綴ユニット102が退避位置に存している場合、スクレーパー駆動モーター491の回転を制御して、上スクレーパー481と下スクレーパー482を揺動動作させ、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とが剥がし位置に存する状態となるようにしてもよい。
上記の通り、綴部47と綴制御部442bは、シート束Sbに針なし綴じを実行させる綴じ手段として機能し、剥部48と剥制御部442cは、シート束Sbを圧着歯から剥がすためにスクレーパー(剥がし部材)を移動させる剥がし手段として機能する。
1.6 シート処理制御部44における動作
シート処理制御部44における動作について、フローチャートを用いて説明する。
(1)電源オン時に実行される初期設定の動作
電源オン時に実行される初期設定の動作について、図20に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、第一制御部441は、綴ユニット101をホーム位置に移動させる(ステップS1)。綴ユニット101がホーム位置に移動後、揺動制御部442aは、綴ユニット102をA4綴じ位置に移動させて(ステップS2)、当該初期設定を終了する。
この初期設定により、電源オン後の最初のジョブ実行時には、綴ユニット101がホーム位置に位置し、綴ユニット102がA4綴じ位置に位置している状態になる。綴ユニット102の初期設定の位置をA4綴じ位置としているのは、A4とB5サイズのうち、一般にA4サイズの方がB5サイズよりも使用頻度が多いことによるが、B5サイズの方が多いような環境では、B5綴じ位置に変更してもよい。
なお、綴ユニット102の使用よりも、綴ユニット101の使用が多い環境においては、初期設定において、揺動制御部442aは、綴ユニット102が退避位置に存するように、綴ユニット102を移動させてもよい。この場合、剥制御部442cは、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とが、剥がし位置に存するように、剥部48を移動させてもよい。
(2)シート角部綴じ処理
シート角部綴じ処理について、図21に示すフローチャートを用いて説明する。
このシート角部綴じ処理は、ジョブ毎にシート束Sbにおける装置背面側の角部Suに対する綴じ処理が指示された場合に実行される。
本体制御部6から、ジョブ毎の綴じ処理要求を受信すると、指示部440は、第一制御部441及び第二制御部442に対して、受信した綴じ処理要求を出力する(ステップS10)。また、指示部440は、綴じ処理要求が針なし綴じと針あり綴じのいずれであるかを判断する(ステップS11)。
針なし綴じであると判断される場合(ステップS11で「Yes」)、揺動制御部442aは、綴じ対象のシートSのサイズがA4サイズであるか否かを判断する(ステップS12)。A4サイズであると判断すると(ステップS12で「Yes」)、綴制御部442bは、A4綴じ位置に存する綴ユニット102を用いてA4サイズのシート束Sbの角部Suに対する針なし斜め綴じ処理を実行させ(ステップS14)、次に、ステップS15に進む。
一方、綴じ対象のシートSのサイズがA4サイズではなくB5サイズと判断すると(ステップS12で「No」)、揺動制御部442aは、A4綴じ位置に存する綴ユニット102をB5綴じ位置に移動させ(ステップS13)、その後、綴制御部442bは、綴ユニット102を用いてB5サイズのシート束Sbの角部Suに対する針なし斜め綴じ処理を実行させ(ステップS14)、次に、ステップS15に進む。
ステップS15では、揺動制御部442aは、針なし斜め綴じを終了した綴ユニット102をA4綴じ位置に戻して、当該処理を終了する。なお、綴ユニット102が現にA4綴じ位置に存する場合、そのまま当該処理を終了する。ステップS15で綴ユニット102がA4綴じ位置に戻されるので、次のジョブ実行開始時にも、綴ユニット102がA4綴じ位置に存した状態になっていることになる。
針なし綴じではなく、針あり平行綴じであると判断されると(ステップS11で「No」)、第一制御部441が第二制御部442に対して角部綴じ情報を送信する(ステップS16)。第二制御部442が角部綴じ情報を受信すると、剥制御部442cは、スクレーパーを剥がし位置へ移動させ(ステップS17)、その後、揺動制御部442aは、A4綴じ位置に存する綴ユニット102を退避位置まで退避させ(ステップS18)、その退避が終了すると、揺動制御部442aは、第一制御部441に退避完了情報を送信する(ステップS19)。
退避完了情報を受信した第一制御部441は、静止している綴ユニット101をホーム位置から綴じ予定位置、ここでは上記の角部綴じ位置、つまりシート束Sbの角部Suに針あり平行綴じを施すための位置まで移動させる(ステップS20)。
図22は、綴ユニット102が退避位置に退避しており、綴ユニット101が角部綴じ位置に位置している様子を示す平面図である。同図に示すように綴ユニット102の退避位置は、角部綴じ位置に位置する綴ユニット101が占有する領域(実線で示す外枠101a)の外の位置なので、退避位置の綴ユニット102と角部綴じ位置に移動して来た綴ユニット101との干渉が防止される。この意味で、第二制御部442と綴ユニット102の移動機構103は、綴ユニット101が角部綴じ位置に至る前に、傾斜姿勢の綴ユニット102を、角部綴じ位置に至った綴ユニット101が占有する領域101aの外の退避位置まで揺動させる揺動手段として機能する。
図21に戻って、ステップS21では、第一制御部441は、綴ユニット101を用いてシート束Sbの角部Suに対する針あり平行綴じ処理を実行させる。そして、針あり平行綴じが終了すると、第一制御部441は、綴ユニット101を元のホーム位置に戻して(ステップS22)、その後、ステップS15に進む。これにより、退避位置の綴ユニット102も元のA4綴じ位置に戻される。その後、当該処理を終了する。
以上説明したように、本実施の形態では、綴ユニット102をA4綴じ位置から退避位置まで揺動軸129を中心に揺動可能な構成としたので、傾斜姿勢の綴ユニット102をそのままシート幅方向に装置背面側に平行移動して退避させる構成に比べて、シート幅方向における装置の小型化を実現することができる。
また、綴ユニット102が退避位置に退避しているときには、綴ユニット102のヘッド部130がトレイ420よりも装置背面側に位置するので、装置筐体45の背面カバー45a(図3)を取り外せば、サービスマンが装置背面側からヘッド部130に直ぐにアクセスできる。これにより、ヘッド部130の圧着歯471、472をメンテナンスすることが容易になる。
また、上記の通り、第二制御部442は、角部綴じ情報を受信すると、スクレーパーを剥がし位置へ移動させ、その後、A4綴じ位置に存する綴ユニット102を退避位置まで退避させている。このため、A4綴じ位置から退避位置まで、揺動軸129を中心に揺動可能な構成とした綴ユニット102の最大の回転半径を、スクレーパーを剥がし位置へ移動させない場合と比較して、小さくすることができる。この結果、A4綴じ位置に存する綴ユニット102が退避位置まで移動する際に、綴ユニット102と、シート処理部4内に設けられたその他の部品との干渉を防止できる。
(3)針なし斜め綴じ処理
針なし斜め綴じ処理について、図23に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下に示す手順は、図21に示すフローチャートのステップS14の詳細である。
綴制御部442bは、離隔位置にある上側の圧着歯471を剥がし位置まで移動させる(ステップS31)。この移動は、圧着歯駆動モーター466を正回転(CW)させて、ホーム位置に存するカム464(図6)を基準の0°からθa°まで回転させることにより行われる。カム464の現在の回転角度は、ロータリーエンコーダー469から出力される角度信号を受信することにより随時判断される。カム464がθa°まで回転することにより、圧着歯471が綴じ位置まで移動して、圧着歯471、472によるシート束Sbの角部Suに対する針なし斜め綴じが実行される。
そして、綴制御部442bは、圧着歯471が剥がし位置に移動後、圧着歯471を離隔位置まで戻させる(ステップS32)。圧着歯471の剥がし位置から離隔位置への移動は、圧着歯駆動モーター466を逆回転(CCW)させて、カム464を逆転させ、カム464の回転角度が0°に戻った時点で、圧着歯駆動モーター466を停止させることにより行われる。
綴制御部442bは、圧着歯471が剥がし位置から離隔位置に戻ったことを示す離隔完了通知を剥制御部442cに送る(ステップS33)。
剥制御部442cは、綴制御部442bからの離隔完了通知を受信すると、退避位置の上スクレーパー481と下スクレーパー482を剥がし位置まで移動させる(ステップS34)。この移動は、スクレーパー駆動モーター491を正転させて、シャフト484を基準の0°から90°まで正回転させた後、一旦停止することにより行われる。シャフト484がどれだけ回転したかは、ロータリーエンコーダー499から出力される角度信号を受信することにより随時判断される。上スクレーパー481と下スクレーパー482を剥がし位置まで移動することにより、針なし斜め綴じ後に圧着歯471、472の一方に引っ付いたままになっているシート束Sbをその圧着歯から剥がすことができる。
そして、剥制御部442cは、剥がし位置の上スクレーパー481と下スクレーパー482を退避位置まで戻させる(ステップS35)。この移動は、スクレーパー駆動モーター491を逆転させて、シャフト484を基準の0°まで逆回転させて、スクレーパー駆動モーター491を停止させることにより行われる。なお、上記では、離隔完了通知を受信してから、上スクレーパー481と下スクレーパー482の退避位置から剥がし位置への移動を開始するとしたが、これに限られない。例えば、離隔完了通知の受信を待たずに、上側の圧着歯471が剥がし位置から離隔位置に移動している間に行うこともできる。圧着歯471が剥がし位置から離隔位置に至った時点以後に上スクレーパー481と下スクレーパー482が剥がし位置に至るようなタイミングとすることができる。
続いて、シート処理制御部44は、搬送部材移動モーター(不図示)を制御して、搬送部材425(図2(c))を移動させることにより、トレイ420上のシート束Sbを排出ローラー対414に向けて搬送して(ステップS36)、当該処理を終了する。搬送部材425により排出ローラー対414まで搬送されたシート束Sbは、排出ローラー対414により排出され、排紙トレイ4aに収容される。
以上、説明したように本実施の形態では、退避位置において上スクレーパー481と下スクレーパー482の両方が、受け入れ可能状態の圧着歯471、472の間の空間470の外であり、圧着歯471、472よりもシートSの移動経路400を基準に移動経路400から離れた位置で静止している(図9(a)で示すL2<L1の関係)。
これにより、スクレーパーが常時、圧着歯とシート束との間に介在している構成(従来に相当)よりも、そのスクレーパーの厚み相当分、差し入れ可能なシート束の厚み、つまりシートの綴じ可能最大枚数を増やすことができる。
なお、上記では、図11に示すように退避位置に存する上スクレーパー481の移動方向の先端縁481cの少なくとも一部がシート束Sbとオーバーラップする構成(L7>0)を説明したが、これに限られない。
例えば、上スクレーパー481が退避位置から剥がし位置への移動中に、シート束Sbのうち最上位のシートSとこれよりも下のシートSとの間に潜り込むことが生じないような場合には、退避位置に存する上スクレーパー481がトレイ420上のシート束Sbの先端縁Se1よりもシート搬送方向下流側に位置、つまり平面視でオーバーラップしない構成をとることもできる。
また、上スクレーパー481の剥がし位置を圧着歯471、472の間に入る位置としたが、圧着歯471に引っ付いているシート束Sbを剥がすことができる位置であれば、これに限られない。例えば、圧着歯471、472の間の空間470よりも上スクレーパー481の移動方向上流側であり、圧着歯471、472の近傍の位置を剥がし位置として、その剥がし位置まで上スクレーパー481を移動させて停止させる構成をとることもできる。また、上スクレーパー481と下スクレーパー482を同軸で揺動させる場合の揺動角を90°としたが、これに限られず、装置構成に適した角度を実験などで決めることができる。例えば、上スクレーパー481と下スクレーパー482とで揺動角を異ならせる構成や、同軸に代えて、上スクレーパー481と下スクレーパー482とが別々の回転軸を中心に揺動する構成などをとることもできる。
2 その他の変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)綴ユニット102が、A4綴じ位置から退避位置まで、回転移動する際に、綴ユニット102が、A4綴じ位置から退避位置まで、回転移動する前に、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とを、退避位置から剥がし位置まで、回転移動させてもよい。上スクレーパー481と下スクレーパー482とが剥がし位置まで、回転移動した後に、綴ユニット102を、A4綴じ位置から退避位置まで、回転移動させてもよい。
例えば、指示部440が受信した処理要求が針有り綴じ機である綴ユニット101による針有り綴じである場合、第二制御部442は、スクレーパー駆動モーター491等の駆動手段に対して、退避位置から、離隔した圧着歯471と圧着歯472との剥がし位置に、上スクレーパー481と下スクレーパー482が移動するように、駆動力を伝達させる。上スクレーパー481と下スクレーパー482が剥がし位置に移動した後に、第二制御部442は、駆動部151に対して、A4綴じ位置から退避位置に綴部47が回転移動するように、駆動力を伝達させる、としてもよい。
一方、上記とは逆に、綴ユニット102が、退避位置からA4綴じ位置まで、回転移動する際に、綴ユニット102が、退避位置からA4綴じ位置まで、回転移動した後に、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とを、剥がし位置から退避位置まで、回転移動させてもよい。
例えば、針有り綴じ機である綴ユニット101による針有り綴じが完了し、その後、指示部440が、針無し綴じ機である綴ユニット102による針無し綴じを示す処理要求を受信した場合、第二制御部442は、駆動部151に対して、退避位置からA4綴じ位置に綴部47が回転移動するように、駆動力を伝達させる。綴部47がA4綴じ位置に移動した後に、第二制御部442は、スクレーパー駆動モーター491等の駆動手段に対して、剥がし位置から退避位置に上スクレーパー481と下スクレーパー482が移動するように、駆動力を伝達させる、としてもよい。
上記構成によると、綴ユニット102の回転移動中に、上スクレーパー481と下スクレーパー482が離隔した圧着歯471と圧着歯472との剥がし位置に収容されるので、綴ユニット102の回転半径を小さくすることができ、綴ユニット102と綴ユニット101との干渉を防ぐことができる。
(2)綴ユニット102が、A4綴じ位置から退避位置まで、回転移動する過程において、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とを、退避位置から剥がし位置まで、回転移動させてもよい。
例えば、指示部440が受信した処理要求が針有り綴じ機である綴ユニット101による針有り綴じである場合、第二制御部442は、駆動部151に対して、A4綴じ位置から退避位置に綴部47が回転移動するように、駆動力を伝達させ、綴部47が移動する時間帯において、スクレーパー駆動モーター491等の駆動手段に対して、退避位置から剥がし位置に上スクレーパー481と下スクレーパー482が移動するように、駆動力を伝達させる、としてもよい。
また、綴ユニット102が、退避位置からA4綴じ位置まで、回転移動する過程において、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とを、剥がし位置から退避位置まで、回転移動させてもよい。
例えば、針有り綴じ機である綴ユニット101による針有り綴じが完了し、その後、指示部440が、針無し綴じ機である綴ユニット102による針無し綴じを示す処理要求を受信した場合、第二制御部442は、駆動部151に対して、退避位置からA4綴じ位置に綴部47が回転移動するように、駆動力を伝達させ、綴部47が回転移動する時間帯において、スクレーパー駆動モーター491等の駆動手段に対して、剥がし位置から退避位置に上スクレーパー481と下スクレーパー482が移動するように、駆動力を伝達させる、としてもよい。
上記構成によると、同一時間帯において、綴ユニット102の回転移動と、剥部48の回転移動とが行われるので、綴ユニット102の回転移動の後に剥部48の回転移動が行われる場合と比較して、また、剥部48の回転移動の後に綴ユニット102の回転移動が行われる場合と比較して、綴ユニット102と剥部48のトータルの回転移動時間を短縮することができる。
(3)綴ユニット102が、B5綴じ位置からA4綴じ位置まで、移動する過程において、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とに対して、退避位置から剥がし位置までの回転移動を開始させ、綴ユニット102のA4綴じ位置への移動が完了すると、綴ユニット102は、引き続いて、退避位置まで回転移動してもよい。
例えば、指示部440が受信した処理要求が針有り綴じ機である綴ユニット101による針有り綴じである場合、第二制御部442は、駆動部151に対して、B5綴じ位置から、A4綴じ位置を介して、退避位置に綴部47が平行移動及び回転移動するように、駆動力を伝達させ、綴部47が平行移動及び回転移動する時間帯において、スクレーパー駆動モーター491等の駆動手段に対して、退避位置から剥がし位置に上スクレーパー481と下スクレーパー482が移動するように、駆動力を伝達させる、としてもよい。
また、上記とは逆に、綴ユニット102が、退避位置からA4綴じ位置まで、回転移動し、綴ユニット102のA4綴じ位置への回転移動が完了すると、綴ユニット102のA4綴じ位置からB5綴じ位置までの移動過程において、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とに対して、剥がし位置から退避位置までの回転移動を開始させてもよい。
例えば、針有り綴じ機である綴ユニット101による針有り綴じが完了し、その後、指示部440が、針無し綴じ機である綴ユニット102によるB5綴じ位置における針無し綴じを示す処理要求を受信した場合、第二制御部442は、駆動部151に対して、退避位置から、A4綴じ位置を介して、B5綴じ位置に綴部47が回転移動及び平行移動するように、駆動力を伝達させ、綴部47が回転移動及び平行移動する時間帯において、スクレーパー駆動モーター491等の駆動手段に対して、剥がし位置から退避位置に上スクレーパー481と下スクレーパー482が移動するように、駆動力を伝達させる、としてもよい。 上記構成によると、同一時間帯において、綴ユニット102の平行移動及び回転移動と、剥部48の回転移動とが行われるので、綴ユニット102の平行移動及び回転移動の後に剥部48の回転移動が行われる場合と比較して、また、剥部48の回転移動の後に綴ユニット102の平行移動及び回転移動が行われる場合と比較して、綴ユニット102と剥部48のトータルの回転移動時間を短縮することができる。
(4)綴ユニット102が、B5綴じ位置、A4綴じ位置又は退避位置に存する場合において、画像形成装置1の操作者、特に、画像形成装置1のメンテナンスを行うサービスマンの特別な操作指示に従って、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とを、剥がし位置と退避位置との間で、移動(回転)させてもよい。
例えば、指示部440は、サービスマンの特別な操作指示による処理要求を受信する。ここで、処理要求は、上スクレーパー481と下スクレーパー482の移動の要求である。指示部440により、この処理要求を受信した場合、第二制御部442は、スクレーパー駆動モーター491等の駆動手段に対して、退避位置と剥がし位置との間で、上スクレーパー481と下スクレーパー482が移動するように、駆動力を伝達させる、としてもよい。
また、綴ユニット102が、退避位置に存する場合において、サービスマンの特別な操作指示に従って、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とが、剥がし位置に存する状態となるように、又は、退避位置となる状態となるように、移動(回転)させてもよい。
また、サービスマンの特別な操作指示に従って、剥部48の上スクレーパー481と下スクレーパー482とが、剥がし位置又は退避位置から移動し、サービスマンの特別な操作指示に含まれる停止位置において、上スクレーパー481と下スクレーパー482とを停止させてもよい。
例えば、指示部440は、サービスマンの特別な操作指示による処理要求を受信する。ここで、処理要求は、上スクレーパー481と下スクレーパー482の移動及び停止位置を含む停止の要求である。指示部440により、この処理要求を受信した場合、第二制御部442は、スクレーパー駆動モーター491等の駆動手段に対して、退避位置と剥がし位置との間で、上スクレーパー481と下スクレーパー482が移動し、移動の後、受信した処理要求に含まれる停止位置において、上スクレーパー481と下スクレーパー482が停止するように、駆動力を伝達させる、としてもよい。
また、可動カム486、固定カム485、可動カム487等からなる移動機構は、さらに、退避位置を中心として、剥がし位置とは、反対側に存する遠隔位置と、退避位置との間において、上スクレーパー481と下スクレーパー482を移動自在に支持してもよい。
指示部440は、サービスマンの特別な操作指示による処理要求を受信する。この処理要求は、前記剥がし部材を前記遠隔位置で停止させる要求である。
指示部440により、この処理要求を受信した場合、第二制御部442は、スクレーパー駆動モーター491等の駆動手段に対して、上スクレーパー481と下スクレーパー482が移動し、移動の後、上スクレーパー481と下スクレーパー482が遠隔位置において、停止するように、駆動力を伝達させる、してもよい。
変形例としての綴ユニット102aが、A4綴じ位置に存する場合において、図25に示すように、剥部48aの上スクレーパー481と下スクレーパー482とが、画像形成装置1の装置正面側から、視認できるように、剥部48aをさらに、移動(回転)させてもよい。
図25(a)~(c)は、変形例としての綴ユニット102aの平面図であり、(d)は、綴ユニット102aの斜視図である。
綴ユニット102aは、綴ユニット102と比較すると、綴ユニット102aのヘッド部の前方方向に、綴部47a及び剥部48aが突出した構成を有している。
図25(a)においては、図5(b)と同様に、剥部48aのスクレーパー481、482は、剥がし位置に存している。綴ユニット102aの剥部48aにおいては、シャフト484を中心として、スクレーパー481、482が回転する。
図25(b)においては、図5(a)と同様に、剥部48aのスクレーパー481、482は、退避位置に存している。
綴ユニット102aの剥部48aにおいては、シャフト484を中心として、スクレーパー481、482は、さらに、回転する。
図25(c)においては、剥部48aのスクレーパー481、482は、図25(a)に示す剥部48aのスクレーパー481、482の位置を基準とすると、180°以上、回転した位置(遠隔位置)に存している。
図25(d)は、図25(c)に示す遠隔位置に剥部48aのスクレーパー481、482が存する場合における斜視図である。
上記の構成により、サービスマンが画像形成装置1のメンテナンスを行う際に、画像形成装置1の装置正面側から、綴ユニット102の綴部及び剥部の内部の状態(静止した状態)を観察することができ、また、綴ユニット102の綴部及び剥部の動作状況(動的な振舞い)を観察することができ、メンテナンス性が向上する。
(5)上記実施の形態では、綴ユニット101を針あり平行綴じを行うものとし、綴ユニット102を針なし斜め綴じを行うものとしたが、これに限られない。綴ユニット101がシート幅方向に沿って平行移動してシート束Sbに綴じを行い、綴ユニット102が退避位置と傾斜姿勢の綴じ位置との一方から他方に揺動可能であり、傾斜姿勢でシート束Sbの角部Suに斜め綴じを行う構成であればよい。例えば、綴ユニット101が針なし平行綴じを行い、綴ユニット102が針あり斜め綴じを行う構成とすることができる。これに代えて、例えば綴ユニット101、102の両方を針なし綴じ又は針あり綴じを行うものとすることもできる。
(6)上記実施の形態では、綴ユニット102が本体120の揺動軸129を中心に退避位置と傾斜位置との間を揺動する構成例を説明したが、これに限られない。綴ユニット102が角部綴じ位置に至った綴ユニット101と干渉しなければ良く、例えば図3において実線で示す傾斜姿勢の綴ユニット102の本体120よりも少し装置背面側にずらした位置に揺動軸を設ける構成も採り得る。
(7)上記実施の形態では、綴ユニット102の傾斜位置から退避位置への揺動が完了してから、綴ユニット101のホーム位置から角部綴じ位置への移動を開始するとしたが(図21のステップS16~S20)、これに限られない。綴ユニット101が角部綴じ位置に至る前に、角部綴じ位置に至った後の綴ユニット101が占有する領域101a(図22)の外に綴ユニット102が出ていればよい。
綴ユニット102の傾斜位置から退避位置までの揺動に要する時間をT1秒、綴ユニット101がホーム位置から角部綴じ位置に至るまでに要する時間をT2(>T1)秒としたとき、例えば、ホーム位置の綴ユニット101が移動を開始してから(T2-T1)秒が経過した時点で、綴ユニット102の傾斜位置から退避位置への揺動を開始する制御を行うこともできる。
(8)上記実施の形態では、画像形成装置1を多機能複合機とした場合の例を説明したが、これに限られない。搬送されるシートSに画像を形成した後、そのシートSをシート処理部4に排出する構成の画像形成装置として、例えばプリンター、複写機、ファクシミリ装置などに適用することもできる。また、シート処理部4を、画像形成装置にオプション装着されるシート処理装置と捉えることもできる。さらに、綴じ対象のシートSは、画像形成後のシートSに限られない。例えば、ユーザーがシート束をトレイ420上にシート搬送方向に手動で差し入れた後、綴じ処理の実行を操作部5から手動で指示する構成をとることもできる。
また、上記では、トレイ420上のシート束Sbの装置背面側の角部Suを綴ユニット102で斜め綴じする構成例を説明したが、これに限られず、例えば綴ユニット102を装置正面側に配置することで、装置正面側の角部Stを斜め綴じする構成とすることもできる。さらに、上記のトレイ420、綴ユニット101、102などの各部材について、形状、大きさ、材料などが上記に限られないことはいうまでもなく、装置構成に適した形状、大きさ、材料などが予め決められる。
(9)上記実施の形態では、退避位置において間隔L0を開けて静止している上スクレーパー481と下スクレーパー482が退避位置から剥がし位置までシャフト484(回転軸)を中心に揺動しつつ、剥がし位置に近づくに伴って上スクレーパー481と下スクレーパー482の間隔がL0から徐々に狭まっていく揺動機構の例を説明したが(図9(a))、このような揺動機構に限られない。
受け入れ可能状態の圧着歯471、472の間の空間470にトレイ420上を搬送されるシートSが差し入れられる際の上スクレーパー481と下スクレーパー482の退避位置が移動経路400を基準に圧着歯471、472よりも離れた位置であり(L1>L2)、針なし綴じ後に上スクレーパー481と下スクレーパー482が退避位置から移動経路400に近づいて行き、針なし綴じ後のシート束Sbに押圧力Pを作用させることができる移動機構であればよい。
例えば、図9(b)では、上スクレーパー481と下スクレーパー482が退避位置か剥がし位置まで回転軸を中心に揺動する様子を側面視したものであるが、揺動に代えて、シート束Sbの面に沿って退避位置から剥がし位置まで直線移動しつつ上スクレーパー481と下スクレーパー482の間隔が徐々に狭まり、つまりシート束Sbに徐々に近づき、剥がし位置でシート束Sbを挟む移動機構をとることもできる。
(10)上記実施の形態では、上側の圧着歯471に対応する上スクレーパー481と下側の圧着歯472に対応する下スクレーパー482とを備える構成例を説明したが、一つの圧着歯に一つのスクレーパーを対応付ける構成に限られることはない。圧着歯471、472の歯先の凹凸形状や使用されるシートSの種類の組み合わせによっては、一方の圧着歯にしか、圧着後のシート束Sbが引っ付くことがないような構成があり得る。このような構成では、シート束Sbが引っ付く方の圧着歯に対応するスクレーパーのみを設けることで、スクレーパーの数を一つに減らすことができ、二つの構成に比べて装置構成を簡易化できる。
(11)上記実施の形態では、上側の圧着歯471が下側の圧着歯472に向かって下方に移動してシート束Sbを挟み込んで圧着するとしたが、これに限られない。下側の圧着歯472が上側の圧着歯471に向かって上方に移動する構成や上側の圧着歯471と下側の圧着歯472の両方が移動する構成など、上側の圧着歯471と下側の圧着歯472が相対的に近づく方向と離隔する方向に移動する構成をとることができる。
(12)上記実施の形態では、トレイ420上のシートSが圧着歯471、472の間の空間470に向かって搬送されるときのシートの移動経路400を基準に、移動経路400から、退避位置に存する上スクレーパー481までの距離L1と、退避位置に存する下スクレーパー482までの距離L1とが同じ大きさの例を説明したが、同じに限られず、一方が他方よりも大きくなる構成をとることもできる。
また、移動経路400は、離隔距離が最大である離隔状態の圧着歯471、472の間の中点を通る経路としたが、これに限られず、圧着歯471、472の間の空間470のいずれかの位置を通る経路とすることができる。トレイ420から搬送されるシートSが圧着歯471、472の間に挿入される経路であれば良く、例えば下側の圧着歯472の直上の位置を通る経路とすることもできる。
移動経路400は、トレイ420から圧着歯471、472に向かって搬送されるシートSの、圧着歯471、472の間への進入経路に相当する。この進入経路は、トレイ420のシート載置面の、圧着歯471、472に対する上下方向の傾斜角度を変えることで調整できる。圧着歯471、472の間にシートSが1枚ずつ最大枚数に至るまでスムーズに進入できる経路、つまりシート載置面の傾斜角度が実験などから予め決められる。
なお、上記では、トレイ420上にシートSが1枚ずつ収容される度に、そのシートSの角部Suが丁度、圧着歯471、472の間の空間470に入り込むように、トレイ420と圧着歯471、472の位置関係が決められていたが、これに限られない。例えば、トレイ420上で整合したシート束Sbをそのまま全体で圧着歯471、472の間に差し入れる構成もあり得る。この構成では、シート束Sbのうち最上位又は最下位のシートSの移動経路を基準に、上記のL1>L2の関係を満たすように、上スクレーパー481と下スクレーパー482の退避位置を決めることができる。
(13)上記実施の形態では、一対の圧着歯471、472を用いてシート束Sbを針なし斜め綴じする構成例を説明したが、シート束Sbを圧着できる部材であれば歯に限られず、凹凸形状を有する圧着部材を用いることができる。
(14)上記実施の形態では、綴ユニット102がシート束Sbの装置背面側の角部Suに針なし斜め綴じを行う構成例を説明したが、針なし綴じを行う構成であればよい。
例えば、綴ユニット102を装置正面側に固定配置して、シート束Sbのシート正面側の角部St(図3)に針なし斜め綴じを行う構成をとることもできる。また、綴ユニット102をシート搬送方向に平行な姿勢のまま、シート幅方向に沿って平行移動可能な構成をとれば、シート束Sbにおける装置正面側の角部Stから背面側の角部Suまでの間のうち、ユーザーから指定された箇所に綴ユニット102を移動させることで、その指定の箇所に、いわゆる針なし平行綴じを施すことも可能になる。
(15)上記実施の形態では、上スクレーパー481、下スクレーパー482を薄板状のものとしたが、これに限られず、例えば細い棒状のものなどを用いることもできる。また、綴部47や剥部48などに含まれる各部材について、形状、大きさ、材料などが上記に限られないことはいうまでもなく、装置構成に適した形状、大きさ、材料などが予め決められる。
(16)本発明は、画像形成装置又はシート処理装置が実行するスクレーパー(剥がし部材)による圧着部材からのシート束の剥がし方法であるとしてもよい。さらに、その方法をコンピューターが実行するプログラムであるとしてもよい。
(17)画像形成装置及びシート処理部(装置)は、マイクロプロセッサーとメモリとを備えたコンピューターシステムである。メモリは、コンピュータープログラムを記憶しており、マイクロプロセッサーは、コンピュータープログラムに従って動作するとしてもよい。
マイクロプロセッサーは、フェッチ部、解読部、実行部、レジスタファイル、命令カウンタなどから構成されている。フェッチ部は、メモリに記憶されているコンピュータープログラムから、コンピュータープログラムに含まれる各命令コードを1個ずつ読み出す。解読部は、読み出した命令コードを解読する。実行部は、解読結果に従って動作する。このように、マイクロプロセッサーは、メモリに記憶されているコンピュータープログラムに従って動作する。
ここで、コンピュータープログラムは、所定の機能を達成するために、コンピューターに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
また、コンピュータープログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、半導体メモリなどに記録されているとしてもよい。また、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もある。
また、コンピュータープログラムを、有線又は無線の電気通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送してもよい。
(18)上記実施の形態及び上記変形例の内容を可能な限り、それぞれ組み合わせるとしてもよい。