JP7279321B2 - 浮造調木目化粧材 - Google Patents
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Description
そこで、樹脂基材上にグラビア印刷で春材部を印刷し、天然木浮造板表面から型取りして電鋳等により造ったエンボス版で主に秋材部の凸状部を賦形した木目調の化粧材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
[1]基材と、前記基材の一方の面側に設けられた第1凸状部と、前記基材の一方の面側に、前記第1凸状部と異なる位置に設けられた第2凸状部とを備え、前記第1凸状部の長さは、前記基材の長さ方向において、前記第2凸状部と比して長く、前記第1凸状部の高さは、前記基材の厚さ方向において、前記第2凸状部と比して高い、浮造調木目化粧材。
[2]前記第1凸状部の高さは、前記第1凸状部と前記第2凸状部の底面から0.1mm以上0.17mm以下である、[1]の浮造調木目化粧材。
[3]前記第1凸状部の幅は、前記基材の長さ方向と直交する方向に0.3mm以上2.0mm以下である、[1]又は[2]の浮造調木目化粧材。
[4]前記第1凸状部同士の前記基材の長さ方向と直交する方向における間隔は、0.1mm以上5.4mm以下である、[1]~[3]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[5]前記第1凸状部の端部は、前記基材の縁部のみに存在する、[1]~[4]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[6]前記第2凸状部の長さは、前記基材の長さ方向に0.3mm以上300mm以下である、[1]~[5]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[7]前記第2凸状部の高さは、前記第1凸状部と前記第2凸状部の底面から0.03mm以上0.09mm以下である、[1]~[6]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[8]前記第2凸状部の幅は、前記基材の長さ方向と直交する方向に0.06mm以上0.9mm以下である、[1]~[7]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[9]前記基板面における前記第1凸状部の占める割合に対する前記第2凸状部の占める割合は、0.5以上2.0以下である、[1]~[8]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[10]前記基板面において、前記第1凸状部の残部に対する前記第2凸状部の占める割合は、0.1以上0.8以下である、[1]~[9]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[11]前記第2凸状部の前記基材の長さ方向における端部は、窄まって丸味を帯びた形状である、[1]~[10]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[12]前記第2凸状部は、前記基材の長さ方向に間隔をおいて連なって配置されている、[1]~[11]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[13]前記基材の少なくとも一方の面側に模様層をさらに備える、[1]~[12]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[14]前記基材の前記第1凸状部及び前記第2凸状部が設けられている面の反対面側に裏打基材をさらに備える、[1]~[13]のいずれかの浮造調木目化粧材。
[浮造調木目化粧材]
本発明の実施の形態に係る浮造調木目化粧材は、図1に示すように、基材1と、基材1の一方の面側(図1においては浮造調木目化粧材の上方、即ち+Z方向の側の面)に設けられた第1凸状部2と、基材1の一方の面側に、平面視(図1においては+Z方向の側から-Z方向を見た外観)において第1凸状部2と異なる位置に設けられた第2凸状部3とを備える。第1凸状部2の長さは、基材1の長さ方向(図1で示すY方向)において、第2凸状部3と比して長いことを特徴とする。第1凸状部2の高さは、基材1の厚さ方向(図1で示すZ方向)において、第2凸状部3と比して高いことを特徴とする。
なお、図1で示した形態においては、第1凸状部2の一方の面側の表面は平面となっているが、本発明においては、第1凸状部2の一方の面側の表面は図7に示すように、曲面をなしていてもよい。
浮造調木目化粧材は、特に制限はないが、意匠の再現を目指す木材としては、杉、檜、胡桃、松及び桜等が挙げられる。
基材1の形態は、シート、フィルム及び板等のいずれであってもよい。
基材1としては、通常化粧材として用いられるものであれば、特に限定されず、樹脂基材、金属基材、窯業系基材、繊維質基材及び木質系基材等を用途に応じて適宜選択することができる。上記各基材はそれぞれ単独で使用してもよいが、樹脂基材と金属基材の複合体等の任意の組み合わせによる積層体であってもよい。基材1が積層体である場合は、積層体のそれぞれの層間にプライマー層(図示せず)をさらに設ける等の構成であってもよい。
また、基材1として用いられる繊維質基材としては、建材分野で使われることが多い紙基材の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等が挙げられる。
また、基材1として用いられる繊維質基材としては、事務分野又は通常の印刷及び包装等に用いられているコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙及び和紙等が挙げられる。
また、基材1として用いられる繊維質基材としては、上述した紙基材とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布及び不織布も挙げられる。各種繊維としては、ガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維及び炭素繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、各種繊維としては、ポリエステル繊維、アクリル繊維及びビニロン繊維等の合成樹脂繊維が挙げられる。これらの紙類は、凹凸柄の賦形適性の点から、賦形適性に優れるプラスチック基材と積層して用いることが好ましい。
基材1は、第1凸状部2及び第2凸状部3の凹凸形状を設けることが困難な材料である場合、第1凸状部2及び第2凸状部3を設けやすくする観点から、表面に樹脂層(図示せず)を備える構造であることが好ましい。樹脂層としては、二液硬化樹脂、熱可塑樹脂、熱硬化樹脂及び電離放射線硬化樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
電離放射線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましい。また、化粧シートを製造する過程で樹脂層が傷つくことを抑制する観点からは、電離放射線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物がさらに好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も使用可能である。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
上記電離放射線硬化樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものである。光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
第1凸状部2の高さHaは、図1(b)に示すように、基材1の第1凸状部2と第2凸状部3の底面から第1凸状部2の頂部までの高さである。第1凸状部2の高さHaは、特に制限はないが、視覚外観再現効果及び触感を増加させる観点から、第1凸状部2と第2凸状部3の底面から0.1mm以上0.17mm以下であることが好ましく、0.105mm以上0.16mm以下であることがより好ましく、0.11mm以上0.15mm以下であることがさらに好ましい。
なお、第1凸状部2の高さHaは、3D形状測定器を用いて、基材1の表面の任意の箇所に存在する30箇所の第1凸状部2の高さHaを測定し、得られた各測定結果の値を平均することで測定することができる。具体的な測定方法は、実施例で示す。
なお、第1凸状部2の幅は、3D形状測定器を用いて、基材1の表面の任意の箇所に存在する30箇所の第1凸状部2の幅を測定し、得られた各測定結果の値を平均することで測定することができる。
なお、第1凸状部2同士の基材の長さ方向と直交する方向における間隔は、3D形状測定器を用いて、基材1の表面の任意の箇所に存在する30箇所の第1凸状部2同士の基材の長さ方向と直交する方向における間隔を測定し、得られた各測定結果の値を平均することで測定することができる。
第2凸状部3の長さLbは、図1(c)に示すように、基材1の長さ方向(図1で示すY方向)における第2凸状部3の個々の長さである。第2凸状部3の長さLbは、特に制限はないが、視覚外観再現効果を増加させる観点から、0.3mm以上300mm以下であることが好ましく、1mm以上100mm以下であることがより好ましく、2mm以上30mm以下であることがさらに好ましい。
なお、第2凸状部3の長さは、顕微鏡を用いて、基材1の表面の任意の箇所に存在する30箇所の第2凸状部3の長さを測定し、得られた各測定結果の値を平均することで測定することができる。
なお、第2凸状部3の高さHbは、3D形状測定器を用いて、基材1の表面の任意の箇所に存在する30箇所の第2凸状部3の高さHbを測定し、得られた各測定結果の値を平均することで測定することができる。
なお、第2凸状部3の幅は、3D形状測定器を用いて、基材1の表面の任意の箇所に存在する30箇所の第2凸状部3の幅を測定し、得られた各測定結果の値を平均することで測定することができる。
なお、基板1面における第1凸状部2の占める割合に対する第2凸状部3の占める割合の測定方法としては、まず、3D形状測定器で基材1面の任意箇所を測定し、高さデータの中で計測の基準とする平面(基準面)設定後、面積測定を実施する。基材1の長さ方向(図1で示すY方向)と直交する方向(図1で示すX方向)における断面曲線から第1凸状部2のみを選択するように高さ閾値を設定し、そこから表面積を積算(表面積A)する。次に、第1凸状部2と第2凸状部3を選択するよう高さ閾値を設定し、表面積を積算(表面積B)する。第2凸状部3の表面積は、表面積Bから表面積Aを引くことで算出する。任意の30箇所における第1凸状部2の占める表面積の割合に対する第2凸状部3の占める表面積の割合を以下の式(1)により算出し、得られた算出値を平均する。
第2凸状部の占める表面積/第1凸状部の占める表面積=(表面積B-表面積A)/表面積A・・・(1)
なお、基板1面において、第1凸状部2の残部に対する第2凸状部3の占める割合の測定方法としては、まず、3D形状測定器で基材1面の任意箇所を測定し、高さデータの中で計測の基準とする平面(基準面)設定後、面積測定を実施する。基材1の長さ方向(図1で示すY方向)と直交する方向(図1で示すX方向)における断面曲線から第1凸状部2のみを選択するように高さ閾値を設定し、そこから表面積を積算(表面積A)する。次に、第1凸状部2と第2凸状部3を選択するよう高さ閾値を設定し、表面積を積算(表面積B)する。第2凸状部3の表面積は、表面積Bから表面積Aを引くことで算出する。第1凸状部2の残部の表面積は、測定全表面積(表面積C)から表面積Aを引くことで算出する。任意の30箇所における第1凸状部2の残部に対する第2凸状部3の占める割合を以下の式(2)により算出し、得られた算出値を平均する。
第2凸状部の占める表面積/第1凸状部の残部の占める表面積=(表面積B-表面積A)/(表面積C-表面積A)・・・(2)
浮造調木目化粧材は、図5に示すように、基材1の少なくとも一方の面側に模様層4をさらに備えることが好ましい。模様層4は、図5(a)に示すように、基材1の第1凸状部2及び第2凸状部3が設けられた面の反対面側に設けることができる。また、模様層4は、図5(b)に示すように、第1凸状部2及び第2凸状部3の少なくともいずれか上に設けることができる。また、模様層4は、図5(c)に示すように、基材1の両面側に設けることができる。
模様層4は、木目柄とすることが好ましい。模様層4が木目柄であることによって、浮造調木目化粧材を本物の木材に酷似する木目調とすることができる。木目柄としては、各種樹木の浮造り板の外観を製版した版により印刷することができるが、本発明においては、特に、浮造り加工によって秋材部の春材部からの突出、浮出しによる意匠外観が良好な、杉、松、檜、胡桃等の柾目板又は板目板の木目柄を採用することが好ましい。
バインダー樹脂としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
着色剤としては、例えば、弁柄、バーミリオンレッド、カドミウムレッド、チタンイエロー、黄鉛、鉄黄、群青、紺青、コバルトブルー、緑青、鉄黒、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、アンチモン白等の無機顔料、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケル-アゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾ系黒顔料、ペリレン系黒顔料等の有機顔料乃至染料、アルミニウム、真鍮、錫等の金属の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛、真珠貝等の貝殻等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等を1種単独又は2種以上を混合配色して用いることができる。
模様層4中には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、体質顔料、熱安定剤、可塑剤及び界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。
浮造調木目化粧材は、図6に示すように、基材1の第1凸状部2及び第2凸状部3が設けられている面の反対面側に裏打基材5をさらに備えることが好ましい。裏打基材5は、浮造調木目化粧材を補強したり、被着体との接着性を付与したり、隠蔽性を付与したりするために必要に応じて設けられる。
浮造調木目化粧材は、基材1、模様層4及び裏打基材5の少なくとも1つの間に、接着剤層Aが設けられていることが好ましい。接着剤層Aは、基材1、模様層4及び裏打基材5の各層の接合を補助する機能を有し、各層の接合を強固にすることができる。
接着剤層Aとしては、二液硬化樹脂、熱可塑樹脂、熱硬化樹脂及び電離放射線硬化樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
浮造調木目化粧材は、所望に応じてプライマー層(図示せず)を設けることができる。プライマー層は、基材1、模様層4及び裏打基材5の少なくとも1つの間に設けられることが好ましい。浮造調木目化粧材に樹脂層が設けられている場合は、基材1と樹脂層との間にプライマー層が設けられていることが好ましい。プライマー層は、主に層間密着性の向上効果を得るために設けられる層であるが、本発明においては各層の熱収縮の緩和効果も得られるため、各層の熱収縮の多少に伴う艶の低下、クラックの発生等による外観の変化を抑制し、優れた耐候性も得られる。
また、プライマー層が、基材の表面側とは反対側の面に設けられる場合(このような場合のプライマー層は、「裏面プライマー層」とも称される。)は、浮造調木目化粧材と被着材との層間密着性の向上効果の他、ブロッキング効果を得ることができる。浮造調木目化粧材に裏打基材5が設けられている場合は、裏打基材5の表面に裏面プライマー層が設けられる。裏面プライマー層は、鋼板、アルミ板、木材及びプラスチック成型品等の被着材との接合を補助する機能を有し、被着材との接合を強固にすることができる。
バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース系樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。例えば、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体とアクリルポリオール樹脂との混合物をバインダー樹脂として用いることができる。
プライマー層における紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層を構成する樹脂100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また上限として好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。
プライマー層における光安定剤の含有量は、プライマー層を構成する樹脂100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、特に好ましくは2質量部以上であり、また上限として好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8質量部以下である。プライマー層中の紫外線吸収剤及び光安定剤の含有量が上記範囲内であると、プライマー層としての優れた性能とともに、優れた耐候性が得られる。
ブロッキング防止剤としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸等のケイ酸塩;その他、カオリン、タルク、珪藻土等の無機化合物系のブロッキング防止剤;等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
ブロッキング防止剤の含有量は、プライマー層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、上限としては、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
浮造調木目化粧材は、単独でも使用できるが、被着材に張り合わせて使用してもよい。
被着材としては、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等が挙げられる。例えば、杉、檜、松、ラワン等の各種木材から成る木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として用いられる木質部材;鉄、アルミニウム等の板材や鋼板、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として用いられる窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる樹脂部材等が挙げられる。また、これらの部材は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
被着材と浮造調木目化粧材とは、優れた接着性を得るため、接着剤層Bを介して貼り合わせられることが好ましい。
また、接着剤層Bには、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して用いることができる。
本発明の浮造調木目化粧材の製造方法について以下に説明する。
レーザエンボス版で本発明特定の第1凸状部2及び第2凸状部3の相補的な凹凸形状を有するエンボス版を製版する場合には、以下に示す製版方法を採用することが好ましい。
〔製版方法1〕
(1)先ず、原稿とすべき浮造り加工した木材板を用意する。
(2)次いで、3次元表面粗さ測定裝置を用いて、該木材板表面の平面内(図1においてはXY平面内)の各位置座標(X、Y)における高さH(X、Y)の情報を収集し、次いで、原稿上の座標(X、Y)をエンボス版の材料とする金属円筒上の座標(θ、Z)に変換した高さ情報H(θ、Z)に変換する。
(3)次いで、金属円筒を其の軸芯の周りに回転させつつ、該円筒表面に彫刻用レーザ光を照射しながら走査し、円筒状の座標(θ、Z)におけるレーザ光の照射光量Eを収集した高さH(θ、Z)に対応した照射光量E=kH(θ、Z)に制御する。ここでのkは適宜の係数である。これによって、金属円筒表面に照射光量に対応した深さD(θ、Z)=klH(θ、Z)の凹凸形状が彫刻される。ここでのlは適宜の係数である。
(4)以上の工程を経ることによって、金属円筒表面に原稿の浮造り木材板表面の高さH(X、Y)に対応した深さD(θ、Z)=klH(θ、Z)の深さの凹凸形状を有するエンボス版が得られる。
〔製版方法2〕
(1)先ず、原稿とすべき浮造り加工した木材板を用意する。
(2)次いで、該原稿を適宜の条件で照明した上で、スキャナーにより直接該原稿の表面を読み取るか、或いは該原稿を写真撮影した陽画又は陰画のフィルムをスキャナーで読み取るか、いずれかの方法により該木材板表面の平面内の各位置座標(X、Y)における光学濃度P(X、Y)の情報を収集する。その結果、該木材板表面の平面内の各位置座標(X、Y)における高さH(X、Y)に対応する光学濃度P(X、Y)=mH(X、Y)が得られる。ここでのmは適宜の係数である。次いで、エンボス版の材料とする金属円筒上の座標(θ、Z)における光学濃度P(θ、Z)に変換する。
(3)次いで、該円筒状の光学濃度P(θ、Z)を円筒状の高さ情報H(θ、Z)=nP(θ、Z)に変換する。ここでのnは適宜の係数である。
(4)次いで、金属円筒をその軸芯の周りに回転させつつ、該円筒表面に彫刻用レーザ光を照射しながら走査し、円筒状の座標(θ、Z)におけるレーザ光の照射光量Eを得られた高さH(θ、Z)に対応した照射光量E=kH(θ、Z)に制御する。ここでのkは適宜の係数である。これによって、金属円筒表面に照射光量に対応した深さD(θ、Z)=klH(θ、Z)の凹凸形状が彫刻される。ここでのlは適宜の係数である。
(5)以上の工程を経ることによって、金属円筒表面に原稿の浮造り木材板表面の高さH(X、Y)に対応した深さD(θ、Z)=klH(θ、Z)の深さの凹凸形状を有するエンボス版が得られる。
この様にして得られたレーザエンボス版を用いて基材1の一方の面上にエンボス加工、即ち、エンボス版の型押しによる賦形を行うことによって、基材1の一方の面側に本発明特定の第1凸状部2及び第2凸状部3より構成される緻密な凹凸形状を付与することができ、電鋳等によるエンボス版よりも製造にかかる納期も短く、安価とすることができる。
実施例で作製したシートについて、以下の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
株式会社キーエンス製の3D形状測定機「VR-3000」を使用して、基材1の第1凸状部2と第2凸状部3を有する面側を撮影した後、付属の解析アプリケーションを使用して解析を行った。
基材1の第1凸状部2と第2凸状部3を有する面側の3箇所を測定領域(約24mm×約18mm)とした。高さデータの中で計測の基準とする平面(基準面)設定後、各パラメーターの計測を実施した。
(1)高さ測定
第1凸状部2と第2凸状部3の長さ方向(図1で示すY方向)と直交する方向(図1で示すX方向)に10箇所について、30箇所の断面曲線を取得。JIS B0601:2001に準拠して、カットオフ値は0.8mmのときの、最大高さ粗さ(Rz)を算出した。
(2)幅・間隔測定
測定領域3箇所における任意の幅と間隔について、各10箇所の計30箇所について、平面計測を実施し、3D形状測定器の測定画像から各幅と間隔を算出し、平均値を計算した。
(3)第1凸状部に対する第2凸状部の割合
まず、3D形状測定器で基材1面の任意箇所を測定し、高さデータの中で計測の基準とする平面(基準面)設定後、面積測定を実施した。基材1の長さ方向(図1で示すY方向)と直交する方向(図1で示すX方向)における断面曲線から第1凸状部2のみを選択するように高さ閾値を設定し、そこから表面積を積算(表面積A)した。次に、第1凸状部2と第2凸状部3を選択するよう高さ閾値を設定し、表面積を積算(表面積B)した。第2凸状部3の表面積は、表面積Bから表面積Aを引くことで算出した。任意の30箇所における第1凸状部2の占める表面積の割合に対する第2凸状部3の占める表面積の割合を以下の式(1)により算出し、得られた算出値を平均した。
第2凸状部の占める表面積/第1凸状部の占める表面積=(表面積B-表面積A)/表面積A・・・(1)
(4)第1凸状部の残部に対する第2凸状部の割合
まず、3D形状測定器で基材1面の任意箇所を測定し、高さデータの中で計測の基準とする平面(基準面)設定後、面積測定を実施した。基材1の長さ方向(図1で示すY方向)と直交する方向(図1で示すX方向)における断面曲線から第1凸状部2のみを選択するように高さ閾値を設定し、そこから表面積を積算(表面積A)した。次に、第1凸状部2と第2凸状部3を選択するよう高さ閾値を設定し、表面積を積算(表面積B)した。第2凸状部3の表面積は、表面積Bから表面積Aを引くことで算出した。第1凸状部2の残部の表面積は、測定全表面積(表面積C)から表面積Aを引くことで算出した。任意の30箇所における第1凸状部2の残部に対する第2凸状部3の占める割合を以下の式(2)により算出し、得られた算出値を平均した。
第2凸状部の占める表面積/第1凸状部の残部の占める表面積=(表面積B-表面積A)/(表面積C-表面積A)・・・(2)
実施例で作製した浮造調木目化粧材の表面に対して視覚を用いた官能評価による意匠性チェックを行った。本物の木材に極めて近い意匠性を感じるものを2点、本物の木材に近い意匠性を感じるものを1点、本物の木材に近い意匠性をほとんど感じないものを0点として、20人の被験者が評価を行い、平均点を算出した。
A:平均点が1.5以上のもの
B:平均点が1.0以上1.5未満のもの
C:平均点が0.5以上1.0未満のもの
D:平均点が0.5未満のもの
実施例で作製した浮造調木目化粧材の表面に対して指触チェックによる官能評価を行った。かなり凹凸を感じるものを2点、凹凸を感じるものを1点、凹凸をほとんど感じないものを0点として、20人の被験者が評価を行い、平均点を算出した。
A:平均点が1.5以上のもの
B:平均点が1.0以上1.5未満のもの
C:平均点が0.5以上1.0未満のもの
D:平均点が0.5未満のもの
両面コロナ放電処理を施したポリプロピレン樹脂シート(厚さ:60μm)を基材1とし、該基材1の一方の面に2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂をバインダーとする印刷インキをグラビア印刷法で塗布して木目模様の模様層4(厚さ:3μm)を設け、他方の面に、2液硬化型ウレタン-硝化綿混合樹脂(硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネートを樹脂100質量部に対して5質量部含有)を含む樹脂組成物を塗布して、裏面プライマー層(厚さ:3μm)を形成した。模様層4の上に、透明のポリウレタン樹脂系接着剤を塗布して接着剤層(乾燥後の厚さ:3μm)を形成し、透明なポリプロピレン樹脂をTダイ押出機により加熱溶融押出しして、透明な樹脂層(厚さ:80μm)を形成した。
次いで、樹脂層を加熱して軟化状態にし、樹脂層側からエンボス処理を施し、樹脂層の表面に第1凸状部2及び第2凸状部3を形成した。この工程におけるエンボス処理は、第1凸状部2及び第2凸状部3と同じ平面視形状で且つ凹凸が反転した相補的な形状を有するエンボス版を用いて、樹脂層に凹凸形状を賦形することにより、図7に示したように第1凸状部2及び第2凸状部3の一方の側表面が上(図7の+Z方向)に凸の曲面となった凹凸形状を有する樹脂層を形成し、実施例1における浮造調木目化粧材を得た。
エンボス処理に用いたエンボス版を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~7及び比較例1の浮造調木目化粧材を得た。
2…第1凸状部
3…第2凸状部
4…模様層
5…裏打基材
Claims (11)
- 化粧材であって、
前記化粧材は、基材と、前記基材の一方の面側に設けられた第1凸状部と、前記基材の一方の面側に、前記第1凸状部と異なる位置に設けられた第2凸状部とを備え、
前記第1凸状部及び第2凸状部は、前記基材の一方の面側であって、かつ、化粧材の表面に設けられ、
前記第1凸状部の長さは、前記基材の長さ方向において、前記第2凸状部と比して長く、
前記第1凸状部の高さは、前記基材の厚さ方向において、前記第2凸状部と比して高く、
前記第1凸状部の高さは、前記基材の前記第1凸状部と前記第2凸状部の底面から0.1mm以上0.17mm以下であり、
前記第2凸状部の高さは、前記第1凸状部と前記第2凸状部の底面から0.04mm以上0.09mm以下であり、
前記化粧材は、前記基材の少なくとも一方の面側に木目柄の模様層をさらに備える、浮造調木目化粧材。 - 前記第1凸状部の幅は、前記基材の長さ方向と直交する方向に0.3mm以上2.0mm以下である、請求項1に記載の浮造調木目化粧材。
- 前記第1凸状部同士の前記基材の長さ方向と直交する方向における間隔は、0.1mm以上5.4mm以下である、請求項1又は2に記載の浮造調木目化粧材。
- 前記第1凸状部の端部は、前記基材の縁部のみに存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の浮造調木目化粧材。
- 前記第2凸状部の長さは、前記基材の長さ方向に0.3mm以上300mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の浮造調木目化粧材。
- 前記第2凸状部の幅は、前記基材の長さ方向と直交する方向に0.06mm以上0.9mm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の浮造調木目化粧材。
- 前記基材面における前記第1凸状部の占める割合に対する前記第2凸状部の占める割合は、0.5以上2.0以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の浮造調木目化粧材。
- 前記基材面において、前記第1凸状部の残部に対する前記第2凸状部の占める割合は、0.1以上0.8以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の浮造調木目化粧材。
- 前記第2凸状部の前記基材の長さ方向における端部は、窄まって丸味を帯びた形状である、請求項1~8のいずれか1項に記載の浮造調木目化粧材。
- 前記第2凸状部は、前記基材の長さ方向に間隔をおいて連なって配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の浮造調木目化粧材。
- 前記基材の前記第1凸状部及び前記第2凸状部が設けられている面の反対面側に裏打基材をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の浮造調木目化粧材。
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