(第1実施形態)
図1に示すように、自車10は、センサ群20と、外部通信装置30と、ECU40と、制御対象80とを備える車両である。ECU40は、自車10の位置を推定する位置推定装置として機能するとともに、位置推定装置によって推定された自車10の位置に基づいて自車の運転支援を実行する運転支援装置として機能する。
センサ群20は、車速センサ21と、操舵角センサ22と、加速度センサ23と、ヨーレートセンサ24と、レーダセンサ25とを備えている。
車速センサ21は、例えば、車輪のホイール部分に取り付けられており、車両の車輪速度に応じた車速信号をECU40に出力する。車速センサ21が複数の車輪に設置されている場合には、複数の車速センサ21の検出値の平均値や中間値等を自車10の車速Vとして用いてもよい。例えば、4つの車輪に車速センサ21がそれぞれ設置されている場合には、4つの検出値のうち速い方から2番目の検出値を用いるようにしてもよい。
操舵角センサ22は、例えば、車両のステアリングロッドに取り付けられており、運転者の操作に伴うステアリングホイールの操舵角の変化に応じた操舵角信号をECU40に出力する。
加速度センサ23は、自車10を中心に定義される直交する3軸まわりの加速度を検出し、加速度信号をECU40に出力する。加速度センサ23は、Gセンサと称されることもある。
ヨーレートセンサ24は、自車10の操舵量の変化速度に応じたヨーレート信号をECU40に出力する。ヨーレートセンサ24は、1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。1つのみ設置する場合には、例えば、自車10の中央位置に設けられる。ヨーレートセンサ24が複数設置されている場合には、複数のヨーレートセンサ24の検出値の平均値や中間値等を検出値として用いてもよい。
加速度センサ23およびヨーレートセンサ24は、慣性センサである。慣性センサとし、上記の他に、ジャイロセンサ等を備えていてもよい。ジャイロセンサは、自車10を中心に定義される直交する3軸まわりの回転角を検出することができる。
レーダセンサ25は、探査波の反射波を用いて自車10の周囲の物体を検出できるセンサである。より具体的には、レーダセンサ25は、例えば、ミリ波帯の高周波信号を送信波とする公知のミリ波レーダである。レーダセンサ25は、自車10に1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。レーダセンサ25は、例えば、自車10の前端部に設けられ、所定の検出角に入る領域を物体検出可能な検出範囲とし、検出範囲内の物体の位置を検出することができる。具体的には、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信する。この探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物体との距離を算出することができる。
また、レーダセンサ25によれば、物体に反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、相対速度を算出することができる。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物体の方位を算出することができる。なお、物体の位置および方位が算出できれば、その物体と、自車10との相対位置を特定することができる。
レーダセンサ25と同様に探査波の反射波を用いて自車10の周囲の物体を検出できるセンサとして、超音波センサ、LIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)等のセンサを備えていてもよい。
レーダセンサ25等の探査波を送信するセンサは、障害物によって反射された反射波を受信した場合に得られる受信信号に基づく走査結果を、センシング情報としてECU40へ逐次出力する。レーダセンサ25等の探査波を送信するセンサは、反射電力が大きい物体を検出することに好適に用いることができる。レーダセンサ25等の探査波を送信するセンサは、自車10の前方の物体に限らず、後方や側方の物体を検出して利用してもよい。
外部通信装置30は、電波通信装置31と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信装置32とを備えている。ECU40は、外部通信装置30によって、自車10の外部に設置された外部サーバ12と通信することができる。外部サーバ12は、外部地図情報データベース(DB)13を備えている。
外部地図情報DB13には、自車10の走行案内や経路探索に使用される地図情報が格納されている。地図情報は、経路案内及び地図表示に必要な各種情報から構成されており、例えば、各新設道路を特定するための新設道路情報、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、道路に関する道路データ、経路を探索するための探索データ、施設の一種である店舗等のPOI(Point of Interest)に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等を含んでいる。
また、道路データとしては、道路の長さ、横幅、位置(例えば、緯度と経度によって表される位置)、車線数、道路の勾配に関する勾配情報(例えば、横勾配情報、縦勾配情報)、道路の曲率に関する曲率情報、道路ジョイントに関するジョイント情報、路上構造物に関する路上構造物情報を例示することができる。
勾配情報は、道路の勾配の大きさ、位置の他、その道路勾配をセンサ類により検出した際の検出データ(検出値や検出波形)等に関する情報を含む。縦勾配情報は、自車10の縦方向(走行方向)の勾配に関する情報であり、横勾配情報は、自車10の横方向(走行方向に直交する横幅方向)の勾配に関する情報である。曲率情報は、道路の曲率の大きさ、向き、位置の他、その曲率をセンサ類により検出した際の検出データ等に関する情報を含む。
ジョイント情報は、ジョイントの位置、大きさの他、そのジョイントをセンサ類により検出した際の検出データ等に関する情報を含む。図2に示すように、ジョイント100は、道路90の継目に設けられている接続部材である。ジョイント100の矩形状の嵌合部や、ジョイント100と道路90との接続部は起伏しており、その起伏により、ジョイント100を通過する際に、自車10は振動する。図3(a)(b)に示すように、自車10の走行方向において道路90に設けられたジョイント101,102において、道路90に起伏が生じる。このため、ジョイント101,102を通過する際に、自車10は縦方向に振動する。この振動に関する検出データがジョイント情報として含まれている。
路上構造物情報は、路上構造物の種別、大きさ、位置の他、その路上構造物をセンサ類により検出した際の検出データ等に関する情報を含む。
地図情報に含まれる検出データは、その道路を実際に走行して得られた際にセンサ類によって検出されたデータである。検出データは、その検出対象について1つのみ格納されてもよいし、複数格納されていてもよい。また、検出データは、位置や距離に対応する検出値の変化がパターン化された状態で外部地図情報DB13に格納されていてもよい。
電波通信装置31は、自車10が外部と電波の送受信により通信するための装置である。電波通信装置31としては、ワイファイ(WiFi(登録商標))電波、携帯基地局電波、道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System;VICS(登録商標))電波、V2X(vehicle to X)電波による通信を行う装置を例示できる。
GNSS受信装置32は、人工衛星から発射される信号を用いて位置測定・航法・時刻配信を行うシステムにおける受信装置である。GNSS機能を提供する衛星システムとしては、GPS(Global positioning system)の他に、GLO(Global Navigation Satellite System;GLONASS),GAL(Galileo),QZS(準天頂衛星システム,Quasi-Zenith Satellite System;QZSS),BDS(北斗衛星導航系統,BeiDou Navigation Satellite System)を例示することができる。GNSS受信装置32は、所定周期毎に測位信号を受信する。GNSS受信装置32により、人工衛星から測位信号を逐次受信することで、自車10の位置を逐次推定できる。
ECU40は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、I/O等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、本明細書で説明する各機能を実現することができる。
ECU40は、車載地図情報DB41と、位置推定部50と、運転支援部70とを備えている。車載地図情報DB41は、外部地図情報DB13から取得した地図情報を格納する。車載地図情報DB41は、外部地図情報DB13から取得可能な地図情報のうち、自車10の走行路に関する地図情報のみを格納するように構成されていてもよい。または、車載地図情報DB41は、外部地図情報DB13から取得した地図情報を近似する等により軽量化した状態で格納するように構成されていてもよい。
位置推定部50は、自車10の走行する道路である走行路における所定の特徴的要素を検出し、その特徴的要素を、地図情報に含まれる1以上の特徴的要素と照合する。そして、照合された地図情報における特徴的要素の位置を、検出した特徴的要素の位置として特定する。そして、その特徴的要素に対する自車10の相対位置を検出して、自車10の位置を推定する。所定の特徴的要素としては、限定されないが、走行路の横勾配、縦勾配、曲率、起伏等の路面形状、路上構造物等を例示することができる。
位置推定部50は、地図情報取得部51と、送受信履歴取得部52と、相対位置検出部53と、振動検出部54と、横勾配検出部55と、縦勾配検出部56と、曲率検出部57と、ジョイント検出部58と、路上構造物検出部59と、自車位置推定部60と、誤差補正部61と、記憶部62とを備えている。
地図情報取得部51は、地図情報に含まれる走行路の特徴的要素に関する情報を取得する。具体的には、走行路の勾配に関する勾配情報、走行路の曲率に関する曲率情報、道路ジョイントに関するジョイント情報、路上構造物に関する路上構造物情報等を取得する。より具体的には、走行路における勾配、曲率、ジョイント、路上構造物について、その種別、位置、形状、大きさ、検出データ等に関する情報等を取得する。地図情報取得部51は、外部通信装置30を介して、外部地図情報DB13から地図情報を取得してもよいし、車載地図情報DB41から地図情報を取得してもよい。
地図情報取得部51は、自車10の近傍の地図情報のみを取得するように構成されていてもよい。例えば、GNSS受信装置32を用いて測位信号により推定した自車10の凡その位置から所定の範囲内について、地図情報を取得するように構成されていてもよい。取得した地図情報は、後述する記憶部62によって、車載地図情報DB41に記憶されてもよい。
送受信履歴取得部52は、外部通信装置30の送受信履歴を取得する。送受信履歴としては、例えば、外部通信装置30の感度の経時変化を取得する。取得した送受信履歴は、後述する記憶部62によって、ECU40に記憶されるように構成されていてもよい。
相対位置検出部53は、自車10の走行路における所定の特徴的要素に対する自車10の相対位置xrを検出する。相対位置検出部53は、後述する横勾配検出部55、縦勾配検出部56、曲率検出部57、ジョイント検出部58、路上構造物検出部59により検出された特徴的要素に対する自車10の相対位置xrを検出する。
振動検出部54は、加速度センサ23等の慣性センサの検出値を取得し、取得した検出値に基づいて自車10の鉛直方向の振動を検出する。例えば、図4(a)に示す自車10の鉛直方向の加速度の変化から、図4(b)に示す振動スコアを算出する。なお、図4(a)(b)において横軸に示す自車10の位置は同じである。図4(a)(b)に示すように、鉛直方向の重力加速度が正負に大きく変化する区間において、振動スコアが大きくなっている。
具体的には、図4(a)に示すような鉛直方向加速度の検出値Gz1にハイパスフィルタ(例えば3次フィルタ)を適用し、信号のバイアス成分を除去する。これにより、信号値S1を取得する。さらに、下記式(1)により、取得した信号値S1の絶対値であるabs(S1)から所定値S0を減算し、信号値S2を取得する。なお、加速度センサ23の検出性能に基づいて、所定値S0は適宜調整することが好ましい。
S2=abs(S1)-S0 … (1)
さらに、信号値S2に基づいて、信号値S3を設定する。S2<0の場合には、S3=0に設定し、S2≧0の場合には、S3=S2に設定する。これにより、小さ過ぎる信号値S2をキャンセルすることができる。
そして、自車10の走行路において得られた複数の正の信号値S3について、重み付き移動平均を適用する。例えば、現時点から過去において取得されたn個の正の信号値S3について算出した重み付き移動平均値を、信号値S4とする。図4(b)は、上記の手順により算出された信号値S4を示している。
横勾配検出部55、縦勾配検出部56、曲率検出部57、ジョイント検出部58は、自車10の走行路の路面形状を検出する形状検出部の具体例である。横勾配検出部55、縦勾配検出部56、曲率検出部57がそれぞれ検出する横勾配、縦勾配、曲率は、自車10の走行距離や走行時間に対応する横勾配の変化としてECU40に記憶されてもよい。
以下、図5に示すように自車10の走行路の基準線Bに沿ってx軸を設定し、x軸に垂直な横方向にy軸を設定して、説明する。基準線Bは、図3に示す道路90における自車10の走行車線91の車線幅方向の中央に位置する線である。本明細書では、図5に示すx軸方向を、自車10の走行方向または縦方向と称することがある。また、図5に示すy方向を、横方向と称することがある。また、横勾配とは、横方向の勾配であり、y方向の勾配を示す。横勾配は、カント、横断勾配等と称されることもある。縦勾配とは、縦方向の勾配であり、x方向の勾配を示す。縦勾配は、スロープ、縦断勾配等と称されることもある。
横勾配検出部55は、車速センサ21による自車10の車速の検出値Vと、加速度センサ23による横方向加速度の検出値Ayと、ヨーレートセンサ24によるヨーレートの検出値YRとに基づいて、自車10の走行路の横勾配Syを検出する。
具体的には、ローパスフィルタ(LPF)により各検出値を平滑化し、平滑化した車速Vsmo、横方向加速度Ay_smo、ヨーレートYRsmoを用いて、下記式(2)から、横勾配Syを算出する。なお、gは、重力加速度を示す。
Sy=(Ay_smo+Vsmo×YRsmo)/g … (2)
縦勾配検出部56は、車速センサ21による自車10の車速の検出値Vと、加速度センサ23による縦方向加速度の検出値Axとに基づいて、自車10の走行路の縦勾配を検出する。
具体的には、まず、LPFにより各検出値を平滑化する。そして、平滑化した車速Vsmoについて、下記式(3)に示すように、前進差分による微分値dVsmoを算出する。なお、dtは時間刻み間隔であり、Vsmo(i)は現在(現刻み時間)の車速であり、Vsmo(i-1)は前回(直前の刻み時間)の車速である。
dVsmo=(Vsmo(i)-Vsmo(i-1))/dt … (3)
そして、微分値dVsmoと、縦方向加速度Ax_smoを用いて、下記式(4)から、縦勾配Sxを算出する。
Sx=-(Ax_smo+dVsmo)/g … (4)
曲率検出部57は、車速センサ21、操舵角センサ22、加速度センサ23、ヨーレートセンサ24等の検出値に基づいて、自車10の走行路の曲率Cuを検出する。例えば、ヨーレートYRと車速Vとを用いて、下記式(5)から曲率Cuを算出する。
Cu=YR/V … (5)
ジョイント検出部58は、自車10の走行路に設けられたジョイントに起因する路面の起伏を検出する。図3(a)(b)に示すように、自車10が道路90を走行中、道路90に設けられたジョイント101,102を通過する際に、自車10は鉛直方向に振動する。この振動は、振動検出部54によって検出され、図4(b)に示す振動スコアを得ることができる。
ジョイント検出部58は、図4(b)に示す振動スコアに対してスコア閾値Fthを設定し、振動スコアが閾値Fth以上である場合に、ジョイントがあると検出する。図4(b)においては、1つのジョイントが存在することが検出される。スコア閾値Fthは、ジョイントに由来する振動スコアであると認められる下限値として設定される。スコア閾値Fthを設定することにより、ジョイント以外の路面の起伏による振動や、ノイズを除外することができる。
路上構造物検出部59は、送受信履歴取得部52が取得する送受信履歴や、レーダセンサ25によって検出された物体情報に基づいて、路上構造物を検出する。例えば、自車10がトンネルを通過中には、GNSS受信装置32の受信感度が低下する。このため、路上構造物検出部59は、取得した送受信履歴から、GNSS受信装置32の受信感度が低下する区間を抽出する。これによって、自車10の走行路におけるトンネル等を検出でき、その大きさ等を推定することができる。
また、例えば、レーダセンサ25が出力する探査波は、ガードレール、中央分離帯、道路標識、看板等の金属構造物に反射される場合、強い反射波となってレーダセンサ25により受信される。このため、路上構造物検出部59は、レーダセンサ25により強い反射波が検出された区間を抽出する。これによって、路上構造物を検出でき、その大きさ等を推定することができる。
自車位置推定部60は、検出された走行路の特徴的要素(例えば、路面形状や路上構造物)を地図情報に含まれる走行路の特徴的要素と照合して、照合された地図情報における特徴的要素の位置を、検出した特徴的要素の位置として特定する。そして、下記式(6)に基づいて、特定された特徴的要素の位置xbと、検出された特徴的要素に対する自車10の相対位置xr(相対位置検出部53により検出される)から、地図情報における自車10の位置xcを推定する。なお、相対位置xrは、検出された特徴的要素に対して自車10が走行方向側(走行方向前方側)である場合を正の値とする。
xc=xb+xr … (6)
具体的には、例えば、図6に示すように、自車10の走行路である道路90に設けられたジョイント101,102を通過した場合に、地図情報に基づいて、ジョイント101の位置Pj1と、ジョイント102の位置Pj2とが特定される。相対位置検出部53は、位置Pj1またはPj2に対して、自車10の相対位置xrを算出することができる。ジョイント102に対する自車10の相対位置xrは、ジョイント102と、自車10との距離Lc2によって表される正の値である。また、ジョイント101に対する自車10の相対位置は、ジョイント101と、自車10との距離(Lj2+Lc2)によって表される正の値である。
例えば、地図情報から、ジョイント102の位置Pj2を特定し、自車10の車速V等に基づいて、ジョイント102に対する自車10の相対位置Lc2を算出する。そして、上記式(6)において、xb=Pj2、xr=Lc2とすることにより、地図情報に基づいた自車10の位置Pcを推定することができる。
誤差補正部61は、地図情報取得部51により取得された自車10の周囲の路面形状に基づいて、自車10に搭載された慣性センサ(例えば、加速度センサ23、ヨーレートセンサ24)と車速センサ21のうちの少なくともいずれか1つについて検出誤差を補正する。
記憶部62は、外部サーバ12の外部地図情報DB13から取得した地図情報、センサ群20から取得した検出値およびその検出値に基づいて算出した算出値等をECU40に備えられた記憶手段(RAM等)に記憶する。地図情報は、車載地図情報DB41に格納される。記憶部62は、地図情報取得部51が取得する走行路の勾配または曲率等に関する地図情報を、走行路の所定区間毎に直線近似する等により、車載地図情報DB41に記憶させるように構成されていてもよい。このように地図情報を近似して記憶することにより、ECU40の記憶容量における負荷を軽減することができる。
運転支援部70は、位置推定部50により推定された自車10の位置に基づいて、自車10の運転支援に関する処理を実行する。運転支援として、例えば、制御対象80を制御するための制御指令信号を出力する。運転支援部70は、経路地図情報取得部71と、走行制御部72とを備えている。
経路地図情報取得部71は、位置推定部50により推定された自車10の位置に基づいて、自車10がこれから走行する走行経路における地図情報を取得する。経路地図情報取得部71は、外部通信装置30を介して、外部地図情報DB13から地図情報を取得してもよいし、車載地図情報DB41から地図情報を取得してもよい。
走行制御部72は、横方向制御部73と、縦方向制御部74とを備えている。走行制御部72は、横方向制御部73と、縦方向制御部74とを備えることにより、走行計画等に従って自車10の自動運転および自動駐車を実行可能に構成されている。走行制御部72は、自動運転に際し、LKA(Lane Keeping Assist)、LCA(Lane Change Assist)、ACC(Adaptive Cruise Control)等として機能する。LKAとは、走行区画線への接近を阻む方向への操舵力を発生させることで、走行中の車線を維持して車両を走行させる機能である。また、LCAとは、隣接車線へと車両を自動で移動させる機能である。また、ACCとは、駆動力及び制動力を調整することで、先行車両との目標車間距離を維持するように自車両の走行速度を制御する機能である。
走行制御部72は、さらに、上記以外の機能を有するように構成されていてもよい。例えば、車両の周囲に位置する物体に対して、車両に対する衝突の有無を判定し、その物体との衝突を回避すべく、若しくは衝突被害を軽減すべく制御を行うPCS(Pre-Crash Safety)システムとしての機能等を有するように構成されていてもよい。なお、自車10の周囲の物体は、レーダセンサ25等により検出することができる。
横方向制御部73は、曲率情報および横勾配情報に基づいて算出した自車10の舵角目標値を用いて、自車10の操舵制御を行う。横方向制御部73によって、自車10の横位置yを制御できる。縦方向制御部74は、縦勾配情報に基づいて算出した加減速目標値を用いて、自車10の駆動制御および制動制御を行う。縦方向制御部74によって、自車10の車速Vを制御できる。
横方向(y軸方向)と縦方向(x軸方向)の制御ブロック図を、それぞれ図7,8に示す。図7に示す横方向制御ブロック図は、ECU40側で実行される処理と、制御対象80側で実行される処理とを含む。ECU40側で実行される横方向制御処理は、横方向制御部73によって実行される。横方向制御部73は、舵角演算部111と、横位置フィードバック(FB)制御部112と、舵角FB制御部113とを備えている。制御対象80は、舵角ダイナミクス114と、車両・車輪ダイナミクス115とを備えている。
舵角演算部111は、車速センサ21から取得される自車10の車速Vと、地図情報から取得される自車10の走行路の曲率Cuおよび横勾配(カント)Syの入力に基づいて、舵角フィードフォワード(FF)項Dffを算出する。
横位置FB制御部112は、横位置目標値yobおよびヨー角目標値θobと、車両・車輪ダイナミクス115が出力する現在の自車10の横位置yおよびヨー角θとの入力に基づいて、舵角FB項Dfbを出力する。自車10を基準線Bに沿って走行させるために、横位置目標値yobおよびヨー角目標値θobは、零に設定されることが好ましい。舵角FB項Dfbは、例えば、下記式(7)により算出できる。なお、kpyは、比例制御定数であり、kdyは、微分制御定数である。
Dfb=kpy×(yob-y)+kdy×(θob-θ) … (7)
舵角FB項Dfbと、舵角FF項Dffとは、加算されて、舵角指令値Dcとして、舵角FB制御部に入力される。なお、舵角指令値Dcは、舵角目標値に相当する。舵角FB制御部113は、舵角指令値Dcと、舵角ダイナミクス114が出力する現在の自車10の舵角Dmとの入力に基づいて、操舵トルクTqを出力する。操舵トルクTqは、舵角Dmを舵角指令値Dcに制御するために要求される操舵トルクとして算出される。
舵角ダイナミクス114は、舵角に関する自車10の制御対象であり、操舵装置83に相当する。すなわち、操舵装置83は、入力された操舵トルクTqに基づいて操舵制御される。車両・車輪ダイナミクス115は、車両・車輪に関する自車10の制御対象であり、操舵トルクTqにより操舵装置83が操舵された場合における自車10の横位置yおよびヨー角θを出力する。
図8に示す縦方向制御ブロック図は、ECU40側で実行される処理と、制御対象80側で実行される処理とを含む。ECU40側で実行される縦方向制御処理は、縦方向制御部74によって実行される。縦方向制御部74は、加速度演算部121と、車速フィードバック(FB)制御部122と、エンジン/ブレーキ(E/B)FB制御部123とを備えている。制御対象80は、E/Bダイナミクス124と、車両・車輪ダイナミクス125とを備えている。
加速度演算部121は、車速センサ21から取得される自車10の車速Vと、ヨーレートセンサ24から取得される自車10の走行路の縦勾配Sxとの入力に基づいて、加速度FF項Affを算出する。
車速FB制御部122は、車速目標値Vobと、車両・車輪ダイナミクス125が出力する現在の自車10の車速Vとの入力に基づいて、加速度FB項Afbを出力する。加速度FB項Afbは、例えば、下記式(8)により算出できる。
Afb=kpx×(Vob-V) … (8)
加速度FB項Afbと、加速度FF項Affとは、加算されて、加速度指令値Acとして、E/B・FB制御部123に入力される。なお、加速度指令値Acは、加減速目標値に相当する。E/B・FB制御部123は、加速度指令値Acと、E/Bダイナミクス124が出力する現在の自車10の加速度Amとの入力に基づいて、E/B制御値EBを出力する。E/B制御値EBは、加速度Amを加速度指令値Acに制御するためのエンジンまたはブレーキの制御値であり、具体的には、エンジン開度、ブレーキシリンダ圧等の制御値である。
E/Bダイナミクス124は、エンジン・ブレーキに関する自車10の制御対象であり、駆動装置81および制動装置82に相当する。駆動装置81および制動装置82は、E/B制御値EBに基づいて制御される。車両・車輪ダイナミクス125は、E/B制御値EBにより駆動装置81および制動装置82が制御された場合における自車10の車速Vを出力する。
横方向制御部73、縦方向制御部74によれば、経路地図情報として取得される自車10の走行経路における横勾配情報、縦勾配情報、曲率情報に基づいて、FF項である舵角FF項Dff、加速度FF項Affを算出することができる。このFF項を、それぞれ、FB項である舵角FB項Dfb、加速度FB項Afbに加算して、その和として得られる舵角指令値Dc、加速度指令値Acに基づいて、自車10を的確に制御できる。このため、自車10の走行制御性が向上する。
特に、カーブ路を通過する際において、自車10の走行制御性が著しく向上する。例えば、撮像装置によりカーブ路の曲率を検出し、検出した曲率に応じて車両の走行制御を行う場合には、撮像装置による曲率の検出が遅く、操舵制御が遅れる懸念があった。これに対して、運転支援部70によれば、位置推定部50により精度よく推定された自車10の位置に基づいて、地図情報としてカーブ路の曲率を迅速に取得することができる。このため、カーブ路における操舵制御の遅れが解消でき、自車10の操舵制御を的確に実行することができる。
運転支援部70は、さらに、LCAに関する機能として、車線変更時に、現在の走行車線の基準線における縦方向の位置を、車線変更後の走行車線の基準線に対応させる機能を有するように構成されていてもよい。
例えば、図3に示すような片側3車線の道路90に対して、図9に示すように、車線ごとに基準線B1~B3が設定される。基準線B2に沿って走行する自車10については、基準線B2における縦方向の位置は推定されるが、基準線B1,B3における縦方向の位置は推定されない。そこで、自車10が車線変更する際に、基準線B2における自車10の縦方向の位置と、車線変更後の基準線(基準線B1または基準線B3)における縦方向の位置とを対応付けする。
具体的には、図9に示すように、基準線B1~B3上に、同期ポイントMP1~MP4を設定する。そして、主となる基準線として例えば基準線B2を選択し、同期ポイント毎に、前の同期ポイントからの現同期ポイントまでの基準線B2の長さLmp1を算出する。また、前の同期ポイントからの現同期ポイントまでの基準線B1、B3の長さLmp2,Lmp3を算出する。そして、長さLmp2と長さLmp1との差であるdLmp1(=Lmp1-Lmp2),長さLmp2と長さLmp3との差であるdLmp3(=Lmp3-Lmp2)とを算出する。同期ポイント毎に算出したLmp2、dLmp1、dLmp3を地図情報として含む地図情報DBを準備する。
経路地図情報取得部71は、同期ポイントMP1~MP4毎に記憶されたLmp2、dLmp1、dLmp3を含む地図情報を取得する。例えば、自車10が車線変更し、自車10の走行路の基準線が基準線B2から基準線B1に変更された場合には、自車10の現在位置から最も近い同期ポイントにおけるLmp2、dLmp1、dLmp3を用いて、基準線B2において推定された自車10の縦方向の位置を、基準線B1において推定された縦方向の位置に変換することができる。
なお、同期ポイントは、基準線の形態に応じて設定間隔や個数を調整することが好ましい。例えば、曲率が大きいカーブ路等の基準線間で距離の差が大きくなる領域では、例えば同期ポイントMP2~MP4に示すように、同期ポイント数を多くし、間隔を狭く設定する。他方、略直行する道路等の基準線間で距離の差が小さくなる領域おいては、同期ポイントMP1~MP2に示すように、同期ポイント数を少なくし、間隔を広く設定する。また、道路の接続点や分離点には同期ポイントを設定し、基準線間の位置関係を更新可能とすることが好ましい。
制御対象80は、駆動装置81と、制動装置82と、操舵装置83と、警報装置84と、表示装置85とを備えている。制御対象80は、ECU40からの制御指令に基づいて作動するともに、運転者の操作入力によって作動するように構成されている。なお、運転者の操作入力は、ECU40によって適宜処理された後に、ECU40への制御指令信号として制御対象80に入力されてもよい。
駆動装置81は、車両を駆動するための装置であり、運転者のアクセル等の操作またはECU40の運転支援部70からの指令によって制御される。具体的には、内燃機関やモータ、蓄電池等の車両の駆動源と、それに関連する各構成を駆動装置81として挙げることができる。ECU40は、自車10の走行計画や車両状態に応じて駆動装置81を自動で制御する機能を有している。
制動装置82は、自車10を制動するための装置であり、運転者のブレーキ操作またはECU40の運転支援部70からの指令によって制御される。ECU40は、物体との衝突回避又は衝突被害の軽減のためのブレーキ機能として、運転者のブレーキ操作による制動力を増強して補助するブレーキアシスト機能、及び運転者のブレーキ操作がない場合に自動制動を行う自動ブレーキ機能を有していてもよい。制動装置82は、ECU40からの制御指令信号に基づき、これらの機能によるブレーキ制御を実施することができる。
操舵装置83は、自車10を操舵するための装置であり、運転者の操舵操作またはECU40の運転支援部70からの指令によって制御される。ECU40は、衝突回避または車線変更のために、操舵装置83を自動で制御する機能を有している。
警報装置84は、聴覚的に運転者等に報知するための装置であり、例えば自車10の車室内に設置されたスピーカやブザー等である。警報装置84は、ECU40からの制御指令信号に基づき警報音等を発することにより、例えば、運転者に対し、危険が及んでいること等を報知する。
表示装置85は、視覚的に運転者等に報知するための装置であり、例えば自車10の車室内に設置されたディスプレイ、計器類である。表示装置85は、ECU40からの制御指令信号に基づき警報メッセージ等を表示することにより、例えば、運転者に対し、危険が及んでいること等を通知する。
図10に、路面形状としてジョイントによる起伏を検出して自車位置を推定し、運転支援を実行する場合を例示して、ECU40が実行する位置推定処理および運転支援処理を示すフローチャートを示す。図10に示す処理は、自車10の運転時に所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS101では、地図情報として、自車10の走行路におけるジョイント情報を取得する。具体的には、ジョイントの位置、ジョイント上を走行した際の車両の振動波形等を含む地図情報を取得する。地図情報に含まれる振動波形は、その道路を実際に走行して得られた際に加速度センサ23によって検出された振動波形である。ステップS102に進む。
ステップS102では、センサ群20から、自車10の加速度、車速等と含む検出値を取得し、ステップS104に進む。
ステップS104では、例えば図4(a)に示すような加速度センサ23が検出した鉛直方向の加速度から、図4(b)に示すような振動スコアを算出する。その後、ステップS105に進む。
ステップS105では、振動スコアに基づいて、自車10の走行路においてジョイントが検出されたか否かを判定する。具体的には、算出した振動スコアFsに対して、スコア閾値Fthを設定する。そして、Fs≧Fthである場合に、ジョイントが検出されたと判定する。また、Fs<Fthである場合に、ジョイントが検出されないと判定する。ジョイントが検出された場合には、ステップS106~S114の処理を実行する。ジョイントが検出されなかった場合には、ステップS122~S124の処理を実行する。
ステップS106~ステップS114の処理は、自車10の位置推定に係るステップS106~ステップS111までの処理と、車速センサ21の誤差補正に係るステップS112~ステップS114の処理とを含む。
まず、ステップS106では、検出したジョイントの振動スコアの波形(振動波形)を、検出波形Jdとして取得する。その後、ステップS107に進む。
ステップS107では、ステップS101で取得した地図情報から、ジョイント上を走行した際の車両の振動波形を、地図波形Jmとして取得する。地図波形Jmは、過去に推定した自車10の位置から、自車10の走行経路に沿って所定の範囲内に位置するジョイントについての振動波形を複数抽出したものであることが好ましい。自車10のその後、ステップS108に進む。
ステップS108では、検出波形Jdと、複数の地図波形Jmとを照合し、検出波形Jdと一致度が最も高い地図波形Jmを選定する。その後、ステップS109に進む。
ステップS109では、選定した地図波形Jmの位置を地図情報から取得し、検出したジョイントの位置xjmとして特定する。その後、ステップS110に進む。
ステップS110では、特定したジョイントの位置xjmに対する自車10の相対位置xrを検出する。相対位置xrは、ジョイントを検出した時点から、現在までに走行した自車10の走行距離として算出することができる。例えば、ステップS102においてセンサ検出値を取得した時点から、ステップS110までの処理に要する平均的な処理時間Tlと、ステップS102において取得した自車10の車速Vとの積(V×Tl)を相対位置xrとして算出してもよい。その後、ステップS111に進む。
ステップS111では、ステップS109において特定したジョイントの位置xjmと、相対位置xrとに基づいて、下記式(9)により、自車10の位置xcを推定する。その後、ステップS112に進む。
xc=xjm+xr … (9)
ステップS112では、過去に推定した自車10の位置を取得する。例えば、現周期以前にジョイントを検出した周期において、推定した自車位置xcbを取得する。その後、ステップS113に進む。
ステップS113では、過去に推定した自車位置xcbと、現周期で推定した自車位置xcとの差分として得られる推定走行距離xp1(x=xc-xb)を算出する。また、過去の自車位置xcbを推定した時点から現在の自車位置xcを推定した時点までの経過時間Tpasと、経過時間Tpasの間の車速Vの変化から、算出走行距離xp2とを算出する。その後、ステップS114に進む。
ステップS114では、推定走行距離xp1と、算出走行距離xp2との差に基づいて、車速センサ21の誤差を補正する。その後、ステップS130に進む。
他方、ステップS122では、ステップS112と同様に、過去に推定した自車位置xcbを取得し、ステップS123に進む。ステップS123では、過去の自車位置xcbを推定した時点から現在の自車位置xcを推定した時点までの経過時間Tpasと、経過時間Tpasの間の車速センサ21の検出値の変化から、算出走行距離xp2とを算出する。そして、下記式(10)により、過去の自車位置xcbと、算出走行距離xp2から、現在の自車位置xccを推定する。その後、ステップS130に進む。
xcc=xcb+xp2 … (10)
ステップS130では、ステップS111またはステップS124において推定した自車位置に基づいて、自車10がこれから走行する走行経路についての地図情報(経路地図情報)を取得する。経路地図情報は、曲率Cu,横勾配Sy,縦勾配Sxに関する情報を含む。その後、ステップS131に進む。
ステップS131では、経路地図情報として取得した曲率Cu,横勾配Syに基づいて、舵角指令値Dcを算出する。舵角指令値Dcの算出は、例えば、図7の制御ブロック図に示す処理によって算出できる。その後、ステップS132に進む。
ステップS132では、経路地図情報として取得した縦勾配Sxに基づいて、加速度指令値Acを算出する。加速度指令値Acの算出は、例えば、図8の制御ブロック図に示す処理によって算出できる。その後、ステップS133に進む。
ステップS133では、算出した舵角指令値Dcおよび加速度指令値Acに基づいて、駆動装置81、制動装置82、操舵装置83等に対して、運転支援を実行し、処理を終了する。
本実施形態によれば、ECU40は、車両に搭載されている加速度センサ23の検出値を利用して、自車10が、その走行路に設けられたジョイントを通過する際に発生する自車10の振動を検出することができる。そして、自車10が、検出した自車10の振動に基づいて、ジョイントを検出することができる。さらには、そのジョイントを検出した際の振動波形を、地図情報に含まれるジョイント毎の振動波形と照合することにより、検出したジョイントの位置を特定することができる。さらに、特定したジョイントの位置と、そのジョイントに対する自車10の相対位置とに基づいて、自車10の位置を推定することができる。
ECU40によれば、車両に搭載されている加速度センサ23を利用して、ジョイントを検出することによって、自車10の位置を地図情報に基づいて推定することができる。このため、視覚的に自車10の位置を検出することが困難な状況下でも、自車10の位置を精度よく推定できる。
例えば、撮像装置を用いて道路標識等を認識することにより、自車10の位置を推定する場合には、雨天や濃霧等の天候、昼夜や逆光等の明暗差、振動による画像ブレ、隣接車等による遮蔽等の視覚的に阻害された環境条件では、標識の形状を検出できなくなる場合がある。これに対し、本実施形態では、ジョイントの通過に伴う振動を検出するため、上記のような視覚的に阻害された環境条件下においても、検出が阻害されることがない。このため、本実施形態によれば、環境条件により自車10の位置推定が妨害されることが少ない。
また、撮像装置を用いて道路標識等を認識することにより、自車10の位置を推定する場合には、周囲の紛らわしい形状を誤認識することが懸念される。本実施形態によれば、ジョイントの通過に伴う自車10の振動を検出して自車10の位置を推定するため、撮像装置を用いる従来技術よりも、ジョイントの検出誤差による自車10の位置推定における誤差の発生を抑制することができる。
また、ジョイントの位置や形状等は、大幅な道路構造の改変工事を行わない限り変わるものではないため、道路標識の位置や種類が変更される頻度と比較して、ジョイントの位置や形状が変更される頻度は著しく低い。このため、ジョイントに関する地図情報を更新する頻度を低くすることができる。
また、本実施形態によれば、ジョイントを検出するために新たにセンサを追加することなく、一般に車両に搭載されている加速度センサ23を利用して、ジョイントを検出できる。このため、低コスト性、車両の小型軽量性を確保しつつ、自車10の位置を精度よく推定することができる。
また、本実施形態によれば、撮像装置や、GNSS受信装置32により自車10の位置を推定する場合よりも高精度に自車10の走行方向(縦方向、x軸方向)における位置を推定できる。加速度センサ23の検出性能により、ジョイントの検出性能は変化するが、一般に用いられる加速度センサ23の性能を考慮しても、撮像装置や、GNSS受信装置32を用いる場合よりも、自車10の位置を高精度に推定できる。
例えば、本実施形態に係るジョイント検出による自車10の位置推定の精度は、自車10が100km/hで走行中において、加速度センサ23のサンプリング周期が60Hzである場合に1~2m程度、1kHz程度である場合に10cm程度、10kHz程度である場合に1cm程度であると見込まれる。
これに対し、ステレオカメラ等の撮像装置により検出した画像を使用して自車10の位置を推定する場合、フレームレート(FPS)が100であるときに、自車10が100km/hで走行中である場合の自車10の位置推定の精度は数m程度である。さらには、撮像装置に比べて、加速度センサは低コストであり、サンプリング周期を高くすることも容易であるため、本実施形態によれば、自車10の位置推定をより精度よく実行可能に設計することができる。
また、一般的なGNSS測位信号による自車10の位置推定の精度は、10m程度以上である。また、本実施形態によれば、自車10がトンネルを走行中など、GNSS受信装置32による通信ができない状況下でも、自車10の位置を推定することができる。
また、撮像装置により得られる画像情報は、2次元であるため、検出および処理の負荷が大きい。これに対し、本実施形態によれば、加速度センサ23により取得される検出値は、1次元データであり、ジョイントの通過に伴う振動を検出するのみである。このため、撮像装置を用いる従来技術よりも、検出および処理の負荷をより小さくすることができる。
また、本実施形態によれば、図7,8に示すように、経路地図情報として取得される自車10の走行経路における横勾配情報、縦勾配情報、曲率情報に基づいて、舵角FF項Dff、加速度FF項Affを算出し、それぞれ、舵角FB項Dfb、加速度FB項Afbに加算する。そして、その和として得られる舵角指令値Dc、加速度指令値Acに基づいて、自車10を的確に制御できる。このため、自車10の走行制御性が向上する。特に、カーブ路を通過する際において、自車10の走行制御性が著しく向上する。
(第2実施形態)
第2実施形態では、路面形状として、道路の勾配または曲率を検出して自車位置を推定し、運転支援を実行する場合を例示して説明する。図11は、自車10の走行路における路面形状の変化を、基準線上の位置に対して示した図である。図11(a)は曲率の変化を示し、図11(b)(d)は横勾配の変化を示し、図11(c)は縦勾配の変化を示している。
図11(a)に示すように、外部サーバ12の外部地図情報DB13から地図情報取得部51により地図情報として取得された曲率の変化は、記憶部62によって、所定の走行区間ごとにECU40に記憶される。同様に、図11(b)(c)に示すように、地図情報として取得された横勾配の変化および縦勾配の変化は、記憶部62によって、所定の走行区間ごとにECU40の車載地図情報DB41に格納される。
図11(d)は、図11(b)に示す横勾配に関する地図情報を、縦方向に延びる破線によって区切られた道路の所定区間毎に直線近似したものである。なお、比較のため、図11(d)中には、図11(b)に示す横勾配の変化が破線によって示されている。区切られた各区間において、実線により示された直線によって近似されることにより、横勾配の情報量を削減することができる。所定区間は、直線近似するデータに応じて任意に設定できる。所定区間内において、データの直線近似が可能となるように、その所定区間の区間幅は適宜調整される。
記憶部62は、曲率、横勾配、縦勾配の各情報について、図11(d)に示すような近似を行った上でECU40の車載地図情報DB41に格納されるように構成されていてもよい。これによって、ECU40の記憶容量における負荷を大幅に軽減することができる。
例えば、図12(a)に示すような基準線Bに沿って自車10が走行している場合に、図12(b)~(d)に示すように、曲率、横勾配、縦勾配を位置BP1~BP5において区切られた区間ごとに直線近似することができる。図13に示すように、記憶部62は、位置BP1~BP5毎に、曲率、横勾配、縦勾配を定数として車載地図情報DB41に格納することができる。図13の右側の5つの四角形において囲まれた情報は、互いに紐付けられて、車載地図情報DB41に格納されている。例えば、「位置BP1」について、同じ四角形内に示された「曲率;零、横勾配;Sy1、縦勾配;Sx1」という情報が紐付けられて、車載地図情報DB41に格納される。
第2実施形態では、自車位置推定部60は、横勾配検出部55と、縦勾配検出部56と、曲率検出部57により検出された路面形状の所定区間内での変化を、図11~13に示すような地図情報に含まれる路面形状の所定区間内の変化と照合することにより、路面形状の位置を特定する。自車10の走行路上のある地点における検出値ではなく、所定区間内で自車10の走行方向に沿ってパターン化された路面形状の変化として照合することにより、照合ミスによる路面形状の誤検出を抑制することができる。パターン化を行う所定区間は、任意に設定することができる。
図14に、第2実施形態において、ECU40が実行する位置推定処理および運転支援処理を示すフローチャートを示す。図14に示す処理は、自車10の運転時に所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS201では、地図情報として、自車10の走行路における横勾配情報および縦勾配情報を取得する。例えば、自車10の走行路の基準線上の位置に対する横勾配および縦勾配の大きさの変化等を地図情報として取得する。取得した横勾配および縦勾配の大きさの変化は、図13に示すように所定区間ごとに直線近似されて、区間開始位置と紐づけされてECU40の車載地図情報DB41に記憶される。
ステップS202では、センサ群20から、自車10の加速度、車速、ヨーレート等と含む検出値を取得し、ステップS203に進む。
ステップS203では、取得した検出値についてLPFによる平滑化を行い、上記式(2)~(4)に基づいて、横勾配の検出値Sydおよび縦勾配の検出値Sxdを算出する。その後、ステップS204に進む。
ステップS204では、ステップS201において取得した地図情報について直線近似された横勾配Symおよび縦勾配Sxmを取得し、ステップS205に進む。
ステップS205では、検出した横勾配Sydおよび縦勾配Sxdと、地図情報における横勾配Symおよび縦勾配Sxmとを照合し、一致度が最も高い横勾配Symおよび縦勾配Sxmを選定する。その後、ステップS206に進む。
ステップS206では、選定した横勾配Symおよび縦勾配Sxmに紐づけられた位置を地図情報から取得し、検出した横勾配Sydおよび縦勾配Sxdの位置xsmとして特定する。その後、ステップS207に進む。
ステップS207では、特定した横勾配Sydおよび縦勾配Sxdの位置xsmに対する自車10の相対位置xrを検出する。相対位置xrは、横勾配Sydおよび縦勾配Sxdを検出した時点から、現在までに走行した自車10の走行距離として算出することができる。例えば、ステップS202においてセンサ検出値を取得した時点から、ステップS207までの処理に要する平均的な処理時間Tlと、ステップS202において取得した自車10の車速Vとの積(V×Tl)を相対位置xrとして算出してもよい。その後、ステップS208に進む。
ステップS208では、ステップS206において特定した横勾配および縦勾配の位置xsmと、相対位置xrとに基づいて、自車10の位置xcを推定する。例えば、上記式(9)において、xjmをxsmに置き換えることにより、xcを算出できる。その後、ステップS230に進む。
ステップS230~S233に示す処理は、図10のステップS130~S133に示す処理と同様であるため、説明を省略する。ステップS233の後、ステップS234に進む。ステップS234では、自車10の位置xcにおける横勾配Sycを地図情報として取得し、横勾配Sycに基づいて、ヨーレートセンサ24等の誤差を補正する。その後、処理を終了する。
本実施形態によれば、ECU40は、車両に搭載されている車速センサ21、加速度センサ23、ヨーレートセンサ24の検出値を利用して、自車10の走行路の勾配を検出することができる。そして、検出した自車10の勾配を、地図情報に含まれる勾配と照合することにより、検出した勾配の位置を特定することができる。さらに、特定した勾配の位置と、その勾配に対する自車10の相対位置とに基づいて、自車10の位置を推定することができる。
ECU40によれば、車両に搭載されている車速センサ21、加速度センサ23、ヨーレートセンサ24を利用して、自車10の走行路の勾配を検出することによって、自車10の位置を地図情報に基づいて推定することができる。このため、視覚的に自車10の位置を検出することが困難な状況下でも、自車10の位置を精度よく推定できる。本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、視覚的に阻害された環境条件下においても検出が阻害されることがないため、環境条件により自車10の位置推定が妨害されることが少ない。
また、勾配や曲率等の路面形状は、大幅な道路構造の改変工事を行わない限り変わるものではないため、道路標識の位置や種類が変更される頻度と比較して、その位置や大きさが変更される頻度は著しく低い。このため、勾配や曲率等の路面形状に関する地図情報を更新する頻度を低くすることができる。
また、本実施形態では、自車10の走行路の勾配を検出するため、第1実施形態のように、ジョイントが存在しないことにより、地図情報におけるジョイントの位置xjmに基づいて自車10の位置を推定できなくなることがない。このため、図10のステップS122~S124に示すような、走行路の特徴的要素が検出できなかった場合を補完するための自車位置推定処理の必要性が低い。
(第3実施形態)
本実施形態では、自車10の車速Vに基づいて、自車10の位置推定処理の内容を切り替える。図15は、本実施形態において、ECU40が実行する位置推定処理および運転支援処理を示すフローチャートである。図15に示す処理は、自車10の運転時に所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS301では、ステップS101およびステップS201と同様に、地図情報として、自車10の走行路におけるジョイント情報と、横勾配情報と、縦勾配情報とを含む地図情報を取得する。取得した横勾配および縦勾配の大きさの変化は、図13に示すように所定区間ごとに直線近似されて、区間開始位置と紐づけされてECU40の車載地図情報DB41に記憶される。
ステップS302では、センサ群20から、自車10の自車10の加速度、車速、ヨーレート等を含む検出値を取得し、ステップS303に進む。
ステップS303では、自車10の車速Vが、所定の速度閾値Vth以上であるか否かを判定する。自車10の速度Vが速い場合には、自車10の振動が大きくなるため、ジョイントを精度よく検出できる。このため、速度閾値Vthは、例えば、自車10の振動の検出感度が、ジョイントの検出において十分大きくなるような自車10の車速に設定することができる。V≧Vthである場合には、ステップS304~S311に示すジョイント検出による位置推定処理を実行する。V<Vthである場合には、ステップS323~S328に示す勾配検出による位置推定処理を実行する。
ステップS304では、ステップS104と同様に、加速度センサ23が検出した縦方向加速度から振動スコアを算出し、ステップS305に進む。
ステップS305では、ステップS105と同様に、振動スコアに基づいて、自車10の走行路においてジョイントが検出されたか否かを判定する。具体的には、算出した振動スコアFsに対して、スコア閾値Fthを設定する。そして、Fs≧Fthである場合に、ジョイントが検出されたと判定する。また、Fs<Fthである場合に、ジョイントが検出されないと判定する。
ステップS305では、ジョイントが検出された場合には、ステップS306~S311,S330~S333の処理を実行する。ステップS306~S311,S330~S333の処理は、図10のステップS106~S111,S130~S133に示す処理と同様であるため、説明を省略する。
ステップS305において、ジョイントが検出されなかった場合には、ステップS323~S328に示す勾配検出による位置推定処理を実行する。すなわち、ステップS303において、V<Vthであると判定された場合と、ステップS305において、ジョイントが検出されなかったと判定された場合に、ステップS323~S328に示す勾配検出による位置推定の各処理を実行する。ステップS323~S328に示す処理は、図14のステップS223~S228に示す処理と同様であるため、説明を省略する。
自車10の速度Vが速い場合には、自車10の振動が大きくなるため、ジョイントを精度よく検出できる。本実施形態によれば、速度閾値Vthは、自車10の振動の検出感度が、ジョイントの検出において十分大きくなるような自車10の車速に設定されている。そして、ECU40は、速度Vが所定の速度閾値Vth以上である場合に、ジョイント検出を利用する自車位置の推定処理を選択するように構成されている。このため、自車10の走行状態に応じて、適切な推定方法により自車10の位置を推定できる。
また、ECU40は、自車10の速度Vが低く、ジョイントの検出が困難である場合や、ジョイントが存在しない等によりジョイントを検出できなかった場合においては、走行路の勾配検出を利用する自車位置の推定処理を選択する。このため、ジョイントの検出が困難または不能である場合にも、走行路の勾配検出によって精度よく自車位置を推定できる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、外部通信装置30の送受信感度の履歴に基づいて、路上構造物を検出して自車位置を推定し、運転支援を実行する場合を例示して説明する。
図16に示すように、走行路である道路90上にトンネル103等が存在する場合には、トンネル103内を走行中の自車10aにおいては、外部通信装置30の通信電波が遮断される。このため、送受信履歴取得部52により外部通信装置30の送受信感度の履歴を取得し、通信電波が遮断され、送受信が行われなかった送受信ロス期間を検出することにより、トンネル103等の遮蔽物の存在を検出することができる。
路上構造物検出部59は、送受信ロス期間において車速Vについて時間積分を行うことにより、遮蔽物が存在する区間(遮蔽区間)の長さHdを検出することができる。遮蔽区間の長さHdは、自車10の走行方向における遮蔽物(トンネル103)の開始位置Pssから終了位置Pseまでの距離によって表すことができる。
自車位置推定部60は、例えば、検出した遮蔽区間の長さHdと、地図情報における遮蔽区間の長さHmとを照合することにより、検出した遮蔽物の位置を特定することができる。さらに、特定した遮蔽物による遮蔽区間の終了位置Pseを地図情報から取得し、相対位置検出部53により、終了位置Pseに対する自車10の相対位置Lceを算出することができる。そして、上記式(6)において、xb=Pse、xr=Lceとすることにより、地図情報に基づいた自車10の位置Pcを推定することができる。
図17は、第4実施形態において、ECU40が実行する位置推定処理および運転支援処理を示すフローチャートである。図17に示す処理は、自車10の運転時に所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS401では、地図情報として、自車10の走行路における路上構造物情報を取得する。具体的には、遮蔽物の種別および位置と、その遮蔽物が存在する遮蔽区間の長さHmを含む地図情報を取得する。次いで、ステップS402では、外部通信装置30から、送受信感度の履歴を取得し、ステップS403に進む。
ステップS403では、送受信感度の履歴に基づいて、送受信ロス期間が存在するか否かを判定する。例えば、送受信感度の経時変化から、所定の感度閾値以下である状態が、所定時間以上継続する期間が存在する場合、その期間を送受信ロス期間と認定する。そして、送受信ロス期間が存在すると判定する。
送受信ロス期間が存在すると判定した場合には、ステップS404に進み、遮蔽物が存在すると判断した後、ステップS405に進む。送受信ロス期間が存在しないと判定した場合には、ステップS421に進み、遮蔽物が存在しないと判断した後、ステップS422~S424に示す処理を実行する。ステップS422~S424に示す処理は、図10のステップS122~S124に示す処理と同様であるため、説明を省略する。ステップS424の処理の後、ステップS430に進む。
ステップS405では、検出した送受信ロス期間と、ステップS402において取得した車速Vとに基づいて、検出した遮蔽区間の長さHdを算出する。続いて、ステップS406では、ステップS401において取得した地図情報から遮蔽区間の長さHmを取得し、ステップS407に進む。
ステップS407では、検出した遮蔽区間の長さHdと、地図情報における遮蔽区間の長さHmとを照合し、一致度が高いHmに対応する遮蔽区間を選定する。その後、ステップS408に進む。
ステップS408では、路上構造物の種別を特定する。具体的には、選定した遮蔽区間に存在する遮蔽物の種別を地図情報から取得し、検出した路上構造物の種別(例えば、トンネル)として特定する。続いて、ステップS409では、選定した遮蔽区間に対応する路上構造物位置を地図情報から取得し、検出した路上構造物の位置xhmとして特定する。その後、ステップS410に進む。
ステップS410では、特定した路上構造物の位置xhmに対する自車10の相対位置xrを検出する。相対位置xrは、路上構造物として遮蔽物を検出した時点から、現在までに走行した自車10の走行距離として算出することができる。例えば、送受信ロス期間の終了時から、現在までの経過時間Thと、ステップS402において取得した自車10の車速Vとの積(V×Th)を相対位置xrとして算出してもよい。その後、ステップS411に進む。
ステップS411では、特定した路上構造物の位置xhmと、相対位置xrとに基づいて、自車10の位置xcを推定する。例えば、上記式(9)において、xjmをxhmに置き換えることにより、xcを算出できる。その後、ステップS430に進む。ステップS430~S433に示す処理は、図10のステップS130~S133に示す処理と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態によれば、ECU40は、車両に搭載されている外部通信装置30の送受信履歴を利用して、トンネル103等の通信電波の授受を遮蔽する遮蔽物を路上構造物として検出することができる。そして、検出した路上構造物の長さ等を、地図情報に含まれる路上構造物の長さ等と照合することにより、検出した路上構造物の種別および位置を特定することができる。さらに、特定した路上構造物の位置と、その路上構造物に対する自車10の相対位置とに基づいて、自車10の位置を推定することができる。このため、視覚的に自車の位置を検出することが困難な状況下でも、自車10の位置を精度よく推定できる。本実施形態によれば、第1~第3実施形態と同様に、視覚的に阻害された環境条件下においても検出が阻害されることがないため、環境条件により自車10の位置推定が妨害されることが少ない。
なお、第4実施形態では、遮蔽物としてトンネルを例示し、個別の遮蔽物の位置xhmを特定することにより、自車10の位置xcを推定する場合を例示して説明したが、トンネル以外の遮蔽物を利用することもできる。遮蔽物としては、走行路の上方または側方に設けられて、送受信波を遮蔽する各種の構造物を利用することができる。具体的には、トンネルの他に、高架道路、歩道橋、道路標識板およびその支持体(アーチ状、道路上方に突き出す形状等)、街灯、遮音壁、道路脇に立地する高層建築物等を遮蔽物として例示することができる。また、送受信感度の履歴をパターン化して地図情報として記憶させ、自車10における送受信感度の履歴と比較することにより、自車10の位置xcを推定してもよい。
(変形例)
図18を用いて、自車10の走行経路における複数の遮蔽物と、複数のGNSS機能を有する人工衛星140L,140Rからの受信履歴のパターンとの関係を説明する。図18(a)は、自車10の走行経路における複数の遮蔽物と、複数のGNSS機能を有する人工衛星140L,140Rとの位置関係を示す。図18(b)は、人工衛星140Lからの受信履歴を示し、図18(c)は、人工衛星140Rからの受信履歴を示す。
図18(a)に示すように、自車10の走行経路における基準線Bに沿って、トンネル131、道路標識132、高架道路133、街灯134,135、高層ビル136,137が存在している。道路標識132は、自車10の走行する道路の上方を横断するアーチ状の支持体に標識板が設置された道路標識である。高架道路は、自車10の走行する道路の上方を横断する高架道路である。街灯134,135は、自車10の走行する道路の上方に左側から突出する形状の街灯である。高層ビル136,137は、それぞれ、自車10の走行する道路の左側、右側に立地している。
なお、金属構造物は、GNSS受信波を比較的容易に遮断する傾向があり、人工衛星と車載のGNSS受信装置との間に、鉄柱程度の細い金属構造物が存在するだけでも、GNSS受信波は、容易に遮断される。すなわち、鉄柱状の街灯134,135のような細い金属構造物であっても、遮蔽物となり得る。
人工衛星140Lは、自車10および基準線Bに対して左方向となる上空に位置しており、人工衛星140Rは、自車10および基準線Bに対して右方向となる上空に位置している。自車10が基準線Bに沿って走行すると、人工衛星140Lからの受信波は、基準線B上より基準線Bの左側に存在する遮蔽物、すなわち、トンネル131、道路標識132、高架道路133、街灯134,135、高層ビル136において遮蔽され、図18(b)に示す受信履歴が得られる。トンネル131による遮蔽区間Hd31、道路標識による遮蔽区間Hd32、高架道路133による遮蔽区間Hd33、街灯134,135による遮蔽区間Hd34,35、および、高層ビル136による遮蔽区間Hd36において、受信信号SGN1の強度が零になる。
また、人工衛星140Rからの受信波は、基準線B上より基準線Bの右側に存在する遮蔽物、すなわち、トンネル131、道路標識132、高架道路133、高層ビル137において遮蔽され、図18(c)に示す受信履歴が得られる。遮蔽区間Hd31~Hd33、および、高層ビル137による遮蔽区間Hd37において、受信信号SGN2の強度が零になる。
図18(b)および(c)に示す一連の受信履歴のパターンを、地図情報として記憶された受信履歴のパターンと照合することにより、地図情報において、図18(b)および(c)に示す受信履歴のパターンが得られる位置を特定することができ、これによって、自車10の現在の位置を推定することができる。道路の周辺に存在する構造物の種類や配置は、場所ごとに特有であるため、図18(b)(c)に示すような受信履歴のパターンを地図情報と照合することにより、地図情報における位置を特定することができる。
また、図18(a)に示すように、人工衛星の位置によって、遮蔽物となり得るか否かが変わるような構造物(具体例として、街灯134,135、高層ビル136,137)が存在する場合には、図18(b)(c)に示すように、人工衛星140Lと、人工衛星140Rとにおいて、相違する受信履歴のパターンを得ることができる。自車10に対して、方角や仰角が異なる位置に存在する複数の人工衛星から得られる、複数の受信履歴のパターンと、地図情報として記憶された受信履歴のパターンとの照合を行うことにより、ノイズ等により受信履歴のパターンに乱れが生じる場合においても、照合ミスを抑制することができ、ひいては、照合の精度を向上させることができる。
なお、各人工衛星の位置情報である衛星配置情報は、日時によりほぼ決まっているため、予め衛星配置情報を取得することにより、その日時における各人工衛星の実際の位置を予測することができる。また、人工衛星は、L1搬送波により、C/A(Coarse/Acquisition)コード、P(Precision)コード、航法メッセージ等を送信し、L2搬送波により、Pコードを送信する。航法メッセージに含まれている人工衛星の軌道情報から算出される放送暦に基づいて、衛星配置情報を算出することもできる。航法メッセージは、1メインフレーム=5サブフレームを1単位として30秒毎に繰り返し送信されるため、航法メッセージを用いれば、30秒に1回の頻度で衛星配置情報を取得することができる。
また、各人工衛星は、C/Aコードに固有の拡散符号を使用しているため、GNSS受信波と、C/Aコードとの相関により、人工衛星を識別して受信履歴を取得することができる。例えば、C/Aコードは、1msの周期で疑似乱数コードを送信するものであるため、C/Aコードの相関値の変化を監視することにより、1~2ms程度の精度で高精度に受信履歴における時間を取得することができる。また、搬送波の周期は、約1μsであるため、搬送波を利用して受信履歴における時間を取得することもできる。具体的には、自車10が100km/hで走行中において、1msの精度で受信履歴における時間を取得する場合には、遮蔽物の走行方向(縦方向、x方向)の位置を特定する際の精度は、2.8~5.6cm程度であると見積もられる。すなわち、GNSS受信波の受信履歴における受信感度を地図情報と比較することにより、自車10の走行方向の位置を高精度に推定することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態では、レーダセンサ25等の検出に基づいて、路上構造物を検出して自車位置を推定し、運転支援を実行する場合を例示して説明する。
図19に示すように、自車10の走行路である道路90に沿ってガードレール等の路上の金属構造物104が存在する場合には、レーダセンサ25の探査波が金属構造物104により反射されると、レーダセンサ25が受信する受信波の強度が大きくなる。このため、路上構造物検出部59は、レーダセンサ25の受信波信号の履歴を取得し、受信波強度ILが所定の強度閾値ILth以上となることを検出する。これにより、金属構造物104の存在を検出することができる。なお、レーダセンサ25が受信する受信波の強度が大きくなる路上構造物としては、限定されないが、ガードレール、中央分離帯等の柵状または柱状の金属構造物、道路標識、金属製の看板等を例示することができる。
路上構造物検出部59は、受信波強度ILが所定の強度閾値ILth以上となる強受信期間において車速Vについて時間積分を行うことにより、金属構造物104の長さEdを検出することができる。金属構造物104の長さEdは、自車10の走行方向における金属構造物104の存在開始位置Pssから存在終了位置Pseまでの距離によって表すことができる。
自車位置推定部60は、例えば、検出した金属構造物104の長さEdと、地図情報における路上構造物の長さEmとを照合することにより、検出した金属構造物104の位置を特定することができる。さらに、特定した金属構造物104の存在開始位置Pssを地図情報から取得し、相対位置検出部53により、存在開始位置Pssに対する自車10の相対位置Lcsを算出することができる。そして、上記式(6)において、xb=Pss、xr=Lcsとすることにより、地図情報に基づいた自車10の位置Pcを推定することができる。
なお、金属構造物104の長さに代えて、レーダセンサ25の受信波の波形、強度、検出した金属構造物104の基準線に対する横方向または高さ方向の距離等のパラメータを用いて、検出した金属構造物104と、地図情報として記憶された路上構造物とを照合してもよい。
図20は、第5実施形態において、ECU40が実行する位置推定処理および運転支援処理を示すフローチャートである。図20に示す処理は、自車10の運転時に所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS501では、地図情報として、自車10の走行路における路上構造物情報を取得する。具体的には、路上構造物の種別および位置と、その路上構造物の長さHmを含む地図情報を取得する。
次いで、ステップS502では、レーダセンサ25から受信波強度ILを取得し、車速センサ21から自車10の車速Vを取得する。その後、ステップS503に進む。
ステップS503では、受信波強度ILが所定の強度閾値ILth以下であるか否かを判定する。IL≧ILthである場合には、ステップS504に進み、路上構造物が存在すると判断した後、ステップS505に進む。IL<ILthである場合には、ステップS521に進み、路上構造物が存在しないと判断した後、ステップS522~S524に示す処理を実行する。ステップS522~S524に示す処理は、図10のステップS122~S124に示す処理と同様であるため、説明を省略する。ステップS524の処理の後、ステップS530に進む。
ステップS505では、IL≧ILthとなる強受信期間と、ステップS502において取得した車速Vとに基づいて、検出した路上構造物の長さEdを算出する。続いて、ステップS506では、ステップS501において取得した地図情報から路上構造物の長さEmを取得し、ステップS507に進む。
ステップS507では、検出した路上構造物の長さEdと、地図情報における路上構造物の長さEmとを照合し、一致度が高いEmに対応する路上構造物を選定する。その後、ステップS508に進む。
ステップS508では、路上構造物の種別を特定する。具体的には、地図情報から選定した路上構造物の種別を地図情報から取得し、検出した路上構造物の種別(例えば、ガードレール)として特定する。続いて、ステップS509では、選定した路上構造物の位置を、検出した路上構造物の位置xemとして特定する。その後、ステップS510に進む。
ステップS510では、特定した路上構造物の位置xemに対する自車10の相対位置xrを検出する。相対位置xrは、路上構造物として金属構造物104を検出した時点から、現在までに走行した自車10の走行距離として算出することができる。例えば、強受信期間の終了時から、現在までの経過時間Teと、ステップS502において取得した自車10の車速Vとの積(V×Te)を相対位置xrとして算出してもよい。その後、ステップS511に進む。
ステップS511では、特定した路上構造物の位置xemと、相対位置xrとに基づいて、自車10の位置xcを推定する。例えば、上記式(9)において、xjmをxemに置き換えることにより、xcを算出できる。その後、ステップS530に進む。ステップS530~S533に示す処理は、図9のステップS130~S133に示す処理と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態によれば、ECU40は、車両に搭載されているレーダセンサ25の受信波強度を利用して、金属構造物104等の反射電力が高い路上構造物を検出することができる。そして、検出した路上構造物の長さ等を、地図情報に含まれる路上構造物の長さ等と照合することにより、検出した路上構造物の種別および位置を特定することができる。さらに、特定した路上構造物の位置と、その路上構造物に対する自車10の相対位置とに基づいて、自車10の位置を推定することができる。このため、視覚的に自車10の位置を検出することが困難な状況下でも、自車10の位置を精度よく推定できる。本実施形態によれば、第1~第4実施形態と同様に、視覚的に阻害された環境条件下においても検出が阻害されることがないため、環境条件により自車10の位置推定が妨害されることが少ない。
上記の各実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
ECU40は、地図情報取得部51と、横勾配検出部55と、縦勾配検出部56と、曲率検出部57と、ジョイント検出部58等に例示される形状検出部と、路上構造物検出部59と、相対位置検出部53と、自車位置推定部60とを備え、自車10の位置を推定する位置推定装置として機能する。
地図情報取得部51は、自車10が走行する道路の地図情報を取得する。形状検出部は、加速度センサ23、ヨーレートセンサ24等に例示される慣性センサと、車速センサ21のうちの少なくともいずれか1つにより検出される自車10の走行状態に基づいて、自車10が走行する道路の路面形状を検出する。路上構造物検出部59は、外部通信装置30の感度に基づいて、もしくは、探査波の反射波を用いて、自車10が走行する道路の路上構造物を検出する。相対位置検出部53は、路面形状または路上構造物に対する自車10の相対位置を検出する。自車位置推定部60は、検出された路面形状または路上構造物を地図情報に含まれる路面形状または路上構造物と照合して、地図情報内の路面形状または路上構造物の位置を特定する。さらに、自車位置推定部60は、特定された路面形状または路上構造物の位置および相対位置に基づいて自車10の位置を推定する。
このため、ECU40によれば、視覚的情報を用いることなく、慣性センサと車速センサ21のうちの少なくともいずれか1つにより検出される自車10の走行状態に基づいて自車10の位置を推定することができる。このため、視覚的に自車10の位置を検出することが困難な状況下でも、自車10の位置を精度よく推定できる。
自車位置推定部60は、自車10の速度Vが所定の速度閾値Vth以上である場合に、ジョイント検出部58により検出された道路のジョイントによる起伏を、地図情報に含まれる路面形状と照合して自車10の位置を推定するように構成されていてもよい。また、自車位置推定部60は、自車10の速度Vが速度閾値Vth未満である場合に、横勾配検出部55、縦勾配検出部56、曲率検出部57等により検出された道路の勾配または曲率を、地図情報に含まれる道路の勾配または曲率と照合して自車の位置を推定するように構成されていてもよい。さらには、自車10の速度Vが所定の速度閾値Vth以上である場合であっても、ジョイントが検出できなかった場合に、道路の勾配または曲率を検出して地図情報と照合し、自車位置を推定してもよい。
ECU40は、地図情報取得部が取得する道路の勾配または曲率に関する地図情報を、道路の所定区間毎に直線近似して記憶する記憶部62を備える。これによって、ECU40の車載地図情報DBにおける記憶容量の負荷を軽減できる。
自車位置推定部60は、形状検出部により検出された路面形状の所定区間内での変化を、地図情報に含まれる路面形状の変化と照合するように構成されていてもよい。所定区間内でパターン化された路面形状の変化において検出データと地図情報とを比較することにより、照合ミスによる路面形状の誤検出を抑制することができる。
ECU40は、地図情報取得部51により取得された自車10の周囲の路面形状に基づいて、自車10に搭載された慣性センサと車速センサ21のうちの少なくともいずれか1つについて、検出誤差を補正する誤差補正部61を備える。このため、センサ群20の精度に由来する、ジョイント検出、道路の勾配または曲率の検出等における誤差を低減することができ、より精度よく自車10の位置を推定することができる。
また、ECU40は、経路地図情報取得部71と、走行制御部72とを備え、推定された自車10の位置に基づいて、自車10の運転支援を実行する運転支援装置としての機能を有する。このため、視覚的に自車の位置を検出することが困難な状況下でも、精度よく推定された自車の位置に基づいて、適切な運転支援を実行することができる。
経路地図情報取得部71は、推定された自車10の位置に基づいて、自車10の走行経路となる道路の地図情報である経路地図情報を取得する。例えば、自車10の走行経路となる道路の曲率情報、横勾配情報および縦勾配情報を経路地図情報として取得する。そして、走行制御部72は、経路地図情報に基づいて、自車10の走行を制御する。例えば、走行制御部72は、横方向制御部73を備えることにより、曲率情報および横勾配情報に基づいて算出した自車10の舵角目標値(舵角指令値Dc)を用いて、自車10の操舵制御を行う。また、縦方向制御部74を備えることにより、縦勾配情報に基づいて算出した加減速目標値(加速度指令値Ac)を用いて、自車10の駆動制御および制動制御を行う。このため、自車10の走行制御性が向上する。特に、カーブ路を通過する際において、自車10の走行制御性が著しく向上する。
なお、上記の各実施形態では、撮像装置を備えていない車両を例示して説明したが、撮像装置を備えた車両に対しても、上記の各実施形態に係るECU40等の構成を適用することができる。この場合、撮像装置は、自車位置推定以外の用途(例えば衝突回避制御等)においてのみ用いられるものであってもよいし、上記の各実施形態と並行して自車10の位置を推定する用途で用いられるものであってもよい。
また、上記の各実施形態では、自車10の走行路の特徴的要素を検出する検出部として、横勾配検出部55、縦勾配検出部56、曲率検出部57、ジョイント検出部58、路上構造物検出部59の全てを備えるECU40を例示して説明したが、これに限定されず、上記の各検出部の一部を備えるものであってもよい。
また、ECU40は、外部地図情報DB13と、車載地図情報DB14との双方から地図情報を取得可能に構成されているが、いずれか一方の地図情報DBからの地図情報のみを利用できるように構成されていてもよい。また、車載地図情報DB14に代えて、自車10から取り外し可能な記憶媒体に記憶させた地図情報DBを用いてもよい。また、自車10がナビゲーションシステムを備えている場合には、上述の地図情報DBに記憶された地図情報をナビゲーションシステムにおいて使用してもよい。
また、ECU40によって制御される制御対象は、制御対象80として例示した各装置以外の装置を含んでいてもよい。