本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに交差する上下方向と、左右方向と、前後方向とを有し、吸収性物品と、前記吸収性物品の個包装体と、前記個包装体を収容する収容袋とを備え、前記吸収性物品は、揮発性香料を有しており、前記収容袋は、前記吸収性物品を収容している内部空間内において、前記前後方向に互いに対向する一方側の内面と他方側の内面同士が当接可能であり、前記収容袋は、切り込みを有し、前記内部空間の圧力を上昇させた場合に、前記切り込みを介して前記内部空間から外部へ空気が排出可能に構成されていることを特徴とする吸収性物品の収容体である。
このような吸収性物品の収容体によれば、当該収容体を手に取った顧客が、収容袋の内面同士が当接可能な部分を握って内面同士を当接させたときに、内部空間の圧力の上昇が生じ、内部空間内の空気が切り込みを通って外に抜ける。吸収性物品を収容している内部空間には揮発した香料を含む空気が充満していることから、そのような必要最小限の空気の排出で、顧客は、購入前に香料の香りを実際に感じることができる。また、吸収性物品が個包装体として包装されていることにより、切り込みがあっても衛生状態を保つことができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記揮発性香料は、冷感剤または温感剤であることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、吸収性物品に付与されている揮発性成分が冷感剤又は温感剤である場合でも、収容袋の切り込みから出る空気によって、購入前に実際の冷感効果又は温感効果を感じることができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記収容袋の前記内部空間において、前記一方側の内面と前記他方側の内面同士が当接可能である部分は、前記左右方向の両側部の少なくとも一方に設けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、顧客が製品(収容体)を手でつかむ際、通常、製品の横方向(左右方向)の端部をつかむことが多いため、左右方向の両側部の少なくとも一方に当該当接可能である部分を設けることで、つかんだ際に内面同士が当接して切り込みから空気が押し出され、香りを感じることができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記切り込みは、前記収容袋の前記上下方向の上側に設けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、内面同士が当接可能である部分が左右方向の両側部の少なくとも一方に設けられている場合、仮に切り込みが同様に左右方向の両側部に設けられていると、手でつかんだ際に切り込みをふさいでしまう虞がある。しかし、切り込みを収容袋の上側に設けることで、手で切り込みをふさぐ虞を低減し、切り込みからの空気の排出を可能にする。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記前後方向に見て、前記個包袋体の前記左右方向の左端から前記内部空間の前記左右方向の左端までの長さと、前記個包袋体の前記左右方向の右端から前記内部空間の前記左右方向の右端までの長さとの合計は、前記収容体の前記前後方向の最大長さ以上であることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、収容体を前後方向に見たときに、個包袋体の左右方向の左端から内部空間の左端までの長さと、個包袋体の左右方向の右端から内部空間の右端までの長さとの合計(すなわち、吸収性物品が収容されていない非収容部分の長さの合計)が、収容体の前後方向の最大長さ未満である場合と比較して、該非収容部分の長さの合計が収容体の前後方向の最大長さ以上あることで、収容袋を押す際に袋内の吸収性物品に接触して物品に傷を付ける等の悪影響を及ぼす可能性を低減させつつ、外部に空気を移動させることができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記収容袋は、底面を有しており、前記底面が下側となるように前記収容体が直立した状態において、前記個包装体と前記切り込みとは、前記前後方向に見て重なっていないことが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、切り込みに被る位置に個包装体が配置されていると、切り込みから空気が出にくくなるが、個包装体と切り込みとが重ならないことで、切り込みからの空気の排出を阻害しない。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記個包装体は、前記吸収性物品を包装する包装材を有し、前記包装材は、不織布からなることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、包装材が不織布であることから、揮発した香料が個包装体から漏れ易くなり、収容体内に揮発した香料が充満しやすい。それにより、切り込みから出る最小限の空気の移動でも香料成分が外部に出やすく、顧客が香りを感じ易くなる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記個包装体は、前記吸収性物品を包装する包装材を有し、前記包装材は、樹脂フィルムからなり、前記個包装体は、前記包装材同士が接合されたシール部を有し、前記シール部には、前記包装材同士が圧接されている圧接部と、前記包装材同士が圧接されていない非圧接部とが設けられており、前記シール部を平面視したときの前記非圧接部の合計面積は、前記切り込みにおける開口面積よりも大きいことが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、樹脂フィルムの非圧接部から揮発した香料が漏れ出ることで、収容袋内に香料が充満する。一方で、収容袋は切り込みを介してのみ内部空間から外部へ空気が移動し、その切り込みの開口面積も小さいため、内部空間内の香料成分(揮発性成分)を外部に逃げにくくさせることができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記切り込みは、前記収容袋の前面及び後面のうちの少なくとも一方に設けられており、前記内部空間の圧力が変化しない場合、前記切り込みは、前記内部空間と外部が連通しない部分を有していることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、収容体を押す等による内圧の変化が発生しない限り、内部空間と外部が連通しない部分が存在することで収容袋から不必要に空気が流出することを回避することができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記切り込みは、少なくとも前記収容袋の前面に設けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、収容袋の前面は、収容体の表面(正面)であり、当該前面に切り込みが設けられていることで、揮発した香料を含む空気が前面から押し出される。そのように押し出された空気は、収容体を手に取った顧客の顔の付近に行きやすくなる。揮発した成分を感じやすい目や口の粘膜に該空気を当たり易くさせることで、香り(揮発性成分)をより感じ易くさせることができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記切り込みは、前記収容袋の前面と後面とを貫通するように設けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、前面及び後面の両方の切り込みから内部の空気が飛び出すため、揮発した香料が顧客により当たり易くなり、香り(揮発性成分)を感じ易くなる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記切り込みは、前記収容袋の前面及び後面のうちの少なくとも一方に設けられており、前記切り込みは、前記切り込みの長手方向に沿った一方側の切断面と、他方側の切断面とを有し、前記一方側の切断面と前記他方側の切断面は、互いに接する部分を有することが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、切断面同士が接する部分を有することで、収容袋内の空気は外部に漏れにくくなり、収容袋を押して必要な分の空気を放出させるときまで、収容袋内に含まれる香り(揮発性成分)を保持することができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記一方側の切断面及び前記他方側の切断面の前記前後方向の長さは、それぞれ、前記切り込みが形成されていない部分の前記収容袋の基材の厚さよりも短いことが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、切り込みを形成する際に、切り込みの端(切断面)は厚みが薄くなり、剛性が低くなっている。切り込みの切断面同士が接することで内部の空気が漏れにくくさせつつ、剛性が低いことで、収容袋を手で押す程度の力でも切り込みから空気を抜けやすくさせることができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記切り込みは、前記収容袋の前面及び後面のうちの少なくとも一方に設けられており、前記切り込みは、前記切り込みの長手方向に沿った一方側の切断面と、他方側の切断面とを有し、前記一方側の切断面と前記他方側の切断面とのうち、少なくともいずれか一方の切断面が前記内部空間側に向けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、切り込みの切断面が収容袋の外部に向けられていると、内部空間から切り込みを通って空気が必要以上に抜けやすくなる虞があるが、内部空間側に向けられていることで、収容袋に力を加えなければ空気が抜けにくく、香料成分の漏出を抑制できる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記収容袋には、前記切り込みが複数設けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、複数存在することで、顧客が収容袋を押した際に香りをより感じやすくなる。また、切り込みが複数設けられていても、収容袋に必要な力を加えない限りは内部空間から空気が抜けにくく、香料成分(揮発性成分)の漏出を抑えることができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記収容袋の酸素透過度は、200cc/m2/day/atm以下であることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、収容袋を介して必要以上に揮発性成分(香料、冷感剤、温感剤など)が透過しないので、内部空間内に揮発性成分を長期間保持できる。
かかる吸収性物品の収容体であって、複数の前記個包装体が収容されており、前記収容袋は、前記左右方向の両端部に一対の切り欠き部を有し、前記一対の切り欠き部の少なくとも一つを起点として、前記収容袋を前記左右方向に破断させることで、前記吸収性物品を取り出す開口部を形成し、前記収容袋は、前記開口部を封止する開閉可能な封止部を有し、前記切り込みは、前記封止部よりも上側に設けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、収容体を開封する前には、切り込みを介して内部空間内の空気を放出して香りを感じることができるが、開封後は封止部によって封止することで、内部空間内の揮発性成分を保持できる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記一対の切り欠き部を結ぶ前記左右方向に沿った帯状の領域内に、前記切り込みが設けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、左右方向において、切り欠き部の延長線上に切り込みがあることで、収容袋の破断時に切り込みが破断を補助する役割を果たし、開封し易くなる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記切り込みは、前記一対の切り欠き部よりも上側に設けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、開封のための破断時に、例えば、切り欠き部の延長線上よりも誤って上側に破断が生じる可能性を切り込みによって抑えることができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記一対の切り欠き部と前記封止部との間に、前記切り込みが設けられていることが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、一対の切り欠き部を目安に破断する際、例えば、誤って封止部に向かって破断が生じてしまっても、切り込みがあることで、破断が切り込みよりも下側(封止部側)に進むことを回避する補助となり得る。また、封止部の近傍に切り込みが設けられている場合は、封止部の厚みにより封止部の部分が前後方向に膨らみがちになるのを切り込みから空気が抜けることで緩和させることができる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記個包装体は、前記吸収性物品を包装する包装材を有し、前記個包装体は、上端部及び下端部に、前記包装材同士が接合されたシール部を有し、前記収容袋に前記個包装体が収容されている状態において、前記個包袋体は、前記下端部にある前記シール部と、前記吸収性物品との間に、前記包装材が前記前後方向又は前記左右方向に折り曲げられた折り曲げ部を有することが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、個包装体が収容袋に収容されている状態においては、下端部のシール部が収容袋を構成する一つの面と接することでシール部と吸収性物品との間の包装材が折り曲げられ、吸収性物品に含まれる揮発性成分がシール部を通って抜け出ようとするのを抑制する。それにより、個包装体の上端部及び下端部にある両方のシール部から吸収性物品の揮発性成分が漏出する場合と比較して、漏出を抑制でき、吸収性物品の使用時まで揮発性成分を維持し易くなることで、該成分の作用の機能低下を抑制できる。
かかる吸収性物品の収容体であって、前記個包装体は、前記吸収性物品を包装する包装材を有し、前記個包装体は、前記左右方向の両端部に、前記包装材同士が接合されたシール部を有し、前記収容袋に前記個包装体が収容されている状態において、前記個包装体は、前記左右方向の前記両端部のうちの少なくとも一方にある前記シール部と、前記吸収性物品との間に、前記包装材が前記前後方向又は前記左右方向に折り曲げられた折り曲げ部を有することが望ましい。
このような吸収性物品の収容体によれば、左右方向の端部のシール部と吸収性物品との間に設けられている折り曲げ部により、シール部を通って個包装体の外に抜け出ようとする空気の流れが抑制され、吸収性物品の香料成分(揮発性成分)がシール部から漏れ出にくくなる。個包袋体からの揮発性成分の漏出を抑制することにより、吸収性物品の使用時まで揮発性成分を維持しやすくなり、該成分の作用の機能低下を抑制できる。
===実施形態===
<吸収性物品収容体1の基本構成>
本発明に係る吸収性物品の収容体として、ショーツ型生理用ナプキンの個包装体を収容するショーツ型ナプキン収容体1(以下、単に「収容体1」とも呼ぶ)を例に挙げて実施形態を説明する。但し、収容体1に収容される吸収性物品はショーツ型ナプキンには限られず、使い捨ておむつやパンティーライナー、軽失禁用パッド等、収容体に収容可能なものであれば良い。
図1は、収容体1の正面図であり、図2は、図1のA-A断面について表す断面模式図である。収容体1は、袋状の収容袋10と、該収容袋10の内部に収容される複数の吸収性物品20(ショーツ型ナプキン)の個包装体30とを有している。また、収容体1(収容袋10)は、互いに交差する上下方向と、左右方向と、前後方向と、を有している。図1の正面図は、収容体1を前後方向の前側から見た状態について表している。
図2に示されるように、収容袋10は、上下方向における一方側(上側)から他方側(下側)に行くにしたがって、前後方向における幅が広がる収容空間S(図2において斜線で示される領域)を有し、当該収容空間S(以下、内部空間Sともいう)内に1以上の吸収性物品20の個包装体30を収容することが可能である。個包装体30は、前後方向に重ねて複数(本実施形態では2つ)収容され、収容体1の開封後は、収容袋10の上下方向における一方側(上側)に形成される開口部10E(後述)から自在に出し入れすることが可能である。
(収容袋10)
図3は、収容袋10の展開図である。図4Aは、収容袋10の下端部分の側面拡大図であり、図4Bは、収容体1の底面部13を表す平面図である。
図2~図4に示すように、収容袋10は、収容袋10の前側を構成する前面部(前面)11と、後側を構成する後面部(後面)12と、底面部(底面)13と、封止部14とを有している。
収容袋10を形成する際には、まず、図3に示す展開状態の収容袋10を、前面部11と後面部12とが向き合うように、折り位置A1及び折り位置A2にて谷折りに折る。図3の展開図では、前面部11の下端部分11edの左右方向の両側に所定の領域WE1、WE1(略三角形状の斜線部分)が示されている。同様に、後面部12の下端部分12edの左右方向の両側に所定の領域WE2、WE2(略三角形状の斜線部分)が示されている。前面部11と後面部12とが向かい合った状態で、底面部13の前後方向の中央である中央線CLを山折りに折ると、底面部13のうちの前面部11側の部分13aと前面部11とが前後方向に対向し、底面部13のうちの後面部12側の部分13bと後面部12とが前後方向に対向する。そして、領域WE1、WE1で前面部11と底面部13とが熱融着され、同様に、領域WE2、WE2で後面部12と底面部13とが熱融着される。
次に、前面部11及び後面部12のそれぞれの左右方向の端部11e、12eにおいて、互いに対向する端部11eと端部12e同士が上下方向に沿って熱融着されることにより、サイドシール部10S(図1、図3、及び図4A参照)が形成される。なお、サイドシール部10Sは、収容袋10の下端10Dまでは形成されず、前面部11の領域WE1(後面部12の領域WE2)の上端まで設けられる。具体的には、図4Aに示すように、前面部11の下端部分11ed及び後面部12の下端部分12edにおいては、折り込まれた底面部13の部分13c(すなわち、前面部11及び後面部12と融着された部分、図3及び図4B参照)が前後方向に向き合うため、部分13cの左右方向の端部同士が接合された下端シール部10SDが形成される。なお、下端シール部10SDは、上下方向に沿って一部が接合されるだけでもよく、例えば、下端部分11edと下端部分12edとを略円形状の溶着部分を介して互いに接合してもよい。
図4Bは、袋状に成形された収容袋10に吸収性物品20の個包装体30を収容した状態の底面部13を表しており、本実施の形態では、底面部13は、左右方向の両端に対応する部分がとがった形状を有し、収容袋10が自立姿勢を維持可能とする底面積を有している。なお、収容袋10を形成する際に、中央線CLに沿って底面部13を山折りに折り込んでいたが、個包装体30を収容袋10内に押し込むように収容させることによって、折り込まれた底面部13が下方へ押し広げられ、底面部13に各個包装体30の下端部が面状に接した状態となって、各個包装体30が収容空間S内に安定的に収容される。
袋状に形成された収容袋10に吸収性物品20の個包装体30(本実施形態では、二つ)を収容した後、封止部14よりも上方にて、前面部11と後面部12とを左右方向に亘って線状に熱融着させることによって、シール部16(図1)が設けられる。これにより、図1に示す状態の収容体1が形成される。
また、本実施形態の収容袋10は、上下方向の上側、且つ、左右方向の両側に切り込み18(図1)を有している。各切り込み18は、それぞれが左右方向に2mmの幅を有しており、前面部11と後面部12とを貫通するように設けられている。また、隣接する切り込み18同士の間の左右方向の間隔は、2mmである。本実施形態では、収容袋10において、合計4個の切り込み18が設けられているが、切り込み18の形状、数、及び配置はこれに限られない。また、本実施形態の切り込み18は、前面部11と後面部12とを貫通するように形成されているが、これに限らず、前面部11及び後面部12のうちの少なくとも一方に設けられていればよい。
また、収容体1の収容袋10の形状は、本実施形態の形状に限らず、任意の形状を採用できる。例えば、前面部11及び後面部12が略矩形形状等を有するような収容体1であってもよい。また、本実施形態の収容袋10は、シート状の資材を折ることによって前面部11と後面部12との間に底面部13を形成していたが、前面部11及び後面部12のシート材とは別のシート材から底面部13を構成し、前面部11と後面部12とに接合させてもよい。
図5は、収容体1を開封し、開口部10Eを開けた状態における収容体1の概略斜視図である。図5に示す収容体1は、底面部13を下にして、載置面MSに自立している状態である。収容袋10は、封止部14よりも上方のシール部16を含む部分を容易に切除可能にするために、封止部14とシール部16との間に、左右方向の両端部に一対の切り欠き部17(図1)を有している。収容体1を開封するときには、一対の切り欠き部17のうち、少なくとも一方の切り欠き部17を起点として、収容袋10を左右方向に沿って破断させることで、収容袋10の上部を切除し、吸収性物品20を取り出す開口部10Eが形成される。なお、本実施形態の収容袋10は、一対の切り欠き部17を有しているが、切り欠き部17は、左右方向の一方にのみ形成されていてもよい。また、封止部14より上部に前面部11及び後面部12がある程度残るように切り欠き部17の切り欠き位置を調整することで、収容袋10を再封止・再開封する際に、封止部14よりも上方の前面部11及び後面部12の端をつまみ易くできる。
封止部14は、開閉可能な封止部であり、収容体1(収容袋10)を開封した後に、収容袋10の開口部10Eを封止することができる。封止部14は、左右方向に沿って配置された一対の樹脂製ジッパー等によって構成され、図2に示すように、前面部11の内側面と後面部12の内側面とにそれぞれ設けられている。封止部14を構成する部材は、例えば、線状(帯状)の凹部材と凸部材からなり、一対の封止部14,14を前後方向に対向させた状態で押圧して噛み合わせることで、開口部10Eが閉じて、収容袋10の収容空間Sが密封される。また、噛み合った状態の封止部14,14を前後方向の反対側に引き剥がすことで、再び開口部10Eが形成される。このように、収容袋10の開口部10Eは、封止部14によって自在に開閉することが可能となっている。また、収容体1(収容袋10)は、図2に示す開封前の状態において、一対の封止部14、14を噛み合わせない状態にしている。よって、本実施形態の収容体1では、収容袋10を開封後に封止部14を使用する構成となっている。即ち、開封前の収容体1の内部空間S(収容空間S)は、上下方向において、底面部13からシール部16までを意味する。
また、収容袋10を構成するシート材は、例えば2層構造などの任意の層構造を有することができ、気体や液体が透過し難い性質を有する気密層と、融着層と、を含むことが好ましい。気密層の材料としては、例えばエチレンビニルアルコール樹脂、アルミニウム被着フィルム及びアルミ箔、延伸ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、延伸ポリアミド、揮発性不透過性ラッカーでコーティングされたポリマーフィルム、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される材料が挙げられる。融着層の材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料が挙げられる。
収容袋10において、気密層が収容袋10の外側面を構成し、融着層が収容袋10の内側面を構成することで、収容袋10の内部の物質が外部へ暴露されること、例えば、気体や液体が外部へ漏れることを防止できる。また、収容袋10を構成するシート材に熱融着性があるため、シート材同士を熱融着させ易い。収容袋10のバリア性を確保する観点からは、収容袋10の酸素透過度が、200cc/m2/day/atm以下であることが好ましい。それにより、後述する揮発性成分を有する吸収性物品20を収容袋10内に収容する場合でも、収容袋10を介して必要以上に揮発性成分が透過せず、内部空間S内にそのような揮発性成分を長期間保持することができる。なお、上記酸素透過度は、クーロメトリック法に従い、23度、0%RHの条件下で測定される。
(個包装体30)
図6Aは、吸収性物品20が包装材31に包装された個包装体30の平面図であり、図6Bは、図6Aに示す個包装体30の一部展開図である。
個包装体30は、吸収性物品20と、吸収性物品20を包装する包装材31とを備えている。本実施形態の個包装体30は、折り畳まれた吸収性物品20が包装材31によって個別に包装されたものである。吸収性物品20の折り畳み方については後述する。
包装材31は、不織布、樹脂フィルム、又はそれらのラミネートシートからなる1枚のシート材から形成される。個包装体30は、上下方向の両端部に、包装材31同士が重ね合わされて左右方向に沿って接合された接合部(シール部)32、33を有する。なお、ここでいう接合とは、包装材31同士を嵌合させて互いに接した状態にさせることである。また、個包装体30は、シート材の端部36,37が互いに重なり合うことで画成された、収容された吸収性物品20を取り出すための取り出し口35を有している。取り出し口35においても、シート材の端部36、37同士が接合されているが(図6A及び図6Bの斜線部分)、接着等とは異なり、シート材同士が嵌合された状態であるため、弱い力でも取り出し口35を開けることができる。また、図6Aの部分拡大図に示すように、接合部32、33には、包装材31同士が圧接されている圧接部40と、包装材31同士が圧接されていない非圧接部41とが設けられている。ここで、圧接とは、包装材31同士を圧縮して互いに接した状態にさせることを意味する。
(吸収性物品20)
図7Aは、吸収性物品20の平面図であり、図7Bは、折り畳んだ状態の吸収性物品20を表す平面図である。吸収性物品20は、図7Aに示す状態において、互いに交差する上下方向と左右方向とを有する。図7Aは、吸収性物品20を前側(着用時に着用者の腹側になる方)から見た図である。吸収性物品20は、外装体21と、吸収性コアを有する吸収性本体22とを備えている。外装体21は、吸収性本体22の厚さ方向の非肌側(着用者に接しない側)に位置し、吸収性本体22と接合一体化されている。
また、吸収性物品20は、揮発性香料を有している。揮発性香料は、吸収性物品20の外装体21に付与されていても、吸収性本体22に付与されていてもよい。香料としては、従来公知の揮発性である香料を特に制限なく用いることができる。
また、揮発性香料は、冷感剤又は温感剤であってもよい。冷感剤については、使用者に冷感を付与するメカニズムとして、1)吸熱反応で冷感をもたらす、2)気化熱で冷感をもたらす、3)温度感受性TRPチャネルを刺激することで冷感をもたらす、ことが考えられる。温度感受性TRPチャネルを刺激する剤としては、例えば、メントール,ユーカリプトール,カンファー,イソプレゴール,ユーカリ油,ペパーミント油,サリチル酸メチル、メントングリセリンアセタール,乳酸メンチル,メンチルエチルアミノシュウ酸,コハク酸メンチル,3-(メンチルオキシ)プロパン-1,2-ジオール,3-l-メントキシ-2-メチルプロパン-1,2-ジオール,p-メンタン-3,8-ジオール,N-エチル-p-メンタン-3-カルボアミドが挙げられる。
温感剤は、着用者の温度感覚に刺激を与えることにより、刺激を受けた着用者が温かく感じる温感刺激剤を含み、揮発性の物質である溶媒と混合された状態で塗布される。上記温感刺激剤は、着用者の安心感の観点から、植物由来の化合物であることが好ましい。温感刺激剤としては、例えば、カプシコシド、カプサイシン(LD50:47mg/kg,分子量:305)、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル(LD50:2,188mg/kg,分子量:213)、ニコチン酸β-ブトキシエチル、N-アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル(LD50:4,900mg/kg,分子量:210)、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール(LD50:250mg/kg,分子量:294)、ジンゲロン、ヘスペリジン、及びピロリドンカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
また、温感剤についても、温度感受性TRPチャネルを刺激するものが好ましい。例えば、温度感受性TRPチャネルの1つであるTRPV1は、カプサイシン、酸等の刺激により活性化され、交換神経系を介して産熱が引き起こされる(着用者が体内で熱を作り出す)。
図7Aに示すように、本実施形態の吸収性物品20は、ショーツ型ナプキンであり、個包装体30に折り畳まれた状態で収容されている。具体的には、吸収性物品20は、吸収性本体22の左右方向の両側縁の外側においてそれに沿うように上下方向に延びる一対の第1折り目F1、F1と、吸収性物品20の上下方向の寸法を二等分するように、一対の第1折り目F1、F1と交差して延びる第2折り目F2とを有する。吸収性物品20は、当該第1折り目F1,F1に沿って両側部分を吸収性物品20の前側(腹側)が外側となるように(第1折り目F1、F1が山折りになるように)折り畳んだ後に、第2折り目F2に沿って、吸収性物品20の上側部分を後側(背側)へ向かって折り曲げることによって、図6Bに示すような略矩形状のコンパクトな状態で個包装体30に包装されている。また、上述の折り畳み方法に限らず、一対の第1折り目F1、F1及び第2折り目F2をそれぞれ谷折りにし、吸収性物品20の後側(背側)が外側になるように折り畳むことによって、吸収性物品20をコンパクトな形状にしてもよい。
(切り込み18について)
図8Aは、収容袋10を前後方向の前側及び後側から指でつかんだ状態を説明する図であり、図8Bは、図8Aの状態を収容袋10の側面側から見たときの図である。
本実施形態の収容体1のような吸収性物品を収容したパッケージは、通常、密閉された状態で店頭に陳列されていることが多い。そして、収容されている吸収性物品に香料等の揮発成分が付与されている場合、購入希望者は、購入時に成分の香りを嗅ぐことはできず、パッケージに記載の文字から香りを想像して購入せざるを得なかった。香料等は購入者の感覚(嗅覚)に作用するものであることから、開封後に想像や好みとは異なるものであったことに気づく場合も多い。一方で、密封されていない状態のパッケージでは、吸収性物品等に含まれる揮発成分が使用前にパッケージの外に漏れてしまい、開封時には機能を果たせなくなる虞もあった。
この点につき、本実施形態の収容体1の収容袋10は、切り込み18(図1)を有している。そして、図8A及び図8Bに示すように、収容袋10は、吸収性物品20の個包装体30を収容している内部空間S内において、前後方向に互いに対向する一方側の内面(前面部11の内面)と他方側の内面(後面部12の内面)同士が当接可能である。具体的には、購入を希望する顧客が、例えば店頭において指等で収容袋10をつかんだ際に、当該一方側の内面と他方側の内面とを当接させることができる(図8B)。それによって収容袋10の内部空間Sの圧力を上昇させ、切り込み18を介して内部空間Sから外部へ空気が排出される(図8A)。収容体1が工場から出荷されて店頭等に陳列されるまでに、吸収性物品20の個包装体30を収容している内部空間Sには揮発した香料を含む空気が充満していることから、切り込み18を介したそのような必要最小限の空気の排出によって、顧客は、購入前に香料の香りを実際に感じることができる。また、吸収性物品20が個包装体30として包装されていることにより、切り込み18があっても衛生状態を保つことができる。上述の一方側の内面と他方側の内面を当接させる位置は、図8Aのような収容袋10の左右方向における個包袋体30が収容されていない空間だけでなく、収容袋10の上側の個包袋体30が収容されていない空間部分でもよい。なお、内部空間Sの圧力を上昇させる要因としては、収容体1が保管されている環境温度が上昇したときも挙げられる。
また、切り込み18は、収容袋10の前面部11と後面部12とを貫通するように設けられていることから、収容袋10をつかむ等によって圧力を上昇させると、前面部11及び後面部12の両方の切り込み18から収容袋10の収容空間S内の空気が飛び出す。それにより、揮発した香料が顧客により当たり易くなり、香料成分を感じ易くなる。
なお、切り込み18は、収容袋10の前面部11と後面部12とを貫通するように形成されなくてもよく、切り込み18は、少なくとも収容袋10の前面部11に設けられていればよい。収容袋10の前面部11は、収容体1の表面(正面)であり、当該前面部11に切り込み18が設けられていることで、揮発した香料を含む空気が収容体1の正面から押し出される。そのように押し出された空気は、収容体1を手に取った顧客の顔の付近に向かいやすく、つまり、該空気を、揮発した香料成分を感じやすい目や口の粘膜に当たり易くさせることができる。よって、顧客は、香り(揮発性成分)をより感じ易くさせることができる。
また、吸収性物品20に付与されている揮発性成分が上述の冷感剤又は温感剤である場合でも、収容袋10の内部空間Sには、揮発された当該冷感剤又は温感剤が充満することから、前面部11の内面と後面部12の内面とを当接させて切り込み18から空気を排出させることによって、顧客は、購入前に実際の冷感効果又は温感効果を感じることができる。
また、収容袋10から漏れ出る空気によって、香りや冷感等を実際に感じることができるかを確認すべく、官能評価を行った。官能評価を行う試験方法は、次の通りである。香料を塗布する基材として生理用ナプキン及び濾紙2枚と、香料としてメントールと、収容袋10に見立てたアルミ蒸着袋とを用意する。試験の手順は、1)濾紙またはナプキンに対し、溶解させたメントール0.1g程度滴下する、2)アルミ蒸着袋の淵をガムテープで固定し、自立しやすいようにさせた当該袋の中に、メントール付き濾紙またはナプキンを入れる、3)50℃の環境下に16時間置き、メントールが揮発するように促す、4)1時間室温に置いた後、爪楊枝で穴をあける(2mmの円状)、5)袋を手で押し、メントールが漏れ出るかを確認し、香りや涼感を感じることができるかを確認する。メントールの滴下量は、一つの収容体1当たりの香料量が0.1g程度であることから、0.1gを採用している。そして、上述の手順によって用意した袋を5名の被験者に指等で押してもらい、香りや涼感を感じるかどうかを確認してもらったところ、塗布基材が生理用ナプキンであった場合、5名とも香りを感じ、さらに目で涼感を感じると評価し、塗布基材が濾紙2枚であった場合も、5名とも香りを感じ、さらに目で涼感を感じると評価した。これにより、2mmの穴から放出される、揮発した香料成分を含む空気から、香り、涼感共に感じることができると確認された。
また、当該官能評価を行う試験においては、上述のアルミ蒸着袋だけでなく、ポリエチレン(PE)/ポリエチレンテフタレート(PET)からなるパッケージ、及び、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が含まれたパッケージを用いて実施した場合でも、同様に冷感を感じるとの評価結果が得られることも確認された。また、上述の官能評価試験では、メントールを他の乳酸メンチルに変えても同様の効果が得られており、バニリルブチルエーテルに変更した場合には温感効果が得られることも確認できた。
顧客が収容袋10に触れて、内部空間S内に空気の移動を生じさせることを考慮すると、次のような構成を有することが好ましい。すなわち、図1に示すように、収容体1を前後方向(図1の紙面を貫く方向)に見て、個包袋体30の左右方向の左端から内部空間Sの左右方向の左端までの長さLL1と、個包袋体30の左右方向の右端から内部空間Sの左右方向の右端までの長さLR1との合計は、収容体1の前後方向の最大長さ(つまり、収容体1の最大の厚み)以上であることが好ましい。このような構成により、収容体1を前後方向に見たときに、長さLL1と、長さLR1との合計(すなわち、個包装体30が収容されていない非収容部分の長さの合計)が、収容体1の前後方向の最大長さ未満(最大厚み未満)である場合と比較して、当該非収容部分の長さの合計が収容体1の最大厚み以上あることで、収容袋1を指等で押す際に、収容袋10内の個包装体30(吸収性物品20)に接触して吸収性物品20に傷を付ける等の悪影響を及ぼす可能性を低減させつつ、外部に空気を移動させることができる。
また、個包装体30は、収容袋10内で左右方向に多少移動することも考えられるが、その点、収容袋10の内部空間Sにおいて、一方側の内面(前面部11の内面)と他方側の内面(後面部12の内面)同士が当接可能である部分は、左右方向の両側部の少なくとも一方に設けられていれば良い。顧客が製品である収容体1を指でつかむ際、通常、収容体1の横方向(左右方向)の端部をつかむことが多いため、左右方向の両側部の少なくとも一方に当該当接可能である部分を設けていれば、つかんだ際に内面同士が当接して切り込み18から空気が押し出される。それにより、顧客は、吸収性物品20に含まれる香りを実際に感じることができる。
また、収容袋10の内面同士が当接可能である部分が左右方向の両側部の少なくとも一方に設けられている場合、仮に切り込み18が同様に左右方向の両側部に設けられていると、顧客が指でつかんだ際に切り込み18を塞いでしまう虞も考えられる。しかし、本実施形態のように、切り込み18を収容袋10の上側に設けることで、手で切り込み18を塞ぐ虞を低減し、切り込み18からの空気の排出を可能にする。
同様に、顧客が切り込み18からの空気の排出によって内部に含まれる揮発性成分を感じることができるようにする点を考慮すると、収容袋10の底面部13が下側となるように収容体1が直立した状態において、個包装体30と切り込み18とは、前後方向に見て重なっていないことが好ましい。ここでの「直立した状態」とは、底面部13を下にして載置面MSに収容体1を置いた状態で収容体1を手で持ち、載置面MSから収容袋1を約3cm上に持ち上げ、そこから収容体1を載置面MSに落とすことを5回繰り返した後、載置面MSに自立させた状態をいう。切り込み18に被る位置に個包装体30が配置されていると、切り込み18から空気が排出されにくくなるが、収容体1が直立した状態においては、各個包装体30は、切り込み18よりも下側に配置されている。個包装体30と切り込み18とが重ならないことで、切り込み18からの空気の移動を阻害しないようにできる。
また、本実施形態の個包装体30の包装材31を構成する材料として、不織布、樹脂フィルム等を挙げているが、包装材31が不織布からなる場合、揮発した香料、冷感剤、又は温感剤等の成分が不織布を介して個包装体30から漏れ易くなり、収容体1の内部空間S内に揮発した成分が充満しやすくなる。それにより、切り込み18から排出される最小限の空気でも香料等の揮発成分が外部に出やすく、顧客に揮発性成分を感じさせ易くすることができる。
包装材31を構成する材料がポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルムである場合、樹脂フィルムが不織布と比較して空気を通し難い性質を有するため、吸収性物品20に含まれる揮発性香料は、構成材料が不織布であるときよりも包装材31を介して漏れにくくなるように思われる。この点、図6Aの部分拡大図に示すように、本実施形態の個包装体30のシール部(接合部)32,33には、圧接部40と、非圧接部41とが設けられている。圧接部40は、図6Aの部分拡大図において、矩形状に示されており、非圧接部41は、シール部32、33において、圧接部40以外の部分を示している。圧接部40は、包装材31同士を圧縮して互いに接した状態であるため吸収性物品20の揮発した香料が漏出しにくいが、非圧接部は、包装材31同士が圧縮されていないため、非圧接部からは空気が抜け易い。そして、吸収性物品20と包装材31とは接着剤等で接合されておらず、個包装体30の中で吸収性物品20は移動することができ、出荷時等の製品(収容体1)の移動により、個包装体30内では吸収性物品20が動いて空気の流れも発生する。それにより、個包装体30の非圧接部41から揮発した香料成分が抜け、包装袋10の内部空間S内に香料成分が充満する。このように、個包装体30の包装材が樹脂フィルムであっても、顧客が収容袋10を押した際に、香りを感じることができる。
また、個包装体30のシール部32,33を平面視したときの非圧接部41の合計面積は、切り込み18における開口面積よりも大きい。本実施形態における切り込み18の開口面積とは、切り込み18の幅が2mmであるものの、内部空間S内の圧力の上昇が生じない限り、各切り込み18は閉じた(ふさがった)状態であるため、開口面積は0である。つまり、個包装体30からは、非圧接部41を通って香料成分が抜けるが、一方で、収容袋10は切り込み18を介してのみ内部空間Sから外部へ空気が移動する。その切り込み18の開口面積が、内部空間S内の圧力が変化しない限り0であるため、内部空間S内の香料成分(揮発性成分)を外部に逃げにくくさせることができる。
個包装体30には、上述のように、上端部及び下端部にそれぞれシール部(接合部)32、33が設けられているが、図2及び図4Bに示すように、収容袋10に個包装体30が収容されている状態において、個包袋体30は、下端部に設けられているシール部33と吸収性物品20との間に、包装材31が前後方向に折り曲げられた折り曲げ部38を有している。折り曲げ部38は、個包装体30が収容袋10の底面部13に接する際に、柔軟なシートである包装材31が折り曲げられることによって形成される部分である。個包装体30の下端部のシール部33と吸収性物品20との間で包装材31が折り曲げられることで、シール部33を通って個包装体30の外に抜け出ようとする空気の流れが抑制され、吸収性物品20の香料成分(揮発性成分)がシール部33からは漏れ出にくくなる。それにより、個包装体30の上端部のシール部32及び下端部のシール部33の両方から吸収性物品20の揮発性成分が漏出する場合と比較して、漏出を抑制できる。収容袋10の内部空間S内には、切り込み18から排出される空気で顧客が香料成分を感じられる程度に揮発した香料成分が充満されていればよく、折り曲げ部38によって漏出を抑制することで、吸収性物品20の使用時まで揮発性成分を維持し易くなる。例えば、揮発性成分が冷感剤又は温感剤である場合には、その冷感機能や温感機能の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、複数の個包装体30は、各個包装体30の左右方向と収容袋10の左右方向とが揃うように収容されているが、これに限らず、各個包装体30の左右方向が収容袋10の前後方向に沿うように収容されてもよい。そのような場合は、個包装体30のシール部33と吸収性物品20との間に包装材31が左右方向に折り曲げられた折り曲げ部38が形成され、同様に、吸収性物品20に含まれる揮発性成分を漏出しにくくし、該成分の作用の機能低下を抑制できる。
図9は、切り込み18の断面の拡大写真を例示する図である。当該拡大写真は、切り込み18を切り込み18の長手方向(図9では紙面を貫通する方向)の中間部分で切断し、マイクロスコープ(キーエンス社製のデジタルマイクロスコープVHX-1000等)を用いて、300倍の倍率で、その切断面を撮影したものである。当該写真では、切り込み18の切断面を含むように、上下方向に1mm程度の長さ分の前面部11及び後面部12が表されている。
切り込み18は、前面部11と後面部12を重ねた状態で、前面部11側から後面部12側に向かってカッター刃を貫通させて形成されている。図9に示す切り込み18は、前面部11において、切り込み18の長手方向(図9では紙面を貫通する方向)に沿った一方側の切断面11axと、他方側の切断面11ayとを有している。そして、後面部12において、切り込み18の長手方向(図9では紙面を貫通する方向)に沿った一方側の切断面12axと、他方側の切断面12ayとを有している。なお、ここでの「切断面」とは、前面部11(後面部12)における切り込み18の上端から上側、下端から下側にそれぞれ50~100μm(0.05mm~0.1mm)程度までの部分をいう。そして、図9に示す切り込み18の状態は、収容体1(収容袋10)の内部空間Sの圧力が変化しない場合の状態を表している。「内部空間Sの圧力が変化しない場合」とは、顧客等の人が収容袋10に触れていない状態であり、具体的には、出荷時の箱等から収容体1を出して店頭等に自立して陳列させた状態をいう。そして、人が指等で収容体1(収容袋10)を押す、つかむ等をすることによって、内部空間Sの圧力の変化が生じると考える。
図9の拡大写真では、そのような内部空間Sの圧力が変化しない場合において、切り込み18は、切断面11axと、切断面11ayと、切断面12ayとが接している部分NSを有している。収容袋10の前後方向において切断面同士が接していることで、内部空間Sの圧力が変化しない限り、当該部分NSからは内部空間S内の空気が漏れにくくなっている。すなわち、当該部分NSは、内部空間Sと外部が連通しない部分である。このような内部空間Sと外部が連通しない部分NSは、切り込み18の長手方向の全長に亘って設けられていることが好ましく、当該連通しない部分NSがより多く存在する程、自然状態において、切り込み18からの香料成分(揮発性成分)の漏れは、抑制される。
また、本実施形態の切り込み18は、前面部11と後面部12とを貫通して形成されているが、前面部11及び後面部12のうち、例えば、前面部11のみに切り込み18が形成される場合は、後面部12側からは空気は排出されず、前面部11における切り込み18の各切断面(図9における切断面11ax及び11ay)が後面部12に接すると、同様に内部空間Sと外部が連通しない部分NSが形成される。これにより、内部空間Sの圧力が変化しない限り、より空気を排出させにくくすることができる。
また、図9に示すように、本実施形態では、切り込み18の一方側の切断面11axと、他方側の切断面11ayとは、互いに接する部分を有している。上下方向に隣接する切断面同士が接する部分を有することで、収容袋10内の空気は外部に漏れにくくなり、収容袋10を指でつかむ等など、必要な分の空気を外部に放出させるときまで、収容袋10の内部空間S内に含まれる揮発性成分を保持することができる。
また、切り込み18を形成する際に、切り込み18の端、すなわち、切断面11ax及び切断面11ayは厚みが薄くなり、剛性が低くなっている。つまり、一方側の切断面11ax及び他方側の切断面11ayの前後方向の長さ(厚み)は、それぞれ、切り込み18が形成されていない部分の収容袋10の基材の厚さ(ここでは、切り込み18以外の部分の前面部11の厚さ)よりも短い。また、切断面12ax及び切断面12ayにおいても、同様のことが言える。従って、上述のように切り込み18の切断面同士(切断面11axと11ay)が接する部分を有することで内部空間Sの空気を漏れにくくさせつつも、剛性が低いことで、収容袋10を手で押す程度の力でも切り込み18から空気を排出させることができる。
切り込み18を形成する際に、前面部11側からカッター刃を挿入することから、図9の拡大図に表すように、前面部11側の切断面11ax及び切断面11ayのうち、少なくとも一方の切断面11axは、収容袋10の内部に向かってやや食い込むような構造になっている。つまり、一方側の切断面11axは、内部空間S側に向けられている。切り込み18の切断面11ax(又は切断面11ay)が収容袋10の外部に向けられていると、内部空間Sから切り込み18を通って空気が必要以上に抜けやすくなる虞があるが、少なくとも一方の切断面11ax(又は切断面11ay)が内部空間S側に向けられていることで、収容袋10の内部空間Sの圧力が上昇しなければ内部の空気は抜けにくく、揮発した香料成分の漏出を抑制できる。
図1に戻り、本実施形態の切り込み18は、収容袋10の上下方向の上側、より具体的には、封止部14よりも上側に設けられている。このような構成にすることで、収容体1を開封する前には、切り込み18を介して内部空間S内の空気を放出して香りを感じることができるが、開封後は封止部14によって収容袋10を封止することで、内部空間S内に充満する揮発性成分を保持できる。
また、図1において、一対の切り欠き部17を結ぶように左右方向に沿って帯状の領域を設けた場合、各切り込み18は、左右方向に沿った当該帯状の領域内に設けられている。つまり、左右方向において、各切り込み18は、切り欠き部17の延長線上に設けられている。各切り込み18がそのように配置されていることで、収容袋10の破断時に各切り込み18が破断を補助する役割を果たし、開封し易くすることができる。
また、本実施形態のように、切り込み18が複数存在することで、顧客が収容袋10をつかんだ際に揮発した香料成分をより感じやすくさせることができる。そして、切り込み18が複数設けられていても、収容袋10に必要な力を加えない限りは内部空間Sから空気が抜けにくいため、揮発性成分の漏出を抑えることができる。
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
上述の実施形態では、個包装体30の接合部(シール部32、33)は個包装体30の上下方向の両端部に設けられており、個包装体30の下端部が収容袋10の底面部13と接するように収容されていたが、これに限定されるものではない。図10は、収容体1の変形例を示す図である。当該変形例では、収容体1が略矩形状であり、個包袋体30は、左右方向の両端部に包装材31同士が接合された接合部(シール部)39、39を有している点で主に相違する。また、上述の本実施形態と同じ構成については同じ符号を付している。本変形例では、収容袋10に個包装体30が収容されている状態において、個包装体30は、左右方向の両端部のシール部39、39と、吸収性物品20との間に、包装材31が前後方向(図10では紙面を貫通する方向)に折り曲げられた折り曲げ部38を有する。本変形例における折り曲げ部38は、収容袋10に個包装体30(吸収性物品20)を収容する際に、柔軟なシートである包装材31が前後方向に折り曲げられることで形成されている。
なお、本変形例の折り曲げ部38の折り曲げ状態は一例であり、折り曲げ部38は、個包装体30の左右方向の両端部のうちの少なくとも一方にあるシール部39と、吸収性物品20との間で包装材31が前後方向に折り曲げられていればよい。また、図10のように、個包装体30の左右方向と収容袋10の左右方向とが揃うように各個包装体30を収容することに限らず、各個包装体30の左右方向が収容袋10の前後方向に沿うように収容する場合は、個包装体30のシール部39,39と吸収性物品20との間に包装材31が左右方向に折り曲げられた折り曲げ部38が形成される。
個包装体30は、左右方向の両端部のシール部39、39から吸収性物品20の香料成分(揮発性成分)が漏出し易いが、折り曲げ部38が設けられている部分では、シール部39、39から抜け出ようとする空気の流れが抑制され、吸収性物品20の揮発性成分が漏れ出にくくなる。折り曲げ部38によって個包袋体30からの揮発性成分の漏出を抑制することで、吸収性物品20の使用時まで該成分を維持し易くなり、揮発性成分(香料、冷感剤、又は温感剤等)の作用の機能低下を抑制することができる。なお、吸収性物品20よりも外側に折り目がつくことにより、吸収性物品20に意図しない折り目がついてしまい、フィット性低下等を引き起こすことも防止することができる。
上述の実施形態では、収容袋10の左右方向において、各切り込み18は、切り欠き部17の延長線上に設けられていたが、これに限らず、切り込み18は、一対の切り欠き部17よりも上側に設けられていてもよい。そうすることで、収容袋10を開封するための破断時に、例えば、誤って切り欠き部17の左右方向の延長線上よりも上側に向かって破断が生じてしまっても、切り込み18があることで、破断が切り込み18よりも上側に進むことを回避する補助となり得る。すなわち、切り欠き部17の左右方向の延長線上よりも誤って上側に破断が生じる可能性を切り込み18によって抑えることができる。
また、上述の実施形態では、収容袋10の左右方向において、各切り込み18は、切り欠き部17の延長線上に設けられていたが、これに限らず、切り込みは、一対の切り欠き部17と封止部14との間に設けられていてもよい。一対の切り欠き部17を目安に収容袋10を破断させる際、例えば、誤って封止部14に向かって破断が生じてしまっても、切り込み18があることで、破断が切り込み18よりも下側(封止部14側)に進むことを回避する補助となり得る。また、封止部14の近傍に切り込み18が設けられていると、開封前の状態において、封止部14の厚みにより収容体1の封止部14の部分が前後方向に膨らみがちになるのを切り込み18から空気が抜けることで緩和させることができる。