JP7274837B2 - 拡散接合品およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、主に精密加工を施したオーステナイト系ステンレス鋼板を用いた拡散接合品およびその製造方法に関する。具体的には、フォトエッチングやレーザーによる精密加工を施したオーステナイト系ステンレス鋼板を拡散接合することで作製される精密部品およびその製造方法に関する。
フォトエッチング加工とは、素材である金属板の表面にフォトレジスト法によるパターンを形成した後、スプレーや浸漬によるエッチングによって金属板を溶解し、フォトレジストパターンとほぼ同じ形状に金属板を加工する方法である。また、レーザー加工とは、CADデータなどを基に、金属板の表面をレーザーで溶融させて孔や所定のパターンを形成する加工方法である。
フォトエッチング加工やレーザー加工を施した後に、加工されたステンレス鋼板を積層し、無酸化雰囲気中で高温保持することで積層したステンレス鋼板を接合することで、多数のステンレス鋼板から一体の部品が作製される。
このような処理は拡散接合処理とよばれ、高い精度で複雑な形状に加工された部品を成型するために重要となる技術である。
拡散接合性に関する従来技術として、例えば、特許文献1には、ステンレス鋼材同士を直接接触させて拡散接合により一体化させるに際し、接触させる双方のステンレス鋼材の少なくとも一方に昇温過程でのオーステナイト変態開始温度Ac点を650~950℃に持ちオーステナイト+フェライト2相温度域を880℃以上の範囲に持つ2相系鋼を適用し、接触面圧1.0MPa以下、加熱温度880~1080℃の条件範囲で前記2相系鋼のフェライト相がオーステナイト相へ変態するときの粒界移動を伴いながら拡散接合を進行させる、ステンレス鋼拡散接合製品の製造方法が開示されている。
特許文献2には、拡散接合に供する双方のステンレス鋼材(以下「接合前鋼材」という)として、接合面となる表面の表面粗さRaが0.30μm以下に調整された鋼材を使用し、拡散接合条件として、双方の接合前鋼材とも平均結晶粒径rが50μm以下に調整された状態から拡散接合温度に到達し、拡散接合温度に保持した後に平均結晶粒径rが80μm以下となり、かつ(r-r)/rが2.0以上となるヒートパターンを適用するステンレス鋼拡散接合製品の製造方法が開示されている。
特開2013-103271号公報 特開2013-173181号公報
従来技術では、拡散接合界面付近にSi等の特定元素が濃化してしまい、拡散接合させた鋼材同士が、拡散接合界面から剥離しやすいという課題がある。
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼を用いた、拡散接合界面が剥離し難い拡散接合品およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために拡散接合方法と拡散接合界面付近における元素分布および拡散接合界面の剥離性とについて鋭意検討を重ねた結果、特定の条件で拡散接合を行うことで、拡散接合界面付近に濃化するSi量を低減でき、剥離し難い拡散接合界面を提供でき、上記課題を解決できることを知見した。
さらに、本発明者らは、拡散接合前の鋼板に所定の条件で陽極電解処理を施すことで、鋼板の表面Si量をより低減できることを見出し、上記課題を解決できることを知見した。
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 本発明の一態様に係る拡散接合品は、積層された複数の鋼板同士が相互に接合されてなり、前記鋼板は、質量%で、
C:0.030%以下、
Si:0.20~1.00%、
Mn:0.6~1.5%、
Cr:15.0~20.0%、
Ni:6.0~9.0%、
Mo:0.1~0.5%、
Cu:0.1~0.5%および
N:0.030~0.150%
を含有し、さらに
Nb:0.500%以下、
V:0.500%以下および
Ti:0.500%以下のうち1種または2種以上を含有し、
残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する鋼板であり、
前記鋼板同士の接合部に拡散接合界面が形成され、
前記拡散接合界面の鋼板板厚方向の断面において、前記鋼板の板厚方向を幅方向とし、前記拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域内における最大Si量と素材Si量との比であるSi濃化度(最大Si量/素材Si量)が5.0以下であり、
前記拡散接合界面の接合率が60.0%以上であり、
前記拡散接合界面から板厚方向に±100~200μm深さの領域において、オーステナイト粒径の平均値が15.0μm以下である。
[2] 上記[1]に記載の拡散接合品の製造方法では、上記[1]に記載の化学組成を有し、且つオーステナイトの平均結晶粒径が5.0μm以下である金属組織を有する鋼板に、pHが5.0以上12.0未満の電解液中で、n組の電極を用いてn回の陽極電解処理を連続して行う際に、k回目の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量をσ(ただしk=1~n)とし、各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和をΣσとしたとき、電気量の総和Σσが、下記(1)式を満たす条件で陽極電解処理する第1の工程と、
陽極電解処理された前記鋼板の複数枚を直接積層させて、拡散接合温度:850~1050℃、面圧:0.03~30.00MPaで拡散接合を施す第2の工程と、
を順次行う。
Σσ≦25.0(C/dm)・・・(1)
本発明によれば、オーステナイト系ステンレス鋼を用いた、剥離し難い拡散接合界面を有する拡散接合品およびその製造方法を提供できる。
拡散接合界面付近におけるSi濃化度の測定方法を説明する図である。 本実施形態におけるSi濃化度と接合率との関係を示す図である。
本発明の実施形態を以下に説明する。本実施形態に係る拡散接合品は、積層された複数の鋼板同士が相互に接合されてなり、前記鋼板は、所定の化学組成を有する鋼板であり、前記鋼板同士の接合部に拡散接合界面が形成され、前記拡散接合界面の鋼板板厚方向の断面において、前記鋼板の板厚方向を幅方向とし、前記拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域内における最大Si量と素材Si量との比であるSi濃化度(最大Si量/素材Si量)が5.0以下であり、前記拡散接合界面の接合率が60.0%以上である。本実施形態では、拡散接合に用いる鋼板としてオーステナイト系ステンレス鋼板を対象とする。しかし、精密加工面の平滑性などの観点から平均結晶粒径が小さい鋼板であること、およびエッチング加工時にスマットが出ない鋼板であることが望ましいが、本発明で規定する要件を満たすことができれば、鋼板の化学組成等は限定されるものではない。鋼板の板厚は、特に限定されないが、50~1000μmとすればよい。
本発明者らは、質量%で、C:0.030%以下、Si:0.20~1.00%、Mn:0.6~1.5%、Cr:15.0~20.0%、Ni:6.0~9.0%、Mo:0.1~0.5%、Cu:0.1~0.5%およびN:0.030~0.150%を含有し、さらにNb:0.500%以下、V:0.500%以下およびTi:0.500%以下のうち1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼板を、本実施形態に係る拡散接合品の鋼板として用いることができることを確認している。なお、本実施形態では、化学組成がそれぞれ異なる鋼板を拡散接合して拡散接合品としてもよく、化学組成が同一の鋼板を拡散接合して拡散接合品としてもよい。本実施形態に係る拡散接合品は、積層され、拡散接合された複数の鋼板の化学組成の平均が上記化学組成に含まれていることが必要である。化学組成が同一の鋼板を拡散接合して拡散接合品とした場合には、鋼板の化学組成と、拡散接合品(積層され、拡散接合された複数の鋼板の化学組成の平均)の化学組成とは等しいものとなる。
(1)金属組織
[拡散接合前のオーステナイト粒径の平均値:5.0μm以下]
拡散接合前の鋼板におけるオーステナイト粒径の平均値(以下、オーステナイトの平均結晶粒径と記載する場合がある)を5.0μm以下と小さくすることにより、拡散接合前に行われるエッチング加工面が平滑になる。さらに、結晶粒微細化によって面積の増えた結晶粒界を介して拡散が活発に起こり、鋼板の拡散接合性が向上する。従って、本実施形態では、拡散接合前の鋼板におけるオーステナイト粒径の平均値の上限を5.0μmとする。
本実施形態では、拡散接合前の鋼板におけるオーステナイトの平均結晶粒径は、日本工業規格JIS G 0551:2013「鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法」に記載の切断法により測定する。
[拡散接合後のオーステナイト粒径の平均値:15.0μm以下]
拡散接合後のオーステナイト粒径の平均値が15.0μm以下であれば、拡散接合後の硬度低下が抑制されるので好ましい。拡散接合前の鋼板のオーステナイトの平均結晶粒径を5.0μm以下とすることで、拡散接合後のオーステナイトの平均結晶粒径を15.0μm以下とすることができる。そのため、本実施形態では、拡散接合後のオーステナイトの平均結晶粒径の上限を15.0μmとしてもよく、6.0μmとしてもよい。ただし、拡散接合後のオーステナイトの平均結晶粒径を15.0μm以下とすることは必須ではなく、15.0μmを超えたとしても本実施形態に係る拡散接合品を得ることができる。
本実施形態では、拡散接合後のオーステナイトの平均結晶粒径は、後述する拡散接合界面から板厚方向に±100~200μm深さの領域において、日本工業規格JIS G 0551:2013「鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法」に記載の切断法により測定する。
(2)接合部
(2-1)拡散接合界面付近の元素分布
[拡散接合界面付近のSi濃化度:5.0以下]
鋼板同士の接合部には、拡散接合界面が形成される。拡散接合界面付近にSiが濃化してしまうと、Si濃化部が起点となり拡散接合界面の剥離が顕著になる。従って、拡散接合界面付近におけるSi量を少なくすることにより、剥離し難い拡散接合界面が形成される。拡散接合界面付近に分布するSi量は均一とは限らず、通常はSi量が最も多く存在する領域から剥離が起こる可能性が大きい。よって、拡散接合界面付近における複数の領域を分析して、最大Si量を確認することが重要である。
本実施形態では、拡散接合界面の鋼板板厚方向の断面において、前記鋼板の板厚方向を幅方向とし、前記拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域内における最大Si量と素材Si量(鋼板のSi量)との比で表されるSi濃化度(最大Si量/素材Si量)を適正に制御することで、拡散接合界面の剥離を抑制する。本実施形態では、Si濃化度の上限を5.0とし、好ましくは4.5、より好ましくは3.0とする。Si濃化度はできるだけ小さいことが望ましいが、鋼板であるオーステナイト系ステンレス鋼板はSiを0.20mass%以上含有しており、拡散接合前に陽極電解処理でオーステナイト系ステンレス鋼板の表面に存在するSiを優先的に除去したとしても、拡散接合界面付近における最大Si量を0.14mass%より少なくすることは技術的に困難である。従って、拡散接合後の拡散接合界面付近におけるSi濃化度の下限は0.7としてもよい。
本実施形態における拡散接合界面付近のSi濃化度の測定方法について、図1を参照して詳細に説明する。図1(a)および図1(b)は、拡散接合界面付近におけるSi濃化度の測定方法を説明する図である。図1(a)は、拡散接合品10の、鋼板3の板厚方向と平行な断面1を示す。図1(a)では、積層された鋼板3同士の接合面(拡散接合界面)に符号2を付している。また、図1(a)および図1(b)では、EPMAによる観察視野に符号4を付している。
図1(b)は、拡散接合品10の鋼板3の板厚方向と平行な断面1の拡大図である。
本実施形態では、断面1において、EPMAを用いて、各拡散接合界面2が鋼板3の板厚方向の幅中央となるように、100μm×100μmの範囲を1視野毎に分析して、測定ステップを0.25μmとし、合計9視野以上分析する。これら観察視野のうち、各分析領域5(拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域)の中で最大のSi量を、最大Si量とする(図1(b)参照)。素材Si量は、拡散接合品から所定の大きさの試験片を切り出し、ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光)分析法により分析することで得る。得られた最大Si量を素材Si量で除することにより、上記領域内におけるSi濃化度を得る。
(2-2)接合率
[拡散接合界面の接合率:60.0%以上]
本実施形態に係る拡散接合品における拡散接合界面の接合率は、60.0%以上とする。鋼板同士が接している面積のうち、実際に接合されている面積が100%にならず、接合されていない箇所(今回は主として空隙)ができる場合がある。接合されていない箇所が多く、拡散接合界面の接合率が60.0%未満であると、Si濃化の有無にかかわらず拡散接合界面が剥離しやすくなる。
拡散接合界面の接合率は、超音波探傷により拡散接合界面の空隙を調査することで得る。具体的には、拡散接合界面に対して透過法による評価を行い、透過パルス高さが25%以上の位置を拡散接合界面、25%以下の位置を空隙として判断し、拡散接合界面の面積率を算出することで、拡散接合界面の接合率を得る。透過法は、送信用探触子から発信される超音波が測定対象物中を通過し受信用探触子に受信される過程において、測定対象物中の欠陥(今回は主として空隙)による散乱などの原因によって超音波が減衰する程度から測定対象物内部の欠陥の大きさや程度を把握する方法である。透過法では、発信した超音波のパルスに比べて測定対象物を経過して受信した透過パルス高さがどの程度であるかを測定する。受信した透過パルス高さが100%に近いほど測定対象物中の欠陥(今回は主として空隙)が少なく、良好な拡散接合界面が成されており、受信した透過パルス高さが小さいほど拡散接合が不良であると評価する。本実施形態では、測定対象(拡散接合品)の縦横それぞれに対して0.2mmピッチで透過パルスを測定し、測定対象の拡散接合界面面積に対して、透過パルス高さが25%以上となる位置の面積率を拡散接合界面の接合率として定義する。本実施形態では、拡散接合品において積層された鋼板の数によらず、上記の方法により求めた透過パルス高さが25%以上となる位置の面積率を、拡散接合界面の接合率と定義する。
以下、本実施形態に係る拡散接合品の製造方法について説明する。本実施形態に係る拡散接合品の製造方法は、所定の化学組成を有し、且つオーステナイトの平均結晶粒径が5.0μm以下である金属組織を有する鋼板に、pHが5.0以上12.0未満の電解液中で、n組の電極を用いてn回の陽極電解処理を連続して行う際に、k回目の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量をσ(ただしk=1~n)とし、各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和をΣσとしたとき、電気量の総和Σσが、(1)式(Σσ≦25.0(C/dm))を満たす条件で陽極電解処理する第1の工程と、陽極電解処理された前記鋼板の複数枚を直接積層させて、拡散接合温度:850~1050℃、面圧:0.03~30.00MPaで拡散接合を施す第2の工程と、を備える。以下、各工程について詳細に説明する。
(3)第1の工程(拡散接合前の陽極電解処理)
上記の拡散接合界面付近へのSi濃化は、以下に記す陽極電解処理を施した後に、後述する第2の工程を施すことにより抑制することが出来る。その結果、拡散接合界面が剥離することを抑制出来る。
(3-1)拡散接合前の陽極電解処理に用いる電解液
[電解液:pHが5.0以上12.0未満]
拡散接合界面付近のSi量を低減するためには、拡散接合前の鋼板表面におけるSi量を可能な限り低減する必要がある。拡散接合前の鋼板に陽極電解処理を施すことでSi量を効率的に低減するためには、pHが5.0以上12.0未満の電解液を用いることが望ましい。除去対象であるSiは、弱酸性~塩基性の領域で溶解度が増大するためである。また、上記pHの電解液に界面活性剤等を添加しても問題無い。電解液の温度は特に限定されず、室温以上であれば問題無い。
電解液は例えば、NaOH水溶液、NaSO水溶液、NaOHとNaSOとの混合水溶液、HSOとNaSOとの混合水溶液等を例示できる。
(3-2)拡散接合前の陽極電解処理条件
本実施形態に係る拡散接合品の製造方法では、上記の電解液中にて、n組(ただし、nは2以上の自然数)の電極を用いてn回の陽極電解処理を連続して行う際に、k回目の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量をσ(ただしk=1~n)とし、各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和をΣσとしたとき、電気量の総和Σσが、下記(1)式を満たす条件で陽極電解処理を行う。なお、nは陽極電解処理の回数である。nの上限は特に制限されないが、例えば、20以下、15以下、10以下、5以下のいずれでもよい。
Σσ≦25.0(C/dm)…(1)
電気量の総和Σσが25.0(C/dm)を超えると、Siの除去反応とは異なる反応に電気量が消費されるため、Siを十分に除去できなくなり、場合によってはFeなどの他元素の溶出によって鋼板表面のSi量が相対的に増加してしまう。従って、電気量の総和Σσは25.0(C/dm)以下とする。より好ましい電気量の総和Σσは、0.50(C/dm)以上、21.0(C/dm)以下である。
(4)第2の工程(拡散接合)
本実施形態に係る拡散接合品の製造方法は、上述の第1の工程を施した後に、特定の温度と面圧とを付与して拡散接合を施すことで、拡散接合界面付近のSi濃化度を5.0以下とすることができる。なお、本発明で規定する要件を満たすことができれば、積層する鋼板の枚数、拡散接合における雰囲気は限定されるものではないが、本発明者らは、以下に説明する条件を満たし、且つ、鋼板の積層枚数を10枚とし、非酸化雰囲気中にて拡散接合することにより、本実施形態に係る拡散接合品を製造できることを確認している。
(4-1)拡散接合温度
[拡散接合温度:850~1050℃]
拡散接合温度が低すぎると、原子の拡散が充分ではなく鋼板同士が拡散接合されない。そのため、本実施形態では、拡散接合温度を850℃以上とする。一方、拡散接合温度が高すぎると高温強度が低下するため、拡散接合時に変形してしまい、拡散接合品の良好な寸法精度が得られない。そのため、本実施形態では、拡散接合温度を1050℃以下とする。なお、本実施形態において拡散接合温度とは、積層された鋼板を等温保持して面圧を付与する際(拡散接合時)の、最表面側の鋼板の表面温度のことを示す。
(4-2)拡散接合時の面圧
[面圧:0.03~30.00MPa]
拡散接合時の面圧が低すぎると、固相界面の面積が小さくなり、固相中の原子が十分に拡散しない。その結果、Siが十分に拡散せず、拡散接合界面付近の最大Si量が大きくなり、剥離しやすい拡散接合界面となる。そのため、本実施形態では、拡散接合時の面圧を0.03MPa以上とする。一方、拡散接合時の面圧が大きすぎると、拡散接合時に変形してしまい、拡散接合品の良好な寸法精度が得られない。そのため、本実施形態では、拡散接合時の面圧を30.00MPa以下とする。拡散接合時の面圧は、10.00MPa以下であることが好ましく、5.00MPa以下であることがより好ましい。
以上の製造方法により、上述の本実施形態に係る拡散接合品、すなわち拡散接合界面が剥離し難い拡散接合品を製造することができる。
表1に示す化学組成を有するスラブを溶製し、熱間圧延、焼鈍および脱スケールを順次行った後に、冷間圧延と焼鈍とを施すことにより、板厚0.1mmのオーステナイト系ステンレス鋼板を得た。焼鈍後、且つ後述する拡散接合前の各オーステナイト系ステンレス鋼板のオーステナイトの平均結晶粒径を、日本工業規格JIS G 0551:2013「鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法」に記載の切断法により測定した。得られたオーステナイトの平均結晶粒径を表1に示す。
Figure 0007274837000001
これらの鋼板(オーステナイト系ステンレス鋼板)を用いて陽極電解処理及び拡散接合を施し、拡散接合品を得た。なお、本実施例では、化学組成が同一の鋼板を拡散接合して拡散接合品とした。
得られた拡散接合品について、拡散接合後の接合率、Si濃化度、及び拡散接合後のオーステナイトの平均結晶粒径を測定した。また、拡散接合界面の剥離の有無を確認するため曲げ試験を行った。陽極電解処理は、pHが5.0以上12.0未満の処理液(水酸化ナトリウム水溶液)で、表2及び表3に示す条件で行った。なお、拡散接合後の各オーステナイト系ステンレス鋼板のオーステナイトの平均結晶粒径は、拡散接合界面から板厚方向に±100~200μm深さの領域において、日本工業規格JIS G 0551:2013「鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法」に記載の切断法により測定した。
拡散接合では、エッチング加工を施したオーステナイト系ステンレス鋼板10枚を積層し、非酸化雰囲気中にて0.01~30.00MPaの面圧を付与し、800~1050℃の温度範囲で等温保持を施した。
拡散接合界面の接合率は、超音波探傷により拡散接合界面の空隙を調査することで得た。具体的には、拡散接合界面において透過法による評価を行い、測定対象の縦横それぞれに対して0.2mmピッチで透過パルスを測定し、透過パルス高さが25%以上の位置を拡散接合界面、25%以下の位置を空隙として判断し、拡散接合界面の面積率を算出して接合率を得た。
Si濃化度は、以下の方法により得た。まず、拡散接合品の、鋼板の板厚方向に平行な断面において、EPMAを用いて100μm×100μmの範囲を、測定ステップを0.25μmとして各拡散接合界面が鋼板の板厚方向の幅中央となるように1視野毎に分析し、合計9視野分析した。これら観察視野のうち、各分析領域(拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域)の中で最大のSi量を、最大Si量とした。素材Si量は、拡散接合品から所定の大きさの試験片を切り出し、ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光)分析法により分析することで得た。得られた最大Si量を素材Si量で除することにより、Si濃化度を得た。
拡散接合界面からの剥離を確認するための曲げ試験は、JIS Z 2248:2014に準拠して曲げ角度90°で実施し、曲げ試験後に拡散接合界面を光学顕微鏡で観察することで剥離の有無を確認した。表2および表3に、剥離が認められたものを×、剥離が認められなかったものを○と表記した。
上記試験結果を表2および表3にまとめて示す。
Figure 0007274837000002
Figure 0007274837000003
表2の実施例1~11は、拡散接合温度と面圧とが本発明で規定する範囲を満足し、(1)式を満足する適切な条件(Σσ≦25.0(C/dm))で陽極電解処理を施している。そのため、Si濃化度が5.0以下となり、剥離試験において剥離せず、剥離し難い拡散接合界面が得られた。
表2の比較例1および2は、拡散接合温度は本発明で規定する範囲を満足しているものの、面圧は本発明で規定する範囲よりも小さい。そのため、Si濃化度が5.0よりも大きくなり、また接合率が60.0%よりも小さくなり、剥離試験において充分な結果を示さないものとなった。
表2の比較例3および4は、面圧は本発明で規定する範囲を満足しているものの、拡散接合温度は本発明で規定する範囲よりも低い。そのため、比較例3は、Si濃化度が5.0よりも大きくなり、また接合率が60.0%よりも小さくなり、剥離試験において充分な結果を示さないものとなった。また、比較例4は、拡散接合界面が形成されず、接合率が0%となり、剥離試験において充分な結果を示さないものとなった。
図2は、表2の実施例1~11、及び比較例1~3のSi濃化度と接合率との関係を示す図である。図2から明らかなように、Si濃化度が5.0以下である例は、接合率が60.0%以上であることが分かる。一方、Si濃化度が本発明の範囲外(5超)である例は、接合率が60.0%未満であることが分かる。
表3の実施例11-1~11-5は、拡散接合温度と面圧とが本発明で規定する範囲を満足し、且つ、(1)式を満足する適切な条件(Σσ≦25.0(C/dm))で陽極電解処理を施している。一方で、比較例11-6では、電解条件が(1)式の範囲を逸脱している。そのため、Si濃化度が5.0よりも大きくなり、また接合率が60.0%よりも小さくなり、剥離試験において充分な結果を示さないものとなった。
1 板厚方向と平行な断面
2 拡散接合界面
3 鋼板
4 観察視野
5 分析領域
10 拡散接合品

Claims (2)

  1. 積層された複数の鋼板同士が相互に接合されてなり、
    前記鋼板は、質量%で、
    C:0.030%以下、
    Si:0.20~1.00%、
    Mn:0.6~1.5%、
    Cr:15.0~20.0%、
    Ni:6.0~9.0%、
    Mo:0.1~0.5%、
    Cu:0.1~0.5%および
    N:0.030~0.150%
    を含有し、さらに
    Nb:0.500%以下、
    V:0.500%以下および
    Ti:0.500%以下のうち1種または2種以上を含有し、
    残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する鋼板であり、
    前記鋼板同士の接合部に拡散接合界面が形成され、
    前記拡散接合界面の鋼板板厚方向の断面において、前記鋼板の板厚方向を幅方向とし、前記拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域内における最大Si量と素材Si量との比であるSi濃化度(最大Si量/素材Si量)が5.0以下であり、
    前記拡散接合界面の接合率が60.0%以上であり、
    前記拡散接合界面から板厚方向に±100~200μm深さの領域において、オーステナイト粒径の平均値が15.0μm以下である拡散接合品。
  2. 請求項1に記載の前記化学組成を有し、且つオーステナイトの平均結晶粒径が5.0μm以下である金属組織を有する鋼板に、pHが5.0以上12.0未満の電解液中で、n組の電極を用いてn回の陽極電解処理を連続して行う際に、k回目の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量をσ(ただしk=1~n)とし、各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和をΣσとしたとき、電気量の総和Σσが、下記(1)式を満たす条件で陽極電解処理する第1の工程と、
    陽極電解処理された前記鋼板の複数枚を直接積層させて、拡散接合温度:850~1050℃、面圧:0.03~30.00MPaで拡散接合を施す第2の工程と、
    を順次行うことを特徴とする、請求項1に記載の拡散接合品の製造方法。
    Σσ≦25.0(C/dm)・・・(1)
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