以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書における「車線変更」は、所定の目的地に向かうための交差点における左折若しくは右折、又は高速道路の出口に近い車線への移動などを意図して現在走行している車線から隣接する車線へ移動する通常の車線変更に加え、高速道路の入口における車線から本線への移動などのいわゆる合流も含む概念である。
また、本明細書における「運転支援」は、車両のドライバによる運転操作の一部を補助する車両の動作制御(自動運転レベル1~4)の他、ドライバによる操作無しの車両の動作制御(自動運転レベル5)も含む概念である。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る車両運転支援システム10の構成図である。
図示のように、車両運転支援システム10は、外部センサ1と、内部センサ2と、ナビゲーションシステム3と、アクチュエータ4と、コントローラ20と、を備える。車両運転支援システム10は、本実施形態の車両運転支援方法を実行すべき対象となる車両(以下では、「自車両α」と称する)に搭載される。
外部センサ1は、自車両αの周辺状況を検出する検出機器である。特に、外部センサ1は、車載カメラ1a、及びレーダー1bを含む。
車載カメラ1aは、自車両αの周辺を撮像する撮像機器である。車載カメラ1aは、例えば、自車両αのフロントガラスの車室内側に設けられる。なお、車載カメラ1aは、単眼カメラ又はステレオカメラにより構成される。車載カメラ1aは、撮像した自車両αの周辺に関する情報コントローラ20へ出力する。
レーダー1bは、電波を利用して自車両αの外部の物体を検出する。電波は、例えばミリ波である。より詳細には、レーダー1bは、電波を自車両αの周囲に送信し、物体で反射された電波を受信して物体を検出する。レーダー1bは、例えば物体までの距離又は方向を物体情報として出力することができる。レーダー1bは、検出した物体情報をコントローラ20へ出力する。なお、レーダー1bに代えて、又はレーダー1bとともに、光を利用して自車両αの外部の物体を検出するライダー(LIDER:Laser Imaging Detection and Ranging)を外部センサ1として搭載しても良い。
内部センサ2は、自車両αの走行状態に応じた各種情報を検出する検出器である。特に、内部センサ2は、自車両αの車速(以下では、「自車両車速Vα」とも称する)を検出する車速センサ及び加速度を検出する加速度センサなどを含む。
ナビゲーションシステム3は、自車両αのドライバ等の乗員によって地図上に設定された目的地までの案内を自車両αの乗員に対して行う装置である。ナビゲーションシステム3は、GPS(Global Positioning System)によって測定された自車両αの位置情報と図示しない地図データベースの地図情報とに基づいて、自車両αの走行するルートを算出する。ルートは、例えば複数車線の区間において自車両αが走行する走行車線La1を特定したルートでもよい。ナビゲーションシステム3は、例えば、自車両αの位置から目的地に至るまでの目標ルートを演算し、ディスプレイの表示及びスピーカの音声出力により目標ルート情報の報知を乗員に対して行う。ナビゲーションシステム3は、自車両αの位置情報、地図情報、及び目標ルート情報を含むナビゲーション情報をコントローラ20へ出力する。
なお、ナビゲーションシステム3は、自車両αと通信可能な情報処理センターなどの車両外部の施設のコンピュータに記憶された情報を用いてもよい。例えば、ナビゲーションシステム3は、施設のコンピュータから通信を介して道路の混雑を示す渋滞情報を上記ナビゲーション情報として取得してもよい。また、ナビゲーションシステム3が実行する処理を、自車両αに搭載されるコンピュータと、車両外部のコンピュータと、で分散して実行する構成をとっても良い。
アクチュエータ4は、コントローラ20からの指令に基づいて自車両αの走行制御を実行する装置である。アクチュエータ4は、駆動アクチュエータ4a、ブレーキアクチュエータ4b、及びステアリングアクチュエータ4cを含む。
駆動アクチュエータ4aは、自車両αの駆動力を調節するための装置である。
特に、自車両αが走行駆動源としてのエンジンを搭載している内燃機関自動車である場合には、駆動アクチュエータ4aはエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を調節するスロットルアクチュエータなどで構成される。
一方、自車両αが走行駆動源としてのモータを搭載しているハイブリッド車両又は電気自動車である場合には、駆動アクチュエータ4aはモータに供給する電力を調節可能な回路(インバータ及びコンバータなど)などで構成される。
ブレーキアクチュエータ4bは、コントローラ20からの指令に応じてブレーキシステムを操作し、自車両αの車輪へ付与する制動力を調節する装置である。ブレーキアクチュエータ4bは、油圧ブレーキ又は回生ブレーキなどで構成される。
ステアリングアクチュエータ4cは、電動パワーステアリングシステムのうちステアリングトルクを制御するアシストモータなどで構成される。
運転支援制御装置としてのコントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータで構成される。なお、コントローラ20は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態の各処理を当該複数の装置で分散処理するように構成されていても良い。
本実施形態のコントローラ20は、例えば自車両αの運転支援に関する処理を行うコントローラ(ADコントローラ)により構成される。なお、コントローラ20は、ADコントローラ以外に自車両αに搭載されるECU(Engine Control Unit)又は統合コントローラなどの制御装置により構成されても良い。
コントローラ20は、外部センサ1、内部センサ2、及びナビゲーションシステム3との間で各種信号を通信可能に構成される。
そして、コントローラ20は、取得した各センサの検出値及びナビゲーションシステム情報に基づいてアクチュエータ4を操作して自車両αの走行を制御するようにプログラムされている。特に、コントローラ20は、自車両αの車線変更要求を検出すると、後述する車両運転支援方法にかかる処理を開始する。
なお、コントローラ20には、いわゆるHDマップ(ダイナミックマップ)を搭載しても良い。特に、コントローラ20がHDマップを搭載する場合には、各センサの検出値及びナビゲーションシステム情報に代えて又はこれとともに、HDマップのデータから自車両αの周辺状況(車線数若しくは路肩の大きさなどの道路の態様、他車両の走行量、又は障害物の有無など)を取得することができる。
以下、本実施形態の車両運転支援方法の詳細について説明する。
図2は、本実施形態の車両運転支援方法を説明するフローチャートである。
先ず、ステップS100において、コントローラ20は、車線変更要求があるか否かを判定する。具体的に、コントローラ20は、ナビゲーションシステム情報に基づいて自車両αに予め設定された走行ルートに応じて車線変更が必要であるか否かを判定する。
なお、このナビゲーションシステム情報に基づく車線変更要求の有無の判定以外の判定態様を採用しても良い。例えば、自車両αのドライバが車線変更を指示する操作を検出したか否か、又は上位コントローラからの車線変更の指令信号を受信したか否かに基づいて車線変更要求があるか否かを判定する構成を採用しても良い。
そして、コントローラ20は、車線変更要求があると判断すると、ステップS110の処理に移行する。
ステップS110において、コントローラ20は、他車情報を取得する。特に、コントローラ20は、外部センサ1の検出値などに基づいて、走行車線La1に隣接する車線変更先の隣接車線La2を走行する他車両(特に後述の前方車両β及び後方車両γ)の位置及び車速を含む情報を取得する。
ステップS120において、コントローラ20は、隣接車線La2における自車両αの目標車線変更位置P2を設定する。具体的に、コントローラ20は、隣接車線La2において、自車両αの現在の走行位置(以下、「通常走行位置P0」とも称する)に近く、且つ自車両αが進入する十分なスペースがあるかなどの基準に基づいて適切な隣接車線La2上の位置を目標車線変更位置P2に設定する。
なお、以下では、隣接車線La2においてこの目標車線変更位置P2の前方で隣接して走行する車両を「前方車両β」とも称する。また、隣接車線La2においてこの目標車線変更位置P2の後方で隣接して走行する車両を「後方車両γ」とも称する。
次に、ステップS130において、コントローラ20は、後方車両γの運転者Dγの有効視野efvを規定する有効視野角θの推定値として推定有効視野角θeを求める。
図3は、有効視野角θについて説明するための図である。ここで、有効視野efvとは、人の生理学的視野中心付近に固定点(注視点)を設けている場合に外界から有効に情報を得ることのできる範囲を意味する。特に、本実施形態における有効視野efvは、後方車両γの車幅方向における中心軸と略一致する軸線ax1の延長線上に運転者Dγの前方注視点が存在するとみなし、当該軸線ax1を中心角の二等分線として所定の半径長さを有する略扇形の領域(図3にハッチングで示す領域)として定義される。そして、この有効視野efvを決定付けるパラメータである中心角が有効視野角θとして定義される。
有効視野角θは、後方車両γの車速(以下、単に「後方車両車速Vγ」とも称する)、隣接車線La2における後方車両γの走行路の混雑度合、隣接車線La2の道路形状(直線又はカーブ)などの後方車両γの走行環境、並びに後方車両γの運転者Dγの運転技能及び運転者Dγに作用する運転負荷などの運転者状態などの要因によって、例えば4°~20°の範囲で変動する。
特に、本実施形態では、これらの各要因を総合的に考慮した平均的な有効視野角θを基準有効視野角θ0として予め設定しておく。そして、コントローラ20は、後方車両車速Vγに基づいて基準有効視野角θ0を補正した値を以降の処理で用いる有効視野角θの推定値(以下、「推定有効視野角θe」とも称する)として演算する。
図4は、後方車両車速Vγに応じた推定有効視野角θeの補正について説明する図である。図示のように、本実施形態では、上記基準有効視野角θ0を、後方車両車速Vγが大きいほど小さくなるように補正して推定有効視野角θeを求める。
図2に戻り、ステップS140において、コントローラ20は、求めた推定有効視野角θeに基づいて、車線変更待機位置P1を算出する待機位置設定処理を実行する。
図5は、車線変更待機位置P1の設定について説明する図である。
図5から理解されるように、本実施形態では、自車両αが車線変更待機位置P1に移動した際に、推定有効視野角θeで特定される運転者Dγの有効視野efvの少なくとも一部に自車両αが進入するように、自車両αの通常走行位置P0からの横方向における移動距離(以下、単に「横移動距離Bα」とも称する)及び前後方向における移動距離(以下、単に「前後移動距離Lα」とも称する)を定める。
特に、本実施形態では、横移動距離Bαを推定有効視野角θeが小さいほど大きく設定する。
図6は、推定有効視野角θeに応じて設定される横移動距離Bαについて説明する図である。図示のように、本実施形態では、横移動距離Bαを推定有効視野角θeが小さいほど大きく設定する。
これにより、後方車両γの運転者Dγの有効視野efvが狭いほど車線変更待機位置P1が横方向において後方車両γに近い位置に設定されることとなる。
図2に戻り、ステップS150において、コントローラ20は、ステップS140で設定した車線変更待機位置P1に自車両αを移動させる移動処理を実行する。具体的に、コントローラ20は、自車両αを通常走行位置P0から横移動距離Bα及び前後移動距離Lαの分移動させるようにアクチュエータ4を操作する。
そして、ステップS160において、コントローラ20は、待機処理を実行する。具体的に、コントローラ20は、自車両αが車線変更待機位置P1で走行する状態を維持するようにアクチュエータ4を操作する。また、本実施形態において、コントローラ20は、待機処理中に、方向指示器(いわゆるウィンカー)による方向指示表示を行う。
特に、本実施形態においてコントローラ20は、所定の暴露時間Δtexの間、自車両αの車線変更待機位置P1における待機状態を維持する。なお、暴露時間Δtexは、車線変更待機位置P1に移動して来た自車両αを後方車両γの運転者Dγに認識させる観点から適宜定まる時間である。特に、本実施形態では、待機処理中において方向指示表示を行うところ、暴露時間Δtexは少なくとも方向指示表示から車線変更動作を開始するまでの一般的な時間間隔(数秒程度)以上の時間に設定されることが好ましい。
そして、ステップS170において、コントローラ20は、待機処理の完了後に自車両αを目標車線変更位置P2に移動させる車線変更動作を実行する。具体的に、コントローラ20は、自車両αを車線変更待機位置P1から目標車線変更位置P2に移動させるようにアクチュエータ4を操作する。
以上説明した構成を有する本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態車両運転支援方法では、自車両αを走行車線La1から隣接車線La2に移動させる車線変更動作を実行する車両運転支援方法が提供される。
この車両運転支援方法では、隣接車線La2における目標車線変更位置P2を設定し(図2のステップS120)、目標車線変更位置P2を設定すると、該目標車線変更位置P2に後方で隣接して走行する後方車両γの運転者Dγの有効視野efvを規定する有効視野角θの推定値である推定有効視野角θeを求める有効視野推定処理を実行する(ステップS130)。そして、推定有効視野角θeに基づいて自車両αが後方車両γの運転者Dγの有効視野efv内に入る車線変更待機位置P1を設定する待機位置設定処理(ステップS140)を実行し、自車両αを車線変更待機位置P1まで移動させる移動処理(ステップS150)を実行し、自車両αを車線変更待機位置P1に待機させる待機処理(ステップS160)を実行し、待機処理の完了後に車線変更動作を実行する(ステップS170)。
これにより、車線変更動作を実行する前に、自車両αが後方車両γの運転者Dγの有効視野efv内に入る車線変更待機位置P1に移動して待機した後に車線変更動作を開始することとなる。すなわち、車線変更待機位置P1で走行する自車両αを後方車両γの運転者Dγに認識させる過程を経て車線変更動作が開始される。したがって、車線変更動作を意図する自車両αの存在を後方車両γの運転者Dγにより確実に認識させることができる。
特に、本実施形態の車両運転支援方法では、待機処理中に、車線変更待機位置P1において自車両の方向指示器による方向指示表示を実行する(ステップS160)。
これにより、後方車両γの運転者Dγの有効視野efv内に自車両αが入る位置状態で方向指示表示が実行されることとなるので、後方車両γの運転者Dγに対してこれから自車両αが車線変更動作を実行する意図であることをより確実に認識させることができる。
また、本実施形態の車両運転支援方法において、待機位置設定処理(ステップS140)では、推定有効視野角θeが小さいほど自車両αの横移動距離Bαが大きくなるように車線変更待機位置P1を設定する(図6)。
すなわち、運転者Dγの有効視野角θが小さいほど有効視野efvは狭くなるので、この狭まった有効視野efvに合わせて自車両αが横方向において後方車両γにより近づくように車線変更待機位置P1が設定されることとなる。このため、後方車両γの運転者Dγに自車両αを認識させる効果をより高めることができる。
さらに、本実施形態の車両運転支援方法では、後方車両γの車速である後方車両車速Vγを取得し(ステップS110)、有効視野推定処理(ステップS130)では後方車両車速Vγが大きいほど推定有効視野角θeを小さくする(図4)。
すなわち、後方車両車速Vγが大きいほど運転者Dγの有効視野efvが狭くなると考えられるため、これを考慮して、後方車両車速Vγが大きいほど推定有効視野角θeが小さくする。これにより、自車両αを横方向において後方車両γにより近づけるように車線変更待機位置P1が調節されることとなるので、後方車両γの運転者Dγに自車両αを認識させる効果をより高めることができる。
また、本実施形態によれば、上記車両運転支援方法を実行するための車両運転支援システム10が提供される。この車両運転支援システム10は、自車両αを走行車線La1から隣接車線La2に移動させる車線変更動作を実行する制御装置としてのコントローラ20を有する。
そして、コントローラ20は、隣接車線La2における目標車線変更位置P2を設定する目標車線変更位置設定部(図2のステップS120)、目標車線変更位置P2が設定されると、該目標車線変更位置P2に後方で隣接して走行する後方車両γの運転者Dγの有効視野efvを規定する有効視野角θの推定値である推定有効視野角θeを求める有効視野算出部(ステップS130)、推定有効視野角θeに基づいて自車両αが後方車両γの運転者Dγの有効視野efv内に入る車線変更待機位置P1を設定する車線変更待機位置設定部(ステップS140)、自車両αを車線変更待機位置P1まで移動させる移動処理を実行する移動処理部(ステップS150)、自車両αを車線変更待機位置P1に所定の暴露時間Δtex待機させる待機処理を実行する待機処理部(ステップS160)、及び待機処理の完了後に車線変更動作を実行する車線変更動作実行部(ステップS170)として機能する。
これにより、上記車両運転支援方法を実行するための好適なシステム構成が実現される。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、特に、隣接車線La2の混雑度Cgdに基づいて推定有効視野角θeを演算する。
図7は、本実施形態の車両運転支援方法を説明するフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態の車両運転支援方法では、コントローラ20は、ステップS110とステップS120の間においてステップS210を実行する。そして、ステップS210において、コントローラ20は、後方車両γが走行する隣接車線La2における道路情報を取得する。
具体的に、コントローラ20は、上記道路情報として、隣接車線La2の混雑の度合を表すパラメータである混雑度Cgdを取得する。例えば、コントローラ20は、自車両αの外部センサ1の検出値から走行車線La1及び隣接車線La2において後方車両γの前方の所定距離範囲において走行する車両台数を特定し、当該所定距離範囲あたりの車両台数として混雑度Cgdを演算する。なお、走行車線La1又は隣接車線La2に並列する他の車線が存在し、且つ他の車線を走行する車両が後方車両γの運転者Dγの有効視野efvに入る可能性がある場合には、混雑度Cgdの演算において他の車線を走行する車両の台数を考慮しても良い。
そして、コントローラ20は、ステップS130の有効視野推定処理において混雑度Cgdに基づいて推定有効視野角θeを演算する。
図8は、混雑度Cgdに応じた推定有効視野角θeの補正を説明する図である。図示のように、本実施形態では、混雑度Cgdが大きいほど推定有効視野角θeを小さくする。すなわち、混雑度Cgdが大きいほど、後方車両γの運転者Dγが受ける心理的ストレスが高くなって有効視野efvが狭くなると考えられるところ、この点を考慮して混雑度Cgdの大きさに応じて補正された推定有効視野角θeを演算する。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両運転支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両運転支援方法は、後方車両γの前方における車両の混雑度合を示す混雑度Cgdを取得し(図7のステップS210)、混雑度Cgdが高いほど推定有効視野角θeを小さくする(図8)。
すなわち、後方車両γの運転者Dγの前方における混雑度合が大きくなるほど、当該後方車両γの運転者Dγへの心理的負荷が大きくなり、有効視野efvが狭くなる傾向にある。このような傾向を考慮して、後方車両γの運転者Dγの前方の混雑度合を指標化した混雑度Cgdを取得して、当該混雑度Cgdが大きいほど推定有効視野角θeが小さくなるように演算する。これにより、後方車両γの前方における交通量が多いことで当該後方車両γの運転者Dγの有効視野efvが狭くなるシーンにおいて自車両αを横方向において後方車両γにより近づけるように車線変更待機位置P1が調節して、当該運転者Dγに自車両αを認識させる効果をより高めることができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、特に、後方車両γの運転者Dγに係る運転者状態情報に基づいて推定有効視野角θeを求める。
図9は、本実施形態の車両運転支援方法を説明するフローチャートである。
図9に示すように、本実施形態の車両運転支援方法では、コントローラ20は、ステップS110とステップS120の間においてステップS310を実行する。そして、ステップS310において、コントローラ20は、運転者状態情報を取得する。
具体的に、コントローラ20は、車車間通信(V2V)などにより、後方車両γから当該後方車両γの運転者状態情報として、運転者Dγの運転技能及び運転者Dγに作用する運転負荷を取得する。
ここで、運転者Dγの運転技能とは、後方車両γに搭載される情報機器類に予め入力されている運転者Dγの運転技能の高低を表す数値化指標(以下、「運転スキルレベル」とも称する)である。
また、運転者Dγに作用する運転負荷とは、後方車両γに搭載される検出装置の検出値から推定可能な運転者Dγの心理的又は身体的負荷の高低を表す数値化指標(以下、単に「ワークロード」とも称する)である。例えば、ワークロードとしては、後方車両γのステアリングセンサの検出値に基づいて推定されるステアリングエントロピー(操舵動作の滑らかさ)が想定される。なお、ステアリングエントロピーはその値が低いほど操舵動作が滑らかであると判定するパラメータである。このため、ステアリングエントロピーを採用する場合には、ワークロードとしてステアリングエントロピーの逆数が設定される。
そして、コントローラ20は、ステップS130の有効視野推定処理において、ステップS310で取得した運転スキルレベル及びワークロードに基づいて推定有効視野角θeを補正する。
図10は、運転スキルレベルに応じた推定有効視野角θeの補正について説明する図である。図示のように、本実施形態では、基準有効視野角θ0を運転スキルレベルが低いほど小さくなるように補正して推定有効視野角θeを求める。すなわち、運転スキルレベルが相対的に低い場合には、運転者Dγが運転操作に集中して視野が狭くなる傾向にある。本実施形態では、この点を考慮して、運転スキルレベルの高低に応じて補正された推定有効視野角θeを演算する。
また、図11は、ワークロードに応じた推定有効視野角θeの補正について説明する図である。図示のように、本実施形態では、基準有効視野角θ0をワークロードが高いほど小さくなるように補正して推定有効視野角θeを求める。すなわち、ワークロードが相対的に高い場合には、運転者Dγの身体的又は精神的疲労が高く周辺への注意が散漫になり易く有効視野efvが狭くなる傾向にあると考えられる。本実施形態では、この点を考慮して、ワークロードの高低に応じて補正された推定有効視野角θeを演算する。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両運転支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両運転支援方法は、後方車両γの運転者Dγの運転技能(運転スキルレベル)又は該運転者Dγに作用する運転負荷(ワークロード)を含む運転者状態情報を取得し(図9のステップS310)、運転者状態情報に基づいて推定有効視野角θeを求める(図10及び図11)。
すなわち、後方車両γの運転者Dγの有効視野efvの広狭に影響を与える要素である運転技能又は運転負荷を含む運転者状態情報に基づいて推定有効視野角θeの大きさが適宜調節されることとなる。これにより、後方車両γの運転者Dγの状態に依る有効視野efvの広狭に応じた車線変更待機位置P1を調節して、当該運転者Dγに自車両αを認識させる効果をより高めることができる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について説明する。なお、上記第1~第3実施形態のいずれかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、特に、隣接車線La2の道路態様を表す道路態様情報に基づいて車線変更待機位置P1を調節する例を説明する。
図12は、本実施形態の車両運転支援方法を説明するフローチャートである。
図12に示すように、本実施形態の車両運転支援方法では、コントローラ20は、ステップS110とステップS120の間のステップS410において、隣接車線La2に係る道路態様情報を取得する。
ここで、道路態様情報とは、隣接車線La2の道路形状(直線、カーブ、トンネル、及び路面状況など)、及び道路状況(雨、雪、若しくは晴れなどの天候又は日中、若しくは夜間などの時間帯など)を含む情報である。
具体的に、コントローラ20は、外部センサ1の検出値、ナビゲーションシステム3から得られるナビゲーション情報、又はHDDマップから隣接車線La2の道路態様情報を取得する。
そして、コントローラ20は、ステップS140の待機位置設定処理において、ステップS310で取得した道路態様情報に基づいて横移動距離Bαを補正する。以下、この横移動距離Bαの詳細について説明する。
先ず、コントローラ20は、道路態様情報に基づいて隣接車線La2における後方車両γの走行路がカーブであるか否かを判定する。例えば、コントローラ20は、道路態様情報から後方車両γの走行路の曲率半径Rが予め定められる一定値以上である場合、又はナビゲーション情報に含まれる地図情報から後方車両γの走行路がカーブであると特定できる場合に、当該走行路がカーブであると判断する。
さらに、コントローラ20は、後方車両γの走行路がカーブであると判断すると、後方車両γの走行する隣接車線La2が自車両αの走行車線La1に対してカーブの内側に位置するか否かを判定する。
そして、コントローラ20は、隣接車線La2が走行車線La1に対してカーブの内側に位置すると判断すると、後方車両γの走行路の曲率半径Rに基づいて横移動距離Bαを補正する。
図13は、曲率半径Rに応じた横移動距離Bαの補正について説明する図である。図示のように、本実施形態では、横移動距離Bαの基準値である基準横移動距離Bα0を、曲率半径Rが小さいほど大きくなるように補正して横移動距離Bαを定める。以下では、この曲率半径Rに基づいて横移動距離Bαの補正に関する技術的意義を説明する。
図14Aは、後方車両γがカーブである場合の運転者Dγの有効視野efvについて説明する図である。特に、図14Aにおいては、隣接車線La2が走行車線La1に対してカーブの外側に位置するシーンを想定している。
後方車両γがカーブを走行している際には運転者Dγは自己の移動先であるカーブの先に視線を向ける傾向にある。すなわち、運転者Dγの前方注視点は、直線道路走行時において想定されていた軸線ax1に対して曲率半径Rの大きさに応じた角度分ずれた軸線ax2上に移ることとなる。このため、図14Aに示すように、後方車両γのカーブ走行時における運転者Dγの有効視野efvは、軸線ax1の延長線上に運転者Dγの前方注視点が存在するとした場合の有効視野efv(図14Aにおいて一点鎖線で示す)に比べ、全体としてカーブの内側にオフセットすることとなる。
ここで、図14Aに示すように、隣接車線La2が走行車線La1に対してカーブの内側に位置することで、後方車両γが自車両αに対してカーブの外側を走行している場合には、カーブの内側にオフセットしても有効視野efv内に車線変更待機位置P1での自車両αが入る状態が維持される。このため、有効視野efvのオフセットを考慮したとしても、横移動距離Bαの補正を実行せずに車線変更待機位置P1を維持することができる。
一方、図14Bには、後方車両γがカーブの内側を走行している場合の車線変更待機位置P1の設定について説明する。図14Bに示すように後方車両γがカーブの内側を走行している場合には、上述のように運転者Dγの有効視野efvがカーブの内側にオフセットすると、有効視野efvから補正前の車線変更待機位置P1で走行している自車両α(図14Bに破線で示す)が外れることとなる。
したがって、本実施形態では、このようなシーンを考慮し、後方車両γの走行路がカーブであって後方車両γが自車両αに対してカーブの内側を走行する場合には、当該カーブの曲率半径Rが小さいほど横移動距離Bαを大きくする。すなわち、図14Bに示すように、カーブの急さに応じて自車両αが横方向においてより後方車両γに近づくように車線変更待機位置P1を調節する。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両運転支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両運転支援方法は、隣接車線La2の道路態様を表す道路態様情報を取得する(図12のステップS410)。そして、待機位置設定処理(ステップS140)では、道路態様情報に基づいて隣接車線La2における後方車両γの走行路がカーブであるか否かを判定し、該判定の結果が肯定的であって且つ隣接車線La2が走行車線La1に対してカーブの内側に位置する場合には、隣接車線La2における後方車両γの走行路の曲率半径Rが小さいほど横移動距離Bαを大きくする(図13及び図14B)。
すなわち、後方車両γの運転者Dγの有効視野efvがカーブの内側にオフセットして、当該有効視野efvから車線変更待機位置P1で走行している自車両αが外れ得るシーンにおいて、自車両αの車線変更待機位置P1を後方車両γにより近づけるように車線変更待機位置P1を調節する。
これにより、後方車両γが自車両αに対してカーブの内側を走行するシーンにおいて、より確実に、車線変更待機位置P1で待機する自車両αを後方車両γの運転者Dγの有効視野efvに入れることができ、当該運転者Dγに自車両αを認識させる効果をより高めることができる。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について説明する。なお、上記第1~第4実施形態のいずれかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、特に、隣接車線La2の道路態様を表す道路態様情報に基づいて推定有効視野角θeの補正を実行する例を説明する。
先ず、本実施形態のコントローラ20は、第4実施形態と同様に、道路態様情報に基づいて隣接車線La2における後方車両γの走行路がカーブであるか否かを判定する。
そして、この判定結果が肯定的である場合に、コントローラ20は有効視野推定処理において後方車両γの走行路の曲率半径Rに基づいて推定有効視野角θeを補正する。
図15は、曲率半径Rに応じた推定有効視野角θeの補正について説明する図である。図示のように、本実施形態では、上記基準有効視野角θ0を、曲率半径Rが小さいほど小さくなるように補正して推定有効視野角θeを求める。
すなわち、本実施形態では、後方車両γの走行路のカーブが急であるほど後方車両γの運転者Dγに生じる心理的負担が高く、当該心理的負担に起因して運転者Dγの有効視野efvが狭まることを考慮し、基準有効視野角θ0を補正して推定有効視野角θeを求める。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両運転支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両運転支援方法は、隣接車線La2の道路態様を表す道路態様情報を取得する(ステップS410)。そして、有効視野推定処理(ステップS130)では、道路態様情報に基づいて隣接車線La2における後方車両γの走行路がカーブであるか否かを判定し、該判定の結果が肯定的であって且つ隣接車線La2が走行車線La1に対してカーブの内側に位置する場合には、隣接車線La2における後方車両γの走行路の曲率半径Rが小さいほど推定有効視野角θeを小さくする(図15)。
すなわち、後方車両γの運転者Dγの有効視野efvがカーブの内側にオフセットして、当該有効視野efvから車線変更待機位置P1で走行している自車両αが外れ得るシーンにおいて、自車両αの車線変更待機位置P1を後方車両γにより近づけるように車線変更待機位置P1を調節する。
これにより、後方車両γが自車両αに対してカーブの内側を走行するシーンにおいて、より確実に、車線変更待機位置P1で待機する自車両αを後方車両γの運転者Dγの有効視野efvに入れることができ、当該運転者Dγに自車両αを認識させる効果をより高めることができる。
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について説明する。なお、上記第1~第5実施形態のいずれかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、ステップS140における待機位置設定処理において、後方車両γの運転者Dγに与えるリスク感を表すリスクパラメータPrを定め、当該リスクパラメータPr及び後方車両車速Vγから横移動距離Bαを設定する。
ここで、リスクパラメータPrとは、後方車両γの運転者Dγに対して自車両αとの接触の可能性など、自車両αが後方車両γに近づくことにより運転者Dγに不安を与える可能性の高さを数値化したものである。
特に、本実施形態のリスクパラメータPrは、後方車両車速Vγから車線変更待機位置P1の自車両αと後方車両γの間の横方向離間距離ΔBαγを除して必要に応じて適切な補正係数を乗じた値として定義する。すなわち、リスクパラメータPrは、横方向離間距離ΔBαγが小さいほど(車線変更待機位置P1が後方車両γに近いほど)、又は後方車両車速Vγが高いほど大きい値として演算される。
なお、本実施形態では説明の簡略化のため、自車両αと後方車両γの間の前後方向離間距離を考慮しないリスクパラメータPrを用いる例を説明する。しかしながら、適宜、当該前後方向離間距離を考慮してリスクパラメータPrを設定しても良い。
そして、コントローラ20は、予め定められたリスクパラメータPrの値として許容される上限値(以下、「リスク上限Prup」とも称する)を用いて、後方車両車速Vγから適切な自車両αの横移動距離Bαを定める。
図16には、本実施形態における横移動距離Bαを定めるためのマップの一例を示す。
図16における直線CPrは、リスクパラメータPrのリスク上限Prupを表す。すなわち、直線CPr以下の領域は、リスクパラメータPrがリスク上限Prup以下となるところ、後方車両γの運転者Dγに不安を与えるリスクが許容できる程度と言える。
また、曲線Cθは、車線変更待機位置P1の自車両αが後方車両γの運転者Dγの有効視野efvに入る自車両αと後方車両γの横方向離間距離ΔBαγの上限を定める。すなわち、曲線Cθ以下の領域では、車線変更待機位置P1の自車両αが後方車両γの運転者Dγの有効視野efvに入るところ、後方車両γの運転者Dγにより自車両αが認識可能な領域と言える。特に、横方向離間距離ΔBαγが曲線Cθに比べて小さいほど、後方車両γの運転者Dγによる自車両αに対する認識の可能性が高くなる。
ここで、後方車両γの運転者Dγに車線変更待機位置P1の自車両αをより確実に認識させる観点で言えば、曲線Cθに対して横方向離間距離ΔBαγを小さくするほど(車線変更待機位置P1を後方車両γに近くするほど)好ましい。一方で、後方車両γの運転者Dγに不安を与えるリスクを考慮して自車両αを後方車両γに過度に近づけないようにする観点から、横方向離間距離ΔBαγを直線CPr以下とすることが好ましい。
ことが望ましい。
したがって、本実施形態では、上記2つの観点のバランスを考慮し、コントローラ20が曲線Cθ以下且つ直線CPr以下の領域内(図16においてハッチングで示す領域内)において横方向離間距離ΔBαγを定める。
さらに、コントローラ20は、このように求めた横方向離間距離ΔBαγから、自車両αの初期位置である通常走行位置P0及びその他の車幅等の要素を適宜考慮して、自車両αの横移動距離Bαを演算する。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両運転支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両運転支援方法において、待機位置設定処理(ステップS140)では、横移動距離Bα及び後方車両車速Vγに基づいて後方車両γの運転者Dγに与えるリスク感の数値指標であるリスクパラメータPrを演算する。そして、車線変更待機位置P1に位置する自車両αが後方車両γの運転者Dγの有効視野efv内に入り、且つリスクパラメータPrが所定の上限値であるリスク上限Prup以下となるように横移動距離Bαを定める(図16)。
これにより、後方車両γの運転者Dγに与える不安を軽減しつつ、自車両αを当該運転者Dγに認識させ得る車線変更待機位置P1を設定することができる。
なお、リスクパラメータPrの具体的な設定方法は本実施形態で説明した態様に限られない。すなわち、リスクパラメータPrは、自車両αが後方車両γに近づくことにより運転者Dγに不安を与える可能性の高さの定量化という機能を果たす量ならば、他の種々のパラメータ(THW又はTTCなど)を用いて定義されても良い。
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について説明する。なお、上記第1~第6実施形態のいずれかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態において、コントローラ20は、待機位置設定処理(ステップS140)において、自車両αの前後移動が横移動に対して優先されるように車線変更待機位置P1を設定する。
図17は、本実施形態の車線変更待機位置P1の設定について説明する図である。既に説明したように、後方車両γの運転者Dγの有効視野efvは当該後方車両γの前方に略扇形状に広がる。このため、図17に示すように、自車両αの通常走行位置P0から前後移動のみで当該自車両αを運転者Dγの有効視野efvに入るようにすることのできるシーンが想定される。
このようなシーンを想定して、本実施形態では、コントローラ20は、先ず、ステップS130で推定した推定有効視野角θeに基づいて、自車両αが後方車両γの運転者Dγの有効視野efvに入るまでの通常走行位置P0からの前後移動距離Lαを求める。そして、当該前後移動距離Lαに相当する走行位置を車線変更待機位置P1として設定する。
なお、コントローラ20は、自車両αの前後移動のみの前提とした車線変更待機位置P1の設定が適切ではないと判断した場合には、適宜、自車両αの横移動距離Bαも設定した上で車線変更待機位置P1を設定する。
自車両αの前後移動のみの前提とした車線変更待機位置P1の設定が適切ではない場合とは、例えば、自車両αの前後移動のみでは推定有効視野角θeに基づく有効視野efvに入らない場合、又は隣接車線La2における前方車両βと後方車両γの車間が狭いため後の車線変更動作を適切に行う観点から上記前後移動距離Lαの大きさに制限をかける必要がある場合である。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両運転支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両運転支援方法において、待機位置設定処理(ステップS140)では、自車両αの前後移動が横移動に対して優先されるように車線変更待機位置P1を設定する。
これにより、自車両αが後方車両γに横方向において近づかずに運転者Dγの有効視野efvに入る車線変更待機位置P1が設定されることとなる。すなわち、自車両αを隣接車線La2に寄せることなく、当該自車両αを後方車両γの運転者Dγに認識させる効果を発揮することができる。
特に、走行車線La1及び隣接車線La2の交通量が比較的少ないシーンなどにおいては、自車両αの前後移動を優先して車線変更待機位置P1を設定することで、走行車線La1上において運転者Dγの有効視野efvに入る観点から十分な前後方向スペースが確保されているにもかかわらず、待機処理(ステップS160)中に自車両αが後方車両γに比較的近い位置で待機するという事態の発生を回避することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態及び各変形例は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記各実施形態では、方向指示表示を待機処理(ステップS160)に実行する例を説明した。しかしながら、方向指示表示をステップS100で車線変更要求があると判断された以降であって、待機処理の前の任意のタイミングで実行する構成を採用しても良い。
さらに、上記各実施形態における車両運転支援方法におけるコントローラ20は、一台のコンピュータで構成しても良いし、当該車両運転支援方法の各工程を分散処理する複数台のコンピュータで構成しても良い。さらに、上記各実施形態では、コントローラ20の機能を自車両αに搭載されるECUで実現する例を説明した。しかしながら、コントローラ20は、自車両αに搭載されるECU以外の任意の制御装置で実現することができる。さらに、上記各実施形態における車両運転支援方法の各工程を実行するコントローラ20の機能の少なくとも一部を、自車両α内の制御装置と通信する外部の任意のコンピュータで実行しても良い。
また、上記各実施形態は、矛盾を生じない範囲の任意の組み合わせで相互に組み合わせることが可能である。例えば、第1実施形態の後方車両車速Vγに応じて設定された推定有効視野角θeを基準有効視野角θ0として他の実施形態における混雑度Cgd、運転スキルレベル、ワークロード、及び曲率半径Rの少なくとも一つによる補正を適用しても良い。また、第1~第5実施形態と第6実施形態における横移動距離Bαの設定を組み合わせても良い。
なお、上記各実施形態で説明した車両運転支援方法をコンピュータであるコントローラ20に実行させるための車両走行制御プログラム、及び当該車両走行制御プログラムを記憶した記憶媒体も、本出願における出願時の明細書等に記載された事項の範囲内に含まれる。