以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書における「車線変更」は、所定の目的地に向かうための交差点における左折若しくは右折、又は高速道路の出口に近い車線への移動などを意図して現在走行している車線から隣接する車線へ移動する通常の車線変更に加え、高速道路の入口における車線から本線への移動などのいわゆる合流も含む概念である。
また、本明細書における「運転支援」は、車両のドライバによる運転操作の一部を補助する車両の動作制御(自動運転レベル1~4)の他、ドライバによる操作無しの車両の動作制御(自動運転レベル5)も含む概念である。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る車両運転支援システム10の構成図である。
図示のように、車両運転支援システム10は、外部センサ1と、内部センサ2と、ナビゲーションシステム3と、アクチュエータ4と、コントローラ20と、を備える。車両運転支援システム10は、本実施形態の車両運転支援方法を実行すべき対象となる車両(以下では、「自車両α」と称する)に搭載される。
外部センサ1は、自車両αの周辺状況を検出する検出機器である。特に、外部センサ1は、車載カメラ1a、及びレーダー1bを含む。
車載カメラ1aは、自車両αの周辺を撮像する撮像機器である。車載カメラ1aは、例えば、自車両αのフロントガラスの車室内側に設けられる。なお、車載カメラ1aは、単眼カメラ又はステレオカメラにより構成される。車載カメラ1aは、撮像した自車両αの周辺に関する情報をコントローラ20へ出力する。
レーダー1bは、電波を利用して自車両αの外部の物体を検出する。電波は、例えばミリ波である。より詳細には、レーダー1bは、電波を自車両αの周囲に送信し、物体で反射された電波を受信して物体を検出する。レーダー1bは、例えば物体までの距離又は方向を物体情報として出力することができる。レーダー1bは、検出した物体情報をコントローラ20へ出力する。なお、レーダー1bに代えて、又はレーダー1bとともに、光を利用して自車両αの外部の物体を検出するライダー(LIDER:Laser Imaging Detection and Ranging)を外部センサ1として搭載しても良い。
内部センサ2は、自車両αの走行状態に応じた各種情報を検出する検出器である。特に、内部センサ2は、自車両αの車速(以下では、「自車両車速Vα」とも称する)を検出する車速センサ及び加速度を検出する加速度センサ等を含む。
ナビゲーションシステム3は、自車両αのドライバ等の乗員によって地図上に設定された目的地までの案内を自車両αの乗員に対して行う装置である。ナビゲーションシステム3は、GPS(Global Positioning System)によって測定された自車両αの位置情報と図示しない地図データベースの地図情報とに基づいて、自車両αの走行するルートを算出する。ルートは、例えば複数車線の区間において自車両αが走行する走行車線La1を特定したルートでもよい。ナビゲーションシステム3は、例えば、自車両αの位置から目的地に至るまでの目標ルートを演算し、ディスプレイの表示及びスピーカの音声出力により目標ルート情報の報知を乗員に対して行う。ナビゲーションシステム3は、自車両αの位置情報、地図情報、及び目標ルート情報を含むナビゲーション情報をコントローラ20へ出力する。
なお、ナビゲーションシステム3は、自車両αと通信可能な情報処理センターなどの車両外部の施設のコンピュータに記憶された情報を用いてもよい。例えば、ナビゲーションシステム3は、施設のコンピュータから通信を介して道路の混雑を示す渋滞情報を上記ナビゲーション情報として取得してもよい。また、ナビゲーションシステム3が実行する処理を、自車両αに搭載されるコンピュータと、車両外部のコンピュータと、で分散して実行する構成をとっても良い。
アクチュエータ4は、コントローラ20からの指令に基づいて自車両αの走行制御を実行する装置である。アクチュエータ4は、駆動アクチュエータ4a、ブレーキアクチュエータ4b、及びステアリングアクチュエータ4cを含む。
駆動アクチュエータ4aは、自車両αの駆動力を調節するための装置である。
特に、自車両αが走行駆動源としてのエンジンを搭載している内燃機関自動車である場合には、駆動アクチュエータ4aはエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を調節するスロットルアクチュエータなどで構成される。
一方、自車両αが走行駆動源としてのモータを搭載しているハイブリッド車両又は電気自動車である場合には、駆動アクチュエータ4aはモータに供給する電力を調節可能な回路(インバータ及びコンバータなど)などで構成される。
ブレーキアクチュエータ4bは、コントローラ20からの指令に応じてブレーキシステムを操作し、自車両αの車輪へ付与する制動力を調節する装置である。ブレーキアクチュエータ4bは、油圧ブレーキ又は回生ブレーキなどで構成される。
ステアリングアクチュエータ4cは、電動パワーステアリングシステムのうちステアリングトルクを制御するアシストモータなどで構成される。
運転支援制御装置としてのコントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータで構成される。なお、コントローラ20は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態の各処理を当該複数の装置で分散処理するように構成されていても良い。
本実施形態のコントローラ20は、例えば自車両αの運転支援に関する処理を行うコントローラ(ADコントローラ)により構成される。なお、コントローラ20は、ADコントローラ以外に自車両αに搭載されるECU(Engine Control Unit)又は統合コントローラなどの制御装置により構成されても良い。
コントローラ20は、外部センサ1、内部センサ2、及びナビゲーションシステム3との間で各種信号を通信可能に構成される。
そして、コントローラ20は、取得した各センサの検出値及びナビゲーションシステム情報に基づいてアクチュエータ4を操作して自車両αの走行を制御するようにプログラムされている。特に、コントローラ20は、自車両αの車線変更要求を検出すると、後述する車両運転支援方法にかかる処理を開始する。
なお、コントローラ20には、いわゆるHDマップ(ダイナミックマップ)を搭載しても良い。特に、コントローラ20がHDマップを搭載する場合には、各センサの検出値及びナビゲーションシステム情報に代えて又はこれとともに、HDマップのデータから自車両αの周辺状況(車線数若しくは路肩の大きさなどの道路の態様、他車両の走行量、又は障害物の有無など)を取得することができる。
以下、本実施形態の車両運転支援方法の詳細について説明する。
図2は、本実施形態の車両運転支援方法を説明するフローチャートである。
先ず、ステップS100において、コントローラ20は、車線変更要求があるか否かを判定する。具体的に、コントローラ20は、ナビゲーションシステム情報に基づいて自車両αに予め設定された走行ルートに応じて車線変更が必要であるか否かを判定する。
なお、このナビゲーションシステム情報に基づく車線変更要求の有無の判定以外の判定態様を採用しても良い。例えば、自車両αのドライバが車線変更を指示する操作を検出したか否か、又は上位コントローラからの車線変更の指令信号を受信したか否かに基づいて車線変更要求があるか否かを判定する構成を採用しても良い。
そして、コントローラ20は、車線変更要求があると判断すると、ステップS110の処理に移行する。
ステップS110において、コントローラ20は、他車情報を取得する。具体的に、コントローラ20は、外部センサ1の検出値などに基づいて、自車両αが走行している走行車線La1を走行する他車両(特に後述の後続二輪車δ)の位置及び車速に関する情報、及び走行車線La1に隣接する車線変更先の隣接車線La2を走行する他車両(特に後述の前方車両β及び後方車両γ)の位置及び車速を含む情報を取得する。
ステップS120において、コントローラ20は、隣接車線La2における自車両αの目標車線変更位置P2を設定する。具体的に、コントローラ20は、隣接車線La2において、自車両αの現在の走行位置(以下、「通常走行位置P0」とも称する)に近く、且つ自車両αが進入する十分なスペースがあるかなどの基準に基づいて適切な隣接車線La2上の位置を目標車線変更位置P2に設定する。
なお、以下では、隣接車線La2においてこの目標車線変更位置P2の前方で隣接して走行する車両を「前方車両β」とも称する。また、隣接車線La2においてこの目標車線変更位置P2の後方で隣接して走行する車両を「後方車両γ」とも称する。
次に、ステップS130において、コントローラ20は、後続車両としての後続二輪車δが接近しているか否かを判定する。具体的に、コントローラ20は、内部センサ2(特に車速センサ)から取得した自車両車速Vα、並びに外部センサ1(特にレーダー1b)により検出される後続二輪車δの位置Pδ及び車速(以下、「二輪車車速Vδ」とも称する)に基づいてTTC(Time to Collision)を演算する。
ここで、TTCとは、自車両車速Vα及び二輪車車速Vδが取得時点のまま維持されたと仮定した場合に、当該取得時点から後続二輪車δが自車両αに追いつくまでの時間を表す。すなわち、本実施形態においてTTCは、自車両αと後続二輪車δの車間距離Dδαを、自車両αに対する後続二輪車δの相対車速Vδ-α(=Vδ-Vα)で除した値として定義される。
そして、コントローラ20は、相対車速Vδ-αが所定の閾値車速Vth1以上であるか、又はTTCが所定の閾値時間Tth1以下であると判定した場合に、後続二輪車δが接近していると判断する。一方で、コントローラ20は、この判定結果が否定的である場合、すなわち、相対車速Vδ-αが閾値車速Vth1未満且つTTCが閾値時間Tth1を越えると判定した場合には、後続二輪車δが接近していないと判断する。
すなわち、本実施形態における相対車速Vδ-αに基づく後続二輪車δの接近判定は、自車両車速Vαが二輪車車速Vδに対して一定以上に大きく、自車両αの車線変更動作中の走行経路Cαに追い越しを試みる後続二輪車δが進入する可能性があるか否かという観点で実行される。したがって、閾値車速Vth1はこのような判断を行うために適宜好適な値に設定される。
さらに、本実施形態では、相対車速Vδ-αに基づく後続二輪車δの接近判定とは別に、TTCに基づく後続二輪車δの接近判定が実行される。すなわち、たとえ相対車速Vδ-αが閾値車速Vth1未満であると判断された場合であっても、車間距離Dδαが一定以上に小さい場合には、比較的短時間の間に後続二輪車δが自車両αに追いついて、上記車線変更動作中の自車両αの走行経路上に進入する可能性が想定される。このため、本実施形態では、後続二輪車δが自車両αに追い付くまでの時間に相当するTTCを判定要素とすることで、自車両αの走行経路Cαへの後続二輪車δの進入可能性をより高精度に判断している。したがって、閾値時間Tth1はこのような接近判定を行うために適宜好適な値に設定される。
また、上記後続二輪車δの接近判定のための判定要素に代えて、又はこれとともに、他の判定要素を採用しても良い。例えば、上記相対車速Vδ-αに基づく後続二輪車δの接近判定に代えて、いわゆるTHW(Time Headway)に基づく後続二輪車δの接近判定を実行しても良い。なお、THWとは、後続二輪車δの車速Vδが取得時点のまま維持されたと仮定した場合に、当該取得時点の自車両αの位置に後続二輪車δが到達するまでの時間を表す。すなわち、THWとは、自車両αと後続二輪車δの車間距離Dδαを二輪車車速Vδで除した値として定義されるパラメータである。
したがって、THWに基づく後続二輪車δの接近判定としては、例えばTHWが所定の閾値時間Tth1以下である場合に後続二輪車δが接近していると判断し、THWが閾値時間Tth1を越える場合に後続二輪車δが接近していないと判断するようにコントローラ20を構成することで可能となる。
なお、加速度等の相対車速Vδ-α、TTC、及びTHWの時間変化の要素を含むパラメータを、後続二輪車δの接近判定に用いても良い。
そして、コントローラ20は、後続二輪車δが接近していないと判断すると通常の車線変更処理を実行する。通常の車線変更処理において、コントローラ20は、適宜、自車両αを通常走行位置P0から隣接車線La2に所定距離近づいた位置において並走させつつ、適切なタイミングで自車両αを目標車線変更位置P2に移動させるようにアクチュエータ4を操作する。
一方、コントローラ20は。上記ステップS130において後続二輪車δが接近していると判断すると、ステップS140の処理に移行する。
ステップS140において、コントローラ20は、方向指示器(いわゆるウィンカー)による方向指示表示を行う。すなわち、本実施形態における方向指示表示は、少なくとも、自車両αに接近している後続二輪車δに対して、自車両αがこれから車線変更動作を実行する意図があることを明確に認識させることを目的としている。
次に、ステップS150において、コントローラ20は、自車両αを通常走行位置P0から隣接車線La2を走行する特定の幅寄せ対象車両により近い幅寄せ位置P1に移動させる幅寄せ処理を実行する。
図3は、幅寄せ処理時における自車両αの走行経路の一例を模式的に示す図である。
先ず、コントローラ20は、隣接車線La2の前方車両βを幅寄せ対象車両として特定する。そして、コントローラ20は、所望の幅寄せ位置P1に応じて、自車両αと前方車両βの車両前後方向における距離の目標値である目標前後距離Lαβ、及び車両幅方向(横方向)における距離の目標値である目標横方向距離Bαβを定める。
この幅寄せ処理は、自車両αに接近している後続二輪車δが、自車両αの車線変更動作中の走行経路Cαに進入しないように、当該後続二輪車δによる追い越しのための走行経路Cδ1を制限する目的で実行されるものである。
すなわち、後続二輪車δが自車両αの追い越しを試みるシーンにおいては、当該後続二輪車δが自車両αと隣接車線La2を走行する前方車両β、又は後方車両γの間のスペース(図3においては自車両αの左側に生じるスペース)をすり抜けるように走行することが想定される。この場合に、前方車両βと後方車両γの間の目標車線変更位置P2に向かって自車両αの車線変更動作が開始されると、当該車線変更動作における自車両αの走行経路Cαに後続二輪車δが進入して車線変更動作が妨げられることが想定される。
このようなシーンを想定して、本実施形態では、上記幅寄せ処理を実行することにより、自車両αの車体を隣接車線La2の前方車両βの車体に近づけるようにして、後続二輪車δがすり抜ける経路を物理的に遮断している。これにより、後続二輪車δに対しては、自車両αと前方車両βの間をすり抜けて追い越しを行うことができないことを認識させることができる。
このため、幅寄せ処理における目標前後距離Lαβ及び目標横方向距離Bαβは、上述の後続二輪車δのすり抜けを抑制する観点から適宜好適な値に定められる。より詳細には、目標横方向距離Bαβは、後続二輪車δによる自車両αと前方車両βの間の通過を抑制し得る程度に相互の車体側面が近づきつつ、自車両αと前方車両βの接触を回避する観点から相互の車体が近づきすぎないように適宜定めることができる。また、目標前後距離Lαβは、自車両αと前方車両βの車間(前後方向における間隔)への後続二輪車δの進入を抑制する観点から設定される。例えば、目標前後距離Lαβは、自車両αの前端(又は後端)と前方車両βの後端(又は前端)の前後方向の距離が平均的な二輪車の車長以下となるように設定される。特に好ましくは、図3を参照すると理解されるように、目標前後距離Lαβは、横方向において少なくとも部分的にオーバーラップするように設定されることが好ましい。より詳細には、目標前後距離Lαβは、自車両αの前端が前方車両βの後端よりも前方であって且つ前方車両βの前端よりも後方に位置するように定められることが好ましい。なお、目標前後距離Lαβを、自車両αの後端が前方車両βの後端よりも前方であって且つ前方車両βの前端よりも後方に位置するように定めても良い。
特に、図4に示すように、目標横方向距離Bαβは、前方車両βの車速(以下、「前方車両車速Vβ」とも称する)が大きいほど大きくなるように設定されることが好ましい。
そして、コントローラ20は、定められた目標前後距離Lαβ及び目標横方向距離Bαβに従って自車両αを通常走行位置P0から幅寄せ位置P1に移動させるようにアクチュエータ4を操作する。
図2に戻り、ステップS160において、コントローラ20は並走処理を実行する。具体的に、コントローラ20は、上記幅寄せ処理で定められた目標前後距離Lαβ及び目標横方向距離Bαβが維持されるように、アクチュエータ4を操作して自車両αの動作を制御する。
図5は、並走処理中における後続二輪車δによる自車両αの追い越し時の走行経路の一例を模式的に示す図である。
図示のように、並走処理中においては、自車両αは通常走行位置P0よりも隣接車線La2寄りの幅寄せ位置P1で走行する状態となるため、自車両αと前方車両βの間のスペースが狭まる一方で、自車両αに対して前方車両βとは反対側に位置する反対側スペースX2が広がることとなる。この広がった反対側スペースX2によって、後続二輪車δが自車両αを追い越すための誘導経路CδInが生じる。このため、自車両αを追い越すことを試みる後続二輪車δは、自車両αに対して隣接車線La2側の走行経路Cδ1に代えて、誘導経路CδInを通過する追い越しを行うように促されることとなる。
図2に戻り、ステップS170において、コントローラ20は並走処理中に、自車両αが後続二輪車δにより追い越されたか、又は後続二輪車δが追い越しを中止しているか否かを判定する。
具体的に、コントローラ20は、外部センサ1(特にレーダー1b)の検出値に基づいて後続二輪車δの走行位置Pδと自車両αの幅寄せ位置P1が一定以上離れたことを確認した場合に自車両αが後続二輪車δにより追い越されたと判断する。なお、走行位置Pδと幅寄せ位置P1が一定以上離れたかどうかの判断基準は、後続二輪車δが現実的に自車両αの車線変更動作における走行経路Cαに進入しないと判断できる程度であるか否かという観点に基づいて定まる。
さらに、コントローラ20は、後続二輪車δが追い越しを中止しているか否かの判定を自車両αに対する後続二輪車δの相対車速Vδ-α又は自車両αと後続二輪車δの車間距離Dδαに基づいて実行する。具体的に、相対車速Vδ-αが所定閾値以下である場合には、後続二輪車δが追い越しを中止して待機していると判断する。また、車間距離Dδαが所定制御周期に亘って維持されている場合には、後続二輪車δが追い越しを中止して待機していると判断する。
すなわち、後続二輪車δが追い越しを中止しているか否かの判定は、上記方向指示表示(ステップS140)などにより後続二輪車δに自車両αの車線変更の意図を表明したことによって、この車線変更の意図を認識した後続二輪車δが自車両αの車線変更の完了まで追い越しを保留するか、又は追い越しを断念したと推認できる程度に相対車速Vδ-αが小さくなったか、或いは車間距離Dδαが維持されているかという観点で実行される。
なお、この後続二輪車δの待機の判定において、相対車速Vδ-αに代えて又はこれとともに後続二輪車δの加速度が所定閾値以下であるかなどの他のパラメータを用いて追い越しの中止を判定しても良い。
図2に戻り、コントローラ20は、ステップS170において自車両αが後続二輪車δにより追い越されたか、又は後続二輪車δが追い越しを中止していると判断すると、ステップS180の処理に移行する。
ステップS180において、コントローラ20は、目標車線変更位置P2を確定する処理を行う。具体的に、コントローラ20は、ステップS120において設定した目標車線変更位置P2へ自車両αを移動させるための車線変更動作の実行が可能か否かを判定し、実行可能と判断した場合に目標車線変更位置P2を目標の車線変更先として確定する。
特に、コントローラ20は、前方車両βと後方車両γの車間が一定の広さ以上に保たれているか、又は前方車両βの減速若しくは後方車両γの加速により当該車間が減少する傾向にあるか否かなどの観点から、目標の車線変更先として目標車線変更位置P2が適切であるか否かを再度判定する。
なお、コントローラ20は、目標車線変更位置P2が目標の車線変更先として適切でないと判断した場合には、他の適切な車線変更先を探索するリルート処理を行い、発見された他の適切な車線変更先を改めて目標車線変更位置P2として確定する。
そして、ステップS190において、コントローラ20は、車線変更動作を実行する。具体的に、コントローラ20は、自車両α、前方車両β、及び後方車両γのそれぞれの位置情報及び車速情報などに基づき、自車両αを目標車線変更位置P2に移動させる観点から適切な走行経路Cαを演算する。そして、コントローラ20は、演算した走行経路Cαに従って自車両αが移動するように、アクチュエータ4を操作する。
図6は、後続二輪車δが自車両αを追い越した後に自車両αが車線変更動作を開始したシーンの一例を説明する図である。
図示のように、後続二輪車δが自車両αを追い越した後(ステップS170のYes判断以降)に自車両αの車線変更動作が開始されることで、後続二輪車δが自車両αの車線変更動作中の走行経路Cαに進入することがより確実に防止される。
なお、上記ステップS170において後続二輪車δが追い越しを中止していると判断された場合においては、後続二輪車δの走行位置Pδは幅寄せ位置P1(より好ましくは目標車線変更位置P2)よりも後方に維持される。したがって、この場合も、後続二輪車δが自車両αの車線変更動作中の走行経路Cαに進入することがより確実に防止される。
以上説明した構成を有する本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態車両運転支援方法では、自車両αを走行車線La1から隣接車線La2に車線変更させる際の該隣接車線La2における目標車線変更位置P2を設定し(図2のステップS120)、目標車線変更位置P2を設定すると、自車両αへの後続車両としての後続二輪車δの接近を判定する(ステップS130)。そして、後続二輪車δが接近していると判断すると、隣接車線La2において目標車線変更位置P2の周辺を走行する他車両の中から幅寄せ対象車両(前方車両β)を特定し、自車両αが少なくとも車幅方向において幅寄せ対象車両に近づくように自車両αを幅寄せ対象車両から所定の前後方向距離(目標前後距離Lαβ)及び車幅方向距離(目標横方向距離Bαβ)の位置に設定される幅寄せ位置P1に移動させる幅寄せ処理を実行する(ステップS150)。さらに、幅寄せ処理の実行後、自車両αを幅寄せ位置P1に維持する並走処理を実行する(ステップS160)。
そして、並走処理中に、後続二輪車δが幅寄せ処理によって広がった反対側スペースX2に構成される誘導経路CδInを介して自車両αを追い越した、又は追い越しを中止したと判断すると(ステップS170のYes)、車線変更動作を開始する(ステップS190)。
これにより、自車両αの車線変更を実行するシーンにおいて、後続二輪車δが自車両αに接近している際に、目標車線変更位置P2の周辺を走行する幅寄せ対象車両に近づくように移動することとなる。このため、自車両α及び幅寄せ対象車両のそれぞれの車体側面の間の距離を小さくすることができ、追い越しを試みる後続二輪車δのすり抜けのための経路を制限することができる。したがって、自車両αの車線変更動作中の走行経路Cαに後続二輪車δが進入して当該車線変更動作が妨げられることが抑制される。
さらに、追い越しを試みる後続二輪車δに対しては、上記幅寄せ処理による自車両αの隣接車線La2側への移動動作を示すことで、自車両αに対する隣接車線La2側を走行して追い越しを行うことが好ましくないという認識を与えることができる。その一方で、自車両αを隣接車線La2側に移動させる幅寄せ処理によって走行車線La1上の反対側スペースX2(自車両αに対して隣接車線La2と反対側のスペース)を広げることができる。このため、当該反対側スペースX2に比較的広い誘導経路CδInが形成されることとなる。結果として、追い越しを試みる後続二輪車δに対しては、自車両αに対する隣接車線La2側を走行する追い越しに代えて上記誘導経路CδInを通る追い越しを選択するように促すことができる。
また、本実施形態の車両運転支援方法では、後続二輪車δが誘導経路CδInを介して自車両αを追い越したか、自車両αの追い越しを中止した場合に車線変更動作を開始するので、追い越しを試みる後続二輪車δが自車両αの車線変更動作中の走行経路Cαに進入することをより確実に防止することができる。
さらに、本実施形態では、目標車線変更位置P2の前方で隣接して走行する前方車両βを上記幅寄せ対象車両に設定する。
これにより、自車両αの車線変更動作中においては、自車両αは前方車両βに略並列の幅寄せ位置P1から目標車線変更位置P2に移動することとなる。このため、自車両αの車線変更動作の一部始終が後方車両γの前方で行われることとなる。したがって、後方車両γを幅寄せ対象車両とした場合において後方車両γの略並列の位置から目標車線変更位置P2に移動する場合と比べ、当該後方車両γに対して自車両αが目標車線変更位置P2に移動しようとする意図を明確に認識させることができる。
また、本実施形態では、幅寄せ処理の実行以前に、自車両αの車線変更動作の意図を自車両αに搭載された方向指示器によって表示する(ステップS140)。
これにより、これから幅寄せ処理を実行して自車両αが隣接車線La2側に移動する意図を後続二輪車δにより明確に認識させることができる。このため、自車両αの追い越しを試みる後続二輪車δに対しては、幅寄せ処理及び並走処理の実行以前に自車両αに対する隣接車線La2側を走行する追い越しが好ましくない可能性があるという認識を与えることができる。
さらに、本実施形態によれば、上記車両運転支援方法を実行する車両運転支援システム10が提供される。
この車両運転支援システム10は、自車両αを走行車線La1から隣接車線La2に移動させる車線変更動作を実行するコントローラ20を有する。
そして、コントローラ20は、隣接車線La2における目標車線変更位置P2を設定する目標車線変更位置設定部(図2のステップS120)と、目標車線変更位置P2が設定されると自車両αへの後続車両としての後続二輪車δの接近を判定する後続車両接近判定部(ステップS130)と、して機能する。また、コントローラ20は、後続二輪車δが接近していると判断されると、隣接車線La2において目標車線変更位置P2の周辺を走行する他車両の中から幅寄せ対象車両(前方車両β)を特定する幅寄せ対象車両特定部と、自車両αが幅寄せ対象車両に少なくとも車幅方向において近づくように自車両αを幅寄せ対象車両から所定の前後方向距離(目標前後距離Lαβ)及び車幅方向距離(目標横方向距離Bαβ)の位置に設定される幅寄せ位置P1に移動させる幅寄せ処理を実行する幅寄せ処理部(ステップS150)として機能する。さらに、コントローラ20は、幅寄せ処理の実行後、自車両αを幅寄せ位置P1に維持する並走処理を実行する並走処理部(ステップS160)として機能する。
そして、コントローラ20は、並走処理中に、後続二輪車δが幅寄せ処理によって広がった反対側スペースX2に構成される誘導経路CδInを介して自車両αを追い越した、又は追い越しを中止したと判断すると(ステップS170のYes)、車線変更動作を開始する車線変更動作開始部(ステップS190)として機能する。
これにより、上記車両運転支援方法を実行するための好適なシステム構成が実現される。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7Aは、本実施形態の車両運転支援方法を説明するフローチャートである。なお、図7Aにおいては、図面簡略化のため、第1実施形態と同様に実行されるステップS100、ステップS110、及びステップS120の各ブロックの図示を省略している。
図7Aに示すように、本実施形態の車両運転支援方法では、コントローラ20は、ステップS130において後続二輪車δが接近していると判断すると、ステップS200の目標車線変更位置選択処理を経た上でステップS140以降の処理を実行する。以下では、この目標車線変更位置選択処理の詳細を説明する。
図7Bは、目標車線変更位置選択処理の詳細を説明するフローチャートである。
図示のように、ステップS210において、コントローラ20は、後続二輪車δの非意図的追い越し経路Cδ2が生成されたか否かを判定する。ここで、非意図的追い越し経路Cδ2とは、上記誘導経路CδIn以外に、当該後続二輪車δが自車両αを追い越すために通過可能で、自車両αが幅寄せ位置P1からステップS120で設定された目標車線変更位置P2に移動する走行経路Cαと交わる経路を意味する。
そして、コントローラ20は、非意図的追い越し経路Cδ2が生成されたと判断すると、ステップS120で設定した目標車線変更位置P2を補正目標車線変更位置P´2に変更する(ステップS220)。
一方、コントローラ20は、非意図的追い越し経路Cδ2が生成されていないと判断すると、ステップS120で設定した目標車線変更位置P2を維持する(ステップS230)。そして、コントローラ20は、ステップS220又はステップS230の処理を経て、図7Aに示すステップS140以降の各処理を実行する。
特に、本実施形態においてコントローラ20は、非意図的追い越し経路Cδ2が生成されることに起因して幅寄せ対象車両として後方車両γに設定された場合、幅寄せ処理においては、自車両αを第1実施形態における幅寄せ位置P1に代え、後方車両γに近づく位置である幅寄せ位置P1´に移動させる。
本実施形態における目標車線変更位置選択処理の技術的意義及びその実行シーンについてより説明する。
先ず、本実施形態の車両運転支援方法においても、幅寄せ処理(ステップS150)及び並走処理(ステップS160)によって、自車両αと前方車両βとの間の空間を狭めつつ自車両αに対して横方向において隣接車線La2とは反対側の反対側スペースX2を広げることで誘導経路CδInを構成する。
したがって、本実施形態においても、基本的には、第1実施形態と同様に、後続二輪車δが走行経路Cδ1を制限して自車両αと前方車両βとの間のすり抜けることを制限する一方で、追い越しを試みる後続二輪車δを当該誘導経路CδInに誘導する効果が得られる。
しかしながら、自車両αの走行時の周辺状況(車線数若しくは路肩の大きさなどの道路の態様、他車両の走行量、又は障害物の有無など)によっては、意図せず後続二輪車δが通過可能なスペースが生じて、誘導経路CδIn以外に当該後続二輪車δが自車両αの追い越しのために選択可能であって、且つ自車両αの車線変更動作における走行経路Cαと交錯する追い越し経路(すなわち非意図的追い越し経路Cδ2)が生じることがある。このような非意図的追い越し経路Cδ2が生じると、自車両αと前方車両βの間の走行経路Cδ1を制限したとしても、後続二輪車δが誘導経路CδInではなく非意図的追い越し経路Cδ2を通って自車両αの追い越しを試みることが想定される。
特に、上述した誘導経路CδIn以外の追い越し時に通過可能な経路が車線変更中の自車両αの走行経路の一部と重なる場合(すなわち、非意図的追い越し経路Cδ2である場合)、後続二輪車δが自車両αの追い越し時の経路として当該非意図的追い越し経路Cδ2を選択すると、車線変更中の自車両αと当該後続二輪車δの接触の可能性が懸念される。
図8Aは、非意図的追い越し経路Cδ2が生成されるシーンの一例を説明する図である。なお、図8Aにおいては、隣接車線La2に走行車線La1とは反対側で隣接する車線La3が存在するシーンを想定している。
図示のように、上記幅寄せ処理において自車両αが前方車両βに近づいた状態であって、車線La3において自車両α又は前方車両βに対する略並列の位置に車両若しくは任意の障害物が存在しない場合、当該位置には少なくとも後続二輪車δの通過を許容するスペースX3が生じ得る。さらに、上記幅寄せ処理に従い自車両αが前方車両βに並走している状態においては、前方車両βと後方車両γの車間、スペースX3、及び隣接車線La2における前方車両βの前方の空間により非意図的追い越し経路Cδ2が生成されることとなる。
このため、図8Aの一点鎖線で示すように、後続二輪車δは、誘導経路CδInではなく非意図的追い越し経路Cδ2を通って自車両αの追い越しを試みる可能性がある。そして、図8Aから理解されるように、この非意図的追い越し経路Cδ2は、自車両αの目標車線変更位置P2への車線変更動作における走行経路Cαと交錯しているところ、当該車線変更動作が後続二輪車δの進入により妨げられる可能性がある。
このような非意図的追い越し経路Cδ2が生じたシーンにおいて、本実施形態では、目標車線変更位置P2を補正目標車線変更位置P´2に変更する。以下、図8Aに示す非意図的追い越し経路Cδ2が生じたか否かの判定(ステップS210)及びこれが生じた場合の補正目標車線変更位置P´2の設定(ステップS220)に関するコントローラ20による処理の詳細を説明する。
先ず、コントローラ20は、上記ステップS210における非意図的追い越し経路Cδ2が生成されたか否かの判定の具体的な態様として、車線La3におけるスペースX3が存在するか否かの判定を行う。より詳細には、コントローラ20は、外部センサ1(特にレーダー1b)の検出値又はHDマップから取得可能な情報に基づいて、スペースX3が存在するか否かを判定する。
そして、コントローラ20は、上記ステップS220の処理の具体的態様として、目標車線変更位置P2を前方車両βと当該前方車両βのさらに前方に隣接する前方車両β´の間の補正目標車線変更位置P´2に変更する。
図8Bは、目標車線変更位置P2を補正目標車線変更位置P´2に変更したことによる効果を説明する図である。
図示のように、自車両αが前方車両βに対して幅寄せ位置P´1において並走し、車線変更動作が開始されると、幅寄せ位置P´1から補正目標車線変更位置P´2に向かって移動することとなる。このため、後続二輪車δに対し、自車両αの追い越しのために非意図的追い越し経路Cδ2を選択すると車線変更動作完了後に補正目標車線変更位置P´2に移動して来る自車両αにより、自己の走行ルートが制限される可能性があるという認識を与えることができる。このため、後続二輪車δに対しては、自車両αの追い越しのための経路として非意図的追い越し経路Cδ2ではなく誘導経路CδInを選択することを促すことができる。
なお、この場合、自車両αが目標車線変更位置P2ではなく補正目標車線変更位置P´2に向かって車線変更する意図であることをより明確に後続二輪車δに認識させるために、自車両αの幅寄せ位置P´1を、第1実施形態で説明した幅寄せ位置P1よりも前方にオフセットさせることが好ましい。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両運転支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両運転支援方法では、目標車線変更位置P2を挟んで走行車線La1に対して反対側に該目標車線変更位置P2と並行して後続二輪車δが通過可能なスペースX3があるか否かをする(ステップS210)。そして、スペースX3があると判断した場合には、目標車線変更位置P2を前方車両βの前方位置である補正目標車線変更位置P´2に変更する(ステップS210のYes及びステップS220)。
これにより、上述のようなスペースX3が存在することで後続二輪車δが自車両αの追い越しために通過可能な非意図的追い越し経路Cδ2が生じる得る状況であっても、自車両αの車線変更先を前方車両βの前方の補正目標車線変更位置P´2とすることによって、非意図的追い越し経路Cδ2上に自車両αを先回りさせ、後続二輪車δによる当該非意図的追い越し経路Cδ2を介した自車両αの追い越しを制限することができる。結果として、自車両αの追い越しを意図する後続二輪車δを誘導経路CδInに誘導する効果を高めることができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9は、本実施形態の車両運転支援方法を説明するフローチャートである。なお、図9においては、図面簡略化のため、第1実施形態と同様に実行されるステップS100、ステップS110、及びステップS120の各ブロックの図示を省略している。
図9に示すように、本実施形態の車両運転支援方法では、コントローラ20は、ステップS130において後続二輪車δが接近していると判断すると、ステップS300の幅寄せ位置補正処理を経た上でステップS140以降の処理を実行する。
特に、幅寄せ位置補正処理において、コントローラ20は、幅寄せ処理(ステップS150)を開始する前の誘導経路CδInが大きいほど、幅寄せ位置P1の前方車両βからの距離である目標横方向距離Bαβが大きくなるように補正する。以下では便宜上、補正後の目標横方向距離Bαβを「補正後目標横方向距離Bαβ_C」と表す。
以下では、本実施形態における幅寄せ位置補正処理の技術的意義について説明する。
本実施形態の車両運転支援方法においても、基本的には第1実施形態と同様に、幅寄せ処理を実行することで自車両αを幅寄せ対象車両としての前方車両βに近づけることで誘導経路CδInを広げ、当該誘導経路CδInに自車両αの追い越しを意図する後続二輪車δを誘導する効果を高めることが意図される。
一方で、自車両αの走行時の周辺状況によっては、上記幅寄せ処理に伴って広がる前の誘導経路CδInであっても、後続二輪車δが通過するために十分な横方向の長さを有する場合、或いは自車両αを前方車両βに若干近づけることで十分な横方向の長さとなる場合が想定される。
このような場合には、自車両αと前方車両βの間の目標距離である目標横方向距離Bαβを比較的大きく設定すれば、十分な広さ誘導経路CδInを確保して当該誘導経路CδInに後続二輪車δを誘導する機能を維持しつつも、幅寄せ処理によって自車両αが前方車両βに近づき過ぎることをより確実に回避することができる。
図10は、補正後目標横方向距離Bαβ_Cに基づいて幅寄せ処理が実行されたシーンの一例を説明するための図である。なお、図10においては、走行車線La1に隣接車線La2とは反対側で隣接する車線La4が存在するシーンを想定している。
そして、図示のように、車線La4において自車両αに対する略並列の位置に車両若しくは任意の障害物が存在せず反対側スペースX2は十分に広い場合には、自車両αの前方車両βへの幅寄量を比較して小さくしても後続二輪車δが通過する観点から十分な広さの誘導経路CδInが確保されることとなる。このため、目標横方向距離Bαβを増大補正した補正後目標横方向距離Bαβ_Cが設定されることで、後続二輪車δが通過する観点から十分な広さ誘導経路CδInを確保しつつ、幅寄せ処理後の並走処理中において自車両αを前方車両βに対して比較的離れた位置で並走させることができる。
このため、自車両αの追い越しを意図する後続二輪車δを十分な広さが確保されている誘導経路CδInに誘導する機能を発揮させつつ、並走処理中の自車両αと前方車両βの間の離間距離をより大きくすることができる。
なお、誘導経路CδInの広さと目標横方向距離Bαβの増大補正量の関係は、自車両αの追い越しを意図する後続二輪車δを誘導経路CδInに誘導する観点と、幅寄せ処理によって自車両αが前方車両βに近づき過ぎないようにする観点と、のバランスを考慮して適宜設定することができる。
また、本実施形態では、幅寄せ対象車両として前方車両βが選択されることを前提とした幅寄せ位置補正処理について説明した。しかしながら、幅寄せ対象車両として後方車両γが選択される場合(第2実施形態の構成)においても、本実施形態で説明した幅寄せ位置補正処理を若干の修正を加えつつ同様に適用することができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両運転支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両運転支援方法は、自車両αの走行時の周辺状況(車線数若しくは路肩の大きさなどの道路の態様、他車両の走行量、又は障害物の有無など)に応じて幅寄せ位置P1の幅寄せ対象車両からの距離(目標横方向距離Bαβ)を補正する幅寄せ位置補正処理をさらに含む(図9のステップS300)。そして、幅寄せ位置補正処理では、目標横方向距離Bαβを、幅寄せ処理の実行前の反対側スペースX2が広いほど大きくなるように補正する。
これにより、自車両αの追い越しを意図する後続二輪車δの追い越し時の走行経路を誘導経路CδInに誘導する機能を発揮させつつ、並走処理中の自車両αと前方車両βの間の離間距離をより大きくすることができる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について説明する。なお、上記第1~第3実施形態のいずれかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図11は、本実施形態の車両運転支援方法を説明するフローチャートである。なお、図11においては、図面簡略化のため、第1実施形態と同様に実行されるステップS100、ステップS110、及びステップS120の各ブロックの図示を省略している。
図11に示すように、本実施形態の車両運転支援方法では、コントローラ20は、ステップS130において後続二輪車δが接近していると判断すると、ステップS400の幅寄せ実行時間設定処理を経た上でステップS140以降の処理を実行する。
幅寄せ実行時間設定処理において、コントローラ20は、後続二輪車δの接近状況に応じて自車両αの幅寄せ処理(ステップS150)の実行時間を定める。より詳細には、コントローラ20は、後続二輪車δが自車両αに到達するまでの時間が短いほど、すなわちTTCが小さいほど幅寄せ処理の実行時間が短くなるように自車両αのアクチュエータ4を操作する。
このように、後続二輪車δが自車両αに追い付くまでの時間に応じて幅寄せ処理の実行時間を調節することで、幅寄せ処理が完了せず後続二輪車δによるすり抜け経路を十分に制限できていないにも関らず、当該後続二輪車δが自車両αに追い付くという状況を好適に回避することができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両運転支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両運転支援方法は、自車両αの走行時の周辺状況(車線数若しくは路肩の大きさなどの道路の態様、他車両の走行量、又は障害物の有無など)に応じて幅寄せ処理の実行時間を設定する幅寄せ実行時間設定処理をさらに含む(図11のステップS400)。そして、幅寄せ実行時間設定処理では、後続二輪車δが自車両αに到達するまでの時間が短いほど幅寄せ処理の実行時間を短くする。
これにより、幅寄せ処理が完了せず後続二輪車δによるすり抜け経路を十分に制限できていないにも関らず、当該後続二輪車δが自車両αに追い付くという状況を好適に回避することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態及び各変形例は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記各実施形態では、方向指示表示(ステップS140)を後続車両の接近判定(ステップS130)と幅寄せ処理(ステップS150)の間に実行する例を説明した。しかしながら、方向指示表示は後続車両の接近判定の前に実行しても良いし、並走処理(ステップS160)の実行中に実行しても良い。一方で、自車両αが隣接車線La2に向かって横方向に移動する意図を、後続二輪車δを含む他車両に事前に認識させる観点から、上記各実施形態で説明したタイミングで方向指示表示を実行することが好ましい。
上記各実施形態においては、幅寄せ処理において自車両αを目標車線変更位置P2に対して前方に隣接して走行する前方車両βに近づける例を説明した。しかしながら、これに代えて、幅寄せ処理において自車両αを後方車両γに近づけるようにして、後続二輪車δのすり抜け経路を制限する構成としても良い。
また、上記各実施形態では、自車両αに接近しているか否かの判定対象となる後続車両が二輪車である例について説明した。しかしながら、当該判定対象となる後続車両は二輪車に限られない。特に、二輪車以外の車両であっても、自車両αと隣接車線La2の車両の間に生じる空間をすり抜けるように追い越しを実行することが現実的に可能となる程度の車幅及び車長を有する車両であるならば、当該追い越しを試み車線変更動作中の自車両αの走行経路に侵入する可能性が想定される。したがって、このようなタイプの車両を接近対象車両とすることで、上記各実施形態において説明した作用効果を同様に奏することとなる。
なお、上記各実施形態の後続車両の接近判定において、自車両αと隣接車線La2の車両の間に生じる空間をすり抜ける追い越しを実行することが現実的に可能となる車両と、そうでない車両と、を判別する処理を行っても良い。例えば、コントローラ20が、外部センサ1により取得される後続車両の情報(車載カメラ1aの画像又はレーダー1bによる検出値)から、当該後続車両の車幅及び車長を特定して当該後続車両が上記すり抜けによる追い越しが現実的に可能であるタイプの車両であるか否かを判定し、当該判定結果が肯定的である場合にのみステップS130の判定が肯定的と判断する構成を採用しても良い。
さらに、上記各実施形態における車両運転支援方法におけるコントローラ20は、一台のコンピュータで構成しても良いし、当該車両運転支援方法の各工程を分散処理する複数台のコンピュータで構成しても良い。さらに、上記各実施形態では、コントローラ20の機能を自車両αに搭載されるECUで実現する例を説明した。しかしながら、コントローラ20は、自車両αに搭載されるECU以外の任意の制御装置で実現することができる。さらに、上記各実施形態における車両運転支援方法の各工程を実行するコントローラ20の機能の少なくとも一部を、自車両α内の制御装置と通信する外部の任意のコンピュータで実行しても良い。
また、上記各実施形態は、矛盾を生じない範囲の任意の組み合わせで相互に組み合わせることが可能である。
なお、上記各実施形態で説明した車両運転支援方法をコンピュータであるコントローラ20に実行させるための車両走行制御プログラム、及び当該車両走行制御プログラムを記憶した記憶媒体も、本出願における出願時の明細書等に記載された事項の範囲内に含まれる。