JP7269754B2 - 貴金属の回収方法 - Google Patents
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Description
一方、石油化学系の触媒としてアルミナ担体にPtを担持させた、低オクタン価ガソリン成分を高オクタン価ガソリン成分に改質する触媒も多く利用されている。
本発明者らが当該不具合について検討したところ、被処理物(排気ガス浄化触媒等)に含まれるニッケル(Ni)が還元溶錬工程の電気炉中に高い含有率で存在することが、酸化溶錬工程の酸化炉における鋳付きの発生原因となっていることに想到した。
それにも拘わらず、市場では、排気ガス浄化触媒の触媒成分や担体にNiを用いることが提案されている(特許文献3、4参照)。この結果、Niを含む被処理物が発生しており、今後の発生量も増えることが予想された。
PGMを含有する被処理物と、Cuおよび/またはCu2Oと、フラックスと、還元剤とを電気炉に入れて加熱し、これらを溶融して溶融スラグ層と電気炉メタル層とを形成した後に前記溶融スラグを分離し、PGMを含有する電気炉メタルを抽出して得る還元溶錬工程と、
前記電気炉メタルを酸化炉に移して酸化溶融し、Cu2Oスラグ層とPGM合金層とを形成した後に、Cu2Oスラグを分離し、PGMが濃縮されたPGM合金を得る酸化溶錬工程と、を行うPGMの回収方法であって、
前記還元溶錬工程における、被処理物とCuおよび/またはCu2Oとに含まれるNiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.05以上であるとき、前記抽出される電気炉メタルにおけるNiの含有率が10質量%以下となるように、前記還元溶錬工程で添加する還元剤量を調整することを特徴とする貴金属の回収方法である。
第2の発明は、
第1の発明に記載の貴金属の回収方法であって、さらに、前記酸化溶錬工程で抽出される前記PGM合金に含まれるFeの含有率を2質量%以下に制御することを特徴とする貴金属の回収方法である。
第3の発明は、
第1または第2の発明に記載の貴金属の回収方法であって、前記酸化溶錬工程で分離されたCu2Oスラグを、前記還元溶錬工程へ繰り返すことを特徴とする貴金属の回収方法である。
第4の発明は、
第1から第3の発明のいずれかに記載の貴金属の回収方法であって、さらに、前記酸化溶錬工程で酸化物を添加することを特徴とする貴金属の回収方法である。
図1は、PGMの回収工程の一例を示すフロー図である。
図1に示すように、PGMを含有する被処理物(2)である例えばセラミックス製自動車触媒の粉砕物と、抽出剤(3)であるCuおよび/またはCu2Oと、フラックス(1)であるCaOおよび/またはSiO2と、そして還元剤(4)であるC(炭素)含有材料とを、電気炉(5)内に装填する。そして電気炉(5)内の電極に通電し、前記装填物を加熱し溶融させる。
従来の技術に係る還元溶錬工程においては、高い還元力を保つことにより、溶融スラグ(7)に混入するPGM量を低減させる目的で、還元剤(4)を十分に加え還元を行う方法が採られていた。
しかしながら、被処理物(2)と抽出剤(3)とに含まれるNiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.05以上であった場合に、還元剤(4)を十分に添加すると、電気炉メタル(6)におけるNiの含有率が10質量%超となることが多かった。そして、電気炉メタル(6)におけるNiの含有率が10質量%を超えていると、後工程である酸化溶錬工程の酸化炉(9)へ投入される電気炉メタル(6)中のNi含有率が高くなる。この結果、酸化溶錬工程の酸化炉(9)に多量の鋳付きが発生し、操業に悪影響を及ぼしていたものである。
本発明に係る還元溶錬工程においては、被処理物(2)と、抽出剤(3)であるCuおよび/またはCu2Oとに含まれる、NiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が所定量(例えば、0.05)以上であるとき、還元剤(4)であるC(炭素)含有材料の添加量を削減して還元力を緩和させるものである。そして、当該還元力の緩和により、電気炉メタル(6)中のNi含有率を10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下に制御するものである。
本発明に係る酸化溶錬工程について、以下《1》従来の技術に係る酸化溶錬工程、《2》本発明に係る酸化溶錬工程、の順でさらに説明する。
還元溶錬工程にて得られたPGMが濃縮した電気炉メタル(6)を電気炉(5)から抽出し、溶融状態のまま酸化炉(9)に移し替え、さらに、空気および/または酸素を吹き込んで電気炉メタル(6)を酸化する酸化処理を実施する。すると電気炉メタル(6)は、酸化物主体のCu2Oスラグ(11)層と、PGMがさらに濃縮したPGM合金(10)層とに層分離する。
即ち、本発明において「PGM合金(10)」とは、酸化炉(9)において、電気炉メタル(6)へ空気および/または酸素を吹き込んで酸化処理した後に、生成したCu2Oスラグ(11)を抜き出して得られる、CuとPGMとを主成分として含む合金物質を示す。
本発明に係る酸化溶錬工程について、以下〈i〉PGM合金中におけるFeの含有率制御、〈ii〉Cu2Oスラグの繰り返し、〈iii〉酸化物の添加、の順でさらに説明する。
本発明に係る前記酸化溶錬工程においては、生成分離されるPGM合金(10)中におけるFeの含有率を好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下とする。
これは、PGM合金(10)中におけるFeの含有率が2質量%を超えると、酸化炉(9)におけるPGM合金(10)の抽出性に問題が出易くなり、PGMの回収率に悪影響が出ることがあるからである。
即ち、還元溶錬工程にて溶融スラグ(7)に含有されていたFeOの一部がFeに還元される。このFeは融点が高いため容易には再溶融せず、電気炉(5)の炉底近くに半溶融状態で存在してしまう。そして、FeはCuよりもPGMを溶かし込む能力が高い。この結果、電気炉メタル(6)と共に酸化炉(9)へ移送されたFeは、当該酸化炉(9)から排出されない炉鉄となる。そして、当該炉鉄がPGMの一部を吸収してしまう為である、と推察している。
具体的には、フラックス(1)や被処理物(2)等としてFe含有率の少ないものを用いる。さらに、酸化炉(9)に移送する電気炉メタル(6)のFe含有率を監視して、酸化炉(9)中におけるFe含有率が2質量%以下となるよう、電気炉メタル(6)の選択を行ったり、混合比等を調整したりする方策を採ることができる。
本発明に係る酸化溶錬工程におけるCu2Oスラグ(11)とPGM合金(10)との間のPt、Rh、Paの分配比は、還元溶錬工程における溶融スラグ(7)と電気炉メタル(6)間の分配比の値に比べ100倍程度大きな値を示す。この為、電気炉メタル(6)中のPGMを濃縮する過程で発生するCu2Oスラグ(11)中へ、相当量のPGMが分配されてしまう。この結果、PGM合金(10)としてのPGMの回収率は抑制される。
酸化溶錬工程の際に、後述する酸化物(8)を添加し、前記溶融した電気炉メタル(6)を撹拌した後、静置することが好ましい。これによりCu2Oスラグ(11)へのPGMの分配を低減することができる。
以上説明した本発明に係るPGMの回収方法について、一例を挙げながら具体的に説明する。
セラミックス製自動車触媒等のPGMを含有する被処理物(2)と、抽出剤(3)であるCuおよび/またはCu2Oと、フラックス(1)であるCaOおよび/またはSiO2と、そして還元剤(4)であるSiC等のC(炭素)含有材料とを、電気炉(5)に装填して加熱する。このとき、電気炉(5)の溶融物に含まれるNi含有率が10質量%を超えている場合は、電気炉(5)内へ投入する還元剤(4)の添加量を前回添加量より削減することにより還元力を下げ、電気炉(5)の溶融物に含まれるNi含有率を10質量%以下となるように添加する還元剤量の調整を行う。
このとき、電気炉メタル(6)中のFe含有率を2質量%以下とすることが好ましい。
酸化炉(9)において、溶融した電気炉メタル(6)を酸化溶錬する際、上述した酸化物(8)としてSiO2、CaO、Na2Oから選択される1種以上を添加できる。電気炉メタル(6)へSiO2等の酸化物(8)を添加する際は、添加量の全量を一挙に添加するのではなく、少量ずつ添加することが好ましい。これは電気炉メタル(6)へ添加する酸化物(8)の全量を一挙に添加すると、溶融している電気炉メタル(6)の溶体温度が低下し、添加された酸化物(8)が溶解できなくなる為である。従って、酸化物(8)の添加時間は、溶融している電気炉メタル(6)量にもよるが、20分間以上かけて添加することが好ましい。
還元溶錬工程において、電気炉中へ、フラックスとしてCaOを5000kg、SiO2を100kg、被処理物としてセラミック製自動車触媒の粉砕物を8500kg、還元剤としてSiCを500kg、抽出剤として前回工程から繰り返されたCu2Oスラグを、被処理物に対して質量比で0.65倍量の5500kg投入した。
これは、前記粉砕物とCu2Oスラグの中には、Niが900kg含まれており、NiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.22であったことから、還元剤であるSiCの投入量を、後述する比較例1における600kgよりも100kg削減して、500kgとしたものである。
上述の還元溶錬工程で生成した溶融スラグであるCaO-SiO2-Al2O3スラグを、電気炉から抽出し排出した。溶融スラグ温度は1455℃であった。そして、電気炉メタルを電気炉から抽出し、酸化炉へ投入した。このとき、電気炉メタルに含まれるNiは250kgで5質量%であり、(Ni/Cu)の値は0.059であった。
エアレーション終了後、溶融した溶体を静置し生成したPGM合金を回収した。このとき、PGM合金に含まれるNi含有量は3kgで含有率は1質量%、Feも含有量は3kgで含有率は1質量%であった。
一方、生成したCuO2スラグは還元溶錬工程へ繰り返し、再び、抽出剤として使用した。
還元溶錬工程において、電気炉中へ、フラックスとしてCaOを5000kg、SiO2を100kg、被処理物としてセラミック製自動車触媒の粉砕物を8500kg、還元剤としてSiCを600kg、抽出剤として前回工程から繰り返されたCu2Oスラグを、被処理物に対して質量比で0.65倍量の5500kg投入した。尚、前記粉砕物とCu2Oスラグの中には、Niが900kg含まれており、NiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.22であった。
その後、当該電気炉メタルを用いた酸化溶錬工程において酸化炉内で鋳付きが発生し、Cu2OスラグとPGM合金との分離抽出ができず、操業を停止することとなった。
以上、説明した実施例および比較例の結果より、本発明の方法によれば、PGMを含有する被処理物から高効率にPGM合金を回収できることが判明した。
(2)被処理物
(3)抽出剤
(4)還元剤
(5)電気炉
(6)電気炉メタル
(7)溶融スラグ
(8)酸化物
(9)酸化炉
(10)Cu2Oスラグ
Claims (4)
- PGMを含有する被処理物と、Cuおよび/またはCu2Oと、フラックスと、還元剤とを電気炉に入れて加熱し、これらを溶融して溶融スラグ層と電気炉メタル層とを形成した後に前記溶融スラグを分離し、PGMを含有する電気炉メタルを抽出して得る還元溶錬工程と、
前記電気炉メタルを酸化炉に移して酸化溶融し、Cu2Oスラグ層とPGM合金層とを形成した後に、Cu2Oスラグを分離し、PGMが濃縮されたPGM合金を得る酸化溶錬工程と、を行うPGMの回収方法であって、
前記還元溶錬工程における、被処理物とCuおよび/またはCu2Oとに含まれるNiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.05以上であり、前記抽出される電気炉メタルにおけるNiの含有率が10質量%以下となるように、前記還元溶錬工程で添加する還元剤量を調整することを特徴とする貴金属の回収方法。 - 請求項1に記載の貴金属の回収方法であって、さらに、前記酸化溶錬工程で抽出される前記PGM合金に含まれるFeの含有率を2質量%以下に制御することを特徴とする貴金属の回収方法。
- 請求項1または2に記載の貴金属の回収方法であって、前記酸化溶錬工程で分離されたCu2Oスラグを、前記還元溶錬工程へ繰り返すことを特徴とする貴金属の回収方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の貴金属の回収方法であって、さらに、前記酸化溶錬工程で酸化物を添加することを特徴とする貴金属の回収方法。
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