JP7269754B2 - 貴金属の回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金(Au)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)および白金(Pt)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属(本発明において「貴金属」または「PGM」と記載する場合がある。)を担持するセラミック系の廃触媒等を被処理物として、貴金属を回収するための乾式処理方法に関するものである。
従来から、優れた排気ガス浄化用触媒として、コージェライトやアルミナまたはシリカ等からなるセラミック系のハニカム状やペレット状等の担体に、Pt-Pd-Rhの貴金属を担持させた触媒が知られている。ここでコージェライトとは、アルミニウム、珪素及びマグネシウムを主体とする複合酸化物であり、例えば、質量%で、SiO:46.16%、Al:31.51%、MgO:10.53%等の組成を有するものである。
一方、石油化学系の触媒としてアルミナ担体にPtを担持させた、低オクタン価ガソリン成分を高オクタン価ガソリン成分に改質する触媒も多く利用されている。
これらの貴金属を担持、含有した触媒は、使用後に廃触媒として集められ、乾式処理方法により貴金属を回収することが知られている(特許文献1参照)。当該乾式処理方法は、還元溶錬工程の電気炉において溶融金属銅に貴金属を吸収させ、その後に、酸化溶錬工程の酸化炉において当該溶融金属銅の一部を酸化銅として分離する操作を繰り返して、貴金属を濃縮させる処理方法である。当該乾式処理方法は、廃触媒を多量の酸を用いて処理する湿式処理方法に比べて、高い回収率と短い処理時間とにより、経済的に貴金属を回収することができる。
一方、この廃触媒からの貴金属回収方法に係る乾式処理の溶錬工程においては、炉内で還元された鉄成分が金属銅側に吸収され、貴金属を含む金属銅の融点を上昇させ、溶融金属銅の流動性を悪化させていた。このため、出願人は、金属溶銅中の鉄(Fe)濃度を低下させる方法を開示している(特許文献2参照)。
特開平4-317423号公報 特開2004-270008号公報 特開2016-19955号公報 特開2011-230999号公報
しかしながら本発明者らは、上述した被処理物(排気ガス浄化触媒等)から貴金属を乾式処理方法で回収する際、酸化溶錬工程の酸化炉に鋳付きなどの不具合が発生することがあることを知見した。
本発明者らが当該不具合について検討したところ、被処理物(排気ガス浄化触媒等)に含まれるニッケル(Ni)が還元溶錬工程の電気炉中に高い含有率で存在することが、酸化溶錬工程の酸化炉における鋳付きの発生原因となっていることに想到した。
それにも拘わらず、市場では、排気ガス浄化触媒の触媒成分や担体にNiを用いることが提案されている(特許文献3、4参照)。この結果、Niを含む被処理物が発生しており、今後の発生量も増えることが予想された。
本発明は上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、乾式処理方法を用いて、被処理物(排気ガス浄化触媒等)からPGMを回収する際、還元溶錬工程の電気炉から得られる溶融物(電気炉メタル)中に含まれるNi含有率が所定量を超えているとき、当該Ni含有率を低減する方法を提供することである。
上述の課題を解決する為、本発明者らは研究を行った結果、還元溶錬工程において電気炉へ添加する還元剤量を削減し還元力を緩和させることにより、得られる電気炉メタル中のNi含有率を低減できることに想到して本発明を完成した。
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
PGMを含有する被処理物と、Cuおよび/またはCuOと、フラックスと、還元剤とを電気炉に入れて加熱し、これらを溶融して溶融スラグ層と電気炉メタル層とを形成した後に前記溶融スラグを分離し、PGMを含有する電気炉メタルを抽出して得る還元溶錬工程と、
前記電気炉メタルを酸化炉に移して酸化溶融し、CuOスラグ層とPGM合金層とを形成した後に、CuOスラグを分離し、PGMが濃縮されたPGM合金を得る酸化溶錬工程と、を行うPGMの回収方法であって、
前記還元溶錬工程における、被処理物とCuおよび/またはCuOとに含まれるNiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.05以上であるとき、前記抽出される電気炉メタルにおけるNiの含有率が10質量%以下となるように、前記還元溶錬工程で添加する還元剤量を調整することを特徴とする貴金属の回収方法である。
第2の発明は、
第1の発明に記載の貴金属の回収方法であって、さらに、前記酸化溶錬工程で抽出される前記PGM合金に含まれるFeの含有率を2質量%以下に制御することを特徴とする貴金属の回収方法である。
第3の発明は、
第1または第2の発明に記載の貴金属の回収方法であって、前記酸化溶錬工程で分離されたCuOスラグを、前記還元溶錬工程へ繰り返すことを特徴とする貴金属の回収方法である。
第4の発明は、
第1から第3の発明のいずれかに記載の貴金属の回収方法であって、さらに、前記酸化溶錬工程で酸化物を添加することを特徴とする貴金属の回収方法である。
本発明によれば、廃触媒等の貴金属を含有する被処理物を銅及び/または酸化銅とフラックスと還元剤と混合して炉内で溶融、還元する処理方法において、電気炉メタルに含まれるNi量を所定値以下に調整したので、貴金属の溶融スラグ層へのロスが抑制される効果を奏する。
PGMの回収工程の一例を示すフロー図である。
本発明に係るPGMの回収方法について図面を参照しながら、[1]還元溶錬工程、[2]酸化溶錬工程、[3]本発明に係るPGM回収方法例、の順に説明する。
図1は、PGMの回収工程の一例を示すフロー図である。
[1]還元溶錬工程
図1に示すように、PGMを含有する被処理物(2)である例えばセラミックス製自動車触媒の粉砕物と、抽出剤(3)であるCuおよび/またはCuOと、フラックス(1)であるCaOおよび/またはSiOと、そして還元剤(4)であるC(炭素)含有材料とを、電気炉(5)内に装填する。そして電気炉(5)内の電極に通電し、前記装填物を加熱し溶融させる。
すると、電気炉(5)内において、酸化物(CaO-SiO-Al)を主体とする溶融スラグ(7)層の下方に、Cu合金である電気炉メタル(6)が沈降する。このとき、当該下方に沈降した電気炉メタル(6)中にはPGMが濃縮している。この後、Cu含有率が3.0質量%以下にまで低下した溶融スラグ(7)を、当該電気炉(5)から抽出し排出する。
即ち、PGMの回収工程において「電気炉メタル(6)」とは、被処理物(2)の粉砕物と還元剤(4)とフラックス(1)と抽出剤(3)とを、電気炉(5)で溶融した後に、生成した溶融スラグ(7)を抽出し排出して得られる、PGMを含有する銅合金主体の溶湯を示す。
以上説明した、被処理物(2)の粉砕物他の電気炉(5)装填物を溶融した後、溶融スラグ(7)を抽出分離して排出し、電気炉メタル(6)を得るまでの工程が「還元溶錬工程」であり、鉄鋼製錬において高炉で酸化鉄の鉱石を還元して銑鉄を得るのと類似の手法である。
本発明に係る還元溶錬工程について、以下《1》従来の技術に係る還元溶錬工程、《2》本発明に係る還元溶錬工程、の順でさらに説明する。
《1》従来の技術に係る還元溶錬工程
従来の技術に係る還元溶錬工程においては、高い還元力を保つことにより、溶融スラグ(7)に混入するPGM量を低減させる目的で、還元剤(4)を十分に加え還元を行う方法が採られていた。
しかしながら、被処理物(2)と抽出剤(3)とに含まれるNiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.05以上であった場合に、還元剤(4)を十分に添加すると、電気炉メタル(6)におけるNiの含有率が10質量%超となることが多かった。そして、電気炉メタル(6)におけるNiの含有率が10質量%を超えていると、後工程である酸化溶錬工程の酸化炉(9)へ投入される電気炉メタル(6)中のNi含有率が高くなる。この結果、酸化溶錬工程の酸化炉(9)に多量の鋳付きが発生し、操業に悪影響を及ぼしていたものである。
《2》本発明に係る還元溶錬工程
本発明に係る還元溶錬工程においては、被処理物(2)と、抽出剤(3)であるCuおよび/またはCuOとに含まれる、NiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が所定量(例えば、0.05)以上であるとき、還元剤(4)であるC(炭素)含有材料の添加量を削減して還元力を緩和させるものである。そして、当該還元力の緩和により、電気炉メタル(6)中のNi含有率を10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下に制御するものである。
もっとも、還元溶錬工程における還元力の緩和によって、溶融スラグ(7)へ移行するPGM量が増加してしまうことが懸念されており、従来は十分な量の還元剤を添加することが行われていた。しかしながら、前記NiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.05以上の場合には、当該還元溶錬工程における還元力の緩和によってもたらされる、酸化溶錬工程における酸化炉(9)での鋳付きの発生抑制に係るメリットと、溶融スラグ(7)へ移行するPGM量の増加に係るデメリットとを比較考量した場合、酸化炉(9)での鋳付きの発生抑制に係るメリットの方が大きいことに想到したものである。
[2]酸化溶錬工程
本発明に係る酸化溶錬工程について、以下《1》従来の技術に係る酸化溶錬工程、《2》本発明に係る酸化溶錬工程、の順でさらに説明する。
《1》従来の技術に係る酸化溶錬工程
還元溶錬工程にて得られたPGMが濃縮した電気炉メタル(6)を電気炉(5)から抽出し、溶融状態のまま酸化炉(9)に移し替え、さらに、空気および/または酸素を吹き込んで電気炉メタル(6)を酸化する酸化処理を実施する。すると電気炉メタル(6)は、酸化物主体のCuOスラグ(11)層と、PGMがさらに濃縮したPGM合金(10)層とに層分離する。
即ち、本発明において「PGM合金(10)」とは、酸化炉(9)において、電気炉メタル(6)へ空気および/または酸素を吹き込んで酸化処理した後に、生成したCuOスラグ(11)を抜き出して得られる、uとPGMとを主成分として含む合金物質を示す。
このPGM合金(10)層の湯面上に生成したCuOスラグ(11)層を酸化炉(9)外に排出した後、再び、PGM合金(10)層へ、空気および/または酸素を吹き込んで、酸化物主体の新たなCuOスラグ(11)層と、PGMがさらに濃縮した新たなPGM合金(10)層とに層分離させる。そして、当該新たなPGM合金(10)層の湯面上に生成した当該新たなCuOスラグ(11)層を、再び酸化炉(9)外に排出する。
以上説明した酸化炉(9)における酸化処理と、CuOスラグ(11)層の排出処理とを繰り返すことにより、PGM合金(10)層中におけるPGM含有率はさらに上昇する。
以上説明した、酸化炉(9)内において、濃縮されたPGMを含有するPGM合金(10)を得るまでの工程が「酸化溶錬工程」であり、鉄鋼製錬において銑鉄中のC(炭素)、Si、P(リン)等の不純物を酸化して除去するのと類似の工程である。
《2》本発明に係る酸化溶錬工程
本発明に係る酸化溶錬工程について、以下〈i〉PGM合金中におけるFeの含有率制御、〈ii〉CuOスラグの繰り返し、〈iii〉酸化物の添加、の順でさらに説明する。
〈i〉PGM合金中におけるFeの含有率制御
本発明に係る前記酸化溶錬工程においては、生成分離されるPGM合金(10)中におけるFeの含有率を好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下とする。
これは、PGM合金(10)中におけるFeの含有率が2質量%を超えると、酸化炉(9)におけるPGM合金(10)の抽出性に問題が出易くなり、PGMの回収率に悪影響が出ることがあるからである。
当該PGM合金(10)の抽出性に問題が発生するメカニズムを、本発明者らは、以下のように推察している。
即ち、還元溶錬工程にて溶融スラグ(7)に含有されていたFeOの一部がFeに還元される。このFeは融点が高いため容易には再溶融せず、電気炉(5)の炉底近くに半溶融状態で存在してしまう。そして、FeはCuよりもPGMを溶かし込む能力が高い。この結果、電気炉メタル(6)と共に酸化炉(9)へ移送されたFeは、当該酸化炉(9)から排出されない炉鉄となる。そして、当該炉鉄がPGMの一部を吸収してしまう為である、と推察している。
本発明者らは、酸化溶錬工程において、生成分離されるPGM合金(10)中におけるFeの含有率を2質量%以下として、PGMの抽出性を担保する構成に想到したものである。
具体的には、フラックス(1)や被処理物(2)等としてFe含有率の少ないものを用いる。さらに、酸化炉(9)に移送する電気炉メタル(6)のFe含有率を監視して、酸化炉(9)中におけるFe含有率が2質量%以下となるよう、電気炉メタル(6)の選択を行ったり、混合比等を調整したりする方策を採ることができる。
〈ii〉CuOスラグの繰り返し
本発明に係る酸化溶錬工程におけるCuOスラグ(11)とPGM合金(10)との間のPt、Rh、Paの分配比は、還元溶錬工程における溶融スラグ(7)と電気炉メタル(6)間の分配比の値に比べ100倍程度大きな値を示す。この為、電気炉メタル(6)中のPGMを濃縮する過程で発生するCuOスラグ(11)中へ、相当量のPGMが分配されてしまう。この結果、PGM合金(10)としてのPGMの回収率は抑制される。
そこで、当該相当量のPGMが分配されたCuOスラグ(11)を、以降実施される還元溶錬工程へ、再び抽出剤(3)として繰り返し投入することが好ましい。当該構成により、CuOスラグ(11)中へ分配された相当量のPGMは、還元溶錬工程と酸化溶錬工程との系内を循環することになり、結果として高効率でPGMを回収することができる。
〈iii〉酸化物の添加
酸化溶錬工程の際に、後述する酸化物(8)を添加し、前記溶融した電気炉メタル(6)を撹拌した後、静置することが好ましい。これによりCuOスラグ(11)へのPGMの分配を低減することができる。
[3]本発明に係るPGM回収方法例
以上説明した本発明に係るPGMの回収方法について、一例を挙げながら具体的に説明する。
セラミックス製自動車触媒等のPGMを含有する被処理物(2)と、抽出剤(3)であるCuおよび/またはCuOと、フラックス(1)であるCaOおよび/またはSiOと、そして還元剤(4)であるSiC等のC(炭素)含有材料とを、電気炉(5)に装填して加熱する。このとき、電気炉(5)の溶融物に含まれるNi含有率が10質量%を超えている場合は、電気炉(5)内へ投入する還元剤(4)の添加量を前回添加量より削減することにより還元力を下げ、電気炉(5)の溶融物に含まれるNi含有率を10質量%以下となるように添加する還元剤量の調整を行う。
その後、酸化物(CaO-SiO-Al)主体の溶融スラグ(7)層の下方にCu合金の溶融メタルを沈降させ、当該Cu合金中にPGMが濃縮した電気炉メタル(6)を得る。一方、Cu含有率が3.0質量%以下にまで低下した溶融スラグ(7)を当該電気炉(5)から抽出し、排出する。
そして、PGMが濃縮した電気炉メタル(6)を当該電気炉(5)から抽出し、溶融状態のまま酸化炉(9)に移し替える。
このとき、電気炉メタル(6)中のFe含有率を2質量%以下とすることが好ましい。
酸化炉(9)において、溶融した電気炉メタル(6)を酸化溶錬する際、上述した酸化物(8)としてSiO、CaO、NaOから選択される1種以上を添加できる。電気炉メタル(6)へSiO等の酸化物(8)を添加する際は、添加量の全量を一挙に添加するのではなく、少量ずつ添加することが好ましい。これは電気炉メタル(6)へ添加する酸化物(8)の全量を一挙に添加すると、溶融している電気炉メタル(6)の溶体温度が低下し、添加された酸化物(8)が溶解できなくなる為である。従って、酸化物(8)の添加時間は、溶融している電気炉メタル(6)量にもよるが、20分間以上かけて添加することが好ましい。
酸化物(8)添加後に電気炉メタル(6)を撹拌して酸化物(8)を溶解させるが、溶体の撹拌方法としては、空気および/または酸素によるエアレーションが好ましい。
酸化物(8)が溶解後、溶体を静置する。このとき、酸化炉(9)内の溶融物の中心近傍が1200~1500℃になっていると推察できる。そして、酸化物主体のCuOスラグ(11)層と、PGMがさらに濃縮したPGM合金(10)層とが分離し、PGM合金(10)を得ることができる。得られたPGM合金(10)から、適宜な回収方法(主に、湿式法)により、PGMを得ることができる。被処理物にNiが多く含まれる場合でも電気炉メタル中のNi含有量を10質量%以下とすることにより、酸化炉の鋳付きを防止することができる。
以下、実施例および比較例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。尚、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
還元溶錬工程において、電気炉中へ、フラックスとしてCaOを5000kg、SiOを100kg、被処理物としてセラミック製自動車触媒の粉砕物を8500kg、還元剤としてSiCを500kg、抽出剤として前回工程から繰り返されたCuOスラグを、被処理物に対して質量比で0.65倍量の5500kg投入した。
これは、前記粉砕物とCuOスラグの中には、Niが900kg含まれており、NiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.22であったことから、還元剤であるSiCの投入量を、後述する比較例1における600kgよりも100kg削減して、500kgとしたものである。
上述の還元溶錬工程で生成した溶融スラグであるCaO-SiO-Alスラグを、電気炉から抽出し排出した。溶融スラグ温度は1455℃であった。そして、電気炉メタルを電気炉から抽出し、酸化炉へ投入した。このとき、電気炉メタルに含まれるNiは250kgで5質量%であり、(Ni/Cu)の値は0.059であった。
次に、酸化炉へ、CuOスラグ質量に対して5質量%に相当するSiOを酸化物として添加した。このとき電気炉メタルである溶体の急激な降温を回避する為、SiOは全量を一挙に投入するのではなく、20分間かけて除々に添加した。
SiOの投入完了後、溶体を2時間エアレーションして撹拌し、SiOを溶体に溶解させた。エアレーションには空気と酸素との混合気体を使用し、酸素濃度20質量%で50Nm/hの速度で吹込みを行った。
エアレーション終了後、溶融した溶体を静置し生成したPGM合金を回収した。このとき、PGM合金に含まれるNi含有量は3kgで含有率は1質量%、Feも含有量は3kgで含有率は1質量%であった。
一方、生成したCuOスラグは還元溶錬工程へ繰り返し、再び、抽出剤として使用した。
尚、電気炉から排出した溶融スラグ中のPGMロス量をICPにて定量分析したところ0.06質量%であり、特に大きな値ではないことが判明した。
(比較例1)
還元溶錬工程において、電気炉中へ、フラックスとしてCaOを5000kg、SiOを100kg、被処理物としてセラミック製自動車触媒の粉砕物を8500kg、還元剤としてSiCを600kg、抽出剤として前回工程から繰り返されたCuOスラグを、被処理物に対して質量比で0.65倍量の5500kg投入した。尚、前記粉砕物とCuOスラグの中には、Niが900kg含まれており、NiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.22であった。
そして、還元溶錬工程で得られた電気炉メタルに含まれるNi含有率を測定したところ15質量%であった。
その後、当該電気炉メタルを用いた酸化溶錬工程において酸化炉内で鋳付きが発生し、CuOスラグとPGM合金との分離抽出ができず、操業を停止することとなった。
(まとめ)
以上、説明した実施例および比較例の結果より、本発明の方法によれば、PGMを含有する被処理物から高効率にPGM合金を回収できることが判明した。
(1)フラックス
(2)被処理物
(3)抽出剤
(4)還元剤
(5)電気炉
(6)電気炉メタル
(7)溶融スラグ
(8)酸化物
(9)酸化炉
(10)CuOスラグ

Claims (4)

  1. PGMを含有する被処理物と、Cuおよび/またはCu2Oと、フラックスと、還元剤とを電気炉に入れて加熱し、これらを溶融して溶融スラグ層と電気炉メタル層とを形成した後に前記溶融スラグを分離し、PGMを含有する電気炉メタルを抽出して得る還元溶錬工程と、
    前記電気炉メタルを酸化炉に移して酸化溶融し、Cu2Oスラグ層とPGM合金層とを形成した後に、Cu2Oスラグを分離し、PGMが濃縮されたPGM合金を得る酸化溶錬工程と、を行うPGMの回収方法であって、
    前記還元溶錬工程における、被処理物とCuおよび/またはCu2Oとに含まれるNiとCuとの質量比(Ni/Cu)の値が0.05以上であり、前記抽出される電気炉メタルにおけるNiの含有率が10質量%以下となるように、前記還元溶錬工程で添加する還元剤量を調整することを特徴とする貴金属の回収方法。
  2. 請求項1に記載の貴金属の回収方法であって、さらに、前記酸化溶錬工程で抽出される前記PGM合金に含まれるFeの含有率を2質量%以下に制御することを特徴とする貴金属の回収方法。
  3. 請求項1または2に記載の貴金属の回収方法であって、前記酸化溶錬工程で分離されたCuOスラグを、前記還元溶錬工程へ繰り返すことを特徴とする貴金属の回収方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の貴金属の回収方法であって、さらに、前記酸化溶錬工程で酸化物を添加することを特徴とする貴金属の回収方法。
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