以下、本発明の各実施形態に係る衝突回避制御装置について図面を用いて説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る衝突回避制御装置(以下、「第1装置」と称呼される場合がある。)の概略システム構成図である。第1装置が搭載された車両を他車両と区別する必要がある場合、「自車両SV」と称呼する。第1装置は、自車両SVの進路を含む領域内に存在する物標である障害物との衝突を回避するために自車両SVの走行状態を変更する衝突回避制御を実施して、ドライバー(運転者)の運転を支援する装置である。
第1装置は衝突回避ECU10を備える。なお、ECUは、「Electric Control Unit」の略であり、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU31とROM32及びRAM33等の記憶装置とを含む。CPU31はROM32に格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することによって、各種機能を実現する。
第1装置は、更に、カメラセンサ11、車両状態センサ12、ブレーキECU20、ブレーキセンサ21、ブレーキアクチュエータ22、ステアリングECU40、モータドライバ41及び転舵用モータ(M)42を備える。衝突回避ECU10は、カメラセンサ11、車両状態センサ12、ブレーキECU20及びステアリングECU40と接続されている。
カメラセンサ11は、自車両SV前方を撮影する車載ステレオカメラ装置、及び、車載ステレオカメラによって撮影された画像を処理する画像処理装置(何れも図示省略)を備える。
車載ステレオカメラ装置(カメラセンサ11)は、自車両SVのルーフ前端部の車幅方向中央付近に設けられ、車両前後軸より左側に配置される左カメラと、車両前後軸より右側に配置される右カメラと、を有する。左カメラは所定時間が経過する毎に自車両SV前方の領域を撮影し、撮影した左画像を表す左画像信号を画像処理装置に送信する。同様に、右カメラは所定時間が経過する毎に自車両SV前方の領域を撮影し、撮影した右画像を表す右画像信号を画像処理装置に送信する。
画像処理装置は、受信した左画像信号が表す左画像及び受信した右画像信号が表す右画像からそれぞれ特徴点を抽出する。特徴点は、Harris、FAST(Features from Accelerated Segment Test)、SURF(Speeded Up Robust Features)及びSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)等の周知の手法を用いて抽出される。
そして、画像処理装置は、左画像の特徴点と右画像の特徴点とをマッチングし、対応関係にある左画像の特徴点と右画像の特徴点との間における視差を利用して、自車両SVと当該特徴点との間の距離及び当該特徴点の自車両SVに対する方位を算出する。
更に、画像処理装置は、自車両SVと特徴点との間の距離及び特徴点の自車両SVに対する方位を含む位置情報を物標情報として所定時間が経過する毎に衝突回避ECU10に送信する。
衝突回避ECU10は、画像処理装置から受信した物標情報に含まれる特徴点の位置の推移を特定する。そして、衝突回避ECU10は、特定した特徴点の位置の推移に基づいて特徴点の自車両SVに対する相対的な速度(相対速度)及び相対的な移動軌跡を把握する。
車両状態センサ12は、自車両SVの走行予測進路RCRを推定するために必要となる自車両SVの走行状態に関する車両状態情報を取得するセンサである。車両状態センサ12は、自車両SVの速度(即ち、車速)を検出する車速センサ、自車両SVの水平方向の前後方向及び左右(横)方向の加速度を検出する加速度センサ、自車両SVのヨーレートを検出するヨーレートセンサ、及び、操舵輪の舵角を検出する舵角センサ等を含む。車両状態センサ12は、所定時間が経過する毎に車両状態情報を衝突回避ECU10に出力する。
衝突回避ECU10は、車速センサによって検出される自車両SVの速度、及び、ヨーレートセンサによって検出されるヨーレートに基づいて自車両SVの旋回半径を算出する。そして、衝突回避ECU10は、この旋回半径に基づいて、自車両SVの車幅方向の中心点の(実際には、自車両SVの左右の前輪の車軸上の中心点PO(図2を参照。))が向かっている走行進路を走行予測進路RCRとして推定する。ヨーレートが発生している場合、走行予測進路RCRは円弧状となる。ヨーレートが発生していない場合(即ち、ヨーレートが「0」である場合)、衝突回避ECU10は、加速度センサによって検出されている加速度の方向に沿った直線進路を、自車両SVが向かっている走行進路(即ち、走行予測進路RCR)であると推定する。なお、衝突回避ECU10は、走行予測進路RCRを、自車両SVが旋回しているか直進しているかに依らず、自車両SVの現在位置から走行進路に沿って所定の距離だけ進んだ地点までの経路(即ち、有限長さの線)として認識(決定)する。
ブレーキECU20は、ブレーキセンサ21と接続され、ブレーキセンサ21の検出信号を受け取るようになっている。ブレーキセンサ21は、自車両SVに搭載された制動装置(不図示)を制御する際に使用されるパラメータを検出するセンサである。ブレーキセンサ21は、ブレーキペダル操作量センサ及び各車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ等を含む。
更に、ブレーキECU20は、ブレーキアクチュエータ22と接続されている。ブレーキアクチュエータ22は油圧制御アクチュエータである。ブレーキアクチュエータ22は、ブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧するマスシリンダと、各車輪に設けられた周知のホイールシリンダを含む摩擦ブレーキ装置と、の間の油圧回路(何れも、図示略)に配設される。ブレーキアクチュエータ22は、ホイールシリンダに供給する油圧を調整する。ブレーキECU20は、ブレーキアクチュエータ22を駆動することにより各車輪に制動力(摩擦制動力)を発生させ、自車両SVの加速度(負の加速度、即ち、減速度)を調整するようになっている。
ブレーキECU20は、衝突回避ECU10から送信されてくる信号に基づいてブレーキアクチュエータ22を駆動することにより、自車両SVの加速度を調整することができる。
ステアリングECU40は、周知の電動パワーステアリングシステムの制御装置であって、モータドライバ41に接続されている。モータドライバ41は、転舵用モータ42に接続されている。転舵用モータ42は、自車両SVの「操舵ハンドル、操舵ハンドルに連結されたステアリングシャフト及び操舵用ギア機構等を含むステアリング機構」に組み込まれている。転舵用モータ42は、モータドライバ41から供給される電力によってトルクを発生し、このトルクによって操舵アシストトルクを加えたり、左右の操舵輪を転舵したりする。
(作動の概要)
次に、第1装置の作動の概要について説明する。第1装置は、物標情報に含まれる特徴点の中から自車両SVと衝突する可能性があると推定される特徴点(自車両SVに衝突はしないものの自車両SVに極めて接近する特徴点を含む。)を障害物点として抽出する。そして、第1装置は、各障害物点が自車両SVに衝突又は最接近するまでの時間である衝突所要時間TTC(TTC Time To Collision)を算出する。次いで、第1装置は、衝突所要時間TTCが最小の障害物点を含む障害物が、車線に沿って所定の長さ以上連続する連続構造物であるか否かを判定する。
更に、第1装置は、自車両SVの走行状態がドライバーによる操舵に従った意図操舵操作状態であるか否かを判定する意図操舵操作判定処理を所定時間が経過する毎に実行する。以下、意図操舵操作状態を「操舵走行状態」と称呼する場合もあり、意図操舵操作判定処理を「操舵実施判定処理」と称呼する場合もある。
より詳細には、第1装置は、「自車両SVの現時点のヨーレート」から「現時点から所定時間前のヨーレート」を減算した値の絶対値であるヨーレート変化量AOCが閾値変化量AOC1th以上である場合、自車両SVが意図操舵操作状態であると判定する。なお、第1装置においては、ヨーレートは、ドライバーの操舵量に相関を有する操舵指標値として用いられる。このため、自車両SVが意図操舵操作状態であるか否かに用いられるこのヨーレートを「操舵指標値」と称呼する場合もある。
第1装置は、衝突所要時間TTCが最小の障害物点を含む障害物が連続構造物でない場合、及び、自車両SVが意図操舵操作状態でない場合の少なくとも一方が成立する場合、閾値時間Tthに通常閾値時間T1thを設定する。一方、第1装置は、衝突所要時間TTCが最小の障害物点を含む障害物が連続構造物であって、且つ、自車両SVが意図操舵操作状態である場合、特殊条件が成立していると判定して、閾値時間Tthに操舵時閾値時間T2thを設定する。なお、操舵時閾値時間T2thは、通常閾値時間T1thよりも小さい値に設定されている。
そして、第1装置は、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tth以下であるか否かを判定する。第1装置は、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tth以下である場合、衝突回避制御を開始する条件である支援実施条件が成立したと判定して、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物との衝突を回避するための衝突回避制御を実施する。これに対して、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tthよりも大きい場合、第1装置は、衝突回避制御を実施しない。前述したように、操舵時閾値時間T2thは通常閾値時間T1thよりも小さい値に設定されているので、閾値時間Tthが操舵時閾値時間T2thに設定されている場合、閾値時間Tthが通常閾値時間T1thに設定されている場合よりも、支援実施条件が成立し難くなる。
従って、第1装置は、前述した特殊条件が成立している場合には、前述した特殊条件が成立していない場合よりも、支援実施条件が成立し難くなるように閾値時間Tthを変更する。これによって、ドライバーが意図的な操舵操作を行っている場合に、衝突回避制御が実施され難くなり、ドライバーが衝突回避制御を煩わしいと感じる可能性を低減することができる。
(作動の詳細)
以下、第1装置の作動の詳細について説明する。
まず、障害物点の抽出処理について図2を用いて説明する。物標情報に含まれる特徴点の中から自車両SVと衝突する可能性があると推定される特徴点(自車両SVに衝突はしないものの自車両SVに極めて接近すると推定される特徴点を含む。)を障害物点として抽出する。第1装置は、前述したように、自車両SVの左右の前輪の車軸上の中心点(点POを参照。)が向かっている走行進路を走行予測進路RCRとして推定する。更に、第1装置は、自車両SVの車体の左端部から一定距離αLだけ更に左側に位置する点PLが通過する左側走行予測進路LECと、自車両SVの車体の右端部から一定距離αRだけ更に右側に位置する点PRが通過する右側走行予測進路RECと、を「有限の長さの走行予測進路RCR」に基づいて推定する。左側走行予測進路LECは、走行予測進路RCRを自車両SVの左右方向の左側に「距離αLに車幅Wの半分(W/2)を加えた値」だけ平行移動した進路である。右側走行予測進路RECは、走行予測進路RCRを自車両SVの左右方向の右側に「距離αRに車幅Wの半分(W/2)を加えた値」だけ平行移動した進路である。距離αL及び距離αRは何れも「0」以上の値であり、互いに相違していても同じであってもよい。更に、第1装置は、左側走行予測進路LECと右側走行予測進路RECとの間の領域を走行予測進路領域ECA(図3A及び図3Bを参照。)として特定する。
そして、第1装置は、過去の特徴点の位置に基づいて特徴点の移動軌跡を算出(推定)し、算出した特徴点の移動軌跡に基づいて、特徴点の自車両SVに対する移動方向を算出する。次いで、第1装置は、走行予測進路領域ECAと、自車両SVと特徴点との相対関係(相対位置及び相対速度)と、特徴点の自車両SVに対する移動方向と、に基づいて、走行予測進路領域ECA内に既に存在し且つ自車両SVの先端領域TAと交差すると予測される特徴点と、走行予測進路領域ECAに将来的に進入し且つ自車両の先端領域TAと交差すると予測される特徴点と、を自車両SVに衝突する可能性のある障害物点として抽出する。ここで、自車両SVの先端領域TAは、点PLと点PRとを結んだ線分により表される領域である。
なお、第1装置は、左側走行予測進路LECを点PLが通過する進路として推定し、且つ、右側走行予測進路RECを点PRが通過する進路として推定している。このため、値αL及び値αRが正の値であれば、第1装置は、自車両SVの左側面近傍又は右側面近傍を通り抜ける可能性がある特徴点も、「走行予測進路領域ECA内に既に存在し、且つ、自車両SVの先端領域TAと交差すると予測される」又は「走行予測進路領域ECAに将来的に進入し且つ自車両SVの先端領域TAと交差すると予測される」と判断する。従って、第1装置は、自車両SVの左側方又は右側方を通り抜ける可能性のある特徴点も障害物点として抽出する。
図2においては、特徴点FP1乃至FP6が抽出されており、障害物点として特徴点FP4が抽出される。以下、障害物点となる特徴点FP4を「障害物点FP4」と称呼する場合もある。
次に、障害物点の衝突所要時間TTCの算出処理について説明する。
第1装置は、障害物点を抽出した後、自車両SVと障害物点との間の距離(相対距離)を障害物点の自車両SVに対する相対速度で除することによって、障害物点の衝突所要時間TTCを算出する。
衝突所要時間TTCは、以下の時間T1及び時間T2の何れかである。
・障害物点が自車両SVと衝突すると予測される時点までの時間T1(現時点から衝突予測時点までの時間)
・自車両SVの側方を通り抜ける可能性のある障害物点が自車両SVに最接近する時点までの時間T2(現時点から最接近予測時点までの時間)。
この衝突所要時間TTCは、障害物点と自車両SVとが現時点における相対速度及び相対移動方向を維持しながら移動すると仮定した場合における障害物点が「自車両SVの先端領域TA」に到達するまでの時間である。
更に、衝突所要時間TTCは、自車両SVと「障害物点を含む障害物」との衝突を回避するための衝突回避制御又はドライバーによる衝突回避操作が実施可能な時間を表す。衝突所要時間TTCは、緊急度合を表すパラメータであって、衝突回避制御の必要度合に相当する。即ち、衝突所要時間TTCが小さいほど衝突回避制御の必要度合は大きくなり、衝突所要時間TTCが大きいほど衝突回避制御の必要度合は小さくなる。なお、衝突所要時間TTCを「衝突指標値」と称呼する場合もある。
次に、連続構造物判定処理の概要について説明する。
第1装置は、衝突所要時間TTCを算出した後、「衝突所要時間TTCが最小である障害物点(即ち、自車両SVに最も早く衝突又は最接近する障害物点)を含む物標(障害物)」が、連続構造物であるか否かを判定する連続構造物判定処理を実行する。連続構造物は、「車線に沿って所定値以上の長さにわたって連続する」物標である。
図2においては前述したように特徴点FP4のみが障害物点として抽出されているので、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点は障害物点FP4である。このため、第1装置は障害物点FP4を基準点として選択する。更に、第1装置は、基準点FP4における走行予測進路RCRの進行方向RD(図2において紙面右上方向)を順方向に設定する。詳細には、第1装置は、基準点FP4を通るように走行予測進路RCRを平行移動して、平行移動後の走行予測進路RCRの基準点FP4における接線方向を進行方向RDとして算出する。
次に、第1装置は、基準点FP4における進行方向RDの垂線である基準線BLよりも進行方向RD側に位置する特徴点であって、基準点FP4に最も近い特徴点を処理対象点として選択する。そして、第1装置は、基準点FP4及び処理対象点が以下の連続点条件(A)及び(B)の両方を満たすか否かを判定する。基準点FP4及び処理対象点が連続点条件(A)及び(B)の両方を満たす場合、第1装置は、当該基準点FP4及び当該処理対象点を連続点として抽出する。
(A)「基準点と自車両SVとの間の距離」から「処理対象点と自車両SVとの間の距離」を減算した値が所定範囲内であること
(B)基準点と処理対象点との間の距離を示す点間距離Lが閾値距離L1th以下であること
図2においては、処理対象点として特徴点FP3が選択される。「基準点FP4と自車両SVとの間距離(R4)」から「処理対象点FP3と自車両SVとの間の距離(R3)」を減算した値(R4-R3)が所定範囲内であるので、上記連続点条件(A)を満たす。更に、基準点FP4と処理対象点FP3との間の点間距離(L4)が閾値距離L1th以下であるので、上記連続点条件(B)を満たす。従って、第1装置は、特徴点FP4及び特徴点FP3を連続点として抽出する。
処理対象点が連続点条件(A)及び(B)の少なくとも一方を満たさない場合、第1装置は、進行方向RD側において、当該処理対象点の次に基準点に近い特徴点を新たな処理対象点として選択して、連続点条件(A)及び(B)の両方を満たすか否かを判定する。なお、新たな処理対象点を所定回数選択しても連続点条件(A)及び(B)の両方を満たす処理対象点がない場合、第1装置は、衝突所要時間TTCが最小の障害物点を含む障害物が連続構造物でないと判定する。
第1装置は、順方向における連続点の抽出後、順方向における連続点間の距離の合計が所定の連続構造物判定距離(以下、「第1閾値距離」と称呼する場合もある。)より大きいか否かを判定する。
順方向における連続点間の距離の合計が連続構造物判定距離以下である場合、第1装置は、最後に連続点として抽出した処理対象点を新たな基準点として選択して、順方向の連続点の抽出を継続する。連続点として特徴点FP3が抽出された場合、連続点間の距離の合計(L4)は連続構造物判定距離以下であるので、第1装置は、特徴点FP3を新たな基準点として選択して、順方向の連続点を抽出する。この結果、特徴点FP2が連続点として抽出される。連続点間の距離の合計(L4+L3)が連続構造物判定距離以下であるので、第1装置は、特徴点FP2を新たな基準点として選択して、連続点を抽出する。この結果、特徴点FP1が連続点として抽出される。そして、本例においては、連続点間の距離の合計(L4+L3+L2)が連続構造物判定距離より大きくなるので、第1装置は、連続点FP1乃至連続点FP4の集合を、連続構造物として抽出し、障害物点FP4を含む障害物が連続構造物であると判定する。
このように、順方向における連続点間の距離の合計が連続構造物判定距離より大きい場合、第1装置は、最小の衝突所要時間TTCの障害物点を含む障害物が連続構造物であると判定する。なお、第1装置は、最後に連続点として抽出された処理対象点を連続構造物の順方向側の端点として認定する。
ここで、第1装置は、所定時間が経過する毎に、自車両SVが意図操舵操作状態であるか否かを判定している。この判定処理について図3A及び図3Bを用いて説明する。図3A及び図3Bでは、連続構造物付近にて他車両OVとの衝突を回避するための意図的な操舵操作をドライバーが行う場合の自車両SVの位置の遷移が示される。
図3A及び図3Bにおいては、以下の仮定が成立するとする。
・時刻t1と時刻t2との間のある時刻でドライバーが他車両OVとの衝突を回避するための意図的な操舵操作を開始し、時刻t2及び時刻t3においてドライバーは当該操舵操作を継続する。
・時刻t1において自車両SVにヨーレートYr1は発生していない。更に、時刻t1よりも所定時間前の図示しない時刻t0においても自車両SVにヨーレートYr0は発生していない。時刻t2において自車両SVに反時計回り方向のヨーレートYr2が発生している。時刻t3において自車両SVに反時計回り方向のヨーレートYr3が発生している。更に、ヨーレートYr1及びヨーレートY2においては次式が成立する。
|Yr2-Yr1|≧閾値変化量AOC1th
・時刻t1乃至t3のいずれの時刻においても障害物点FP7乃至FP15が抽出されている。
・図3Aに示すように、時刻t1において特徴点FP10乃至FP12が障害物点として抽出され、これらの中で衝突所要時間TTCが最小の障害物点は特徴点FP12である。
・図3Bに示すように、時刻t2及び時刻t3において特徴点FP14及びFP15が障害物点として抽出され、これらの中で衝突所要時間TTCが最小の障害物点は特徴点FP15である。
・時刻t1においては後述する走行状態フラグは「0」に設定されている。
・時刻t1における最小の衝突所要時間TTCは通常閾値時間T1thよりも大きく、時刻t2及び時刻t3における最小の衝突所要時間TTCは操舵時閾値時間T2thよりも大きく、通常閾値時間T1よりも小さい。
・時刻t1乃至時刻t3における他車両OV(t1)乃至OV(t3)は、自車両SVの先端領域TAに交差せず、障害物とならない。
前述した仮定により、図3Aの時刻t1において、図3Aに示す特徴点FP7乃至特徴点FP15が抽出されており、特徴点FP10乃至FP12が障害物点として抽出されている。更に、衝突所要時間TTCが最小の障害物点は特徴点FP12である。第1装置は、障害物点FP12を基準点として順方向の連続点を抽出する。この結果、特徴点FP11乃至FP7がこの順に連続点として抽出される。特徴点FP7が連続点として抽出された場合に順方向の連続点間の距離の合計が連続構造物判定距離より大きくなるので、第1装置は障害物点FP12を含む障害物が連続構造物であると判定する。従って、図3Aの時刻t1においては、連続点FP7乃至FP12の特徴点の集合が連続構造物として抽出される。
時刻t1において第1装置は、自車両SVの走行状態が意図操舵操作状態であるか否かを判定するための意図操舵操作判定処理を実行する。より詳細には、第1装置は、「時刻t1における自車両SVのヨーレートYr1」から「時刻t0における自車両SVのヨーレートYr0」を減算した値の絶対値(|Yr1-Yr0|)をヨーレート変化量AOCとして算出する。そして、第1装置は、算出したヨーレート変化量AOCが閾値変化量AOC1th以上であるか否かを判定する。この場合、時刻t1においては、前述した仮定によりヨーレートYr1及びYr0は何れも「0」であるので、ヨーレート変化量AOCは「0」である。このため、|Yr1-Yr0|は閾値変化量AOC1thよりも小さいので、第1装置は、自車両SVが意図操舵操作状態でないと判定し、走行状態フラグを「0」に設定する
ここで、走行状態フラグについて説明する。走行状態フラグは、自車両SVが意図操舵操作状態であると判定された場合に「1」に設定され、「1」に設定されてから所定時間が経過するまでは、ヨーレート変化量AOCによらず「1」に設定される。走行状態フラグが「1」に設定されている間(即ち、自車両SVが意図操舵操作状態であると判定されてから所定時間の間)、第1装置は、ヨーレート変化量AOCが閾値変化量AOC1thよりも小さい場合であっても、自車両SVが意図操舵操作状態であるとみなし、走行状態フラグを「0」に設定しない。
時刻t1においては、走行状態フラグが「0」に設定されているため、第1装置は、閾値時間Tthを通常閾値時間T1thに設定し、時刻t1における最小の衝突所要時間TTCが「通常閾値時間T1thに設定された閾値時間Tth」以下であるか否かを判定する。前述した仮定により時刻t1における最小の衝突所要時間TTCは通常閾値時間T1thよりも大きいので、第1装置は、時刻t1において衝突回避制御を実施しない。
ドライバーは、時刻t1と時刻t2との間で他車両OVとの衝突を回避するために左方向への操舵操作を開始する。この場合の時刻t2における自車両SVの走行予測進路RCRは図3Bに示すようになる。
前述した仮定により、図3Bの時刻t2において、図3Bに示す特徴点FP7乃至特徴点FP15が抽出されており、特徴点FP14及びFP15が障害物点として抽出されている。更に、衝突所要時間TTCが最小の障害物点は特徴点FP15である。
図3Bにおいては、障害物点FP15を基準点として、当該基準点における進行方向RDに直交する基準線BLよりも進行方向RD側に障害物点FP15以外の総ての特徴点FP14乃至FP7が位置している。第1装置は、基準点FP15の順方向の連続点としてFP14乃至FP9を抽出する。特徴点FP9が連続点として抽出された場合に順方向の連続点間の距離の合計が連続構造物判定距離より大きくなるので、第1装置は障害物点FP15を含む障害物が連続構造物であると判定する。この場合、特徴点FP9が連続構造物の順方向側の端点となる。
従って、図3Bの時刻t2においては、連続点FP9乃至FP15の特徴点の集合が連続構造物として抽出される。
更に、第1装置は、時刻t2におけるヨーレート変化量AOC(|Yr2-Yr1|)を算出する。前述した仮定により、|Yr2-Yr1|は閾値変化量AOC1th以上であるので、第1装置は、自車両SVが意図操舵操作状態であると判定し、走行状態フラグを「1」に設定する。
第1装置は、走行状態フラグが「1」に設定されているので、閾値時間Tthを操舵時閾値時間T2thに設定し、時刻t2における最小の衝突所要時間TTCが「操舵時閾値時間T2thに設定された閾値時間Tth」以下であるか否かを判定する。前述した仮定により時刻t2における最小の衝突所要時間TTCは操舵時閾値時間T2thよりも大きいので、第1装置は、時刻t2において衝突回避制御を実施しない。
ここで、時刻t2の直前までに意図操舵操作判定処理にて走行状態フラグが「1」に設定されていないと仮定した場合、時刻t2における最小の衝突所要時間TTCは通常閾値時間T1thよりも小さいので、衝突回避制御が実施されてしまう。このため、意図的な操舵操作中に衝突回避制御が実施されてしまうので、ドライバーは衝突回避制御を煩わしいと感じる可能性が高い。
操舵時閾値時間T2thは、通常閾値時間T1thよりも小さな値に設定されている。従って、閾値時間Tthに操舵時閾値時間T2thが設定されている場合、閾値時間Tthに通常閾値時間T1thが設定されている場合よりも、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tth以下となり難い(即ち、前述した支援実施条件が成立し難い。)。このため、障害物が連続構造物であって、且つ、自車両SVが操舵操作状態である場合、意図操舵操作中であるにもかかわらず、この連続構造物に対して衝突回避制御が実施される可能性が低減される。これによって、ドライバーが衝突回避制御を煩わしいと感じる可能性を低減することができる。
時刻t3においては、ドライバーは、時刻t2と同じ舵角の操舵操作を行っており、時刻t3における自車両SVの速度も時刻t2と同じであると仮定する。このため、時刻t3において、自車両SVは時刻t2における走行予測進路RCR上を走行しており、時刻t3における走行予測進路RCRは時刻t2における走行予測進路RCRと同じである。従って、図3Bの時刻t3においては、時刻t2と同じく、連続点FP9乃至FP15の特徴点の集合が連続構造物として抽出される。
ここで、時刻t2において走行状態フラグが「1」に設定されている。時刻t3は、走行状態フラグが「1」に設定された時刻t2から所定時間が経過していない時点であると仮定する。第1装置は、時刻t3におけるヨーレート変化量AOCは「0」であり、このヨーレート変化量AOC閾値変化量AOC1th以下であるが、自車両SVは意図操舵操作状態であるとみなし、走行状態フラグを「1」に設定したままにし、閾値時間Tthに操舵時閾値時間T2thに設定する。そして、第1装置は、時刻t3における最小の衝突所要時間TTCが「操舵時閾値時間T2thに設定された閾値時間Tth」以下であるか否かを判定する。前述した仮定により時刻t3における最小の衝突所要時間TTCは操舵時閾値時間T2thよりも大きいので、第1装置は、時刻t3において衝突回避制御を実施しない。
前述したように、時刻t3では自車両SVの舵角及び自車両SVの速度は時刻t2と同じであるので、時刻t3の自車両SVのヨーレートYr3は時刻t2の自車両SVのヨーレートYr2と同じである。このため、時刻t3のヨーレート変化量AOC(|Yr3-Yr2|)は「0」であり、閾値変化量AOC1th以下である。ドライバーが操舵操作を開始して、操舵操作中である場合、ヨーレート変化量が比較的小さくなる可能性が高い。このため、第1装置では、自車両SVが意図操舵操作であると判定されてから(即ち、ドライバーが操舵操作を開始してから)所定時間が経過するまでは、走行状態フラグを「1」に設定する。これによって、第1装置は、ヨーレート変化量が比較的小さくなる可能性が高い操舵操作中である場合であっても、自車両SVが意図操舵操作状態であると正確に判定することができ、閾値時間Tthを操舵時閾値時間T2thに設定することができる。このため、意図操舵操作中であるにもかかわらず、この連続構造物に対して衝突回避制御が実施される可能性が低減され、ドライバーが衝突回避制御を煩わしいと感じる可能性を低減することができる。
なお、図3A及び図3Bには、時刻t3以降の自車両SVの位置の遷移は図示していないが、時刻t3以降、ドライバーは、自車両SVが連続構造物と衝突しないように、自車両SVが右方向に旋回するように操舵操作を行う。
(具体的作動)
衝突回避ECU10のCPU31は、図4にフローチャートで示したルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。図4に示すルーチンは、障害物に対して衝突回避制御を実施するためのルーチンである。
従って、所定のタイミングになると、CPU31は図4のステップ400から処理を開始し、以下に述べるステップ402乃至ステップ408の処理を順に行い、ステップ410に進む。
ステップ402:CPU31は、カメラセンサ11が取得した物標情報を読み取る。
ステップ404:CPU31は、車両状態センサ12が取得した車両状態情報を読み取る。
ステップ406:CPU31は、ステップ404にて読み取った車両状態情報に基づいて、前述したように走行予測進路RCRを推定する。
ステップ408:CPU31は、前述したように、ステップ402にて読み取った物標情報及びステップ406にて推定した走行予測進路RCRに基づいて、物標情報に含まれる特徴点の中から障害物点を抽出する。
次に、CPU31は、ステップ410に進み、ステップ408にて障害物点が抽出されたか否かを判定する。ステップ408にて障害物点が抽出されていない場合、自車両SVに衝突する可能性がある障害物が存在しないので、CPU31は衝突回避制御を実施する必要がない。従って、CPU31は、ステップ410にて「No」と判定し、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。この結果、衝突回避制御は実施されない。
一方、ステップ408にて障害物点が抽出されている場合、CPU31はステップ410にて「Yes」と判定し、ステップ412に進む。
ステップ412:CPU31は、前述したように、ステップ408の処理で抽出された障害物点のそれぞれの衝突所要時間TTCを算出する。
次に、CPU31はステップ414に進み、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物が連続構造物であるか否かを判定する連続構造物判定処理を実行する。実際には、CPU31はステップ414に進むと、図5にフローチャートで示したサブルーチンを実行する。
即ち、CPU31は、ステップ414に進むと、図5のステップ500から処理を開始してステップ505に進み、衝突所要時間TTCが最小の障害物点を基準点として選択し、ステップ510に進む。
ステップ510にて、CPU31は、基準点における走行予測進路RCRの進行方向RDを順方向に設定して、ステップ515に進む。ステップ515にて、CPU31は、順方向において連続点条件(A)及び(B)の両方を満たす連続点を抽出する順方向連続点抽出処理を実行する。実際には、CPU31はステップ515に進むと、図6にフローチャートで示したサブルーチンを実行する。
即ち、CPU31は、ステップ515に進むと、図6のステップ600から処理を開始してステップ605に進む。ステップ605にて、CPU31は、前述した基準線BLから順方向(進行方向RD)側の領域に位置し、且つ、基準点に最も近い特徴点を処理対象点として選択して、ステップ610に進む。
ステップ610にて、CPU31は、衝突所要時間TTCが最小の障害物点を起点とする順方向が自車両SVから離れる方向であるか否かを判定する。衝突所要時間TTCが最小の障害物点を起点とする順方向が自車両SVから離れる方向である場合、CPU31は、ステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ615に進む。ステップ615にて、CPU31は、「処理対象点と自車両SVとの間の距離(RO)」から「基準点と自車両SVとの間の距離(RB)」を減算することによって減算値Dを算出し、ステップ625に進む。なお、「処理対象点と自車両SVとの間の距離(RO)」から「基準点と自車両SVとの間の距離(RB)」は物標情報に含まれる。
一方、衝突所要時間TTCが最小の障害物点を起点とする順方向が自車両SVに近づく方向である場合、CPU31は、ステップ610にて「No」と判定し、ステップ620に進む。ステップ620にて、CPU31は、「基準点と自車両SVとの間の距離(RB)」から「処理対象点と自車両SVとの間の距離(RO)」を減算することによって減算値Dを算出し、ステップ625に進む。
ステップ625にて、CPU31は、ステップ615又はステップ620にて算出した減算値Dが閾値D1thより大きく、且つ、当該減算値Dが閾値D2thよりも小さいか否かを判定する。換言すれば、CPU31は、減算値Dが所定範囲内であるか否かを判定する。ここで、閾値D1thは、閾値D2thよりも小さい値に設定されており、負の値であってもよい。ここでは、閾値D1thは「-0.25m」に設定されており、閾値D2thは「6.0m」に設定されているものとする。
閾値D1thが負の値に設定されている理由について説明する。ステップ615又はステップ620にて算出された減算値Dは、換言すれば、基準点及び処理対象点のうち自車両SVとの間の距離が大きいと予測される一方の点と自車両SVとの間の距離から、自車両SVとの間の距離が小さいと予測される他方の点と自車両SVとの間の距離を減算した値である。自車両SVの前後軸の延長線の近くに位置する二つの特徴点の自車両SVとの距離の差が小さいこと、及び、物標情報に含まれる特徴点と自車両SVとの間の距離に誤差があることに起因して、このような二つの特徴点がそれぞれ基準点及び処理対象点として選択されている場合、前述したように減算値Dが算出されても、減算値Dが負の値になる可能性がある。このため、閾値D1thが負の値に設定される。
ステップ615又はステップ620にて算出された減算値Dが閾値D1thより大きく、且つ、当該減算値Dが閾値D2thよりも小さい場合、即ち、当該減算値Dが所定範囲内である場合、処理対象点は前述した連続点条件(A)を満たす。この場合、CPU31は、ステップ625にて「Yes」と判定して、ステップ630に進む。
ステップ630にて、CPU31は、基準点と処理対象点との間の距離を示す点間距離Lが閾値距離L1thよりも小さい否かを判定する。
点間距離Lが閾値距離L1thよりも小さい場合、処理対象点は前述した連続点条件(B)を満たす。この場合、CPU31は、ステップ630にて「Yes」と判定し、ステップ635に進む。ステップ635にて、CPU31は、基準点及び処理対象点を順方向の連続点としてRAM33に記憶し、本ルーチンを一旦終了し、図5のステップ520に進む。
図5のステップ520にて、CPU31は、順方向の連続点間の距離の合計が連続構造物判定距離より大きいか否かを判定する。連続構造物判定距離は、予め実験等により予め算出された適切な値に設定されている。なお、連続構造物判定距離は「第1閾値距離」と称呼する場合もある。
順方向の連続点間の距離の合計が連続構造物判定距離以下である場合、CPU31は、ステップ520にて「No」と判定し、ステップ525に進む。ステップ525にて、CPU31は、ステップ515の順方向連続点抽出処理にて連続点として抽出された処理対象点があるか否かを判定する(後述する図6のステップ650を参照。)。
連続点として抽出された処理対象点がある場合、CPU31は、ステップ525にて「Yes」と判定し、ステップ530に進む。ステップ530にて、CPU31は、ステップ515にて連続点として抽出された処理対象点を新たな基準点として選択して、ステップ515を再度実行する。
一方、連続点として抽出された処理対象点がない場合、CPU31は、ステップ525にて「No」と判定してステップ535に進み、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物は連続構造物でないと判定する。そして、CPU31は、ステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了して、図4のステップ416に進む。
一方、順方向の連続点間の距離の合計が連続構造物判定距離より大きい場合、CPU31は、ステップ520に進んだとき、そのステップ520にて「Yes」と判定し、ステップ540に進む。この場合、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物は自車両SVの進行方向に所定の長さ(連続構造物判定距離)以上の長さを有する。このため、ステップ540にて、CPU31は、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物が連続構造物であると判定し、ステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了して、図4のステップ416に進む。
ところで、CPU31が図6のステップ625の処理を実行する時点において減算値Dが閾値D1th以下であるか、又は、当該減算値Dが閾値D2th以上である場合、処理対象点は前述した連続点条件(A)を満たさない。この場合、CPU31は、そのステップ625にて「No」と判定して、ステップ640に進む。
更に、CPU31がステップ630の処理を実行する時点において、点間距離Lが閾値距離L1th以上である場合、処理対象点は前述した連続点条件(B)を満たさない。この場合、CPU31は、そのステップ630にて「No」と判定し、ステップ640に進む。
ステップ640にて、CPU31は、現在選択中の基準点に対して「連続点条件(A)及び(B)の少なくとも一方を満たさないと判定された処理対象点」が選択された回数を示す選択回数Nが閾値回数N1th以上であるか否かを判定する。閾値回数N1thは、2以上の整数(例えば、5)である。選択回数Nが閾値回数N1thよりも小さい場合、CPU31は、図6のステップ640にて「No」と判定して、ステップ645に進む。ステップ645にて、CPU31は、現在選択中の処理対象点の次に順方向において基準点に近い特徴点を新たな処理対象点として選択して、ステップ610に戻り、新たな処理対象点が現在選択中の基準点の連続点となるか否かを判定する。
これに対し、CPUがステップ640の処理を実行する時点において、選択回数Nが閾値回数N1th以上である場合、CPU31は、現在選択中の基準点に対して連続点となる特徴点が存在しないと判断する。即ち、この場合、CPU31は、ステップ640にて「Yes」と判定してステップ650に進み、現在選択中の基準点に対する連続点はない旨をRAMに記憶する。その後、CPU31はステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了し、図5のステップ520に進む。
この場合、基準点及び処理対象点が連続点として抽出されないので、連続点間の距離の合計は前回と変わらない。よって、CPU31は、ステップ520にて「No」と判定してステップ525に進む。更に、この場合、現在選択中の基準点に対して連続点として抽出された処理対象点はない。よって、CPU31は、ステップ525にて「No」と判定してステップ535に進み、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物が連続構造物でないと判定する。
図5のルーチンの処理が終了するとCPU31は図4のステップ416に進み、ステップ414の連続構造物判定処理における判定結果が、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物が連続構造物であることを示すか否かを判定する。
ステップ414の連続構造物判定処理における判定結果が、障害物が連続構造物であることを示す場合、CPU31は、ステップ416にて「Yes」と判定して、ステップ418に進む。ステップ418にて、CPU31は、ステップ414にて抽出された連続構造物の構成要素となる連続点の自車両SVに対する位置に基づいて連続構造物の近似線AL(図3Aを参照。)を算出して、ステップ420に進む。なお、連続点の自車両SVに対する位置は、物標情報に含まれる特徴点と自車両SVとの間の距離及び特徴点の自車両SVに対する方位によって特定される。更に、近似線ALの算出には最小二乗法が用いられる。
ステップ420にて、CPU31は、ステップ418にて算出された近似線ALの自車両SVの前後軸FRに対する角度を連続構造物角度θcpとして算出して、ステップ422に進む。この連続構造物角度θcpの算出のために基準となる前後軸FRを「角度基準線」と称呼する場合もある。
連続構造物角度θcpの符号について図7及び図8を用いて説明する。連続構造物角度θcpの大きさは、0deg以上180degとなるように規定されている。図7では、近似線AL1から前後軸FRまでの向きが反時計回りとなるので、連続構造物角度θcpは正の値(θcpA)となる。一方、図8では、近似線AL2から前後軸FRまでの向きが時計回りとなるので、連続構造物角度θcpは負の値(-θcpB)となる。
次に、CPU31は、図4に示すステップ422に進み、ステップ406にて取得した車両状態情報に含まれるヨーレートが「0」であるか否かを判定する。即ち、このステップ422では、CPU31は、自車両SVが直進しているか否かを判定する。ヨーレートが「0」である場合、CPU31は、自車両SVが直進していると判定し、ステップ422にて「Yes」と判定し、ステップ424に進む。
ステップ424にて、CPU31は、ステップ420にて算出した連続構造物角度θcpの大きさ(|θcp|)が角度閾値θ1th(θ1th>0)以上であるか否かを判定する。カメラセンサ11の検出誤差に起因して、障害物点が本来の位置からずれた位置として検出される可能性がある。これによって、本来、連続構造物が自車両SVの角度基準線である前後軸FRと平行である(即ち、連続構造物角度θcp=0deg)にもかかわらず、連続構造物が自車両SVの前後軸FRに対して傾いて検出される可能性がある。角度閾値θ1thは、カメラセンサ11の検出誤差を考慮して、本来自車両SVの前後軸FRと平行である連続構造物に対して誤って算出される連続構造物角度θcpの最大値に設定される。具体的には、角度閾値θ1thは、2deg乃至3degの範囲の任意の値に設定されることが望ましい。
ここで、自車両SVのヨーレートが「0」である場合、自車両SVは直進しており、走行予測進路RCRは前後軸FRと一致する。更に、連続構造物角度θcpの大きさが角度閾値θ1thよりも小さい場合、当該連続構造物角度θcpの連続構造物は、本来自車両SVの前後軸FRと平行であるものとみなされる。連続構造物が自車両SVの前後軸FRと平行であって、且つ、自車両SVが直進している場合、当該連続構造物と自車両SVとは衝突しない。従って、連続構造物角度θcpの大きさが角度閾値θ1thよりも小さい場合、CPU31は、ステップ424にて「No」と判定して、自車両SVが連続構造物と衝突しないと判断して、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。この結果、衝突回避制御は実施されない。
一方、連続構造物角度θcpの大きさが角度閾値θ1th以上である場合、CPU31は、ステップ424にて「Yes」と判定して、ステップ426に進む。更に、ヨーレートが「0」でない場合、CPU31はステップ422に進んだとき、そのステップ422にて「No」と判定して、ステップ426に進む。ヨーレートが「0」でない場合(即ち、自車両SVが旋回している場合)、連続構造物が自車両SVの前後軸FRと平行であっても、自車両SVは走行予測進路RCR次第でその連続構造物と衝突する可能性がある。このため、ヨーレートが「0」でない場合、CPU31は、ステップ424を実行せずにステップ426に進むようにしている。
ステップ426にて、CPU31は、図4に示すステップ420にて今回算出した連続構造物角度θcpの符号が、ステップ420にて前回算出した連続構造物角度の符号と同じであるか否かを判定する。即ち、ステップ426では、CPU31は、今回の近似線ALから前後軸FRまでの向きが、前回の近似線ALから前後軸FRまでの向きと同じであるか否かを判定する。今回の連続構造物角度θcpの符号が前回の連続構造物角度θcpの符号と同じである場合、CPU31は、今回抽出された連続構造物は前回抽出された連続構造物と同じ物標であると判断して、ステップ426にて「Yes」と判定して、ステップ428に進む。
ステップ428にて、CPU31は、走行状態フラグが「1」に設定されているか否かを判定する。走行状態フラグは、後述する意図操舵操作判定処理(図9を参照。)にて「自車両SVの走行状態が意図操舵操作状態である」と判定された場合に「1」に設定されるフラグである。走行状態フラグは、意図操舵操作状態であると判定された時点から所定時間が経過するまでは「1」に設定され続け、この判定時点から所定時間が経過すると「0」に設定される。
ここで、意図操舵操作判定処理について図9を用いて説明する。
衝突回避ECU10のCPU31は、図4にフローチャートで示したルーチンとは別に、図9にフローチャートで示したルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。図9に示すルーチンは、自車両SVの走行状態が意図操舵操作状態であるか否かを判定するためのルーチンである。
従って、所定のタイミングになると、CPU31は図9のステップ900から処理を開始し、ステップ905に進み、車両状態センサ12に含まれるヨーレートセンサからヨーレートを読み取り、ステップ910に進む。
ステップ910にて、CPU31は、今回ステップ905にて読み取ったヨーレートYr1から、前回ステップ905にて読み取ったヨーレートYr2を減算した値の絶対値(|Yr1-Yr2|)を、ヨーレート変化量AOCとして算出する。即ち、ヨーレート変化量AOCは、今回取得したヨーレートの前回取得したヨーレートからの変化量を示す。
次に、CPU31は、ステップ915に進み、ステップ910にて算出したヨーレート変化量AOCが閾値変化量AOC1th以上であるか否かを判定する。ヨーレート変化量AOCが閾値変化量AOC1th以上である場合、CPU31は、自車両SVが意図操舵操作状態であると判定し、ステップ915にて「Yes」と判定し、ステップ920に進む。ステップ920にて、CPU31は、走行状態フラグを「1」に設定し、ステップ925に進み、タイマ値TMを「0」に設定することによってタイマ値TMを初期化し、ステップ995に進み、本ルーチンを一旦終了する。
一方、ヨーレート変化量AOCが閾値変化量AOC1thよりも小さい場合、CPU31は、ステップ915に進んだとき、そのステップ915にて「No」と判定し、ステップ930に進み、走行状態フラグが「1」に設定されているか否かを判定する。
走行状態フラグが「1」に設定されている場合、CPU31は、ステップ930にて「Yes」と判定し、ステップ935に進み、現在のタイマ値TMに「1」を加算した値を新たなタイマ値TMに設定して、ステップ940に進む。
ステップ940にて、CPU31は、ステップ935にて新たに設定されたタイマ値TMがタイマ閾値TM1thよりも大きいか否かを判定する。タイマ値TMがタイマ閾値TM1th以下である場合、自車両SVが意図操舵操作状態であると判定された時点(ステップ920にて走行状態フラグが「1」に設定された時点)から所定時間が経過していない。このため、CPU31は、自車両SVが意図操舵状態であるとみなし、ステップ940にて「No」と判定し、ステップ995に進み、本ルーチンを一旦終了する。
意図操舵操作の開始時には自車両SVのヨーレート変化量は大きくなる傾向があるが、意図操舵操作中の自車両SVのヨーレート変化量は小さくなる傾向がある。このため、意図操舵操作状態であると判定された時点から所定時間が経過するまでは、CPU31は、ヨーレート変化量AOCが閾値変化量AOC1thよりも小さくても、自車両SVが意図操舵操作状態であるとみなし、走行状態フラグを「1」に設定したままにする。これによって、意図操舵操作状態であると判定された時点から所定時間が経過するまでは、ヨーレート変化量AOCによらず、閾値時間Tthは操舵時閾値時間T2thに設定されることになる。従って、意図操舵操作中であっても、衝突回避制御が実施される可能性を確実に低減することができ、意図操舵操作中に衝突回避制御が実施されて、ドライバーが衝突回避制御を煩わしいと感じる可能性を低減することができる。
一方、タイマ値TMがタイマ閾値TM1よりも大きい場合、ステップ920にて走行状態フラグが「1」に設定された時点から所定時間が経過しているので、CPU31は、ステップ940にて「Yes」と判定し、ステップ945に進む。ステップ945にて、CPU31は、走行状態フラグを「0」に設定し、ステップ995に進み、本ルーチンを一旦終了する。
なお、走行状態フラグは、「1」に設定された時点から所定時間が経過する前であっても、以下の何れかが成立する場合には、「0」に設定される(後述する図4のステップ438を参照。)。
・ステップ416にて障害物が連続構造物でないと今回判定された場合
・今回の連続構造物角度θcpの符号が前回の連続構造物角度θcpの符号と異なる場合
図4に戻り、衝突回避制御処理の説明を続ける。CPU31がステップ428を実行する時点において、走行状態フラグが「1」に設定されていない場合、即ち、走行状態フラグが「0」に設定されている場合、CPU31は、そのステップ428にて「No」と判定して、ステップ430に進む。ステップ430にて、CPU31は、閾値時間Tthを通常閾値時間T1thに設定し、ステップ432に進む。
ステップ432にて、CPU31は、最小の衝突所要時間TTCが「通常閾値時間T1thに設定された閾値時間Tth」以下であるか否かを判定する。最小の衝突所要時間TTCが閾値時間T1th以下である場合、CPU31はステップ432にて「Yes」と判定して、ステップ434に進み、衝突回避制御を実施して、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
衝突回避制御は、障害物との衝突を回避するために自車両SVの速度を低下させて自車両SVを停止させるための制動を自動的に行う制動回避制御、及び、障害物との衝突を回避するために自車両SVの舵角を自動的に変更する旋回回避制御の少なくとも一方を含む。
制動回避制御においては、CPU31は、自車両SVの速度及び衝突所要時間TTCに基づいて目標減速度を算出する。具体的には、「自車両SVの速度及び衝突所要時間TTCと目標減速度との関係」が規定された目標減速度情報がルックアップテーブル(マップ)形式でROM32に記憶されている。目標減速度情報では、自車両SVの速度が大きいほど目標減速度が大きくなり、衝突所要時間TTCが小さいほど目標減速度が大きくなる。
CPU31は、目標減速度情報を参照して、自車両SVの速度及び衝突所要時間TTCに対応する目標減速度を決定する。そして、CPU31は、決定した目標減速度をブレーキECU20に送信する。この結果、ブレーキECU20は、実際の減速度が目標減速度と等しくなるようにブレーキアクチュエータ22を制御して、必要となる制動力を発生させる。
旋回回避制御においては、CPU31は、障害物を回避するために必要な目標舵角を算出し、算出した目標舵角をステアリングECU40に送信する。ステアリングECU40は、実際の舵角が目標舵角と等しくなるように転舵用モータ42を、モータドライバ41を介して制御する。
更に、CPU31がステップ436の処理を実行する時点において、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tthより大きい場合、CPU31は、そのステップ436にて「No」と判定して、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。この結果、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tthより大きい場合、衝突回避制御は実施されない。
更に、CPU31がステップ428の処理を実行する時点において、走行状態フラグが「1」に設定されている場合、CPU31はそのステップ428にて「Yes」と判定して、ステップ436に進む。ステップ436にて、CPU31は、閾値時間Tthを操舵時閾値時間T2thに設定し、ステップ432に進む。操舵時閾値時間T2thは、通常閾値時間T1thよりも小さな値に設定されている。このため、操舵時閾値時間T2thが閾値時間Tthに設定された場合、通常閾値時間T1が閾値時間Tthに設定された場合よりも、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tth以下となり難くなる。換言すれば、最小の衝突所要時間TTCの障害物点を含む障害物が連続構造物であり且つ自車両SVが意図操舵操作状態である場合、自車両SVが意図操舵操作状態でない場合よりも、衝突回避制御を実施するための支援実施条件が成立し難くなる。
最小の衝突所要時間TTCが「操舵時閾値時間T2thに設定された閾値時間Tth」以下であれば、CPU31は、ステップ432にて「Yes」と判定して、ステップ434にて衝突回避制御を実施して、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。一方、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tthより大きい場合、CPU31は、ステップ432にて「No」と判定して、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
一方、CPU31がステップ426の処理を実行する時点において、今回の連続構造物角度θcpの符号が前回の連続構造物角度θcpの符号と異なる場合、CPU31は、ステップ426にて「No」と判定して、ステップ438に進み、走行状態フラグを「0」に設定し、ステップ430に進む。ステップ430以降の処理は前述したとおりであるので、説明を省略する。
今回と前回とで連続構造物角度θcpの符号が異なる場合、今回抽出された連続構造物は前回抽出された連続構造物と異なる物標である。この場合に走行状態フラグが「1」に設定されていれば、ドライバーの意図的な操舵操作が行われていることを意味する。しかし、ドライバーが、今回抽出された連続構造物を認識して、操舵操作を行っているか否かについてはこの時点で不明である。即ち、ドライバーは、今回抽出された連続構造物を認識せずに、前回抽出された連続構造物のみを認識して操舵操作を行っている可能性もある。このため、CPU31は、ステップ438にて走行状態フラグを「0」に設定して、ステップ430にて閾値時間Tthを通常閾値時間T1thに設定する。これによって、ドライバーが認識していない可能性のある連続構造物に対して衝突回避制御が実施される可能性を高くすることができる。
更に、CPU31がステップ416の処理を実行する時点において、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物が連続構造物でない場合、CPU31は、そのステップ416にて「No」と判定して、ステップ438に進む。
ステップ438にて、CPU31は、走行状態フラグを「0」に設定し、ステップ430に進む。ステップ430以降の処理は前述したとおりであるので、説明を省略する。これによって、今回抽出された障害物が連続構造物でない場合、CPU31は閾値時間Tthを通常閾値時間T1thに設定することができる。
以上の例から理解されるように、第1装置は、障害物点を含む障害物が連続構造物であり且つ自車両SVの走行状態が意図操舵操作状態である場合、閾値時間Tthを操舵時閾値時間T2thに設定する。
これによって、ドライバーが意図的な操舵操作を行っている場合、衝突回避制御が実施され難くなるので、ドライバーが衝突回避制御に対して煩わしさを感じる可能性を低減することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る衝突回避制御装置(以下、「第2装置」と称呼される場合がある。)について説明する。第2装置は、障害物点を含む障害物が連続構造物であり且つ自車両SVの走行状態が意図操舵操作状態である場合、最小の衝突所要時間TTCの値が大きくなるように補正し、補正後の衝突所要時間TTCが閾値時間Tth以下であるか否かを判定する点のみにおいて、第2装置と相違している。この場合の閾値時間Tthは、第1装置の通常閾値時間T1thと同じ値に設定されている。以下、この相違点を中心として説明する。
第2装置のCPU31は、図4でフローチャートにより示したルーチンの代わりに図10でフローチャートにより示したルーチンを実行する。図10に示したステップのうち、図4に示したステップと同じ処理が行われるステップには、図4のそのようなステップに付した符号と同じ符号が付されている。それらのステップについての詳細な説明は省略される。
所定のタイミングになると、CPU31は、図10のステップ1000から処理を開始する。その後、CPU31がステップ428に進んだとき、走行状態フラグが「1」に設定されていない場合(即ち、走行状態フラグが「0」に設定されている場合)、CPU31はそのステップ428にて「No」と判定し、ステップ432に進む。ステップ432にて、CPU31は、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tth以下であるか否かを判定する。最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tth以下である場合、CPU31はステップ432にて「Yes」と判定して、ステップ434に進み、衝突回避制御を実施して、ステップ1095に進み、本ルーチンを一旦終了する。一方、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tth以下である場合、CPU31はステップ432にて「No」と判定して、ステップ1095に進み、本ルーチンを一旦終了する。
一方、CPU31がステップ428の処理を実行する時点において、走行状態フラグが「1」に設定されている場合、CPU31はそのステップ428にて「Yes」と判定し、ステップ1005に進む。
ステップ1005にて、CPU31は、最小の衝突所要時間TTCに「1より大きな所望の値に設定されたゲインG」を乗じて、補正後の衝突所要時間TTCgを算出し、ステップ432に進む。この補正後の衝突所要時間TTCgは、補正前の最小の衝突所要時間TTCより大きくなる。
ステップ432にて、CPU31は、補正後の衝突所要時間TTCgが閾値時間Tth以下であるか否かを判定する。補正後の衝突所要時間TTCgが閾値時間Tth以下である場合、CPU31は、衝突回避制御を実施する。一方、補正後の衝突所要時間TTCgが閾値時間Tthより大きい場合、CPU31は、衝突回避制御を実施しない。
このように、第2装置は、障害物点を含む障害物が連続構造物であり且つ自車両SVの走行状態が意図操舵操作状態である場合、衝突回避制御を実行すべきか否かの判断に使用される最小の衝突所要時間TTCが大きくなるように補正する。これによって、ドライバーが意図的な操舵操作を行っている場合、衝突回避制御が実施され難くなるので、ドライバーが衝突回避制御に対して煩わしさを感じる可能性を低減することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る衝突回避制御装置(以下、「第3装置」と称呼される場合がある。)について説明する。第3装置は、点間距離Lが閾値距離L1以上であっても、点間距離Lが後述する補間可能距離Lc以下であれば、この点間距離Lを算出した基準点及び処理対象点を順方向の連続点として抽出する点が、第1装置及び第2装置と相違している。以下、この相違点を中心として説明する。
第3装置のCPU31は、図6でフローチャートにより示したルーチンの代わりに図11でフローチャートにより示したルーチンを実行する。図11に示したステップのうち、図6に示したステップと同じ処理が行われるステップには、図6のそのようなステップに付した符号と同じ符号が付されている。それらのステップについての詳細な説明は省略される。
所定のタイミングになると、CPU31は、図11のステップ1100から処理を開始する。その後、CPU31がステップ630に進んだとき、点間距離Lが閾値距離L1th以上である場合、そのステップ630にて「No」と判定し、ステップ1105に進み、補間可能距離Lcを算出する補間可能距離算出処理を実行する。実際には、CPU31はステップ1105に進むと、図12にフローチャートで示したサブルーチンを実行する。
即ち、CPU31は、ステップ1105に進むと、図12のステップ1200から処理を開始し、ステップ1205乃至ステップ1215の処理をこの順に行う。
ステップ1205:CPU31は、順方向連続点抽出処理でこれまでに抽出された連続点並びに「現在選択されている基準点及び処理対象点」の自車両SVに対する位置に基づいて、これらの点の連続点近似線AL’(図14A及び図14Bを参照。)を、最小二乗法を利用して算出する。
ステップ1210:CPU31は、ステップ1105にて算出された連続点近似線AL’の自車両SVの前後軸方向FRに対する角度を連続点角度θc(図14A及び図14Bを参照。)として算出する。
ステップ1215:CPU31は、補間可能距離情報60(図13を参照。)を参照して、自車両SVの速度V及び連続点角度θcの大きさに対応する補間可能距離Lcを算出し、ステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了し、図11に示すステップ1110に進む。
ここで、補間可能距離情報60の詳細について図13を用いて説明する。補間可能距離情報60では、連続点角度θcの大きさ及び自車両SVの速度Vとこれらに対応する補間可能距離Lcとの関係が規定されている。補間可能距離情報60はルックアップテーブル(マップ)形式でROM32に記憶されている。連続点角度θcの大きさが同じ値である場合、自車両SVの速度Vが大きいほど補間可能距離Lcは大きくなり、自車両SVの速度Vが同じ値である場合、連続点角度θcの大きさが大きいほど、補間可能距離Lcは小さくなる。図13に示す補間可能距離情報60においては、連続点角度θcの大きさが「10deg」であって、且つ、自車両SVの速度Vが「40m/h」である場合の補間可能距離Lcは「5.0m」に設定される。更に、図13に示す補間可能距離情報60においては、連続点角度θcの大きさが「10deg」であって、且つ、自車両SVの速度Vが「80km/h」である場合の補間可能距離Lcは「7.0m」に設定されている。
補間可能距離Lcについて図14A及び図14Bを用いて説明する。補間可能距離Lcは、自車両SVが速度Vで予め設定された緊急回避ヨーレートYrで自車両SVが旋回したと仮定した場合に、連続点角度θcの仮想線VLを自車両SVが通過するために必要な仮想線VL上の長さである。換言すれば、補間可能距離Lcは、速度V且つ緊急回避ヨーレートYrで旋回したと仮定した自車両SVの左側面と連続点角度θcの仮想線VLとの交点LIP(図14A及び図14Bを参照。)と、自車両SVの右側面と連続点角度θcの仮想線VLとの交点RIP(図14A及び図14Bを参照。)と、の間の距離である。なお、図14A及び図14Bに示す自車両SVの位置は、連続点角度θcの仮想線VLに対して緊急回避ヨーレートYrで旋回した場合の仮想的な位置である。
図14Aでは、自車両SVの速度Vが「V1」であって、且つ、連続点角度θcの大きさが「θc1」である場合の補間可能距離Lcである「Lc1」を示す。図14Bでは、自車両SVの速度Vが「V1」であって、且つ、連続点角度θcの大きさが「θc2」である場合の補間可能距離Lcである「Lc2」を示す。緊急回避ヨーレートYrは連続点角度θc及び自車両SVの速度Vによらず予め設定された一定の値である。図14Bに示す連続点角度θc2の大きさは、図14Aに示す連続点角度θc1の大きさよりも大きい。このため、自車両SVの速度Vが同じである場合、図14Bに示す補間可能距離Lc2は、図14Aに示す補間可能距離Lc1よりも小さくなる。
前述した補間可能距離Lcが自車両SVの速度V及び連続点角度θcの大きさに応じて予め算出されて、速度V及び連続点角度θcの大きさと補間可能距離Lcとの関係が補間可能距離情報60として予め登録されている。なお、図6のステップ630における閾値距離L1thは、補間可能距離情報60に登録された最小の補間可能距離Lc以下の値に設定されている。
点間距離Lが補間可能距離Lc以下である場合、現在選択されている基準点と処理対象点との間の領域を自車両SVが通過することができない。このため、ドライバーは、基準点と処理対象点との間の領域を通過するように自車両SVを操舵することはなく、CPU31が、現在選択されている処理対象点を連続点として抽出しても、問題は生じない。従って、点間距離Lが補間可能距離Lc以下である場合、CPU31は、ステップ1110にて「Yes」と判定し、ステップ635に進む。ステップ635にて、基準点及び処理対象点を順方向の連続点として抽出し、ステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了し、図5のステップ520に進む。
一方、点間距離Lが補間可能距離Lcより大きい場合、現在選択されている基準点と処理対象点との間の領域を自車両SVが通過することができる。このため、ドライバーは、基準点と処理対象点との間の領域を通過するように自車両SVを操舵する可能性がある。従って、CPU31がこれらの基準点及び処理対象点を連続点として抽出し、これらの基準点及び処理対象点を連続構造物の一部として判定すると、不要な衝突回避制御を実施してしまう可能性がある。よって、点間距離Lが補間可能距離Lcより大きい場合、CPU31は、ステップ1110にて「No」と判定し、ステップ640に進む。
以上説明したように、CPU31は、基準点と処理対象点との間の点間距離Lが閾値距離L1th以上であっても、点間距離Lが補間可能距離Lc以下であれば、当該基準点及び当該処理対象点を連続点として抽出する。一般に、ガードレールの支柱部は特徴点が抽出されやすく、ガードレールのビーム部は特徴点が抽出され難いという傾向がある。ビーム部において特徴点が欠落している場合であっても、当該特徴点が欠落した領域を挟む二つの特徴点間の点間距離Lが補間可能距離Lc以下であれば、CPU31は、当該領域を連続構造物の一部として認定できる。この結果、障害物が連続構造物であるか否かの判定精度を高めることができる。
<第3実施形態の変形例>
次に、第3装置の変形例について説明する。第3装置の変形例は、以下の点において第3装置と相違している。
・連続構造物判定処理において、順方向の連続点間の距離の合計が連続構造物判定距離より大きい場合、当該連続点の中に、後述する連続構造物確率が「0」である連続点が存在するか否かを判定する点
・連続構造物確率が「0」である連続点が存在する場合、後述する信頼点間距離Lsが補間可能距離Lc以下であるとき、障害物が連続構造物であると判定する点。
以下、この相違点を中心として説明する。
本変形例では、カメラセンサ11が有する画像処理装置は、抽出した特徴点に対して後述する連続構造物らしさを示す連続構造物確率を算出する。連続構造物確率は「0」又は「1」の2値で示される。具体的には、画像処理装置は、特徴点を含む所定の大きさの領域の画像の特徴量を算出する。この所定の大きさの領域の画像の特徴量の算出方法自体は周知の技術である(例えば、特開2015-166835号公報を参照。)。そして、画像処理装置は、算出した特徴量と「予め画像処理装置に登録されている連続構造物特徴量」との差の大きさが閾値より大きい場合、当該特徴点の連続構造物確率を「0」と算出する。一方、画像処理装置は、算出した特徴量と連続構造物特徴量との差の大きさが閾値以下である場合、当該特徴点の連続構造物確率を「1」と算出する。連続構造物確率が「1」である特徴点は、連続構造物確率が「0」である特徴点よりも、連続構造物の構成要素である可能性が高いことを示す。連続構造物特徴量は、予め用意された連続構造物の画像に基づいて予め算出された特徴量であり、画像処理装置に予め登録されている。例えば、連続構造物がガードレールである場合、支柱部の連続構造物特徴量及びビーム部の連続構造物特徴量等が画像処理装置に登録されている。
更に、画像処理装置は、特徴点の連続構造物確率を物標情報の一つとして所定時間が経過する毎に衝突回避ECU10に送信する。
本変形例のCPU31は、図5でフローチャートにより示したルーチンの代わりに図15でフローチャートにより示したルーチンを実行する。図15に示したステップのうち、図5に示したステップと同じ処理が行われるステップには、図5のそのようなステップに付した符号と同じ符号が付されている。それらのステップについての詳細な説明は省略される。
CPU31は、図4に示すステップ414に進むと、
図15のステップ1500から処理を開始する。CPU31は、ステップ505乃至515の処理を実行し、順方向の連続点を抽出し、ステップ520に進む。順方向の連続点間の距離の合計が連続構造物判定距離より大きい場合、CPU31は、ステップ520にて「Yes」と判定し、ステップ1505に進む。
ステップ1505にて、CPU31は、ステップ515にて抽出された連続点のうち、連続構造物確率が「0」である連続点が存在するか否かを判定する。前述したように、各特徴点の連続構造確率は物標情報に含まれている。
ステップ515にて抽出された連続点のうち連続構造物確率が「0」である連続点が存在しない場合、CPU31は、ステップ1505にて「No」と判定し、ステップ540に進み、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物が連続構造物であると判定し、ステップ1595に進み、本ルーチンを一旦終了し、図4に示すステップ416に進む。
一方、ステップ515にて抽出された連続点のうち、連続構造物確率が「0」である連続点が存在する場合、CPU31は、ステップ1505にて「Yes」と判定して、ステップ1510に進む。ステップ1510にて、CPU31は、補間可能距離算出処理を実行する。実際には、CPU31は、ステップ1510に進むと、図12にフローチャートで示したサブルーチンを実行する。この補間可能距離算出処理においては、ステップ1005にて、ステップ515にて抽出された連続点の近似線を連続点近似線AL’として算出する。その他の処理については、第3実施形態で説明した補間可能距離算出処理と同じであるので、詳細な説明を省略する。
その後、CPU31は、ステップ1515に進み、連続点構造物確率「0」の連続点を挟む連続構造物確率「1」の二つの連続点間の距離を示す信頼点間距離Lsを算出して、ステップ1520に進む。具体的には、連続点構造物確率「0」の連続点が一つである場合、CPU31は、「順方向において当該連続構造物確率「0」の連続点に最も近い連続構造物確率「1」の連続点」と「反対方向において当該連続構造物確率「0」の連続点に最も近い連続構造物確率「1」の連続点」との間の距離を信頼点間距離Lsとして算出する。連続点構造物確率「0」の複数の連続点が連続する場合、CPU31は、「当該複数の連続点のうち最も順方向側に位置する連続点に順方向において最も近い連続構造物確率「1」の連続点」と「当該複数の連続点のうち最も反対方向側に位置する連続点に反対方向において最も近い連続構造物確率「1」の連続点」との間の距離を信頼点間距離Lsとして算出する。
ステップ1520にて、CPU31は、ステップ1515にて算出された信頼点間距離Lsがステップ1510にて算出された補間可能距離Lc以下であるか否かを判定する。信頼点間距離Lsが補間可能距離Lc以下である場合、連続構造物確率「0」の連続点が位置する領域を自車両SVが通過することができない。このため、ドライバーは、当該領域を通過するように自車両SVを操舵することはなく、CPU31が、当該領域を連続構造物の一部であると判定しても、問題は生じない。従って、信頼点間距離Lsが補間可能距離Lc以下である場合、CPU31はステップ1520にて「Yes」と判定して、ステップ540に進み、障害物が連続構造物であると判定し、ステップ1595に進み、本ルーチンを一旦終了し、図4に示すステップ416に進む。
一方、信頼点間距離Lsが補間可能距離Lcより大きい場合、連続点構造物確率「0」の連続点が位置する領域を自車両SVが通過することができる。このため、ドライバーは、当該領域を通過するように自車両SVを操舵する可能性があり、CPU31が当該領域を連続構造物の一部であると判定すると、不要な衝突回避制御を実施してしまう可能性がある。従って、信頼点間距離Lsが補間可能距離Lcより大きい場合、CPU31はステップ1520にて「No」と判定して、連続点構造物確率「0」の連続点が位置する領域を連続点構造物の一部として判定しない。この結果、順方向の連続点間の距離の合計が連続構造物判定距距離以下となるため、CPU31は、ステップ535に進み、衝突所要時間TTCが最小となる障害物点を含む障害物は連続構造物でないと判定する。そして、CPU31は、ステップ1595に進み、本ルーチンを一旦終了し、図4に示すステップ416に進む。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。意図操舵操作判定処理(図9を参照。)では、第1装置及び第2装置は、ドライバーの操舵量に相関を有する操舵指標値としてヨーレートを用いて、ヨーレート変化量AOCが閾値変化量AOC1th以上であるか否かを判定することによって、自車両SVが意図操舵操作状態であるか否かを判定した。この意図操舵操作判定処理に用いられる操舵指標値はヨーレートに限定されない。例えば、ヨーレートの代わりに「舵角センサが取得した操舵輪の舵角」が用いられてもよい。なお、前述したように、この操舵輪の舵角は車両状態情報に含まれる。
より詳細には、図9のステップ905にて、CPU31は、車両状態センサ12に含まれる舵角センサが取得した操舵輪の舵角を読み取り、ステップ910に進む。ステップ910にて、CPU31は、今回ステップ905にて読み取った舵角から、前回ステップ905にて読み取った舵角を減算した値の絶対値を、舵角変化量AOC’として算出する。
次に、CPU31は、ステップ915に進み、ステップ910にて算出した舵角変化量AOC’が閾値変化量AOC2th以上であるか否かを判定する。舵角変化量AOC’が閾値変化量AOC2th以上である場合、CPU31は、自車両SVが意図操舵操作状態であると判定し、ステップ915にて「Yes」と判定し、ステップ920以降の処理に進む。ステップ920以降の処理は、図9と同じであるので説明を省略する。
一方、舵角変化量AOC’が閾値変化量AOC2thよりも小さい場合、CPU31は、ステップ915に進んだとき、そのステップ915にて「No」と判定し、ステップ930以降のに進む。ステップ930以降の処理は、図9と同じであるので説明を省略する。
更に、上記実施形態では、衝突に関する緊急度合を示す衝突指標値として、衝突所要時間TTCを用いる例について説明したが、これに限定されない。例えば、CPU31は、図4及び図10に示すステップ412にて各障害物点に対して衝突所要時間TTCを算出する代わりに、各障害物点に対して衝突回避のための減速度を算出してもよい。
衝突所要時間TTCが最小の障害物点が衝突に関する緊急度合が最も高いのに対して、減速度が最大の障害物点が衝突に関する緊急度合が最も高い。
即ち、CPU31は、ステップ414に進むと、減速度が「最大」の障害物点を含む障害物が連続構造物であるか否かを判定する。更に、CPU31は、ステップ432に進むと、CPU31は、最大の減速度が閾値減速度Vth以上であるか否かを判定する。最大の減速度が閾値減速度Vth以上である場合、CPU31は、ステップ432にて「Yes」と判定し、衝突回避制御を実施する。一方、最大の減速度が閾値減速度Vthよりも小さい場合、CPU31は、ステップ432にて「No」と判定し、衝突回避制御を実施しない。
衝突指標値として減速度を用いる場合の第1装置においては、CPU31は、減速度が最大の障害物点を含む障害物が連続構造物であり且つ自車両SVが意図操舵操作状態である場合、図4に示すステップ436にて、閾値減速度Vthに操舵時閾値減速度V2thを設定する。なお、操舵時閾値減速度V2thは、通常閾値減速度V1thよりも大きい値に設定されている。このため、特殊条件が成立している場合、特殊条件が成立していない場合に比較して、支援実施条件が成立したと判定され難くなる。
更に、衝突指標値として減速度を用いる場合の第2装置においては、CPU31は、減速度が最大の障害物点を含む障害物が連続構造物であり且つ自車両SVが意図操舵操作状態である場合、図10に示すステップ1005にて、最大の減速度に「1より小さな所望の正の値に設定されたゲインG」を乗じて、補正後の減速度を算出し、ステップ432に進む。この補正後の減速度は、補正前の最大の減速度より小さくなる。このため、特殊条件が成立している場合、特殊条件が成立していない場合に比較して、支援実施条件が成立したと判定され難くなる。
更に、CPU31は、図5におけるステップ520にて「Yes」と判定した場合、順方向と反対方向の連続点を抽出する反対方向連続点抽出処理を実行してもよい。この反対方向連続点抽出処理は、図6に示す順方向連続点抽出処理と同様の処理であるので、説明を省略する。
更に、CPU31は、図4及び図10に示すステップ434にて、制動回避制御及び旋回制御の少なくとも一方を含む衝突回避制御を実施したが、衝突回避制御はこれに限定されない。
例えば、第1装置及び第2装置は、衝突回避制御として図示しない表示器(HUD等)に注意喚起画面を表示してもよい。注意喚起画面は、最小の衝突所要時間TTCが閾値時間Tth以下となる障害物点の方向にドライバーの視線を誘導する画面である。これによって、ドライバーの視線が障害物点の方向に誘導されるので、ドライバーは障害物点を含む障害物に対する衝突回避操作をいち早く開始することができる。更に、第1装置及び第2装置は、衝突回避制御として図示しないスピーカから警報音を出力してもよい。
第1装置及び第2装置は、カメラセンサ11からの物標情報のみに基づいて特徴点と自車両SVとの間の距離を特定した。しかし、第1装置及び第2装置は、カメラセンサ11からの物標情報に加えて、図示しないレーダーセンサからの物標情報に基づいて、特徴点と自車両SVとの間の距離を特定してもよい。自車両SVのフロントバンパーの車幅方向中心位置に前方レーダーセンサが設けられ、自車両SVのフロントバンパーの右コーナー部及び左コーナー部にそれぞれ前側方レーダーセンサが設けられている。これらのレーダーセンサを「レーダーセンサ」と総称する。レーダーセンサは、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」とも称呼される。)を放射する。ミリ波の放射範囲内に物標が存在する場合、物標はレーダーセンサから放射されたミリ波を反射する。レーダーセンサは、その反射波を受信し、その反射波に基づいて、自車両SVと物標のミリ波を反射した点(反射点)との間の距離、当該反射点の自車両SVに対する方位及び当該反射点の自車両SVに対する相対速度等を検出する。そして、レーダーセンサは、車両と物標のミリ波を反射した点(反射点)との間の距離及び当該反射点の自車両SVに対する方位を含む位置情報と、反射点の自車両SVに対する相対速度と、を含む物標情報を、所定時間が経過する毎に衝突回避ECU10に送信する。
第1装置及び第2装置は、カメラセンサ11から物標情報に含まれる特徴点とレーダーセンサからの物標情報に含まれる反射点とが同定できる場合、当該特徴点の自車両SVに対応する方位としてカメラセンサ11から物標情報に含まれる方位を用いる。更に、この場合、第1装置及び第2装置は、当該特徴点と自車両SVとの間の距離として、レーダーセンサからの物標情報に含まれる当該特徴点と同定される反射点と自車両SVとの間の距離を用いる。カメラセンサ11による方位の抽出精度はレーダーセンサによる方位の抽出精度よりも高く、レーダーセンサによる距離の抽出精度はカメラセンサ11による方位の抽出精度よりも高いためである。更に、第1装置及び第2装置は、当該特徴点の自車両SVに対する相対速度は、レーダーセンサからの物標情報に含まれる当該特徴点と同定される反射点の相対速度を用いることができる。前述した方法によれば、第1装置及び第2装置は特徴点の正確な位置及び相対速度を算出することができる。
更に、特徴点の連続構造物確率が「0」又は「1」の2値で示されるものとして説明したが、これに限定されない。カメラセンサ11の画像処理装置は、特徴点を含む所定の大きさの領域の特徴量と連続構造物特徴量とに基づいて「0」乃至「1」の範囲の値で示される連続構造物確率を算出してもよい。
この場合、図15のステップ1505においては、CPU31は、抽出された連続点において、連続構造物確率が閾値確率P1th以下である連続点が存在するか否かを判定する。連続構造物確率が閾値確率P1th以下である連続点が存在する場合、CPU31は、ステップ1505にて「Yes」と判定する。一方、連続構造物確率が閾値確率P1th以下である連続点が存在しない場合、CPU31は、ステップ1505にて「No」と判定する。
更に、図4のステップ420にて、連続構造物角度θcpは、自車両SVの車幅方向の中央を通る前後軸FRを角度基準線として、連続構造物の近似線ALの当該角度基準線に対する角度として算出された。しかし、角度基準線は、前後軸FRと平行であれば自車両SVの車幅方向の何れの位置を通る直線であればよい。
更に、近似線ALから前後軸FRまでの向きが反時計回りであれば、連続構造物角度θcpの符号が正であり、近似線ALから前後軸FRまでの向きが時計回りであれば、連続構造物角度θcpの符号が負であると説明した。しかし、近似線ALから前後軸FRまでの向きが時計回りであれば、連続構造物角度θcpの符号が正であり、近似線ALから前後軸FRまでの向きが反時計回りであれば、連続構造物角度θcpの符号が負であってもよい。