JP7268618B2 - 1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物及びその硬化物 - Google Patents

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Description

本発明は、熱硬化させることでシリコーンゴム(硬化物)となる保存安定性に優れた1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物、及び該組成物の熱硬化物であるシリコーンゴム硬化物に関する。
シリコーンゴムは、優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪性、耐熱性、耐寒性等の特性を有しているため、電気機器、自動車、建築、医療、食品を初めとして様々な分野で広く使用されている。例えば、リモートコントローラー、タイプライター、ワードプロセッサー、コンピューター端末、楽器等のゴム接点として使用されるラバーコンタクト;建築用ガスケット;複写機用ロール、現像ロール、転写ロール、帯電ロール、給紙ロール等の各種ロール;オーディオ装置等の防振ゴム;コンピューターに使用されるコンパクトディスク用パッキンなどの用途が挙げられる。現在、シリコーンゴムの需要は益々高まっており、優れた特性を有するシリコーンゴムの開発が望まれている。
この中でも、ヒドロシリル化付加反応を利用した付加架橋性(addition crossliking)シリコーンゴム組成物を使用するとき、これらの反応性の組成物は一旦調製されると室温(23℃±15℃)においてすら有限の硬化速度を有するという問題が一般に生じる。これは特に技術的障害により又は他の理由で機械を相対的に長い期間停止しなければならない場合に問題となる。この場合、機械に残っている反応性シリコーンゴム組成物は室温においても架橋し、これは、プロセスを再び開始することができる前に洗浄処理を行わなければならなくなる。
この理由で、理想的には室温で全く硬化反応が進行せず、そしてプロセス条件下においてできるだけ高い反応速度を有する付加架橋性シリコーンゴム組成物に対して長い間市場の要求がある。
上述した成分を含有するミラブル型シリコーンゴム組成物は、通常、1つの成分にポリオルガノヒドロシロキサンを含み、もう一方の成分にヒドロシリル化触媒を含む、2つの別個の混合物の形態でこれらが貯蔵される場合にのみ長期間貯蔵することが可能となる。そのため、架橋の前に、2つの成分は互いに十分に混練されなければならない。工業界においては、必要とされる混合比率に適合するように、及び付随して起こる混練物の中への気泡の混ぜ込みを防ぐために、ここで注意を払う必要がある。さらに混練装置も必要とされる。
ここで、付加架橋性(addition crossliking)シリコーンゴム組成物を使用するとき、1成分型のミラブル型シリコーンゴム組成物は反応性の混合物であるため、一旦調製されると室温においてすら有限の硬化速度を有するという問題が一般に生じる。そのため、1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物は室温においても架橋し、保存安定性に乏しいという欠点を抱えていた。
そのような欠点を回避するための技術として、欧州特許出願公開第2050768A1号明細書(特許文献1)には、脂肪族炭素-炭素多重結合を有する有機化合物又はオルガノシリコーン化合物(A)、Siに結合した少なくとも2つの水素原子を有するオルガノシリコーン化合物(B)、脂肪族炭素-炭素多重結合を有するSiに結合している部位と、Siに結合した水素原子とを有するオルガノシリコーン化合物(C)、及び、白金が+2の酸化状態で存在する架橋触媒としての白金-亜リン酸錯体(D)、から作られた硬化性シリコーン組成物が記載されている。触媒は、例えば二塩化白金などの白金塩を亜リン酸塩と反応させることによって合成される。そのため、触媒を簡単に得ることができず、たとえ得たとしても、触媒の活性が高すぎ、経時変化してしまう問題を抱えていた。
米国特許第6,706,840号明細書(特許文献2)には、エポキシオレフィン(A)、オルガノヒドロシロキサン(B)、及び架橋触媒としての白金-亜リン酸錯体(C)、から作られた硬化性シロキサン組成物が記載されている。ここでの白金は+2の酸化状態で存在する。しかし上記同様、白金-亜リン酸錯体(C)を使用しているため、欧州特許出願公開第2050768A1号明細書と同じ問題を抱えている。
米国特許第4,256,616号明細書(特許文献3)には、ビニルオルガノポリシロキサン(A)、ポリオルガノヒドロシロキサン(B)、白金-亜リン酸錯体(C)(白金は酸化状態0で存在)、及びスズ塩(D)、から作られた硬化性シロキサン組成物が記載されている。しかし、スズ塩は一般的に健康に有害であるため、使用用途に限りが生じていた。
米国特許第4,329,275号明細書(特許文献4)には、ビニル基を有するポリオルガノポリシロキサン(A)、ポリオルガノヒドロシロキサン(B)、白金化合物(C)、リン化合物(D)、及びヒドロペルオキシド基を含まない有機過酸化物(E)、から作られた熱硬化型ポリシロキサン組成物が記載されている。この場合、有機過酸化物の安定性によっては、良好な保存性を得ることができないという問題を生じていた。
独国特許出願公表第60316102T2号明細書(特許文献5)には、分岐したビニル基含有ポリオルガノシロキサン(A)、ポリオルガノヒドロシロキサン(B)、白金触媒(C)、亜リン酸トリエステル(D)、及び有機過酸化物(E)、から作られた1液型オルガノポリシロキサンゲル組成物が記載されている。中でも亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)について述べられている。存在する有機過酸化物の量は、亜リン酸トリエステルを基準として少なくとも2当量である。この場合、有機過酸化物の安定性によっては、良好な保存性を得ることができないという問題のほかに、選択する亜リン酸トリエステル、例えば亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)を選択した場合、常温で固体であるため、必ずキシレンなどの有機溶剤に溶解させてから添加する必要性が生じ、組成物中に必ず有機溶剤が含まれてしまうという問題を抱えていた。この問題については、特表2018-503709号公報(特許文献6)も同様である。
また、特開2008-189928号公報(特許文献7)では、ビニル基含有ポリオルガノシロキサン(A)、ポリオルガノヒドロシロキサン(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、アルキルアリール基が結合した亜リン酸エステル、を用いる技術が記載されている。こちらに関してはアルキルアリール基が結合した亜リン酸エステルのアルキル基によって亜リン酸トリエステルの有害性が変化することや、アルキル基のかさ高さや置換基数により固体になってしまい、有機溶剤等で溶解させてから添加することが必須となるため、組成物中に必ず有機溶剤が含まれてしまうという問題も抱えていた。
欧州特許出願公開第2050768A1号明細書 米国特許第6,706,840号明細書 米国特許第4,256,616号明細書 米国特許第4,329,275号明細書 独国特許出願公表第60316102T2号明細書 特表2018-503709号公報 特開2008-189928号公報
従って、本発明の目的は、40℃以下の温度で保存安定性に優れ、かつ有機溶剤などの溶剤含有もなく、非常に少ない白金触媒量でシリコーンゴム(硬化物)となる1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物、及び該組成物の熱硬化物であるシリコーンゴム硬化物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、リン含有率が4~6質量%の範囲内である(即ち、分子量が517~775に相当する)亜リン酸エステル化合物は、空気中で比較的安定であることから、白金-ビニル基含有シロキサン錯体の1種又は2種以上から選択される、有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒と反応(配位)することでも非常に安定した触媒を形成し、かつ上記亜リン酸エステル化合物は、GHSラベル等のピクトグラムによるシンボルマークも該当がほぼないことから人体にも悪影響がほとんどないものであることにより、安全性が高く、保存安定性に優れた1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物を得ることが可能となることを知見した。さらに、使用する亜リン酸エステル化合物の添加量を、上記白金原子1モルに対し、0.9モルを超え1.6モル以下の範囲内である量とし、加えて、アセチレンアルコール化合物、窒素化合物、オキシム化合物及び有機クロロ化合物より選択される少なくとも1種の反応制御剤を併用添加することで、保存安定性と硬化性のバランスが非常に絶妙である1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物及び該組成物の硬化物(シリコーンゴム硬化物)を提供するものである。
[1]
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有する平均重合度が3,000以上の直鎖状ジオルガノポリシロキサン生ゴム: 100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 0.01~50質量部、
(C)比表面積が50m2/g以上の補強性シリカ: 5~100質量部、
(D)白金-ビニル基含有シロキサン錯体の1種又は2種以上から選択される、有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒と、
(E)23℃で液体であり、リン含有率が4~6質量%である亜リン酸エステル化合物を、
上記(D)成分の白金原子1モルに対し(E)成分の亜リン酸エステル化合物が0.9モルを超え1.6モル以下の範囲内で均一に混合されてなる(D)成分と(E)成分との液状反応物: (D)成分が0.00001~0.1質量部となる量、
(F)アセチレンアルコール化合物、窒素化合物、オキシム化合物及び有機クロロ化合物より選択される少なくとも1種の反応制御剤: 0.00001~0.1質量部
を含有する1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
[2]
(A)成分の直鎖状ジオルガノポリシロキサン生ゴムの平均重合度が3,000~100,000である[1]記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
[3]
(D)成分と(E)成分との液状反応物の外観が透明である[1]又は[2]記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
[4]
亜リン酸エステル化合物が、トリス(トリデシル)ホスファイトである[1]~[3]のいずれかに記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
[5]
さらに、(G)成分として充填剤用分散剤を含有するものである[1]~[4]のいずれかに記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の熱硬化物であるシリコーンゴム硬化物。
本発明によれば、40℃以下の温度で保存安定性に優れ、かつ有機溶剤などの溶剤含有もないシリコーンゴム(硬化物)となる1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物を提供することができる。また、本発明の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物を硬化してなるシリコーンゴムは、使用する亜リン酸エステルの分子量が比較的大きいため、空気中で比較的安定であり、かつリン含有量も比較的少ないため、GHSラベル等のピクトグラムによるシンボルマークも該当がほぼないこと、さらには全く有機溶剤等を含んでいないため、非常に安全なシリコーンゴム硬化物を得ることができる。
以下、本発明の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物について詳述する。
なお、本明細書中において、比表面積は、BET法により測定された値である。さらに、ミラブル型シリコーンゴム組成物とは、室温(23℃±15℃)において自己流動性のない(又はほとんどない)非常に高粘度で非液状(固体状又はペースト状)のシリコーンゴム組成物であって、ロールミル(例えば、二本ロールや三本ロール)などの混練機で剪断応力下に均一に混練することが可能なシリコーンゴム組成物を意味する。従って、ミラブル型シリコーンゴム組成物は、室温で液状であって混練機で剪断応力をかけることができない液状シリコーンゴム組成物とはその性状が本質的に相違するものである。
また、オルガノポリシロキサン生ゴムとは、高重合度(高粘度)であって、通常、室温(23℃±15℃)において自己流動性のない(又はほとんどない)非液状(固体状又はペースト状)のオルガノポリシロキサン成分であることを意味する。
[(A)直鎖状ジオルガノポリシロキサン生ゴム]
(A)成分の直鎖状ジオルガノポリシロキサン生ゴムは、本組成物の主剤(ベースポリマー)であり、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個、好ましくは2~10,000個、より好ましくは2~500個程度含有し、平均重合度が100以上のものである。
(A)成分としては、下記平均組成式(1)で表されるものが好ましい。
1 nSiO(4-n)/2 (1)
(式(1)中、R1は、炭素原子数1~20の同一又は異なる1価炭化水素基であり、nは1.95~2.04の正数である。)
上記平均組成式(1)中、R1は、炭素原子数1~20、好ましくは1~12、より好ましくは1~8の同一又は異なる1価炭化水素基である。R1で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。なお、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部若しくは全部がハロゲン原子で置換されていてもよく、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。これらの中では、メチル基、ビニル基、フェニル基及びトリフルオロプロピル基が好ましく、より好ましくは、メチル基及びビニル基である。これらの中でも特に、分子中のR1で表される1価炭化水素基のうち、50モル%以上がメチル基であるものが好ましく、より好ましくは80モル%以上がメチル基、特には95モル%以上がメチル基であるものが好ましく、さらには、アルケニル基以外の全てのR1がメチル基であるものが好ましい。
上記平均組成式(1)中、nは1.95~2.04の正数であり、好ましくは1.98~2.02の正数である。このn値が1.95~2.04の範囲でないと、得られる硬化物が十分なゴム弾性を示さないことがある。
また、(A)成分の直鎖状ジオルガノポリシロキサン生ゴムは、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有することが必要であり、上記式(1)中、R1の0.001~10モル%、特に0.01~5モル%がアルケニル基であることが好ましい。該アルケニル基としては、好ましくはビニル基及びアリル基であり、特に好ましくはビニル基である。
(A)成分のオルガノポリシロキサンの平均重合度は、100以上(通常、100~100,000)であり、1,000~100,000の範囲であることがより好ましく、3,000~50,000の範囲であることがさらに好ましく、4,000~20,000の範囲であることが特に好ましい。平均重合度が100未満だと、本発明のシリコーンゴム組成物がミラブルゴムとしての性状を満たさなくなり、ロール混練性等が著しく悪化してしまうため好ましくない。
なお、この平均重合度は、下記条件で測定したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量から、平均重合度として求められる。
[測定条件]
・展開溶媒:トルエン
・流量:1mL/min
・検出器:示差屈折率検出器(RI)
・カラム:KF-805L×2本(Shodex社製)
・カラム温度:25℃
・試料注入量:30μL(濃度0.2質量%のトルエン溶液)
(A)成分の直鎖状ジオルガノポリシロキサン生ゴムは、アルケニル基と平均重合度の条件を満たしていれば特に限定されないが、主鎖がジオルガノシロキサン単位(R1 2SiO2/2、R1は上記と同じ、以下同様)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(R1 3SiO1/2)で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサン生ゴムであることが好ましく、分子鎖両末端が、トリメチルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基、ジメチルヒドロキシシロキシ基、メチルジビニルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等で封鎖されたものが好ましく、特に、少なくとも1つのビニル基を有しているシロキシ基で封鎖されたものが好適である。これらのオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いてもよく、重合度や分子構造の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分は、本発明の組成物中、43~96質量%含有することが好ましく、50~90質量%含有することがより好ましく、50~80質量%含有することがさらに好ましい。
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(B)成分は、ヒドロシリル化付加反応により硬化(架橋)する本発明の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物を硬化させるための硬化剤(架橋剤)として作用する成分であり、(B)成分中のSiH基が前記(A)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化付加反応により架橋して硬化する。
(B)成分は、付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物に含まれる従来公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであってよい。ケイ素原子結合水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上、より好ましくは3~100個、さらに好ましくは4~50個有するものが好ましい。
SiH基の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.0005~0.02mol/g、特に0.001~0.017mol/gの範囲が好ましい。SiH基の量が上記下限値より少ないと架橋が不十分となってしまうおそれがある。上記上限値より多いと揮発性が高くなってしまうため、配合・製造中や製品の保管中にオルガノハイドロジェンポリシロキサンの一部が組成物外に揮散してしまうおそれがある。
1分子中のケイ素原子の数は2~300個、特に3~150個、とりわけ4~100個程度の室温(23℃±15℃、以下同じ)で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中(非末端)のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状、及び三次元網目状のいずれであってもよい。
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、下記平均組成式(2)で示される。
2 bcSiO(4-b-c)/2 (2)
式(2)中、R2は互いに独立に、炭素原子数1~10、好ましくは1~8の非置換又は置換の1価炭化水素基である。bは0.7~2.1の正数であり、cは0.001~1.0の正数であり、かつb+cが0.8~3.0を満足する正数である。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンはケイ素原子結合水素原子(SiH基)を上記した量で含有するものであり、また上述したケイ素原子の数を有するものがよい。
上記式(2)においてR2で示される1価炭化水素基としては、上記したR1に例示した基が挙げられる。中でも脂肪族不飽和結合を有さない基が好ましい。
上記式(2)においてbは0.7~2.1、好ましくは0.8~2.0の正数であり、cは0.001~1.0、好ましくは0.01~1.0の正数であり、b+cは0.8~3.0、好ましくは1.0~2.5である。
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体や、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基やフェニル基などで置換したものなどが挙げられる。
また、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、上記で例示した化合物等において、分子を構成するシロキサン骨格(-Si-O-Si-)の一部(通常、シロキサン結合を形成する酸素原子の位置の一部)に、通常2~4価の、芳香族環含有の炭化水素骨格(例えば、フェニレン骨格、ビスフェニレン骨格、ビス(フェニレン)エーテル骨格、ビス(フェニレン)メタン骨格、2,2-ビス(フェニレン)プロパン骨格、2,2-ビス(フェニレン)ヘキサフルオロプロパン骨格など)を含有する、多価芳香族環含有のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01~50質量部であり、好ましくは0.1~30質量部である。また、上記(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)と、(A)及び(B)成分中の(特には、(A)成分中の)ケイ素原子に結合したアルケニル基の総量とのモル比(SiH基/アルケニル基)が、0.6~10、特に1~5となる量であることが好ましい。この比が0.6より小さいと硬化(架橋密度)が不十分になり、べたついたゴムになってしまうおそれがあり、10より大きいと、得られるシリコーンゴム組成物を硬化させる際に発泡が見られたり、金型からの離型が困難になるおそれがある。
[(C)補強性シリカ]
(C)成分の補強性シリカは、得られるシリコーンゴム組成物に対して優れた機械的特性を付与する充填剤として作用する。該補強性シリカは、沈降シリカ(湿式シリカ)でもヒュームドシリカ(煙霧質シリカ又は乾式シリカ)でもよく、通常、表面未処理の補強性シリカは、表面に多数のシラノール(SiOH)基が存在しているものである。本発明において(C)成分の補強性シリカのBET法による比表面積は、50m2/g以上であることが必要であり、好ましくは100~450m2/g、より好ましくは100~300m2/gである。この比表面積が50m2/g未満であると、(C)成分による補強効果が不十分となる。
(C)成分の補強性シリカは、未処理の状態で使用しても、必要に応じて、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の有機ケイ素化合物で表面処理(疎水化処理)されたものを用いてもよい。これらの補強性シリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(C)成分の補強性シリカとしては、市販品を用いることができ、例えば、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジルR-812、アエロジルR-972、アエロジルR-974などのアエロジルシリーズ(日本アエロジル(株)製)、Cabosil MS-5、MS-7(キャボット社製)、レオロシールQS-102、103、MT-10(トクヤマ社製)等の表面未処理又は表面疎水化処理された(即ち、親水性又は疎水性の)ヒュームドシリカや、トクシールUS-F(トクヤマ社製)、NIPSIL-SS、NIPSIL-LP(日本シリカ(株)製)等の表面未処理又は表面疎水化処理された沈降シリカ等が挙げられる。
(C)成分の補強性シリカの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して5~100質量部であり、好ましくは10~80質量部、より好ましくは20~70質量部である。この配合量が上記範囲を逸脱すると、得られるシリコーンゴム組成物の加工性が低下するだけでなく、該シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物の引張り強度や引き裂き強度等の機械的特性が不十分なものとなる。
[(D)有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒]
(D)成分の白金-ビニル基含有シロキサン錯体の1種又は2種以上から選択される、有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒は、前記(A)成分のベースポリマー中のアルケニル基と、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応に寄与する硬化触媒である。有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒の具体例としては、塩化白金とビニル基含有シロキサンとの錯体、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの錯体、又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサンとの錯体からなる群から選択される少なくとも1種であり、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt錯体)、白金-1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体、白金-1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン錯体、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン錯体、及び白金-1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体などが挙げられる。これらの群から選択される少なくとも1種のヒドロシリル化触媒を含有することが必須であり、それらの中に有機溶剤を含まないことも必須条件である。上記の有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒の中でも、特に白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt錯体)を用いることが極めて好ましい。
ここで、(D)成分の白金-ビニル基含有シロキサン錯体の1種又は2種以上から選択される、有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒において、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤類、エタノール、n-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールなどのアルコール系有機溶剤類などの基本的な有機溶剤(ここで、テトラメチルジビニルシロキサン、トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどの低分子かつビニル基を有するシロキサン類は除外する)は、人体へ悪影響を及ぼす懸念が生じるため、非含有であることを必須とする。
(D)成分の白金-ビニル基含有シロキサン錯体の1種又は2種以上から選択される、有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.00001~0.1質量部であり、好ましくは0.00002~0.01質量部、より好ましくは0.00002~0.005質量部である。有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒の配合量が0.00001質量部未満の場合は、得られるシリコーンゴム組成物の硬化物強度が低下したり、硬化不良になるおそれがあり、逆に有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒の配合量が0.1質量部を超えてしまうと、得られるシリコーンゴム組成物が着色したり、硬化するまでの時間が短時間になるほか、価格的にも不利となる。なお、触媒の活性、即ち硬化性の調整については、(D)成分の有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒の添加濃度、即ち(D)成分の添加量を増減することによって制御することができる。
(D)成分の白金-ビニル基含有シロキサン錯体の1種又は2種以上から選択される、有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒が通常使用される形態は、白金-シロキサン錯体の配位子を形成するシロキサンの中での溶液の形態である。溶液は、通常白金原子の含有率がシロキサン100g中0.001~0.010モル程度の溶液となるように制御する。これは、白金-シロキサン錯体の安定性を高めるためである。含有する白金の質量割合としては0.2~2.0質量%となる。白金-シロキサン錯体を形成することができる化合物であるテトラメチルジビニルシロキサン(1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン)、トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン(1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリビニルシクロトリシロキサン)、及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン(1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン)を以下に例示する。
Figure 0007268618000001
好ましいヒドロシリル化触媒は、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt錯体)である。これは、次の構造を有すると考えられている。
Figure 0007268618000002
本発明にかかる(D)成分は、後述する(E)成分のリン含有率が4~6質量%の範囲内である(即ち、分子量が517~775に相当する)亜リン酸エステル化合物と予備的に均一に混合した液状反応物(予備混合物)として添加することで1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物が製造できる。使用できる(E)成分の亜リン酸エステル化合物は、(E)成分の項目にて詳細に後述する。
[(E)リン含有率が4~6質量%である亜リン酸エステル化合物]
(E)成分のリン含有率が4~6質量%、好ましくは4.1~5.5質量%の範囲内である(即ち、分子量が517~775、好ましくは600~750である)亜リン酸エステル化合物は、前記(D)成分のヒドロシリル化触媒と予備的に均一に混合した液状反応物とすることにより、(E)成分の特定の亜リン酸エステル化合物が(D)成分と反応して白金-亜リン酸化合物錯体を形成することによって、(D)成分のヒドロシリル化触媒能を低温(室温)状態で安定化させて保存安定性を向上し、かつ100℃を超える温度に晒すことで(D)成分のヒドロシリル化触媒能を活性化させることができる必須成分である。
(E)成分のリン含有率が4~6質量%の範囲内である(分子量が517~775である)亜リン酸エステル化合物は、分子量が比較的大きいため、空気中で比較的安定であることから、前述した(D)成分のヒドロシリル化触媒と反応(配位)することでも非常に安定した触媒を形成し、かつ空気中で比較的安定であることからGHSラベル等のピクトグラムによるシンボルマークも該当がほぼないことから人体にも悪影響がほとんどないものである。そのため安全性が高く、保存安定性に優れた1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物を得ることが可能となる。なお、リン含有率が4質量%未満では白金原子に配位するリン原子が少ないため、期待される保存安定性の向上効果が得られない。また、6質量%を超えると白金原子に配位するリン原子が多いため、組成物の硬化が遅くなったり、硬化できなくなったりする。
(D)成分と(E)成分との液状反応物を調製する際の(E)成分の亜リン酸エステル化合物の添加量は、前述した(D)成分のヒドロシリル化触媒の白金1原子に対し、0.9分子を超え1.6分子以下の範囲内である量(即ち、白金原子1モルに対して亜リン酸エステル化合物が0.9モルを超え1.6モル以下となる量)であり、より好ましくは、(D)成分のヒドロシリル化触媒の白金1分子に対し、1.0分子以上1.5分子以下の範囲内である量(即ち、白金原子1モルに対して亜リン酸エステル化合物が1.0~1.5モルとなる量)を添加することが特によい。(E)成分が少なすぎると白金原子に配位するリン原子の数が少なくなるため、期待される保存安定性の向上効果が得られない。また、逆に(E)成分が多すぎると白金原子に配位するリン原子の数が多くなるため硬化遅延が発生したり、組成物が硬化できなくなったりする。
さらに、(E)成分の亜リン酸エステル化合物の性状が、23℃において液体であることが好ましい。この理由は、(D)成分のヒドロシリル化触媒と混合し反応する際、(E)成分が固体であると(D)成分のヒドロシリル化触媒との液状反応物、即ち(E)成分が(D)成分のヒドロシリル化触媒に配位する配位量が不均一になってしまい、上記のような期待する保存安定性や加温によるヒドロシリル化触媒能の活性化を達成することができない。
その上、(D)成分のヒドロシリル化触媒と(E)成分の亜リン酸エステル化合物との液状反応物の外観(例えば、(D)成分と(E)成分とを23℃にて混合開始から0.5~4時間後、特には1~2時間後の液状反応物の外観)が透明となるように、(E)成分の亜リン酸エステル化合物を選択することが好ましい。この理由は、亜リン酸エステル化合物の分子量が517~775と大きいことにより、(D)成分の白金-ビニル基含有シロキサン錯体の1種又は2種以上から選択される有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒、即ち白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt錯体)、白金-1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体、白金-1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン錯体、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン錯体、及び白金-1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体などとの相溶性が比較的低いため、余剰の亜リン酸エステル化合物が存在する場合、(D)成分との混合物が白濁化する(即ち、均一な混合物が得られない)現象が確認される。余剰の亜リン酸エステル化合物は、製造されるミラブル型シリコーンゴム組成物中では不純物となってしまい、熱硬化させることでシリコーンゴム硬化物を得る際に、硬化を遅延させてしまうことがあることや、(D)成分との混合物が白濁化、即ち不均一となるため、製造されるミラブル型シリコーンゴム組成物の製造安定性にも悪影響を生じる。
前述した条件をすべて満たす(E)成分の亜リン酸エステル化合物の具体例としては、トリス(トリデシル)ホスファイトが挙げられるが、トリス(トリデシル)ホスファイトにおいて1つのトリデシル基の炭素原子数が減少した亜リン酸エステル化合物等であっても同様の効果が期待できる。
なお、(D)成分と(E)成分との均一な液状反応物の調製(反応)条件としては、室温(23℃±15℃)環境下で、0.5~4時間、特に1~2時間混合することで得ることができる。混合は振とう器やマグネティックスターラーなどを用いることが好ましい。またこの時、なるべく大気中の酸素に接しない環境で混合することが好ましいため、大気を窒素などで置換した後、その雰囲気を保持しながら混合することがより好ましい。しかし、上記のような環境を調整することが困難であれば、窒素置換を行わずに混合しても、目的とする均一な液状反応物を得ることは可能である。
[(F)反応制御剤]
(F)成分は、アセチレンアルコール化合物、窒素化合物、オキシム化合物及び有機クロロ化合物より選択される少なくとも1種の反応制御剤である。これは、前述した(E)成分の亜リン酸エステル化合物のみでは、長期間ミラブル型シリコーンゴム組成物の保存安定性を達成するのは不可能であり、(F)成分を微量添加することで室温において長期間ミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化を抑制することが可能となる。
反応制御剤としては、(D)成分のヒドロシリル化触媒、及び(D)成分と(E)成分の反応触媒の活性を抑制できるものであればよく、従来公知の反応制御剤を使用することができる。
その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、3-ブチン-1-オール、エチニルメチルデシルカルビノール等のアセチレンアルコール化合物、各種窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。これらの中でも、特に金属への腐食性の無いアセチレンアルコール化合物が好ましい。
(F)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.00001~0.1質量部であるが、好ましくは0.0001~0.05質量部である。反応制御剤の配合量が、0.00001質量部未満であると、室温においてミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化抑制が達成されないことがあり、0.1質量部を超えると、得られるミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化性が低下することがある。
[(G)充填剤用分散剤]
本発明においては、前記(A)~(F)成分に加えて、必要に応じて任意に(C)成分の補強性シリカ等の充填剤の分散剤(ウェッター)として、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニル基含有アルコキシシラン等の各種アルコキシシラン及びその加水分解物、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子シロキサンなどや、該分散剤(ウェッター)に加えて、さらに充填剤表面と分散剤(ウェッター)との相互作用を促進させるための反応促進剤として、カリウムシリコネートなどの分子鎖末端がアルカリ金属オキシドで封鎖されたオルガノポリシロキサン等を配合することができる。
(G)成分を使用する場合、その使用量は、上記(A)成分100質量部に対して0.1~50質量部が好ましく、特に1~20質量部が好ましい。両末端シラノール基封鎖オルガノポリシロキサンの使用量が少なすぎると、添加した効果が見られず、多すぎると組成物の可塑度が低くなりすぎ、ロールミル等の混練手段においてロール粘着が発生してロール作業性が悪化することがある。
-その他の成分-
本発明の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記成分に加え、必要に応じて、その他の成分として、(C)成分以外の充填剤(粉砕石英、珪藻土、炭酸カルシウム等)、着色剤(顔料)、引き裂き強度向上剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤(白金化合物等)、受酸剤、熱伝導率向上剤(アルミナ、窒化硼素等)、離型剤等の、熱硬化型シリコーンゴム組成物における公知の充填剤及び添加剤を添加してもよい。また、有機過酸化物等の硬化促進剤なども保存性を損なわない範囲内で添加してもよい。その他の成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
-組成物の製造方法-
本発明の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物は、該組成物を構成する配合成分をニーダー、バンバリーミキサー、二本ロール等の公知の混練機でせん断応力下に混練することにより得ることができる。ここで、(D)成分の白金-ビニル基含有シロキサン錯体の1種又は2種以上から選択される、有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒と、(E)成分のリン含有率が4~6質量%の範囲内である(分子量が517~775に相当する)亜リン酸エステル化合物は予め均一に混合し反応させた状態(即ち、(D)成分中の白金原子が(E)成分の亜リン酸エステル化合物と錯体を形成した状態)にしてから添加することが必須である。この理由は、上記(E)成分の項目にて記述した通りである。この(D)成分と(E)成分を混合し反応させた触媒を、上記(A)成分に添加し、その後、各必須成分を添加することで、目的とするミラブル型シリコーンゴム組成物を得ることができる。例えば、一部の(A)成分のオルガノポリシロキサンと(C)成分の補強性シリカを配合したマスターベースに、一部の(A)成分と、(D)成分と(E)成分を混合し反応させた触媒を加え、二本ロール等の混練機にて調製した第1配合成分と、上記マスターベースに、一部の(A)成分と、(B)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)成分である反応制御剤を加え、二本ロール等の混練機にて調製した第2配合成分を作製し、その後、上記の第1配合成分と第2配合成分を二本ロール等の混練機にて混練することで、目的とする保存安定性に優れた1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物を得ることができる。
-1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の成形方法-
本発明の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の成形方法としては、目的とする成形品の形状及び大きさにあわせて公知の成形方法を選択すればよい。例えば、注入成形、圧縮成形、射出成形、カレンダー成形、押出成形などの方法が挙げられる。
-硬化物-
本発明のシリコーンゴム硬化物は、上記1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の熱硬化物である。
本発明の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化条件は、用いる成形方法における公知の条件でよく、一般的に60~450℃の温度で数秒~1日程度である。また、得られるシリコーンゴム硬化物の圧縮永久歪の低下、得られるシリコーンゴム硬化物中に残存している低分子シロキサン成分の低減、該シリコーンゴム硬化物中の有機過酸化物の分解物の除去等の目的で、200℃以上、好ましくは200~250℃のオーブン内等で1時間以上、好ましくは1~70時間程度、より好ましくは1~10時間のポストキュア(2次キュア)を行ってもよい。
以下、本発明の効果をより明確にする目的で、実施例及び比較例によってさらに詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下の実施例において「室温」は23℃を意味する。
本実施例の評価は次のように行った。
[(D)成分と(E)成分の混合触媒の調製及び合否判定]
(D)成分と(E)成分との混合触媒については、(D)成分の白金原子1モルに対し、所定量の(E)成分である亜リン酸エステル化合物を加えたのち、振とう器を用いて室温にて1時間振とうさせて調製した。その後、室温にて1か月静置したのち外観を確認し、透明であり沈殿物の生成がないものを合格、非相溶であるものや沈殿を生成したものは不合格と判定した。
[(D)成分と(E)成分の混合触媒の保存安定性]
下記実施例及び比較例で調製した(D)成分と(E)成分の混合触媒の保存安定性は、混合触媒を調製直後に作製した1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化性(T50)と、(D)成分と(E)成分の混合触媒を23℃にて2週間保存した後に1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物を作製した該組成物の硬化性(T50)を比較することで確認した。ここで、硬化性はレオメーター(ALPHA TECHNOLOGIES社製 RUBBER PROCESS ANALYZER RPA2000)を用いて比較した。硬化温度150℃において、混合触媒を調製直後に作製した1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化性T50と、(D)成分と(E)成分の混合触媒を23℃にて2週間保存した後に作製した1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化性T50を比較し、その差が±0.3分以下であるものを合格と判定した。なお、硬化性T50とは、上記レオメーターで150℃において硬化開始から3分経過後のトルク値を100%とした時の硬化開始から50%トルク値に達するまでの時間である。
[硬化性]
下記実施例及び比較例で作製した1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化性は、レオメーター(ALPHA TECHNOLOGIES社製 RUBBER PROCESS ANALYZER RPA2000)を用いて比較した。硬化温度150℃におけるT50が3.0分以下であるものを合格と判定した。
[1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の保存安定性]
下記実施例及び比較例で作製した1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の保存安定性は、得られた1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の初期(作製直後)の硬化性と作製した組成物を40℃の乾燥機に所定時間(1か月)晒したのちの硬化性をレオメーター(ALPHA TECHNOLOGIES社製 RUBBER PROCESS ANALYZER RPA2000)を用いて比較した。この時、40℃にて1か月後まで硬化性(T50)を評価できたものであって、なおかつ、初期の硬化性(T50)が3.0分以下であり、初期の硬化性(T50)と40℃×1か月保存後の硬化性(T50)との差が±0.3分以下であるものを合格と判定した。
-ヒドロシリル化触媒と亜リン酸エステル化合物との液状反応物の調製-
[調製例1]
25gの透明ガラス容器に、ヒドロシリル化触媒として、1質量%のPt原子を有する、有機溶剤を含まない白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を10質量部、亜リン酸エステル化合物として、室温にて液体であるトリス(トリデシル)ホスファイト(リン含有率;4.9質量%、分子量;628g/mol)を0.3219質量部(上記の白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対し、亜リン酸エステルが1.0モルとなる量)を加え、密封した後、室温条件下で1時間振とうさせた。混合直後は白濁となったが、室温にて1時間振とう後は無色透明の均一な液体が得られた。このヒドロシリル化触媒と亜リン酸エステル化合物との均一液状反応物を触媒1として組成物へ添加する。
[調製例2]
25gの透明ガラス容器に、ヒドロシリル化触媒として、1質量%のPt原子を有する、有機溶剤を含まない白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を10質量部、亜リン酸エステル化合物として、室温にて液体であるトリス(トリデシル)ホスファイト(リン含有率;4.9質量%、分子量;628g/mol)を0.4828質量部(上記の白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対し、亜リン酸エステルが1.5モルとなる量)を加え、密封した後、室温条件下で1時間振とうさせた。混合直後は白濁となったが、室温にて1時間振とう後は無色透明の均一な液体が得られた。このヒドロシリル化触媒と亜リン酸エステル化合物との均一液状反応物を触媒2として組成物へ添加する。
[調製例3]
25gの透明ガラス容器に、ヒドロシリル化触媒として、1質量%のPt原子を有する、有機溶剤を含まない白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を10質量部、亜リン酸エステル化合物として、室温にて液体であるトリス(トリデシル)ホスファイト(リン含有率;4.9質量%、分子量;628g/mol)を0.3058質量部(上記の白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対し、亜リン酸エステルが0.95モルとなる量)を加え、密封した後、室温条件下で1時間振とうさせた。混合直後は白濁となったが、室温にて1時間振とう後は無色透明の均一な液体が得られた。このヒドロシリル化触媒と亜リン酸エステル化合物との均一液状反応物を触媒3として組成物へ添加する。
[比較調製例1]
25gの透明ガラス容器に、ヒドロシリル化触媒として、1質量%のPt原子を有する、有機溶剤を含まない白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を10質量部、亜リン酸エステル化合物として、室温にて液体であるトリス(トリデシル)ホスファイト(リン含有率;4.9質量%、分子量;628g/mol)を0.6438質量部(上記の白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対し、亜リン酸エステルが2.0モルとなる量)を加え、密封した後、室温条件下で1時間振とうさせた。室温にて1時間振とう後も依然として、白濁した不均一な液体となり、不均一な触媒であることが分かった。このヒドロシリル化触媒と亜リン酸エステル化合物との不均一液状反応物を触媒4として組成物へ添加する。
[比較調製例2]
25gの透明ガラス容器に、ヒドロシリル化触媒として、1質量%のPt原子を有する、有機溶剤を含まない白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を10質量部、亜リン酸エステル化合物として、室温にて液体であるトリス(トリデシル)ホスファイト(リン含有率;4.9質量%、分子量;628g/mol)を0.1609質量部(上記の白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対し、亜リン酸エステルが0.5モルとなる量)を加え、密封した後、室温条件下で1時間振とうさせた。混合直後は白濁となったが、室温にて1時間振とう後は無色透明の均一な液体が得られた。このヒドロシリル化触媒と亜リン酸エステル化合物との均一液状反応物を触媒5として組成物へ添加する。
[比較調製例3]
25gの透明ガラス容器に、ヒドロシリル化触媒として、1質量%のPt原子を有する、有機溶剤を含まない白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を10質量部、亜リン酸エステル化合物として、室温にて液体である亜リン酸トリイソプロピル(リン含有率;14.9質量%、分子量;208g/mol)を0.0534質量部(上記の白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対し、亜リン酸エステルが0.5モルとなる量)を加え、密封した後、室温条件下で1時間振とうさせた。混合直後から相溶し、淡黄色液体となり、室温にて1時間振とう後も均一な淡黄色透明の液体が得られた。このヒドロシリル化触媒と亜リン酸エステル化合物との均一液状反応物を触媒6として組成物へ添加する。
[比較調製例4]
25gの透明ガラス容器に、ヒドロシリル化触媒として、1質量%のPt原子を有する、有機溶剤を含まない白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を10質量部、亜リン酸エステル化合物として、室温にて固体であるトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(リン含有率;4.7質量%、分子量;646g/mol)を0.3311質量部(上記の白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対し、亜リン酸エステルが1.0モルとなる量)を加え、密封した後、室温条件下で1時間振とうさせた。室温にて1時間振とう後の外観は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが分散した白濁の不均一液体となり、均一な触媒は得られなかった。このヒドロシリル化触媒と亜リン酸エステル化合物との不均一液状反応物を触媒7として組成物へ添加する。
-1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の調製-
[実施例1]
ジメチルシロキサン単位99.85モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、平均重合度が8,000であるジオルガノポリシロキサン生ゴム(分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体)100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)55質量部、ジメチルジメトキシシラン12質量部、ビニルトリメトキシシラン0.2質量部、両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン12質量部、3質量%カリウムシリコネート0.15質量部を添加し、170℃で2時間、ニーダーにより混合下で加熱した後、ベースコンパウンド(1)を調製した。
該ベースコンパウンド(1)に、前記ジオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部に対して、分子式がM2H 2018(SiH量;0.00726mol/g)であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)1.7質量部、前述で調製した触媒1を0.00040質量部(Pt触媒量;0.00039質量部)、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン0.10質量部、エチニルメチルデシルカルビノール0.00080質量部を二本ロールで添加して均一に混合して生ゴム状の1成分型シリコーンゴム組成物1を製造した。
なお、M、DH、Dはそれぞれ、M=(CH33SiO1/2単位、DH=(CH3)(H)SiO2/2単位、D=(CH32SiO2/2単位を示す。以下、同様。
[実施例2]
実施例1において、触媒1の代わりに触媒2を0.00040質量部用いた以外は同様にして、1成分型シリコーンゴム組成物2を製造した。
[実施例3]
実施例1において、触媒1の代わりに触媒3を0.00040質量部用いた以外は同様にして、1成分型シリコーンゴム組成物3を製造した。
[比較例1]
実施例1において、触媒1の代わりに触媒4を0.00040質量部用いた以外は同様にして、1成分型シリコーンゴム組成物4を製造した。
[比較例2]
実施例1において、触媒1の代わりに触媒5を0.00040質量部用いた以外は同様にして、1成分型シリコーンゴム組成物5を製造した。
[比較例3]
実施例1において、触媒1の代わりに触媒6を0.00040質量部用いた以外は同様にして、1成分型シリコーンゴム組成物6を製造した。
[比較例4]
実施例1において、触媒1の代わりに触媒7を0.00040質量部用いた以外は同様にして、1成分型シリコーンゴム組成物7を製造した。
[比較例5]
ジメチルシロキサン単位99.85モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、平均重合度が8,000であるジオルガノポリシロキサン生ゴム(分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体)100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)55質量部、ジメチルジメトキシシラン12質量部、ビニルトリメトキシシラン0.2質量部、両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン12質量部、3質量%カリウムシリコネート0.15質量部を添加し、170℃で2時間、ニーダーにより混合下で加熱した後、ベースコンパウンド(1)を調製した。
該ベースコンパウンド(1)に、前記ジオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部に対して、分子式がM2H 2018(SiH量;0.00726mol/g)であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)1.7質量部、1質量%のPt原子を有する白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を0.00039質量部、常温にて液体であるトリス(トリデシル)ホスファイト(リン含有率;4.9質量%、分子量;628g/mol)を0.00001質量部(上記の白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対し、亜リン酸エステルが1.0モルとなる量)、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン0.10質量部、エチニルメチルデシルカルビノール0.00080質量部を二本ロールで添加して均一に混合して生ゴム状の1成分型シリコーンゴム組成物8を製造した。
[比較例6]
実施例1において、エチニルメチルデシルカルビノール0.00080質量部を除いた以外は同様にして、1成分型シリコーンゴム組成物9を製造した。
[試験]
上記調製例1~3及び比較調製例1~4で得られた触媒の結果を表1に示す。また、実施例1~3及び比較例1~6で得られた結果を表2、3に示す。
Figure 0007268618000003
*「外観」は、室温にて1時間振とうさせて調製した後、又は調製後に室温にて1か月静置したのちの外観を示す。
Figure 0007268618000004
Figure 0007268618000005
[評価]
調製例1~3の触媒は、本発明の要件を満たすものであり、それを用いた実施例1~3は、調製初期の組成物、製造した触媒を2週間保存した後製造した組成物、及び調製した組成物を40℃にて1か月保管したもののいずれも硬化性の変化が少ないことが分かる。
これに対し、比較調製例1にて製造された触媒は、トリス(トリデシル)ホスファイトの添加量が白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対して2.0モルとなっているため、触媒が懸濁してしまっている。これは余剰なトリス(トリデシル)ホスファイトが残っているため、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体と相溶できず沈殿してしまっていると推定される。また、この触媒を使用した組成物(比較例1)においては、トリス(トリデシル)ホスファイトの添加量が多いため、初期の硬化性が遅延する結果となっている。
次に、比較調製例2にて製造された触媒は、トリス(トリデシル)ホスファイトの添加量が白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対して0.5モルとなっている。このため、調製した触媒は無色透明で、沈殿生成も生じていないものが得られているが、Pt原子に対する亜リン酸エステルの反応量(配位数)が本発明の要件を満たしておらず、その触媒を用いて製造した組成物(比較例2)は、硬化性は満足されるものの、調製した組成物を40℃にて1か月保管するとすでにゴム化しており、実施例と比較すると保存性が低下していることが分かる。
次に、比較調製例3にて製造された触媒は、用いる亜リン酸エステルが本発明の要件を満たしていない(即ち、リン含有率が本発明の範囲から外れる)亜リン酸トリイソプロピルであり、さらに亜リン酸トリイソプロピルの添加量が白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のPt原子1モルに対して0.5モルとなっている。その亜リン酸エステルを用いて調製した触媒は無色透明で、沈殿生成も生じていないものが得られているが、Pt原子に対する亜リン酸エステルの反応量(配位数)が本発明の要件を満たしておらず、その触媒を用いて製造した組成物(比較例3)は触媒を2週間保存した後に硬化性が速くなってしまう現象と、調製した組成物を40℃にて1か月保管するとすでにゴム化する現象が確認された。これは、亜リン酸トリイソプロピルは空気中の酸素との反応性が高いため、触媒の保存性や組成物の保存性に影響を与えるものと推定する。
また、比較調製例4にて製造された触媒は、不均一液状反応物として本発明の要件を満たしていない(即ち、均一に混合されていない)ものである。上記液状反応物の調製に用いた亜リン酸エステルは常温において固体であり、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体に添加しても溶解しないため、得られる触媒は無色透明ではあるが、沈殿が生成している。その触媒を用いて製造した組成物(比較例4)は、硬化性は満足されるものの、調製した組成物を40℃にて1か月保管するとすでにゴム化しており、実施例と比較すると保存性が低下していることが分かる。これは、用いた亜リン酸エステルのトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが固体であるため、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体との液状反応物(配位触媒)を形成できなかったからではないかと推定する。
次に、比較例5においては、(D)成分である有機溶剤を含まない白金系ヒドロシリル化触媒と、(E)成分である亜リン酸エステル化合物が均一に混合されてなる液状反応物とせずに、それぞれを単独で添加して組成物を得ている。そのため、(D)成分である白金系ヒドロシリル化触媒と(E)成分である亜リン酸エステル化合物の反応(配位)が終了していない組成物となってしまうため、調製した組成物を40℃にて1か月保管するとゴム化してしまうものと推定する。そのため、(D)成分と(E)成分が均一に混合されてなる液状反応物を添加することで保存性が向上することが分かる。
また、比較例6においては、(F)成分である反応制御剤を未添加としている。その結果、40℃にて1か月保存を行うと、白金系ヒドロシリル化触媒と亜リン酸エステル化合物の液状反応物(配位触媒)の活性が向上してしまうため、良好な保存性を有する組成物が得られないことが分かる。上記の結果から、本発明の有効性が確認できる。
本発明の保存安定性に優れた1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物は、40℃以下の温度に晒されても性状や硬化性、さらに硬化して得られるシリコーンゴムの物性が非常に安定している。また、非常に少ない白金触媒量でシリコーンゴム硬化物となるため、耐変色防止やコスト競争力に優れた1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物が得られる。さらに有機溶剤などの溶剤含有もないため、人体に対する悪影響も非常に少ないと予想できる。そのため、電気機器、自動車、建築、医療、食品分野など幅広い応用が期待される。

Claims (6)

  1. (A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有する平均重合度が3,000以上の直鎖状ジオルガノポリシロキサン生ゴム: 100質量部、
    (B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 0.01~50質量部、
    (C)比表面積が50m2/g以上の補強性シリカ: 5~100質量部、
    (D)白金-ビニル基含有シロキサン錯体の1種又は2種以上から選択される、有機溶剤を含まないヒドロシリル化触媒と、
    (E)23℃で液体であり、リン含有率が4~6質量%である亜リン酸エステル化合物を、
    上記(D)成分の白金原子1モルに対し(E)成分の亜リン酸エステル化合物が0.9モルを超え1.6モル以下の範囲内で均一に混合されてなる(D)成分と(E)成分との液状反応物: (D)成分が0.00001~0.1質量部となる量、
    (F)アセチレンアルコール化合物、窒素化合物、オキシム化合物及び有機クロロ化合物より選択される少なくとも1種の反応制御剤: 0.00001~0.1質量部
    を含有する1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
  2. (A)成分の直鎖状ジオルガノポリシロキサン生ゴムの平均重合度が3,000~100,000である請求項1記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
  3. (D)成分と(E)成分との液状反応物の外観が透明である請求項1又は2記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
  4. 亜リン酸エステル化合物が、トリス(トリデシル)ホスファイトである請求項1~3のいずれか1項に記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
  5. さらに、(G)成分として充填剤用分散剤を含有するものである請求項1~4のいずれか1項に記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の1成分型ミラブル型シリコーンゴム組成物の熱硬化物であるシリコーンゴム硬化物。
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