JP7268442B2 - 電極の製造方法及び電極 - Google Patents

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Description

本発明は、電極の製造方法及び電極に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。上記二次電池は、一般的には、シート状の正極及び負極からなる一対の電極と、この電極間に介在する電解質とを有し、両電極間でイオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。また、二次電池以外の蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
上記一対の電極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回した電極体を形成する。上記セパレータは、電極間を電気的に絶縁する機能と、電解質を保持し、電極間でイオンを移動させる機能とを有する。セパレータとしては、樹脂製の多孔質膜が広く用いられている。
このようなセパレータの代わりとして、あるいはセパレータを用いると共に、合剤層上に形成された多孔質の絶縁層を有する電極を備える蓄電素子が提案されている。
特許文献1には、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合剤層と、正極集電体上及び正極合剤層上に形成された樹脂粒子を含む絶縁層とを備えた正極シートが開示されている。そして、特許文献1では正極シートに対して絶縁層の樹脂粒子の融点以上の温度の熱風を吹き付けることで、絶縁層の樹脂粒子同士を熱溶着して、当該絶縁層の強度を高めている。
特開2016-119183号公報
このように、電極上に樹脂材料を含む絶縁層を形成する場合、電極上に樹脂材料を含む絶縁塗料を塗工し、これを加熱して樹脂材料を溶着させることで形成する。しかし、一般に、多孔質である合剤層と比較して電極基材は熱伝導性が高いため、電極全体を加熱しても、電極基材上に配される絶縁塗料は、合剤層上などの電極基材に接しない領域に配される絶縁塗料に比べて熱が逃げやすく、温度が上昇しにくいため、樹脂材料が十分に溶着せず、電極基材と電極基材上に配した樹脂材料との剥離強度を高めることが困難であることを本発明者らは見出した。
本発明の目的は、電極基材と、電極基材上に配した樹脂材料との剥離強度を高めた電極の製造方法及び電極を提供することである。
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様は、電極基材上に合剤層を配する工程と、前記合剤層の縁部に沿って前記電極基材上に樹脂材料を含む絶縁層を配する工程と、前記電極基材を加熱することにより、前記絶縁層を加熱して絶縁層に含まれる樹脂材料を溶着する工程と、を含む電極の製造方法である。
上記目的を達成するためになされた本発明の他の一態様は、電極基材と、前記電極基材上に形成された合剤層と、前記合剤層の縁部に沿って前記電極基材上に形成された樹脂材料を含む絶縁層と、を備え、前記樹脂材料は、前記電極基材を加熱することで溶着されている電極である。
上記目的を達成するためになされた本発明の他の一態様は、電極基材と、前記電極基材上に形成された合剤層と、前記合剤層の縁部に沿って前記電極基材上に形成された樹脂材料を含む絶縁層と、を備え、前記絶縁層と前記電極基材との剥離強度が0.2N/mm以上である電極である。
本発明によれば、電極基材と、電極基材上に配した樹脂材料との剥離強度を高めることができる。
図1は、電極の一実施形態を示す上面図である。 図2は、電極の一実施形態を示す断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る電極を含む蓄電素子の分解斜視図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る電極を含む蓄電素子の一実施形態を示す外観斜視図である。 図5は、本発明の一実施形態に係る電極を含む蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態を示す概略図である。 図6は、電極の製造工程の一実施形態を示す概略図である。 図7は、電極基材を誘導加熱する工程の一実施形態を示す概略図である。 図8は、電極基材を誘導加熱する工程の一実施形態を示す概略図である。 図9は、湿式塗工により形成された絶縁層を備える電極断面の電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)によるフッ素元素マッピング画像である。 図10は、乾式塗工により形成された絶縁層を備える電極断面の電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)によるフッ素元素マッピング画像である。 図11は、本発明の他の実施形態に係る電極の断面図である。 図12は、本発明の他の実施形態に係る電極の断面図である。
初めに、本明細書によって開示される電極の製造方法及び電極の概要について説明する。
本発明の一態様に係る電極の製造方法は、電極基材上に合剤層を配する工程と、前記合剤層の縁部に沿って前記電極基材上に樹脂材料を含む絶縁層を配する工程と、前記電極基材を加熱することにより、前記絶縁層を加熱して絶縁層に含まれる樹脂材料を溶着する工程と、を含む。
この電極の製造方法によれば、電極基材と、電極基材上に配した樹脂材料との剥離強度を高めることができる。
ここで、前記電極基材は誘導加熱によって加熱してもよい。
これによれば、電極の製造性が向上する。
ここで、前記合剤層及び前記絶縁層を、前記電極基材の両面に形成してもよい。
これによれば、製造された電極を含む蓄電素子のエネルギー密度が向上できる。
ここで、前記電極基材を誘導加熱によって加熱すると同時に、前記合剤層及び前記絶縁層を、前記電極基材の両面に形成してもよい。
これによれば、電極基材と、電極基材上に配した樹脂材料との剥離強度を高める本発明の効果を享受しつつ、製造された電極を含む蓄電素子のエネルギー密度を向上できる。
合剤層等を電極基材の一方の面にのみ形成する場合、電極基材の他方の面を加熱することで、電極基材を容易に加熱することができる。しかし、合剤層等を電極基材の両面に形成すると、熱風加熱等の加熱方法では、電極基材の加熱が困難となる。
これに対し、加熱方法を誘導加熱とした場合には、電極基材の両面に合剤層を形成した場合であっても、絶縁層を介して電極基材とコイルとを対向させることで、電極基材を容易に加熱することができる。そのため、電極基材と、電極基材上に配した樹脂材料との剥離強度と、エネルギー密度を両立することができる。
ここで、前記絶縁層は溶媒が含まれない状態で前記電極基材上に配されてもよい。
これによれば、製造され電極を含む蓄電素子の電気化学特性の向上と、電極基材と該電極基材上に配される樹脂材料との剥離強度の向上とを両立することができる。
本発明の他の一態様に係る電極は、電極基材と、前記電極基材上に形成された合剤層と、前記合剤層の縁部に沿って前記電極基材上に形成された樹脂材料を含む絶縁層と、を備え、前記樹脂材料は、前記電極基材を加熱することで溶着されている電極である。
この電極によれば、電極基材と、電極基材上に配した樹脂材料との剥離強度を高めることができる。
本発明の他の一態様に係る電極は、電極基材と、前記電極基材上に形成された合剤層と、前記合剤層の縁部に沿って前記電極基材上に形成された樹脂材料を含む絶縁層と、を備え、前記絶縁層と前記電極基材との剥離強度が0.2N/mm以上である電極である。
この電極によれば、電極基材と、電極基材上に配した樹脂材料との剥離強度が高められているため、絶縁層が剥落することを抑制できる。絶縁層の剥落を抑制できる電極であれば、内部短絡等を生じる虞が低減するため好ましい。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る電極及び電極の製造方法を説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
<電極>
本発明の一実施形態に係る電極は、電極基材、合剤層及び絶縁層を有する。当該電極は、電極基材、合剤層及び絶縁層がこの順に積層された層構造体である。
図1及び図2に本発明の一実施形態に係る電極の上面図及び断面図を示す。電極41は帯状の電極基材42を備える。合剤層43は、帯状の電極基材42の幅方向の一方の端部が合剤未塗工部となるよう電極基材42上に形成されている。絶縁層44は、合剤層43及び電極基材42上に、合剤層43と合剤未塗工部とを覆い、且つ略帯状の電極基材42の幅方向の一方の端部が露出するよう形成されている。本明細書では、電極基材42と合剤層43とが接触している領域を第1領域51、電極基材42と絶縁層44とが接触している領域を第2領域52、電極基材42が露出している領域を第3領域53とする。
合剤層は電極基材の片面にのみ形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。絶縁層は電極基材の片面にのみ形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。絶縁層は、少なくとも電極基材の一方の面において合剤層上の少なくとも一部に形成されていればよく、合剤層上の全面に形成されていてもよい。当該電極は、正極であっても負極であってもよい。
(電極基材)
電極基材は、シート状の形状を有する。また、電極基材は導電性を有する。「導電性」を有するとは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω・cm以下であることを意味する。
当該電極が正極である場合、電極基材(正極基材)の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)に規定されるA1085、A3003等が例示できる。
正極基材の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。正極基材の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましい。正極基材の平均厚さを上記下限以上とすることで、正極基材の強度を高めることができる。正極基材の平均厚さを上記上限以下とすることで、蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。「正極基材の平均厚さ」とは、任意の十点において測定した厚さの平均値をいう。
当該電極が負極である場合、電極基材(負極基材)の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
負極基材の平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、5μmがより好ましい。負極基材の平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。負極基材の平均厚さが上記下限以上とすることで、負極基材の強度を高めることができる。負極基材の平均厚さが上記上限以下とすることで、蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。「負極基材の平均厚さ」とは、任意の十点において測定した厚さの平均値をいう。
(合剤層)
合剤層は、電極基材に積層されている。合剤層は、活物質とバインダ(第1バインダ)を含む。合剤層は、必要に応じて、導電剤、増粘剤、充填剤等の任意成分を含む。これらの各成分は、一般的な合剤層に用いられる公知の成分を用いることができる。
当該電極が正極である場合の活物質(正極活物質)としては、例えば、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。
正極合剤層における正極活物質の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記下限以上とすることで、蓄電素子の電気容量を高めることができる。正極活物質の含有量の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましい。正極活物質粒子の含有量を上記上限以下とすることで、正極の製造が容易になる。
当該電極が負極である場合の活物質(負極活物質)としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;LiTi12、LiTiO2、TiNb等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛及び非黒鉛質炭素が好ましい。負極合剤層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
負極合剤層における負極活物質の含有量の下限としては、60質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。負極活物質の含有量を上記下限以上とすることで、蓄電素子の電気容量を高めることができる。負極活物質の含有量の上限としては、99質量%が好ましく、98質量%がより好ましい。負極活物質粒子の含有量を上記上限以下とすることで、負極の製造が容易になる。
(任意成分)
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、黒鉛;ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;金属;導電性セラミックス等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが好ましい。
合剤層における導電剤の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。導電剤の含有量の上限としては、10質量%が好ましく、9質量%がより好ましい。導電剤の含有量を上記範囲とすることで、二次電池の電気容量を高めることができる。
第1バインダは、活物質等を固定でき、かつ使用範囲で電気化学的に安定であるものが通常用いられる。第1バインダとしては、水系バインダを用いてもよいし、非水系バインダを用いてもよい。
水系バインダは、水に分散又は溶解するバインダである。中でも、20℃において、水100質量部に対して1質量部以上溶解するバインダが水系バインダとして好ましい。水系バインダとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオキサイド(ポリプロピレングリコール)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ニトリル―ブタジエンゴム、セルロース等が好ましく、これらの中でも、塗工安定性や密着性の観点から、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)、セルロースの単独または混合使用が好ましい。
非水系バインダは、N-メチルピロドリン(NMP)に分散又は溶解するバインダである。中でも、20℃において、NMP100質量部に対して1質量部以上溶解するバインダが非水系バインダとして好ましい。非水系バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVDF―HFP)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロースとキトサンピロリドンカルボン酸塩との架橋重合体、キチン又はキトサンの誘導体が好ましく、これらの中でも、塗工安定性、および密着性の観点から、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVDF―HFP)、ポリイミド、ポリアミドイミドが好ましい。なお、キトサンの誘導体としては、キトサンをグリセリル化した高分子化合物、キトサンの架橋体等を挙げることができる。
第1バインダとしては、上述した物質の中でも、耐熱性、化学的安定性等の観点からPTFEやPVDF等のフッ素樹脂が好ましく、PVDFがより好ましい。第1バインダは、上述した物質を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。
充填剤は、特に限定されない。充填剤としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、アルミナシリケイト等が挙げられる。
合剤層における第1バインダの含有率の下限としては、例えば1質量%であり、2質量%であってもよい。合剤層における第1バインダの含有率を上記下限以上とすることで、合剤層の良好な結着性を確保することができる。合剤層における第1バインダの含有率の上限としては、例えば8質量%であり、5質量%であってもよい。合剤層における第1バインダの含有率を上記上限以下とすることで、第1バインダが合剤層の細孔を閉塞することを抑制し、蓄電素子の高率放電特性を向上させることができる。さらに、絶縁体である第1バインダの含有率が低下することから、合剤層の電子伝導性を向上することができる。
合剤層の平均厚さとしては、例えば10μm以上200μm以下とすることができる。
合剤層の多孔度の上限としては、50%が好ましく、40%がさらに好ましく、30%がより好ましい。合剤層の多孔度を上記上限以下とすることで、合剤層のエネルギー密度を高めることができる。合剤層の多孔度の下限としては、10%が好ましく、20%がさらに好ましく、25%がより好ましい。合剤層の多孔度を上記下限以上とすることで、蓄電素子の高率放電特性を向上することができる。さらに、電解液の浸透性が確保され、蓄電素子の製造工程における注液時間を短縮することができる。
ここで、層(合剤層及び絶縁層)の多孔度とは、以下の式によって求められる値である。
多孔度(%)=(層の空孔体積/層の容積)×100
なお、層の空孔体積は、水銀ポロシメータを用いた水銀圧入法により測定される。
(絶縁層)
絶縁層は、合剤層の縁部に沿って電極基材上に配される。絶縁層とは、絶縁性を有する層のことを意味する。「絶縁性」を有するとは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω・cm超であることを意味する。
絶縁層は、フィラー及びバインダ(第2バインダ)を含有する。これにより、絶縁性を発揮することができる。絶縁層は、フィラー及びバインダ以外の他の成分が含有されていてもよい。
絶縁層に含まれる第2バインダは電極基材を加熱することで溶着されている。電極の製造工程における第2バインダを溶着する工程については後段で詳述する。
絶縁層と電極基材との剥離強度の下限は、0.2N/mm以上とすることができる。絶縁層と電極基材との剥離強度を上記のようにすることで、絶縁層が剥落することを抑制できる。絶縁層と電極基材との剥離強度の上限は、特に限定されない。
絶縁層と電極基材との剥離強度は、JIS Z 0237に準拠し、絶縁層に粘着テープを粘着し、剥離速度100mm/minで180°ピール試験を実施することによって測定できる。
(フィラー)
フィラーは、非導電性の粒子である。フィラーは無機粒子であってもよく、有機粒子であってもよい。耐熱性の観点からは無機粒子が好ましい。無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の無機窒化物、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物又は無機水酸化物、その他、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、硫酸アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ベーマイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、アルミノシリケート、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラス等を挙げることができる。これらの中でも、熱的に安定であることから無機酸化物又は無機水酸化物が好ましく、フッ化物イオン等のハロゲン化物イオンに対する安定性が高いことからアルミナがより好ましい。
フィラーの平均粒径(D50)の下限としては、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましく、2μmがより好ましい。フィラーの平均粒径(D50)の上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましい。フィラーの粒径を上記範囲とすることで、十分な非導電性を維持しつつ、電解質浸透性をより高めることなどができる。
(第2バインダ)
絶縁層に含まれるバインダ(第2バインダ)は、フィラー等を固定でき、且つ使用範囲で電気化学的に安定であるものが通常用いられる。第2バインダとしては、水系バインダを用いてもよいし、非水系バインダを用いてもよい。第2バインダの材質としては、第1バインダとして例示したものから選択することができる。第2バインダとしては、耐熱性及び化学安定性の観点からPTFEやPVDF等のフッ素樹脂が好ましく、PVDFがより好ましい。第2バインダは、上述した物質を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、第2バインダとして第1バインダと異なる物質を用いてもよい。また、第1バインダ及び第2バインダの両方に水系バインダを用いてもよく、第1バインダ及び第2バインダの両方に非水系バインダを用いてもよい。
絶縁層におけるバインダ(第2バインダ)の融点と、合剤層に含まれるバインダ(第1バインダ)の融点とでは、第2バインダの方が低いことが好ましい。第2バインダの融点が低いことで、合剤層の膨張を抑制することができる。バインダの融点は、例えば、JIS-K-7121(1987年)に記載されている方法によって測定できる。
絶縁層は、乾式塗工によって形成してもよく、湿式塗工によって形成してもよい。絶縁層の形成方法については後段で詳述する。
絶縁層を乾式塗工によって形成した場合、絶縁層におけるバインダ(第2バインダ)の含有率の下限としては、10質量%が好ましく、13質量%がさらに好ましく、15質量%がよりさらに好ましい。絶縁層におけるバインダの含有率を上記下限以上とすることで、絶縁層が合剤層と良好に密着し、絶縁信頼性を高めることができる。絶縁層におけるバインダの含有率の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%がよりさらに好ましい。絶縁層におけるバインダの含有率を上記上限以下とすることで、絶縁層の密着性を保持しつつ、フィラー粒子間に適度な空隙を確保することができる。
絶縁層を湿式塗工によって形成した場合、絶縁層におけるバインダ(第2バインダ)の含有率の下限としては、3質量%が好ましく、1質量%がさらに好ましく、0.1質量%がよりさらに好ましい。絶縁層におけるバインダの含有率を上記下限以上とすることで、絶縁層が合剤層と良好に密着し、絶縁信頼性を高めることができる。絶縁層におけるバインダの含有率の上限としては、10質量%が好ましく、8質量%がより好ましく、5質量%がよりさらに好ましい。絶縁層におけるバインダの含有率を上記上限以下とすることで、絶縁層の密着性を保持しつつ、フィラー粒子間に適度な空隙を確保することができる。
絶縁層におけるバインダ(第2バインダ)の含有率は、合剤層におけるバインダ(第1バインダ)の含有率よりも大きいことが好ましい。この含有率の差の下限としては、例えば1質量%であってよく、2質量%であってもよく、3質量%であってもよい。含有率の差の上限としては、例えば50質量%であり、30質量%であってよく、20質量%であってよく、10質量%であってよく、6質量%であってもよい。このようにすることで、合剤層の良好な多孔質状態、ひいては良好な電解質浸透性が確保され、蓄電素子の高率放電性能を高めることができる。
絶縁層の平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、4μmがより好ましく、6μmがさらに好ましく、7μmがよりさらに好ましい。絶縁層の平均厚さを上記下限以上とすることで、より十分な絶縁性を発揮することができる。絶縁層の平均厚さの上限としては、例えば30μmであり、20μmであってもよく、16μmであってもよい。絶縁層の平均厚さを上記上限以下とすることで、蓄電素子を薄くすることや、エネルギー密度を向上することができる。また、当該蓄電素子においては、比較的厚く絶縁層を形成した場合であっても、蓄電素子の高率放電性能の低下が小さく、良好な高率放電性能を発揮することができる。
なお、「絶縁層の平均厚さ」とは、以下の方法で測定された値とする。絶縁層が被覆された電極の任意の3箇所の断面について電子顕微鏡画像を観察し、各断面につき、任意の3箇所の絶縁層の厚さを測定する。測定した全ての箇所(全9箇所)の数値の平均値を絶縁層の平均厚さとする。
絶縁層の多孔度の上限としては、70%が好ましく、50%がより好ましく、35%がよりさらに好ましい。絶縁層における多孔度を上記上限以下とすることで、絶縁層の剥離が抑制され、絶縁信頼性を高めることができる。絶縁層の多孔度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がよりさらに好ましい。絶縁層における多孔度を上記下限以上とすることで、電解質浸透性が確保され、蓄電素子の高率放電性能を高めることができる。
絶縁層における多孔度と、合剤層における多孔度が異なっていても良い。この多孔度の差((絶縁層の多孔度)-(合剤層の多孔度))の下限としては、-40%が好ましく、-20%がより好ましく、-10%がよりさらに好ましい。この多孔度の差の上限としては、例えば40%が好ましく、30%がより好ましく、20%がよりさらに好ましい。このようにすることで、合剤層と絶縁層のそれぞれについて良好な多孔質状態、ひいては良好な電解質浸透性が確保され、蓄電素子の高率放電性能を高めることができる。また、この多孔度の差を-10%以上20%以下とすることで、合剤層と絶縁層の良好な多孔質状態が確保されると共に絶縁層の剥離を抑制することができるので、特に好ましい。
当該電極は、正極及び負極のいずれにも採用することができるが、平均粒径のより小さい活物質を含む電極に採用することが好ましく、充放電に伴う体積の変化率のより小さい活物質を含む電極に採用することが好ましい。
<蓄電素子>
本実施形態の電極は蓄電素子に用いられてもよい。該蓄電素子は、正極及び負極を備える。正極及び負極は、積層又は巻回された電極体を形成する。電極体は容器に収納され、容器内に電解質が充填される。電解質は、正極と負極との間に介在する。また、容器としては、蓄電素子の容器として通常用いられる公知の金属電池容器、樹脂電池容器等を用いることができる。
正極及び負極の少なくとも一方は、上述した本発明の一実施形態に係る電極である。なお、正極及び負極の一方に、本発明の一実施形態に係る電極以外の電極を用いることができる。このような電極としては、絶縁層を備えない電極や、絶縁層に含まれるバインダが電極基材を加熱することで溶着されていない電極等を挙げることができる。
当該蓄電素子の電極体としては、平板状の正極及び負極を交互に積層した積層型の電極体を用いてもよく、帯状の正極及び負極を交互に積層して巻回した巻回型の電極体を用いてもよく、平板状の正極又は負極を折り曲げずに間に挟んだ状態で、帯状の正極又は負極を蛇腹状に折り曲げて積層したものを用いてもよい。
正極と負極との双方に絶縁層が形成されている場合、これらの絶縁層の平均厚さ、多孔度、組成等は、同一であっても異なっていてもよい。また、絶縁層は合剤層の全体を覆っていてもよく、合剤層の一部を覆っていてもよい。
本実施形態の蓄電素子では、電解質として非水溶媒に電解質塩が溶解された非水電解液を用いてもよく、非水電解液と固体電解質を併用してもよく、固体電解質を用いた全固体蓄電素子であってもよい。全固体蓄電素子とは、常温、例えば15℃~25℃において、全ての構成成分が固体である蓄電素子をいう。全固体蓄電素子とすることで、蓄電素子に可燃性の非水溶媒を用いないので、安全装置の簡素化、製造コストの抑制、生産性の向上等が可能となる。
本実施形態の蓄電素子の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、ラミネートフィルム型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。
図3及び図4に角型蓄電素子の一例を示す。蓄電素子10においては、巻回された正極及び負極を有する電極体400が角型のケース100に収納される。ケース100はケース本体111と、蓋板110とを含む。正極は正極リード120を介して正極端子200と電気的に接続されている。負極は負極リード130を介して負極端子300と電気的に接続されている。なお、蓄電素子は正極及び負極との間にセパレータを介してもよく、セパレータを含まなくてもよい。この場合、正極と負極の少なくとも一方の電極の合剤層の全体が絶縁層で被覆されているのが好ましい。
<蓄電装置の構成>
本実施形態の蓄電素子は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の蓄電素子1を集合して構成した蓄電ユニット(バッテリーモジュール)として搭載することができる。この場合、蓄電装置に含まれる少なくとも一つの蓄電素子に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
図5に、電気的に接続された二以上の蓄電素子が集合した蓄電ユニットをさらに集合した蓄電装置の一例を示す。蓄電装置30は、二以上の蓄電素子10を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二以上の蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバ(図示せず)を備えていてもよい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一以上の蓄電素子10の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
<電極の製造方法>
本発明の一実施形態に係る電極の製造方法について説明する。
図6、図7、図8に本発明の一実施形態に係る電極の製造工程の概略図を示す。
本発明の一実施形態に係る電極の製造方法は、電極基材上に合剤層を配する工程と、前記合剤層の縁部に沿って前記電極基材上に樹脂材料を含む絶縁層を配する工程と、前記電極基材を加熱することにより、前記絶縁層を加熱して絶縁層に含まれる樹脂材料を溶着する工程と、を含む。
以下、本実施形態に係る電極の製造方法を、(1)合剤層を配する工程と、(2)絶縁層を配する工程と、(3)樹脂材料を溶着する工程と、に分けて説明する。
(1)合剤層を配する工程 電極基材上に合剤層を配する工程について、図6を用いて説明する。
図6に示すように、合剤層の形成を行う塗工装置は、長尺状の電極基材42を長手方向に沿って搬送しながら、電極基材42の一面に合剤塗料を転写し、電極基材上に合剤塗工部64を形成するとともに、合剤塗工部64を乾燥、圧縮して合剤層43を形成する装置である。なお、図中のX方向が電極41の搬送方向である。
合剤塗料は、活物質と、第1バインダとを適量の溶媒とともに撹拌し混練することで形成する。合剤塗料には、必要に応じて、導電剤、増粘剤、充填剤等の任意成分を加えてもよい。これらの各成分は、上述した材料から選択することができる。
塗工装置は、供給される電極基材上に合剤塗料を転写する転写装置を備える。転写装置は、合剤層の塗料の供給部61、円柱状のコーティングロール62、円柱状のテンションロール63を備える。コーティングロール62及びテンションロール63は、いずれも軸が平行になるよう配置される。
供給部61は、コーティングロール62の表面に合剤塗料を供給して付着させる。コーティングロール62の合剤塗料が付着した面は、電極基材42を挟んでテンションロール63と対向する。コーティングロール62と電極基材42、及び電極基材42とテンションロール63とは、それぞれ当接する。テンションロール63は、電極基材42との当接面が電極基材42の搬送方向と同方向に移動するよう回転する。コーティングロール62は、テンションロール63と逆方向に回転する。これにより、コーティングロール62上に付着した合剤塗料は、電極基材42の一方の面に転写され、電極基材42上に合剤塗工部64が形成される。
本実施形態では、電極基材42上への合剤塗料の塗工は、間欠塗工としてもよく、連続塗工としてもよい。連続塗工とは、電極基材42の搬送と並行して、合剤塗料を電極基材42に塗工する工程を連続して行うことで、電極基材42に合剤塗工部64を連続的に形成することをいう。間欠塗工とは、電極基材42の搬送を連続して行いながら、合剤塗料を電極基材42に塗工する工程と、塗工しない工程とを交互に行うことで、電極基材に合剤塗工部64を間欠的に形成することをいう。本実施形態においては、一定の間隔で、供給部61からの合剤塗料の供給を停止することで、間欠塗工とすることができる。また、一定の間隔で、コーティングロール62とテンショントール63とを離間させることで間欠塗工としてもよい。
本発明の実施形態では、連続塗工を適用するのが好ましい。連続塗工とすることで、後述する誘導加熱を容易に行うことができる。即ち、電極基材の搬送方向に沿って、コイルと絶縁層とを対向させる簡便な構成によって、電極基材の加熱により絶縁層に含まれる樹脂材料の溶着を実施することができる。
なお、電極基材への合剤塗料の塗工は、転写でなく、合剤塗料が貯蔵された容器内に電極基材を通過させることによって行ってもよい。また、合剤塗料を塗工する工程では、当分野で公知の種々の塗工装置を用いることができる。本実施形態では、例えば、リップコーター、グラビアコーター、スロットダイコーター、コンマコータ―等の装置を用いてもよい。
また、本実施例では、合剤塗料を塗工する工程を湿式塗工として説明したが、合剤塗料は乾式塗工によって塗工してもよい。湿式塗工とは、塗料に溶媒が含まれた状態で塗工する塗工方法である。乾式塗工とは、塗料に溶媒が含まれない状態で塗工する塗工方法である。乾式塗工を適用する場合、帯電させた塗料を合剤層上に積層する静電塗装が好ましく、粉体状の塗料を用いた粉体塗装も好ましく、静電塗装と粉体塗装とを組み合わせた静電粉体塗装法がさらに好ましい。粉体塗装としては、流動浸漬法等を挙げることができる。静電塗装としては、電界紡糸法等を挙げることができる。
塗工装置において、電極基材42の搬送方向における転写装置の下流には、電極基材42上に塗工された合剤塗料を乾燥させる乾燥炉65が設けられている。電極基材42は、乾燥炉65内にて乾燥される。この過程で、合剤塗料に含まれる溶媒は揮発され、合剤塗料に含まれる第1バインダが溶着される。電極基材42の乾燥は、例えば、乾燥炉65内にファンとヒーターとを配置し、電極基材42と合剤塗工部64とに熱風を吹き付けることによって行われる。
塗工装置において、電極基材42の搬送方向における乾燥炉65の下流には、一対のプレスロール66が設けられる。一対のプレスロール66は、合剤塗工部64が形成された電極基材42を搬送方向へ搬送しながら、乾燥済みの合剤塗工部64を圧縮し、合剤層43を形成する。この際、合剤層43の厚さや多孔度等を所定の値に調節することができる。また、合剤塗工部64をロールプレスする工程において、ロールを高温に加熱することで、合剤塗工部64を加熱処理することもできる。合剤塗工部64の圧縮は、プレスロールに代えてプレス機を用いて行ってもよい。なお、塗工時に合剤層の厚さ寸法を十分に設定可能な場合には、圧縮工程は省略してもよい。
(2)絶縁層を配する工程
次に、合剤層の縁部に沿って、電極基材上に樹脂材料を含む絶縁層を配する工程について説明する。絶縁層を配する工程では、合剤層を形成した電極基材上に、絶縁塗料を塗工して絶縁層を形成する。絶縁層は、電極基材上から合剤層上に延在してもよい。絶縁層は湿式塗工によって形成してもよく、乾式塗工によって形成してもよい。
湿式塗工とは、上述したとおり、塗料に溶媒が含まれた状態で塗工する塗工方法である。即ち、絶縁層における湿式塗工では、フィラーと第2バインダとを適量の溶媒とともに撹拌し混練することで絶縁塗料を形成し、形成した絶縁塗料を電極基材上に塗工し、乾燥させ、絶縁層を形成する。溶媒としては、第2バインダが溶解するものが用いられる。
湿式塗工により電極基材上に絶縁塗料を塗工すると、溶媒に溶解した第2バインダが電極基材上に濡れ広がる。そして、電極基材上に第2バインダが濡れ広がった後、溶媒を揮発させる。このため、湿式塗工により絶縁塗料を塗工すると、第2バインダと電極基材との接触面積が大きくなり易く、絶縁層と電極基材との剥離強度を大きくすることが容易になる。したがって、絶縁層と電極基材との剥離強度という観点からは、絶縁層は湿式塗工によって形成するのが好ましい。
絶縁層における湿式塗工の手法としては、例えば、上述した合剤層の形成と同様の手法を挙げることができる。
乾式塗工とは、上述したとおり、塗料に溶媒が含まれない状態で塗工する塗工方法である。即ち、絶縁層における乾式塗工では、フィラーと第2バインダとを固体の状態で電極基材上に塗工する。乾式塗工では、第2バインダは固体状態で電極基材上に配される。このため、乾式塗工では塗料を塗工した後、電極を加熱することで第2バインダを溶着し、絶縁層を固定化する。ここで、乾式塗工では、第2バインダは固体状態で電極基材上に配されるため、溶着前の第2バインダと電極基材との接触面積が小さくなる。このため、乾式塗工において、絶縁塗料を塗工した後の電極の加熱が不十分であると、第2バインダが十分に溶融しないために、第2バインダが電極基材上に濡れ広がらず、第2バインダと電極基材との接触面積が小さい状態のまま絶縁層が固定化される虞がある。このような事情からも、絶縁層と電極基材との剥離強度という観点からは、絶縁層は湿式塗工によって形成するのが好ましい。
一方で、従来の湿式塗工では、絶縁層の形成工程において、絶縁塗料に含まれる第2バインダが合剤層に流動し、合剤層の細孔を閉塞する虞があったのに対し、乾式塗工では、溶媒が含まれない状態で塗工するため、第2バインダが合剤層の細孔を閉塞する虞を低減することができる。したがって、本実施形態に係る電極を用いた蓄電素子の出力特性という観点からは、絶縁層は乾式塗工によって形成するのが好ましい。
図9及び図10は、それぞれ乾式塗工により形成された絶縁層を備える正極と、湿式塗工により形成された絶縁層を備える正極の断面の電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)によるフッ素元素マッピング画像である。いずれの絶縁層も、合剤層上に、フィラーと第2バインダとを90:10の質量比で混合した絶縁塗料を塗工することで形成している。図9及び図10において、白色度が高い部分が主にバインダを示している。図9の湿式塗工により絶縁層を形成した正極においては、右側の絶縁層にはほとんどバインダが残存しておらず、左側の合剤層の粒子間の多くの部分にバインダが充填されていることがわかる。一方、図10の乾式塗工により絶縁層を形成した正極においては、右側の絶縁層に十分にバインダが残存し、合剤層の粒子間に存在するバインダ量が少ないことが分かる。
絶縁層における乾式塗工の手法としては、例えば、上述した合剤層の形成と同様の手法を挙げることができる。
なお、乾式塗工として粉体塗装を実施する場合、粒子状のフィラーと粒子状の第2バインダとを混合した粉体や、粒子状のフィラーの表面に第2バインダを付着させた粉体を用いることができるが、粒子状のフィラーの表面に第2バインダを付着させた粉体を用いることが好ましい。フィラーの表面に選択的にバインダを存在させることにより、フィラー粒子間の空隙に存在するバインダを低減して、フィラー間の空間を確保することができ、絶縁層中の電解質の浸透性がより良好になる。また、粒子状のフィラーの表面にバインダを付着させた粉体を用いることで、バインダを絶縁層の厚さ方向に対して均一に分布させることができる。
粉体塗装においては、粉体状の塗料をエアーフローフィーダーや振動フィーダー等の各種フィーダーを用いて合剤層の上から噴霧(散布)する。噴霧後、又は噴霧と共に、塗工された粉体状の絶縁体を加熱することで、粉体状の絶縁体が融着し、合剤層上に絶縁層を形成することができる。なお、噴霧の際、粉体を静電気で帯電させておくことにより、静電粉体塗装法を採用することができる。静電粉体塗装法を用いることで、より均一性が高く、フィラーが層状に積層された絶縁層を効率的に形成することができ、絶縁層の厚さのバラツキが小さい安定した絶縁層を形成することができる。
乾式塗工は、特開2014-137965号、特開2014-212072号等に記載されている方法や装置を用いて行うことが可能である。
塗工された絶縁層は、プレス機又はローラーによってプレスすることにより、所定の厚さ寸法に形成してもよい。なお、塗工時に絶縁層の厚さ寸法を十分に設定可能な場合には、プレス工程は省略してもよい。また、プレス工程は、後述する
樹脂材料を溶着する工程の前に行ってもよく、該工程の後に行ってもよい。
絶縁層を形成した電極は、乾燥炉に導入して加熱する。このようにすることで、絶縁層に含まれる樹脂材料を溶着し、絶縁層を固定化する。なお、上記の乾燥炉を用いた加熱は、絶縁層を直接加熱する工程であるため、後述する電極基材を直接加熱する工程とは異なるものである。乾燥炉の構成は、上述した合剤層の形成工程において用いるものと同様の構成とすることができる。
(3)樹脂材料を溶着する工程
次に、電極基材を加熱することにより絶縁層を加熱して、絶縁層に含まれる樹脂材料を溶着する工程について説明する。この工程では、電極基材を加熱し、電極基材から伝達される熱によって絶縁層の第2バインダを加熱し、溶着させる。
電極基材から伝達される熱によって絶縁層における第2バインダを加熱した場合、熱が電極基材から絶縁層の表面へ向かう方向へと伝達されることから、電極基材と絶縁層との界面における第2バインダが十分に溶融するだけの加熱を行うことと、電極の加熱による絶縁層および合剤層の膨張を抑制することとの両立が容易になる。電極基材と絶縁層との界面における第2バインダが十分に溶融すると、電極基材上に溶融した第2バインダが濡れ広がり、絶縁層と電極基材との剥離強度を向上することができる。
このような効果が得られる理由としては、以下のことが推測される。
絶縁層を表面側から加熱する場合、表面付近の温度は容易に高くなるが、電極基材と絶縁層との接触面の温度は高くなりにくい。特に、絶縁層を樹脂の融点以上に加熱する場合には、樹脂の溶融に熱エネルギーが消費されるため、このような現象が生じやすい。
これに対し、電極基材を直接加熱する場合、電極基材の熱伝導性は樹脂材料よりもはるかに高いため、電極基材は容易に温度上昇する。さらに、電極基材の融点も樹脂材料よりもはるかに高いため、電極基材と絶縁層との接触面の温度を、樹脂の融点以上まで容易に上げることができる。これにより、電極基材の表面に、溶融した第2バインダが濡れ広がり、絶縁層と電極基材との剥離強度を向上できる。
なお、絶縁層の表面側から加熱する従来の加熱方法であっても、多量の熱エネルギーを加えれば、絶縁層と電極基材との剥離強度を上げることはできる。しかし、このような手法によると、絶縁層や合剤層が過剰に加熱され、膨張する懸念が生じるため好ましくない。
電極基材を加熱し、電極基材から伝達される熱によって絶縁層の第2バインダを加熱する方法としては、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等を挙げることができる。熱風加熱や赤外線加熱等の放射による熱エネルギーを利用した加熱方法を用いる場合、第3領域(電極基材が露出している領域)のみを選択的に加熱することや、電極基材の合剤層及び絶縁層が形成された面と異なる面から加熱することで、電極基材を加熱し、電極基材から伝達される熱によって絶縁層の第2バインダを加熱することができる。これらの中でも、誘導加熱を用いるのが特に好ましい。
誘導加熱とは、電磁誘導を利用して導電性材料を加熱する加熱方法である。具体的には、交流電源に接続して周囲に磁束を発生させたコイルを、被加熱対象である導電性材料に近づけることで、導電性材料に磁束の変化を妨げる方向に電流を流す。導電性材料に電流が流れると、電気抵抗によってジュール熱が発生することから、コイルを近づけた導電性材料が加熱される。
熱風加熱や赤外線加熱等の放射による熱エネルギーを利用した加熱方法により絶縁層を直接加熱する場合、熱が絶縁層の表面から電極基材に向かう方向へと伝達される。このため、電極基材と絶縁層との界面に存在する第2バインダが十分に溶着されるよう加熱すると、電極の表面が過剰に加熱され、絶縁層の表面側や合剤層が膨張する虞があった。
これに対し、誘導加熱は被加熱物に直接電流を流す加熱方法である点で従来の加熱方法とは大きく異なる。即ち、誘導加熱によって直接的に加熱されるのは導電性材料に限られ、非導電性材料に対する加熱効果は生じない。このため、本実施形態において誘導加熱を用いることで、電極基材と絶縁層との界面における第2バインダが十分に溶融するだけの加熱を行うことと、電極の加熱による絶縁層および合剤層の膨張を抑制することとの両立を容易に行える。
また、絶縁層の表面側から加熱する従来の加熱方法では、電極全体を第2バインダの融点に近い温度まで加熱する必要があった。例えば、第2バインダとしてポリエチレン粒子を用いた場合では、電極の温度がポリエチレン粒子の融点である130℃から190℃の範囲内となるよう加熱する必要があり、これを超える温度で加熱すると、合剤層や絶縁層が膨張する虞や、変形する虞があった。
これに対し、電極基材を加熱し、電極基材から伝達される熱によって絶縁層の第2バインダを加熱する本発明の一実施形態に係る加熱方法により絶縁層を加熱する場合、熱が電極基材から絶縁層の表面へ向かって伝導する。このため、従来よりも高い温度で電極を加熱しても、合剤層や絶縁層の表面側が膨張する虞や、変形する虞を低減することができる。そして、従来よりも高い温度で電極を加熱すると、第2バインダが十分に溶融して電極基材上に濡れ広がり、電極基材と絶縁層との剥離強度を向上できるため好ましい。以上のことから、本実施形態では、電極基材の温度を第2バインダの融点よりも70℃以上高い温度となるよう加熱するのが好ましく、120℃以上高い温度となるよう加熱するのがより好ましく、170℃以上高い温度となるよう加熱するのがよりさらに好ましい。例えば、第2バインダとしてポリエチレン粒子を用いた場合、ポリエチレン粒子の融点である130℃よりも高い200℃や、250℃や、300℃まで昇温するよう電極基材を加熱することができる。
また、電極基材の昇温が容易であることからも、本実施形態の電極基材を加熱する方法は誘導加熱とすることが好ましい。
図7及び図8に、電極基材を誘導加熱する場合の、電極基材とコイルとの位置関係の概略図を示す。コイル45は、電極41の搬送方向に沿って、絶縁層44(電極41の第2領域52)と対向するよう配置される。コイル45は所定の出力で電極41の第2領域52を加熱する。
本実施形態における電極は、両面に合剤層を形成することが好ましい。これにより、電極の体積当たりのエネルギー量を大きくできる。
なお、電極基材と、電極基材上の絶縁層との剥離強度を高める本発明の効果を享受しつつ、電極基材の両面に合剤層を形成するためには、電極基材を誘導加熱によって加熱することが特に好ましい。電極の加熱方法を誘導加熱とすることで、電極基材の両面に合剤層を形成した場合であっても、絶縁層を介して電極基材とコイルとを対向させることで、電極基材を加熱することができる。
また、誘導加熱によって電極基材を加熱することで、簡便な装置で加熱工程を行うことができることからも、誘導加熱が好ましい。即ち、誘導加熱で電極基材を加熱するのであれば、電極の搬送方向に沿って、コイルを電極に近接して配置するだけでよい。図7に電極の搬送方向に沿ってコイルを配置した例を示す。
また、誘導加熱によって電極基材を加熱する場合、絶縁層は乾式塗工によって形成するのが好ましい。上述したとおり、電極基材と絶縁層との剥離強度の観点からは、絶縁層の形成は湿式塗工が好ましい一方で、内部抵抗等の電気化学特性の観点からは、絶縁層の形成は乾式塗工が好ましい。ここで、誘導加熱によって電極を加熱すれば、熱が電極基材から絶縁層の表面に向かう方向に伝導するため、乾式塗工により絶縁層を形成した場合であっても、電極基材と絶縁層との剥離強度向上と、良好な電気化学特性とを両立することができる。なお、この効果は、絶縁層が合剤層の一部を覆う場合と、合剤層の全体を覆う場合のどちらにおいても発揮することができる。
なお、正極合剤層を湿式塗工で形成する場合、正極合剤層に含まれるバインダ(第1バインダ)には非水系バインダを用いるのが好ましい。正極活物質として通常用いられる金属酸化物は、負極活物質として通常用いられる炭素材料に比べ、親水性が高い。このため、正極の合剤塗料の溶媒に水を用いると、電極からの水分除去が容易でない。また、正極活物質がリチウム遷移金属酸化物である場合、合剤塗料の溶媒である水に正極活物質からLiOHが溶出し、合剤塗料のpHが高くなる。ここで、電極基材がアルミニウム等の両性金属であると、pHが高い合剤塗料の塗工により腐食が生じる。正極合剤層に含まれるバインダ(第1バインダ)に非水系バインダを用いると、合剤塗料の溶媒に水を用いないため、電極の乾燥が容易になる。また電極基材にアルミニウム等を使用する際の腐食を抑制できる。
また、負極合剤層を湿式塗工で形成する場合、負極合剤層に含まれるバインダ(第1バインダ)には水系バインダを用いるのが好ましい。水系バインダを用いる場合、合剤塗料の溶媒には水を用いる。水は合剤塗料に通常用いられる非水溶媒に比べて沸点が低い。このため、水系バインダを用いると合剤塗料から溶媒を揮発させることが容易になる。また、合剤塗料の溶媒として非水溶媒を用いると、揮発した非水溶媒を回収する必要が生じるため製造コストが上昇する。このため、水系バインダを用いると電極の製造コストを抑制できる。
正極合剤層上に湿式塗工により絶縁層を形成する場合、絶縁層に含まれるバインダ(第2バインダ)には水系バインダを用いるのが好ましい。第2バインダとして非水系バインダを用いると、溶媒に非水溶媒を含む絶縁塗料を合剤層上に塗工することになる。そうすると、絶縁塗料の溶媒によって、合剤層に含まれる非水系バインダ(第1バインダ)が溶出又は膨潤して合剤層が劣化する虞がある。第2バインダとして水系バインダを用いることで上述した虞を回避することができる。同様の理由から、負極合剤層上に湿式塗工により絶縁層を形成する場合、絶縁層に含まれるバインダ(第2バインダ)には非水系バインダを用いるのが好ましい。
なお、合剤層上に乾式塗工により絶縁層を形成する場合、上述した塗料の溶媒によって生じる問題はいずれも考慮する必要がなくなり、第1バインダと第2バインダとをいずれも水系バインダとする、又は、第1バインダと第2バインダとをいずれも非水系バインダとすることができる。つまり、第1バインダとして水系バインダを用いた場合であっても、第2バインダとして水系バインダを用いることができるし、第1バインダとして非水系バインダを用いた場合であっても、第2バインダとして非水系バインダを用いることができる。
このような構成とすることで、製造工程において第1バインダと第2バインダとを類似の条件で保存できる場合や、乾燥処理できる場合があるため好ましい。また、このような構成とすることで、バインダの水性・非水性に係らず、適当なバインダを選択することが可能となるため、第1バインダ及び第2バインダの材質の最適化が容易になるため好ましい。
第2バインダの融点は、第1バインダの融点よりも低いことが好ましい。電極基材が金属箔である場合、金属箔は熱伝導性が高いことから、金属箔の一部を加熱した場合であっても、金属箔全体が昇温することがある。即ち、電極基材の第2領域(電極基材と絶縁層とが接触している領域)を選択的に加熱した場合であっても、第1領域(電極基材と合剤層とが接触している領域)に熱が伝導することがある。このような場合、合剤層の第1バインダと、絶縁層の第2バインダとのいずれもが加熱されることとなる。
ここで、第2バインダの融点が第1バインダの融点よりも低いと、第2バインダのみを溶着させることや、第1バインダの膨張を抑制することが容易になるため好ましい。
誘導加熱は局部加熱が容易な加熱方法であり、本発明の実施形態においては、誘導加熱により電極基材の第1領域(電極基材と合剤層とが接触している領域)及び第2領域(電極基材と絶縁層とが接触している領域)を加熱することが好ましく、電極基材の第2領域を選択的に加熱することがより好ましい。即ち、誘導加熱によって、電極基材上に合剤層又は絶縁層が形成された領域に磁束を集中させることが好ましく、電極基材上に絶縁層が形成された領域に磁束を集中させることがより好ましい。
誘導加熱を行う場合、第3領域(電極基材が露出している領域)は加熱されやすく、第1領域及び第2領域は加熱されにくい。このため、電極全体を誘導加熱する場合、誘導加熱の出力を設定することが難しくなる虞がある。即ち、誘導加熱の出力を、第2バインダを十分に溶着できるよう設定すると、電極基材の第1領域が過剰に加熱され、耐久性を損なう虞がある。また、誘導加熱の出力を、電極基材の第1領域が過剰に加熱されないよう設定すると、第2領域が十分に加熱されず第2バインダの溶着が不十分となり、電極基材と絶縁層との剥離強度が改善されない虞がある。以上のことから、誘導加熱では、電極基材の第1領域及び第2領域を加熱することが好ましい。
また、誘導加熱によって、電極基材の第2領域を選択的に加熱する場合、電極基材の第1領域及び第2領域を加熱する場合に比べ、電極基材の合剤層が形成されている領域の昇温を抑制できることから、合剤層が膨張することを抑制できる。
誘導加熱によって電極基材を加熱する場合、第2バインダの融点は、第1バインダの融点より低いことが好ましい。このような構成とすることで、誘導加熱によって電極基材を加熱した際に、電極基材と合剤層との界面に存在する第1バインダの溶融を抑制しつつ、電極基材と絶縁層との界面に存在する第2バインダを溶着することが容易になる。
<蓄電素子の製造方法>
本発明の一実施形態に係る電極を用いた蓄電素子の製造方法は、公知の方法から適宜選択できる。当該製造方法は、例えば、電極体を準備する工程と、電解質を準備する工程と、電極体及び電解質を容器に収容する工程と、を備える。電極体を準備する工程は、正極及び負極を準備する工程と、正極及び負極を、積層又は巻回することにより電極体を形成する工程を備える。ここで、正極及び負極の少なくとも一方に、本発明の電極が適用されていればよい。
電解質を容器に収容する工程は、公知の方法から適宜選択できる。例えば、電解質に非水電解液を用いる場合、容器に形成された注入口から非水電解液を注入した後、注入口を封止すればよい。
<その他の実施形態>
尚、本発明の一実施形態に係る電極及び電極の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
上記実施形態において、合剤層が湿式塗工により形成される場合について説明したが、合剤層は乾式塗工により形成されてもよい。
上記実施形態において、絶縁層が乾式塗工により形成される場合について説明したが、絶縁層は湿式塗工により形成されてもよい。
上記実施形態において、電極基材の加熱を誘導加熱によって行うこととしたが、電極基材の加熱は、第3領域を熱風加熱することで行ってもよく、第3領域を赤外線加熱することで行ってもよい。
上記実施形態において、絶縁層を形成した電極を、乾燥炉に導入して加熱する工程を経て、電極基材の加熱する工程を行うこととしたが、これらの工程を実施する順序は異なっていてもよい。また、絶縁層を形成した電極を加熱する工程は、乾燥炉に導入することによる方法に限らない。また、絶縁層を形成した電極を加熱する工程は、実施されなくてもよい。
上記実施形態では、絶縁層が合剤層の一部を覆う態様について説明したが、絶縁層は合剤層の全体を覆ってもよい。このような本発明の他の実施形態に係る電極の断面図を、図11に示す。
上記実施形態では、合剤層が電極基材と直接接触する態様について説明したが、合剤層と電極基材との間に、中間層が介在してもよい。このような本発明の他の実施形態に係る電極の断面図を、図12に示す。
中間層は、炭素粒子等の導電性を有する粒子を含むことで電極基材と合剤層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、樹脂材料及び導電性を有する粒子を含む。「導電性」を有するとは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が107Ω・cm以下であることを意味する。
なお、図12に示すように、電極41が中間層46を備える場合、電極基材42と中間層46とが接触している領域を第1領域51、電極基材42と絶縁層44とが接触している領域を第2領域52、電極基材42が露出している領域を第3領域53とする。
上記実施形態では、誘導加熱をする場合に、コイルが電極の第2領域のみと対向する形態について説明したが、コイルは電極の第1領域及び第2領域と対向してもよく、第2領域及び第3領域と対向してもよく、第1領域から第3領域にかけて対向してもよい。但し、コイルが第3領域と対向すると、電極基材が変形する虞があるため、コイルは第2領域のみと対向するか、第1領域及び第2領域と対向することが好ましい。
上記実施形態において、絶縁層がフィラーと第2バインダとを含む場合について説明したが、絶縁層はフィラーを含まなくてもよい。フィラーを含まない絶縁層を形成する手法としては、電界紡糸法等を挙げることができる。
上記実施形態では、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類、形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、種々の二次電池、一次電池、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用できる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
[実施例1]
(電極の作製)
正極活物質粒子としてLiNi1/2Co1/5Mn3/10、導電剤としてアセチレンブラック、及びバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。正極活物質粒子、導電剤、及びバインダの比率をそれぞれ93質量%、4質量%及び3質量%とした混合物に、N-メチル-ピロリドン(NMP)を適量加えて粘度を調整し、正極合剤塗料を作製した。この正極合剤塗料を、厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、未塗工部(正極合剤層非形成領域)を残して塗工し、乾燥することにより正極合剤層を作製した。その後、ロールプレスを行い、正極を作製した。正極の厚さは150μmであった。
(絶縁層の作製)
無機粒子として平均粒径が3μmのアルミナ、及びバインダとしてPVdFを用いた。無機粒子、バインダの含有比率をそれぞれ85質量%、15質量%とした混合物を造粒し、複合粒子を作製した。この複合粒子を、上記正極上に静電粉体塗装法により塗工した後、大気雰囲気下、正極の表面温度が145℃となるように、22秒加熱し、絶縁層を形成した。加熱は赤外線加熱によって行った。絶縁層の厚さは13μmであった。
絶縁層を形成した上記電極の未塗工部を、大気雰囲気下、誘導加熱により300℃となるように、1.2秒加熱し、実施例1の電極を作製した。
[比較例1]
誘導加熱を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電極を作製した。
(剥離強度の測定)
実施例1及び比較例1の電極を、JIS Z 0237に準拠し、絶縁層に粘着テープを粘着し、剥離速度100mm/minで180°ピール試験を実施し、絶縁層と、アルミニウム箔界面との剥離強度を測定した。同一の試験サンプルにつき、2回の測定を行い、平均値を算出した。
絶縁層とアルミニウム箔界面との剥離強度は、実施例1は0.24N/mm、比較例1は0.13N/mmであった。
以上の結果から明らかなように、本願の発明により、電極基材上に配した樹脂材料の剥離強度を向上できる。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 蓄電素子
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
41 電極
42 電極基材
43 合剤層
44 絶縁層
45 コイル
46 中間層
51 第1領域
52 第2領域
53 第3領域
61 供給部
62 コーティングロール
63 テンションロール
64 合剤塗工部
65 乾燥炉
66 プレスロール
100 ケース
110 蓋板
111 ケース本体
120 正極リード
130 負極リード
200 正極端子
300 負極端子
400 電極体




Claims (4)

  1. 電極基材上に合剤層を配する工程と、
    前記合剤層の縁部に沿って前記電極基材上に樹脂材料を含む絶縁層を配する工程と、
    前記電極基材を加熱することにより、前記絶縁層を加熱して絶縁層に含まれる樹脂材料を溶着する工程と、を含む電極の製造方法。
  2. 誘導加熱によって前記電極基材を加熱する、請求項1の電極の製造方法。
  3. 前記合剤層及び前記絶縁層を、前記電極基材の両面に形成する請求項1又は2の電極の製造方法。
  4. 前記絶縁層は、溶媒が含まれない状態で前記電極基材上に配される、請求項1から3のいずれか1項に記載の電極の製造方法。

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