以下、図面を参照しながら、除染実施方法および除染実施装置の実施形態について詳細に説明する。
図1の符号1は、本実施形態の除染実施装置である。この除染実施装置1は、原子力プラントに設けられる原子炉圧力容器2の除染を行うために用いられる。原子力プラントの廃止措置においては、運転停止後、炉内より燃料が取り出され、その後、原子炉一次系統の解体前除染が実施される。本実施形態では、除染液を用いた化学除染を実施する。
原子炉一次系統は、原子炉圧力容器2(RPV:Reactor Presser Vessel)と、原子炉再循環系統3(PLR系統:Primary Loop Recirculation System)と、原子炉冷却材浄化系統(CUW:Reactor Water Clean-Up System)と、残留熱除去系統(RHR:Residual Heat Removal System)とを含む。
本実施形態の除染実施方法では、原子力プラントとしての沸騰水型原子炉(BWR)の化学除染について説明する。なお、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)、加圧水型原子炉(PWR)などに、本実施形態の除染実施方法を適用しても良い。
まず、図1を参照して、沸騰水型原子炉に設けられた原子炉圧力容器2、原子炉再循環系統3、その周辺の基本構造について説明する。なお、蒸気および炉水(冷却材)のフロー(流れ)などの通常運転時に受動的に生じる作用を含めて説明する。図1では、本設(既設)の系統を破線で図示し、除染のために構築される仮設系統4を実線で図示している。また、理解を助けるために、原子炉圧力容器2に接続されている他の本設の系統の図示を省略する。
原子炉圧力容器2の内部には、核燃料が配置される炉心10が設けられている。沸騰水型原子炉においては、この炉心10を囲む炉心シュラウド11が設けられている。この炉心シュラウド11の外周面と、原子炉圧力容器2の内周面の間には、環状の空間であるダウンカマ14が形成されている。このダウンカマ14には、例えば、16台または20台のジェットポンプ16が、平面視で環状に所定の間隔を開けて並んでいる。
炉心10の上方には、炉心上部プレナムを覆うシュラウドヘッド17が設けられている。そして、シュラウドヘッド17の上方に気水分離器18が設けられている。さらに、気水分離器18の上方には、蒸気乾燥器19が設けられている。
原子炉圧力容器2の頭頂部(天井部)には、ヘッドスプレイノズル13が配置されている。このヘッドスプレイノズル13には、原子炉圧力容器2の外部に延びるRHRヘッドスプレイ管26が接続されている。ヘッドスプレイノズル13によって、原子炉圧力容器2の内部に一次冷却材などの液体を散布することができる。
原子炉圧力容器2の外側には、2系統または3系統の原子炉再循環系統3が設けられている。原子炉圧力容器2の内部のダウンカマ14の下部から再循環水出口ノズル20を経て原子炉再循環系統3に一次冷却材が流入される。この流入された一次冷却材は、原子炉再循環系統3に設けられたPLRポンプ21によって昇圧される。これらのPLRポンプ21に流入する一次冷却材の流量は、PLRポンプ21のそれぞれ吸入側に設けられたPLR吸入弁22、吐出側に設けられたPLR吐出弁23により調整される。
原子炉再循環系統3を流れた一次冷却材は、再循環水入口ノズル24を経てジェットポンプ16に導かれ、ジェット駆動流体としてジェットポンプ16のノズルから噴出し、ダウンカマ14の上部の炉内にある一次冷却材を吸い込んでジェット流を形成する。
ジェットポンプ16から噴出した一次冷却材は、炉心10を通過中に加熱され、気液混合の二相流となる。そして、気水分離器18の内部に送られた気液混合流は、蒸気と水とに分離され、蒸気はさらに蒸気乾燥器19で湿分が取り除かれた後に、原子炉圧力容器2上部の主蒸気ノズル27(蒸気出口ノズル)から流出する。この流出した蒸気は、タービン系統(図示略)へ供給される。なお、これらの構成は、原子力発電プラントの一例であり、プラントによっては、ジェットポンプ16が無い場合もある。
タービン系統で仕事をした一次冷却材としての蒸気は、復水器(図示略)により復水となり、給水加熱器(図示略)により加熱されて給水となって、原子炉圧力容器2に設けられた給水ノズル12に導かれる。この給水ノズル12には、原子炉圧力容器2の内壁に沿って環状に形成された給水スプレイリング77が接続される。給水スプレイリング77は、原子炉圧力容器2の内周に沿って配置されたリング状のパイプであり、一次冷却材が噴き出される複数の孔部が形成されている。給水ノズル12に導かれた給水としての一次冷却材は、給水スプレイリング77の複数の孔部から原子炉圧力容器2の内部に供給される。
また、原子炉圧力容器2の内部には、給水スプレイリング77とほぼ同じ高さ位置に、原子炉圧力容器2の内壁に沿って環状に形成された炉心スプレイリング78が配置される。この炉心スプレイリング78は、給水ノズル12とほぼ同一高さ位置で原子炉圧力容器2に設けられた炉心スプレイノズル15に接続されている。炉心スプレイノズル15は、原子炉圧力容器2の内周に沿って配置されたリング状のパイプであり、一次冷却材が噴き出される複数の孔部が形成されている。炉心10の非常時には、炉心スプレイノズル15を経て炉心スプレイリング78の複数の孔部から一次冷却材が原子炉圧力容器2の内部に注水される。
原子炉圧力容器2において、気水分離器18および蒸気乾燥器19で分離された水は、炉心シュラウド11と原子炉圧力容器2との間のダウンカマ14に流下し、ジェットポンプ16に吸い込まれて炉心10へ導かれ、原子炉圧力容器2の内部を循環する。
また、原子炉圧力容器2の底部には、制御棒駆動機構ハウジング29、中性子束計測ハウジング28、原子炉圧力容器ドレンノズル30が設置されている。
制御棒駆動機構ハウジング29は、制御棒駆動機構(図示略)を収容する。原子炉の運転時には、この制御棒駆動機構が制御棒(図示略)を駆動して炉心10の出力を制御する。
また、中性子束計測ハウジング28は、中性子束計測器(図示略)を収容する。原子炉の運転時には、この中性子束計測器が炉心10における中性子束を計測する。
原子炉圧力容器ドレンノズル30は、RPVボトムドレンライン31に接続されて、原子炉圧力容器2の内部の炉水を排出するために用いられる。なお、原子炉圧力容器ドレンノズル30およびRPVボトムドレンライン31は、本設の系統の一部となっている。また、RPVボトムドレンライン31よりも下方に延びる炉底配管32は、仮設の系統の一部となっている。さらに、RPVボトムドレンライン31と炉底配管32との間に設けられる炉底弁69は、本設の系統の一部の場合もあるし、仮設の系統の一部の場合もある。なお、炉底弁69には、RPVボトムドレンライン31が接続されるとともに、中性子束計測ハウジング28および制御棒駆動機構ハウジング29が接続される。
原子炉の長年の使用により、原子炉圧力容器2、原子炉再循環系統3、タービン系統をそれぞれ流れる一次冷却材には腐食生成物が発生する。このうち、炉心10を通過して放射化された腐食生成物は、原子炉圧力容器2および原子炉再循環系統3に配置される各種機器に付着し堆積して放射線源になる。従って、廃炉時における作業者の被ばく線量低減対策として、汚染された配管または機器などに対して化学除染等を実施する必要がある。
本実施形態の除染実施方法は、このような原子炉圧力容器2または原子炉圧力容器2を含む原子炉再循環系統3を主な対象にして化学除染を行うものである。前述したRHRヘッドスプレイ管26および原子炉再循環系統3は、原子炉の運転時にも用いられる本設の系統である。除染を行う際には、本設の系統以外に除染用の仮設系統4が構築される。
次に、本実施形態の仮設系統4(仮設循環系統)について説明する。この仮設系統4は、原子炉圧力容器2において、主蒸気ノズル27、給水ノズル12、炉心スプレイノズル15に接続されていた本設用の配管を切断し、新たに仮設用の配管を接続して構築される。また、原子炉圧力容器2において、制御棒駆動機構ハウジング29、中性子束計測ハウジング28、原子炉圧力容器ドレンノズル30に、新たに仮設用の配管またはホースを接続して構築される。
図1に示すように、仮設系統4は、主に、原子炉圧力容器2の上部設備と下部設備とに接続される。さらに、仮設系統4は、仮設ポンプ25を備える。この仮設ポンプ25とPLRポンプ21とを駆動させることにより、原子炉圧力容器2と仮設系統4との間で除染液を循環させることができる。
本実施形態の原子炉圧力容器2において、上部設備は、主蒸気ノズル27、給水ノズル12、炉心スプレイノズル15、ヘッドスプレイノズル13の少なくともいずれかを含む。このようにすれば、原子炉圧力容器2の既設の上部設備を利用することができる。また、下部設備は、制御棒駆動機構ハウジング29、中性子束計測ハウジング28、原子炉圧力容器ドレンノズル30、原子炉再循環系統3の少なくともいずれかを含む。このようにすれば、原子炉圧力容器2の既設の下部設備を利用することができる。
なお、上部設備は、原子炉圧力容器2の少なくとも上下方向の中央よりも上方に設けられる設備であれば良い。また、下部設備は、上部設備よりも下方に設けられた設備であれば良い。ここで、本実施形態の「上部設備」および「下部設備」という用語は、特定の設備に限定されるものではない。除染の態様に応じて「上部設備」および「下部設備」を構成する設備が変更されても良い。例えば、主蒸気ノズル27を上部設備とした場合に、この主蒸気ノズル27よりも下方に設けられた給水ノズル12または炉心スプレイノズル15を下部設備としても良い。
仮設系統4は、第1仮設主配管39と第2仮設主配管48を備える。第1仮設主配管39は、仮設系統4を原子炉圧力容器2の上部設備としての主蒸気ノズル27、給水ノズル12、炉心スプレイノズル15、ヘッドスプレイノズル13に対して、除染液を流通可能に接続する。この第1仮設主配管39に仮設ポンプ25が設けられる。つまり、第1仮設主配管39から上部設備を介して原子炉圧力容器2の内部に除染液が出し入れされる。
本実施形態では、原子炉圧力容器2と仮設系統4とで循環経路が構築される。仮設系統4に設けられた仮設ポンプ25を駆動することで、この循環経路を除染液が循環されるようになる。なお、PLRポンプ21を駆動可能な場合は、仮設ポンプ25に追加してPLRポンプ21も駆動してもよい。さらに、原子炉再循環系統3の再循環水入口ノズル24の近傍に、PLRポンプ21を補助または代替する仮設ポンプを設けても良い。
第2仮設主配管48は、下部設備としての制御棒駆動機構ハウジング29、中性子束計測ハウジング28、原子炉圧力容器ドレンノズル30、原子炉再循環系統3に対して、除染液を流通可能に接続する。例えば、この第2仮設主配管48は、炉底配管32を介して炉底部の中性子束計測ハウジング28、制御棒駆動機構ハウジング29、RPVボトムドレンライン31に接続される。つまり、第2仮設主配管48から下部設備を介して原子炉圧力容器2の内部に除染液が出し入れされる。
また、第2仮設主配管48には、浄化系統58が接続されている。この浄化系統58には、温度調整器としての熱交換器49、薬剤供給部としての薬剤調製部50、オゾン発生器51、除染剤分解部52、フィルタ53、イオン交換部54などの除染液の状態を最適に維持するための複数の機器が接続されている。これらの機器のうち、除染剤分解部52、フィルタ53、およびイオン交換部54で浄化装置57が構成される。この浄化装置57は、除染液の浄化が必要な場合にのみ稼働すれば良い。従って、浄化装置57が接続されるとともに浄化系統弁59を有する浄化系統58を第2仮設主配管48に環状に接続することが好ましい。そして、必要時にのみ浄化系統弁59を開放して、浄化系統58の浄化ポンプ55を起動して除染液を第2仮設主配管48から浄化系統58に導く。
薬剤調製部50は、調整ポンプ56を介して第2仮設主配管48に接続されている。例えば、原子炉圧力容器2から炉底配管32を介して抜き出された除染液は、第2仮設主配管48により回収される。この回収された除染液は、第1仮設主配管39に到達するまでに、熱交換器49で加温または冷却されて温度調整がなされる。同時に、薬剤調製部50で調製された還元剤などの薬剤の除染液中の含有量が調整ポンプ56によって調整される。
また、オゾン発生器51は、ガスミキサ60を介して第2仮設主配管48に接続されている。例えば、酸化剤がオゾンの場合、オゾン発生器51からガスミキサ60を介して第2仮設主配管48の除染液中にオゾンが混入される。
ここで、還元剤としての有機酸は、シュウ酸、ギ酸、ピルビン酸、グリオキシル酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸の少なくとも1つが好ましい。つまり、化学除染では、通常、還元剤としてシュウ酸が好適に用いられる。このシュウ酸は、分解可能な有機酸のうちで酸解離定数(pKa)が小さく強い酸であるため、比較的低濃度での使用で除染効果を得ることができる。しかし、シュウ酸は、シュウ酸鉄の溶解度が低いため、鉄溶出が多い系統に対しては適さない場合がある。また、シュウ酸は水への溶解速度も遅いため、シュウ酸を高濃度に溶解することは難度が高い。
従って、例えば、シュウ酸の使用が困難な場合には、常温から除染条件温度までの温度範囲で、水への溶解性を有する有機酸または液体状である有機酸を用いることが望ましい。ここで、酸解離定数(pKa)が約3以下と比較的低く、かつ前述の水への溶解性を有し、または液体状である性質を有する有機酸としては、次のものがある。例えば、モノカルボン酸ではギ酸、ピルビン酸、グリオキシル酸などがある。ジカルボン酸ではマロン酸、酒石酸、マレイン酸などがある。トリカルボン酸ではクエン酸などがある。より高い除染効果を得るために、これらの有機酸を適宜複数使用してもよい。
仮設系統4を流れる除染液を浄化する場合には、浄化系統弁59を開放するとともに、浄化ポンプ55を起動して除染液を浄化系統58に導入させる。
除染剤分解部52は、例えば、紫外線で除染剤を分解する紫外線照射装置を備える。フィルタ53は、除染液中の不溶解成分を除去する。イオン交換部54は、溶解成分を除去する。イオン交換部54は、例えば、陽イオン交換樹脂塔と、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を混合した混床樹脂塔との2種の樹脂塔を用いる。
浄化された除染液は、例えば、第1仮設主配管39、PLRミドル配管34、およびRHRヘッドスプレイ管26から原子炉圧力容器2に返還される。
原子炉再循環系統3において、PLRポンプ21とPLR吐出弁23との間にPLRボトム配管33が接続される。なお、PLRボトム配管33は、第2仮設主配管48に接続されている。また、PLR吐出弁23と再循環水入口ノズル24との間にPLRミドル配管34が接続される。なお、PLRミドル配管34は、第1仮設主配管39に接続されている。例えば、複数の原子炉再循環系統3にそれぞれ接続されるPLRミドル配管34が互いに合流して第1仮設主配管39に接続されている。また、それぞれのPLRミドル配管34には、ミドル弁37がそれぞれ設けられる。
なお、合流したPLRミドル配管34が、主蒸気ノズル27に接続される第1仮設主配管39に接続される。このPLRミドル配管34は、第1仮設主配管39において、仮設ポンプ25と、仮設ポンプ25の下流側に設けられた仮設主弁47との間に接続される。
また、第1仮設主配管39には、除染液の循環を逆転させるための第1逆流配管41が接続されている。この第1逆流配管41は、仮設ポンプ25を挟むように第1仮設主配管39の2つの接続点に接続されている。つまり、第1仮設主配管39と第1逆流配管41とで環状の流路が形成される。また、第1逆流配管41には、順流循環時には閉止される第1逆流弁42が設けられる。
また、第1仮設主配管39から、RHRヘッドスプレイ管26に接続されるヘッドスプレイ管接続配管44が分岐されている。このヘッドスプレイ管接続配管44には、ヘッドスプレイ管接続弁46が設けられる。また、第1仮設主配管39において、PLRミドル配管34の接続点とヘッドスプレイ管接続配管44の接続点との間に、仮設主弁47が設けられる。
本実施形態では、ヘッドスプレイ管接続配管44に接続されたRHRヘッドスプレイ管26がヘッドスプレイノズル13に接続されているが、その他の態様でも良い。例えば、原子炉圧力容器2の頭頂部に設けられた上蓋計装ノズル(図示略)またはベントノズル(図示略)にヘッドスプレイ管接続配管44が接続されても良い。
また、除染実施装置1の構成としては、ヘッドスプレイノズル13と上蓋計装ノズルとベントノズルのいずれか1個または2個に接続されても良い。そして、RHRヘッドスプレイ管26が接続されていない他のノズルは、原子炉圧力容器2の内部に除染液が注入される際に、この原子炉圧力容器2の内部の空気などの気体を排出したり、除染液に注入される薬剤としての還元剤が分解したときに発生するガスを排出したりするためのエアベントとして利用しされても良い。
原子炉圧力容器2の下方に配置されている炉底配管32には、炉底弁69が設けられている。この炉底配管32は、第2仮設主配管48に接続されている。この第2仮設主配管48は、原子炉圧力容器2の上方まで延長されて、仮設ポンプ25の上流側において、第1仮設主配管39に接続される。また、RPVボトムドレンライン31は、炉底弁69を介して炉底配管32に接続される。
また、第2逆流弁61を有する第2逆流配管62が、仮設ポンプ25と並列になるように、PLRミドル配管34と第2仮設主配管48とを接続している。さらに、第2仮設主配管48のうち、第2逆流配管62の接続点と第1仮設主配管39の接続点との間に、第3逆流弁63が設けられる。
また、原子炉圧力容器2には、原子炉圧力容器2の内部に蓄積されたガスを排出するための排ガス処理系統64が接続される。この排ガス処理系統64は、ガス処理機構65を備える。除染にオゾンガスなどを使用して原子炉圧力容器2の内部にガスが発生する場合、この排ガス処理系統64からガスが排出される。このガス処理機構65は、フィルタなどを有し、原子炉圧力容器2の内部から排出されるガスを浄化するようにしている。なお、排ガス処理系統64を仮設の系統の一部として実線で図示しているが、排ガス処理系統64は本設の系統の一部として設けられている場合もある。
原子炉圧力容器2には、複数の主蒸気ノズル27が設けられている。例えば、4つの主蒸気ノズル27が設けられている。これらの主蒸気ノズル27は、原子炉圧力容器2において、同一の高さ位置に設けられ、かつ原子炉圧力容器2の周方向に並んで配置されている。仮設系統4は、それぞれの主蒸気ノズル27に対応して設けられる主蒸気ノズル配管35を備える。これらの主蒸気ノズル配管35は、主蒸気ノズル弁38を介して第1仮設主配管39に接続されている。主蒸気ノズル弁38を開放することで、主蒸気ノズル27から原子炉圧力容器2の内部に除染液を出し入れすることができる。
また、原子炉圧力容器2には、複数の給水ノズル12が設けられている。例えば、4つの給水ノズル12が設けられている。これらの給水ノズル12は、原子炉圧力容器2において、同一の高さ位置に設けられ、かつ原子炉圧力容器2の周方向に並んで配置されている。
仮設系統4は、それぞれの給水ノズル12に対応して設けられる給水ノズル配管36を備える。これらの給水ノズル配管36には、給水ノズル弁40が設けられている。さらに、給水ノズル配管36は、第1切換弁71が設けられた第1切換配管74を介して第1仮設主配管39に接続されている。給水ノズル弁40および第1切換弁71を開放することで、給水ノズル12に接続された給水スプレイリング77を介して原子炉圧力容器2の内部に除染液を出し入れすることができる。
給水ノズル配管36は、第2切換弁72が設けられた第2切換配管75を介して原子炉再循環系統3に接続されている。さらに、給水ノズル配管36は、第3切換弁73が設けられた第3切換配管76を介してPLRミドル配管34に接続されている。なお、第1切換弁71と第2切換弁72と第3切換弁73との開閉を制御することで、給水スプレイリング77を介して原子炉圧力容器2の内部に出し入れされる除染液の循環態様を切り換えることができる。
また、原子炉圧力容器2には、複数の炉心スプレイノズル15が設けられている。例えば、2つの炉心スプレイノズル15が設けられている。これらの炉心スプレイノズル15は、原子炉圧力容器2において、同一の高さ位置に設けられ、かつ原子炉圧力容器2の周方向に並んで配置されている。
仮設系統4は、それぞれの炉心スプレイノズル15に対応して設けられる炉心スプレイノズル配管43を備える。これらの炉心スプレイノズル配管43には、炉心スプレイノズル弁45が設けられている。さらに、炉心スプレイノズル配管43は、第1切換弁71が設けられた第1切換配管74を介して第1仮設主配管39に接続されている。炉心スプレイノズル弁45および第1切換弁71を開放することで、炉心スプレイノズル15に接続された炉心スプレイノズル15を介して原子炉圧力容器2の内部に除染液を出し入れすることができる。
炉心スプレイノズル配管43は、第2切換弁72が設けられた第2切換配管75を介して原子炉再循環系統3に接続されている。さらに、炉心スプレイノズル配管43は、第3切換弁73が設けられた第3切換配管76を介してPLRミドル配管34に接続されている。なお、第1切換弁71と第2切換弁72と第3切換弁73との開閉を制御することで、炉心スプレイリング78を介して原子炉圧力容器2の内部に出し入れされる除染液の循環態様を切り換えることができる。
また、除染実施装置1は、原子炉再循環系統3および仮設系統4に設けられた弁およびポンプなどの各種機器を制御する制御部66を備える。この制御部66は、制御線67を介して各種機器に接続されている。そして、この制御部66の制御により除染液の循環態様が制御される。つまり、制御部66は、除染液のフローの向きを制御することができる。なお、仮設系統4の配管において、除染液の流れが常に一方向となる箇所には、逆止弁を設けるようにしても良い。
本実施形態では、制御部66が弁の開閉状態を制御することで、複数態様の除染モードの切り換えを行うことができる。なお、図1、図3、図5、図7において、黒塗りの弁は閉鎖状態を示し、白塗りの弁は開放状態を示す。また、図1から図8において、図中の矢印の向きは、除染液が流れる方向を示す。
図1および図2は、第1除染モードにおける弁の開閉状態および除染液のフローの態様を示す。なお、この第1除染モードを通常洗浄モード(順流循環モード)と称する場合がある。
図1に示すように、第1除染モード(通常洗浄モード)では、仮設系統4において、第1逆流弁42と第2逆流弁61と第2切換弁72と第3切換弁73とが閉鎖され、他の弁は開放される。また、原子炉再循環系統3において、PLR吐出弁23が閉鎖され、他の弁は開放される。この状態で仮設ポンプ25とPLRポンプ21とを駆動すると、第1除染モードの循環態様で除染液が流れる。
第1除染モードにおいて、仮設系統4を流れる除染液は、主に第1仮設主配管39およびRHRヘッドスプレイ管26から原子炉圧力容器2の内部に導入される。また、原子炉圧力容器2の内部から排出される除染液は、主に第2仮設主配管48に流れる。
図2に示すように、第1除染モードでは、ヘッドスプレイノズル13と主蒸気ノズル27と給水ノズル12と炉心スプレイノズル15と再循環水入口ノズル24とを介して原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。つまり、ヘッドスプレイノズル13と主蒸気ノズル27と給水ノズル12と炉心スプレイノズル15などの上部設備を用いて、原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。
なお、給水ノズル12により導入された除染液は、給水スプレイリング77を介して原子炉圧力容器2の内部に噴き出す。また、炉心スプレイノズル15により導入された除染液は、炉心スプレイリング78を介して原子炉圧力容器2の内部に噴き出す。また、再循環水入口ノズル24により導入された除染液は、ジェットポンプ16を介して原子炉圧力容器2の内部に噴き出す。
また、第1除染モードでは、再循環水出口ノズル20と中性子束計測ハウジング28と制御棒駆動機構ハウジング29と原子炉圧力容器ドレンノズル30とを介して原子炉圧力容器2の内部から除染液が排出される。
この第1除染モードでは、原子炉圧力容器2の内部に、除染液が降下するダウンフロー(第1態様のフロー)が生じる。このダウンフローにより原子炉圧力容器2の内部に存在する炉心10または気水分離器18などの炉内構造物の除染を行うことができる。
また、原子炉圧力容器2の上部に設けられたヘッドスプレイノズル13と主蒸気ノズル27とを用いて、大量の除染液を上部から原子炉圧力容器2の内部に導入できるため、勢いがある除染液のフローを生じさせることができる。
図3および図4は、第2除染モードにおける弁の開閉状態および除染液のフローの態様を示す。なお、この第2除染モードを逆洗モード(逆流循環モード)と称する場合がある。
図3に示すように、第2除染モード(逆洗モード)では、仮設系統4において、ヘッドスプレイ管接続弁46と仮設主弁47と第3逆流弁63と第2切換弁72と第3切換弁73とが閉鎖され、他の弁は開放される。また、原子炉再循環系統3において、PLR吸入弁22が閉鎖され、他の弁は開放される。この状態で仮設ポンプ25を駆動すると、第2除染モードの循環態様で除染液が流れる。
第2除染モードにおいて、仮設系統4を流れる除染液は、主に第2仮設主配管48から原子炉圧力容器2の内部に導入される。また、原子炉圧力容器2の内部から排出される除染液は、主に第1仮設主配管39に流れる。
図4に示すように、第2除染モードでは、再循環水入口ノズル24と中性子束計測ハウジング28と制御棒駆動機構ハウジング29と原子炉圧力容器ドレンノズル30とを介して原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。つまり、再循環水入口ノズル24と中性子束計測ハウジング28と制御棒駆動機構ハウジング29と原子炉圧力容器ドレンノズル30などの下部設備を用いて、原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。
また、第2除染モードでは、主蒸気ノズル27と給水ノズル12と炉心スプレイノズル15とを介して原子炉圧力容器2の内部から除染液が排出される。なお、原子炉圧力容器2の内部の除染液は、給水スプレイリング77を介して給水ノズル12から排出されるとともに、炉心スプレイリング78を介して炉心スプレイノズル15から排出される。
この第2除染モードでは、原子炉圧力容器2の内部に、除染液が上昇するアップフロー(第2態様のフロー)が生じる。このアップフローにより原子炉圧力容器2の内部に存在する炉心10または気水分離器18などの炉内構造物の除染を行うことができる。
また、第1除染モード(通常洗浄モード)で原子炉圧力容器2の内部に除染液のダウンフローを生じさせた状態から、第2除染モード(逆洗モード)に切り換える。このようにすれば、一方向のフローのみならず、反対方向のフローを生じさせることで、原子炉圧力容器2の内部の逆洗を行うことができる。
図5および図6は、第3除染モードにおける弁の開閉状態および除染液のフローの態様を示す。
図5に示すように、第3除染モードでは、仮設系統4において、ヘッドスプレイ管接続弁46と仮設主弁47と第2逆流弁61と第1切換弁71と第3切換弁73とが閉鎖され、他の弁は開放される。また、原子炉再循環系統3において、PLR吐出弁23が閉鎖され、他の弁は開放される。この状態で仮設ポンプ25とPLRポンプ21とを駆動すると、第3除染モードの循環態様で除染液が流れる。
第3除染モードにおいて、仮設系統4を流れる除染液は、主にPLRミドル配管34から原子炉圧力容器2の内部に導入される。また、原子炉圧力容器2の内部から排出される除染液は、主に第2仮設主配管48に流れる。
図6に示すように、第3除染モードでは、給水ノズル12と炉心スプレイノズル15と再循環水入口ノズル24とを介して原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。つまり、給水ノズル12と炉心スプレイノズル15などの上部設備を用いて、原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。
また、第3除染モードでは、主蒸気ノズル27と再循環水出口ノズル20と中性子束計測ハウジング28と制御棒駆動機構ハウジング29と原子炉圧力容器ドレンノズル30とを介して原子炉圧力容器2の内部から除染液が排出される。
この第3除染モードでは、原子炉圧力容器2の内部において、給水スプレイリング77および炉心スプレイリング78よりも下方の部分に、除染液が降下するダウンフローが生じる。さらに、給水スプレイリング77および炉心スプレイリング78よりも上方の部分に、除染液が上昇するアップフローが生じる。これらのフロー(第3態様のフロー)により原子炉圧力容器2の内部に存在する炉心10または気水分離器18などの炉内構造物の除染を行うことができる。
図7および図8は、第4除染モードにおける弁の開閉状態および除染液のフローの態様を示す。
図7に示すように、第4除染モードでは、仮設系統4において、第1逆流弁42と第2逆流弁61と第1切換弁71と第2切換弁72とが閉鎖され、他の弁は開放される。また、原子炉再循環系統3において、PLR吸入弁22が閉鎖され、他の弁は開放される。この状態で仮設ポンプ25を駆動すると、第4除染モードの循環態様で除染液が流れる。
第4除染モードにおいて、仮設系統4を流れる除染液は、主に第1仮設主配管39およびRHRヘッドスプレイ管26から原子炉圧力容器2の内部に導入される。なお、第2仮設主配管48の一部からも除染液が原子炉圧力容器2の内部に導入される。この第2仮設主配管48は、原子炉圧力容器2の内部から排出される除染液を流す役割を有する。
図8に示すように、第4除染モードでは、ヘッドスプレイノズル13と主蒸気ノズル27と再循環水入口ノズル24と中性子束計測ハウジング28と制御棒駆動機構ハウジング29と原子炉圧力容器ドレンノズル30とを介して原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。つまり、ヘッドスプレイノズル13と主蒸気ノズル27などの上部設備を用いて、原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。さらに、再循環水入口ノズル24と中性子束計測ハウジング28と制御棒駆動機構ハウジング29と原子炉圧力容器ドレンノズル30などの下部設備を用いて、原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。
また、第4除染モードでは、給水ノズル12と炉心スプレイノズル15とを介して原子炉圧力容器2の内部から除染液が排出される。なお、原子炉圧力容器2の内部の除染液は、給水スプレイリング77を介して給水ノズル12から排出されるとともに、炉心スプレイリング78を介して炉心スプレイノズル15から排出される。
この第4除染モードでは、原子炉圧力容器2の内部において、給水スプレイリング77および炉心スプレイリング78よりも下方の部分に、除染液が上昇するアップフローが生じる。さらに、給水スプレイリング77および炉心スプレイリング78よりも上方の部分に、除染液が降下するダウンフローが生じる。これらのフロー(第4態様のフロー)により原子炉圧力容器2の内部に存在する炉心10または気水分離器18などの炉内構造物の除染を行うことができる。
なお、特に図示はしないが、その他の除染モードがあっても良い。例えば、前述の図2に示す第1除染モード(通常洗浄モード)では、主蒸気ノズル27と給水ノズル12と炉心スプレイノズル15とを使用して原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入しているが、その他の態様でも良い。
例えば、主蒸気ノズル27と給水ノズル12とを使用して原子炉圧力容器2の内部に除染液を導入し、炉心スプレイノズル15を使用しなくても良い。また、主蒸気ノズル27と炉心スプレイノズル15とを使用して原子炉圧力容器2の内部に除染液を導入し、給水ノズル12を使用しなくても良い。また、主蒸気ノズル27を使用して原子炉圧力容器2の内部に除染液を導入し、給水ノズル12と炉心スプレイノズル15とを使用しなくても良い。また、給水ノズル12を使用して原子炉圧力容器2の内部に除染液を導入し、主蒸気ノズル27と炉心スプレイノズル15とを使用しなくても良い。また、炉心スプレイノズル15を使用して原子炉圧力容器2の内部に除染液を導入し、主蒸気ノズル27と給水ノズル12とを使用しなくても良い。
また、前述の図4に示す第2除染モード(逆洗モード)では、主蒸気ノズル27と給水ノズル12と炉心スプレイノズル15とを使用して原子炉圧力容器2の内部から除染液を排出しているが、その他の態様でも良い。
例えば、主蒸気ノズル27と給水ノズル12とを使用して原子炉圧力容器2の内部から除染液を排出し、炉心スプレイノズル15を使用しなくても良い。また、主蒸気ノズル27と炉心スプレイノズル15とを使用して原子炉圧力容器2の内部から除染液を排出し、給水ノズル12を使用しなくても良い。また、主蒸気ノズル27を使用して原子炉圧力容器2の内部から除染液を排出し、給水ノズル12と炉心スプレイノズル15とを使用しなくても良い。また、給水ノズル12を使用して原子炉圧力容器2の内部から除染液を排出し、主蒸気ノズル27と炉心スプレイノズル15とを使用しなくても良い。また、炉心スプレイノズル15を使用して原子炉圧力容器2の内部から除染液を排出し、主蒸気ノズル27と給水ノズル12とを使用しなくても良い。
本実施形態では、複数種類の除染モードを適宜切り換えて除染を行うことで、原子炉圧力容器2およびその内部の炉内構造物の汚染状況に応じた除染を行うことができる。
また、除染期間中の初期と中期と後期とで除染モードを切り換えても良い。つまり、除染期間中の第1期間と、この第1期間と異なる第2期間とで除染モードを切り換えても良い。
また、上部設備としての主蒸気ノズル27、給水ノズル12、炉心スプレイノズル15、ヘッドスプレイノズル13は、除染期間中の使用数を制御しても良い。例えば、除染初期は、複数のノズルを全て開放して除染液の流速を緩やかとし、極端な放射能溶出を抑制する。一方、除染後期は、複数のノズルを個々に通水することで、除染液の流速を上げ、仕上げ除染とする。なお、除染中間期は、適宜、半数程度のノズルを用いても良い。
本実施形態では、複数の主蒸気ノズル27のそれぞれに対応する主蒸気ノズル弁38が設けられている。これら主蒸気ノズル弁38の開閉をそれぞれ制御することで、原子炉圧力容器2の内部に生じる除染液のフローの態様を切り換えるようにしても良い。
図9に示すように、4つの主蒸気ノズル27A~27Dのそれぞれの主蒸気配管(図示略)が切断され、それぞれの主蒸気配管の切断箇所に仮設の主蒸気ノズル配管35A~35Dが接続される。これら主蒸気ノズル配管35A~35Dには、それぞれ個別に開閉の制御が可能な主蒸気ノズル弁38A~38Dが接続されている。
主蒸気ノズル弁38A~38Dを全て開放状態にすると、4つの主蒸気ノズル27A~27Dの全てから原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。ここで、仮設ポンプ25の吐出量を一定にし、第1仮設主配管39を流れる除染液の流量が一定であるとする。この状態で、1つの主蒸気ノズル弁38Aを開放し、他の主蒸気ノズル弁38B~38Dを閉鎖する。すると、1つの主蒸気ノズル27Aのみから原子炉圧力容器2の内部に除染液が導入される。仮設ポンプ25の吐出量を一定であるとすると、全ての主蒸気ノズル27A~27Dから除染液を導入させる場合よりも、1つの主蒸気ノズル27Aから除染液を導入させる場合の方が、この主蒸気ノズル27Aのみから流れ込む除染液の流量は多くなる。
例えば、気水分離器18などの炉内構造物の所定の部分Pに汚染が残っている場合(高線量の汚染がある場合)には、この所定の部分Pに最も近い主蒸気ノズル27Aのみから流れ込む除染液の流量を多くして、除染を促進させることができる。
また、除染期間の初期(第1期)には、4つの主蒸気ノズル27A~27Dの全てから原子炉圧力容器2の内部に除染液を導入する。そして、除染期間の後期(第2期)には、それぞれの主蒸気ノズル27A~27Dを順次個別に用いて原子炉圧力容器2の内部に除染液を導入しても良い。例えば、主蒸気ノズル27Aのみを使用した後に、主蒸気ノズル27Bのみを使用し、その後に主蒸気ノズル27Cのみを使用し、さらに、主蒸気ノズル27Dのみを使用し、これを繰り返す。
つまり、第1期間に全ての主蒸気ノズル27A~27Dを同時に用いて除染液を通水し、第1期間とは異なる第2期間にそれぞれの主蒸気ノズル27A~27Dを順次個別に用いて除染液を通水する。このようにすれば、それぞれ異なる期間に異なる通水態様で除染液を通水できるため、原子炉圧力容器2の内部に様々な態様の除染液のフローを生じさせることができる。なお、第1期間と第2期間とで、通水される主蒸気ノズル27A~27Dの数が変化するため、除染液のフローの流速を変化させることができる。仮設ポンプ25の吐出量が同じ場合には、通水される主蒸気ノズル27A~27Dの数が多いと流速が遅くなる。一方、通水される主蒸気ノズル27A~27Dの数が少ない流速が速くなる。このように、主蒸気ノズル27A~27Dから流れ出る除染液の流速を制御することができる。なお、除染期間の途中で仮設ポンプ25の吐出量を変更しても良い。
また、除染液の循環時には、化学除染の対象部位における除染液の流速に応じて除染液の通水時間を調整することが好ましい。通常、供用中のプラントの系統除染では、その後に続く点検作業工程へ影響するため、極力短時間での除染が求められる。しかし、廃止措置の場合は、時間的制約が少ないため、除染液の線流速が遅い部位は、通水時間を長くとることができる。そこで、仮設ポンプ25の出力を加味して、流速が遅い場合には、通水時間は長くし、反対に流速が速い場合には、通水時間は短くするようにしても良い。
本実施形態では、原子炉圧力容器2の化学除染を行う期間の前または後に、原子炉圧力容器2の内部の不溶解物の除去を行う。このようにすれば、炉底部または炉内構造物に不溶解物が沈積することを抑制することができる。なお、不溶解物とは、例えば、錆などの除染液に溶解しない物質である。
例えば、原子炉圧力容器2の化学除染を行う期間の前に、除染薬剤を注入する前の原子炉圧力容器2の内部の水を昇温しつつ、水をフィルタ53に通して不溶解物を除去する。このようにすれば、炉内の水の昇温中に不溶解物が除去されることで、その後の化学除染をスムーズに行うことができる。
本実施形態では、図2および図4に示すように、下部設備としての制御棒駆動機構ハウジング29、中性子束計測ハウジング28、原子炉圧力容器ドレンノズル30を用いて原子炉圧力容器2の内部に除染液が出し入れされる。ここで、原子炉圧力容器ドレンノズル30は1つのみ設けられているが、制御棒駆動機構ハウジング29および中性子束計測ハウジング28に関しては多数設けられている。例えば、多数の制御棒駆動機構ハウジング29および中性子束計測ハウジング28を用いて、原子炉圧力容器2の内部に除染液の出し入れができるとともに、原子炉圧力容器2の内部にガスを導入してバブリングを行うことができる(図11参照)。
次に、制御棒駆動機構ハウジング29および中性子束計測ハウジング28に対する弁の取り合いについて具体的に説明する。なお、複数のハウジング28,29のそれぞれの取り合いは同一構成となっている。
図10に示すように、ハウジング28,29の下端部には、第1接続弁81が設けられた閉止フランジ80が取り付けられる。第1接続弁81には、第1プラグ82が設けられている。この第1プラグ82に管継手90が接続される。管継手90の上端部には、第1プラグ82に接続される第1ソケット83が設けられている。
管継手90は、上下の方向に延びる管部91と、この管部91の側方に突出する枝部92とからなる。つまり、管継手90は、側面視でT字型を成す部材となっている。枝部92には、ガス供給装置(図示略)から延びるガス導入ホース84が接続されている。なお、ガスは空気または不活性ガスを例示する。また、枝部92には、ガス導入ホース84に対応してガス供給弁85が設けられている。
管継手90の管部91において、枝部92より下方位置には、ドレン弁86が設けられている。さらに、管部91の下端には、第2プラグ87が設けられている。この第2プラグ87に、第2接続弁89の第2ソケット88が接続される。第2接続弁89には、ドレンホース79が接続されている。このドレンホース79が、前述の炉底弁69(図1)に接続されている。なお、RPVボトムドレンライン31にドレンホース79を接続するための接続弁を設けるようにし、ドレンホース79をRPVボトムドレンライン31に合流させても良い。
ハウジング28,29を用いて原子炉圧力容器2の内部に除染液の出し入れする際には、第1接続弁81とドレン弁86と第2接続弁89とを開放するとともに、ガス供給弁85を閉鎖する。この状態で、ハウジング28,29を介して、RPVボトムドレンライン31から除染液を原子炉圧力容器2の内部に導入または排出することができる。
ハウジング28,29を用いて原子炉圧力容器2の内部にガスを導入してバブリングを行う際には、第1接続弁81とガス供給弁85とを開放するとともに、ドレン弁86と第2接続弁89とを閉鎖する。この状態では、ガス供給装置(図示略)から供給されるガスが、ハウジング28,29を介して原子炉圧力容器2の内部に導入され、バブリングを行うことができる(図11参照)。
本実施形態では、バブリングを行うことで、ハウジング28,29または炉内構造物に付着した不溶解物の除去を行うことができる。また、所定時間に亘ってバブリングを行った後に、ハウジング28,29を用いて原子炉圧力容器2の内部から除染液とともに不溶解物を排出することができる。
また、多数のハウジング28,29のうち一部のハウジング28,29を用いて原子炉圧力容器2の内部にガスを導入してバブリングを行っても良い。そして、このバブリングにより吹き上げられた不溶解物を、バブリングに用いていないハウジング28,29を用いて原子炉圧力容器2の内部から排出しても良い。このようにすれば、ハウジング28,29に溜まった不溶解物を効率的に除去できる。
下部設備としての制御棒駆動機構ハウジング29、中性子束計測ハウジング28については、炉底部へのスラッジの堆積を防止するため、基本的に常時全数に亘って除染液の通水を行うが、線量率によっては、通水に用いるハウジング28,29の使用数を減じても良い。
また、除染前または除染中に、制御棒駆動機構ハウジング29および中性子束計測ハウジング28の線量率をそれぞれ測定しても良い。そして、測定の結果の平均値よりも高い線量率を有する制御棒駆動機構ハウジング29または中性子束計測ハウジング28を用いてバブリングを行い、不溶解物を除去するようにしても良い。このようにすれば、線量率を引き上げている要因となっている不溶解物を効率的に除去できる。なお、所定の閾値を設定し、測定の結果、この閾値よりも高い線量率を有する制御棒駆動機構ハウジング29または中性子束計測ハウジング28を用いてバブリングを行っても良い。
また、原子炉圧力容器2の化学除染を行う期間の少なくとも一部の期間に、制御棒駆動機構ハウジング29と中性子束計測ハウジング28の少なくとも一方を用いて除染液を連続的に通水し、原子炉圧力容器ドレンノズル30を用いて除染液を間欠的に通水するようにしても良い。このようにすれば、原子炉圧力容器2の内部における炉底部に様々な態様の除染液のフローを生じさせることができる。なお、原子炉圧力容器ドレンノズル30は炭素鋼で形成されているため腐食のおそれがある。そこで、原子炉圧力容器ドレンノズル30に除染液を間欠的に通水させることで、原子炉圧力容器ドレンノズル30の腐食を抑制することができる。
次に、除染実施装置1が実行する除染実施方法について図12のフローチャートを用いて説明する。この除染実施装置1の動作によって受動的に生じる作用を含めて説明する。なお、前述の図1から11を適宜参照する。
図12に示すように、まず、ステップS11において、除染を行う前に、原子力プラントの本設系統および仮設系統4の設計図などの情報に基づいて、原子炉圧力容器2および仮設系統4を除染時に流れる除染液のフロー態様を事前に解析する。なお、コンピュータを用いて原子炉圧力容器2の内部を流れる除染液のフロー態様のシミュレーションを行っても良い。
次のステップS12において、主蒸気ノズル27、給水ノズル12、炉心スプレイノズル15、原子炉再循環系統3などに接続されている本設用の配管を切断する。例えば、主蒸気ノズル27の場合には、タービン(図示略)に向かって蒸気を送るために設けられている主蒸気配管(図示略)を切断する。
次のステップS13において、本設用の配管を切断した部分に仮設系統4を接続する。また、仮設ポンプ25などの仮設の機器も設けられる。ここで、原子炉圧力容器2と仮設系統4とで循環経路が構築される。なお、切断した部分に仮設系統4に接続しない場合には、所定の部材で閉止する。
次のステップS14において、原子炉圧力容器2および炉内構造物の各部分の線量率を測定する。ここで、制御棒駆動機構ハウジング29および中性子束計測ハウジング28の線量率の測定も行っても良い。なお、線量率の測定には、実測のみならず、運転履歴などの過去の記録情報に基づいて、原子炉圧力容器2および炉内構造物の各部分の線量率を推定する態様も含む。ここで、原子炉圧力容器2および炉内構造物の各部分の線量率に基づいて、最も効果的な除染モードおよび除染液のフローの態様を設定する。
次のステップS15において、制御部66は、原子炉圧力容器2の内部の不溶解物の除去を行う。例えば、除染薬剤を注入する前の原子炉圧力容器2の内部の水を昇温しつつ、水をフィルタ53に通して不溶解物を除去する。また、原子炉圧力容器2の内部にバブリングを行うことで、ハウジング28,29または炉内構造物に付着した不溶解物の除去を行う。
次のステップS16において、制御部66は、仮設ポンプ25とPLRポンプ21の駆動を開始する。ここで、原子炉再循環系統3および仮設系統4により形成される循環経路に除染液を循環させる。例えば、第1除染モード(通常洗浄モード)で除染液が循環される(図1)。
次のステップS17において、原子炉圧力容器2の内部に、除染液が降下するダウンフロー(第1態様のフロー)が生じる(図2)。
次のステップS18において、所定期間に亘って第1除染モードで除染液を循環させた後に、制御部66は、除染液のフローの向きを制御する。例えば、制御部66は、第1除染モードから第2除染モード(逆洗モード)に切り換える制御を行う(図3)。
次のステップS19において、原子炉圧力容器2の内部に、除染液が上昇するアップフロー(第2態様のフロー)が生じる(図4)。そして、処理を終了する。
なお、ステップS17からS19を繰り返しても良い。また、制御部66は、除染モードを、第3除染モード(第3態様のフロー)または第4除染モード(第4態様のフロー)に切り換えても良い。
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
なお、本実施形態では、本設の給水スプレイリング77と炉心スプレイリング78とを用いて、原子炉圧力容器2の内部に対する除染液の導入または排出を行っているが、その他の態様であっても良い。例えば、仮設のスプレイリングを原子炉圧力容器2の内部に設けるようにし、この仮設のスプレイリングを用いて除染液の導入または排出を行っても良い。
以上説明した実施形態によれば、上部設備と下部設備を用いて原子炉圧力容器の内部に除染液を出し入れして原子炉圧力容器の内部のフローの態様を切り換えるステップを含むことにより、原子炉圧力容器の化学除染の除染効果を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。