図10に示すように、消費者が折り畳まれた状態のおむつを広げて平らな状態に戻す際に、折り畳まれていた部分の吸収体に折り皺GPが入っている場合や、折り畳まれていた部分の吸収体同士が厚み方向に重なり合って段差UEが生じている場合がある。
消費者が吸収体に生じた折り皺GPを直さずに装着した場合、折り皺GPの窪みにより、装着者の肌面とおむつの間に空間ができるため、尿漏れなどの原因になるおそれがある。特に、折り皺GPの窪みは吸収体の幅方向に沿って延在していることが多いため、足回り部分からの尿漏れのリスクを高める要因となる。
また、消費者が吸収体に生じた段差UEを直さずに装着した場合、おむつの装着感が悪化するおそれがある。特に製品を三つ折りにしていた場合に、背側の折り畳まれていた部分の吸収体に段差UEが生じていると、座ったときや横になったときに段差UEが臀部に当たり、違和感を覚えやすい。
そこで、本発明の主たる課題は、吸収体の折り皺に起因する尿漏れのリスクを低減することにある。また、折り畳むことによって生じる吸収体の段差によって、装着感が低下することを防止することにある。
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<第1の態様の発明>
股間部と、前記股間部の前側に延在する腹側部分と、前記股間部の後側に延在する背側部分と、
幅方向中央に沿って前記腹側部分から前記股間部を通り前記背側部分まで設けられた吸収体と、
前記腹側部分の前記吸収体の両側縁より幅方向外側にそれぞれ延出する腹側サイドフラップ部と、
前記股間部の前記吸収体の両側縁より幅方向外側にそれぞれ延出する股間サイドフラップ部と、
前記背側部分の前記吸収体の両側縁より幅方向外側にそれぞれ延出する背側サイドフラップ部と、
前記腹側サイドフラップ部から前記股間サイドフラップ部を通り前記背側サイドフラップ部まで延在する、前後方向に伸長した状態で配置される細長状弾性伸縮部材と、を有し、
製品状態で、前記腹側部分および前記背側部分の一方が前記吸収体の内面に向かって折り曲げられ、さらに前記腹側部分および前記背側部分の他方が折り曲げられた部分の上に被さるように折り曲げられて、三つ折りにされたテープ式使い捨ておむつにおいて、
前記テープ式使い捨ておむつの折り曲げ部と前記細長状弾性伸縮部材の交差部分、前記交差部分の前後方向中央側に隣接する中央側隣接部分、および前記交差部分の前後方向後側に隣接する外側隣接部分の少なくともいずれか一つの位置に、前記細長状弾性伸縮部材の収縮を抑える抑止部が設けられている、ことを特徴とするテープ式使い捨ておむつ。
(作用効果)
本発明者は、研究開発の結果、腹側サイドフラップ部から前記股間サイドフラップ部を通り前記背側サイドフラップ部まで延在する細長状弾性伸縮部材の収縮力を抑えることにより、前記折り皺の発生や、前記折り畳みによる段差の発生を抑えることに成功した。なお、この細長状弾性伸縮部材は、足回りのフィット性を高めて尿などの横漏れを防ぐために設けられたものであり、平面ギャザーということもできる。この平面ギャザーは、立体ギャザーとは異なり、立体ギャザーよりも幅方向外側に位置する。
折り畳まれたおむつを広げて平らな状態に戻すとき、前記細長状弾性伸縮部材が収縮すると、吸収体にも収縮力が伝達され、折り皺が残りやすくなる。また、前記細長状弾性伸縮部材の収縮力によって、吸収体が前後方向に収縮し、吸収体同士が重なり合って段差が生じる。
そこで、本発明に係るテープ式使い捨ておむつは、細長状弾性伸縮部材の収縮力を抑える抑止部を設けた。抑止部は、折り曲げ部と細長状弾性伸縮部材の交差部分に設けることが最も好ましい。また、前記交差部分の腹側に隣接する中央側隣接部分、または前記交差部分の背側に隣接する外側隣接部分に抑止部を設ける態様にしても良い。そのほか、前記交差部分、中央側隣接部分および外側隣接部分のうち、任意に選んだ複数の部分や、すべての部分に抑止部を設ける態様にしても良い。抑止部を設ける範囲を広くするほど、細長状弾性伸縮部材の収縮を抑止する効果を高めることができる。
なお、細長状弾性伸縮部材のうちの折り曲げ部に近い部分ほど、吸収体の折り曲げ部に与える影響(収縮力の影響)が大きい。そのため、細長状弾性伸縮部材のうち、できるだけ折り曲げ部に近い部分に抑止部を設けるようにすることが好ましい。
<第2の態様>
前記抑止部は、前記交差部分、前記中央側隣接部分および前記外側隣接部分の少なくともいずれか一つに位置する前記細長状弾性伸縮部材を切断してなるものである前記第1の態様のテープ式使い捨ておむつ。
(作用効果)
交差部分、中央側隣接部分および外側隣接部分の少なくともいずれか一つに位置する細長状弾性伸縮部材を切断することによって、抑止部を形成することができる。細長状弾性伸縮部材を切断することにより、その切断部位の細長状弾性部の収縮力が働かなくなるからである。
例えば、交差部分、中央側隣接部分および外側隣接部分の不織布(または吸収体)に対して、細長状弾性伸縮部材が固定されていない場合(前記以外の部分は、不織布または吸収体に固定されている場合)は、細長状弾性伸縮部材を交差部分、中央側隣接部分および外側隣接部分のいずれか1箇所切断するだけで足りる。この場合、切断箇所よりも腹側に位置する腹側細長状弾性伸縮部材が腹側に引き込まれ、切断箇所よりも背側に位置する背側細長状弾性伸縮部材が背側に引き込まれる。その結果、切断箇所の前後に細長状弾性伸縮部材が存在しない空白領域が生じる。本発明においては、この場合の空白領域を抑止部という。なお、前述の説明は、細長状弾性伸縮部材を1箇所しか切断しないと限定する意味ではなく、細長状弾性伸縮部材を2箇所以上切断しても良いのは勿論である。
他の例としては、交差部分、中央側隣接部分および外側隣接部分の不織布(または吸収体)に対して細長状弾性伸縮部材が固定されているが、固定の程度が弱い場合がある(前記以外の部分は、不織布または吸収体に強固に固定されている)。固定の程度が弱いとは、例えば、着用者がおむつを装着する作業によって、不織布(または吸収体)から細長状弾性伸縮部材が離れる程度を挙げることができる。この場合は、前記と同様に、細長状弾性伸縮部材を1箇所切断するだけで足りる。
その他の例としては、交差部分、中央側隣接部分および外側隣接部分の不織布(または吸収体)に対して、細長状弾性伸縮部材が強固に固定されている場合がある。この場合は、細長状弾性伸縮部材を交差部分、中央側隣接部分および外側隣接部分のいずれか1箇所切断するだけでは足りない。切断した後に細長状弾性伸縮部材が腹側や背側に引き込まれることがないため、1箇所切断するだけでは、その切断箇所(1箇所)の収縮力が効かくなくなるだけだからである。そのため、この例のような場合においては、交差部分、中央側隣接部分および外側隣接部分の少なくともいずれかの部分にある細長状弾性伸縮部材を複数箇所で切断する必要がある。具体的には、細長状弾性伸縮部材を前後方向に沿って所定間隔を空けて複数箇所で切断することになる。
細長状弾性伸縮部材の収縮力の抑制の程度(収縮力がどの程度働かなくなるか)は、例えば、切断箇所の数、隣接する切断部間の距離によって変化する。全体的な傾向としては、切断箇所の数が増えれば増えるほど、収縮力の抑制の程度が高くなる。隣接する切断部間の距離が短くなればなるほど、収縮力の抑制の程度が高くなる。しかし、切断箇所の数が増えるほど、かつ、隣接する切断部間の距離が短くなればなるほど、サイドフラップなどの強度が低下して破けやすくなったり、足回りのフィット性が低下したりする不利益がある。したがって、切断箇所の数や隣接する切断部間の距離は、ある一定の範囲内にすることが好ましい。具体的には、おむつを前後方向に最も伸長させた状態を基準に計測した場合に、細長状弾性伸縮部材の前後方向の長さ80mm以内の範囲に、切断箇所を4~8個設けるとともに、かつ、隣接する切断部間の平均距離を約8~20mmにすることが好ましい(なお、細長状弾性伸縮部材、交差部、交差部分、隣接部分などの説明において、本明細書に記載された長さの値については、特段の定めをする場合を除き、この伸長状態における長さをいい、伸長させていない状態、すなわち自然長を指すものではない。)。前述の細長状弾性伸縮部材の前後方向の長さ30mm以内の範囲において、より好ましい値は、切断箇所が1~2個であり、かつ、隣接する切断部間の平均距離が10~15mmである。なお、細長状弾性伸縮部材を3カ所以上で切断する場合は、隣接する切断部間の距離を同じにしても良いが、異なる距離にしても差し支えない。前記「隣接する切断部間の平均距離」とは、隣接する切断部間の距離がすべて同じである場合は、その距離をいい、隣接する切断部間の距離が異なる場合において、その平均値をいう。
<第3の態様>
前記細長状弾性伸縮部材は、幅方向に間隔を空けて並列に配置された複数本の細長状弾性伸縮部材であり、
前記抑止部は、複数本の前記細長状弾性伸縮部材のうち幅方向内側寄りに位置する前記細長状弾性伸縮部材を、前記交差部分、前記中央側隣接部分および前記外側隣接部分の少なくともいずれか一つの位置で切断してなるものである前記第2の態様のテープ式使い捨ておむつ。
(作用効果)
おむつに複数本の細長状弾性伸縮部材を設ける場合がある。そのような場合、吸収体に折り皺が発生することを防止する観点や、吸収体に段差が発生することを防止する観点からは、すべての細長状弾性伸縮部材に対して抑止部を設け、すべての細長状弾性伸縮部材の収縮力を弱めることが好ましい。
しかし、前記細長状弾性伸縮部材には、足回りのフィット性を高めるとともに、尿などの排泄液の横漏れを防ぐという効果がある。そのため、すべての細長状弾性伸縮部材に対して抑止部を設けた場合、交差部分、中央側隣接部分および外側隣接部分で、足回りのフィット性を低下したり、尿などの排泄液の横漏れの可能性が高まったりすることになる。したがって、吸収体に折り皺や段差が発生することを防ぐ観点と、足回りのフィット性の向上や尿などの横漏れの発生を防ぐ観点を両立するために、複数の細長状弾性伸縮部材の一部に対して抑止部をあえて設けないように設計することが好ましい。
そのような設計にする場合には、おむつの幅方向外側寄りの細長状弾性部に対しては抑止部を設けず、おむつの幅方向内側(幅方向中央側ともいう)寄りの細長状弾性伸縮部材に対して抑止部を設けるようにすることが好ましい。おむつの幅方向内側に吸収体があるため、幅方向外側寄りの細長状弾性伸縮部材の収縮力よりも、幅方向内側寄りの細長状弾性伸縮部材の収縮力の方が、吸収体の織り皺の発生や、吸収体の段差の発生に影響を及ぼすからである。例えば、おむつの幅方向一端側(または他端側)に3本の細長状弾性伸縮部材を設けている場合は、最も幅方向外側の細長状弾性伸縮部材に対してよりも、最も幅方向内側の細長状弾性伸縮部材に対して、抑止部を設けることが好ましい。この場合、3本の細長状弾性伸縮部材のうちの真ん中に位置する細長状弾性伸縮部材に対しても抑止部を設けると、吸収体の織り皺や段差の発生を抑止する効果を高めることができる。反対に、足回りのフィット性の向上や、尿などの排泄液の横漏れの防止を重視して、真ん中に位置する細長状弾性伸縮部材に対して敢えて抑止部を設けないようにしてもよい。
以上の説明では、細長状弾性伸縮部材を3本設けた例を示したが、より多くの本数を設ける場合は、より柔軟な設計をしてもよい。例えば、おむつの幅方向一端側(または他端側)に5本の細長状弾性伸縮部材を設けた場合は、最も幅方向中央側に位置する細長状弾性伸縮部材に抑止部を設けず、幅方向中央側から外側へ向かって数えたときに、2本目の細長状弾性伸縮部材に対して抑止部を設けても良い。要するに、複数本の細長状弾性伸縮部材があるときに、幅方向中央側に位置する細長状弾性伸縮部材に対して抑止部を設けることが好ましいのである。
そのほか、細長状弾性伸縮部材を複数本設けた場合に、各細長状弾性伸縮部材に設ける抑止部の面積を変えることも有効である。例えば、細長状弾性伸縮部材が5本ある場合に、皺の発生や段差の発生に影響を与えやすい最も幅方向中央側に位置する細長状弾性伸縮部材に形成する抑止部の面積を広くし、そこから幅方向外側の細長状弾性伸縮部材になるほど、その抑止部の面積が狭くするような態様にしても良い。このような態様にした場合、幅方向中央側に位置する細長状弾性伸縮部材に設けられる抑止部の面積が広いため、吸収体の織り皺や段差の発生を抑止する効果が高くなる。他方、幅方向中央側に位置する細長状弾性伸縮部材に設けられる抑止部の面積が狭いため、尿の横漏れ防止効果の低減などを防ぐことができる。
また、細長状弾性伸縮部材を複数本設けた場合に、各細長状弾性伸縮部材に設ける抑止部の位置を変えることも有効である。例えば、細長状弾性伸縮部材が5本ある場合に、皺の発生や段差の発生に影響を与えやすい最も幅方向中央側に位置する細長状弾性伸縮部材に形成する抑止部は交差部分に設け、幅方向外側の細長状弾性伸縮部材ほど、その位置を交差部分から前後方向中央側または前後方向外側へランダムにずらす態様にしても良い。抑止部が横方向に一直線状に並んでいる場合は、その抑止部を辿って尿の横漏れが発生しやすいが、抑止部の位置をランダムにずらすことによって、尿の横漏れの可能性を多少低減することができる。
<第4の態様>
前記中央側隣接部分および前記外側隣接部分の少なくともいずれか一方に位置する前記細長状弾性伸縮部材の収縮力が、前記股間部に位置する前記細長状弾性伸縮部材の収縮力よりも弱い前記第2または第3の態様のテープ式使い捨ておむつ。
(作用効果)
例えば、交差部分に抑止部を設け、中央側隣接部分および外側隣接部分に抑止部を設けない場合、細長状弾性伸縮部材の収縮力の抑止効果を高めるために、中央側隣接部分および外側隣接部分の少なくともいずれか一方の収縮力を弱くすることが好ましい。抑止効果を高めるためには、中央側隣接部分および外側隣接部分の両方の位置で、細長状弾性伸縮部材の収縮力を弱くすることが好ましい。なお、細長状弾性伸縮部材の中央側隣接部分(または外側隣接部分)の収縮力が弱いとは、細長状弾性伸縮部材の股間部の収縮力と比べたときに、弱いことを意味する。比較対象を細長状弾性伸縮部材の股間部としたのは、交差部分と股間部の距離が離れているため、交差部分およびその隣接部分に設けた抑止部の影響を受けづらいからである。
前述の例のほかにも、以下のような様々な変形例を考えることができる。例えば、交差部分と中央側隣接部分に抑止部を設け、外側隣接部分に抑止部を設けていない場合に、外側隣接部分の収縮力を弱めても良い。同様に、交差部分と外側隣接部分に抑止部を設け、中央側隣接部分に抑止部を設けていない場合に、中央側隣接部分の収縮力を弱めても良い。また、中央側隣接部分に抑止部を設け、交差部分と外側隣接部分に抑止部を設けていない場合に、外側隣接部分の収縮力を弱めても良い(このとき、併せて交差部分の収縮力も弱めても良い。)。同様に、外側隣接部分に抑止部を設け、交差部分と中央側隣接部分に抑止部を設けていない場合に、中央側隣接部分の収縮力を弱めても良い(このとき、併せて交差部分の収縮力も弱めても良い。)。
<第5の態様>
前記腹側サイドフラップ部および背側サイドフラップ部は、複数枚のフラップシートが接着剤で接着されてなり、
前記細長状弾性伸縮部材は、前記複数枚のフラップシートの間に配置されており、
前記抑止部は、前記交差部分、前記中央側隣接部分および前記外側隣接部分の少なくともいずれか一つに位置する前記細長状弾性伸縮部材に塗布する接着剤の量を、その他の部分よりも多くしてなるものである前記第1~第4の態様のいずれか1つのテープ式使い捨ておむつ。
(作用効果)
前述の第2の態様のように、細長状弾性伸縮部材を切断するのではなく、細長状弾性伸縮部材に塗布する接着剤の量を増やすことによって、抑止部を形成してもよい。接着剤の量を増やすことによって、接着剤を増加した部分の剛性が高くなり、細長状弾性伸縮部材の収縮力を抑えることができるからである。
接着剤としては任意のものを用いることができる。また、抑止部に塗布する接着剤の量は、その他の部分の接着剤の量に対して(その他の部分の接着剤の量を基準として)、1.5~3倍増加することが好ましく、1.5~2倍増加することがより好ましい。1.5倍よりも少ないと、抑止部の剛性の強化が十分でなく、細長状弾性伸縮部材の収縮力を抑止する効果が弱いという不利益がある。反対に、3倍よりも多いと、抑止部の剛性が高くなりすぎて硬くなり、着用者の肌に対する触感が悪化するという不利益がある。なお、前記「その他の部分」とは、複数枚のフラップシートが接着剤で接着されている部分のうち、平均的な部分をいう。すなわち、接着剤の塗りムラがあり、接着剤の量が特別に多い部分や接着剤の量が特別に少ない部分があったときにおいて、それらの部分を除外し、ごく一般的に塗布された部分をいう。
なお、抑止部に用いる接着剤の種類と、それ以外の部分に用いる接着剤の種類を変えることもできるが、製造の容易性の観点からは、同じ接着剤を用いることが好ましい。
その他の変形例として、抑止部に塗布する接着剤の量と、それ以外の部分に塗布する接着剤の量を変えるのではなく、抑止部に用いる接着剤の種類をそれ以外の部分に用いる接着剤の種類と異なるものにして、第5の態様と同様の効果を得るようにしても良い。すなわち、抑止部に塗布する接着剤として、それ以外の部分に塗布する接着剤よりも硬くなるものを用いても良い。
<第6の態様>
前記抑止部は、前記交差部分、前記中央側隣接部分および前記外側隣接部分の少なくともいずれか一つに位置する前記細長状弾性伸縮部材にエンボス加工を施してなるものである前記第1~第5の態様のいずれか1つのテープ式使い捨ておむつ。
(作用効果)
抑止部は、エンボス加工を施して形成したものであっても良い。エンボス加工は、細長状弾性伸縮部材を切断することができるとともに、エンボス部分の剛性を高めることができるため、前述の第2の態様と第5の態様の両方の効果を得ることができるため好ましい。なお、第2の態様の効果と第5の態様の効果については、上述と同じであるため、記載を省略する。
以上のとおり本発明によれば、吸収体の折り皺の発生を抑えることができるため、折り皺に起因する尿漏れのリスクを低減することができる。また、折れ曲がり部分において、吸収体に段差が生じにくくなるため、装着感の低下を防止することができる。
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
(テープ式使い捨ておむつについて)
図1~図4は、本発明に係るテープ式使い捨ておむつの一例100を示しており、この使い捨ておむつ100は、裏面側に位置するバックシート1と肌に接触する透液性トップシート2との間に、吸収体3が介在されているものである。股間部Cは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、殆ど多くの製品では前後方向中央部及びその前後近傍の部分である。具体的には、成人向け吸収性物品の場合、製品の前後方向中央を基準として±150mmの範囲である。また、腹側部分(前側部分)Fは股間部Cよりも前側の部分を意味し、背側部分(後側部分)Bは股間部Cよりも後側の部分を意味する。
吸収体3としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。また、必要に応じて、吸収体3はクレープ紙(図示せず)により包むことができる。また、吸収体3の形状は適宜定めることができるが、図示のような砂時計形状の他、長方形等のように、股間部の前側から後側まで延在する形状が好適である。吸収体4におけるパルプ目付けは100~500g/m2程度、厚みは1~15mm程度であるのが望ましい。また、高吸水性樹脂の目付けは0~300g/m2程度であるのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が少な過ぎると、十分な吸収能を与えることができず、多過ぎるとパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、ヨレや割れ等が発生し易くなる。
バックシート1は、吸収体3の周囲より外側に延在しており、吸収体3に吸収された排泄物の裏面側への移動を遮断するものである。バックシート1としては、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムの他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。バックシート1の単位面積あたりの重量は10~40g/m2であるのが好ましく、厚みは0.01~0.1mmであるのが好ましい。
バックシート1の裏面は外装シート12で覆われており、この外装シート12の両側部はバックシート1の側縁よりも外側に延在している。外装シート12としては各種の不織布を用いることができるが、スパンボンド不織布が好適である。外装シート12は省略することもでき、その場合、バックシート1が外装シート12と同形状に形成される。
トップシート2は、吸収体3の周囲より外側に延在しており、吸収体3側縁より外側に延在する部分がバックシート1にホットメルト接着剤等により固着されている。トップシート2としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。透液性トップシート2に用いる不織布の繊維目付けは15~30g/m2であるのが好ましく、厚みは0.05~1mmであるのが好ましい。
図2及び図3にも示されるように、物品内面の両側部(図示形態ではトップシート2の側縁部表面からその側方に延在する外装シート12の表面)には、バリヤーシート4の幅方向外側の部分4xが前後方向全体にわたり貼り付けられている。バリヤーシート4は、各種不織布(スパンボンド不織布が好適である)の他、バックシートに用いられるものと同様のプラスチックフィルム、又はこれらの積層シートを用いることができるが、肌への感触性の点で、撥水処理を施した不織布が好適である。バリヤーシート4の幅方向中央側の部分4cは、前後方向両端部では物品内面(図示形態ではトップシート2表面)にホットメルト接着剤等の手段により固着されているが、これらの間の中間部は非固定の自由部分となっており、この自由部分の先端部(展開状態における幅方向中央側の端部)には、バリヤーシートの起立に寄与する起立弾性伸縮部材4Gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この起立弾性伸縮部材4G(他の起立弾性伸縮部材や細長状弾性伸縮部材30も同様)としては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。この自由部分は、起立弾性伸縮部材4Gの収縮力が作用する結果、図4に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート2表面)に対して起立するバリヤーを構成する。この起立部分の基端4bはバリヤーシート4における幅方向外側の固定部分4xと内側の部分4cとの境に位置する。
使い捨ておむつ100の前後方向両端部では、バックシート1、外装シート12、透液性トップシート2およびバリヤーシート4が吸収体3の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在され、吸収体3の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。
一方、使い捨ておむつ100の左右両側部では、バックシート1、外装シート12、透液性トップシート2およびバリヤーシート4が吸収体3の側縁よりも側方にそれぞれ延在され、吸収体3の存在しないサイドフラップ部が形成されており、各サイドフラップ部におけるシート間(図示例ではバックシート1及びトップシート2間)(サイドフラップ部を構成するシートをサイドフラップシートともいう)には、腹側部分Fのウエスト側部分から背側部分Bのウエスト側部分まで、複数本の細長状弾性伸縮部材30が間隔を空けて平行に且つそれぞれ長手方向に伸張した状態で挟持固定されている。
サイドフラップ部のうち腹側部分Fのウエスト側部分及び背側部分Bのウエスト側部分にそれぞれ位置する部分は、それらの間の中間部分よりも側方に延出されており、これらの部分が、おむつの胴回り部分となるウエスト側サイドフラップ部SFをそれぞれ構成する。
背側部分Bの両ウエスト側サイドフラップ部SFは、その側縁の上端部及び下端部近傍からそれぞれ突出する止着テープ5が取り付けられている。腹側部分Fのウエスト側端縁と背側部分Bのウエスト側端縁とが合わさるように、おむつ100の前後方向中央を境に二つ折りした状態では、腹側部分Fのウエスト側サイドフラップ部SFの下縁は背側部分Bの下端部近傍の止着テープ5の下縁より股間側に位置するように、サイドフラップ部SFの寸法・形状及び止着テープ5の位置等が定められている。また、腹側部分Fの胴回り部表面に幅方向に沿ってフロントターゲットテープ6が貼着されており、身体への装着に際しては、おむつ100を身体にあてがった状態で、両側のファスニングテープ5を腰の各側から腹側外面に回してフロントターゲットテープ6に止着する。フロントターゲットテープ6は省略することもでき、その場合には止着テープ5はおむつ外面(図示形態の場合外装シート12)に直に止着される。
図示例の止着テープ5は、ウエスト側サイドフラップ部SFの側端部の裏面にホットメルト接着剤等の手段により固着された基端部、及びウエスト側サイドフラップ部SFの側端から突出する先端側部分を有する主基材シート8Aと、主基材シートの先端部近傍の内面に接着剤等の手段により固着されたフックテープ(メカニカルファスナーの雄材)9と、ウエスト側サイドフラップ部SFの側端部の表面における主基材シート8Aの基端部と重なる部位にホットメルト接着剤等の手段により固着された基端部、及びウエスト側サイドフラップ部SFの側端から突出し、主基材シート8Aの先端側部分におけるフックテープ9よりも基端側の部分に接着剤等の手段により固着された先端側部分を有する副基材シート8Bとを有するものである。止着テープ5は、未使用時にはおむつ内面側に折り返されて仮止めされており、使用時に展開される。主基材シート8A及び副基材シート8Bとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のオレフィン系樹脂のシートを用いることができ、主基材シート8Aについては強度の観点から厚さが40~300μm、特に60~200μm程度であるのが好ましい。
図5に図1のY部分の拡大図を示す。このY部分には3本の細長状弾性伸縮部材30が存在する。詳しくは、最も幅方向内側に位置する細長状弾性伸縮部材30A、最も幅方向外側に位置する細長状弾性伸縮部材30C、それらの間に位置する細長状弾性伸縮部材30Bからなる。この図5において、前後方向の後側には背側折り曲げ部BLが設けられ、前後方向の前側には腹側折り曲げ部FLが設けられている。そして、細長状弾性伸縮部材30と背側折り曲げ部BLが交差する部分を交差部分50とする。図面上は、説明の便宜のために、折り曲げ部BLを幅方向に延在する1本の直線で表している(詳しくは、他の部材と見分けやすくするために、太い二点鎖線にしている)が、実際は1本の直線になることは稀である。実際上は、幅方向に延在しているものの、多少の蛇行した線になることが多く、複数本の線が生じていることもある。また、背側折り曲げ部BLの前後方向の長さもある程度の長さがあることが多く、具体的には、10~20mm程度の長さを有することが多い。他方、細長状弾性伸縮部材30の太さは500~1500dtex程度である。したがって、背側折り曲げ部BLと細長状弾性伸縮部材30の交差点55自体は、平面視で、ある程度の面積を備えたものになる。なお、本発明で諸々の基準となるものは、細長状弾性伸縮部材30と背側折り曲げ部BLの交差部分50であり、細長状弾性伸縮部材30と背側折り曲げ部BLの交差点55ではない。この交差部分50とは、交差点55を中心として、その周辺部分を含む概念であり、具体的には、交差点から10~20mm程度離れた部分をも含む。したがって、図6(A)に示す交差部分50の前後方向の長さ50dは、約20~40mmである。そして、10~20mmとすることがより好ましく、10mmとすることが最も好ましい。本発明においては、折り曲げ部Lが、おむつの幅方向に沿って、おむつの前後方向と直交する方向に、延在するものと仮定し、その仮定の下で、交差部分50や、後述の中央側隣接部分51や外側隣接部分52を定めるものとする。折り曲げ部L(FL、BL)の位置は、図12や図13に示すように、パッケージングのために折り畳まれたおむつ100の、前後方向の端部をいう。
図6(A)に示すように、交差部分50よりも前後方向中央側には中央側隣接部分51が存在する。この中央側隣接部分51に抑止部60が設けられる可能性があることを考慮すると、中央側隣接部分51の前後方向の長さ51dは、10~30mmとすることが好ましく、10~15mmとすることがより好ましく、15mmとすることが最も好ましい。交差部分50や外側隣接部分52に抑止部60が設けられず、かつ、中央側隣接部分51の全領域に抑止部60が設けられた場合を仮定したときに、前記長さ51dが10mmよりも短いと、細長状弾性伸縮部材30の収縮力を十分に抑制することができず、折り曲げ部Lの吸収体3に深い折り皺が生じたり、吸収体3に段差が生じたりする可能性がある。他方、前記長さ51dが30mmよりも長いと、横漏れの防止や足回りのフィット性向上などの細長状弾性伸縮部材30の本来の目的が達成しづらくなる。
また、交差部分50よりも前後方向外側には外側隣接部分52が存在する。この外側隣接部分52にも抑止部60が設けられる可能性があることを考慮すると、外側隣接部分52の前後方向の長さ52dは、10~30mmとすることが好ましく、10~15mmとすることがより好ましく、15mmとすることが最も好ましい。交差部分50や中央側隣接部分51に抑止部60が設けられず、かつ、外側隣接部分52の全領域に抑止部60が設けられた場合を仮定したときに、前記長さ52dが10mmよりも短いと、細長状弾性伸縮部材30の収縮力を十分に抑制することができず、折り曲げ部Lの吸収体3に深い折り皺が生じたり、吸収体3に段差が生じたりする可能性がある。他方、前記長さ51dが30mmよりも長いと、足回りのフィット性が低下するおそれがある。また、接着剤等によって、外側隣接部分52に剛性の高い抑止部60を設けた場合、前記長さ51dが30mmよりも長いと、当該抑止部60が着用者の肌に接触する面積が大きいため、着用者が不快に感じるおそれがある。
図6(A)は、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52において、細長状弾性伸縮部材30がサイドフラップシートに固定されておらず、前記以外の部分において、細長状弾性伸縮部材30が接着剤などでサイドフラップシートに固定されている例を示している。すなわち、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52において、細長状弾性伸縮部材30は何処にも固定されておらず、自由に動く状態になっている。
図6(B)は、おむつの製造過程で、図6(A)の細長状弾性伸縮部材30を交差点55で切断した後の状態を示す。細長状弾性伸縮部材30のうち、フラップシートに固定されている部分30aには特に変化が現れないが、フラップシートに固定されていない部分は、細長状弾性伸縮部材60の収縮力によって、それぞれが背側や腹側に引き込まれる。具体的には、切断部よりも背側に位置する細長状弾性伸縮部材30は背側へ引き込まれ、切断部よりも腹側に位置する細長状弾性伸縮部材30は腹側へ引き込まれる。細長状弾性伸縮部材60の引き込まれた部分は、どのフラップシートにも固定されていないため自由に動くことが可能であり、この部分を自由端部30bという。
図6(B)の態様では、細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されている位置と固定されていない位置の境界線が、中央側隣接部分51の腹側端縁と、外側隣接部分52の背側端縁にある。したがって、中央側隣接部分51の腹側端縁よりも腹側の部分や、外側隣接部分51の背側端縁よりも背側の部分では、細長状弾性伸縮部材30aが収縮する。他方、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52では、細長状弾性伸縮部材30がフラップシートと固定されておらず、かつ、細長状弾性伸縮部材30が切断されて、自由端部30bしか存在しないため、これらの部分は細長状弾性伸縮部材30aによって収縮しない。この図6(B)の態様において、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52を合わせて抑止部60という。細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されていない領域(非固定領域)と固定されている領域(固定領域)が存在し、非固定領域の細長状弾性伸縮部材30を切断することによって抑止部60を形成する場合は、その抑止部60が形成される領域は、固定領域の位置と切断箇所によって定まる。すなわち、非固定領域の細長状弾性伸縮部材30を切断したとき、その非固定領域全体が抑止部60となる。すなわち、非固定領域と腹側に隣接する腹側固定領域との境界線、非固定領域と背側に隣接する背側固定領域との境界線によって挟まれた領域が抑止部60となる。
図6(C)は、おむつの製造過程において、細長状弾性伸縮部材30を切断する位置を示す説明図である。この図に示すように、細長状弾性伸縮部材30は交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52のいずれの部分もフラップシートに固定されていないため、交差部分50の任意の位置C1、中央側隣接部分51の任意の位置C2、外側隣接部分52の任意の位置C3のいずれの位置で切断しても、図6(B)と同様の状態にすることができる。重要なことは、細長状弾性伸縮部材30をフラップシートに固定されていない位置で切断することである。
図7(D)~(F)は、図6(B)以外の態様を例示したものである。図7(D)は、交差部分50の細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されておらず、中央側隣接部分51および外側隣接部分52を含むそれ以外の部分の細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されている例を示したものである。この場合、交差部分50の細長状弾性伸縮部材30を切断すると、交差部分50の全領域がフラップシートと固定されていないため、交差部分50全体が抑止部60となる。
図7(E)は、中央側隣接部分51の細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されておらず、交差部分50および外側隣接部分52を含むそれ以外の部分の細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されている例を示したものである。この場合、中央側隣接部分51の細長状弾性伸縮部材30を切断すると、中央側隣接部分51の全領域がフラップシートと固定されていないため、中央側隣接部分51全体が抑止部60となる。そのほか、図示しないが、外側隣接部分51の細長状弾性伸縮部材30を固定せず、交差部分50および外側隣接部分52を含むそれ以外の部分の細長状弾性伸縮部材30を固定し、その外側隣接部分51の細長状弾性伸縮部材30を切断するようにしてもよい。この場合、外側隣接部分52の全領域がフラップシートと固定されていないため、外側隣接部分52全体が抑止部60となる。
以上のように、図6(B)では、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52の3つの部分が抑止部60となる形態を示し、図7(D)(E)では、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52のうちのいずれか1つの部分が抑止部60となる形態を示した。本発明は、このような形態に限られず、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52のうちのいずれか2つの部分に抑止部60を形成してもよい。例えば、図7(F)に示すように、交差部分50および外側隣接部分52の両部分で、細長状弾性伸縮部材30をフラップシートに固定せず、中央側隣接部分51を含むその他の部分では細長状弾性伸縮部材30をフラップシートに固定し、交差部分50および外側隣接部分52のいずれかの箇所で細長状弾性伸縮部材30を切断し、交差部分50および外側隣接部分52の両部分に抑止部60を形成してもよい。図示しないが、同様の方法で、交差部分50および中央側隣接部分51の両部分に抑止部60を形成しても良い。また、図示しないが、中央側隣接部分51と外側隣接部分52の細長状弾性伸縮部材30をフラップシートに固定せず、交差部分50を含むその他の部分の細長状弾性伸縮部材30をフラップシートに固定し、中央側隣接部分51の細長状弾性伸縮部材30を切断するとともに、外側隣接部分52の細長状弾性伸縮部材30も切断し、中央側隣接部分51と外側隣接部分52の両部分に抑止部60を形成しても良い。
なお、以上の説明においては、フラップシートに固定されていない細長状弾性伸縮部材30を1箇所切断することで抑止部60を形成する例を示してきたが、本発明はこのような態様に限られない。例えば、フラップシートに固定されていない細長状弾性伸縮部材30を複数箇所で切断してもよい。ただし、細長状弾性伸縮部材30を1箇所切断するだけであれば、前述の自由端部30bが形成されるだけであるが、複数箇所で切断すると、フラップシートに固定されていない細長状弾性伸縮部材30の切片が発生し、その切片がゴミとなって、おむつの内部空間を動き、その切片がおむつの外に飛び出す可能性も否定できないので、あまり好ましくない。
また、以上の説明においては便宜のために、交差部分50の全領域の細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されている場合と固定されていない場合に区分した。しかし、本発明はこのような態様に限られず、例えば、交差部分50のうちの一部領域の細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されており、交差部分50のうちのその他の領域の細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されていないような形態にしてもよい。このことは、中央側隣接部分51や外側隣接部分52でも同様である。
図8(G)の例は、以上で説明した図6(A)とは前提が異なる場合である。すなわち、図6(A)の例は、細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されている部分と固定されていない部分が存在したが、図8(G)の例では、細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに固定されている。このような場合は、細長状弾性伸縮部材30を一箇所切断しただけでは、細長状弾性伸縮部材30の収縮を十分に抑えることができない。すなわち、細長状弾性伸縮部材30を一箇所切断すると、その一箇所(ピンポイント)においては細長状弾性伸縮部材30の収縮を抑えることができるが、それ以外の部分は依然として細長状弾性伸縮部材30が収縮してしまうからである。これは、例えば図6(B)のように、細長状弾性伸縮部材30を切断した後に、引き込みが生じないことによる。したがって、図8(G)のような場合には、細長状弾性伸縮部材30の収縮を抑止したい範囲を定め、その範囲内の細長状弾性伸縮部材30を前後方向に所定の間隔を空けながら複数箇所切断することが好ましい。図8(G)においては、交差部分50の全領域と、中央側隣接部分51の一部の領域(交差部分50に近い側)と、外側隣接部分52の一部の領域(交差部分50に近い側)に抑止部60を設けた例を示している。この抑止部60は、抑止部60に位置する細長状弾性伸縮部材30を複数箇所で切断したものであり、具体的には、前後方向に沿って10mmに一箇所の間隔で細長状弾性伸縮部材30を切断したものである。
図8(H)の例は、細長状弾性伸縮部材30を切断することによって抑止部60を設けるのではなく、細長状弾性伸縮部材30に高剛性部分を形成し、この高剛性部分を抑止部60としたものである。この高剛性部分は剛性が高くなっているため(硬いため)、細長状弾性伸縮部材30の収縮を抑えることができる。図8(H)の例は、図8(G)の場合と同様に、細長状弾性伸縮部材30がフラップシートに接着剤で固定されており、その一部分(抑止部60を形成したい部分)に塗布する接着剤の量を他の部分よりも増やすことによって、高剛性部分すなわち抑止部60を形成したものである。したがって、図6(B)のように、切断した箇所と抑止部60の形成領域が異なるものにはならない(図6(B)では、切断した箇所は交差点55の一点であるが、抑止部60が形成される範囲はそれよりも広い範囲(交差部分50、腹側隣接領域51、背側隣接領域52)である。)。すなわち、接着剤を多く塗布した部分HUがそのまま抑止部60となるため、前記部分HUと抑止部60が一致する。なお、接着剤の量などについては、前述のとおりであるため、記載を省略する。
図8(I)は、エンボス加工によって抑止部60を形成した例である。例えば、図6(A)と同様の状態(図6(A)とは中央側隣接部分51と外側隣接部分52では、細長状弾性伸縮部材30の一部のみが固定されている点で異なる)から、おむつの製造過程で、エンボスを踏むと(外周に突起を有する円筒状のロールと、対向するロール(突起の有無はどちらでもよい)の間に重ね合わせたフラップシートを通し、前記突起によって、フラップシートの間に挟まれた細長状弾性伸縮部材30を切断する)、エンボスを踏んだ部分(突起が当たった部分)に高剛性部分(エンボス加工部分EKともいう)が生じる。それとともに、エンボスを踏んだ部分で細長状弾性伸縮部材30が切断されるため、細長状弾性伸縮部材30が、切断部分から前後方向両側にそれぞれ引き込まれる。このようにして、図6(B)と同様に、交差部分50の全領域、中央側隣接部分51の一部の領域および外側隣接部分52の一部の領域に抑止部60が形成される。そして、抑止部60の内部にエンボス加工部分EKが位置される。このように、図8(I)は、図6(B)などのように、細長状弾性伸縮部材30が切断される態様と、図8(H)のように、剛性の高い部分が形成される態様を混合したハイブリッド型の態様と言い換えることができる。このようなハイブリッド型の態様の場合、抑止部60は、エンボス加工部分EKに限定されるものではなく、より広い範囲(細長状弾性伸縮部材30の非固定部分全体)に形成される。
<その他の説明>
1本の細長状弾性伸縮部材30の腹側または背側において、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52の少なくともいずれか1つに設ける抑止部60の長さ(腹側または背側において、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52の複数箇所に抑止部60を設けた場合は、各抑止部60の長さをすべて合計した長さ)は、20~100mmにすることが好ましく、40~80mmにすることがより好ましく、50~75mmにすることがさらに好ましい。抑止部60の長さが20mmよりも短いと、細長状弾性伸縮部材30の収縮力の抑制が十分でなく、織り皺GPや段差UEの発生を十分に防ぐことができないおそれがある。他方、抑止部60の長さが100mmよりも長いと、細長状弾性伸縮部材30の収縮力が十分に働かず、横漏れのおそれが高まるほか、足回りのフィット性が低下するおそれがある。
なお、前述の抑止部の長さの値は、1本の細長状弾性伸縮部材30の腹側または背側に設ける抑止部60の長さを示したものである。そのため、1本の細長状弾性伸縮部材30の腹側と背側の両方に抑止部60を設ける場合は、1本の細長状弾性伸縮部材30に対して設けられる抑止部60の長さ(腹側および背側において、交差部分50、中央側隣接部分51および外側隣接部分52の複数箇所に抑止部60を設けた場合は、各抑止部60の長さをすべて合計した長さ)は、40~200mmにすることが好ましく、80~160mmにすることがより好ましく、100~150mmにすることがさらに好ましい。
以上の説明では、フラップシートの間に細長状弾性伸縮部材30が固定されるか否かについて述べたが、このような態様に限定されるものではなく、細長状弾性伸縮部材30が配置される位置にフラップシートではなく、吸収体3などの他の部材がある場合は、その他の部材に細長状弾性伸縮部材30が固定されるか否かが問題となる。この場合は、前述のフラップシートを吸収体3などの他の部材で読み替えればよい。
前述の高剛性部分を形成する方法として、接着剤やエンボス加工のほかに、当該部分に他のシート部材(例えば、不織布やフィルム)や吸収体を重ね合わせたりしてもよい。
接着剤の塗布に関しては、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布が行われる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
また、以上の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった疎水性繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった撥水性繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(同一又は類似の不織布層が積層されたSSS不織布等の他、異なる不織布層が積層された、スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。積層不織布は、すべての層を含む一体の不織布として製造され、すべての層にわたる繊維結合加工がなされたものを意味し、別々に製造された複数の不織布をホットメルト接着剤等の接合手段により貼り合わせたものは含まない。
以上の説明では、大人用のテープ式おむつ100を例示して説明した。大人用のテープ式おむつ100は前後方向の長さが長い傾向がある。このおむつをパッケージングして販売する際には、消費者の便宜を図るためにパッケージの大きさを小型化する必要がある。そのため、図12に示すように、一般にはおむつ100を前後方向に約三等分した位置で三つ折り(まず、図12(J)に示すように、まず三等分した一端側部分(図示例では腹側部分)をおむつ100の内面に向かって折り畳み、図12(K)に示すように、次に、その一端側部分の上に他端側端部を被せるように折り畳む折り方。巻き三つ折りともいう)した上でパッケージングされる。図12(L)が三つ折りされた状態のおむつ100である。図12では、最初に腹側部分を折り畳み、その後に背側部分を折り畳んでいるが、最初に背側部分を折り畳み、その後に腹側部分を折り畳んでもよい。
消費者がおむつ100を使用する際には、図12とは逆の手順となり、図13(M)、(N)、(O)の順におむつ100を展開する(なお、おむつ100の展開方向は、折り畳み方向と逆になる。)。
しかし、本発明はこのような三つ折り以外にも用いることができる。具体的には、乳幼児用のテープ式おむつは前後方向の長さが短い傾向があるため、二つ折りにしてパッケージングされる。具体的には、図14示すように、前後方向の中央部分が折り曲げ部Lとなるようにして、おむつ100の内面が内側となるようにして、二つ折りされる(折り畳み手順は図14(P)、(Q)の順であり、展開手順はその反対である)。つまり、股間部Cまたは股間部C近傍に折り曲げ部L(SL)が形成される。この場合は、この折り曲げ部SLと細長状弾性伸縮部材30の交差部分50、またはその隣接部分(中央側隣接部分51、外側隣接部分52)に抑止部60を設けるようにしてもよい。抑止部60の形成方法やその作用効果は、三つ折りの場合と同じであるため、ここでは記載を省略する。
本発明に係るおむつ100に設けた抑止部60によって、細長状弾性伸縮部材30の収縮力が全く働かない状態にしたり、細長状弾性伸縮部材30の収縮力を弱くしたりすることができる。細長状弾性伸縮部材30の収縮を抑える程度、すなわち細長状弾性伸縮部材30の収縮力が弱くなる程度は、抑止部60の形態によって異なる。抑止部60の設けられた領域において、細長状弾性伸縮部材30の収縮が抑止される程度は、図6(B)のように、固定されていない細長状弾性伸縮部材30を切断して形成した抑止部60が最も高い。図8(H)のように接着剤を増量して形成した抑止部60は、接着剤の塗布量が増えるほど、細長状弾性伸縮部材30の収縮力を抑止する程度が高くなる。図8(G)のように、固定された細長状弾性伸縮部材30を切断して形成した抑止部60は、隣接する切断箇所の間の前後方向の距離が短いほど、細長状弾性伸縮部材30の収縮力を抑止する程度が高くなる。
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後方向」とは図中で前後方向と示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中で幅方向と示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
・「内面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは部材の、着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。有孔不織布の厚みは、孔及びその周囲の突出部以外の部分で測定する。
・吸水量は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
<効果>
図11に示すように、本発明に係るテープ式使い捨ておむつによれば、折り曲げ部Lを中心とする折り畳み部分に折り皺GPや段差UEが生じない(生じたとしてもごく僅かなものである)ため、折り皺GPを要因とする横漏れの発生や、段差UEを要因とする装着感の悪化を防止することができる。