以下では、図面を参照しながら本開示に係る構築方法、材料供給装置及び構築物の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
(第1実施形態)
図1(a)及び図1(b)に示されるように、本実施形態に係る構築物1は、例えば、現場Sに第1材料M1及び第2材料M2が供給されて構築された構築物であり、第1材料M1及び第2材料M2は互いに異なる材料である。構築物1は、例えば、最初に第1材料M1が自立するように供給され、第1材料M1の供給が完了した後に第2材料M2が供給されて構築される。
例えば、構築物1はコンクリート躯体を構成しており、第1材料M1は構築物1の内部領域A1を構成し、第2材料M2は構築物1の表層領域A2を構成している。内部領域A1及び表層領域A2、すなわち第1材料M1及び第2材料M2は、一定方向Hに沿って並んでいる。一定方向Hは、一例として、構築物1の厚さ方向である。
例えば、第1材料M1及び第2材料M2は、共に、コンクリートであり、表層領域A2を構成する第2材料M2の強度(硬度)は内部領域A1を構成する第1材料M1の強度(硬度)よりも高い。この場合、コンクリート躯体構築後における表層領域A2からの劣化を抑制することができるので、打ち替え等による補修の頻度を低減させることが可能となる。
例えば、構築物1は、図2に例示される材料供給装置10が第1材料M1及び第2材料M2を連続的に供給することによって構築される。一例として、材料供給装置10は、第1材料M1及び第2材料M2のそれぞれを供給する材料供給部11と、材料供給部11に搬送経路R1を介して接続された乾燥材料収容部12と、材料供給部11に搬送経路R2及びポンプ14を介して接続された液状材料収容部13とを備える。
搬送経路R1及び搬送経路R2は、例えば、乾燥材料収容部12に貯留された乾燥材料D、及び液状材料収容部13に貯留された液状材料E、のそれぞれが通る搬送ホースである。しかしながら、搬送経路R1及び搬送経路R2のそれぞれは、ホース以外のもの(例えばパイプ)であってもよく、適宜変更可能である。
搬送経路R1及び搬送経路R2のそれぞれは、材料供給部11に対して着脱可能であってもよい。この場合、搬送経路R1及び搬送経路R2の少なくともいずれかを交換することによって、材料供給部11に供給する材料を容易に変更することが可能となる。更に、万が一の閉塞時における搬送経路R1又は搬送経路R2の交換を容易に行うことも可能となる。
一例として、乾燥材料Dはセメント、骨材及び混和剤を含んでおり、液状材料Eは水及び混和剤を含んでいる。第1材料M1及び第2材料M2では、例えば、乾燥材料Dと液状材料Eの配合が互いに異なっている。第1材料M1及び第2材料M2のそれぞれは、乾燥材料Dと液状材料Eの配合が調整されることによって材料供給部11で用意される。
材料供給装置10は、更に、乾燥材料収容部12に貯留された乾燥材料Dを材料供給部11に空気圧送するコンプレッサ15と、ポンプ14及びコンプレッサ15を制御する制御部16と、第1材料M1及び第2材料M2が供給される状況を制御部16に入力する入力部17とを備えていてもよい。
入力部17は、例えば、図1に示される第1材料M1及び第2材料M2の供給状況を撮影するカメラ、並びにスキャナ(レーザスキャナ等)のいずれかであってもよい。「供給状況」とは、例えば、供給された材料の自立の度合、又は材料の硬さ等の情報を含む。入力部17が第1材料M1及び第2材料M2の供給状況を制御部16に入力すると、例えば、制御部16は入力された供給状況に応じてポンプ14及びコンプレッサ15のそれぞれを制御する。
制御部16がポンプ14及びコンプレッサ15のそれぞれを制御することによって、材料供給部11に搬送される乾燥材料D及び液状材料Eの配合が調整される。例えば、制御部16は、ポンプ14による液状材料Eの送り込み速度、及びコンプレッサ15による乾燥材料Dの送り込み速度のそれぞれを制御する。なお、乾燥材料D及び液状材料Eの配合を調整する方法は、前述の制御部16及び入力部17を用いた方法に限られず、例えば、手動で調整する方法であってもよく適宜変更可能である。手動で調整する方法として、例えば、乾燥材料収容部12に貯留されている乾燥材料Dを入れ替えること、及び、液状材料収容部13に貯留されている液状材料Eを入れ替えることが挙げられる。
材料供給部11では、乾燥材料収容部12から搬送経路R1を介して搬送された乾燥材料D、及び液状材料収容部13から搬送経路R2を介して搬送された液状材料E、が混合される。すなわち、乾燥材料D及び液状材料Eは、材料供給装置10の外部に供給される直前で合流する。材料供給部11は、例えば、水量調整部11bと材料混練部11cとを備えており、水量調整部11bによって材料供給部11でも液状材料Eの量が調整可能となっていてもよい。
一例として、材料供給部11の水量調整部11bは水量調整コックであり、材料供給部11の材料混練部11cはミキサである。材料混練部11cは乾燥材料D及び液状材料Eを混練し、混練された乾燥材料D及び液状材料Eは第1材料M1又は第2材料M2として材料供給装置10の外部に吐出される。
以下では、材料供給部11の例について更に説明する。図3に例示されるように、材料供給部11は、吹き付けロボット11dを含んでいてもよい。材料供給部11が吹き付けロボット11dを含む場合、第1材料M1及び第2材料M2は吹き付け(吹き付け工法)によって材料供給装置10の外部に供給される。吹き付けロボット11dは、例えば、自走式ロボットであってもよいし、外部から操作されることによって稼動するロボットであってもよい。
図4に例示されるように、材料供給部11は、ロボットアーム式3Dプリンタ11fを含んでおり、ロボットアーム式3Dプリンタ11fのノズル11gから第1材料M1及び第2材料M2のそれぞれを押し出してもよい。この場合、材料供給部11は、第1材料M1及び第2材料M2のそれぞれを押し出し(押し出し工法)によって材料供給装置10の外部に供給する。
このように、第1材料M1及び第2材料M2を外部に供給する材料供給部11としては種々の装置を用いることが可能である。また、材料供給部11は、材料供給装置10に対して着脱可能なアタッチメントであってもよい。この場合、例えば、材料供給装置10に取り付けられる材料供給部11を吹き付けロボット11dからロボットアーム式3Dプリンタ11fに、又はロボットアーム式3Dプリンタ11fから吹き付けロボット11dに切り替えることが可能となる。すなわち、吹き付け又は押し出し等を選択するために、複数種類の材料供給部11を切り替えることが可能となる。
次に、本実施形態に係る構築方法について図5のフローチャートを参照しながら説明する。図5は、材料供給装置10を用いて構築物1を構築する方法の各工程の例を示している。まず、現場Sにおいて材料供給装置10を起動する前に、材料供給装置10に乾燥材料D及び液状材料Eを用意する。
次に、材料供給装置10を起動して乾燥材料Dと液状材料Eとを混合して第1材料M1を用意する(材料を用意する工程、ステップT1)。このとき、例えば、制御部16の制御の下でポンプ14及びコンプレッサ15が稼働して、乾燥材料収容部12から材料供給部11に乾燥材料Dを供給すると共に、液状材料収容部13から材料供給部11に液状材料Eを供給して、内部領域A1を形成する第1材料M1を生成する。
第1材料M1を用意してからは、例えば図1(a)に示されるように、現場Sにおいて自立するように第1材料M1を材料供給部11から連続的に供給して内部領域A1を施工する(ステップT2)。このとき、第1材料M1は、前述した吹き付け工法又は押し出し工法によって現場Sに供給される。一例として、制御部16がポンプ14及びコンプレッサ15を制御することによって乾燥材料Dと液状材料Eの配合を自動的に調整してもよい。
また、入力部17が内部領域A1の施工状況(供給状況)を制御部16に入力し、入力された供給状況を基に制御部16がポンプ14及びコンプレッサ15を制御してもよい。また、上記に代えて、又は上記と共に、例えば水量調整部11bで液状材料Eの量を調整する等、乾燥材料Dと液状材料Eの配合を手動で調整してもよい。
続いて、ステップT1と同様、乾燥材料Dと液状材料Eを混合して第2材料M2を生成する(材料を用意する工程、ステップT3)。なお、第2材料M2の強度が第1材料M1の強度よりも高い場合、ステップT3では、例えば、第1材料M1を生成するときと比較して乾燥材料Dの割合を多くして第2材料M2を生成する。そして、例えば図1(b)に示されるように、ステップT2と同様、現場Sにおいて自立するように材料供給部11から第2材料M2を連続的に供給して表層領域A2を施工する(連続的に供給する工程、ステップT4)。
以上の工程を経た後に、構築物1の構築が完了する。なお、前述したステップT1~ステップT4の工程は、制御部16によるポンプ14及びコンプレッサ15の制御、又は手動のいずれかによってシームレスに実行される。従って、互いに異なる材料である第1材料M1及び第2材料M2を用いた構築物1の構築をスムーズに行うことが可能となる。
次に、本実施形態に係る構築方法、材料供給装置10及び構築物1から得られる作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係る構築方法及び材料供給装置10では、互いに異なる材料である第1材料M1及び第2材料M2を用意し、第1材料M1及び第2材料M2を一定方向Hに沿って変更しながら連続的に供給する。よって、第1材料M1から第2材料M2に変更しながら一定方向Hに沿って連続的に供給を行うので、第1材料M1及び第2材料M2をシームレスに供給することが可能となる。
従って、構築物1の内部領域A1及び表層領域A2に求められる要求に応じて第1材料M1及び第2材料M2をシームレスに供給することができるので、構築物1の全体に高い強度の材料が均一に供給されるといった事態を回避することができる。その結果、適材適所で構築物1の内部領域A1及び表層領域A2に求められる相応しい材料を供給することができるので、材料のコストを低減させることができる。
また、構築物1の材料として、全体的に水セメント比が小さいコンクリートを用いない、例えば、構築物1の表層領域A2のみに水セメント比が小さいコンクリートを用いて内部領域A1に水セメント比が小さいコンクリートを用いないことによって、コンクリートの発熱を抑えることができる。従って、コンクリートの発熱に対する対策を不要とすることができる。
更に、材料の特性が互いに異なる第1材料M1及び第2材料M2を連続的に供給することにより、第1材料M1及び第2材料M2を自立させた状態で第1材料M1及び第2材料M2の供給を続けることが可能となる。従って、型枠を不要とすることも可能である。このように、本実施形態に係る構築方法では、コンクリートの発熱に対する対策、及び型枠等を不要とすることができるので、材料の供給、及び構築物1の構築を効率よく行うことができる。
また、本実施形態において、構築物1は、内部領域A1と、内部領域A1よりも構築物1の表側に位置する表層領域A2とを有し、複数の材料を連続的に供給する工程では、内部領域A1を構成する材料と、表層領域A2を構成する材料とを、それぞれ第1材料M1及び第2材料M2として互いに異ならせる。すなわち、複数の材料を連続的に供給する過程で内部領域A1を構成する第1材料M1と表層領域A2を構成する第2材料M2とを互いに異ならせることが可能である。従って、内部領域A1の第1材料M1と表層領域A2の第2材料M2とを連続的に変えることができるので、表層領域A2に求められる強度等の要求に応じた適切な材料を供給することができる。そして、内部領域A1に求められない不要な材料の供給を抑制することができるので、材料にかかるコストの低減に寄与する。
また、複数の材料を連続的に供給する工程では、第1材料M1及び第2材料M2を吹き付け工法によって連続的に吹き付けてもよい。この場合、複数の材料を変えながら連続的に吹き付けることができるので、複数の材料のシームレスな供給を第1材料M1及び第2材料M2の吹き付けによって実現させることができる。
また、複数の材料を連続的に供給する工程では、第1材料M1及び第2材料M2を押し出し工法によって連続的に押し出してもよい。この場合、複数の材料を変えながら連続的に押し出すことができるので、複数の材料のシームレスな供給を第1材料M1及び第2材料M2の押し出しによって実現させることができる。なお、前述したように、第1材料M1及び第2材料M2の吹き付け、並びに第1材料M1及び第2材料M2の押し出し、が切り替え可能であってもよい。この場合、現場Sの施工状況(供給状況)に応じて吹き付け工法及び押し出し工法を切り替えることができる。
また、構築物1は、第1材料M1及び第2材料M2が供給されて構築された構築物であって、互いに異なる材料が一定方向Hに沿って並ぶ。すなわち、構築物1では、第1材料M1及び第2材料M2が一定方向Hに沿って並んでおり、第1材料M1及び第2材料M2がシームレスに供給されて構築されている。従って、構築物1の全体に高い強度の材料が供給されたものではなく、適材適所で内部領域A1及び表層領域A2のそれぞれに求められる相応しい材料が供給されて構築されているので、材料のコストを低減させることができる。また、適材適所で材料が変えられていることにより、コンクリートの発熱に対する対策、及び型枠等を不要にすることができるので、材料の供給、及び構築を効率よく行うことができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る材料供給装置20、及び構築物の構築方法について図6を参照しながら説明する。以降の説明では、前述した実施形態の説明と重複する説明を適宜省略する。材料供給装置20は、前述した材料供給部11と、互いに異なる複数の材料である材料M3,M4,M5のそれぞれを収容する材料収容部21,22,23と、材料供給部11と材料収容部21,22,23のいずれかとを互いに接続する搬送経路R3とを備える。材料M3,M4,M5は、例えば、前述した第1材料M1及び第2材料M2と同様であり、配合が互いに異なるように予め調整されたコンクリートであってもよい。材料収容部21,22,23は、一例として、ホッパであり、搬送経路R3は搬送ホースである。
次に、第2実施形態に係る構築物の構築方法の例について説明する。まず、図1及び図6に示されるように、材料供給部11から延び出す搬送経路R3を材料収容部21に接続し、材料収容部21に収容された材料M3を現場Sに供給して、例えば、構築物1の内部領域A1よりも内部の領域を材料M3によって構築する。次に、搬送経路R3を材料収容部22に接続し、材料収容部22に収容された材料M4を現場Sに供給して、例えば、構築物1の内部領域A1を材料M4によって構築する。続いて、搬送経路R3を材料収容部23に接続し、材料収容部23に収容された材料M5を現場Sに供給して、例えば、構築物1の表層領域A2を材料M5によって構築する。
以上、第2実施形態に係る材料供給装置20、及び構築物の構築方法によれば、予め用意した材料M3,M4,M5を変更しながら一定方向Hに沿って連続的に供給するので、材料M3,M4,M5をシームレスに供給することが可能である。従って、構築物1の各部分の要求に応じて異なる材料をシームレスに供給することができるので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
更に、第2実施形態では、材料収容部21,22,23及び材料M3,M4,M5を予め用意すれば、必ず材料M3,M4,M5のいずれかが供給されるので、予期しない配合の材料が供給されることはない。従って、材料供給部11から延びる搬送経路R3を材料収容部21,22,23のいずれかに繋ぎ替えることによって、予め決められた材料M3,M4,M5のいずれかを確実に供給することができる。
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る材料供給装置30、及び構築物の構築方法について図7を参照しながら説明する。材料供給装置30は、前述した材料供給部11と、乾燥材料D及び液状材料Eの配合が一定方向Yに応じて異なる材料M6,M7を収容する1つの材料収容部31とを備える。例えば、材料M6は構築物1の内部領域A1を構成する材料であり、材料M7は構築物1の表層領域A2を構成する材料である。材料M6及び材料M7のそれぞれは、例えば、前述した第1材料M1及び第2材料M2のそれぞれと同様の材料であり、互いに配合が異なるように調整されたコンクリートであってもよい。材料供給部11と材料収容部31とは搬送経路R3を介して互いに接続されている。
第3実施形態に係る構築物の構築方法としては、図1及び図7に示されるように、まず、予め構築する構築物1の内部領域A1及び表層領域A2の構築計画に見合った量の材料M6及び材料M7を用意して材料M6及び材料M7を材料収容部31に収容する。そして、材料収容部31に収容された材料M6を現場Sに供給して、例えば、構築物1の内部領域A1を材料M6によって構築する。内部領域A1の構築が完了すると自動的に材料収容部31に収容された材料M7の供給を開始して、構築物1の表層領域A2を材料M7によって構築する。
以上、第3実施形態に係る材料供給装置30、及び構築物の構築方法によれば、予め用意した材料M6,M7を変更しながら一定方向Hに沿って連続的に供給するので、材料M6,M7をシームレスに供給することが可能である。従って、構築物1の各部分の要求に応じて互いに異なる材料をシームレスに供給することができるので、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。
更に、第3実施形態では、材料を収容する容器を1つの材料収容部31とすることができるため、構成を簡易にすることができる。また、第3実施形態では、予め構築物1の内部領域A1及び表層領域A2に必要な量の材料M6及び材料M7を材料収容部31に収容すれば、材料M6及び材料M7が自動的に供給されるので、予め定めた材料の供給を更にスピーディーに行うことができる。従って、構築物1の構築を更に効率よく行うことが可能となる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る材料供給装置40、及び構築物の構築方法について図8を参照しながら説明する。図8は、耐久性の向上が可能な構築物1を構築する例示的な材料供給装置40を示している。材料供給装置40は、前述した材料供給部11、搬送経路R1及び搬送経路R2と、セメントを収容するセメント収容部41と、水を含む材料を収容する材料収容部42とを備えており、例えば、材料収容部42にはコンクリートのセメント以外の構成材料(水及び骨材等)が収容される。なお、材料収容部42に代えて、水が収容される収容部と、骨材が収容される収容部と、が別々に設けられていてもよい。
ところで、コンクリートの緻密性は、コンクリートの水セメント比に依存する。よって、塩害環境下等、厳しい条件の環境下に構築物を構築する場合には、セメントの量を増やして構築物の水セメント比を小さくしたり、かぶりを大きくしたりする対策が取られているという現状がある。しかしながら、構築物の全てに対して水セメント比が小さいコンクリートを用いると、前述したように、コストの上昇を招来すると共に、コンクリートが発熱しやすくなり、温度ひび割れが生じる可能性が高まる。
そこで、第4実施形態では、かぶりに相当する構築物1の表層領域A2の材料を緻密性がより高い材料、すなわちセメントの量が多いコンクリートとしている。よって、内部領域A1の材料は、表層領域A2よりは緻密性が低い、すなわちセメントの量が少ないコンクリートである。
材料供給装置40及び後述する実施形態の材料供給装置は、材料供給装置10と同様の構成を備えており、ポンプ14、コンプレッサ15、制御部16及び入力部17を含んでいてもよいが、簡略化のため、ポンプ14、コンプレッサ15、制御部16及び入力部17の図示を省略している。材料供給装置40において、材料供給部11は、一例として、3Dコンクリートプリンタである。
第4実施形態において、構築物1は、内部領域A1を構成する材料M8と、表層領域A2を構成する材料M9によって構築され、材料M8及び材料M9は共にコンクリートである。材料M8の水セメント比は材料M9の水セメント比よりも大きい。換言すれば、表層領域A2を構成する材料M9のセメント量は、内部領域A1を構成する材料M8のセメント量よりも多く、材料M9は、内部領域A1を構成する材料M8よりも耐久性が高い高耐久性材料である。
第4実施形態に係る構築物1の構築方法では、図1及び図8に示されるように、例えば、セメント収容部41から材料供給部11へのセメントの送り込み速度よりも材料収容部42から材料供給部11への水の送り込み速度を速めて水セメント比が相対的に大きい(セメントの量が相対的に少ない)材料M8を現場Sに供給する。そして、材料M8の供給によって構築物1の内部領域A1を構築する。
次に、例えば、セメント収容部41から材料供給部11へのセメントの送り込み速度よりも材料収容部42から材料供給部11への水の送り込み速度を遅くして水セメント比が相対的に小さい(セメントの量が相対的に多い)材料M9を現場Sに供給する。材料M9の供給によって構築物1の表層領域A2を構築した後に一連の工程を終了する。
以上、第4実施形態に係る材料供給装置40、及び構築物の構築方法によれば、セメント収容部41に収容したセメント、及び材料収容部42に収容した水、の割合が互いに異なる材料M8及び材料M9を一定方向Hに沿って連続的に供給する。従って、材料M8及び材料M9をシームレスに供給して構築物1を構築することができるので、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。
更に、第4実施形態において、表層領域A2を構成する材料M9は、内部領域A1を構成する材料M8よりも耐久性が高い高耐久性材料によって構成されている。よって、内部領域A1を構成する材料M8よりも高い耐久性を有する材料M9を表層領域A2に供給することができる。
また、内部領域A1に高い耐久性が求められないにもかかわらず内部領域A1に高い耐久性の材料が無駄に供給されることを抑制することができるので、材料にかかるコストを低減させることができる。更に、第4実施形態では、表層領域A2のみを1つの工程で(材料の連続的な供給によって)高耐久化できるため、構築物全体の材料を無駄にスペックアップすることなく、高い耐久性を有する構築物1とすることができる。
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態に係る材料供給装置50について図9(a)を参照しながら説明する。図9(a)は、コンクリートを含む構築物1の曲げに対する抵抗性を高めることが可能な材料供給装置50を示している。材料供給装置50は、前述した材料供給部11、乾燥材料収容部12、液状材料収容部13、搬送経路R1及び搬送経路R2と、繊維収容部51と、搬送経路R4とを備える。
繊維収容部51には、例えば、コンクリートを補強する短繊維が収容されており、搬送経路R4は、繊維収容部51の短繊維を材料供給部11に送り込む。搬送経路R4は、例えば、搬送経路R1と同様の構成を備えており、乾燥材料を材料供給部11に供給する経路である。繊維収容部51に収容される短繊維は、一例として、線状とされた鋼製の固体である。
この場合、繊維収容部51及び搬送経路R4の構成は、乾燥材料収容部12及び搬送経路R1の構成と同様とすることが可能となる。例えば、線状の鋼繊維がコンクリートに混ぜ込まれることによって、コンクリートがひび割れるときに鋼繊維がモルタル部を架橋する働きを担い、引っ張りに対する抵抗が向上する。第5実施形態では、構築物1の表層領域A2の材料を内部領域A1の材料M10と比較して引張強度が高い材料M11としている。例えば、材料M11は繊維収容部51に収容された短繊維を含んでおり、材料M10は繊維収容部51に収容された短繊維を含んでいない。
第5実施形態に係る構築物1の構築方法では、例えば、乾燥材料収容部12から乾燥材料Dを材料供給部11に送り、液状材料収容部13から液状材料Eを材料供給部11に送ると共に、短繊維(鋼繊維)を含まない材料M10を現場Sに供給する。そして、材料M10の供給によって構築物1の内部領域A1を構築する。次に、繊維収容部51から材料供給部11への短繊維の送り込みを開始して、乾燥材料D、液状材料E及び短繊維を含む材料M11を現場Sに供給する。材料M11の供給によって、構築物1の表層領域A2を構築した後に一連の工程を終了する。
以上、第5実施形態に係る材料供給装置50、及び構築物の構築方法によれば、乾燥材料収容部12に収容した乾燥材料D、液状材料収容部13に収容した液状材料E、及び繊維収容部51に収容した短繊維を一定方向Hに沿って連続的に供給する。従って、乾燥材料D、及び液状材料Eをシームレスに供給して構築物1を構築することができるので、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。
第5実施形態に係る材料供給装置50、及び構築物の構築方法において、表層領域A2を構成する材料M11は、内部領域A1を構成する材料M10よりも強度が高い高強度材料によって構成されてもよい。具体例として、材料M11は、鋼製の短繊維を含んでいてもよい。この場合、内部領域A1と比較して表層領域A2の強度を高めることができる。従って、表層領域A2の材料M11の強度を高めることにより、例えば、曲げによる圧縮応力や引張応力が最大となりうる表層領域A2の強度を高めることができ、構築物1全体の曲げ耐力及びひび割れ抵抗性を高めることができる。また、内部領域A1を構成する材料M10に高い強度が求められない場合、内部領域A1に無駄に強度が高い材料M11が供給されることを抑制することができる。
更に、第5実施形態において、表層領域A2を構成する材料M11は、樹脂製の短繊維を含んでいてもよく、繊維の材料は適宜変更可能である。この場合も、内部領域A1と比較して表層領域A2の強度を高めることができる。従って、表層領域A2の材料M11に樹脂が含まれることにより、構築物1の表層領域A2における曲げ耐力及びひび割れ抵抗性を高めることができる。また、内部領域A1を構成する材料M10が樹脂を含まない場合、内部領域A1に無駄に強度が高い材料が供給されることを抑制することができる。
内部領域A1に無駄に強度が高い材料が供給されることを抑制することができるので、コストを低減できると共に、コンクリートの水和熱を軽減することができる。その結果、温度ひび割れのリスクを低減しつつ、曲げに対する抵抗性を高めることができる。なお、第5実施形態において、内部領域A1を構成する材料M10は繊維を含んでいてもよく、材料M10に含まれる繊維の量が材料M11に含まれる繊維の量より少なくてもよい。この場合も上記同様の効果が得られる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る材料供給装置60について図9(b)を参照しながら説明する。図9(b)は、第5実施形態と同様、曲げに対する抵抗性を高めることが可能な材料供給装置60を示しており、材料供給装置60は、前述した材料供給部11、乾燥材料収容部12、液状材料収容部13、搬送経路R1及び搬送経路R2を備える。
乾燥材料収容部12には、例えば、前述した乾燥材料Dと短繊維とが収容されており、乾燥材料Dと短繊維とが1つの乾燥材料収容部12に収容されている点が第5実施形態と異なっている。第6実施形態において、短繊維は、例えば、内部領域A1の構築のときには材料供給部11に送り込まれず、表層領域A2の構築のときに材料供給部11に送り込まれるように乾燥材料収容部12に収容されている。
第6実施形態に係る構築物1の構築方法では、例えば、乾燥材料収容部12から乾燥材料Dを材料供給部11に送ると共に、液状材料収容部13から液状材料Eを材料供給部11に送ることによって短繊維を含まない材料M10を現場Sに供給して内部領域A1を構築する。そして、乾燥材料収容部12から乾燥材料Dと共に短繊維を材料供給部11に送ると共に、液状材料収容部13から液状材料Eを材料供給部11に送ることによって短繊維を含む材料M11を現場Sに供給して表層領域A2を構築する。
以上、第6実施形態に係る材料供給装置60、及び構築物の構築方法によれば、互いに異なる材料である材料M10及び材料M11を一定方向Hに沿って連続的に供給するので、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。更に、第6実施形態に係る材料供給装置60、及び構築物の構築方法によれば、乾燥材料D及び短繊維を1つの乾燥材料収容部12に収容できるので、構成を簡易にすることができる。また、予め表層領域A2に必要な短繊維を乾燥材料収容部12に収容すれば、表層領域A2の構築のときに短繊維が自動的に供給されるので、材料の供給をスピーディーに行うことができる。
(第7実施形態)
続いて、第7実施形態に係る材料供給装置70について図10(a)を参照しながら説明する。材料供給装置70は、前述した材料供給部11、乾燥材料収容部12、液状材料収容部13、搬送経路R1及び搬送経路R2と、樹脂収容部71と、搬送経路R5とを備える。
樹脂収容部71には、例えば、コンクリートを補強する液状樹脂が収容されており、搬送経路R5を介して樹脂収容部71の液状樹脂が材料供給部11に送り込まれる。搬送経路R5は、例えば、搬送経路R2と同様の構成を備えており、液状材料を材料供給部11に供給する経路である。樹脂収容部71に含まれる樹脂は、例えば、材料供給部11において乾燥材料D及び液状材料Eと練り混ぜられることによってレジンコンクリートを構成する。
第6実施形態に係る構築物1の構築方法では、例えば、乾燥材料収容部12から乾燥材料Dを材料供給部11に送ると共に、液状材料収容部13から液状材料Eを材料供給部11に送ることによって樹脂を含まない材料M10を現場Sに供給して内部領域A1を構築する。内部領域A1の構築後には、樹脂収容部71から樹脂の送り込みを開始して、乾燥材料D、液状材料E及び樹脂を含む材料M11を現場Sに供給して表層領域A2の構築を行う。
以上、第7実施形態に係る材料供給装置70、及び構築物の構築方法によれば、乾燥材料D、液状材料E、及び樹脂収容部71に収容した樹脂を一定方向Hに沿って連続的に供給する。従って、乾燥材料D、液状材料E及び樹脂をシームレスに供給して構築物1を構築することができるので、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、表層領域A2における曲げ耐力及びひび割れ抵抗性を高めることができると共に、内部領域A1に無駄に強度が高い材料が供給されることを抑制することができる。
(第8実施形態)
第8実施形態に係る材料供給装置80について図10(b)を参照しながら説明する。材料供給装置80は、前述した材料供給部11、乾燥材料収容部12、液状材料収容部13、搬送経路R1及び搬送経路R2を備える。液状材料収容部13には、例えば、前述した液状材料Eと液状樹脂とが収容されている。第8実施形態において、液状樹脂は、例えば、内部領域A1の構築のときには材料供給部11に送り込まれず、表層領域A2の構築のときに材料供給部11に送り込まれるように液状材料収容部13に収容されている。
第8実施形態に係る構築物の構築方法では、例えば、乾燥材料収容部12から乾燥材料Dを材料供給部11に送ると共に、液状材料収容部13から液状材料Eを材料供給部11に送ることによって樹脂を含まない材料M10を現場Sに供給して内部領域A1を構築する。そして、乾燥材料収容部12から乾燥材料Dを材料供給部11に送ると共に、液状材料収容部13から液状材料Eと樹脂を材料供給部11に送ることによって樹脂を含む材料M11を現場Sに供給して表層領域A2を構築する。
以上、第8実施形態に係る材料供給装置80、及び構築物の構築方法によれば、材料M10及び材料M11を一定方向Hに沿って連続的に供給するので、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。更に、第8実施形態では、液状材料E及び樹脂を1つの液状材料収容部13に収容できるので、構成を簡易にすることができる。また、予め表層領域A2に必要な繊維を液状材料収容部13に収容すれば、表層領域A2の構築のときに樹脂が自動的に供給されるので、材料の供給をスピーディーに行うことができる。
(第9実施形態)
続いて、第9実施形態に係る材料供給装置90について図9(a)を参照しながら説明する。第9実施形態では、内部領域A1の材料M12、及び表層領域A2の材料M13が前述の実施形態と異なっている。材料供給装置90は、耐火性が付与される構築物1を構築する。材料M12は普通コンクリート及びモルタルの少なくともいずれかを含んでおり、材料M13は普通コンクリート及びモルタルの少なくともいずれかと繊維とを含んでいる。材料M13に含まれる繊維は、一例として、短繊維であり、流動性が低いPP(ポリプロピレン)を含んだ繊維であってもよい。
第9実施形態に係る構築物の構築方法では、例えば、乾燥材料収容部12から乾燥材料Dを材料供給部11に送ると共に、液状材料収容部13から液状材料Eを材料供給部11に送ることによって、普通コンクリート及びモルタルの少なくともいずれかを含む材料M12を供給して内部領域A1を構築する。次に、繊維収容部51から繊維の送り込みを開始して、普通コンクリート及びモルタルの少なくともいずれかに繊維が含まれた材料M13を供給して表層領域A2を構築する。
以上、第9実施形態に係る材料供給装置90、及び構築物の構築方法によれば、繊維を含まない材料M12、及び繊維を含む材料M13を一定方向Hに沿って連続的に供給する。従って、互いに異なる複数の材料をシームレスに供給することができるので、前述の実施形態と同様の効果が得られる。更に、表層領域A2が繊維を含む材料M13で構成されるので、表層領域A2による構築物1の耐火被覆をシームレスに行うことが可能となる。
そして、構築物1の全体に材料M13を使用しない(内部領域A1には使用しない)ようにすることができるので、耐火被覆の材料にかかるコストを抑えることができる。なお、第9実施形態において行われる耐火被覆のための構成としては、図9(a)に示される材料供給装置90に限られず、例えば、図9(b)と同様の構成を採用することも可能である。
(第10実施形態)
次に、第10実施形態に係る材料供給装置100、及び構築物の構築方法について図2及び図11を参照しながら説明する。第10実施形態に係る材料供給装置100は、鉄筋Fへのコンクリートの付着特性を向上させることを可能とする。材料供給装置100は、例えば、材料供給装置10と同様の構成を備える。材料供給装置100は、内部領域A1、表層領域A2、及び鉄筋Fを含む鉄筋周辺領域A3に互いに異なる材料を供給する。例えば、内部領域A1、鉄筋周辺領域A3及び表層領域A2は、一定方向Hに沿って並んでいる。
鉄筋周辺領域A3を構成する材料M14の強度は、例えば、内部領域A1を構成する第1材料M1の強度よりも高い。また、材料M14の強度と表層領域A2を構成する第2材料M2の強度との関係は、材料M14の強度が第2材料M2の強度より高くてもよいし、材料M14の強度が第2材料M2の強度と同程度であってもよい。
第10実施形態に係る構築物の構築方法では、例えば、材料供給装置100を起動して乾燥材料D及び液状材料Eを混合して第1材料M1を生成し、材料供給部11から第1材料M1を供給して内部領域A1を構築する。次に、例えば、乾燥材料Dの割合を液状材料Eの割合よりも多くして材料M14を生成し、材料M14を連続的に供給して鉄筋周辺領域A3を構築した後、第2材料M2を生成及び供給して表層領域A2を構築する。
以上、第10実施形態に係る材料供給装置100、及び構築物の構築方法によれば、互いに異なる材料である第1材料M1、材料M14及び第2材料M2を連続的に供給して内部領域A1、鉄筋周辺領域A3及び表層領域A2を連続的に構築するので、シームレスな材料供給と構築が可能となり、前述の各実施形態と同様の効果が得られる。
具体的には、従来は、鉄筋へのコンクリートの付着特性を高めるために、構築物の全体に高い強度を有する材料を用いる必要があったのに対し、第10実施形態では、鉄筋周辺領域A3のみに高い強度の材料M14を用いることが可能である。従って、構築物全体に高強度のコンクリートを使わずに鉄筋の付着特性を良好とすることができるため、高強度鉄筋の適用、及びひび割れ分散効果を期待できると共に、材料にかかるコストを低減させることができる。
以上、本開示に係る構築物の構築方法、材料供給装置、及び構築物の実施形態について説明した。しかしながら、本発明に係る構築方法、材料供給装置及び構築物は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、材料供給装置及び構築物の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様、並びに、構築方法の各工程の内容及び順序は、各請求項の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、前述の実施形態では、構築物1の厚さ方向である一定方向Hに沿って並ぶ内部領域A1及び表層領域A2を有する構築物1において、内部領域A1の第1材料M1と表層領域A2の第2材料M2とが互いに異なる例について説明した。しかしながら、一定方向は、構築物の厚さ方向以外の方向であってもよく、例えば、構築物の高さ方向、又は構築物の深さ方向であってもよい。
また、構築物の互いに材料を異ならせる領域の分け方は、内部領域A1及び表層領域A2に限られず、例えば、所定の方向(一例として、水平方向、鉛直方向、又は環状構造等の外側から内側に向かう方向等)に沿って並ぶ第1領域、第2領域及び第3領域等であってもよく、適宜変更可能である。更に、構築物において、互いに異なる材料を供給する領域の数は、内部領域A1及び表層領域A2等の2つに限られず、3つ、又は4つ以上の領域であってもよく、適宜変更可能である。また、領域は、内部領域A1及び表層領域A2のように明確に分かれていなくてもよく、例えば、強度が低い領域から強度が高い領域に徐々に遷移する等、一定方向に沿って材料の性状が徐々に変わるように材料の供給を行ってもよい。
また、材料を異ならせる方法は前述した実施形態の他にも種々の方法が挙げられる。例えば、供給される材料をカメラが撮影し、撮影された材料の自立度合を判定して、材料の水分量を調整してもよい。また、ロボットアーム等を用いて材料供給装置の全てを自動化し、構築物の構築を人手を介さずに全て自動的に行ってもよい。