以下、本発明の実施形態について図1~図8を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態に係るリトラクタを示す部品展開図である。図2は、図1に示した弾性体及びピストンの作用を説明する概念図であり、(A)はガス発生器が作動する前の状態、(B)はガス発生器が作動した後の状態、(C)は弾性体が拘束部に到達した状態、(D)はピストンが拘束部に到達した状態、(E)は弾性体が拘束部を通過した後の状態、を示している。
本発明の一実施形態に係るリトラクタ1は、図1に示したように、乗員を拘束するウェビングの巻き取りを行うスプール2と、緊急時にウェビングを巻き取って弛みを除去するプリテンショナ3と、を含み、プリテンショナ3は、スプール2に接続されたリングギア31と、緊急時にリングギア31に動力を伝達する動力伝達装置32と、を含んでいる。なお、図1において、ウェビングの図は省略してある。
動力伝達装置32は、例えば、リングギア31に動力を伝達する樹脂製のロッド形状の動力伝達部材32aと、動力伝達部材32aをリングギア31に案内する筒形状の案内部材32bと、案内部材32bの内部に作動ガスを供給するガス発生器32cと、ガス発生器32cと動力伝達部材32aとの間に配置されたピストン32dと、ピストン32dの前方に配置された弾性体32eと、ピストン32dの後方側に配置されたシール部材32fと、案内部材32bに形成されピストン32dを拘束する拘束部32gと、動力伝達部材32aとリングギア31との噛合開始時に動力伝達部材32aを支持するガイド部材32hと、を備えている。
スプール2は、ウェビングを巻き取る巻胴であり、リトラクタ1の骨格を形成するベースフレーム11内に回転可能に収容されている。ベースフレーム11は、例えば、対峙する第一端面111及び第二端面112と、これらの端面を連結する側面113と、を有している。ベースフレーム11は、側面113と対峙し第一端面111及び第二端面112に接続されるタイプレート114を備えていてもよい。
また、例えば、第一端面111側にスプリングユニット4が配置され、第二端面112側にプリテンショナ3及びロック機構5が配置される。なお、スプリングユニット4、プリテンショナ3、ロック機構5等の配置は、図示した構成に限定されるものではない。
また、ベースフレーム11の第一端面111には、スプール2の軸部を挿通する開口部111aが形成されており、ベースフレーム11の第二端面112には、ロック機構5のパウル(図示せず)と係合可能な内歯を有する開口部112aが形成されている。また、ベースフレーム11の第二端面112の内側には、プリテンショナ3の一部(例えば、リングギア31)が配置される。また、ベースフレーム11の第二端面112の外側にはロック機構5が配置され、ロック機構5はリテーナカバー51内に収容される。
リテーナカバー51には、車体の急減速や傾きを検出するビークルセンサ6が配置されていてもよい。ビークルセンサ6は、例えば、球形の質量体(図示せず)と、質量体の移動によって揺動されるセンサレバー61と、を有している。ビークルセンサ6は、ベースフレーム11の第二端面112に形成した開口部112bに嵌め込まれて固定されていてもよい。
スプール2は、中心部に空洞を有し、軸心を形成するトーションバー21が挿通されていてもよい。トーションバー21は、第一端部がスプール2の端部に接続されたロック機構5のロッキングベース52に接続されており、第二端部がスプール2に固定されるとともにスプリングユニット4のスプリングコアに接続されている。したがって、スプール2は、ロッキングベース52及びトーションバー21を介して、スプリングユニット4に接続されており、スプリングユニット4に格納されたゼンマイバネによりウェビングを巻き取る方向に付勢されている。
なお、スプール2に巻き取り力を付与する手段は、スプリングユニット4に限定されるものではなく、電動モータ等を用いた他の手段であってもよい。
ロッキングベース52は、その側面部から出没可能に配置されたパウル(図示せず)を備えている。ロック機構5の作動時には、パウルをロッキングベース52の側面部から突出させることにより、ベースフレーム11の開口部112aに形成された内歯に係合させ、ロッキングベース52のウェビング引き出し方向の回転を拘束する。
したがって、ロック機構5が作動した状態で、ウェビング引き出し方向に荷重が負荷された場合であっても、トーションバー21に閾値以上の荷重が生じるまでは、スプール2を非回転状態に保持することができる。そして、トーションバー21に閾値以上の荷重が生じた場合には、トーションバー21が捻れることによって、スプール2が相対的に回転運動を生じ、ウェビングが引き出される。
また、ロック機構5は、ロッキングベース52に隣接するように配置されたロックギア53を備えている。ロックギア53は、揺動可能に配置されたフライホイール(図示せず)を備えており、ウェビングが通常の引き出し速度よりも早い場合には、フライホイールが揺動してリテーナカバー51に形成された内歯に係合する。また、ビークルセンサ6が作動した場合には、センサレバー61がロックギア53の側面に形成された外歯に係合する。
このように、ロックギア53は、フライホイール又はビークルセンサ6の作動により回転が規制される。そして、ロックギア53の回転が規制されると、ロッキングベース52とロックギア53との間に相対回転が生じ、この相対回転に伴ってパウルがロッキングベース52の側面部から突出される。
なお、ロック機構5は、図示した構成に限定されるものではなく、従来から存在している種々の構成のものを任意に選択して使用することができる。また、スプール2は、トーションバー21の代わりに、シャフトとワイヤ状又はプレート状の塑性変形部材との組み合わせによって構成される衝撃吸収機構を備えていてもよい。
プリテンショナ3は、例えば、外周に係合歯を備えたリングギア31と、動力伝達装置32と、リングギア31を格納するプリテンショナカバー33と、動力伝達部材32aの移動を規制するピン34と、を備えている。また、図示しないが、プリテンショナ3は、プリテンショナカバー33内において、動力伝達部材32aの移動空間を形成するガイドスペーサを備えていてもよい。
リングギア31は、プリテンショナカバー33とベースフレーム11(第二端面112)との間に形成された空間に位置するように配置される。なお、リングギア31は駆動輪や回転部材と称することもある。
プリテンショナカバー33は、例えば、ベースフレーム11の第二端面112の内側に配置される。また、プリテンショナカバー33は、例えば、複数の留め具35a~35cにより、案内部材32bとともに又は直にベースフレーム11(第二端面112)に固定される。
動力伝達装置32は、例えば、筒形状のパイプによって構成される案内部材32bの後端から先端に向かって、ガス発生器32c、シール部材32f、ピストン32d、弾性体32e、動力伝達部材32aの順に配置されている。動力伝達部材32a、シール部材32f、ピストン32d及び弾性体32eは、案内部材32b内に収容されており、案内部材32bの後端に配置されたガス発生器32cから発生した作動ガスによって案内部材32b内を移動する。
動力伝達部材32aは、案内部材32bに挿入する前の状態では、直線形状を有する棒状に形成されており、例えば、案内部材32bの先端側から案内部材32b内に圧入することによって、図1に示したように、案内部材32bの形状に沿った状態で案内部材32bの内部に収容される。
案内部材32bは、例えば、図1に示したように、第一端面111の上部、タイプレート114の上部、第二端面112の上部を通り、第二端面112及び側面113によって形成される角隅部内側の上部から下方に向かって延設するように湾曲した形状を有している。
案内部材32bの先端部には、ガイド部材32hが配置される。また、案内部材32bの先端部には、ガイド部材32hに案内された動力伝達部材32aを案内部材32bからプリテンショナカバー33により形成された空間に放出する開口部32iが形成されている。また、案内部材32bは、案内部材32bの先端部から開口部32iまで連通する切欠部32jと、開口部32iの下方に形成された留め具35aを挿通する挿通孔32kと、を備えている。
開口部32iは、案内部材32bのガイド部材32hと隣接する位置に形成されており、動力伝達部材32aの出口部を構成している。また、切欠部32jは、ガイド部材32hの周方向の位置決めをする機能を有し、切欠部32jにはガイド部材32hの突起部が挿入される。
ガイド部材32hは、例えば、案内部材32bの先端部に挿入可能な略円柱形状を有し、その挿入側の端部に動力伝達部材32aを開口部32iに案内する摺動面32mが斜めに形成されている。摺動面32mは、動力伝達部材32aの外形に沿って湾曲した溝形状を有していてもよい。
また、摺動面32mの下部には、留め具35aを挿通する切欠部32nが形成されている。また、摺動面32mの背面側には、ガイド部材32h及び案内部材32bをベースフレーム11(側面113)に固定するボルト(図示せず)を螺合させるボルト穴32o(図3参照)が形成されている。
拘束部32gは、動力伝達部材32aを通過させ、ピストン32dを案内部材32b内で停止させる部分である。拘束部32gは、例えば、案内部材32bの一部に形成された絞り部であり、案内部材32bの内側の突出した凸部を形成している。拘束部32gは、例えば、案内部材32bの外周の一部をプレスすることによって形成される。
ピストン32dは、例えば、図1及び図2(A)に示したように、略半球体形状を有する頭部32pと、頭部32pの後方(平面側)に形成された略円筒形状の胴部32qと、により構成される金属製の部品である。頭部32pは、拘束部32gの内径Drよりも大きな外径を有している。頭部32pは、前後方向に形成された貫通孔32rを備えている。貫通孔32rは、胴部32qにより形成された空間と連通するように形成されている。
胴部32qの外周には、シール部材32fが配置される。シール部材32fは、例えば、略円筒形状のエラストマー製の部品である。シール部材32fの外径は、例えば、案内部材32bの内径Dpよりも僅かに大きく形成されており、案内部材32b内に圧入される。したがって、シール部材32fは、ガス発生器32cから供給された作動ガスの圧力によって案内部材32bの内面に接触した状態を保持しながら移動する。
弾性体32eは、例えば、略円柱形状に形成されたエラストマー製の部品である。弾性体32eは、無負荷状態において案内部材32bの内径Dpよりも小さい外径Deを有し、圧縮時に案内部材32bの内面に接触可能に構成されている。また、弾性体32eは、圧縮時に拘束部32gを通過可能な形状に変形可能な弾性力を備えている。
弾性体32eは、前端及び後端に凹部が形成されていてもよい。弾性体32eの後端に凹部を形成することにより、ピストン32dの頭部32pの形状に沿って密着させることができる。また、前端に同様の凹部を形成することにより、弾性体32eの前後を考慮することなく案内部材32b内に挿入することができる。
弾性体32eは、図2(A)に示したように、ガス発生器32cの作動前の状態では、動力伝達部材32aとピストン32dとの間に無負荷状態で挿入されている。その後、ガス発生器32cが作動して案内部材32b内に作動ガスが供給されると、図2(B)に示したように、ピストン32dが弾性体32eの後端に接触しながら前方に移動し、弾性体32eの前端は動力伝達部材32aの後端に接触する。また、シール部材32fは、作動ガスの圧力によってピストン32dの頭部32pに押し付けられて変形し、案内部材32bとピストン32dとの隙間を封止する。
また、弾性体32eは、動力伝達部材32aとピストン32dとの間に挟まれて圧縮され、案内部材32bの内面に接触するように変形した状態で、ピストン32dとともに動力伝達部材32aを前方に移動させる。このとき、ピストン32dの貫通孔32rは、弾性体32eによって封止される。
その後、図2(C)に示したように、弾性体32eが拘束部32gに到達すると、弾性体32eはさらに圧縮され、図2(D)に示したように、拘束部32gを通過可能な形状に変形しつつ動力伝達部材32aを前方に移動させる。
そして、図2(E)に示したように、ピストン32dが拘束部32gに到達すると、ピストン32dは拘束部32gに衝突して停止し、弾性体32eは拘束部32gを通過する。このとき、弾性体32eはピストン32dによる負荷から開放されることから、ほぼ元の形状に復元することとなる。
図示したように、弾性体32eがピストン32dから解放されると、ピストン32dの貫通孔32rは弾性体32eによって封止されない状態に移行し、作動ガスが貫通孔32rを通過してピストン32dよりも前方の空間に流入する。また、弾性体32eは案内部材32bの内面との間に隙間を有する状態に復元していることから、弾性体32eと案内部材32bとの隙間から作動ガスを外部に放出することができる。
なお、案内部材32bから放出される作動ガスの流量は、貫通孔32rの大きさ及び弾性体32eの外径の大きさによって制御されており、作動ガスの放出によって騒音や硝煙が発生しないように制限されている。
したがって、本実施形態によれば、ピストン32dが拘束部32gに衝突するまでの間は弾性体32eにより貫通孔32rを封止することができる。また、弾性体32eが拘束部32gを通過した後は貫通孔32rから作動ガスを放出することができ、ピストン32dの運動エネルギーを低減することができる。したがって、作動ガスの放出を最小限に抑制しつつプリテンショナ3の設計に対する制約条件を緩和することができる。
ここで、プリテンショナ3の作動について、図3(A)~図3(C)を参照しつつ説明する。図3は、図1に示したプリテンショナの作動を示す断面図であり、(A)は作動前の状態、(B)は弾性体が拘束部に到達した状態、(C)は弾性体が拘束部を通過した後の状態、を示している。
図3(A)に示したように、プリテンショナ3の作動前の状態において、動力伝達部材32aは案内部材32b内に収容されている。このとき、動力伝達部材32aの先端部は、ガイド部材32hに臨む位置まで挿入されている。
車両衝突時等の緊急時にはプリテンショナ3が作動し、ガス発生器32cから案内部材32b内に作動ガスが供給され、ピストン32d及び弾性体32eを介して動力伝達部材32aが押し出され、案内部材32bに沿って移動する。このとき、動力伝達部材32aの先端部は、ガイド部材32hの摺動面32mに衝突し、開口部32iに向かって偏向され、摺動面32mに沿って移動し、リングギア31の外周に形成された係合歯に向かって放出される。
樹脂製のロッド(動力伝達部材32a)を使用したプリテンショナ3では、動力伝達部材32aに負荷される圧力は、一般に、リングギア31との噛合開始時に最も高くなる傾向にある。したがって、この部分に強度の高い部品であるガイド部材32hを配置することによって、噛合開始時に生じる負荷を効果的に受け止めることができる。
案内部材32bから放出された動力伝達部材32aは、リングギア31の係合歯に衝突し、リングギア31を回転させる。その後、動力伝達部材32aは、リングギア31の係合歯によって塑性変形しながらプリテンショナカバー33によって形成された通路に沿って移動する。
図3(B)に示したように、動力伝達部材32aの移動がピン34により規制された状態で、弾性体32eが拘束部32gに到達すると、動力伝達部材32aが圧縮され、図3(C)に示したように、弾性体32eは拘束部32gを通過し、ピストン32dは拘束部32gに衝突して停止する。拘束部32gを通過した弾性体32eは、動力伝達部材32aと案内部材32bによって形成された空間にほぼ元の形状に復元した状態で排出される。
したがって、ピストン32dの拘束時に作動ガスを案内部材32b内に封じ込めることなく、ピストン32dの貫通孔32rから作動ガスを外部に放出するようにしたことから、ピストン32dの運動エネルギーを低減することができる。
なお、図示しないが、動力伝達部材32aは、ウェビングの弛みを巻き取り終えることによって停止することから、ウェビングの弛み量が少ない場合には、ピストン32dが拘束部32gに到達する前に動力伝達部材32aの移動が停止する場合もあり得る。
次に、プリテンショナ3の変形例について、図4(A)~図5(B)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、図1に示したプリテンショナの変形例を示す断面図であり、(A)はピストンの第一変形例、(B)はピストンの第二変形例、(C)は弾性体の第一変形例、(D)は弾性体の第二変形例、を示している。
図4(A)に示したピストン32dの第一変形例は、頭部32pの先端を窪ませたものである。頭部32pの先端形状は、弾性体32eの形状に合わせて形成するようにしてもよい。例えば、弾性体32eの後端が平面の場合には頭部32pの先端を平面に形成してもよいし、弾性体32eの後端が球面の場合には頭部32pの先端を球面形状に窪ませるようにしてもよい。
図4(B)に示したピストン32dの第二変形例は、頭部32pの内部に空洞32sを形成したものである。空洞32sは、図示したように、貫通孔32rと連通していてもよい。また、図示しないが、空洞32sは、貫通孔32rの外周を囲うように形成されていてもよい。このように、空洞32sを形成することにより、ピストン32dの軽量化を図ることができ、運動エネルギーを低減させることができる。
図4(C)に示した弾性体32eの第一変形例は、弾性体32eを球形状に形成したものである。なお、弾性体32eは完全な球形状である必要はなく、楕円形状であってもよいし、円柱形状の両端に半球体を配置した形状であってもよい。また、図示しないが、弾性体32eの内部に空洞が形成されていてもよい。
図4(D)に示した弾性体32eの第二変形例は、樹脂製の軸部材32tの外周に環状の弾性体32eを配置したものである。軸部材32tは、拘束部32gの内径Drよりも小さい外径を有している。このように、弾性体32eは、全体が弾性力を有するエラストマー素材によって形成されていなくても、一部をエラストマー素材によって形成することにより、ピストン32dの貫通孔32rを封止可能かつ拘束部32gを通過可能に構成するようにしてもよい。
ここで、図5は、図1に示したプリテンショナの他の変形例を示す断面図であり、(A)は作動前の状態、(B)は弾性体が拘束部を通過した後の状態、を示している。なお、上述した実施形態と同一の構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
図5(A)及び図5(B)に示した変形例は、案内部材32bの拘束部32gよりも先端側に作動ガスを放出する排気口32uを形成したものである。排気口32uは、例えば、拘束部32gを超えた位置から案内部材32bの先端まで細長く切り欠いたスリット形状であってもよい。なお、図示しないが、排気口32uは、拘束部32gを超えた位置に形成された長孔形状又は矩形形状に形成された開口であってもよい。また、排気口32uは、拘束部32gを超えた位置から先端に向かって形成された複数の円形状の開口であってもよい。
かかる変形例では、弾性体32eと案内部材32bとの隙間から作動ガスを放出する必要がないことから、弾性体32eの外径Deは、案内部材32bの内径Dp以上の大きさに形成されていてもよい。このとき、弾性体32eは案内部材32b内に圧入される。なお、弾性体32eは、拘束部32gを通過できる程度の弾性力を有している。
次に、上述したプリテンショナ3の他の実施形態について、図6(A)~図7(C)を参照しつつ説明する。ここで、図6は、図1に示したプリテンショナの他の実施形態を示す断面図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態、を示している。図7は、図1に示したプリテンショナの他の実施形態を示す断面図であり、(A)は第五実施形態、(B)は第六実施形態、(C)は第七実施形態、を示している。なお、上述した実施形態と同一の構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
図6(A)に示した第二実施形態に係るプリテンショナ3は、動力伝達部材32aの後端321(弾性体32e側の端部)を球面形状に形成したものである。プリテンショナ3の作動時には、作動ガスにより弾性体32eは動力伝達部材32aの後端321に押し付けられる。したがって、動力伝達部材32aが後端321に角部を有する場合、弾性体32eに応力集中が生じる可能性がある。動力伝達部材32aの後端321を滑らかな形状にすることにより、かかる応力集中を低減することができる。なお、本実施形態において、「球面形状」とは、真球の球面形状である必要はなく、角部のない滑らかな形状を意味している。
また、プリテンショナ3の組立時に、ガス発生器32cとピストン32dとの間に隙間が生じる場合には、その隙間を埋めるスペーサ322を配置するようにしてもよい。スペーサ322を配置することにより、通常時におけるピストン32dの移動によって発生する異音を低減することができる。スペーサ322は、例えば、金属製のコイルスプリングにより構成される。
図6(B)に示した第三実施形態に係るプリテンショナ3は、図4(D)に示した弾性体32eを改良し、図6(A)に示したプリテンショナ3の弾性体32eに使用したものである。図6(B)に示した弾性体32eは軸部材32tを備え、軸部材32tは、前端(動力伝達部材32a側の端部)及び後端(ピストン32d側の端部に環状の拡径部を有している。後端側の拡径部は、前端側の拡径部よりも小径に形成されている。かかる構成により、弾性体32eを挿入しやすくすることができる。また、前端の拡径部には、動力伝達部材32aの後端321と面接触可能な凹部が形成されていてもよい。
図6(C)に示した第四実施形態に係るプリテンショナ3は、弾性体32eを案内部材32bの軸方向に複数配置したものである。ここでは、同一素材かつ同一形状の弾性体32eを二つ用意し、前後に並べて案内部材32b内に挿入している。かかる構成により、先行する弾性体32eを後行する弾性体32eの保護部材として使用することができる。なお、複数の弾性体32eは、互いに異なる素材であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。また、弾性体32eは三つ以上であってもよい。
図7(A)に示した第五実施形態に係るプリテンショナ3は、弾性体32eと動力伝達部材32aとの間に配置され、弾性体32eを保護する樹脂製の保護部材323を備えたものである。保護部材323は、例えば、動力伝達部材32aと同じ素材により構成される。保護部材323は、例えば、断面略T字形状を有し、動力伝達部材32aの後端321と面接触可能な凹部323aと、弾性体32eに係止可能な突起323bと、を備えている。なお、動力伝達部材32aの後端321が平面形状である場合には、凹部323aを省略してもよい。
また、弾性体32eは、突起323bを挿入可能な留め穴324を備えている。留め穴324の入口を狭く形成し、突起323bの先端を太く形成することにより、保護部材323を弾性体32eに連結させることができる。このように、弾性体32eと保護部材323とを一体化することにより、プリテンショナ3の組立時に取り扱いやすくすることができる。なお、保護部材323は、必ずしも弾性体32eに連結しなければならない部品ではなく、必要に応じて、突起323b及び留め穴324の形状を変更したり、突起323b及び留め穴324を省略したりしてもよい。
また、保護部材323の径は、案内部材32bの内径Dpよりも僅かに小さく形成されている。保護部材323の径は、拘束部32gの内径Drよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。保護部材323の径を拘束部32gの内径Drよりも大きくすることにより、保護部材323と案内部材32bとの間に形成される隙間を小さくすることができ、弾性体32eの進入を抑制することができる。なお、保護部材323は樹脂製であることから、拘束部32gの内径Drよりも大きい径を有していても、作動ガスの圧力により拘束部32gを通過することができる。
図7(B)に示した第六実施形態に係るプリテンショナ3は、図7(A)に示した弾性体32eの後端に凹部325を形成したものである。また、図7(C)に示した第七実施形態に係るプリテンショナ3は、図7(A)に示した弾性体32eの後端に環状の溝部326を形成したものである。このように、弾性体32eの後端に凹部325又は溝部326を形成することにより、プリテンショナ3の作動ガスにより弾性体32eの後端の外周を膨張させることができ、弾性体32eのシール性能を向上させることができる。
次に、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置について、図8を参照しつつ説明する。ここで、図8は、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。なお、図8において、説明の便宜上、シートベルト装置以外の構成部品については、一点鎖線で図示している。
図8に示した本実施形態に係るシートベルト装置100は、乗員を拘束するウェビングWと、ウェビングWの巻き取りを行うリトラクタ1と、車体側に設けられウェビングWを案内するガイドアンカー101と、ウェビングWを車体側に固定するベルトアンカー102と、シートSの側面に配置されたバックル103と、ウェビングWに配置されたトング104と、を備え、リトラクタ1は、例えば、図1に示した構成を有している。
以下、リトラクタ1以外の構成部品について、簡単に説明する。シートSは、例えば、乗員が着座する腰掛部S1と、乗員の背面に位置する背もたれ部S2と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト部S3とを備えている。リトラクタ1は、例えば、車体のBピラーRに内蔵される。また、一般に、バックル103は腰掛部S1の側面に配置されることが多く、ベルトアンカー102は腰掛部S1の下面に配置されることが多い。また、ガイドアンカー101は、BピラーRに配置されることが多い。そして、ウェビングWは、一端がベルトアンカー102に接続され、他端がガイドアンカー101を介してリトラクタ1に接続されている。
したがって、トング104をバックル103に嵌着させる場合、ウェビングWはガイドアンカー101の挿通孔を摺動しながらリトラクタ1から引き出されることとなる。また、乗員がシートベルトを装着した場合や降車時にシートベルトを解除した場合には、リトラクタ1のスプリングユニット4の作用により、ウェビングWは一定の負荷がかかるまで巻き取られる。
上述したシートベルト装置100は、前部座席における通常のシートベルト装置に、上述した実施形態に係るリトラクタ1を適用したものである。したがって、本実施形態に係るシートベルト装置100によれば、ピストン32dが拘束部32gに衝突するまでの間は弾性体32eにより貫通孔を封止することができ、弾性体32eが拘束部32gを通過した後は貫通孔32rから作動ガスを放出することができ、ピストンの運動エネルギーを低減することができる。
なお、本実施形態に係るシートベルト装置100は、前部座席への適用に限定されるものではなく、例えば、ガイドアンカー101を省略して後部座席にも容易に適用することができる。また、本実施形態に係るシートベルト装置100は、車両以外の乗物にも使用することができる。
また、上述した実施形態では、動力伝達部材32aが樹脂製のロッド形状を有する場合について説明しているが、動力伝達部材32aは金属製の球体(ボール)形状であってもよいし、ラック・アンド・ピニオン駆動方式のラックであってもよい。
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。