以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
以下、本発明の保温装置を適用した最も好適な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態は、車両用電池温調装置に本発明を適用したものである。
図1に示す車両用電池温調装置1は、車両に搭載された電池41、42を適切な温度に調整する電池温調装置である。車両用電池温調装置1は、車室内空間を適切な温度に調整する空調装置でもある。本実施形態では、車両用電池温調装置1は、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車に搭載されている。なお、車両用電池温調装置1は、エンジン(換言すれば内燃機関)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド自動車に搭載されていてもよい。
本実施形態の電気自動車は、車両停車時に外部電源(換言すれば商用電源)から供給された電力を、車両に搭載された電池41、42に充電可能となっている。電池41、42としては、例えばリチウムイオン電池を用いることができる。
電池に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用電池温調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給される。
車両用電池温調装置1は、冷凍サイクル装置10を有している。冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、空気冷却用蒸発器14、定圧弁15および冷却水冷却用蒸発器16を備える蒸気圧縮式冷凍機である。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
圧縮機11は、電池から供給される電力によって駆動される電動圧縮機であり、冷凍サイクル装置10の冷媒を吸入して圧縮して吐出する。
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させることによって高圧側冷媒を凝縮させる高圧側熱交換器である。
高温冷却水回路20の冷却水は、熱媒体としての流体である。高温冷却水回路20の冷却水は高温熱媒体である。本実施形態では、高温冷却水回路20の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。高温冷却水回路20は、高温の熱媒体が循環する高温熱媒体回路である。
膨張弁13は、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧部である。膨張弁13は、機械式の温度式膨張弁である。機械式膨張弁は、感温部を有し、ダイヤフラム等の機械的機構によって弁体を駆動する温度式膨張弁である。
空気冷却用蒸発器14は、膨張弁13から流出した冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を冷却する冷媒空気熱交換器である。空気冷却用蒸発器14では、冷媒が車室内へ送風される空気から吸熱する。
定圧弁15は、空気冷却用蒸発器14の出口側における冷媒の圧力を所定値に維持する圧力調整部(換言すれば圧力調整用減圧部)である。
定圧弁15は、機械式の可変絞り機構で構成されている。具体的には、定圧弁15は、空気冷却用蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を下回ると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を減少させ、空気冷却用蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を超えると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を増加させる。
サイクルを循環する循環冷媒流量の変動が少ない場合等には、定圧弁15に代えて、オリフィス、キャピラリチューブ等からなる固定絞りを採用してもよい。
冷却水冷却用蒸発器16は、冷媒の流れにおいて、空気冷却用蒸発器14および定圧弁15と並列に配置されている。
冷却水冷却用蒸発器16は、膨張弁13を流出した低圧冷媒と低温冷却水回路30の冷却水とを熱交換させることによって低圧冷媒を蒸発させる低圧側熱交換器である。冷却水冷却用蒸発器16で蒸発した気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
低温冷却水回路30の冷却水は、熱媒体としての流体である。低温冷却水回路30の冷却水は低温熱媒体である。本実施形態では、低温冷却水回路30の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。低温冷却水回路30は、低温の熱媒体が循環する低温熱媒体回路である。
高温冷却水回路20は、高温側循環流路20aを有している。高温側循環流路20aは、高温側冷却水が循環する冷却水流路である。
高温側循環流路20aには、高温側ポンプ21、ヒータコア22、凝縮器12および高温側ラジエータ24が配置されている。
高温側ポンプ21は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ21は電動式のポンプである。高温側ポンプ21は、高温冷却水回路20を循環する冷却水の流量を調整する高温側流量調整部である。
ヒータコア22は、高温冷却水回路20の冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱用熱交換器である。ヒータコア22では、冷却水が車室内へ送風される空気に放熱する。
空気冷却用蒸発器14およびヒータコア22は、図示しない空調ケーシングに収容されている。ヒータコア22は、空調ケーシング内の空気通路において、空気冷却用蒸発器14の空気流れ下流側に配置されている。空調ケーシングには内気および外気が切り替え導入されるようになっている。空調ケーシングに導入された内気および外気は、図示しない送風機によって空気冷却用蒸発器14およびヒータコア22に送風される。
空調ケーシング内の空気通路において空気冷却用蒸発器14とヒータコア22との間には、図示しないエアミックスドアが配置されている。エアミックスドアは、空気冷却用蒸発器14を通過した冷風のうちヒータコア22に流入する冷風と、ヒータコア22をバイパスして流れる冷風との風量割合を調整する。
エアミックスドアによって温度調整された空調風は、空調ケーシングに形成された図示しない吹出口から車室内へ吹き出される。
高温側ラジエータ24は、高温冷却水回路20の冷却水と外気とを熱交換させる高温熱媒体外気熱交換器である。
低温冷却水回路30は、低温側循環流路30aを有している。低温側循環流路30aは、低温側冷却水が循環する流路である。
低温側循環流路30aには、低温側ポンプ31、冷却水冷却用蒸発器16、低温側電気ヒータ32、インバータ33、モータジェネレータ34および低温側ラジエータ35が配置されている。
低温側ポンプ31は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ31は電動式のポンプである。
低温側電気ヒータ32は、電力が供給されることによって発熱し、低温冷却水回路30の冷却水を加熱する補助加熱器である。
インバータ33は、第1電池41および第2電池42から供給された直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ34に出力する。第1電池41および第2電池42はそれぞれ、複数個の電池セルで構成されている組電池である。
モータジェネレータ34は、インバータ33から出力された電力を利用して走行用駆動力を発生するとともに、減速中や降坂中に回生電力を発生させる。インバータ33およびモータジェネレータ34は、低温冷却水回路30の冷却水によって、充分な性能を発揮できる適正な温度帯の範囲内に温度調整される。
低温側ラジエータ35は、低温冷却水回路30の冷却水と外気とを熱交換させる低温熱媒体外気熱交換器である。低温側ラジエータ35は、低温冷却水回路30の冷却水が熱交換する熱交換部である。
高温側ラジエータ24および低温側ラジエータ35には、図示しない室外送風機によって外気が送風される。
第1電池41は、低温側循環流路30aに配置されている。低温側循環流路30aを流れる冷却水によって第1電池41の温度が調整される。低温側循環流路30aは、第1電池41を冷却水によって温度調整する温度調整部である。低温側循環流路30aは、第1電池41を冷却水によって冷却する冷却部である。第2電池42は、低温側循環流路30aに配置されていない。
第1電池41は、複数の電池モジュール50を備えている。各電池モジュール50は、直方体状の電池セル(図示せず)を複数積層した積層体で構成されている。電池モジュール50は、充放電に伴い熱を発生させる熱源体である。
電池モジュール50の各電池セルは、充放電可能な二次電池(本実施形態ではリチウムイオン電池)である。この種の電池は、低温になると化学反応が進みにくく充放電に関して充分な性能を発揮することができない。一方、この種の電池は、高温になると劣化が進行しやすい。したがって、各電池セルの温度は、充分な性能を発揮できる適正な温度帯(例えば、10℃以上かつ40℃以下)の範囲内に温度調整されている必要がある。
電池モジュール50は、ケース61に収容されて電池パック60を構成している。本実施形態では、1つのケース61内に1つの電池モジュール50が収容されている。以下、本実施形態における電池パック60を図2に基づいて説明する。
なお、以下の各図における上下、左右、前後を示す矢印は、実施形態における各構成の位置関係の理解を容易にするために、三次元空間の直交座標系(例えば、X軸、Y軸、Z軸)に対応する基準として例示したものである。したがって、本発明に係る電池パック60および電池モジュール50の姿勢等は、各図に示す状態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
図2に示すように、ケース61は、電池モジュール50との間に空間が形成されるように電池モジュール50を固定し収容する収容部である。ケース61の具体的材質としては、樹脂、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅等が用いられる。また、輻射を考慮すると、ケース61の材質としては、アルミニウムメッキを施した樹脂が最も好適である。
ケース61は、本体部611および蓋部材612を組み合わせることにより構成されている。本体部611は、上方側に開口部を有する箱状に形成されている。蓋部材612は、本体部611の開口部を閉塞するように形成されている。
電池モジュール50の外側には、冷却器62および電気ヒータ66が設けられている。本実施形態では、冷却器62および電気ヒータ66は、電池モジュール50の下方側に設けられている。
図2および後述する以下の図12、14、17、20~22では、図示の都合上、冷却器62は電気ヒータ66の下方側に位置するように図示されている。しかしながら、冷却器62および電気ヒータ66は、双方ともに、電池モジュール50の下面と熱的に接触するように配置されている。
冷却器62は、低温側循環流路30aを循環する冷却水が流れるように構成されている。冷却器62は、冷却水により電池モジュール50(すなわち第1電池41)を冷却する冷却部である。
電気ヒータ66は、電力が供給されることによって発熱して、電池モジュール50(すなわち第1電池41)を加熱する加熱部である。電気ヒータ66に供給される電力量が制御されることによって、電気ヒータ66の発熱量を制御可能である。
電池モジュール50、冷却器62および電気ヒータ66の左右面には、それぞれ、電池モジュール50、冷却器62および電気ヒータ66を保持する平板状のエンドプレート63が設けられている。
電池モジュール50の外側には、蓄熱材64が設けられている。より詳細には、電池モジュール50の上面および前後面、冷却器62および電気ヒータ66の下面、およびエンドプレート63の外面(すなわち、電池モジュール50、冷却器62および電気ヒータ66と反対側の面)には、蓄熱材64が設けられている。
電池モジュール50の各面(すなわち、上下面、左右面および前後面)は、蓄熱材64に覆われている。換言すると、電池モジュール50の全面は、蓄熱材64に覆われている。
蓄熱材64は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材である。本実施形態では、蓄熱材64として、マイクロカプセル潜熱蓄熱材を含有した樹脂蓄熱材を用いている。なお、マイクロカプセル潜熱蓄熱材は、潜熱蓄熱材がマイクロカプセル内に封入された蓄熱材である。
潜熱蓄熱材としては、潜熱の出入り温度が0℃以下の潜熱蓄熱材を採用することができる。具体的には、潜熱蓄熱材として、例えば、パラフィン系炭化水素、水和物系、金属系、水系の潜熱蓄熱材を採用することができる。
ところで、電池モジュール50の各面とケース61との間には、空間が形成されている。具体的には、電池モジュール50の全面を覆っている蓄熱材64の表面とケース61の内壁面との間には、空間が形成されている。この空間には、気体としての空気が存在している。なお、この空間の一部に、断熱材が設けられてもよい。
電池モジュール50の各面とケース61との間の最大距離は、電池モジュール50の表面における空気の対流が抑制される所定の距離以下となるように設定されている。換言すると、電池モジュール50の各面と、ケース61における当該各面に対向する内壁面との間の最大距離は、それぞれ、電池モジュール50の表面における空気の対流が抑制される所定の距離以下となるように設定されている。
以下、電池モジュール50の表面における空気の対流が抑制される所定の距離を、対流抑制距離という。
本実施形態では、電池モジュール50の全面が蓄熱材64に覆われているので、電池モジュール50の各面を覆っている各蓄熱材64の表面と、ケース61のうち当該蓄熱材64の表面に対向する内壁面との間の最大距離Dmが、対流抑制距離以下となるように設定されている。
ここで、空気層における厚さと熱抵抗との関係を図3に示す。図3に示すように、密閉されていない一般室内では、空気層の厚さが2cm以上の場合、空気層の熱抵抗はほぼ一定となる。このため、上述の対流抑制距離として、例えば1.5cmを採用することができる。
したがって、電池モジュール50の各面と、ケース61における当該各面に対向する内壁面との間の最大距離は、それぞれ、1.5cm以下に設定されている。本実施形態では、電池モジュール50の各面を覆っている各蓄熱材64の表面と、ケース61における当該各蓄熱材64の表面に対向する内壁面との間の最大距離Dmが、それぞれ、1.5cm以下に設定されている。
以下、電池モジュール50の上面を覆う蓄熱材64の表面と、ケース61における当該蓄熱材64の表面と対向する内壁面との最大距離Dmを、上方最大距離Dmaという。冷却器62の下面を覆う蓄熱材64の表面と、ケース61における当該蓄熱材64の表面と対向する内壁面との最大距離Dmを、下方最大距離Dmbという。
また、エンドプレート63における、電池モジュール50との接合面と反対側の面を側面63aという。そして、エンドプレート63の側面63aから、ケース61における当該側面63aに対向する面との最大距離Dmを、側方最大距離Dmcという。
本実施形態では、上方最大距離Dma、下方最大距離Dmbおよび側方最大距離Dmcは、互いに同じ長さに設定されている。
図2に戻り、ケース61内には、蓄熱材64に覆われた電池モジュール50をケース61の下方側の内壁面から間隔を空けた状態で固定するための接続部65が設けられている。本実施形態の接続部65は、ケース61の下方側の内壁面から電池モジュール50側に向かって延びる棒状に形成されている。
ここで、蓄熱材64の厚み寸法をttsという。また、蓄熱材64と、当該蓄熱材64に対向するケース61との隙間寸法をtairという。このとき、蓄熱材64は、tts<1/3tairの関係を満たすように構成されている。
図4に示すように、第1電池41からインバータ33およびモータジェネレータ34への電力の供給は、第1スイッチ47aによって断続されるようになっている。第2電池42からインバータ33およびモータジェネレータ34への電力の供給は、第2スイッチ48aによって断続されるようになっている。第1スイッチ47aおよび第2スイッチ48aの切り替えにより、第1電池41および第2電池42を任意に放電させることができる。
第2電池42の各電池セルの電池容量は、第1電池41の各電池セルの電池容量よりも小さくなっている。第2電池42の各電池セルの個数は、第1電池41の各電池セルの個数と同じになっている。したがって、第2電池42の電池容量は、第1電池41の電池容量よりも小さくなっている。
第1電池41、第2電池42、インバータ33およびモータジェネレータ34を有する電気回路70には、DCインレット71、充電器72およびDCDCコンバータ73等が設けられている。
DCインレット71は、DC充電スタンド74で第1電池41、第2電池42を充電する際に、DC充電スタンド74のプラグに接続される。充電器72のプラグは、家庭用電力で第1電池41、第2電池42を充電する際に、家庭用コンセント75に接続される。DCDCコンバータ73は、第1電池41および第2電池42から供給される電力の電圧を12Vに変換して、車両に搭載された補機76に供給する。
図5に示す制御装置80は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置80は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。制御装置80の出力側には各種制御対象機器が接続されている。制御装置80は、各種制御対象機器の作動を制御する制御部である。
制御装置80によって制御される制御対象機器は、圧縮機11、膨張弁13、高温側ポンプ21、低温側ポンプ31、第1スイッチ47a、第2スイッチ48aおよび電気ヒータ66等である。
制御装置80の入力側には、第1電池41における電池モジュール50の温度を検出する第1電池温度センサ81、および第2電池42の温度を検出する第2電池温度センサ62が接続されている。本実施形態の第1電池温度センサ81が、本発明の熱源体温度検出部に相当している。
制御装置80は、車両の停車時に、図6のフローチャートに示す保温制御処理を行う。まずステップS100では、第1電池41における電池モジュール50の温度(以下、電池温度Teという)を検出する。続くステップS110では、電池温度Teが予め定めた基準温度T1以下になったか否かを判定する。
基準温度T1は、電池モジュール50が設置された環境の温度より高く設定されている。本実施形態では、基準温度T1は、蓄熱材64の融点付近の温度に設定されている。具体的には、基準温度T1を、例えば蓄熱材64の融点±10%の範囲内に設定することができる。
ステップS110にて電池温度Teが基準温度T1以下になったと判定した場合、ステップS120へ進み、電気ヒータ66を作動させる。これにより、第1電池41の電池モジュール50が電気ヒータ66により加熱され、電池温度Teが上昇する。
一方、ステップS110にて電池温度Teが基準温度T1以下になっていないと判定した場合、ステップS130へ進み、電気ヒータ66の作動を停止させる。
図7は、車両停止後の経過時間と電池平均温度との関係を示すグラフである。比較例では、電池に蓄熱材が設けられておらず、電池モジュール50の各面とケース61との間に空間が形成されていない。本実施形態では、比較例と比較して、経過時間に対する温度低下量を小さく抑えることができる。
図8は、本実施形態と比較例とで、電池の暖機に必要な熱量を比較したグラフである。本実施形態では、比較例と比較して、電池の暖機に必要な熱量を小さく抑えることができる。
図9は、リチウムイオン電池における電池温度と電池出力および内部抵抗との関係を示すグラフである。リチウムイオン電池の特性として、低温域では小容量電池にて高出力が得られ、中間温度域では大容量電池にて高出力が得られる。高温域では電池の寿命が低下してしまう。
本実施形態では、このようなリチウムイオン電池の特性に鑑みて、環境温度、電池温度および電池残量に応じた電池作動を行うので、小容量電池を無駄なく年中使用可能となる。
以上説明したように、本実施形態では、電池モジュール50の各面とケース61との間に空間を形成するとともに、当該空間に気体として空気を存在させている。
さらに、電池モジュール50の各面とケース61との間の最大距離Dmを、対流抑制距離以下となるように設定している。具体的には、電池モジュール50の各面を覆っている蓄熱材64の表面と、ケース61における当該蓄熱材64の表面と対向する内壁面との間の最大距離Dmを、対流抑制距離(例えば1.5cm)以下となるように設定している。
これにより、電池モジュール50の各面とケース61との間に形成された空間によって、電池モジュール50の表面における空気の対流を抑制し、電池モジュール50から空間を介してケース61に放出される熱量を低減することができる。このため、熱源体である電池モジュール50の断熱性を高めることができるので、電池モジュール50の保温性を向上させることが可能となる。
したがって、本実施形態における電池モジュール50の各面とケース61との間に形成された空間が、対流抑制部および放熱量低減部を構成している。そして、当該空間を形成する空間形成部であるケース61は、対流抑制部および放熱量低減部を形成する部材である。
上述したように、本実施形態では、制御装置80が実行する保温制御処理において、電池温度Teが基準温度T1以下になった場合に、電気ヒータ66を作動させる。これにより、電池モジュール50の温度が低下しすぎる前に電気ヒータ66により電池モジュール50を加熱することができる。
このため、電池モジュール50を使用可能温度まで加熱する際の時間の短縮化および省エネルギ化を図ることが可能となる。したがって、冬季等の低外気温時において、車両の始動までの時間の短縮化および省エネルギ化を図ることができる。
また、本実施形態では、基準温度T1を、電池モジュール50が設置された環境の温度(以下、環境温度T2という)より高く設定している。このため、電池モジュール50の温度が環境温度T2まで下がりきる前に、電池モジュール50を加熱することができる。
ここで、環境温度T2とは、電池モジュール50の配置された周囲の温度である。本実施形態では、電池モジュール50は車両に搭載されているため、環境温度T2は車両停車時の外気温に相当している。
図10は、車両停車時の経過時間と電池温度との関係を示すグラフである。図中の破線は、本実施形態と同様の構成の電池パック60を有している車両用電池温調装置において、本実施形態の保温制御を行わない比較例を示している。
比較例では、電池温度Teが蓄熱材64の融点で維持された後、時間経過によって環境温度T2まで低下してしまう。このため、車両を再始動する際には、電気ヒータ64で電池モジュール50を加熱する必要がある。したがって、車両を始動するために長時間要するとともに、多くのエネルギが必要となる。
これに対し、本実施形態では、電池温度Teが基準温度T1以下になった場合に電気ヒータ66を作動させるとともに、当該基準温度T1を蓄熱材64の融点付近の温度に設定している。このため、電池温度Teが蓄熱材64の融点付近の温度より低下した場合に、電気ヒータ64にて電池モジュール50を加熱するので、電池温度Teを融点付近の温度に長く維持することができる。これにより、蓄熱材64による長期間保温を実現することができ、保温性を向上させることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図11に基づいて説明する。本第2実施形態では、上記第1実施形態に対して、制御装置80が実行する保温制御処理を変更した例について説明する。図11は、第1実施形態で説明した図6に対応するフローチャートであり、第1実施形態と同一もしくは均等の制御処理が実行される制御ステップには、同一の符号を付している。
本実施形態の制御処理では、図11に示すように、ステップS110にて第1電池41の温度が基準温度T1以下であると判定された場合に、ステップS115にて、車両の停車時間が予め定めた基準時間Tm以下か否かを判定する。ここで、基準時間Tmとしては、例えば12時間としてもよい。
ステップS115にて、車両の停車時間が基準時間Tm以下と判定された際には、ステップS120へ進み、電気ヒータ66を作動させる。一方、ステップS115にて、車両の停車時間が基準時間Tm以下でないと判定された際には、ステップS130へ進み、電気ヒータ66の作動を停止させる。
本実施形態の車両用電池温調装置1では、電池温度Teが基準温度T1以下になり、かつ、車両の停車時間が基準時間Tm以下の場合に、電気ヒータ66を作動させる。したがって、車両の停車時間が短く、車両をすぐに再始動する可能性が高い場合にのみ、電池モジュール50の温度が低下しすぎる前に電池モジュール50を加熱することができる。このため、本実施形態の車両用電池温調装置1では、電池モジュール50の保温に関して、より省エネルギ化を図ることができる。
また、実施形態の車両用電池温調装置1では、車両の停車時間が基準時間Tm以下でない場合に、電気ヒータ66を停止させる。したがって、車両の停車時間が長く、車両をすぐに再始動する可能性が低い場合には、電池モジュール50の加熱を停止することができる。このため、本実施形態の車両用電池温調装置1では、電池モジュール50の保温に関して、より省エネルギ化を図ることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図12に基づいて説明する。本第3実施形態では、上記第1実施形態に対して、電池モジュール50周辺の構成を変更している。
図12に示すように、本実施形態では、蓄熱材64として、第1蓄熱材641および第2蓄熱材642が設けられている。
第1蓄熱材641は、第2蓄熱材642より内側(すなわち電池モジュール50側)に配置されている。換言すると、第2蓄熱材642は、第1蓄熱材641より外側(すなわち外気側)に配置されている。つまり、電池モジュール50の外側に第1蓄熱材641が設けられているとともに、第1蓄熱材641の外側に第2蓄熱材642が設けられている。
より詳細には、第1蓄熱材641は、電池モジュール50を外側から覆うように配置されている。そして、第2蓄熱材642は、第1蓄熱材641を外側から覆うように配置されている。
第1蓄熱材641および第2蓄熱材642は、それぞれ、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材である。具体的には、第1蓄熱材641および第2蓄熱材として、例えば、パラフィン系炭化水素を採用することができる。
第1蓄熱材641の融点は、第2蓄熱材642の融点より高い。具体的には、第1蓄熱材641の融点を、例えば、第2蓄熱材642の融点+5℃に設定することができる。
本実施形態の車両用電池温調装置1では、電池モジュール50側(すなわち内側)に高融点の第1蓄熱材641を配置するとともに、外気側(すなわち外側)に低融点の第2蓄熱材642を設けている。これによれば、外部への放熱量がより低減されるので、電池温度Teを第1蓄熱材641および第2蓄熱材642の融点付近に長く維持することができる。したがって、第1蓄熱材641および第2蓄熱材642による長期間保温を実現することができ、保温性を向上させることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図13に基づいて説明する。本第4実施形態では、上記第1実施形態に対して、電池モジュール50周辺の構成を変更している。具体的には、蓄熱材64および接続部65を廃止して、電池モジュール50をケース60の下面に配置している。
図13に示すように、エンドプレート63の下端部は、冷却器62の下端面より下方側に突出している。エンドプレート63の下端部は、ケース61の下方側の内壁面に接続されている。そして、冷却器62の下面とケース61との間には、空間が形成されている。
本実施形態において、電池モジュール50の上面と、ケース61における当該上面に対向する内壁面との最大距離を、上方最大距離Dmaという。冷却器62の下面と、ケース61における当該下面に対向する内壁面との最大距離を、下方最大距離Dmbという。エンドプレート63の側面63aから、ケース61における当該側面63aに対向する面との最大距離を、側方最大距離Dmcという。
上方最大距離Dma、下方最大距離Dmb、側方最大距離Dmcは、それぞれ、対流抑制距離以下となるように設定されている。さらに、本実施形態では、上方最大距離Dmaは側方最大距離Dmcより長く、かつ、下方最大距離Dmbは側方最大距離Dmcより短く設定されている。
その他の電池パック60の構成は、第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の電池パック60においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図14および図15に基づいて説明する。本第5実施形態では、上記第1実施形態に対して、電池モジュール50の構成を変更している。具体的には、電池モジュール50の外側を覆う蓄熱材64を廃止して、電池モジュール50の構成部材の一部である絶縁板53を蓄熱材で構成している。
図14および図15に示すように、電池モジュール50は、電池セル51、枠体52および絶縁板53等を備えている。
電池セル51は、充放電に伴い熱を発生させる熱源体である。電池セル51は、前後方向に複数積層されて積層体510を構成している。
枠体52は、金属により構成されている。枠体52は、電池セル51の積層体510における左右面および前後面を覆うような四角筒状に形成されている。枠体52の上面および下面には、開口部(図示せず)が形成されている。
より詳細には、枠体52は、2つの第1金属部材521、および2つの第2金属部材522を組み合わせて形成されている。
第1金属部材521は、長方形状の板状部材である。第1金属部材521は、電池セル51の積層体510における前面および後面を覆うように形成されている。
第2金属部材522は、上下方向に垂直な断面がコの字状(換言すると、バスタブ状)に形成されている。第2金属部材522は、電池セル51の積層体510を左側面および右側面から覆うように形成されている。
第1金属部材521および第2金属部材522は、ネジ等の締結部材で一体に結合されている。
絶縁板53は、電池セル51の積層体510とケース61との間に設けられた絶縁部材である。本実施形態では、絶縁板53は、マイクロカプセル蓄熱材を含有した樹脂蓄熱材で構成されている。このため、絶縁板53は、少なくとも一部に蓄熱材を有している。つまり、絶縁板53は、蓄熱機能を有している。
マイクロカプセル蓄熱材としては、上記第1実施形態と同様のマイクロカプセル潜熱蓄熱材を採用することができる。
より詳細には、絶縁板53は、長方形の板状に形成されている。絶縁板53は、電池セル51の積層体510における各面(すなわち、上下面、左右面および前後面)を覆うように1枚ずつ配置されている。
本実施形態では、絶縁板53として、2枚の第1絶縁板531、2枚の第2絶縁板532、および2枚の第3絶縁板533が設けられている。第1絶縁板531は、電池セル51の積層体510における前面および後面をそれぞれ覆うように配置されている。第2絶縁板532は、電池セル51の積層体510における左面および右面をそれぞれ覆うように配置されている。第3絶縁板533は、電池セル51の積層体510における上面および下面をそれぞれ覆うように配置されている。
第1絶縁板531および第2絶縁板532は、枠体52の内側に配置されている。すなわち、第1絶縁板531および第2絶縁板532は、電池セル51の積層体510と枠体52との間に配置されている。これにより、電池セル51と枠体52との間が絶縁されている。
第3絶縁板533は、枠体52の上面および下面に形成された開口部を塞ぐように配置されている。
上述したように、本実施形態では、電池モジュール50の構成部材の一部である絶縁板53を蓄熱材で構成している。これによれば、電池モジュール50の外側に蓄熱材を別途設ける必要がないため、部品点数の増加を招くことがない。したがって、製造コストを低減しつつ、電池モジュール50の保温性を向上させることができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図16に基づいて説明する。本第6実施形態では、上記第1実施形態に対して、電池モジュール50周辺の構成を変更している。具体的には、電池モジュール50の下方側の蓄熱材64および接続部65を廃止して、電池モジュール50をケース60の下面に配置している。
図16に示すように、エンドプレート63の下端部は、冷却器62の下端面より下方側に突出している。エンドプレート63の下端部は、ケース61の下方側の内壁面に接続されている。そして、冷却器62の下面とケース61との間には、空間が形成されている。
本実施形態において、冷却器62の下面と、ケース61における当該下面に対向する内壁面との最大距離を、下方最大距離Dmbという。そして、上方最大距離Dma、下方最大距離Dmb、側方最大距離Dmcは、それぞれ、対流抑制距離以下となるように設定されている。さらに、本実施形態では、上方最大距離Dmaおよび側方最大距離Dmcは互いに同じ長さ、かつ、下方最大距離Dmbは上方最大距離Dmaおよび側方最大距離Dmcより短く設定されている。
その他の電池パック60の構成は、第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の電池パック60においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図17に基づいて説明する。本第7実施形態では、上記第1実施形態に対して、ケース61内の構成を変更している。
図17に示すように、本実施形態では、ケース61内に、複数(本例では8個)の電池モジュール50が収容されている。複数の電池モジュール50の全てを覆うように、蓄熱材64が配置されている。また、蓄熱材64の各面と、ケース61における当該蓄熱材64の各面に対向する内壁面との最大距離Dmは、それぞれ、対流抑制距離以下となるように設定されている。
その他の電池パック60の構成は、第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の電池パック60においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上述のように、本実施形態では、1つのケース61において、複数の電池モジュール50の全てを覆うように蓄熱材64を配置している。このため、各電池モジュール50を1つずつ覆うように蓄熱材64を配置する場合と比較して、蓄熱材64の点数を削減することができる。したがって、部品点数の増加を抑制しつつ、複数の電池モジュール50の保温性を向上させることができる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について図18に基づいて説明する。本第8実施形態では、上記第7実施形態に対して、蓄熱材64の配置を変更している。
図18に示すように、本実施形態では、複数(本例では2つ)の電池モジュール50を一組として、当該一組の電池モジュール50をまとめて覆うように蓄熱材64が配置されている。このため、ケース61内には、蓄熱材64で覆われた一組の電池モジュール50が、複数組(本例では4組)配置されている。すなわち、ケース内61には、一組の電池モジュール50を覆うように構成された蓄熱材64が複数配置されている。
複数配置された蓄熱材64のうち、ケース61と対向する各面と、当該ケース61の内壁面との最大距離Dmは、それぞれ、対流抑制距離以下となるように設定されている。
その他の電池パック60の構成は、第7実施形態と同様である。したがって、本実施形態の電池パック60においても、第7実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について図19に基づいて説明する。本第9実施形態では、上記第4実施形態に対して、ケース61内の構成を変更している。具体的には、ケース61内に板状部材67を配置している。
図19に示すように、ケース61内の空間には、少なくとも電池モジュール50の表面と対向する板状部材67が設けられている。板状部材67は、電池モジュール50の表面を覆うように配置されている。板状部材67は、電池モジュール50と接触しないように、電池モジュール50との間に間隔を空けて配置されている。
板状部材67は、金属(本例ではアルミニウム)により構成されている。本実施形態では、板状部材67は、ケース61の一部と一体に形成されている。
具体的には、板状部材67は、電池モジュール50の上方の表面と対向する上面部671と、エンドプレート63の側面63aと対向する側面部672とを有している。
本実施形態において、電池モジュール50の上方の表面と板状部材67の上面部671との最大距離を、上方第1最大距離Dma1という。板状部材67の上面部671とケース61の蓋部612との最大距離を、上方第2最大距離Dma2という。
エンドプレート63の側面63aと板状部材67の側面部672との最大距離を、第1側方最大距離Dmc1という。板状部材67の側面部672と、当該側面部672に対向するケース61の内壁面との最大距離を第2側方最大距離Dmc2という。
第1上方最大距離Dma1、下方最大距離Dmb、第1側方最大距離Dmc1は、それぞれ、対流抑制距離以下となるように設定されている。さらに、本実施形態では、第1上方最大距離Dma1は第1側方最大距離Dmc1より長く、かつ、下方最大距離Dmbは第1側方最大距離Dmc1より短く設定されている。
第1上方最大距離Dma1および第2上方最大距離Dma2は、互いに同じ長さに設定されている。第1側方最大距離Dmc1および第2側方最大距離Dmc2は、互いに同じ長さに設定されている。
上述のように、本実施形態では、ケース61内の空間に、少なくとも電池モジュール50の表面と対向する板状部材67を設けている。これによれば、板状部材67によって、電池モジュール50の表面における空気の対流を抑制することができる。すなわち、板状部材67は、電池モジュール50の表面における空気の対流を抑制する対流抑制部である。
さらに、ケース61内の空間に板状部材67を設けることにより、電池モジュール50からの熱輻射を遮蔽することができる。すなわち、板状部材67により、電池モジュール50からの熱輻射を抑制することができる。つまり、板状部材67は、電池モジュール50からの熱輻射を抑制する熱輻射抑制部である。
このように、板状部材67により、電池モジュール50の表面における空気の対流を抑制しつつ、電池モジュール50からの熱輻射を抑制することで、電池モジュール50から空間を介してケース61に放出される熱量を確実に低減することができる。これにより、電池モジュール50の断熱性をより高めることができるので、電池モジュール50の保温性をより向上させることが可能となる。したがって、本実施形態の板状部材67は、本発明の放熱量低減部に相当している。
さらに、本実施形態では、ケース61内の空間に板状部材67を設けることにより、電池モジュール50とケース61との隙間を、板状部材67により分断している。これにより、電池モジュール50とケース61との隙間が大きい電池パック60においても、電池モジュール50の表面と、当該表面に対向する板状部材67との最大距離を対流抑制距離以下となるように設定することが可能となる。
なお、電池モジュール50の表面と、当該表面に対向する板状部材67との最大距離を、0mmとしてもよい。すなわち、電池モジュール50と板状部材67とが密着していてもよい。
一方、板状部材67と、ケース61のうち当該板状部材67に対向する内壁面との距離は、0mmより大きく、対流抑制距離(本例では1.5cm)以下に設定されている。すなわち、板状部材67とケース61とは密着していない。
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態について図20に基づいて説明する。本第10実施形態では、上記第9実施形態に対して、板状部材67の材質を変更している。
図20に示すように、本実施形態の板状部材67は、マイクロカプセル蓄熱材を含有した樹脂蓄熱材で構成されている。このため、板状部材67は、蓄熱機能を有している。マイクロカプセル蓄熱材としては、上記第1実施形態と同様のマイクロカプセル潜熱蓄熱材を採用することができる。
本実施形態では、電池モジュール50の各面と板状部材67との間の最大距離が、板状部材67とケース61との間の最大距離よりも短く設定されている。すなわち、第1上方最大距離Dma1は、第2上方最大距離Dma2より短く設定されている。また、第1側方最大距離Dmc1は、第2側方最大距離Dmc2より短く設定されている。
これによれば、蓄熱機能を有する板状部材67と電池モジュール50との距離が短くなるので、電池モジュール50で発生した熱が板状部材67に蓄熱しやすくなる。このため、電池パック60における蓄熱性を向上させて、電池モジュール50の保温性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、第1上方最大距離Dma1、下方最大距離Dmbおよび第1側方最大距離Dmc1は、互いに同じ長さに設定されている。また、第2上方最大距離Dma2は第2側方最大距離Dmcより長く、かつ、下方最大距離Dmbは第2側方最大距離Dmc2より短く設定されている。
その他の電池パック60の構成は、第9実施形態と同様である。したがって、本実施形態の電池パック60においても、第9実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第11実施形態)
次に、本発明の第11実施形態について図21に基づいて説明する。本第11実施形態では、上記第4実施形態に対して、ケース61内の構成を変更している。具体的には、ケース61内に封入部68を配置している。
図21に示すように、ケース61内には、希ガスであるアルゴンガスを含む気体が封入された封入部68が設けられている。封入部68に封入された気体中のアルゴンガスの濃度は、空気中のアルゴンガスの濃度よりも高い。本実施形態では、封入部68は、エンドプレート63の側面63aとケース61との間に配置されている。
上述のように、ケース61内に、希ガスであるアルゴンガスを含む気体が封入された封入部68を設けることで、電池モジュール50からケース61への熱伝導を抑制することができる。つまり、封入部68は、電池モジュール50からケース61への熱伝導を抑制する熱伝導抑制部である。
そして、封入部68を設けることにより、電池モジュール50から空間を介してケース61に放出される熱量を低減することができるので、電池モジュール50の断熱性を高めて、電池モジュール50の保温性を向上させることが可能となる。したがって、本実施形態の封入部68は、本発明の放熱量低減部に相当している。
ここで、本実施形態の封入部68に代えて真空断熱材を用いた断熱構造を比較例の断熱構造という。本実施形態では、比較例の断熱構造と比較して、製造コストを低減することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、例えば以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
(1)上記第5実施形態では、絶縁板53を、マイクロカプセル蓄熱材を含有した樹脂蓄熱材で構成した例について説明した。同様に、上記第10実施形態では、板状部材67を、マイクロカプセル蓄熱材を含有した樹脂蓄熱材で構成した例について説明した。
しかしながら、絶縁板53および板状部材67の材質は、樹脂蓄熱材に限定されない。例えば、絶縁板53および板状部材67を、ゴム蓄熱材(換言すると蓄熱性ゴム材料)で構成してもよい。
(2)上記第9実施形態では、板状部材67を金属により構成した例について説明したが、板状部材67の材質はこれに限定されない。例えば、板状部材67を、樹脂により構成してもよい。
(3)上記第11実施形態では、封入部68に封入される希ガスとして、アルゴンガスを採用した例について説明したが、当該希ガスはこれに限定されない。例えば、封入部68に封入される希ガスとして、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスを採用してもよい。なお、封入部68における電池モジュール50からケース61への熱伝導抑制性能は、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスの順に高くなる。
(4)上記実施形態では、電池モジュール50の下方側に、冷却器62を設けた例について説明したが、電池モジュール50の下方側の構成はこれに限定されない。例えば、冷却器50を廃止してもよい。
(5)上記実施形態では、本発明に係る保温装置を車両用電池温調装置1に適用した例について説明したが、保温装置の適用はこれに限定されない。
例えば、図22に示すように、本発明に係る保温装置を、温水W1を貯留する温水タンク501に適用してもよい。この場合、温水タンク501に貯留される温水W1が、本発明の熱源体に相当している。
また、図23に示すように、本発明に係る保温装置を、触媒502が担持された触媒装置503に適用してもよい。具体的には、触媒装置503は、内燃機関(図示せず)の排気が流通する排気配管504に配置されている。この場合、触媒502が、本発明の熱源体に相当している。
(6)上記第11実施形態では、封入部68を、エンドプレート63の側面63aとケース61との間に配置した例について説明したが、封入部68の配置はこれに限定されない。例えば、封入部68を、電池モジュール50の周囲に配置してもよい。
(7)上記第11実施形態では、熱伝導抑制部として、希ガスを含む気体が封入された封入部68を採用した例について説明したが、熱伝導抑制部はこれに限定されない。例えば、封入部68の一部または全部を、真空断熱材に変更してもよい。これにより、断熱性能(すなわち熱伝導抑制性能)を向上させることができる。
また、上記第11実施形態の封入部68と真空断熱材とを併用することで、製造コストを低減しつつ、断熱性能を向上させることができる。
例えば、電池モジュール50の左右方向側面および下面において、ケース61との間の隙間を十分に確保することができない場合、当該隙間に真空断熱材を設け、他の広い隙間に封入部68を設けてもよい。すなわち、電池モジュール50の左右方向側面とケース61との間、および電池モジュール50の下面とケース61との間に真空断熱材を設け、電池モジュール50の上面とケース61との間に封入部68を設けてもよい。これによれば、電池モジュール50とケース61との隙間の全てに真空断熱材を設けた場合と比較して、製造コストを低減することができる。
(8)上記実施形態では、熱源体として、電池モジュール50または電池セル51を採用した例について説明したが、熱源体はこれらに限定されない。例えば、熱源体として、電気エネルギによって発熱する機器であるモータや、内燃機関等を採用してもよい。