以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
本発明の支持体付き樹脂シートについて詳細に説明する前に、本発明の支持体付き樹脂シートにおいて、樹脂シート層に含まれる第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層を形成する際に使用する、第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物について説明する。
ここで、第1及び第2の樹脂組成物をまとめて「樹脂組成物」ということがあり、第1及び第2の樹脂組成物層をまとめて「樹脂組成物層」ということがある。
<第1の樹脂組成物>
第1の樹脂組成物層を形成する第1の樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂、及び(B)無機充填材を含有する。第1の樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、(C)エラストマー、(D)難燃剤、(E)硬化促進剤、(F)熱可塑性樹脂及び(G)その他の添加剤を含んでいてもよい。以下、第1の樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
-(A)熱硬化性樹脂-
第1の樹脂組成物は、(A)成分として、(A)熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂としては、第1の樹脂組成物の硬化物である第1の硬化物層を絶縁層等の絶縁部材として使用可能な熱硬化性樹脂を用いることができる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等が挙げられる。(A)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。以下、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂をまとめて「硬化剤」ということがある。第1の樹脂組成物としては、(A)成分として、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
(A)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
第1の樹脂組成物は、(A)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)成分としてのエポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。第1の樹脂組成物は、(A)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。(A)成分としては支持体付き樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られたり、樹脂組成物層の硬化物の破断強度を向上させたりできる観点から、固体状エポキシ樹脂のみを用いることが好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1.5~1:15、特に好ましくは1:2~1:10である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
(A)成分としてのエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq~5000g/eq、より好ましくは50g/eq~3000g/eq、さらに好ましくは80g/eq~2000g/eq、さらにより好ましくは110g/eq~1000g/eqである。この範囲となることで、第1の樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
(A)成分としてのエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
(A)成分としてのエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、第1又は第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216、V-05(カルボジイミド基当量:262)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
(A)成分としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.5~1:3がより好ましく、1:1~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、第1の樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、第1の樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、柔軟性に優れる第1の硬化物層を得ることができる。
(A)成分としての硬化剤の含有量は、柔軟性に優れる第1の硬化物層を得る観点から、第1の樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
-(B)無機充填材-
第1の樹脂組成物は、(B)成分として無機充填材を含有する。(B)無機充填材を樹脂組成物に含有させることで、第1の硬化物層の弾性率を調整することが可能となる。
(B)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(B)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)無機充填材の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
(B)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
(B)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(B)無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出する。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
(B)無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
(B)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及び樹脂シート層での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
(B)無機充填材の含有量は、弾性率が低い第1の硬化物層を得る観点から、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
-(C)エラストマー-
第1の樹脂組成物は、任意の成分として、更に(C)エラストマーを含有していてもよい。
(C)成分は、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有することが好ましく、ポリブタジエン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、またはポリカーボネート構造から選択される1種または2種以上の構造を有する樹脂であることがより好ましく、ポリブタジエン構造、及びポリアルキレンオキシ構造から選択される1以上の構造を有する樹脂であることがさらに好ましい。通常、第1の樹脂組成物が上記の構造を有するエラストマーを含むことで絶縁層が低弾性となり、MIT耐折性に優れる硬化物を得ることが可能となる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレート並びにそれらの組み合わせを包含する用語である。これらの構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
(C)成分は、樹脂組成物が硬化した際の反りを低下させるために高分子量であることが好ましい。数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは3000以上、5000以上である。上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下である。数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
(C)成分は、(A)成分としてのエポキシ樹脂と反応して第1の樹脂組成物を硬化させて剥離強度を高めるという観点から、(A)成分としてのエポキシ樹脂と反応し得る官能基を有することが好ましい。なお、(A)成分としてのエポキシ樹脂と反応し得る官能基としては、加熱によって現れる官能基も含めるものとする。
好適な一実施形態において、(A)成分としてのエポキシ樹脂と反応し得る官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。中でも、当該官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基がより好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。ただし、官能基としてエポキシ基を含む場合、数平均分子量(Mn)は、5,000以上であることが好ましい。
(C)成分の好適な実施形態は、ポリブタジエン構造を含有する樹脂であり、ポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂をポリブタジエン樹脂という。
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。一実施形態として、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)等が挙げられる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
(C)成分の好適な実施形態は、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂である。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂をポリ(メタ)アクリル樹脂という。
ポリ(メタ)アクリル樹脂としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
(C)成分の好適な実施形態は、ポリカーボネート構造を含有する樹脂である。ポリカーボネート構造を含有する樹脂をポリカーボネート樹脂という。
ポリカーボネート樹脂としては、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、(C)成分の他の具体例としては、シロキサン構造を含有する樹脂である。シロキサン構造を含有する樹脂をシロキサン樹脂という。シロキサン樹脂としては、例えば、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
(C)成分の他の具体例としては、アルキレン構造、アルキレンオキシ構造を含有する樹脂である。アルキレン構造を含有する樹脂をアルキレン樹脂といい、アルキレンオキシ構造を含有する樹脂をアルキレンオキシ樹脂という。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造がさらに好ましい。アルキレン樹脂、アルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
(C)成分の他の具体例としては、イソプレン構造を含有する樹脂である。イソプレン構造を含有する樹脂をイソプレン樹脂という。イソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
(C)成分の他の具体例としては、イソブチレン構造を含有する樹脂である。イソブチレン構造を含有する樹脂をイソブチレン樹脂という。イソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
(C)エラストマーの含有量は、柔軟性に優れる第1の硬化物層を得る観点から、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
-(D)難燃剤-
第1の樹脂組成物は、任意の成分として、更に(D)難燃剤を含んでいてもよい。(E)難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられ、ホスファゼン化合物が好ましい。(D)難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
ホスファゼン化合物は、窒素とリンを構成元素とする環状化合物であり、ホスファゼン化合物は、(A)成分としてのエポキシ樹脂と反応して第1の樹脂組成物を硬化させて剥離強度を高めるという観点から、フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物であることが好ましい。ホスファゼン化合物の具体例としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」「SPE-100」、伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-400」等が挙げられる。
ホスファゼン化合物以外の難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA-HQ」、大八化学工業社製の「PX-200」等が挙げられる。難燃剤としては加水分解しにくいものが好ましく、例えば、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド等が好ましい。
(D)難燃剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
-(E)硬化促進剤-
第1の樹脂組成物は、任意の成分として、更に、(E)硬化促進剤を含んでいてもよい。
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
(E)硬化促進剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
<(F)熱可塑性樹脂>
第1の樹脂組成物は、任意の成分として、更に(F)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
(F)成分としての熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、並びに、表面粗さが小さく導体層との密着性に特に優れる絶縁層を得る観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
(F)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
(F)熱可塑性樹脂の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
-(G)その他の添加剤-
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;着色剤等の樹脂添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
<第2の樹脂組成物>
第2の樹脂組成物層を形成する第2の樹脂組成物は、第1の樹脂組成物と組成が異なる。第2の樹脂組成物は、第1の樹脂組成物とは独立して、熱硬化性樹脂、及び無機充填材を含有する。第2の樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、難燃剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂及びその他の添加剤を含んでいてもよい。
第2の樹脂組成物に含まれる、熱硬化性樹脂、無機充填材、難燃剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、及びその他の添加剤としては、<第1の樹脂組成物>欄において説明した(A)熱硬化性樹脂、(B)無機充填材、(D)難燃剤、(E)硬化促進剤、(F)熱可塑性樹脂、及び(G)その他の添加剤と同様のものが挙げられる。但し、第2の樹脂組成物に含まれる(A)~(B)及び(D)~(G)成分は、第1の樹脂組成物に含まれるものと同じでもよく、異なっていてもよい。
第2の樹脂組成物は、本発明の所望の効果を顕著の得る観点から、(A)成分として、エポキシ樹脂及び硬化剤を含むことが好ましい。(A)成分としての硬化剤としては、活性エステル系樹脂、フェノール系樹脂、及びナフトール系樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
第2の樹脂組成物中の(A)成分としてのエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
第2の樹脂組成物中の(A)成分としての硬化剤の含有量は、ハローイング現象を抑制する観点から、第2の樹脂組成物中の不揮発成分100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
第2の樹脂組成物中の、エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[(B)硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.5~1:3がより好ましく、1:1~1:2がさらに好ましい。
第2の樹脂組成物中の(B)無機充填材の含有量は、ハローイング現象を抑制する観点から、第2の樹脂組成物中の不揮発成分100質量%とした場合、好ましくは30質量%を超え、より好ましくは32質量%以上、さらに好ましくは33質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
第1の樹脂組成物中の無機充填材の含有量(質量%)をB1とし、第2の樹脂組成物中の無機充填材の含有量(質量%)をB2とした場合、B2/B1は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上である。上限は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、2以下である。B2/B1を斯かる範囲内にすることにより、MIT耐折性に優れ、ハローイング現象を抑制できる硬化物を得ることができる。
第2の樹脂組成物中の(D)難燃剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
第2の樹脂組成物中の(E)硬化促進剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
第2の樹脂組成物中の(F)熱可塑性樹脂の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
[支持体付き樹脂シート]
本発明の支持体付き樹脂シートは、支持体と、支持体上に設けられた樹脂シート層と、を備える支持体付き樹脂シートであって、樹脂シート層は、第1の樹脂組成物により形成された第1の樹脂組成物層と、第1の樹脂組成物とは組成が異なる第2の樹脂組成物により形成された第2の樹脂組成物層と、を支持体側からこの順に有し、第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物は、それぞれ独立して、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有し、第1の樹脂組成物層を180℃で90分間熱硬化させた第1の硬化物層の23℃における弾性率が0.001GPa以上0.1GPa以下であり、第2の樹脂組成物層を180℃で90分間熱硬化させた第2の硬化物層の23℃における弾性率が3GPa以上10GPa以下であり、第1の樹脂組成物層の厚みをt1(μm)とし、第2の樹脂組成物層の厚みをt2(μm)とした場合、t1/t2が、1以上10以下である。このような支持体付き樹脂シートを用いることにより、柔軟性に優れ、ハローイング現象の抑制に優れる硬化物を得ることが可能になるという本発明の所望の効果が得られる。
図1に、本発明の支持体付き樹脂シートの一例の概略断面図を示す。本発明の支持体付き樹脂シート1は、支持体3と、樹脂シート層2とを含む。樹脂シート層2は、支持体3側から第1の樹脂組成物層10、第2の樹脂組成物層20をこの順で含む。樹脂シート層2は、第1の樹脂組成物層10と第2の樹脂組成物層20との間に追加の層を含んでいてもよいが、第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層のみを含むことが好ましい。
導体層上に絶縁層を形成する場合、通常、導体層上に支持体付き樹脂シートの樹脂シート層が導体層と接合するようにラミネートし、その後熱硬化させることで行う。柔軟性に優れる絶縁層を得るためには、樹脂シート層の硬化物の弾性率を低くする方法が考えられるが、弾性率が低い硬化物はビアホール形成後にビアホールの周囲の樹脂が劣化しやすく、ハローイング現象が生じやすい。これに対し、本発明の支持体付き樹脂シートにおける樹脂シート層は、支持体側から順に第1及び第2の樹脂組成物層を有しており、第2の樹脂組成物層を硬化させた第2の硬化物層の弾性率は第1の樹脂組成物層を硬化させた第1の硬化物層よりも高い。このため、導体層上に絶縁層を形成する際、第2の硬化物層が前記の導体層と接合することとなるので、ハローイング現象を抑制できる。さらに、硬化物層の大部分は弾性率が低い第1の硬化物層で形成されるので、硬化物層全体としての柔軟性を高めることができる。よって、ハローイング現象の抑制と柔軟性の向上とを両立させることができる。
<樹脂シート層>
樹脂シート層は、第1の樹脂組成物により形成された第1の樹脂組成物層と、第1の樹脂組成物とは組成が異なる第2の樹脂組成物により形成された第2の樹脂組成物層と、を支持体側からこの順に有する。第1及び第2の樹脂組成物は、<第1の樹脂組成物>欄及び<第2の樹脂組成物>欄において説明したとおりである。
第1の樹脂組成物層の厚み(t1(μm))は、柔軟性に優れる硬化物層を得る観点から、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは35μm以下である。下限は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。
第2の樹脂組成物層の厚み(t2(μm))は、ハローイング現象を抑制する硬化物層を得る観点から、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。下限は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。
t1/t2は、柔軟性に優れ、ハローイング現象を抑制する硬化物層を得る観点から、1以上であり、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上である。上限は、10以下であり、好ましくは8以下であり、より好ましくは5以下である。
樹脂シート層の厚み(t1+t2)は、柔軟性に優れ、ハローイング現象を抑制する硬化物層を得る観点から、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。下限は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。
第1の樹脂組成物層を180℃で90分間熱硬化させて得られる第1の硬化物層の23℃における弾性率は、柔軟性に優れる硬化物を得る観点から、0.001GPa以上であり、好ましくは0.01GPa以上、より好ましくは0.05GPa以上である。上限は、0.1GPa以下であり、好ましくは0.09GPa以下、より好ましくは0.08GPa以下である。この弾性率は、第1の樹脂組成物の組成によって調整でき、例えば、(C)エラストマーの種類及び量、並びに(B)無機充填材の量によって調整できる。第1の硬化物層の弾性率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
第2の樹脂組成物層を180℃で90分間熱硬化させて得られる第2の硬化物層の23℃における弾性率は、ハローイング現象を抑制する硬化物を得る観点から、3GPa以上であり、好ましくは3.5GPa以上、より好ましくは4GPa以上である。上限は、10GPa以下であり、好ましくは8GPa以下、より好ましくは6GPa以下である。この弾性率は、第2の樹脂組成物の組成によって調整でき、例えば(B)無機充填材の量によって調整できる。第2の硬化物層の弾性率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
樹脂シート層を180℃で90分間熱硬化させて得られる硬化物層の23℃における弾性率は、柔軟性に優れ、ハローイング現象を抑制する硬化物を得る観点から、好ましくは0.01GPa以上、より好ましくは0.1GPa以上、さらに好ましくは0.5GPa以上、1GPa以上である。上限は、好ましくは4GPa以下、より好ましくは3.8GPa以下、さらに好ましくは3.5GPa以下である。この弾性率は、第1の硬化物層及び第2の硬化物層の厚みによって調整できる。硬化物層の弾性率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
第1の樹脂組成物層を180℃で90分間熱硬化させて得られる第1の硬化物層の23℃における伸びは、柔軟性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上、55%以上である。上限は、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下である。この伸びは、第1の樹脂組成物の組成によって調整でき、例えば、(C)エラストマーの種類及び量、並びに(B)無機充填材の量によって調整できる。第1の硬化物層の伸びは、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
第2の樹脂組成物層を180℃で90分間熱硬化させて得られる第2の硬化物層の23℃における伸びは、ハローイング現象を抑制する硬化物を得る観点から、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。下限は、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上である。この伸びは、第2の樹脂組成物の組成によって調整でき、例えば(B)無機充填材の量によって調整できる。第2の硬化物層の伸びは、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
樹脂シート層を180℃で90分間熱硬化させて得られる硬化物層の23℃における伸びは、柔軟性に優れ、ハローイング現象を抑制する硬化物を得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。上限は、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。この伸びは、第1の硬化物層及び第2の硬化物層の厚みによって調整できる。硬化物層の伸びは、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
<支持体>
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂シート層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
また、支持体としては、樹脂シート層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
支持体付き樹脂シートは、樹脂シート層の支持体と接合していない面に、保護フィルムをさらに含んでもよい。保護フィルムは、樹脂シート層の表面へのゴミ等の付着やキズの防止に寄与する。保護フィルムの材料としては、<支持体>欄にて説明した材料と同じものを用いてよい。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。支持体付き樹脂シートは、プリント配線板等を製造する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。保護フィルムの厚みは、支持体の厚みよりも薄いことが好ましい。
<支持体付き樹脂シートの製造方法>
支持体付き樹脂シートを製造する方法の好適な一実施形態としては、第1の支持体上に第1の樹脂組成物層が設けられた第1の樹脂シート、及び第2の支持体上に第2の樹脂組成物層が設けられた第2の樹脂シートを用い、第2の樹脂組成物層が第1の樹脂組成物層に接合するようにラミネートして支持体付き樹脂シートを形成する方法である。この方法では、第1の支持体が支持体付き樹脂シートの支持体となる。
第1及び第2の樹脂シートは、例えば、有機溶剤に第1及び第2の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、各樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて第1及び第2の支持体上に塗布し、更に乾燥させて第1又は第2の樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
樹脂ワニスの乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、第1及び第2の樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、第1及び第2の樹脂組成物層を形成することができる。
他の一実施形態として、支持体に第1の樹脂組成物を塗布して塗布膜を乾燥して第1の樹脂組成物層を形成した後、第1の樹脂組成物層上に第2の樹脂組成物を塗布し、塗布膜を乾燥して第2の樹脂組成物層を設ける方法により支持体付き樹脂シートを製造してもよい。
この方法において、第1の樹脂組成物層は、上記した有機溶剤に第1の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持体上に塗布し、樹脂ワニスを乾燥させることによって作製することができる。また、第2の樹脂組成物層は、上記した有機溶剤に第2の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて第1の樹脂組成物層上に塗布し、樹脂ワニスを乾燥させることによって作製することができる。樹脂ワニスの乾燥方法は、上記した条件と同様の方法により乾燥することができる。
また、支持体付き樹脂シートは、上記した製造方法以外に、1つの塗工ライン上で2種類の樹脂ワニスを順次塗工するタンデム塗工法により形成してもよい。
支持体付き樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。支持体付き樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
<支持体付き樹脂シートの特性>
本発明の支持体付き樹脂シートの樹脂シート層を硬化させることにより、樹脂シート層の硬化物で形成された絶縁層を得ることができる。この絶縁層にビアホールを形成し、粗化処理を施した場合に、ハローイング現象を抑制することができる。以下、これらの効果について、図面を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る支持体付き樹脂シートの樹脂シート層を硬化させて得た絶縁層100を、内層基板200と共に模式的に示す断面図である。この図2は、ビアホール110のボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、絶縁層100を切断した断面を示す。
図2に示すように、絶縁層100は、導体層210を含む内層基板200上に形成された樹脂シート層を硬化させて得られた層であって、導体層210側から順に第2の樹脂組成物層20を熱硬化させた第2の硬化物層20’及び第1の樹脂組成物層10を熱硬化させた第1の硬化物層10’を備える。また、絶縁層100には、ビアホール110が形成されている。ビアホール110は、一般に、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uに近いほど径が大きく、導体層210に近いほど径が小さい順テーパ状に形成され、理想的には、絶縁層100の厚み方向において一定の径を有する柱状に形成される。このビアホール110は、通常、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uにレーザー光を照射して、絶縁層100の一部を除去することで、形成される。
前記のビアホール110の導体層210側のボトムを、適宜「ビアボトム」と呼び、符号120で示す。そして、このビアボトム120の径を、ボトム径Lbと呼ぶ。また、ビアホール110の導体層210とは反対側に形成された開口を、適宜「ビアトップ」と呼び、符号130で示す。そして、このビアトップ130の径を、トップ径Ltと呼ぶ。通常、ビアボトム120及びビアトップ130は、絶縁層100の厚み方向から見た平面形状が円形状に形成されるが、楕円形状であってもよい。ビアボトム120及びビアトップ130の平面形状が楕円形状である場合、そのボトム径Lb及びトップ径Ltは、それぞれ、前記の楕円形状の長径を表す。
このとき、ボトム径Lbをトップ径Ltで割って得られるテーパー率Lb/Ltが100%に近いほど、そのビアホール110の形状は良好である。本発明の支持体付き樹脂シートを用いて絶縁層を形成すれば、通常ビアホール110の形状を容易に制御することが可能であるので、テーパー率Lb/Ltが100%に近いビアホール110を実現することができる。
ビアホール110のテーパー率Lb/Ltは、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltから計算できる。また、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
図3は、本発明の一実施形態に係る支持体付き樹脂シートの樹脂シート層を硬化させて得た絶縁層100の、導体層210(図3では図示せず。)とは反対側の面100Uを模式的に示す平面図である。
図3に示すように、ビアホール110を形成された絶縁層100を見ると、このビアホール110の周囲に、ビアトップ130のエッジ180から、変色部140の外周側の縁部190まで絶縁層100が変色した変色部140が観察されることがある。この変色部140は、ビアホール110の形成時における樹脂劣化によって形成されうるもので、通常、ビアホール110から連続して形成される。また、多くの場合、変色部140は、白化部分となっている。
図4は、本発明の一実施形態に係る支持体付き樹脂シートの樹脂シート層を硬化させて得た、粗化処理後の絶縁層100を、内層基板200と共に模式的に示す断面図である。この図4においては、ビアホール110のビアボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、絶縁層100を切断した断面を示す。
図4に示すように、ビアホール110が形成された絶縁層100に粗化処理を施すと、ハローイング現象が生じて、変色部140の絶縁層100が導体層210から剥離し、ビアボトム120のエッジ150から連続した間隙部160が形成されることがある。
本発明における樹脂シート層を用いることにより、前記のハローイング現象を抑制できる。そのため、導体層210からの絶縁層100の剥離を抑制することができるので、間隙部160のサイズを小さくできる。
ビアボトム120のエッジ150は、間隙部160の内周側の縁部に相当する。よって、ビアボトム120のエッジ150から、間隙部160の外周側の端部(即ち、ビアボトム120の中心120Cから遠い側の端部)170までの距離Wbは、間隙部160の面内方向のサイズに相当する。ここで、面内方向とは、絶縁層100の厚み方向に垂直な方向をいう。また、以下の説明において、前記の距離Wbを、ビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbということがある。このビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbにより、ハローイング現象の抑制の程度を評価できる。具体的には、ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbが小さいほど、ハローイング現象を効果的に抑制できたと評価できる。
例えば、銅箔上に形成された、樹脂シート層を100℃で30分間、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、CO2レーザー光を照射して、トップ径Ltが約50μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥する。本発明の支持体付き樹脂シートを用いれば、このようにして得られた絶縁層100のビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbを、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは5.5μm以下、特に好ましくは5μm以下にできる。
前記のCO2レーザー光の照射条件は、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)のようにする。
ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
また、樹脂シート層を用いることにより、粗化処理前の絶縁層100のビアホール110の形状を容易に制御できるので、通常は、粗化処理後の絶縁層100でも、ビアホール110の形状を容易に制御することが可能である。よって、粗化処理後においても、粗化処理前と同じく、ビアホール110の形状を良好にできる。したがって、本発明の支持体付き樹脂シートを用いれば、粗化処理後の絶縁層において、テーパー率Lb/Ltが100%に近いビアホール110を実現することができる。
粗化処理後のビアホール110のテーパー率Lb/Ltは、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltから計算できる。また、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
さらに、本発明者の検討によれば、ビアホールの径が大きいほど間隙部160のサイズも大きくなり易い傾向があることが判明している。よって、ビアホール110の径に対する間隙部160のサイズの比率によって、ハローイング現象の抑制の程度を評価できる。例えば、ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbにより、評価ができる。ここで、ビアホール110のボトム半径Lb/2とは、ビアホール110のビアボトム120の半径をいう。また、ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbとは、ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbを、ビアホール110のボトム半径Lb/2で割って得られる比率である。ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbが小さいほど、ハローイング現象を効果的に抑制できたことを表す。
例えば、銅箔上に形成された、樹脂シート層を100℃で30分間、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、CO2レーザー光を照射して、トップ径Ltが約50μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥する。このようにして得られた絶縁層100に形成されたビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbを、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下にできる。
前記のCO2レーザー光の照射条件は、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)のようにする。
ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbは、ビアホール110のボトム径Lb、及び、ビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbから計算できる。
さらに、通常は、本発明における樹脂シート層を用いることにより、ビアホール110の形成時の変色部140の形成を抑制できる。そのため、図3に示すように、変色部140のサイズを小さくでき、理想的には変色部140を無くすことができる。変色部140のサイズは、ビアホール110のビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtによって評価できる。
ビアトップ130のエッジ180は、変色部140の内周側の縁部に相当する。ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtとは、ビアトップ130のエッジ180から、変色部140の外周側の縁部190までの距離を表す。ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtが小さいほど、変色部140の形成を効果的に抑制できたと評価できる。
例えば、銅箔上に形成された、樹脂シート層を100℃で30分間、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、CO2レーザー光を照射して、トップ径Ltが約50μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥する。このようにして得られた絶縁層100のビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtを、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下にできる。
前記のCO2レーザー光の照射条件は、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)のようにする。
ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtは、光学顕微鏡による観察によって測定できる。
また、本発明者の検討によれば、一般に、ビアホール110の径が大きいほど、変色部140のサイズが大きくなり易い傾向があることが判明している。よって、ビアホール110の径に対する変色部140のサイズの比率によって、変色部140の形成の抑制の程度を評価できる。例えば、ビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htにより、評価ができる。ここで、ビアホール110のトップ半径Lt/2とは、ビアホール110のビアトップ130の半径をいう。また、ビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htとは、ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtを、ビアホール110のトップ半径Lt/2で割って得られる比率である。ビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htが小さいほど、変色部140の形成を効果的に抑制できたことを表す。
例えば、銅箔上に形成された、樹脂シート層を100℃で30分間、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、CO2レーザー光を照射して、トップ径Ltが約50μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥する。このようにして得られた絶縁層100に形成されたビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htを、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは28%以下にできる。
前記のCO2レーザー光の照射条件は、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)のようにする。
ビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htは、ビアホール110のトップ径Lt、及び、ビアホール110のビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtから計算できる。
プリント配線板の製造過程において、ビアホール110は、通常、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uに別の導体層(図示せず)が設けられていない状態で、形成される。そのため、プリント配線板の製造過程が分かれば、導体層210側にビアボトム120があり、導体層210とは反対側にビアトップ130が開口している構造が、明確に認識できる。しかし、完成したプリント配線板では、絶縁層100の両側に導体層が設けられている場合がありうる。この場合、導体層との位置関係によってビアボトム120とビアトップ130とを区別することが難しいことがありえる。しかし、通常、ビアトップ130のトップ径Ltは、ビアボトム120のボトム径Lb以上の大きさである。したがって、前記の場合、径が大きさによって、ビアボトム120とビアトップ130とを区別することが可能である。
本発明の支持体付き樹脂シートを用いることで、ハローイング現象を抑制すること以外に、柔軟性に優れる絶縁層を得られる。
支持体付き樹脂シートを190℃で90分間熱硬化させて得られる樹脂シート層の硬化物は、柔軟性に優れるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、柔軟性に優れる絶縁層をもたらす。MIT耐折性試験の耐折回数としては、200回以上である。前記の柔軟性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明の支持体付き樹脂シートは、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するために用いられる支持体付き樹脂シートとして好適に使用することができる。
また、後述する多層プリント配線板において、多層プリント配線板の絶縁層を形成するために用いられる支持体付き樹脂シート、プリント配線板の層間絶縁層を形成するために用いられる支持体付き樹脂シートとして好適に使用することができる。
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の支持体付き樹脂シートは、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層を形成するために用いられる支持体付き樹脂シート、及び半導体チップを封止するために用いられる支持体付き樹脂シートとしても好適に使用することができる。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
また、本発明の支持体付き樹脂シートにおける樹脂シート層は、部品埋め込み性に良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
[硬化物]
本発明の硬化物は、第1の樹脂組成物の硬化物により形成された第1の硬化物層と、該第1の硬化物層上に形成された、第1の樹脂組成物とは組成が異なる第2の樹脂組成物の硬化物により形成された第2の硬化物層と、を有し、第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物は、それぞれ独立して、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有し、第1の硬化物層の23℃における弾性率が0.001GPa以上0.1GPa以下であり、第2の硬化物層の23℃における弾性率が3GPa以上10GPa以下であり、第1の硬化物層の厚みをt3(μm)とし、第2の硬化物層の厚みをt4(μm)とした場合、t3/t4が、5以上10以下である。
第1の硬化物層は、第1の樹脂組成物の硬化物であり、第2の硬化物層は、第2の樹脂組成物の硬化物である。第1及び第2の樹脂組成物の硬化条件は、後述する樹脂シート層の熱硬化条件と同様でありうる。
前記の第1及び第2の硬化物層の弾性率は、第1及び第2の樹脂組成物層を180℃で90分間熱硬化させて得られる第1及び第2の硬化物層の23℃における弾性率と同様である。
第1の硬化物層の厚み(t3(μm))は、第1の樹脂組成物層の厚み(t1(μm))と同様であり、第2の硬化物層の厚み(t4(μm))は、第2の樹脂組成物層の厚み(t2(μm))と同様である。また、t3/t4は、t1/t2の範囲と同様である。
この硬化物は、通常、上述したように導体層上に形成される。この際、硬化物は、導体層側から第2の硬化物層及び第1の硬化物層をこの順に備えるように設けられる。よって、弾性率が高い第2の硬化物層が導体層に接合するので、導体層と硬化物との剥離を抑制でき、したがって、ハローイング現象を抑制できる。さらに、硬化物は、弾性率が低い第1の硬化物層を含むので、硬化物全体として優れた柔軟性を有する。したがって、この硬化物は、ハローイング現象の抑制と優れた柔軟性との両方を備えた絶縁層として用いることが可能である。
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の支持体付き樹脂シートの樹脂シート層により形成された絶縁層を含む。
プリント配線板は、例えば、上述の支持体付き樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、支持体付き樹脂シートの第2の樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂シート層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
内層基板と支持体付き樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シート層の第2の樹脂組成物層を内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。支持体付き樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を支持体付き樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に支持体付き樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
内層基板と支持体付き樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された支持体付き樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
工程(II)において、樹脂シート層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂シート層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、樹脂シート層の熱硬化条件は、第1及び第2の樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
樹脂シート層を熱硬化させる前に、樹脂シート層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂シート層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂シート層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した第1及び第2の樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に1分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは120nm以下、より好ましくは110nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
<無機充填材の平均粒径の測定>
無機充填材100mg、及びメチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散した。レーザー回折式粒径分布測定装置(堀場製作所社製「LA-960」)を使用して、使用光源波長を青色および赤色とし、フローセル方式で無機充填材の粒径分布を体積基準で測定した。得られた粒径分布から、メディアン径として、無機充填材の平均粒径を算出した。
<無機充填材の比表面積の測定>
BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで無機充填材の比表面積を測定した。
<使用した無機充填材>
無機充填材1:球形シリカ(アドマテックス社製「SC2500SQ」、平均粒径0.5μm、比表面積5.9m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの。
無機充填材2:球状シリカ(電気化学工業社製「UFP-30」、平均粒径0.1μm、比表面積30.7m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)2部で表面処理したもの。
<エラストマーAの合成>
反応容器にG-3000(2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、数平均分子量=5167(GPC法)、ヒドロキシル基当量=1798g/eq.、固形分100質量%:日本曹達社製)50gと、イプゾール150(芳香族炭化水素系混合溶媒:出光石油化学社製)23.5gと、ジブチル錫ラウレート0.005gとを混合し均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、イソホロンジイソシアネート(イソシアネート基当量=111.15g/eq.)7.4gを添加し約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにクレゾールノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量117、DIC社製「KA-1160」)24.2gを添加し撹拌しながら150℃まで昇温し、約12時間反応を行った。FT-IRより2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過してエラストマーAを得た。
エラストマーAの性状は、粘度が3.9Pa・s(25℃、E型粘度計)、固形分が50質量%、数平均分子量が4890、ポリブタジエン構造部分の含有率が61.3質量%であった。
<樹脂組成物1の調製>
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-7200」、エポキシ当量約285)4部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7760」、エポキシ当量約238)4部、エラストマーA 30部を、ソルベントナフサ5部及びメチルエチルケトン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、反応型難燃剤(水酸基当量249、大塚化学社製「SPH-100」、リン含有量12.5%)5部、無機充填材1を12部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ))0.15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物1を調製した。
<樹脂組成物2の調製>
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)6部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7760」、エポキシ当量約238)4部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ5部及びメチルエチルケトン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-7054」、水酸基当量約125、固形分60%のメチルエチルケトン溶液)5部、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学社製「SN395」、水酸基当量107)2部、無機充填材1を18部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.1部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物2を調製した。
<樹脂組成物3の調製>
樹脂組成物2において、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-7054」、水酸基当量約125、固形分60%のメチルエチルケトン溶液)5部を、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000L-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のMEK溶液)5部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物2と同様にして樹脂組成物3を調製した。
<樹脂組成物4の調製>
樹脂組成物2において、無機充填剤1 18部を、無機充填剤2 10部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物2と同様にして樹脂組成物4を調製した。
<樹脂組成物5の調製>
樹脂組成物4において、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-7054」、水酸基当量約125、固形分60%のメチルエチルケトン溶液)5部を、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000L-65T」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のMEK溶液)5部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物4と同様にして樹脂組成物5を調製した。
[実施例1~4]
<支持体付き樹脂シートの作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。
下記表に記載の各第2の樹脂組成物を、乾燥後の第2の樹脂組成物層の厚みが10μmとなるよう、離型PET上にダイコーターにて均一に塗布し、70℃から95℃で2分間乾燥することにより、離型PET上に第2の樹脂組成物層を得た。次いで、第2の樹脂組成物層の離型PETと接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を、第2の樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、離型PET(支持体)、第2の樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる樹脂シートAを得た。
支持体として、離型PETを用意した。
下記表に記載の各第1の樹脂組成物を、乾燥後の第1の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるよう、離型PET上にダイコーターにて均一に塗布し、70℃から95℃で2分間乾燥することにより、離型PET上に第1の樹脂組成物層を得た。次いで、第1の樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を、第1の樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、離型PET(支持体)、第1の樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる樹脂シートBを得た。
樹脂シートAと樹脂シートBの保護フィルムをそれぞれ剥離し、下記ラミネート条件と同じ条件でラミネートし、樹脂シートAの支持体を剥離することで支持体付き樹脂シートを作製した。
[比較例1~2]
実施例1で作製した樹脂シートA及びBを、それぞれ比較例1~2の支持体付き樹脂シートとして用意した。
<第1及び第2の樹脂組成物層の厚みの測定>
第1及び第2の樹脂組成物層の厚みは、接触式膜厚計(ミツトヨ社製、MCD-25MJ)を用いて測定し、第1の樹脂組成物層の厚み(t1(μm))と、第2の樹脂組成物層の厚み(t2(μm))との比(t1/t2)を計測した。
<弾性率、伸びの測定>
(1)評価用硬化物の準備
離型PETフィルム(リンテック社製「501010」、厚さ38μm、240mm角)の未処理面がガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(松下電工社製「R5715ES」、厚さ0.7mm、255mm角)に接するように、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板上に設置し、該離型PETフィルムの四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。
実施例及び比較例で作製した各支持体付き樹脂シート(167×107mm角)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、第2の樹脂組成物層が離型PETフィルムの離型面と接するように、中央にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。
次いで、支持体を剥離し、180℃で90分の硬化条件で樹脂シート層を熱硬化させた。
熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、硬化物層をガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外した。更に硬化物層から離型PETフィルムを剥離して、シート状の硬化物(評価用硬化物)を得た。
(2)弾性率、伸び(破断伸度)の測定
評価用硬化物をダンベル状1号形に切り出し、試験片を得た。該試験片を、日本工業規格(JIS K7127)に準拠し、テンシロン万能試験機(エー・アンド・デイ社製)を用いて、評価用硬化物の引っ張り試験を行い、その23℃における弾性率と破断伸度を測定した。この操作を3回行い、それぞれその平均値を表に示した。
第1の硬化物層の弾性率及び伸びの測定は、前記の各支持体付き樹脂シートを各樹脂シートAに変えることにより行った。また、第2の硬化物層の弾性率及び伸びの測定は、前記の各支持体付き樹脂シートを各樹脂シートBに変えることにより行った。
<粗化処理後のビアホールの寸法、ハローイング距離、及びハローイング比の測定>
-評価基板Aの作製-
(1)銅張積層板
銅張積層板として、両面に銅箔層を積層したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ3μm、基板厚み0.15mm、三菱ガス化学社製「HL832NSF LCA」、255×340mmサイズ)を用意した。
(2)支持体付き樹脂シートのラミネート
実施例で作製した各支持体付き樹脂シート(比較例は樹脂シートA又は樹脂シートB)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、第2の樹脂組成物層が銅張積層板と接するように、銅張積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着させることにより実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間熱プレスを行った。
(3)樹脂シート層の熱硬化
樹脂シート層がラミネートされた銅張積層板を、100℃のオーブンに投入後30分間、次いで180℃のオーブンに移し替えた後30分間、熱硬化して絶縁層を形成した。これを硬化基板Aとする。
(4)レーザービア加工(ビアホールの形成)
三菱電機社製CO2レーザー加工機「605GTWIII(-P)」を使用して、支持体上よりレーザーを照射して、絶縁層にトップ径(直径)50μmのビアホールを形成した。レーザーの照射条件は、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)であった。
(5)粗化処理
絶縁層にビアホールを形成した硬化基板Aの支持体を剥離後、粗化処理としてのデスミア処理を行った。なお、デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
湿式デスミア処理
膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間、次いで酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で20分間、最後に中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間、浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。これを粗化基板Aとする。
<デスミア処理後のビア径の測定>
粗化基板Aを、FIB-SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、レーザービアの垂直な方向における断面をFIB(集束イオンビーム)により削り出し、断面SEM画像から、デスミア処理後のビアホール径を測定した。各サンプルにつき、無作為に選んだ5箇所の断面SEM画像から、デスミア処理後のビアトップ径を測定し、その平均値をビアトップ径Lt(μm)とし、下記表に示した。また、同様にしてデスミア処理後のビアホールのボトム径Lbを測定した。
<粗化処理後のハローイング距離の測定>
SEMによって観察された画像には、ビアボトムのエッジから連続して、絶縁層が内層基板の銅箔層から剥離して形成された間隙部が見られた。そこで、観察された画像から、ビアボトムの中心からビアボトムのエッジまでの距離(間隙部の内周半径に相当)r3と、ビアボトムの中心から前記間隙部の遠い側の端部までの距離(間隙部の外周半径に相当)r4とを測定し、これら距離r3と距離r4との差r4-r3を、その測定地点のビアボトムのエッジからのハローイング距離として算出した。
前記の測定を、無作為に選んだ5か所のビアホールで行った。そして、測定された5か所のビアホールのハローイング距離の測定値の平均を、そのサンプルのビアボトムのエッジからのハローイング距離Wbとして採用した。
粗化基板Aを、光学顕微鏡(ハイロックス社製「KH8700」)で観察した。詳細には、ビアホールの周辺の絶縁層を、光学顕微鏡(CCD)を用いて、粗化基板Aの上部から観察した。この観察は、ビアトップに光学顕微鏡の焦点を合わせて行った。観察の結果、ビアホールの周囲に、当該ビアホールのビアトップのエッジから連続して、絶縁層が白色に変色したドーナツ状のハローイング部が見られた。そこで、観察された像から、ビアホールのビアトップの半径(ハローイング部の内周半径に相当)r1と、ハローイング部の外周半径r2とを測定し、これら半径r1と半径r2との差r2-r1を、その測定地点のビアトップのエッジからのハローイング距離として算出した。
前記の測定を、無作為に選んだ5か所のビアホールで行った。そして、測定された5か所のビアホールのハローイング距離の測定値の平均を、そのサンプルのビアトップのエッジからのハローイング距離Wtとして採用した。
下記表において、ハローイング比Htとは、粗化処理後のビアトップのエッジからのハローイング距離Wtと、粗化処理後のビアホールのビアトップの半径(Lt/2)との比(「Wt/(Lt/2)」を表す。このハローイング比Htが35%以下であれば「○」と判定し、ハローイング比Htが35%より大きければ「×」と判定した。
また、下記表において、ハローイング比Hbとは、粗化処理後のビアトップのエッジからのハローイング距離Wbと、粗化処理後のビアホールのビアトップの半径(Lb/2)との比(「Wb/(Lb/2)」を表す。このハローイング比Hbが35%以下であれば「○」と判定し、ハローイング比Hbが35%より大きければ「×」と判定した。
<柔軟性(MIT耐折性)の評価>
実施例及び比較例で作製した支持体付き樹脂シートを、190℃、90分で硬化し、支持体から剥がした後、カッターを用いて切断して110mm×15mmの評価用サンプルを5本作製した。MIT耐折疲労試験機(東洋精機製作所社製、「MIT-DA」)を使用して、JIS C-5016に準拠して、荷重2.5N、折曲げ角度135度、折曲げ速度175回/分、曲率半径1mmと設定してMIT耐折性試験を行い、耐折回数を測定した。5本の評価用サンプルの耐折回数の平均値を求めた。MIT耐折性は、耐折回数が200回未満の場合を「×」と評価し、200回以上の場合を「○」と評価した。
実施例1~4において、第1の硬化物層の厚みt3(μm)及び第2の硬化物層の厚みt4(μm)の比(t3/t4)を<第1及び第2の樹脂組成物層の厚みの測定>欄と同様の方法にて計測したところ、t1/t2と同一であった。
実施例1~4において、各樹脂組成物層が(C)成分~(F)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。