JP7263244B2 - (3E,7E)-ホモファルネセン酸(homofarnesic acid)、または、(3E,7E)-ホモファルネセン酸エステルの製造のための方法 - Google Patents

(3E,7E)-ホモファルネセン酸(homofarnesic acid)、または、(3E,7E)-ホモファルネセン酸エステルの製造のための方法 Download PDF

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Description

本発明は、不飽和カルボン酸の3-(E)-異性体を、対応する(E/Z)異性体の混合物から単離する改善された方法を提供する。より詳細には、本発明は、(3E,7E)-ホモファルネシル酸(homofarnesylic acid)の生体触媒による製造のための改善された方法、ならびに、ホモファルネソール、特に(3E,7E)-ホモファルネソール、および(3E,7E)-ホモファルネソールの含有量を増加させたホモファルネソール調製物(「全-E-ホモファルネソール」ともいう)の改善された製造のための新規の生体触媒による方法に関する。本発明はまた、本発明にしたがって得られる(3E,7E)-ホモファルネシル酸または(3E,7E)-ホモファルネソールを出発物質として適用することによって、(-)-アンブロックス(ambrox)を製造する方法に関する。
アンブロックス(登録商標)は、鏡像体的に純粋な化合物、(-)-アンブロックス(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランの商品名であり、価値のある芳香剤として使用される。天然起源の(-)-アンブロックスはアンブラの成分であり、マッコウクジラの消化産物である。
(-)-アンブロックスは、化学および/または酵素反応のステップを適用することによって合成することができる(スキーム1)。
Figure 0007263244000001
(3E,7E)-ホモファルネシル酸または(3E,7E)-ホモファルネソールの立体化学的に純粋な形態は、最も好ましい出発物質の形態、酵素-塩基合成経路であり、正しい立体化学での(-)-アンブロックスの生合成を可能とする。
異性体(3E,7E)-および(3Z,7E)-ホモファルネシル酸の混合物は、利用することができる。しかしながら、前記の2つの異性体間の高い類似性を考慮すると、異性体のこのような混合物を分離することは非常に困難である。したがって、蒸留およびクロマトグラフィーのような古典的な方法を用いる分離は、非常に困難である。
したがって、本発明の目的は、立体異性的に純粋な(3E,7E)-ホモファルネシル酸および/もしくは(3E,7E)-ホモファルネソールへの、または、少なくとも(3E,7E)-ホモファルネシル酸もしくは(3E,7E)-ホモファルネソールの含有量を増加させた調製物への、より簡単な到達を可能とする方法を提供することである。
驚くべきことに、上記の課題は、ある特定のリパーゼ(E.C. 3.1.1.3)酵素を作用させることによって、ホモファルネシル酸の3E,7E異性体によって例示される、不飽和カルボン酸の3E-異性体を選択的に調製する酵素的に触媒される方法を提供することによって解決することができた。
驚くべきことに、本発明の第1の特定の態様において、例えば、カンジダ・アンタークチカ(Candida antarctica)由来のリパーゼのようなリパーゼの酵素活性を付与することによって、遊離ホモファルネシル酸の(3E,7E)-異性体は、対応する(3Z,7E)-異性体より、アルコールの存在下で迅速にエステル化することが見出された。本発明の第1の態様によれば、(3E,7E)-ホモファルネシル酸エステルおよび遊離3Z,7E-ホモファルネシル酸の混合物が得られる。酸およびエステルの著しい化学的差異を考慮すると、抽出または蒸留を介する非常に効果的で簡単な分離が、ここでは可能である。このように単離した(3E,7E)-ホモファルネシル酸エステルの化学的加水分解によって、所望の遊離3E,7E)-ホモファルネシル酸を得る。
驚くべきことに、本発明の第2の特定の態様において、例えば、カンジダ・アンタークチカ由来のリパーゼのようなリパーゼの酵素活性を付与することによって、ホモファルネシル酸の(3E,7E)-異性体は、対応する(3Z,7E)-異性体より、水の存在下で迅速にけん化することも見出された。本発明の第2の態様によれば、(3E,7E)-ホモファルネシル酸および3Z,7E-ホモファルネシル酸エステルの混合物が得られる。酸およびエステルの著しい化学的差異を考慮すると、抽出または蒸留を介する非常に効果的で簡単な分離が、ここでは可能である。
以下のスキーム2は、本発明の前記の2つの態様を例示する。
Figure 0007263244000002
1. 一般的な定義:
反対の情報がない場合、以下の一般的な定義を適用する。
「ホモファルネシル酸」または「ホモファルネソイン酸(homofarnesoic acid)」は、「(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸」もしくは「(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸」、または前記E/Z異性体の混合物に対する同義語である。
「スクラレオリド」は、「(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチル-1,4,5,5a,7,8,9,9b-オクタヒドロベンゾ[e]ベンゾフラン-2-オン」に対する同義語として使用される。
左手型スクラレオリドは、以下の構造式を示す:
Figure 0007263244000003
「アンブロックス」、「アンブロキサン」および「アンブロキシド」は、同義語として使用される。それらは、全ての立体異性体形態、例えば、特に(+)アンブロックス、3a-epi-(-)アンブロックス、9b-epi-(-)アンブロックス、特に(-)アンブロックスを含む。
本発明によれば、用語「リパーゼ」とは、IUBMB酵素命名法にしたがってクラスE.C. 3.1.1.3の酵素を意味する(http://www.iubmb.unibe.ch; http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme/)。
本発明による方法の特別な実施形態によれば、リパーゼは、カンジダ・アンタークチカ由来のCALBの遺伝子産物リパーゼBである。CALB遺伝子は、以前に記載され(Uppenberg J., Hansen, M.T., Patkar, S., Jones, A., Structure 2: 293-308 (1994))、そのヌクレオチドまたはタンパク質の配列は、アクセス番号Z30645およびCAA83122.1の下でGenBankに寄託された。より厳密な指示がなければ、本明細書でのCALBとは、このアクセス番号でのヌクレオチド配列を意味する。トリアシルグリセロールリパーゼの別の例は、プセウドジマ・ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)由来のリパーゼBである(Suen, W.C., Zhang, N., Xiao, L, Madison, V., Zaks, A. Protein Eng. Des. Sel. 17(2): 133-40 (2004))。
本発明の目的のために、「シクラーゼ」は、一般的に酵素または酵素突然変異体であり、これは、特に、ホモファルネシル酸シクラーゼおよび/またはホモファルネソールシクラーゼの活性を呈する。ホモファルネシル酸シクラーゼまたはホモファルネソールシクラーゼの活性での酵素として、イソメラーゼのサブクラス由来の分子内トランスフェラーゼがある、すなわち、EC番号EC 5.4でのタンパク質が好適である(Eur. J. Biochem. 1999, 264, 610-650による酵素コード)。特に、クラスEC 5.4.99.17のメンバーである。ホモファルネシル酸シクラーゼまたはホモファルネソールシクラーゼの活性を有する好適な酵素は、特に、ホモファルネシル酸のスクラレオリドへの環化、および/またはスクアレンのホペンへの環化(したがって、時に「SHC」またはスクアレン-ホペンシクラーゼともいう)も効果的であり、国際特許出願WO2010139719に広く記載されており、本明細書に参照により組み込まれている、これらのシクラーゼである。その突然変異体は、例えば、WO 2012/066059に記載されており、本明細書に参照により明確に組み込まれている。
用語「シクラーゼ活性」は、「標準条件下の参照基質」で決定される酵素活性をいい、非環式基質からの環状生成物の形成をいう。標準条件は、例えば、基質濃度が10mM~0.2M、とりわけ15~100mM、例えば約20~25mMであり、pHが4~8であり、温度が例えば15~30または20~25℃である。決定は、組換えシクラーゼ発現細胞、消化シクラーゼ発現細胞、その画分、または、濃縮もしくは精製されたシクラーゼ酵素で行うことができる。特に、参照基質は、(3E,7E)-ホモファルネシル酸である。
本発明による反応の「収率」および/または「変換率」は、そこで反応が起こる規定期間、例えば、4、6、8、10、12、16、20、24、36、または48時間の規定期間で決定される。特に、反応は、例えば25、30、40、50、または60℃で、正確に規定された条件下で行う。
「酵素的に触媒される」または「生体触媒による」方法とは、前記方法が本明細書で定義される酵素突然変異体を含む、酵素の触媒作用の下で実施することを意味する。したがって、方法は、単離された(精製された、濃縮された)形態もしくは粗形態での前記酵素の存在、または、細胞系、特に活性状態の前記酵素を含有し、本明細書に開示する変換反応を触媒する能力を有する、天然もしくは組換えの微生物細胞の存在のいずれかの下で実施することができる。
用語「選択的に変換する」または「選択性を高める」とは、一般的に、本明細書で定義される不飽和カルボン酸の特定の立体異性体の形態、特に(i.p.)、3E-形態が、前記反応の全過程の間(すなわち、反応の開始と終了の間)、前記反応のある特定の時点で、または、前記反応の「合間」の間のいずれかで、対応する3Z-形態より(モル基準で比較して)高い割合または量に変換されることを意味する。特に、前記選択性は、基質の初期量の1~99%、2~95%、3~90%、5~85%、10~80%、15~75%、20~70%、25~65%、30~60、または40~50%変換に対応して、「合間」の間に観察され得る。前記のより高い割合または量は、例えば、
- 反応の全過程もしくはそれらの前記合間の間に観察される3E-異性体のより高い最高収率、
- 基質の変換値の規定%での3E-異性体のより高い相対量、および/または
- 変換値のより高い%での3E-異性体の同一の相対量
に関して表現することができ、各々は、好ましくは、参照方法に対して観察され、前記参照方法は、化学的手段、例えば、化学的エステル化または化学的エステル開裂での別段の同一条件下で実施する。
用語「約」とは、記載された値の±25%、特に±15%、±10%、好ましくは、±5%、±2%、または±1%の潜在的な変動を示す。
用語「実質的に」とは、約80~100%の値の範囲、例えば、85~99.9%、特に90~99.9%、好ましくは95~99.9%、または98~99.9%、とりわけ99~99.9%を記載する。
「主に」とは、50%超の範囲の割合、例えば51~100%の範囲、好ましくは75~99.9%の範囲、より詳細には85~98.5%、例えば95~99%を指す。
酵素反応の可逆性によって、本発明は、反応の両方向での本明細書に記載の酵素反応に関する。
本明細書に記載の酵素の「機能的突然変異体」は、下記で定義されるそのような酵素の「機能的等価物」を含む。
用語「立体異性体」は、特に配座異性体を含む。
一般的に含まれるのは、本発明によれば、本明細書に記載の化合物の全ての立体異性体、例えば構造異性体、特に、立体異性体およびその混合物、例えば光学異性体、または、幾何異性体、例えば、EおよびZ異性体、ならびにその混合物である。いくつかの不斉中心が1つの分子中に存在する場合、本発明は、これらの不斉中心の異なる配座の全ての組合せ、例えば鏡像体対を包含する。
「立体選択性」とは、立体異性的に純粋な形態での化合物の特定の立体異性体を生成するか、または、具体的には、本明細書に記載した酵素的に触媒される方法で特定の立体異性体を、複数の立体異性体から変換する能力を記載する。より具体的には、これは、本発明の生成物が、特定の立体異性体に対して濃縮されることを意味する。これは、式:
%ee=[XA-XB]/[XA+XB]*100
(式中、XAおよびXBは、立体異性体AおよびBのモル比(モル分率(Molenbruch))を表す)
にしたがって算出した純粋な%eeパラメータを介して定量化し得る。
「E-立体選択性」または「E-選択性」とは、E-立体異性的に純粋かもしくは本質的に純粋な形態もしくは濃縮した形態での特定のC=C二重結合で、少なくとも1倍の不飽和のE-異性体を生成するか、または、具体的には、もしくは本質的に具体的には、本明細書に記載した酵素的に触媒される方法でのE-異性体を、複数の他の異性体もしくはs内の二重結合の前記特定の位置でのE-およびZ-異性体の混合物から変換する能力を記載する。
立体選択性に対する上記の定義およびその算出は、用語「鏡像体選択性」にも同様に適用する。
少なくとも90%ee、例えば少なくとも95%ee、または少なくとも98%ee、または少なくとも99%ee以上の立体異性体または鏡像体純度を、本発明にしたがって得ることができる。
別段の記載がない限り、以下の一般的な化学的定義を適用する。
用語「カルボン酸」は、遊離酸およびその塩形態、例えばそれらのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩の両方を包含する。したがって、これは、本明細書に記載の全てのカルボン酸、特にホモファルネシル酸に適用する。
本発明による直鎖状または分枝状の飽和または不飽和「ヒドロカルビル」残基とは、特に、直鎖状または分枝状のアルキルまたはアルケニル残基を指す。
「アルキル」残基は、1~20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状基であるC1-C20-アルキル基、またはC1-C4-アルキル基、またはC4-C20-アルキル基を含む。それらの例は、以下の通りである:
- メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチルから選択されるC1-C4-アルキル基、
- 上記で定義されるC1-C4-アルキル基、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピルから選択されるC1-C6-アルキル基、
- 7~20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状基であるC7-C20-アルキル基、その例は、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、およびこれらの構造異性体から選択され、例えば4,8-ジメチルノニルである。
「アルケニル」残基は、モノまたはポリ不飽和であり、特に1、2、3、または4倍、好ましくは1、2、または3倍の不飽和である、2~20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状炭化水素基である、C2-C20-アルケニル基を含む。
モノ不飽和C2-C20-アルケニル残基の例は、炭化水素鎖内の任意の位置での二重結合の位置で、ビニル、2-プロペン-1-イル、1-メチルプロプ-2-エン-1-イル、2-ブテン-1-イル、3-ブテン-1-イル、n-ペンテニル、n-ヘキセニル、n-ヘプテニル、n-オクテニル、n-ノネニル、n-デセニル、n-ウンデセニル、n-ドデセニル、n-トリデセニル、n-テトラデセニル、n-ペンタデセニル、n-ヘキサデセニル、n-ヘプタデセニル、n-オクタデセニル、オレイル、n-ノナデセニル、n-エイコセニルである。
炭化水素鎖内の任意の位置での2つまたは3つの、好ましくは非累積で好ましくは非共役結合の二重結合を有するジ-またはトリ-不飽和C4-C20-アルケニル残基の例は、n-ブタジエニル、n-ペンタジエニル、n-ヘキサジエニル、n-ヘプタジエニル、n-オクタジエニル、n-オクタトリエニル、n-ノナジエニル、n-ノナトリエニル、n-デカジエニル、n-デカトリエニル、n-ウンデカジエニル、n-ウンデカトリエニル、n-ドデカジエニル、n-ドデカトリエニル、n-トリデカジエニル、n-トリデカトリエニル、n-テトラデカジエニル n-テトラデカトリエニル、n-ペンタデカジエニル、n-ペンタデカトリエニル、n-ヘキサデカジエニル、n-ヘキサデカトリエニル、n-ヘプタデカジエニル、n-ヘプタデカトリエニル、n-オクタデカジエニル、n-オクタデカトリエニル、n-ノナデカジエニル、n-ノナデカトリエニル、n-エイコサジエニル、n-エイコサトリエニル、およびその構造異性体であり、例えば4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエニルである。
上記のC2-C20-アルケニル残基内の各二重結合は、別段の記載がない限り、E-またはZ-体となり得、独立して、多不飽和の場合は他の二重結合となり得る。
本明細書で定義される「置換されていてもよい」残基の非限定例は、HO、SH、NH2、NO2、F、Cl、Br、Jのようなハロゲン、上記で定義される、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、またはヒドロキシル低級アルキルのような、1、2、3、4、5、または6個の、好ましくは1または2個の同一のまたは異なる置換基を含む。
「低級アルキル」とは、上記で定義されるC1-C4-アルキル基を指す。
「低級アルコキシ」とは、好ましくは、上記の低級アルキル基のC1-C4-アルコキシ類似体を指す。
「低級アルキルチオ」とは、好ましくは、上記の低級アルキル基のC1-C4-アルキルチオ類似体を指す。例として、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、イソブチルチオ、およびtert-ブチルチオが挙げられる。
「低級アルケニル」は、上記で定義されるC2-C4-アルケニル基を含む。
「低級アルキニル」は、上記の「低級アルケニル」基のアルキニル同族体を含む。
用語「ヒドロキシル低級アルキル」とは、1~4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基である、C1-C4-ヒドロキシアルキルを指し、少なくとも1個の水素原子、例えば1または2個の水素原子は、ヒドロキシル基によって置換される。それらの例は、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシ-1-エチル、2-および3-ヒドロキシ-1-プロピル、2-, 3-および4-ヒドロキシ-1-ブチル、ならびにそれらの構造異性体である。
本明細書で開示されるのは、特定のパラメータに対する異なる優先度のパラメータ範囲である。本開示の範囲内にはまた、本明細書で述べた2つ以上のパラメータの任意の組合せに対する異なる優先度のパラメータ範囲の任意の組合せがある。
2. 本発明の特定の実施形態:
本発明は、以下の特定の実施形態を提供する。
1. 一般式(I)
Figure 0007263244000004
(式中、
R1は、H、または直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の、必要に応じて置換されているC1-C20ヒドロカルビル残基、好ましくは、飽和の非置換の直鎖状C1-C20ヒドロカルビル残基であり、
R3は、H、またはC1-C4-ヒドロカルビル残基、好ましくは、Hまたはメチルであり、
R2は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の、必要に応じて置換されているC1-C20ヒドロカルビル残基、好ましくは不飽和の分枝鎖状C2-C16-ヒドロカルビル残基であるが、
但し、R3がC1-C4-ヒドロカルビル残基である場合、R2は少なくとも1つの追加の炭素原子を含有するヒドロカルビル残基を表す)、
の不飽和カルボン酸化合物の3-(E)-異性体を、前記カルボン酸化合物の3-(E)-および3-(Z)-異性体を含む異性体の混合物から単離するための方法であって、
異性体の前記混合物をリパーゼ(E.C. 3.1.1.3)で触媒された酵素変換反応にかけ、前記リパーゼは前記3-(E)-異性体を優先的に、特に立体選択的に変換し、前記3-(E)-異性体の変換生成物を前記反応混合物から単離する、方法。
2. 前記リパーゼが、3-(E)-立体選択的変換反応を触媒する、実施形態1に記載の方法。
3. リパーゼが、遊離形態または固定形態で適用される、実施形態1または2に記載の方法。
4. 前記リパーゼが、天然または組換えで生成された酵素であり、遺伝的に改変された(突然変異した)酵素であっていてもよい、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法。
5. 前記リパーゼが、カンジダ属の種、特にカンジダ・アンタークチカに由来する、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
6. 前記リパーゼが、配列番号330のアミノ酸配列を含むカンジダ・アンタークチカ リパーゼB(CALB)、または配列番号330に対する少なくとも60%の配列同一性を有し、前記3-(E)-選択性を保持するその突然変異体である、実施形態5に記載の方法。
7. 前記変換反応が、式(Ia):
Figure 0007263244000005
(式中、
R2およびR3は、上記で定義される通りである)
の酸の酵素エステル化反応を含み、
3-(E)-エステルが主に形成され、脂肪族アルカノールR1OH(式中、R1は上記で定義される通りであり、好ましくは直鎖状または分枝状の飽和C1-C20アルキル、好ましくはC1-C4アルキル残基である)が、必要に応じてリパーゼ活性を妨害または阻害さえしない有機溶媒の存在下である、
実施形態1から6のいずれか1つに記載の方法。
8. 前記変換反応が、式(Ib):
Figure 0007263244000006
(式中、
R1は、H、または直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和C1-C20-、特にC4-C20-ヒドロカルビル残基であり、
R2およびR3は、上記で定義される通りである)
のエステルの酵素エステル開裂反応を含み、
3-(E)-酸が主に形成され、反応が、水の存在下で、必要に応じてリパーゼ活性を妨害または阻害さえしない有機溶媒の存在下で、実施される、
実施形態1から6のいずれか1つに記載の方法。
9. 前記変換反応が、有機溶媒または水性有機溶媒において実施される、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
10. 前記有機溶媒が、少なくとも5個の炭素原子を有する炭化水素、特に、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンのような脂肪族または脂環式炭化水素、ベンゼン、キシレン、およびトルエンのような芳香族炭化水素、特に単核芳香族化合物、ならびにMTBE、ジイソプロピルエーテルのような脂肪族エーテルから選択される、実施形態9に記載の方法。好ましくは、好適な有機溶媒は、水で二相系を形成することができるべきである。
11. 前記カルボン酸化合物が、式(II)
Figure 0007263244000007
(式中、R1は、上記で定義される通りである)
の3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸化合物である、
実施形態1から10のいずれか1つに記載の方法。
12. 一般式(Ia):
Figure 0007263244000008
(式中、
R2およびR3は、上記で定義される通りである)
の不飽和3-(E)-カルボン酸を製造する方法であって、
a)式(Ia)の前記カルボン酸の3-(E)-および3-(Z)-異性体を含む異性体混合物を、式R1OH(式中、R1は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C1-C20ヒドロカルビル残基、好ましくは直鎖状または分枝状の飽和C1-C20アルキル、好ましくはC1-C4アルキル残基である)のアルカノールの存在下で、および実施形態1から6のいずれか1つに記載のリパーゼ酵素の存在下で、酵素エステル化反応にかけ、
b)ステップa)で形成される前記3-(E)-カルボン酸エステルを、例えば、(酸塩として)未反応酸異性体を水相に移送することによって、および、変換の間に存在したか、またはその後添加したかのいずれかの有機溶媒を用いてエステルを回収することによって、単離し、ならびに
c)ステップb)の前記単離されたエステルを、式(Ia)の対応する3-(E)-カルボン酸にけん化する、
方法。
13. 一般式(Ia):
Figure 0007263244000009
(式中、
R2およびR3は、上記で定義される通りである)
の不飽和3-(E)-カルボン酸を製造する方法であって、
a)式(Ib)
Figure 0007263244000010
(式中、
R1は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C1-C20ヒドロカルビル残基、好ましくは直鎖状または分枝状の飽和C1-C20アルキル、好ましくはC1-C4アルキル残基であり、
R2およびR3は、上記で定義される通りである)
のカルボン酸エステルの3-(E)-および3-(Z)-異性体を含む異性体混合物を、実施形態1から6のいずれか1つに記載のリパーゼ酵素の存在下で、好ましくは水と必要に応じて有機溶媒の存在下で、酵素エステル開裂反応にかけ、
b)ステップa)で形成される前記3-(E)-カルボン酸エステルを、好ましくは反応混合物の水相由来の遊離酸として、単離する
方法。
14. 実施形態9または10に記載の有機溶媒が適用される、実施形態12または13に記載の方法。
15. 不飽和カルボン酸の前記3-(E)-異性体が、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸である、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法。
16. 前記異性体混合物が、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸および3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸の混合物、または式R1OH(式中、R1は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C1-C20ヒドロカルビル残基である)のアルカノールの3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルおよび3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルの混合物を含む、実施形態1から15のいずれか1つに記載の方法。
17. a)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸および3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を含む異性体混合物を、式R1OH(式中、R1は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C1-C20ヒドロカルビル残基、好ましくは直鎖状または分枝状の飽和C1-C20アルキル、好ましくはC1-C4アルキル残基である)のアルカノールの存在下で、および実施形態9または10に記載の溶媒中の実施形態1から6のいずれか1つに記載のリパーゼ酵素の存在下で、酵素エステル化反応にかけ、
b)ステップa)で形成される前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルを、未反応酸(特に、3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸)から、特に蒸留、または好ましくは抽出によって分離し、
c)単離された前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルを、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸にけん化する、
3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を製造するための、実施形態16に記載の方法。
18. a)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルおよび3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルを含む異性体混合物を、実施形態9または10に記載の溶媒中の実施形態1から6のいずれか一項に記載のリパーゼ酵素の存在下で、好ましくは水の存在下で、酵素エステル開裂反応にかけ、
b)ステップa)で形成される前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を、未反応エステル(特に、3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステル)から、特に蒸留、または好ましくは抽出によって分離する、
3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を製造するための、実施形態16に記載の方法。
19. 式(III)
Figure 0007263244000011
の(-)-アンブロックスを製造する方法であって、
a)実施形態1から18のいずれか一項に記載の方法を適用することによって、前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を得るステップ、
b)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を3-(E)/7-(E)-ホモファルネソールに化学還元するステップ、および
c)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソールを(-)-アンブロックスに酵素的に環化させるステップ
を含む、方法。
20. 式(III)
Figure 0007263244000012
の(-)-アンブロックスを製造する方法であって、
a)実施形態1から18のいずれか一項に記載の方法を適用することによって、前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を得るステップ、
b)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を式(IV)
Figure 0007263244000013
のスクラレオリドに酵素的に環化させるステップ、
および
c)前記スクラレオリドを(-)-アンブロックスに化学的に変換するステップ
を含む、方法。
21. 酵素環化が、ホモファルネソイン酸シクラーゼ活性を示す、分子内トランスフェラーゼ(E.C. 5.4)、特にホモファルネソイン酸シクラーゼ(E.C. 5.4.99.17)、特にスクアレン-ホペンシクラーゼ(E.C. 5.4.99.17)の存在下で実施される、実施形態19または20に記載の方法。
22. 前記シクラーゼが、天然または組換えで生成されたスクアレン-ホペンシクラーゼであり、遺伝的に改変された(突然変異した)スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)であってもよい、実施形態21に記載の方法。
23. 前記シクラーゼが、メチロコッカス・カプスラータス(Methylococcus capsulatus)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ブラディリゾビウム・ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)、フランキア(Frankia)属の種、ストレプトマイセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)、または、好ましくはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)に由来するスクアレンホペンシクラーゼである、実施形態22に記載の方法。
24. 前記シクラーゼが、ザイモモナス・モビリス由来であって、配列番号2によるアミノ酸配列または配列番号2に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態23に記載の方法。
25. 好ましくは実質的に立体異性的に純粋な3-(E)/7-(E)-形態において、特に上記の本明細書に記載の方法にしたがって製造される、アルキル基が、C2-C10、特にC3-C8-アルキル、例えば、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチル、ならびにペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ならびに、それらの構造異性体から選択される、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸アルキルエステル。
本発明の前記態様で適用可能な一般的なシクラーゼにおいて、それらの野生型配列(配列番号およびGenbank番号を記述する)、およびそれらの微生物源を参照することによる、下記に列挙するSHCがある。
Figure 0007263244000014
Figure 0007263244000015
Figure 0007263244000016
Figure 0007263244000017
Figure 0007263244000018
Figure 0007263244000019
Figure 0007263244000020
Figure 0007263244000021
Figure 0007263244000022
Figure 0007263244000023
Figure 0007263244000024
Figure 0007263244000025
Figure 0007263244000026
Figure 0007263244000027
配列番号2は、Zm-SHC-1としても公知のシクラーゼのアミノ酸配列である。
3. 本発明による酵素および酵素突然変異体
本発明は、具体的に開示されたリパーゼおよびシクラーゼの使用に限定されないだけでなく、その機能的等価物にも拡張される。
具体的に開示される酵素の「機能的等価物」または「類似体」は、本発明の範囲内で、所望の生物学的機能または活性、例えば、酵素活性をさらに有する、その様々なポリペプチドである。
例えば、「機能的等価物」は、酵素活性について用いられる試験において、本明細書に定義される酵素の少なくとも1~10%、または少なくとも20%、または少なくとも50%、または少なくとも75%、または少なくとも90%より高いか、またはより低い活性を示す酵素を意味する。
本発明による「機能的等価物」はまた、特に、上述のアミノ酸配列の少なくとも1つの配列部分において、具体的に記述されたものとは異なるが、それにも拘わらず、上記の生物活性の1つを有するアミノ酸を有する突然変異体を意味する。かくして、「機能的等価物」は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個または15個などの1個以上のアミノ酸付加、置換、挿入、欠失および/または反転により得られる突然変異体を含み、記述される変化は、それらが本発明による特性のプロファイルを突然変異体にもたらすという条件で、任意の配列位置に存在してもよい。機能的等価性は、特に、反応パターンが突然変異体と未変化のポリペプチドとの間で質的に一致する場合、すなわち、例えば、同じ基質が異なる速度で変換される場合にも提供される。好適なアミノ酸置換の例を、以下の表中に示す。
Figure 0007263244000028
上記の意味における「機能的等価物」はまた、記載されるポリペプチドの「前駆体」、ならびに該ポリペプチドの「機能的誘導体」および「塩」でもある。
「前駆体」は、その場合、所望の生物活性を有するか、または有さないポリペプチドの天然または合成の前駆体である。
「塩」という表現は、本発明によるタンパク質分子のカルボキシル基の塩ならびにアミノ基の酸付加の塩を意味する。カルボキシル基の塩は、公知の方法で製造することができ、無機塩、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄および亜鉛塩、ならびに有機塩基、例えば、トリエタノールアミンなどのアミン、アルギニン、リジン、ピペリジンなどとの塩を含む。酸付加の塩、例えば、塩酸または硫酸などの無機酸との塩ならびに酢酸およびシュウ酸などの有機酸との塩も、本発明によって包含される。
本発明によるポリペプチドの「機能的誘導体」を、公知の技術を用いて、機能的アミノ酸側基上で、またはそのN末端もしくはC末端で生成することもできる。そのような誘導体は、アンモニアまたは第1級もしくは第2級アミンとの反応により得られる、例えば、カルボン酸基の脂肪族エステル、カルボン酸基のアミド;アシル基との反応により生成される、遊離アミノ基のN-アシル誘導体;またはアシル基との反応により生成される、遊離ヒドロキシ基のO-アシル誘導体を含む。
「機能的等価物」は、他の生物から取得することができるポリペプチド、ならびに天然の変異体も当然に含む。例えば、相同な配列領域のエリアを、配列比較により確立し、等価な酵素を、本発明の具体的なパラメータに基づいて決定することができる。
「機能的等価物」はまた、例えば、所望の生物学的機能を示す、本発明によるポリペプチドの断片、好ましくは、個々のドメインまたは配列モチーフも含む。
「機能的等価物」は、さらに、上述のポリペプチド配列またはそれから誘導される機能的等価物および機能的なN末端もしくはC末端結合において少なくとも1つのさらなる機能的に異なる異種配列のうちの1つを有する融合タンパク質(すなわち、融合タンパク質部分の実質的な相互機能的な障害を有さない)である。これらの異種配列の非限定例は、例えば、シグナルペプチド、ヒスチジンアンカーまたは酵素である。
また、本発明にしたがって含まれる「機能的等価物」は、具体的に開示されるタンパク質の相同体である。これらのものは、上述のような同一性パーセント値を有する。前記値は、具体的に開示されるアミノ酸配列との同一性を指し、PearsonおよびLipman, Proc. Natl. Acad, Sci. (USA) 85(8), 1988, 2444-2448のアルゴリズムにしたがって算出することができる。
同一性%値を、BLASTアラインメント、blastpアルゴリズム(タンパク質-タンパク質BLAST)から、または以下に与えられるClustal設定を適用することにより算出することもできる。
本発明による相同ポリペプチドの同一性パーセンテージは、特に、本明細書に具体的に記載されるアミノ酸配列の1つの全長と比較したアミノ酸残基の同一性パーセンテージを意味する。
可能なタンパク質グリコシル化の場合、本発明による「機能的等価物」は、脱グリコシル化またはグリコシル化形態ならびにグリコシル化パターンを変化させることによって取得することができる改変形態の上記の型のタンパク質を含む。
本発明によるタンパク質またはポリペプチドのそのような機能的等価物または相同体を、突然変異誘発により、例えば、点突然変異、タンパク質の伸長または短縮により生成することができる。
本発明によるタンパク質のそのような機能的等価物または相同体を、突然変異体、例えば、短縮突然変異体の組合せデータベースをスクリーニングすることにより同定することができる。例えば、タンパク質変異体の多様化されたデータベースを、核酸レベルでの組合せ突然変異誘発により、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的連結により、生成することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列からの潜在的な相同体のデータベースの生成のために用いることができる非常に多くの方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成を、自動DNA合成装置中で実行した後、合成遺伝子を好適な発現ベクターにライゲーションすることができる。縮重ゲノムの使用により、潜在的なタンパク質配列の所望のセットをコードする、混合物中の全ての配列を供給することができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は、当業者には公知である(例えば、Narang, S.A. (1983) Tetrahedron 39:3; Itakuraら(1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakuraら、(1984) Science 198:1056; Ikeら(1983) Nucleic Acids Res. 11:477)。
先行技術において、点突然変異または短縮により生成された組合せデータベースの遺伝子産物のスクリーニング、および選択された特性を有する遺伝子産物に関するcDNAライブラリーのスクリーニングのためのいくつかの技術が公知である。これらの技術を、本発明による相同体の組合せ突然変異誘発により生成された遺伝子バンクの迅速なスクリーニングのために適合化させることができる。高効率分析に基づく大きい遺伝子バンクのスクリーニングのために最もよく用いられる技術は、複製させることができる発現ベクターへの遺伝子バンクのクローニング、得られるベクターデータベースによる好適な細胞の形質転換および所望の活性の検出が、生成物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件での組合せ遺伝子の発現を含む。データベース中の機能的突然変異体の頻度を増加させる技術である再帰的アンサンブル突然変異誘発(REM)を、スクリーニング試験と組み合わせて用いて、相同体を同定することができる(ArkinおよびYourvan (1992) PNAS 89:7811-7815; Delgraveら(1993) Protein Engineering 6(3):327-331)。
4. コード核酸配列
本発明はまた、本明細書に記載の酵素および突然変異体をコードする核酸配列に関する。
本発明はまた、本明細書に具体的に開示される配列に対してある特定の程度の「同一性」を有する核酸にも関する。2つの核酸間の「同一性」は、いずれの場合も、核酸の全長にわたる、ヌクレオチドの同一性を意味する。
例えば、以下の設定でClustal Method (Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr; 5(2):151-1)を用いるInformax(USA)社のVector NTI Suite 7.1プログラムにより、同一性を算出することができる:
複数のアラインメントパラメータ:
ギャップオープニングペナルティ 10
ギャップ伸長ペナルティ 10
ギャップ分離ペナルティ範囲 8
ギャップ分離ペナルティ オフ
アラインメント遅延のための同一性% 40
残基特異的ギャップ オフ
親水性残基ギャップ オフ
遷移加重 0
ペアワイズアラインメントパラメータ:
FASTアルゴリズム オン
K-タプルサイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウィンドウサイズ 5
最良斜線数 5
あるいは、Chenna, Ramu, Sugawara, Hideaki, Koike,Tadashi, Lopez, Rodrigo, Gibson, Toby J, Higgins, Desmond G, Thompson, Julie D. Multiple sequence alignment with the Clustal series of programs. (2003) Nucleic Acids Res 31 (13):3497-500、ウェブページ: http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.html#にしたがって、以下の設定で同一性を決定することができる:
DNAギャップオープンペナルティ 15.0
DNAギャップ伸長ペナルティ 6.66
DNAマトリックス 同一性
タンパク質ギャップオープンペナルティ 10.0
タンパク質ギャップ伸長ペナルティ 0.2
タンパク質マトリックス Gonnet
タンパク質/DNA ENDGAP -1
タンパク質/DNA GAPDIST 4
本明細書に記載の全ての核酸配列(一本鎖および二本鎖DNAおよびRNA配列、例えば、cDNAおよびmRNA)を、ヌクレオチド構成要素からの化学合成、例えば、個々の重複する、二重らせんの相補的核酸構成要素の断片縮合による公知の方法で生成することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホラミダイト法(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press, New York, pages 896-897)による公知の方法で実施することができる。DNAポリメラーゼのKlenow断片およびライゲーション反応ならびに一般的なクローニング技術による合成オリゴヌクレオチドの蓄積およびギャップの充填は、Sambrookら(1989)に記載されており、以下を参照されたい。
本発明はまた、例えば、人工ヌクレオチド類似体を用いて取得することができる、上記のポリペプチドおよびその機能的等価物の1つをコードする、核酸配列(一本鎖および二本鎖DNAおよびRNA配列、例えば、cDNAおよびmRNA)にも関する。
本発明は、本発明によるポリペプチドもしくはタンパク質またはその生物活性セグメントをコードする単離された核酸分子と、例えば、本発明によるコード核酸を同定または増幅するためのハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして用いることができる核酸断片との両方に関する。
本発明による核酸分子は、コード遺伝子領域の3'および/または5'末端に由来する非翻訳配列をさらに含有してもよい。
本発明はさらに、具体的に記載されるヌクレオチド配列またはそのセグメントと相補的である核酸分子に関する。
本発明によるヌクレオチド配列は、他の細胞型および生物における相同配列の同定および/またはクローニングのために用いることができるプローブおよびプライマーの生成を可能にする。そのようなプローブまたはプライマーは一般に、本発明による核酸配列のセンス鎖または対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12個、好ましくは少なくとも約25個、例えば、約40、50または75個の連続するヌクレオチドに「ストリンジェントな」条件下(以下を参照)でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含む。
「単離された」核酸分子は、天然の核酸供給源中に存在する他の核酸分子から分離され、さらに、それが組換え技術により生成される場合、他の細胞材料もしくは培養培地を実質的に含まないか、またはそれが化学的に合成される場合、化学的前駆体もしくは他の化学物質を含まなくてもよい。
本発明による核酸分子を、分子生物学の標準的な技術および本発明にしたがって供給される配列情報を用いて単離することができる。例えば、cDNAを、ハイブリダイゼーションプローブとしての具体的に開示される完全な配列またはそのセグメントの1つおよび標準的なハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F.およびManiatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載のもの)を用いて、好適なcDNAライブラリーから単離することができる。さらに、開示される配列またはそのセグメントの1つを含む核酸分子を、この配列に基づいて構築されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応によって単離することができる。この方法で増幅された核酸を、好適なベクター中にクローニングし、DNA配列決定により特徴付けることができる。また、本発明によるオリゴヌクレオチドを、標準的な合成方法により、例えば、自動DNA合成装置を用いて生成することもできる。
本発明による核酸配列またはその誘導体、相同体またはこれらの配列の部分を、例えば、通常のハイブリダイゼーション技術またはPCR技術により、他の細菌から、例えば、ゲノムまたはcDNAライブラリーを介して単離することができる。これらのDNA配列は、標準的な条件で、本発明による配列とハイブリダイズする。
「ハイブリダイズする」とは、標準的な条件でほぼ相補的な配列に結合するが、これらの条件において非相補的パートナー間での非特異的結合が起こらないポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの能力を意味する。これについて、配列は、90~100%相補的であってもよい。互いに特異的に結合することができる相補的配列の特性は、例えば、ノーザンブロッティングもしくはサザンブロッティングにおいて、またはPCRもしくはRT-PCRにおけるプライマー結合において用いられる。
ハイブリダイゼーションのために、保存された領域の短いオリゴヌクレオチドが有利に用いられる。しかしながら、ハイブリダイゼーションのために、本発明による核酸のより長い断片または完全な配列を使用することも可能である。これらの標準的な条件は、用いられる核酸(オリゴヌクレオチド、より長い断片もしくは完全な配列)に応じて、またはハイブリダイゼーションのために用いられる核酸の種類、DNAもしくはRNAに応じて変化する。例えば、DNA:DNAハイブリッドの融解温度は、同じ長さのDNA:RNAハイブリッドのものよりも約10℃低い。
例えば、特定の核酸に応じて、標準的な条件は、0.1~5xSSC(1xSSC=0.15M NaCl、15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)の濃度を有する水性バッファー溶液中で42~58℃の温度、またはさらに、50%のホルムアミドの存在下では、例えば、5xSSC、50%ホルムアミド中、42℃の温度を意味する。有利には、DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、0.1xSSCおよび約20℃~45℃、好ましくは、約30℃~45℃の温度である。DNA:RNAハイブリッドについては、ハイブリダイゼーション条件は、有利には0.1xSSCおよび約30℃~55℃、好ましくは約45℃~55℃の温度である。ハイブリダイゼーションのためのこれらの記述された温度は、ホルムアミドの非存在下での約100ヌクレオチド長および50%のG+C含量を有する核酸について計算された融解温度値の例である。DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、関連する遺伝学の教科書、例えば、Sambrookら、1989に記載されており、例えば、核酸の長さ、ハイブリッドの種類またはG+C含量に応じて、当業者には公知である式を用いて算出することができる。当業者であれば、以下の教科書:Ausubelら(編), 1985, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York; HamesおよびHiggins (編), 1985, Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (編), 1991, Essential Molecular Biology: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxfordから、ハイブリダイゼーションに関するさらなる情報を取得することができる。
「ハイブリダイゼーション」は、特に、ストリンジェントな条件下で実行することができる。そのようなハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T., Molecular Cloning (A Laboratory Manual), 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, pages 9.31-9.57またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件は、特に、50%ホルムアミド、5xSSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5x Denhardt液、10%硫酸デキストランおよび20g/ml変性、剪断サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で一晩のインキュベーション、次いで、65℃の0.1xSSCを用いるフィルターの洗浄を意味する。
本発明はまた、具体的に開示される、または誘導される核酸配列の誘導体にも関する。
かくして、本発明によるさらなる核酸配列を、本明細書に具体的に開示される配列から誘導することができ、個々の、またはいくつかのヌクレオチドの付加、置換、挿入または欠失によってそれと異なってもよく、さらに、所望の特性プロファイルを有するポリペプチドをコードしてもよい。
本発明はまた、いわゆるサイレント突然変異を含むか、または特殊な元の、もしくは宿主生物のコドン使用にしたがって、具体的に記述された配列と比較して変化した核酸配列、ならびにその天然の変異体、例えば、スプライシング変異体または対立遺伝子変異体も包含する。
それはまた、保存的ヌクレオチド置換(すなわち、問題のアミノ酸が同じ電荷、サイズ、極性および/または溶解度のアミノ酸により置換される)により取得することができる配列にも関する。
本発明はまた、配列多型により具体的に開示される核酸から誘導される分子にも関する。これらの遺伝子多型は、天然の変異のため集団内の個体間に存在してもよい。これらの天然変異は通常、遺伝子のヌクレオチド配列の1~5%の変動をもたらす。
本発明による核酸配列の誘導体は、例えば、全配列範囲にわたって、誘導されるアミノ酸のレベルで少なくとも60%の相同性、好ましくは少なくとも80%の相同性、特に好ましくは少なくとも90%の相同性を有する、対立遺伝子変異体を意味する(アミノ酸レベルでの相同性に関しては、ポリペプチドについて上記に与えられた詳細を参照すべきである)。有利には、相同性は、配列の部分領域よりも高くてもよい。
さらに、誘導体は、本発明による核酸配列、例えば、動物、植物、真菌または細菌相同体、短縮された配列、コードおよび非コードDNA配列の一本鎖DNAまたはRNAの相同体でもあることも理解されるべきである。例えば、相同体は、本明細書に具体的に開示される配列中に与えられる全DNA領域にわたって、DNAレベルで、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは、少なくとも70%、さらに特に好ましくは少なくとも80%の相同性を有する。
さらに、誘導体は、例えば、プロモーターとの融合物であることが理解されるべきである。記述されるヌクレオチド配列に付加されるプロモーターを、プロモーターの機能性または効力を損傷することなく、少なくとも1つのヌクレオチド交換、少なくとも1つの挿入、反転および/または欠失により改変することができる。さらに、プロモーターの効力を、その配列を変化させることによって増加させるか、または異なる属の生物のものであっても、より効率的なプロモーターと完全に交換することができる。
5. 本発明による構築物
本発明はまた、調節ヌクレオチド配列の遺伝子制御下で、本発明によるポリペプチドまたは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する発現構築物、ならびにこれらの発現構築物のうちの少なくとも1つを含むベクターに関する。
「発現ユニット」とは、本発明によれば、本明細書に定義されるプロモーターを含み、発現させようとする核酸または遺伝子との機能的結合の後に、この核酸またはこの遺伝子の発現、すなわち、転写および翻訳を調節する、発現活性を有する核酸を意味する。したがって、この文脈においては、それは「調節核酸配列」とも呼ばれる。プロモーターに加えて、他の調節エレメント、例えば、エンハンサーが存在してもよい。
「発現カセット」または「発現構築物」は、本発明によれば、発現させようとする核酸または発現させようとする遺伝子と機能的に関連する発現ユニットを意味する。かくして、発現ユニットとは対照的に、発現カセットは、転写および翻訳を調節する核酸配列だけでなく、転写および翻訳の結果としてタンパク質として発現される核酸配列も含む。
用語「発現」または「過剰発現」は、本発明の文脈においては、対応するDNAによりコードされる、微生物中での1つ以上の酵素の細胞内活性の生成または増加を記載する。このために、例えば、遺伝子を生物中に挿入する、存在する遺伝子を別の遺伝子で置き換える、遺伝子のコピー数を増加させる、強力なプロモーターを使用する、または高い活性を有する対応する酵素をコードする遺伝子を使用することが可能であり、必要に応じて、これらの手段を組み合わせることができる。
好ましくは、本発明によるそのような構築物は、いずれの場合も、コード配列と機能的に関連する、それぞれのコード配列から5'側上流にあるプロモーター、および3'側下流にあるターミネーター、必要に応じて、さらなる通常の調節エレメントを含む。
「プロモーター」、「プロモーター活性を有する核酸」または「プロモーター配列」は、本発明によれば、転写される核酸と機能的に関連する、この核酸の転写を調節する核酸を意味する。
「機能的」または「機能し得る」関連は、この文脈では、それぞれの調節エレメントが核酸配列の転写においてその機能を実行することができるような、例えば、プロモーター活性を有する核酸および転写される核酸配列の1つと、必要に応じて、さらなる調節エレメント、例えば、核酸の転写を可能にする核酸配列、および例えば、ターミネーターとの連続的配置を意味する。これは、化学的意味における直接的関連を必ずしも必要としない。エンハンサー配列などの遺伝子制御配列は、より遠い位置から、またはさらには他のDNA分子から標的配列に対してその機能を発揮することもできる。転写される核酸配列がプロモーター配列の後ろ(すなわち、3'末端)に位置し、2つの配列が互いに共有的に結合する配置が好ましい。プロモーター配列と、遺伝子組換え的に発現される核酸配列との距離は、200bp(塩基対)未満、または100bp未満または50bp未満であってもよい。
プロモーターおよびターミネーターは別として、記載することができる他の調節エレメントの例は、標的配列、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点などである。好適な調節配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
本発明による核酸構築物は、特に、本明細書で具体的に記載されるもの、またはその誘導体および相同体、ならびに遺伝子発現を制御する、例えば、増加させるための1つ以上の調節シグナルと機能し得る形で、または機能的に有利に結合する本明細書で具体的に記載されるアミノ酸配列から誘導することができる核酸配列から選択される配列を含む。
これらの調節配列に加えて、これらの配列の天然の調節は、依然として実際の構造遺伝子の前に存在してもよく、必要に応じて、天然の調節のスイッチが切られるように遺伝的に変化され、遺伝子の発現が増加していてもよい。核酸構築物は、より単純な設計のもの、すなわち、コード配列の前に挿入される任意のさらなる調節シグナルを含まない、およびその調節と共に天然のプロモーターを除去しないものであってもよい。その代わりに、調節が最早起こらず、遺伝子発現が増加するように、天然の調節配列がサイレンシングされる。
好ましい核酸構築物は、有利には、核酸配列の発現増加を可能にする、プロモーターと機能的に関連する、1つ以上の上記のエンハンサー配列も含有する。他の調節エレメントまたはターミネーターなどのさらなる有利な配列を、DNA配列の3'末端に挿入することもできる。本発明による1以上のコピーの核酸を、構築物中に含有させることができる。構築物はまた、必要に応じて、構築物上での選択のための、抗生物質耐性または栄養要求補完遺伝子などの他のマーカーを含有してもよい。
好適な調節配列の例は、cos-、tac-、trp-、tet-、trp-tet-、lpp-、lac-、lpp-lac-、lacIq-、T7-、T5-、T3-、gal-、trc-、ara-、rhaP (rhaPBAD)SP6-、ラムダ-PR-などのプロモーター中またはグラム陰性細菌において有用であるラムダ-PLプロモーター中に含有される。他の有利な調節配列は、例えば、グラム陽性プロモーターace、amyおよびSPO2中に、酵母または真菌プロモーターADC1、MFアルファ、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH中に含有される。人工プロモーターを調節のために用いることもできる。
発現のために、核酸構築物を、宿主生物中に、有利には、宿主中での遺伝子の最適な発現を可能にするベクター、例えば、プラスミドまたはファージ中に挿入する。プラスミドおよびファージに加えて、ベクターはまた、当業者には公知の他の全てのベクター、例えば、SV40、CMV、バキュロウイルスおよびアデノウイルスなどのウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミド、および線状または環状DNAを意味すると理解される。これらのベクターは、宿主生物中で自己複製することができるか、または染色体的に複製することができる。これらのベクターは、本発明のさらなる実施形態である。
好適なプラスミドは、例えば、大腸菌中では、pLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11もしくはpBdCI;ノカルジオ型放線菌中では、pJAM2;ストレプトミセス(Streptomyces)中では、pIJ101、pIJ364、pIJ702もしくはpIJ361; バチルス中では、pUB110、pC194もしくはpBD214; コリネバクテリウム(Corynebacterium)中では、pSA77もしくはpAJ667; 真菌中では、pALS1、pIL2もしくはpBB116; 酵母中では、2alphaM、pAG-1、YEp6、YEp13もしくはpEMBLYe23または植物中では、pLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004もしくはpDH51である。上記のプラスミドは、可能なプラスミドの小選択である。他のプラスミドは当業者には周知であり、例えば、書籍Cloning Vectors (Pouwels P.H.ら(編), Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)中に見出すことができる。
ベクターのさらなる実施形態においては、本発明による核酸構築物または本発明による核酸を含有するベクターを、微生物中に線状DNAの形態で有利に挿入し、異種または相同組換えにより宿主生物のゲノム中に組み込むことができる。この線状DNAは、プラスミドなどの線状化ベクターまたは本発明による核酸構築物もしくは核酸のみを含んでもよい。
生物中での異種遺伝子の最適な発現のために、生物中で用いられる特定のコドン使用にしたがって核酸配列を変化させることが有利である。問題の生物の他の公知の遺伝子のコンピュータ評価に基づいて、コドン使用を容易に決定することができる。
本発明による発現カセットの生成は、好適なコードヌクレオチド配列を含む好適なプロモーターと、ターミネーターシグナルまたはポリアデニル化シグナルとの融合に基づく。このために、例えば、T. Maniatis, E.F. FritschおよびJ. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)ならびにT.J. Silhavy, M.L. BermanおよびL.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)およびAusubel, F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)に記載のような、一般的な組換えおよびクローニング技術が用いられる。
組換え核酸構築物または遺伝子構築物を、有利には、好適な宿主生物中での発現のために宿主特異的ベクター中に挿入して、宿主中での遺伝子の最適な発現を可能にする。ベクターは当業者には周知であり、例えば、「Cloning Vectors」(Pouwels P.H.ら、Publ. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に見出すことができる。
6. 本発明に従って用いることができる宿主
文脈に応じて、用語「微生物」とは、本発明による出発微生物(野生型)または遺伝的に改変された微生物、またはその両方を意味する。
用語「野生型」は、本発明によれば、対応する出発微生物を意味し、天然の生物に対応する必要はない。
本発明によるベクターを用いて、例えば、少なくとも1つの本発明によるベクターを用いて形質転換された、本発明によるポリペプチド生成のために使用することができる、組換え微生物を製造することができる。有利には、上記の本発明による組換え構築物を、好適な宿主系に挿入し、発現させる。好ましくは、当業者にはよく知られている一般的なクローニングおよびトランスフェクション法、例えば、共沈降、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションなどを用いて、それぞれの発現系における記述された核酸の発現を確保する。好適な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubelら、Publ. Wiley Interscience, New York 1997、またはSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている。
原則として、全ての原核生物は、本発明による核酸または核酸構築物のための組換え宿主生物とみなすことができる。細菌は、有利には、宿主生物として使用される。好ましくは、これらは、特にロドコッカス(Rhodococcus)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ノカルディア(Nocardia)属、ゴルドニア(Gordonia)属、スケルマニア(Skermania)属、およびツカムレラ(Tsukamurella)属の、ならびに、TAG生成ストレプトマイセス(Streptomycetes)属、WE生成アシネトバクター(Acinetobacter)属およびアルカニボラックス(Alcanivorax)属、ならびに、エシェリキア(Escherichia)属の組換え株、とりわけ大腸菌(E. coli)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、とりわけC. グルタニカム(C. glutamicum)、およびバチルス属、とりわけ枯草菌のような、PHA、TAG、またはWE型の封入体を生成する能力を有する天然もしくは組換えの細菌から選択される。
次いで、本発明による1つまたは複数の宿主生物は、好ましくは、本発明に記載の核酸配列、核酸構築物、またはベクターの少なくとも1つを含有し、これらは上記で定義される酵素活性をコードする。
本発明による方法で使用される生物は、宿主生物に応じて、当業者によく知られた方法で増殖または飼育する。一般に、微生物は、一般的に糖質の形態での炭素源、一般的に窒素の有機源の形態での窒素源(例えば、酵母抽出物または硫酸アンモニウムなどの塩)、微量元素、例えば、鉄塩、マンガン塩、およびマグネシウム塩、ならびに必要に応じてビタミンを含有する液体培地中で、0℃~100℃、好ましくは10℃~60℃の温度で、酸素曝気で増殖させる。液体栄養培地のpHは、増殖の間、固定値で、すなわち、調節して、または調節せずに、維持することができる。増殖は、回分式、半回分式または連続式で実施することができる。栄養は、発酵の開始時に供給することができるか、または、非連続的に続けてか(subsequently)、半連続的かもしくは連続的かのいずれかで供給することができる。
7. 本発明の酵素の組換え製造
本発明はまた、前記酵素を発現する微生物を培養し、培養物から所望の生成物を単離することによる、本発明による方法で使用される酵素の製造のための方法に関する。
本発明にしたがって使用される微生物は、回分式プロセス、または流加もしくは連続式流加プロセスで、連続的または断続的に培養できる。培養の公知の方法の概要は、Chmielによる教科書(Bioprocesstechnik 1. Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))、または、Storhasによる教科書(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))で見出せる。
用いられる培養培地は、適切な様式で特定の株の要件を満たさなければならない。様々な微生物に関する培養培地の説明は、ハンドブック「Manual of Methods for General Bacteriology」of the American Society for Bacteriology (Washington D. C., USA, 1981)に与えられている。
本発明にしたがって用いることができるこれらの培地は、一般に、1つ以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンおよび/または微量元素を含む。
好ましい炭素源は、モノ-、ジ-またはポリサッカリドなどの糖である。非常に良好な炭素源は、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、スターチまたはセルロースである。糖蜜などの複合化合物、または精糖からの他の副生成物を介して糖を培地に添加することもできる。また、様々な炭素源の混合物を添加することが有利であってもよい。他の可能な炭素源は、大豆油、ヒマワリ油、ピーナッツ油およびココナッツ油などの油および脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸またはリノール酸などの脂肪酸、グリセロール、メタノールまたはエタノールなどのアルコールおよび酢酸または乳酸などの有機酸である。
窒素源は、通常、有機もしくは無機窒素化合物またはこれらの化合物を含有する材料である。窒素源の例としては、アンモニアガスまたは硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくは硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸塩、尿素、アミノ酸またはコーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク質、酵母抽出物、肉抽出物その他などの複合窒素源が挙げられる。これらの窒素源は、別々に又は混合物として使用することができる。
培地中に存在してもよい無機塩化合物は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄の塩化物、リン酸塩または硫酸塩を含む。
無機硫黄含有化合物、例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸塩、硫化物だけでなく、メルカプタンおよびチオールなどの有機硫黄化合物も、硫黄源として用いることができる。
リン酸、リン酸二水素カリウムもしくはリン酸一水素二カリウムまたは対応するナトリウム含有塩を、リン源として用いることができる。
キレート剤を培地に添加して、溶液中の金属イオンを保持することができる。特に好適なキレート剤は、カテコールもしくはプロトカテクエートなどのジヒドロキシフェノール、またはクエン酸などの有機酸を含む。
本発明にしたがって用いられる発酵培地はまた、例えば、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸およびピリドキシンを含む、ビタミンまたは増殖促進剤などの他の増殖因子を含有してもよい。増殖因子および塩は、酵母抽出物、糖蜜、コーンスティープリカーなどの複合培地成分に由来することが多い。さらに、好適な前駆体を培養培地に添加することができる。培地中の化合物の正確な組成は、特定の実験に強く依存し、それぞれ特定の場合について個別に決定しなければならない。培地最適化に関する情報を、教科書「Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach」(Publ. P.M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) p. 53-73, ISBN 0 19 963577 3)に見出すことができる。増殖培地を、Standard 1(Merck)またはBHI(Brain heart infusion、DIFCO)などの供給業者から取得することもできる。
培地の全ての成分を、加熱(1.5barおよび121℃で20分)または滅菌濾過によって滅菌する。成分を、一緒に、または必要に応じて別々に滅菌することができる。全ての培地成分は、増殖の開始時に存在するか、または必要に応じて、連続的に、もしくはバッチ供給によって添加してもよい。
培養の温度は通常、15℃~45℃、好ましくは、25℃~40℃であり、一定に保持するか、または実験中に変化させてもよい。培地のpH値は、5~8.5の範囲、好ましくは、約7.0であるべきである。増殖のためのpH値を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアもしくはアンモニア水などの塩基性化合物またはリン酸もしくは硫酸などの酸性化合物を添加することによって増殖中に制御することができる。消泡剤、例えば、脂肪酸ポリグリコールエステルを、気泡形成を制御するために用いることができる。プラスミドの安定性を維持するために、選択作用を有する好適な物質、例えば、抗生物質を、培地に添加することができる。酸素または酸素含有気体混合物、例えば、外気を培養物中に供給して、好気状態を維持する。培養物の温度は通常、20℃~45℃である。最大の所望の生成物が形成されるまで、培養を継続する。これは通常、10時間~160時間以内に達成される。
必要に応じて、高周波数の超音波により、例えば、French圧力セル中での高圧により、オスモライシスにより、界面活性剤、溶解酵素もしくは有機溶媒の作用により、ホモジェナイザーにより、または列挙された方法のいくつかの組合せにより、細胞を破壊することができる。
8. 本発明の生体触媒による方法のための反応条件
本発明の方法の間に、または、上記の本明細書で定義される複数ステップの方法の個別のステップの間に存在する少なくとも1つの酵素は、天然もしくは組換えで1つまたは複数の酵素を生成する生細胞、収穫された細胞、死細胞、透過性化細胞、細胞粗抽出物、精製抽出物、または、本質的に純粋もしくは完全に純粋な形態において存在することができる。少なくとも1つの酵素は、溶液中に、または、担体上に固定された酵素として存在し得る。1つまたはいくつかの酵素は、同時に、可溶性および固定化形態で存在し得る。
本発明による方法は、当業者に公知の普通の反応器において、異なる範囲の規模で、例えば、実験室規模(数ミリリットルから数十リットルまでの反応体積)から産業規模(数リットルから数千立方メートルの反応体積)までで実施することができる。リパーゼが、非生細胞で、必要に応じて透過性化細胞で内包された形態、多少精製された細胞抽出物の形態、または精製形態で使用される場合、化学反応器を使用することができる。化学反応器は通常、少なくとも1つの酵素の量、少なくとも1つの基質の量、pH、温度、および反応培地の循環を制御することが可能である。少なくとも1つの酵素が生細胞に存在する場合、プロセスは発酵である。この場合、生体触媒による生成は、バイオリアクター(発酵器)で行い、生細胞に対する好適な生体条件(例えば、栄養、温度、曝気、酸素または他の気体の存在または非存在、抗生物質などでの培養培地)に必要なパラメータは、制御することができる。当業者にとって、化学反応器またはバイオリアクター、例えば、化学的もしくは生物工学的方法を実験室規模から産業規模までアップスケーリングするのための手段、または、プロセスパラメータを最適化するための手段はよく知られており、これらはまた、文献(生物工学的方法については、Crueger und Crueger, Biotechnologie - Lehrbuch der angewandten Mikrobiologie, 2. Ed., R. Oldenbourg Verlag, Munchen, Wien, 1984を参照)に広く記載されている。
少なくとも1つの酵素を含有する細胞は、物理的もしくは機械的手段、例えば、超音波もしくは無線周波数パルス、フレンチプレス、または化学的手段、例えば、劣張性の媒体、培地に存在する溶菌酵素および界面活性剤、または、そのような方法の組合せによって透過性化することができる。界面活性剤の例は、ジギトニン、n-ドデシルマルトシド、オクチルグリコシド、Triton(登録商標)X-100、Tween(登録商標)20、デオキシコレート、CHAPS(3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)、Nonidet(登録商標)P40、(エチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)などである。
少なくとも1つの酵素が固定化される場合、不活性担体に結合される。好適な担体材料は、当業界で公知であり、例えば、EP-A-1149849、EP-A-1 069 183、およびDE-OS 100193773、ならびにそれらに引用される参考文献(担体材料に関して特に含まれるもの全て)に開示されている。好適な担体材料の例は、粘土、粘土鉱物、例えば、カオリン、珪藻土、パーライト、シリカ、アルミナ、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロース粉末、陰イオン交換材料、合成ポリマー、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタンならびにポリオレフィン、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンである。担体に結合した酵素を調製するために、担体材料は通常、多孔形態が好ましい微細粉末の形態で用いられる。担体材料の粒径は通常、5mm、特に、2mmを超えない。少なくとも1つの酵素が全細胞調製物中に存在する場合、前記全細胞調製物は、遊離または固定形態で存在してもよい。好適な担体材料は、例えば、Ca-アルギン酸またはカラゲナンである。酵素ならびに細胞を、グルタルアルデヒドによって直接連結することができる。様々な固定化方法が当業界で公知である(例えば、J. LalondeおよびA. Margolin、「Immobilization of Enzymes」in K. Drauz und H. Waldmann, Enzyme Catalysis in Organic Synthesis 2002, Vol.III, 991-1032, Wiley-VCH, Weinheim)。
変換反応は、回分式、半回分式または連続式で実施することができる。反応物(必要に応じて栄養)は、反応の開始時に供給することができるか、または、非連続的に続けてか、半連続的か連続的かのいずれかで供給することができる。
本発明の反応は、特定の反応の型に応じて、水性または非水性反応培地で実施することができる。エステル開裂反応は、好ましくは、水の存在下で、特に水性有機溶媒系、好ましくは二相系の存在下で実施する。エステル化反応は、好ましくは、水の不在下で、より詳細には、水を含まないか実質的に含まない有機溶媒の存在下で実施する。
水性培地は、pHを5~9の範囲の値、例えば6~8に調節するための好適なバッファーを含有し得る。
非水性培地は、実質的に水を含まない、すなわち、約1wt%未満、または0.5wt%未満の水を含有する。
特に、生体触媒による方法を有機非水性培地で実施する。好適な有機溶媒として、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、もしくはシクロオクタンのような例えば5~8個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、もしくはジクロロベンゼンのような芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、エチル-tert-ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルのような脂肪族非環式エーテル、または、その混合物を指し得る。好ましくは、有機溶媒は、二相溶媒系を水で形成する能力を有するものを適用する。
反応物/基質の濃度は、反応条件を最適にするように調節することができるが、これは適用される具体的な酵素に応じてであってよい。例えば、初期の基質濃度は、0.1~0.5M、例えば10~100mMであり得る。
反応温度は、反応条件を最適にするように調節することができるが、これは適用される具体的な酵素に応じてであってよい。例えば、反応は、0~70℃の範囲の温度、例えば20~50または25~40℃で実施し得る。反応温度の例は、約30℃、約35℃、約37℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、および約60℃である。
プロセスは、基質間で平衡になるまで進めることができ、次いで生成物を得るが、早期に停止してもよい。通常のプロセス時間は、1分~25時間、特に10分~6時間、例えば、1時間~4時間、特に1.5時間~3.5時間の範囲である。
8.1 ホモファルネシル酸のような3-不飽和カルボン酸の選択的酵素エステル化
好ましい実施形態において、特に(3E,7E)-および(3Z,7E)-ホモファルネシル酸のような3-不飽和カルボン酸の(3E/Z)異性体、脂肪族アルコール、必要に応じて有機溶媒の混合物を、エステル化反応を実施するためにリパーゼ酵素と処置する。
好適なリパーゼの非限定例は、カンジダ・アンタークチカ リパーゼ(CALB)、およびNovozym435(登録商標)のようなその固定化類似体である。
好適なアルコールの非限定例は、脂肪族C1-C20-アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、およびn-オクタノールである。
好適な溶媒の非限定例は、特に、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンのような脂肪族炭化水素、例えば、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、例えば、MTBE、およびジイソプロピルエーテルのようなジアルキルエーテルである。
好ましい実施形態において、1つの等価アルコールを、本質的に完全な変換を得るために、(3E)-カルボン酸、特にホモファルネシル酸の(3E,7E)-異性体の1つの等価物単位で利用する。低量のアルコールを適用することでエステルの収率を制限する。
反応は、約0℃と+80℃の温度範囲で適切に実施する。反応の進行は、GCまたはHPLC分析を用いて制御することができる。
カルボン酸異性体の分離型の酸/エステル混合物を得る。
8.2 ホモファルネシル酸エステルのような3-不飽和カルボン酸エステルの選択的酵素けん化
別の実施形態において、異性体の分離型混合物は、3-不飽和カルボン酸の3E/Z-異性体混合物、特にホモファルネシル酸アルキルエステルの(3E,7E)-および(3Z,7E)-異性体の混合物の酵素触媒されるエステル開裂を適用することによって得られる。反応において、遊離3E-酸、特に(3E,7E)-ホモファルネシル酸異性体、および未反応3Zエステル、特に未反応(3Z,7E)-ホモファルネシル酸エステルを得られる。
好ましい実施形態において、カルボン酸アルキルエステルの異性体混合物を、必要に応じて有機溶媒に溶解させて、水の存在下で、リパーゼ酵素を適用することによって変換する。
好適なリパーゼの非限定例は、カンジダ・アンタークチカ リパーゼ(CALB)、およびNovozym435(登録商標)のようなその固定化類似体である。
エステルの好適なアルキル残基の非限定例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチルである。
好適な溶媒の非限定例は、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素、トルエン、およびキシレンのような芳香族炭化水素、例えば、MTBE、およびジイソプロピルエーテル、THFのようなエーテルである。
8.3 (-)-アンブロックスの調製
調製は、上記のスキーム1に図示されている公知の方法を適用することによって、本発明にしたがって得られる立体異性的に純粋な(3E/7E)ホモファルネシル酸から出発して実施し得る。
スキーム1に記述されるEP16156410およびWO2010/139719、ならびに、異なる起源のシクラーゼ酵素を適用することによって不飽和基質の生体触媒による変換を記載したWO2012/066059の開示は、参照によって組み込まれる。
次いで、例えば、本発明の(3E/7E)-ホモファルネシル酸のシクラーゼ触媒される変換によって得られるような、スクラレオリドを、(例えばLiAlH4またはNaBH4を用いて)化学還元して、アンブロックス-1,4-ジオールを形成する[Mookherjeeら; Perfumer and Flavourist (1990), 15: 27]。次いで、アンブロックス-1,4-ジオールは、(-)-アンブロックスへの異なるプロセスを用いて化学的に変換し得る(例えばUS 5,274,134を参照)。
化合物(-)-アンブロックスの生体触媒による合成もまた、文献[Neumannら; Biol Chem Hoppe Seyler (1986), 367: 723]に記載されている。分子は、ホモファルネソール((3Z, 7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン-1-オール)から得られ、アリサイクロバチルス・アシドカルダリウス(以前はバチルス・アシドカルダリウス(Bacillus acidocaldarius))由来のスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)を触媒として使用した。
9. 生成物の単離
本発明の方法は、最終または中間体生成物を、必要に応じて立体異性的または鏡像体的に実質的に純粋な形態において、回収するステップをさらに含むことができる。用語「回収すること」は、培養物または反応媒体から化合物を抽出すること、収獲すること、単離すること、または精製することを含む。化合物の回収を、限定されるものではないが、従来の樹脂(例えば、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂など)による処理、従来の吸着剤(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)による処理、pHの変化、溶媒抽出(例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどの従来の溶媒を用いる)、蒸留、透析、濾過、濃縮、結晶化、再結晶化、pH調整、凍結乾燥などの当業界で公知の任意の従来の単離または精製方法にしたがって実施することができる。
単離される生成物の同一性および純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、(IR、UV、NMRのような)分光法、着色方法、TLC、NIRS、酵素的または微生物アッセイのような、公知の技術によって決定し得る(例えば、Patekら(1994) Appl. Environ. Microbiol. 60:133-140、Malakhovら(1996) Biotekhnologiya 11 27-32、およびSchmidtら(1998) Bioprocess Engineer. 19:67-70、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (1996) Bd. A27, VCH: Weinheim, S. 89-90, S. 521-540, S. 540-547, S. 559-566, 575-581およびS. 581-587、Michal, G (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley and Sons; Fallon, A.ら(1987) Applications of HPLC in Biochemistry in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Bd. 17を参照)。
以下の例は、本発明を例示するためだけのものである。当業者に自明である数多くの考え得る変形例もまた、本発明の範囲内である。
実験の部:
A.材料
(1)酵素
リパーゼ:Novozym435、Novozymの商品、固定化カンジダ・アンタークチカ リパーゼB
アミノ酸配列:
Figure 0007263244000029
シクラーゼ:Zm-SHC-1、下記を参照
特に指定がない限り、組換えタンパク質をクローン化し、例えば、Sambrook, J, Fritsch, E.F.およびManiatis, T., Molecular cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている標準的な方法によって発現させる。
(2)化学物質
ホモファルネシル酸の異性体混合物を、例えば、2017年2月24日出願の欧州特許出願、出願番号EP 17157950.1に記載される方法によって得る。
ホモファルネシル酸エステルの異性体混合物は、ホモファルネシル酸の異性体混合物から、例えば、アルコールとのカルボン酸の一般的に公知の酸触媒されたエステル化(いわゆる、Fischerエステル化- Chemische Berichte 28, 1895, 3252-3258)にしたがって調製された。
適用する全ての他の化学物質は、実験室グレードのものである。
B.方法
1. ホモファルネシル酸化合物の分析のためのHPLCパラメータ
装置:Agilent Series 1100
カラム:Daicel(登録商標)のキラルパックAD-RH 5μm 150*4、6mm
溶出:-A:0.1Vol%のH3PO4を含む水
-B:0.1Vol%のH3PO4を含むアセトニトリル
Figure 0007263244000030
検出器:UV検出器、λ=205nm、BW=5nm
流速:1.2ml/分
注入:5μL
温度:40℃
期間:35分
圧力:およそ70bar
Figure 0007263244000031
2. スクラレオリドの分析のためのGCパラメータ
ホモファルネシル酸のスクラレオリドへの変換を、以下のGC系で決定することができる。
カラム:10M Optima 1
温度プロファイル:0分:100℃
5℃/分で200℃まで
5分後
30℃/分で320℃まで
その後、一定
方法の期間:30分
インジェクター温度:280℃
保持時間(RT):ホモファルネシル酸:11.7分でピーク1、12.1分でピーク2
スクラレオリド:およそ13.5分
未知の試料の濃度を決定する助けとなる較正系は、真正物質(Sigma、カタログ番号358002)を使用して確立する。
2. リパーゼ活性測定
Beisson, F.ら、Eur. J. Lipid Sci. Technol. 2000, 133-153によるトリブチリンアッセイ
B.例:
参照例1:Zm-SHC-1のクローン化および大腸菌の発現
シクラーゼの遺伝子を、オリゴヌクレオチドZm-SHC_fwおよびZm-SHC_revによって、ザイモモナス・モビリスから増幅し得る。
Figure 0007263244000032
各場合において、100ngのプライマーZm-SHC_fwおよびZm-SHC_revを、等モル比で混合した。Z.モビリス(ATCC31821)由来のゲノムDNAでのPCRを、Pwo-ポリメラーゼ(Roche Applied Science)および以下の温度グラジエントプログラムを使用して製造業者の説明書にしたがって実行した:95℃で3分間;95℃で30秒間、50℃で30秒間、および72℃で3分間30サイクル;72℃で10分間;使用するまで4℃。PCR生成物(約2.2kb)を、アガロースゲル電気泳動(1.2%電気泳動ゲル、Invitrogen)およびカラムクロマトグラフィー(GFX Kit、Amersham Pharmacia)によって単離し、続いて配列決定した(配列決定プライマー:Zm-SHC_fwおよびZm-SHC_rev)。得られる配列は、公表された配列と合致する。
PCR生成物を制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびBamHIで消化し、好適な消化ベクターpDHE19.2[9]に連結した。得られるプラスミドを配列決定することで、配列番号1で示される核酸配列を得た。対応するアミノ酸配列を、以下のテキスト/(配列番号2)に示す。
Figure 0007263244000033
Figure 0007263244000034
Figure 0007263244000035
プラスミドpDHE-Zm-SHC-1を大腸菌株TG10 pAgro4 pHSG575に形質転換した[Takeshitaら、Gene 1987, 61:63-74; Tomoyasuら、Mol Microbiol 2001, 40:397-413]。組換え大腸菌を、大腸菌LU15568と名付けた。
参照例2:Z.モビリス由来の組換えホモファルネソールシクラーゼの提供
好適な2mlの前培養物から接種して、大腸菌LU15568を、100mlの(バッフルを伴う)エルレンマイヤーフラスコ内の20mlのLB-Amp/Spec/Cm(100μg/lのアンピシリン、100μg/lのスペクチノマイシン、20μg/lのクロラムフェニコール)、0.1mMのIPTG、0.5 g/lのラムノース中で、37℃で16時間増殖し、5000*g/10分で遠心分離し、4℃で保管した。タンパク質抽出物を、15 mlの破壊バッファー(0.2MのTris/HCl、0.5MのEDTA、pH8.0)、375Uのベンゾナーゼ(例えばNovagen、25U/μL)、40μLのPMSF(100mM、i-PropOH中に溶解)、0.8gのスクロース、および、およそ0.5mgのリゾチーム中に細胞ペレットを縣濁することによって調製した。反応混合物を混合して、氷で30分間インキュベートした。その後、混合物を-20℃で凍結した。
反応混合物を解凍した後、蒸留水でおよそ40mlとし、再び氷で30分間インキュベートした。
その後、超音波(HTU-Soni 130、G. Heinemann(Schwabisch-Hall)による、振幅80%、15"パルス/15"パルス)を使用して、細胞を3分間、3回破壊した。破壊後、細胞片を4℃で60分間、26900*gで遠心分離することによって除去した。上清を廃棄し、ペレットを100mlの可溶化バッファー(50mMのTris/HCl、10mMのMgCl2×6H2O、1%のTriton X-100、pH8.0)中に再懸濁し、およそ5分間Potterホモジナイザーで粉砕した。その後、懸濁液を氷で30分間維持した。
均質化抽出物を4℃で1時間、26900*gで再遠心分離し、ペレットを破棄した。抽出物を酵素アッセイで使用し、活性が消失することなく-20℃で数週間にわたって保管することができる。タンパク質含有量は、1mg/mlの範囲内であった。
参照例3:大腸菌LU15568由来の組換えシクラーゼの活性判定
ホモファルネシル酸((3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を、参照例2に記載のタンパク質調製法でインキュベートした。具体的には、0.0412gのホモファルネシル酸を計量し(反応混合物中に20mM、Z,Z 0.44%、E,Z 10.13%、E,E 74.93%から構成される純度85.1%)、2.913mlの水、0.350mlのクエン酸ナトリウムバッファー(1Mのクエン酸ナトリウム、pH5.4)、0.560mlのMgCl2(0.5M溶液)をピペットで入れ、混合物を撹拌しながら37℃で30分間加温した。反応を、大腸菌LU15568ホモジネート(タンパク質含有量35mg/ml)を添加することで開始し、37℃まで加温した。反応混合物を、油浴中の磁気撹拌器上で、pH5.0で24時間、37℃での最高撹拌速度で撹拌した。0.5MのHClを使用して反応の間、pHを調節した。24時間のインキュベーションの後、反応混合物からの0.500mlを、1000mlのn-ヘプタン/n-プロパノール3:2で30分間ボルテックスすることによって抽出した。相分離の後の有機上清をGC分析で使用した(図1を参照のこと)。
本明細書の下記によってより詳述した分析を使用して、E,E異性体からの合計82.7%に対して74.5%の変換率を決定した。
実施例1:(3E,7E)-ホモファルネシル酸ブチルエステルの調製
56:44のモル比での71g(283mmol)の(3E,7E)-ホモファルネシル酸および(3Z,7E)-ホモファルネシル酸の混合物を、360mlのn-ヘプタンに溶解した。21g(283mmol)のn-ブタノールおよび470mgのNovozym435を添加した。混合物を23℃で48時間撹拌した。酵素を濾過で分離した。0℃の温度で、115mlのメタノールおよび5mlの水を添加した。水酸化ナトリウム水溶液(25%)を、10℃未満の温度で撹拌しながら添加することによって、混合物のpHをpH=12に調節した。
撹拌器を停止し、下部相を分離した。溶媒を除去した後、97%超の(3E,7E)の含有量を有する、43.5g(119mmol)のホモファルネシル酸ブチルエステルを得られた。
実施例2:溶媒の不在下で、ホモファルネシル酸の酵素エステル化の選択性における、異なるアルコールの影響
2g(8mmol)の(3E,7E)-ホモファルネシル酸および(3Z,7E)-ホモファルネシル酸の57:43混合物を、15mlの異なるアルコールに溶解し、20mgのNovozym435の存在下で、23℃で撹拌した。特定の時間間隔で、反応混合物の組成物を、HPLCで分析した。結果を以下の表1にまとめる。
Figure 0007263244000036
実施例3:ホモファルネシル酸の酵素エステル化の選択性における、異なるアルコールおよび溶媒ヘプタンの組合せの影響
2g(8mmol)の(3E,7E)-ホモファルネシル酸および(3Z,7E)-ホモファルネシル酸の57:43混合物を、15mlのヘプタンに溶解した。8mmolの異なるアルコールおよび20mgのNovozym435を添加し、混合物を23℃で撹拌した。所定時間間隔で、反応混合物の組成物を、HPLCにより分析した。結果を表2に示す。
Figure 0007263244000037
実施例4:ホモファルネシル酸の酵素エステル化の選択性における、ブタノールおよび異なる溶媒の組合せの影響
2g(8mmol)の(3E,7E)-ホモファルネシル酸および(3Z,7E)-ホモファルネシル酸の57:43混合物を、15mlの異なる溶媒に溶解した。8mmolのブタノールおよび20mgのNovozym435を添加し、混合物を23℃で撹拌した。所定時間間隔で、反応混合物の組成物を、HPLCにより分析した。結果を表3に示す。
Figure 0007263244000038
実施例5:酵素エステル開裂を介する遊離(3E,7E)-ホモファルネシル酸の調製
2g(7.56mmol)の(3E,7E)-および(3Z,7E)-ホモファルネシル酸メチルエステル((3E,7E):(3Z,7E)=51:49の比)を、50mlのトルエンに溶解した。10mlの水および50mgのNovozym435を添加した。混合物を23℃で撹拌した。6時間後、反応混合物の組成物を分析して、以下の通りであった:
36% (3E,7E)-ホモファルネシル酸メチルエステル
49% (3Z,7E)-ホモファルネシル酸メチルエステル
15% (3E,7E)-ホモファルネシル酸、および
0.1%未満 (3Z,7E)-ホモファルネシル酸。
酵素を、濾過によって除去し、反応混合物のpHを、炭酸ナトリウムを用いて9超に調節した。下部水相を分離した。水相のpHを、酸(10%塩酸)を用いて4未満の値に調節した。その後、相をトルエンで抽出する。得られたトルエン相は、95%超の純粋(3E,7E)-ホモファルネシル酸を含有する。
配列:
配列番号1~326 様々なSHC遺伝子の核酸/アミノ酸配列
配列番号327~328 PCRプライマー
配列番号329、330 リパーゼCALBの核酸/アミノ酸配列
本明細書に引用された参照を明示的に参照する。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
一般式(I)
Figure 0007263244000039
(式中、
R 1 は、H、または直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和C 1 -C 20 ヒドロカルビル残基であり、
R 3 は、H、またはC 1 -C 4 -ヒドロカルビル残基であり、
R 2 は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C 1 -C 20 ヒドロカルビル残基であるが、
但し、R 3 がC 1 -C 4 -ヒドロカルビル残基である場合、R 2 は少なくとも1つの追加の炭素原子を含有するヒドロカルビル残基を表す)、
の不飽和カルボン酸化合物の3-(E)-異性体を、前記カルボン酸化合物の3-(E)-および3-(Z)-異性体を含む異性体の混合物から単離するための方法であって、
異性体の前記混合物をリパーゼ(E.C. 3.1.1.3)で触媒された酵素変換反応にかけ、前記リパーゼは前記3-(E)-異性体を優先的に変換し、前記3-(E)-異性体の変換生成物を前記反応混合物から単離する、方法。
(実施形態2)
前記リパーゼが、カンジダ属の種、特にカンジダ・アンタークチカに由来する、実施形態1に記載の方法。
(実施形態3)
前記リパーゼが、配列番号330のアミノ酸配列を含むカンジダ・アンタークチカ リパーゼB(CALB)、または配列番号330に対する少なくとも60%の配列同一性を有し、前記3-(E)-選択性を保持するその突然変異体である、実施形態2に記載の方法。
(実施形態4)
前記変換反応が、式(Ia):
Figure 0007263244000040
(式中、
R 2 およびR 3 は、上記で定義される通りである)
の酸の酵素エステル化反応を含み、
3-(E)-エステルが主に形成される、実施形態1から3のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態5)
前記変換反応が、式(Ib)
Figure 0007263244000041
(式中、
R 1 は、H、または直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和のC 1 -C 20 -、特にC 4 -C 20 -ヒドロカルビル残基であり、
R 2 およびR 3 は、上記で定義される通りである)
のエステルの酵素エステル開裂反応を含み、
3-(E)-酸が主に形成される、実施形態1から3のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態6)
前記変換反応が、有機溶媒または水性有機溶媒において実施される、実施形態1から5のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態7)
前記カルボン酸化合物が、式(II)
Figure 0007263244000042
(式中、R 1 は、上記で定義される通りである)
の3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸化合物である、実施形態1から6のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態8)
一般式(Ia):
Figure 0007263244000043
(式中、
R 2 およびR 3 は、上記で定義される通りである)
の不飽和3-(E)-カルボン酸を製造する方法であって、
a)式(Ia)の前記カルボン酸の3-(E)-および3-(Z)-異性体を含む異性体混合物を、式R 1 OH(式中、R 1 は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C 1 -C 20 ヒドロカルビル残基である)のアルカノールの存在下で、および実施形態1または2に記載のリパーゼ酵素の存在下で、酵素エステル化反応にかけ、
b)ステップa)で形成される前記3-(E)-カルボン酸エステルを単離し、
c)ステップb)の前記単離されたエステルを、式(Ia)の対応する3-(E)-カルボン酸にけん化する、方法。
(実施形態9)
一般式(Ia):
Figure 0007263244000044
(式中、
R 2 およびR 3 は、上記で定義される通りである)
の不飽和3-(E)-カルボン酸を製造する方法であって、
a)式(Ib)
Figure 0007263244000045
(式中、
R 1 は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C 1 -C 20 -ヒドロカルビル残基であり、
R 2 およびR 3 は、上記で定義される通りである)
のカルボン酸エステルの3-(E)-および3-(Z)-異性体を含む異性体混合物を、実施形態1または2に記載のリパーゼ酵素の存在下で、酵素エステル開裂反応にかけ、
b)ステップa)で形成される前記3-(E)-カルボン酸を単離する、方法。
(実施形態10)
実施形態6に記載の有機溶媒が適用される、実施形態8または9に記載の方法。
(実施形態11)
不飽和カルボン酸の前記3-(E)-異性体が、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸である、実施形態1から10のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態12)
前記異性体混合物が、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸および3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸の混合物、または式R 1 OH(式中、R 1 は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C 1 -C 20 ヒドロカルビル残基である)のアルカノールの3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルおよび3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルの混合物を含む、実施形態1から11のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態13)
a)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸および3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を含む異性体混合物を、式R 1 OH(式中、R 1 は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C 1 -C 20 ヒドロカルビル残基である)のアルカノールの存在下で、および実施形態6に記載の溶媒中の実施形態1または2に記載のリパーゼ酵素の存在下で、酵素エステル化反応にかけ、
b)ステップa)で形成される前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルを、未反応酸から、特に蒸留、または好ましくは抽出によって分離し、
c)単離された前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルを、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸にけん化する、
3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を製造するための、実施形態12に記載の方法。
(実施形態14)
a)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルおよび3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルを含む異性体混合物を、実施形態6に記載の溶媒中の実施形態1または2に記載のリパーゼ酵素の存在下で、および特に水の存在下で、酵素エステル開裂反応にかけ、
b)ステップa)で形成される前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を、未反応エステルから、特に蒸留、または、好ましくは抽出によって分離する、
3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を製造するための、実施形態12に記載の方法。
(実施形態15)
式(III)
Figure 0007263244000046
の(-)-アンブロックスを製造する方法であって、
a)実施形態1から14のいずれか一項に記載の方法を適用することによって、前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を得るステップ、
b)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を3-(E)/7-(E)-ホモファルネソールに化学還元するステップ、および
c)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソールを(-)-アンブロックスに酵素的に環化させるステップを含む、方法。
(実施形態16)
式(III)
Figure 0007263244000047
の(-)-アンブロックスを製造する方法であって、
a)実施形態1から14のいずれか一項に記載の方法を適用することによって、前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を得るステップ、
b)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を式(IV)
Figure 0007263244000048
のスクラレオリドに酵素的に環化させるステップ、
および
c)前記スクラレオリドを(-)-アンブロックスに化学的に変換するステップ
を含む、方法。
(実施形態17)
酵素環化が、分子内トランスフェラーゼ(E.C. 5.4)、特にホモファルネソイン酸シクラーゼ(E.C. 5.4.99.17)の存在下で実施される、実施形態15または16に記載の方法。
(実施形態18)
前記シクラーゼが、ザイモモナス・モビリス由来であって、配列番号2によるアミノ酸配列または配列番号2に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態17に記載の方法。
(実施形態19)
アルキル基が、C 2 -C 10 、特にC 3 -C 8 -アルキルから選択される、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸アルキルエステル。

Claims (18)

  1. 一般式(I)
    Figure 0007263244000049
    (式中、
    R1は、H、または直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和C1-C20ヒドロカルビル残基であり、
    R3は、H、またはC1-C4-ヒドロカルビル残基であり、
    R2は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C1-C20ヒドロカルビル残基であるが、
    但し、R3がC1-C4-ヒドロカルビル残基である場合、R2 の炭素数R 3 の炭素数よりも少なくとも1つ多い)、
    の不飽和カルボン酸化合物の3-(E)-異性体を、前記カルボン酸化合物の3-(E)-および3-(Z)-異性体を含む異性体の混合物から単離するための方法であって、
    異性体の前記混合物をリパーゼ(E.C. 3.1.1.3)で触媒された酵素変換反応にかけ、前記リパーゼは前記3-(E)-異性体を優先的に変換し、前記3-(E)-異性体の変換生成物を前記反応混合物から単離し、
    前記リパーゼが、配列番号330のアミノ酸配列を含むカンジダ・アンタークチカ リパーゼB(CALB)、または配列番号330に対する少なくとも90%の配列同一性を有し、前記3-(E)-選択性を保持するその突然変異体である、方法。
  2. 前記リパーゼが、カンジダ属の種、特にカンジダ・アンタークチカに由来する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記リパーゼが、配列番号330のアミノ酸配列を含むカンジダ・アンタークチカ リパーゼB(CALB)である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記変換反応が、式(Ia):
    Figure 0007263244000050
    (式中、
    R2およびR3は、上記で定義される通りである)
    の酸の酵素エステル化反応を含み、
    3-(E)-エステルが主に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記変換反応が、式(Ib)
    Figure 0007263244000051
    (式中、
    R1は、直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和のC1-C20-、特にC4-C20-ヒドロカルビル残基であり、
    R2およびR3は、上記で定義される通りである)
    のエステルの酵素エステル開裂反応を含み、
    3-(E)-酸が主に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記変換反応が、有機溶媒または水性有機溶媒において実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記カルボン酸化合物が、式(II)
    Figure 0007263244000052
    (式中、R1は、上記で定義される通りである)
    の3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸化合物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 一般式(Ia):
    Figure 0007263244000053
    (式中、
    R2およびR3は、上記で定義される通りである)
    の不飽和3-(E)-カルボン酸を製造する方法であって、
    a)式(Ia)の前記カルボン酸の3-(E)-および3-(Z)-異性体を含む異性体混合物を、式R1OH(式中、R1は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C1-C20ヒドロカルビル残基である)のアルカノールの存在下で、および請求項1または2に記載のリパーゼ酵素の存在下で、酵素エステル化反応にかけ、
    b)ステップa)で形成される前記3-(E)-カルボン酸エステルを単離し、
    c)ステップb)の前記単離されたエステルを、式(Ia)の対応する3-(E)-カルボン酸にけん化する、方法。
  9. 一般式(Ia):
    Figure 0007263244000054
    (式中、
    R2およびR3は、上記で定義される通りである)
    の不飽和3-(E)-カルボン酸を製造する方法であって、
    a)式(Ib)
    Figure 0007263244000055
    (式中、
    R1は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C1-C20-ヒドロカルビル残基であり、
    R2およびR3は、上記で定義される通りである)
    のカルボン酸エステルの3-(E)-および3-(Z)-異性体を含む異性体混合物を、請求項1または2に記載のリパーゼ酵素の存在下で、酵素エステル開裂反応にかけ、
    b)ステップa)で形成される前記3-(E)-カルボン酸を単離する、方法。
  10. 請求項6に記載の有機溶媒が適用される、請求項8または9に記載の方法。
  11. 不飽和カルボン酸の前記3-(E)-異性体が、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記異性体混合物が、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸および3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸の混合物、または式R1OH(式中、R1は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C1-C20ヒドロカルビル残基である)のアルカノールの3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルおよび3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルの混合物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. a)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸および3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を含む異性体混合物を、式R1OH(式中、R1は、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和C1-C20ヒドロカルビル残基である)のアルカノールの存在下で、および請求項6に記載の溶媒中の請求項1または2に記載のリパーゼ酵素の存在下で、酵素エステル化反応にかけ、
    b)ステップa)で形成される前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルを、未反応酸から、特に蒸留、または好ましくは抽出によって分離し、
    c)単離された前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルを、3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸にけん化する、
    3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を製造するための、請求項12に記載の方法。
  14. a)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルおよび3-(Z)/7-(E)-ホモファルネソイン酸エステルを含む異性体混合物を、請求項6に記載の溶媒中の請求項1または2に記載のリパーゼ酵素の存在下で、および特に水の存在下で、酵素エステル開裂反応にかけ、
    b)ステップa)で形成される前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を、未反応エステルから、特に蒸留、または、好ましくは抽出によって分離する、
    3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を製造するための、請求項12に記載の方法。
  15. 式(III)
    Figure 0007263244000056
    の(-)-アンブロックスを製造する方法であって、
    a)請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を適用することによって、前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を得るステップ、
    b)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を3-(E)/7-(E)-ホモファルネソールに化学還元するステップ、および
    c)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソールを(-)-アンブロックスに酵素的に環化させるステップを含む、方法。
  16. 式(III)
    Figure 0007263244000057
    の(-)-アンブロックスを製造する方法であって、
    a)請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を適用することによって、前記3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を得るステップ、
    b)3-(E)/7-(E)-ホモファルネソイン酸を式(IV)
    Figure 0007263244000058
    のスクラレオリドに酵素的に環化させるステップ、
    および
    c)前記スクラレオリドを(-)-アンブロックスに化学的に変換するステップ
    を含む、方法。
  17. 酵素環化が、分子内トランスフェラーゼ(E.C. 5.4)、特にホモファルネソイン酸シクラーゼ活性を示すスクアレン-ホペンシクラーゼ(E.C. 5.4.99.17)の存在下で実施される、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記シクラーゼが、ザイモモナス・モビリス由来であって、配列番号2によるアミノ酸配列または配列番号2に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の方法。
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