JP7011529B2 - テルペンの生体触媒環化のための方法及びその方法で使用され得るシクラーゼ変異体 - Google Patents

テルペンの生体触媒環化のための方法及びその方法で使用され得るシクラーゼ変異体 Download PDF

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Description

本発明は、シクラーゼを使用してテルペンを環化するための新規方法、及びシクラーゼ活性を有する新規変異体、及びテルペンの生体触媒環化のための方法、例えば、特にシトロネラール(citronellal)の環化によるイソプレゴール(isopulegol)の生成のための方法におけるそれらの使用;メントールの調製のための方法、及びテルペンに類似した構造モチーフを有するさらなる化合物の生体触媒変換のための方法に関する。
式(II)のイソプレゴール(2-イソプロペニル-5-メチル-シクロヘキサノール)は、「フラワーノート(flower note)」を生成するための芳香性化合物として使用されるテルペンである。さらに、これは、シトラール(citral)からのメントールの合成における中間体である。
Figure 0007011529000001
イソプレゴール異性体は、多数の精油中に天然に存在する。イソプレゴールはシトロネラールから比較的容易に形成されるので、式(I)の化合物(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-アール(3,7-dimethyloct-6-en-1-al))は、シトロネラールを伴ってしばしば存在するか、又は精油の抽出の間に形成される。(+)-シトロネラールから工業的に生成されたイソプレゴールは、一般に、高い割合の(-)-イソプレゴールを伴う様々な異性体の混合物である。
イソプレゴールの工業的生成は、(+)-シトロネラールの化学的環化によって主に実施される。元々は、シトロネラ(citronella)油から得られた80~85%の純粋な原材料が使用された。1990年代以降、これは、いわゆるタカサゴ(Takasago)プロセスからの光学的により純粋な(+)-シトロネラール(97.5%)で次第に置き換えられてきた。ここでは、Rh-BINAP錯体触媒(2,2'-ビス-(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチルとのRh錯体)を使用して、ゲラニルジエチルジアミンが非対称的に異性体化されて(+)-シトロネラールになる。
シトロネラールから出発するイソプレゴールの化学的合成は、何度も記載されている。(+)-シトロネラールは、銅-クロム触媒、臭化亜鉛、塩化アルキルアルミニウム(alkylaluminum chloride)、ロジウム錯体、固体酸-塩基触媒、ゼオライト又はシリカゲルを使用して環化され得る。最近、シリカゲル法は、臭化亜鉛を用いた方法によって次第に取って代わられている。後者の方が選択性が高いからである。
特別なシクラーゼの助けによるテルペンの環化が一般に知られている。例えば、天然のスクアレンは、スクアレン-ホペン(hopene)シクラーゼ(SHC)によって、五員環ホペンへと環化される。
細菌ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)由来のスクアレン-ホペンシクラーゼ(Zm-SHC)の遺伝子配列及びタンパク質配列が公知である(Genpept Accession No AAV90172 2004及びNat Biotechnol 2005、23:63-68、配列番号1及び2を参照)。
国際出願PCT/EP2010/057696(WO2010139719 A2)(その完全な開示は、本明細書中で明示的に参照される)において、ポリペプチドが、ホモファルネソール(homofarnesol)からアンブロキサン(ambroxan)への環化のための生体触媒として提案されている。
対応する生成生物における多数のモノテルペンの生合成が既に解明されている。これは、特異性が高い生体触媒による線状前駆体分子の環化を含むことが多い。前駆体は一般に、線状テルペンアルコールと二リン酸とのエステルである。かかる先駆体の一つの典型例は、ゲラニルピロリン酸である。ピロリン酸基は、分子から酵素的に排除され、引き続いて二つのリン酸イオンへと加水分解される。他方、カルボカチオンが形成され、これは次いで、さらなる分子内反応を経ることができ、例えばプロトンの排除によって再結合して、環式モノテルペンを形成する(Curr. Opin. Chem. Biol. 2009、13: 180-188)。
さらに、本発明が解決しようとする課題は、テルペン化合物を酵素触媒によって環化させる(例えば、線状シトロネラールをイソプレゴールへと環化させるなど)、テルペンのための公知の化学的環化方法の代替法を見出すことであった。
さらに、本発明が解決しようとする課題は、テルペンの環化(例えば、イソプレゴールの形成を伴うシトロネラールの環化)に使用され得る新規生体触媒を提供することであった。
上記第一の課題は、一つの反応工程を含む、一般式(I)
Figure 0007011529000002
のイソプレゴールの生成方法によって解決され、この方法において、一般式(II)
Figure 0007011529000003
のシトロネラールは、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素によって、式(I)の対応するイソプレゴールへと生体触媒によって環化される。
上記第二の課題は、驚くべきことに、野生型酵素(例えば、Zm-SHC-1(配列番号2))の変異体を提供することによって解決され得る。特に、このシクラーゼ、特にスクアレン-ホペンシクラーゼ(以下の、配列番号2~326のアラインメントを参照)中の少なくとも一つの高度に保存された配列位置における変異の標的化導入を通じて、酵素活性に、所望の様式で影響を与えることができるということが、実際に見出された。
図1aは、ザイモモナス・モビリス由来のスクアレン-ホペンシクラーゼ1(Zm-SHC-1)の野生型アミノ酸配列(配列番号2)を示す。飽和変異誘発(saturation mutagenesis)の位置486に印をつけている。図1bは、Zm-SHC-1の野生型核酸配列(配列番号1)を示す。飽和変異誘発の位置1456~1458に印をつけている。 図2は、基質として10mMのR(+)-シトロネラール及びS(-)-シトロネラールを用いた、時間の関数としての、F486A変異体と比較したSHC_1 WTタンパク質のターンオーバーを示す。30℃で種々の時間にわたるインキュベーション後の、基質及びイソプレゴール生成物異性体のパーセント分布を各場合において示す。シトロネラール(ひし形)、イソプレゴールI(四角)、イソプレゴールII(三角)及びイソプレゴールIII(バツ字)。 図3は、10mMのシトロネラールラセミ体を基質として用いた、野生型(wt)及び酵素なしのコントロール(K)と比較した、Zm-SHC-1の種々の変異体のターンオーバーを示す。30℃で一晩のインキュベーション後の、基質及びイソプレゴール生成物異性体のパーセント分布を各場合において示す。 図4は、1% Tritonの存在下で25mMのスクアレンを基質として用いた、野生型(wt)及び酵素なしのコントロール(K)と比較した、種々のZm-SHC-1変異体のターンオーバーを示す。30℃で70時間のインキュベーション後の、スクアレン及びホペンのパーセント分布を各場合において示す。 図5は、コントロールと比較した、変異体Ap-SHC:F481C、Bj-SHC:F447C、Sc-SHC:F449C、Zm SHC-2:F438C及びZm SHC-1と共に一晩インキュベートした後の20mMの基質の反応を各場合において示す。基質は、図5中ではシトロネラールラセミ体であった。 図6は、コントロールと比較した、変異体Ap-SHC:F481C、Bj-SHC:F447C、Sc-SHC:F449C、Zm SHC-2:F438C及びZm SHC-1と共に一晩インキュベートした後の20mMの基質の反応を各場合において示す。基質は、図6中ではR(+)-シトロネラールであった。 図7は、コントロールと比較した、変異体Ap-SHC:F481C、Bj-SHC:F447C、Sc-SHC:F449C、Zm SHC-2:F438C及びZm SHC-1と共に一晩インキュベートした後の20mMの基質の反応を各場合において示す。基質は、図7中ではS(-)-シトロネラールであった。
A.一般定義
本発明の意味では、「シクラーゼ」は一般に、特にシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を示す、酵素又は酵素変異体である。イソメラーゼサブクラスからの分子内トランスフェラーゼが、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素として適切である;即ち、EC番号EC 5.4.(Eur. J. Biochem. 1999、264、610~650による酵素コード)を有するタンパク質。特に、EC 5.4.99.17がその代表である。シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する適切な酵素は、特に、ホモファルネソールからアンブロキサンへの環化又はスクアレンからホペンへの環化もまたもたらし(従って、「SHC」:スクアレンホペンシクラーゼと称することもある)、国際出願PCT/EP2010/057696(本明細書中で明示的に参照される)に詳細に記載されたシクラーゼである。特に、本発明によるシクラーゼは、SHCの変異によって誘導されるシクラーゼである。
酵素反応の可逆性に基づき、本発明は、両方向の反応での本明細書中に記載される酵素反応に関する。
「シクラーゼ」の「機能的変異体」には、以下に定義するかかる酵素の「機能的等価物」が含まれる。
用語「生体触媒プロセス」とは、本発明による「シクラーゼ」又は「シクラーゼ活性」を有する酵素の触媒活性の存在下で実施される任意のプロセス、即ち、生の、又は精製された、溶解された、分散された若しくは固定された酵素の存在下でのプロセス、或いはかかる酵素活性を有する又は発現する微生物細胞全体の存在下でのプロセス、をいう。従って、生体触媒プロセスには、酵素プロセス及び微生物プロセスの両方が含まれる。
用語「立体特異的」とは、本発明に従って生成される化合物のいくつかの可能性のある立体異性体の一つが、高い「鏡像体過剰率」又は高い「鏡像体純度」(例えば、少なくとも90%ee、特に少なくとも95%ee、又は少なくとも98%ee、又は少なくとも99%ee)で、本発明による酵素の作用によって、少なくとも一つの不斉中心を有して生成されることを意味する。ee%値は、以下の式から計算される:
ee%=[XA-XB]/[XA+XB]*100
式中、XA及びXBは、それぞれ鏡像体A及びBのモル分率を示す。
「第一の球状(sphere)残基」及び「第二の球状残基」は、タンパク質の構造分析に基づき、シクラーゼの反応中心に対し空間的に近位に(special proximity)割り当てられたアミノ酸残基である。第一の球状に関する基準は、公開されたx線構造中に与えられたリガンド2-アザスクアレンからの距離である(pdb:1ump)。これらの残基は、コンピュータプログラム(http://ligin.weizmann.ac.il/cgi-bin/lpccsu/LpcCsu.cgi; Sobolev V, Sorokine A, Prilusky J, Abola EE, Edelman M. Automated analysis of interatomic contacts in proteins. Bioinformatics 1999; 15(4):327~332)を用いて自動的に決定された。このプログラムは、二つの分子が、それらの原子間の距離がファンデルワールス半径の合計±1Åに対応する場合に、互いに接触していると仮定する。第二の球状は、第一の球状の各残基に対し5Åの半径に位置する全てのアミノ酸を含む。従って、かかる残基は、定方向変異(directed mutation)を受けるため、酵素活性の標的化されたさらなる改変のために、特に適切であると思われる。
「標準条件下で参照基質」を用いて決定された「シクラーゼ活性」は、例えば、非環式基質からの環式生成物の形成を記述する酵素活性である。標準条件は、例えば、10mM~0.2Mの基質濃度、特に、15~100mM、例えば、約20~25mMの基質濃度;4~8のpH、及び例えば15~30℃又は20~25℃の温度である。これは、組換えシクラーゼ発現細胞、溶解したシクラーゼ発現細胞、その画分、又は富化若しくは精製されたシクラーゼ酵素を用いて決定され得る。特に、参照基質は、15~100mM又は約20~25mMの濃度、20~25℃及び4~6のpH(例えば4.5)の、式(II)のシトロネラール、特にR(+)-シトロネラール、又はシトロネラールラセミ体であり;これはまた、実施例においてより詳細に記載される。
「F486アナログ」位置は、機能的観点から配列番号2による位置F486に対応し、本明細書中で説明されるザイモモナス・モビリス以外の生物由来のSHCの配列アラインメントによって決定され得る。例えば、配列番号3のF486アナログ位置は位置F449であり、配列番号4のF486アナログ位置は位置F481であり、配列番号5のF486アナログ位置は位置F447であり、配列番号6のF486アナログ位置は位置F438である。対応する類似性が、本明細書中の配列番号2に関して具体的に記載された他の配列位置(例えば、いわゆる「第一の球状残基」及び「第二の球状残基」又はDXDDモチーフの、及び配列番号3~326におけるそれらの類似の位置)に適用される。
「テルペン」は、イソプレン単位(C5単位)から構成される炭化水素、特に非環式テルペン、例えば、スクアレンであり、その炭素数は5で割り切れる。
「テルペノイド」は、例えば、炭素原子及び/又はヘテロ原子のさらなる挿入により、テルペン、特に非環式テルペンから誘導される物質(例えば、シトロネラール)である。
本発明の目的では、「テルペン様」化合物は、特に、以下に定義する一般構造式(IV)の範囲内の化合物を含む。
本発明に従って一般に包含されるものは、本明細書中に記載される化合物の全ての異性体形態、例えば、構造異性対及びより具体的には立体異性体及びそれらの混合物、例えば、光学異性体又は幾何異性体、例えば、E異性体及びZ異性体、並びにそれらの組み合わせもである。分子中に二つ以上の不斉中心が存在する場合、本発明は、これらの不斉中心の異なる配置の全ての組み合わせ(例えば、鏡像体の対など)を包含する。
「メントール」は、(+)-メントール、(+)-イソメントール、(+)-ネオメントール、(+)-ネオイソメントール((+)-neoisomentol)、(-)-メントール、(-)-イソメントール、(-)-ネオメントール、(-)-ネオイソメントール及びそれらの任意の所望の組み合わせなどの、全ての立体異性体形態を包含する。
式(II)のシトロネラールは、式(R-II)のR(+)-シトロネラール及び式(S-II)のS(-)-シトロネラールの両方として、並びに式(II)のラセミ体として、市販されている。
Figure 0007011529000004
式(I)
Figure 0007011529000005
のイソプレゴールは、各場合において位置1、3及び6に光学活性中心を有し、その結果、式(I)のシトロネラールのラセミ体から出発して、原則として、各場合において二つの鏡像体を有する四つの異なるジアステレオマー、従って、合わせて八つの立体異性体があり得る。
Figure 0007011529000006
イソプレゴールは、イソプレゴールIとも呼ばれ、ネオ-イソプレゴールはイソプレゴールIIとも呼ばれ;イソ-イソプレゴールはイソプレゴールIIIとも呼ばれ;エピ-イソプレゴール又はネオ-イソ-イソプレゴールはイソプレゴールIVとも呼ばれる。
特に示さない限り、本明細書中で適用される一般的な化学的定義は、以下の通りである:
アルキル及びまたそれから誘導されるラジカル(基)(例えば、ヒドロキシアルキル)中の全てのアルキル部分、例えば:1~4個、1~6個、1~8個又は1~10個の炭素原子を有する、飽和の、直鎖又は分枝鎖の炭化水素ラジカル、例えば、
・C1~C6-アルキル:例えば、C1~C4-アルキルの代表例として、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル及び1,1-ジメチルエチル;並びにまた、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル及び1-エチル-2-メチルプロピル。
・ヒドロキシ-C1~C6-アルキル、例えば、ヒドロキシメチル、1-又は2-ヒドロキシエチル、1-、2-又は3-ヒドロキシプロピル、1-ヒドロキシメチルエチル、1-、2-、3-又は4-ヒドロキシブチル、1-ヒドロキシメチルプロピル及び2-ヒドロキシメチルプロピルなどのヒドロキシ-C1~C4-アルキルを含む。
アルケニルは、モノ不飽和又はポリ不飽和の、より具体的にはモノ不飽和の、2~4個、2~6個、2~8個、2~10個又は2~20個の炭素原子を有し、任意の所望の位置に一つの二重結合を有する、直鎖又は分枝鎖の炭化水素ラジカルを示し、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2
-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル及び1-エチル-2-メチル-2-プロペニルなどのC2~C6-アルケニルである。
「オキソ」は、例えば、それが結合するC原子と一緒になって、ケト基(C=O)を形成するラジカルである。
「メチレン」(=CH2)は、例えば、それが結合するC原子と一緒になって、ビニルラジカル(-CH=CH2)を形成するラジカルである。
B.本発明の特別な実施形態
本発明は、以下の特別な実施形態に特に関する。
1.配列番号2~326又はその部分配列から選択されるアミノ酸配列を含む、野生型酵素の変異体から選択される、シクラーゼ活性を有する酵素変異体であって、少なくとも一つの上記定義に従うシトロネラール異性体(又は異性体の混合物、例えばラセミ体)から、少なくとも一つの上記定義によるイソプレゴール異性体(又はジアステレオマーI~IVの対、例えばI及び/又はII)への少なくとも環化を触媒し、ここで、シクラーゼの部分配列又は短縮形態は、例えば、これらの配列のうちの一つの、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650又は700個連続するアミノ酸残基を含み、具体的配列の例えばN末端及び/又はC末端の短縮によってアクセス可能である。
2.a)配列番号2の位置F486における変異、又は
b)配列番号3~326から選択される配列における変異であって、変異した位置は、配列番号2の位置F486に対応する(即ち、「F486アナログ」位置である)、変異
を含む、実施形態1に記載の酵素変異体であって、
少なくとも一つのシトロネラール異性体から、少なくとも一つのイソプレゴール異性体への少なくとも環化は、変異によって行うことが可能であるか(即ち、対応する元の又は野生型のタンパク質はこの反応を触媒しない)、又は改変される(即ち、対応する元の又は野生型のタンパク質はこの反応を触媒するが、例えば、より低い生成物収率、ターンオーバー速度及び/又は立体特異性である)。さらに、シクラーゼの部分配列又は短縮形態はまた、配列番号2由来のF486に対応する位置において、このシクラーゼに典型的な(cycrase-typical)変異を有する。例えば、配列番号2によるシクラーゼのN末端短縮版は、この短縮版の一例である。これは、以下のN末端:(M)KIFGAEKTSYKPASDTIIGTDTLKRPN……を特徴とし、式中、N末端のKは、配列番号2の位置16に対応する。
3.各場合においてアミノ酸残基の最大25%、又は最大20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1%(例えば、1~30個、2~25個、3~20個又は4~15個又は5~10個のアミノ酸残基)が、欠失、挿入、置換、付加、逆位又はそれらの組み合わせによって、配列番号2~326による非変異野生型配列に対して変更されている、実施形態1又は2の一つに記載の酵素変異体。
4.配列番号2の位置F486における変異、又は配列番号3~326による配列のうち一つにおけるこの位置に対応する位置における変異が、F486N、F486Q、F486L、F486M、F486E、F486G、F486S、F486V、F486T、F486C、F486I及びF486Aから選択される置換、又はF486H、F486Y、F486W及びF486Dから任意選択で選択される置換である、実施形態1~3の一つに記載の酵素変異体。
5.さらに(又は或いはであるが、特にはさらに)、配列番号2の位置W374、D437、D440、F428、W555、Y561、Y702、Y705(いわゆる「第一の球状残基」)の一つにおける、又はこれらの位置から選択される少なくとも一つの対応する位置における少なくとも一つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8個)の変異が、配列番号3~326による配列のうち一つ中に存在する、実施形態1~4の一つに記載の酵素変異体。
6.配列番号2の位置D437及び/又はD439及び/又はD440(DXDDモチーフ)に変異が存在しないか、或いは配列番号3~326による配列のうち一つにおけるそれぞれの対応する位置に変異が存在しない、実施形態1~5の一つに記載の酵素変異体。
7.配列番号2の位置Y702に変異が存在しないか、若しくは配列番号3~326による配列のうち一つにおける対応する位置に変異が存在しないか、又は変異が存在する場合には、その変異は、置換Y702F又は任意選択でY702E若しくはY702D又は対応する置換である、実施形態1~6の一つに記載の酵素変異体。
8.配列番号2の位置P229、D439、D508、E601、G553、G556、N432、P436、P499、R224、S371、T376、T563、W414若しくはW624(いわゆる「第二の球状残基」)のうち少なくとも一つ(例えば、1~15、1~10又は1~5個、例えば、1、2、3又は4個)において、又は配列番号3~326による配列のうち一つにおけるこれらの位置から選択される少なくとも一つの対応する位置において、任意選択でさらに変異しており;配列番号2の位置E429、L700及びR554又は配列番号3~326の類似の位置において任意選択でさらに変異している、実施形態1~7の一つに記載の酵素変異体。
9.a)単一変異体
配列番号2又はその短縮版によるF486X、式中、X=N、Q、L、M、E、G、S、V、T、C、I又はA
配列番号2又はその短縮版によるY702X、式中、X=F、A、C又はS
配列番号2又はその短縮版によるY561X、式中、X=A又はS
(この短縮版は、例えば、以下のN末端配列:(M)KIFGAEKTSYKPASDTIIGTDTLKRPN……を含む。)
b)配列番号2による多重変異体F486A/Y702A、F486A/Y561A又はF486A/Y705A
c)配列番号3~325のうち一つから誘導された、a)又はb)に対応する変異体
から選択される、実施形態1~8の一つに記載の酵素変異体。
10.参照基質を使用して標準条件下で決定された各場合において、配列番号2によるアミノ酸配列を位置1から725まで、2から725まで又は16から725まで含み、任意選択でN末端がメチオニン残基で伸長されている酵素のシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性を示す、少なくとも50%(例えば、50~100%又は100%を上回って、例えば、>100~1000%)を含む、実施形態1~9の一つに記載の酵素変異体。
11.シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性が、標準条件下で参照基質としてシトロネラール(例えば、ラセミ体又はR(+)形態)を使用して決定される、実施形態10に記載の酵素変異体。
12.変異が、配列番号2によるアミノ酸配列を位置1から725まで、2から725まで又は16から725までの含み、任意選択でN末端がメチオニン残基で伸長されている酵素において生じる、実施形態1~11の一つに記載の酵素変異体。
13.実施形態1~12の一つに記載の変異体をコードする、核酸配列。
14.実施形態13に記載の核酸配列を含む、発現カセット。
15.少なくとも一つの調節エレメントの制御下に、少なくとも一つの実施形態13に記載の核酸配列又は少なくとも一つの実施形態14に記載の発現カセットを含む、組換えベクター。
16.少なくとも一つの実施形態13に記載の核酸配列又は少なくとも一つの実施形態14に記載の発現カセット又は少なくとも一つの実施形態15に記載のベクターを含む、組換え微生物。
17.一般式(I)
Figure 0007011529000007
のイソプレゴールの生成のための生体触媒プロセスであって、一般式(II)
Figure 0007011529000008
のシトロネラールが、ECクラスEC 5.4.99、特にECクラスEC 5.4.99.17の酵素によって、又はこの酵素を発現する微生物の存在下で、式(I)のイソプレゴールへと環化される、プロセス。
18.一般式(I)
Figure 0007011529000009
のイソプレゴールの生成のための生体触媒プロセスであって、一般式(II)
Figure 0007011529000010
のシトロネラールが、実施形態1~12の一つに記載の酵素変異体によって、又はこの酵素変異体を発現する実施形態16に記載の微生物の存在下で、式(I)のイソプレゴールへと環化される、プロセス。
19.a)請求項17又は18に記載の方法によってシトロネラールをイソプレゴールへと環化する工程、及び
b)イソプレゴールを触媒によって水素付加してメントールにする工程、
による、式III
Figure 0007011529000011
のメントールの生成方法。
20.水素付加が、水素並びに
・30~70重量%の、NiOとして計算したニッケルの酸素含有化合物
・15~45重量%の、ZrO2として計算したジルコニウムの酸素含有化合物
・5~30重量%の、CuOとして計算した銅の酸素含有化合物、及び
・0.1~10重量%の、MoO3として計算したモリブデンの酸素含有化合物
を含む触媒の存在下で生じ、重量%の数字は、乾燥非還元型触媒に基づくものである、請求項19に記載の方法。
21.一般式IV
Figure 0007011529000012
の化合物の酵素変換又は生体触媒変換の方法であって、式中、
「a」、「b」、「c」及び「d」は、各場合において互いに独立して、単結合又は二重結合のC-C結合を示し、但し、累積二重結合が排除されること及び以下を条件とする:
R1は以下の定義を有する:
(1)「a」が二重結合である場合:
R1は、
オキソ(=O)、又は
CH-(CH2)n-Zから選択され、
式中、nは0、1又は2であり、
Zは、OH、CHO、C(O)アルキル、例えば、C(O)C1~C4-アルキル、特に、C(O)-CH3又はC(O)-CH2CH3;COOH、C(CH2)-CH=CH2;C(OH)(CH3)-CH=CH2;C(CH3)=CH-CH=CH2;又は式C(CH3)=CH-CH2Yのラジカルであり、
式中、Yは、OH、CH2OH、COOH又はCH2C(O)CH3である;又は
(2)「a」が単結合である場合:
R1は、CH3;CHO;CH2CH2OH;CH=CH2;CH2C(O)OH;CH2CHO又はC3H6CH(CH3)CHOから選択され;
「a」が二重結合である場合、この二重結合はE配置又はZ配置を有する;
R2及びR3は、以下の定義を有する:
(1)「a」及び「b」がそれぞれ単結合である場合:
R2及びR3は、互いに独立して、H、アルキル、例えばC1~C4-アルキル、又はOHであるか、或いはR2及びR3は一緒になって、メチレン(=CH2)又はオキソ(=O)基である;又は
(2)「a」又は「b」が二重結合である場合、ラジカルR2及びR3のうち一方は存在せず、二つのラジカルのうちもう一方はH、C1~C4-アルキル、特にメチル、又はOHである;
R4はH又はヒドロキシ-C1~C4-アルキル、特にヒドロキシメチルである;
R5及びR6は、以下の定義を有する:
(1)「c」が単結合である場合:
R5及びR6はそれぞれHであるか、又はR5及びR6は一緒になって、オキソ(=O)基である;又は
(2)「c」が二重結合である場合、ラジカルR5及びR6のうち一方は存在せず、二つのラジカルのうちもう一方はHである;
R7、R8及びR9は、以下の定義を有する:
(1)「d」が単結合である場合:
ラジカルR7、R8及びR9のうち二つは、各場合において互いに独立して、H又はアルキル、例えばC1~C4-アルキル、特にメチル若しくはエチルであり、残りのラジカルはOHである;又は
(2)「d」が二重結合である場合、ラジカルR7、R8及びR9のうち一つは存在せず、二つのラジカルの残りは、各場合において互いに独立して、H又はアルキル、例えばC1~C4-アルキル、特にメチル若しくはエチルである;
R10は、H又はヒドロキシ-C1~C6-アルキル、例えばヒドロキシ-C1~C4-アルキル又はモノ不飽和若しくはポリ不飽和のC2~C6-アルケニル、例えば特にH若しくはCH=CH-C(CH3)=CH2であり;
この方法では、立体異性体的に純粋な形態の式IVの化合物又はそれらの立体異性体混合物を、クラスEC 5.4.99、特にクラスEC 5.4.99.17の酵素を使用して、又は実施形態1~12の一つに記載の酵素変異体を使用して、又はこれらの酵素若しくは酵素変異体を発現する実施形態16に記載の微生物の存在下で反応させる、方法。
22.式IVa
Figure 0007011529000013
の化合物
(式中、
R1は前記した定義を有し、特にラジカルCH-(CH2)n-Zであり、式中、
n=0かつZ=CHO又はCOOH;又は
n=1かつZ=OH;又は
n=2かつZ=C(O)CH3;COOH、C(CH2)-CH=CH2;C(CH3)=CH-CH=CH2;又は式C(CH3)=CH-CH2Yのラジカルであり、
式中、Yは、OH、CH2OH、COOH又はCH2C(O)CH3である;
かつ「a」はE配置又はZ配置を任意選択で有する);又は
式IVb
Figure 0007011529000014
の化合物
(式中、R1は前記した定義を有し、特にCH2CHOである);又は
式IVc
Figure 0007011529000015
の化合物
(式中、R1は前記した定義を有し、特にCH-CHOであり;ラジカルR7及びR8のうち一方はHであり、もう一方はC1~C4-アルキルであり、特に、R7はエチルであり、二重結合「a」及び「d」はZ配置を有する)、
から選択される化合物が変換される、実施形態21に記載の方法。
23.式IVの化合物が、シトロネラール;シトラール;ファルネソール;ホモファルネソール;ホモファルネシル酸(homofarnesylic acid)などのホモファルネソール誘導体;ゲラニルアセトン(geranylaceton)、メロナール(melonal);ノナジエナール(nonadienal);及びトリメチルデカテトラエン(trimethyldecatetraene)から選択される、実施形態20~22の一つに記載の方法。
24.テルペン及び/又はテルペノイドの環化のための、特にシトロネラールからイソプレゴールへの変換のための、ECクラスEC 5.4.99、特にECクラスEC 5.4.99.17の酵素の使用。
25.テルペン及び/又はテルペノイドの環化のための、及び実施形態20~23の一つ中の定義による一般式IVの化合物の変換のための、実施形態1~12の一つに記載の酵素変異体、実施形態13に記載の核酸、実施形態14に記載の発現構築物、実施形態15に記載の組換えベクター又は実施形態1に記載の組換え微生物の、使用。
25.シトロネラールからイソプレゴールへの変換のための、又はスクアレンのホペンへの変換のための、実施形態25に記載の使用。
26.一つの反応工程を含む、一般式(I)
Figure 0007011529000016
のイソプレゴールの生成方法であって、この方法において、一般式(II)
Figure 0007011529000017
のシトロネラールは、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素によって、式(I)の対応するイソプレゴールへと生体触媒によって環化される。
27.酵素が、以下のいずれかであるポリペプチド配列を有する、実施形態26に記載の方法:
a)配列番号2である、又は
b)アミノ酸残基の最大25%、例えば最大20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1%が、欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって、配列番号2に対して変更されており、配列番号2の酵素活性の少なくとも50%、例えば少なくとも60、65、70、75、80、85、90又は95%をなお有している。
28.酵素が、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物によってコードされている、実施形態26又は27に記載の方法。
29.酵素が、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物によってコードされており、この核酸配列が、遺伝子構築物又はベクターの一部である、実施形態26~28の一つに記載の方法。
30.酵素が、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物によってコードされており、この核酸配列が、宿主細胞中に存在している遺伝子構築物又はベクターの一部である、実施形態26~29の一つに記載の方法。
31.酵素が、以下からなる群より選択される形態で存在する、実施形態26~30の一つに記載の方法:
a)シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する、遊離の、任意選択で精製又は部分的に精製されたポリペプチド;
b)シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する、固定化されたポリペプチド;
c)細胞から単離された、a)又はb)によるポリペプチド;
d)シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有するポリペプチドを少なくとも一つ含む、細胞全体、任意選択で休止細胞又は消化された細胞;
e)d)の下に記載された細胞の細胞溶解物又は細胞ホモジネート。
32.細胞が、微生物、好ましくは、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも一つの異種核酸分子を発現するトランスジェニック微生物である、実施形態31に記載の方法。
33.イソプレゴールの生成が、単相水性系又は二相系で生じる、実施形態26~32の一つに記載の方法。
34.シトロネラールのイソプレゴールへの反応が、20℃から40℃までの範囲の温度及び/又は4から8までの範囲のpHで生じる、実施形態26~33の一つに記載の方法。
35.シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素が、ザイモモナス・モビリス、メチロコッカス・カプスラタス(Methylococcus capsulatus)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)、フランキア属の種(Frankia spec.)及びストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)からなる微生物の群より選択される微生物、特にザイモモナス・モビリスから単離された遺伝子によってコードされている、実施形態26~34の一つに記載の方法。
36.シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素が、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素を過剰産生する、エシェリキア属(Escherichia)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ラルストニア属(Ralstonia)、クロストリジウム属(Clostridium)、シュードモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、ザイモモナス属(Zymomonas)、ロドバクター属(Rhodobacter)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、バークホルデリア属(Burkholderia)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)及びラクトコッカス属(Lactococcus)からなる微生物の群より選択された微生物によって産生されたものである、実施形態26~35の一つに記載の方法。
37.シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素が、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素を過剰産生する、エシェリキア・コリ種(Escherichia coli)、シュードモナス・プチダ種(Pseudomonas putida)、バークホルデリア・グルマエ種(Burkholderia glumae)、コリネバクテリウム・グルタミクム種(Corynebacterium glutamicum)、サッカロマイセス・セレビシエ種(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス種(Pichia pastoris)、ストレプトマイセス・リビダンス種(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・セリカラー種、バチルス・スブチリス種(Bacillus subtilis)又はザイモモナス・モビリス種のトランスジェニック微生物によって産生されたものである、実施形態26~36の一つに記載の方法。
38.シトロネラールからイソプレゴールへの生体触媒変換のための、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素の使用。
39.酵素が、以下のいずれかであるポリペプチド配列を有する、実施形態38に記載の使用:
a)配列番号2である、又は
b)アミノ酸残基の最大25%、例えば最大20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1%が、欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって、配列番号2に対して変更されており、配列番号2の酵素活性の少なくとも50%、例えば少なくとも60、65、70、75、80、85、90又は95%をなお有している。
40.酵素が、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物によってコードされている、実施形態38又は39に記載の使用。
41.シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有し、シトロネラールからイソプレゴールへの生体触媒変換に役立つポリペプチドをコードする、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物を含む遺伝子構築物又はベクターの、シトロネラールの環化によるイソプレゴールの生成方法における使用。
42.シトロネラールからイソプレゴールへの生体触媒変換のためのシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素を調製するための、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物を含む遺伝子構築物又はベクターを含む宿主細胞の使用。
C.本発明のさらなる実施形態
1.特に適切な野生型配列
本発明に従って有用なSHC野生型配列、その配列番号、供給源生物、GenBank参照番号、配列番号2の位置F486に「対応する」アミノ酸残基、即ち、F486アナログ(「Aa」)、及びその配列位置を、以下の表に示す。情報は、以下のように設定した配列アラインメントに基づく:
プログラム:CLUSTALW、
デフォルトパラメータ:
タンパク質ギャップオープンペナルティ(Protein Gap Open Penalty) 10.0
タンパク質ギャップ伸長ペナルティ(Protein Gap Extension Penalty) 0.2
タンパク質ウェイトマトリクス(Protein weight matrix): Gonnetシリーズ
Figure 0007011529000018


Figure 0007011529000019
Figure 0007011529000020
Figure 0007011529000021
Figure 0007011529000022
Figure 0007011529000023
Figure 0007011529000024
Figure 0007011529000025
Figure 0007011529000026
Figure 0007011529000027
Figure 0007011529000028
Figure 0007011529000029
所望の基質特性を有するさらなる可能性のあるシクラーゼ変異体が、Zm-SHC-1の変異体についての知見に基づいて、これらから出発して生成され得る。
2.本発明によるさらなるタンパク質/酵素変異体
本発明は、本明細書中に具体的に開示されるシクラーゼ活性を有する変異体に限定されず、その機能的等価物にも拡張される。
具体的に開示された酵素及び酵素変異体(F486及び「F486アナログ」変異体、配列番号2~326、特に配列番号2~6に由来する)の「機能的等価物」又はアナログは、本発明の範囲内であり、種々のそのポリペプチドは、所望の生物学的活性、例えばシクラーゼ活性をさらに有する。
例えば、「機能的等価物」は、本発明の意味での「シクラーゼ活性」に適用される試験(即ち、標準条件下で参照基質を用いる)において、少なくとも1%、特に少なくとも約5~10%、例えば、少なくとも10%又は少なくとも20%、例えば、少なくとも50%又は75%又は90%、より高いか又はより低い酵素活性を有し、本明細書中に具体的に規定されるアミノ酸配列を含む酵素及び変異体(例えば、F486及び「F486アナログ」変異体、配列番号2~326;特に配列番号2~6に由来する)を含むものと理解される。
本明細書中で、機能的等価物に関する活性情報とは、特に示さない限り、本明細書中に規定される標準条件下で参照基質によって実施される、活性の決定をいう。
本発明の意味での「シクラーゼ活性」は、種々の公知の試験によって検出され得る。それに限定されないが、本発明者らは、標準条件下で、参照基質、例えばシトロネラールのラセミ体又はR(+)形態を使用する、上記のように及び実験セクションで説明するような試験について述べる場合がある。
機能的等価物はさらに、例えば、4と11との間のpHで安定であり、pH5~10の範囲の、例えば、特に6.5~9.5又は7~8又は約7.5の最適pH、及び15℃~80℃又は20℃~70℃の範囲の、例えば、約30~60℃又は約35~45℃、例えば40℃の最適温度を有利には有する。
本発明による「機能的等価物」はまた、特に、具体的に記載された変異(複数可)だけでなく、上記アミノ酸配列の少なくとも一つの配列位置において、具体的に記載されたアミノ酸以外のアミノ酸を有するにもかかわらず、上記生物学的活性のうち一つを有する、「変異体」(例えば、F486及び「F486アナログ」変異体、配列番号2~326;特に配列番号2~6に由来する)を含むことを理解すべきである。
「機能的等価物」は、一つ以上の、例えば、1~50、2~30、2~15、4~12又は5~10個の「さらなる変異」(例えば、アミノ酸の付加、置換、欠失及び/又は逆位)によって取得可能な変異体を含み、記述された変化は、それらが本発明による特性プロフィールを有する変異体を導く限り、任意の配列位置に存在し得る。機能的等価性は、特に、変異体と未変更のポリペプチドとの間の反応性プロフィールが、定性的に同じである、即ち、例えば同じ基質が異なる速度で変換される場合にも存在する。
この種の「さらなる変異」は、配列番号2による位置F486とは異なる、又は配列番号3~326、特に配列番号3~6のうち一つによるF486アナログ位置とは異なる、それぞれのアミノ酸配列の位置に存在する。
適切なアミノ酸置換の非限定的な例を以下の表に示す:
Figure 0007011529000030
上記意味での「機能的等価物」はまた、記載されたポリペプチドの「前駆体」並びにこのポリペプチドの「機能的誘導体」及び「塩」である。
「前駆体」は、所望の生物学的活性を有する又は有さない、ポリペプチドの天然又は合成の前駆体である。
用語「塩」とは、本発明によるタンパク質分子のカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、自体公知の方法で生成され得、無機塩(例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄及び亜鉛の塩)及び有機塩基(例えば、アミン、例えば、トリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジン)との塩などを含む。酸付加塩、例えば、鉱酸(例えば、塩酸又は硫酸)との塩、及び有機酸(例えば、酢酸及びシュウ酸)との塩もまた、本発明の目的である。
本発明によるポリペプチドの「機能的誘導体」もまた、公知の技術によって、機能的アミノ酸側鎖基上で、又はそのN末端若しくはC末端で、生成され得る。この種の誘導体は、例えば、カルボン酸基の脂肪族エステル、アンモニア又は第一級若しくは第二級アミンとの反応によって取得可能なカルボン酸基のアミド;アシル基との反応によって生成される遊離アミノ基のN-アシル誘導体;又はアシル基との反応によって生成される遊離ヒドロキシル基のO-アシル誘導体、を含む。
「機能的等価物」は当然、他の生物からアクセス可能なポリペプチド及び天然に存在するバリアントもまた含む。例えば、相同な配列領域の区域は、配列比較によって確定され得、等価な酵素は、本発明の具体的な情報に基づいて決定され得る。
「機能的等価物」はまた、例えば所望の生物学的機能を有する、本発明によるポリペプチドのフラグメント、好ましくは個々のドメイン又は配列モチーフを含む。
「機能的等価物」は、さらに、上記ポリペプチド配列又はそれ由来の機能的等価物のうち一つと、N末端若しくはC末端で機能的に連結された少なくとも一つのそれとは機能的に異なるさらなる異種配列とを有する、融合タンパク質である(即ち、融合タンパク質部分の相互の実質的な機能障害がない)。この種の異種配列の非限定的な例は、例えば、シグナルペプチド、ヒスチジンアンカー又は酵素である。
本発明による「機能的等価物」には、具体的に開示されたタンパク質のホモログも含まれる。これらは、Pearson及びLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85(8)、1988、2444~2448のアルゴリズムを使用して計算される、具体的に開示されたアミノ酸配列の一つに対する、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、特に少なくとも85%、例えば90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の相同性(又は同一性)を有する。本発明による相同なポリペプチドの相同性又は同一性の%は、特に、本明細書中に具体的に開示されたアミノ酸配列のうち一つの全長に対する、アミノ酸残基の同一性%を意味する。しかし特に、これらのホモログは、配列番号2~326;特に配列番号2~6に由来する、F486及び「F486アナログ」変異もまた有する。
同一性%値はまた、BLASTアラインメント、blastpアルゴリズム(タンパク質-タンパク質BLAST)に基づいて、又は以下に示すClustal設定を使用して、決定され得る。
可能性のあるタンパク質グリコシル化の場合、本発明による「機能的等価物」は、脱グリコシル化形態又はグリコシル化形態、並びにグリコシル化パターンを変化させることによって取得可能な改変形態の、上に示した型のタンパク質を含む。
本発明によるタンパク質又はポリペプチドのホモログは、変異誘発、例えば、タンパク質の点変異、伸長又は短縮によって、生成され得る。
本発明によるタンパク質のホモログは、変異体、例えば短縮変異体のコンビナトリアルデータベースをスクリーニングすることによって同定され得る。例えば、タンパク質バリアントの多様なデータベースは、核酸レベルでのコンビナトリアル変異誘発、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的ライゲーションによって、生成され得る。変性したオリゴヌクレオチド配列から可能性のあるホモログのデータベースを生成するために使用され得る、非常に多数の方法が存在する。変性した遺伝子配列の化学的合成は、自動DNA合成器で実施され得、合成遺伝子は次いで、適切な発現ベクター中にライゲートされ得る。変性セットの遺伝子の使用は、可能性のあるタンパク質配列の所望のセットをコードする全ての配列を一つの混合物中に提供することを可能にする。変性オリゴヌクレオチドの合成方法は、当業者に公知である(例えば、Narang, S.A. (1983) Tetrahedron 39:3; Itakuraら、(1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakuraら、(1984) Science 198:1056; Ikeら、(1983) Nucleic Acids Res. 11:477)。
点変異又は短縮によって生成されたコンビナトリアルデータベースの遺伝子産物をスクリーニングするため、及び選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAデータベースをスクリーニングするためのいくつかの技術が、従来技術において公知である。これらの技術は、本発明によるホモログのコンビナトリアル変異誘発によって生成された遺伝子バンクの迅速なスクリーニングのために適合され得る。ハイスループット分析のための基礎として大きい遺伝子バンクをスクリーニングするために最も頻繁に使用される技術は、遺伝子バンクを複製可能な発現ベクター中にクローニングする工程、得られたベクターバンクで適切な細胞を形質転換する工程、及びその産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を所望の活性の検出が促進する条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現させる工程を含む。データベース中の機能的変異体の頻度を増大させる技術である帰納的集団変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)(REM)は、ホモログを同定するために、スクリーニング試験と組み合わせて使用され得る(Arkin及びYourvan(1992) PNAS 89:7811~7815;Delgraveら、(1993) Protein Engineering 6(3):327~331)。
3.核酸及び構築物
3.1核酸
本発明は、上記酵素又はシクラーゼ活性を有する上記その変異体をコードする核酸配列にも関する。
本発明は、本明細書中に記載される具体的な配列に対して特定の程度の同一性を有する核酸にも関する。
二つの核酸間の「同一性」とは、核酸の全長にわたる各場合におけるヌクレオチドの同一性、特に、Clustal法(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 4月; 5(2):151-1)を使用し、以下のパラメータを設定するInformax社(USA)のVector NTI Suite 7.1ソフトウェアによる比較によって計算される同一性を意味する:
複数のアラインメントパラメータ:
ギャップオープニングペナルティ(Gap opening penalty) 10
ギャップ伸長ペナルティ 10
ギャップ分離ペナルティ範囲(Gap separation penalty range) 8
ギャップ分離ペナルティ オフ
アラインメント遅延(alignment delay)のための%同一性 40
残基特異的ギャップ(Residue specific gap) オフ
親水性残基ギャップ(Hydrophilic residue gap) オフ
トランジションウェイティング(Transition weighting) 0
ペアワイズアラインメントパラメータ:
FASTアルゴリズム オン
K-タプル(K-tuple)サイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウインドウサイズ 5
最良のディアゴナルの数(Number of best diagonal) 5。
代替法として、同一性はまた、インターネットアドレス:http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.html#に従い、以下のパラメータを用いて、Chenna, Ramu, Sugawara, Hideaki, Koike, Tadashi, Lopez, Rodrigo, Gibson, Toby J, Higgins, Desmond G, Thompson, Julie D. Multiple sequence alignment with the Clustal series of programs. (2003) Nucleic Acids Res 31 (13):3497-500に従って決定され得る:
DNAギャップオープンペナルティ 15.0
DNAギャップ伸長ペナルティ 6.66
DNAマトリクス 同一性
タンパク質ギャップオープンペナルティ 10.0
タンパク質ギャップ伸長ペナルティ 0.2
タンパク質マトリクス Gonnet
タンパク質/DNA ENDGAP -1
タンパク質/DNA GAPDIST 4。
本明細書中で言及される全ての核酸配列(一本鎖及び二本鎖のDNA及びRNA配列、例えば、cDNA及びmRNA)は、自体公知の様式で、ヌクレオチド基本単位から化学的合成によって、例えば、二重らせんの個々の重複する相補的核酸基本単位のフラグメント縮合によって、生成され得る。オリゴヌクレオチドの化学的合成は、例えば、ホスホロアミダイト(phosphoroamidite)技術によって、公知の様式で実施され得る(Voet, Voet、第2版、Wiley Press New York、896~897ページ)。DNAポリメラーゼのKlenowフラグメント及びライゲーション反応並びに一般的なクローニング技術を使用した合成オリゴヌクレオチドの追加及びギャップの充填は、Sambrookら、(1989)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
本発明は、例えば人工ヌクレオチドアナログを使用してアクセス可能な、上記ポリペプチド及びその機能的等価物のうち一つをコードする核酸配列(一本鎖及び二本鎖のDNA及びRNA配列、例えば、cDNA及びmRNA)にも関する。
本発明は、本発明によるポリペプチド若しくはタンパク質又はその生物学的に活性な区画をコードする単離された核酸分子と、例えば本発明によるコーディング核酸の同定又は増幅のためのハイブリダイゼーションプローブ又はプライマーとして使用され得る核酸フラグメントとの両方に関する。
本発明による核酸分子は、コーディング遺伝子領域の3'末端及び/又は5'末端の非翻訳配列をさらに含み得る。
本発明はさらに、具体的に記載されたヌクレオチド配列に相補的な核酸分子、又はその区画を含む。
本発明によるヌクレオチド配列により、他の細胞型及び生物における相同配列の同定及び/又はクローニングのために使用され得るプローブ及びプライマーを生成することが可能となる。かかるプローブ又はプライマーは、通常、本発明による核酸配列のセンス鎖又は対応するアンチセンス鎖の、少なくとも約12、好ましくは少なくとも約25、例えば約40、50又は75連続するヌクレオチドに対して、「ストリンジェントな」条件(以下を参照)下でハイブリダイズする、ヌクレオチド配列領域を含む。
「単離された」核酸分子は、組換え技術によって生成される場合、又は化学物質前駆体若しくは他の化学物質を含まない場合、或いは化学的に合成された場合、核酸の天然の供給源中に存在する他の核酸分子から分離されており、さらには他の細胞材料又は培養培地を本質的に含まない状態であり得る。
本発明による核酸分子は、分子生物学の標準的な技術及び本発明に従って提供される配列情報によって、単離され得る。例えば、cDNAは、具体的に開示された完全配列又はその区画のうち一つをハイブリダイゼーションプローブとして使用し、かつ標準的なハイブリダイゼーション技術を使用して、適切なcDNAバンクから単離され得る(例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F、及びManiatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、 Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY、1989に記載される通り)。さらに、開示された配列又はその区画のうち一つを含む核酸分子は、この配列に基づいて構築されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応によって単離され得る。こうして増幅された核酸は、適切なベクター中にクローニングされ得、DNA配列分析によって特徴付けられ得る。さらに、本発明によるオリゴヌクレオチドは、標準的な合成方法によって、例えば自動DNA合成器を用いて、生成され得る。
本発明による核酸配列又はその誘導体、これらの配列のホモログ又は一部は、例えばゲノムデータベース又はcDNAデータベースを介して、他の細菌から、例えば通常のハイブリダイゼーション法又はPCR技術を用いて、単離され得る。これらのDNA配列は、標準条件下で本発明による配列にハイブリダイズする。
「ハイブリダイゼーション」とは、標準条件下でポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドがほぼ相補的な配列に結合する能力を意味するが、これらの条件下では、非相補的パートナー間での非特異的結合は発生しない。このために、それらの配列は最大90~100%相補的であり得る。互いに特異的に結合することが可能な相補的配列の特性は、例えば、ノザンブロッティング若しくはサザンブロッティング、又はPCR若しくはRT-PCRにおけるプライマー結合において利用される。
保存された領域の短いオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションのために有利に使用される。しかし、本発明による核酸のより長いフラグメント又は完全配列もまた、ハイブリダイゼーションに使用され得る。これらの標準条件は、使用される核酸(オリゴヌクレオチド、より長いフラグメント又は完全配列)に依存して、又は核酸、DNA若しくはRNAのどの型がハイブリダイゼーションに使用されるかに依存して、変動する。従って、例えば、DNA:DNAハイブリッドの融解温度は、同じ長さのDNA:RNAハイブリッドの融解温度よりも、約10℃低い。
標準条件とは、例えば、核酸に依存して、0.1×と5×との間のSSC濃度(1×SSC=0.15M NaCl、15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)を有する緩衝水溶液中で42℃と58℃との間の温度、又はさらに50%ホルムアミドの存在下(例えば5×SSC、50%ホルムアミド中42℃)を意味する。有利には、DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、0.1×SSC及び約20℃と45℃との間の温度、好ましくは約30℃と45℃との間の温度である。DNA:RNAハイブリッドについて、ハイブリダイゼーション条件は、有利には、0.1×SSC及び約30℃と55℃との間の温度、好ましくは約45℃と55℃との間の温度である。ハイブリダイゼーションのために述べられたこれらの温度は、例えば、ホルムアミドの非存在下での、約100ヌクレオチドの長さ及び50%のG+C含量を有する核酸についての計算された融解温度値である。DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、遺伝学の適切な教科書、例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning」、Cold Spring Harbor Laboratory、1989に記載されており、例えば核酸の長さ、ハイブリッドの型又はG+C含量に依存して、当業者に公知の式を使用して計算され得る。当業者は、ハイブリダイゼーションに関するさらなる情報を以下の教科書から取得できる:Ausubelら(編)、1985、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York; Hames及びHiggins (編)、1985、Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (編)、1991、Essential Molecular Biology: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。
「ハイブリダイゼーション」は、特に、ストリンジェントな条件下で生じ得る。このハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T.によって、Molecular Cloning (A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989、9.31~9.57ページ又はCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989)、 6.3.1~6.3.6に記載されている。
「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件とは、特に以下を意味する:50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト(Denhardt)溶液、10%デキストラン硫酸及び20g/ml変性剪断サケ精子DNAからなる溶液中での42℃で一晩のインキュベーション、その後の65℃で0.1×SSCでのフィルターの洗浄工程。
本発明は、具体的に開示された核酸配列又は誘導可能な核酸配列の誘導体にも関する。
従って、シクラーゼ変異体をコードする本発明によるさらなる核酸配列は、F486又はF486アナログ変異によって、例えば配列番号1から、又は配列番号2~326、特に配列番号2~6のコーディング配列から誘導され得、単一又は数個のヌクレオチドの付加、置換、挿入又は欠失によってそれらとは異なるが、所望の特性プロフィールを有するポリペプチドをさらにコードする。
本発明は、いわゆるサイレント変異を含み、又は具体的に記載された配列並びに天然に存在するバリアント(例えばそのスプライスバリアント又は対立遺伝子バリアント)と比較して、特別な元の生物又は宿主生物のコドン使用頻度(codon usage)に対応して変更されている核酸配列もまた含む。
本発明は、保存的ヌクレオチド置換(即ち、問題のアミノ酸が、同じ電荷、サイズ、極性及び/又は溶解度のアミノ酸で置き換えられる)によって取得可能な配列にも関する。
本発明は、具体的に開示された核酸から配列多型によって誘導された分子にも関する。これらの遺伝子多型は、天然のバリエーションに起因して集団内の個体間に存在し得る。これらの天然のバリエーションは、通常、遺伝子のヌクレオチド配列中に1~5%の相違をもたらす。
配列番号1の配列から、又は配列番号2~326、特に配列番号2~6のコーディング配列のうち一つから誘導された、シクラーゼ変異体をコードする本発明による核酸配列の誘導体には、例えば、配列領域全体にわたり、誘導されたアミノ酸のレベルで少なくとも60%の相同性、好ましくは少なくとも80%の相同性、特に全く好ましくは少なくとも90%の相同性(アミノ酸レベルでの相同性に関し、参照は、ポリペプチドに関する上記アカウントに対して行うべきである)を有する対立遺伝子バリアントが含まれる。相同性は、配列の部分領域にわたってより高いことが有利であり得る。
さらに、誘導体は、本発明による核酸配列のホモログ、例えば、真菌又は細菌のホモログ、短縮された配列、コーディング及び非コーディングDNA配列の一本鎖DNA又はRNA、も意味する。
さらに、誘導体とは、例えばプロモーターとの融合物を意味する。所与のヌクレオチド配列に付加されたプロモーターは、プロモーターの機能性も有効性も損なうことなく、少なくとも一つのヌクレオチド交換、少なくとも一つの挿入、逆位及び/又は欠失によって変更され得る。さらに、プロモーターの有効性は、それらの配列を変更することによって増加され得るか、又は異なる種の生物のより有効なプロモーターでも、完全に交換され得る。
3.2機能的変異体の作成
さらに、本発明による酵素の機能的変異体を生成するための方法は、当業者に公知である。
使用される技術に依存して、当業者は、完全にランダムな又は均等なより定方向な変異(more-directed mutation)を遺伝子中に又は非コーディング核酸領域(例えば、これは、発現の調節に重要である)中にも導入でき、次いで遺伝子ライブラリーを調製できる。分子生物学の必要な方法は、当業者に公知であり、例えば、Sambrook及びRussell、Molecular Cloning、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001に記載されている。
遺伝子を変更するための方法、従って遺伝子がコードするタンパク質を変更するための方法は、長い間当業者が精通してきた。例えば、
・部位特異的変異誘発(この方法では、遺伝子の単一又は数個のヌクレオチドが意図的に交換される)(Trower MK (編) 1996; In vitro mutagenesis protocols. Humana Press, New Jersey)、
・飽和変異誘発(この方法では、任意のアミノ酸のためのコドンが、遺伝子の任意の点で交換又は付加され得る)(Kegler-Ebo DM, Docktor CM, DiMaio D (1994) Nucleic Acids Res 22:1593; Barettino D, Feigenbutz M, Valcarel R, Stunnenberg HG (1994) Nucleic Acids Res 22:541; Barik S (1995) Mol Biotechnol 3:1)、
・エラープローンポリメラーゼ連鎖反応(エラープローンPCR)(この方法では、ヌクレオチド配列がエラープローンDNAポリメラーゼによって変異導入される)(Eckert KA, Kunkel TA (1990) Nucleic Acids Res 18:3739);
・SeSaM法(配列飽和法(sequence saturation method))(この方法では、好ましい交換がポリメラーゼによって防止される)(Schenkら、Biospektrum、第3巻、2006、277~279)
・ミューテーター株における遺伝子の継代(この方法では、例えば、欠陥のあるDNA修復機構に起因して、ヌクレオチド配列の変異率が増加している)(Greener A, Callahan M, Jerpseth B (1996) An efficient random mutagenesis technique using an E.coli mutator strain. In: Trower MK (編) In vitro mutagenesis protocols. Humana Press, New Jersey)、又は
・DNAシャッフリング(この方法では、密接に関連した遺伝子のプールが形成されて消化され、そのフラグメントがポリメラーゼ連鎖反応のテンプレートとして使用され、このとき、鎖が繰り返し分離され再度一緒になることによって、全長の最終的なモザイク遺伝子が生成される)(Stemmer WPC (1994) Nature 370:389; Stemmer WPC (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:10747)。
いわゆる定方向進化(directed evolution)(例えば、Reetz MT及びJaeger K-E (1999)、Topics Curr Chem 200:31; Zhao H, Moore JC, Volkov AA, Arnold FH (1999)、Methods for optimizing industrial enzymes by directed evolution, in: Demain AL, Davies JE (編) Manual of industrial microbiology and biotechnology. American Society for Microbiologyに記載されている)を使用して、当業者は、定方向様式で大規模に機能的変異体を生成することができる。このために、第一の工程において、それぞれのタンパク質の遺伝子ライブラリーが、例えば上記の方法を使用して、最初に生成される。遺伝子ライブラリーは、例えば細菌又はファージディスプレイ系によって、適切な方法で発現される。
所望の特性に概ね対応する特性を有する機能的変異体を発現する宿主生物の関連の遺伝子は、別のラウンドの変異に供することができる。変異及び選択又はスクリーニングの工程は、本発明の機能的変異体が所望の特性を充分な程度に有するまで、反復して繰り返され得る。この反復手順を使用して、限定数の変異、例えば、1、2、3、4又は5個の変異が段階的にもたらされ得、問題の酵素特性に対する影響について評価及び選択され得る。選択された変異体は、次いで、同じ方法のさらなる変異工程に供され得る。この方法で、調査すべき個々の変異体の数を、顕著に減少させることができる。
本発明による結果はまた、所望の改変された特性を有するさらなる酵素を意図的に生成するのに必要な、関連の酵素の構造及び配列に関する重要な情報を提供する。特に、いわゆる「ホットスポット」、即ち、標的化した変異を導入することによって酵素特性を改変するために潜在的に適切な配列区画が、規定され得る。
アミノ酸配列位置(その領域において、酵素活性に対しておそらくほとんど影響がないであろう変異が実施され得、可能性のある「サイレント変異」と称され得る)に関する情報もまた、推定され得る。
3.3構築物
本発明はさらに、特に、調節核酸配列の遺伝的制御下に、本発明によるポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え発現構築物;及び特に、これらの発現構築物を少なくとも一つ含む組換えベクターに関する。
本発明による「発現ユニット」とは、本明細書中に規定されるプロモーターを含み、発現される核酸又は遺伝子との機能的連結後に、その核酸又は遺伝子の発現(即ち、転写及び翻訳)を調節する、発現活性を有する核酸を意味する。従って、これに関して、発現ユニットは「調節核酸配列」とも呼ばれる。プロモーターに加えて、他の調節エレメント、例えば、エンハンサーもまた存在し得る。
本発明による「発現カセット」又は「発現構築物」とは、発現される核酸又は発現される遺伝子に機能的に連結された発現ユニットを意味する。従って、発現ユニットとは対照的に、発現カセットは、転写及び翻訳を調節する核酸配列だけでなく、転写及び翻訳の結果としてタンパク質として発現される核酸配列もまた含む。
本発明の文脈において、用語「発現」又は「過剰発現」は、対応するDNAによってコードされる、微生物中の一つ以上の酵素の細胞内活性の生成又は増加を記述する。このために、例えば、生物中に遺伝子を導入すること、既存の遺伝子を別の遺伝子で置き換えること、一つ以上の遺伝子のコピー数を増加させること、強いプロモーターを使用すること、又は高い活性を有する対応する酵素をコードする遺伝子を使用することが可能であり;これらの手段が任意選択で組み合わされ得る。
好ましくは、本発明によるこの構築物は、各場合においてコーディング配列と作動可能に連結された、それぞれのコーディング配列の5'上流のプロモーター及び3'下流のターミネーター配列、及び任意選択で他の通常の調節エレメントを含む。
本発明による、「プロモーター活性を有する核酸」又は「プロモーター配列」の「プロモーター」とは、その核酸の転写を調節する、転写される核酸に機能的に連結された核酸を意味する。
これに関して、「機能的」又は「作動可能な」連結とは、調節エレメントのそれぞれが核酸配列の転写の間にその機能を遂行できるような方法での、例えば、プロモーター活性を有する核酸の及び転写される核酸配列のうち一つ、並びに任意選択のさらなる調節エレメント(例えば、核酸の転写を確実にする核酸配列、及び例えばターミネーター)の順次の配置を意味する。これは、化学的な意味での直接的な連結を必ずしも必要としない。遺伝子制御配列(例えば、エンハンサー配列)は、より離れた位置から、又はさらには他のDNA分子から、標的配列に対してその機能を発揮することさえできる。転写される核酸配列がプロモーター配列の後ろ(即ち、プロモーター配列の3'末端)に位置づけられて、二つの配列が共有結合で一緒に連結されるような配置が好ましい。プロモーター配列と遺伝子導入により発現される核酸配列との間の距離は、200塩基対未満、又は100塩基対未満若しくは50塩基対未満であり得る。
プロモーター及びターミネーターに加えて、他の調節エレメントの例として以下が言及され得る:標的化配列、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点など。適切な調節配列は、例えばGoeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
本発明による核酸構築物は、特に、例えば配列番号1由来のシクラーゼ変異体をコードする配列、又は配列番号2~326の変異体若しくはその誘導体及びホモログをコードする配列、及びそれらから誘導可能な核酸配列を含み、これらは、遺伝子の発現を制御する(例えば増加させる)のに有利に、一つ以上の調節シグナルと作動可能に又は機能的に連結されている。
これらの調節配列に加えて、これらの配列の天然の調節が、実際の構造遺伝子の前になおも存在することができ、任意選択で遺伝的に変更されていてもよく、その結果として、この天然の調節のスイッチが切られ、遺伝子の発現が増加している。しかし、この核酸構築物は、より単純な構造のものであってもよい。即ち、コーディング配列の前にさらなる調節シグナルが挿入されておらず、その調節を有する天然のプロモーターが除去されている。その代わり、調節がもはや起こらず、遺伝子の発現が増加するように、天然の調節配列が変異導入される。
好ましい核酸構築物は、有利には、核酸配列の発現の増加を可能にするプロモーターに機能的に連結された、既に言及した一つ以上の「エンハンサー」配列もまた含む。さらなる有利な配列(例えば、さらなる調節エレメント又はターミネーター)もまた、DNA配列の3'末端に挿入され得る。本発明による核酸の一つ以上のコピーが、構築物中に含まれ得る。構築物は、任意選択で構築物の選択のための、他のマーカー、例えば抗生物質抵抗性又は栄養要求性補完遺伝子もまた含み得る。
適切な調節配列の例は、グラム陰性細菌中での適用を有利に見出すプロモーター(例えば、cos-、tac-、trp-、tet-、trp-tet-、lpp-、lac-、lpp-lac-、lacIq-、T7-、T5-、T3-、gal-、trc-、ara-、rhaP(rhaPBAD)SP6-、λ-PR-又はλ-PL-プロモーター)中に含まれる。さらなる有利な調節配列は、例えば、グラム陽性プロモーターamy及びSPO2中、酵母又は真菌プロモーターADC1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH中に含まれる。人工プロモーターもまた、調節のために使用され得る。
宿主生物での発現のために、この核酸構築物は、宿主中での遺伝子の最適な発現を可能にするベクター(例えば、プラスミド又はファージ)中に有利には挿入される。プラスミド及びファージとは別に、ベクターは、当業者に公知の他の全てのベクターであると理解すべきである(例えば、ウイルス、例えばSV40、CMV、バキュロウイルス及びアデノウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファージミド、コスミド、及び線状若しくは環状DNA)。これらのベクターは、宿主生物中で自律的に複製され得るか、又は染色体で複製され得る。これらのベクターは、本発明のさらなる実施形態を示す。
適切なプラスミドは、例えば、E.コリではpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11若しくはpBdCI、ストレプトマイセスではpIJ101、pIJ364、pIJ702若しくはpIJ361、バチルスではpUB110、pC194若しくはpBD214、コリネバクテリウムではpSA77若しくはpAJ667、真菌ではpALS1、pIL2若しくはpBB116、酵母では2αM、pAG-1、YEp6、YEp13若しくはpEMBLYe23、又は植物ではpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004若しくはpDH51である。示したプラスミドは、可能性のあるプラスミドのいくつかを選び出したものである。さらなるプラスミドは当業者に周知であり、例えば、書籍Cloning Vectors(編者Pouwels P. H.ら、Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford、1985、ISBN 0 444 904018)中に見出すことができる。
ベクターの別の実施形態において、本発明による核酸構築物又は本発明による核酸を含むベクターはまた、有利には、線状DNAの形態で微生物中に導入され得、非相同組換え又は相同組換えを介して宿主生物のゲノム中に組み込まれ得る。この線状DNAは、線状化ベクター(例えばプラスミド)からなり得るか、又は本発明による核酸構築物又は核酸のみからなり得る。
生物における異種遺伝子の最適な発現のためには、その生物において使用される特定の「コドン使用頻度」に対応する核酸配列を変更することが有利である。「コドン使用頻度」は、問題の生物の他の既知の遺伝子のコンピュータ評価に基づいて容易に決定できる。
本発明による発現カセットは、適切なプロモーターと、適切なコーディングヌクレオチド配列及びターミネーターシグナル又はポリアデニル化シグナルとの融合によって生成される。例えば以下に記載されるような、一般的な組換え及びクローニングの技術が使用される:T. Maniatis, E.F. Fritsch及びJ. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)並びにT.J. Silhavy, M.L. Berman及びL.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)並びにAusubel, F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)。
適切な宿主生物での発現のために、有利には、組換え核酸構築物又は遺伝子構築物は、その宿主における遺伝子の最適な発現を可能にする宿主特異的なベクター中に挿入される。ベクターは、当業者に周知であり、例えば、「Cloning vectors」(Pouwels P. H.ら編、Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford、1985)中に示されている。
4.微生物
文脈に依存して、用語「微生物」は、野生型微生物又は遺伝的に変更された組換え微生物或いはそれら両方を意味し得る。
本発明によるベクターを使用して、例えば、少なくとも一つの本発明によるベクターで形質転換された組換え微生物が生成され得、本発明によるポリペプチドを生成するために使用され得る。有利には、上記した本発明による組換え構築物は、適切な宿主系へと導入され、発現される。好ましくはそれぞれの発現系において記載された核酸を発現させるための、当業者に公知の一般的なクローニング法及びトランスフェクション法、例えば、共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションなどが使用される。適切な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubelら編、Wiley Interscience, New York 1997、又はSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY、1989中に記載されている。
原則として、全ての真核生物又は原核生物が、本発明による核酸又は核酸構築物のための組換え宿主生物とみなされ得る。有利には、微生物、例えば、細菌、真菌又は酵母が宿主生物として使用される。有利には、グラム陽性細菌又はグラム陰性細菌、好ましくは腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、リゾビウム科(Rhizobiaceae)、ストレプトマイセス科(Streptomycetaceae)又はノカルジア科(Nocardiaceae)の細菌、特に好ましくはエシェリキア属、シュードモナス属、ストレプトマイセス属、ノカルジア属(Nocardia)、バークホルデリア属、サルモネラ属(Salmonella)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、クロストリジウム属又はロドコッカス属(Rhodococcus)の細菌が使用される。属及び種エシェリキア・コリは、非常に特に好ましい。さらに、他の有利な細菌が、α-プロテオバクテリア(Proteobacteria)、β-プロテオバクテリア又はγ-プロテオバクテリアの群において見出されるであろう。
本発明による一つ以上の宿主生物は、好ましくは、上記定義によるフェニルエタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする、本発明で記載される核酸配列、核酸構築物又はベクターを少なくとも一つ含む。
宿主生物に依存して、本発明による方法で使用される生物は、当業者に公知の様式で増殖又は培養される。微生物は、通例、一般には糖の形態の炭素供給源、一般には有機窒素供給源の形態の窒素供給源(例えば、酵母抽出物又は硫酸アンモニウムなどの塩)、微量元素(例えば、鉄、マンガン及びマグネシウム)の塩及び任意選択でビタミンを含む液体培地中で、0℃と100℃との間の温度、好ましくは10℃と60℃との間の温度で、酸素通気を伴って増殖させる。液体栄養素のpHは、培養中に固定の値に維持(即ち、調節)してもしなくてもよい。培養は、バッチ方式、半バッチ方式又は連続的であり得る。栄養素は、発酵の開始時に存在してもよく、又は後に、半連続的に、若しくは連続的に供給されてもよい。
5.本発明による酵素の組換え産生
本発明はさらに、本発明によるポリペプチド又はその機能的な生物学的に活性なフラグメントの組換え産生のための方法に関し、この方法では、ポリペプチド産生微生物が培養され、任意選択でポリペプチドの発現が誘導され、これらが培養物から単離される。ポリペプチドはまた、所望の場合、この方法で工業規模で生成され得る。
本発明に従って生成される微生物は、バッチ法で、又は流加培養法若しくは反復流加培養法で、連続的に又は非連続的に培養され得る。公知の培養法の概要は、Chmielによる教科書(Bioprozesstechnik 1. Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik [Bioprocess technology 1. Introduction to bioprocess technology] (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart、1991))又はStorhasによる教科書(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen [Bioreactors and peripheral equipment] (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden、1994))中に見出すことができる。
使用される培養培地は、それぞれの株の要件を適切に満たすべきである。種々の微生物のための培養培地の記述は、American Society for Bacteriology (Washington D. C., USA、1981)のマニュアル「Manual of Methods for General Bacteriology」中に示されている。
本発明に従って有用なこれらの培地は、通常、一つ以上の炭素供給源、窒素供給源、無機塩、ビタミン及び/又は微量元素を含む。
好ましい炭素供給源は、糖、例えば、モノサッカライド、ジサッカライド又はポリサッカライドである。非常に良好な炭素供給源は、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプン又はセルロースである。糖はまた、複合化合物、例えば糖蜜又は精糖の他の副生成物を介して、培地に添加され得る。異なる炭素供給源の混合物を添加することも有利であり得る。他の可能性のある炭素供給源は、油及び脂肪、例えば、ダイズ油、ヒマワリ油、ピーナツ油及びココナツ油、脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸又はリノール酸、アルコール、例えば、グリセロール、メタノール又はエタノール、及び有機酸、例えば、酢酸又は乳酸である。
窒素供給源は、通常、有機若しくは無機の窒素化合物、又はこれらの化合物を含む材料である。窒素供給源の例には、アンモニアガス又はアンモニウム塩、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム又は硝酸アンモニウム、硝酸塩、尿素、アミノ酸、又は複合窒素供給源、例えば、コーンスティープリカー、ダイズ粉(soya flour)、ダイズタンパク質、酵母抽出物、肉抽出物などが含まれる。これらの窒素供給源は、単独で又は混合物として使用され得る。
培地中に存在し得る無機塩化合物には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅及び鉄の、塩化物、リン又は硫酸塩が含まれる。
無機の硫黄含有化合物、例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸塩、硫化物、並びに有機硫黄化合物、例えば、メルカプタン及びチオールが、硫黄供給源として使用され得る。
リン酸、リン酸二水素カリウム又はリン酸水素二カリウム、或いは対応するナトリウム含有塩が、リン供給源として使用され得る。
溶液中の金属イオンを引き止めるために、キレート剤が培地に添加され得る。特に適切なキレート剤には、ジヒドロキシフェノール、例えば、カテコール又はプロトカテクアート(protocatechuate)、或いは有機酸、例えばクエン酸が含まれる。
本発明に従って使用される発酵培地は、通常、他の増殖因子(例えばビタミン)又は増殖促進剤もまた含み、これには、例えば、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩及びピリドキシンが含まれる。増殖因子及び塩は、複合培地の成分、例えば、酵母抽出物、糖蜜、コーンスティープリカーなどに起源することが多い。さらに、適切な前駆体が培養培地に添加され得る。培地中の化合物の正確な組成は、それぞれの実験に強く依存し、各特定の場合のために個々に決定される。培養の最適化に関する情報は、教科書「Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach」(編者P.M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) 53~73ページ、ISBN 0 19 963577 3)中に見出すことができる。増殖培地は、供給業者から得ることもできる(例えば、Standard 1(Merck)又はBHI(ブレインハートインフュージョン、DIFCO)など)。
培地の全ての成分は、熱(1.5バール及び121℃で20分間)又はろ過滅菌のいずれかによって、無菌化される。成分は、必要に応じて、一緒に又は別々にのいずれかで無菌化され得る。培地の全ての成分は、培養開始時に存在してもよく、連続的に又はバッチ方式のいずれかで添加してもよい。
培養温度は、通常、15℃と45℃との間、好ましくは25℃~40℃であり、実験の間に変動しても一定に維持してもよい。培地のpHは、5から8.5の範囲内、好ましくは約7.0であるべきである。増殖のためのpHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア若しくはアンモニア水などの塩基性化合物、又はリン酸若しくは硫酸などの酸性化合物を添加することによって、増殖の間に制御され得る。消泡剤、例えば、脂肪酸ポリグリコールエステルが、発泡を制御するために使用され得る。プラスミドの安定性を維持するために、適切な選択物質(例えば抗生物質)が、培地に添加され得る。好気性条件を維持するために、酸素又は酸素含有ガス混合物、例えば、周囲空気が、培養物中に供給される。培養物の温度は、通常、20℃から45℃の範囲内である。培養は、最大量の所望の産物が形成されるまで、継続される。この目標は、通常、10時間~160時間以内に達成される。
次いで、発酵ブロスはさらに処理される。必要に応じて、バイオマスが、分離技術、例えば、遠心分離、ろ過、デカント、又はこれらの方法の組み合わせによって、完全に又は部分的に発酵ブロスから除去され得、或いは完全に発酵ブロス中に残される。
ポリペプチドが培養培地中に分泌されない場合、細胞は溶解されてもよく、タンパク質の単離のための公知の方法によって産物が溶解物から取得され得る。細胞は、高周波超音波、高圧(例えば、フレンチプレス中での)で、浸透圧溶解(osmolysis)により、洗剤、溶解酵素若しくは有機溶媒の作用により、ホモジナイザーにより、又は上記方法のいくつかの組み合わせにより、任意選択で破壊され得る。
ポリペプチドは、公知のクロマトグラフィー技術、例えば、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、例えば、Q-セファロースクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性クロマトグラフィー、並びに他の通常の技術、例えば、限外ろ過、結晶化、塩析、透析及び非変性ゲル電気泳動によって、精製され得る。適切な方法は、例えば、Cooper, T. G., Biochemische Arbeitsmethoden [Biochemical processes], Verlag Walter de Gruyter, Berlin, New York中又はScopes, R., Protein Purification, Springer Verlag, New York, Heidelberg, Berlin中に記載されている。
組換えタンパク質を単離するためには、規定されたヌクレオチド配列によってcDNAを延長させる、従って、変更されたポリペプチド又は融合タンパク質(例えば、より容易な精製を提供する)をコードする、ベクター系又はオリゴヌクレオチドを使用することが有利であり得る。この型の適切な改変は、例えば、アンカーとして機能するいわゆる「タグ」、例えば、抗体の抗原として認識され得るヘキサヒスチジンアンカー又はエピトープとして公知の改変である(例えば、Harlow, E、及びLane, D.、1988、Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor (N.Y.) Press中に記載されている)。これらのアンカーは、固体担体(例えば、クロマトグラフィーカラムにおけるパッキングとして使用され得るポリマーマトリックスなど)にタンパク質を結合させるために機能し得るか、又はマイクロタイタープレート上若しくはいくつかの他の担体上で使用され得る。
同時に、これらのアンカーは、タンパク質の認識のためにも使用され得る。タンパク質の認識のために、さらに、通常のマーカー、例えば、蛍光色素、酵素マーカー(これは、基質との反応後に検出可能な反応生成物を形成する)又は放射性マーカーを、単独で、又はタンパク質の誘導体化のためのアンカーと組み合わせて、使用することも可能である。
本発明による変異体の発現のために、WO2005/108590及びWO2006/094945(これらは本明細書中で明示的に参照される)中の、野生型酵素EbN1の発現及びこれのために有用な発現系の記載に対し、参照がなされ得る。
6.酵素固定化
本発明による酵素は、本明細書中に記載される方法において、遊離で又は固定化されて使用され得る。固定化された酵素は、不活性担体に固定化された酵素である。適切な担体材料及びそこに固定化された酵素は、EP-A-1149849、EP-A-1069183及びDE-OS 100193773並びにこれらの文献中で引用された参考文献から公知である。これに関して、これらの文献の開示全体が参照される。適切な担体材料には、例えば、粘土、粘土鉱物、例えば、カオリナイト、珪藻土、パーライト、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロース粉末、アニオン交換材料、合成ポリマー、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン及びポリオレフィン、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンが含まれる。担持された酵素を生成するために、担体材料は、通常、微細に分割された粒状形態で使用され、多孔性形態が好ましい。担体材料の粒径は、通常、5mm以下であり、特に2mm以下である(粒径分布曲線)。同様に、細胞全体触媒としてデヒドロゲナーゼを使用する場合、遊離形態又は固定化形態が選択され得る。担体材料は、例えば、Ca-アルギン酸塩、及びカラゲナンである。酵素並びに細胞はまた、グルタルアルデヒドを用いて直接的に架橋され得る(CLEAへの架橋)。対応する及び他の固定化技術は、例えば、J. Lalonde及びA. Margolin「Immobilization of Enzymes」、K. Drauz and H. Waldmann, Enzyme Catalysis in Organic Synthesis 2002、第III巻、991~1032、Wiley-VCH, Weinheim中に記載されている。本発明による方法を実施するための生体内変換及びバイオリアクタに関するさらなる情報は、例えば、Rehmら、(編)Biotechnology、第2版、第3巻、第17章、VCH, Weinheim中にも示されている。
7.テルペンの酵素環化
7.1概要
特に、本発明による環化方法は、酵素の存在下で実施され、この酵素は、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物によってコードされ、この核酸配列は、遺伝子構築物又はベクターの構成要素である。この遺伝子構築物又はベクターは、国際出願PCT/EP2010/057696の第16~20ページ(本明細書中で明示的に参照される)に詳細に記載されている。この機能的等価物、特にシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性を有する機能的等価物は、特に、本明細書中に規定されるようなF486又はF486アナログ変異を含む。
遺伝子構築物又はベクター(これらには、所望の活性を有する酵素をコードする核酸配列が含まれる)を含む宿主細胞は、トランスジェニック生物とも呼ばれる。このトランスジェニック生物の作成は、原則的には公知であり、例えば国際出願PCT/EP2010/057696の第20ページ(本明細書中で明示的に参照される)中で考察されている。
細菌、ラン藻、真菌及び酵母を含む群からの細胞が、トランスジェニック生物として選択されることが好ましい。細胞は、好ましくは、ピキア(Pichia)属の真菌、又はエシェリキア属、コリネバクテリウム属、ラルストニア属、クロストリジウム属、シュードモナス属、バチルス属、ザイモモナス属、ロドバクター属、ストレプトマイセス属、バークホルデリア属、ラクトバチルス属若しくはラクトコッカス属の細菌から選択される。特に好ましくは、細胞は、エシェリキア・コリ種、シュードモナス・プチダ種、バークホルデリア・グルマエ種、ストレプトマイセス・リビダンス種、ストレプトマイセス・セリカラー種又はザイモモナス・モビリス種の細菌から選択される。
シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素が、ザイモモナス・モビリス、メチロコッカス・カプスラタス、ロドシュードモナス・パルストリス、ブラディリゾビウム・ジャポニクム、フランキア属の種、ストレプトマイセス・セリカラー及びアセトバクター・パスツリアナスから選択される微生物から単離された遺伝子によってコードされることを特徴とする、本発明による方法が好ましい。ザイモモナス・モビリス、ストレプトマイセス・セリカラー、ブラディリゾビウム・ジャポニクム及びアセトバクター・パスツリアナスから単離された適切な遺伝子が、特に言及されるべきである。
シクラーゼ活性を有する酵素が、酵素を過剰産生する、エシェリキア属、コリネバクテリウム属、ラルストニア属、クロストリジウム属、シュードモナス属、バチルス属、ザイモモナス属、ロドバクター属、ストレプトマイセス属、バークホルデリア属、ラクトバチルス属及びラクトコッカス属を含む微生物の群から選択された微生物によって産生されることを特徴とする、本発明による方法がさらに好ましい。
特に、シクラーゼ活性を有する酵素が、エシェリキア・コリ種、シュードモナス・プチダ種、バークホルデリア・グルマエ種、コリネバクテリウム・グルタミクム種、サッカロマイセス・セレビシエ種、ピキア・パストリス種、ストレプトマイセス・リビダンス種、ストレプトマイセス・セリカラー種、バチルス・スブチリス種又はザイモモナス・モビリス種(これらはシクラーゼ活性を有する酵素を過剰産生する)のトランスジェニック微生物によって産生されることを特徴とする、本発明による方法が言及されるべきである。
本発明による生体触媒環化方法(例えば、イソプレゴールの生成方法)を実施するためのさらなる実施形態:
本発明による方法は、酵素が、以下の形態のうち少なくとも一つであることを特徴とする:
a)遊離の、任意選択で精製又は部分的に精製されたポリペプチド;
b)固定化されたポリペプチド;
c)a)又はb)に従って細胞から単離されたポリペプチド;
d)少なくとも一つのかかるポリペプチドを含む細胞全体、任意選択で休止状態又は増殖中の細胞;
e)d)による細胞の溶解物又はホモジネート。
本発明による方法の別の実施形態は、細胞が微生物、好ましくはシクラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする異種核酸分子の少なくとも一つを発現するトランスジェニック微生物であることを特徴とする。
本発明による方法の好ましい実施形態は、少なくとも以下の工程a)、b)及びd)を含む:a)シクラーゼ活性を有する酵素を産生する微生物を、天然の供給源から単離する又は組換え生成する工程、又は
b)この微生物を増殖させる工程、
c)任意選択で、この微生物からシクラーゼ活性を有する酵素を単離する工程又はこの酵素を含むタンパク質画分を調製する工程、及び
d)工程b)に記載の微生物又は工程c)に記載の酵素を、基質、例えば一般式(I)のシトロネラールを含む媒体に移す工程。
本発明による方法において、基質、例えば、シトロネラールなどは、媒体中でシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素と接触させられ及び/又はインキュベートされ、その結果、基質の変換、例えば、シトロネラールのイソプレゴールへの変換が、酵素の存在下で生じる。好ましくは、媒体は水性反応媒体である。
本発明による方法が好ましく実施される水性反応媒体のpHは、有利には、pH4と12との間、好ましくはpH4.5と9との間、特に好ましくはpH5と8との間に維持される。
水性反応媒体は、好ましくは、好ましくは5~8のpHを通例有する、緩衝化溶液である。使用される緩衝剤は、クエン酸塩、リン酸塩、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)又はMES緩衝剤(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)であり得る。さらに、反応媒体は、他の添加物、例えば、洗剤(例えば、タウロデオキシコール酸塩)を含み得る。
基質、例えばシトロネラールなどは、酵素反応において2~200mM、特に好ましくは5~25mMの濃度で好ましくは使用され、連続的に又は非連続的に供給され得る。
通例、酵素環化は、使用される酵素の非活性化温度未満でかつ-10℃を上回った反応温度で生じる。好ましくは、本発明による方法は、0℃と95℃との間の温度、特に好ましくは15℃と60℃との間の温度、特に20と40℃との間の温度、例えば約25~30℃で実施される。
シトロネラールのイソプレゴールへの反応が20~40℃の範囲の温度で及び/又は4~8の範囲のpHで生じる本発明による方法が、特に好ましい。
本発明の別の変形では、これらの単相水性系だけでなく、二相系も使用される。次いで、水相だけでなく、有機の水非混和性反応媒体が、第二の相として使用される。結果として、反応生成物は有機相中に蓄積する。反応後、有機相中の生成物、例えばイソプレゴールなどが、生体触媒を含む水相から容易に分離され得る。
イソプレゴールの生成が、単相水性系又は二相系で生じる本発明による方法が好ましい。
反応生成物イソプレゴールは、有機溶媒を用いて抽出され得、任意選択で、精製のために蒸留され得る。
適切な有機溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素(好ましくは5~8個の炭素原子を有する)(例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン又はシクロオクタン)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(好ましくは1又は2個の炭素原子を有する)(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン又はテトラクロロエタン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン)、脂肪族非環式及び環式エーテル又はアルコール(好ましくは、4~8個の炭素原子を有する)(例えば、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、エチル-tert-ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン)又はエステル(例えば、酢酸エチル又は酢酸n-ブチル)又はケトン(例えば、メチルイソブチルケトン又はジオキサン)、或いはそれらの混合物である。特に好ましくは、上記ヘプタン、メチル-tert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン及び酢酸エチルが使用される。
本発明に従って使用されるシクラーゼは、既に上記したように、遊離又は固定化された酵素として、本発明による方法で使用され得る。
本発明による方法のために、シクラーゼをコードする核酸、核酸構築物又はベクターを含む、休止状態又は増殖中の、遊離又は固定化された細胞を使用することが可能である。溶解された細胞、例えば、細胞溶解物又は細胞ホモジネートも使用され得る。溶解された細胞は、例えば、例えば溶媒での処理によって透過処理された細胞、或いは酵素処理によって若しくは機械的処理(例えば、フレンチプレス又は超音波)によって又は他のある種の方法によって破壊された細胞である。得られた生抽出物は、有利には、本発明による方法に適している。精製された又は部分的に精製された酵素もまた、この方法に使用され得る。
遊離の生物又は酵素が本発明による方法に使用される場合、これらは、例えば抽出前に、ろ過又は遠心分離を介して単離されるのが有用である。
本発明による方法は、バッチ方式で、半バッチ方式で、又は連続的に操作され得る。
7.2.シトロネラールの酵素環化
本発明に従って使用される、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性を有する酵素によって変換される式(II)のシトロネラールは、式(R-II)の(+)-R-シトロネラール及び式(S-II)の(-)-S-シトロネラールの両方として、並びに式(II)のラセミ体として、市販されている。
Figure 0007011529000031
本発明に従って形成される式(I)
Figure 0007011529000032
のイソプレゴールは、位置1、3及び6のそれぞれに立体中心を有し、従って、式(I)のシトロネラールのラセミ体が出発点である場合、原則として、考え得る二つの鏡像体をそれぞれが有する四つの異なるジアステレオマー、言い換えれば、合計八つのステレオマー(stereomer)が存在する。
Figure 0007011529000033
シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する適切な酵素は、イソメラーゼのサブクラス由来の分子内トランスフェラーゼ、即ち、酵素コードEC 5.4(Eur. J. Biochem、1999、264、610~650による酵素コード)を有するタンパク質である。好ましくは、これらは、酵素コード5.4.99.17を有する代表である。また、特にシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素として適切なものは、ホモファルネソールのアンブロキサンへの環化又はスクアレンのホペンへの環化もまたもたらすシクラーゼ(これらは、国際出願PCT/EP2010/057696(参照により本明細書に組み込まれる)中に網羅的に記載されている)であり、本明細書中に記載される酵素及び変異体もまた適切である。
本発明による方法の一つの特に適切な実施形態では、本発明による方法で使用されるシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素が、以下のいずれかのポリペプチド配列を有する:
a)配列番号2である、又は
b)アミノ酸残基の最大25%が、欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって、配列番号2に対して変更されており、配列番号2の酵素活性の少なくとも50%をなお有している。
シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性を有し、配列番号2によるアミノ配列を含む適切な酵素、並びにまたシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性を有する具体的に開示された酵素(E)の「機能的等価物」又はアナログが、既に上に示したように、国際出願PCT/EP2010/057696(参照により本明細書に組み込まれる)中に網羅的に記載されている。
この方法の一つの特に好ましい実施形態において、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性を有する酵素は、配列番号2によるアミノ酸配列又はそれから誘導された配列を含む酵素から選択され、この配列において、最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、特に最大10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、又は欠失、置換及び挿入の組み合わせによって変更されており、配列番号2に対して変更されたポリペプチド配列は、少なくとも50%、好ましくは65%、より好ましくは80%、より特には、90%より高い、配列番号2の酵素活性をなお有している。この文脈において、配列番号2の酵素活性とは、一般式(II)のシトロネラールから、対応する式(I)のイソプレゴールへの生体触媒環化をもたらす能力をいう。
本発明による方法は、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物によってコードされる酵素の存在下で、好ましくは実施される。
本明細書中の機能的等価物は、原則的に、標準条件下で核酸配列又は核酸配列の一部とのハイブリダイゼーションを受け、細胞又は生物中でシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性を有する酵素の特性と同じ特性を有するタンパク質の発現をもたらすことが可能な、核酸配列を記述する。
機能的等価物はさらに、特定の核酸配列(「元の核酸配列」)と、規定された%まで相同又は同一であり、元の核酸配列と同じ活性を有する核酸配列、また特に、これらの核酸配列の天然又は人工の変異をいうものと理解される。
シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性を有する酵素をコードするために使用され得る、本発明による方法で使用され得る核酸配列は、国際出願PCT/EP2010/057696(参照により本明細書に組み込まれる)中に、同様に網羅的に記載される。
特に好ましくは、本発明による方法は、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物によってコードされる酵素の存在下で実施され、この核酸配列は、遺伝子構築物又はベクターの一部である。かかる遺伝子構築物又はベクターは、国際出願PCT/EP2010/057696の第16~20ページ(参照により本明細書に組み込まれる)中に網羅的に記載される。
非常に特に好ましくは、本発明による方法は、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物によってコードされる酵素の存在下で実施され、この核酸配列は、宿主細胞中に存在する遺伝子構築物又はベクターの一部である。
シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列がその中に存在する遺伝子構築物又はベクターを含む宿主細胞は、トランスジェニック生物ともいう。かかるトランスジェニック生物の生成は、原則的に公知であり、例えば、国際出願PCT/EP2010/057696の第20ページ(参照により本明細書に組み込まれる)中で考察されている。
選択されるトランスジェニック生物は、好ましくは、細菌、ラン藻、真菌及び酵母からなる群由来の細胞である。細胞は、好ましくは、ピキア属の真菌、又はエシェリキア属、コリネバクテリウム属、ラルストニア属、クロストリジウム属、シュードモナス属、バチルス属、ザイモモナス属、ロドバクター属、ストレプトマイセス属、バークホルデリア属、ラクトバチルス属若しくはラクトコッカス属の細菌から選択される。特に好ましくは、細胞は、エシェリキア・コリ種、シュードモナス・プチダ種、バークホルデリア・グルマエ種、ストレプトマイセス・リビダンス種、ストレプトマイセス・セリカラー種又はザイモモナス・モビリス種の細菌から選択される。
好ましい本発明による方法では、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素は、ザイモモナス・モビリス、メチロコッカス・カプスラタス、ロドシュードモナス・パルストリス、ブラディリゾビウム・ジャポニクム、フランキア属の種及びストレプトマイセス・セリカラーからなる微生物の群より選択される微生物から単離された遺伝子によってコードされる。特に好ましくは、問題の遺伝子は、ザイモモナス・モビリスから単離されたものである。
さらに、好ましい本発明による方法では、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素は、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素を過剰産生し、エシェリキア属、コリネバクテリウム属、ラルストニア属、クロストリジウム属、シュードモナス属、バチルス属、ザイモモナス属、ロドバクター属、ストレプトマイセス属、バークホルデリア属、ラクトバチルス属及びラクトコッカス属からなる微生物の群より選択される微生物から選択された微生物によって、産生されたものである。
特に好ましい本発明による方法では、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素は、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素を過剰産生する、エシェリキア・コリ種、シュードモナス・プチダ種、バークホルデリア・グルマエ種、コリネバクテリウム・グルタミクム種、サッカロマイセス・セレビシエ種、ピキア・パストリス種、ストレプトマイセス・リビダンス種、ストレプトマイセス・セリカラー種、バチルス・スブチリス種又はザイモモナス・モビリス種のトランスジェニック微生物によって産生されたものである。
テルペンを環化するための本発明による生体触媒方法を実施するための上記さらなる実施形態は、イソプレゴールの生成に関して対応して適用される。
本発明のさらなる目的はまた、シトロネラールのイソプレゴールへの生体触媒変換のための、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素の使用である。
シトロネラールのイソプレゴールへの生体触媒変換のための、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素の使用が好ましく、ここで、この酵素は、以下のいずれかのポリペプチド配列を有する:
a)配列番号2である、又は
b)アミノ酸残基の最大25%が、欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって配列番号2に対して変更されており、配列番号2の酵素活性の少なくとも50%をなお有している。
シトロネラールのイソプレゴールへの生体触媒変換のための、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素の使用もまた好ましく、ここで、この酵素は、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物によってコードされる。
本発明のさらなる目的はまた、シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有するポリペプチドをコードする配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物を含む遺伝子構築物又はベクターの使用であり、このポリペプチドは、シトロネラールの環化によるイソプレゴールの生成方法において、シトロネラールのイソプレゴールへの生体触媒変換を提供する。
また同様に、本発明のさらなる目的はまた、シトロネラールのイソプレゴールへの生体触媒変換のためのシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼの活性を有する酵素を産生するための、配列番号1による核酸配列又はその機能的等価物を含む遺伝子構築物又はベクターを含む宿主細胞の使用である。
上記方法は、酵素によってシトロネラールをイソプレゴールへと環化する可能性を初めて開拓するものである。
8.メントールの生成方法
本発明で調製されるイソプレゴールは、従来の方法での触媒的水素付加によってメントールへと変換され得る。従来の水素付加プロセスもまた、WO 2009/013192に記載されるように、特に触媒的方法において、この目的に特に適している。
本発明による方法は、特に触媒を使用して実施され、この触媒は以下を含む:
・45%~55重量%の、NiOとして計算したニッケルの酸素含有化合物、
・25%~35重量%の、ZrO2として計算したジルコニウムの酸素含有化合物、
・5%~20重量%の、CuOとして計算した銅の酸素含有化合物、
・1%~3重量%の、MoO3として計算したモリブデン酸素含有化合物、及び
・0%~5重量%のさらなる成分、
重量%の数字は、加算すると最大100重量%になり、乾燥非還元型触媒に関連している。
一つの特に好ましい触媒は、49重量%~53重量%のNiO、15重量%~19重量%のCuO、28重量%~32重量%のZrO2及び1重量%~2重量%のMoO3からなり、また任意選択で、0重量%~3重量%のさらなる成分(例えば、グラファイト)を含み、例えば、それぞれに選択された個々の成分の重量分率は、乾燥非還元型触媒に基づいており、加算すると最大100重量%である。この種の触媒は公知であり、例えばEP 0 696 572又はWO 2009/013192中に記載されるように生成され得る。
一般に、触媒は好ましくは、担持されていない触媒の形態で使用される。用語「担持されていない触媒」とは、担持された触媒とは対照的に、触媒として活性な材料のみからなる触媒をいう。担持されていない触媒は、粉末に挽いた触媒として活性な材料を反応容器中に導入すること、又は挽いた後に触媒として活性な材料をリアクタ中に配置し、成形補助剤(shaping aid)と混合し、成形し、成形された触媒本体の形態(例えば、球形、円筒形、タブレット形、リング型、コイル型、紐型(strand)などとして)で熱処理することによって、使用され得る。
本発明による水素付加方法の一つの好ましい実施形態の文脈において、選択された不均一な触媒は、固定床触媒の形態で使用される。
本発明による方法を実施するために、上記イソプレゴール出発物質は、水素及び選択された触媒と接触させられる。本明細書中で、水素は、非希釈形態で、典型的には約99.9容量%の純度で、又は希釈形態で、即ち、例えば不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン)との混合物の形態で、使用され得る。水素は非希釈形態で使用することが好ましい。反応は、溶媒を添加せずに、又は反応条件下で不活性な有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなど)の存在下で、首尾よく実施され得る。反応は、溶媒を添加せずに実施することが好ましい。
本発明によるイソプレゴールの水素付加は、1から200バールの範囲、例えば2又は3から200バールまで、特に4又は5から150バールまで、例えば、5から100バールまで、又は5から50バールまでの範囲の水素圧(絶対)下で、実施され得る。本発明による水素付加を実施するための反応温度として、有利には、20から150℃までの範囲、例えば、40から130℃まで、又は60から110℃まで、より具体的には70から100℃までの範囲の温度が選択される。
実施のための実際のアプローチは、一般に、例えば所望の反応温度及び所望の圧力下で、特に外側から、変換のためのイソプレゴールを触媒(加熱された固定床リアクタ(例えば、チューブリアクタ、オートクレーブ又はチューブ-バンドルリアクタ)中に典型的に位置している)に供給することである。この場合の触媒についての速度は、一般に、1時間に触媒1kg当たり0.1~1.0、例えば0.1~0.6又は0.2~0.4kgのイソプレゴールである。この文脈において、反応容器又はリアクタに供給される前であっても、使用されるイソプレゴールを加熱することが有用であり得、この加熱は、好ましくは反応温度である。
リアクタは、液相様式又は滴下(trickle)様式のいずれかで操作され得る。即ち、出発物質は、底部から上部又は上部から底部のいずれかで、リアクタを通過し得る。本発明の水素付加法は、バッチ方式又は連続的にのいずれかで実施され得る。両方の場合に、未反応の出発物質は、水素と一緒に循環させ得る。
本発明による水素付加はまた、二つ以上のリアクタ、即ち、2から一般には4、例えば2又は3個のリアクタのカスケードで段階的に実施され得、例えば、リアクタは直列して接続され、好ましくは固定床である。この場合、典型的には主要リアクタと呼ぶ第一のリアクタにおいて、反応の主要な変換は、上記反応条件下で達成され、得られた粗生成物は典型的には二次リアクタと呼ばれる第二のリアクタへと渡され、なお未反応の出発物質は、少なくとも大部分は本発明によってL-メントールへと変換される。本明細書の反応条件は、互いに独立して、好ましくは上記範囲内で選択され得る。
本発明の方法は、バッチ方式、半バッチ方式又は連続的に実施される。この方法は連続的に、より具体的には完全に連続的に実施することが好ましく、この場合、出発物質は、リアクタ中に連続的に導入され、得られた反応混合物又は反応生成物は、リアクタから連続的に排出される。本発明による反応生成物、即ちメントール、特にL-メントールの融点の位置を考慮して、使用される輸送ラインの加熱を提供することが有利であることが、さらに証明されている。
本発明の方法は、メントールの所望でないジアステレオマーの軽度の形成のみを典型的には伴って、イソプレゴールの触媒的水素付加によってメントールが生成されることを可能にする。従って、対応する純度のイソプレゴールを使用する場合、本発明の方法は、97重量%以上、好ましくは98重量%~100重量%、より好ましくは98.5重量%~99.9重量%、非常に好ましくは少なくとも99重量%~99.9重量%の化学的純度で、式(III)のメントールを生じる。本明細書中で、用語「化学的純度」は、ジアステレオマー(式(IIIa)のネオイソメントール、式(IIIb)のネオメントール及び式(IIIc)のイソメントール)に関する、得られたメントールのジアステレオマー純度もまた包含する。従って、この文脈において、本発明による方法は、好ましくは、97重量%以上、好ましくは98重量%~100重量%、より好ましくは98.5重量%~99.9重量%、及び非常に好ましくは少なくとも99重量%~99.9重量%のジアステレオマー純度を有するメントールを生じる。
Figure 0007011529000034
イソプレゴールが光学活性形態(好ましくは、本発明に従って、L-イソプレゴール鏡像体を主に含む混合物)で使用される場合、得られる本発明による方法生成物は、一般に、光学活性形態のメントール、好ましくは(-)-又はL-メントールの形態のメントールである。本発明による水素付加は、一般に、使用される材料の顕著なラセミ化なしに、主として進行する。従って、使用される光学活性イソプレゴールの鏡像体過剰率に従って、光学活性メントール、好ましくはL-メントール(L-イソプレゴールを使用する場合)が、80%ee以上、好ましくは85%ee又は90%ee以上、より好ましくは95%ee~100%ee、より好ましくは96%ee~99.9%ee、非常に好ましくは97%ee~99.8%ee、なおより好ましくは98%ee~99.7%ee、及びより特に好ましくは98.5%ee~99.6%eeの鏡像体過剰率(enatiomeric excess)(ee)で、生成物として得られる。
本発明に従って得られるメントールは、さらに、望ましくない副生成物(式(IIId)のメントン(menthone)及び式(IIIe)のイソメントン及び式(IIIa)のネオイソメントール)のレベルが特に低い点で、顕著である。
Figure 0007011529000035
これらの副生成物は、本発明による方法の文脈において、得られたメントールの量に対して、最大0.5重量%、好ましくは0.4重量%、より好ましくは0.3重量%、より具体的には0.2重量%、及び非常に好ましくは0.1重量%~0重量%の割合でだけ、一般に得られる。
9.本発明による酵素変換又は生体触媒変換に使用され得る基質の例:
本明細書中に記載される酵素及び微生物は、上記一般式IVの化合物を変換するために、特に適切である。その非限定的な例を、構造式及び化学名を記載する以下の表Aにまとめる。
Figure 0007011529000036
Figure 0007011529000037
Figure 0007011529000038
Figure 0007011529000039
Figure 0007011529000040
Figure 0007011529000041
Figure 0007011529000042
これらの基質の変換で生成された反応生成物は、標準的な分析方法、例えば、クロマトグラフィー、HPLC、ガスクロマトグラフィー、質量分析、GC/MS又はMALDI-TOF、及びそれらの組み合わせを使用して、従来の方法で検出及び定量され得る。
非固定化生物又は酵素が本発明による方法で使用される場合、好ましくは、これらは、抽出前に、例えば、ろ過又は遠心分離によって分離される。
本発明による方法は、バッチ方式、半バッチ方式又は連続的に操作され得る。
実験セクション
以下の実施例において、特別な情報が存在しない場合には、以下の一般的な情報が適用される。
A.一般的な情報
使用する全ての材料及び微生物は、市販の製品である。
特に示さない限り、組換えタンパク質のクローニング及び発現は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F.及びManiatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY、1989に記載されるような、標準的な方法によって実施される。
a)細菌株、プラスミド及び増殖条件
全ての実験はE.コリを用いて実施した。SHCタンパク質は、それぞれのshc遺伝子を有するpET16b構築物を含むE.コリBL21(DE3)pLysS又はE.コリRosetta pLysRAR62中で、アンピシリン(100μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)、及び0.5mMイソプロピルチオ-β-D-ガラクトシドを補充したLuria-Bertani培地中で0.4のOD600で増殖させ、30℃で4時間さらに増殖させることによって、発現させた。
b)ベクター構築物
それぞれのスクアレン-ホペンシクラーゼ遺伝子(例えば、ザイモモナス・モビリスZMO1548[NC_006526.2、領域:1578816..1580993])を、対応するプライマー対(例えば、ZMO1548-fwd(5'-gcgctgtttcatatgggtattgaca-3')(配列番号327)及びZMO1548-rev(5'-gcgcttaccctggatcctcgaaaat-3')(配列番号328))を使用して、染色体DNAからPCR増幅した。制限酵素消化した(例えば、NdeI/BamHIを用いて)PCR産物を、pET16b中にクローニングし(例えば)pET1584(を得た)。構築物を、DNA配列決定によって確認し、E.コリXL1-blue中に形質転換した。
他の微生物由来のshc遺伝子(例えば、A.アシドカルダリウス由来)を、同様にクローニングした。
全てのプラスミドを、E.コリBL21(DE3)pLysS又はE.コリRosetta pLys-RAR62中に、個々に形質転換した。
c)種々の基質を用いた環化アッセイ(標準条件)
組換えE.コリ細胞を、20mM Tris-HCl pH8.0(湿細胞1g当たり3ml)中に懸濁した。この環化混合物は、250μlの細胞懸濁物、50μlの1Mクエン酸塩緩衝液(pH4.5)、20mM(最終濃度)の基質及び500μlまでの水を含んだ。スクアレンの環化では、1%(v/v)Triton-X100を添加した。ホモファルネソール環化のために、E.コリ細胞(6gの湿細胞)を、可溶化緩衝液(50mMリン酸塩、10mM MgCl2(pH6.5;総容量:25ml))中に懸濁した。細胞を、Manton-Gaulinホモジナイザーを使用して1500バールで溶解させた。不溶性細胞細片を、遠心分離して除いた(4℃及び7150*gで15分間)。この環化混合物は、1.25mlの緩衝液(50mMリン酸カリウム、45mM MgCl2(pH6.5))中、1mlの生細胞抽出物及び20mMのホモファルネソールを含んだ。反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて30℃で撹拌した。反応を、ヘプタンでの抽出によって停止させた。有機相を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。コントロールは、空ベクターを保有するE.コリ細胞及び熱不活化SHC発現細胞を用いて実施した。環化生成物の形成は、コントロールでは観察されなかった(データ示さず)。
d)ガスクロマトグラフィー
テルペノイドを、DB-5カラム(20m×0.1mm×0.1μm)及びイオン化検出器を備えたAgilent 7890Aガスクロマトグラフを使用するガスクロマトグラフィーによって、定性的及び定量的に分析した。3μlの溶媒抽出物をカラムにアプライした(分割比1:5、ヘリウム流速0.25又は0.5ml/分、インジェクター温度250℃)。
線状及び環式のモノテルペノイドを分離するために、最初の炉の温度(60℃)を、40℃/分で130℃まで上昇させ、2℃/分で150℃まで上昇させ、次いで40℃/分で200℃まで上昇させた。テルペノイドの保持時間は以下の通りであった:(R,S)-シトロネラール(7.55分)、イソプレゴール(7.70分)、ネオ-イソプレゴール(7.90分)、イソ-イソプレゴール(8.10分)、ネオイソ-イソプレゴール(8.25分)、1-デカノール(9.91分)。
トリテルペンの検出のために、インジェクター温度を300℃に設定した。炉の温度は最初は60℃であり、40℃/分で220℃まで、次いで6℃/分で310℃まで上昇させ、そこで10分間一定に維持した。スクアレン及びホペンは、それぞれ19.2分後及び26.9分後に溶出した。
ホモファルネソール及びアンブロキサンは、10m Optima 1カラム(Macherey&Nagel, Duren, Germany)で分析した。最初の炉の温度(100℃)を、5℃/分で200℃まで上昇させ、この温度で5分間維持した。次いで、この温度を30℃/分で320℃まで上昇させた。分析には40分間かかった。保持時間は以下の通りであった:ホモファルネソール(10.8分)、アンブロキサン(9.9分)。
代替法として、FS Supreme 5カラム(30m×0.25mm×0.25μm)を備えたShimadzu GC-MS QP 2010システムを、結合(coupled)GC/MS分析のために使用した(分割比1:20;3分120℃、2℃/分で135℃まで上昇、さらに、10℃/分で365℃まで上昇、その後70℃/分で300℃まで冷却)。GC-MSデータは、LabSolutions GCsolutions Postrunソフトウェアを使用して分析した。基質シトロネラールラセミ体、(R)-シトロネラール及び(S)-シトロネラールは常に、少量のイソプレゴール及びネオ-イソプレゴールを不純物として含むことに留意すべきである。これらの線状テルペノイドに関するGC表面値(GC surface value)を100%とした。生成物中のイソプレゴール異性体の表面値を、基質中に既に存在するイソプレゴール異性体の量によって補正した。標準偏差を、二つの別個の増殖したE.コリ培養物を用いた24の個々の試験に基づいて計算した。
B.実施例
〔実施例1〕クイックチェンジ変異誘発(quick-change mutagenesis)を使用する合理的タンパク質設計による、F486X型のスクアレン-ホペンシクラーゼの変異体の生成
種々のスクアレン-ホペンシクラーゼの変異体を、対応する遺伝子中に「クイックチェンジ」変異誘発によって組み込んだ。製造業者の情報(Agilent Technologies, Waldbronn)に基づいた手順は、大まかには以下の通りであった。最初に、PCRを実施した:
PCR分量: 1.8μl DMSO
2μl dNTP(各2.5mM)
1.5μl フォワードプライマー(10pmol/μl)
1.5μl リバースプライマー(10pmol/μl)
1μl テンプレート(1μg/μL;SHC遺伝子を保有する組換えプラスミド(例えばpETZmSHC_1)
0.2μl Prime-Star Polymerase(Takara、2.5単位/μl)
6μl 5×緩衝液
16μl H2O
PCRプログラム:
(1)95℃ 3分間
(2)95℃ 45秒間
(3)53℃ 1分間
(4)68℃ 17分間
工程(2)、(3)及び(4)を5×反復。
PCR後、10μlの分量を、制限酵素DpnIで37℃で少なくとも1時間消化した。次いで、E.コリXL1-blue細胞への形質転換を実施した。DNAの配列決定後、発現株(例えば、E.コリRosetta pLysRAR62)中への形質転換を行った。遺伝子は、他の発現プラスミド中でも同様に改変できる。
以下のプライマーを、クイックチェンジPCRに使用した。それぞれの交換は、プライマー名中に太字で印刷して示す。それぞれのプライマーによって改変される遺伝子は、プライマー名中にイタリックで示す。以下の対応が存在する:
ZmSHC_1 配列番号2;
ZmSHC_2 配列番号6;
Ap 配列番号4;
Bj 配列番号5及び
Sc 配列番号3。
Figure 0007011529000043
Figure 0007011529000044
〔実施例2〕ザイモモナス・モビリス由来のスクアレン-ホペンシクラーゼ-1(SHC-1)の変異体を用いた活性試験
実施例1に従って生成された、F486に対応する配列位置における種々の単一変異の、シクラーゼ活性に対する影響を、種々の基質について決定した。
a)シトロネラール
ザイモモナス・モビリス由来のスクアレン-ホペンシクラーゼ-1(配列番号2)の、シトロネラールに対する僅かな環化活性の一般的な検出後、ターンオーバー速度は、合理的タンパク質設計によって大いに改善された。予備試験(図2を参照)において、フェニルアラニン残基F486をアラニンに交換することによって、シトロネラール(1)から出発するイソプレゴール(2)の生成の大きな増加がもたらされた。
Figure 0007011529000045
次いで、SHC_1-F486A変異体の増加した活性を、より詳細に調査した。シトロネラール基質のかなり良好な変換に加えて、これは、WTと比較して、基質としてR(+)異性体を好むこと、これがまたかなり短い時間で変換されることもまた、見出された(図2を参照)。WT酵素を用いた場合、R(+)-シトロネラールの反応は、かなり長いインキュベーション後でも未だ測定不能であるのに対し、F486A変異体は、特に反応開始時に、高い変換を示す。この効果は、S(-)-シトロネラールを基質として用いた場合には観察されない。基質の立体配置(stereoconfiguration)にかかわらず、F486A変異体がイソプレゴールI及びIIのみを形成することは注目に値する。対照的に、WTは、基質の立体配置に依存し、イソプレゴールIだけでなく、主にR(+)-シトロネラールからイソプレゴールIIを、ほぼ排他的にS(-)-シトロネラールからイソプレゴールIIIを形成する。
これらの結果に基づいて、さらなる実験において、位置486におけるアミノ酸残基の重要性を、より綿密に調査した。このために、変異誘発によって、フェニルアラニン残基をさらなる各アミノ酸に交換し、種々のムテインの活性を、基質としてシトロネラールを用いて試験した(配列については図1a及びbを参照)。この位置でのある種のアミノ酸は、酵素によるシトロネラールの変換を改善するだけでなく、さらには、反応におけるより高い生成物特異性を導き、その結果、より少ないイソプレゴール異性体が生成されたことが見出された(図3を参照)。
アルギニン、プロリン及びリジンでの交換は、シトロネラールに関して活性の喪失を導く。決定された生成物の量は、同じ分布で、ネガティブコントロール(図3中の「K」)におけるコンタミネーションとしても存在する。最も高い活性は、バリン、スレオニン、システイン、イソロイシン及びアラニンでの交換後に観察された。全体として、いくつかのムテインの変更された生成物スペクトルは注目に値する。三つのイソプレゴールピークの形成を全てが野生型同様に示すわけではなく、定量的分布は異なる。
全部で23種のイソプレゴール異性体が存在する:
Figure 0007011529000046
これまで、主要な生成物(イソプレゴールI)は、鏡像体対((1R,3R,6S)-イソプレゴール又は(1S,3S,6R)-イソプレゴール)と指定されている。
高い酵素活性を伴う、最少の副生成物(さらなる異性体からなる)を伴うイソプレゴールの最も高い収率は、Zm-SHC-1 F486C変異体によって示される。
b)スクアレン
位置F486での変異後の、活性における明確な変化は、基質としてスクアレンを用いても観察される。興味深いことに、この場合、チロシンでのフェニルアラニンの交換は、ほぼ2倍の変換を生じる(図4を参照)。
〔実施例3〕他のスクアレン-ホペンシクラーゼの変異体を用いた活性試験
実施例1に従って生成された、F486に対応する配列位置における種々の単一変異の、種々の他のSHCのシクラーゼ活性に対する影響を、種々のシトロネラール基質について決定した(各場合において、20mMで一晩のインキュベーション):
変異体は以下の通りである:
Ap-SHC:F481C、
Bj-SHC:F447C、
Sc-SHC:F449C、
Zm SHC-2:F438C。
フェニルアラニン残基は、Zm-SHC-1(配列番号2)のF486に類似した位置に位置する。
結果は、図5(基質としてシトロネラールラセミ体)、図6(基質としてR(+)-シトロネラール)及び図7(基質としてS(-)-シトロネラール)中に見ることができる。コントロールは活性な生体触媒なしの分量であった。
野生型酵素は、(Zm SHC-1の)F486に対応する示された位置での変異を通じて、シトロネラールをイソプレゴールへと環化できるようになり、さらに、S(-)形態と比較して増大した選択性で、R(+)形態を変換できるようになっていることが理解できる。
〔実施例4〕式IVの化合物の変換
これらの物質を、上記シトロネラールの変換に使用された条件に対応する条件下で変換した。
〔実施例5〕ザイモモナス・モビリス由来のスクアレン-ホペンシクラーゼ(Zm-SHC)の単離及び特徴付け
国際出願PCT/EP2010/057696(参照により本明細書に組み込まれる)は、特異的オリゴヌクレオチドを使用して、ザイモモナス・モビリスのゲノムDNAからZm-SHC遺伝子を如何にして増幅し、エシェリキア・コリ中で発現させるかを記載している。
a)材料及び方法:
以下で扱うのは、国際出願PCT/EP2010/057696にはこの形態で述べられていない、材料及び方法だけである。
b)株、プラスミド及び培養条件:
E.コリ株DH5α、E.コリ株BL21(DE3)pLysS(Novagen)及びE.コリRosetta株を使用した。プラスミドpET16b(Novagen)をクローニングに使用した。さらに、SHCの過剰発現のために、プラスミドpLysRAR62を、コドン使用頻度をE.コリに適合させるために、さらに形質転換した。さらに、E.コリLu15568由来のプラスミドpDHE+ZmSHC-1を使用した(国際出願PCT/EP2010/057696)。これらの株を、30℃でLB培地中で増殖させた。
c)化学物質:
スクアレン、(+/-)-シトロネラール、(+)-R-シトロネラール及び(-)-S-シトロネラールは、Sigma(Sigma-Aldrich Chemie GmbH, Munich)から購入した。制限酵素、T4リガーゼ及びDNAポリメラーゼは、New England Biolabs(New England Biolabs GmbH, Frankfurt)のものであった。
d)DNAの単離及び形質転換:
プラスミドを、Qiagen(Qiagen, GmbH, Hilden)のQiaprep Spin Miniprep Kitを使用してE.コリから単離した。ゲル抽出又はPCR精製のために、QiagenのQiaquick Gel Extraction Kitを使用した。使用した全てのE.コリ株は、CaCl2法を使用して形質転換した。
e)PCR及び配列決定:
ザイモモナス・モビリス亜種モビリス(Zymomonas mobilis subspec. mobilis)CP4由来のDNAは、Sprenger教授(Institute of Microbiology、University of Stuttgart)により提供された。PCRは、Prime Star Polymeraseを使用して実施した。以下のプライマーを、ザイモモナス・モビリス由来のスクアレン-ホペンシクラーゼ遺伝子を合成するために使用した:
SHC_1: SHC-for TATGCATATGGGTATTGACAGAAT(配列番号387)
SHC-rev CCGGATCCTCAATTATTCAAATCAATC(配列番号388)。
クローニングされた遺伝子の正確さを、GATC Biotech社による配列決定によって確認した。配列分析は、プログラムClone Manager 7.0を使用して実施した。対応する増幅物(amplificate)の制限後、これらを、N末端にコードされたHisタグを使用するpET16bベクター中に、インフレームでクローニングした。その後、このプラスミドを、E.コリDH5α中に最初に形質転換し、その後、E.コリBL21(DE3)pLysS及びE.コリRosetta中に形質転換した。より良好な発現のために、pET16b構築物に加えて、プラスミドpLysRAR62を、E.コリRosetta株中に形質転換した。空ベクターを用いた対応するクローニングを、平行して実施した。さらに、プラスミドpDHE+ZmSHC_1(SHC_1に対応、E.コリに適合させたコドン使用頻度を有する)を、E.コリBL21(DE3)pLysS中に形質転換した。
f)発現及び細胞消化:
対応するE.コリBl21(DE3)pLysS及びE.コリRosetta形質転換体を、アンピシリン及びクロラムフェニコール(それぞれ100μg/ml及び32μg/ml)を含むLB培地中で、30℃で培養した。スクアレン-ホペンシクラーゼの合成を、0.5~1mM IPTG又は0.1%ラムノース(pDHE誘導体を使用する場合)の添加により、0.4~0.6のOD600で誘導した。細胞をさらに4~6時間増殖させ、その後回収した。これは、細胞を遠心分離して取り、40%グリセロールを含む25mM Tris/HClを1gの湿重量当たり5mlにすることによって、実施した。細胞を直ぐにはさらに使用しない場合、細胞を-20℃で保存した。細胞の消化のために、細胞を、フレンチプレスにそれぞれ2回供し、活性アッセイのために、直接、又は遠心分離による細胞細片の除去後のいずれかに、使用した。或いは、細胞消化は、超音波を使用して実施した。遠心分離後、SHCタンパク質を、引き続いて可溶化緩衝液(50mM Tris/HCl pH8、10mM MgCl2、1% Triton X-100)で溶解して細胞細片を除去し、従って、SHCタンパク質を部分的に富化した。
g)活性アッセイ:
クアレン-ホペンシクラーゼの活性を決定するための各バッチは、1mlの最終容量を有した。これは、フレンチプレスによって消化した細胞600μl(或いは、細胞膜からの可溶化後800μl)、異なるpHレベル(pH4.0~pH8.0を試験に使用した)を有する100mMクエン酸Na緩衝液、及び10mM基質溶液[(+/-)シトロネラール、(+)-R-シトロネラール及び(-)-S-シトロネラール]からなった。基質及びH2Oに加えて、基質溶液は、Triton X-100(これは、0.2%の濃度で各活性バッチ中に存在した)もまた含んだ。
バッチを、22℃、30℃及び37℃の温度で6時間~24時間撹拌しながらインキュベートした。基質及び可能性のある生成物を、2:3の比のクロロホルム又はヘキサン/プロパノールを1容量用いて抽出した。この抽出物を、ガスクロマトグラフィーによる分析に直接使用した。
h)GC測定:
ガスクロマトグラフィー測定を、水素炎イオン化検出器を備えたAgilent 7890Aガスクロマトグラフで実施した。使用したカラムは、20mの長さ、0.1mmの直径及び0.25μMのコーティングを有するDB-5(Agilent Technologies)であった。物質を、入手可能な標準溶液を用いた保持時間の比較によって同定した。
確認のために、サンプルを、質量分析器を備えたShimadzu Gasクロマトグラフで平行して分析した。30mの長さ、0.25mmの内径及び0.25μmのコーティングを有するカラムFS Supremeを使用して、保持時間を標準溶液と再度比較し、存在する物質のそれぞれの質量スペクトルを分析した。
標準の助けを得て、イソプレゴールIとして以下で同定されたジアステレオマーは、(1R,3R,6S)イソプレゴール又は(1S,3S,6R)イソプレゴールと指定されたが、イソプレゴールII及びイソプレゴールIIIとして同定された異性体については、指定は不可能であった。
i)活性アッセイの結果
1.試験1a:(比較)(コントロール、即ち、ボイルオフしたタンパク質あり、空ベクターあり、及びタンパク質なしでの結果)
Figure 0007011529000047
基質rac-シトロネラールに関する以下の情報において、コントロール中に見出されたイソプレゴールの量は既に推定されている。
2.試験1b:二つの過剰発現したSHC_1タンパク質の比較(pDHE及びpET16bベクターから、pH4.5での活性に対するHisタグの影響)
Figure 0007011529000048
3.試験1c:pH依存性
Figure 0007011529000049
4.試験1d:pH4.5における塩の影響
Figure 0007011529000050
5.試験1e:pH4.5における温度の影響
Figure 0007011529000051
6.試験2:基質としてのS(-)-シトロネラール
Figure 0007011529000052
Figure 0007011529000053
7.試験3:基質としてのR-(+)-シトロネラール
Figure 0007011529000054
Figure 0007011529000055
j)結果のまとめ:
ザイモモナス・モビリス由来のスクアレン-ホペンシクラーゼを、E.コリにおいて組換えにより調製した。この酵素は、シトロネラールをイソプレゴールへ変換することができる。
本明細書中で、二つの過剰産生されたZm-SHC-1タンパク質(一度はN末端に付加されたHisタグなし、一度はあり)は、試験した条件下で、それらの活性に差異を示されなかった(試験1b参照)。
この反応を、記載された技術を用いて12時間後に確認した。pHレベルに対する反応の依存性は低かった。pH4からpH6の範囲内のpHでは、合計約5%の変換率が、20時間のインキュベーション後に、異なるイソプレゴール異性体について測定された。
本明細書では、バッチをRTでインキュベートしたか、30℃でインキュベートしたか、37℃でインキュベートしたかは、重要ではなかった。変換はまた、二価イオン、例えばMgCl2などの添加によって増加しなかった(試験1dを参照)。しかし、重要なことは、宿主の酵素によってシトロネラール基質がシトロネロールに還元されるのを抑制するために、pHがpH5より高い測定の場合、基質がバッチに添加される前又はEDTAがバッチに添加される前のいずれかに、細胞抽出物を透析したことであった。Zm-SHC-1の活性に対するこの処置の影響は見出されなかった。この処置を実施しなかった場合、基質は、20時間以内にシトロネロールへとほぼ完全に還元され、イソプレゴールへの環化はもはや測定不能であった。従って、Zm-SHC-1は、シトロネロールではなくシトロネラールをイソプレゴールへと環化することが可能である。非特異的デヒドロゲナーゼが還元反応の原因である可能性が非常に高い。
環化の原因である化学反応を排除するために、ボイルオフした細胞抽出物を使用した。しかし、これらのコントロール及び空ベクターとの培養由来の細胞抽出物を用いたコントロールにおいて、対応する変換は見られなかった(試験1aを参照)。
基質として(+/-)-シトロネラールを用いて、以前には同定されていなかった種々のイソプレゴールの異性体を検出することが、以下の反応において可能であった(試験2及び3を参照)。これらの異性体が異なる異性体の出発基質に起源したか否か、又はただ一つの異性体が基質として受容され、差示的に変換されたか否かを確認するために、同じ研究を、(+)-R-シトロネラール及び(-)-S-シトロネラールを用いて実施した。本明細書では、基質に依存して、異なるイソプレゴール異性体が形成されることが見出された。興味深いことに、(+)-R-シトロネラールの変換は、pH4~pH7で、約5%の比率で、実質的な差異なしに起こった。対照的に、鏡像体は、pH6の最大pHレベルで約4.5%のみの変換率で変換された。これと同様に、変換率は、pH4とpH6との間の個々のpHレベルに関して、事実上影響を示さなかった。
配列:
配列番号1~326 種々のSHC遺伝子の核酸/アミノ酸配列
配列番号327~388 PCRプライマー。
本明細書中で引用した刊行物の開示は、明示的に参照される。
以下に、本発明に従って使用され得るSHC酵素配列の表を示す:
酵素配列
Figure 0007011529000056
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Figure 0007011529000142
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Claims (15)

  1. 配列番号2の位置F486に対応する位置(配列番号209の位置F445)に変異を含む配列番号209のアミノ酸配列を含む、シクラーゼ活性を有する酵素変異体であって、記変異が、N、Q、L、M、E、G、S、V、T、C、I又はAへの変異であり、前記酵素変異体のアミノ酸残基の最大10%が、欠失、挿入、置換、付加、逆位又はそれらの組み合わせによって配列番号209に対して変更されており、シトロネラール異性体から、少なくとも一つのイソプレゴール異性体への少なくとも環化を触媒する、前記酵素変異体。
  2. 前記酵素変異体のアミノ酸残基の最大5%が、欠失、挿入、置換、付加、逆位又はそれらの組み合わせによって、配列番号209に対して変更されている、請求項1に記載の酵素変異体。
  3. a)配列番号2によるF486X、式中、X=N、Q、L、M、E、G、S、V、T、C、I又はA
    に対応する、配列番号209の単一変異体、
    b)配列番号2によるF486A/Y702A、F486A/Y561A又はF486A/Y705Aに対応する、配列番号209の多重変異体、
    から選択される、請求項1~2のいずれか1項に記載の酵素変異体。
  4. 配列番号2によるアミノ酸配列を含む酵素のシトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性の少なくとも50%を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の酵素変異体。
  5. シトロネラール-イソプレゴールシクラーゼ活性が、標準条件下で参照基質としてシトロネラールを使用して決定される、請求項4に記載の酵素変異体。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の酵素変異体をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
  7. 請求項6に記載の核酸を含む、発現カセット。
  8. 少なくとも一つの調節エレメントの制御下に、少なくとも一つの請求項6に記載の核酸又は少なくとも一つの請求項7に記載の発現カセットを含む、組換えベクター。
  9. 少なくとも一つの請求項6に記載の核酸又は少なくとも一つの請求項7に記載の発現カセット又は少なくとも一つの請求項8に記載のベクターを含む、組換え微生物。
  10. 一般式(I):
    Figure 0007011529000144
    のイソプレゴールの生成方法であって、一般式(II):
    Figure 0007011529000145
    のシトロネラールが、請求項1~5のいずれか1項に記載の酵素変異体によって、又は該酵素変異体を発現する請求項9に記載の微生物の存在下で、式(I)のイソプレゴールへと環化される、前記方法。
  11. a)請求項10に記載の方法によってシトロネラールをイソプレゴールへと環化する工程、及び
    b)イソプレゴールを触媒によって水素付加してメントールにする工程、
    による、式III:
    Figure 0007011529000146
    のメントールの生成方法。
  12. 水素付加が、水素並びに
    30~70重量%の、NiOとして計算したニッケルの酸素含有化合物、
    15~45重量%の、ZrO2として計算したジルコニウムの酸素含有化合物、
    5~30重量%の、CuOとして計算した銅の酸素含有化合物、及び
    0.1~10重量%の、MoO3として計算したモリブデンの酸素含有化合物、
    を含む触媒の存在下で生じ、ここで、重量%の数字は、乾燥非還元型触媒に基づくものである、請求項11に記載の方法。
  13. 合物の酵素変換又は生体触媒変換の方法であって、
    前記化合物が、シトロネラール;シトラール;ファルネソール;ホモファルネソール;ホモファルネシル酸を含むホモファルネソール誘導体;ゲラニルアセトン、メロナール;ノナジエナール;及びトリメチルデカテトラエンから選択されるものであり、
    立体異性体的に純粋な形態の前記化合物又はそれらの立体異性体混合物を、請求項1~5のいずれか1項に記載の酵素変異体を使用して、又は該酵素変異体を発現する請求項9に記載の微生物の存在下で反応させる、前記方法。
  14. シトロネラールからイソプレゴールへの変換のための、請求項1~5のいずれか1項に記載の酵素変異体の使用。
  15. シトロネラールからイソプレゴールへの変換のための、又はスクアレンのホペンへの変換のための、請求項1~5のいずれか1項に記載の酵素変異体、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現カセット、請求項8に記載の組換えベクター又は請求項9に記載の組換え微生物の、使用。
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