JP7262651B2 - 情報処理装置、工作システムおよびプログラム - Google Patents

情報処理装置、工作システムおよびプログラム Download PDF

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この発明は、工作機械に設置されたワークを計測する技術に関する。
工作機械では、ワークに対して穴あけなどの加工を施す。加工結果を確認する方法として、作業員はワークを工作機械から取り出して器具を使って計測する。加工の途中でワークの加工結果を確認する場合、一旦ワークを取り出して計測した後に再び設置するなどの手間がかかる。
また、ワークを計測する方法として、主軸に取り付けられたタッチプローブを用いることが知られている。この方法では、主軸を移動させその位置でタッチプローブを降下させて、ワークとの接触を検知する。複数箇所を計測する場合には、各箇所に向けて主軸を移動させタッチプローブを降下させるアプローチ動作が必要になる。この方法では、主軸の移動とタッチプローブのアプローチ動作に時間がかかる。また、タッチプローブでは、微細な形状を計測することが難しく、ワークの向きの測定に不向きであるという問題もある。
特開2019-185581号公報
タッチプローブを用いる方法に比べて、高速に計測する方法として、撮像装置を用いて加工されたワークを撮像し、その撮像画像を解析して加工結果を測定することが考えられる。撮像による計測であれば、タッチプローブのアプローチ動作が必要なく、複数箇所を1回の撮像で捉えることができるので、主軸の移動回数も少なくて済む。
特許文献1には、加工途中のワークの画像を撮影する撮影装置を用いる例が記載されている。この例では、撮影された画像を用いて3次元モデルを作成し、加工シミュレーションによる3次元モデルと比較することによって加工不良の有無を判定する。
特許文献1では、画像データから特徴点を抽出して、その特徴点に基づいて3次元モデルを生成すると記載されているものの、具体的にどのような処理を行うかは不明である。具体的に言えば、カメラがどの位置に設置され、ワークをどのように捉えるか不明であるので、ワークの大まかな形状をとらえることが想定され、細かい部分の形状に関する計測は想定されない。
本発明のある態様における情報処理装置は、撮像部または工具が着脱可能に取り付けられる取付部を備える工作機械において工作機械に置かれたワークを撮像するために取付部が移動し撮像位置で撮像部が撮像することで生成される2次元の撮像画像を処理する情報処理装置であって、(i) 工作機械の機械座標をもとに撮像部が所定位置に移動した後に、撮像された撮像画像をもとに、ワークの位置を算出し、かつ、(ii) 撮像部を所定位置から撮像位置に移動した後に、撮像位置において撮像部で撮像された2次元の撮像画像から、ワークのエッジを検出し、検出された複数のエッジからワークの長さを算出する演算部を備える。
本発明によれば、工作機械に設置されたワークを高速に計測する技術を提供できる。
工作機械の概要を示す図である。 工作システムの構成図である。 ワークWの加工図の例である。 撮像画像から検出されるエッジの例を示す図である。 撮像中心から検出されるエッジの他の例を示す図である。 実施形態におけるシーケンスの例を示す図である。 変形例におけるワークWの設置状態を示す上面図である。 変形例における撮像画像から検出されるエッジの例を示す図である。 変形例におけるシーケンスを示す図である。 変形例における計測の例を示す図である。 変形例におけるシーケンスを示す図である。 画像外計測で計測される円形穴の撮像画像を示す図である。 測定プログラム編集画面を示す図である。 エッジ検出の概要を示す図である。 面取り量計測の概要を示す図である。
以下に、図面を参照して実施形態に係る工作機械に設置されたワークを計測する工作システムについて説明する。以下の説明では、同一の構成について、同一の符号を付して説明する。
本実施形態では、NC(Numerical Control)プログラムに基づいて加工を行う過程で、NCプログラムに基づいて工具を交換する際に、次に使う工具を工具交換装置(ATC(Automatic Tool Changer))によって、自動的に工作機械の取り付け部(例えば、主軸やタレットなど)に工具を取り付けできる工作機械を用いて説明する。
図1は、工作機械の概要を示す図である。
図の右側に示した工作機械は、正面に開閉可能なドアを有する。この図は、ドアが開いている状態を示している。工作機械の内部を、図の左側に示している。工作機械は、操作盤を含む。また、工作機械には、外部コンピュータ(情報処理装置の一形態)が接続されている。情報処理装置は、図示した外部コンピュータの態様に限らない。操作盤が、情報処理装置を兼ねてもよい。工作機械に外部コンピュータを接続する形態は、一例である。工作機械内に以下で説明する情報処理装置の機能が含まれる形態であってもよい。図示した工作機械の例は、立形マシニングセンタである。テーブル上に設置されたワークWの上方に、主軸100がある。主軸100は、上下方向の軸を中心として回転可能である。主軸100の先端には、工具(図示せず)が取り付けられる。
主軸100は、前後方向および左右方向に移動可能である。主軸100の位置を水平に移動させることによって、ワークWにおける加工位置が変わる。主軸100は、上下方向にも移動できる。工作機械は、主軸100を上下動させることにより、ワークWと主軸100の距離を変化させる。
本実施形態では、主軸100にワークWの撮像に使用される撮像部600を取り付けることができる。工作機械は、工具交換装置によって撮像部600を自動的に取付部に着脱できる構成となっている。主軸100は、「撮像部が着脱可能に取り付けられる取付部」の例である。工作機械がターニングセンタの場合には、タレットが「工作機械の取付部」に相当する。タレットに撮像部600を取り付けて、ワークWを撮像するようにしてもよい。また、複合加工機において、撮像部600を取り付けるようにしてもよい。いずれの場合も、撮像部600は、「工作機械の取付部」に着脱可能に取り付けられる。
撮像部600は、情報処理装置から指示を受けて、工作機械に配置されたワークの撮像を行い、2次元の撮像画像を情報処理装置へ送る。撮像部600は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像素子、レンズ、照明装置などを備え、有線または無線による通信が可能である。また、撮像部600は、有線または無線により給電を受けてもよいし、蓄電池を備えるようにしてもよい。
工作機械の内部には、工具を取付部に装着してワークの加工を行う加工空間がある。閉鎖された加工空間における位置は、機械座標(Xm,Ym,Zm)で特定される。機械座標系は、工作機械内の位置と向きを基準とした位置を特定する座標系である。工作機械は、機械座標を基準として動作する。機械座標系の原点の位置は、予め定められているものとする。ワークWは所定の位置に所定の向きで設置され、ワークWがそのように設置されていることを前提として、工作機械は動作する。切削などの加工を行う場合には、主軸100に刃物工具を取り付けて、主軸100を移動させる動作と回転させる動作を組み合わせて、刃物工具を回転させながら、ワークWに当たるように制御する。
ワークWに空けられた穴の径などのワークWの加工結果を確認する場合、従来は、工作機械からワークWを取り出して作業員が器具を用いて計測していた。あるいは、工作機械からワークWを取り出さずに、取付部に取り付けられたタッチプローブを用いて計測を行っていた。
本実施形態は、工作機械に設置された状態のワークWを撮像部600で撮像し、得られた撮像画像を解析し、加工結果の計測を行うものである。本実施形態では、工作機械内で切削されたときの状態で固定されたままのワークWの切削加工結果を、引き続き計測できるように、撮像部600として、取付部に着脱可能な画像プローブが使用される。取付部において工具と撮像部600とが交換可能であって、取付部に装着された工具は、ワークWを加工し、取付部に装着された撮像部600は、ワークWを撮像する。工作機械においてワークWを工具で加工した後に、取付部に取り付けられていた工具が収納部に戻され、収納部にある撮像部600が取付部に取り付けられる。取付部に取り付けられた撮像部600は、ワークWを撮像する位置まで移動し、ワークWを撮像する。このような工作機械であれば、ワークWを工作機械から取り外して工作機械外で計測する必要がなく、取付部を移動させることでワークWの加工及び撮像を行うことができる。計測プログラムの実行中(撮像モード)において、撮像部600が取り付けられた取付部は、ワークWの加工原点の位置に対応する機械座標まで移動する。そこで、撮像部600で撮像が行われ、撮像画像が取得される。撮像画像から、ワークWのエッジ検出が行われる。本実施形態における加工原点は、ワークWを上面方向から見た場合の四角形の1つの角に位置する。したがって、角のエッジと加工原点に対応する機械座標の位置との照合が行われる。ワークWの角の位置と加工原点に対応する機械座標の位置とが合致すれば、次に、計測プログラムの処理によって、取付部がワークWの計測位置に移動する。例えば、ドリル加工による穴の径を計測したい場合、取付部は、加工原点の照合のための撮像位置からワークWの穴を撮像するための撮像位置へ移動する。そして、ワークWの穴が写るように撮像が行われる。さらに、ドリル加工によってワークWに穴をあけた後、ワークWにエアブロー又はクーラント放出が行われ、ワークWの計測領域(表面)から切屑が取り除かれる。このように、切屑を取り除いた後に、本実施形態および変形例で説明する計測を行うようにしてもよい。そのため、加工工程の中で、ドアを閉めたまま計測を行うことができる。この場合、工作機械は、ワークWにエアブローを行うエアブロー装置またはワークWに向けてクーラントを放出することができるクーラント放出部を有する。
ドアを開けて工具交換ができる。加工途中で、撮像部600でワークWを撮像することができ、撮像画像からワークWのエッジや面を特徴点として抽出する使い方がある。たとえば、ドアを閉めた状態で加工を一時停止し、ドアを開けることなく撮像部600でワークWを撮像してもよい。さらに、その後に扉を開けることなく、操作盤で工具の補正値を修正し、加工を再開させることができる。また、操作盤で工具の補正値を修正するだけでなく、工具の回転数なども変更することが可能である。
図2の上部は、工作システムの形態1の構成を示す。
工作機械800は、加工部820、工具交換装置850、PLC(Programmable Logic Controller)860および数値制御装置880を有する。加工部820は、ワークの加工を行う。加工部820は、工具あるいは撮像部600が取り付けられる取付部822と、軸を回転させるサーボモーターなどの駆動部824とを含む。工作機械800がマシニングセンタの場合、主軸100が取付部822に相当し、主軸100を回転させるサーボモーターが駆動部824に相当する。マシニングセンタの駆動部824は、撮像部600が取り付けられた取付部822(主軸)を移動させる動作も行う。工作機械800がターニングセンタの場合、タレットが取付部822に相当し、ワークを取り付けられた回転軸を回転させるサーボモーターの他に、タレットを移動させる駆動部824を有する。ターニングセンタの駆動部824は、撮像部600が取り付けられた取付部822(タレット)を移動させる動作を行う。数値制御装置880は、NCプログラムを実行して、NCプログラムで指定されたコードに従って工作機械800の加工部820を動作させる。また、数値制御装置880は、NCプログラムの実行過程で、工具や撮像部600の交換指示なども行う。加工部820は、取付部に取り付けられる多数の工具および撮像部600を収納可能なツールマガジンを含む。
外部コンピュータ400(情報処理装置の一形態)は、工作機械800と通信線を介して接続している。さらに、外部コンピュータ400は、撮像部600と通信可能である。有線通信を行う場合には、取付部822の内部を通る通信線によって、外部コンピュータ400と撮像部600が接続される。外部コンピュータ400と撮像部600の間で、無線LANなどの無線通信を行うようにしてもよい。撮像部600からの撮像画像は、取付部822から外部コンピュータ400に有線通信で送信される。または、撮像部600からの撮像画像は、外部コンピュータ400に無線通信で送信されてもよい。外部コンピュータ400は、情報処理装置の一形態である。
外部コンピュータ400の機能ブロックについて説明する。外部コンピュータ400の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサ(Coprocessor)などの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。図示した各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
外部コンピュータ400は、ユーザインターフェース処理部410、データ格納部440、通信部450、および演算部486を含む。ユーザインターフェース処理部410は、外部コンピュータ400が備えるディスプレイ、キーボード、マウス、タッチセンサ、ディスプレイとタッチセンサを一体としたタッチパネルなどを介したユーザインターフェース処理を担当する。データ格納部440は各種データを格納する。データ格納部440は、たとえば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Device)、ハードディスク、その他の記憶デバイス又はそれらを適宜組み合わせて実現される。通信部450は、工作機械800および撮像部600との通信処理を担当する。演算部486は、通信部450により取得されたデータおよびデータ格納部440に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。演算部486は、ユーザインターフェース処理部410、データ格納部440、および通信部450のインターフェースとしても機能する。
ユーザインターフェース処理部410は、ユーザの操作によってデータを入力する入力部420と、ユーザへ提供するデータを出力する出力部430とを含む。
入力部420は、キーボード、マウス、タッチセンサやタッチパネルなどの入力デバイスで検出されるイベントによってデータ入力を受け付ける操作受付部422を含む。出力部430は、ディスプレイやタッチパネルなどの表示デバイスに各種画面を表示させる表示処理部432を含む。
演算部486は、2次元の撮像画像からワークWのエッジを検出し、撮像画像で検出されたエッジに基づく演算処理を行う。
演算部486は、エッジ検出部482、座標変換部488、寸法算出部490、パターンマッチング部492および補正値算出部494を有する。エッジ検出部482は、2次元の撮像画像からワークWのエッジを検出する。座標変換部488は、機械座標と撮像画像における座標(以下、「撮像座標」という)との相互変換を行う。座標変換部488は、機械座標とワークW上の加工位置を特定する座標(以下、「加工座標」という)との相互変換、および撮像座標と加工座標との相互変換を行ってもよい。寸法算出部490は、ワークWの全体形状あるいは部分形状(例えば、円形穴)における寸法(例えば、円形穴の径)を算出する。演算部486は、情報処理装置の一形態である。外部コンピュータ400の全体(演算部486を含む)を情報処理装置と捉えてもよいし、演算部486のみを情報処理装置と捉えてもよい。また、演算部486は、独立したハードウェア資源で動作するようにしてもよい。たとえば、演算部486が、プロセッサおよびメモリを含むマイクロコンピュータをハードウェア資源として用いるようにしてもよい。マイクロコンピュータのメモリに演算部486の機能の処理を定めたプログラムを記憶しておき、マイクロコンピュータのプロセッサでそのプログラムを実行することによって、演算部486の機能を実現してもよい。
パターンマッチング部492は、撮像画像で検出されたエッジの形状に対するパターンマッチングを行う。パターンマッチング部492については、変形例2において説明する。補正値算出部494は、ワークWの設置ずれを補正するための補正値を算出する。補正値算出部494については、変形例4および変形例5において説明する。
データ格納部440は、パターンマッチング部492で使用される複数のパターンのデータを記憶するパターン記憶部442を含む。
通信部450は、データを工作機械800および撮像部600へ送信する送信部460と、工作機械800からおよび撮像部600データを受信する受信部470を含む。
送信部460は、ワークWの設置ずれを補正するための補正値を工作機械800へ送信する送信部262を含む。
工作機械800は、操作盤890を有する。操作盤890は、例えば液晶ディスプレイなどの表示部892、プロセッサやメモリ等のハードウェア資源を含む。操作盤890の表示部892に、外部コンピュータ400などの情報処理装置の処理結果を表示させてもよい。たとえば、外部コンピュータ400は、処理結果を操作盤890へ送信し、操作盤890は、処理結果を受信して、表示部892に表示させる。
図2の下部は、工作システムの形態2を示す。
工作機械800が、図2の上部に示した演算部486、データ格納部440および通信部450を含むようにしてもよい。工作機械800は、たとえば外部コンピュータ400と同等のハードウェア資源を有するものとする。図2の下部に示した各機能ブロックは、このハードウェア資源を用いて実現される。演算部486は、形態1の場合と同様にエッジ検出部482、座標変換部488、寸法算出部490、パターンマッチング部492および補正値算出部494(図2の上部参照)を含む。データ格納部440は、パターン記憶部442(図2の上部参照)を含む。通信部450は、補正値送信部468を含む送信部460と受信部470(図2の上部参照)を有する。操作盤890は、ハードウェアとしての表示部892と機能ブロックとしてのユーザインターフェース処理部410(図2の上部参照)を有する。ユーザインターフェース処理部410は、操作受付部422を含む入力部420と表示処理部432を含む出力部430(図2の上部参照)を有する。形態2における演算部486も、情報処理装置の一形態である。演算部486は、独立したハードウェア資源で動作するようにしてもよい。たとえば、演算部486が、プロセッサおよびメモリを含むマイクロコンピュータをハードウェア資源として用いるようにしてもよい。マイクロコンピュータのメモリに演算部486の機能の処理を定めたプログラムを記憶しておき、マイクロコンピュータのプロセッサでそのプログラムを実行することによって、演算部486の機能を実現してもよい。形態2では、工作機械800の内部で、情報処理装置の処理を含むすべての処理を実行可能である。情報処理装置の処理結果は、たとえば操作盤890の表示部に表示される。
取付部822に取り付けられている工具や撮像部600を交換する場合に、数値制御装置880は、PLC860に工具交換の指令を送る。PLC860は、工具交換の指令を受けると、その指令に従って工具交換装置850を制御して、主軸100に装着されている工具と工具交換装置850のツールマガジンに格納されている工具を交換させる。この例で、撮像部600は工具と同様に、工具交換装置850によって取付部822に装着されあるいは取り外される。
図3は、ワークWの加工図の例である。
加工図に従って、ワークWの加工が行われる。この例におけるワークWの上面は、各辺が100mmの正方形である。加工図は、撮像部600側からみたワークWの上面の加工座標を示している。加工座標とは、ワークWの加工位置を特定するための座標である。加工座標系の原点を「加工原点」という。加工原点を(Xp=0mm,Yp=0mm)と表す。この例の加工原点は、ワークWの左下の角点である。図中の右向きが、Xpの正方向である。図中の上向きが、Ypの正方向である。ワークWの上面の位置は、加工座標(Xp,Yp)で特定される。
この加工図の例は、ワークWの上面に2つの円形穴をあける加工が行われることを示している。左下側の(Yp=30mm,Xp=30mm)を中心として、直径4mmの穴(以下、「第1穴」という)をあける。また、右上側の(Yp=70mm,Xp=70mm)を中心として、直径15mmの穴(以下、「第2穴」という)をあける。
加工図では、ワークWの設置条件として、加工原点(Xp=0mm,Yp=0mm)の位置が所定の機械座標で指定される。つまり、所定の機械座標に加工原点が位置するようにワークWが設置される。以下では、加工原点の機械座標が(Xm=100,Ym=100)であるものとして説明する。
さらに、ワークWの設置条件として、ワークWの向きも指定される。加工座標のXpの向きを、機械座標のXmの向きと一致させる。また、加工座標のYpの向きを、機械座標のYmの向きと一致させる。
上述した加工図および設置条件を前提として、加工結果を計測するための撮像条件が決められる。撮像条件として、具体的には撮像画像の中心(「撮像中心」という)の位置が決められる。たとえば試作の段階であれば、加工工程の任意のタイミングで作業員が撮像条件を決めてもよい。また、量産の段階であれば、生産工程の計画において予め撮像条件を決めておいてもよい。
工作システムは、第1穴と第2穴の穴あけ加工の後で、加工によって形成された第1穴と第2穴を計測する。第1穴の撮像条件として、第1穴の中心(Xp=30mm,Yp=30mm)を撮像中心Aとする。撮像範囲は、図示した撮像中心Aを囲む細線の矩形の内側となる。第1穴の全体が、撮像範囲に入るので、1回の撮像で第1穴の計測が完了する。このように計測対象の全体が撮像範囲に入る場合の計測を「画面内計測」という。
撮像中心Aの機械座標を(Xm(撮像中心A),Ym(撮像中心A))と表すと、Xm(撮像中心A)は、100mm+30mm=130mmであり、Ym(撮像中心A)は、100mm+30mm=130mmである。
第2穴については、撮像範囲に入り切らないので、複数箇所の撮像を行う。この例では、2箇所の撮像を行い、2つの撮像画像に基づいて第2穴の計測を行う。このように計測対象の全体が撮像範囲に入らない場合の計測を「画面外計測」という。
第2穴の1回目の撮像条件として、第2穴の中心よりも左下の所定位置(Yp=66mm,Xp=66mm)を撮像中心Bとする。1回目の撮像範囲は、図示した撮像中心Bを囲む細線の矩形の内側となる。第2穴の2回目の撮像条件として、第2穴の中心よりも右上の所定位置(Yp=74mm,Xp=74mm)を撮像中心Cとする。2回目の撮像範囲は、図示した撮像中心Cを囲む細線の矩形の内側となる。
撮像中心Bの機械座標を(Xm(撮像中心B),Ym(撮像中心B))と表すと、Xm(撮像中心B)は、100mm+66mm=166mmであり、Ym(撮像中心B)は、100mm+66mm=166mmである。撮像中心Cの機械座標を(Xm(撮像中心C),Ym(撮像中心C))と表すと、Xm(撮像中心C)は、100mm+74mm=174mmであり、Ym(撮像中心C)は、100mm+74mm=174mmである。
次に、第1穴の計測について説明する。
図4の上部は、撮像中心Aの撮像画像から検出されたエッジ(境界線)を示す。
この例の撮像画像のサイズは、1600×1200ピクセルである。この例の解像度は、4.5μm/ピクセルである。従って、撮像画像は、実寸の5.4mm×7.2mmの範囲を写す。撮像画像系の原点(「画像原点」という)は、左下の角点である。右向きがXiの正方向である。上向きがYiの正方向である。画像原点を(Xi=0ピクセル,Yi=0ピクセル)と表す。
図示した円は、撮像中心Aに撮像部600の光軸を合わせて撮像した撮像画像から、エッジ検出部482によって検出されたエッジ(境界線)を示している。エッジは、第1穴全体の輪郭を表す。外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、エッジの線上の2つの点について位置を計測して、加工された第1穴の直径を求める。以下、エッジの線上の点を「エッジ点」という。エッジ点a1は、円形の左下で、その点における接線がXi軸と反時計回りに所定角度(この例では、135度)となる点である。エッジ点a2は、円形の右上で、その点における接線がXi軸と反時計回りに所定角度(この例では、135度)となる点である。エッジ検出部482は、画像解析によって上述の所定角度の接線を特定し、接線とエッジが重なる接点をエッジ点a1とエッジ点a2として検出する。
エッジ点a1の画像座標を(Xi(エッジ点a1),Yi(エッジ点a1))と表す。座標変換部488は、以下の手順で、エッジ検出部482によって検出されたエッジ点a1の画像座標を機械座標に変換する。エッジ点a1の機械座標を(Xm(エッジ点a1),Ym(エッジ点a1))と表す。
Xm(エッジ点a1)は、以下の式1で算出される。
Xm(エッジ点a1)=Xm(撮像中心A)
+R×(Xi(エッジ点a1)-Xi(撮像中心A))(式1)
Xm(撮像中心A)は、130mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Xi(エッジ点a1)は、画像解析によって接点の画像座標として検出される。Xi(撮像中心A)は、800ピクセルである。
Ym(エッジ点a1)は、以下の式2で算出される。
Ym(エッジ点a1)=Ym(撮像中心A)
+R×(Yi(エッジ点a1)-Yi(撮像中心A))(式2)
Ym(撮像中心A)は、130mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Yi(エッジ点a1)は、画像解析によって接点の画像座標として検出される。Yi(撮像中心A)は、600ピクセルである。
座標変換部488は、以下の手順で、エッジ検出部482によって検出されたエッジ点a2の画像座標(Xm(エッジ点a2),Ym(エッジ点a2))を機械座標に変換する。エッジ点a2の機械座標を(Xm(エッジ点a2),Ym(エッジ点a2))と表す。
Xm(エッジ点a2)は、以下の式3で算出される。
Xm(エッジ点a2)=Xm(撮像中心A)
+R×(Xi(エッジ点a2)-Xi(撮像中心A))(式3)
Xm(撮像中心A)は、130mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Xi(エッジ点a2)は、画像解析によって接点の画像座標として検出される。Xi(撮像中心A)は、800ピクセルである。
Ym(エッジ点a2)は、以下の式4で算出される。
Ym(エッジ点a2)=Ym(撮像中心A)
+R×(Yi(エッジ点a2)-Yi(撮像中心A))(式4)
Ym(撮像中心A)は、130mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Yi(エッジ点a2)は、画像解析によって接点の画像座標として検出される。Yi(撮像中心A)は、600ピクセルである。
そして、寸法算出部490は、エッジ点a1の機械座標(Xm(エッジ点a1),Ym(エッジ点a1))とエッジ点a2の機械座標(Xm(エッジ点a2),Ym(エッジ点a2))の距離を算出する。この距離が、第1穴の直径である。寸法算出部490は、エッジ点a1の機械座標とエッジ点a2の機械座標の中点の機械座標を算出する。中点の機械座標は、第1穴の中心の位置を示す。寸法算出部490は、第1穴の直径を2で割って、第1穴の半径を求めてもよい。
寸法算出部490は、画像座標を機械座標に変換することなく、画像座標における距離によって第1穴の直径を算出してもよい。その場合には寸法算出部490は、エッジ点a1の画像座標(Xi(エッジ点a1),Yi(エッジ点a1))とエッジ点a2の画像座標(Xi(エッジ点a2),Yi(エッジ点a2))の間のピクセル長を算出し、ピクセル長に解像度(4.5μm/ピクセル)を乗じて、第1穴の直径を算出する。エッジ点a3とエッジ点a4についても、同様に第1穴の直径を算出することができる。エッジ点a3は、円形の右下で、その点における接線がXi軸と反時計回りに所定角度(この例では、45度)となる点である。エッジ点a4は、円形の左上で、その点における接線がXi軸と反時計回りに所定角度(この例では、45度)となる点である。エッジ点a1とa2に基づく直径とエッジ点a3とa4に基づく直径とが一致しない場合には、平均値を用いてもよいし、撮像から処理をやり直すようにしてもよい。撮像画像に含まれるノイズの影響を受けている場合には、撮像し直すことによって不一致が解消する場合がある。
続いて、第2穴の計測について説明する。
図5の上部は、撮像中心Bの撮像画像から検出されたエッジ(境界線)を示す。
図示した円弧は、撮像中心Bに撮像部600の光軸を合わせて撮像した撮像画像から、エッジ検出部482によって検出されたエッジ(境界線)を示している。エッジは、第2穴の輪郭の左下の円弧を表す。外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、エッジの線上のエッジ点bについて位置を計測する。エッジ点bは、左下円弧で、その点の接線がXi軸と反時計回りに所定角度(この例では、135度)となる点である。エッジ検出部482は、画像解析によって上述の所定角度の接線を特定し、接線とエッジが重なる接点をエッジ点bとして検出する。
エッジ点bの画像座標を(Xi(エッジ点b),Yi(エッジ点b))と表す。座標変換部488は、以下の手順で、エッジ検出部482によって検出されたエッジ点bの画像座標を機械座標に変換する。エッジ点bの機械座標を(Xm(エッジ点b),Ym(エッジ点b))と表す。
Xm(エッジ点b)は、以下の式5で算出される。
Xm(エッジ点b)=Xm(撮像中心B)
+R×(Xi(エッジ点b)-Xi(撮像中心B))(式5)
Xm(撮像中心B)は、166mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Xi(エッジ点b)は、画像解析によって接点の画像座標として検出される。Xi(撮像中心B)は、800ピクセルである。
Ym(エッジ点b)は、以下の式6で算出される。
Ym(エッジ点b)=Ym(撮像中心B)
+R×(Yi(エッジ点b)-Yi(撮像中心B))(式6)
Ym(撮像中心B)は、166mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Yi(エッジ点b)は、画像解析によって接点の画像座標として検出される。Yi(撮像中心B)は、600ピクセルである。
図5の下部は、撮像中心Cの撮像画像から検出されたエッジ(境界線)を示す。
図示した円弧は、撮像中心Cに撮像部600の光軸を合わせて撮像した撮像画像から、エッジ検出部482によって検出されたエッジ(境界線)を示している。エッジは、第2穴の輪郭の右上円弧を表す。外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、エッジの線上のエッジ点cについて位置を計測する。エッジ点cは、右上円弧で、その点の接線がXi軸と反時計回りに所定角度(この例では、135度)となる点である。エッジ検出部482は、画像解析によってエッジ点cを検出する。
エッジ点cの画像座標を(Xi(エッジ点c),Yi(エッジ点c))と表す。座標変換部488は、以下の手順で、エッジ検出部482によって検出されたエッジ点cの画像座標を機械座標に変換する。エッジ点cの機械座標を(Xm(エッジ点c),Ym(エッジ点c))と表す。
Xm(エッジ点c)は、以下の式7で算出される。
Xm(エッジ点c)=Xm(撮像中心C)
+R×(Xi(エッジ点c)-Xi(撮像中心C))(式7)
Xm(撮像中心C)は、174mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Xi(エッジ点c)は、画像解析によって接点の画像座標として検出される。Xi(撮像中心C)は、800ピクセルである。
Ym(エッジ点c)は、以下の式8で算出される。
Ym(エッジ点c)=Ym(撮像中心C)
+R×(Yi(エッジ点c)-Yi(撮像中心C))(式8)
Ym(撮像中心C)は、174mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Yi(エッジ点c)は、画像解析によって接点の画像座標として検出される。Yi(撮像中心C)は、600ピクセルである。
そして、寸法算出部490は、エッジ点bの機械座標(Xm(エッジ点b),Ym(エッジ点b))とエッジ点cの機械座標(Xm(エッジ点c),Ym(エッジ点c))の距離を算出する。この距離が、第2穴の直径である。寸法算出部490は、エッジ点bの機械座標とエッジ点cの機械座標の中点の機械座標も算出する。中点の機械座標は、第2穴の中心の位置を示す。寸法算出部490は、第2穴の直径を2で割って、第1穴の半径を求めてもよい。
図6の左側は、実施形態におけるシーケンスの第1例を示す。
第1例では、NCプログラムにおいて撮像による計測処理のタイミングが定められている。たとえば、量産段階においてこのようなシーケンスが用いられる。
NCプログラムによる所定の加工(この例では、第1穴あけ又は第2穴あけ)が済んだ段階で、図示したシーケンスに移る。
数値制御装置880は、PLC860に撮像部600の装着を指示する(S10)。PLC860は、その指令に従って工具交換装置850を制御して、取付部822(主軸100)に装着されている工具と工具交換装置850のツールマガジンに格納されている撮像部600とを交換し、撮像部600を取付部822(主軸100)に装着させる。
数値制御装置880は、所定の撮像中心(たとえば、上述した撮像中心A、撮像中心B、撮像中心C)の機械座標に撮像部600の光軸を合わせるように、駆動部824に取付部822(主軸100)を移動させる指示を行う(S12)。駆動部824は、指示に従って、取付部822(主軸100)を移動させる。なお、取付部822(主軸100)の中心軸と撮像部600とは、一致するものとする。
数値制御装置880は、外部コンピュータ400(情報処理装置の例)へ撮像指示を送信する(S14)。外部コンピュータ400の受信部470が撮像指示を受信すると、外部コンピュータ400の送信部460は、撮像指示を撮像部600へ送信する(S16)。
撮像部600は、撮像指示を受信するとワークを撮像する(S18)。撮像部600は、得られた撮像画像を外部コンピュータ400(情報処理装置の例)へ送信する(S20)。
数値制御装置880は、S12で合わせた撮像中心の機械座標を外部コンピュータ400(情報処理装置の例)へ送信する(S22)。外部コンピュータ400の受信部470は、撮像中心の機械座標と撮像画像を受信する。外部コンピュータ400(情報処理装置の例)のエッジ検出部482は、画像解析によって撮像画像におけるエッジを検出する(S24)。エッジ検出部482は、画像解析によって、所定のエッジ点(たとえば、上述したエッジ点a1、エッジ点a2、エッジ点b、エッジ点c)の画像座標を検出する(S26)。座標変換部488は、検出されたエッジ点の画像座標を機械座標に変換する(S28)。
上述した第1穴の場合には1回撮像を行うので、破線内の処理を1回行う。そして、1つの撮像画像からエッジ点を2つ検出する。一方、第2穴の場合には2回撮像を行い、各撮像画像からエッジ点を1つ検出する。そのため、破線内の処理を2回行う。
外部コンピュータ400(情報処理装置の例)の寸法算出部490は、第1穴と第2穴について、それぞれ2つのエッジ点の機械座標に基づいて直径を算出する(S30)。さらに、寸法算出部490は、第1穴の中心の機械座標と第2穴の中心の機械座標を算出する。外部コンピュータ400又は操作盤890の表示処理部432は、撮像画像と計測した寸法(直径と中心)を表示デバイスの画面に表示させる。外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、第1穴と第2穴の半径を算出して、それらの半径を表示させてもよい。
図6の右側は、実施形態におけるシーケンスの第2例を示す。
第2例では、作業員が外部コンピュータ400又は操作盤890を操作して、任意のタイミングで撮像による計測処理が行われる。たとえば、試作段階においてこのようなシーケンスが用いられる。
外部コンピュータ400又は操作盤890の表示処理部432は、加工図を表示デバイスの画面に表示させる。加工図は、データ格納部440に記憶されている。作業員は、加工図を見て撮像中心の加工座標を指定する。加工座標を数値で入力してもよいし、加工図の表示上でクリックあるいはタッチして加工座標を入力するようにしてもよい。このユーザ操作によって、外部コンピュータ400又は操作盤890の操作受付部422は、撮像中心の加工座標を受け付ける(S40)。
外部コンピュータ400(情報処理装置の例)の座標変換部488は、撮像中心の加工座標を撮像中心の機械座標に変換する。具体的には、加工原点の機械座標に撮像中心の加工座標を加えることによって、撮像中心の機械座標が求められる(S42)。
外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、数値制御装置880に撮像部600の装着を指示する(S44)。この処理と動作は、S10の場合と同様である。
また、外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、数値制御装置880に、撮像中心の機械座標へ取付部822(主軸100)を移動させる指示を行う(S46)。このときの工作システムの動作は、S12の場合と同様である。S48~S60の処理と動作は、S16~S20、S24~S36の場合と同様である。
第1例と第2例の他に、作業員が手で取付部822(主軸100)を動かして、取付部822(主軸100)をワーク上に移動させてもよい。この方法の場合には、外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、工作機械800から撮像中心の機械座標を取得する。撮像中心の機械座標は、取付部822(主軸100)の中心軸の位置である。
[変形例1]
実施形態では、画像内計測においてエッジ上の2つの点の位置を計測して、2つの計測点の位置に基づいて円形穴の径を算出する例を示したが、画像内計測においてエッジ上の3つ以上の点の位置を計測して、3つ以上の計測点の位置に基づいて円形穴の径を算出してもよい。画像内計測において2点計測よりも3点計測の方が、計測精度が高くなる。画像内計測において計測点の数は4つ以上でもよく、計測点が多い方がさらに計測精度が高くなる。
図4の下部は、変形例1における3点計測の例を示す。
この例で、エッジ検出部482は、画像内計測において撮像画像系のXi軸となす角度が0度になる接線上の接点と、撮像画像系のXi軸となす角度が120度になる接線上の接点と、撮像画像系のXi軸となす角度が240度になる接線上の接点である各エッジ点の画像座標を検出する。寸法算出部490は、幾何解析によって、3つのエッジ点の画像座標に基づいて円形穴の径を算出する。あるいは、座標変換部488が各エッジ点の画像座標を機械座標に変換し、寸法算出部490は、幾何解析によって、3つのエッジ点の機械座標に基づいて円形穴の径を算出する。
図10の上部は、変形例1における12点計測の例を示す。
この例で、エッジ検出部482は、画像内計測において12個の接点である各エッジ点の画像座標を検出する。寸法算出部490は、幾何解析によって、12個のエッジ点の画像座標に基づいて円形穴の径を算出する。あるいは、座標変換部488が12個の各エッジ点の画像座標を機械座標に変換し、寸法算出部490は、幾何解析によって、12個のエッジ点の機械座標に基づいて円形穴の径を算出する。このとき、中心から各エッジ点までの距離について、標準偏差以上の外れ点を除いて円形穴の径を算出すれば、計算の精度を高めることができる。
図10の下部は、変形例1における36点計測の例を示す。
画像内計測において36個の接点である各エッジ点に基づいて計測してもよい。エッジ点が36個である場合は、10度ピッチでエッジ点が計測される。図示していないが、たとえば18個のエッジ点に基づいて計測してもよい。エッジ点が18個である場合は、20度ピッチでエッジ点が計測される。1つの画像において4点以上36点以下のエッジ点を用いて計測することが好ましい。処理方法は、上述の場合と同様である。
また実施形態では、画像外計測において2つの撮像画像でエッジ上の2つの点の位置を計測して、2つの計測点の位置に基づいて円形穴の径を算出する例を示したが、画像外計測において3つ以上の撮像画像でエッジ上の3つ以上の点の位置を計測して、3つ以上の計測点の位置に基づいて円形穴の径を算出してもよい。画像外計測において2点計測よりも3点計測の方が、計測精度が高くなる。画像外計測において計測点の数は4つ以上でもよく、計測点が多い方がさらに計測精度が高くなる。
画像外計測において3点計測を行う場合には、撮像画像系のXi軸となす角度が0度になる接線上の接点を含む範囲と、撮像画像系のXi軸となす角度が120度になる接線上の接点を含む範囲と、撮像画像系のXi軸となす角度が240度になる接線上の接点を含む範囲の3箇所を撮像する。エッジ検出部482は、3つの撮像画像でそれぞれエッジ点の画像座標を検出し、座標変換部488が各エッジ点の画像座標を機械座標に変換し、寸法算出部490は、幾何解析によって、3つのエッジ点の機械座標に基づいて円形穴の径を算出する。
たとえば、画像外計測において12点計測を行う場合には、12個の接点のそれぞれを含む12箇所の撮像を行う。エッジ検出部482は、12個の撮像画像でエッジ点の画像座標を検出し、座標変換部488が各エッジ点の画像座標を機械座標に変換し、寸法算出部490は、幾何解析によって、12個のエッジ点の機械座標に基づいて円形穴の径を算出する。画像内計測の場合と同様に、中心から各エッジ点までの距離について、標準偏差以上の外れ点を除いて円形穴の径を算出すれば、計算の精度を高めることができる。画像外計測において36点計測を行う場合の処理は、計測点の数が異なる点を除いて12点計測を行う場合の処理と同様である。エッジ点間の距離が短い場合には、1回の撮像で2つのエッジ点を写して撮像回数を減らしてもよい。
[変形例2]
実施形態では、接点間の距離によって円形穴の直径あるいは半径を算出する例を示したが、パターンマッチングによって、円形穴の直径あるいは半径を特定するようにしてもよい。
変形例2では、計測精度に応じて少しずつ径の異なる多数の円形のパターン画像をパターン記憶部442に記憶しておく。パターンマッチング部492は、円形のパターン画像を1つずつ読みだして、円形のパターン画像と撮像画像のエッジのパターンマッチングを行う。そして、最も高いマッチ度が得られたパターン画像を特定し、そのパターン画像の円形の直径(あるいは半径)を円形穴の直径(あるいは半径)とする。また、パターンマッチング部492は、最も高いマッチ度を示したときのパターン画像の円形の中心位置を、円形穴の中心位置として特定する。
円形に限らず、パターン記憶部442に、計測する部位の形状に応じたパターン画像を多数用意しておいて、パターンマッチング部492がパターンマッチングによってエッジと最も高いマッチ度を示すパターン画像を特定してもよい。この場合には、そのパターン画像の形状の寸法が、計測する部位の形状の寸法となる。
[変形例3]
円形穴に生じたバリがエッジとして検出される場合を考慮して、エッジ検出部482は、ソーベルフィルタ等で輪郭を検出し、理想的な円形状と輪郭の比較を行うことによって、バリなどの異常個所を特定するようにしてもよい。そして、エッジ検出部482は、異常個所を避けて、エッジ点を特定するようにしてもよい。
[変形例4]
実施形態では、加工結果を計測する例を示したが、変形例4では加工前のワークW設置における位置決めの誤差を補正する例について説明する。テーブル上に設置されたワークWの位置を、「ワークWの設置位置」という。ワークWの設置位置は、ワークWの所定基準点によって特定することができる。この例では、所定基準点を加工原点として、加工原点によってワークWの設置位置を特定する例を示す。つまり、理想的な設置状態におけるワークWの加工原点と実際に設置されたワークWの加工原点のずれが、「ワークWの設置位置のずれ」に相当する。以下では、外部コンピュータ400(情報処理装置の例)が撮像画像によって加工原点のずれを計測する例について説明する。
図3に関連して、加工原点を撮像するための撮像条件について説明する。
加工原点の撮像条件として、加工原点(Xp=0mm,Yp=0mm)を撮像中心Dとする。撮像範囲は、図示した撮像中心Dを囲む細線の矩形の内側となる。
図7の上部は、変形例4におけるワークWの設置状態を示す。
図7の上部は、図8の上部に示す撮像画像の前提としてどのようにワークWが置かれているかを説明するための図であって、撮像画像を表す図ではない。図7の上部は、設置されたワークWを上方から見ているものとする。
破線の正方形は、指定された撮像条件に合ったワークWの位置と向きを示している。つまり、理想的な設置状態におけるワークWの位置と向きを示している。この位置と向きに正しくワークWが設置されることを前提として、NCプログラムは成り立っている。
これに対して、実線の正方形は、実際に設置されたワークWの位置と向きを示している。設置作業において誤差が生じ得るので、実線の正方形の位置と向きは、ワークWを交換する度に異なる可能性がある。図7の上部に示したワークWの設置状態は、一例である。
この例の場合、ワークWの向きは撮像条件に合致している。つまり、ワークWの向きは正しい。ただし、ワークWの位置が右上方向にずれている。具体的には、設置されたワークWの加工原点が本来機械座標(Xm=0mm,Ym=0mm)であるべきであるが、実際には機械座標(Xm=0.9mm,Ym=0.9mm)になっている。以下、加工図で設置条件として指定された加工原点を「理想の加工原点」といい、設置されたワークWの加工原点を「実際の加工原点」という。
このまま加工を行うと、第1穴と第2穴の位置が左下へずれることになる。このような場合に、工作機械800は、加工原点の位置ずれを補正して動作する機能を備えている。具体的には、工作機械800に対して、位置ずれを補正するためのオフセット値(Xoff=0.9mm,Yoff=0.9mm)を設定すれば、加工図の通りに穴あけを行うことができる。以下では、外部コンピュータ400(情報処理装置の例)が、撮像画像を解析してオフセット値(Xoff=0.9mm,Yoff=0.9mm)を算出する。
図8の上部は、撮像中心Dとする撮像画像から検出されたエッジ(境界線)を示す。
2本の破線は、図7の上部と同様に撮像条件に合ったワークWの位置と向きを示している。2本の実線は、図7の上部と同様に作業員によって設置されたワークWのエッジを示している。エッジ検出部482は、画像解析によって2本のエッジ線の交点(つまり角点)を、実際の加工原点の画像座標(Xi(実際の加工原点),Yi(実際の加工原点))として特定する。座標変換部488は、以下の手順で、エッジ検出部482によって特定された実際の加工原点の画像座標を機械座標に変換する。実際の加工原点の機械座標を(Xm(実際の加工原点),Ym(実際の加工原点))と表す。
Xm(実際の加工原点)は、以下の式9で算出される。
Xm(実際の加工原点)=Xm(撮像中心D)
+R×(Xi(実際の加工原点)-Xi(撮像中心D))(式9)
Xm(撮像中心D)は、100mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Xi(実際の加工原点)は、画像解析によってエッジ線の交点の画像座標として特定される。Xi(撮像中心D)は、800ピクセルである。
Ym(実際の加工原点)は、以下の式10で算出される。
Ym(実際の加工原点)=Ym(撮像中心D)
+R×(Yi(実際の加工原点)-Yi(撮像中心D))(式10)
Ym(撮像中心D)は、100mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Yi(実際の加工原点)は、画像解析によってエッジ線の交点の画像座標として特定される。Yi(撮像中心D)は、600ピクセルである。
この例では、実際の加工原点の画像座標(Xi(実際の加工原点)=1000,Yi(実際の加工原点=800)が、実際の加工原点の機械座標(Xm(実際の加工原点)=100.9mm,Ym(実際の加工原点)=100.9mm)に変換される。
補正値算出部494は、座標変換部488によって求められた実際の加工原点の機械座標から、工作機械800に送信するオフセット値を算出する。オフセット値は、工作機械800における動作を補正するために設定されるパラメータ(補正値)の一種である。具体的には、実際の加工原点の機械座標から理想の加工原点の機械座標を差し引くことによってオフセット値(Xoff,Yoff)が求められる。この例では、オフセット値は以下のように算出される。
Xoff=Xm(実際の加工原点)-Xm(理想の加工原点)
=100.9mm-100mm
=0.9mm
Yoff=Ym(実際の加工原点)-Ym(理想の加工原点)
=100.9mm-100mm
=0.9mm
オフセット値は、加工図におけるワークWの加工座標(Xp,Yp)(図3参照)と、工作機械800で使用される機械座標(Xm,Ym)(図1参照)を対応付ける意味がある。この例では、加工原点(0,0)が機械座標(0.9,0.9)に対応付けられる。また、他の加工座標(Xp,Yp)についても、機械座標(Xm=Xp+0.9,Ym=Yp+0.9)に対応付けられる。このオフセット値を設定された工作機械800は、数値制御装置880から指示された機械座標のXpに0.9を加え、同じく機械座標のYpに0.9を加えた機械座標に対して加工を施す。これにより、加工図の通りの加工結果が得られるようになる。
図9の前半は、変形例4におけるシーケンスを示す。
このシーケンスは、図6の左側のシーケンスをベースとしている。S70の処理は、図6の左側のS10の場合と同様である。数値制御装置880は、撮像中心D(理想の加工原点)の機械座標に撮像部600の光軸を合わせるように、駆動部824に取付部822(主軸100)を移動させる指示を行う(S72)。駆動部824は、指示に従って、取付部822(主軸100)を移動させる。S74~S84の処理については、図6の左側に示したS14~S24の場合と同様である。
エッジ検出部482は、画像解析によって、実際の加工原点の画像座標を検出する(S86)。座標変換部488は、検出された実際の加工原点の画像座標を機械座標に変換する(S88)。補正値算出部494は、座標変換部488によって求められた実際の加工原点の機械座標から、工作機械800に設定するオフセット値を算出する。そして、補正値送信部468は、オフセット値(補正値の一種)を工作機械800へ送信する(S90)。以降、工作機械800は、オフセット値に応じて適正な加工位置決めを行う。
図示していないが、図6の右側のシーケンスをベースとしてもよい。その場合には、図6の右側のS40~S54までの処理を実施形態の場合と同様に行い、その後、図9の前半のS86~S90に示した処理を行う。
[変形例5]
変形例5では、加工原点のずれに加えて、ワークWの向きのずれも計測する。テーブル上に設置されたワークWの向きを、「ワークWの設置向き」という。ワークWの設置向きは、ワークWにおける2つの所定基準点を端とする線分の角度によって特定することができる。つまり、理想的な設置状態における2つの所定基準点を端とする線分と、実際に設置されたワークWの2つの所定基準点を端とする線分とがなす角度が、「ワークWの設置位置の向きのずれ」に相当する。この例では、加工原点と加工原点の対角点を2つの所定基準点とする。以下、加工原点の対角点を単に「対角点」ということがある。加工原点は、「第1基準点」の例である。加工原点の対角点は、「第2基準点」の例である。加工原点の機械座標は、「第1座標」の例である。加工原点の対角点の機械座標は、「第2座標」の例である。
図3に関連して、加工原点と加工原点の対角点を撮像するための撮像条件について説明する。対角点の撮像では、加工図で指定された設置条件における対角点の機械座標(Xp=200mm,Yp=200mm)を撮像中心Eとする。撮像範囲は、図示した撮像中心Eを囲む細線の矩形の内側となる。以下、加工図で指定された設置条件における対角点を「理想の対角点」といい、設置されたワークWの対角点を「実際の対角点」という。
図7の下部は、変形例5におけるワークWの設置状態を示す。
図7の下部は、図7の上部と同様に、設置されたワークWを上方から見ているものとする。破線の正方形は、図7の上部と同様に、撮像条件に合った理想のワークWの位置と向きを示している。実線の正方形は、図7の上部と同様に、作業員によって設置された実際のワークWの位置と向きを示している。ワークWの向きは、反時計回りに+1度ずれている。また、ワークWの位置が右上方向にずれている。具体的には、設置されたワークWの加工原点は、本来機械座標(Xm=100mm,Ym=100mm)であるべきであるが、実際には機械座標(Xm=100.9mm,Ym=100.9mm)になっている。このまま加工を行うと、第1穴と第2穴の位置がずれることになる。
工作機械800は、加工原点の位置づれとワークWの向きのずれを補正して動作する機能を有している。つまり、工作機械800に、位置ずれを補正するためのオフセット値(Xoff=0.9mm,Yoff=0.9mm)と補正回転角度(+1)を設定すれば、加工図の通りに穴あけが行われる。以下では、外部コンピュータ400(情報処理装置の例)が、加工原点の撮像画像と対角点の撮像画像に基づいてオフセット値(Xoff=0.9mm,Yoff=0.9mm)と補正回転角度(+1)を算出する。
図8の中央部は、理想の加工原点を撮像中心Dとする撮像画像から検出されたエッジ(境界線)を示す。
2本の破線は、図8の上部と同様に、撮像条件に合った理想のワークWの位置と向きを示している。2本の実線は、図8の上部と同様に、作業員によって設置された実際のワークWのエッジを示している。後述する図8の下部についても同様である。なお、2本のエッジ線は、いずれも反時計回りに1度傾いている。エッジ検出部482は、画像解析によって2本のエッジ線の交点(つまり角点)を、実際の加工原点の画像座標(Xi(実際の加工原点),Yi(実際の加工原点))として特定する。そして、座標変換部488は、実際の加工原点の画像座標を機械座標に変換する。実際の加工原点の機械座標を(Xm(実際の加工原点),Ym(実際の加工原点))と表す。変換の手順は、図8の上部の場合と同様であるので、省略する。
図8の下部は、理想の対角点を撮像中心Eとする撮像画像から検出されたエッジ(境界線)を示す。
図示したように実際の対角点は、理想の対角点よりも上方の左側にずれている。エッジ検出部482は、画像解析によって2本のエッジ線の交点(つまり角点)を、実際の対角点の画像座標(Xi(実際の対角点),Yi(実際の対角点))として特定する。座標変換部488は、以下の手順で、実際の加工原点の画像座標を機械座標に変換する。実際の対角点の機械座標を(Xm(実際の対角点),Ym(実際の対角点))と表す。
Xm(実際の対角点)は、以下の式11で算出される。
Xm(実際の対角点)=Xm(撮像中心E)
+R×(Xi(実際の対角点)-Xi(撮像中心E))(式11)
Xm(撮像中心E)は、200mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Xi(実際の対角点)は、画像解析によってエッジ線の交点の画像座標として特定される。Xi(撮像中心E)は、800ピクセルである。
Ym(実際の対角点)は、以下の式12で算出される。
Ym(実際の対角点)=Ym(撮像中心E)
+R×(Yi(実際の対角点)-Yi(撮像中心E))(式12)
Ym(撮像中心E)は、200mmである。Rは、解像度(4.5μm/ピクセル)である。Yi(実際の対角点)は、画像解析によってエッジ線の交点の画像座標として特定される。Yi(撮像中心E)は、600ピクセルである。
この例では、実際の対角点の画像座標(Xi(実際の対角点)=608.67,Yi(対角点=1184.44)が、実際の対角点の機械座標(Xm(実際の対角点)=99.14mm,Ym(実際の対角点)=102.63mm)に変換される。
続いて、補正値算出部494は、オフセット値と補正回転角度を算出する。オフセット値の算出方法は、変形例4と同様である。ここでは、補正回転角度の算出方法について説明する。図7の下部に示したように、実際の加工原点と実際の対角点を結ぶ線分の角度に着目する。正しく設置された場合に、この線分がXp軸となす角度は、45度である。補正回転角度をθで表すと、実際に設置されたときのこの線分とXp軸がなす角度は、45+θ度である。したがって、以下の式13が成り立つ。
tan(45+θ)=(Ym(実際の対角点)-Ym(実際の加工原点))
/(Xm(実際の対角点)-Xm(実際の加工原点))(式13)
そして、式13から式14が導かれる。補正値算出部494は、式14によって補正回転角度θを算出する。
θ=arctan((Ym(実際の対角点)-Ym(実際の加工原点))
/(Xm(実際の対角点)-Xm(実際の加工原点)))-45(式14)
この例による式14の算出結果を示す。
θ=arctan((102.630-0.9)/(99.139-0.9))-45
=arctan(1.0355)-45
=46-45=1
続いて、変形例5におけるシーケンスについて説明する。
図9の後半は、変形例5におけるシーケンスを示す。
このシーケンスは、図9の前半に示したシーケンスに続く。数値制御装置880は、撮像中心E(理想の対角点)の機械座標に撮像部600の光軸を合わせるように、駆動部824に取付部822(主軸100)を移動させる指示を行う(S100)。駆動部824は、指示に従って、取付部822(主軸100)を移動させる。S102~S112の処理については、図6の左側に示したS14~S24の場合と同様である。
エッジ検出部482は、画像解析によって、実際の対角点の画像座標を検出する(S114)。座標変換部488は、検出された実際の対角点の画像座標を機械座標に変換する(S116)。補正値算出部494は、実際の加工原点の機械座標と実際の対角点の機械座標から補正回転角度を算出する。そして、補正値送信部468は、補正回転角度(補正値の一種)を工作機械800へ送信する(S118)。以降、工作機械800は、オフセット値と補正回転角度に応じて適正な加工位置決めを行う。
寸法算出部490は、実際の加工原点と実際の対角点の間の距離を算出してもよい。加工図面における距離と一致しない場合には、外部コンピュータ400又は操作盤890の出力部430が、不適当なワークWである旨の警告を発するようにしてもよい。
変形例5において、加工原点と加工原点の対角点以外の2つの基準点を用いてもよい。たとえば、右下角点を第1基準点として、左上角点を第2基準点としてもよい。
[変形例6]
外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、加工原点を中心とする撮像画像のみでワークWの向きのずれを計測してもよい。変形例6では、撮像画像から検出されるエッジ線の傾きが求められる。
エッジ検出部482は、画像解析によってワークWの正面側のエッジを示す境界線(図8の中央部の略横方向の太実線)がXi軸となす補正回転角度を画像解析によって求める。また、エッジ検出部482は、ワークWの左側面のエッジを示す境界線(図8の中央部の略縦方向の太実線)がY軸となす角度を画像解析によって求める。この例では、いずれの方法で算出された補正回転角度θも、反時計回りの1度を示す。原理的には、2つの方法で算出された補正回転角度θは一致するが、誤差を考慮して、両者の平均値を用いるようにしてもよい。演算部486は、2つの補正回転角度θが誤差の許容範囲を超える場合に、ワークWが不適当であると判断して、外部コンピュータ400又は操作盤890の出力部430が、警告を発するようにしてもよい。
[変形例7]
外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、変形例4~6に示した動作によってワークWの加工原点のずれやワークWの向きのずれを検出した場合に、外部コンピュータ400又は操作盤890の出力部430が、ワークWの加工原点のずれやワークWの向きのずれが生じている旨の警告を発するようにしてもよい。作業員は、この警告によってワークWの位置や向きのずれに気づき、ワークWを正しく設置し直すことができる。したがって、ワークWの設置ミスによる加工不良を未然に防ぐことができる。
[変形例8]
実施形態および上述の変形例では、円形穴を計測する例を示した。円形穴(円柱の凹部)は、計測対象部、つまり計測対象となるワークWの部分の例である。計測対象部は、円錐の凹部、円筒部(円柱の凸部)あるいは円錐の凸部のように、Z軸方向から見て円形を有するその他の形状であってもよい。また、計測対象部は、溝や壁のようにZ軸方向から見て平行な延長形状であってもよく、平行な延長形状の幅を計測してもよい。計測対象部は、Z軸方向から見て長円、楕円、多角形(たとえば、四角形や六角形)などその他の形状を有する部分であってもよく、中心、径、辺長、対角線長や角の角度(エッジの2辺がなす角度)などその他の寸法を計測してもよい。また、計測対象部は、凸部、凹部あるいは傾斜部でもよく、加工前の形状でも加工後の形状でもよい。
[変形例9]
寸法算出部490がデータ格納部440に記憶されている加工図のデータを参照して、エッジに基づいて算出された寸法がワークWの所定寸法と異なると判定した場合に、外部コンピュータ400又は操作盤890の出力部430が、設置されているワークWが所定の大きさ又は所定の形状でない旨の警告を出力してもよい。たとえば、エッジに基づいて算出されたワークWの辺の長さが、加工図のデータに含まれるワークWの辺の長さと一致しない場合に、警告が出力される。あるいは、エッジに基づいて算出されたワークWの角の角度が、加工図のデータに含まれるワークWの角の角度と一致しない場合に、警告が出力される。つまり、寸法算出部490が、算出したワークW上の寸法に基づいて、設置されているワークWが所定の大きさ又は所定の形状でないと判定した場合に、外部コンピュータ400又は操作盤890の出力部430は警告を出力する。
[変形例10]
シーケンスの第1例(図6の左側)の場合、数値制御装置880は、S12においてNCプログラム(加工プログラム)から撮像中心の機械座標を読み取って、その位置へ取付部822(主軸100)を移動させる。そのため、NCプログラムに撮像中心の機械座標(取付部822の移動位置)が記述されている。
変形例10では、外部コンピュータ400(情報処理装置の例)から数値制御装置880へ撮像中心の機械座標を伝える。本変形例では、ユーザが作成した簡易なプログラム(以下、「測定プログラム」という)を、外部コンピュータ400の演算部486で読み取りながら動作する。この測定プログラムは、データ格納部440に記憶される。ユーザは、その測定プログラムに撮像中心の機械座標を記述する。外部コンピュータ400は、その測定プログラムから撮像中心の機械座標を読み取り、その位置へ取付部822を移動させるよう数値制御装置880に指示する。
図11は、変形例10におけるシーケンスを示す図である。
数値制御装置880は、図6のS10と同様に、PLC860に撮像部600の装着を指示する(S120)。数値制御装置880は、NCプログラムから所定箇所(たとえば、第1穴)の測定指示を読み取ると、その測定指示を外部コンピュータ400へ送信する(S122)。外部コンピュータ400は、その測定指示に従って所定部位を測定するための撮像中心の機械座標を測定プログラムから読み取り、その撮像中心の機械座標を含む取付部移動指示を数値制御装置880へ送信する(S124)。
数値制御装置880は、受信した取付部移動指示に従って駆動部824に取付部822を移動させる指示を行う(S126)。駆動部824は、撮像部600の光軸を撮像中心の機械座標に合わせるように取付部822を移動させる。
外部コンピュータ400は随時、数値制御装置880から取付部822の機械座標を受信する(S128)。外部コンピュータ400は、受信した取付部822の機械座標が撮像中心の機械座標と一致したときに取付部822の移動が完了したと判断し、撮像指示を撮像部600へ送信する(S130)。これ以降のS132~S142の処理は、図6のS18,S20,S24~S30と同様である。寸法の計算(S142)を終えると、外部コンピュータ400は、完了通知を数値制御装置880へ送信する。数値制御装置880は、その完了通知を受信すると、NCプログラムによる加工を再開させる。
画像内計測の場合には1回だけ撮像するので、図中破線内の処理が1回行われる。その際、エッジ検出部482は、1つの撮像画像から3つ以上のエッジ点を検出する。一方、画像外計測の場合には2回以上撮像するので、図中破線内の処理が2回以上行われる。その際、エッジ検出部482は、2つ以上の撮像画像において3つ以上のエッジ点を検出する。
ここで、上記実施形態(図6)と本変形例(変形例10:図11)との共通点に着目して、画像内計測の処理フローについて整理しておく。
撮像部600は、測定される箇所を1回で撮像する(図6のS18,S50,図11のS132)。たとえば第1穴を測定する場合、1つの撮像画像に円形穴の全体が収まる(図4)。エッジ検出部482は、穴の円周上の3か所以上の位置を含むエッジの検出処理を行い(図6のS24,S54,図11のS136)、3点以上のエッジ点の位置(画像座標)を算出する(図6のS26,S56,図11のS138)。エッジ検出部482は、3個のエッジ点を検出する場合に120度ピッチで検出することが望ましい。なお、4個以上のエッジ点を検出する場合も、等ピッチでエッジ点を検出することが望ましい。
寸法算出部490は、検出されたエッジ点から最小二乗法で近似円を算出する(図6のS30,S60,図11のS142)。その近似円から円の中心と直径を求めることができる。寸法算出部490は、円の中心を通る直線と円周上で交差する任意の2つのエッジ点から円の直径を算出してもよい。たとえば18個のエッジ点を検出した場合に、寸法算出部490は、18個のエッジ点について最小二乗法を適用する。このとき、寸法算出部490は、各エッジ点について近似円からの偏差を求めて、偏差が規定値を超えるエッジ点を最小二乗法の適用対象から除外して近似円を算出し直してもよい。寸法算出部490は、上述したようにエッジ点の機械座標によって直径を算出してもよいし、エッジ点の画像座標によって直径を算出してもよい。画像座標を用いる場合には、寸法算出部490は、エッジ点の画像座標に基づいて直径に相当する画素数(ピクセル数)を算出し、その画素数に解像度Rを乗じて直径を算出する。
次に、画像外計測の処理フローについても整理しておく。撮像部600は、測定される箇所を複数回に分けて撮像する。ここでは、2回の撮像を行う例を図12に示す。
図12の上部は、画像外計測で計測される円形穴の撮像画像1を示す。図12の下部は、画像外計測で計測される円形穴の撮像画像2を示す。撮像画像1では、円形穴の下部が欠落し、撮像画像2は、円形穴の上部が欠落している。
エッジ検出部482は、撮像画像1と撮像画像2とのそれぞれにおいて、円弧上にて20度ピッチでエッジ点を検出し(図6のS24,S54,図11のS136)、エッジ位置(エッジ点の画像座標)を算出する(図6のS26,S56,図11のS138)。画像外計測の場合には、各撮像画像において撮像したワークW上の範囲が異なるので、画像座標のままではエッジ点同士の位置関係を正しくとらえられない。そこで、エッジ位置を共通基準である機械座標系の座標(機械座標)に変換したうえで直径を算出する。
座標変換部488は、エッジ位置を画像座標の形式から機械座標の形式へ変換する(図6のS28,S58,図11のS140)。図12の例では、撮像画像1の撮像範囲と撮像画像2の撮像範囲の一部が重なるため、同じ機械座標を示すエッジ点(Pe4~7,13~16)が撮像画像1と撮像画像2の双方で検出される。このような場合には、重複を無くし、同じ機械座標のエッジ点を統一する。
エッジ検出部482は、エッジ点(機械座標)から最小二乗法で近似円を算出する(図6のS30,S60,図11のS142)。円の中心と直径の算出については、画像内計測の場合と同様である。たとえば18個のエッジ点を検出した場合に、エッジ検出部482は、18個のエッジ点について最小二乗法を適用する。このとき、エッジ検出部482は、各エッジ点について近似円からの偏差を求めて、偏差が規定値を超えるエッジ点を最小二乗法の適用対象から除外して近似円(直径)を算出し直してもよい。なお、画像外計測の場合にも、エッジ検出部482は、等ピッチでエッジ点を検出することが望ましい。エッジ点を等ピッチで検出することによって、計測の誤差を抑制できる。
次に、測定プログラムを生成するための編集ツールについて説明する。
図13は、測定プログラムの編集画面を示す図である。
編集ツールは、外部コンピュータ400で動作する。ここでは、特に撮像中心の機械座標を設定するためのユーザインターフェースを示す。編集ツールは、外部コンピュータ400の表示部に編集画面700を表示させる。編集画面700は、位置決め用画像714を含む。位置決め用画像714は、ワークWの全体または一部の形状を示す画像である。ユーザは、位置決め用画像714に対する操作によって、撮像中心の機械座標などを設定する。
位置決め用画像714は、たとえばライブビュー画像(図中の左上)である。ライブビュー画像は、取付部822に装着された撮像部600により現在撮像されている画像である。ユーザは、外部コンピュータ400に付属するジョグを操作することによって撮像部600を移動させて、ライブビュー画像をスライドさせることができる。
位置決め用画像714は、スティッチング画像の全体または一部であってもよい。スティッチング画像は、ワークW全体を含む画像であって、撮像部600から得られるN×M個の撮像画像を貼り合わせて作られる。
位置決め用画像714は、CAD(Computer Aided Design)画像の全体または一部であってもよい。CAD画像は、ワークのCADデータから生成されるグラフィック画像である。
リスト704には、計測プログラムに含まれるコマンドが表示される。たとえば、4番目の「Circle」が選択された状態で、編集ツールは、円形の計測に関するパラメータを受け付ける。位置決め用画像714の中に設定された円環パターン712の中心に相当する機械座標が、撮像中心として測定プログラムに書き込まれる。また、円環パターン712の外径と内径が、エッジ検出の対象範囲を特定するパラメータとして、測定プログラムに書き込まれる。編集ツールは、Zm方向(高さ方向)について機械座標を設定するようにしてもよい。
ここで、エッジ検出部482によるエッジ検出(図6のS24,S54,図11のS136)について補足する。図14は、エッジ検出の概要を示す図である。
図14に示した撮像画像は、図12の上部の撮像画像の一部である。エッジ検出部482は、撮像画像に測定範囲を設定する。測定範囲は、図13に示した円環パターン712で設定されたエッジ検出の対象範囲の一部に相当し、検出すべきエッジ点を含む。ここでは、図12に関連して説明したエッジ点(Pe5)を含む測定範囲を示している。測定範囲は、所定サイズの矩形であり、長手方向が円形穴の中心に向いている。エッジ点(Pe5)の測定範囲の長手方向は、Xi軸から反時計方向へ10度傾いている。
エッジ検出部482は、アフィン変換とバイリニア補間法によって、測定範囲内の画像を回転させた切り出し画像を生成する。アフィン変換は座標を変換する方法の一種である。この例では、画像を時計方向へ10度回転させる。バイリニア補間法は画素値を変換する方法の一種である。ここでは、切り出し画像の原点を左下角点とし、右向きをXc軸の正方向とし、上向きをYc軸の正方向とする。この処理で、測定範囲に含まれる各画素の位置と画素値に基づき、切り出し画像の各画素における画素値が算出される。アフィン変換とバイリニア補間法を用いることによって、回転に伴う画像の劣化を抑制できる。
エッジ点を特定するために、Xc軸方向の輝度変化に着目する。エッジ検出部482は、輝度の一次微分値(以下、単に「一次微分値」ということがある)を算出する。輝度の一次微分値を図中のグラフに示す。単純な方法では、一次微分値が最大であるXc:16の画素がエッジ点と判定される。ただし、このように各画素Xcの一次微分値をそのまま比較するだけでは、測定精度が低い。
一次微分値を補間することによって測定精度を高めることができる。エッジ検出部482は、一次微分値のスプライン補間値を算出する。スプライン補間値をグラフの曲線で示す。そして、エッジ検出部482は、スプライン補間値の最大値に相当する画素Xcを特定し、エッジ点とする。このように、補間値のピークが、切り出し画像内におけるエッジ点の位置に相当する。スプライン補間値の負の最小値に相当する画素Xcが、エッジ点となることもある。このようにスプライン補間値を用いれば、分解能が0.02ピクセルとなり、高い精度での計測が可能になる。ここで述べたスプライン補間は、サブピクセル処理の一種である。
エッジ検出部482は、切り出し画像内のエッジ点の座標(Xc,Yc)を、撮像画像内のエッジ点の画像座標(Xi,Yi)に変換する。このとき、先に述べたアフィン変換と逆の回転によって座標の変換が行われる。
図15は、面取り量計測の概要を示す図である。図15の左側は、円形穴の上面図と側断面図である。ワークWには、円形穴が形成されている。円形穴の径はL1である。また、円形穴の縁部分が面取りされている。面取りされた切削面(以下、「面取り部位」という)は、内側に傾斜しており、その内径はL1である。また、面取り部位の外径は、L2である。
図15の中央部は、面取り部位の外径L2を計測するときの撮像部600の位置を示す。撮像部600の端面からワークWの上面までの距離が所定値Hであるときに、撮像部600の焦点が上面に合うものとする。外径L2を計測する場合には、この状態で撮像部600が保持される。そして、このとき撮像された撮像画像によって、外径L2が計測される。
図15の右側は、面取り部位の内径L1を計測するときの撮像部600の位置を示す。内径L1を計測する場合には、面取り部位の内径を含む水平面と撮像部600の端面とが距離Hだけ離れるように、撮像部600が保持される。この状態で撮像部600において撮像された撮像画像によって、内径L1が計測される。
ここで、エッジ点間の距離を算出する方法について補足する。
上記実施形態では、エッジ点間の距離を、エッジ点の機械座標の差に基づいて求めた。つまり、エッジ点間の距離は、エッジ点間のXm方向距離(Xm座標の差)とYm方向距離(Ym座標の差)に関する2乗和の平方根として算出される。
本変形例では、エッジ点間の距離を、エッジ点間の画像座標の差および撮像画像間の機械座標の差に基づいて求める。ここでは、図5に示したエッジ点bとエッジ点cを例として説明する。上述のとおり、エッジ点bの画像座標は、(Xi(エッジ点b),Yi(エッジ点b))と表され、エッジ点cの画像座標は、(Xi(エッジ点c),Yi(エッジ点c))と表されるものとする。
まず、エッジ点間の画像座標の差について説明する。エッジ点間のXi方向間隔(ピクセル)をDx(エッジ点b,エッジ点c)と表すと、エッジ点間のXi方向間隔は、以下の式(15)で算出される。
Dx(エッジ点b,エッジ点c)=Xi(エッジ点c)-Xi(エッジ点b)
式(15)
同様に、エッジ点間のYi方向間隔(ピクセル)をDy(エッジ点b,エッジ点c)と表すと、エッジ点間のYi方向間隔は、以下の式(16)で算出される。
Dy(エッジ点b,エッジ点c)=Yi(エッジ点c)-Yi(エッジ点b)
式(16)
次に、撮像画像間の機械座標の差(撮像中心の機械座標の差)について説明する。撮像中心間のXm方向距離をLx(撮像中心B,撮像中心C)と表すと、撮像中心間のXm方向距離は、以下の式(17)で算出される。
Lx(撮像中心B,撮像中心C)=Xm(撮像中心C)-Xm(撮像中心B)
式(17)
同様に、撮像中心間のYm方向距離をLy(撮像中心B,撮像中心C)と表すと、撮像中心間のYm方向距離は、以下の式(18)で算出される。
Ly(撮像中心B,撮像中心C)=Ym(撮像中心C)-Ym(撮像中心B)
式(18)
したがって、エッジ点間のXm方向距離は、以下の式(19)で算出される。Rは、上述のとおり解像度を示す。
Lx(エッジ点b,エッジ点c)=Lx(撮像中心B,撮像中心C)
+R×Dx(エッジ点b,エッジ点c) 式(19)
また、エッジ点間のYm方向距離は、以下の式(20)で算出される。
Ly(エッジ点b,エッジ点c)=Ly(撮像中心B,撮像中心C)
+R×Dy(エッジ点b,エッジ点c) 式(20)
そして、エッジ点間のXm方向距離とYm方向距離に関する2乗和の平方根によって、エッジ点間の距離が算出される。本変形例の算出方法は手順が異なるだけで、計算内容は実施形態の場合と実質的に等しい。
なお、画像内計測の場合は、撮像中心間のXm方向距離LxとYm方向距離Lyが、共に0であるので、式(19)と式(20)において、第1項の計算を省ける。つまり、第2項のみを計算すれば足りるので、機械座標(Xm,Ym)を用いなくてもエッジ点間の距離を求められる。
上記実施形態および変形例に基づき、以下の構成を導き出せる。
A)工作機械800は、撮像部600または工具が着脱可能に取り付けられる取付部822を備える。
B)外部コンピュータ400(情報処理装置の例)は、工作機械800において工作機械800に置かれたワークWを撮像するために取付部822が移動し撮像位置で撮像部600が撮像することで生成される2次元の撮像画像を処理する。
C)ワークWの置かれた位置の確認作業が行われる(変形例4参照)。そのため、工作機械800の機械座標をもとに撮像部600が所定位置に移動し、その後撮像が行われ、撮像画像が得られる。
D)演算部486は、撮像画像をもとに、ワークの位置を算出する。
E)工作機械800は、ワークWに対して加工を行う。
F)ワークWに関する計測処理が行われる。計測対象を撮像するために、撮像部600は所定位置から撮像位置に移動し、その後撮像位置において撮像する。これにより2次元の撮像画像が得られる。
G)演算部486は、2次元の撮像画像から、ワークWのエッジを検出し、検出された複数のエッジからワークWの長さを算出する。
上記構成Aに関し、工具を取り付けることができる取付部822に撮像部600を取り付けて用いることができるため、加工後にワークWを置いたまま計測できる。このため、その後に追加加工が必要な場合にすぐに加工できる。すなわち、従来はワークWを取り出して計測を行い、再度加工が必要な場合にはワークWを正確に載置台に置き直す必要があったため、段取りに時間がかかった。この点、上記実施形態および変形例ではそのような問題は生じない。ワークWを移動させる必要がないので、正確な長さを計測するための精度を担保できる。単にワークWを把持できればよいだけの装置の場合よりも高い精度を実現できる。
上記構成FおよびGに関し、図3に示すようにワークWにある複数の穴を1回の計測処理で計測してもよい。また、複数回の加工に対応する複数回の計測処理を行ってもよい。たとえば、ワークWに対する1回目の加工を行い、1回目の加工結果としてワークWにある複数の穴に対して計測処理を行う。その後にワークWに対する2回目の加工を行い、2回目の加工結果として同様に複数の穴に対して計測処理を行う。このように複数の穴を1回で計測処理する場合、少なくとも穴の数だけ撮像画像を得る必要がある。つまり、少なくとも穴の数だけ撮像位置が設けられる。図3の例では5つの撮像位置が設けられる。
上記構成DおよびGに関し、演算部486は、所定位置で撮像された撮像画像からエッジ検出でワークWの位置を算出する。さらに、演算部486は、ワークWの位置と撮像画像の中心との距離から、撮像画像の計測対象のエッジ点の位置を算出する。具体的には、演算部486は、ワークWの位置と撮像画像の中心との間のXm方向距離とYm方向距離を算出する。次に、撮像画像の中心とエッジ点との間のXi方向間隔とYi方向間隔を算出する。演算部486は、Xi方向間隔とYi方向間隔にそれぞれ解像度を乗じることで、撮像画像の中心とエッジ点との間のXm方向距離とYm方向距離を算出できる。上述した2つのXm方向距離を加算することによって、ワークWの位置を基準とするエッジ点のXp座標が得られる。同様に、上述した2つのYm方向距離を加算することによって、ワークWの位置を基準とするエッジ点のYp座標が得られる。2つのエッジ点の位置を求めれば、これらの位置に基づいてエッジ点間の長さを求めることもできる。
上記構成Cに関し、「撮像画像」は、位置確認に用いられる画像である。また、「所定位置」は、ワークWの置かれた位置の確認作業のために撮像する撮像部600の位置を意味する。「所定位置」は、上記構成Fにおける「撮像位置」とは異なる。「所定位置」で撮像された「撮像画像」には、ワークWの位置を算出するためのワークWの基準位置(特定のエッジ点)が含まれる。図3の例では、左下の角がワークWの基準位置に相当する。ワークWの基準位置が加工原点と一致するが、これらは一致しなくてもよい。つまり、ワークWの基準位置は、加工原点と異なる箇所であってもよい。上記構成Dにおいて、ワークWの位置として四角の一部または全部に相当する角の位置が算出される(図3参照)。上記構成Fに関し、「2次元の撮像画像」は、ワークWの計測に用いられる画像である。「撮像位置」は、ワークWを計測するために撮像する撮像部600の位置を意味する。
上記構成Fでいう「撮像位置」は、図3のような水平面上の位置(Xm座標,Ym座標:図1参照)を指すとともに、高さ方向の位置(Zm座標)も指す。たとえば、図15では、2つの撮像位置において、撮像部600の高さ方向の位置が異なる。上記構成Cにおける撮像の際に、撮像部600の高さHの位置も調整する。上記構成Fにおいて、撮像部600は、その高さHを保ったまま移動する。先にL2を計測するための撮像を行い、その後に撮像部600を下方に移動させてL1を計測するための撮像を行う。この場合、所定位置のZm座標とL2を計測する撮像位置のZm座標とは等しい。L1を計測する撮像位置のZm座標は、それよりも小さい。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
実施形態および変形例では、タッチプローブのようにアプローチ動作が必要ない。また、1回の撮像で複数箇所を捉えることができるので、主軸の移動も少なくて済む。したがって、高速にワークの計測を行える。実施形態および変形例における演算部486が算出するワークの長さは、たとえば、穴の径、ワークの面の辺や対角線の長さ 円弧の長さなどである。具体的には、第1穴の半径と直径(図4)、第2穴の半径と直径(図5)、加工原点と対角点の距離(図7)、各角点間の距離(図7)、及び内径L1と外径L2(図15)などが、ワークの長さに該当する。
タッチプローブを用いる計測の場合には、プローブの繰り返し誤差に加えて、工作機械800側の繰り返し誤差が計測精度に影響する。しかし、撮像部600を用いた画面内計測では取付部822(主軸100)を移動させる必要が無いので、工作機械800側の繰り返し誤差が生じず、計測精度が高まる。
また、タッチプローブを用いる場合には困難な微細な形状やワークの向きの計測も容易に行える。微細な形状とは、たとえばタッチプローブが入り込めないような小さな穴や狭い溝などである。また、タッチプローブで触れると撓みが生じたり、変形してしまったりするような剛性の小さいワークや細い部分を計測する場合に、タッチプローブでは正確な計測を行えない。これに対して、実施形態および変形例では、ワークに圧力を加えないので、撓みや変形を生じさせずに正確な計測を行える点で有利である。
また、自動的にワークの設置ずれが判定され、工作機械800に補正値が設定されるので、工作機械800における加工誤差を抑制できる。さらに、ワークの設置ずれが生じていると判定した場合に警告を発することによって、加工不良を防止したり、誤ったワークの設置を作業員に知らせて設置状態の修正を促したりすることができる。
100 主軸、400 外部コンピュータ、420 入力部、422 操作受付部、430 出力部、432 表示処理部、440 データ格納部、442 パターン記憶部、450 通信部、460 送信部、468 補正値送信部、470 受信部、482 エッジ検出部、486 演算部、488 座標変換部、490 寸法算出部、492 パターンマッチング部、494 補正値算出部、600 撮像部、700 編集画面、702 マーク、704 リスト、706 矢印ボタン、708 拡大ボタン、710 縮小ボタン、712 円環パターン、714 位置決め用画像、716a,b フレーム、800 工作機械、820 加工部、822 取付部、824 駆動部、850 工具交換装置、860 PLC、880 数値制御装置

Claims (9)

  1. 撮像部または工具が着脱可能に取り付けられる取付部を備える工作機械において前記工作機械に置かれたワークを撮像するために前記取付部が移動し撮像位置で前記撮像部が撮像することで生成される2次元の撮像画像を処理する情報処理装置であって、
    (i)前記取付部に取り付けられた工具が前記撮像部に交換され、前記取付部が加工原点を含む最初の撮像位置に移動した後に撮像された撮像画像をもとに、前記加工原点の位置を確認し、かつ、(ii)前記取付部が前記最初の撮像位置から、前記加工原点に基づいて定まる前記ワークの穴の撮像位置に移動した後に撮像された前記2次元の撮像画像を処理して前記穴の直径を算出する演算部を備える、情報処理装置。
  2. 前記演算部は、前の中心を算出し、前記中心を通る直線と交差する任意の2つのエッジ点とから前記穴の前記直径を算出する請求項1に記載の情報処理装置。
  3. 前記演算部は、前記の一部分を前記撮像部で撮像した第1撮像画像と、前記撮像部を移動させ前記の他の部分を前記撮像部で撮像した第2撮像画像と、からそれぞれ第1エッジと第2エッジとを検出し、前記第1エッジと前記第2エッジとをもとに、前記穴の前記直径を算出する請求項1に記載の情報処理装置。
  4. 前記演算部は、前記加工原点の前記位置に基づいて、前記ワークの設置位置のずれを算出する請求項1に記載の情報処理装置。
  5. 前記演算部は、前記ワークの第1エッジから前記ワークの第1基準点の第1座標を算出し、前記ワークの第2エッジから前記ワークの第2基準点の第2座標を算出し、前記第1座標と前記第2座標に基づいて、前記ワークの設置向きのずれを算出する請求項1に記載の情報処理装置。
  6. 前記演算部が、前記ワークの撮像画像から検出された複数のエッジから前記ワーク上の長さを算出し、前記ワーク上の前記長さに基づいて、設置されているワークが所定の大きさ又は所定の形状でないと判定した場合に、警告を出力する出力部を備える請求項1に記載の情報処理装置。
  7. 前記演算部は、前記ワークの上面から所定高さの第1位置に移動した前記撮像部で撮像された第1撮像画像を処理して前記穴の縁部における面取り部位の外径を算出し、前記第1位置の下方の第2位置に移動した前記撮像部で撮像された第2撮像画像を処理して前記面取り部位の内径を算出する請求項1に記載の情報処理装置。
  8. 前記撮像部が着脱可能に取り付けられる取付部を備え、工作機械に配置されたワークを撮像するために前記取付部が移動可能である工作機械と、
    請求項1からのうちの1項に記載の情報処理装置と、含む工作システム。
  9. 撮像部または工具が着脱可能に取り付けられる取付部を備える工作機械において前記工作機械に置かれたワークを撮像するために前記取付部が移動し撮像位置で前記撮像部が撮像することで生成される2次元の撮像画像を処理するプログラムであって、
    (i) 前記取付部に取り付けられた工具が前記撮像部に交換され、前記取付部が加工原点を含む最初の撮像位置に移動した後に撮像された撮像画像をもとに、前記加工原点の位置を確認する機能と、(ii) 前記取付部が前記最初の撮像位置から、前記加工原点に基づいて定まる前記ワークの穴の撮像位置に移動した後に撮像された前記2次元の撮像画像を処理して前記穴の直径を算出する機能とを有する、プログラム。
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