JP7262220B2 - 質量分析計を用いた粒子測定法 - Google Patents
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Description
試料中に含まれる粒子を、単一粒子として保持可能な保持部を備えた粒子保持手段に保持させる工程と、
前記保持部に保持された単一粒子をレーザー光、荷電粒子、中性粒子より選ばれるビームで照射することで測定対象物質をイオン化する工程を含む質量分析計を用いて測定する工程と、
を含む粒子測定方法である。
貫通孔11aを有する平板状の遮光部材11と、
貫通孔12aを有する平板状の絶縁体12と、
導入口21、排出口22および貫通部23を有する平板状のスペーサ20と、
遮光部材11の下部およびスペーサ20の上部と密着するよう設けた電極基板31、32と、
電極基板31、32同士を接続する導線40と、
電極基板31、32に信号を印加する信号発生器50と、
を備えている。
(2)(1)で得られた細胞を、図1に示す粒子保持装置100に設けた粒子保持手段10上に展開後、誘電泳動力により粒子70を保持部60へ保持させる。
(3)接着物質を粒子保持装置100に導入し、細胞を保持部60に接着する。接着物質としては、例えばポリ-L-リジンを用いることができ、その濃度は0.01(w/v)%以下とするとよい。
(4)保持部へ細胞を固定した後、測定対象物質(リン脂質)に合わせたマトリックスを粒子保持装置100に導入し、保持部内の溶液をマトリックスに置換する。ホスファチジルイノシトール(PI)を測定するためのマトリックスとしては、例えば、9-Aminoacridineを用いることができ、その濃度は9-Aminoacridineを含む溶液が乾燥時に結晶化可能な濃度であればよい。
(5)保持部60に保持させた粒子70をMALDI-TOF/MSで測定するために、電極基板32をスペーサ20から取り外すことで、粒子保持装置100の上部を開放する。なお、電極基板32を取り外した後、さらにマトリックスを滴下してもよい。
(6)マトリックス乾燥後、粒子保持装置100をMALDI-TOF/MSに直接挿入し測定する。保持部60に保持された粒子に対してレーザーを照射し、測定することでリン脂質を測定することができる。測定質量(m/z値)範囲はリン脂質の分子量から500から2000までとすればよく、ホスファチジルコリンやホスファチジルイノシトールを対象とする場合は500から1000までとすればよい。
さらに、保持部以外の領域を絶縁体で覆うことにより、導電性を有した部分が保持部内でのみ露出するため、測定対象物質のイオン化のために測定対象粒子へ照射するビームの径が当該粒子を保持する保持部の径より広くても、前記保持部内でイオン化した分子や原子が、前記保持部外でイオン化された分子や原子と比較して質量分離器へ出射されやすくなるため、測定ノイズが低減する効果を得られる。
(1)ヒト肺がん細胞(PC9)を、5%CO2環境下、10%(v/v)FBS(ウシ胎児血清)を含むD-MEM/Ham’s F-12培地を用いて37℃で24から96時間培養後、0.25%(w/v)トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から細胞を剥離した。剥離した前記細胞を、300mMマンニトールを含む溶液に添加し、前記溶液で2×105個/mLに調整した。
(2)(1)で得られた前記細胞を含む懸濁液を、1%(w/v)BSA(ウシ血清アルブミン)水溶液でコーティングした図1に示す粒子保持装置100に設けた粒子保持手段10に導入し、信号発生器50から電極基板31・32へ交流電圧(周波数1MHz)を3分間印加することで前記手段が有する保持部60に、がん細胞を含めた細胞を保持させた。本実施例で用いた粒子保持装置100は、直径30μm、深さ40μmの微細孔を複数有する絶縁体12と、絶縁体12と電極基板31の間に設置した遮光性のクロム膜(遮光部材11)と、電極基板31とからなる粒子保持手段10に設けた保持部60の上面に、厚さ1mmのスペーサ20および電極基板32を密着させた構造であり、前記基板の電極は、酸化インジウムスズ(ITO)の薄膜が蒸着された透明導電体である。
(3)(2)の条件で交流電圧を印加しながら、0.01(w/v)%のポリ-L-リジンを含む300mMマンニトール水溶液を導入し、3分間静置後、前記交流電圧の印加を停止し、前記水溶液を吸引除去した。
(4)9-Aminoacridine(9-AA、Merck社)を含む水溶液(マトリックス溶液)を導入し、前記細胞の保持部をMALDI-TOF/MS測定のためのマトリックス溶液に置換した。
(5)前記マトリックス溶液を吸引除去した後、スペーサ20から電極基板32を取り外し、前記マトリックス溶液を10μL滴下し、風乾させることで細胞測定試料を作製した。
(6)(5)で作製した細胞測定試料を、MALDI-TOF/MS(島津製作所社製、MALDI-7090)で測定した。前記測定の条件として、測定モードはLinear negative、極性はNegative、レーザー波長は355nm、レーザー強度は75、レーザー直径は50μm、測定質量範囲は500から1000まで、質量補正はアンジオテンシンII(外部標準)で行なった。
(1)実施例1(1)において、剥離したPC9細胞を、9-AAを含む水溶液に添加し、前記溶液で5個/μLに調整した他は、実施例1(1)と同様な方法で前記細胞を含む懸濁液を調製した。
(2)ポリマー製スライドガラス型MALDIプレート(FlexiMass-DS、島津製作所社製)に9-AAを含むエタノール溶液1μLを滴下し、乾燥させた。前記溶液を滴下した領域を含む近傍に、(1)で調製した前記細胞を含む懸濁液を2μL滴下し、乾燥させた。さらにエタノールを0.2μL滴下、乾燥させることで9-AAを再結晶化し、細胞測定試料を作製した。
(3)(2)で作製した細胞測定試料を、MALDI-TOF/MS(島津製作所社製、MALDI-7090)で測定した。前記測定の条件として、測定モードはLinear negative、極性はNegative、レーザー波長は355nm、レーザー強度は90、レーザー直径は100μm、測定質量範囲は500から1000まで、質量補正はアンジオテンシンII(外部標準)で行なった。
(1)比較例1(1)において、剥離したPC9細胞を、9-AAを含む水溶液に添加し、前記溶液で1250個/μLに調整した他は、比較例1(1)から(2)と同様な方法で細胞測定試料を作製した。
(2)(1)で作製した細胞測定試料を、実施例1(6)と同様な方法で測定した。
(1)実施例1において、マトリックス溶液として2,5-Dihydroxybenzoic acid(DHB、Sigma Aldrich社)を含む水溶液を用いた他は、実施例1(1)から(5)と同様な方法で、細胞測定試料を作製した。
(2)前記作製した細胞測定試料を、MALDI-TOF/MS(島津製作所社製、MALDI-7090)で測定した。前記測定の条件として、測定モードはLinear、極性はPositive、レーザー波長は355nm、レーザー強度は80、レーザー直径は50μm、測定質量範囲は500から1000まで、質量補正はアンジオテンシンII(外部標準)で行なった。
(1)実施例1(1)において、剥離したPC9細胞を、DHBを含む水溶液に添加し、前記溶液で5個/μLに調整した他は、実施例1(1)と同様な方法で前記細胞を含む懸濁液を調製した。
(2)ポリマー製スライドガラス型MALDIプレート(FlexiMass-DS、島津製作所社製)に、(1)で調製した前記細胞を含む懸濁液を2μL滴下し、乾燥させることで、細胞測定試料を作製した。
(3)(2)で作製した細胞測定試料を、MALDI-TOF/MS(島津製作所社製、MALDI-7090)で測定した。前記測定の条件として、測定モードはLinear、極性はPositive、レーザー波長は355nm、レーザー強度は90、レーザー直径は100μm、測定質量範囲は500から1000まで、質量補正はアンジオテンシンII(外部標準)で行なった。
(1)比較例3(1)において、剥離したPC9細胞を、DHBを含む水溶液に添加し、前記溶液で1250個/μLに調整した他は、比較例3(1)から(2)と同様な方法で細胞測定試料を作製した。
(2)(1)で作製した細胞測定試料を、実施例2(2)と同様な方法で測定した。
実施例2(2)において、MALDI-TOF/MSでの測定対象物として、細胞の入っていない空の保持部を測定した他は、実施例2と同様な方法で質量分析測定を行なった。
10:粒子保持手段
11:遮光部材
12:絶縁体
11a、12a:貫通孔
20:スペーサ
21:導入口
22:排出口
23:貫通部
31・32:電極基板
40:導線
50:信号発生器
60:保持部
70:粒子
Claims (5)
- 試料中に含まれる粒子を、単一粒子として保持可能な保持部を備えた粒子保持手段に保持させる工程と、
前記保持部に保持された単一粒子をレーザー光、荷電粒子、中性粒子より選ばれるビームで照射することで測定対象物質をイオン化する工程を含む質量分析計を用いて測定する工程と、
を含む粒子測定方法であって、
前記粒子保持手段の上面のうち前記保持部以外の領域が絶縁体で覆われており、
前記保持部が凹部であり、
前記ビームの直径が、測定対象粒子の径よりも大きく、かつ前記保持部と隣接する他の保持部にビーム照射部位が入らない大きさの直径であることを特徴とする、
粒子測定方法。 - 前記粒子保持手段の底面が導電性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記導電性材料が透明導電性材料であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 前記質量分析計がMALDI-TOF/MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- 前記粒子が生体由来粒子であり、前記粒子保持手段に粒子を保持させる工程が誘電泳動力を用いて行なうことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
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---|---|---|---|---|
JP2009080106A (ja) | 2000-10-10 | 2009-04-16 | Biotrove Inc | アッセイ、合成、および保存用の器具、ならびに、その作製、使用、および操作の方法 |
WO2011149032A1 (ja) | 2010-05-26 | 2011-12-01 | 東ソー株式会社 | 生体試料固定装置 |
US20140323330A1 (en) | 2013-04-25 | 2014-10-30 | Vladislav B. Bergo | Microarray compositions and methods of their use |
JP2014233208A (ja) | 2013-05-30 | 2014-12-15 | 独立行政法人理化学研究所 | 細胞用ウェルプレートおよび細胞分泌物の分析方法 |
WO2015053039A1 (ja) | 2013-10-07 | 2015-04-16 | 国立大学法人名古屋大学 | レーザーマイクロダイセクション装置、該レーザーマイクロダイセクション装置を含む分析装置及びマイクロチップの製造方法 |
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Patent Citations (5)
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Non-Patent Citations (3)
Title |
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Tsuyama, N. et al.,Molecular and Functional Analysis of Cellular Phenomena Using Single-Cell Mass Spectrometry,Biol. Pharm. Bull.,2012年09月01日,Vol. 35, No. 9,pp. 1425-1431,doi:10.1248/bpb.b212012 |
最上聡文,誘電泳動を利用した血中希少がん細胞の検出・解析システムの開発,東ソー研究・技術報告,2014年12月31日,第58巻,pp. 3-12 |
榎本愛子、ほか,MALDI-TOF/MSによる1細胞のリン脂質解析,東ソー研究・技術報告,2018年12月20日,第62巻,pp. 89-92 |
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