JP7261762B2 - 電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置、エネルギーシステム、固体酸化物形燃料電池、および電気化学素子製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2の方法では、低温で緻密な電解質を得るために、電解質層を塗布した後にプレスすることで表面が平坦で緻密化した電解質層を得ていたが、電解質層と電極層等との界面での各種の応力を緩和して、信頼性・耐久性および強度・性能に優れた電気化学素子を得るという課題は残されていた。
特に、薄膜の電解質層を有する電気化学素子では、信頼性・耐久性の確保が課題であり、その効果は大きい。また、金属基板を支持体として、その上に薄層の電気化学素子を形成する場合には、従来のような1400℃程度以上の高温焼成による緻密な電解質層の形成手法が使えないため、その信頼性・耐久性と性能・強度の確保の課題は大きかったが、本手法により、大きな効果が得られる。
ここで、中間層は電解質層ほどの緻密度は不要であるため、中間層はある程度ポーラスにすることが可能であり、多孔質な対極電極層と中間層との間ではある程度応力の緩和効果があるため、対極電極層の側の面である中間層上側面を平坦にし、応力緩和効果よりも、対極電極層の積層のしやすさを優先することが可能となり、対極電極層の形成が容易で、かつ、信頼性・耐久性及び性能に優れた電気化学素子を得ることができるので好適である。
本発明では、前記中間層は前記対極電極層に接触して形成されており、前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とした場合に、前記中間層における前記対極電極層の側の面である中間層上側面の高さ方向の幅の最大値が、前記凹凸構造部位における高さ方向の幅の最大値よりも小さくなるよう構成されると、対極電極層の形成が容易で、かつ、信頼性・耐久性及び性能に優れた電気化学素子を得ることができるので好適である。
更に、本発明のごとく、前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とし、前記高さ方向に直交する方向を面内方向とした場合に、前記凹部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凹部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点と、前記凸部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凸部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点とのうち、少なくともどちらか1つの地点が前記凹凸構造部位に含まれるよう構成されると、電解質層の凹凸構造部位が対極電極層等の電解質層上の積層物と接触するため、電解質層と対極電極層等との間の密着強度を高めることができるとともに、各種の応力を緩和し、信頼性・耐久性を向上しつつ、高い性能を得ることができるので好適である。なお、上述の前記凹部の頂点との高さ、もしくは、前記凸部の頂点との高さの差が、3μm以下であると上記の効果を得ながら前記電解質層の上に対極電極層等を積層しやすくなるので好ましく、2μm以下であると対極電極層等の電解質層上の積層物を薄層化し易くなり対極電極層等の材料コストを低減できるのでより好ましい。
特に、薄膜の電解質層を有する電気化学素子では、信頼性・耐久性の確保が課題であり、その効果は大きい。また、金属基板を支持体として、その上に薄層の電気化学素子を形成する場合には、従来のような1400℃程度以上の高温焼成による緻密な電解質層の形成手法が使えないため、その信頼性・耐久性と性能・強度の確保の課題は大きかったが、本手法により、大きな効果が得られる。
ここで、中間層は電解質層ほどの緻密度は不要であるため、中間層はある程度ポーラスにすることが可能であり、多孔質な対極電極層と中間層との間ではある程度応力の緩和効果があるため、対極電極層の側の面である中間層上側面を平坦にし、応力緩和効果よりも、対極電極層の積層のしやすさを優先することが可能となり、対極電極層の形成が容易で、かつ、信頼性・耐久性及び性能に優れた電気化学素子を得ることができるので好適である。
また本発明では、前記中間層は前記対極電極層に接触して形成されており、前記中間層における前記対極電極層の側の面である中間層上側面の表面粗さ(Sa)が、0.3μm未満であるよう構成されると、対極電極層の形成が容易で、かつ、信頼性・耐久性及び性能に優れた電気化学素子を得ることができるので好適である。なお、本願での表面粗さ(Sa)は10μm角の範囲での値としている。
更に、本発明のごとく、前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とし、前記高さ方向に直交する方向を面内方向とした場合に、前記凹部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凹部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点と、前記凸部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凸部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点とのうち、少なくともどちらか1つの地点が前記凹凸構造部位に含まれるよう構成されると、電解質層の凹凸構造部位が対極電極層等の電解質層上の積層物と接触するため、電解質層と対極電極層等との間の密着強度を高めることができるとともに、各種の応力を緩和し、信頼性・耐久性を向上しつつ、高い性能を得ることができるので好適である。なお、上述の前記凹部の頂点との高さ、もしくは、前記凸部の頂点との高さの差が、3μm以下であると上記の効果を得ながら前記電解質層の上に対極電極層等を積層しやすくなるので好ましく、2μm以下であると対極電極層等の電解質層上の積層物を薄層化し易くなり対極電極層等の材料コストを低減できるのでより好ましい。
前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とし、前記高さ方向に直交する方向を面内方向とした場合に、前記凹凸構造部位には、前記凹部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凹部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点と、前記凸部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凸部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点とのうち、少なくともどちらか1つの地点が含まれる点にある。
更に、本発明のごとく、前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とし、前記高さ方向に直交する方向を面内方向とした場合に、前記凹部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凹部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点と、前記凸部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凸部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点とのうち、少なくともどちらか1つの地点が前記凹凸構造部位に含まれるよう構成されると、電解質層の凹凸構造部位が対極電極層等の電解質層上の積層物と接触するため、電解質層と対極電極層等との間の密着強度を高めることができるとともに、各種の応力を緩和し、信頼性・耐久性を向上しつつ、高い性能を得ることができるので好適である。なお、上述の前記凹部の頂点との高さ、もしくは、前記凸部の頂点との高さの差が、3μm以下であると上記の効果を得ながら前記電解質層の上に対極電極層等を積層しやすくなるので好ましく、2μm以下であると対極電極層等の電解質層上の積層物を薄層化し易くなり対極電極層等の材料コストを低減できるのでより好ましい。
ここで、中間層は電解質層ほどの緻密度は不要であるため、中間層はある程度ポーラスにすることが可能であり、多孔質な対極電極層と中間層との間ではある程度応力の緩和効果があるため、対極電極層の側の面である中間層上側面を平坦にし、応力緩和効果よりも、対極電極層の積層のしやすさを優先することが可能となり、対極電極層の形成が容易で、かつ、信頼性・耐久性及び性能に優れた電気化学素子を得ることができるので好適である。
本発明では、前記電解質層と前記中間層の厚さの和の変動幅が20μmの面内幅のうちで2μm以下であるように構成されると、電解質層と中間層の積層部分全体の厚みが均一となり電気化学素子全体の厚みを均一化し易くなるので、電気化学素子を複数積層してモジュール化することが容易となり好適である。
上記の特徴構成によれば、上述の電気化学素子が複数積層した状態で配置されるので、材料コストと加工コストを抑制しつつ、コンパクトで高性能な、強度と信頼性に優れた電気化学モジュールを得ることができる。
上記の特徴構成によれば、電気化学モジュールと改質器を有し電気化学モジュールに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部と、電気化学モジュールから電力を取り出すインバータとを有するので、都市ガス等の既存の原燃料供給インフラを用い、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学モジュールから電力を取り出すことができ、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学装置を実現することができる。また、電気化学モジュールから排出される未利用の燃料ガスをリサイクルするシステムを構築し易くなるため、高効率な電気化学装置を実現することができる。
上記の特徴構成によれば、電気化学装置と、電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するので、耐久性・信頼性および性能に優れ、かつエネルギー効率にも優れたエネルギーシステムを実現することができる。なお、電気化学装置から排出される未利用の燃料ガスの燃焼熱を利用して発電する発電システムと組み合わせてエネルギー効率に優れたハイブリットシステムを実現することもできる。
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係る電気化学素子Eおよび固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)について説明する。電気化学素子Eは、例えば、水素を含む燃料ガスと空気の供給を受けて発電する固体酸化物形燃料電池の構成要素として用いられる。なお以下、層の位置関係などを表す際、例えば電解質層4から見て対極電極層6の側を「上」または「上側」、電極層2の側を「下」または「下側」という場合がある。また、金属基板1における電極層2が形成されている側の面を「表側」、反対側の面を「裏側」という場合がある。また図3および4に示すように、電解質層4に垂直な方向を「高さ方向」または「Y方向」、高さ方向に直交する方向を「面内方向」または「X方向」という場合がある。
電気化学素子Eは、図1に示される通り、金属基板1(金属支持体)と、金属基板1の上に形成された電極層2と、電極層2の上に形成された緩衝層3(挿入層)と、緩衝層3の上に形成された電解質層4とを有する。そして電気化学素子Eは、更に、電解質層4の上に形成された反応防止層5(中間層)と、反応防止層5の上に形成された対極電極層6とを有する。つまり対極電極層6は電解質層4の上に形成され、反応防止層5は電解質層4と対極電極層6との間に形成されている。電極層2は多孔質であり、電解質層4は緻密である。
金属基板1は、電極層2、緩衝層3および電解質層4等を支持して電気化学素子Eの強度を保つ、支持体としての役割を担う。金属基板1の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。なお本実施形態では、金属支持体として板状の金属基板1が用いられるが、金属支持体としては他の形状、例えば箱状、円筒状などの形状も可能である。
なお、金属基板1は、支持体として電気化学素子を形成するのに充分な強度を有すれば良く、例えば、0.1mm~2mm程度、好ましくは0.1mm~1mm程度、より好ましくは0.1mm~0.5mm程度の厚みのものを用いることができる。
また、最大厚さが約1.1μm以下であることが好ましい。
金属酸化物層1bは種々の手法により形成されうるが、金属基板1の表面を酸化させて金属酸化物とする手法が好適に利用される。また、金属基板1の表面に、金属酸化物層1bをスパッタリング法やPLD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成しても良いし、メッキと酸化処理によって形成しても良い。更に、金属酸化物層1bは導電性の高いスピネル相などを含んでも良い。
電極層2は、図1に示すように、金属基板1の表側の面であって貫通孔1aが設けられた領域より大きな領域に、薄層の状態で設けることができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。貫通孔1aが設けられた領域の全体が、電極層2に覆われている。つまり、貫通孔1aは金属基板1における電極層2が形成された領域の内側に形成されている。換言すれば、全ての貫通孔1aが電極層2に面して設けられている。
すなわち電極層2は、多孔質な層として形成される。電極層2は、例えば、その緻密度が30%以上80%未満となるように形成される。細孔のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズを適宜選ぶことができる。なお緻密度とは、層を構成する材料の空間に占める割合であって、(1-空孔率)と表すことができ、また、相対密度と同等である。
緩衝層3(挿入層)は、図1に示すように、電極層2を覆った状態で、電極層2の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは5μm~20μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な緩衝層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。緩衝層3の材料としては、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特にセリア系のセラミックスが好適に用いられる。
また、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
電解質層4は、図1に示すように、電極層2および緩衝層3を覆った状態で、緩衝層3の上に薄層の状態で形成される。詳しくは電解質層4は、図1に示すように、緩衝層3の上と金属基板1の上とにわたって(跨って)設けられる。このように構成し、電解質層4を金属基板1に接合することで、電気化学素子全体として堅牢性に優れたものとすることができる。
反応防止層5(中間層)は、電解質層4の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは5μm~20μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な反応防止層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。反応防止層5の材料としては、電解質層4の成分と対極電極層6の成分との間の反応を防止できる材料であれば良い。例えばセリア系材料等が用いられる。反応防止層5を電解質層4と対極電極層6との間に導入することにより、対極電極層6の構成材料と電解質層4の構成材料との反応が効果的に抑制され、電気化学素子Eの性能の長期安定性を向上できる。反応防止層5の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属基板1の損傷を抑制し、また、金属基板1と電極層2との元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法、スプレーコーティング法、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
対極電極層6は、電解質層4もしくは反応防止層5の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な対極電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。対極電極層6の材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物を用いることができる。以上の材料を用いて構成される対極電極層6は、カソードとして機能する。
以上のように電気化学素子Eを構成することで、電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池の発電セルとして用いることができる。例えば、金属基板1の裏側の面から貫通孔1aを通じて水素を含む燃料ガスを電極層2へ供給し、電極層2の対極となる対極電極層6へ空気を供給し、例えば、600℃以上750℃以下の温度で作動させる。そうすると、対極電極層6において空気に含まれる酸素O2が電子e-と反応して酸素イオンO2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層4を通って電極層2へ移動する。電極層2においては、供給された燃料ガスに含まれる水素H2が酸素イオンO2-と反応し、水H2Oと電子e-が生成される。以上の反応により、電極層2と対極電極層6との間に起電力が発生する。この場合、電極層2はSOFCの燃料極(アノード)として機能し、対極電極層6は空気極(カソード)として機能する。
次に、電気化学素子Eの製造方法について説明する。
電極層形成ステップでは、金属基板1の表側の面の貫通孔1aが設けられた領域より広い領域に電極層2が薄膜の状態で形成される。金属基板1の貫通孔はレーザー加工等によって設けることができる。電極層2の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
まず電極層2の材料粉末と溶媒とを混合して材料ペーストを作成し、金属基板1の表側の面に塗布し、800℃~1100℃で焼成する。
上述した電極層形成ステップにおける焼成工程時に、金属基板1の表面に金属酸化物層1b(拡散抑制層)が形成される。なお、上記焼成工程に、焼成雰囲気を酸素分圧が低い雰囲気条件とする焼成工程が含まれていると元素の相互拡散抑制効果が高く、抵抗値の低い良質な金属酸化物層1b(拡散抑制層)が形成されるので好ましい。電極層形成ステップを、焼成を行わないコーティング方法とする場合を含め、別途の拡散抑制層形成ステップを含めても良い。いずれにおいても、金属基板1の損傷を抑制可能な1100℃以下の処理温度で実施することが望ましい。
緩衝層形成ステップでは、電極層2を覆う形態で、電極層2の上に緩衝層3が薄層の状態で形成される。緩衝層3の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
まず緩衝層3の材料粉末と溶媒とを混合して材料ペーストを作成し、電極層2の上に塗布し、800℃~1100℃で焼成する。
電解質層形成ステップでは、電極層2および緩衝層3を覆った状態で、電解質層4が緩衝層3の上に薄層の状態で形成される。電解質層4の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
あるいは、通常のスクリーンを用いて電解質層4の材料を含有するペーストの印刷した後、印刷されたペースト層の表層部を機械的に除去する操作を加え、ペースト層の表面に凹凸構造を形成し、その後に1100℃以下の温度で焼成することによっても電解質層4を形成することが可能である。また、スプレーコーティング法を用いる場合には、電解質の原材料を金属基板1上の緩衝層3に向けて噴射する速度を変動させたり、供給成膜原料中の原材料濃度を変動させたり、噴射口と金属基板1の相対位置の変位速度を変動させたり、供給成膜原料中の電解質材料に粒径が異なる材料を混在させたりして、電解質層4を形成することが可能である。なお、供給成膜原料濃度等を積極的に変動させずとも、原材料の特性や噴射速度、圧力、基板の移動速度等の成膜条件によっては、適切な凹凸構造部位Sが形成される場合もある。また、いずれの成膜方法を採用した場合でも、電解質層4を形成した後にブラスト処理を施して、電解質層4の表面に凹凸構造部位Sを形成することも可能である。
反応防止層形成ステップでは、反応防止層5が電解質層4の上に薄層の状態で形成される。反応防止層5の形成は、上述したように、低温焼成法、スプレーコーティング法、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。なお反応防止層5(中間層)の上側の面(中間層上側面5a)を平坦にするために、例えば反応防止層5の形成後にレベリング処理や表面を切削・研磨処理を施したり、湿式形成後焼成前に、プレス加工を施してもよい。
対極電極層形成ステップでは、対極電極層6が反応防止層5の上に薄層の状態で形成される。対極電極層6の形成は、上述したように、低温焼成法、スプレーコーティング法、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの金属板に対して、中心から半径2.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔1aを複数設けて、金属基板1を作製した。なお、この時、金属基板1の表面の貫通孔1aの直径が10~15μm程度となるようにレーザー加工により貫通孔を設けた。
図5・図6を用いて、第2実施形態に係る電気化学素子E、電気化学モジュールM、電気化学装置YおよびエネルギーシステムZについて説明する。
エネルギーシステムZは、電気化学装置Yと、電気化学装置Yから排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器53とを有する。
電気化学装置Yは、電気化学モジュールMと、脱硫器31と改質器34とを有し電気化学モジュールMに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部と、電気化学モジュールMから電力を取り出すインバータ38とを有する。
複数の電気化学素子Eは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、電気化学素子Eの一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されている。電気化学素子Eは、ガスマニホールド17を通じて供給される改質ガスと、ブロア35から供給された空気とを電気化学反応させて発電する。
図7に、電気化学モジュールMの他の実施形態を示す。第3実施形態に係る電気化学モジュールMは、上述の電気化学素子E、すなわち電解質層上側面に凹凸構造部位を有する電気化学素子Eを、セル間接続部材71を間に挟んで積層することで、電気化学モジュールMを構成する。
(1)上記の実施形態では、電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池に用いたが、電気化学素子Eは、固体酸化物形電解セルや、固体酸化物を利用した酸素センサ等に利用することもできる。
1a :貫通孔
2 :電極層
3 :緩衝層(挿入層)
4 :電解質層
4a :電解質層上側面
5 :反応防止層(中間層)
5a :中間層上側面
6 :対極電極層
A :凹部
B :凸部
C :頂点
D :頂点
E :電気化学素子
M :電気化学モジュール
S :凹凸構造部位
Y :電気化学装置
Z :エネルギーシステム
Claims (18)
- 少なくとも電極層と電解質層と対極電極層とを有し、
前記電解質層は、材料が金属酸化物であり、前記電極層と前記対極電極層との間に配置されており、
前記電解質層における少なくとも前記対極電極層の側である電解質層上側面に、凹部または凸部が1つ以上含まれる凹凸構造部位が形成されており、
前記電解質層と前記対極電極層との間に配置される中間層を有し、
前記中間層は前記電解質層の前記電解質層上側面に接触して形成され、前記凹凸構造部位が前記中間層に接触しており、
前記中間層は前記対極電極層に接触して形成されており、
前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とした場合に、
前記中間層における前記対極電極層の側の面である中間層上側面の高さ方向の幅の最大値が、前記凹凸構造部位における高さ方向の幅の最大値よりも小さく、
前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とし、前記高さ方向に直交する方向を面内方向とした場合に、前記凹凸構造部位には、
前記凹部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凹部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点と、
前記凸部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凸部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点とのうち、少なくともどちらか1つの地点が含まれる電気化学素子。 - 少なくとも電極層と電解質層と対極電極層とを有し、
前記電解質層は、材料が金属酸化物であり、前記電極層と前記対極電極層との間に配置されており、
前記電解質層における少なくとも前記対極電極層の側である電解質層上側面に、凹部または凸部が1つ以上含まれる凹凸構造部位が形成されており、
前記電解質層と前記対極電極層との間に配置される中間層を有し、
前記中間層は前記電解質層の前記電解質層上側面に接触して形成され、前記凹凸構造部位が前記中間層に接触しており、
前記中間層は前記対極電極層に接触して形成されており、
前記中間層における前記対極電極層の側の面である中間層上側面の表面粗さ(Sa)が0.3μm未満であり、
前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とし、前記高さ方向に直交する方向を面内方向とした場合に、前記凹凸構造部位には、
前記凹部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凹部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点と、
前記凸部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凸部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点とのうち、少なくともどちらか1つの地点が含まれる電気化学素子。 - 少なくとも電極層と電解質層と対極電極層とを有し、
前記電解質層は、材料が金属酸化物であり、前記電極層と前記対極電極層との間に配置されており、
前記電解質層における少なくとも前記対極電極層の側である電解質層上側面に、凹部または凸部が1つ以上含まれる凹凸構造部位が形成されており、
前記電解質層と前記対極電極層との間に配置される中間層を有し、
前記中間層は前記電解質層の前記電解質層上側面に接触して形成され、前記凹凸構造部位が前記中間層に接触しており、
前記電解質層と前記中間層の厚さの和の変動幅が、前記電解質層と前記中間層のいずれかの部分において20μmの面内幅のうちで2μm以下であり、
前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とし、前記高さ方向に直交する方向を面内方向とした場合に、前記凹凸構造部位には、
前記凹部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凹部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点と、
前記凸部の頂点からの面内方向の距離が5μm以内の地点であって、前記凸部の頂点との高さの差が0.5μm以上である地点とのうち、少なくともどちらか1つの地点が含まれる電気化学素子。 - 前記電解質層に垂直な方向を高さ方向とした場合に、
前記凹凸構造部位における高さ方向の幅が前記電解質層の厚さの5%以上となる部分が前記凹凸構造部位に含まれる請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学素子。 - 前記凹凸構造部位に、表面粗さ(Sa)が0.3μm以上である部分が含まれている請求項1~4のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 前記対極電極層がカソードとして機能する請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 前記電極層と前記電解質層との間に配置される挿入層を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 金属を材料とする金属支持体を有し、前記電極層が前記金属支持体上に形成され、前記電解質層が前記電極層に対して前記金属支持体と反対側に配置されている請求項1~7のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 前記金属支持体の一方の面に前記電極層が形成され、前記金属支持体が一方の面から他方の面へ貫通する貫通孔を有している請求項8に記載の電気化学素子。
- 前記電解質層が安定化ジルコニアを含有する請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 前記電解質層の厚さが1μm以上である請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 前記電解質層の厚さが20μm以下である請求項1~11のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 請求項1~12のいずれか一項に記載の電気化学素子が複数積層した状態で配置される電気化学モジュール。
- 請求項13に記載の電気化学モジュールと改質器を少なくとも有し、前記電気化学モジュールに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部と、前記電気化学モジュールから電力を取り出すインバータとを有する電気化学装置。
- 請求項14に記載の電気化学装置と、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するエネルギーシステム。
- 請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学素子を備え、定格運転時に前記電気化学素子を600℃以上750℃以下の温度において発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の電気化学素子を製造する電気化学素子製造方法であって、金属酸化物粉末を前記電極層の上にスプレーコートすることで前記電解質層を形成する電気化学素子製造方法。
- 請求項7に記載の電気化学素子を製造する電気化学素子製造方法であって、金属酸化物粉末を前記挿入層の上にスプレーコートすることで前記電解質層を形成する電気化学素子製造方法。
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