JP7261272B2 - ホタル生息環境システム - Google Patents

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Description

例えば都市部などのような比較的人口が密集している地域に人工的にホタルが生息できる環境を構築し、それを継続的に維持していくためのホタル生息環境システムに関する。
近年ではホタルの自然生息地域自体が少なってきているので自然界でホタルをみることも難しくなってきている。ましてや、都市部においてはホタルが自然に生息できるような環境はほぼない。ホタルの生育に水が必要なのはもちろんであるが、人工的に作った小川(せせらぎ、用水路)に水を流したからといってそれだけでホタルが生息できるわけではもちろんない。
これまでにも、人工的にホタルを飼育できる環境の構築として、例えば、水槽のなかにホタルを飼育する環境を構築するといったような提案は行われてきた。
特許5823736 特許4686614 特開2020-130148 特許4041556 特開2007-23695 特開2004-248527 特許3092476
上記に挙げた文献では、水槽などの比較的狭く、また、ほぼ完全に外界から隔絶された空間内においてホタルの飼育に適した環境の維持管理を提供しようというものである。
しかし、屋外に人工的にホタルが生息できる環境を構築するとなると、本来的にはホタルの生息に適さないような自然的要因(気温、風、日光の強度など)の他、人間活動に起因する種々の外乱を受けるのであるから、これらに適切に対策を講じながらホタルを累代飼育する環境を継続的に維持していかなければならない。水槽などの比較的規模が小さい環境でなら実現できることでも単純にスケールを大きくするとその維持コストは膨大であるし、そもそも現実的ではない部分もある。
そこで本発明は、都市部などのような比較的人口が密集している地域に人工的にホタルが生息できる環境を構築し、それを比較的低コストで現実的な運用形態で継続的に維持していくことを目指すものである。
本発明の請求項1に記載のホタル生息環境システムは、
屋外に人工的に構築されるホタルの生息に適したホタル生息環境システムであって、
ホタルの幼虫が成育するための地上水域部と、
ホタルの蛹化、羽化、産卵および孵化のための土壌域部と、
ホタルの成虫が飛翔するための空間として前記地上水域部および前記土壌域部から所定の高さまで確保された飛翔空間部と、を備え、
前記飛翔空間部の上方に、少なくとも前記地上水域部への直射日光を遮るように、日光を部分的に遮る遮光シートが設けられ、
年間を通じて前記地上水域部の水の温度が0℃以上30℃以下に保たれている
ことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載のホタル生息環境システムは、
請求項1に記載のホタル生息環境システムにおいて、
前記地上水域部の水の温度を計測する温度センサが設置され、
前記地上水域部の水の温度が30℃以上になった場合には、オペレーターに報知する
ことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載のホタル生息環境システムは、
請求項1または請求項2に記載のホタル生息環境システムにおいて、
さらに、
貯水部と、
前記地上水域部と前記貯水部とで水を循環させる水循環ポンプと、を備える
ことを特徴とする。
本発明の請求項4に記載のホタル生息環境システムは、
請求項3に記載のホタル生息環境システムにおいて、
前記貯水部は地下に設けられている
ことを特徴とする
本発明の請求項5に記載のホタル生息環境システムは、
請求項1から請求項4のいずれかに記載のホタル生息環境システムにおいて、
少なくとも前記地上水域部の上方において、支柱によって支えられた天井側のフレーム構造である屋根フレーム部が設けられ、
前記屋根フレーム部に前記遮光シートが設置され、
これにより、前記飛翔空間部の高さが確保されるとともに、前記遮光シートによって前記地上水域部への直射日光が部分的に遮られる
ことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載のホタル生息環境システムは、
請求項5に記載のホタル生息環境システムにおいて、
前記地上水域部の直上において、前記遮光シートの内外の日中相対照度が5%以上40%以下である
ことを特徴とする。
本発明の請求項7に記載のホタル生息環境システムは、
請求項1から請求項6のいずれかに記載のホタル生息環境システムにおいて、
前記地上水域部の水質は、10分平均値で、
溶存酸素量が7mg/L以上、
pHが6.0以上8.5以下、
電気伝導度が0.5dS/m以下
である
ことを特徴とする。
本発明の請求項8に記載のホタル生息環境システムは、
請求項1から請求項7のいずれかに記載のホタル生息環境システムにおいて、
ホタルの成虫が確認された場合、前記飛翔空間部の夜間照度を1[lx]以下とする
ことを特徴とする。
本発明の請求項9に記載のホタル生息環境システムは、
請求項1から請求項8のいずれかに記載のホタル生息環境システムにおいて、
ホタルの成虫が確認された場合、前記飛翔空間部の風速を10分平均値で、1m/s以下とする
ことを特徴とする。
本発明の請求項10に記載のホタル生息環境システムを維持管理方法は、
請求項1から請求項9のいずれかに記載のホタル生息環境システムを維持管理する方法であって、
当該ホタル生息環境システムは、
さらに、
ホタルの成虫の発光を監視するモニタカメラと、
夜間照度を計測する照度計と、
中央制御装置からの指令によって前記飛翔空間部の天井側のフレームに自動的に設置および収納される遮光シートと、を備えており、
ホタルの成虫の発光が確認され、かつ、夜間照度が1[lx]を越えている場合、前記中央制御装置が前記自動的に設置および収納される遮光シートを前記天井側のフレームに設置する
ことを特徴とする。
本発明の請求項11に記載のホタル生息環境システムの維持管理方法は、
請求項1から請求項9のいずれかに記載のホタル生息環境システムの維持管理方法であって、
当該ホタル生息環境システムは、
さらに、
ホタルの成虫の発光を監視するモニタカメラと、
風速を計測する風速計と、
中央制御装置からの指令によって前記飛翔空間部の壁側のフレームに自動的に設置および収納される防風ネットと、を備えており、
ホタルの成虫の発光が確認され、かつ、風速が1m/sを越えている場合、前記中央制御装置が前記防風ネットを前記壁側のフレームに設置する
ことを特徴とする。
ホタル生息環境システムの外観を模式的に示す図である。 ホタル生息環境システムの断面を模式的に示す図である。 水路の蛇行形状の模式図である。 水路の幅方向の変化を模式的に示す図である。 実験施設の屋根フレーム部に遮光シートを設置した状態を示す図である。 実験施設の屋根フレーム部に遮光シートを設置した状態を示す図である。 遮光シートがない場合と遮光シートを設置した場合とで水温をモニタした結果を示す図である。 水質の維持管理のためのフローチャートである。 水質の維持管理のためのフローチャートである。 飛翔空間部の維持管理フローを説明するためのフローチャートである。 実験施設の壁フレーム部に防風ネットを設置した状態を示す図である。 実験施設で飼育したホタルの発光の様子を示す図である。
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るホタル生息環境システムを説明する。
図1は、ホタル生息環境システムの外観を模式的に示す図である。
図2は、ホタル生息環境システムの断面を模式的に示す図である。
本実施形態のホタル生息環境システムは、例えば都市部などのような比較的人口が密集している地域に人工的にホタルが生息できる環境を構築し、それを継続的に維持していくものである。本実施形態のホタル生息環境システムを構築する候補地としては、例えば、商業施設、工場緑地、公園、学校、集合団地、公開空地、ビルの中庭や屋上、などが例として挙げられる。水槽や屋内の小さな設備というのではなく、本実施形態は、屋外に例えば10m四方程度の比較的大きな人工環境システムを構築し、そのなかでホタルを累代飼育することを目指すものである。
まず、本実施形態に係るホタル生息環境システムの構成を説明する。
(ホタル生息環境システムの運用時の環境制御(コントロール)については、フローチャートを参照しながら後述する。)
図1、図2に表れるように、ホタル生息環境システム100は、地上部分に、地上水域部110と、土壌域部150と、飛翔空間部160と、を有する。また、ホタル生息環境システム100は、地下部分に地下貯水部190を有する。
地上水域部110は、土壌域部150に形成された水路120に水が流れているところである。
図2に表れるように、水路120には傾斜があって、水が流れるようになっている。水路120は、図2に例示されるように階段状になっていて、段差部130には小さな堰を設け、水が10cm程度の落差を落ちるときにエアレーションが生じるようにしてある。
水路120は、途中に数カ所の屈曲部をもって蛇行しており、屈曲部のところで水の流速が変化するようになっている。
図3は水路の蛇行形状の模式図である。また、水路120には横幅方向および深さ方向で変化を設け、幅広あるいは深いところでは流速が遅く、幅狭あるいは浅いところでは流速が速くなるなど、流速に変化がつくようになっている。河床に石や木材を置いて水路幅や水深に変化をつけるようにしてもよい。図4は水路の幅方向の変化を模式的に示す図である。水路120の水深は5cm~10cm程度、水路幅は0.5m~1.0m程度、そして、水の流速が0.1m/s~0.3m/sとすることが例として挙げられる。水路の形状に変化をつけて水流に変化がつくようにするのは、速い流れと遅い流れのなかに、ホタルの幼虫、幼虫のえさとなるカワニナ、カワニナのえさとなる藻が生息できる領域を適切に確保するためである。
水路120に数カ所の段差をつけることでエアレーションが生じ、ホタルの幼虫、カワニナの生息に必要な溶存酸素量(DO)として、例えば、10分平均値で7mg/L以上になると考えられるが、DOが足りない場合には、さらに、堰(段差)を増やしてエアレーションの回数を増やすとよい。例えば、都市部で気温が高くなってくるとDOが減少してしまうので、それを見越して、堰(段差)を多めに設けておくとよい。
地上水域部110の水の水質をモニタするため、温度センサ、溶存酸素センサ、pHセンサ、導電率センサ、を地上水域部110の水中に設置しておく。これらセンサを使った運用時のコントロールについては、フローチャートを参照しながら後述する。
土壌域部150は、土で形成された陸に相当するところで、例えば、荒木田土などで形成する。土壌域部150には、ホタルの成虫が日中の日差しを避けて休息したり、産卵したりするための葉陰を設けるため、草木(例えばセリ、セキショウ、コケ、ミズキなど)を植栽しておく。なお、ホタルは若干アルカリ性の環境を好むということもあり、また、昨今では大気汚染によって一時的に強い酸性雨が降ったりすることもある。このような点を鑑み、土壌域部の土を若干アルカリ性の土にしておくとよい。
飛翔空間部160は、地上水域部110および土壌域部150の上方に所定の高さまで確保された空間である。例えば、地上水域部110の両岸に約4m程度の間隔で支柱161を立て、支柱161の上端に横架するように横フレーム162を渡す。本実施形態では、支柱161と横フレーム162との接続部はアール(円弧状)になっている。飛翔空間部160の高さとしては、約3m程度確保することが好ましい。横フレーム162によって構成される天井側のフレーム構造物を屋根フレーム部172とする。支柱161によって構成される壁側のフレーム構造物を壁フレーム部171とする。
屋根フレーム部172には、日光を部分的に遮光する遮光シート181が設置されている。
図5、図6は、実験施設の屋根フレーム部172に遮光シート181を設置した状態を示す図である。
遮光シート181の開口率は30%~40%である。具体的には、遮光シートとして、太陽工業株式会社製のD-Leaf(登録商標)を屋根フレーム部172に設置した。
遮光シート181を屋根フレーム部172に設置する目的の一つは、直射日光による水温上昇を防ぐことである。
地上水域部110の水の水温が上がり過ぎると、酸欠になってしまってホタルの幼虫およびカワニナが生息できない。目安としては、真夏の日中でも水温が30℃以下に維持されることが好ましい。さらに好ましくは、水温を10℃以上25℃以下に維持することが好ましい。
実験例として、遮光シートがない場合と遮光シートを設置した場合とで水温をモニタした結果を図7に示す。(場所は東急建設株式会社技術研究所内(相模原市)。2018年、2019年)
外気温が35℃を越えるような猛暑日であっても、遮光シート181の設置により、水温が30℃以下に維持されていることがわかる。遮光シート181を設置した場合でも水温のモニタは必要ではあるが、外部エネルギーを使ったクーリングや冷水の注入をしなくてもよくなるので、維持管理コストの低減に貢献するとともに不慮の機器の故障でホタルが死ぬといったアクシデントもできる限り回避できるようになる。
遮光シート181を屋根フレーム部172に設置するもう一つの目的としては、日中相対照度を5%以上40%以下(好ましくは30%以上40%以下)にすることである。直射日光が当たりすぎて日陰がないと、ホタルの幼虫およびカワニナの生息に適さないということがある。
また、全体に日が当たらず、照度不足では、カワニナの餌となる藻が十分に育たないということになる。
この場合、カワニナの餌になる藻か、ホタルの幼虫の餌になるカワニナか、いずれにしても餌を補給する必要が生じてくるのであるから、やはり維持管理コストが増大することになる。人工環境とはいえ、ホタルの累代飼育をできれば自然なサイクルで低コストで維持されるようにするため、遮光シート181による照度の調整が大事になってくる。発明者らの実験例では、太陽工業株式会社製のD-Leaf(登録商標)を屋根フレーム部172に一重に設置することで好ましい照度調整が得られたが、実施地域(場所)によっては、遮光シートを部分的に削除、あるいは、部分的に二重にしたり、さらに、寒冷紗を重ねたりしてもよい。
なお、日中相対照度の計測法としては、例えば、次のようにする。
まず、照度計を複数用意しておく。
1以上の照度計は、遮光シート181の外で照度を計測する。他の1以上の照度計は、地上水域部110の水面の上で照度を計測する。それぞれの照度計の計測値の10分平均値を算出し、地上水域部110の水面上で、相対照度が5%以上40%以下(好ましくは30%以上40%以下)となっているか否か判断する。
なお、ホタルが羽化して成虫がいるときの運用時には、飛翔空間部160の環境制御として、夜間照度と風速のコントロールも必要になるが、これはフローチャートを参照しながら後述する。
地下貯水部190は、地下部分に設置された貯水タンクである。
なお、ホタル生息環境システム100は例えばビルの屋上に構築してもよいのであり、この場合、「地下部分」というのは、厳密な意味でいう地球の地面の下(地中)をいうのではなくて、人が歩くところや日光が当たるところを地表と考えて、その地表の下に隠れているところを地下と考えていただきたい。(なお、貯水部を設置する場所は地下に限定せず、地上に設置することを排除しない。)
本実施例のホタル生息環境システム100で使用する水としては、主として、雨水を利用することが望ましいので、地下貯水部190に雨水を集水するように配管しておく。その上で、循環ポンプ191で地下貯水部190の水を地上水域部110に送り出すとともに、地上水域部110を流れた水が一部循環して地下貯水部190に戻るように配管しておく。
なお、地下部分に貯水タンクを設置しておけば、年を通して水の温度は30℃以下に保たれると期待できるが、実施地域(場所)によっては、水を地下に貯水するだけでは水温を低く保てない恐れもある。そこで、水を冷やすクーラー(冷却装置)や、冷水(例えば水道水)を注水できる冷水注水弁を地下貯水部190を付設しておく。(本明細書では、クーラー(冷却装置)や冷水(例えば水道水)を注水できる冷水注水弁を水冷却装置と称することにする。)
また、水の溶存酸素量(DO)、pH、電気伝導度(EC)を所定の範囲(あるいは、所定値以上や所定値以下)に保つため、循環ポンプ191の近傍(例えばポンプからの水の出口付近)に、エアレーション装置、pH調整装置(例えばアルカリ滴下手段)、フィルター装置(イオンフィルター装置)等を付設しておく。
各種センサと、各種装置と、は中央制御装置(簡単なパソコンでもよい)に接続(無線/有線どちらでもよい)しておき、センシングデータに応じて各種装置に所定の動作をさせる自動プログラムを中央制御装置(パソコン)に組み込んでおく。
(ホタル生息環境システムの維持管理)
このような構成を有するホタル生息環境システム100の運用時の環境制御(コントロール)を説明する。
まず、図8、図9は、主として水質の維持管理のためのフローチャートである。
ここで、ホタルの幼虫が水中で生息するのは、孵化する8月頃から蛹化する(翌年の)4月頃ということになるが、図8、図9の水質維持管理フロー(ST110-ST152)は時期にかかわらず年中を通して休みなく行う。ホタルの幼虫の餌になるカワニナ、そのカワニナの餌になる藻の生育環境をホタルの幼虫の有無にかかわらず保つためである。
図8、図9のフローチャートを簡単に説明する。
なお、このフローチャートの各工程の動作は特に断りがない限り、中央制御装置(パソコン)による自動制御で行われる。
水温度の10分平均値を常にモニタし、水温度が0℃から30℃の範囲にあるか判断する(ST110)。ここでは水温の範囲を0℃から30℃とするが、例えば、10℃以上25℃以下に管理するようにしてももちろんよい。
水温度は温度センサで自動的にモニタされ、例えば水温度が30℃を越えるような場合(ST110:NO)、まず、中央制御装置(パソコン)からオペレーターに通知する(ST111)。通知方法としては、Eメール、音(アラーム、サイレン)、ランプの点等などが例として挙げられる。そして、水温度の10分平均値が30℃を越えた場合、中央制御装置(パソコン)から水冷却装置を作動させ、水温を30℃以下まで下げる(ST112)。
なお、水温度が30℃を越える頻度(あるいは水冷却装置の作動頻度)を計測し、水温度が30℃を越える頻度が所定の閾値(例えば48時間以内で2回とか3回とか)を超えると判断されるような場合、遮光シート181の遮光が不足している可能性があるので、オペレーターは、遮光シート181や寒冷紗を増やす(もう一枚重ねる)などの対策を講じるようにしてもよい。あるいは、自動的に屋根フレーム部172に遮光部材が設置されるようにしたり(ロール状になった遮光シート181が自動展開されるようにしてもよい)、適宜ミストが噴射されるようにして、自動的に光を少し遮るようにしてもよい。
溶存酸素濃度の10分平均値を常にモニタし、溶存酸素濃度が7mg/Lを越えているか判断する(ST120)。
ここでは、DOの下限を7mg/Lとするが、より好ましくは8.26mg/L(25℃での飽和溶存酸素量に相当する)以上に管理するようにしてもよい。
溶存酸素濃度は溶存酸素濃度センサで自動的にモニタされ、溶存酸素濃度が7mg/L以下になるような場合(ST120:NO)、中央制御装置(パソコン)からオペレーターに通知する(ST121)。そして、中央制御装置(パソコン)からエアレーション装置を作動させ、溶存酸素濃度が7mg/Lを越えるまで上昇させる(ST122)。
なお、溶存酸素濃度不足の頻度(あるいはエアレーション装置の作動頻度)を計測し、溶存酸素濃度不足の頻度が所定の閾値(例えば48時間以内で2回とか3回とか)を超えると判断されるような場合、水路120の形状として例えば段差130を増やすなどの対策を講じるようにしてもよい。
水のpHの10分平均値を常にモニタし、pHが6.0~8.5の範囲にあるか判断する(ST130)。
ここでは、pHの範囲を6.0~8.5とするが、例えば、6.5~8.5の範囲に10℃以上25℃以下に管理するようにしてももちろんよい。一般にホタルは若干アルカリ性の環境を好むものである。一方、昨今では一時的にpHが3を下回るような強い酸性雨が降ったりすることもある。そこで、pHセンサでpHを自動的にモニタし、pHが6.0~8.5から外れるような場合(ST130:NO)、例えば、6.0を下回って酸性になるような場合、中央制御装置(パソコン)からオペレーターに通知する(ST131)。そして、中央制御装置(パソコン)からpH調整装置(例えばアルカリ滴下手段)を作動させ、pHが6.0を越え、できれば、7.0付近まで回復するようにアルカリ(例えば水酸化ナトリウム)を滴下する(ST132)。
水のEC(電気伝導度)の10分平均値を常にモニタし、ECが0.5dS/m以下にあるか判断する(ST140)。ここでは、ECの上限を0.5dS/m以下とするが、より好ましくは0.2dS/m以下に管理するようにしてもよい。水のECが0.5dS/mを越えるような場合には(ST140:NO)、水の不純物がやや多すぎるということであるから、中央制御装置(パソコン)からオペレーターに通知するとともに(ST141)、中央制御装置(パソコン)からフィルター装置を作動させる(ST142)。
日中相対照度の10分平均値をモニタし、日中相対照度が5%~40%の範囲にあるか判断する(ST150)。
ここで、日中相対照度の計測にあたって、計測する時間帯としては、例えば日の出時刻から日没時刻などのように決めてもよいし、天体の運行に関係なく、決まった時間(例えば8時から17時など)を決めておいてもよいだろう。
ホタル生息環境システムの最初の構築段階で日中相対照度が5%~40%の範囲になるように遮光シート181を設置してはいるが、風で飛んだり、外れたりすることもあるし、季節によって日差しの強弱もある。そこで、照度計で日中相対照度を自動的にモニタし、日中相対照度が5%~40%の範囲から外れるような場合(ST150)、中央制御装置(パソコン)からオペレーターに通知する(ST151)。オペレーターとしては、状況を確認のうえ、必要な処置として、遮光シートの設置あるいは除去を行う。
この図8、図9のフローは、ホタル生息環境システム100を運用する間は休みなくループして、ホタル生息環境システム(特に水域部)の環境維持に努める。
次に、図10を参照して、飛翔空間部の維持管理フローを説明する。
飛翔空間部160の維持管理フローは、ホタルが羽化して、ホタルの成虫がいるときに実行されるフローである。一般的には、ホタルは、6月ぐらいに羽化しはじめ、成虫として10日~14日ぐらいを過ごすので、飛翔空間部160の維持管理フローの実行期間は6月~8月ぐらいということになる。
ホタルの成虫がいるか否かを判断する(ST210)。
この判断工程を行うために、例えば、高感度カメラでホタル生息環境システム内を監視し、夜間のホタルの発光を中央制御装置(パソコン)が自動的に認識するようにしてもよい。あるいは、オペレーターがカメラモニタを見たり、録画映像を見たりして、ホタルの成虫の存在を確認するようにしてもよい。
ホタルの成虫が確認できた場合(ST210:YES)、まず、夜間照度を十分に暗くする必要がある。ホタルの成虫は発光によってコミュニケーションを取るため、夜間に周辺が明るすぎると、ホタルの成虫がコミュニケーションを取れずに、交尾に結びつかないということになる。都市部では夜間でも商店や街灯の照明が明るいことがあるので対策が必要である。そこで、夜間照度を計測し、1[lx](lux,ルクス)以下になっているか判断する。ここでは、夜間照度の上限を1[lx]以下とするが、より好ましくは0.2[lx]以下に管理するようにしてもよい。
夜間照度が1[lx]を越えている場合(ST210:NO)、まず、中央制御装置(パソコン)からオペレーターに通知する(ST221)。そして、夜間照度が十分に暗くなるように遮光シート181を設置する(ST222)。オペレーターが、遮光シート181や寒冷紗を増やす(もう一枚重ねる)などの対策を講じるようにしてもよいし、自動的に屋根フレーム部172に遮光部材が設置されるようにしたり(ロール状になった遮光シートが自動展開されるようにしてもよい)、適宜ミストが噴射されるようにして、自動的に光を少し遮るようにしてもよい。また、屋根フレーム部172のみならず、必要であれば、壁フレーム部171にも遮光シート181を設置してもよい。
なお、「夜間」というのは、例えば、日没時刻(日の入り時刻)から日の出までの時間と考えてもよい。
日没時刻と日の出時刻は予め求められているから、中央制御装置(パソコン)がインターネット等で自動的に入手し、夜間中の照度計測を自動的に実行するとしてもよい。あるいは、ここでいう「夜間」というのは、天体の運行で決まる日没時刻(日の入り時刻)や日の出時刻とは関係なく、オペレーターが夜間の開始終了時刻(例えば19時から朝5時というように)を決めてしまってもよい。
続いて、風速計で風速を計測し、10分平均値で1m/s以下であるか判断する(ST230)。ここでは、風速の上限を1m/s以下とするが、より好ましくは0.3m/s以下に管理するようにしてもよい。都市部ではビル風が吹き込んでくるようなこともあるので、ホタルが自由に飛ぶには周囲の風が強すぎるということが有り得る。風速が10分平均値で1m/sを越えているような場合(ST230:NO)、中央制御装置(パソコン)からオペレーターに通知する(ST231)。そして、オペレーターが風対策として、壁フレーム部171に防風ネット182を設置する。あるいは、ロール状に収納された防風ネット182が中央制御装置(パソコン)からの指令によって自動的に展開するようにしてもよいだろう(ST232)。
図11は、実験施設の壁フレーム部171に防風ネット182を設置した状態を示す図である。
実験例としては、開口率40%の太陽工業株式会社製のD-Leaf(登録商標)を壁フレーム部171に防風ネット182として設置した。これにより、周囲の風速を10%~80%低減させることができた。
防風ネット182を張る場合、ホタル生息環境システムの四方の壁フレーム部のすべてに防風ネットを張ってもよい。あるいは、風の向きを考慮し、風が吹き込んでくる方にだけ防風ネットを張ってもよい。
また、できれば、ホタル生息環境システムの周囲に生け垣等を植栽したり生育したりして、自然な風よけができるようにしてもよい。
なお、年中を通して風を1m/s以下にするように防風ネットを張るという考え方もあるし、それを排除しないが、風が通らなくなると、今度はホタル生息環境システム内で植物が生育しにくくなる。水域部の周辺の植物は、ホタルの成虫の昼間の休息場所でもあるし、産卵場所でもあるから、植物の生育を阻害するほど常時遮風してしまうことはあまり好ましいことではない。
以上に説明したホタル生息環境システムにより本発明者らは実験施設においてホタルの累代飼育に2020年から成功している。図12は、実験施設で飼育したホタルの発光の様子を示す図である。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
100 ホタル生息環境システム
110 地上水域部
120 水路
130 段差部
150 土壌域部
160 飛翔空間部
161 支柱
162 横フレーム
171 壁フレーム部
172 屋根フレーム部
181 遮光シート
182 防風ネット
190 地下貯水部
191 循環ポンプ

Claims (11)

  1. 屋外に人工的に構築されるホタルの生息に適したホタル生息環境システムであって、
    ホタルの幼虫が成育するための地上水域部と、
    ホタルの蛹化、羽化、産卵および孵化のための土壌域部と、
    ホタルの成虫が飛翔するための空間として前記地上水域部および前記土壌域部から所定の高さまで確保された飛翔空間部と、を備え、
    前記飛翔空間部の上方に、少なくとも前記地上水域部への直射日光を遮るように、日光を部分的に遮る遮光シートが設けられ、
    年間を通じて前記地上水域部の水の温度が0℃以上30℃以下に保たれている
    ことを特徴とするホタル生息環境システム。
  2. 請求項1に記載のホタル生息環境システムにおいて、
    前記地上水域部の水の温度を計測する温度センサが設置され、
    前記地上水域部の水の温度が30℃以上になった場合には、オペレーターに報知する
    ことを特徴とするホタル生息環境システム。
  3. 請求項1または請求項2に記載のホタル生息環境システムにおいて、
    さらに、
    貯水部と、
    前記地上水域部と前記貯水部とで水を循環させる水循環ポンプと、を備える
    ことを特徴とするホタル生息環境システム。
  4. 請求項3に記載のホタル生息環境システムにおいて、
    前記貯水部は地下に設けられている
    ことを特徴とするホタル生息環境システム。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載のホタル生息環境システムにおいて、
    少なくとも前記地上水域部の上方において、支柱によって支えられた天井側のフレーム構造である屋根フレーム部が設けられ、
    前記屋根フレーム部に前記遮光シートが設置され、
    これにより、前記飛翔空間部の高さが確保されるとともに、前記遮光シートによって前記地上水域部への直射日光が部分的に遮られる
    ことを特徴とするホタル生息環境システム。
  6. 請求項5に記載のホタル生息環境システムにおいて、
    前記地上水域部の直上において、前記遮光シートの内外の日中相対照度が5%以上40%以下である
    ことを特徴とするホタル生息環境システム。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載のホタル生息環境システムにおいて、
    前記地上水域部の水質は、10分平均値で、
    溶存酸素量が7mg/L以上、
    pHが6.0以上8.5以下、
    電気伝導度が0.5dS/m以下
    である
    ことを特徴とするホタル生息環境システム。
  8. 請求項1から請求項7のいずれかに記載のホタル生息環境システムにおいて、
    ホタルの成虫が確認された場合、前記飛翔空間部の夜間照度を1[lx]以下とする
    ことを特徴とするホタル生息環境システム。
  9. 請求項1から請求項8のいずれかに記載のホタル生息環境システムにおいて、
    ホタルの成虫が確認された場合、前記飛翔空間部の風速を10分平均値で、1m/s以下とする
    ことを特徴とするホタル生息環境システム。
  10. 請求項1から請求項9のいずれかに記載のホタル生息環境システムを維持管理する方法であって、
    当該ホタル生息環境システムは、
    さらに、
    ホタルの成虫の発光を監視するモニタカメラと、
    夜間照度を計測する照度計と、
    中央制御装置からの指令によって前記飛翔空間部の天井側のフレームに自動的に設置および収納される遮光シートと、を備えており、
    ホタルの成虫の発光が確認され、かつ、夜間照度が1[lx]を越えている場合、前記中央制御装置が前記自動的に設置および収納される遮光シートを前記天井側のフレームに設置する
    ことを特徴とするホタル生息環境システムの維持管理方法。
  11. 請求項1から請求項9のいずれかに記載のホタル生息環境システムを維持管理する方法であって、
    当該ホタル生息環境システムは、
    さらに、
    ホタルの成虫の発光を監視するモニタカメラと、
    風速を計測する風速計と、
    中央制御装置からの指令によって前記飛翔空間部の壁側のフレームに自動的に設置および収納される防風ネットと、を備えており、
    ホタルの成虫の発光が確認され、かつ、風速が1m/sを越えている場合、前記中央制御装置が前記防風ネットを前記壁側のフレームに設置する
    ことを特徴とするホタル生息環境システムの維持管理方法。
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