以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態の態様について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による蒸気熱交換システム1の構成を示す概略図である。図1では、信号の流れを破線の矢印で示し、水、蒸気およびドレンの流れの方向を実線の矢印で示している。以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
蒸気熱交換システム1は、給水タンク10、蒸気供給源20、第1熱交換器24、第1減圧弁28、空気抜き弁30、第2熱交換器50、第2減圧弁56、分離器60、温度計68、圧力調整弁70、圧力計72、オリフィス74、逆止弁76、空気抜き弁78、制御部80を含んで構成される。
給水タンク10は、例えば、筒状に形成され、補給水管12を通じて供給された水を貯留する。また、給水タンク10には、後述の第1トラップ14、第2トラップ16および第3トラップ18からドレンが回収される。
給水タンク10と蒸気供給源20との間には、給水配管22が設けられている。給水タンク10は、貯留した水を、給水配管22を通じて蒸気供給源20に供給する。
蒸気供給源20は、例えば、ボイラである。蒸気供給源20は、給水タンク10から供給された水を加熱して高圧の蒸気を発生させる。蒸気供給源20と第1熱交換器24との間には、第1送入管26が設けられている。蒸気供給源20は、発生した蒸気を、第1送入管26を通じて第1熱交換器24に送出する。蒸気供給源20は、送出する蒸気の圧力が所定圧力になるように圧力制御されている。蒸気供給源20から送出される蒸気の圧力は、例えば、0.8MPaGである。なお、PaGは、大気圧を基準とした相対的な圧力であるゲージ圧を示す。
第1送入管26には、第1減圧弁28が設けられる。第1減圧弁28は、第1送入管26における第1減圧弁28に対して蒸気供給源20側の蒸気の圧力よりも、第1熱交換器24側の蒸気の圧力を下げる。第1減圧弁28で減圧された蒸気は、第1熱交換器24に送られる。
蒸気の圧力が0.8MPaGの場合、蒸気の温度は、約175℃である。また、蒸気の圧力が0.5MPaGの場合、蒸気の温度は、約150℃である。例えば、約150℃の蒸気が第1熱交換器24で必要な場合、第1熱交換器24に供給される蒸気の圧力は、第1減圧弁28によって、0.8MPaGから約0.5MPaGに減圧される。これにより、適切な温度の蒸気を第1熱交換器24に供給することができる。また、蒸気の圧力を減圧すると潜熱が増加するため、第1熱交換器24における熱交換の効率を上げることができる。
なお、第1熱交換器24において約175℃の蒸気が必要な場合、第1減圧弁28を設けず、蒸気供給源20から0.8MPaGの蒸気を直接的に第1熱交換器24に供給してもよい。
また、第1送入管26には、空気抜き弁30が設けられる。例えば、蒸気熱交換システム1の立ち上げ時などでは、第1送入管26内に空気が残っていることがある。第1送入管26内に空気があると、蒸気の温度が飽和温度より低くなり、第1熱交換器24における熱交換の効率が低下するおそれがある。
空気抜き弁30は、第1送入管26内の温度が所定温度を下回っている間、または、下回ると開弁し、所定温度以上となると閉弁する。第1送入管26内に空気が残っていると、第1送入管26内の温度が所定温度より低くなって空気抜き弁30が開弁する。そうすると、第1送入管26内の空気が、空気抜き弁30を通じて第1送入管26外に排出される。空気が排出されると、蒸気の温度が上昇して飽和温度に近づき、空気抜き弁30が閉弁される。これにより、空気抜き弁30は、第1送入管26を流通する蒸気の温度を飽和温度にさせることができる。
図2は、第1熱交換器24の構成例を示す正面図である。図3は、図2のIII方向の左側面図である。図4は、図2のIV方向の右側面図である。
第1熱交換器24は、送入側ヘッダ32、送出側ヘッダ34、複数の熱交換管36を含んで構成される。送入側ヘッダ32および送出側ヘッダ34は、例えば、内部に空間を有する扁平した箱状に形成されている。送入側ヘッダ32および送出側ヘッダ34は、対向配置される。
熱交換管36は、直管状に形成されている。熱交換管36の一端は、送入側ヘッダ32に連通している。つまり、複数の熱交換管36のそれぞれの一端が、送入側ヘッダ32で集合されている。熱交換管36の他端は、送出側ヘッダ34に連通している。つまり、複数の熱交換管36のそれぞれの他端が、送出側ヘッダ34で集合されている。
送入側ヘッダ32における熱交換管36の反対側には、1の送入口38が設けられている。送入口38は、例えば、送入側ヘッダ32の比較的上部側に設けられている。第1送入管26は、送入口38に連通している。
送出側ヘッダ34における熱交換管36の反対側には、1の送出口40が設けられている。送出口40は、例えば、送出側ヘッダ34の比較的下部側に設けられている。第1送出管42は、送出口40に連通している。
複数の熱交換管36は、第1熱交換器24の高さ方向(図3および図4の上下方向)および第1熱交換器24の奥行方向(図3および図4の左右方向)のそれぞれにおいて並列に配置されている。複数の熱交換管36は、それぞれの熱交換管36の隙間を、被加熱物の一例である空気が通過することができるように、略均等に離隔して配置されている。なお、熱交換管36の本数および配列は、図2~図4に示す例に限らない。また、被加熱物は空気に限らず、例えば、水などであってもよい。
熱交換管36の外周面には、外周面から外側に張り出すフィン44が設けられている。フィン44は、例えば、熱交換管36の長手方向に、らせん状に設けられている。フィン44は、隣接する熱交換管36のフィン44と互いに接触しないように設けられている。フィン44は、熱交換管36の表面積(伝熱面)を増加させるために設けられている。
第1熱交換器24は、蒸気供給源20から第1送入管26を通じて供給された蒸気と被加熱物とで熱交換を行う。具体的には、第1送入管26を通じて供給される蒸気は、まず、送入口38を介して送入側ヘッダ32に入る。その後、送入側ヘッダ32の蒸気は、複数の熱交換管36に分配して送られる。熱交換管36内を流通する蒸気は、熱交換管36の外周面およびフィン44に接触する被加熱物(例えば、空気)と熱交換を行う。熱交換管36を流通する蒸気の潜熱が被加熱物の加熱に利用されると(蒸気の潜熱が被加熱物に移動すると)、蒸気の温度が低下して蒸気が凝縮し、熱交換管36内にドレン(水)が生じる。
なお、第1熱交換器24の構成は、図2~図4で例示した構成に限らない。例えば、第1熱交換器24は、窯状の構造物の周囲に設けられる構成であってもよいし、紙などを巻き付けるローラの内部に設けられる構成であってもよい。また、第1熱交換器24は、シェルアンドチューブ式の熱交換器であってもよいし、プレート式の熱交換器であってもよい。
ここで、比較例として、第1熱交換器24に供給された蒸気を第1熱交換器24ですべて利用する蒸気熱交換システムが挙げられる。この比較例の蒸気熱交換システムでは、第1熱交換器24に供給された蒸気の潜熱が被加熱物の加熱にすべて利用されるため、熱交換管36、送出側ヘッダ34および送出口40を介して第1送出管42に蒸気が送出されない。
しかし、この比較例の蒸気熱交換システムでは、ドレンが、それぞれの熱交換管36の内面に膜状に形成されて、それぞれの熱交換管36内に滞留することがある。ドレンが膜状となって熱交換管36内に滞留すると、第1熱交換器24における熱貫流率(被加熱物への熱の伝わり易さ)が低下してしまう。
そこで、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24に単位時間あたりに供給する蒸気量(つまり、第1熱交換器24に供給する蒸気の流速)を、上述した比較例の蒸気熱交換システムに比べて大きくする。換言すると、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24で利用される蒸気の単位時間あたりの蒸気量よりも多い蒸気が第1熱交換器24の送入口38に供給される。
以下では、第1熱交換器24に供給された蒸気を第1熱交換器24で丁度すべて利用するときの単位時間あたりの蒸気量を、定格蒸気量と呼ぶ。例えば、第1実施形態の蒸気熱交換システム1において、定格蒸気量を100%とすると、第1熱交換器24の送入口38には、単位時間あたりに蒸気量が101%~110%の蒸気が供給される。
第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、熱交換管36内の蒸気の流速が、上述した比較例に比べて高くなる。このため、熱交換管36内で生じたドレンは、熱交換管36内を流通する蒸気によって蒸気の流れの下流側へ押し流される。
そして、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24で利用される蒸気量よりも多くの蒸気量の蒸気を第1熱交換器24に供給するため、第1熱交換器24で生じたドレンが、第1熱交換器24で利用されなかった(余剰の)蒸気とともに送出口40から送出される。例えば、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、定格蒸気量に対する蒸気量が1%~10%の蒸気を、第1熱交換器24の送出口40から送出するようにしている。
つまり、第1熱交換器24は、熱交換によって生じたドレンを、蒸気供給源20から第1熱交換器24に供給される蒸気の一部とともに第1熱交換器24外に送出する。第1実施形態の蒸気熱交換システム1は、熱交換によって生じたドレンが第1熱交換器24外に送出されるため、熱交換管36の内面にドレンが膜状に滞留しない。これにより、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、上述した比較例に比べ、第1熱交換器24における熱貫流率の低下を防止することが可能となる。
図1に戻って説明すると、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24で利用されなかった(余剰の)蒸気を、低圧の第2熱交換器50で利用する構成としている。
第2熱交換器50は、例えば、供給される蒸気の圧力および供給元以外は図2~図4を用いて説明した第1熱交換器24と同様の構成となっている。第2熱交換器50は、供給された蒸気と被加熱物(空気)とで熱交換を行う。
第1送出管42は、分離器60に連通している。第1送出管42の途中には、第1送出管42よりも鉛直下方に延びる第1ドレン回収管62が連通されている。第1ドレン回収管62には、第1トラップ14が設けられている。第1トラップ14は、第1ドレン回収管62に入ったドレンを捕集する。第1トラップ14で捕集されたドレンは、給水タンク10に回収される。なお、第1ドレン回収管62および第1トラップ14は、省略されてもよい。
第1熱交換器24から送出される蒸気の流速が高いため、ドレンの一部は、第1ドレン回収管62に入らず、蒸気とともに分離器60に送られる。つまり、分離器60には、第1熱交換器24で利用されなかった(余剰の)蒸気とドレンとが供給される。
分離器60は、例えば、第1送出管42の断面積よりも断面積が大きな管により構成される。第2ドレン回収管64は、分離器60の鉛直下方に連通している。蒸気流通管(蒸気流通部)66は、分離器60の鉛直上方に連通している。
分離器60は、第1送出管42を通じて供給された蒸気とドレンとを分離する。具体的には、蒸気およびドレンが分離器60に入ると、ドレンは、自重で鉛直下方に移動して第2ドレン回収管64に入る。一方、蒸気は、ドレンよりも相対的に軽いことから、主に鉛直上方に拡散して蒸気流通管66に入る。
第2ドレン回収管64には、第2トラップ16が設けられている。第2トラップ16は、分離器60で分離されて第2ドレン回収管64に入ったドレンを捕集する。第2トラップ16で捕集されたドレンは、給水タンク10に回収される。
温度計68は、第2ドレン回収管64における分離器60と第2トラップ16との間に設けられる。温度計68は、第2ドレン回収管64内の温度を測定する。つまり、温度計68は、第1熱交換器24から送出されたドレン(分離器60で分離されたドレン)の温度を測定する。
第1熱交換器24において、ドレンは、上流から下流にかけてまんべんなく生じる。上流側で生じたドレンは、徐々に下流側に移動するが、第1熱交換器24に滞留する時間が長い。第1熱交換器24に滞留する時間が長いと、ドレンの温度が低下する。そして、第1熱交換器24内にドレンが多く溜まるほど、第1熱交換器24から送出された際のドレンの温度の低下幅が大きい。そこで、蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24から送出されたドレンの温度を検出し、第1熱交換器24内のドレンの排出を制御する。
また、第1熱交換器24から排出されたドレンは、第1送出管42、分離器60および第2ドレン回収管64を移動して第2トラップ16で捕集される。ドレンは、蒸気が凝縮されてドレンとなってから時間が経過するほど温度が低下し易いため、ドレンが移動する経路の下流に向かうほど温度が低下する。温度が低下するほど、飽和温度との温度差の導出時における温度計68の測定誤差の影響が少なくなり、その温度差を正確に導出することができる。このため、温度計68は、下流側に位置する第2ドレン回収管64に設けられている。
なお、温度計68を設ける位置は、第2ドレン回収管64における分離器60と第2トラップ16との間に限らない。例えば、ドレンの温度を精密に測定する必要がない場合には、温度計68は、分離器60に設けられてもよいし、あるいは、第1送出管42に設けられてもよい。つまり、温度計68は、ドレンが流通する経路のうち第1熱交換器24の下流側であり、第2トラップ16の上流側である1次側ドレン流通経路に設けられ、1次側ドレン流通経路を流通するドレンの温度を検出してもよい。
蒸気流通管66は、第2熱交換器50の送入口54に連通している。蒸気流通管66は、分離器60で分離された蒸気(第1熱交換器24で利用されなかった蒸気)を第2熱交換器50に導く。
蒸気流通管66には、圧力調整弁70が設けられる。圧力調整弁70は、蒸気流通管66における流路の開度を変化させる。
圧力計72は、分離器60に設けられる。圧力計72は、サイフォン管73を介して分離器60に接続される。圧力計72は、分離器60内の蒸気の圧力を検出する。
なお、圧力計72を設ける位置は、分離器60に限らない。例えば、圧力計72は、第1送出管42に設けられてもよいし、蒸気流通管66における分離器60と圧力調整弁70との間に設けられてもよい。つまり、圧力計72は、蒸気が流通する経路のうち第1熱交換器24の下流側であり圧力調整弁70の上流側である1次側蒸気流通経路に設けられ、1次側蒸気流通経路を流通する蒸気の圧力を検出してもよい。
蒸気流通管66における圧力調整弁70と第2熱交換器50との間には、オリフィス74が設けられている。オリフィス74は、例えば、円環状に形成され、蒸気流通管66における流路の所定区間の断面積を絞る。オリフィス74は、第1送出管42内の蒸気の流速、および、分離器60とオリフィス74との間の蒸気流通管66内の蒸気の流速が高くなり過ぎないように、その流速を所定流速に抑える。所定流速は、例えば、定格蒸気量の10%の蒸気が分離器60に流れるときの流速である。また、オリフィス74は、オリフィス74よりも蒸気の流れの下流側にある蒸気の圧力を、オリフィス74よりも蒸気の流れの上流側にある蒸気の圧力に比べて低下させる。
蒸気流通管66におけるオリフィス74と第2熱交換器50との間には、逆止弁76が設けられる。逆止弁76は、分離器60から第2熱交換器50に向かう方向の流れを許可し、第2熱交換器50から分離器60に向かう方向の流れを阻止する。
蒸気流通管66における分離器60と圧力調整弁70との間には、空気抜き弁78が設けられる。空気抜き弁78は、蒸気流通管66内の温度が所定温度を下回っている間、または、下回ると開弁し、所定温度以上となると閉弁する。空気抜き弁78は、蒸気流通管66内に残る空気を蒸気流通管66外に排出することで、蒸気流通管66を流通する蒸気の温度を飽和温度にさせることができる。
制御部80は、中央処理装置(CPU)、不揮発性メモリ、揮発性メモリ等を含む半導体集積回路から構成される。制御部80は、圧力計72で検出された圧力に基づいて、分離器60内の圧力(圧力計72の圧力)が概ね一定となるように、圧力調整弁70の開度(または閉度)を制御する。その結果、蒸気流通管66におけるオリフィス74と第2熱交換器50との間の圧力が所定圧力に調整されることとなる。
圧力計72の圧力が上昇すると、第1熱交換器24内の圧力勾配が小さくなり、第1熱交換器24から送出される蒸気量が減少し、第1熱交換器24からドレンが排出され難くなる。このため、制御部80は、圧力計72の圧力が上昇する方向に変化しようとすると、圧力調整弁70の開度を上げる。圧力調整弁70の開度が上がると、第1熱交換器24の下流側の圧力が低下し、第1熱交換器24内の圧力勾配が大きくなり、第1熱交換器24からドレンが排出され易くなる。
また、圧力計72の圧力が低下すると、第1熱交換器24からドレンが排出され易くなるが、第1熱交換器24から蒸気が過剰に送出される。このため、制御部80は、圧力計72の圧力が低下する方向に変化しようとすると、圧力調整弁70の開度を下げる。圧力調整弁70の開度が下がると、第1熱交換器24の下流側の圧力が上昇し、第1熱交換器24から蒸気が過剰に送出されることを抑制できる。
また、制御部80は、温度計68で検出された温度に基づいて、圧力調整弁70の開度(または閉度)を制御してもよい。
第1熱交換器24内にドレンが溜まると、温度計68で検出される温度が低下し、飽和温度との温度差が大きくなる。このため、制御部80は、温度計68の温度が低下すると(飽和温度との温度差が大きくなると)、圧力調整弁70の開度を上げる。圧力調整弁70の開度が上がると、第1熱交換器24の下流側の圧力が低下し、第1熱交換器24からドレンが排出され易くなる。
また、第1熱交換器24内にドレンがあまり溜まっていないと、温度計68で検出される温度が上昇し、飽和温度との温度差が小さくなる。このため、制御部80は、温度計68の温度が上昇すると(飽和温度との温度差が小さくなると)、圧力調整弁70の開度を下げる。圧力調整弁70の開度が下がると、第1熱交換器24の下流側の圧力が上昇し、第1熱交換器24から蒸気が過剰に送出されることを抑制できる。
蒸気熱交換システム1では、圧力計72の圧力に基づく圧力調整弁70の制御、および、温度計68の温度に基づく圧力調整弁70の制御のいずれかが、第1熱交換器24の構成などによって選択される。
例えば、蒸気が流通する距離(例えば、熱交換管36の長さ)が長い第1熱交換器24では、上流側で生じたドレンが下流側に移動するまでに時間がかかって、ドレンの温度が大きく低下する。このような、ドレンの温度の低下幅が大きな第1熱交換器24では、第1熱交換器24から送出されるドレンの温度を検出することで、飽和温度とドレンの温度との温度差を精度よく導出することができる。このため、ドレンの温度の低下幅が大きな第1熱交換器24の場合、蒸気熱交換システム1は、温度計68の温度に基づいて圧力調整弁70を制御する構成とされる。
また、蒸気が流通する距離が短い第1熱交換器24では、上流側で生じたドレンが早く下流側に到達するため、ドレンの温度の低下幅が小さい。このような、ドレンの温度の低下幅が小さな第1熱交換器24では、飽和温度とドレンの温度との温度差を精度よく導出することが困難となる。このため、ドレンの温度の低下幅が小さな第1熱交換器24の場合には、温度計68の温度に基づいて圧力調整弁70の制御を行うのは適切ではない。
しかし、蒸気が流通する距離が短い場合には、第1熱交換器24内の圧力が、第1熱交換器24外の圧力の変化に対して早く応答する。このような、圧力の応答性がよい第1熱交換器24としては、例えば、キルンなどのような伝熱面で囲まれた容積が大きなものがある。圧力の応答性がよい第1熱交換器24の場合、蒸気熱交換システム1は、圧力計72の圧力に基づいて圧力調整弁70を制御する構成とされる。この態様では、圧力調整弁70の制御の応答遅れを抑えることができる。
なお、制御部80は、圧力計72の圧力と温度計68の温度との両方に基づいて、圧力調整弁70の制御を行ってもよい。
また、第1送入管26における第1減圧弁28と第1熱交換器24との間には、流量計82が設けられる。流量計82は、第1送入管26を通じて送入口38に送入される蒸気の流量を測定する。流量計82で測定された流量は、第1熱交換器24を介して第2熱交換器50へ供給する蒸気量を調整する際に用いられる。
ここで、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24で利用されなかった蒸気を第2熱交換器50で利用するが、第1熱交換器24を介して第2熱交換器50に供給される蒸気だけでは、第2熱交換器50で消費すべき蒸気量を満たせないことがある。このため、第2熱交換器50には、第1熱交換器24を介して蒸気が供給されることに加え、蒸気供給源20の蒸気が減圧されて直接的に供給される。
具体的には、第2送入管52は、第1送入管26における蒸気供給源20と第1減圧弁28との間に連通している。また、第2送入管52は、蒸気流通管66における逆止弁76と第2熱交換器50との間に連通している。
第2送入管52には、第2減圧弁56が設けられている。第2減圧弁56は、第2送入管52における第2減圧弁56に対して、蒸気供給源20側の蒸気の圧力よりも、第2熱交換器50側の蒸気の圧力を下げる。第2減圧弁56で減圧された蒸気は、第2熱交換器50に送られる。第2減圧弁56は、第1減圧弁28よりも減圧幅が大きい。つまり、第2熱交換器50に供給される蒸気の圧力は、第1熱交換器24に供給される蒸気の圧力よりも低い。第2熱交換器50に供給される蒸気の圧力は、例えば、0.2MPaGである。
また、第3ドレン回収管84は、第2熱交換器50の送出口86に連通している。第3ドレン回収管84には、第3トラップ18が設けられている。第3トラップ18は、第2熱交換器50で生じたドレンを捕集する。第3トラップ18で捕集されたドレンは、給水タンク10に回収される。
なお、第2熱交換器50に供給される蒸気の圧力は、0.2MPaGより低くてもよい。この場合、第3トラップ18の代わりに、蒸気駆動式ポンプが第3ドレン回収管84に設けられてもよい。蒸気駆動式ポンプは、第1熱交換器24等を含む蒸気系統とは別系統の蒸気を用いて、第3ドレン回収管84に入るドレンを回収して給水タンク10に移送する。
また、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24と第2熱交換器50とが並行して運用される。例えば、第2熱交換器50は、被加熱物の予熱を行い、第1熱交換器24は、予熱された被加熱物の加熱を行う。
図5は、第1実施形態の蒸気熱交換システム1における立ち上げ時の操作を説明するためのフローチャートである。図5のフローチャートに示す処理は、蒸気熱交換システム1の管理者や使用者など(以下、管理者等という)によって行われる。
まず、管理者等は、圧力調整弁70を閉状態にさせ(S100)、この状態において、蒸気供給源20から蒸気を第1熱交換器24に供給させるようにする(S110)。この状態では、第1熱交換器24の送入口38と送出口40との圧力差がほとんどないため、蒸気供給源20から第1熱交換器24に供給される蒸気は、第1熱交換器24ですべて利用される。
次に、管理者等は、この状態において、流量計82が示す流量を目視で確認し(S120)、確認した流量を定格蒸気量に決定する(S130)。
次に、管理者等は、決定した定格蒸気量に基づいて、第1熱交換器24の送入口38に送入させる目標の蒸気量(目標送入蒸気量)を決定する(S140)。例えば、管理者等は、定格蒸気量の110%を目標送入蒸気量に決定する。なお、定格蒸気量の110%を目標送入蒸気量に決定する態様に限らない。例えば、管理者等は、定格蒸気量の101%から定格蒸気量の110%の範囲の中から目標送入蒸気量を決定してもよい。
次に、管理者等は、圧力調整弁70を任意の開度で開かせる(S150)。圧力調整弁70が開くと、第1熱交換器24の送出口40の圧力が低下し、それに連れて第1熱交換器24の送入口38の圧力が低下する。
このとき、蒸気供給源20は、第1熱交換器24に供給する蒸気の圧力が一定となるように制御されている。このため、蒸気供給源20は、第1熱交換器24の送入口38の圧力を、低下する前の圧力に戻すべく、出力する蒸気の圧力を上昇させる。
これにより、蒸気供給源20は、圧力調整弁70を開かせる前の流量よりも多量の蒸気を第1熱交換器24に供給することとなる。
次に、管理者等は、圧力計72の設定値を制御部80に設定する(S160)。圧力計72の設定値の設定が行われると、制御部80は、圧力調整弁70の開度を、その設定値に基づいたものにさせる。制御部80の動作については、後に詳述する。
次に、管理者等は、流量計82が示す蒸気の流量を目視で確認し(S170)、蒸気の流量が目標送入蒸気量に一致するか否かを判定する(S180)。蒸気の流量が目標送入蒸気量に一致しない場合(S180におけるNO)、管理者等は、圧力計72の設定値を変更して設定し直す(S160)。
一方、蒸気の流量が目標送入蒸気量に一致した場合(S180におけるYES)、管理者等は、一連の操作を終了する。このように、管理者等は、流量計82が示す蒸気の流量が目標送入蒸気量となるような圧力計72の設定値をトライアンドエラーで見つけ出す。
図6は、圧力計72の圧力に基づいた制御部80の動作を説明するフローチャートである。まず、制御部80は、蒸気熱交換システム1の停止指示があったか否を判定する(S200)。制御部80は、蒸気熱交換システム1の停止指示があった場合(S200におけるYES)、一連の処理を終了する。
一方、制御部80は、蒸気熱交換システム1の停止指示がなかった場合(S200におけるNO)、所定時間が経過したか否かを判定する(S210)。所定時間が経過していない場合(S210におけるNO)、制御部80は、ステップS200の処理に戻る。
一方、所定時間が経過した場合(S210におけるYES)、制御部80は、圧力計72が示す圧力を取得する(S220)。次に、制御部80は、取得した圧力計72の圧力と圧力計72の設定値との圧力差を導出する(S230)。次に、制御部80は、導出された圧力差がゼロとなるような圧力調整弁70の目標開度を導出する(S240)。そして、制御部80は、圧力調整弁70を、導出した目標開度で開かせ(S250)、ステップS200の処理に戻る。制御部80は、このようにして、圧力計72の圧力が設定値になるように圧力調整弁70の開度を制御する。その結果、蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24を介して第2熱交換器50に供給される蒸気量が、目標送入蒸気量に基づいた流量に制御される。
図7は、温度計68の温度に基づいた制御部80の動作を説明するフローチャートである。図7のフローチャートは、ステップS220~S240に代えてステップS320~S340が行われる点において図6のフローチャートと異なる。したがって、図6のフローチャートのステップと等しいステップについては説明を省略し、異なるステップについて詳述する。
制御部80は、所定時間が経過した場合(S210におけるYES)、温度計68の温度を取得する(S320)。次に、制御部80は、取得した温度計68の温度と蒸気の飽和温度との温度差を導出する(S330)。次に、制御部80は、導出された温度差に基づいて圧力調整弁70の目標開度を導出する(S340)。そして、制御部80は、圧力調整弁70を、導出した目標開度で開かせる(S250)。
ここで、第1熱交換器24から第2トラップ16に至る1次側ドレン流通経路にドレンが溜まってくると、温度計68が設置されている第2ドレン回収管64内の温度が、飽和温度に対して低下する。つまり、この場合、ステップS330で導出された温度差が大きくなる。
制御部80は、導出された温度差が、前回の制御周期において導出された温度差よりも大きければ、目標開度を増加させる。そうすると、第1熱交換器24の送出口40から送出される蒸気量が増加する。これにより、1次側ドレン流通経路内のドレンが蒸気によって押し流され易くなり、ドレンの排出が促進される。
また、1次側ドレン流通経路内のドレンが、押し流されて減少すると、第2ドレン回収管64内の温度が、飽和温度に近づく。つまり、この場合、ステップS330で導出された温度差が小さくなる。
制御部80は、導出された温度差が、前回の制御周期において導出された温度差よりも小さければ、目標開度を減少させる。そうすると、第1熱交換器24の送出口40から送出される蒸気量が減少する。これにより、送出口40から蒸気が過剰に送出されることを防止できる。
以上のように、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24の熱交換管36内で生じたドレンが蒸気によって第1熱交換器24外に送出されるとともに、第1熱交換器24外に送出された蒸気が第2熱交換器50で利用される。
したがって、第1実施形態の蒸気熱交換システム1によれば、蒸気熱交換システム1全体として蒸気のロスを抑えつつ、第1熱交換器24における熱貫流率の低下を防止することが可能となる。
また、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、蒸気流通管66の途中にオリフィス74を設けて、第1熱交換器24とオリフィス74との間の蒸気の流速が高くなり過ぎないようにしている。これにより、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、第1熱交換器24で利用されない蒸気が、必要以上に多くなることを抑えることができる。換言すると、第1実施形態の蒸気熱交換システム1では、ドレンを第1熱交換器24から送出させるのに適切な量(具体的には、定格蒸気量の1%~10%)の蒸気を第1熱交換器24から送出させることができる。
なお、第2熱交換器50には、第1熱交換器24で利用されなかった蒸気が供給されるとともに、蒸気供給源20から第2減圧弁56を介して直接的に蒸気が供給されていた。しかし、第2熱交換器50には、第1熱交換器24で利用されなかった蒸気が供給されればよく、蒸気供給源20から第2減圧弁56を介して直接的に蒸気が供給されなくてもよい。
また、第2減圧弁56を介して第2熱交換器50に蒸気を補充する場合には、第2熱交換器50における蒸気の圧力を、第1熱交換器24における蒸気の圧力に比べ、十分に小さくする。
また、蒸気熱交換システム1において、空気抜き弁30、78の位置は、第1送入管26および蒸気流通管66に限らない。また、空気抜き弁の数は、2個に限らず、1個でもよく、3個以上であってもよい。空気抜き弁の数を多くするほど、空気を早急に抜くことができる。
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態による蒸気熱交換システム100の構成を示す概略図である。第1実施形態では、第1熱交換器24と圧力調整弁70との間(圧力調整弁70の1次側)に圧力計72が設けられていた。これに対し、第2実施形態の蒸気熱交換システム100では、圧力計72が圧力調整弁70の2次側に設けられる。なお、蒸気熱交換システム100では、温度計68が省略されている。
蒸気熱交換システム100において、圧力計72は、蒸気流通管66における圧力調整弁70とオリフィス74との間に設けられている。圧力計72は、サイフォン管73を介して蒸気流通管66に接続される。圧力計72は、圧力調整弁70とオリフィス74との間の蒸気流通管66内の蒸気の圧力を検出する。
第2実施形態の制御部80は、圧力調整弁70とオリフィス74との間の蒸気流通管66内の蒸気の圧力(圧力計72の圧力)が概ね一定となるように、圧力調整弁70の開度を制御する。制御部80は、圧力計72の圧力が低下する方向に変化しようとすると、圧力調整弁70の開度を上げ、圧力計72の圧力が上昇する方向に変化しようとすると、圧力調整弁70の開度を下げることで所定圧力を維持させる。
したがって、第2実施形態の蒸気熱交換システム100では、第1実施形態と同様に、蒸気熱交換システム100全体として蒸気のロスを抑えつつ、第1熱交換器24における熱貫流率の低下を防止することが可能となる。
なお、圧力計72は、蒸気流通管66におけるオリフィス74と第2熱交換器50との間に設けられてもよい。この場合、制御部80は、オリフィス74と第2熱交換器50との間の蒸気流通管66内における蒸気の圧力に基づいて、圧力調整弁70の開度を制御してもよい。
また、制御部80は、圧力計72の圧力に基づいて圧力調整弁70の開度を制御していた。しかし、制御部80は、流量計82が示す流量を取得し、その流量に基づいて圧力調整弁70の開度を制御してもよい。この場合、制御部80は、圧力計72の圧力を取得しなくてもよい。
また、蒸気熱交換システム100において、圧力調整弁70、圧力計72および制御部80に代えて、信号の授受を必要としない減圧弁を、分離器60とオリフィス74との間に設けてもよい。
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態による蒸気熱交換システム200の構成を示す概略図である。第3実施形態の蒸気熱交換システム200は、分離器60と第2熱交換器50との間の蒸気の圧力を制御する構成が第2実施形態と異なる。また、第3実施形態の蒸気熱交換システム200は、第1熱交換器24と第2熱交換器50とが個別に運用可能となっている。
第2実施形態において、蒸気流通管66には、分離器60側から順に、空気抜き弁78、電動弁(モータバルブ)202、絞り弁204、オリフィス74、圧力計72、逆止弁76が設けられている。換言すると、オリフィス74は、蒸気流通管66における分離器60と第2熱交換器50との間に設けられている。電動弁202は、蒸気流通管66における分離器60とオリフィス74との間に設けられている。絞り弁204は、蒸気流通管66における電動弁202とオリフィス74との間に設けられている。空気抜き弁78は、蒸気流通管66における分離器60と電動弁202との間に設けられている。圧力計72は、蒸気流通管66におけるオリフィス74と第2熱交換器50との間に設けられている。逆止弁76は、蒸気流通管66における圧力計72と第2熱交換器50との間に設けられている。
電動弁202は、蒸気流通管66における流路の開閉(オンまたはオフ)を切り替える。絞り弁204は、蒸気流通管66における流路の開度を変化させる。絞り弁204の開度は、手動で変えられる。例えば、管理者等は、流量計82が示す流量を目視で確認し、その流量が定格蒸気量の110%となるように絞り弁204の開度を手動で調整する。圧力計72は、オリフィス74と第2熱交換器50との間において蒸気流通管66を流通する蒸気の圧力を検出する。なお、オリフィス74は、絞り弁204をオリフィス74として機能させることが可能な場合(蒸気流通管66を流通する蒸気流量を絞り弁204で十分に抑えることが可能な場合)には、省略されてもよい。
制御部80は、圧力計72で検出された圧力に基づいて、電動弁202の開閉(オンまたはオフ)を制御する。具体的には、制御部80は、圧力計72で検出された圧力が所定の第1閾値を超えた場合、電動弁202を閉じる。電動弁202が閉じられると、電動弁202よりも第2熱交換器50側には蒸気が流れない。一方、制御部80は、圧力計72で検出された圧力が、第1閾値よりも小さな所定の第2閾値を下回った場合、電動弁202を開ける。電動弁202が開かれると、分離器60とオリフィス74との間の蒸気の流量は、絞り弁204の開度に基づいたものとなる。
図10は、第3実施形態の蒸気熱交換システム200の動作を説明するための説明図である。例えば、時刻T0と時刻T1との間の時間において、第1熱交換器24と第2熱交換器50との両方が動作しているとする。この場合、圧力計72の圧力は、第2閾値以下となっている。このため、制御部80は、電動弁202を開状態に維持させる。
この状態から、時刻T1において、第1熱交換器24が動作を維持しつつ第2熱交換器50が停止したとする。そうすると、第1熱交換器24の送出口40から蒸気が出続けるが、第2熱交換器50では蒸気が消費されなくなるため、蒸気流通管66内の蒸気の圧力が上昇する。つまり、この場合、第2熱交換器50の送入口54の圧力が上昇することとなる。
そして、圧力計72の圧力(オリフィス74と第2熱交換器50との間の蒸気の圧力)が時刻T2において第1閾値を超えると、制御部80は、電動弁202を閉じる。電動弁202が閉じられると、電動弁202と第2熱交換器50との間の蒸気の圧力の上昇が抑制される。
その後、時刻T3において第2熱交換器50が再び動作したとする。このとき、電動弁202と第2熱交換器50との間に滞留していた蒸気が第2熱交換器50で消費されるため、圧力計72の圧力が下降する。
そして、圧力計72の圧力が時刻T4において第2閾値を下回ると、制御部80は、電動弁202を開ける。電動弁202が開かれると、蒸気流通管66を通じて第1熱交換器24から第2熱交換器50に蒸気が供給されるため、圧力計72の圧力の下降が抑制されることとなる。その後、制御部80は、圧力計72の圧力が第1閾値を超えるまで、電動弁202を開状態に維持させる。
以上のように、第3実施形態の蒸気熱交換システム200は、第1実施形態と同様に、蒸気熱交換システム200全体として蒸気のロスを抑えつつ、第1熱交換器24における熱貫流率の低下を防止することが可能となる。
加えて、第3実施形態の蒸気熱交換システム200によれば、第2熱交換器50が単独で運転停止したとしても、第2熱交換器50の送入口54の蒸気の圧力が必要以上に上昇するのを防止することができる。その結果、第2熱交換器50の損傷を防止することができる。
また、電動弁202の開閉の基準となる第1閾値と第2閾値とは、所謂ヒステリシスを構成している。このため、第3実施形態の蒸気熱交換システム200は、第1閾値と第2閾値とが一致する態様に比べ、電動弁202が必要以上に頻繁に開閉してしまうこと(換言すると、ハンチング)を抑制することができる。
なお、圧力計72は、蒸気流通管66におけるオリフィス74と第2熱交換器50との間に設けられていた。しかし、圧力計72は、蒸気流通管66における電動弁202とオリフィス74との間に設けられてもよい。この場合、制御部80は、電動弁202とオリフィス74との間の蒸気流通管66内における蒸気の圧力に基づいて、電動弁202の開閉および絞り弁204の開度を制御してもよい。また、圧力計72は、第1送出管42に設けられてもよく、分離器60に設けられてもよく、あるいは、蒸気流通管66における分離器60と電動弁202との間に設けられてもよい。
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態による蒸気熱交換システム300の構成を示す概略図である。第1実施形態の蒸気熱交換システム1は、第1トラップ14および第2トラップ16で捕集したドレンを給水タンク10に回収していた。これに対し、第4実施形態の蒸気熱交換システム300では、第1トラップ14および第2トラップ16で捕集したドレンからフラッシュ蒸気を生成し、第1熱交換器24で利用されなかった蒸気と合わせてフラッシュ蒸気も第2熱交換器50に供給する。
第1トラップ14は、逆止弁302を介してフラッシュタンク310に接続されている。逆止弁302は、第1トラップ14からフラッシュタンク310に向かう方向の流れを許可し、フラッシュタンク310から第1トラップ14に向かう流れを阻止する。
第2トラップ16は、逆止弁304を介してフラッシュタンク310に接続されている。逆止弁304は、第2トラップ16からフラッシュタンク310に向かう方向の流れを許可し、フラッシュタンク310から第2トラップ16に向かう流れを阻止する。
フラッシュタンク310は、例えば、内部空間を有する筒状に形成されている。フラッシュタンク310は、内部空間の圧力が大気圧以下(大気圧または負圧)に設定される。第2送入管312の一端は、フラッシュタンク310の鉛直上方に連通しており、他端は、第2熱交換器50の送入口54に連通している。
蒸気流通管66は、第2送入管312に連通している。なお、蒸気流通管66には、第1実施形態と同様に、空気抜き弁78、圧力調整弁70、オリフィス74および逆止弁76が設けられている。
第3ドレン回収管84は、第2熱交換器50の送出口86と蒸気駆動式ポンプ314との間に設けられている。第4ドレン回収管316の一端は、フラッシュタンク310の鉛直下方に連通しており、他端は、第3ドレン回収管84に連通している。
第1トラップ14および第2トラップ16で捕集されたドレンは、高圧で100度以上となっている。このドレンがフラッシュタンク310に入ると、ドレンは、大気圧で100度となり、圧力が低下したことにより発生した圧力差分の潜熱を利用して、ドレンの一部を蒸気(フラッシュ蒸気)に変える。
フラッシュタンク310において、蒸気に変わらなかったドレン(大気圧で100度のドレン)は、自重で鉛直下方に移動して第4ドレン回収管316に入る。一方、生成された蒸気(フラッシュ蒸気)は、ドレンよりも相対的に軽いことから、主に鉛直上方に拡散して第2送入管312に入る。第2送入管312に入った蒸気は、第2熱交換器50に送られる。
また、第1熱交換器24で利用されなかった蒸気は、分離器60で分離されて蒸気流通管66および第2送入管312を通じて第2熱交換器50に送られる。
つまり、第2熱交換器50には、第1熱交換器24で利用されなかった蒸気と、フラッシュタンク310で生成された蒸気(フラッシュ蒸気)とが供給される。したがって、第2熱交換器50は、第1熱交換器24で利用されなかった蒸気と、フラッシュタンク310で生成された蒸気とを利用して熱交換を行う。
蒸気駆動式ポンプ314には、第1熱交換器24等を含む蒸気系統とは別系統の蒸気が供給される。蒸気駆動式ポンプ314は、この別系統の蒸気によって、第2熱交換器50で生じたドレンおよびフラッシュタンク310から第4ドレン回収管316に入るドレンを回収して給水タンク10に移送する。
以上のように、第4実施形態の蒸気熱交換システム300は、第1実施形態と同様に、蒸気熱交換システム300全体として蒸気のロスを抑えつつ、第1熱交換器24における熱貫流率の低下を防止することが可能となる。
加えて、第4実施形態の蒸気熱交換システム300では、第2熱交換器50での熱交換が、第1熱交換器24から送出される蒸気とドレンとの両方を用いて行われる。したがって、第4実施形態の蒸気熱交換システム300では、蒸気熱交換システム300全体の熱効率を、より大きくすることができる。
なお、第4実施形態の蒸気熱交換システム300において、分離器60で分離された蒸気を、フラッシュタンク310を介さずに直接的に第2熱交換器50に供給していた。しかし、分離器60で分離された蒸気を、フラッシュタンク310を介して第2熱交換器50に供給してもよい。つまり、蒸気流通管66は、フラッシュタンク310に連通してもよい。
また、第4実施形態の蒸気熱交換システム300において、圧力調整弁70の制御については、第1実施形態と同様の構成であるが、第2実施形態および第3実施形態と同様の構成としてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記各実施形態では、高圧の蒸気を利用する第1熱交換器24と、低圧の蒸気を利用する第2熱交換器50との2段階で構成されていた。しかし、第1熱交換器24と第2熱交換器50の2段階の構成に限らない。例えば、蒸気熱交換システムは、高圧の蒸気を利用する高圧熱交換器と、中圧の蒸気を利用する中圧熱交換器と、低圧の蒸気を利用する低圧熱交換器との3段階で構成されてもよい。
この場合、高圧熱交換器で利用されなかった蒸気を中圧熱交換器に供給し、中圧熱交換器で利用されなかった蒸気を低圧熱交換器に供給するようにカスケード接続してもよい。また、高圧熱交換器で利用されなかった蒸気を中圧熱交換器に供給するとともに、高圧熱交換器で利用されなかった蒸気を中圧からさらに減圧して低圧熱交換器に供給するように分配接続してもよい。これらの構成においても、蒸気熱交換システム全体として蒸気のロスを抑えつつ、高圧熱交換器における熱貫流率の低下を防止することが可能となる。
また、上記各実施形態において、第2熱交換器50に供給される蒸気の圧力は、第1熱交換器24に供給される蒸気の圧力よりも小さかった。しかし、蒸気供給源20から直接的に第2熱交換器50に蒸気を補充しない場合には、第1熱交換器24に供給される蒸気の圧力と等しい圧力の蒸気を第1熱交換器から第2熱交換器に供給してもよいし、第1熱交換器24に供給される蒸気の圧力よりも大きな圧力の蒸気を、圧縮機などを介して第1熱交換器から第2熱交換器に供給してもよい。