JP7259965B2 - プリント基板と基板印刷方法 - Google Patents

Description

本発明は、プリント基板および基板印刷方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法で使用でき、本発明のプリント基板を調製に使用できるプラスチゾル組成物に関する。

インクジェット印刷は、様々な印刷用途に使用され、様々な基板上に高解像度のカラー画像を提供することができる。有利にも、インクジェット印刷プロセスは、高画質画像を提供する。このプロセスは、所望の画像を達成するために必要とされるインクの量が最小化されるように、高光学密度を達成すべきである。

近年、壁紙の製造にインクジェット印刷が用いられている。プリントパターンに加えて、壁紙は、一般的には、引っ掻きおよび汚れに対する抵抗性を提供し、壁紙の外観にも影響する樹脂層を有する。特許文献１は、壁紙のような表面被覆を調製するために使用することができる印刷方法を記載している。開示された方法では、液状樹脂層を基板に塗布し、パターンをインクジェット印刷により液状樹脂層に塗布する。次いで、パターンを有する液体樹脂層は、液体樹脂層が液体から固体へ相転移するように硬化される。本実施例では、液体プラスチゾル樹脂層組成物がフリースバック紙に塗布される。プラスチゾル組成物は、エステル系可塑剤にポリ塩化ビニルポリマーを分散させたものである。

液体樹脂層へのインクジェットインクの適用により生じるプリント画像の強度は、液体樹脂層とインクの相互作用に影響される。ドットゲイン（ｄｏｔ ｇａｉｎ）は、インク滴が基板に当たったときにどれだけ広がるかの尺度であり、この相互作用に依存して変化し得る。ドットゲインが重要なのは、ドットゲインが大きすぎると、画像がシャープでなくなり、印刷が意図したより暗くなる可能性があるためである。ドットゲインが小さすぎると、光学密度が低下する可能性がある。ドットゲインの制御は、どのインクジェット印刷プロセスにおいても重要な考慮事項である。

本願の発明者らは、プリント基板および印刷プロセスに対するさらなる改良を試みた。特に、本願の発明者らは、ドットゲインを制御し、それによってプリント基板および印刷プロセスにおける光学密度の改善を試みた。

従って、本発明は、プリント基板を提供する。該プリント基板は、プリントポリマー層が前記基板の表面上に存在し、
前記プリントポリマー層は、
（ａ） ポリ塩化ビニルと、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体と、塩化ビニル、酢酸ビニル及びエチレンのターポリマーとの一つ以上から選択される重合体と、
（ｂ） 可塑剤と、
（ｃ） 着色剤と、
（ｄ） 炭酸カルシウムとを含み、
前記プリントポリマー層中のポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比が、０．１ないし３．５の範囲にある。

本発明は、さらに、基板上に印刷する方法を提供する。該方法は、
液体可塑剤中のポリマー粒子の分散液を基板に塗布してポリマー層を形成する工程であって、前記ポリマーは、ポリ塩化ビニルと、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体と、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びエチレンのターポリマーとのうちの一つ以上から選択される工程と、
前記ポリマー層上にインクをプリントしてプリントポリマー層を形成する工程であって、前記インクが着色剤を含み、前記プリントポリマー層が着色剤を含む工程と、
前記プリントポリマー層を硬化して前記プリントポリマー層を液体から固体に変える工程と、を含み、
前記液体可塑剤中のポリマー粒子の分散物が炭酸カルシウムを含み、ポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比が０．１ないし３．５の範囲にある。

本発明はさらに、ポリマー粒子が液体可塑剤中に分散されたプラスチゾル組成物を提供する。ポリマーは、ポリ塩化ビニルと、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体と、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびエチレンのターポリマーとのうちの一つ以上から選択され、
前記プラスチゾル組成物中のポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比が０．１～３．５の範囲であるように、前記組成物が炭酸カルシウムを含む。

本願の発明者らは驚くべきことに、ポリマー分散液（従って、プリントポリマー層）中のポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比が０．１～３．５の範囲内であれば、ドットゲインを制御することができ、有効な光学密度を得ることができることを見出した。従って、本発明のプリント基板上のプリント画像は、より鮮明であってもよく、および／または、より少ないインクを使用して、プリント画像を提供することができる。

本発明の基板上に印刷する例示的な方法を概略的に示す図である。 インクジェット印刷のための例示的な装置を概略的に示す図である。 本発明の実施例および比較例におけるポリマーに対する炭酸カルシウムの比率によってドットサイズがどのように変化するかを示す図である。

本発明のプリント基板では、プリントポリマー層が基板の表面上に存在する。基板は、紙、不織布、プラスチック、木材、金属、またはこれらの材料の組み合わせで形成することができる。特定の例は、天然紙、プラスチックフィルム、合成紙、不織布、フリース、布、木、（固体樹脂層が半ゲルの形態で存在する）半硬化壁紙、全硬化壁紙、金属シート、および金属薄膜、またはこれらの材料の任意の組み合わせから選択され得る。好ましい実施形態では、基板は裏毛紙（ｆｌｅｅｃｅ－ｂａｃｋｅｄ ｐａｐｅｒ）を含む。

プリントポリマー層は、基板の表面全体にわたって存在してもよいが、表面の一部のみに存在してもよい。基板は実質的に平坦な表面を適当に有し、印刷中にインクジェットヘッドと基板の表面との間に特定の距離が維持され得る。

プリントポリマー層は、ポリ塩化ビニルと、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体と、塩化ビニル、酢酸ビニル、およびエチレンのターポリマーとの一つ以上から選択されたポリマーを含む。好ましい実施形態では、ポリマーはポリ塩化ビニルである。好適には、プリントポリマー層中のポリマーの量は、ポリマー層の重量を基準にして２５重量％～６５重量％、好ましくは２５重量％～５５重量％、さらに好ましくは３０重量％～５０重量％である。

プリントポリマー層は、可塑剤を含む。可塑剤は、ポリマーに添加されると、それをより柔軟またはより曲げやすくする材料である。可塑剤は、ポリマー鎖間の相互作用を低減する。可塑剤化合物は、一般的には、ポリマーと良好な親和性（ｃｏｍｐａｔｉｂｉｌｉｔｙ）を有する不揮発性材料である。好ましい態様において、可塑剤はエステル系可塑剤である。好ましくは、エステル系可塑剤は、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ドデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、およびフタル酸ｎ－ヘキシル－ｎ－デシルのうちの一つ以上から選択されるフタル酸系可塑剤である。好ましくは、プリントポリマー層中の可塑剤の量は、ポリマー層の重量を基準にして５重量％～３５重量％、好ましくは１０重量％～３０重量％、より好ましくは１５重量％～２５重量％である。

ポリマーおよび可塑剤は、プラスチゾル組成物として基板に塗布されていてもよい。プラスチゾル組成物は、液体可塑剤中のポリマー粒子の分散液である。プラスチゾル組成物は、加熱によって硬化させることができる。硬化すると、ポリマー粒子は可塑剤を吸収し、膨潤し、最終的には他のポリマー粒子と融合する。一般的には、プリントポリマー層は、ポリマーの均一な凝集塊から成り、可塑剤は、ポリマーと完全に混合される。

プリントポリマー層は着色剤を含む。着色剤の典型例としては、カーボンブラック；アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、バット染料顔料、媒染染料顔料、塩基性染料顔料、酸染料顔料、天然染料顔料のような任意のタイプの顔料；ならびにジアゾ染料およびアントラキノン染料のような油溶性染料がある。

これらの染料および顔料の各々は、単独でまたは他のものと組み合わせて使用することができる。プリントポリマー層中の着色剤の量は、印刷される画像の要件に基づいて好適に選択され、幅広く変化し得る。しかしながら、多くの一般的な用途では、プリントポリマー層中の着色剤の量は、ポリマー層の重量を基準にして１重量％～５重量％である。

着色剤は、一般的にはインクジェット印刷される着色剤である。本発明のプリントポリマー層におけるインクジェット印刷される着色剤は、一般的には、（例えば、３０μｍ～８５μｍのドットサイズの）ドットパターンで存在し、これは、インクジェット印刷プロセスの特徴である。

着色剤がポリマー層内にある構成と、着色剤がポリマー層外にある構成とは区別され得る。典型的には、本発明において、着色剤は、プリントポリマー層内にある。この構成は、ポリマーが硬化される前にポリマー層に着色剤を印刷し、その後に硬化してポリマー層内に着色剤を有するポリマー層を形成することによって、実現することができる。これは、着色剤がポリマー層外にある構成とは対照的である。そのような構成は、一般的には、着色剤なしでポリマー層が形成され、その後に着色剤を含むインクがポリマー層の表面に印刷される。インクはポリマー層の外側にある。

プリントポリマー層は、炭酸カルシウムを含む。プリントポリマー層中のポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比は、０．１～３．５の範囲であり、好ましくは０．４～３．５の範囲であり、より好ましくは０．４～１．５の範囲である。本願の発明者らは、ポリマーに対する炭酸カルシウムのこの比率を有するプリントポリマー層が、印刷される画像の有効光学密度に等しいドットゲインを有することを見出した。炭酸カルシウムがこの範囲外である場合、一般的にドットサイズが小さ過ぎるため、画像密度が低下する可能性がある。プリント基板上で実現好ましいドットサイズは、３０μｍ～８５μｍである。ドットサイズは、従来の任意の方法を用いて測定することができる。

本発明で使用される炭酸カルシウムのタイプは限定されず、例えば沈降炭酸カルシウムまたは粉砕炭酸カルシウムを使用してもよい。好ましい実施形態では、炭酸カルシウムは、１μｍおよび１０μｍの範囲の平均粒子サイズを有する。平均粒子サイズは、好適にはＤ５０値、すなわち、質量中央径である。

プリントポリマー層は、炭酸カルシウムではない追加の充填剤を含むことができる。このような充填剤には、タルク（ケイ酸マグネシウム）、重晶石（硫酸バリウム）、マイカ（硫酸アルミニウム）、アルミナ、その他のアルミニウム系鉱物が含まれる。好ましい実施形態において、プリントポリマー層は、炭酸カルシウム以外のいかなる充填剤も含まなくてもよい。

プリントポリマー層は、増白剤（典型的には二酸化チタン）、界面活性剤（例えばＶｉｓｃｏｂｙｋ ５１２５などの粘性低下剤）、安定剤（例えばＡｄｅｃａｓｔａｂ ＦＬ－１１５のようなＢａ／Ｚｎ化合物）、発泡剤（例えばアゾジカルボンアミド）および蛍光増白剤（例えばＵｖｉｔｅｘ（商標）またはＴｉｎｏｐａｌ（商標）として入手可能なもの）のような、さらに別の成分を含むことができる。アゾジカルボンアミドのような発泡剤は黄変効果を有し得るので、プリントポリマー層が発泡剤を含む場合には、二酸化チタンのような増白剤を添加することが好ましい。

本発明の方法は、基板上に印刷するためのものである。基板は、紙、不織布、プラスチック、木材、金属、またはこれらの材料の組み合わせで形成することができる。特定の例は、天然紙、プラスチックフィルム、合成紙、不織布、フリース、布、木、（固体樹脂層が半ゲルの形態で存在する）半硬化壁紙、全硬化壁紙、金属シート、および金属薄膜、またはこれらの材料の任意の組み合わせから選択され得る。好ましい実施形態では、基板は裏毛紙（ｆｌｅｅｃｅ－ｂａｃｋｅｄ ｐａｐｅｒ）を含む。

本発明の方法は、分散液が基板に塗布される前に、基板を前処理するさらに別の工程を含んでもよい。このような前処理工程には、（例えば、布での拭き取り、または洗浄液の塗布による）基板の洗浄、または基板の表面の平滑化（例えば、サンドペーパーのような研磨材料での研磨）が含まれ得る。例えば、薄板金属基板を脱脂し、ポリマーフィルム基板をコロナ処理またはプラズマ処理し、あるいは木製基板を洗浄して塵を除去し、その後にポリマー分散液を塗布することができる。

液体可塑剤中のポリマー粒子の分散液（ｄｉｓｐｅｒｓｉｏｎ ｏｆ ｐｏｌｙｍｅｒ ｐａｒｔｉｃｌｅｓ ｉｎ ａ ｌｉｑｕｉｄ ｐｌａｓｔｉｃｉｚｅｒ）を基板に塗布してポリマー層を形成する。分散液は、基板の表面全体にわたって塗布されてもよいが、表面の一部分にのみ塗布されてもよい。好適にも、基板は実質的に平坦な表面を有し、インクジェットヘッドと基板の表面との間の特定の距離は印刷中に維持され得る。

代替的に、液体可塑剤中のポリマー粒子の分散をプラスチゾル組成物として説明する。分散液は二相系であり、ポリマー粒子が液体可塑剤全体に分散している。ポリマー粒子は、好適には、５０ｎｍ～５０００ｎｍ、好ましくは１００ｎｍ～２５００ｎｍ、より好ましくは１００ｎｍ～１０００ｎｍの平均粒径を有する。ポリマー層の安定性を改善する（すなわち、層が異なる相に分離する可能性を低下させる）可能性が高いため、粒子サイズ範囲は小さい方が好ましい。平均粒径（好適には体積平均）は、レーザー回折、動的光散乱、および単一粒子光学的サイジングのような技術によって測定され得る。分散液（ｄｉｓｐｅｒｓｉｏｎ）１リットル当たりのポリマー粒子の量は、好適には１０^４～１０^９粒子である。これは、単一粒子光学的サイジングによって測定することができる。

ポリマーは、ポリ塩化ビニルと、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体と、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びエチレンのターポリマーとのうちの一つ以上から選択される。好ましい実施形態では、ポリマーはポリ塩化ビニルである。

好ましい実施形態において、可塑剤はエステル系可塑剤である。好ましくは、エステル系可塑剤は、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ドデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、およびフタル酸ｎ－ヘキシル－ｎ－デシルのうちの一つ以上から選択されるフタル酸系可塑剤である。

分散液中のポリマーの量は、分散液の重量を基準にして、好適には２５重量％～６５重量％、好ましくは２５重量％～５５重量％、さらに好ましくは３０重量％～５０重量％である。分散液中の可塑剤の量は、分散液の重量を基準にして５重量％～３５重量％、好ましくは１０重量％～３０重量％、より好ましくは１５重量％～２５重量％である。

分散液は炭酸カルシウムも含み、ポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比は０．１～３．５の範囲であり、好ましくは０．４～３．５の範囲であり、より好ましくは０．４～１．５の範囲である。本願の発明者らが見いだしたことによると、ポリマーに対する炭酸カルシウムのこの比率を有する分散液が、印刷される画像の有効光学密度に等しいドットゲインを有するプリントポリマー層を提供することを見出した。炭酸カルシウムがこの範囲外である場合、一般的にドットサイズが小さすぎ、画像密度が低下する可能性がある。印刷中に達成される好ましいドットサイズは、３０μｍ～８５μｍである。ドットサイズは、従来の任意の方法を用いて測定することができる。理論に束縛されることは望まないが、本願の発明者らの推測では、分散液中の炭酸カルシウムの量が、基板上のポリマー層の粘度に影響を及ぼし、インクジェットインクとポリマー層との相互作用に影響を及ぼし、よってドットゲインに影響を及ぼす。

分散液は、炭酸カルシウムではない追加の充填剤を含んでもよい。このような充填剤には、タルク（ケイ酸マグネシウム）、重晶石（硫酸バリウム）、マイカ（硫酸アルミニウム）、アルミナ、その他のアルミニウム系鉱物が含まれる。好ましい実施形態では、分散液は、炭酸カルシウム以外の充填剤を含まない。

分散液はさらに別の成分を含んでもよく、溶媒（例えば、エクソンモービルケミカルのＩｓｏｐａｒやホワイトスピリット）、増白剤（一般的には、二酸化チタン）、界面活性剤（例えば、Ｖｉｓｃｏｂｙｋ ５１２５などの粘性低下剤）、安定剤（例えば、Ａｄｅｃａｓｔａｂ ＦＬ－１１５などのＢａ／Ｚｎ化合物）、発泡剤（例えば、アゾジカルボンアミド）および蛍光増白剤（例えば、Ｕｖｉｔｅｘ（商標）またはＴｉｎｏｐａｌ（商標）として入手可能なもの）のようなさらに別の成分を含んでもよい。アゾジカルボンアミドのような発泡剤は黄変効果を有し得るので、分散液が発泡剤を含む場合には、二酸化チタンのような増白剤を添加することが好ましいことが多い。

分散液は、任意の好適な方法で塗布される。例えば、分散液は、スクリーン印刷（フラットベッドまたは）ロータリー）、計量ローラーまたはドクターバーによるローラーコーティング、グラビア印刷、またはスロット、押出、スライドおよびカーテンコーティングのようなコーティングラインプロセスによって塗布することができる。

ポリマー層の厚さは、好適には５～１００ミクロン、好ましくは１２～５０ミクロンである。

インクがポリマー層に印刷されて、プリントポリマー層を形成する。好適には、印刷は液滴印刷プロセス、好ましくはインクジェット印刷によって行われる。任意の好適なインクジェット印刷装置を使用して、プリントポリマー層を印刷することができる。例えば、ＲＩＣＯＨ Ｐｒｏ ４１３０（商標）ワイドフォーマットのラテックスカラープリンタを使用することができる。インクジェットプリントヘッドは、インクジェットインクの粘性を制御するために好適に加熱可能である。例えば、３０℃～６０℃の範囲の温度、最も好ましくは約４５℃に加熱可能であってもよい。好ましくは、少なくとも２色が印刷される。通常のインクジェット印刷技術によれば、第１の色のインクが最初に適用され、その後に少なくとも第２の色のインクが適用される。フルカラーのインクジェット印刷を使用してもよい。従来の黒、シアン、マゼンタおよびイエローの印刷ヘッドを使用することができる。

インクは着色剤を含む。着色剤の典型的な例としては、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、バット染料顔料、モーダント染料顔料、塩基性染料顔料、酸染料顔料、および天然染料顔料のような任意のタイプの顔料、ならびにジアゾ染料およびアントラキノン染料のような油溶性染料が挙げられる。これらの染料および顔料の各々は、単独でまたは他のものと組み合わせて使用することができる。

油性インクが好適に使用される。油性インクは、着色剤を含み、好ましくは油性成分のような担体を含む。油性インクは任意的にバインダー樹脂を含んでもよい。好ましくは、油性成分はエステル油である。好適なエステル油としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジカプリル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル（ＤＰＯ）、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチル－２－エチルヘキシル、フタル酸ジ－２－エチルヘキシルなどのフタル酸エステル；アジピン酸ジオクチル（アジピン酸ジエチルヘキシル：ＤＯＡ）およびアジピン酸ジイソノニル（ＤＩＮＡ）などのアジピン酸エステル；ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジイソノニルアゼレートなどのアゼライン酸エステル；クエン酸アセチルトリブチル（ＡＴＢＣ）などのクエン酸エステル；アジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレートおよびジイソノニルアゼレートなどのアゼリン酸エステル；ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸イソブチルなどのラウリン酸エステル類；ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシルなどのミリスチン酸エステル類；パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル類；オクタン酸セチル、オクタン酸オクチル（エチルヘキシルエチルヘキサノエート：ＯＯＥ）、オクタン酸イソノニルなどのオクタン酸エステル類；及びイソノナン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニルなどのイソノナン酸エステル類を含む。

油性成分の粘度は、好ましくは、４５℃で、５ｍＰａｓから３０ｍＰａｓの範囲、より好ましくは８ｍＰａｓから１８ｍＰａｓの範囲、最も好ましくは１０ｍＰａｓから１２ｍＰａｓの範囲である。粘度は、好ましくは、Ｂｒｏｏｋｆｉｅｌｄ ＤＶ－ＩＩＩ Ｕｌｔｒａ Ｐｒｏｇｒａｍｍａｂｌｅ Ｒｈｅｏｍｅｔｅｒを用いて測定される。

油性インクは、１重量％未満、より好ましくは０．１重量％未満の揮発性有機化合物溶媒を含むことが好ましい。揮発性有機化合物溶媒は、ＥＵ指令１９９９／１３／ＥＣ（Ｓｏｌｖｅｎｔ Ｅｍｉｓｓｉｏｎｓ Ｄｉｒｅｃｔｉｖｅ）で規定されているように、２９３．１５Ｋにおいて蒸気圧が０．０１ｋＰａ以上の有機化合物である。好ましくは、油性インクは非水性である。好ましくは、油性インク中の水の含有量は、油性インクの重量を基準にして１重量％未満、より好ましくは０．１重量％未満である。

印刷工程の間、インクは未硬化ポリマー層に塗布される。ポリマー層は、（まだ硬化されていないので）依然として液体であり、これは、特に、プリントポリマー層中のポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比が０．１～３．５の範囲である場合に、有効なドットゲインを提供する。印刷中、着色剤はポリマー層と一体的な部分（ｉｎｔｅｇｒａｌ ｐａｒｔ）となる。印刷工程は硬化工程の前に行われる。ポリマー層が印刷前に硬化されると、インクはポリマー層と適切に相互作用せず、所望のドットゲインが達成されない。

プリントポリマー層が硬化され、プリントポリマー層は液体から固体に変化する。硬化は、プリントポリマー層を、好適には１５０～２５０℃の範囲の温度、好ましくは１８０～２２０℃の温度、最も好ましくは１９０～２１０℃の温度で加熱することによって達成される。硬化に際して、ポリマー層中のポリマー粒子は、可塑剤を吸収し、膨潤し、最終的には他のポリマー粒子と融合する。典型的には、プリントポリマー層は、ポリマーの均一な凝集塊から成り、可塑剤はポリマーと完全に混合される。

さらなる仕上げ工程は、硬化工程の後に任意的に実施されてもよい。そのような仕上げ工程はブローイング（ｂｌｏｗｉｎｇ）、エンボス（ｅｍｂｏｓｓｉｎｇ）、オーバーコート（ｏｖｅｒｃｏａｔｉｎｇ）および／または積層（ｌａｍｉｎａｔｉｎｇ）を含み得る。仕上げ工程は、硬化されたポリマー層に装飾を加えることができるか、またはさらなる保護を加えることができる。

本発明は、さらに、本発明の方法で使用することができ、本発明のプリント基板を提供するために使用することができるプラスチゾル組成物を提供する。プラスチゾル組成物では、ポリマー粒子は液体可塑剤中に分散される。

ポリマーは、ポリ塩化ビニルと、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体と、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびエチレンのターポリマーとのうちの一つ以上から選択される。

好ましい態様において、可塑剤はエステル系可塑剤である。好ましくは、エステル系可塑剤は、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ドデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、およびフタル酸ｎ－ヘキシル－ｎ－デシルのうちの一つ以上から選択されるフタル酸系可塑剤である。

プラスチゾル組成物中のポリマーの量は、組成物の重量を基準にして、好適には２５重量％～６５重量％、好ましくは２５重量％～５５重量％、さらに好ましくは３０重量％～５０重量％である。プラスチゾル組成物中の可塑剤の量は、組成物の重量を基準にして５重量％～３５重量％、好ましくは１０重量％～３０重量％、さらに好ましくは１５重量％～２５重量％である。

プラスチゾル組成物は炭酸カルシウムも含み、ポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比は０．１～３．５の範囲であり、好ましくは０．４～３．５の範囲であり、より好ましくは０．４～１．５の範囲である。

プラスチゾル組成物は、炭酸カルシウムではない追加の充填剤を含んでもよい。このような充填剤には、タルク（ケイ酸マグネシウム）、重晶石（硫酸バリウム）、雲母（硫酸アルミニウム）、アルミナおよびその他のアルミニウムベースの鉱物が含まれる。好ましい態様において、プラスチゾル組成物は、炭酸カルシウム以外の充填剤を含まない。

プラスチゾル組成物は、溶剤（例えば、Ｅｘｘｏｎ Ｍｏｂｉｌ ＣｈｅｍｉｃａｌのＩｓｏｐａｒ又はホワイトスピリットまたは）、増白剤（通常は二酸化チタン）、界面活性剤（例えば、Ｖｉｓｃｏｂｙｋ５１２５などの粘性低下剤）、安定剤（例えば、ＡｄｅｃａｓｔａｂＦＬ－１１５などのＢａ／Ｚｎ化合物）、発泡剤（例えば、アゾジカルボンアミド）および蛍光増白剤（例えば、Ｕｖｉｔｅｘ（商標）またはＴｉｎｏｐａｌ（商標）として入手可能なもの）のようなさらに別の成分を含んでもよい。

図１は、本発明の方法の一例を概略的に示す。ポリマー粒子の分散液を基板（１）に塗布し、ポリマー層（２）を形成する。プリントポリマー層（２，４）は、ポリマー層（２）上に印刷（３）をすることによって形成される。プリントポリマー層は硬化される（５）。

図２は、本発明の方法で使用され得るインクジェット印刷のための例示的な装置を概略的に示す。巻き戻しローラー１１は基板１０を提供する。基板１０はスクリーンコータ１２に供給され、そこでポリマー層が基板１０上に形成される。直径約１メートルのドラム２１を備えるインクジェット印刷ステーション２０が、ポリマー層上に印刷するために使用される。インクジェット印刷ヘッド２２は、ドラムの周囲に配置されている。

プリントポリマー層は、１２０～２００℃の範囲の温度に、好ましくは１５０℃に加熱することによって硬化オーブン３０内で硬化される。グラビアコータ／ローラー４０を用いて、プリントポリマー層に表面仕上げを施すことができる。プリントポリマー層は、加熱装置５０内でさらに加熱され得る。完成したプリントポリマー層は、格納およびさらなる輸送のために、ローラーリワインダ６０に巻き付けることができる。

以下の非限定的な実施例は、本発明の例示である。

実施例
液体プラスチゾルの調製
液体プラスチゾルは以下の方法で調製した：
１） ＰＶＣと可塑剤を混合する。
２） 工程１の混合物に炭酸カルシウムを加える。
３） 工程２の混合物に粘性低下剤を添加する。
工程１～３の間、混合温度を２１℃～２５℃の間に維持した。

様々なプラスチゾル組成物の組成を以下の表１に示す。さらに別の２種類の市販のプラスチゾル組成物（比較例１および２）も試験した。実施例で使用した炭酸カルシウムはＤｕｒｃａｌ（商標）１０であった。

印刷
実施例のプラスチゾル組成物及び比較例を各々用いて、以下の方法で画像を印刷した。
１） プラスチゾル組成物を基板に塗布し、ポリマー層を形成する。
２） 工程１のポリマー層上に着色剤を含むインクを印刷する。
３） プリントポリマー層を１３０℃で９０秒間加熱する。
ポリマー層は、工程（１）と（２）との間で乾燥または硬化されなかった。

評価
プラスチゾル組成物を用いて形成されたプリントポリマー層の各々についてドットゲインを測定した。評価結果を表２に示す。

比較例１および実施例１～９について、ドットサイズと、ＰＶＣに対する炭酸カルシウムの重量比を示すグラフを図３に示す。

本出願は、２０１８年１２月２１日に出願された英国優先出願第１８２１０８５．６号に基づき、その優先権を主張する。その全内容は本明細書に参照援用する。

国際特許出願公開第２０１８／１１０５１８号

Claims (15)

1. インクジェット印刷されたプリント基板を生産する方法であって、
   基板の表面上にプリントポリマー層を設けることであって、
   前記プリントポリマー層を設けることは、
   液体状の可塑剤中のポリマー粒子の分散液を前記基板に塗布して形成された未硬化ポリマー層にインクを印刷することによって前記プリントポリマー層を形成した後、硬化させることを含み、
   前記プリントポリマー層は、
   （ａ） ポリ塩化ビニルと、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体と、塩化ビニル、酢酸ビニル及びエチレンのターポリマーとの一つ以上から選択される重合体と、
   （ｂ） 前記可塑剤と、
   （ｃ） 着色剤と、
   （ｄ） 炭酸カルシウムと、を含み、
   前記プリントポリマー層中のポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比が、０．４ないし１．５の範囲にあり、３０μｍないし８５μｍのドットサイズを有する、
   方法。
2. 前記可塑剤がエステル系可塑剤である、請求項１に記載の方法。
3. 前記エステル系可塑剤が、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ドデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、およびフタル酸ｎ－ヘキシル－ｎ－デシルのうちの一つ以上から選択されるフタル酸系可塑剤である、請求項２に記載の方法。
4. 前記ポリマーがポリ塩化ビニルである、請求項１ないし３のいずれか一項に記載の方法。
5. 前記基板はフリースバック紙である、請求項１ないし４いずれか一項に記載の方法。
6. 前記着色剤がインクジェットプリント着色剤である、請求項１ないし５いずれか一項に記載の方法。
7. 基板上にインクジェット装置を用いて印刷する方法であって、
   液体可塑剤中のポリマー粒子の分散液を基板に塗布して未硬化ポリマー層を形成する工程であって、前記ポリマーは、ポリ塩化ビニルと、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体と、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びエチレンのターポリマーとのうちの一つ以上から選択される工程と、
   前記未硬化ポリマー層上にインクジェット印刷によってインクを印刷してプリントポリマー層を形成する工程であって、前記インクが着色剤を含み、これによって前記プリントポリマー層が着色剤を含む工程と、
   前記プリントポリマー層を硬化して前記プリントポリマー層を液体から固体に変える工程と、を含み、
   前記液体可塑剤中のポリマー粒子の分散物が炭酸カルシウムを含み、ポリマーに対する炭酸カルシウムの重量比が０．４ないし１．５の範囲にある、方法。
8. 前記液体可塑剤がエステル系可塑剤である、請求項７に記載の方法。
9. 前記エステル系可塑剤が、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ドデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、およびフタル酸ｎ－ヘキシル－ｎ－デシルのうちの一つ以上から選択されるフタル酸系可塑剤である、請求項８に記載の方法。
10. 前記ポリマーがポリ塩化ビニルである、請求項７ないし９いずれか一項に記載の方法。
11. 前記基板はフリースバック紙である、請求項７ないし１０のいずれか一項に記載の方法。
12. 前記プリントポリマー層が３０μｍないし８５μｍのドットサイズを有する、請求項７ないし１１いずれか一項に記載の方法。
13. 前記プリントポリマー層が、１２０ないし２００℃の範囲の温度に加熱されることによって硬化される、請求項７ないし１２いずれか一項に記載の方法。
14. 前記インクは油性インクである、請求項７ないし１３いずれか１項に記載の方法。
15. 前記インクが、前記着色剤と、フタル酸エステル、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アゼリン酸エステル、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、オクタン酸エステルおよびイソノナン酸エステルのうちの一つ以上から選択されるエステル油とを含む、請求項１４に記載の方法。

Images