JP7259803B2 - 電気炉による溶鉄の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、溶解中に発生する高温の排ガスで鉄系スクラップを予熱しながら鉄系スクラップを溶解する方法として、溶解室の上部に鉄系スクラップの予熱室を連設し、溶解室で発生した高温の排ガスを、鉄系スクラップが充填された予熱室を通過させることにより鉄系スクラップを予熱し、この予熱された鉄系スクラップが溶解室に供給されるようにした溶解方法が示されている。また、この特許文献1の方法では、溶解室内に炭材を吹き込み、補助熱源として利用することも行われている。このような炭材吹込みよる酸化鉄の還元と炭材の燃焼によってCOガスが発生し、このCOガスによって溶融スラグが泡立つ、いわゆる「スラグフォーミング」が促進される。これによりアークの輻射熱が軽減し、鉄系スクラップの溶解効率が向上する。
さらに、予熱室内に装入する造滓材として石灰系造滓材(生石灰又は/及び石灰石)を用いることにより、造滓材が加熱(予熱)される際の吸熱反応により、鉄系スクラップの過剰な予熱による過酸化をより効果的に防止できることが判った。
[1]鉄系スクラップをアーク加熱によって溶解する溶解室(1)と、この溶解室(1)に供給する鉄系スクラップを予熱するための予熱室(2)を備えた電気炉において、溶解室(1)で発生した排ガスを、鉄系スクラップが充填された予熱室(2)を通過させることにより鉄系スクラップを予熱し、この予熱された鉄系スクラップを溶解室(1)内に供給し、溶解室(1)で溶解して溶鉄を得る方法であって、
鉄系スクラップとともに造滓材を予熱室(2)内に装入し、該造滓材を鉄系スクラップとともに予熱室(2)内で予熱した後、溶解室(1)内に供給することを特徴とする電気炉による溶鉄の製造方法。
[2]上記[1]の製造方法において、石灰系造滓材として生石灰又は/及び石灰石を予熱室(2)内に装入することを特徴とする電気炉による溶鉄の製造方法。
[4]上記[2]又は[3]の製造方法において、予熱室(2)内に装入する石灰系造滓材のR-CO2が25mass%未満であることを特徴とする電気炉による溶鉄の製造方法。
[5]上記[2]又は[3]の製造方法において、予熱室(2)内に装入する石灰系造滓材のR-CO2が5mass%以上、15mass%未満であることを特徴とする電気炉による溶鉄の製造方法。
[6]上記[1]~[5]のいずれかの製造方法において、電気炉が、溶解室(1)と、該溶解室(1)の上部に連設されたシャフト型の予熱室(2)を備えた電気炉であり、
予熱室(2)内に鉄系スクラップと造滓材を順次装入することで、予熱室(2)内に鉄系スクラップと造滓材が充填された状態とし、溶解室(1)で発生した排ガスを、鉄系スクラップと造滓材が充填された予熱室(2)を通過させることにより鉄系スクラップと造滓材を予熱し、この予熱された鉄系スクラップと造滓材を予熱室(2)内で順次降下させて溶解室(1)内に供給することを特徴とする電気炉による溶鉄の製造方法。
原料装入口(20)から予熱室(2)内に装入された鉄系スクラップと造滓材は、予熱室(2)及びその下方の溶解室(1)の空間部分(1a)に充填され、この空間部分(1a)の鉄系スクラップと造滓材が順次アーク加熱部側に押し出されることを特徴とする電気炉による溶鉄の製造方法。
[8]上記[7]の製造方法において、空間部分(1a)の鉄系スクラップと造滓材が、押し出し機(3)により順次アーク加熱部側に押し出されることを特徴とする電気炉による溶鉄の製造方法。
[9]上記[1]~[8]のいずれかの製造方法において、供給用バケット(4)に鉄系スクラップとともに造滓材を装入し、供給用バケット(4)により鉄系スクラップと造滓材を予熱室(2)内に同時に装入する方法であって、
供給用バケット(4)内に鉄系スクラップと造滓材を装入する際には、先に鉄系スクラップを装入してから造滓材を装入することを特徴とする電気炉による溶鉄の製造方法。
(i)炉排ガスにより造滓材が予熱されることにより、造滓材を副原料投入シュートから溶解室内に直に装入する従来法に較べて、滓化までの時間が短縮化され、効率よく溶融スラグが作られる。溶融スラグには酸素吹き込みによって生成された酸化鉄(FeO)が含まれており、通常、溶融スラグに炭材吹き込みを行うことよるFeOの還元と炭材の燃焼によってCOガスが発生し、このCOガスによって溶融スラグが泡立つ、いわゆる「スラグフォーミング」状態となる。このスラグフォーミングが適切に生じることにより、アークの輻射熱が軽減し、鉄系スクラップの溶解効率が向上する。したがって、溶解室1内に供給された造滓材が短い時間で滓化することで、スラグフォーミング状態を安定維持できる時間が長くなり、その分、エネルギー利用効率が向上する。
CaCO3=CaO+CO2+ΔH …(1)
ΔH=-42.5kcal/mol
さらに、石灰系造滓材として、生石灰とともに石灰石を用いる(生石灰の一部を石灰石で代替する)ことにより、石灰石を事前に焼成する必要がないので、溶鉄の製造コストをより低減化することができる。
ここで、CaCO3含有量が異なる材料(例えば、生石灰と石灰石、或いはCaCO3含有量が異なる2種類以上の生石灰)を混合した石灰系造滓材のR-CO2は、当該石灰系造滓材に含まれる全CaCO3量に起因するCO2の石灰系造滓材量に対する割合である。
ここで、R-CO2は、固体中炭素・硫黄分析装置(CS分析装置)にて石灰中のC濃度を測定し、これをCO2量に換算することで算出することができる。
このため、例えば、石灰系造滓材として生石灰と石灰石を用いる場合には、そのR-CO2が上記条件を満足するように生石灰と石灰石の装入比率(混合割合)を調整する。具体的には、使用する生石灰と石灰石のR-CO2及びCaO純分を予め算出しておき、操業に必要なCaO純分原単位[kg-CaO/t]と所望のR-CO2となるように、生石灰と石灰石の装入比率を調整する。
また、鉄系スクラップには、有機物質(例えばプラスチック、ゴム、バイオマスなど)が混入していてもよい。
また、本発明では、例えば、予熱室2での造滓材の熱分解による過剰な吸熱を抑えるために、電気炉に装入すべき造滓材の一部を予熱炉2に装入し、残りの造滓材を副原料投入シュートから直接溶解室1に装入するようにしてもよい。
電気炉は、鉄系スクラップをアーク加熱によって溶解する溶解室1と、この溶解室1に供給する鉄系スクラップを予熱するための予熱室2を備えている。
溶解室1の上部は、開閉可能な水冷構造の炉蓋13で覆われている。溶解室1のほぼ中央部には、炉蓋13を貫通して上方から複数本の電極5が挿入され、これら電極5間でアークを飛ばすことにより鉄系スクラップを溶解するアーク加熱部Aが構成される。通常、電極5は黒鉛などで構成され、上下移動可能である。
溶解室1には、予熱室2の下方の空間部分1aに面して、この空間部分1aに充填された鉄系スクラップx(及び造滓材y)を電極5によるアーク加熱部A側に押し出すための押し出し機3(プッシャー)が設けられている。この押し出し機3は、溶解室1の側壁を貫通してアーク加熱部A(本実施形態では炉中心方向)方向進退可能に設けられ、駆動装置(図示せず)により駆動し、その先端で空間部分1a内の鉄系スクラップx(及び造滓材y)をアーク加熱部A側に押し出す。
なお、例えば、押し出し機3を設けることなく、予熱室2および空間部分1aに充填された鉄系スクラップx(及び造滓材y)の自重により空間部分1a内の鉄系スクラップx(及び造滓材y)が自然にアーク加熱部A側に押し出されるようにしてもよい。
炭材吹き込みランス8からは、空気や窒素などを搬送用ガスとして、コークス、チャー、石炭、木炭、黒鉛などの1種以上からなる炭材が溶融スラグsに吹き込まれる。また、酸素吹き込みランス7からは酸素が供給(噴射)され、この酸素により溶融スラグsが押しのけられて、溶鉄mに酸素が吹き込まれる。
なお、酸素吹き込みランス7からは、純酸素ではなく、酸素含有ガス(例えば、純酸素と空気の混合ガス)を吹き込んでもよい。
出湯口11のほぼ真上の位置には、上方から炉蓋13を貫通して溶解室1に挿入される助燃バーナー9が設けられている。この助燃バーナー9は、重油、灯油、微粉炭、プロパンガス、天然ガスなどの化石燃料を支燃ガス(酸素、空気または酸素富化空気)より溶解室1内で燃焼させるものである。例えば、溶鉄mを出湯する際に、未溶解の鉄系スクラップが残っている場合があり、そのような場合に、この助燃バーナー9により鉄系スクラップの溶解を助けることができる。
電気炉1の内壁は耐火物で構成され、また、溶解室1の炉壁10は水冷構造となっている。
その他図面において、17は副原料投入シュートであり、必要に応じて、この副原料投入シュート17から副原料が溶解室1に投入される。
以上のような溶解室1での鉄系スクラップxの溶解処理により、CO、CO2、未反応のO2や開口部などから流入する外気などを含む高温の排ガスが発生する。
溶解室1で鉄系スクラップxを溶解する際に発生した高温の排ガスは、上述したような排ガスの吸引により予熱室2内に流入し、予熱室2内を上昇した後、排気口21から排気される。本実施形態の場合、予熱室2に流入する排ガスの温度は1000~1500℃程度である。排ガスが予熱室2内を通過する過程で、予熱室2に充填された鉄系スクラップxと造滓材yが予熱されるが、排ガスの熱が造滓材yにも着熱するので、その分、鉄系スクラップxの過剰な予熱による過酸化が抑えられる。また、造滓材yが石灰系造滓材(生石灰又は/及び石灰石)の場合には、造滓材yが熱分解する際の吸熱反応により鉄系スクラップxの過剰な予熱による過酸化がより効果的に防止される。
なお、電気炉の操業開始時には、溶解室1内に鉄系スクラップを均一に装入するために、炉蓋13を開けた状態で、予熱室2とは反対側の溶解室2の空間内に鉄系スクラップや炭材を装入してもよいし、この鉄系スクラップの装入の際に、溶銑を溶解室1に装入してもよい。この溶銑は供給用取鍋(図示せず)や溶解室1に通じる溶銑樋(図示せず)により溶解室1に装入することができる。
また、本発明は、溶解室1で発生した排ガスを予熱室2に導いて鉄系スクラップx及び造滓材yを予熱する方法であれば、使用する電気炉のタイプに制限はなく、例えば、溶解室が押し出し機を有しない電気炉を用いた溶鉄の製造方法など、種々のタイプの電気炉を用いた溶鉄の製造方法に適用することができる。
溶解室:炉径7m,炉高5m
予熱室:幅3m,奥行き4m,高さ5m
炉容量:210トン
電力:交流50Hz
トランス容量:75MVA
電極数:3
使用した生石灰及び石灰石のCaO純分とR-CO2を表2に示す。この値をもとに、所定のR-CO2になるように生石灰及び石灰石の装入比率を調整した。
炭材吹き込みランス8から吹き込んだコークス粉としては、固定炭素分85mass%以上、水分1.0mass%以下、揮発分1.5mass%以下、平均粒径5mm以下のものを使用した。
120トン出湯後も送酸とコークス吹込みを行いながら、鉄系スクラップの溶解を継続し、再度、溶解室1内の溶鉄量が200トンになったら、120トン出湯することを同条件で20ch繰り返し、電力原単位(20ch平均)を算出した。
予熱室内での鉄スクラップの予熱状況を確認するため、予熱室出側での平均排ガス温度を測定した。この平均排ガス温度は、予熱室出側での排ガス温度を1秒毎に連続測定し、その測定温度の当該チャージ操業開始から操業終了までの平均値である。
また、棚吊りを評価するために、押し出し機3を稼働させても、予熱室2内での鉄系スクラップ及び造滓材が降下しない場合を棚吊り回数として計上した。また、棚吊り開始から棚吊りが解消されるまでの時間を総棚吊り時間として計上した。棚吊りは一部の鉄系スクラップが溶融し、周囲の鉄系スクラップに融着することで引き起こされる。このような棚吊りが起きると、棚吊りが解消されるまで鉄系スクラップが降下して来ないため、予熱室内の鉄系スクラップが予熱され続けて鉄酸化がさらに助長され、さらなる棚吊りが引き起こされてしまう。また、棚吊りしている間も電力が投入され続けるため、無駄なエネルギーが消費されてしまい、生産性悪化となる。本実施例では、棚吊り回数の評価として、20ch実施する中で棚吊り回数が3回未満であれば“〇”、3回以上、5回未満であれば“△”、5回以上であれば“×”とした。また、総棚吊り時間の評価としては、総棚吊り時間が10分未満であれば“〇”、10分以上、20分未満であれば“△”、20分以上であれば“×”とした。
さらに、総合評価として、電力原単位差、棚吊り回数、総棚吊り時間、スラグフォーミングのうちの評価に一つでも“×”があれば“×”、一つでも“△”があれば“△”、それ以外は“〇”とした。
表3によれば、比較例1~4は、いずれも電力原単位が悪い。これは、造滓材を副原料投入シュート17から溶解室1に直に装入しているため、造滓材のR-CO2が高くなるに従い、炉内での吸熱反応により電力原単位が悪化したものと考えられ、さらに、予熱室2内で鉄系スクラップが棚吊りしたことで、エネルギーロスが生じ、この面でも電力原単位が悪化したものと考えられる。このように電力原単位が悪化し、棚吊り時間も21分以上となったことから、比較例1~4の総合評価は“×”となった。
これに対して発明例1~7は、いずれも電力原単位が低い。これは、造滓材を予熱室2で予熱したことで、滓化までのエネルギー効率が良くなり、電力原単位が改善されたものと考えられる。また、棚吊り回数及び総棚吊り時間も改善されたため、結果としてエネルギー効率良く操業できたものと考えられる。発明例1、6、7の総合評価は“△”、本発明例2~5の総合評価としては“〇”となった。
1a 空間部分
2 予熱室
3 押し出し機
4 供給用バケット
5 電極
6 排気ダクト
7 酸素吹き込みランス
8 炭材吹き込みランス
9 助燃バーナー
10 炉壁
11 出湯口
12 出滓口
13 炉蓋
14 出湯用扉
15 出滓用扉
16 走行台車
17 副原料投入シュート
20 原料装入口
21 排気口
x 鉄系スクラップ
y 造滓材
m 溶鉄
s 溶融スラグ
A アーク加熱部
Claims (7)
- 鉄系スクラップをアーク加熱によって溶解する溶解室(1)と、この溶解室(1)に供給する鉄系スクラップを予熱するための予熱室(2)を備えた電気炉において、溶解室(1)で発生した排ガスを、鉄系スクラップが充填された予熱室(2)を通過させることにより鉄系スクラップを予熱し、この予熱された鉄系スクラップを溶解室(1)内に供給し、溶解室(1)で溶解して溶鉄を得る方法であって、
鉄系スクラップとともに石灰系造滓材を予熱室(2)内に装入し、該石灰系造滓材を鉄系スクラップとともに予熱室(2)内で予熱した後、溶解室(1)内に供給する溶鉄の製造方法であり、
前記石灰系造滓材として生石灰及び石灰石を予熱室(2)内に装入することを特徴とする電気炉による溶鉄の製造方法。 - 予熱室(2)内に装入する石灰系造滓材のR-CO2が25mass%未満であることを特徴とする請求項1に記載の電気炉による溶鉄の製造方法。
- 予熱室(2)内に装入する石灰系造滓材のR-CO2が5mass%以上、15mass%未満であることを特徴とする請求項1に記載の電気炉による溶鉄の製造方法。
- 電気炉が、溶解室(1)と、該溶解室(1)の上部に連設されたシャフト型の予熱室(2)を備えた電気炉であり、
予熱室(2)内に鉄系スクラップと石灰系造滓材を順次装入することで、予熱室(2)内に鉄系スクラップと石灰系造滓材が充填された状態とし、溶解室(1)で発生した排ガスを、鉄系スクラップと石灰系造滓材が充填された予熱室(2)を通過させることにより鉄系スクラップと石灰系造滓材を予熱し、この予熱された鉄系スクラップと石灰系造滓材を予熱室(2)内で順次降下させて溶解室(1)内に供給することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電気炉による溶鉄の製造方法。 - 電気炉が、溶解室(1)のアーク加熱部から離れた位置の上部に、溶解室(1)と連通するように予熱室(2)が設けられ、この予熱室(2)の上部に原料装入口(20)を有する電気炉であり、
原料装入口(20)から予熱室(2)内に装入された鉄系スクラップと石灰系造滓材は、予熱室(2)及びその下方の溶解室(1)の空間部分(1a)に充填され、この空間部分(1a)の鉄系スクラップと石灰系造滓材が順次アーク加熱部側に押し出されることを特徴とする請求項4に記載の電気炉による溶鉄の製造方法。 - 空間部分(1a)の鉄系スクラップと石灰系造滓材が、押し出し機(3)により順次アーク加熱部側に押し出されることを特徴とする請求項5に記載の電気炉による溶鉄の製造方法。
- 供給用バケット(4)に鉄系スクラップとともに石灰系造滓材を装入し、供給用バケット(4)により鉄系スクラップと石灰系造滓材を予熱室(2)内に同時に装入する方法であって、
供給用バケット(4)内に鉄系スクラップと石灰系造滓材を装入する際には、先に鉄系スクラップを装入してから石灰系造滓材を装入することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の電気炉による溶鉄の製造方法。
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